平成13(ネ)768 不当利得金返還(甲事件),貸金(乙事件)各請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成14年11月28日 福岡高等裁判所
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判決文本文21,175 文字)

主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 控訴人は被控訴人Aに対し,金25万7548円及びこれに対する平成12年10月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人Aのその余の請求を棄却する。 4 控訴人の請求を棄却する。 5 訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人B及び同Cに生じた分は控訴人の負担とし,控訴人及び被控訴人Aに生じた分は,甲,乙事件を通じてこれを20分し,その1を被控訴人Aの負担とし,その余は控訴人の負担とする。 6 この判決の第2項は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人Aの請求を棄却する。 3 被控訴人A及び被控訴人Bは,連帯して,控訴人に対し,金862万9032円及びこれに対する平成11年12月4日から支払済みまで年21.9パーセントの割合による金員(ただし,被控訴人Bについては金1000万円を限度とする。)を支払え。 4 被控訴人Cは,被控訴人A及び被控訴人Bと連帯して,控訴人に対し,金400万円を支払え。 控訴人は,上記第3項のとおりに請求を減縮した。 第2 事案の概要事案の概要は,以下の(1)ないし(5)のとおり原判決を補正し,(6)ないし(9)のとおり当審における主張を付加するほかは,原判決の「第2 事案の概要」欄記載のとおりであるから,これを引用する。 本件の争点は,突き詰めれば,① 本件各貸付は一連の1個のものか,複数のものか,過払金の充当はどのようにすべきか,② 日本信用保証の受領した保証料等はみなし利息に該当するかということである。 (1) 原判決3頁3行目の「合計865万3281円」を「862万9032円」と, 過払金の充当はどのようにすべきか,② 日本信用保証の受領した保証料等はみなし利息に該当するかということである。 (1) 原判決3頁3行目の「合計865万3281円」を「862万9032円」と,23行目の「契約で締結」を「契約を締結」と,それぞれ改める。 (2) 同4頁7行目から10行目までを次のとおり改める。 「本件取引契約に基づき,被控訴人Aは控訴人との間で,平成3年10月29日から平成11年11月5日まで,別紙取引一覧表記載のとおり,合計88回の手形貸付取引を行い,被控訴人Aは,控訴人及び日本信用保証に対し,同表記載の金額を支払った(天引分を含む。)(争いない事実,甲2の(1)ないし(45),2の(46)ないし(62)の各①,②,3の(1)ないし(82),乙1,8,32)。」(3) 同4頁12行目の「民法491条の適用」を「民法491条の適用があるか」と改める。 (4) 同7頁8行目の「原告のと取引」を「被控訴人Aとの取引」と改める。 (5) 同7頁22行目から同8頁10行目までを次のとおり改める。 「以上の計算方法を前提に過払金の処理をすると,別紙計算書1のとおり,本件取引契約における控訴人の被控訴人Aに対する①元利金債権が合計1393万3822円となり,利息制限法所定の利率を超過する各過払金が個別に不当利得金となり,②その累積額が合計530万4790円となる。なお,控訴人は,従前,原審における乙事件の訴状添付計算書のとおり,過払金の累積額を528万0541円と主張していたが,当審における別紙計算書1においては,別紙取引一覧表の貸付番号(以下,単に「貸付番号」という。)72から74までの貸金(平成10年5月12日,同月18日及び同年6月8日貸付分)につき,4か月分ずつに分けて利息を先取りし,更に過払金 ,別紙取引一覧表の貸付番号(以下,単に「貸付番号」という。)72から74までの貸金(平成10年5月12日,同月18日及び同年6月8日貸付分)につき,4か月分ずつに分けて利息を先取りし,更に過払金を残存元本に充当するという計算方法を採ったものである。その結果,過払金の累積額は530万4790円となったものである。 そして,平成11年12月3日,被控訴人Aは振り出した約束手形について取立禁止の仮処分(同月1日付け決定)の送達により,支払わない意思を明らかにしたため,期限の利益を喪失し,上記時点で相殺適状となり,控訴人は,①と②の債権について,対当額で相殺の意思表示をし,控訴人が被控訴人Aに対し有している残債権が合計862万9032円となるため,同額及びこれに対する平成11年12月4日から支払済みまで年21.9パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,前提事実の連帯保証契約に従い,被控訴人B及び被控訴人Cに対しても,保証債務極度額の範囲内で,連帯保証債務の支払を求める(乙事件)。」(6) 当審における控訴人の主張1(争点(1)について)ア控訴人の被控訴人Aに対する本件貸付は,すべて手形貸付であって,被控訴人Aは,借入に際し必ず手形を振り出し,満期日にこれを決済することにより一括弁済するというもので,利率が各取引ごとに個別に決定されていたこと,被控訴人Aが新たな借入を希望する場合は,借入希望日の5日前までに手形を控訴人に送付し,これをもって新たな借入申込みとする旨の契約となっていたこと,控訴人は,貸付ごとに融資の可否に係る稟議をしていたこと及び切り返し以外の新たな貸付が88件中16件も存在すること等と相まって,各貸付がそれぞれ別個の契約であることは明らかである。 イまた,切り返しによる貸付についても,控 否に係る稟議をしていたこと及び切り返し以外の新たな貸付が88件中16件も存在すること等と相まって,各貸付がそれぞれ別個の契約であることは明らかである。 イまた,切り返しによる貸付についても,控訴人が振り込み又は交付した金員を従前の手形の決済に用いるか否かは被控訴人Aの自由であり,一方,控訴人は従前の貸付及び新たな貸付分につき二重の不渡りの危険にさらされるのである(いわゆるダブル不渡り)。したがって,この場合も,連続した1個の貸付と見ることはできない。 ウ上記のとおり,本件各貸付はそれぞれ別個独立のものであって,仮に過払金が生じたとしても,不当利得金が発生するだけであり,被控訴人Aにはこれを他の債務に充当する意思はないのである。また,過払金を原判決のように新たな貸付金の元本に充当したり,あるいはいくつかの一連の貸付にグループ分けした場合の他のグループの債務に充当することは,当事者の意思に反するものである上,控訴人の期限の利益(支払期日までの利息を請求する権利)を奪うことになるから,不当である。すなわち,いかなる文献においても,利息付きの金銭貸借においては,貸主にも期限の利益が認められると説かれているのに,上記のような充当計算の方法を採ると,控訴人の期限の利益が失われることになり,この点の説明がつかないことになる。 (7) 当審における控訴人の主張2(争点(2)について)保証料等は,信用保証委託契約に基づき支払われる「信用保証(貸し倒れのリスクの大きい債務者の信用を補完するもの)」の対価であって,「元本使用」の対価ではないから,利息制限法3条のみなし利息には該当しない。日本信用保証は,平成3年,融資に対する保証業務を行うこと等を目的として設立され,当初は,親会社である控訴人の保護,援助を受けていたものの,その後次第に法人組織とし 3条のみなし利息には該当しない。日本信用保証は,平成3年,融資に対する保証業務を行うこと等を目的として設立され,当初は,親会社である控訴人の保護,援助を受けていたものの,その後次第に法人組織としての体制も整え,年々相当多額の納税もしてきたところ,仮に保証料等が利息であるとみなされた場合,日本信用保証は,誤って納税したことになり,控訴人は,取得してもいない金員を収入とみなされることになるが,行政上,過去の納税分について調整することは不可能である。 実質的に考えても,控訴人から貸付を受ける債務者は,銀行などで融資を受けることが困難な者が多いのであるから,貸し倒れのリスクは一般銀行などより高いのであって,危険を分散するために,別会社である日本信用保証が信用保証の業務をし,また,高額の保証料等を徴することには合理性があるというべきである。 (8) 当審における被控訴人らの主張(平成14年2月1日付け準備書面)仮に,争点のうち,各貸付の一体性が認められず,個別に充当・計算がされたとしても,別紙計算書2から明らかなとおり,控訴人の貸金債権残額は,相殺後の残金248万9805円にすぎないから,その旨を予備的に主張する(保証料等は利息とみなしている。)。同計算書の説明及び相殺の意思表示は,次のとおりである。 ア同計算書中,別表1は利息等が全部天引されているもの,別表2及び別表3は利息等の一部又は全部が利息手形により後取りとされているものについての表であり,別表1,2では,本手形が決済され,過払金が生じており(別表1では「K」欄の金額,別表2では「元本残額」欄の最終の金額),別表3では,手形が決済されておらず,元本が残存している。 イ各過払金を他に充当せずに不当利得金とすると,民法704条により利息の返還義務が生じるところ,その利率は,受 本残額」欄の最終の金額),別表3では,手形が決済されておらず,元本が残存している。 イ各過払金を他に充当せずに不当利得金とすると,民法704条により利息の返還義務が生じるところ,その利率は,受益者たる控訴人が商人であって,利得分を営業に使用しているから,商事利率の年6分というべきである。そこで,この利息分を,過払金発生時(本手形決済時)から控訴人主張の相殺適状時たる平成11年12月3日までの期間について計算し,別表1,2の各「遅延利息」欄に表示した。 ウそうすると,被控訴人Aの不当利得返還債権は,過払金948万5231円と利息146万9372円の合計1095万4603円となり,控訴人の貸金債権残額は元本1306万5969円と利息37万8439円の合計1344万4408円となる。 エそこで,被控訴人Aは控訴人に対し,平成14年2月4日の本件弁論準備手続期日において,上記不当利得返還債権をもって,上記貸金債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をした。 (9) 被控訴人らの上記主張に対する控訴人の反論ア被控訴人らの(8)の主張は,保証料等を交付元金から控除している点で合理性を欠くものである。また,過払金に利息が付加されることは否認する。仮に利息が付加されるとしても,過払金は民事上の一般債権であって,商事債権ではないから,利率は年5分である。 イ過払金が商事債権とされるとすれば,控訴人は被控訴人Aに対し,平成14年3月25日の本件弁論準備手続期日において,平成12年10月16日(甲事件の訴え提起の日)を遡る5年前の平成7年10月13日前の取引についての過払金債権の消滅時効を援用するとの意思表示をした。 第3 当裁判所の判断以下,下線を付してあるのは,当審において,原判決を実質的に修正した部分である。 1 前提事 月13日前の取引についての過払金債権の消滅時効を援用するとの意思表示をした。 第3 当裁判所の判断以下,下線を付してあるのは,当審において,原判決を実質的に修正した部分である。 1 前提事実(原判決3頁8行目から4頁10行目まで。ただし,補正後のもの。以下において同じ。),証拠(甲1,2の(1)ないし(45),2の(46)ないし(62)の各①,②,3の(1)ないし(82),5,6,16,18,78,79,81,86ないし90,乙1,2の(1)ないし(3),3の(1)ないし(6),4の(1)ないし(3),5の(1)ないし(6),6の(1)ないし(8),7の(1)ないし(8),8,9の(1)ないし(8),10の(1),(2),11の(1)ないし(8),14,17,19の(1),(2),20の(1)ないし(9),26,29,32,33,39,40の(1),(2),42の(10)及び(14),42の(58)の①,②,42の(59),42の(60)の②ないし④,43,証人D)並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 控訴人は,主として中小零細事業者向けの手形貸付等を行う金融業者で,中小企業者に対して物的担保はとらず,保証人を付けさせると同時に,控訴人の100パーセント出資の子会社である日本信用保証との間で信用保証委託契約を締結させて事業資金の貸付を行っており,控訴人の顧客の大部分は,銀行などの金融機関からは融資を受けられなくなった中小零細事業者である。 (2) 本件取引契約については,次の規定が定められている。 ア元本極度額を500万円(後に1000万円,最終的に1500万円に変更)とし,期間は5年間,その後同一条件で5年毎に自動更新する。 イ貸付の方法は,手形貸付とし,返済は,手形面記載の満期日に元金(手形金額)を一 00万円(後に1000万円,最終的に1500万円に変更)とし,期間は5年間,その後同一条件で5年毎に自動更新する。 イ貸付の方法は,手形貸付とし,返済は,手形面記載の満期日に元金(手形金額)を一括返済することにより行う。 ウ 2回目からの借入申込みは,申込書は不要で,手形の差入れをもって足りる。 (3) 前提事実のとおり,被控訴人B及び被控訴人Cは控訴人との間で,連帯保証契約を締結し(被控訴人Bは,平成2年8月28日に保証債務極度額500万円,その後保証期間を更新し,平成11年4月23日に保証債務極度額1000万円とし,被控訴人Cは,平成6年8月8日に保証債務極度額400万円としてその後更新),被控訴人らは日本信用保証との間で信用保証委託契約(被控訴人Aが控訴人に対する債務の履行を怠った場合は,日本信用保証は被控訴人らに通知・催告することなく代位弁済することができ,代位弁済額及び代位弁済日の翌日から年3割の割合による損害金等の求償請求を被控訴人らに行える旨の内容)を締結した(平成3年7月1日に被控訴人A及び被控訴人Bが保証元本極度額500万円で契約し,被控訴人Aは,平成9年7月23日に単独で保証元本極度額1500万円,被控訴人B及び被控訴人Cは,連帯保証極度額と同額を連帯保証契約日と同日に契約)。 (4) 本件のような控訴人の手形貸付は,一般に次のような経緯で行われている。 控訴人は顧客と「手形貸付取引約定書」(本件取引契約書と同一のもの)によって,継続的反復的な手形貸付契約を結び,3か月ないし4か月程度先(4か月が一般的)を満期日とする約束手形(旧手形)を顧客に振り出してもらい(最初の貸付額を満期日を異にする複数の手形に分割することもある。),同手形の額面額から利息,調査料及び取立料(以下,併せて「利息等」ともいう。)並びに保 約束手形(旧手形)を顧客に振り出してもらい(最初の貸付額を満期日を異にする複数の手形に分割することもある。),同手形の額面額から利息,調査料及び取立料(以下,併せて「利息等」ともいう。)並びに保証料及び事務手数料(保証料等)を控除した金員を顧客に交付あるいは顧客の口座に振り込んで貸し付ける。 旧手形の満期日の1週間位前になると,控訴人の従業員が顧客に電話し,継続して融資を受けるかを確認し,あるいは積極的に継続融資を勧誘し,顧客が承諾すると,控訴人の従業員は顧客に対し,旧手形の満期日を振出日とし,満期日が3か月ないし4か月程度先の同額面の約束手形(新手形)を新たに振り出すよう,また,新手形の額面額から前記利息等を控除した金員を顧客の口座に振り込む(あるいは現実に現金を交付することもある。)ので,上記金員に旧手形額面との差額金を加えて,控訴人の口座に振り込んでおく(同金員で旧手形を決済する。)よう,指示あるいは説明をする。 上記指示あるいは説明に従い,顧客は,新手形を振り出して旧手形の満期日(次回の借入希望日)の5日前までに控訴人に送付し,新たな貸付分の現金が控訴人から振り込まれると(控訴人は,新手形を確保してから現金を振り込む。),他から工面した旧手形額面との差額金を加えて同日あるいは直後に上記合計した金員を控訴人の口座に振り込み,旧手形が決済されるが,上記一連の手続によって,新たな貸付分について顧客に振り込まれた現金は直ちに控訴人へと再び振り込まれるので,顧客が現実に利用することはほとんどない。 上記のような切り返しによる貸付手続が反復継続して行われるのであって,このような切り返しによる貸付は,1人の顧客の取引中約8割を占め,残り2割が,増額,減額又は旧債務と関係のない取引である。 1人の顧客について,融資の極度額は,1000万 続して行われるのであって,このような切り返しによる貸付は,1人の顧客の取引中約8割を占め,残り2割が,増額,減額又は旧債務と関係のない取引である。 1人の顧客について,融資の極度額は,1000万円が基準であり,現実の取引金額の平均は640万円から650万円となっており,3年以内に取引が終了する割合は全体の3,4割であり,平均すると6年間程度取引が行われる。 控訴人は,顧客(従来全国に約7万社の顧客を有していたが,現在約3ないし4万社)の貸付申込みに対し,融資をするか否か,継続させるか否かを稟議するため,控訴人本社の審査部(現在140名から150名)で稟議し,各貸付の稟議書が残される。 (5) 被控訴人Aの本件貸付についても,全88件の貸付について,約8割が前記切り返しによる取引となっており,うち6件(貸付番号2,4,5,13,45及び48)は,被控訴人A自身が自己資金で決済したが,そのうち2件(貸付番号45及び48)は,決済日直前に別系列の手形貸付が増額され,実際には別系列の手形への統合がなされているにすぎず(別紙計算表参照。23系列貸付番号48の弁済資金は14系列貸付番号52のうちの115万円であり,貸付番号45の弁済資金は3系列貸付番号51のうちの100万円である。),上記の6件中4件(貸付番号2,4,13及び45)を含めて,15件(最初の貸付である貸付番号1は当然であるから除外している。)が旧手形と直接関係のない貸付であるが,そのうちの貸付番号2,4及び12を除いては,いずれも顧客が資金を必要とする冬(12月),春(3月),夏(お盆前),控訴人上場記念,イベントのキャンペーンなどにより,控訴人が融資を積極的に勧誘した時の貸付にすぎない(乙8,32,33,証人D)。また,増額分についてもその後いずれかの系列の貸付手続に統合さ 前),控訴人上場記念,イベントのキャンペーンなどにより,控訴人が融資を積極的に勧誘した時の貸付にすぎない(乙8,32,33,証人D)。また,増額分についてもその後いずれかの系列の貸付手続に統合されて同様の切り返しによる貸付が継続されている(別紙計算表)。 (6) 日本信用保証についてア日本信用保証は,控訴人の融資に対する信用保証を業務内容とし,平成3年5月27日に設立された控訴人の100パーセント出資の子会社であり,保証料,事務手数料,債権回収額等を収入源とし,代位弁済額と人件費等を支出し,控訴人とは別個に税務申告,決算処理(ただし,会計処理は控訴人の連結子会社として行われている。),あるいは債権回収(ただし,上記手続や提訴は控訴人と渾然一体となって行われていることもある。)を行っている。 イ日本信用保証は,顧客と独自に主に前記(3)の内容の保証委託契約を締結して,各貸付毎に保証料等を控訴人に委託して徴収し,同徴収額はその後月2回にわたり控訴人から送金される。代位弁済額は,平成10年度は,月当たり平均47億円,平成11年度(9月までの集計)は,月当たり平均52億円程度(乙14)であり,その都度控訴人に小切手決済の形で支払われている。 ウ日本信用保証の平成9年3月31日現在の取締役3名のうち2名は控訴人の代表取締役であり,他の1名も控訴人の取締役で構成され(甲5),従業員は平成11年4月までは20名であった(多くは控訴人の従業員である。証人D)。その後,控訴人との同一性が多くの裁判で争われたため急激に従業員を増員し,平成12年5月時点で合計184名(控訴人からの転籍162名,独自採用22名。乙17)であり,全国の債権回収業務に当たるが,その際控訴人の社員に事務代行として協力を求めることもある。 エ保証料率は,日本信用保証に で合計184名(控訴人からの転籍162名,独自採用22名。乙17)であり,全国の債権回収業務に当たるが,その際控訴人の社員に事務代行として協力を求めることもある。 エ保証料率は,日本信用保証において定めるが,高率になりすぎると顧客が敬遠するという問題もあり,実質的には,日本信用保証と控訴人との協議で決められることになる。また,日本信用保証には従前独自の審査部門はなかったが,平成11年4月から独自の審査部門を設けている。そして,控訴人が貸付を実行する場合は,必ず日本信用保証が保証しており,日本信用保証が保証を行うのは控訴人の融資に限られている。なお,控訴人は,日本信用保証の設立,保証に伴い,従前の貸付利率を逓減し,保証料等を併せても従前の利率を大きく上回ることのないようにしている。 2 争点(1)(本件取引契約に基づく各貸付については,民法491条の適用があるか,あるいは一連の取引として利息制限法所定の利率を超える過払部分は,次の貸付元本に順次充当して計算されるべきか)について(1) 前記1の認定事実によると,次の諸点が認められる。 ア本件取引契約の期間は,当初は5年であるが,その後5年単位で自動更新され,保証人の保証期間も全体について3年間(その後更に延長)と設定するなど長期間の継続的反復的な取引を予定し,取引額も一般的に元本極度額として1000万円を基準に設定し(本件の場合も,元本極度額は当初500万円であったが,最終的には1500万円に設定されている。),保証元本極度額も1000万円,400万円とするなど高額の取引を予定し,平均して6年間継続取引がなされ,現実に被控訴人Aも平成3年10月29日から平成11年11月5日までの約8年間もの長期間にわたって継続して取引を行っていること(また,当事者双方が本件訴訟で提出する裁判例の 6年間継続取引がなされ,現実に被控訴人Aも平成3年10月29日から平成11年11月5日までの約8年間もの長期間にわたって継続して取引を行っていること(また,当事者双方が本件訴訟で提出する裁判例の事案でも4年ないし8年間という長期間の取引が継続されている。),2回目からの貸付については申込書などは不要で,単に手形の交付だけが要求され,極めて簡略化されていること,取引が長期間継続すれば,それだけ控訴人は高額の利息等の利益を得られること,貸付手続の経緯を見ても,満期前に融資の継続手続を控訴人の従業員が説明したり積極的に勧誘する運用がされていることなどから,本件取引契約書では,各手形貸付毎の一括返済が規定されて,各貸付の支払期日は4か月程度とされているものの,控訴人の意図及び実質的な運用においては,当初から長期間の高額な一連の取引が予定されているものである。 イ控訴人の顧客の大部分は,銀行などの金融機関からは融資を受けられなくなった中小零細事業者であり,このような顧客の状況や事業資金として借り入れる目的からすると,短期間のうちに各貸付金を弁済できるとは考え難いのに,控訴人は各貸付を3か月ないし4か月という短期間の満期日をあえて設定した手形貸付を実行し,しかも最初の貸付時から,満期日の異なる複数の手形に分割させたりもしていることなどからすると,短期間の手形貸付を介在させることで,貸付の同一性や元本の継続性を切断させ,過払金の元本充当の主張を封ずる意図が窺えるものである。 ウ新たな貸付についてみると,多くの事案において,形式的には一度顧客の口座に金員が振り込まれるものの,直後に旧手形の決済資金として再び控訴人の許に還流しているのであり,顧客にとっては新たな貸付分の金員を事実上利用できず(厳密に見れば,消費貸借上の要物性の要件も充たすか疑問 員が振り込まれるものの,直後に旧手形の決済資金として再び控訴人の許に還流しているのであり,顧客にとっては新たな貸付分の金員を事実上利用できず(厳密に見れば,消費貸借上の要物性の要件も充たすか疑問となる。),通常の消費貸借のように顧客が自由に使用できる金員とは全く異なるものであり,このような切り返しによる貸付が全体の約8割を占め,この範囲では,実質的には個別の貸付がその都度行われているとは認められず,高金利の利息等の支払が継続しているにすぎないと認めるほかない。 上記の点に関し,控訴人は各貸付毎に,現実に貸付金を送金又は交付して,顧客である被控訴人Aの自由財産となっているもので,控訴人が旧手形決済に充当せよと指示することはできない旨主張するが,前記一連の手続は前記のとおり控訴人の説明ないし指示の下で行われ,前記のような顧客の状況からすると,短期間のうちに別に決済資金を準備することが困難であることは容易に推測され,仮に新たに振り込まれる金員を旧手形の決済資金に使用しなければ,旧手形の不渡りに陥り,経済的信用失墜や事業の倒産も予想されるのであるから,顧客としては当初予定した旧手形の決済に事実上使用せざるを得ないものであり,現実の運用においても例外はあるにせよ,全取引中約8割が旧手形の決済として利用されていることにかんがみ,控訴人の上記主張は採用できない。 (2) 以上の本件取引の実態にかんがみれば,本件88回の貸付のうち切り返しの分,すなわち旧債務の弁済日当日に同額の貸付がされた場合は,被控訴人Aは従前の貸付取引に係る弁済をしない限り新たな金融を受けることができず,逆に新たな金融を受けない限り従前の債務を弁済できないという立場にあったものと見て差し支えないから,新旧両債務は一連の1個の債務と認めるのが相当であり,これと同様の趣旨で,旧 を受けることができず,逆に新たな金融を受けない限り従前の債務を弁済できないという立場にあったものと見て差し支えないから,新旧両債務は一連の1個の債務と認めるのが相当であり,これと同様の趣旨で,旧債務の弁済日当日に同債務額に増額された貸付がされた場合も,新旧両債務は一連の1個の債務と認めるべきであるが,そのような関係にない新旧の債務は,系列を異にするものというほかない。そうだとすれば,本件各貸付は,別紙計算表記載のとおり,16個のグループ(系列)に分類されるものである。 (3) 本件各貸付を一連の取引と認めたり数個のグループにまとめたりする考え方に対し,控訴人は,原審において縷々主張している。 しかしながら,①一括返済の合意や手形の決済方式は,予め控訴人が用意していた定型の契約書やシステムにすぎず,顧客としては,控訴人から融資を受けるには,そのまま契約して控訴人の用意したシステムに従わざるを得ないのであり,実質的には前記のような切り返しの貸付が多くされ,利息等の支払が継続されているにすぎないので,一般的に用いられる当事者の意思を裏付ける証拠として,前記契約書や手形決済方法のみを根拠とすることは不当であり,本件では,より実質的な運用の側面を考慮すべきであること,②本件取引契約書は,形式上は,確かに各手形貸付について共通する基本的約定を定めたものといえ,他の金融機関も類似の基本契約書を使用してはいるものの,切り返しの高額の取引を長期間継続させる方法は控訴人独自のものであり,本件取引契約書が包括契約として機能しているといえるのであり,単に他の金融機関も使用している共通する基本的約定を定めたものとして,表面的な形式の判断のみで,一連の取引性を否定することはできないこと,③法律的には素人である控訴人の顧客や被控訴人Aが,各手形決済毎に取引 融機関も使用している共通する基本的約定を定めたものとして,表面的な形式の判断のみで,一連の取引性を否定することはできないこと,③法律的には素人である控訴人の顧客や被控訴人Aが,各手形決済毎に取引が終了し,過払金が充当されないことなど熟知しているとは到底考えられず,むしろ,控訴人が説明あるいは指示するままに手形を振り出し,資金を工面して従来借りていた貸金の一括返済を延期させているという認識を持っているものと考えるのが自然であること,④前記認定のとおり,1人の顧客の全取引のうち約8割が切り返しによる貸付であり,被控訴人Aの場合も同様であるといえ,本件取引の基本的性格,運用及び控訴人の意図は,上記取引によって,元本を減らさずに高額の利息等を継続的に取り続けることにあると認定すべきであり,残りの2割が別の取引であるという例外を強調して,その余の上記一連の取引と認められるものまで個別の取引ととらえるのは不合理であること,⑤稟議の点に関しては,全国の日常的に生じている膨大な顧客の各貸付につき,本社審査部のみで実質的な稟議がされているか疑問であり(証人Dによれば,一人の顧客に対する稟議は,保証人も含め,ほぼ1日で完了するというのである。),仮に何らかの稟議手続が行われていたとしても,貸付の延長をする場合でも信用調査・稟議は必要なのであるから,稟議の事実が各貸付の個別性の根拠ともいえないこと,⑥控訴人は,各貸付の都度現実に現金を振り込んではいるものの,前記(1)ウで指摘したとおり,顧客は現実には控訴人が指示・意図するとおりに旧手形の決済資金としてそのまま控訴人へ還流させて使用せざるを得ないのであり,実際にも1人の顧客について約8割を占める貸付について上記のように運用がされているという実態を無視して,可能性として自由に使用できる金員なので個別の取 控訴人へ還流させて使用せざるを得ないのであり,実際にも1人の顧客について約8割を占める貸付について上記のように運用がされているという実態を無視して,可能性として自由に使用できる金員なので個別の取引であると認定するのは不当であること(控訴人は,この点,現実に現金を振り込むことで,決済されないと,旧手形と新手形のダブル不渡りの危険を負っていることを強調するものの,むしろ顧客の方が手形を2通控訴人に所持されて前記のとおり不渡倒産を避けるため決済資金に使用せざるを得ないものとみるべきで,控訴人は仮に不渡りになっても債権が消滅するわけではなく,顧客や保証人の財産からその後も回収可能であり,不渡りによる不利益は倒産を余儀なくされる顧客の比ではないといえる。)などの点にかんがみ,前記控訴人の主張はいずれも採用できない。 (4) したがって,別紙計算表記載のとおり,本件各貸付を16個のグループに分け,かつ,充当関係については,民法489条,491条に従い,同表記載のとおり,1グループの中で最終的に過払金が発生したときに,これを残存する他のグループの貸金(期限未到来のものを含み,弁済期が到来し,又は最も早く到来するものを先順位とする。)に充当する(約定に従い,1年を365日とし〔甲1,乙2の(1)ないし(3)〕,利息制限法所定の利率で計算する。)のが相当であると考える(1グループの中で過払金が生じた都度,残存する他のグループの貸金に充当するという考えもないではないが,被控訴人Aは,過払金発生時,すなわち旧債務の弁済時にこれと連続性のある債務を負担しているのであるから,債権債務の関係を殊更複雑にすることなく,当該新債務の元金に充当するのが当事者の合理的意思に合致するものと考える。)。 同表中の「交付元金額」欄記載の金額は,貸付番号1ないし71について あるから,債権債務の関係を殊更複雑にすることなく,当該新債務の元金に充当するのが当事者の合理的意思に合致するものと考える。)。 同表中の「交付元金額」欄記載の金額は,貸付番号1ないし71については,控訴人が利息等のほか日本信用保証の保証料等を差し引いて交付(口座振込を含む。)した金額であり,同72ないし74については,控訴人が利息等を差し引いて一旦交付した金額から即日回収した日本信用保証の保証料等(分割した一部)を差し引いた金額である。また,同75ないし86は,利息等及び保証料等が後払いのため,貸付元金(手形金額)どおりであり,同87及び88は,貸付元金(手形金額)から即日回収した保証料等(分割した一部)を差し引いたものである。 以上のうち,日本信用保証の保証料等を交付元金から除外すべき理由,すなわち,保証料等を利息制限法3条の利息とみなすべき理由は後に説示するとおりである。また,一旦交付した金員のうち,即日回収された保証料等は,被控訴人Aにおいて利用することができなかったものであるから,実質的には,交付されたものと評価することはできない。上記の回収方法は,利息制限法の制限を潜脱するものにほかならず,回収された上記保証料等を貸付金の一部と見ることはできない。 (5) 控訴人は,当審において,特に,上記のような充当方法について,当事者の意思に反する上,債権者の期限の利益を奪うものであると主張する。 しかしながら,前掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,本件を含め一般的に,貸付取引が継続している間は,過払金が発生していても,それが存在するかどうかを借主に明らかにせず,むしろこれを秘匿し続け,その返還を免れようとしていたことが窺われるのであって,控訴人は,借主による過払金返還請求権の行使を妨害しながら,その行使の一態様である過払 るかどうかを借主に明らかにせず,むしろこれを秘匿し続け,その返還を免れようとしていたことが窺われるのであって,控訴人は,借主による過払金返還請求権の行使を妨害しながら,その行使の一態様である過払金による相殺があるまでは貸金は減少しないなどと主張するものである。そして,このような過払金は,更に控訴人の高利の金融業の原資として再利用される。そうすると,控訴人のいう「期限の利益」というものの実態は,借主による過払金返還請求権の行使を妨害して過払金を返還しないばかりか,貸金は減少しないとして高利を徴収する一方で,返還しない過払金相当額を他の貸付の原資として運用し,新たな貸付利益を取得することを意味するのであって,借主との関係で正当に保護すべきものとはいえない不当の利益であるといわざるを得ない。このような事情を考慮し,また,民法489条が期限の到来していない債務についての充当を認めていることから,過払金は弁済期にない債務にも充当されると解するのが相当である。利息制限法は,貸主が高金利を取得することを規制することによって,経済的に弱い立場にある者を保護することを目的としているから,過払金について上記のような充当をすることは,このような利息制限法の趣旨に沿うものであるし,また,本件における上記の事実関係の下では,当事者の合理的意思にも合致するというべきである。 したがって,控訴人の上記主張も理由がない。 3 争点(2)(日本信用保証が受領している保証料等は,利息といえるか)について(1) 利息制限法3条の趣旨銀行等から資金を借りる力のない中小零細事業者や庶民は,高い金利であっても町の金融業者から借りざるを得ない反面,高金利の金融を放置しておくと,経済的弱者である借主は,高金利の支払に追われ,雪だるま式に増加する借金のため生活自体が崩壊しか 業者や庶民は,高い金利であっても町の金融業者から借りざるを得ない反面,高金利の金融を放置しておくと,経済的弱者である借主は,高金利の支払に追われ,雪だるま式に増加する借金のため生活自体が崩壊しかねないため,利息制限法は,当事者の合意を基本とする民法の原則を排除し,強行法規として金利の上限を制限している。最高裁昭和39年11月18日判決(民集18巻9号1868頁)も,利息制限法の精神を尊重し,かつ,徹底させるべく,利息制限法所定の制限を超える利息を任意に支払った場合は,過払分は民法491条により当然に残存元本に充当されるとしている。 そして,歴史上金銭消費貸借において,礼金等の名目で貸主が金銭を徴収することで,利息制限を潜脱する手段として利用してきた経緯にかんがみ,潜脱を防止し,経済的弱者を保護するため,利息制限法3条は,「債権者の受ける元本以外の金銭は,礼金,割引金,手数料,調査料その他何らの名義をもってするを問わず,利息とみなす」旨規定している。 本件の日本信用保証が受領する保証料等が,利息制限法3条のみなし利息と認められるか否かは,利息制限法の立法趣旨及び同法3条の趣旨に照らして,実質的に利息制限法を潜脱する手段として利用されているかどうかを検討すべきである。 (2) 前記1(6)の認定事実によれば,日本信用保証は,控訴人とは別の法人であり,独自に信用保証委託契約を締結して,代位弁済や債権回収業務を現実に行い,税務申告や決算処理なども控訴人とは別に行っていることが認められる。 しかしながら,①日本信用保証は控訴人の100パーセント出資の子会社であり,代位弁済という形をとったとしても,回収不能による損失は,最終的には唯一の株主である控訴人が被ることに変わりはなく,それにもかかわらず,控訴人が別法人として日本信用保証を設 ント出資の子会社であり,代位弁済という形をとったとしても,回収不能による損失は,最終的には唯一の株主である控訴人が被ることに変わりはなく,それにもかかわらず,控訴人が別法人として日本信用保証を設立させ,保証料等を各貸付の都度利息とは別に徴収させることにしている背景には,利息制限法3条の適用を免れようとする意図が推測されること(現実に,日本信用保証による保証料等の徴収がされる前の控訴人の利息等と,上記徴収開始後の控訴人の利息等に保証料等を加えた率がほぼ一致している。),②日本信用保証は控訴人の貸付先については必ず保証をしているし,保証料率も事実上独自に決めることができず,保証先も控訴人に限定されており,控訴人から完全に独立して業務を行っているとは認め難いこと,③日本信用保証の取締役や監査役も控訴人の役員や経理部長が兼ねており,全国で当初約7万社を有する顧客に対する信用保証業務を処理するのに,その従業員は,平成11年4月までは20名(多くは控訴人の従業員である。証人D)にすぎず,その後,顧客数が3ないし4万社に減少したにもかかわらず,控訴人との同一性が多くの裁判で争われたため急激に従業員を増員し,平成12年5月時点で合計184名になったものであり,しかもそのほとんどは控訴人からの転籍者であり,業務を控訴人の社員に代行させたりしており,控訴人と独立した業務実態を有しているかも疑問があること,④日本信用保証のような別法人の設立や契約関係,経理関係を別法人独自のものとして整備するのはそれほど困難なことではなく,反面,別法人の収益として利息制限法の適用を免れることによって得られる利益は,控訴人が全国規模で膨大な顧客数を有していることからすると,相当なものになること,⑤控訴人の顧客は,銀行等から融資を受けられない中小零細事業者がほとんどで,日 用を免れることによって得られる利益は,控訴人が全国規模で膨大な顧客数を有していることからすると,相当なものになること,⑤控訴人の顧客は,銀行等から融資を受けられない中小零細事業者がほとんどで,日本信用保証との信用保証委託契約を断れば,控訴人から融資が受けられず,融資を受けるためには不本意でも同委託契約を締結してしまうことが容易に推測でき(現実に顧客が同委託契約を断れば,控訴人は融資を断る方針であり,過去にもそのような例があった旨控訴人の取締役である証人Dは証言している。),借主は,保証料等も利息その他の金員と一体と認識して控訴人に支払っており,実質的にも意識的にも借入元本の対価的性質が認められること,⑥特に控訴人の取引は,前記のとおり,あえて短期の手形貸付を繰り返させて長期間の継続取引を予定しており,各貸付毎に高額の保証料が頻繁に徴収される仕組みとなっていることから,経済的弱者である顧客は,保証料等の負担分だけでも雪だるま式に大きくなってしまうことなどの点が指摘できる。 また,⑦信用保証協会法により設立された信用保証協会は,厳格な法定の要件に基づいて主務大臣が特に認可した場合に初めて認められ,主務大臣への業務報告,これによる監督,違反した場合の罰則なども規定されており,同法によらずに,一般的に,金融業者が任意に別法人を設立させ,保証料という名目で貸付の都度金員を自由に借主から徴収できるとすると,上記別法人の運営は,信用保証協会法のような公的な監督や罰則も受けず,その徴収分は,当然に利息制限法の規制が及ばないばかりか,契約自由の原則により,理論的にはいくらでも高額の金員を自由に徴収できることになる(この点,前記D証人は,保証料等をあまり高くすると,商品性が落ち,顧客が他社に流れていってしまうので,自由ではない旨証言するものの,こ り,理論的にはいくらでも高額の金員を自由に徴収できることになる(この点,前記D証人は,保証料等をあまり高くすると,商品性が落ち,顧客が他社に流れていってしまうので,自由ではない旨証言するものの,このことは,とりもなおさず,顧客が保証料等も一体として元本の対価的要素としてとらえていることを意味するものである。)のであり,容易に信用保証協会法,利息制限法の制限が潜脱されてしまうことなどが認められる。 上記諸点を総合して考慮すると,利息制限法の立法趣旨や同法3条の趣旨にかんがみ,日本信用保証による保証料等の徴収は,利息制限法3条を潜脱するという趣旨・効果があると認められ,上記徴収の制度自体も,潜脱を目的として控訴人により考案された一つのシステムと解すべきであり,利息制限法の適用においては,利息制限法3条により保証料等を利息とみなして計算するのが相当である。 (3) この点,控訴人は,原審において,①日本信用保証は,控訴人とは別に顧客及び保証人(被控訴人ら)と信用保証委託契約を締結し,各貸付毎に被控訴人Aは,信用保証料等が明記された保証受託書(乙7の(1)ないし(8))を受け取っているので,保証料等支払の認識を被控訴人らは有していること,②中小零細事業者に対しては,銀行をはじめとする金融機関はその融資の役割を果たしておらず,政府も適切な金融システムを構築していないのが現状であり,中小零細事業者の資金需要に応えるためには,厳しい条件(信用調査や物的担保の徴収など)を課さずに簡易迅速に金融を行うことが必須の条件となるところ,上記のような金融は貸し倒れ等のハイリスクを伴うもので,上記危険に備えるべく信用保証制度が必要となったものであること,③利息制限法は,ハイリスク商品についてのリスク回避のためのコスト負担まで予定しておらず,保証料制度まで否 等のハイリスクを伴うもので,上記危険に備えるべく信用保証制度が必要となったものであること,③利息制限法は,ハイリスク商品についてのリスク回避のためのコスト負担まで予定しておらず,保証料制度まで否定すると,民間金融制度の否定につながりかねないこと,④日本信用保証は,これまで独立の法人として納税を行い,行政上も独立の法人として扱われているのに,司法がこれを否定し,控訴人の取得した利益を利息としてみなすことは,まさに暴挙といえることなどを主張する。 確かに,被控訴人らは,控訴人とは別に日本信用保証と信用保証委託契約を締結し,各貸付の都度,保証料等として金員を支払っていること,利息制限法の制限利率の下で,貸し倒れ等の危険を負いつつ,金融業を維持し,中小零細事業者の資金需要に応えられるかは困難を伴うという面も理解できないわけではなく,危険回避のためのコスト負担を借主に負わせるという考え方も一概に否定できないところである。 しかしながら,①前記のとおり,利息制限法3条の趣旨は,貸主と借主の経済的な力関係の下で,利息とは別に礼金等の名目で貸主が金銭を徴収することで,利息制限を潜脱する手段として利用してきた経緯にかんがみ,徴収の名目や当事者の認識,合意を排除して(例えば,借主が「礼金」の名目で利息とは別に金員を支払う場合も,貸主・借主間では,「礼金」をその貸金について支払うとの合意と認識は存在しているのである。),経済的弱者を保護するため,何らの名義を問わず,利息とみなして,利息制限法の潜脱を防止しようとするものであるところ,「保証料・事務手数料」などという名目も,その認識や当事者の合意も,同法3条に反する限りにおいて,何らの合理的根拠にはなり得ないこと,②信用保証協会法の厳格な要件の下で,信用保証制度を活用するのなら格別,日本信用保証のよ どという名目も,その認識や当事者の合意も,同法3条に反する限りにおいて,何らの合理的根拠にはなり得ないこと,②信用保証協会法の厳格な要件の下で,信用保証制度を活用するのなら格別,日本信用保証のように金融業者が独自に別会社を設立させ,何らの公的な監督や罰則も受けずに,保証料等の名目でその額も自由に徴収することができるとすると,利息制限法の制限は容易に潜脱され,実質的には利息制限法は無意味な立法となってしまい,中小零細事業者や庶民及びその保証人らは,高額な金員の弁済や負担に苦しみ,その生活を崩壊させることにつながりかねないことになるのであり,金融市場に与える弊害や混乱も大きなものになるといわざるを得ないこと,③控訴人が主張するリスクについては,控訴人のみに特別に生じている現象ではなく,歴史上も現状においても,他の金融機関も当然負っているリスクなのであり,これを他の金融業者は,利息による利益や企業努力(信用調査を徹底させることなど)によりカバーしてきているのであって,控訴人主張のようなリスクがあるから,自由に別会社を設立させ,保証料等の名目で金員を徴収できるとすると,金融業者は上記努力を怠り,顧客の経済的負担において,高額の貸付を無制限に行いかねないこと,④控訴人の取引の約8割は,前記のとおり各貸付毎に顧客に支払われる金員が,直ちに控訴人の許に還流し,実質的には高利の利息の支払が継続されているにすぎないため,当初の貸付時の保証料等のみを徴収するのなら格別,各貸付毎にリスク負担のため保証料等を徴収する実質的理由もないこと(この点,前記D証人は,各貸付毎に控訴人は手形の不渡りの危険性を負っている旨説明するが,前記のとおり,手形貸付の方法自体,元本充当を免れるための控訴人により考案されたシステムといえ,不渡りによる不利益は倒産の危険を負った 貸付毎に控訴人は手形の不渡りの危険性を負っている旨説明するが,前記のとおり,手形貸付の方法自体,元本充当を免れるための控訴人により考案されたシステムといえ,不渡りによる不利益は倒産の危険を負った顧客の側がはるかに大きいので,合理的な理由にはならない。),⑤司法は,利息制限法の適正な適用をもって,当該当事者が不当な不利益を被らないように救済していくのが使命なのであり,前掲最高裁判例もその趣旨で,同法の適用を徹底させたものと解され,日本信用保証が従来独立の法人として行政上納税してきたから,上記適正な法の適用と当事者の救済が許されないなどとすると,司法が国民に果たすべき役割はほとんど機能しなくなり,憲法上の個人の人権保障や裁判を受ける権利が没却されてしまうことなどの諸点が指摘でき,控訴人の前記主張は採用できない。 控訴人はまた,当審において,保証料等は,信用保証の対価であって元本使用の対価ではないから,みなし利息に該当しないと主張し,更に,保証料等を控訴人の取得すべき利息と認めると,税務処理上調整不可能な事態が生ずる旨主張する。 しかし,問題は,保証料等として徴収された金員が,実質的に見て,控訴人とは独立した第三者による信用保証の対価といえるかどうかであって,本件においては,前記のとおり,控訴人の100パーセント出資により日本信用保証が設立された経緯,日本信用保証の事業目的と事務処理の実情ないし控訴人との人的関連性及び両社の経済的一体性等から見て,日本信用保証は,控訴人とは独立した信用保証会社の実体を有しているとは認められないのであるから,日本信用保証名義で徴収した保証料等が,実質的な意味で信用保証の対価ということはできず,上記控訴人の主張の前段は理由がない。また,日本信用保証が控訴人の100パーセント出資の子会社であることから, 日本信用保証名義で徴収した保証料等が,実質的な意味で信用保証の対価ということはできず,上記控訴人の主張の前段は理由がない。また,日本信用保証が控訴人の100パーセント出資の子会社であることから,日本信用保証に係る経済的効果は,最終的には控訴人に帰属するのであるから,控訴人主張の税務処理上の不都合があったとしても,前記判断を左右させるほどの事情であるとは考えられず,むしろ,控訴人が利息制限法の制限を潜脱するために考え出したことの帰結にすぎないものというべきである。 4 以上によれば,本件各貸付については,別紙計算表記載のとおりグループ分けをし,同表記載のとおりの充当を行うのが相当であり,弁論の全趣旨によれば,控訴人主張の取立禁止の仮処分決定(甲4)が平成11年12月3日控訴人に送達されたことが認められるから,被控訴人Aは,同日をもって支払拒絶の意思を表明したことになり,相殺適状時である同日現在の控訴人の被控訴人Aに対する貸金債権の残額は,298万6681円となり,被控訴人Aの控訴人に対する過払金は,324万4229円となる。そして,被控訴人Aが,平成14年2月4日の本件弁論準備手続期日において,過払金の不当利得返還債権をもって貸金債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をしたことは当裁判所に顕著である。したがって,本訴各請求は,被控訴人Aにおいて,控訴人に対し上記の差額である過払金25万7548円及びこれに対する本件訴状送達日の翌日であることが記録上明らかな平成12年10月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり(過払金〔不当利得金〕は民事上の一般債権であり,かつ,発生と同時に,すなわち何らの請求がなくとも,直ちに遅滞に陥ると解すべき事情はないから,付帯請求の起算日及び遅延損害金 を求める限度で理由があり(過払金〔不当利得金〕は民事上の一般債権であり,かつ,発生と同時に,すなわち何らの請求がなくとも,直ちに遅滞に陥ると解すべき事情はないから,付帯請求の起算日及び遅延損害金に係る利率に関する被控訴人らの主張は採用することができない。),被控訴人Aのその余の請求及び控訴人の請求は理由がない。 よって,控訴人の本件控訴は一部理由があるので,原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第1民事部裁判長裁判官宮良允通裁判官石井宏治裁判官藤本久俊

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