主文 1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,熊本市に対し,金9316万8600円及びこれに対する平成11年2月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,熊本市(以下「市」ともいう。)が市営住宅の建設用地の一部として土地を買収した際,同時に同土地上のゴルフ練習場の建物及び付属施設を買収したことに関し,市の住民である原告らが,上記建物及び付属施設の買収は,市長の裁量権を逸脱または濫用して,市に損害を与えた違法な行為であるとして,市長である被告に対し,市に代位して,上記建物及び付属施設の買収代金相当額の損害賠償の支払を求めた住民訴訟である。 1 争いのない事実等(認定に供した証拠は各項の末尾に掲げた。)(1) 原告らは市の住民であり,被告は市の市長である。 (2) 被告は,平成10年9月22日,市長として,次の売買契約を締結した。 ア A,B,C,株式会社D(以下「D」という。)から,各人らがそれぞれ所有していた熊本市a町大字b字cd番地ほか38筆の土地(以下「本件土地」という。)を,市営住宅用地として,代金合計14億0640万4194円で買収する。(本件土地の売主,売買の目的について,甲46ないし50)イ Dから,ゴルフ練習場である別紙2物件目録記載の建物及び付属施設(以下「本件建物等」という。)を代金9316万8600円で買収する。 (3) 本件土地及び本件建物等の状況ア本件土地は,本件建物等の敷地であり,地目がそれぞれ宅地又は雑種地で,地積の合計は2万3207.99平方メートルである。また,本件土地は,熊本市役所南南東約eキロメートル圏内,熊本バス「f」バス停南西方約gメートルに位置しており,当該地域は れぞれ宅地又は雑種地で,地積の合計は2万3207.99平方メートルである。また,本件土地は,熊本市役所南南東約eキロメートル圏内,熊本バス「f」バス停南西方約gメートルに位置しており,当該地域は都市計画法上,市街化調整区域に存する大規模画地により形成され,別紙3図面(添付省略)のとおり,本件土地の南側には,小規模工場の建ち並ぶ工業地域であるE工業団地が存在する。(甲41)イ本件建物等は,ゴルフ練習場の支柱を含むネット設備,及びクラブハウス,打席を含んだ建物並びに付属施設からなっており,その建物部分が昭和58年9月6日に建築された鉄骨造亜鉛メッキ鋼板スレート葺2階建で,床面積は1階部分が872.54平方メートル,2階部分が678.14平方メートルの合計1550.68平方メートルで,洗配球設備,電気照明等の設備を有し,80打席(1階40打席,2階40打席)の練習打席のほかに,バンカー練習場,パター練習場を併設している。(甲2,42,53)(4) 前記(2)の各売買に至る経緯ア平成7年11月,Aは,熊本市役所の市長応接室を訪れ,被告に対し,本件土地と隣接するE工業団地の敷地を併せて市営住宅の建設用地(市営住宅用地)として購入しないかと陳情した。 これを受けて,被告は,熊本市建設局F局長(以下「F局長」という。)に対して,本件土地を市営住宅用地として買収することについて,その適否も含めて調査,検討するよう指示した。 さらに,F局長から上記の指示を受けた熊本市建設局住宅部(以下「住宅部」という。)G部長は,住宅部住宅建設課H課長補佐(以下「H」という。)に,本件土地の売買の交渉の窓口となるよう指示した。(乙27,35)なお,住宅部においては,平成8年7月には,本件土地及びE工業団地の敷地につ 部住宅建設課H課長補佐(以下「H」という。)に,本件土地の売買の交渉の窓口となるよう指示した。(乙27,35)なお,住宅部においては,平成8年7月には,本件土地及びE工業団地の敷地について,調査,検討の結果,市営住宅用地として適切であるとの判断をし,その旨,F局長から被告に報告された。(乙35,弁論の全趣旨)イ Hは,平成7年11月ころから,D及びA(以下「Aら」という。)と本件土地の売買について交渉を開始したが,本件土地の買収金額について,当初,坪当たり40万円との希望を提示するAらに対して,30万円以下の価格を提示し,さらに,平成8年10月,坪当たり24万円(E工業団地の敷地については,坪当たり29万円)で交渉を行った。その結果,Aは,本件土地の買収金額を不満として,市の上層役員と交渉する旨述べて,Hとの交渉を打ち切った。(乙27,35)ウ平成9年5月1日,住宅部(G部長)が,本件土地の価格について,不動産鑑定士に鑑定を依頼したところ,同年7月31日,本件土地が坪当たり20万円,E工業団地の敷地が平均坪当たり26万円弱との評価を得た。この鑑定評価を得て,市としては,鑑定評価額を買収金額とするべく,Aらと交渉を行ったが,Aらは金額及び市の職員の交渉対応に不満をもち,同年12月,被告及び助役に対して苦情を述べた。(甲41,乙35,37,弁論の全趣旨)上記苦情を受けて,被告は,Aらとのトラブルを解消し,本件土地の買収を進めるためにI助役を交渉担当に充て,平成10年4月からは,併せて,市の組織改革により住宅用地取得のために新設された建設局管理部用地課において,具体的な買収の方法,税制問題について対応した。(乙28,35,37)エ平成10年6月,本件土地の価格について,坪当たり20万円で合意が成 地取得のために新設された建設局管理部用地課において,具体的な買収の方法,税制問題について対応した。(乙28,35,37)エ平成10年6月,本件土地の価格について,坪当たり20万円で合意が成立する見込みとなったが,このころ,F局長が本件建物等をも取得するべき旨の意見をI助役に具申したことから,同助役は,被告に対して,本件土地買収の見込みとF局長からの意見具申について報告し,被告から本件建物等についても適正な価格であれば買収してよい旨の指示を受けた。 オそこで,I助役は,Aらに対して,本件建物等についても買収したい旨申し入れ,平成10年7月8日には,本件建物等について不動産鑑定士に鑑定を依頼し,同年8月10日,本件建物等の鑑定評価額が8873万2000円であるとの回答を得た。(甲42)カ Aらが本件建物等について,上記鑑定評価額(ただし,消費税等を含んでいない。)での買収に応じるとの意向を示したので,市は,平成10年8月24日,熊本市市有財産審議会における,本件土地及び本件建物等の取得議案の承認を得て,同年9月1日,Aらとの間で本件土地及び本件建物等についての売買の仮契約を締結した。 キ平成10年9月22日,市議会において本件土地及び本件建物等を買収する議案が議決され,前記(2)の各売買契約が締結された。 (5) Dらは,前記(2)の売買契約に基づき,平成10年10月29日,市に対し,本件土地及び本件建物等の所有権移転登記手続をした。 (6) 被告は,平成10年11月4日,市長として,本件土地の売買代金14億0640万4194円を熊本市公共用地先行取得事業会計から,本件建物等の売買代金9316万8600円を一般会計の公有財産購入費から,それぞれ支出すべき旨の支出命令を出し,同日,収入役が支出した。(弁論 40万4194円を熊本市公共用地先行取得事業会計から,本件建物等の売買代金9316万8600円を一般会計の公有財産購入費から,それぞれ支出すべき旨の支出命令を出し,同日,収入役が支出した。(弁論の全趣旨)(7) 原告らは,平成10年10月27日,本件土地及び本件建物等について合計14億9900万円を支出して買収したことが不当な財産の取得及び不当な公金の支出に該当するとして,被告が市に対して同支出金額を返還するよう,市監査委員に対して住民監査請求を行ったが,監査委員は,同年12月24日,本件土地及び本件建物等の各買収代金支出について,結論として,違法・不当な公金支出とは認められないと判断し,その旨を原告らに通知した。(甲2) 2 争点市による本件建物等の買収代金の支出が違法な公金支出に当たるか。 (原告らの主張)地方財政法によれば,地方公共団体は,その財政の健全な運営に努め,いやしくも国の施策に反し,又は国の財政若しくは他の地方自治体の財政に累を及ぼすような施策を行ってはならず(2条1項),地方公共団体の経費は,法令の定めるところに従い,かつ,合理的な基準により算定し,これを予算に計上しなければならず(3条1項),目的達成のための必要かつ最小限度を越えてこれを支出してはならない(4条1項)とされ,普通地方公共団体の執行機関である市長は地方公共団体の事務を誠実に執行する義務を課せられている(地方自治法138条の2)から,その裁量権にも制約があるところ,市による本件建物等の買収代金の支出は,以下の点において,上記地方財政法,地方自治法等の法令,原則に違反し,市長としての裁量権を著しく逸脱して行われた違法な公金支出である。 特に,市は,現在,市債残高3000億円以上,公債費比率20パーセント以上と非常に高い数値を示 方自治法等の法令,原則に違反し,市長としての裁量権を著しく逸脱して行われた違法な公金支出である。 特に,市は,現在,市債残高3000億円以上,公債費比率20パーセント以上と非常に高い数値を示しており,不要不急な事業の見直しが迫られている状況などからすれば,被告の義務違反は,より重大なものといわざるを得ない。(訴状6頁,平成12年4月19日付け準備書面(第四回)5頁,平成13年10月1日付け第5準備書面2頁,9頁)(1)ア市は,Dからの申出を受けて,本件土地を市営住宅用地として買収したのであるが,公共用地の取得については,旧建設省等で定められた事務手続(実施計画の確定,実地調査等を行った後に調書の作成,補償金額の算定,用地交渉と進む。)に従って手続を進めるべきであったのに,そのような手続をとらず,違法かつ杜撰な手続で本件土地及び本件建物等を購入した。 また,市においては,後記イのとおり,地主からの買収申出に応じて市営住宅用地を買収する場合で,当該土地上に建物等が存在するときには,土地所有者の同意を得て,土地所有者の費用で取り壊してもらった上で更地で購入するという更地購入の原則が存在するところ,本件土地の買収においても,本件建物等をDの費用で撤去してもらい,更地にしてもらった上で買収するべきであったにもかかわらず,市は,Dに本件建物等の撤去をさせず,代表者のAに対して,本件土地の更地による取得についての十分な説得や理解を得る努力もしていない。 仮に,Dが本件土地を更地にしないのであれば,本件土地の買収についても再度十分検討するべきであったのに,そのような検討をすることなく,本件土地及び本件建物等を杜撰な手続で買収した義務違反がある。 (訴状6頁,平成13年10月1日付け第5準備書面2頁,14頁) 十分検討するべきであったのに,そのような検討をすることなく,本件土地及び本件建物等を杜撰な手続で買収した義務違反がある。 (訴状6頁,平成13年10月1日付け第5準備書面2頁,14頁)イ更地購入の原則は,地方自治体の健全な財政運営の基本原則としての財政運営効率化の原則に合致するもので,地方財政法の趣旨を具体化するものであり,市においては,昭和56年以降,市営住宅用地の取得の際には,原則として更地を取得しており,土地上の建物について補償をしたのは,いずれも土地の形状などから購入が不可欠な土地として,市の方から土地所有者に対して土地の購入を申し入れた3件のみである。また,市の議員や市の担当者はいずれも更地購入の原則があることを認め,市議会の質問においても同原則を前提にした質問をしているうえ,市の住宅部を取材している新聞記者が書いた新聞記事も更地購入の原則が存在していることを前提にしているから,市における市営住宅用地の取得に関しては,更地購入の原則が存在していることは明らかである。 (平成11年8月23日付け準備書面(第一回)24頁,平成12年1月18日付け準備書面(第二回)11頁)(2) また,本件建物等の取得の必要性や合理的な理由は存在せず,買収に当たっての市における本件建物等の使途や使用計画についての検討手続は極めて杜撰なものであった。 ア市は,平成10年5月までは,本件土地を更地購入の原則に基づいて更地で買収する計画であり,本件建物等の買収は,同年6月になって突然決定されたものであり,本件建物等の利用方法などを十分に検討していない。本件建物等の買収を決定するに当たっては,具体的な代金,本件建物等の管理主体,運営態様,利用計画,利用方法,利用対象者,供用開始日等についての検討が全くなされていな 方法などを十分に検討していない。本件建物等の買収を決定するに当たっては,具体的な代金,本件建物等の管理主体,運営態様,利用計画,利用方法,利用対象者,供用開始日等についての検討が全くなされていないか,なされていたとしても極めて杜撰な状態であって,本件建物等を買収した後である平成10年12月18日になってようやく,市教育委員会が外郭団体である市社会教育振興事業団に管理運営を委託する方法で,市営住宅建設着工までの5年間の限定で,平成11年4月から市営ゴルフ練習場としてオープンすることが決まったほどである。 イまた,全国の地方自治体の中でも,本件のように1億円近くの金額を投じて建物等を取得して,5年間の期間限定でゴルフ練習場だけを経営している地方自治体はない。 市には,市内だけでも16カ所のゴルフ練習場施設があり,近郊まで含めると20カ所ほどの施設が存在している。このような状況の中で,なぜゴルフ練習場を取得して市が経営していかなければならないのか,理由が極めて希薄である。ジュニア層や青少年育成等を目的とするのであれば,民間施設を借り上げる方法や利用者に助成金を出して利用に供させるなど,ほかにいくつも選択肢があったが,全く検討していない。 ウ本件建物等の建っている本件土地について,住宅用地としての造成工事が始まれば本件建物等を解体せざるを得ず,解体費用には多額の経費(3595万1940円)が必要であるうえ,行政目的のために購入した本件建物等について,その行政の継続性という観点からどのように考えていくのか,その論議が行われていない。 以上の実情からすれば,実質的に本件建物等の売買代金は,本件土地の代金の上乗せ分として支出されたものであるといわざるを得ない。 (平成11年8月23日付け準備書面(第一回)1 ていない。 以上の実情からすれば,実質的に本件建物等の売買代金は,本件土地の代金の上乗せ分として支出されたものであるといわざるを得ない。 (平成11年8月23日付け準備書面(第一回)10頁,平成12年1月18日付け準備書面(第二回)7頁,平成13年10月1日付け第5準備書面14頁)(3) 被告が市長として本件建物等を購入したことにより,市は,例えば,結果的に解体費用3595万1940円を負担させられることになるなど,本件建物等の買収金額以上の損害を受けた。(平成13年10月1日付け第5準備書面3頁)(被告の主張)(1) 市が本件土地を買収したのは,Dから買収の申出があったことが発端であったとはいえ,熊本市南部地区における新規団地建設計画達成のために必要不可欠な団地用地の候補地として取得の必要性が高く,かつ取得する合理的理由が十分にあった。 原告らの主張する更地購入の原則なるものは,以下の理由により失当である。 ア原告らの主張する更地購入の原則は,土地の取得は必要であるが,当該土地上に存在する建物等は必要としない場合を前提としているが,本件土地は,市営住宅団地建設用地として必要であっただけでなく,同住宅団地建設着工までの期間は,本件土地をその上に存在する本件建物等と併せて有効活用して市営ゴルフ練習場施設敷地としても必要とする場合であって,いわば,土地及びその上の建物等をも必要とする場合であって,原告らの主張する場合とはその前提を異にする。 イまた,そもそも,市には,更地購入の原則なるものは,法令上も内部規則等にも全く存在しない。 むしろ,市が行う公共用地の取得に伴う損失補償に関しては,公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱(昭和37年6月29日閣議決定)並びにこの趣旨に従い制定された熊本市の公 にも全く存在しない。 むしろ,市が行う公共用地の取得に伴う損失補償に関しては,公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱(昭和37年6月29日閣議決定)並びにこの趣旨に従い制定された熊本市の公共事業の施行に伴う損失補償基準(以下「熊本市損失補償基準」という。)及び熊本市公共事業の施行に伴う損失補償基準細則(以下「熊本市細則」という。)が適用されることになり,熊本市損失補償基準及び熊本市細則によれば,建物については,市がこれを必要とするか否かにかかわらず,補償をすることが原則とされている。 なお,市においても,過去には,用地の取得費用が市営住宅の家賃に反映していたことから,家賃を低額に抑える目的,また,財政運営の効率化,経費節減の視点等から,土地所有者との交渉により,土地所有者の費用負担により建物を収去し,更地にしてもらった例が少なからずあったのは事実であるが,あくまでも,上記目的,視点等からの運用上の結果でしかない。そして,土地の整形を保つためなど,是非とも当該土地が必要な場合であって,土地所有者の費用負担による建物の収去について土地所有者の同意が得られないときには,熊本市損失補償基準及び熊本市細則等に従って補償をしてきた。 (平成11年6月11日付け準備書面(一)2頁,6頁,平成13年10月3日付け準備書面(6)1頁)(2) 市が本件建物等を買収したのは,本件土地取得交渉の過程で,市議会において一部議員より市営ゴルフ練習場の建設設置の要望がなされ,著名なプロゴルファーから市営ゴルフ練習場等の設置の陳情がなされ,これらをきっかけとして,市において,従来民営のゴルフ練習場営業の目的で使用されていた本件建物等を取得してこれを市営ゴルフ練習場として市民の利用に供するべきか否かを検討し,その結果,本件建物等はその耐用年数も かけとして,市において,従来民営のゴルフ練習場営業の目的で使用されていた本件建物等を取得してこれを市営ゴルフ練習場として市民の利用に供するべきか否かを検討し,その結果,本件建物等はその耐用年数も長く残っていて今後当分の間の使用にも十分耐え得るものであり,これを解体撤去することは社会経済的に損失であるし,本件土地を敷地とする市営住宅建設着工まで相当の期間があるから,その期間,これらを有効活用して,平成11年開催の国民体育大会(開催地・熊本県,以下「国体」という。)から国体の正式種目として採用されたゴルフ競技に出場する選手の強化施設として,また,小中高校生のいわゆるジュニア層の練習施設として青少年の健全育成や体力向上を図り,さらには一般市民の練習施設としてその体力向上を図ることをも含めて,市営ゴルフ練習場施設として市民の利便に供することが,公共的,社会経済的観点から見て有用であるという考えに基づいて決定されたことによる。 以上の経緯から明らかなように,被告が,市長として,市がその行政目的に照らし本件土地及び本件建物等をそれぞれ買収することが必要であると判断して買収を決定し,市議会の同意等所定の適法な手続を経て,本件土地売買だけでなく本件建物等を目的とする売買契約を締結したものであり,何ら違法性は存在しない。 ただ,市としても,本件土地買収の検討に入った当初の段階から本件建物等の購入を考えていたわけではなく,本件土地買収の交渉中に,本件建物等取得の必要性・合理性が具体化し,かつ,それが増大するに至ったからこそ,本件土地購入と同時に本件建物等の購入に至ったのである。 すなわち,本件建物等は,建設資金に4億4,5千万円をかけた立派なゴルフ練習場施設であり,かつ,経済的耐用年数20年という強固な施設であって,鑑定評価額によ 物等の購入に至ったのである。 すなわち,本件建物等は,建設資金に4億4,5千万円をかけた立派なゴルフ練習場施設であり,かつ,経済的耐用年数20年という強固な施設であって,鑑定評価額によっても9316万8600円(消費税を含む。)もする資産であるから,A側が移転補償等の請求をすることなく,わざわざ,自らの費用負担(解体費用のみで約4400万円ないし4500万円を要する。)により本件建物等を収去して本件土地を更地にした上で本件土地を売り渡して鑑定評価額どおりの土地代金のみを受領することで満足するなどということは,到底,期待し得ないものであった。 そこで,本件土地等の買収交渉を担当したI助役は,A側に対し,本件建物等の補償問題や本件建物等を購入するか否かというテーマには一切触れないまま本件土地のみの売買交渉を進めるという巧みな交渉態度に終始し,本件土地代金についての合意が成立する見込みがついた上で,間髪を入れず,A側が本件建物等の補償問題を申し入れる前に,その機先を制する形で,本件建物等を購入したい旨申し入れた。 これに対し,A側は,そのころには,既に取引金融機関からの信用を失いかねない状況に立ち至っていて,ようやく本件土地の売買価格の合意が成立する見込みが立ったのに,さらに本件交渉を長引かせることが必至となる当初の目論見どおりの2億円以上の価格による本件建物等の売却あるいは営業補償請求等の交渉をする時間的余裕は全くなく,やむを得ず,鑑定評価額どおりの価格による本件建物等の売却に同意せざるを得なかったのである。 市側が上記のような巧みな交渉によりタイミングよく自ら本件建物等の購入の話を切り出さなかったとしたら,早晩,A側より本件建物等の補償問題(移転補償又は取得補償)が持ち出され,これに対応して熊本市損失補償基準, のような巧みな交渉によりタイミングよく自ら本件建物等の購入の話を切り出さなかったとしたら,早晩,A側より本件建物等の補償問題(移転補償又は取得補償)が持ち出され,これに対応して熊本市損失補償基準,熊本市細則,及び建物移転補償基準を適用すれば,その額は少なくとも約3億円ないし4億円にも上っていたはずであり,市はその補償要求に応じざるを得ず,市の財政上の負担は莫大なものになっていたはずであって,本件建物等の購入は,本件土地取得に必然的に伴うはずの上記巨額の損失補償費の支払を免れさせ,大幅に低額の本件建物等の鑑定評価額のみの負担で済まさせるという財政上の大きなメリットを市にもたらしたのである。 以上の諸事情を総合考慮すれば,市の本件建物等の取得は,これを取得する必要性及び合理的理由の存在に基づいてなされたものであって,十分な合理性を有するものであり,また,上記交渉内容,経緯等から見ても,原告らが主張するように,本件建物等の代金が本件土地代金の上乗せ分として支出されたものでないことは明らかである。 (平成11年6月11日付け準備書面(一)4頁,平成13年10月3日付け準備書面(6)3,4頁,7頁)(3) 原告らは,市が本件建物等を取得するに当たって,十分な審議,検討を行っていない旨主張するが,本件建物等を市民にゴルフ練習場として開放するという使途及び利用方法の基本的方向は同建物等の買収方針を決定した平成10年6月の時点で決まっており,維持管理費用も含めた収支の試算等についてそのころまでには検討していた。しかしながら,より効果的効率的に活用するために同年9月,10月ころの時点まで,住宅部と教育委員会事務局社会体育課との間で,管理主体や利用方法について協議していた。 (平成11年10月13日付け準備書面(二)16頁)(4) 市 するために同年9月,10月ころの時点まで,住宅部と教育委員会事務局社会体育課との間で,管理主体や利用方法について協議していた。 (平成11年10月13日付け準備書面(二)16頁)(4) 市は,本件建物等を適正な価格で買収してその所有権を取得し,これを平成11年4月10日より市営ゴルフ練習場施設として使用収益し,一般市民より大いに利用されているのであるから,何らの損害も発生していない。 また,本件は,公共用地の取得に伴って,土地上の建物等の取得を必要とする場合であるから,本件建物等の取得に当たっては,熊本市損失補償基準及び熊本市細則に基づいて,取得補償を行うべき案件であり,これらの規定による取得補償額は,少なくとも2億9469万9000円(ただし,消費税を含まない額。また,これに動産移転料,営業補償金及び移転雑費補償金等を加えたものが最終的な取得補償の額となる。また,市が本件建物等を取得する必要がなかったものと仮定した場合の上記各規定による移転補償額は3億7574万1000円である。)となるところ,市は,本件建物等の使用期間が限定されることが当初より明らかであったことから,取得経費節減のために,不動産鑑定士による鑑定評価を行い,これに基づく鑑定評価額によって所有者と交渉して本件建物等を買収するという方法を採用したため,極めて安価な額で本件建物等を取得することができた。このような方法は,地方財政法4条1項の趣旨にも合致するものというべきであり,本件建物等買収により市には何らの損害も発生しなかったことが明らかである。 (平成11年6月11日付け準備書面(一)10頁,平成13年10月3日付け準備書面(6)16頁)第3 当裁判所の判断 1 証拠(各項の末尾に掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。 11日付け準備書面(一)10頁,平成13年10月3日付け準備書面(6)16頁)第3 当裁判所の判断 1 証拠(各項の末尾に掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。 (1) 本件土地及び本件建物等買収の経緯ア市における市営住宅建設計画市においては,平成7年ころから,市営住宅の建設供給計画として「住宅マスタープラン」を策定することとし,同プランは,平成9年3月に完成し,公表された。同プランによれば,市は,平成8年から平成17年までの10年間にわたって,毎年300戸(うち,建て替えによるもの150戸,新規に建設するもの150戸),合計3000戸(うち,建て替えによるもの1500戸,新規に建設するもの1500戸)の建設を行うことが計画されていた。 そして,上記プランに従った市営住宅建設のための用地の取得が必要となるところ,市においては,人口の増加の7割から8割が市の北部及び東部に偏在していたため,昭和56年ころから,建設局において市の南西部を重点的に開発していく考えを有していた。 (乙1,29,証人I)イ本件土地買収の申入れ本件土地は,市街化調整区域内に存在するため,市営住宅の建設等の開発が許可されるためには,周辺土地と併せて5ヘクタール以上の面積が必要であった。なお,平成7年の春ころ,Aを含む本件土地周辺の土地所有者ら約10名が,被告に対して,本件土地周辺の市街化調整区域の規制を外して欲しいとの陳情をした(ただし,市街化調整区域の規制の見直しは,都道府県知事の所管事項であるので,この陳情に対して被告は,県の方に具申しておく旨の回答を行った。)。(乙38,被告本人)Dは,昭和58年9月,本件土地上に本件建物等を建築し,ゴルフ練習場を経営し の所管事項であるので,この陳情に対して被告は,県の方に具申しておく旨の回答を行った。)。(乙38,被告本人)Dは,昭和58年9月,本件土地上に本件建物等を建築し,ゴルフ練習場を経営していたが,代表者であるAは,市が市の南部地区に市営住宅用地を探している旨の情報を得て,本件土地の市への売却を意図し,平成7年11月28日,市長応接室を訪れ,F局長同席のもと,被告に対し,本件土地及び隣接するE工業団地の敷地(以下,両土地を併せて「本件土地等」という。)を併せて,市営住宅用地として買収しないかと申し入れた。 Aの上記申入れに対する市側の回答として,F局長が,取りあえず本件土地を調査する旨Aに述べた。そして,被告は,F局長に対し,本件土地等の買収について,その適否も含めて調査するよう指示した。 被告の指示を受けたF局長は,G部長に対し,本件土地等に市営住宅を建設することについて検討するよう指示し,それ以後,本件土地等の買収に関する調査,打合せ等はG部長に指示して行った。 (甲1,42,乙35,38,証人F,同A,被告本人)ウ本件土地等の調査結果本件土地等の買収の適否について,住宅部において調査・検討したところ,本件土地等の存在する熊本市南部地区は道路整備も進んでおり,周辺町村を含む広域的な賃貸住宅需要の増大が見込まれる地区であること,その地区にあって本件土地等は市街化調整区域内にあるため地価が安価であること,そして,本件土地等の敷地が合計で6ヘクタール弱もあることから,市街化調整区域内にあっても開発許可を得られる可能性があること,高さ10メートルまでの建物の建築は可能であること,また,周辺地域が田で保水能力を持っており,本件土地等の敷地は既に盛土をしてあって浸水するおそれのないこと等が 開発許可を得られる可能性があること,高さ10メートルまでの建物の建築は可能であること,また,周辺地域が田で保水能力を持っており,本件土地等の敷地は既に盛土をしてあって浸水するおそれのないこと等が判明した。平成8年6月ころ,G部長はF局長に対し,上記調査・検討結果とともに,本件土地等について市営住宅用地として是非とも欲しい土地である旨の報告をした。 同年7月ころ,被告は,F局長及びG部長から上記の調査・検討結果の報告を受け,同人らに対し,そのようなことであれば,本件土地等の買収について引き続き検討するように指示した。 (乙2,27,35,38)エ本件土地買収に関する交渉経過(ア) 市は,平成7年11月から,Aとの間の本件土地買収に関する交渉を,Hを窓口として行った。HとAの交渉において,当初,Aが坪当たり40万円ほどの金額を提示していたのに対して,Hは,一貫して坪当たり30万円以下でなければ買収はできない旨応答しており,Aも平成8年夏ころには,坪当たり32万円の金額を提示した。 同年10月ころ,住宅建設課においては,本件土地等を翌平成9年に買収することとして,正式に予算請求することを検討し,その前提として,不動産鑑定士に本件土地等の概算評価額を尋ねたところ,坪当たり32万円の回答を得たが,市総務局管財課において本件土地が市街化調整区域内にあること等を考慮し,結局,本件土地について坪当たり24万円,E工業団地の敷地について坪当たり29万円という金額を算出した。 そこで,Hが,同月末Aに上記金額を伝えたところ,Aは気分を害し,「今後は上層部と交渉する。」旨述べて,Hとの交渉を打ち切った。 なお,Aとの交渉の中で,Hは,本件土地周辺が市街化調整区域であり,本件土地等のみを買 金額を伝えたところ,Aは気分を害し,「今後は上層部と交渉する。」旨述べて,Hとの交渉を打ち切った。 なお,Aとの交渉の中で,Hは,本件土地周辺が市街化調整区域であり,本件土地等のみを買収しても,周辺の農地や雑種地が残ることから,これらの一切の土地も買収して整形な形で市営住宅用地とすることが望ましいこと,予算的に相当額の用地費になるので,3カ年で買収せざるを得ないこと等の話は伝えていたが,本件建物等に関する交渉は一切行っていなかった。 すなわち,Dの側では,当初から,ゴルフ練習場として営業していた本件建物等についての補償をも希望していたが,Hは,当時,市営住宅用地として本件土地等を買収することのみを交渉の対象としており,本件建物等については,補償対象とするかどうかも検討していなかった。 (乙27,証人H,同A)(イ) 平成9年5月1日,住宅部(G部長)において,本件土地等の価格の鑑定を正式に依頼し,同年7月31日,鑑定の結果,本件土地の価格が坪当たり20万円,E工業団地の敷地が平均坪当たり26万円弱との鑑定結果を得た。 (甲41)G部長から上記鑑定の結果の報告を受けたF局長は,「これで行くしかない。」とG部長に指示した。(乙35)(ウ) 同年8月上旬ころ,AがI助役を訪れ,本件土地の鑑定評価額が低すぎる旨の苦情を述べた。 同月中旬ころ,AとE工業団地の理事長らが,F局長を訪れ,同局長に対し,本件土地等の鑑定評価額に対する不満を述べた。これに対して,F局長は,市としては,鑑定による価格でしか買収できないことをAらに伝えた。また,このころ,F局長は,被告に対し,本件土地等の買収に関し,Aらと価格の点で折り合いがつかない旨の報告をした。 さらにAは,同年10月ころ,F局長 しか買収できないことをAらに伝えた。また,このころ,F局長は,被告に対し,本件土地等の買収に関し,Aらと価格の点で折り合いがつかない旨の報告をした。 さらにAは,同年10月ころ,F局長に対し,自ら依頼した不動産鑑定士による本件土地等の鑑定価格を提示するなどして,市が提示した本件土地の鑑定価格に不満を述べ,同年12月上旬ころには,本件土地の価格がE工業団地の敷地の価格よりも低いこと,及び20万円という価格について再度不満を述べ,20万円でなければ買収できないというF局長の説得に応じようとしなかった。 (乙35,37,38,証人I)(エ) 同年12月中旬ころ,Aは,助役室を訪れ,I助役に対して,本件土地買収の交渉を担当している職員の態度が悪い(価格がくるくる変わり,嘘ばかり言う。)との苦情を申し入れ,また,市長室を訪れ,被告に対しても,交渉担当職員の態度が悪い旨の苦情を申し入れた。 そこで,被告は,I助役,F局長,G部長からこれまでのAらとの交渉経過・内容について聴取し,I助役に対して,今後Aとの本件土地買収交渉を直接担当するように指示し,その際,本件土地等は住宅部において市営住宅用地として必要な土地であるとの結論を出しているので,すべて適正,適法に取得できるのであれば,買収の交渉を進めて行ってよいとの指示をした。 I助役とAらとの実質的な交渉は,平成10年4月から同年6月まで3回程度行われたが,同交渉において,I助役はAに対し,本件土地の買収は市議会の承認案件であって,鑑定評価額以下でなければ議会の承認を得られない旨を説明し,前記(イ)の鑑定評価額である坪当たり20万円での売買を説得し,同年6月ころにはAから鑑定評価額での買収に応じてもよい旨の感触を得た。 (乙37,38, 議会の承認を得られない旨を説明し,前記(イ)の鑑定評価額である坪当たり20万円での売買を説得し,同年6月ころにはAから鑑定評価額での買収に応じてもよい旨の感触を得た。 (乙37,38,証人I)(オ) 上記I助役とAらとの交渉に並行して,同年4月,市の機構改革により,建設局に用地取得を所管とする管理部用地課(以下「用地課」という。)が設置され,同課に着任したJ課長が,F局長の指示により,住宅部と協議の上,本件土地等を住宅用地として取得するための事務手続をすることになった。 本件土地等の取得に当たっては,前記(イ),(エ)のとおり,既に土地の価格について鑑定評価額が算出され,具体的交渉も進んでおり,J課長は,住宅部とともに,予算,税務,都市計画法その他の関連法規の問題や,本件土地等の取得方法について検討した。また,同年6月4日,J課長は,F局長の指示により,Dの社員に対して,市が本件土地を買収した場合の税制上の問題及び買収の方法等について説明を行い,同社員から所有者ごとの土地の一覧表を受領した。 (甲44,乙28,証人J)(カ) 本件土地及び本件建物等に関するAらの事情Aらが市に対して本件土地の買収をもちかけた平成7年11月当時既に,Dは,本件建物について,AのK連合会に対する4億5000万円,2億円の各貸金債務をそれぞれ担保するための抵当権,Dを債務者とする(以下同じ。)株式会社Lのための根抵当権(極度額9億円)及び株式会社M銀行のための根抵当権(極度額5億円)を設定しており,本件土地等の買収交渉開始後にも,平成7年12月22日に,株式会社Nのために根抵当権(極度額1億5000万円),平成8年10月11日に株式会社M銀行のために根抵当権(極度額12億5000万円 おり,本件土地等の買収交渉開始後にも,平成7年12月22日に,株式会社Nのために根抵当権(極度額1億5000万円),平成8年10月11日に株式会社M銀行のために根抵当権(極度額12億5000万円)を設定し,さらに,平成9年2月13日,株式会社O建設に対する6億円の貸金債務を担保するために抵当権を設定した。また,平成10年10月以降,Dの経営状態に関して,市民税を滞納し,金融機関から多額の融資を受けていた旨の新聞報道がなされた。(甲1,10ないし13)Aらは,本件土地の買収の見込み及び経過を約10社の取引金融機関に報告をしていたこともあって,金融機関の信頼を失わないよう,なるべく早期に本件土地を売却する必要があり,市の提示する買収金額に不満を感じつつも,最終的にはこれを承諾せざるを得ない状況にあった。(証人A)オ本件建物等の取得の経緯(ア) 前記エの本件土地買収に関する交渉経過において,本件土地上に存在する本件建物等に関して,正面から問題として取り上げられなかったが,Dにおいては,本件建物等において現にゴルフ練習場を営業中であった上,本件建物等がまだ十分使用可能であったことから,建物の移転補償をも望んでおり,市の担当者においても,いずれ,本件建物等についてDの側で解体してもらうか市において移転補償するかという問題が生じることは認識していた。 (証人A,同J,同F)(イ) 本件土地の取得に際して,市において,本件建物等の移転補償をする場合,熊本市損失補償基準及び熊本市細則に従って補償金額を算出すると,3億7574万1000円となり,市が取得する場合であっても,同基準及び同細則に従って補償金額を算出すると,2億9469万9000円となる。 上記補償に関する規定にかかわらず,本件建 と,3億7574万1000円となり,市が取得する場合であっても,同基準及び同細則に従って補償金額を算出すると,2億9469万9000円となる。 上記補償に関する規定にかかわらず,本件建物等の所有者であるDが無償の取壊しに応ずるのであれば,市としても補償の必要はなくなるが,本件土地等の買収交渉の際には,市の交渉担当職員の方から本件建物等の補償の問題についてDに持ちかけたことはなく,また,I助役としては,本件建物等が強固で,十分使用可能な大型施設であり,未だDにおいて営業中であったことから,本件建物等をDの費用で解体を依頼するのは困難であるとの認識であったため,Aに本件建物等の解体について打診したこともなかった。 なお,市は,E工業団地の敷地上の建物については,建物の移転補償について検討することなく,建物所有者の費用において,建物の解体をするよう依頼した。また,市においては,平成10年当時,既に市営住宅用地として白藤団地450戸分,日吉団地280戸分の合計730戸分の用地を取得しており,前記アの住宅マスタープランに基づいて,市営住宅を年間150戸ずつ新たに建築していくと,上記730戸建設するのに5年間を要するから,本件土地に市営住宅を建設できるのは5年後以降の予定であった。 (甲42,乙5ないし7,37,39,40,証人J,同F,同I,同A)(ウ) 住宅部においては,前記(イ)の本件建物の移転補償の問題及び後記(2)アの各事実を考慮して,本件建物等の買収につき内部的な検討及び管財課,教育委員会事務局社会体育課(以下「社会体育課」という。)等の関係各部署との協議検討を行い,平成10年6月には,本件建物等を買収する方針を立て,本件土地等の買収に関する交渉がまとまりかけた同月ころ,F局長が,I助役に対し 課(以下「社会体育課」という。)等の関係各部署との協議検討を行い,平成10年6月には,本件建物等を買収する方針を立て,本件土地等の買収に関する交渉がまとまりかけた同月ころ,F局長が,I助役に対して,本件土地とともに本件建物等も買収するのが望ましいと意見具申した。 この意見具申を受けて,I助役は,被告に対して,本件建物等の補償費用の支出を避け,かつ,市営ゴルフ練習場を経営して市民の利便に供するため,本件土地とともに本件建物等を買収してはどうかと意見具申したところ,被告は,適正価格であれば,買収してもよいとの回答をした。 そこで,I助役は,Dに対して,本件建物等についても市が買収する旨打診したところ,Dもこれを希望した。Dは,本件建物等の価格について,その建設費用(4億4,5千万円くらい)と使用年数(築後15年)を考慮して2億2,3千万円程度を望んでいたが,市としては,鑑定による評価額で買収することを申し入れた。 市(J課長)は,平成10年7月8日,Dの承諾を得て,本件建物等の価格について鑑定評価を依頼し,同年8月10日,鑑定評価額8873万2000円との結果を受領した。その後,I助役は,本件建物等を鑑定評価額で売買することについてDの了承を得た。 本件土地及び本件建物等についての売買について,金額面での合意が成立したとの報告を受けたJ課長は,同月18日,Dの社員に対して,買収のスケジュールを説明し,本件土地及び本件建物等に設定されている(根)抵当権の抹消登記手続を依頼した。 (甲42,乙35,37,38,証人A,同I)カ本件土地及び本件建物等売買仮契約平成10年8月24日,熊本市市有財産審議会が開催され,本件土地及び本件建物等の取得が審議され,これらを取得するこ ,37,38,証人A,同I)カ本件土地及び本件建物等売買仮契約平成10年8月24日,熊本市市有財産審議会が開催され,本件土地及び本件建物等の取得が審議され,これらを取得することが承認された。 同年9月1日,市は,D,Aらとの間で,本件土地及び本件建物等について売買の仮契約を締結した。(甲44)(2) 本件建物等の取得に関する検討状況ア市における市営ゴルフ練習場建設の要望市においては,平成11年に熊本で開催される国体の正式競技としてゴルフが導入されることもあって,本件土地の買収交渉が始まってからも,市に対し,市営ゴルフ練習場の建設に関して,以下の要望がなされた。 (ア) 平成9年9月5日招集の平成9年熊本市議会第3回定例会において,P議員が,市におけるスポーツ施設の整備に関して,若い選手が気軽に利用できるような公共のゴルフ練習場を西南部地区に確保してもらいたい旨要望した。(乙3)(イ) 平成10年5月12日,プロゴルファーのQから,ジュニア層のために,市営のゴルフ練習場や合宿所を建設してほしい旨の被告あての陳情書が市役所に提出された。(乙8)(ウ) 同年6月5日招集の平成10年熊本市議会第2回定例会において,R議員が,小中学生の子供を対象に,市営のゴルフ練習場の建設,民間施設の借り上げなどの方法による低料金で利用できるゴルフ練習場の確保について要望し,これに対して,S教育長が,教育委員会として,市民のスポーツ活動の実態を踏まえながら,市民スポーツ振興の一環として十分検討をしていきたいと考えている旨回答をした。(乙4)イ本件建物等の買収について(ア) 前記ア(ア)の要望を受けて,社会体育課においては,既存資料に基 民スポーツ振興の一環として十分検討をしていきたいと考えている旨回答をした。(乙4)イ本件建物等の買収について(ア) 前記ア(ア)の要望を受けて,社会体育課においては,既存資料に基づいて熊本市民及び国民のゴルフに対するニーズの高さを調査するなどの検討を開始しており(乙31ないし34),また,平成7年から,国体正式競技となっている他の33の競技団体には何らかの助成を行っていたことから,ゴルフ競技についても何らかの助成をするべく検討を行い,さらに,前記ア(ウ)の要望を受けて,平成10年7月ころには,他都市の公営ゴルフ場,ゴルフ練習場等の調査を開始した。同調査の結果,国内に公営のゴルフ場が39カ所,地方自治体が経営するゴルフ練習場が3カ所,国営のゴルフ練習場が12カ所あることが判明した。(甲37,52,58,乙13,31,証人T)(イ) そのような状況にあって,平成10年5月中旬,住宅部住宅計画課から社会体育課に対して,本件建物等をジュニア選手の育成や国体選手の強化施設として購入するかもしれないので,運営についてアドバイスがほしいとの申入れがあり,これに対して社会体育課は,「それは大変ありがたい。本件建物等内には県内屈指のパッティンググリーンもあるので有効活用してはどうか。また,専任のコーチも置いたらよいのではないか。」等の意見を述べた。(乙31)(ウ) 住宅部においては,同年5月ころから,本件建物等を買収して管理運営することの検討を開始し,同年10月ころ,社会体育課,総務局総務課,財政課等関係各部署との間で,ゴルフ練習場運営の基本方針,経費の試算,人員配置,ゴルフ練習の運営に必要な条例の整備等について,近郊のゴルフ練習場の状況,市内の高校,大学のゴルフ活動状況などを参考に協議検討を重ね,その結果,社会 ルフ練習場運営の基本方針,経費の試算,人員配置,ゴルフ練習の運営に必要な条例の整備等について,近郊のゴルフ練習場の状況,市内の高校,大学のゴルフ活動状況などを参考に協議検討を重ね,その結果,社会体育課において,同年10月下旬,本件建物等は社会体育施設として管理運営するのが望ましいと教育長に報告した。 同年12月,教育委員会は,本件建物等の社会体育施設としての供用開始に向けて,条例改正等の準備に着手した。 (甲53,54,57,59,乙31)(3) 市における本件土地及び本件建物等の取得手続ア平成10年9月4日招集熊本市議会第3回定例会において,本件土地及び本件建物等の買収に関する議案が賛成多数により可決された。 なお,同定例会において,市の職員から,今回用地の購入に併せて本件建物等を取得した理由として,今回の建物はゴルフ練習場であり,耐用年数も10年以上残っているために住宅着工までの間は,国体正式種目となるゴルフの強化拠点として,また,ジュニア層の練習施設として使用利用したいとの答弁がなされた。(甲35,36)イ上記議会の議決を得て,同年9月22日,市はDらとの間で,前記第2の1(2)アイの各売買契約を締結した。 2 以上の認定事実を前提に市による本件建物等の買収代金の支出が違法な公金支出に当たるかどうか検討する。なお,本件においては,当裁判所が相当と思料する順序に従い,原告ら主張の各論点につき判断することとする。 (1) まず,市による本件建物等の買収は,Dらから市の市営住宅用地として本件土地等の買収を持ちかけられたことを契機に,その買収手続の過程で,ゴルフ練習場としての本件建物等の買収の検討が始められたのであるが,原告らは,そもそも本件土地について市営住宅用地として買収する以 件土地等の買収を持ちかけられたことを契機に,その買収手続の過程で,ゴルフ練習場としての本件建物等の買収の検討が始められたのであるが,原告らは,そもそも本件土地について市営住宅用地として買収する以上,更地として購入するべきであり(更地購入の原則),本件建物等を買収したこと自体更地購入の原則に反し,市長の裁量を逸脱する違法であると主張する。 確かに,市営住宅用地として地上に建物の存在する土地を買収する場合,将来同土地上に住宅用建物を建設することが予定されているのであるから,市の買収方法としては,地上建物に対する補償及び解体撤去費用の負担を避ける意味でも,土地・建物所有者の負担で建物を解体撤去してもらい更地で土地を買収することが得策であることは当然であって,昭和56年以降市が市営住宅用地として地上建物のある土地を買収した10件のうち土地の整形を保つなどの必要から建物等に対する補償をした3件以外の7件については建物等の補償・買収をすることなく土地を取得していたことが認められる(乙24ないし26,弁論の全趣旨)。 しかし,それだけでは市において,市営住宅用地の取得に際しては,必ず土地・建物所有者の費用負担において更地にさせなければならないとか建物等の補償・買収をしてはならないという原告ら主張の更地購入の原則が法的規範として存在するということはできず,原告ら主張の市議会における議員の発言及び新聞記事等についても,従前の市における用地取得において更地を購入したことが多かったという経験に基づくものであるに過ぎず,上記原則の法的根拠とみることはできない。 かえって,市は,建物等が存在する用地の取得に関して,国の公共用地の取得に伴う損失補償要綱(乙5)を受けて,熊本市損失補償基準及び熊本市細則(乙6,7)を制定し,現に前記3件に はできない。 かえって,市は,建物等が存在する用地の取得に関して,国の公共用地の取得に伴う損失補償要綱(乙5)を受けて,熊本市損失補償基準及び熊本市細則(乙6,7)を制定し,現に前記3件については地上建物等について補償を行っているのであって(上記3件に係る各土地については原告ら主張のとおりすべて市から買収を申し入れたものであったとしても,だからといって,土地所有者からの買取り申入れに市が応じる場合において,地上建物等の補償・買収が不可とされる法的根拠はない。),市が本件土地を,本件建物等を解体撤去させ更地にさせた上買収するか,本件建物等の補償・買収とともに買収するか等は,帰するところ,後記(2)と同様,市長の裁量に委ねられていると解するのが相当である。 そして,本件土地は,平成8年7月には市の市営住宅建設供給計画上,是非とも欲しい土地として買収対象候補とされ,平成9年3月公表の住宅マスタープラン実施の一環としても買収取得する高度の必要が認められていた(前記(1)ア,ウの事実,弁論の全趣旨)ところ,本件土地の買収は,Aらと市との任意の交渉による買収であって,市が,Aらに対して,無償で本件建物等の解体撤去を強制することはできない場合であったこと,特に,本件建物等が,まだ建築後15年経過したのみで,経済的耐用年数が20年もある堅固なものであったこと(甲42),ゴルフ練習場としては,市内でも有数の設備の充実した施設であり,買収交渉が行われていた当時も営業中であったことに加えて,Dが,金融機関等に多額の債務を負担し,本件建物にも多数の(根)抵当権を設定していたこと,本件建物等の解体費用は3595万1940円であったこと(甲43),Dは,本件建物等について,当初から補償を希望しており,その額について2億円以上の金額を考えていたこと )抵当権を設定していたこと,本件建物等の解体費用は3595万1940円であったこと(甲43),Dは,本件建物等について,当初から補償を希望しており,その額について2億円以上の金額を考えていたこと,さらに,本件土地買収の交渉過程において,Aは,熊本市の提示した買収金額に対して被告に苦情を申し入れるなど,土地の買収金額についても不満をもっていたこと等の事実からすれば,市が,Aらに対して本件土地の買収に当たり,本件建物等の無償での解体撤去を要請したとしても,Aらがこれに応じたであろうとは考え難く,被告が本件土地買収の交渉過程で,Dに対して本件建物等を解体撤去させなかったこと,あるいは解体撤去するよう説得等の努力をしなかったことをもって違法であると認めることはできない。 さらに,原告らは,Dが本件建物等を撤去して更地にしないのであれば,本件土地の買収自体を検討し直すべきであった旨の主張をするが,本件土地については,前記1(1)アないしウのとおり市の市営住宅建設供給計画実現のために買収の必要性が高い土地であることは検討されていたというべきであり,前記のとおり市に更地購入の原則が法的規範として存在するとは認められないことからすれば,同原則の存在を前提とする原告らの主張は採用できない。 (2) そこで,市による本件建物等の買収の違法性について検討するに,地方公共団体がどのような財産を購入するべきか(購入代金の適正も含む。)については,地方自治法96条1項8号が,財産の取得について一定の場合に議会の議決を要する旨定めているほかは,これを規制する法令は存在しない。原告らが主張する地方財政法2条1項は,地方公共団体の財政運営についての基本原則を,同法3条1項は,経費の算定についての基本原則を,同法4条1項は予算の執行面における基本原則をそれぞ は存在しない。原告らが主張する地方財政法2条1項は,地方公共団体の財政運営についての基本原則を,同法3条1項は,経費の算定についての基本原則を,同法4条1項は予算の執行面における基本原則をそれぞれ定めたものであって,地方自治法138条の2の規定も含め上記いずれの規定も地方公共団体の購入する財産について具体的規制をするものではない。すなわち,地方公共団体の財産購入契約は,長の裁量に委ねられているというべきであり,長においてその裁量権を逸脱,濫用し,必要性のない財産を,合理的な理由なく購入し,又は著しく高額な対価で財産を取得した場合に限って,当該財産の購入が違法となるものというべきである。 ア本件建物等の買収の必要性については,一面では,原告らの主張するように,市は,そもそも本件土地を市営住宅用地として買収したのであって,住宅マスタープランに従った住宅の建設計画によれば,5年後に本件建物等の移転又は取壊しが必要になること,市内及び近郊に民間のゴルフ練習場施設が相当数存在することなどを考慮すると,本件建物等の買収について高度の必要性があったということまではできない。 しかし,前記1(2)アのとおり,平成11年の熊本国体においてゴルフが正式競技に採用されたことを契機として,市営ゴルフ練習場の設置を求める市民からの陳情がなされており,また,国体の強化選手や小中学生等のジュニア層の練習施設として設置するという目的は他の民間施設にない特性である上(原告らは,市営ゴルフ練習場の利用対象,利用方法等が本件建物等の買収後まで確定していなかったことを非難するが,上記目的については,市民の要望もあって当初から掲げられていた。),市は,本件建物等の買収後,平成11年4月10日から市営ゴルフ練習場として供用を開始し,一般利用者に開放する ったことを非難するが,上記目的については,市民の要望もあって当初から掲げられていた。),市は,本件建物等の買収後,平成11年4月10日から市営ゴルフ練習場として供用を開始し,一般利用者に開放するほかに,高校生以下の使用料を低廉に設定し(2時間300円),初心者用のゴルフ教室を開催し,国体選手の強化練習施設,学校の授業での使用にも供していることが認められ(乙31,証人T),本件建物等の取得に全く必要性も合理性もなかったとはいえない。 イさらに,熊本市が本件建物等を買収することを決めた大きな理由として,本件土地の買収に伴って生じる本件建物等の補償の問題を避けることがあったと認められる。 本件土地の買収に際して,前記(1)のとおりDに本件建物等の解体撤去をさせることが期待できない状況にあったことから,少なくとも,市営住宅建設の際には,市の費用負担において本件建物等を解体撤去すべきことは避けられなかったのであり,また,Dとの間で本件建物等の補償が問題になれば,熊本市損失補償基準及び熊本市細則に従って,前記1(1)オ(イ)のとおり3億7574万1000円の移転補償あるいは2億9469万9000円の取得補償をしなければならない状況でもあったことからすれば,本件建物等を買収するという手法を採ること自体も,その買収金額いかんによっては,市として採りうべき選択肢の一つとして合理的なものであったというべきである。 そして,本件建物等の買収金額は,鑑定評価によって算出された金額を採用しており適正であったと認められる(甲42。なお,原告らは,同鑑定評価額は,本件建物等の使用期間が5年間であることを考慮していない点で疑問であるとも主張する(平成12年1月18日付け準備書面(第二回)6頁)が,一般に,不動産の経済的価値は,買主の主観的 ,同鑑定評価額は,本件建物等の使用期間が5年間であることを考慮していない点で疑問であるとも主張する(平成12年1月18日付け準備書面(第二回)6頁)が,一般に,不動産の経済的価値は,買主の主観的目的とは別に客観的に判断されるべきものであって,将来の解体予定が直ちに当該不動産の客観的な経済的価値に影響を及ぼすものではないから,原告の上記主張は採用しない。)。 ウ以上よりすれば,市の本件建物等の買収について,その必要性のない財産を合理的な理由なく買収したとは認められないから,被告に裁量権の逸脱又は濫用があったということはできない。 (3) 原告らは,市は本件建物等の買収を決定するに当たり,買収金額,本件建物等の管理,運営,利用計画等について一切検討しておらず,また,ゴルフ練習場の確保のために民間施設の借り上げなど他の方法を検討していなかったと主張する。 この点,前記1(2)イのとおり,本件建物等を市営ゴルフ練習場として管理運営する方法等について,住宅部,社会体育課,総務局総務課,財政課等関係各部署において具体的に協議検討を行ったのは,平成10年10月ころであるが,住宅部においては同年5月ころから内部的な検討を行っており,社会体育課にも相談を持ちかけるなど,ある程度の検討はしていたと認めることができる。 また,本件土地の買収交渉が相当程度進んでいた平成10年5月ころ本件建物等の買収の検討が開始されたこと(乙35),本件土地上に本件建物等が存在しているために,本件建物等の買収は本件土地の買収と同時期にされる必要があったといえること及び前記(2)イのとおり本件建物等買収の理由として高額の補償問題を避けることがあったこと等の事実からすれば,市が本件建物等を買収するという方針を決定した平成10年6月時点において,原告ら いえること及び前記(2)イのとおり本件建物等買収の理由として高額の補償問題を避けることがあったこと等の事実からすれば,市が本件建物等を買収するという方針を決定した平成10年6月時点において,原告らが主張するような本件建物等の管理,運営,利用計画等についてまで詳細かつ具体的に検討していなかったとしても,そのことをもって,被告の裁量権の逸脱又は濫用ということはできない。 市民のためのゴルフ練習場の確保のために民間施設の借り上げ等他の方法を検討していない点については,前記のとおり,本件建物買収の目的が高額な移転補償ないし取得補償を避ける意味もあったのであるから,これも被告の裁量権の逸脱又は濫用であるということはできない。 (4) 原告らは,本件建物等を市営ゴルフ練習場として運営するのに5年間の期間限定で行うのは,他の地方公共団体には例がないものであり,行政の継続性からも問題があると主張する。 しかし,本件土地が市営住宅用地であること,前記のとおり本件建物等の買収の目的が高額な移転補償ないし取得補償を回避し,市営住宅建設開始まではゴルフ練習場として市民の利用に供するというところにあったことからすれば,市営ゴルフ練習場の運営期間が5年に限定されること,他の地方公共団体に例がないことが本件建物等の買収に関して被告の裁量権の逸脱又は濫用ということにはならない。 (5) 原告らは,本件土地の買収に際して,Dの希望する買収金額を支出できないことから,本件土地の買収代金の上乗せとして本件建物等の買収を行ったとも主張する。 しかし,前記(2)のとおり,本件建物等の買収には,本件土地の買収とは別個固有の必要性及び合理性が存在し,その代金額は鑑定評価に基づく適正なものであり,また,本件土地買収経緯において,Dが本件土地の買収金 ,前記(2)のとおり,本件建物等の買収には,本件土地の買収とは別個固有の必要性及び合理性が存在し,その代金額は鑑定評価に基づく適正なものであり,また,本件土地買収経緯において,Dが本件土地の買収金額に不満をもっていたことは認められるものの,本件建物等の買収を市に違法不当な態様方法により要請したことをうかがわせる事実は認められず,本件土地代金の上乗せのために本件建物等の買収を行ったことを認めるに足りる証拠はない。 (6) また,原告らは,市が本件土地を買収する際に,行うべき事務手続に従わず,杜撰な手続で本件土地及び本件建物等を買収したことが違法であるかのような主張をし,上記行うべき事務手続の証拠として,旧建設省建設経済局調整課監修・用地補償研修業務研究会編「用地取得と補償」(甲61)を提出する。 しかし,甲61は,旧建設省において定めた内部的な指針を記載したものであって,各地方公共団体の任意の買収交渉においてこれに従わなければ,そのことによって買収手続が違法となるものではなく,他に本件建物等の買収手続に違法があったと認めるに足りる証拠はない。 3 以上説示した以外の点について,本件建物等の買収に関し,被告に裁量権の逸脱又は濫用があったとは認めるべき主張立証はなく,結局,本件建物等の買収代金の支出を違法と認めることはできない。 第4 結論よって,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 熊本地方裁判所民事第2部裁判長裁判官 田中哲郎裁判官市川多美子裁判官栗田正紀 別紙2 物件目録所在熊本市a町大字b字cd番地家屋番号 d番種 事第2部裁判長裁判官 田中哲郎裁判官市川多美子裁判官栗田正紀 別紙2 物件目録所在熊本市a町大字b字cd番地家屋番号 d番種類練習場・事務所構造鉄骨造亜鉛メッキ鋼板スレート葺2階建床面積 1階 872.54平方メートル2階 678.14平方メートル
▼ クリックして全文を表示