平成26年9月11日判決言渡平成25年(行ケ)第10321号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成26年7月17日判決 原告三協立山株式会社 訴訟代理人弁護士赤尾直人訴訟代理人弁理士岩崎孝治同七條耕司 被告日本総合住生活株式会社 被告 YKKAP株式会社 上記両名訴訟代理人弁理士佐藤嘉明 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が無効2013-800021号事件について平成25年10月23日にした審決を取り消す。 第2 前提となる事実 1 特許庁における手続の経緯等(争いがない。) 被告らは,平成18年3月17日に出願(ただし,平成15年3月7日を出願日とする特願2003-62183号の分割出願)され,平成23年10月7日に設定登録された,発明の名称を「引戸装置の改修方法及び改修引戸装置」とする特許第4839108号(請求項の数6。以下「本件特許」という。)の特許権者である。 原告は,平成25年2月8日,特許庁に対し,本件特許の全ての請求項について無効にすることを求めて審判の請求をした。特許庁は,上記請求を無効2013-800021号事件として審理をした結果,平成25年10月23日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審 請求項について無効にすることを求めて審判の請求をした。特許庁は,上記請求を無効2013-800021号事件として審理をした結果,平成25年10月23日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を,同年10月31日,原告に送達した。 2 特許請求の範囲本件特許の請求項1ないし6に係る特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下,各請求項に係る発明を請求項1ないし6に応じて「本件発明1」ないし「本件発明6」といい,これらを併せて「本件発明」という。また,本件特許の明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。)。 【請求項1】建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し,前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去し,前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,この後に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を,前記既設引戸枠 内に室外側から挿入し,その改修用下枠の室外寄りを,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に,前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,前記改修用下枠の前壁を,ビスによ を介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に,前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,前記改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定することで,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。 【請求項2】建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し,前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去し,前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,この後に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有し,前記改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に,前記改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着した改修用引戸枠を,前記既設引戸枠内に室外側から挿入し,その室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に,前記室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接し,前記改修用下枠の室外寄りを,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に,前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,前記改修用下枠の前壁を, ペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に,前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,前記改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定することで,改修 用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。 【請求項3】建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し,前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去すると共に,室内側案内レールを切断して撤去し,前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,この後に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を,前記既設引戸枠内に室外側から挿入し,その改修用下枠の室外寄りを,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に,前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,前記改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定することで,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。 【請求項4】建物の開口部に残存した既設引戸枠は, 枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定することで,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。 【請求項4】建物の開口部に残存した既設引戸枠は,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し,前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され,その既設下 枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり,この既設引戸枠内に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置。 【請求項5】建物の開口部に残存した既設引戸枠は,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し,前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され,その既設下枠の室内寄りに取付け補 案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し,前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され,その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり,この既設引戸枠内に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部 材で支持され,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,前記改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材が装着され,この室外側上枠シール材は建物の開口部の上縁部に接し,前記改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材が装着され,この室外側竪枠シール材は建物の開口部の縦縁部に接し,前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置。 【請求項6】建物の開口部に残存した既設引戸枠は,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し,前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去されていると共に,室内側案内レールは切断して撤去され,その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設 合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し,前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去されていると共に,室内側案内レールは切断して撤去され,その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり,この既設引戸枠内に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置。 3 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書写しに記載のとおりである。その要旨は,①本件発明は,本件明細書において十分に裏付けられ,開示されているものと認められるから,特許法36条6項1号のサポート要件違反はない,また,②本件発明は,特許法44条1項所定の要件を充足するから,本件特許の出願日は原出願日に遡及し,本件発明が原出願の公開公報に記載されたもの又はそれに基づいて当業者が容易に発明ができたものとすることはできない,というものである。 第3 取消事由に関する原告の主張 1 取消事由1(サポート要件に関する認定判断の誤り)について(1) 本件明細書の図3,6,10,11,13,14及び当該各図に対応する段 うものである。 第3 取消事由に関する原告の主張 1 取消事由1(サポート要件に関する認定判断の誤り)について(1) 本件明細書の図3,6,10,11,13,14及び当該各図に対応する段落においては,取付け補助部材として,室外側壁部107,室内側壁部108及び上壁部109を有する断面逆U字状の取付け補助部材106のみが掲載されており,同形状以外の取付け補助部材に関する記載は存在しない。また,各実施形態においては,改修用下枠69の室内寄りを構成している支持壁89及び室内側脚部分91を,取付け補助部材106の上壁部109によって支持しており,他の支持構成は掲載されていない。 しかし,本件特許の各請求項の文言に照らすと,本件発明の特許請求の範囲には,本件明細書に開示された上記各構成のみならず,「改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材の室外側壁部において支持する構成」(以下「構成A」という。)及び「改修用下枠の室内寄りを逆L字型の形態とした取付け補助部材で支持する構成」(以下「構成B」という。)も含まれると解釈できるが,これらの構成については,本件明細書にこれを理解できる程度の記載や具体例が記載されていないから,特許法36条6項1号のサポート要件違反がある。 (2) 審決は,本件明細書には,構成A及びBの実施形態は記載されていないが,①本件明細書の段落【0010】及び【0011】記載の課題を解決するためには,改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材のどの部分において支持するか及び取付け補助部材の形状をどのようなものとするかは関係せず,取付け補助部材の上壁にお いて改修用下枠の室内寄りを支持しなければ,本件発明の効果を奏し得ない訳ではない,②そして,当業者においては,改修用下枠を支持するに際して,取付け補助部材のどの部分を支持 補助部材の上壁にお いて改修用下枠の室内寄りを支持しなければ,本件発明の効果を奏し得ない訳ではない,②そして,当業者においては,改修用下枠を支持するに際して,取付け補助部材のどの部分を支持するか及び取付け用補助部材の形状をどのようなものとするかは適宜決定する設計的事項に過ぎないものであることを考慮するならば,本件明細書の記載から構成A及び同Bも想定することができると判断した。 アしかし,本件明細書の段落【0018】には,取付け補助部材を基準として,「既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできる」という本件発明の効果(以下「本件効果」という。)が記載されているところ,同効果は,本件明細書記載の実施形態である「逆U字状の取付け補助部材106」を採用した上で,「取付け補助部材106の形状,寸法のうち,水平方向幅の設定においては,室内側案内レール115の位置を基準として設定する」構成(以下「構成a」という。)及び「取付け補助部材106の高さ寸法を選択することによって,改修用下枠69の室内寄りを上壁部109によって支持する」構成(以下「構成b」という。)を不可欠としており,構成A及びBでは実現不可能である。 すなわち,①本件明細書の実施形態の記載からすれば,既設下枠56が取付け補助部材に対して当接する部位は,底壁103及び室内側案内レール115と背後壁104の双方又は何れか一方に限定され,当接位置は,取付け補助部材106が底壁103の上に載置され,かつ,ビス110によって室内側案内レール115に固着されるか,又は背後壁104に固着されるものに限定されている。これを前提とすれば,既設引戸枠の「形状,寸法」に対応する取付け補助部材の「形状,寸法」 ,ビス110によって室内側案内レール115に固着されるか,又は背後壁104に固着されるものに限定されている。これを前提とすれば,既設引戸枠の「形状,寸法」に対応する取付け補助部材の「形状,寸法」を特定する際,水平方向幅については,室内側案内レール115の位置は,水平方向幅の設定において不可欠な基準に該当し,そうである以上,該位置において取付けられている取付け補助部の室外側壁部107は当然に存在しなければならず,取付け補助部材の形状は,逆U字状に限定されるから,構成Bは取り得ない。仮に,取付け補助部材106の水平方向の寸法を特定するために必要な位置に関する「基 準」が不要であるならば,取付け補助部材106の水平方向幅については,任意に設定することが可能とならざるを得ないが,そのような場合には,取付け補助部材106は,既設下枠56の「形状,寸法」と「対応」せず,無関係に水平方向の「寸法」を設定し得ることとなるから,双方の対応関係を不可欠の前提としている段落【0018】の記載と明らかに矛盾する。 また,②段落【0018】記載の取付け補助部材を基準として「同一の改修用引戸枠を取付けることができる」という本件効果は,「同一の改修用下枠69を取付けることができる」という趣旨であるところ,本件明細書の各実施形態は,いずれも改修用下枠69の室内寄りに対する取付け補助部材106による支持を,室内側脚部分91及び支持壁89に対する上壁部109による支持を介して実現しているから,上記「同一」の要件を充足するためには,室内側脚部分91及び支持壁89に基づく室内寄りの当接位置が「同一」であることが必要不可欠である。そして,当接位置を「同一」とすることは,上壁部109の高さ寸法を選択することによって実現可能であるから(段落【0091】),「同一」の当接位 内寄りの当接位置が「同一」であることが必要不可欠である。そして,当接位置を「同一」とすることは,上壁部109の高さ寸法を選択することによって実現可能であるから(段落【0091】),「同一」の当接位置を実現するためには,必然的に上壁部109による当接が必要不可欠であって,室外側壁部107に当接する構成Aは取り得ない。仮に構成Aのように,改修用下枠69の室内寄りを取付け補助部材106の室外側壁部107によって支持すると,本件発明の発明特定事項である「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さ」を実現するためには,取付け補助部材106の高さ寸法とは無関係に,上記「ほぼ同じ高さ」となるように,改修用下枠69を室外側壁部107にビス等で支持する位置を「選択」することが不可欠となる。また,取付け補助部材106の上壁部109の高さ方向の位置は,当該支持の位置よりも高い位置であるならば任意に設定することが可能であって,上壁部109の高さ方向の寸法は無限定とならざるを得ないから,取付け補助部材106の高さ寸法は,既設下枠56の「形状,寸法」,具体的には背後壁104の高さ寸法と「対応」せず,無関係に設定可能であることとなり,双方の対応を不可欠の前提としている段落【0018】の記載と明らかに矛盾する。したがって, 構成Aでは本件効果を奏し得ない。 したがって,構成A及び構成Bによっても本件発明の効果を奏するとの審決の前記判断①は誤っている。 イまた,本件明細書には,前記のとおり「逆U字状の取付け補助部材106の上壁部109によって,改修用引戸枠69の室内寄りが支持される」構成(以下「構成C」という。)の開示しかないところ,構成Cが新規性及び進歩性を有する構成であり,技術常識に基づく構成ではない以上,技術常識に即して同構成から構成A及び 69の室内寄りが支持される」構成(以下「構成C」という。)の開示しかないところ,構成Cが新規性及び進歩性を有する構成であり,技術常識に基づく構成ではない以上,技術常識に即して同構成から構成A及び構成Bに拡張することは背理である。また,構成Cには,案内レール67を介して加えられる引戸枠の荷重に対応する抗力を,室外側壁部107及び室内側壁部108の双方に分散することができるという技術的根拠が存し,引き戸に対する安全かつ安定した支持を継続することができるが,構成A及び構成Bの場合には,それぞれ該抗力を室外側壁部107又は室内側壁部108に集中させることにならざるを得ない。このような構成A及び構成Bを採用することは,技術常識に該当せず,発明の効果において構成Cと同等ではないから,当業者において適宜決定し得る設計的事項には該当しない。 したがって,構成A及び構成Bを採用することは設計的事項であるとの審決の前記判断②も誤っている。 (3) 被告らは,構成A及びBに対する審決の判断は補足的意見であると主張するが,構成A及びBに対する評価を行うことはサポート要件の成否を判断する上で不可欠である。 なお,各請求項に構成A及び同Bが包摂されるか否かは,特許法36条6項2号の明確性の問題となり,明細書の記載及び図面を考慮したうえで,構成A及び同Bが各請求項における文言上の表現に矛盾せずに立脚し得るか否かが判断基準となるのに対し,サポート要件の成否を判断する場合は,発明の詳細な説明に記載された各実施形態から,構成A及び同Bが本件発明において達成すべき課題及び奏すべき効果に即した場合,各請求項発明における文言表現による一般的構成に到達し得る かという技術上の判断基準となり,双方の基準は明瞭に相違しているのであるから,特許請求の範囲に構成A及びB すべき効果に即した場合,各請求項発明における文言表現による一般的構成に到達し得る かという技術上の判断基準となり,双方の基準は明瞭に相違しているのであるから,特許請求の範囲に構成A及びBが包含されるのが技術常識である場合でも,サポート要件違反が問題となることは当然である。 2 取消事由2(分割要件違反に関する認定判断の誤り)について(1) 原出願当初明細書又は図面には,構成Cのみが開示されており,構成A及びBは開示されていないから,構成A及びBを含む「改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持」するという構成(本件発明1ないし3)及び「改修用下枠の室内寄りが,取付け補助部材で支持」するという構成(本件発明4ないし6)は,原出願当初明細書に記載されていないというべきであり,本件発明は分割要件に反する。 (2) そうであるにもかかわらず,審決は,①原出願当初明細書記載の従来技術の課題は,「既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去する」(以下「構成1」という。)と共に,「既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設けるとともに,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持し,取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付ける」(以下「構成2」という。)ことによって解決されている,②構成2を採用することによって,本件効果を奏する,③原出願当初明細書には,改修用下枠69の支持壁89,室内側脚部分91が取付け補助部材106の上壁部109に支持されている場合における構成2の実施形態が記載されている,④上記①~③を考慮すると,本件発明1ないし3の構成のうち,「改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持」するという構成及び本件発明4ない 持されている場合における構成2の実施形態が記載されている,④上記①~③を考慮すると,本件発明1ないし3の構成のうち,「改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持」するという構成及び本件発明4ないし6の構成のうち,「改修用下枠の室内寄りが,取付け補助部材で支持」するという構成は,原出願当初明細書に記載されており,本件発明に分割要件違反はない,と判断した。 アしかし,前記1(2)アと同様に,原出願当初明細書記載の各実施形態から明らかなように,原出願当初明細書の段落【0064】(本件明細書の段落【0018】の記載内容と同一)記載の本件効果は,構成a及び構成bを採用することによって 達成されており,構成2自体によって達成されているのではない。しかるに,審決の上記①,②の判断は,構成Aや構成Bをも包摂している構成2によって,本件効果が達成されているとするものであるから,同①,②の認定判断は誤りである。 イ原出願当初明細書には,構成Cのみが開示されており,取付け補助部材106は逆U字状にあることを明らかにしているから,原出願当初明細書は,逆L字状の取付け補助部材106を開示し得ない。また,審決の上記判断③は,原出願当初明細書に,改修用下枠69の室外側壁部107による支持が記載されているかどうかの点は言及しておらず,原出願当初明細書の各実施形態には,このような支持は全く開示されていないから,原出願当初明細書にそのような構成が開示されているとはいえない。したがって,上記判断③は認定判断を誤っている。 そして,上記判断④は,上記誤った判断③を前提としたものである上,上記1(2)イのとおり,構成Aや構成Bは,材料力学の観点からみた技術的合理性からみて,構成Cから当業者が自明に導出し得ないから,誤っている。 第4 取消事由に関する被 を前提としたものである上,上記1(2)イのとおり,構成Aや構成Bは,材料力学の観点からみた技術的合理性からみて,構成Cから当業者が自明に導出し得ないから,誤っている。 第4 取消事由に関する被告らの主張 1 取消事由1(サポート要件に関する認定判断の誤り)について(1)ア原告は,本件発明の取付け補助部材は必然的に室外側壁部107を有する逆U字状に限定されていると主張する。しかし,本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書には既設下枠56が取付け補助部材に対して当接する部位ないし位置が限定されるとする記載はないし,またそのような限定がなければ,本件発明の課題や本件効果が奏されないものでもない。加えて,本件特許請求の範囲及び明細書には「水平方向幅」の記載はないし,「室内側案内レール115の位置は,水平方向幅の設定において不可欠な基準に該当する」との記載も,その記載からそのように解すべき理由もなく,本件発明の課題ないし効果も,そのような基準がなければ達成できないものでもない。 イまた,原告は,同一の改修用下枠69を取り付けるためには,室内側脚部分91及び支持壁89に基づく室内寄りの当接位置が「同一」であることが必要不可 欠であり,そのためには上壁部109による当接が不可欠であると主張するが,取付け補助部材における改修用引戸枠の支持位置を変えても,「同一の改修用下枠69を取り付けることができる」との本件効果を奏し得ることは当業者に自明のことである。 ウしたがって,本件効果を達成するためには,構成a及びbが不可欠であり,構成A及び構成Bでは実現不可能とする原告の主張は誤りであり,審決の判断に誤りはない。 (2) そもそも,構成A及びBは本件の特許請求の範囲に格別記載されていない構成であるから,このようないわば架空の構成 び構成Bでは実現不可能とする原告の主張は誤りであり,審決の判断に誤りはない。 (2) そもそも,構成A及びBは本件の特許請求の範囲に格別記載されていない構成であるから,このようないわば架空の構成により発明のサポート要件が検討されるべきでない。サポート要件は特許請求の範囲に記載された構成が明細書及び図面にサポートされているかの検討であり,原告の主張は,サポート要件の検討に関係ないものである。 審決は,「本件明細書の【0100】には,改修用下枠69の支持壁89,室内側脚部分91が取付け補助部材106の上壁部109に支持される場合における構成1及び2の具体的な構成(実施形態)が記載されている。」ことをもって本件発明がサポート要件を満たすと判断しているものであり,構成A及びBが特許請求の範囲に含まれると解釈できる,とした上での判断は,原告が審判段階で,特許請求の範囲から構成aや構成bという実施形態も存在し得ることは技術常識に即して明らかであると自認していたため,これを前提として補足的見解を述べたものにすぎない。 2 取消事由2(分割要件違反に関する認定判断の誤り)について前記1(1)ア及びイのとおり,取付け補助部材の形状によって本件効果が達成できないものではなく,取付け補助部材における改修用引戸枠の支持位置を変えても本件効果を奏し得ることは当業者に自明である。本件効果を達成するためには構成a及び構成bが不可欠であるとの原告の主張は誤りであり,分割要件違反ということもできない。 第5 当裁判所の判断 当裁判所は,原告の各取消事由の主張にはいずれも理由がなく,審決にはこれを取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 取消事由1(サポート要件に関する認定判断の誤り)について(1) 本件発 の主張にはいずれも理由がなく,審決にはこれを取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 取消事由1(サポート要件に関する認定判断の誤り)について(1) 本件発明について本件明細書(甲1)には,次の記載があることが認められる。 「【技術分野】【0001】本発明は,建物の壁に窓として設けられている既設引戸を改修用引戸に改修する引戸装置の改修方法,及び,その改修した改修引戸装置に関する。 【背景技術】【0002】・・・経年変化によって老朽化した集合住宅などの建物は,リフォームとも呼ばれる改修工事の一環として,その建物に設けられる窓もまた,改修される。この窓は,集合住宅の場合,一棟に設けられる設置箇所数が多いため,改修作業の効率の向上が望まれている。」「【0008】上記の改修用下枠13,改修用竪枠14および改修用上枠15が,既設下枠5,既設竪枠7および既設上枠9にそれぞれ取付けられた後,下枠カバー材19が改修用下枠13の下枠補助材30にビス47によって固定され,竪枠カバー材18が改修用竪枠14の竪枠補助材37にビス48によって固定され,上枠カバー材17が改修用上枠15の上枠補助材43にビス49によって固定される。」「【発明が解決しようとする課題】【0010】このような従来の技術では,改修用下枠13が既設下枠5に載置された状態で既設下枠5に固定されるので,改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅H₁が小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題がある。 【0011】また,改修用下枠13の下枠下地材30は既設下枠5の案内レール21,22上に直接乗載され,その案内レール21,22を基準として固定されているから前述の改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向 ,改修用下枠13の下枠下地材30は既設下枠5の案内レール21,22上に直接乗載され,その案内レール21,22を基準として固定されているから前述の改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅H₁ がより小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題がある。 【0012】本発明の目的は,広い開口面積を確保することができる引戸装置の改修方法及び改修引戸装置を提供することである。」「【発明の効果】【0018】請求項1~6記載の本発明によれば,既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去したので,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,有効開口面積が減少することがなく,広い開口面積が確保できる。 また,既設下枠に室内寄りに取付補助部材を設けるとともに,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付けるので,既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできる。」「【発明を実施するための最良の形態】【0019】図1は本発明の実施の一形態の改修用引戸装置50が設置された窓51の鉛直断面図であり,図2は図1の切断面線II-IIから見た窓51の水平断面図である。・・・【0029】このような既設下枠56と改修用下枠69との間には,取付け補助部材106が介在される。この取付け補助部材106は,室外側壁部107と,室内側壁部108と,室外側壁部107および室内側壁部108の各上端部に連なる上壁部109とを有し,断面逆U字状の長尺材から成る。この取付け補助部材106は,既設下枠56に,室内側案内レール115に室外73側か 08と,室外側壁部107および室内側壁部108の各上端部に連なる上壁部109とを有し,断面逆U字状の長尺材から成る。この取付け補助部材106は,既設下枠56に,室内側案内レール115に室外73側から室外側壁部107を当接させ,かつ背後壁104に室外73側から室内側壁部108を当接させた状態で,前記上壁部109を上方にして装着される。前記室外側壁部107は,室内側案内レール115にビス110によって固定される。 【0030】取付け補助部材106の上壁部109には,装着された改修用下枠69の室内側脚部分91と支持壁89とが支持され,第3底壁部87がビス111 によって固定される。また,前壁80は,ビス112によって既設下枠56の前壁102に固定される。」「【0067】図6は本発明の実施の他の形態の改修用引戸装置50bが設置された窓51の鉛直断面図で,図7は図6の切断面線B-Bから見た窓51の水平断面図である。・・・【0069】この実施の形態の既設下枠56,改修用下枠69,取付け補助部材106は前述の図1,図2に示す実施の形態の既設下枠56,改修用下枠69,取付け補助部材106とほぼ同様で,既設下枠56の背後壁104の上端部に室内68側に向かう横向片104aを有し,この横向片104aと改修用下枠69の支持壁89の上端が同一高さであること,改修用下枠69の室外73側部分に乾式の室外側下枠シール材300が室内68側に向けて装着され,この室外側下枠シール材300が既設下枠56の前壁102に圧接していることが大きく相違する。 【0070】具体的には,既設下枠56の室外側案内レール114を図6の仮想線で示すように切断して撤去されている。この室外側案内レール114は全てを切断して撤去しても良いし,若干残して撤去しても良い。 取付け補 具体的には,既設下枠56の室外側案内レール114を図6の仮想線で示すように切断して撤去されている。この室外側案内レール114は全てを切断して撤去しても良いし,若干残して撤去しても良い。 取付け補助部材106は,その室外側壁部107が室内側案内レール115にビス110で固着して取付けられる。 改修用下枠69の支持壁89,室内側脚部分91が取付け補助部材106の上壁部109に支持され,底壁81の室外寄りがスペーサ301を介して既設下枠56の底壁103の室外寄りに支持され,ビス112で取付け補助部材106に固定される。」「【0091】この実施の形態によれば,図1と図2と同様な作用効果を奏すると共に,次のような作用効果を奏する。 (1) 既設下枠56に取付け補助部材106を取付け,改修用下枠69の室内側脚部分91,支持壁89(つまり,改修用下枠69の室内側部分)を取付け補助部材106に載置し,その取付け補助部材106にビス112で固着して取付けた ことをによって,その取付用補助部材106の高さ寸法を変えることで,異なる形状の既設下枠56にも同一形状の改修用下枠56を,その支持壁89と背後壁104を同一高さに取付けることが可能である。 【0092】(2) また,前述の(1)と室外側下枠シール材300が既設下枠56の前壁102に圧接していることによって,室内側案内レール115の立上り寸法が大きな既設下枠56にも同一形状の改修用下枠69を取付けできる。 例えば,図10に示すように取付け補助部材106の高さ寸法を大きくして室内側壁部108を底壁103に当接し,かつ室内側案内レール115にビス110で取付ける。 室内側下枠シール材300を前壁102に当接する。 この場合には,支持壁89が背後壁104より若干上方に突出する。 【00 底壁103に当接し,かつ室内側案内レール115にビス110で取付ける。 室内側下枠シール材300を前壁102に当接する。 この場合には,支持壁89が背後壁104より若干上方に突出する。 【0093】(3) また,前述の(1),(2)によって図11と図12に示すように,既設下枠56の背後壁104の上端部に室外側に突出部104bを有し,既設上枠62の室内側フランジ306の内方部分306bが室外側に位置ずれしている場合でも,同一形状の改修用下枠69,改修用上枠62,各改修用竪枠70,71を取付けできる。」「【0100】また,図14に示すように,既設下枠56の室内側案内レール115を前述と同様に切断して撤去し,取付け補助部材106を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着しても良い。 例えば,取付け補助部材106の室内側壁部108を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着する。この場合には室外側壁部107に図示しないビス挿通孔を形成し,そのビス挿通孔からビス止めすることが好ましい。」(2)ア特許制度は,明細書に開示された発明を特許として保護するものであり,明細書に開示されていない発明までも特許として保護することは特許制度の趣旨に反することから,特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件が定められたものである。したがって,同号の要件については,特許請求の範囲に記載された発明が, 発明の詳細な説明の欄の記載によって十分に裏付けられ,開示されていることが求められるものであり,同要件に適合するものであるかどうかは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか,すなわち,発明の詳細な説明の記載と当業者の出願時の技術常識に照らし,当該発明に の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか,すなわち,発明の詳細な説明の記載と当業者の出願時の技術常識に照らし,当該発明における課題とその解決手段その他当業者が当該発明を理解するために必要な技術的事項が発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討して判断すべきものと解される。 イ前記(1)の本件明細書の記載によれば,本件発明は,従来技術において,(ア)改修用下枠が既設下枠に載置された状態で既設下枠に固定されるので,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題と,(イ) 改修用下枠の下枠下地材は既設下枠の案内レール上に直接乗載され,その案内レールを基準として固定されているから改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅がより小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題(課題)があったため,これらの問題(課題)を,①既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去する(構成1),②既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設けるとともに,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持し,取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付ける(構成2)ことにより解決したものであり,構成1及び2を採ることにより,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,広い開口面積を確保でき,構成2とすることにより,既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできるという効果(本件効果)を奏するものであると認められる。 そして, 戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできるという効果(本件効果)を奏するものであると認められる。 そして,本件発明の「改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持」(請求項1ないし3)する,又は「改修用下枠の室内寄りが,取付け補助部材で支持され」(請求項4ないし6)る具体的な構成として,取付け補助部材106の上壁部10 9において改修用下枠69の室内側脚部分91及び支持壁89とを支持する場合における構成1及び2の具体的な構成(実施形態)は,本件明細書の段落【0070】(ただし,構成2のうち,取付け補助部材を既設下枠の室内側端部に連なる背後壁の立面にビスで固着する構成部分については,【0100】)に記載されている。 ウ以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,当業者において,特許請求の範囲に記載された本件発明の課題とその解決手段その他当業者が本件発明を理解するために必要な技術的事項が記載されているものといえる。 (3) 原告の主張について原告は,本件特許の各請求項の文言上,本件発明には,構成A(改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材の室外側壁部において支持する構成)及び構成B(取付け補助部材の形状を逆L字型の形態とする構成)も含まれるが,本件明細書には,これらの実施形態は記載されておらず,①構成A及び構成Bによっては,本件効果は実現できないし,②構成A及び構成Bは,本件明細書に開示された実施形態である構成C(逆U字状の取付け補助部材の上壁部で改修用下枠の室内寄りを支持する構成)と技術的に等価ではないから,これらの構成を本件明細書の記載から想到することはできず,これらの構成が含まれる特許請求の範囲の記載は,サポート要件違反で の上壁部で改修用下枠の室内寄りを支持する構成)と技術的に等価ではないから,これらの構成を本件明細書の記載から想到することはできず,これらの構成が含まれる特許請求の範囲の記載は,サポート要件違反である旨主張する。 アしかし,前記(1)に認定したとおり,本件発明において,課題(ア)及び(イ)を解決するためには,構成1及び構成2を採用すれば足り,取付け補助部材の特定の形状や,取付け補助部材による改修用下枠の具体的な支持位置は,上記課題の解決には必須の構成ではない。また,本件効果,すなわち「既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできるという効果」(【0018】)は,「取付け補助部材を基準」として改修用引戸枠を既設引戸枠に取り付けることにより,既設引戸枠の形状が異なる場合(既設下枠の背後壁の高さが違う場合や,同背後壁の室外側に突出部が存在する場合など)であっても,取付け補助部材の方の寸法や形状 を変えることにより,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さとなるように,改修用下枠の取付け位置や高さを調整することができ,したがって,同一形状の改修用下枠を取付けることができるということを意味すると解される(本件明細書の【0091】~【0093】)。そうすると,本件効果を奏するためには,基準となる取付け補助部材が,個々の既設下枠の形状に応じて,改修用下枠の取付け位置や高さを調整できるような形状や寸法を有していれば足り,常に逆U字状であることや,上壁部によって支持するという特定の構成形態を有しなければ,本件効果を奏しないということもない。上記のとおり,取付け補助部材の特定の形状や改修用下枠の具体的な支持位置は,本件発明の課題解決及び本件 ,上壁部によって支持するという特定の構成形態を有しなければ,本件効果を奏しないということもない。上記のとおり,取付け補助部材の特定の形状や改修用下枠の具体的な支持位置は,本件発明の課題解決及び本件効果を奏するためには必須の構成ではない上,取付け補助部材の形状や寸法は,上記【0018】のとおり,もともと既設引戸に応じて様々に変更することが予定されているのであり,本件明細書上も,その形状や寸法,改修用下枠を支持する位置を,実施例の形態に限定する記載はないことからすれば,取付け補助部材をどのような形状とし,そのどの部分で改修用下枠を支持するかは設計的事項に過ぎないというべきである。そして,当業者にとって,取付け補助部材の形態(形状)又は改修用下枠を支持する位置(壁部)を様々に想定した上で,取付けの目的に対応するようにその他の位置の選択や取付け補助部材の高さ寸法を調整することは,当然のことであって,これに加えて,本件発明の特許請求の範囲の記載によれば,取付け補助部材は,「既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」られるものであるから,必ずしも室外側壁部を有する必要はないこと,本件明細書の図10及び図14の実施形態には,取付け補助部材が逆U字状の形状をしているものの,その室外側壁部107は既設下枠の底壁103に当接しない構成が開示され,図14では,室外側壁部107はビス止めもされていない構成が開示されていることをも併せ考えると,当業者であれば,本件明細書の記載から,取付け補助部材の形状を,室外側壁部107を有しない逆L字状とする構成(構成B)や,改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材の室外側壁部において支持する構成(構 成A)も想定できるといえる。 イこの点,原告は,①構成Aを採用すると,改修用下 字状とする構成(構成B)や,改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材の室外側壁部において支持する構成(構 成A)も想定できるといえる。 イこの点,原告は,①構成Aを採用すると,改修用下枠69を室外側壁部107にビス等で支持する位置を「選択」することが必要となる上,取付け補助部材106の上壁部109の高さ方向を任意に設定することが可能となるし,構成Bを採用すると,取付け補助部材106の水平方向幅を任意に設定することが可能となるから,本件効果は実現できないと主張する。しかし,原告の同主張は,本件明細書の段落【0018】の「既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いる」との記載が,既設引戸枠の形状,寸法と取付け補助部材の形状,寸法とが厳密な「対応関係」にあることを意味し,既設引戸枠の形状,寸法に「対応して」,取付け補助部材の水平方向及び上下方向の形状,寸法が一義的に定まることを要する(したがって,高さ方向や水平方向幅が任意に設定されることがない。),との解釈を前提とするものと解されるところ,本件効果がそのようなことを意味するものとは認められないことは前記のとおりである。また,原告の主張は,本件明細書の実施形態による取付け補助部材の既設下枠への当接部位及び当接位置並びに取付け補助部材による改修用下枠の支持位置を前提としたものであるところ,本件発明の特許請求の範囲及び本件明細書上,「改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持する」構成を,本件明細書記載の実施形態のものに限定する記載はないのであるから,原告の主張は前提を欠く。構成Aを採用しても,「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さ」となるように改修用下枠を室外側壁部107にビス等で支持する位置を選択すれば,背後壁の高さが異なる既設下枠に,同一の改修用下 く。構成Aを採用しても,「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さ」となるように改修用下枠を室外側壁部107にビス等で支持する位置を選択すれば,背後壁の高さが異なる既設下枠に,同一の改修用下枠を取付けられるし,構成Bを採用しても,取付け補助部材106の高さ寸法の選択によって,背後壁の高さが異なる既設下枠に同一の改修用下枠を取付けることができるから,本件効果を奏することは明らかであるところ,取付け補助部材において,その形態(形状)と,改修用下枠を支持する位置(壁部)とを設定する際に,取付けの目的に対応するようにそれらの整合性を図ることは,当業者にとって当然のことであって,構成Aや構成Bを採用した上で,上記のような位置の選択や 高さ寸法の選択をすることは,当業者であれば容易に想定できることといえる。 したがって,この点についての原告の主張を採用することはできない。 ウまた,原告は,②構成A及び構成Bは,構成Cとは材料力学の観点からみて技術常識に該当せず,発明の効果においても技術的に等価ではないとも主張する。 確かに,構成A及び構成Bは,取付け補助部材を逆U字状として,室内側壁部と室外側壁部の双方を既設下枠の底壁に接して,荷重を両壁部に分散させ,上壁部において改修用下枠を支持する構成と比較すれば,構造上の強度や安定性という点では劣ると評価することもできる。しかし,そもそも,前記のとおり,本件明細書には,取付け補助部材の室外側壁部が既設下枠の底壁に接しない構成も開示されているのであり,構造上の強度や安定性は本件効果として記載されているものではなく,構成Aや構成Bによっても本件効果を奏することができるのであるし,強度の高い材料や補強リブ構造等を採用したり,ビス等で固着する部分を増やすことにより,取付け補助部材の強度や安定 ているものではなく,構成Aや構成Bによっても本件効果を奏することができるのであるし,強度の高い材料や補強リブ構造等を採用したり,ビス等で固着する部分を増やすことにより,取付け補助部材の強度や安定性を高めることは,当業者であれば容易に想定できることであるから,取付け補助部材の形態を逆L字型とする構成や,その室外側壁部で改修用下枠を支持する構成が,本件発明の実施の上で構造上の強度や安定性の観点から実用性を欠くものであり,そのため当業者によって本件発明の実施形態として想定できないということもできない。 したがって,この点についての原告の主張も採用することができない。 (4) 以上によれば,本件発明は,本件明細書において十分に裏付けられ,開示されているものと認められるから,特許法36条6項1号のサポート要件違反がないとの審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(分割要件違反に関する認定判断の誤り)について(1) 本件発明の原出願明細書(特開2003-328645号公報。甲2)には,従来技術においては,(ア) 改修用下枠が既設下枠に載置された状態で既設下枠に固定されるので,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題(【0010】)と,(イ) 改修用下枠の 下枠下地材は既設下枠の案内レール上に直接乗載され,その案内レールを基準として固定されているから改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅がより小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題(課題)などがあったため(【0011】),これらの問題(課題)を解決して広い開口面積を確保することなどができる改修用引戸装置に関する発明として【0012】,改修用下枠,一対の改修用竪枠及び改修用上枠を,既設下枠,各既 め(【0011】),これらの問題(課題)を解決して広い開口面積を確保することなどができる改修用引戸装置に関する発明として【0012】,改修用下枠,一対の改修用竪枠及び改修用上枠を,既設下枠,各既設竪枠及び既設上枠に室外側から装着し,一対の竪枠用保持部材を各既設竪枠に室内側から装着して各改修用竪枠にそれぞれ連結するとともに,上枠用保持部材を既設上枠に室内側から装着して改修用上枠に連結することを含むことを特徴とする改修用引戸装置の構成【0013】が記載されている。そして,このうち,改修用下枠の装着に関しては,発明の実施形態として,①既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去する(構成1)(【0029】,【0075】、【0114】),②既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設けるとともに,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持し,取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付ける(構成2)(改修用下枠の取付け補助部材による支持構成につき【0030~0031】,【0077】,取付け補助部材の固着構成につき【0145】,【0146】)構成が開示されており,これらにより上記課題が解決することができるとともに(【0063】,【0150】),取付け補助部材を基準として改修用下枠を取付けできるから,既設下枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付補助部材106を用いることで、同一の改修用下枠を取付けできるという効果を奏することが記載されている(【0064】)。 以上によれば,原出願明細書には,本件発明1ないし3の構成のうち,「改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持」するという構成及び本件発明4ないし6の構成のうち,「改修用下枠の室内寄りが,取 。 以上によれば,原出願明細書には,本件発明1ないし3の構成のうち,「改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持」するという構成及び本件発明4ないし6の構成のうち,「改修用下枠の室内寄りが,取付け補助部材で支持」する構成が記載されているから,本件発明は特許法44条1項所定の要件を充足するものであり,分 割要件違反があるとは認められない。 (2) 原告の主張についてア原告は,原出願当初明細書の段落【0064】記載の本件効果は,構成a(「取付け補助部材106の形状,寸法のうち,水平方向幅の設定においては,室内側案内レール115の位置を基準として設定する」)及び構成b(「取付け補助部材106の高さ寸法を選択することによって,改修用下枠69の室内寄りを上壁部109によって支持する」)を採用することによって達成されており,構成2自体によって達成されているのではないから,これに反する審決の認定判断は誤りであると主張する。しかし,前記1(3)イのとおり,原告の主張は,原出願当初明細書の段落【0064】記載の本件効果の内容(本件明細書の段落【0018】の記載内容と同一)を,既設引戸枠の形状,寸法に「対応して」,取付け補助部材の水平方向及び上下方向の形状,寸法が一義的に定まることを要する(したがって,高さ方向や水平方向幅が任意に設定されることがない。),との解釈を前提とするものであるところ,本件効果がそのようなことを意味するとは解されないことは前記1(3)アのとおりである。 イまた,原告は,①原出願当初明細書には,構成Cのみが開示されており,逆L字状の取付け補助部材や,改修用下枠の室外側壁部による支持は全く開示されていないから,原出願当初明細書に構成Aや構成Bが開示されているとはいえないし,②構成Aや構成Bは,材料力学の観 れており,逆L字状の取付け補助部材や,改修用下枠の室外側壁部による支持は全く開示されていないから,原出願当初明細書に構成Aや構成Bが開示されているとはいえないし,②構成Aや構成Bは,材料力学の観点からみた技術的合理性からみて,構成Cから当業者が自明に導出し得ないから,誤っていると主張する。 しかし,前記1(3)アのとおり,取付け補助部材の特定の形状や,取付け補助部材による改修用下枠の具体的な支持位置は,上記課題(ア)及び(イ)の解決や本件効果を奏するために必須の構成ではないのであって,原出願当初明細書上も,その形状や寸法,改修用下枠を支持する位置を,実施例の形態に限定する記載はないことからすれば,取付け補助部材をどのような形状とし,そのどの部分で改修用下枠を支持するかは設計的事項に過ぎないというべきである。そして,当業者にとって,取付 け補助部材の形状や寸法,改修用下枠の位置を,取付けの目的に対応するように調整することは当然のことであって,これに加えて,原出願当初明細書の実施形態にも,本件明細書の図10及び図14と同一のものが開示されていることを考えあわせれば,原出願当初明細書の記載から,取付け補助部材の形状を,室外側壁部107を有しない逆L字状とする構成(構成B)や,改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材の室外側壁部において支持する構成(構成A)も想定できるといえる。したがって,これらの構成が開示されていないとの原告の主張①は理由がない。 また,前記1(3)ウのとおり,構成Aや構成Bが構造上の強度や安定性という点では劣ると評価することができるとしても,これらが原出願明細書記載の発明の実施の上で構造上の強度や安定性の観点から実用性を欠くものであり,そのため当業者によって本件発明の実施形態として想定できないということもでき することができるとしても,これらが原出願明細書記載の発明の実施の上で構造上の強度や安定性の観点から実用性を欠くものであり,そのため当業者によって本件発明の実施形態として想定できないということもできない。したがって,原告の主張②も理由がない。 (3) 以上によれば,本件発明は,特許法44条1項所定の要件を充足するから,本件特許の出願日は原出願日に遡及し,本件発明が原出願の公開公報に記載されたもの又はそれに基づいて当業者が容易に発明ができたものとすることはできない,との審決の判断に誤りはない。 3 結論以上のとおり,原告の各取消事由の主張にはいずれも理由がなく,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官設樂一 裁判官大寄麻代 裁判官大須賀滋は,転補のため署名押印できない。 裁判長裁判官設樂一
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