平成15(行コ)66 賦課決定処分取消請求控訴事件(原審・京都地方裁判所平成13年(行ウ)第19号)

裁判年月日・裁判所
平成16年9月29日 大阪高等裁判所 租税
ファイル
hanrei-pdf-14973.txt

判決文本文15,100 文字)

主文 1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1・2審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨(1) 消費税法は,国内で仕入れた商品を輸出した場合は,仕入代金に課税された消費税(控除不足還付税額)を還付するものとしているところ,本件は,被控訴人が,電子機器等の輸出取引に係る消費税の控除不足還付税額があるとして,平成8年7月1日付でした消費税の確定申告(以下「本件還付申告」という。)に基づいて,控訴人から還付金等の支払を受けたことについて,控訴人が,上記輸出取引は被控訴人によるものではなく,有限会社インターウェイブ(平成9年3月5日付でインターウェイブ株式会社に組織変更,以下,「インターウェイブ社」という。)によるものであり,被控訴人に対する控除不足還付税額はないとして,平成11年6月24日付で更正処分(以下「本件更正処分」という。)をして上記還付金等の返還を命じ,かつ,重加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件更正処分と併せて「本件各処分」という。)を行ったことに対し,いずれも違法な処分であると主張して,被控訴人が控訴人に対し,本件各処分の取消しを求めた抗告訴訟である。 (2) 原審は,上記輸出取引は,インターウェイブ社によるものであり,被控訴人によるものではないのに,被控訴人が還付申告したものであるから,本件更正処分は適法であるとして,同処分の取消しを求める請求は棄却したが,還付金等を返還した上に,重加算税を付加する義務を負わせるためには法律の明確な根拠が必要であるが,法律の規定に不備があるから,重加算税を課した本件賦課決定処分は違法であるとして,同処分を取り消した。 (3) 還した上に,重加算税を付加する義務を負わせるためには法律の明確な根拠が必要であるが,法律の規定に不備があるから,重加算税を課した本件賦課決定処分は違法であるとして,同処分を取り消した。 (3) 控訴人は,原判決中,控訴人敗訴部分(本件賦課決定処分の取消部分)の取消しと被控訴人の請求の棄却を求めて控訴した。なお,被控訴人は,自己の敗訴部分(本件更正処分の取消しを求める部分)について,控訴も附帯控訴もしていない。 2 争いのない事実等(1) 事実経過ア平成7年9月12日,控訴人に対し,被控訴人名義で,「個人事業の開廃業等の届出書」(乙1,平成7年1月1日開業),消費税法9条4項の規定により同条1項本文の規定(納税義務の免除の規定)の適用を受けない旨を記載した「消費税課税事業者選択届出書」(乙2,適用開始課税期間は平成7年1月1日から同年12月31日まで)及び同法19条1項3号の規定により課税期間を短縮する旨を記載した「消費税課税期間特例選択届出書」(乙3,適用開始日を平成7年7月1日に短縮)が提出された。 イ平成8年3月18日,控訴人に対し,被控訴人名義で,総所得金額を150万円(事業所得の金額0円,給与所得の金額150万円),納付すべき税額を0円とする「平成7年分の所得税の確定申告書」(乙4)に「平成7年分所得税青色申告決算書」(乙5の1・2)が添付されて提出された。 また,同日,被控訴人名義で,平成7年1月1日から同年12月31日までの課税期間の課税標準額を0円,課税標準額に対する消費税額を0円,控除対象仕入税額を218万5888円,控除税額を218万5888円とする被控訴人の「消費税(確定)申告書」(乙6,以下「当初の還付申告」という。)が提出された。この確定申告書の内容は,被控訴人が別表①「本件輸出取引の内訳」記載のとおり 控除税額を218万5888円とする被控訴人の「消費税(確定)申告書」(乙6,以下「当初の還付申告」という。)が提出された。この確定申告書の内容は,被控訴人が別表①「本件輸出取引の内訳」記載のとおりのアメリカ合衆国に所在する2社への電子機器等の輸出取引(以下「本件輸出取引」という。)をしたもので,被控訴人は控除対象仕入税額分218万5888円の還付を受けるべきものである,というものであった。 ウ平成8年7月1日,控訴人に対し,被控訴人名義で,上記確定申告書には課税期間の記載誤りがあるとして,これを取り下げる旨記載した「取下げ(撤回)届出書」(乙7)が提出されるとともに,消費税法46条1項所定の還付を受けるための,別表②「課税の経緯」の「還付申告」欄記載のとおり,平成7年7月1日から同年9月30日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の課税標準額を0円,課税標準額に対する消費税額を0円,控除対象仕入税額を218万5888円,控除不足還付税額を218万5888円とする消費税の被控訴人名義の「消費税(確定)申告書」(乙8,本件還付申告)が提出された。本件還付申告の内容も,課税期間を除いて当初の還付申告の内容のとおりであった。 エ控訴人は,平成8年8月30日,本件還付申告の申告書に記載された控除不足額に相当する消費税の還付金218万5888円に還付加算金1万3000円を加算した219万8888円(以下「本件還付金等」という。)を,被控訴人名義の三和銀行恵美須支店の普通預金口座に振り込み,送金した。 オ平成9年1月14日,控訴人に対し,いずれも被控訴人名義の,「個人事業の開廃業等の届出書」(乙10,平成8年12月31日廃業)及び平成9年分の所得税の申告以降は青色申告による申告を取りやめる旨を記載した「所得税の青色申告の取りやめ届出書」 被控訴人名義の,「個人事業の開廃業等の届出書」(乙10,平成8年12月31日廃業)及び平成9年分の所得税の申告以降は青色申告による申告を取りやめる旨を記載した「所得税の青色申告の取りやめ届出書」(乙11)が提出された。 カ控訴人は,平成11年6月24日,本件輸出取引は被控訴人によるものではなく,インターウェイブ社によるものであると判断し,本件課税期間において,被控訴人には消費税控除対象仕入税額はないとして,被控訴人に対し,別表②「課税の経緯」の「更正処分等」欄記載のとおり,控除対象仕入税額及び控除不足還付税額がいずれも0円である旨の本件更正処分及び重加算税の額が76万3000円である旨の本件賦課決定処分をした。 キ被控訴人は,平成11年8月23日,控訴人に対し,本件各処分について異議申立てをしたが,控訴人は,同年11月26日付で,これらをいずれも棄却する旨の決定をした。 また,被控訴人は,同年12月27日,国税不服審判所長に対し,審査請求をしたが,同所長は,平成13年2月28日付で,これらをいずれも棄却する旨の裁決を行った(甲1)。 ク被控訴人は,平成13年6月12日,京都地方裁判所に本件訴訟を提起した。 (2) 国税通則法(以下「法」という。)の規定ア法68条1項は,「法65条1項(過少申告加算税)の規定に該当する場合において,納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,又は仮装し,その隠ぺいし,又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは,当該納税者に対し,政令で定めるところにより,過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え,当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する」旨規定する。 イ法6 により,過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え,当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する」旨規定する。 イ法65条1項は,「期限内申告書(還付請求申告書を含む。)が提出された場合において,修正申告書の提出又は更正があったときは,当該納税者に対し,その修正申告又は更正に基づき,法35条2項の規定により納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。」旨規定する。 ウ前記の法35条2項の規定により納付すべき税額とは,更正通知書に記載された法28条2項3号イないしハに掲げる金額とされている(法35条2項2号)。 そして,法28条2項においては,更正通知書には,更正前の課税標準等及び税額等並びに更正後の課税標準等及び税額等と共に,「その更正前の還付金の額に相当する税額がその更正により減少するときは,その減少する部分の税額」を記載しなければならないとされている(同項3号ロ)。 エなお,法24条は,税務署長は,納税申告書の提出があった場合において,その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき,その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは,その調査により,当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する旨を規定する。 (3) 消費税法の規定ア消費税法30条1項によれば,消費税の納付税額は,課税期間中の課税標準額に対する消費税額から,その期間中の国内において行う課税仕入れ(消費税法2条1項12号)及び保税地域から引き取る課税貨物(消費税法2条1項11号)に係る消費税の合計額を控除して計算するが,それが当該課税期間の課税資産の譲渡に係る消費税額を超える う課税仕入れ(消費税法2条1項12号)及び保税地域から引き取る課税貨物(消費税法2条1項11号)に係る消費税の合計額を控除して計算するが,それが当該課税期間の課税資産の譲渡に係る消費税額を超える場合には,申告によりその控除不足額に相当する消費税を還付するものとされている(消費税法52条1項)。 イその課税期間に係る基準期間における課税売上高が3000万円以下であって,本来,消費税の納税義務を免除されている者であっても,「課税事業者選択届出書」を提出することによって,その翌課税期間以後,消費税の課税事業者となることができ(消費税法9条1項,4項),課税事業者たることを選択した者は,その課税期間中に課税資産の譲渡等がなく,納付すべき消費税額がない場合であっても(消費税法45条1項本文但書),仕入れに係る消費税額の控除不足額の還付(消費税法52条1項)の規定による還付を受けるため,還付申告書を提出することができる(消費税法46条1項)。 ウ輸出取引については消費税が免除され(消費税法7条1項),仕入税額控除の対象となる「課税仕入れ」からは,輸出免税の対象となる資産の譲渡等に該当するものが除かれている(消費税法2条1項12号)ところから,本来仕入税額控除は認められないことになるところ,輸出取引として行われる非課税資産の譲渡等については,所定の証明がされることを要件として仕入税額控除が認められる(消費税法31条1項)。 3 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 本件更正処分は適法か(具体的には,本件還付申告は被控訴人がしたもので,本件輸出取引は被控訴人がしたものではないか否か。)(争点(1))。 争点(1)に関する当事者の主張は,原判決5頁24行目から6頁22行目までに記載のとおりであるから,これを引用するが,その骨子は,控訴人において, 控訴人がしたものではないか否か。)(争点(1))。 争点(1)に関する当事者の主張は,原判決5頁24行目から6頁22行目までに記載のとおりであるから,これを引用するが,その骨子は,控訴人において,本件輸出取引はインターウェイブ社がしたものであるのに,被控訴人の取引と仮装して本件還付申告を行ったものであるから,控訴人が被控訴人に対して行った本件更正処分は適法であると主張したのに対し,被控訴人は,本件還付申告はインターウェイブ社の従業員である被控訴人がその使者としてしたにすぎず,仮に被控訴人が申告したとすれば,本件輸出取引は被控訴人の個人事業として行われたものであるから,本件更正処分は違法であると主張した。 (2) 本件賦課決定処分は適法か(争点(2))。 〔控訴人〕ア被控訴人は,インターウェイブ社代表者のAの依頼により,Aと通謀して,真実は,被控訴人は「インターウェイブ(大浦)エレクトロニクス」の屋号で何ら事業を行っておらず,本件輸出取引も行っていないにもかかわらず,同屋号で「個人事業の開廃業等の届出書」,「消費税課税事業者選択届出書」及び「消費税課税期間特例選択届出書」を提出するなどして,インターウェイブ社に帰属する本件輸出取引を被控訴人が行ったかのように仮装し,仮装したところに基づき,本件還付申告書を提出した。 イ仮に,被控訴人が直接仮装行為をしなかったとしても,被控訴人は,本件還付申告書等の作成の基礎となる資料の提示などについてAに一任し,これを受けてAが本件輸出取引を被控訴人がしたものと仮装したことは明らかであり,Aの行為は被控訴人の行為と同視すべきものである。 ウ法24条,28条2項,35条2項,65条1項及び68条1項によれば,被控訴人は,本件更正処分により「還付金の額に相当する税額の減少部分」の納税義務(法28条2項 の行為と同視すべきものである。 ウ法24条,28条2項,35条2項,65条1項及び68条1項によれば,被控訴人は,本件更正処分により「還付金の額に相当する税額の減少部分」の納税義務(法28条2項3号ロ,法35条2項2号)を負う。 還付金とは,「国税に関する法律の規定による国税の還付金」(法2条6号)であり,消費税の場合も同様であるから,まさに税そのものである。したがって,還付申告書の記載内容に誤りがあった場合において,更正の対象となり得ることはもちろん,更正処分により減少した還付金(税)の返還義務はまさに納税義務であるから,還付金の返還義務を負う者は,個別税法上の納税義務を負わない者であっても,納税義務を負う者として,当然に法2条5号及び65条1項の「納税者」であると認められる。 この点,無効な還付申告書に基づいて還付がされた場合には,国が当該還付金を取り戻すための手続に係る租税法上の定めはないことから,民法上の不当利得ないし不法行為の規定によらざるを得ないが,本件還付申告書は,その主体が被控訴人であり,かつ,被控訴人がその意思に基づいて行ったものであるから,有効であり,有効な納税申告書の提出があった場合には,課税標準等又は税額等を是正するためには,更正によるべきことが定められており(法24条,28条),更正によって増減した国税の納付や還付についても,法に定められた規定によることになり(法34条以下及び56条以下),民法上の不当利得の規定が適用されるものではない。 したがって,被控訴人のように,消費税法に定められた本件課税期間の消費税の納税義務のない者が,控除不足の還付請求をした場合であっても,その者は法65条所定の当該「納税者」に当たる。 エ法68条1項は,隠ぺい,仮装の主体を納税者に限定しているにすぎず,隠ぺい,仮装の時点 納税義務のない者が,控除不足の還付請求をした場合であっても,その者は法65条所定の当該「納税者」に当たる。 エ法68条1項は,隠ぺい,仮装の主体を納税者に限定しているにすぎず,隠ぺい,仮装の時点で納税義務者でなければならないとする時間的な先後関係まで要求していると解釈すべきではない。そして,納税者に対する行政上の制裁という同条1項の趣旨からすれば,実際に隠ぺい,仮装を行った者が,当該隠ぺい,仮装の後に納税義務を負うこととなった場合であっても,事実の隠ぺい又は不正な方法によって納税義務違反を行ったことに変わりはないのであるから,同条1項の要件を満たすと解すべきである。 仮に,隠ぺい,仮装の時点で納税者であることが法68条1項の要件であると解したとしても,被控訴人は,前記のとおり,本件更正処分により還付金の減少部分の具体的納税義務を負うと理解され,還付申告の時点で,還付金の減少という更正を受ける可能性がある以上,申告時には還付金の減少部分について抽象的な納税義務を負っていると考えるべきである。 したがって,被控訴人は,申告時に納税者であり,かつ,申告の時点で本件還付申告書の提出等による仮装行為が認められるのであるから,法68条1項の要件を満たすことは明らかである。 〔被控訴人〕ア被控訴人は,本件還付申告により納税者として利益を享受するという認識はなく,単にAの従業員として本件還付申告をしたに過ぎない。被控訴人は,隠ぺい・仮装行為の意図を有していなかった。 イ被控訴人は,本件還付申告の時点においては,本件課税期間の消費税の納税義務者ではなく,本件更正処分は,申告者の納税義務には無関係に不当利得関係を調整するものにすぎず,還付金の減額部分に対応する申告者側の納税義務は,そもそもあり得ないから,法65条1項の「当該納税者」には当たらない ,本件更正処分は,申告者の納税義務には無関係に不当利得関係を調整するものにすぎず,還付金の減額部分に対応する申告者側の納税義務は,そもそもあり得ないから,法65条1項の「当該納税者」には当たらない。 したがって,被控訴人に対し,過少申告加算税を課することはできず,この課税に代わる重加算税を課することもできない。 ウ法65条1項は,過少申告加算税を課す場合として「期限内申告書(還付請求申告書を含む。)が提出された場合」と限定しているが,重加算税を課する要件を定める法68条1項には,そのような場合に関する規定が存在しないから,還付請求申告の場合には,重加算税の規定を適用することはできない。 エ仮に,法65条1項の「当該納税者」には,更正処分により発生した特殊の納税義務を負う者を含むと解しても,法68条1項の隠ぺい,仮装行為は,納税申告の前に存在しなければならないところ,本件において,被控訴人は,納税申告の前に,隠ぺい,仮装行為をしていないから,被控訴人に重加算税を課することはできない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記争いのない事実等及び証拠(甲1ないし4,乙1ないし43(各枝番を含む。),45,47ないし49)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) インターウェイブ社は,コンピュータ部品を輸入し,国内のパソコンの販売業者に卸売りすること等を業とする有限会社で,その代表者はAで,従業員はアルバイトを含めて数人であったが,被控訴人もその一人であった。 (2) インターウェイブ社は,平成7年7月1日から同年9月30日までの間に,別表①の「各インボイスの記載内容」のとおりの本件輸出取引をし,同表の「本件輸出取引の決済内容」のとおりの入金があった。 (3) しかし,インターウェイブ社のAは,本件輸出取引に係る前記の売 の間に,別表①の「各インボイスの記載内容」のとおりの本件輸出取引をし,同表の「本件輸出取引の決済内容」のとおりの入金があった。 (3) しかし,インターウェイブ社のAは,本件輸出取引に係る前記の売上を同社の益金に計上せず,取引の事実を隠ぺいして,本件輸出取引は被控訴人個人がしたものであると仮装し,同社の法人税を違法に免れると共に,被控訴人に本件輸出取引に係る消費税について,仕入税額控除分の還付申告をさせて,被控訴人にその還付金を取得させて,その後,その還付金を被控訴人からインターウェイブ社が取得しようと企てた。 (4) そこで,被控訴人は,Aの指示に基づき,本件還付申告を含む消費税の確定申告手続等を行うために,自己が営業を営んだ事実がなかったにもかかわらず,「個人事業の開廃業等の届出書」(乙1)を作成し,平成7年9月12日付で,控訴人に提出し,平成7年1月1日に電子機器輸出入卸売業を開業した旨を控訴人に届け出ることで,自己が個人事業者であるかのように装った。 また,被控訴人は,同様に,Aの指示に基づき,当初の還付申告及び本件還付申告を控訴人に提出することを可能にするために,消費税法9条1項本文の規定(納税義務の免除の規定)の適用を受けない旨を記載した「消費税課税事業者選択届出書」(乙2)及び「消費税課税期間特例選択届出書」(乙3)を自ら記載の上,押印し,平成7年9月12日付で,控訴人に提出した。上記の各届出書(乙1ないし3)には,いずれも,被控訴人の屋号として,「インターウェイブ(大浦)エレクトロニクス」(以下「大浦エレクトロニクス」という。)と記載されていた。 さらに,被控訴人は,Aの指示に基づき,本件還付申告による還付金の振込口座として,三和銀行恵美須支店に被控訴人名義の普通預金口座を開設した。 (5) その後,A及び被控訴人は, )と記載されていた。 さらに,被控訴人は,Aの指示に基づき,本件還付申告による還付金の振込口座として,三和銀行恵美須支店に被控訴人名義の普通預金口座を開設した。 (5) その後,A及び被控訴人は,本件還付申告により還付金を受け取るために,平成8年1月ころ,おぎ堂会計事務所のB事務員(以下「B」という。)に対し,被控訴人の「平成7年分の所得税の確定申告書」(乙4),「平成7年分所得税青色申告決算書」(乙5)及び当初の還付申告書(乙6)の作成を依頼した。その際,Aが,Bに対し,上記申告書等の記載内容の説明をした。 Bは,Aから提示された資料等に基づいて,Aの説明が正しいという前提で,本件輸出取引の主体は被控訴人(大浦エレクトロニクス),その売上は輸出売上,その仕入れは国内の取引先として,上記申告書等を作成した。その後,Bは,上記申告書等を被控訴人に手渡し,所得税の申告に関し,売上金額,仕入金額,諸経費の金額,所得金額及び所得税の税額の説明をし,消費税の申告に関し,課税標準額,控除税額,還付金額の説明をし,還付金は申告書を提出してから約1か月ないし2か月程で振り込まれる旨の説明をした。また,その際,Bは,被控訴人に対し,還付金の振込口座を聞いたところ,被控訴人が当初の還付申告書の「還付を受けようとする金融機関」欄に被控訴人名義の前記銀行口座名を記載した。 被控訴人は,Bの上記説明を聞き,上記申告書等の内容を了知した上,これらに押印し,平成8年3月18日付で,これらを控訴人に提出した。 (6) ところが,当初の還付申告書には,課税期間に関して誤りがあったため,控訴人の職員は,被控訴人に対し,課税期間の誤りの指摘及びその訂正を促す旨の連絡をした。被控訴人は,控訴人の職員に対し,上記申告書等はBが作成したものであるので,Bに対して連絡をするよう要 たため,控訴人の職員は,被控訴人に対し,課税期間の誤りの指摘及びその訂正を促す旨の連絡をした。被控訴人は,控訴人の職員に対し,上記申告書等はBが作成したものであるので,Bに対して連絡をするよう要望した。 そこで,控訴人職員がBに連絡したところ,Bは,当初の還付申告書の「取下げ(撤回)届出書」(乙7),本件還付申告書(乙8)及び平成7年10月1日から同年12月31日までの課税期間の「消費税(確定)申告書」(乙9)を作成した。 その後,Bは,被控訴人に対し,当初の還付申告書には課税期間に誤りがあったこと,そのため,当初の還付申告書について取り下げる旨を記載した書類を提出すると共に,正しい課税期間に係る消費税の確定申告書を提出する必要があること,当初の還付申告書と本件還付申告書とはその内容自体は同一のものであることなどを説明し,これらの書類に被控訴人の押印を得た上で,平成8年7月1日付で,控訴人にこれらの書類を提出した。 (7) その後,控訴人は,前記争いのない事実等記載のとおり,平成8年8月30日,本件還付金等219万8888円を,被控訴人名義の銀行口座に振り込み,送金した。その後,本件還付金等相当額の金員は,インターウェイブ社が取得した。 (8) Aは,インターウェイブ社の代表者として,平成8年9月30日,平成7年8月1日から平成8年7月31日までの事業年度の法人税の申告をしたが,同申告では,本件輸出取引による売上を除外するなどしていた。 (9) 被控訴人は,Aの指示に基づき,平成9年1月14日付で,個人事業の廃業届出書(乙10)及び「所得税の青色申告の取りやめ届出書」(乙11)を自ら作成して,控訴人に提出した。 (10) その後,平成10年9月ころから,インターウェイブ社に対する前記の法人税の調査が行われた。Aは,同年10月ころ,調 の青色申告の取りやめ届出書」(乙11)を自ら作成して,控訴人に提出した。 (10) その後,平成10年9月ころから,インターウェイブ社に対する前記の法人税の調査が行われた。Aは,同年10月ころ,調査を担当していたC上席調査官に対し,本件輸出取引の主体が大浦エレクトロニクスである旨記載した虚偽のインボイスを作成,提出した上,本件輸出取引は大浦エレクトロニクスの売上である旨の虚偽の説明をした。 (11) その後,控訴人は,調査の結果,本件輸出取引は被控訴人によるものではなく,インターウェイブ社によるものであることが分かり,平成11年3月9日,インターウェイブ社に対して法人税の前記の申告についての更正及び重加算税の賦課決定処分をし,その後,同年6月24日付で,被控訴人に対し,本件各処分をした。 2 本件更正処分の適法性(争点(1))について当裁判所も,本件更正処分は適法であると判断するが,その理由は,原判決10頁25行目から11頁22行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 その骨子は,証拠によれば,本件輸出取引は,被控訴人によるものではないのに,被控訴人が自己の意思に基づき,本件還付申告をしたと認められるから,本件更正処分は適法であるというものである。 3 本件賦課決定処分の適法性(争点(2))について(1) 問題の所在重加算税を定めた法68条1項は,法65条1項の過少申告加算税の規定に該当する場合において,納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,又は仮装し,その隠ぺいし,又は仮装したところに基づき,納税申告書を提出したときは,重加算税を課すると規定し,法2条5号は,納税者とは,国税に関する法律の規定により国税を納める義務がある者及び源泉徴収による国税を徴収して国に納付しな たところに基づき,納税申告書を提出したときは,重加算税を課すると規定し,法2条5号は,納税者とは,国税に関する法律の規定により国税を納める義務がある者及び源泉徴収による国税を徴収して国に納付しなければならない者をいうと規定している。 そして,前記1,2の認定・判断によれば,被控訴人は,本件輸出取引の帰属主体ではなく,本件課税期間において,被控訴人について,他に消費税法が定める課税要件事実があったとの主張・立証はない。したがって,被控訴人は,本件還付申告の時点においては,本件課税期間の消費税の課税要件を充足する者(納税義務者)ではない。 このように,還付申告の時点で消費税の納税義務者ではない者に対して,過少申告加算税が課せられるのか否か,仮に課することができるとしても,更に,同税に代えて,法68条1項所定の重加算税を課することができるかどうかが問題になる。 (2) 納税義務の成立と税額の確定国税を納付する義務(納税義務)が成立する場合には,その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する国税を除き,国税に関する法律の定める手続により,その国税についての納付すべき税額が確定するものとされている(法15条1項)。 国税についての納付すべき税額の確定方式としては,賦課課税方式と申告納税方式があり,後者は,納税義務が成立する場合において,納税者が国税に関する法律の規定により,納付すべき税額を申告すべきものとされている国税について適用され,それ以外の国税については前者によるものとされている(法16条1項,2項1号)。消費税については,申告すべきこととされている(消費税法45条等)ので,申告納税方式による。 このうち,申告納税方式とは,「納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とし,その申告がない場合又はそ は,申告すべきこととされている(消費税法45条等)ので,申告納税方式による。 このうち,申告納税方式とは,「納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とし,その申告がない場合又はその申告に係る税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかった場合その他当該税額が税務署長又は税関長の調査したところと異なる場合に限り,税務署長又は税関長の処分により確定する方式」(法16条1項1号)をいう。 そして,申告納税方式の場合,一旦私人が自ら納税義務を負担するとして納税申告をしたならば,実体上の課税要件の充足を必要的な前提条件とすることなく,同申告行為に租税債権関係に関する形成的効力が与えられ,税額の確定された具体的納税義務が成立すると解するべきであるから,納税申告行為が無効ではなく,有効に成立している以上,結果的に実体上の課税要件事実が発生しなかったというだけで,形成された納税義務者としての地位が否定されるものではないと解される。 (3) 本件還付申告の意義前記1に認定のとおり,被控訴人は,本来消費税が免除されている小規模事業者であるが,自ら消費税課税事業者選択届出書を提出したことによって,消費税の納税義務者となったものであり,課税要件を満たす国内取引があれば,現実に納付すべき消費税額が発生する可能性がある反面,輸出等を行った場合は,国内での仕入れに係る消費税額が免除され,免除された消費税額の還付を受けることができる地位を得た。被控訴人は,この地位を前提として,本件課税期間において,本件輸出取引以外の課税対象取引がなかったことから,本件還付申告をし,課税標準額を0円,課税標準額に対する消費税額を0円,控除対象仕入税額を218万5888円,控除不足還付税額を218万5888円として,控除不足還付税額の還付を求めたものである。 件還付申告をし,課税標準額を0円,課税標準額に対する消費税額を0円,控除対象仕入税額を218万5888円,控除不足還付税額を218万5888円として,控除不足還付税額の還付を求めたものである。 そして,本件還付申告書の提出は,前記1の認定・判断のとおり,その主体が被控訴人であり,かつ,被控訴人の意思に基づいて行われたものであることが明らかであるから,本件還付申告は無効ではなく,有効である。 したがって,前記の申告納税方式の意義からすれば,本件還付申告の時点で,本件輸出取引について実体上の課税要件事実が発生していなくても,還付申告により,観念的・抽象的には,課税標準額に対する消費税額が0円,控除対象仕入税額及び控除不足還付税額が218万5888円の納税義務が成立しているものというべきである。 そして,法上,有効な納税申告があった場合には,課税標準等又は税額等を是正するためには,更正によるべきことが定められており(法24条,28条),更正によって増減した国税の納付や還付についても,同法に定められた規定によることになる(法34条以下及び56条以下,法28条,35条の規定は,還付請求者が現実に納税義務を負っているか否かを区別していない。)。したがって,控訴人は,本件還付申告に基づいて,控除対象仕入の有無や本件輸出取引以外の課税対象取引の有無等を調査し,必要な更正処分をし得ることになるのであって,本件の場合は,本件輸出取引が被控訴人に帰属するものでないことが判明したことにより,本件更正処分により,控除対象仕入税額及び控除不足還付税額が0円とされて,被控訴人は,減少した還付金の返還義務を負うこととされたものである(なお,これに対し,納税申告自体が無効である場合には,更正処分によることができず,国が当該還付金を取り戻すための手続に係る租税法上 被控訴人は,減少した還付金の返還義務を負うこととされたものである(なお,これに対し,納税申告自体が無効である場合には,更正処分によることができず,国が当該還付金を取り戻すための手続に係る租税法上の定めはないことから,民法上の不当利得ないし不法行為の規定によらざるを得ないものと解される。)。 ここでいう「還付金」とは,「各税法の規定により,納税者に特に付与された公法上の金銭請求権」であり,その実質は不当利得であるが,一定の納税額を前提とする以上,還付金自身,「国税」の性質を有するものであり,更正処分により減少した還付金の返還義務はまさに納税義務である。 以上によれば,被控訴人は,本件還付申告の時点では,具体的な納税義務はないものの,還付金の額を確定する前提としての観念的・抽象的な納税義務はあり,これが本件更正処分により,還付金が減少されたことにより,納税義務が具体化したものというべきであるから,申告時点においても,被控訴人は,納税義務を負っている,すなわち「納税者」であると解して差し支えないものというべきであり,法2条5号及び65条1項の「納税者」に該当するものと認めるのが相当である。 なお,法15条13号において,過少申告加算税,不納付加算税,重加算税の成立時期が規定されており,同法施行令5条12号によれば,「還付請求申告書に係る過少申告加算税又は重加算税については,当該還付請求申告書の提出の時」と規定されていることからも,還付申告に対し,過少申告加算税や重加算税を課すことができることを前提にしているといえる。 (4) 過少申告加算税の賦課要件について前記認定事実によれば,被控訴人により本件還付申告書が提出されたこと,同申告書に係る課税標準等又は税額等について本件更正処分がされ,これにより納付すべきこととなる税額があること,被控 要件について前記認定事実によれば,被控訴人により本件還付申告書が提出されたこと,同申告書に係る課税標準等又は税額等について本件更正処分がされ,これにより納付すべきこととなる税額があること,被控訴人は納税者であることが認められるから,法65条1項の過少申告加算税の賦課要件をいずれも充足していることは明らかである。 (5) 隠ぺい,仮装について前記認定事実によれば,本件還付申告書は,インターウェイブ社に帰属する本件輸出取引を被控訴人に帰属すると仮装した内容であること,被控訴人は,Bからその申告書記載の内容について事前に説明を受け,内容が虚偽であることを認識した上でこれらの書類の一部に署名・押印し,控訴人に提出したこと,本件還付申告書の提出に先駆け,個人事業の開業等の届出書を作成・提出することにより,自己が個人事業者であることを装い,もって,本件還付申告を含む消費税の申告手続等を行い得るようにしたこと,同様に,本件還付申告書の提出に先駆け,消費税課税事業者選択届出書及び消費税課税期間特例選択届出書も作成・提出することにより,内容虚偽の本件還付申告書が提出できるようにしたことが認められ,これらの事実によれば,内容虚偽の本件還付申告書があたかも正当なものであるかのように体裁を整えたものというべきであり,法68条1項の「納税者が,その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,又は仮装し,その隠ぺいし,又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していること」の要件を充足することは明らかである。 (6) 重加算税の賦課要件について前記認定事実によれば,被控訴人には過少申告加算税の賦課要件を充足し,かつ,法68条1項の上記「隠ぺい,仮装」の要件を充足していることが認められるから,法68条1項の賦課要件をいず 課要件について前記認定事実によれば,被控訴人には過少申告加算税の賦課要件を充足し,かつ,法68条1項の上記「隠ぺい,仮装」の要件を充足していることが認められるから,法68条1項の賦課要件をいずれも充足していることは明らかである。 (7) まとめ以上によれば,本件賦課決定処分は適法である。 4 結論以上のとおり,本件各処分はいずれも適法であり,これが違法であるとして,その取消しを求める被控訴人の請求はいずれも理由がない。 よって,原判決中,控訴人敗訴部分を取り消して,被控訴人の請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第14民事部裁判長裁判官井垣敏生裁判官高山浩平裁判官神山隆一

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る