- 1 -平成30年4月11日判決言渡し名古屋高等裁判所平成29年(行コ)第49号退去強制令書発付処分無効確認等請求控訴事件(原審・名古屋地方裁判所平成28年(行ウ)第64号)口頭弁論終結日平成30年1月12日 主文 1 原判決を取り消す。 2 名古屋入国管理局長が平成25年7月26日付けで控訴人に対してした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく控訴人の異議の申出には理由がない旨の裁決は無効であることを確認する。 3 名古屋入国管理局主任審査官が平成25年7月29日付けで控訴人に対してした退去強制令書発付処分は無効であることを確認する。 4 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人⑴ 主文第1項と同旨。 ⑵(主位的に)主文第2,3項と同旨。 ⑶(予備的に)法務大臣又は法務大臣から権限の委任を受けた名古屋入国管理局長は,控訴人に対し,本邦における在留を特別に許可せよ。 ⑷ 主文第4項と同旨。 2 被控訴人⑴ 本件控訴を棄却する。 ⑵ 控訴費用は控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,フィリピン共和国(以下「フィリピン」という。)国籍を有す- 2 -る外国人女性である控訴人が,名古屋入国管理局(以下「名古屋入管」という。)入国審査官から,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)24条4号ロ(不法残留)に該当する等の認定を受けた後,名古屋入管特別審理官から,上記認定に誤りがない旨の判定を受けたため,入管法49条1項に基づき,法務大臣に対して異議の申出をしたところ,法務大臣から権限の委任を受けた名 該当する等の認定を受けた後,名古屋入管特別審理官から,上記認定に誤りがない旨の判定を受けたため,入管法49条1項に基づき,法務大臣に対して異議の申出をしたところ,法務大臣から権限の委任を受けた名古屋入国管理局長(以下「名古屋入管局長」という。)から,平成25年7月26日付けで上記異議の申出には理由がない旨の裁決(以下「本件裁決」という。)を受け,引き続き,名古屋入管主任審査官から,同月29日付けで退去強制令書発付処分(以下「本件処分」という。)を受けたため,本件裁決及び本件処分の無効確認を求めるとともに,法務大臣又はその権限の委任を受けた名古屋入管局長に対して在留特別許可の義務付け(以下「本件在特義務付けの訴え」という。)を求めた事案である。 原審は,控訴人の訴えのうち,本件在特義務付けの訴えを却下し,その余の訴えに係る請求をいずれも棄却したので,控訴人が本件控訴を提起した。なお,控訴人は,当審において,本件在特義務付けの訴えは本件裁決が違法無効でない場合に直接的義務付け訴訟として予備的に請求するものであると述べた。 2 前提事実,争点及び当事者の主張は,控訴人は次のとおり控訴理由として補充したほかは,原判決「事実及び理由」第2の2及び3に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 控訴人の補充主張原審は,控訴人の不法就労と不法残留をことさら重視し,控訴人とAの間の真摯な内縁(夫婦)関係を正しく認識,考慮していない。しかも,原審は,控訴人やAに対する尋問すら行わないまま,両名が安定かつ成熟しているといい得るほどの内縁関係を築いていたと認めることができ- 3 -ないなどと判示しているが,このような原審の態度は,司法の役割を放棄するものであり,B規約等に照らし違法である。 第3 当裁判所の判断 るほどの内縁関係を築いていたと認めることができ- 3 -ないなどと判示しているが,このような原審の態度は,司法の役割を放棄するものであり,B規約等に照らし違法である。 第3 当裁判所の判断 1 控訴人の退去強制事由該当性について前提事実によれば,控訴人は,入管法24条4号ロ(不法残留)の退去強制事由に該当し,かつ,出国命令対象者(入管法24条の3)に該当しない外国人であることが認められる。 2 認定事実前提事実,甲1,4,7,8,10ないし12,14ないし17,20ないし22,乙2ないし5,7ないし9,11,当審における証人Aの証言及び控訴人本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる(なお,控訴人及びAの供述調書及び陳述書以外の書証を用いて認定した場合には,当該箇所に当該書証を掲記したものもある。)。 ⑴ 控訴人の本国における生活状況等控訴人は,昭和38年(1963年)12月●日,フィリピンにおいて,フィリピン人の両親の下に,7人きょうだいの第3子(兄2人,弟2人,妹2人)として出生した。控訴人は,昭和58年(1983年)頃に高校を卒業した後,母が営んでいた果物屋の手伝いをしたり,家事をするなどしていた。 控訴人は,母国語であるタガログ語及びフィリピンの公用語である英語での会話及び読み書きに不自由はない。また,原告は,Aの母国語であるポルトガル語での日常会話と,日本語の簡単な会話はできるものの,平仮名を少し読めるほかは,日本語の読み書きはできない。 控訴人は,昭和59年(1984年)から平成13年(2001年)までの間に,フィリピン人男性との間に未婚のまま5人の子をもうけ- 4 -た。 ⑵ 控訴人の入国から不法在留開始に至る状況 訴人は,昭和59年(1984年)から平成13年(2001年)までの間に,フィリピン人男性との間に未婚のまま5人の子をもうけ- 4 -た。 ⑵ 控訴人の入国から不法在留開始に至る状況控訴人は,当時本邦に滞在していた妹から,同人が日本人の夫との間にもうけた2人の子の育児を手伝ってほしいと頼まれたため,控訴人の子らを本国の実家に残したまま,母とともに来日することとなり,平成15年11月17日,在留資格を「短期滞在」,在留期間を「90日」とする上陸許可を受け,本邦に上陸した。(乙2)在留期限が到来する際に,母は在留期間更新の手続をして認められたが,控訴人は手続をとらず,フィリピンに残した控訴人の子らを養うには本邦に残って働くほかないと考え,在留期限である平成16年2月15日を超えて本邦に不法に残留した。(乙2)⑶ 不法在留開始後Aと知り合うまでの状況控訴人は,不法残留後,妹の子らの育児を手伝うほか,ベビーシッターをしたり,ホームパーティーに呼ばれて料理を提供したり,フィリピン人の知人が経営する飲食店を手伝うなどして稼働していた。 控訴人は,本邦での在留資格を得るため,フィリピン人の知人を介して紹介された日系ブラジル人の男性と偽装結婚をしようと考え,平成21年2月16日,岐阜県美濃加茂市長に対し,実際には居住したことはないにもかかわらず,居住地を「岐阜県美濃加茂市a 町b 番地c(以下省略)」,世帯主を「B」,世帯主との続柄を「同居人」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,登録を受けた(本件変更登録。乙2)。その後,控訴人は,上記男性から偽装結婚に協力する対価として予想外の金額を要求されたことから,悪いことはすべきでないと思い直し,偽装結婚をすることを思いとどまった。もっとも, 件変更登録。乙2)。その後,控訴人は,上記男性から偽装結婚に協力する対価として予想外の金額を要求されたことから,悪いことはすべきでないと思い直し,偽装結婚をすることを思いとどまった。もっとも,本件変更登録以降,外国人登録に係る変更手続を行わなかった。 控訴人には,本件変更登録及び不法在留のほかには犯罪歴等はない。 - 5 -⑷ Aの入国と控訴人と知り合う前の在留状況Aは,昭和43年(1968年)11月●日,ブラジルにおいて,農業を営むブラジル人の父と日本人の母の下に8人きょうだいの第3子として出生したが,家は裕福とはいえず,中学校を中退して農作業を手伝っていた。Aの母国語はポルトガル語であり,タガログ語及び英語には通じていない。 Aは,平成5年1月22日,姉及び妹とともに稼働目的で在留資格を「短期滞在」とする上陸許可を受けて本邦に上陸し,同年3月4日,日系二世であることから,「日本人の配偶者等」への在留資格変更許可を受けた。 Aは,平成9年頃,ブラジル人女性(以下「前妻」という。)と婚姻し,前妻との間に2人の子をもうけたものの,平成15年頃,夫婦関係が悪化して別居し,平成16年頃,前妻は子らと共にブラジルに帰国した。Aは,前妻に対して離婚するよう求めたが,前妻がこれを強く拒否し,あくまで離婚を求めるには訴えを提起するほかなかったが,そのためには費用もかかることから,前妻が離婚に同意する気持ちになることを期待しているにとどまった。 Aは,平成19年11月16日,永住許可を受けた。(乙2)⑸ Aとの交際と同居から退去強制手続に至る経緯控訴人は,平成20年4月12日頃,当時働いていた飲食店に客として来店したAと知り合い,Aの母国語であるポルトガル語で意思疎通を ⑸ Aとの交際と同居から退去強制手続に至る経緯控訴人は,平成20年4月12日頃,当時働いていた飲食店に客として来店したAと知り合い,Aの母国語であるポルトガル語で意思疎通をして同年8月頃から一緒に外出するなど親しく付き合うようになり,平成21年9月頃から同居を始めた。同居開始後,控訴人は,家事一切を引き受け,日勤と夜勤を交互に行うなど不規則な日常を強いられるAの生活を支え,Aには睡眠時に無呼吸の症状が出ることから,その症状が出る都度Aの体位を変えるなどの配慮もし,休日に教会や- 6 -買い物に出かける際には,常にAと同行していた。 控訴人は,同居し始めた頃に,Aに対し,本邦に不法残留して滞在している旨を伝え,Aは,特にそのことを咎めはしなかった。 Aは,前記のとおり前妻が離婚に応じない態度を示していたことから,婚約してもすぐには実現できないと考え,控訴人に明示的に結婚を申し込むことはしなかったが,前妻との離婚が成立すれば控訴人と正式に婚姻するつもりでおり,その意思を夫婦と変わりのない日常生活を共にすることや控訴人の子らに養育費を送金することで示しており,控訴人もそのことを理解していた。 Aは,従来の仕事を続けながら,控訴人の助けを得て,身内や友人が集まれる場を設けたいと考え,平成25年6月15日に当時の自宅の1階でレストランバーを開店した。 その2週間後の同年7月1日,次のとおり,控訴人に対する退去強制手続が開始された。 ⑹ 控訴人に対する退去強制手続の開始と控訴人らの婚姻平成25年7月1日早朝,名古屋入管入国警備官及び岐阜県加茂警察署警察官がA及び控訴人の当時の自宅を訪れ,収容令書を執行し,控訴人は同日中に名古屋入管収容場に収容された。この際,Aは,夜 平成25年7月1日早朝,名古屋入管入国警備官及び岐阜県加茂警察署警察官がA及び控訴人の当時の自宅を訪れ,収容令書を執行し,控訴人は同日中に名古屋入管収容場に収容された。この際,Aは,夜勤明けで就寝中であり,控訴人に起こされたものの,呆然としてなすすべがなかった。その後,前提事実に記載のとおり,同月26日付けで本件裁決がされ,同月29日付けで本件処分がされた。(乙3,4)Aは,控訴人が収容された後,面会を行うとともに従来から手をこまねいていた前妻との離婚手続を早急に進めることとし,これを名古屋入管にも伝え,同月4日には費用を分割払いとする約束でブラジル人弁護士にブラジルにおける離婚の申立てを依頼し,同年10月21日に離婚を認める判決がされた。 - 7 -控訴人は,平成26年3月28日に仮放免されるまで名古屋入管収容場に収容されていた。この間,Aは,仕事が日勤の日には収容場の面会時間中に訪れることができなかったが,夜勤の日にはできる限り面会に通った。 控訴人とAとは,仮放免後に必要書類等をそろえ,平成26年5月15日に婚姻届を提出して婚姻した。(甲1,4,7,8)⑺ 控訴人の現在の家族の状況控訴人の両親,兄1人,弟2人及び控訴人の来日時に本邦に滞在していた妹がフィリピンに在住しており,もう1人の兄は本邦で,もう1人の妹はカナダでそれぞれ暮らしている。控訴人は,両親と月に3回以上電話で連絡を取っているほか,きょうだいとも誕生日やクリスマスなどの際に連絡を取っている。 控訴人の子らのうち,長男はカナダで働いており,その余の子らはフィリピンにおいて子らの父の下で養育されていたが,二女は控訴人の収容中に勉学のため来日し,控訴人の自宅近くの親戚の家に滞在してインターナショナルスクール ,長男はカナダで働いており,その余の子らはフィリピンにおいて子らの父の下で養育されていたが,二女は控訴人の収容中に勉学のため来日し,控訴人の自宅近くの親戚の家に滞在してインターナショナルスクールに通っている。 そのほか,控訴人の自宅近くには上記の親戚のほか控訴人の兄も居住しており,控訴人及びAはそれらの家族(日本人を含む。)とも親密に交際している。 控訴人は,Aとの関係を両親のほか長男と二女に伝え,二女は近所に住んでいるためAとも会っており控訴人らの婚姻を受け入れている。 ⑻ Aの現在の家族関係Aの父は既に死亡し,母はブラジルで暮らしている。前妻及び子らもブラジルで暮らしており,Aは,母とはたまに連絡を取り,前妻及び子らとは,月に1回ないし2回程度の頻度で連絡を取り合うほか,養育費として月に4万円ないし5万円を送金している。 - 8 -Aの兄と弟及び姉の3人は本邦で暮らし,Aと連絡をとりあっており,妹も1人本邦で暮らしているようであるが,Aとの交流はない。 ⑼ 控訴人及びAの在留希望控訴人及びAは,互いに他方を掛替えのない伴侶として認め合っており,Aは,以前からブラジルに帰国するつもりはなく本邦で一生暮らし続けたいと考えていたことから,両名ともに本邦での在留を強く希望しており,控訴人も自分の得意な料理関係の仕事に就くなどして収入を得て,Aと協力して出来れば自宅を購入して自活し,我が国に負担をかけず,むしろ貢献したいと考えている。 3 本件裁決の違法性 本件裁決当時の控訴人とAとの関係前記認定のとおり,控訴人とAとは,平成20年4月12日に知り合い,やがて親しく交際するようになり,翌21年9月頃から同居を始めているところ,その同居生活の実態は,不規則な勤務形態のAの日常生 前記認定のとおり,控訴人とAとは,平成20年4月12日に知り合い,やがて親しく交際するようになり,翌21年9月頃から同居を始めているところ,その同居生活の実態は,不規則な勤務形態のAの日常生活を控訴人が家事一切を引き受けて支え,休日には2人そろって外出するなど客観的にみて夫婦同然の状態であり,双方の意識においてもAの前婚の解消を待って正式に婚姻しようという点で共通しており,両者の関係を乱す不安な状況も生じないまま4年余りが経過していたのであるから,既に安定かつ成熟した内縁関係が成立していたと認められる。 このことは,退去強制手続を開始するために控訴人らの自宅を訪れた入国警備官による自宅室内の見分や,その後に行われた控訴人及びAからの聴取を通じて,裁決行政庁も容易に認識し得たと認められる。 また,退去強制手続開始後,Aは足繁く控訴人に面会するとともに,それまで費用面での不安から手をこまねいていた前妻との離婚手続につき,分割払いで費用を手当して直ちに着手し,このことを名古屋入- 9 -管に伝えており,遠い外国での法的手続であるにもかかわらず僅か3か月余りで離婚判決を得ているのであり,このこともAと控訴人の内縁関係が強固なものであったことを裏付けるものである。 これに対し,被控訴人は,当時,Aと前妻との離婚手続が完了しておらず,控訴人と婚姻できる具体的な目途は全くたっていなかったことと,両者の関係が不法残留という違法状態の上に築かれたものにすぎないことを指摘して,仮に両者の関係が真摯なものであったとしても,安定かつ成熟した関係であったとまではいえないと主張する。 しかし,Aと前妻は,約6年間本邦で婚姻生活をした後に関係が悪化し,前妻は本件裁決の約9年前にブラジルに帰国しており,この間に両者の関係を修復する試みがあったと たとまではいえないと主張する。 しかし,Aと前妻は,約6年間本邦で婚姻生活をした後に関係が悪化し,前妻は本件裁決の約9年前にブラジルに帰国しており,この間に両者の関係を修復する試みがあったとは認められないのであるから,法的な手続を講ずれば離婚が成立する可能性がかなり高い状況にあったと認められる。そして,現にAは控訴人に対する退去強制手続が開始されてまもなく離婚手続に着手したのであるから,外国での法的手続のため離婚成立時期を具体的に予測することは困難であったものの,早晩離婚が成立し,控訴人とAの法的な婚姻関係が成立する可能性が高い状況にあり,このことは裁決行政庁も認識可能な状態にあったと認められる。したがって,裁決行政庁としては,早期に裁決をする場合には控訴人とAとの間に早期に法的婚姻関係が成立する見込みが高いことを前提とした判断をすべきであり,その点に不安があれば相当期間事態の推移を見守ってから判断をするとの対応をすべきであったということができ,そのいずれの方途もとらずにされた本件裁決は,当然考慮すべき事情を考慮せずされたもの,又は明らかに時の裁量を誤ったものといわざるを得ない。 また,婚姻関係は,本来,国家が定めた公法秩序とは無関係に人の本性に基づいて成立発展するものであり,我が国において内縁関係が- 10 -法律上の婚姻関係に準じて取り扱われていることも,このような婚姻関係の本質に基づくものである。したがって,被控訴人のいう違法状態の上に築かれた婚姻関係は安定かつ成熟したものではないとの主張は,このような婚姻関係の本質に反するものといわざるを得ず到底採用できないし,このような見解を前提とする本件裁決は,真に保護すべき婚姻関係が何であるかについての誤った認識を前提とする点で,その判断の前提に著しい過誤があるとい に反するものといわざるを得ず到底採用できないし,このような見解を前提とする本件裁決は,真に保護すべき婚姻関係が何であるかについての誤った認識を前提とする点で,その判断の前提に著しい過誤があるといわざるを得ない。 ⑶ 被控訴人は,上記⑵のほか,控訴人の配偶者であるAが日本国籍を有するではなく永住者にすぎないこと,控訴人の不法在留は長期にわたる上,不法在留に至る経緯に酌むべき事情がないこと,不法在留中に,本国に送金をしていたほか虚偽の外国人登録をしたこと,控訴人は本国に送還されても生活上の支障は生じないことなどを指摘する。 しかし,Aは,日本国籍は有しないものの日本人を母とするいわゆる日系2世であって,その点のみをとらえても我が国と深い結びつきを有するものである上,入国の経緯や在留状況に照らすと,もはや本国よりも我が国との結びつきの方が格段に強く,その年齢からして本国に帰国して新たな生活を始めるのは困難であると認められるから,その希望しているとおり本邦で一生暮らすであろうことを前提として,その婚姻関係を本邦においても十分に尊重すべきである。 また,控訴人は本国への送金をするため本邦に長期間にわたって不法在留し現に送金を続けていたが,その送金は未婚の母として子らの養育費に充てるためにしたものであり,人道上やむを得ない動機に基づくものと評価すべきものであって,在留特別許可の許否に当たって消極的事由としてことさら重視すべきものではない。虚偽の外国人登録をしたことは違法行為といわざるを得ないが,その目的であった偽装- 11 -結婚自体は,控訴人自らが思いとどまっており,上記登録によって何らかの実害が生じたとは認められないから,この点もことさら重視すべきものではない。 さらに,控訴人がフィリピンに送還された場合,これま 自体は,控訴人自らが思いとどまっており,上記登録によって何らかの実害が生じたとは認められないから,この点もことさら重視すべきものではない。 さらに,控訴人がフィリピンに送還された場合,これまで同国に渡航したこともなく現地の言語にも通じていないAがこれに同行することは著しく困難といわざるを得ず,控訴人とAとの婚姻関係に重大な支障を及ぼすものと認められる。したがって,被控訴人の上記主張はこのような重大な不利益を看過するものであり,これと同旨の裁決行政庁の判断も,その基礎となる重要な事実を看過している点で重大な欠落があるといわざるを得ない。 ⑷ 以上によると,本件裁決は,控訴人とAとの間に成熟かつ安定した内縁としての夫婦関係が成立していたにもかかわらず,これを看過し,ひいては控訴人をフィリピンへ帰国させることによる控訴人やAの受ける重大な不利益に想到することもなかった一方で,控訴人の不法残留や不法就労等をことさら重大視することによってなされたものというべきであり,その判断の基礎になる事実の認識に著しい欠落があり,また,その評価においても明白に合理性を欠くことにより,その判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことは明らかであるから,裁量権の範囲を逸脱又は濫用した違法なものであり,その違法性は重大かつ明白なものである。 よって,控訴人による本件裁決の無効確認請求には理由がある。 4 本件処分の違法性について本件処分は,名古屋入管局長から本件裁決をした旨の通知を受けた名古屋入管主任審査官が,入管法49条6項に基づいてしたものであるが,上記3において述べたとおり,本件裁決は裁量権の範囲を逸脱濫用した重大かつ明白な違法性があって無効なものである以上,これを前提とす- 12 -る本件処分も無効というほかなく,その無効確認請 が,上記3において述べたとおり,本件裁決は裁量権の範囲を逸脱濫用した重大かつ明白な違法性があって無効なものである以上,これを前提とす- 12 -る本件処分も無効というほかなく,その無効確認請求にも理由がある。 5 結論以上によれば,控訴人の主位的各請求はいずれも理由があるから認容すべきであり,予備的請求については判断するまでもないところ,これと結論の異なる原判決は失当であるから取り消すこととし,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第4部 裁判長裁判官藤山雅行 裁判官水谷美穂子 裁判官朝日貴浩
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