平成9(行ウ)126 固定資産税審査決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成13年2月20日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文46,722 文字)

主文 一被告が原告に対し平成九年二月七日付けでした別紙目録記載一及び二の各1記載の土地に係る原告の審査申出を棄却する旨の決定を取り消す。 二訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第一請求主文同旨第二事案の概要本件は、原告がその所有に係る土地の平成六年度の土地課税台帳に登録された価格が「適正な時価」を上回ると主張して、原告の審査申出を棄却した被告の決定の取消しを求めている事案である。 一前提となる事実(当事者間に争いがない事実) 1 原告は、別紙目録記載一及び二の各1記載の土地(以下、順次、「本件土地1」、「本件土地2」といい、両者を併せて「本件各土地」という。)の共有持分一〇〇〇分の五七五を有する者であって、本件各土地の固定資産税の納税義務者である。 2 東京都知事は、本件各土地の平成六年度の価格を別紙目録一、二の各2記載のとおり決定し、右の各価格は、土地課税台帳に登録された。 3 原告は、平成六年五月二日付けで、被告に対し、右平成六年度登録価格を不服として、各審査申出をしたのに対し、被告は、平成九年二月七日付けで、右各審査申出を棄却する旨の決定をした(以下「本件決定」という。)。 二法令の定め等 1 固定資産(土地)評価に関する法令等(一) 土地に対して課する基準年度(本件では平成六年度である。)の固定資産税の課税標準は、当該固定資産の基準年度に係る賦課期日(当該年度の初日の属する年の一月一日、本件では平成六年一月一日である。地方税法(以下「法」という。)三五九条)における価格であり、右価格とは「適正な時価」(法三四一条五号)であって、土地課税台帳又は土地補充課税台帳(以下、これらを併せて「土地課税台帳」という。)に登録されたものである(法三四九条一項)。 (二) 土地課税台帳に登録される価格(以 価」(法三四一条五号)であって、土地課税台帳又は土地補充課税台帳(以下、これらを併せて「土地課税台帳」という。)に登録されたものである(法三四九条一項)。 (二) 土地課税台帳に登録される価格(以下、この価格を「登録価格」という。)の決定に際しての固定資産の評価については、自治大臣が、評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を定め、告示しなければならないものとされ(法三八八条一項前段)、固定資産評価基準(昭和三八年一二月二五日自治省告示第一五八号。以下「評価基準」という。)が告示されている。 そして、市町村長(東京都の特別区においては、法七三四条一項の規定により、東京都知事。以下同じ。)は評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならないとされ(法四〇三条一項)、固定資産の価格等を決定し、価格等を登録した場合には、その結果の概要調書を作成し、毎年四月中にこれを道府県知事に送付しなければならず(法四一八条)、道府県知事は右価格の決定が評価基準によって行われていないと認める場合においては、当該市町村長に対し、登録価格を修正して登録するよう勧告するものとされ、自治大臣は右勧告をするよう指示するものとされている(法四一九条一項、四二二条の二第一項)。 評価基準の取扱いに関しては、自治事務次官の依命通達(「固定資産評価基準の取扱いについて」昭和三八年一二月二五日自治乙固発第三〇号。以下「取扱通達」という。)が発せられている。 なお、自治大臣は、市町村長に対して、固定資産の評価に関する資料の作成又は助言による技術的援助を与えなければならず、また、道府県知事も、自治大臣の作成した資料の使用方法についての指導又は評価についての助言を与えなければならない(法三八八条三項、四〇一条)とされているが、これらは、自治大臣又は道府県知事に市町村の徴税吏 府県知事も、自治大臣の作成した資料の使用方法についての指導又は評価についての助言を与えなければならない(法三八八条三項、四〇一条)とされているが、これらは、自治大臣又は道府県知事に市町村の徴税吏員又は固定資産評価員に対する指揮権限を与えるものではない(法四〇二条)。 (三) 市町村長は、固定資産評価員から所定の手続による土地の評価に係る評価調書を受理したときは、毎年二月末日までに評価基準によって固定資産の価格等を決定し、これを土地課税台帳に登録しなければならない(法四一〇条、四一一条一項)。 2 評価基準が定めている宅地の評価方法の概要は、平成六年度においては、次のとおりである(評価基準第1章第3節)。 (一) 地目の現況が宅地である場合の土地の評価は、各筆の宅地について評点数を付設し、当該評点数を評点一点当たりの価額に乗じて各筆の宅地の価額を求める方法による。なお、本件土地での評点一点当たりの価額は一円である。 (二) 各筆の評点数は、市町村の宅地の状況に応じ、主として市街地的形態を形成する地域における宅地については「市街地宅地評価法」によって、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地については「その他の宅地評価法」によって付設する。 (三) 「市街地宅地評価法」による宅地の評点数の付設(1) 市町村の宅地を商業地区、住宅地区、工業地区、観光地区等に区分し、当該各地区について、街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便等からみて相当に相違する地域ごとに区分し(以下、右のとおり区分される状況が類似した地域を「状況類似地区」という。)、当該地域の主要な街路に沿接する宅地のうち、奥行、間口、形状等の状況が当該地域において標準的なものと認められる標準宅地を選定する。 (2) 右標準宅地について、 した地域を「状況類似地区」という。)、当該地域の主要な街路に沿接する宅地のうち、奥行、間口、形状等の状況が当該地域において標準的なものと認められる標準宅地を選定する。 (2) 右標準宅地について、売買実例価額から評定する適正な時価を求め、これに基づいて当該標準宅地の沿接する主要な街路について路線価を付設し、これに比準して主要な街路以外のその他の街路の路線価を付設するものとする。 その際には、主要な街路の路線価を基礎とし、主要な街路に沿接する標準宅地とその他の街路に沿接する土地との間における宅地利用上の便等の相違を総合的に考慮する。 (3) そして、各筆の宅地の評点数は、その沿接する路線価を基礎とし、各筆につき評価の対象とすべき画地を認定し、奥行のある画地、正面と側面あるいは裏面等に路線がある画地等の状況に従って、所定の補正を加える方式(画地計算法)を適用して付設する。 3 平成六年度の評価替えに関する通達等(一) 自治事務次官は、平成六年度評価替えにあたり、取扱通達を一部改正する旨の通知(平成四年一月二二日自治固第三号。以下「七割評価通達」という。)を各都道府県知事あてに発した。 右通知の骨子は、土地の評価は、売買実例価額から求める正常売買価格に基づいて適正な時価を評定する方法によるものであるとしていた従前の通達に、宅地の評価に当たっては、地価公示法による地価公示価格、国土利用計画法施行令による都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格を活用することとし、これらの価格の一定割合(当分の間この割合を七割程度とする。)を目途とする、というものである。 (乙一)(二) そして、自治省税務局資産評価室長は、地価変動に伴う鑑定評価価格の修正に 割程度とする。)を目途とする、というものである。 (乙一)(二) そして、自治省税務局資産評価室長は、地価変動に伴う鑑定評価価格の修正について、「平成六年度評価替え(土地)に伴う取扱いについて」と題する通知(平成四年一一月二六日自治評第二八号。以下「時点修正通知」という。)を各都道府県総務部長、東京都主税局長あてに発した。 これは、平成六年度の評価替えは、平成四年七月一日を価格調査基準日として標準宅地について鑑定評価価格を求め、その価格の七割程度を目標に評価の均衡化・適正化を図ることとしているが、最近の地価の下落傾向に鑑み、平成五年一月一日時点における地価動向も勘案し、地価変動に伴う修正を行うこととする、というものである。 (乙四) 4 東京都特別区における評価方法東京都特別区においては、東京都知事が固定資産の価格を決定するものとされ(法七三四条一項、四一〇条)、評価の方法については、評価基準及び七割評価通達を取り込んだ東京都固定資産(土地)評価事務取扱要領(昭和三八年五月二二日主課固発第一七四号主税局長決裁。以下「取扱要領」という。)及び東京都土地価格比準表(以下「比準表」という。)によることとされていた(以下、評価基準、取扱通達、七割評価通達、取扱要領及び比準表を「評価基準等」という。)。 (乙六、弁論の全趣旨)三本件決定の根拠(被告の主張)当該事実について当事者間に争いがない事項は、その旨を末尾に記載した。 1 本件各土地の地目本件各土地の登記及び現況地目はいずれも宅地であり、主として市街地的形態を形成する地域における宅地に該当する。 そこで、被告は、本件決定に い事項は、その旨を末尾に記載した。 1 本件各土地の地目本件各土地の登記及び現況地目はいずれも宅地であり、主として市街地的形態を形成する地域における宅地に該当する。 そこで、被告は、本件決定に当たっては、市街地宅地評価法により評価した。 2 本件各土地が属する地域の用途地区区分本件各土地の付近は、日常生活圏の中心地で、概して街路沿いのみに多種類の店舗が連なっているが、高度商業地区、繁華街に比べ資本投下量が少ない店舗が連なっている地区に該当する。 そこで、被告は、本件決定に当たっては、本件各土地が属する地域の用途地区区分を普通商業地区として評価した。 3 標準宅地の選定右の普通商業地区について、状況類似地区ごとに区分したうえで、本件各土地の所在する地区の標準宅地を選定すると、右標準宅地は本件土地1となる。 4 一画地(一) 本件各土地は、鉄骨鉄筋コンクリート造地上九階建居宅事務所ビルの敷地として利用されている。 (争いがない事実)(二) 評価基準等では、画地の認定は、原則として土地(補充)裸税台帳に登録された、一筆の宅地を一画地とするものであるが、例外として、隣接する二筆以上の宅地にまたがり、恒久的建物が存在する土地等については、二筆以上の宅地を合わせて評価するものと規定している。 そこで、本件各土地は、隣接する二筆以上の宅地にまたがり恒久的建物が存在する土地として、一画地と評価すべきである(以下「本件画地」という。)。 5 本件画地の正面路線の路線価(一) 本件土地1に沿接する主要な街路の路線価五四五万点標準宅地に当たる本件土地1に係る適正な時価については、不動産鑑定士aが行った価格調査基準日である平成四年七月一日時点の不動産鑑定価格九一〇万円を活用するとともに(以下 の路線価五四五万点標準宅地に当たる本件土地1に係る適正な時価については、不動産鑑定士aが行った価格調査基準日である平成四年七月一日時点の不動産鑑定価格九一〇万円を活用するとともに(以下、右鑑定を「a鑑定」という。)、平成五年一月一日までの六箇月の地価動向を勘案しマイナス一四・三パーセントの時点修正を行い、その七割程度の価格をもって五四五万円とし、右価格に基づいて路線価を付設した。 (二) 本件画地に沿接する正面路線の路線価五四五万点右の主要な街路と本件画地に沿接する正面路線とが一致するため、正面路線の路線価を五四五万点と付設した。 6 画地計算法に基づく算定(一) 正面路線から本件画地の奥行きは二四・五メートルである。 (争いがない事実)(二) 本件画地の単位地積当たりの評点五二八万六五〇〇点そこで、取扱要領付表1に基づき、奥行価格補正率〇・九七を正面路線の路線価五四五万点(前記5(二))に乗じて、単位地積当たりの評点を算出した。 (三) 本件土地1の評価額二三億八五一一万〇二〇〇円右単位地積当たりの評点五二八万六五〇〇点に本件土地1の地積四五一・一七平方メートルを乗じて総評点を二三億八五一一万〇二〇五点と算出し、これに評点一点当たりの価格一・〇〇円を乗じて、本件土地1の評価額を算定した(ただし、一〇円未満の端数切り捨て)。 (四) 本件土地2の評価額三億九四九五万四四一〇円右単位地積当たりの評点五二八万六五〇〇点に本件土地2の地積七四・七一平方メートルを乗じて総評点を三億九四九五万四四一五点と算出し、これに評点一点当たりの価格一・〇〇円を乗じて、本件土地2の評価額を算定した(ただし、一〇円未満の端数切り捨て)。 四当事者 四・七一平方メートルを乗じて総評点を三億九四九五万四四一五点と算出し、これに評点一点当たりの価格一・〇〇円を乗じて、本件土地2の評価額を算定した(ただし、一〇円未満の端数切り捨て)。 四当事者双方の主張(原告の主張) 1 本件決定の違法(一) 賦課期日(基準日)のすり替えの違法土地に対して課税する固定資産税の評価額で土地課税台帳に登録される登録価格は、基準年度の賦課期日である一月一日の時価とすることが定められている(法三四九条一項、三五九条、三四一条五号、東京都都税条例一条)。 これを平成六年度の評価替えについていうと、平成六年度の登録価格は、平成六年一月一日の時価でなければならない。ところが、平成六年度の評価替えについて東京都は、一年前の平成五年一月一日の高い時価をもって賦課期日の時価にすり替えている。このような時価のすり替えは、賦課期日を誤っている違法な評価である。 (二) 通達による評価額の大幅な引上げの違法平成六年度の評価替えに当たり、東京都は土地に対する評価額を地価公示価額の一三パーセント水準から一挙に七〇パーセント水準に大幅な引上げを行った。そしてこのような大幅な引上げは、法令によるものではなく、通達によるものである。 通達によるこのような大幅な評価割合の引上げは憲法の租税法律主義に違反するので許されない。 課税要件の中で最も重要な課税標準である評価額の引き上げが、法令の根拠もなく、すなわち納税者の同意なく通達で一方的に大幅な引き上げがされたということは、租税法律主義に違反する。また、右の評価割合も、課税要件というべきであるから、これを法律改正によることなく変更することも租税法律主義に反する。 これまで不動産の固定資産税の評価として行われてきた評価方法は、租税先例法又は租税慣習法として確立していたが、これを納税 あるから、これを法律改正によることなく変更することも租税法律主義に反する。 これまで不動産の固定資産税の評価として行われてきた評価方法は、租税先例法又は租税慣習法として確立していたが、これを納税者の不利益に変更する場合、納税者の同意(法律による変更)が必要なのである。 (三) 市街地宅地評価法による評価市街地宅地評価法は、非科学的手法であり、客観的根拠が全くないから、これによる評価というのは恣意的であり、課税のために強行される手法でしかない。 (四) 標準宅地(本件土地1)の価格についてのa鑑定の誤り(1) 取引事例比較法の誤り不動産は、流動性の乏しい商品であり、その結果、適正な市場がなく、元来適正な時価を決定することが困難である。そこで、不動産をあえて評価するとすれば、最も安定的な指標である収益に依存して決定されるべきである。 ところで、a鑑定では、取引事例比較法が採用されているが、平成三年一二月から平成四年一月という時価の極端に高い時期の取引事例を調査したというにすぎず、その時点修正率も不十分であり、また、その存在区域、面積、形状等の点において、あまりにも本件各土地とは異なるものであり、類似性はないというべきである。また、売主及び買主から売買実例価額を聴取した形跡もないのであるから、本件においては、取引事例比較法を採用することはできない。 また、数の少ない不自然な取引事例から比準して算定される価格よりも、不特定多数の借り手、貸し手によって成立しているオフィス賃料の実勢価格をもとにした収益還元価格が妥当であり、標準宅地の価格には、原則として、収益価格のみを採用すべきである。 a鑑定は、収益についても若干の考慮をしているが、それは、公示価格の七割に合わせたにすぎないのであって、客観性のある価額とはいえない。 このような標準 則として、収益価格のみを採用すべきである。 a鑑定は、収益についても若干の考慮をしているが、それは、公示価格の七割に合わせたにすぎないのであって、客観性のある価額とはいえない。 このような標準宅地の誤った鑑定評価に依存している本件各土地の登録価格は違法である。 (2) 標準宅地の調査基準日及び時点修正率の認定の誤り平成四年七月一日から平成六年一月一日までの間は、地価の大幅な下落時期であったのであるから、平成六年一月一日からの価格を決定するにあたり、一年半も前の鑑定価格を求めるのは、不合理である。 また、本件宅地は標準宅地であるところ、標準宅地鑑定評価の時点修正を含む修正は、十分な検討がなされていない。 また、地価公示価格は、時価を表示するものではなく、国土庁が政策目的を達成するために作られたものであって、地価公示地があまりにも少ない状態においては、客観的な規範的価値のある数値を導く指標とはならない。 (3) 継続賃料を採用する収益還元法は適正でなかったこと収益還元法において採用されている賃料に平成四年七月一日時点における「オフィスビル新規賃料」を用いることは、不適切である。 すなわち、我が国においては、借地借家法があり、既存オフィスビルの場合、既存テナントに実勢価格を押しつけることができないのであるから、その収益は、原則として、継続賃料を基準に算定しなければならないものであるが、平成六年一月一日においては、継続賃料よりも、新規賃料が、大幅に低下したところ、a鑑定は、この点を考慮していない点で不当である。 また、a鑑定は、純収益の計算書が提出されておらず、その客観性が何ら証明されていない。 (4) 還元利回りa鑑定において採用された還元利回りは、あまりに過小であって、経済の実勢を反映しておらず、不適切である。すなわち、同時 書が提出されておらず、その客観性が何ら証明されていない。 (4) 還元利回りa鑑定において採用された還元利回りは、あまりに過小であって、経済の実勢を反映しておらず、不適切である。すなわち、同時期の十年ものの国債(元本保証)の利回りは、年率三・二七六パーセントであったのであるが、賃料水準が急激な下落傾向を示していたこと、不動産は、流動性が欠如するとのリスクを負担していること、他の一般的な投資対象と比較して一定のリスクが存在することからすれば、収益価格を試算するのに、右の一〇年国債の利回りをも下回る利率を適用することは明らかに誤りというべきである。 (5) 基準地との格差率の誤りa鑑定が、比準価格算定の際に基礎とした基準地との格差は、三二パーセントであるとするが、その根拠が不明である。 (6) 基準地価格と地価公示価格を参考とした誤りまた、地価公示価格は、前記のとおり、時価を全く表していないのであるから、基準地の価格を参考とすることには科学性がない。 (五) 奥行価格補正率被告の用いる奥行価格補正率は、条例でも、自治大臣の告示又は通達でもないが、これによると、奥行の深い、規模の大きい土地ほど評価が低くなるが、オフィスビルの賃料・保証金は、大規模なビルほど高いのであり、かかる補正率は現況に一致しないし、この補正率は、納税者の担税力を十分に考慮に入れていない。 さらに、大規模なビルの所有者あるいは、間口距離や奥行距離割合の高い土地所有者を、土地利用の実態から離れて不当に擾遇することになる。 (六) 奥行価格補正率の割り戻し奥行価格補正率一・〇〇でない画地を標準宅地とした場合、路線価を計算するに際して、標準宅地の鑑定価格を、その土地の奥行価格補正率で割り戻さないと、奥行価格補正率を適用する前提がくずれてしまうことになるが、東京都及び ・〇〇でない画地を標準宅地とした場合、路線価を計算するに際して、標準宅地の鑑定価格を、その土地の奥行価格補正率で割り戻さないと、奥行価格補正率を適用する前提がくずれてしまうことになるが、東京都及び被告はこれを行っていない。 2 本件各土地の客観的時価(一) 評価基準等に従って計算した結果、客観的時価が算出されていない場合には、評価の見直しができることは、法四三四条一項が予定するところであり、また、評価基準は、東京都の職員に対する技術的援助にすぎず(法四〇三条一項)、法はあらゆる個別事情を総合して評価することを求めているのであるから、評価基準等に拘束されることなく、客観的な時価を確定することは許されるというべきである。 (二) 我が国において、建物とその敷地は、一体的に取り引きされるのが通常であるから、建物の存在する土地の客観的時価は、被告の主張するように土地と建物とを別にして評価すべきではない。すなわち、本件各土地の時価として求めるべき価格は、「更地としての土地価格」ではなく、「建物の敷地としての土地価格」でなければならないというべきである。 そして、最有効使用の状態にある収益用不動産については、現実の利用に基づいた収益構造を前提とした価格(収益還元法による収益価格)が、最も規範性のある価格として定着しているというべきであり、商業地の賃貸ビルの敷地の場合には、そのオフィス賃料を基準として、その賃料収益が土地にどの程度帰属するかによって決定すべきものである。また、固定資産評価は売却しない資産を前提としているのであるから収益を参考資料としてその評価をすべきである。 (三) そして、不動産鑑定士bが、本件各土地を、貸家建付地として一〇通りの評価手法によって鑑定した本件各土地の価格(以下、右鑑定の結果を「b鑑定」という。)は、本件決定に係る 評価をすべきである。 (三) そして、不動産鑑定士bが、本件各土地を、貸家建付地として一〇通りの評価手法によって鑑定した本件各土地の価格(以下、右鑑定の結果を「b鑑定」という。)は、本件決定に係る価格を上回っており、その中で、最も信頼性の高い試算価格であるとされた期間一〇年によるDCF方式によって求められた価格によれば、平成六年一月一日時点における本件各土地の価格は、三億一七六〇万六八五〇円となる。 (四) また、本件各土地上の建物の評価は極めて過大になされているから、これを前提として本件各土地を評価すると、別紙「土地評価書」記載のとおり、零円となるものである。 そして、本件各土地について算定される収益の二分の一を超える課税(固定資産税、都市計画税、地価税、土地保有税の合計)を行うことは、地方公共団体による財産の没収に該当すると考えられるから、憲法二九条に違反するというべきである。 (五) したがって、本件決定に係る本件各土地の登録価格は、適正な時価を超えていることが明らかというべきである。 (被告の主張) 1 本件決定が評価基準に適合したものであることについて(一) 賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点の時価を基準として、賦課期日における土地の価格を求めることは適法であること(1) 法は、基準年度の賦課期日(本件では平成六年一月一日)から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点を価格調査基準日とし、右の時点の価格を「賦課期日における価格」(法三四九条一項)とみなすことまで、許容しているというべきである。 なぜなら、土地の固定資産評価に当たっては、①税負担の適正化・均衡化を図るため、評価基準に基づき、全国の土地を同一の基準で評価すること、②市町村による評価後にも都道府県間及び各都道府県内の市町村間における評価の均 の固定資産評価に当たっては、①税負担の適正化・均衡化を図るため、評価基準に基づき、全国の土地を同一の基準で評価すること、②市町村による評価後にも都道府県間及び各都道府県内の市町村間における評価の均衡を図るため、それぞれ所要の調整を行ったうえで、二月末日までに価格を決定してこれを土地課税台帳に登録することが予定されているところ、これら一連の評価事務には、賦課期日を当該年度の初日の属する年の一月一日に遡らせただけでは対応しきれない相当の長期間を要するものと考えられ、基準年度の賦課期日から評価事務に要する期間を遡った時点の地価を基準として賦課期日における適正な時価を評価することは、法が当然に予定しているところと解されるからである。 (2) 右結論は、次のとおり、立法者の意思に合致する適正なものということができる。 すなわち、平成五年三月三一日、平成六年度評価替えに係る法の改正が行われたが、この改正法によれば、平成六年度から平成八年度までの価格の上昇による特例措置、平成六年度から平成八年度までの負担調整措置について、いずれも平成四年七月一日を価格調査基準日とする各都道府県の基準宅地価格を基礎として平成五年度課税標準に対する上昇率を算定し、それにより平成六年度から平成八年度までの課税標準を決定することとされている(法附則一七条の二、同一八条)。換言すれば、法は価格調査基準日の価格を基礎として、平成六年度から平成八年度までの固定資産税の課税標準を決定しているのであり、法が価格決定の基準日を価格調査基準日であるとしていることは明らかである。 また、評価基準に定める指示平均価額についても、平成五年一月一日時点の価格に基づき決定されている。 そうであるとすると、平成六年度の評価替えにおける価格算定基準日を平成五年一月一日としたことは、法が当然に予 基準に定める指示平均価額についても、平成五年一月一日時点の価格に基づき決定されている。 そうであるとすると、平成六年度の評価替えにおける価格算定基準日を平成五年一月一日としたことは、法が当然に予定しているものというべきである。 (3) 仮に、法三四九条及び三五九条の文理に忠実に解釈して、固定資産の評価額は賦課期日すなわち当該基準年度の一月一日時点の価格でなければならないと解したとしても、本件各土地の価格は違法ではないというべきである。 そもそも法は固定資産の評価額を適正な時価にすることまで許容しているのであるから、地価公示価格とほぼ同水準で固定資産の評価における適正な時価が定まることになる。そうであるとすれば、地価公示価格から三割を下回る価格を固定資産の評価額と定めると、適正な時価との比較では三割の余裕があることになり、その範囲が許容範囲となる。 しかも、時価というものは、その性格上、一義的に決まるものではない。なぜなら、売買取引事例を比較して当該土地の時価を算定してみても、土地の形状は一筆ごとに異なるし、売買当事者や取引時点が異なれば、当然に価格は変動するものであるからである。確かに、不動産鑑定評価額は、こうした不正常要素を可能な限り取り除いて客観的に求めた価格ではある。しかし、不動産鑑定理論に基づいて求められた不動産鑑定評価額についても、評価額に一定の幅が存することは経験則上明らかである。そうだとすれば、固定資産の評価における「適正な時価」とは、一義的に定まる価格ではなくある程度の幅を持つ価格と捉えるべきである。このように「適正な時価」を理解することは、法及び評価基準において、評価額を求めるためには個々の土地の不動産鑑定ではなく路線価方式で足りるとしていること及び各市町村間で基準宅地の適正な時価を調整する手続を要すると規定してい を理解することは、法及び評価基準において、評価額を求めるためには個々の土地の不動産鑑定ではなく路線価方式で足りるとしていること及び各市町村間で基準宅地の適正な時価を調整する手続を要すると規定していることからも認められる。これを前提に考えると、固定資産の評価額として決定された価格を「適正な時価」と認めることが社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、右評価額は違法な価格というべきである。 (二) 七割評価通達について(1) 法は、固定資産の評価額を「適正な時価」すなわち地価公示価格(これはおおむね時価と理解される。)とほぼ一致させることまで許容している。 すなわち、固定資産税は、固定資産課税台帳に登録された固定資産の価格を課税標準とすることを原則として、固定資産の所有者(質権又は百年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については、その質権者又は地上権者とする。以下同じ。)に対して、資産の所有という事実に着目して課税する財産税である。それゆえ、資産が土地の場合には、土地の所有という事実に着目して課税されることになるから、個々の所有者が現実に土地から収益を得ているか否か、土地が用益権又は担保権の目的となっているか否か、収益の帰属が何人にあるかを問わず、賦課期日における所有者を納税義務者として、その更地価格に着目して、課税することになる。 そうであるとすると、その課税標準又は算定基礎となる土地の「適正な時価」とは、「時価」の一般的概念に照らしても、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値(客観的時価)をいうものと解すべきである。 (2) そうだとすれば、七割評価通達を契機として平成六年度の評価替えの際に本件各土地の登録価格が引き上げられたとしても、通達の内容が法令の正しい解釈に合 客観的時価)をいうものと解すべきである。 (2) そうだとすれば、七割評価通達を契機として平成六年度の評価替えの際に本件各土地の登録価格が引き上げられたとしても、通達の内容が法令の正しい解釈に合致するものである以上、本件各土地の登録価格の決定は法令の根拠に基づいてなされた適法なものであることは明らかである。 (三) 租税法律主義に違反しないこと(1) 原告は、本件土地の価格を東京都知事が決定するにあたり、法律ではなく通達に基づいて評価額が引き上げられたことは租税法律主義に違反すると主張する。 (2) しかしながら、そもそも法は固定資産税評価額を「適正な時価」すなわち地価公示価格(これはおおむね時価と理解される。)とほぼ一致させることまで許容しているというべきであり、そうだとすれば、七割評価通達を契機として平成六年度の評価替えの際に本件土地の固定資産税評価額が引上げられたとしても、通達の内容が法令の正しい解釈に合致するものである以上、本件土地の登録価格の決定が法令の根拠に基づいてなされた適法なものであることは明らかである。 (四) 二割評価の慣習法・先例法の不存在(1) また、原告は、たとえ法律に通達の内容が合致するとしても、固定資産税について従来長年にわたり認識され行われてきた「適正な時価」の概念は慣習法または先例法になっているから、通達に基づいて評価額が引き上げられれば租税法律主義に違反することに相違はないと主張する。 (2) しかし、国民に納税義務を定める租税法においてそもそも事実たる慣習の成立を認める余地はないうえ、地価公示価格と固定資産税評価額の割合は一定していないのであるから、原告の主張するような慣習法・先例法そのものが成立しているかはきわめて疑問である。 (3) しかも、仮に慣習法・先例法の成立する余地があるとしても、国民 産税評価額の割合は一定していないのであるから、原告の主張するような慣習法・先例法そのものが成立しているかはきわめて疑問である。 (3) しかも、仮に慣習法・先例法の成立する余地があるとしても、国民の信頼は税額に関して醸成されるものであるから、その対象はあくまで税額につきるのであり、評価額そのものではないというべきである。 (五) a鑑定の合理性(1) a鑑定は、当該地域に精通して、経験豊富な不動産鑑定士が、各事例の取引事情も十分に補正して評価したものであり、適正な時価というべきである。 (2) これに対し、原告は、a鑑定が、東京都基準地の地価調査価格に規準して評価額を鑑定しているところ、公的価格は信頼できないから、a鑑定は妥当性を欠くと主張する。 しかし、地価公示価格は、理論的に「正常な価格」を公示するだけでなく、不動産鑑定評価額の基礎となる等、実際の価格の規準となるべき価格であり、固定資産の評価額を算定するに当たり、不動産鑑定評価額と同様に、右公示価格を直接又は間接に活用して、本件土地の固定資産税評価額を算出する方法を採ることは正当というべきである。 そして、東京都地価調査価格(基準地価格)も、地価公示価格を規準に決定される価格であり、不動産鑑定を行う上で公示価格と並んで規準すべき価格であるから、固定資産の評価額を算定するに当たり、不動産鑑定評価額と同様に、右基準地価格を直接又は間接に活用して、本件土地の固定資産税評価額を算出する方法を採ることは正当である。 (3) また、原告は、a鑑定は、時価の極端に高い時期のサンプルを調査しており、本件土地との類似性もないと主張する。 しかし、一般に時点修正率を求めるに当たっては地価公示価格の変動率、都道府県地価調査価格、不動産研究所の指数の三つの指数を標準とするものであるから、原告の主張 本件土地との類似性もないと主張する。 しかし、一般に時点修正率を求めるに当たっては地価公示価格の変動率、都道府県地価調査価格、不動産研究所の指数の三つの指数を標準とするものであるから、原告の主張は失当である。 また、地域の格差については、売買取引事例が非常に少ない経済状況の下では、鑑定の根拠を探すために取引事例収集の範囲を拡大せざるを得ないから、場合によっては遠隔地のものも入ることがあり、東京の中では類似地域は必ずしも少なくないことから、事例収集の範囲はかなり広範囲に求めてもよいこと、一般的な類似地域というと、およそ格差率が三、四割の範囲内をいうとされるが、取引事例が少ない場合にはこれがさらに拡大してもやむを得ないことから、原告の主張は失当である。 2 本件各土地の客観的時価についての原告の主張について(一) 固定資産税評価額における「適正な時価」の意義(1) 原告は、固定資産税評価における「適正な時価」とは収益還元価値であり、被告が本件評価替えにおいて、収益還元価値ではなく、取引価格の指標とされる地価公示価格に基づいて評価を行っていることは法の解釈を誤ったものである旨主張する。 (2) しかし、そもそも固定資産税評価額における「適正な時価」が、原告の主張するように「収益還元価格」か疑問である。すなわち、収益還元法は、数字が駆使されるので、一見精緻にみえるが、我が国では普遍的な手法が確立しているわけではなく、さらに、賃貸不動産を想定した場合には、建築価格、賃料収入、空室率、適用利回り等の変動要素が多く、これらについては厳しい見方をするので、収益還元価格は低めになりやすいからである。また、賃料は、売買価格に比べて、当事者間の種々の事情により相違が生じやすく適正な賃料を算定することが容易でないこと、賃料は売買価格に比べて遅効性が認めら 収益還元価格は低めになりやすいからである。また、賃料は、売買価格に比べて、当事者間の種々の事情により相違が生じやすく適正な賃料を算定することが容易でないこと、賃料は売買価格に比べて遅効性が認められること、還元利回りを何パーセントとするかにより、結論が大きく相違することになるが、その算定は論者によって異なり、確実な方法は確立していないこと、土地の価格は収益価格のみによって形成されるものではなく、その他の種々の要因が総合して形成されることからすれば、収益還元法が客観性を有する唯一の確実な時価算定方法とはいい難い。 また、標準宅地(本件土地1)の価額を評価するに当たり、鑑定評価価格を参考に決定しており、不動産鑑定評価基準によれば、原則として、原価法、取引事例比較法及び収益還元法を併用して総合的に考慮することとされている。 そして、標準宅地の価額を評価するに当たり、右不動産鑑定評価基準に従った鑑定評価価格を参考に決定しているのであるから、固定資産税評価額にも収益還元価格が反映されているというべきである。 (3) また、評価基準によれば、地上権・借地権等が設定されている土地の評価については、「これらの権利が設定されていない土地として評価するものとする」(第一章第一節三)と規定されており、また、固定資産税は、固定資産税評価額を原則として課税標準とするものであって、これらの資産の所有者に課するものである(法三四三条一項)から、その性質は資産の所有という事実に着目して課税される財産税であって、資産より生ずる収益に着目して課税される収得税とは異なるのであり、法は、三四一条五号において、固定資産税における価格とは「適正な時価」をいうと規定しているところ、右「適正な時価」とは、現実の売買実例価額から不正常な要素に基づく価額を除去してえられる価格、すなわ 、法は、三四一条五号において、固定資産税における価格とは「適正な時価」をいうと規定しているところ、右「適正な時価」とは、現実の売買実例価額から不正常な要素に基づく価額を除去してえられる価格、すなわち、正常な条件の下において成立する取引価格をいうものと解すべきである。 したがって、法は資産が土地の場合には、土地の所有という事実に着目して課税するのであり、個々の所有者が現実に土地から収益を得ているか否か、収益の帰属が何人にあるかを問わないというべきである。 (4) してみると、当該土地からの収益が期待するほど上がらないため、仮に原告の主張するように投下資本の回収が困難になる結果が生じても、このことをもって、土地の評価が適正を欠くということはできないというべきである。 (二) 評価基準に法的拘束力があること(1) 法は、固定資産税に関して、昭和三七年三月三一日法律第五一号地方税法の一部を改正する法律(以下「昭和三七年改正法」という。)において、右改正前の法四〇三条一項が「市町村長は、(略)自治大臣が示した評価の基準並びに評価の実施方法及び手続に『準じて』、固定資産の価格を決定しなければならない。」としていたものを、「市町村長は、(略)第三八八条第一項の固定資産評価基準に『よって』、固定資産の価格を決定しなければならない。」と改正した。 これは、①改正前の固定資産評価基準が市町村長に対する一つの参考にすぎないと理解されていたため、市町村の固定資産の評価が地域によりまちまちとなっていたところ、評価方法が各市町村において異なるようでは納税者間の公平を期すことができないため、固定資産の評価の均衡を図る必要があること、②処分庁が短期間に大量の固定資産について個別に評価することは現実的に極めて困難なため、評価事務の簡便さを図る必要が生ずることより、両 ことができないため、固定資産の評価の均衡を図る必要があること、②処分庁が短期間に大量の固定資産について個別に評価することは現実的に極めて困難なため、評価事務の簡便さを図る必要が生ずることより、両者の要請を調整すべく、自治大臣に評価基準の定立を委任したのである。 そうであるとすると、条文の文理解釈及び右立法趣旨からして、評価基準に依拠することが不可欠であり、法的拘束力が認められるべきである。 右結論は、昭和三七年改正法が、法三八八条一項として「自治大臣は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)を定め、これを告示しなければならない。」とする規定を新たに設け、右規定を受けて、従来は自治事務次官の依命通達によっていた評価基準を告示することに変更したことからも明らかである。なぜなら、改正の結果、評価基準は、通達とは異なり、法令と同様に官報に掲載されて、一般に告知されることになったからである。 (2) 以上によれば、昭和三七年の法改正後は、評価基準と異なる評価方法を採用することは許されなくなったのであり、市町村長は、評価基準に従った評価をなすべく義務づけられているものと解するのが相当である。 (3) これに対し、原告は、個別の不動産鑑定に基づき固定資産税における評価額を決定すべきであると主張するけれども、右のとおり、市町村長は、評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならないとされているところ、被告が採用した市街地宅地評価法は、まさに評価基準に規定された評価方法にほかならないから、原告の主張するような評価基準とは異なる独自の方法によって評価することは許されないというべきである。 また、土地自体を直接鑑定の対象とすると、状況類似地区内の評価に著しい不均衡をもたらしかねず、妥当性を欠き、短期 な評価基準とは異なる独自の方法によって評価することは許されないというべきである。 また、土地自体を直接鑑定の対象とすると、状況類似地区内の評価に著しい不均衡をもたらしかねず、妥当性を欠き、短期間に大量の土地評価が求められる固定資産税において、個別鑑定による評価を認めると、その鑑定の合理性の検証に多大な労力を要することとなり、結果として、税務行政に多大の支障を生ずることからも、個別の鑑定に基づいて土地の評価をすることは許されないというべきである。 (三) 建付地において、土地のみでの評価がされるべきではないとの主張について日本においては、海外と異なり土地と建物は、個別に権利の対象となるものであり、また、評価基準に法的拘束力があることは前記のとおりであるから、建付地であったとしても、土地のみでの評価がなされるべきであり、原告の主張は失当である。 (四) b鑑定について不動産鑑定士は、対象土地の適正な時価を評価するに当たり、鑑定評価書の中で鑑定評価額を明示することにより、自らの評価を明らかにするのが原則であるにもかかわらず、b鑑定は、こうした形式に基づかず、かつ押印もなされていないものであって、また、その内容も対象地に関する記述は僅かであって、その解説も、独自の理論を展開し、数多くの想定モデルの収支計算表を織り込み、可能な限り分量を増やしたものであり、不動産鑑定評価基準に基づくものでないのであるから、一不動産鑑定士の独自の文書にすぎない。 また、鑑定評価の時点をみても、a鑑定が価格時点と七箇月の差しかないのに対し、b鑑定は六年以上の差があり、当時の社会経済情勢、不動産市況等を踏まえているとはいい難く、四四の取引事例を取り上げながら、地価が大幅に下落した後の最近の七事例を採用しているにすぎず、公正とはいい難いし、個別的要因の格差率 り、当時の社会経済情勢、不動産市況等を踏まえているとはいい難く、四四の取引事例を取り上げながら、地価が大幅に下落した後の最近の七事例を採用しているにすぎず、公正とはいい難いし、個別的要因の格差率が一律に四パーセントである等、明らかに合理性を欠くものである。 したがって、b鑑定の結果が、適正な時価であるとの原告の主張は失当である。 五争点以上によれば、本件の争点は、以下の各点にある。 1 固定資産評価における適正な時価の意義 (争点1) 2 評価基準による評価の法的拘束力の有無 (争点2) 3 時点修正通知に基づく本件各土地の評価の適法性の有無 (争点3) 4 七割評価通達に基づく本件各土地の評価の適法性の有無 (争点4) 5 建付地の評価方法について (争点5) 6 評価基準等の一般的合理性の有無 (争点6) 7 本件各土地の評価についての個別的違法の有無 (争点7) 8 原告による時価立証の成否 (争点8)第三当裁判所の判断一争点1ないし4について 1 「適正な時価」の意義固定資産税は、固定資産課税台帳に登録された固定資産の価格を課税標準とすることを原則として(法三四九条一項、三四九条の二)、固定資産の所有者(質権又は百年より永い存続期間の定のある地上権の目的である土地については、その質権者又は地上権者とする。以下同じ。)に対し(法三四三条一項)、資産の所有という事実に着目して課税される財産税であり、資産が土地の場合には、土地の所有という事実そのものに着目して課税するのであって、原則として、個々の所有者が現実に土地から収益を得ているか否か、土地が用益権又は担保権の目的となっているか否か、収益の帰属が何人にあるかを問わず、賦課 いう事実そのものに着目して課税するのであって、原則として、個々の所有者が現実に土地から収益を得ているか否か、土地が用益権又は担保権の目的となっているか否か、収益の帰属が何人にあるかを問わず、賦課期日における所有者に対し、課税されるものである。 そして、このような固定資産税の性質からすると、その課税標準又はその算定基礎となる土地の「適正な時価」(法三四一条五号)とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値(以下、これを「客観的時価」という。)をいうものと解すべきである。 これに対し、固定資産税が固定資産の所有者の担税能力を考慮した人税的、収益税的なものと解すべきであるとした上で、当該土地の取引価格ではなく、当該土地が通常使用される状態において生み出す収益をもって、その課税標準であるとする見解もあり得るところである。しかし、法が、固定資産税の課税標準を「適正な時価」としているところ、通常、「時価」とは、正常な取引条件の下に実現される所定の時点における取引価格を意味すること、固定資産税の賦課徴収に当たって、収益税的性格を配慮させる必要があるとしても、法は、課税標準又はその算定基礎となるべき価格を「適正な時価」、すなわち、正常取引価格とした上で、税率の決定又は課税標準若しくは税額の調整によって、固定資産税の性格に応じた適正な課税を実現しようとしているものと解されることからすれば、固定資産税を収益税的性格を有するものと解した上で、「適正な時価」について、客観的な交換価値とは異なる概念を措定すべきものとは解されないというべきである。 また、地価公示法は、適正な地価の形成に寄与することを目的として、標準地を選定し、その正常な価格を公示するものとし(同法一条)、「正常な価格」とは、土地について、自由な取引が行わ うべきである。 また、地価公示法は、適正な地価の形成に寄与することを目的として、標準地を選定し、その正常な価格を公示するものとし(同法一条)、「正常な価格」とは、土地について、自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格をいうと規定しているところ(同法二条二項)、「適正な時価」の概念を右のように解すると、「適正な時価」と「正常な価格」とは近似する価格ということができる。 これに対し、固定資産税における土地評価と地価公示価格との間には、本質的に、通常使用を前提とするか、最有効使用を前提とするかの違いがあり、これを同一視することはできないとする見解もあるが、正常な条件の下における取引価格とする以上に、さらに、目的による区分をすることは困難である。 さらに、固定資産税における土地評価においては、地価上昇に対する合理的期待要素を排除した「正常売買価格」をもって評価額とすべきであるのに対し、地価公示価格においては、地価の上昇に対する期待等の要素を排除し得ないものであるから、かかる不正常要素の評価の点において、両者は異なる性質を有するとの見解もあるが、不動産鑑定評価基準における正常価格あるいは地価公示価格と異なり、固定資産税においては、合理的期待という要因を排除することを法が定めたものと解すべき法文上の根拠は見出し難く、正常な条件のもとにおける取引価格、すなわち、正常価格をもって、「適正な時価」と解すべきである。また、このような解釈は、昭和三六年三月三〇日になされた固定資産評価制度調査会における答申においても、時価とは、正常な条件のもとにおける取引価格とされていたことからも裏付けられるものである。また、仮に、地価の上昇に対する合理的期待について排除すべきであると解したとしても、平成六年当時と同様に下落局 時価とは、正常な条件のもとにおける取引価格とされていたことからも裏付けられるものである。また、仮に、地価の上昇に対する合理的期待について排除すべきであると解したとしても、平成六年当時と同様に下落局面にあるときについては、このような不正常要素は、地価上昇期に比してはるかに減少し、地価公示価格と固定資産税における土地評価額とは近接すベき傾向にあったと考えられるから、その結論を左右するものではないというべきである。 2 「適正な時価」の算定基準日(一) 法は、土地課税台帳に登録すべき価格を基準年度に係る賦課期日における価格としているのであるから(法三四九条一項)、右登録価格は、賦課期日である当該年度の初日の属する年の一月一日(本件では、平成六年一月一日)時点を基準日として、同日における客観的時価とすべきであって、これと異なる時点における客観的時価をもって賦課期日における価格とみなすことは許されないというべきである。 (二) ところで、法は、市町村長の価格決定は、毎年二月末日までに行うべきものとしている(法四一〇条)ところ、右の価格決定の作業に従事し得る人的資源には限りがあるのに対して、課税対象となる固定資産が極めて大量に存在することからすれば、前記の賦課期日において価格調査を行った上で、その後の二箇月間のうちに「適正な時価」を算定する諸手続を完了することは、実際上困難であり、法が、賦課期日における価格算定の資料とするための標準宅地等の価格評定について、賦課期日からこれらの評価事務に要する相当な期間をさかのぼった時点を「価格調査の基準日」としてこれを実施することを禁じていると解すべき根拠も見当たらないことからすれば、価格調査の基準日が賦課期日の一年半前であったとしても違法とはいえないというべきである。 (三) しかしながら、土地課税台帳に登録 実施することを禁じていると解すべき根拠も見当たらないことからすれば、価格調査の基準日が賦課期日の一年半前であったとしても違法とはいえないというべきである。 (三) しかしながら、土地課税台帳に登録すべき価格は、前記のとおり、あくまで賦課期日である当該年度の初日の属する年の一月一日における客観的時価であるから、右の調査結果に基づいて、賦課期日における客観的時価を算定するに当たっては、その間の時点修正を行うべき必要があることは当然である。 なお、自治省税務局資産評価室長が発した時点修正通知は、標準宅地の評価額を価格調査基準日のそれに固定するのではなく、時点修正を行うべき旨の技術的援助と解され、これによって、さらに賦課期日までの時点修正を行うべき必要性を否定する趣旨のものとは解されない。 (四) 以上によれば、本件決定においては、一年前の平成五年一月一日の高い時価をもって賦課期日の時価にすり替え、賦課期日を誤った違法があるとの原告の主張は採用できない。 3 評価基準による評価と客観的時価との関係適正な時価の意義を前記のように解すると、土地の適正な時価の算定は、鑑定評価理論に従って個々の土地について個別的、具体的に鑑定評価することが最も正確な方法ということになる。 しかし、課税対象となる土地は極めて大量に存在することから、限りある人的資源により、時間的制約の下で、右のような評価を実施することが困難であることは明らかである。 そこで、法は、これらの諸制約の下における評価方法を自治大臣の定める評価基準によらしめることとし、併せて、極めて大量の固定資産について反復、継続的に実施される評価について、各市町村の評価の均衡を確保するとともに、評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消しようとしているものということができる。 もっとも、右の について反復、継続的に実施される評価について、各市町村の評価の均衡を確保するとともに、評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消しようとしているものということができる。 もっとも、右の評価基準は、各筆の土地を個別評価することなく、諸制約の下において大量の土地について可及的に適正な時価を評価する技術的方法と基準を規定するものであり、宅地評価についてみれば、個別鑑定と同様の方法で標準宅地の客観的時価を算定し、価格形成要因の主要なものに関する補正等を加えて、対象土地の価格を比準評定するものであって、宅地の価格に影響を及ぼすべきすべての事項を網羅するものではないから、標準宅地の評定及び評価基準による比準の手続に過誤がないとしても、個別的な評価と同様の正確性を有しないことは制度上やむを得ないものというべきであり、評価基準による評価と客観的時価とが一致しない場合が生ずることも当然に予定されているものというべきである。 4 七割評価通達に基づく本件各土地の評価の適法性について(一) そして、このように、評価基準等による評価方法には誤差が生じるおそれがあることからすれば、少なくとも評価額が客観的時価を超えるという事態が生じないように、あらかじめ減額した数値をもって計算の基礎となる標準宅地の「適正な時価」として扱うことは合理的な方法というべきであり、また、評価手続上、賦課期日の時価が予測値にならざるを得ず、地価が下落する可能性も排除できないことに照らしても、課税標準の特例以外であっても一般的な負担軽減方法として「適正な時価」をあらかじめ控え目に評定することも、固定資産の価格を当該固定資産の「適正な時価」と定めた法の趣旨に反しない限度で許されるものというべきである。 (二) したがって、その意味では、公示価格の算定と同様の方法で評価した標準宅 ることも、固定資産の価格を当該固定資産の「適正な時価」と定めた法の趣旨に反しない限度で許されるものというべきである。 (二) したがって、その意味では、公示価格の算定と同様の方法で評価した標準宅地の価格のおよそ七割をもって、その適正な時価として扱うことも、法が禁ずるものではなく、右のような趣旨において七割評価通達には合理性が認められ、これに従った評価を行ったことには違法はないというべきである。 (三) また、固定資産税は、土地の所有という事実に着目して課税されるものであって、個々の具体的な収益に着目して課税されるものでないことは前述のとおりであり、七割評価通達の本来の趣旨が賦課期日までの時点修正を目的とするものではないとしても、評価基準を適用し、七割評価による修正を経て算定された価格が賦課期日における客観的時価を上回らない限り、この点で、固定資産評価審査委員会が行った決定に違法があるとはいえないというべきである。 (四) これに対し、原告は、七割評価通達によって大幅な評価割合の引上げを行うことは憲法の租税条例主義に違反するので許されないと主張する。 しかし、従前の評価額が時価に比して著しく低額であったとしても、そのような低い価格をもって法及び評価基準の前提とする「適正な時価」であると解することができないことは既に説示したとおりであるから、七割評価通達に従った結果、評価額が従前の評価額を上回ることとなったとしても、この点をとらえて、租税条例主義に違反するとは解されない。 (五) 原告は、これまで不動産の固定資産税の評価として行われてきた評価方法は、租税先例法又は租税慣習法として確立していたから、これを納税者の不利益に変更する場合、納税者の同意(法律による変更)が必要であるのに、これがないと主張する。 しかし、客観的時価に比して著しく低 は、租税先例法又は租税慣習法として確立していたから、これを納税者の不利益に変更する場合、納税者の同意(法律による変更)が必要であるのに、これがないと主張する。 しかし、客観的時価に比して著しく低い価格をもって適正な時価とすべきことが社会一般の規範的意識となる程に慣習化していたと認めるに足りる証拠はないから、原告の右主張はその前提を欠くものというべきである。 5 以上によれば、登録価格の違法に関する判断は、①評価方法の選定、標準宅地の選定、標準宅地の価格と基準宅地の価格との均衡及び標準宅地の評価額から対象土地への比準の方式が評価基準及び市町村長の補正に関する基準(取扱要領等)に従ったものであるかどうか(基準適合性)、②右評価基準等が一般的に合理性を有するかどうか(基準の一般的合理性)、③評価基準による評価の基礎となる数値、すなわち、標準宅地の価格が賦課期日における適正な時価であるかどうか(標準宅地の価額の適正さ)が審理されべきことになる。 しかし、このような評価方法は、一定の期間内に限られた人的資源をもって、極めて大量に存在する課税対象土地の評価を遂げなければならないという制約の下で可及的に「適正な時価」に接近するための方法として許容されているものであり、登録価格が賦課期日における対象土地の客観的時価を上回ることまでも許容するものではないから、仮に、一般的合理性を有すると認められる評価基準等に適合する評価をしたとしても、その結果としての登録価格が賦課期日における対象土地の客観的時価を上回ることが立証されたときは、その限度で登録価格の決定は違法になるというべきである。 この意味において、評価基準による評価には、法的拘束力があるとの被告の主張は採用することができない。 そこで、前記(1)ないし(3)の事由が立証されたとしても、結果とし になるというべきである。 この意味において、評価基準による評価には、法的拘束力があるとの被告の主張は採用することができない。 そこで、前記(1)ないし(3)の事由が立証されたとしても、結果としての登録価格が賦課期日における対象土地の客観的時価を上回ることを原告が立証した場合には、当該決定は違法というべきである。 二争点5について 1 原告は、本件各土地はその土地上に建物が建築されているものであるところ、我が国において、建物とその敷地は、一体的に取り引きされるのが通常であるから、そのような土地の客観的時価は、更地として評価すべきではなく、「建物の敷地としての土地」として評価しなければならないと主張する。 2 しかし、我が国においては、土地及びその土地上の家屋といえども、別個に所有の対象となるものであって、法も、これを前提として、固定資産税の対象となる固定資産として、土地、家屋及び償却資産を挙げ、土地、家屋及び償却資産を個別に固定資産税の課税客体とし、その個別の土地、家屋及び償却資産の適正な時価、すなわち、客観的交換価値を登録した価格を課税標準とするものと解される。そうすると、当該土地上に建物が建築されている場合であっても、当該土地の価値は当該土地上の建物の存在を所与の前提として評価すべきものとは解されない。 3 なお、甲一九には、本件各土地は、貸家建付地であるところ、かかる土地の時価については、相続税法における財産評価に除しては、その宅地の自用地としての価格から、その宅地に係る借地権の割合と借家権の割合の相乗積を右自用地としての価格に乗じて計算した価格を控除した価格によって評価されており、固定資産税においても、右の方法によって評価すべきであるとの記載がある。しかし、固定資産税は、資産の所有という事実に着目して課税される財産税であって、 算した価格を控除した価格によって評価されており、固定資産税においても、右の方法によって評価すべきであるとの記載がある。しかし、固定資産税は、資産の所有という事実に着目して課税される財産税であって、当該固定資産の価値、すなわち、固定資産の適正な時価を課税標準とし、これを原則として当該固定資産の所有者に課することとしたものと解されることは、前記のとおりであり、相続税とは、その性格を異にする面があるから、相続税の場合と、財産の評価の仕方に差異が生じたとしても、不合理であるとはいえない。 三争点6について 1 評価基準第1章第3節によれば、本件各土地のように主として市街地的形態を形成する地域における宅地については、市街地宅地評価法によって評価する旨が定められている。 この評価法は、いわゆる路線価方式による評価法であるが、路線価方式は、大量の宅地を短期間に相互の均衡を考慮しながら評価する方法として使用できるものと一般に解されており、評価基準において路線価方式を採用したことには一般的な合理性があるということができる。 2 また、評価基準は、市街地宅地評価法における各街路の路線価は、売買実例価額を基礎として、街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便等及び各街路の路線価の均衡等を総合的に考慮して決める旨定めているが、右のような方法は鑑定評価の方法として不相当なものではなく、客観的時価への接近方法として合理性を有するものということができ、評価基準の定める画地計算法についても、宅地を評価する基準・方法として合理性を欠くという事情も見当たらない。 さらに、東京都特別区においては、前記第二の二4のとおり、取扱要領及び比準表を定めているが、証拠(乙六)及び弁論の全趣旨によれば、取扱要領及び比準表は、評価基準に従ってより具体 も見当たらない。 さらに、東京都特別区においては、前記第二の二4のとおり、取扱要領及び比準表を定めているが、証拠(乙六)及び弁論の全趣旨によれば、取扱要領及び比準表は、評価基準に従ってより具体的に価格の算定方法を規定したものと認められ、宅地を評価する基準・方法として合理性を欠くといった事情は認められない。 なお、取扱要領付表1の奥行価格補正率による評価の合理性は、後記三4に記載のとおりである。 3 したがって、評価基準における市街地宅地評価法は、全体として「適正な時価」への接近方法として合理的であって、法の委任の趣旨に従ったものであるということができ、また、取扱要領及び比準表の定めも、全体として客観的時価への接近方法として合理性を有するものということができる。 四争点7について 1 標準宅地(本件土地1)の鑑定評価の合理性について(一) 証拠(乙一五、同二一)によれば、以下の事実が認められる。 (1) 本件各土地に係る標準宅地は、本件土地1であったところ、不動産鑑定士aが、固定資産税標準宅地の評価額算定の基礎資料とするため、価格時点を平成四年七月一日とし、当該宅地上に建物等が存在する場合には建物等がなく、かつ使用収益を制約する権利の付着していないものという条件で、本件土地1の更地としての正常価格を鑑定した(a鑑定)。なお、右評価は、平成五年二月一七日に行われている。 (2) 右鑑定評価に係る評価書によれば、a鑑定の過程は次のとおりであった。 ア a鑑定は、取引事例比較法、収益還元法(直接法)に基づく試算価格を算出したうえで、さらに、千代田5―6の基準地の基準価格に時点修正、個別的要因の標準化補正、地域格差の補正を行って導いた比準価格を考慮して、その調整を行い、標準価格を決定するとの手法を採った。 取引事例比較法に基づく試算に際して ―6の基準地の基準価格に時点修正、個別的要因の標準化補正、地域格差の補正を行って導いた比準価格を考慮して、その調整を行い、標準価格を決定するとの手法を採った。 取引事例比較法に基づく試算に際しては、千代田区α、同区βにおける平成三年一二月又は平成四年一月の三取引事例を参考として、これに事情補正、時点修正、建付減価の補正、事例地の個別的要因の標準化補正、地域格差の補正を行い、右によって求めた価格に多少の開差が生じたが、各資料の精度、規範性等に甲乙つけ難く補修正も適切に行われていると認められるため、各試算価格の中庸値を試算価格とした。右の価格は、一〇一〇万円(一平方メートル当たり)となった。 一方、収益還元法に基づく試算に際しては、支払賃料と運用益を算定して総収益を求め、これから総費用を算定して総収益を求め、建物に帰属する純収益をさらに控除した結果を還元利回り三・〇〇パーセントで除した。右の収益価格は、五七五万円(一平方メートル当たり)となった。 なお、既成市街地内宅地であることから、原価法による積算価格を求めることはできなかった。 さらに、a鑑定においては、基準地(千代田5―6)の平成四年七月時点の基準価格一二〇〇万円(一平方メートル当たり)に時点修正(ただし一・〇〇)、個別的要因の標準化補正(ただし、一・〇〇)、地域格差の補正(環境条件の相違からマイナス三二パーセント)を行い、比準価格九〇九万円(一平方メートル当たり)を求めた。 イ試算価格の調整に際しては、取引事例比較法に基づく試算価格と収益還元法に基づく試算価格との間に開差が生じたが、前者は近隣地域ないし同一需給圏内の類似地城にある信頼性の高い取引事例を選択し、この取引事例を実査のうえ、地域要因及び個別的要因について的確に判断し求めた価格であり、また、後者も、同一需給圏内の 、前者は近隣地域ないし同一需給圏内の類似地城にある信頼性の高い取引事例を選択し、この取引事例を実査のうえ、地域要因及び個別的要因について的確に判断し求めた価格であり、また、後者も、同一需給圏内の類似地域の賃貸事例を参考にして直接法で求めた価格であり、この地域における賃料水準としても標準的で、採用した還元利回りも適正であり、理論的には妥当な価格であると判断されることから、これらを相互に関連づけて、前者にやや重点を置き、さらに、基準地を規準として求めた前記の比準価格との均衡にも留意して、標準的画地の標準価格を九一〇万円(一平方メートル当たり)と決定した。 (3) 右の認定事実によると、標準宅地の適正な時価の算定の根拠とした、その平成四年七月一日時点の価額は、aの行った鑑定評価に基づくものであるところ、同人は、土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利の経済的価値を判定し、その結果を価額に表示することを業とする不動産鑑定士(不動産の鑑定評価に関する法律二条参照)であって、かつ、その評価方法は、取引事例比較法、収益還元法に基づく試算価格を算出したうえ、基準地価格をも考慮して、その調整を図り、標準価格を算定し、これを基にして評価対象地の価格を算定するというものであり、土地の正常価格算定の手法として合理的であると認められ、そのほかの鑑定の過程及び内容に不合理と認められる点も存しないものというべきであるから、a鑑定の求めた前記の標準的画地の標準価格は、適正というべきである。 (二) これに対し、原告は、不動産は、流動性の乏しい商品であり、その結果、適正な市場がなく、元来適正な時価を決定することが困難であるから、不動産の評価は、最も安定的な指標である収益に基づいて決定されるべきであると主張する。 しかし、土地の適正な時価を把握するに際して、取 適正な市場がなく、元来適正な時価を決定することが困難であるから、不動産の評価は、最も安定的な指標である収益に基づいて決定されるべきであると主張する。 しかし、土地の適正な時価を把握するに際して、取引事例を基準として評価する方法は、その把握が比較的容易であり、かつ、過大又は不均衡な評価が行われた場合には比較的容易に察知することができることなどから、妥当な基準と考えられており、これに加えて、a鑑定は、土地の代表的評価手法の一つである収益還元法に基づいて算定した収益還元価格をも考慮して、本件土地1の鑑定価格を算出しているのであるから、a鑑定が、その手法の点において、不合理であるということはできない。原告は、右は、単に公示価格の七割に合わせたにすぎないとも主張するが、これを裏付けるに足る的確な証拠はない。 また、原告は、収益還元法に基づく価格のみに依拠すべきであるかのように主張するが、不動産鑑定評価において採用されるどの手法についても、長所短所が存するのであって、収益還元法についても、その客観性を保つことには困難が伴うことは指摘されているところであり、右の指摘も、各手法に基づく試算の結果を総合的に考慮したa鑑定の合理性を左右するものではない。 (三) また、原告は、a鑑定では、取引事例比較法が採用されているが、その取引時点は、平成三年一二月から平成四年一月という時価の極端に高い時期の取引事例を調査したというにすぎず、その時点修正率も不十分であり、また、その存在区域、面積、形状等の点において、類似性はなく、売主及び買主から売買実例価額を聴取した形跡もないのであるから、本件においては、取引事例比較法を採用することはできないと主張する。 しかし、a鑑定において採用されている各取引事例の右の取引時点と、価格時点である平成四年七月一日との時間的間隔は いのであるから、本件においては、取引事例比較法を採用することはできないと主張する。 しかし、a鑑定において採用されている各取引事例の右の取引時点と、価格時点である平成四年七月一日との時間的間隔は、必ずしも大きなものとは考えられないし、その時点修正が適正であれば、その合理性を左右するものではないところ、a鑑定は、価格時点との間の約半年の時点修正率をマイナス一〇パーセントとしており、かつ、千代田5―14の地価公示地及び千代田5―15の地価公示地の平成四年一月一日から平成五年一月一日までの下落率がそれぞれ二一・九パーセント、二〇・一パーセントであり、千代田(都)5―6の基準地及び千代田(都)5―21の基準地の平成三年七月一日から平成四年七月一日までの下落率がそれぞれ二〇・〇パーセント、一三・七パーセントであったこと(乙二一)からすると、a鑑定の採用した下落率が過小であるとも認められない。 また、原告は、取引事例地と本件土地1の類似性がないと主張するが、各取引事例の所在地は、本件土地1の近傍に位置すると認められ、また、b鑑定において採用された取引事例の所在地と比較しても、補正をすることも困難になるというほどに、地域としての類似性を失っているものとは解されないところであり、その他、これを窺わせる証拠もない。 そのほか、原告の主張するところは、a鑑定が、各資料の精度、補修正の適切さを挙げているところであるから、これを採用することはできない。 (四) 原告は、a鑑定の行った収益還元法に基づく資産価格の算定について、①収益還元法において採用されている賃料に平成四年七月一日時点における「オフィスビル新規賃料」を用いることは、不適切であり、継続賃料を用いるべきである、②a鑑定は、純収益の計算書が提出されておらず、その客観性が何ら証明されていない、③a 平成四年七月一日時点における「オフィスビル新規賃料」を用いることは、不適切であり、継続賃料を用いるべきである、②a鑑定は、純収益の計算書が提出されておらず、その客観性が何ら証明されていない、③a鑑定において採用された還元利回りは、同時期の十年ものの国債(元本保証)の利回りが、年率三・二七六パーセントであったことを考えても、あまりに過小であって、経済の実勢を反映しておらず、不適切であると主張する。 しかし、総収益に係る部分をみれば、b鑑定のうち、同様に、平成四年七月一日を価格時点として更地評価をした地価公示旧方式(標準モデル)において採用されている総収益の額(二億七六三二万六一三〇円)とa鑑定の採用した総収益の額(一億九七三四万五〇〇〇円)とを比較すると、b鑑定が本件各土地を対象土地としていたことを考えても、a鑑定において採用された総収益の額が高いとまではいえないから、合理性があるというべきである。 また、a鑑定は還元利回りを三パーセントとしているところ、b鑑定においても触れられているように、本件価格時点当時においては、土地の永続性を前提として、土地の還元利回りは、一般的に三パーセントが採用されていたものであり、b鑑定においても、地価公示旧方式においては、三パーセントの還元利回りを採用しているところである。そうすると、a不動産鑑定士が、平成五年二月一七日時点において、当時の経済社会状況等を勘案した上で採用した還元利回り三パーセントが必ずしも不合理であるとまでは認め難い。 (五) この他に、原告は、a鑑定が、基準地との格差率を三二パーセントとしたことについて、その根拠が不明であるなどとも主張するが、a鑑定が、各資料の精度、補修正の適切さを挙げているところであるから、これを採用することはできない。 2 平成四年七月一日から平成五年一月一 たことについて、その根拠が不明であるなどとも主張するが、a鑑定が、各資料の精度、補修正の適切さを挙げているところであるから、これを採用することはできない。 2 平成四年七月一日から平成五年一月一日までの地価下落率について(一) さらに、a鑑定士は、平成四年七月一日から平成五年一月一日までの本件土地1に係る地価下落率を一四・三パーセントであるとするところ(乙八)、証拠(乙二一)によれば、a鑑定士が右のとおりに判定した根拠は、次のとおりである。 千代田5―14の地価公示地及び千代田5―15の地価公示地の平成四年一月一日から平成五年一月一日までの下落率は、それぞれ二一・九パーセント、二〇・一パーセントであり、千代田(都)5―6の基準地及び千代田(都)5―21の平成三年七月一日から平成四年七月一日までの下落率は、それぞれ二〇・〇パーセント、一三・七パーセントであった。 このうち、対象標準宅地(本件土地1)との価格牽連性が高いと判断される千代田(都)5―6を中心に、当時の地価がより下落を強める傾向であったことを考慮に入れ、価格変動率は六箇月でマイナス一四・三パーセントであると判断した。 (二) 右によれば、その判断過程には特段不合理な点は見当たらないものであり、各地価公示価格等の数値に照らしても、合理的であるというべきである。 3 平成五年一月一日から平成六年一月一日までの地価下落率について(一) 証拠(甲一九、乙一五、同一六の一ないし三、同一七の一ないし三、同一八ないし同二〇)によれば、以下の各事実が認められる。 (1)ア本件各土地の周辺(半径五〇〇メートル以内)において、平成五年度及び平成六年度に商業地の地価公示地点であった地点は、二地点(千代田5―14及び千代田5―15))存するところ、千代田5―14の平成五年一月一日時点の地価公示 〇〇メートル以内)において、平成五年度及び平成六年度に商業地の地価公示地点であった地点は、二地点(千代田5―14及び千代田5―15))存するところ、千代田5―14の平成五年一月一日時点の地価公示価格は一五〇〇万円であり、平成六年一月一日時点の地価公示価格は一〇七〇万円であった。千代田5―15の平成五年一月一日時点の地価公示価格は一一五〇万円であり、平成六年一月一日時点の地価公示価格は七九〇万円であった。右期間における下落率は、それぞれ二八・七パーセント、三一・三パーセントとなる。 イ平成九年度の固定資産税の価格評価に当たっては、本件各土地が標準宅地とされたところ、平成八年一月一日を価格時点とする本件各土地の鑑定価格の算定に際しては、地価公示地千代田5―15が、規準価格算定の基礎とされた。そして、その際は、地域格差は、三五パーセントとされている。 (2)アまた、a鑑定において、比準価格算定の基礎とされた千代田5―6の基準地価格は、平成五年一月一日から平成六年一月一日までの期間において、おおむね一〇三〇万円(平成四年七月一日時点の価格一二〇〇万円と平成五年七月一日時点の価格八六〇万円の中間値は同年一月一日時点のおおよその価格と推認される。)から七四〇万円(平成五年七月一日時点の価格八六〇万円と平成六年七月一日時点の価格六二〇万円の中間値は同年一月一日時点のおおよその価格と推認される。)まで約二八・二パーセント下落した。 イ a鑑定においては、千代田5―6の基準地と本件土地1の地域格差は三二パーセントとされている。 (二) 以上によれば、前記の千代田5―15の地価公示地と本件土地1との間には、相当の状況類似性があるものと認められるところ、右地価公示地の平成五年一月一日及び平成六年一月一日時点の地価公示価格に基づいて算定した平成五年一月一日 田5―15の地価公示地と本件土地1との間には、相当の状況類似性があるものと認められるところ、右地価公示地の平成五年一月一日及び平成六年一月一日時点の地価公示価格に基づいて算定した平成五年一月一日から平成六年一月一日までの地価下落率三一・三パーセントは一応の規範性を有するものというべきである。これに対し、前記の基準地価格を基にした約二八・二パーセントとの地価下落率については、平成四年七月一日から平成六年七月一日まで、地価が一定の割合で下落したことを前提とした平均値を算定したにすぎず、右基準地が状況の類似性において前記地価公示地(千代田5―15)よりも優れているともいえないこと、地価公示地(千代田5―14)は、本件土地1に近接しているものの、本件土地1との状況の類似性を認めるに足りる証拠がないことからすれば、なお、本件土地1の平成五年一月一日から平成六年一月一日までの地価下落率が三割を超えていなかったと断ずることは困難というべきである。 4 奥行価格補正率(一) 原告は、被告の用いる奥行価格補正率によると、奥行の深い、規模の大きい土地ほど評価が低くなるが、オフィスビルの賃料・保証金は、大規模なビルほど高いのであり、かかる補正率は現況に一致しないと主張する。 (二) ところで、奥行価格補正率、宅地の価格に影響を及ぼす諸要素のうち、画地の奥行の要素について考慮するものであり、宅地の価格は道路からの奥行が長くなるに従って漸減するものであるから、街路に接する画地についてその画地内の街路に近い部分の土地の価値はそれより遠い部分の価値に比較して路線に対する接近性が大きいだけ高いとの考え方によるものであり、さらに、その割合については、その用途により漸減する割合が異なり、標準画地の規模も異なると考えられることから、宅地の用途地区に係る区分に応じた補正率 近性が大きいだけ高いとの考え方によるものであり、さらに、その割合については、その用途により漸減する割合が異なり、標準画地の規模も異なると考えられることから、宅地の用途地区に係る区分に応じた補正率が定められているところであり、被告も、右の点を考慮して、取扱要領付表1において、奥行価格補正率表を定め、高度商業地区及び繁華街地区、普通商業地区、併用住宅地区及び料亭地区、高級住宅地区、普通住宅地区及び家内工業地区、中小工業地区、大工業地区並びにビル街区の六つに区分し、それぞれ、標準的な奥行距離については、補正率は一・〇〇とし、それよりも短いもの、長いものについてはいずれも価格を漸減させる補正率を定めている(甲一九、乙六)が、これらは、その目的及びその手法に照らして、合理的なものと認めることができる。 これに対し、一方で、右のとおり、その補正率が標準的な画地に係る奥行距離を基準とすることなどからすれば、用途地区によっては評価基準の附表は、実情とかい離を生じているから、土地利用の高度化、大規模化といった変化に伴う土地の利用、取引実情の変化に合わせて、見直しを行う必要があるとの指摘が、財団法人資産評価システム研究センターからなされている(乙一九)。 しかし、同センターの指摘は、特に、高度商業地区、繁華街など、大規模なビル建設がなされる地区についてのものであって、本件各土地が存在する普通商業地区についても同様な指摘が妥当するかどうかについては疑問の余地があり、かかる指摘が存在することをもって、普通商業地区についての取扱要領の定めが合理性を欠くとまではいうことができない。 (三) また、仮に、高度商業地区や繁華街に存する宅地の中に、実際に取引実情に即しない評価額となる宅地があったとしても、かかる土地が存在することのみをもって、普通商業地区に存する うことができない。 (三) また、仮に、高度商業地区や繁華街に存する宅地の中に、実際に取引実情に即しない評価額となる宅地があったとしても、かかる土地が存在することのみをもって、普通商業地区に存する本件各土地に係る登録価格の違法事由と解することもできない。 (四) したがって、原告の主張は理由がない。 5 奥行価格補正率の割戻しについて(一) 原告は、奥行価格補正率一・〇〇でない画地を標準宅地とした場合、路線価を計算するに際して、標準宅地の鑑定価格を、その土地の奥行価格補正率で割り戻さないと、奥行価格補正率を適用する前提が崩れると主張する。 (二) 主要な街路に付設する路線価は、当該標準宅地の適正な時価に基づき、仮に当該標準宅地の位置に画地計算法を適用する必要がない宅地があるものとした場合における当該宅地の単位地積当たりの適正な時価を算出し、これに基づいて付設するものとされている(評価基準第2章第3節(1)3(1))が、標準宅地に係る不動産鑑定士の鑑定評価の結果を活用して、標準宅地の時価を求め、これを基に主要な街路の路線価を付設する場合については、当該標準宅地が、奥行、間口、形状等の状況が当該地域において標準的といえないものとして鑑定評価された場合については、右鑑定の結果をそのまま採用することはできず、あくまでも、当該地域において標準的といえる画地としての価格による必要があることによるものと解される。しかし、a鑑定は、奥行価格補正を含め、個別的要因による補正の必要がないとの前提を採った上で、本件土地1の価格を鑑定しているのであるから、a鑑定の結果に基づいて路線価を付設するに際し、奥行価格補正率で割り戻す必要がないというべきである。そして、このことは、評価基準等によれば、奥行価格補正率による減価がなされるべきとされる場合についても、異ならな に基づいて路線価を付設するに際し、奥行価格補正率で割り戻す必要がないというべきである。そして、このことは、評価基準等によれば、奥行価格補正率による減価がなされるべきとされる場合についても、異ならないというべきである。 (三) したがって、原告の主張は理由がない。 6 また、被告による本件各土地の評価のうち、以上検討した各点以外の点については、弁論の全趣旨及び被告主張の評価算出過程に照らし、評価基準等に適合したものと認めることができる。 五争点8について1(一) 証拠(甲一六)によれば、平成一〇年一〇月一四日付けでなされたb鑑定の鑑定手法及び鑑定の内容を要約すれば、次のとおりであると認められる。 (1) 鑑定の対象土地本件各土地(2) 鑑定の目的平成四年七月一日、平成五年一月一日、平成六年一月一日の各時点における対象土地の土地価格について、複数の不動産鑑定評価手法を適用することによって、複数の試算価格を求め、対象土地の価格決定に対する手法として、それぞれの試算価格の妥当性について検討することを目的とする。 (3) 取引事例比較法による土地の比準価格の算定b鑑定においては、対象土地の所在する千代田区γ周辺にあって、当該地域と類似性(代替性)を認めることのできる範囲内から、平成二年夏以降平成一〇年現在までの土地の取引事例四四例が収集された。 b鑑定における対象土地の価格の試算は過去時点の評価に該当するが、収集された過去時点の取引事例は、当時の状況を再現してそれぞれの時点における比準を行うことが不可能であると判断されたことから、当該各事例のうち、取引時点が新しく、対象土地との類似性が高いと認められる七つの事例を選択し、それぞれについて、①事情補正、②時点修正、③事例地と事例地の属する近隣地域の標準的画地を比較する個別的要因の標準化補 ち、取引時点が新しく、対象土地との類似性が高いと認められる七つの事例を選択し、それぞれについて、①事情補正、②時点修正、③事例地と事例地の属する近隣地域の標準的画地を比較する個別的要因の標準化補正、④事例地及び対象土地の属する近隣地域の地域的要因のそれぞれの比較、⑤対象土地の属する近隣地域の標準的画地と対象土地との個別的要因の比較を行い、平成一〇年九月一日現在の更地の比準価格を求め、次に、対象土地周辺における地価公示地点一〇地点について、平成四年から平成一〇年までの公示価格の変動率をそれぞれ求め、上記で求められた平成一〇年九月一日現在の更地の比準価格に当該変動率をそれぞれ乗じて、対象土地の前記価格時点における更地としての比準価格を求めている。 右の七つの取引事例については、その取引価格に特段の事情は含まれておらず、取引時点が新しいことから時点修正の可能な範囲内であると判断され、かつ、いずれの事例も対象土地から近距離に位置しており、比較に際して誤差の発生する余地は少ないと判断された。 そして、不動産鑑定士としての経験に基づいて、採用した七事例に関して、それぞれ③個別的要因の標準化補正、④地域要因の格差、⑤個別的要因の格差を判断した。 右の結果、平成一〇年九月一日現在の対象土地の更地としての比準価格は、一三億四〇九九万四〇〇〇円(一平方メートル当たり二五五万円)と求められた。 そして、右価格に、平成四年七月一日から平成一〇年九月一日までの公示価格の変動率を乗じて、平成四年七月一日時点における試算価格を五二億五八八〇万円(一平方メートル当たり一〇〇〇万円)、平成五年一月一日時点における試算価格を四六億五四〇三万八〇〇〇円(一平方メートル当たり八八五万円)、平成六年一月一日時点における試算価格を三二億二三六四万四四〇〇円(一平方メートル 一〇〇〇万円)、平成五年一月一日時点における試算価格を四六億五四〇三万八〇〇〇円(一平方メートル当たり八八五万円)、平成六年一月一日時点における試算価格を三二億二三六四万四四〇〇円(一平方メートル当たり六一三万円)とした。 (4) 収益還元法による土地の収益価格の算定ア収益価格については、具体的な方法論について、様々な考え方が存在しており、それらの中で最も適切な方法については、いまだ確立されていないから、我が国における収益還元法の適用に当たって基本とされてきた「地価公示方式」による試算と、欧米において一般的に行われている「キャッシュフロー方式」による試算を行うこととした。 そして、地価公示方式については、従来行われてきた方式(以下「地価公示旧方式」という。)と平成七年以降採用されている方式(以下「地価公示新方式」という。)とでは相当に手法が異なるから、両方式に基づいて試算している。両方式ともに、基本的には対象土地に建物が存しない更地であるとして、そこに最有効使用建物を新築することを想定することから、対象土地のように実際に最有効使用としての建物が存在し収益を生み出していると判断される場合には、実在する建物における実際の収益構造を前提として収益価格を求めることになる。 イ地価公示旧方式a 標準モデル想定方式地価公示旧方式は、地価公示を中心とする公的土地評価における収益還元法で採用されていた土地残余法の具体的な適用方法であり、対象となる土地上に最有効使用であると想定される建物を想定し、当該建物を賃貸の用に供した場合の標準的な賃料収入及びその他の収入などから総収益を求め、ここから建物の再調達原価、維持管理費、公租公課等の総費用を控除して土地建物に帰属する純収益を求め、ここから、さらに、建物に帰属する純収益(建物再調達原価に建物に係る の他の収入などから総収益を求め、ここから建物の再調達原価、維持管理費、公租公課等の総費用を控除して土地建物に帰属する純収益を求め、ここから、さらに、建物に帰属する純収益(建物再調達原価に建物に係る還元利回り六パーセントを乗じたもの)を控除して土地に帰属する純収益を求めてこれを土地に係る還元利回り三パーセントで除して土地の価格を求める。 右方式を適用した結果、前記の価格時点における本件各土地の価格は、平成四年七月一日時点においては五一億一七八八万〇一四三円(一平方メートル当たり九七三万二〇三〇円)、平成五年一月一日時点においては四〇億六〇二〇万一四二八円(一平方メートル当たり七七二万〇七七六円)、平成六年一月一日時点においては一二億九〇二七万六〇三四円(一平方メートル当たり二四五万三五五六円)となる。 b 実際値に基づく方式標準モデル想定方式に対し、実際の収入、費用に基づいた数値を採用して算定すると、前記の価格時点における本件各土地の価格は、平成四年七月一日時点においては二六億八六三四万〇八九一円(一平方メートル当たり五一〇万八二七七円)、平成五年一月一日時点においては三一億二〇二二万七九六三円(一平方メートル当たり五九三万三三四六円)、平成六年一月一日時点においては六億九四三一万二五〇四円(一平方メートル当たり一三二万〇二八七円)となる。 ウ地価公示新方式a 地価公示新方式は、①現実のキャッシュフローを重視することから、特に、総費用における滅価償却費を計上しない点、②建物のライフサイクルに応じた取壊が必要なことから、取壊費積立金を計上した点、③土地建物共通の還元利回りを導入した点、④還元利回りについて、純収益が賃料収入の将来的な変化に応じて変化することを各基本利回りに反映させるなどした点において、地価公示旧方式と異なるもので した点、③土地建物共通の還元利回りを導入した点、④還元利回りについて、純収益が賃料収入の将来的な変化に応じて変化することを各基本利回りに反映させるなどした点において、地価公示旧方式と異なるものであり、想定される賃料変動率が上昇するか下落するのかによって、還元利回りが大きく異なるところ、価格時点当時においては、短期的にはバブル崩壊による影響で賃料水準は、下落傾向になるとはいえ、長期的には上昇していくと考えるのが妥当であったとされていたが、その後の経済の低迷を見るまでもなく、長期的にも賃料水準が一定程度下落傾向になっていくとの考え方の方が不動産投資の不確実性、危険性からいってより実態的であると考えられるから、上昇と下落の双方の想定をした。 b 右によれば、賃料上昇を想定した場合における標準モデル想定方式の前記の価格時点における本件各土地の価格は、平成四年七月一日時点においては四五億九四四八万一四二四円(一平方メートル当たり八七三万六七四九円)、平成五年一月一日時点においては三七億九一四三万九六六五円(一平方メートル当たり七二〇万九七〇五円)、平成六年一月一日時点においては一六億四三七五万一七八二円(一平方メートル当たり三一二万五七一六円)となる。これに対し、実際値に基づく方式によると、前記の価格時点における本件各土地の価格は、平成四年七月一日時点においては二七億九八二〇万九九一五円(一平方メートル当たり五三二万一〇〇五円)、平成五年一月一日時点においては二三億七四二九万一九四七円(一平方メートル当たり四五一万四八九三円)、平成六年一月一日時点においては五億五一二五万七三〇九円(一平方メートル当たり一〇四万八二五七円)となる。 賃料下落を想定した場合における標準モデル想定方式の前記の価格時点における本件各土地の価格は、平成四年七月一日時点 いては五億五一二五万七三〇九円(一平方メートル当たり一〇四万八二五七円)となる。 賃料下落を想定した場合における標準モデル想定方式の前記の価格時点における本件各土地の価格は、平成四年七月一日時点においては二八億二一〇二万四八四八円(一平方メートル当たり五三六万四三八九円)、平成五年一月一日時点においては二二億九二五七万六八九八円(一平方メートル当たり四三五万九五〇六円)、平成六年一月一日時点においては八億七四六一万一四二〇円(一平方メートル当たり一六六万三一三九円)となる。これに対し、実際値に基づく方式によると、前記の価格時点における本件各土地の価格は、平成四年七月一日時点においては一一億九三五四万四四一二円(一平方メートル当たり二二六万九六一四円)、平成五年一月一日時点においては一四億一九四三万七〇四四円(一平方メートル当たり二六九万九一六五円)、平成六年一月一日時点においては二億二二五五万〇四三九円(一平方メートル当たり四二万三一九六円)となる。 エキャッシュフロー方式a キャッシュフロー方式においては、評価対象不動産に最有効使用状態の建物が存在している場合には、対象建物から得られている賃料収入を基にした現金主義による純収益を求めることが基本となる。 キャッシュフロー方式としては、初年度ないし求める価格時点における純収益を、投資市場で最も一般的とされる不動産投資利回りで還元する永久還元方式と、賃料収入の予測が可能な期間ないし投資用不動産としての保有期間を想定し、その全期間にわたる各年ごとの純収益を予測し、かつ、当該想定保有期間の終了時の資産価値を求めた上で、それらの各年の純収益と資産価格を各期間ごとに現在価値に割り戻した現在価値の総和を求めるディスカウント・キャッシュフロー方式と、賃料収入の予測が可能な期間ないし投資用不動産 の資産価値を求めた上で、それらの各年の純収益と資産価格を各期間ごとに現在価値に割り戻した現在価値の総和を求めるディスカウント・キャッシュフロー方式と、賃料収入の予測が可能な期間ないし投資用不動産としての保有期間を想定し、その全期間にわたる各年ごとの純収益を予測し、それらの各年の純収益と資産価格を各期間ごとに現在価値に割り戻した現在価値の総和を求める厳格な担保査定方式などがあるが、b鑑定は、右の三方式によって、本件各土地の価額を算定した。 b 永久還元方式永久還元方式は、対象不動産と類似した収益用不動産の投資市場で売買された不動産の実際の利回りを基準として、対象不動産の価格時点における単年度のキャッシュフローを基に、当該利回りを除して対象不動産の収益価格を求めるものであるが、価格時点における平成四年ないし六年当時においては、我が国において、こうした不動産投資市場が十分に形成されていたとはいえないことから、永久還元方式で採用された還元利回りは、十分に行われてはいないものである。 右方式を適用すると、前記の価格時点における本件各土地の価格は、平成四年七月一日時点においては一〇億三六〇三万〇二〇六円(一平方メートル当たり一九七万〇〇八九円)、平成五年一月一日時点においては一一億二四八九万二八七〇円(一平方メートル当たり二一三万九〇六八円)、平成六年一月一日時点においては二億九八八四万五九〇二円(一平方メートル当たり五六万八二七八円)となる。 c ディスカウントキャッシュフロー方式本件においては、合理的な期間として一〇年の期間を設定している。なお、ディスカウントキャッシュフロー方式は、社団法人日本不動産鑑定協会及び国土庁が、平成一〇年九月二二日付けで発表した「不良債権担保不動産の適正評価手続における不動産の鑑定評価に際して特に留保すべき 、ディスカウントキャッシュフロー方式は、社団法人日本不動産鑑定協会及び国土庁が、平成一〇年九月二二日付けで発表した「不良債権担保不動産の適正評価手続における不動産の鑑定評価に際して特に留保すべき事項について」の中で、「不良債権担保不動産の適正評価手続における不動産の鑑定評価」と限定されてはいるものの、鑑定評価手法として公式に採用されることになった。右留意事項においては、「採用する収益還元法の手法としては、投資家の価値判断に沿った予測可能な将来のキャッシュフローを重視した手法が適切である」とされ、かつ、当該目的のための鑑定評価に当たっては、ディスカウントキャッシュフロー方式に基づく試算価格を最も重視することが不動産鑑定士に義務付けられている。 b鑑定によれば、本件価格時点である平成四年ないし六年は、賃料水準が大きく変動した時期であるが、右方式はそのような変動を織り込むことができることから、将来予測について想定部分が相当介在するものの、永久還元方式に比べれば、その信頼性はかなり高いとされている。 右方式を適用すると、前記の価格時点における本件各土地の価格は、平成四年七月一日時点においては一億七〇二三万二四一六円(一平方メートル当たり三二万三七一〇円)、平成五年一月一日時点においては三億五一五一万五七一八円(一平方メートル当たり六六万八四三三円)、平成六年一月一日時点においては三億一七六〇万六八五〇円(一平方メートル当たり六〇万三九五三円)となる。 d 厳格な担保査定方式について収益用不動産について担保査定をする際の金融機関などによる最も厳しい見方を代表するものであり、その結果は、いずれの時点においても土地部分の価格がマイナスとなる。 (5) 各試算価格の妥当性の検証ア以上の合計一〇通りの方法論のうち、更地価格を算定したのは、取引事 見方を代表するものであり、その結果は、いずれの時点においても土地部分の価格がマイナスとなる。 (5) 各試算価格の妥当性の検証ア以上の合計一〇通りの方法論のうち、更地価格を算定したのは、取引事例比較法による比準価格、公示価格旧方式の標準モデル方式による収益価格及び公示価格新方式の標準モデル方式による収益価格であり、その余の価格は、建物の敷地としての価格を求めたことになる。 イしかし、本来更地価格を求めることが妥当な場合は、対象土地が更地の場合、又は対象土地に建物が存していても最有効使用の観点から取り壊すことが妥当だと判断される場合のいずれかであるから、本件において求めるべき価格は「更地としての価絡」ではなく、「建物の敷地としての価格」と判断されるということになる。 ウそして、土地政策の柱が「所有から利用」へと転換したことに象徴されるように、不動産の価格決定のプロセスも、個別利用を前提とした評価に基づいたものに変わろうとしており、「最適利用を前提とした不動産価格評価」を具現化する適切な方法として、収益還元法が注目されており、国内外の投資家も、収益用不動産の取引価格の指標として収益価格を重視し、実際の売買に際してもそれを中心に価格が決定されつつある。特に、最有効使用の状態にある収益用不動産に関しては、現実の利用に基づいた収益構造を前提とした価格が、最も規範力のある形で確実に定着しつつあるところであり、本件各土地の評価にあっては、収益還元法による収益価格が最も重視されるべきである。 エ各試算価格の信頼性について取引事例比較法による比準価格は、不動産市場における多くの取引事例に基づき、かつ、公表されている公的な地価変動率を乗じて求められたものであり、妥当性は高いが、本件で求めるべき価格が「建物の敷地としての土地価格」であることか 格は、不動産市場における多くの取引事例に基づき、かつ、公表されている公的な地価変動率を乗じて求められたものであり、妥当性は高いが、本件で求めるべき価格が「建物の敷地としての土地価格」であることからすれば、手法としての妥当性が高いといっても、本件の目的と異なるものといわざるを得ない。 そして、公示価格方式については、公的に認知された手法であるから妥当であるが、この中では実際値に基づく方式がより信ぴょう性が高い。また、地価公示新方式における賃料上昇想定と賃料下落想定では、実際の不動産市況を考えれば、賃料の下落を想定して求められた価格が、より信ぴょう性が高い。 キャッシュフロー方式は、その信ぴょう性は極めて高いといえるが、このうち、厳格な担保査定方式で求められた価格は、いわゆる不動産市場における価格決定方式としては、馴染みにくく、また、永久還元方式は、前記のとおり、市場形成が熟していたといえない以上、限界がある。 これに対し、ディスカウントキャッシュフロー方式は、価格時点における日本の不動産市場における価格決定メカニズムの中には、この考え方が定着していたとはいえないが、最有効使用の状態にある収益用不動産の価格を個別具体的な状況を前提にして最も的確に表す方法論であり、その妥当性は最も高い。 (6) 結論以上を総合的に検討し、各資産価格の妥当性と限界をそれぞれ勘案したところ、対象土地の最終的な価格決定においては、保有期間一〇年を前提としてディスカウントキャッシュフロー方式によって求められた価格が最も妥当性が高いということができる。 (二) 右のb鑑定の鑑定結果を基に判断するに、右鑑定は、本件各土地を鑑定対象土地とし、平成四年七月一日、平成五年一月一日、平成六年一月一日の価格を求めようとしたものであり、その鑑定評価に際しては、不動産鑑定評価 鑑定の鑑定結果を基に判断するに、右鑑定は、本件各土地を鑑定対象土地とし、平成四年七月一日、平成五年一月一日、平成六年一月一日の価格を求めようとしたものであり、その鑑定評価に際しては、不動産鑑定評価基準に基づき、取引事例比較法に基づく比準価格、地価公示旧方式による収益価格、地価公示新方式による収益価格を評価し、この他に、さらに、近年、注目されつつある三種のキャッシュフロー方式による収益価格をそれぞれ求め、右各試算価格の結果と、各方式の持つ妥当性、難点等を比較衝量のうえ、保有期間一〇年を前提としたディスカウントキャッシュフロー方式による試算価格が最も妥当性が高いとしたものである。右の鑑定の手法については、不動産鑑定評価基準に従った評価をしながら、これに、近年取り上げられつつある不動産鑑定評価の手法による評価を併せて行ったものであり、右の過程に特段不合理な点があるとは思われない。 しかし、b鑑定自身が認めるとおり、右鑑定が行った試算価格のうち、取引事例比較法による比準価格、公示価格旧方式の標準モデル方式による収益価格及び公示価格新方式の標準モデル方式による収益価格以外の価格については、本件各土地についての更地としての価格を求めたものとはいえないところ、前記のとおり、固定資産評価においては、当該土地が更地であることを前提とした正常価格を把握することが求められているものと解されるのであって、前記の各価格以外の試算価格については、鑑定の目的を異にするものと評価せざるを得ない。 そして、更地としての価格を評価したものと解される①取引事例比較法による比準価格、②公示価格旧方式の標準モデル方式による収益価格及び③公示価格新方式の標準モデル方式による収益価格(ただし、賃料上昇を想定した場合と賃料下落を想定した場合とがある。)についてみるに、平成六年一月 格、②公示価格旧方式の標準モデル方式による収益価格及び③公示価格新方式の標準モデル方式による収益価格(ただし、賃料上昇を想定した場合と賃料下落を想定した場合とがある。)についてみるに、平成六年一月一日時点における本件各土地の価格は、それぞれ、①三二億二三六四万四四〇〇円(一平方メートル当たり六一三万円)、②一二億九〇二七万六〇三四円(一平方メートル当たり二四五万三五五六円)、③一六億四三七五万一七八二円(ただし、賃料上昇を想定した場合。 一平方メートル当たり三一二万五七一六円。)、八億七四六一万一四二〇円(ただし、賃料下落を想定した場合。一平方メートル当たり一六六万三一三九円)となる。 右各価格を総合的に判断した結果、本件各土地の価格をいくら程度であるとすべきかについては、b鑑定は、判断を示していないことから、右の各試算価格に基づき、これを判断することは困難であるが、少なくとも、右の各試算価格のうち、手法としての妥当性は高いとしている①の取引事例比較法に基づく比準価格は、本件土地1及び本件土地2の登録価格の合計二七億八〇〇六万四六一〇円を上回っていることからすれば、右鑑定の結果からは、本件各土地の登録価格が、平成六年一月一日時点における客観的時価を超えることまでは認めることができないものというべきである。 2(一) また、原告は、本件各土地の登録価格が適正な時価を超えると主張するところ、証拠(甲一六、同一九、乙一四、同一五)によれば、以下の各事実が認められる。 (1) 本件各土地は、幅員一一メートルの道路に接する土地であり、道路から二〇メートル以内については商業地域に属し、容積率は五〇〇パーセントであるのに対し、道路から二〇メートル以遠は第二種住居地域に属しているから、容積率は四〇〇パーセントである。 (2) a鑑定、b鑑定、c鑑定に ル以内については商業地域に属し、容積率は五〇〇パーセントであるのに対し、道路から二〇メートル以遠は第二種住居地域に属しているから、容積率は四〇〇パーセントである。 (2) a鑑定、b鑑定、c鑑定においては、いずれも、近隣地域の行政条件のうち、容積率については、指定容積率、基準容積率のいずれも五〇〇パーセントであることを前提として標準的画地としての価格を評価した。 (3) b鑑定は、本件各土地の容積率を四七七パーセントであるとしたうえで、標準的画地に対する格差修正率を三パーセントであるとしている。 (4) 平成九年度における固定資産登録価格の決定に際し、本件各土地について、標準宅地としての鑑定を行った不動産鑑定士cは、本件各土地の容積率は約四八〇パーセントであるとした上で、標準価格の価格形成要因と比較して、容積率によるマイナス四パーセントの価格修正が必要であるとしている。 (5) a鑑定は、標準価格の価格形成要因と比較して、価格修正が必要であるとはしていない。 (二) 以上によれば、a鑑定を前提とした本件決定においては、本件各土地の評価に当たって、本件各土地の容積率が実際には五〇〇パーセントを下回ることを勘案したものとは認められないところ、b鑑定及びc鑑定が、本件各土地の価格決定に当たっては、容積率が五〇〇パーセントでないことに伴って三パーセント又は四パーセントの価格修正が必要であるとしていることからすれば、本件各土地を評価するに当たっては、標準的画地と容積率が異なることに伴う価格修正が、少なくともマイナス三パーセント程度は必要であるといわざるを得ない。 (三) そして、七割評価通達に従った場合に生ずる評価誤差の許容範囲が三割あるものの、本件各土地に係る標準宅地である本件土地1の地価下落率が三割を超えないとまでは認めることができないことは前記 い。 (三) そして、七割評価通達に従った場合に生ずる評価誤差の許容範囲が三割あるものの、本件各土地に係る標準宅地である本件土地1の地価下落率が三割を超えないとまでは認めることができないことは前記のとおりであり、仮に、基準地(千代田5―6)と同程度の約二八・二パーセント程度の地価下落率であったとしても、右の容積率による減価補正を前記評価誤差の許容範囲内においてすべて吸収することはできないから、以上の事情を総合すれば、本件各土地に係る登録価格は客観的時価を超えているものと推認するのが相当である。 六以上によれば、本件決定は、前記のとおり、標準宅地(本件土地1)の平成五年一月一日から平成六年一月一日までの地価下落率が三割を超えない範囲にあるといえないこと及び容積率による減価補正を行っていないことからして、登録価格が客観的時価を超えていると認められるから、違法というべきである。 ところで、固定資産評価審査委員会のした審査申出を棄却する旨の裁決は、以下に述べるとおり、全体として一個不可分なものであり、そのうちの価格に関する部分の一部のみを取り消すことは、許されないというべきであるから、本件における原告の請求についても、審理の対象は、右裁決について違法一般であると解すべきであり、裁決について違法事由が存する場合には、右裁決全部を取り消すべきものであって、右裁決によって是認された市町村長の定めた登録価格のうちの一部だけを取り消すということは予定されていないというべきである。 すなわち、法は、固定資産税の納税者が、その納付すべき固定資産税に係る資産について固定資産課税台帳に登録された一定の事項について不服がある場合には、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる(法四三二条一項)とする一方、同委員会は、右申出を受けた場合においては、直 いて固定資産課税台帳に登録された一定の事項について不服がある場合には、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる(法四三二条一項)とする一方、同委員会は、右申出を受けた場合においては、直ちにその必要と認める調査、口頭審理その他の事実審査を行い、その申出を受けた日から三〇日以内に審査の決定をし、決定のあった日から一〇日以内に、申出人及び市町村長に文書をもって通知しなければならないとし(法四三三条一項、一二項(平成一一年法律第一五号による改正前の法においては同条八項。以下、同じ。))、右の決定に不服がある固定資産税の納税者は、その取消しの訴えを提起できるとしている(法四三四条一項)。右のとおり、取消訴訟の対象である固定資産評価審査委員会の決定は、固定資産課税台帳に登録された一定の事項についての審査申出人の不服申立てに対する同委員会の応答としてされるものであり、また、右決定において判断された価格は、基準年度に係る賦課期日における当該固定資産の適正な時価という一個の評価的事実であるから、法は、右価格を可分なものであるとして、その一部に関する部分のみが取消訴訟において争われ、残部が別途に確定するという事態は予定していないというべきである。もし仮に同委員会の決定した価格に関する部分が可分なものであって、その一部のみの取消しを訴求することが認められるとすると、請求が認容された場合には、同委員会は審査申出に対して応答すべき義務の履行として改めて当該部分についての決定を行うべきこととなるが(行政事件訴訟法三三条二項)、その結果、右の新たな決定と訴訟の対象とならなかった決定の残部の両方が存在することとなり、これらの間の論理的な整合も期し難い結果を招来することとなり、実際上も不都合であると解される。 これに対し、判決において決定のうちの価格の の対象とならなかった決定の残部の両方が存在することとなり、これらの間の論理的な整合も期し難い結果を招来することとなり、実際上も不都合であると解される。 これに対し、判決において決定のうちの価格の一部又は全部を取り消した場合には、その部分については、固定資産評価審査委員会が改めて決定する義務は生ぜず、決定のうち取り消されなかった部分のみの効力が存続すると考える余地もなくはないが、右のような考え方は、行政事件訴訟法三三条二項の規定に反するうえ、審理の結果、係争部分の具体的な価格について真偽不明となれば、立証責任の原則に従い、右請求に係る部分の価格全部を取り消すべきこととなり、改めて同委員会の決定も行われないため、右の係争部分の価格は零円として確定することになると解さざるを得なくなるが、そのような結果が不合理であることは明らかであり、右の考え方を採用することはできない。 むしろ、法は、固定資産評価審査委員会の決定については、市町村長に対しても、右決定を文書をもって通知するものとし(法四三三条一二項)、市町村長は、その結果、既に固定資産課税台帳に登録された価格等を修正する必要があるときは、右通知を受けた日から一〇日以内にその価格等を修正して登録し、その旨を当該納税者に通知すべきものとしたほか(法四三五条一項)、同項の規定によって価格等を修正した場合においては、市町村長は、固定資産税の賦課後であっても、その修正した価格等に基づいて、既に決定した賦課額を更正すべきことを義務づけている(同条二項)が、判決の結果に基づいて、直ちに市町村長が固定資産課税台帳に登録された価格等を修正すべき事態が生じることを予定した規定は設けられていないことからすれば、法は、取消訴訟において固定資産評価審査委員会の決定のうち価格の認定に誤りがあると判断された場合には、 に登録された価格等を修正すべき事態が生じることを予定した規定は設けられていないことからすれば、法は、取消訴訟において固定資産評価審査委員会の決定のうち価格の認定に誤りがあると判断された場合には、改めて同委員会による決定がされることを前提としているというべきである。 七よって、原告の本訴請求は理由があるから、認容することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第二部裁判長裁判官市村陽典裁判官阪本勝裁判官村松秀樹

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