主文 本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。事実 一控訴人は「原判決を取消す。控訴人が被控訴人(以下被控訴会社ともいう)に対し雇用契約上被控訴会社荻窪工場を就労場所とし同工場総務部施設課所属の従業員としての権利を有することを仮りに定める。被控訴人は控訴人に対し昭和四四年二月から同四九年一月まで毎月二五日限り金四万七三一八円を支払え。訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。二当事者双方の事実上の主張および疏明関係は次のとおり附加するほか原判決事実摘示(原判決二枚目表八行目から一〇枚目表七行目までと同一である(但し、原判決四枚目表末行中「申請理由(一)(三)は認める。」の次に「但し、控訴人は昭和二四年一一月一二日企業整備に基く人員整理によつて富士産業から解雇されていたものであつて、東京地方裁判所が昭和二五年六月三〇日にした仮処分決定により仮りに従業員たるの地位を保全されて勤務していたに過ぎず、被控訴会社の正式の従業員ではない。」を加える。)からこれをここに引用する。(被控訴人の主張)労組法一七条の立法趣旨は、労働協約の規範性を協約の部外者にも及ぼすことによつて協約当事者たる労働組合自身の統制力の維持強化をはかるとともに一つの工場、事業場における労使関係の安定に寄与せしめることにあるのであつて控訴人主張のように解すべきではない。協約当事者たる労働組合の団結の擁護とこれによる企業内の平和維持を主眼とするものであつて、かかる目的が達成されることが労働組合ないし組合員或いは当該企業内の労働者の福祉に直結するものであるという立場に立つているものと解すべきである。大多数の組合員が当該労使間の労働協約に定める労働条件(本件でいえば定年制)に遵 働組合ないし組合員或いは当該企業内の労働者の福祉に直結するものであるという立場に立つているものと解すべきである。 の団結の擁護とこれによる企業内の平和維持を主眼とするものであつて、かかる目的が達成されることが労働組合ないし組合員或いは当該企業内の労働者の福祉に直結するものであるという立場に立つているものと解すべきである。大多数の組合員が当該労使間の労働協約に定める労働条件(本件でいえば定年制)に遵 働組合ないし組合員或いは当該企業内の労働者の福祉に直結するものであるという立場に立つているものと解すべきである。大多数の組合員が当該労使間の労働協約に定める労働条件(本件でいえば定年制)に遵つているのに当該企業内の極めて少数の未組織労働者がそれよりも有利な労働条件を労働組合に加入していないという理由をもつて既得権として享有し得るとすれば、それこそ労働組合の団結を乱し、当該企業内の平和維持は根本から覆えされることはいうまでもなく明らかである。したがつて、たとえ未組織労働者が協約成立以前に協約の定める基準より有利な労働条件を内容とする労働契約を締結している場合でもそれが新に成立した協約の基準に牴触する限り将来に向つて当然その効力を失い未組織労働者の同意の有無に拘らず協約の効力を受けるものとすることが極めて妥当である。被控訴会社は通産大臣の斡旋により日本の自動車産業の国際競争力の強化を図るという国家的大乗的見地からプリンス自工を吸収合併した(この国際競争力強化の必要性は自動車産業労働者にとり看過し得ない問題で、そのため両会社従業員もその成功を祈るという態度であつた。)のであるが、その際プリンス自工の従業員を全員引続き雇傭するという方針をとり、この方針に則りプリンス自工は控訴人の勤務していた荻窪工場からみてもまた全事業場からみても従業員の四分の三以上の大多数の組合員の加入するプリンス自工労組と労働条件は合併期日において原則として日産自動車株式会社の基準に統一するとの本件労働協約を締結したのである。もともと労働条件の統一化は企業の合理的運営に不可欠であつて、とくに合併後の円滑な企業運営には絶対必要なものであるが、被控訴会社の従業員がプリンス自工の従業員よりもはるかに多くしかも吸収合併であることに鑑みれば右のような協約の締結されたのは当 可欠であつて、とくに合併後の円滑な企業運営には絶対必要なものであるが、被控訴会社の従業員がプリンス自工の従業員よりもはるかに多くしかも吸収合併であることに鑑みれば右のような協約の締結されたのは当然の事の成り行きであつた。 くに合併後の円滑な企業運営には絶対必要なものであるが、被控訴会社の従業員がプリンス自工の従業員よりもはるかに多くしかも吸収合併であることに鑑みれば右のような協約の締結されたのは当 可欠であつて、とくに合併後の円滑な企業運営には絶対必要なものであるが、被控訴会社の従業員がプリンス自工の従業員よりもはるかに多くしかも吸収合併であることに鑑みれば右のような協約の締結されたのは当然の事の成り行きであつた。控訴人は上述のように仮の地位を有するに過ぎない従業員であつたのであるから、大多数の従業員が異議なく服している被控訴会社の定める定年制の適用を受けず、旧プリンス自工の定年制の適用を受けるとすれば、プリンス自工労組のみならず、全日産自動車労働組合の組合員にも動揺を与え組合の統制を弱める結果を招来し、会社内に収拾のつかない混乱を生じ合併後の企業運営に重大な支障を来すことになるのである。右の実状に照らしても控訴人の主張は許されない。(控訴人の主張)(一) 控訴人が昭和二四年一一月一二日解雇され、昭和二五年六月三〇日東京地方裁判所の仮処分決定により同年七月一日復職したものであることは争わない。しかし、控訴人は東京地方裁判所の右仮処分決定により従業員たる地位を保全され(右決定は最高裁判所において確定)、したがつて、控訴人は従業員としての処遇を被控訴人に対し請求する権利がある。(二) 労働協約の一般的拘束力を定めた労組法一六条一七条の立法趣旨についていかなる考え方をとるにせよ、それが、契約自由の大原則によつて立つ資本主義社会における弱者たる労働者の地位を労働組合の団結を通じて使用者と対等の地位に高めもつて労働条件の改善・向上を実現しようとする理念、即ち憲法二八条に直接の基礎をおいていることは明白である。右の理念の実現の限度において、憲法は契約自由の原則が制限・修正されることを「公序」として宣明しているのである。したがつて、憲法は契約自由の原則の制限、修正の結果が労働者に労働条件の低下・劣悪化をもたらすような法の解釈を許すもので は契約自由の原則が制限・修正されることを「公序」として宣明しているのである。したがつて、憲法は契約自由の原則の制限、修正の結果が労働者に労働条件の低下・劣悪化をもたらすような法の解釈を許すものではない。これを労組法一六条に即していえば、労働協約の規範的効力という法律上の効力はあくまで労働条件の最低基準としてのみ機能する規範として妥当せしめる点にあると解すべきであつて、協約の定める以上の労働条件を定めた労働契約が労組法一六条によつて引下げられるというようなものと解されるべきではない。 、憲法は契約自由の原則の制限、修正の結果が労働者に労働条件の低下・劣悪化をもたらすような法の解釈を許すものではない。これを労組法一六条に即していえば、労働協約の規範的効力という法律上の効力はあくまで労働条件の最低基準としてのみ機能する規範として妥当せしめる点にあると解すべきであつて、協約の定める以上の労働条件を定めた労働契約が労組法一六条によつて引下げられるというようなものと解されるべきではない。労組法一七条の事業所単位の一般的拘束力について解釈する場合にも以上のごとき労働協約の性格が変ると解すべきいわれはない。労働協約の効力を協約当事組合の組合員以外のものに及ぼす結果として既得の労働条件の低下を招来してまで契約自由という市民法的価値を否定しつくす必要を憲法二八条から引き出すことはできないのである。(三) 本件男女別定年制には合理的理由がない。1 女子の生理機能と男子のそれとに差異があるという自然的事実は異論がないが、被控訴会社には労働者の生理機能の優劣とは直接関連をもたない職種も多数あるのであるから、そのような自然的事実の故に定年に関し女子を男子より不利益に扱うことに合理性ありということにはならない。生理機能の年令的変化の上で男女間に特別の差はない。2 我国における企業の二〇パーセント近くが男女差別定年制を設けているということも合理性を認める理由にならない。控訴人はもともと男女に定年差別のない企業と労働契約を結び長年にわたり勤務していたところ、突然控訴人の関知しない事情によつて企業合併が行われ、控訴人の意思を無視して就業規則が変更され定年が五年短縮されたのであつて、しかも、企業における定年制は延長の傾向にあり、労働者の稼働年限も延長されつゝあ 人の関知しない事情によつて企業合併が行われ、控訴人の意思を無視して就業規則が変更され定年が五年短縮されたのであつて、しかも、企業における定年制は延長の傾向にあり、労働者の稼働年限も延長されつゝあるという社会状勢の中においてなされたのである。かゝる事情を捨象して男女差別定年制の実施状況をその合理性の根拠とすることは不当である。3 被控訴会社が昭和二三年来本件男女差別定年制をしいてきたことを合理性あることの根拠とすることも不当である。控訴人はプリンス自工が被控訴会社に合併されるまでプリンス自工の従業員として男女差別のない定年制を定める就業規則の適用を受けていたのであり、少くとも満五五才までは勤務し賃金を得られるものと確信しそのような生活設計の下に生活してきたのであるからこのような事情を無視して企業合併後の会社の利益だけに目を向け、本件定年制に合理性ありとすることは不当である。 たことを合理性あることの根拠とすることも不当である。控訴人はプリンス自工が被控訴会社に合併されるまでプリンス自工の従業員として男女差別のない定年制を定める就業規則の適用を受けていたのであり、少くとも満五五才までは勤務し賃金を得られるものと確信しそのような生活設計の下に生活してきたのであるからこのような事情を無視して企業合併後の会社の利益だけに目を向け、本件定年制に合理性ありとすることは不当である。4 被控訴会社の女子の職種が補助的業務に限定されているわけではなく、仮りにそのような実情にあるとしても、それは一方的に右職種に配属したからであつて、女子が補助的業務についていることを理由に男女差別の定年制を設けることは信義則に反する。即ち、一般に被控訴会社のような大企業にあつては、肉体的労働能力や生理的機能の程度との関連が比較的薄い事務的職務に従事する労働者も多数おり、その職務も高度の管理的職務から平均的事務職、さらには単純補助事務までその職務に要請される判断力や知識、経験、技能の内容、程度の高低深浅によつて多種多様である。そして、それらの職務はすべて必ずしも女子や高年者に不適な職務ばかりといえず、男子がそれらのうちすべて高度の知識、経験、技能を要する職務に従事し、女子がすべて単純補助事務に従事しているというものではない。現に、控訴人の勤務している荻窪工場にお 者に不適な職務ばかりといえず、男子がそれらのうちすべて高度の知識、経験、技能を要する職務に従事し、女子がすべて単純補助事務に従事しているというものではない。現に、控訴人の勤務している荻窪工場においても経理、人事、庶務等の一般事務部門、タイピスト、キーパンチヤー、電話交換手、図面管理、倉庫管理、製図、データ整理、看護婦、秘書等多種の職務に従事しており、これらは決して単純な補助的業務ばかりではなく、その多くは多少とも、技能経験を要する平均的(中等程度)の事務職というべきである。被控訴会社は専門職を別にすれば、女子従業員を採用する際特に補助的業務や軽雑作業にのみ従事させる趣旨で労働契約を結んでいるわけではなく、男子従業員の採用と同様特に職種を限定していない。仮りに、女子従業員が男子従業員に比べて勤務年数を経ても企業への貢献度が向上しないような事態を招いたとしても、それは被控訴会社が自ら招いたもので、そのことの故に男女の定年に差別を設けることは信義則に反する。 うべきである。被控訴会社は専門職を別にすれば、女子従業員を採用する際特に補助的業務や軽雑作業にのみ従事させる趣旨で労働契約を結んでいるわけではなく、男子従業員の採用と同様特に職種を限定していない。仮りに、女子従業員が男子従業員に比べて勤務年数を経ても企業への貢献度が向上しないような事態を招いたとしても、それは被控訴会社が自ら招いたもので、そのことの故に男女の定年に差別を設けることは信義則に反する。なお、控訴人がこれまで従事してきた業務も補助的業務ではなく、一定の経験と技能を要する中級程度の業務であつて、控訴人はこれを大過なく遂行してきたのである。即ち、控訴人は昭和一六年中島飛行機株式会社に入社したが製図工として製図およびトレースの業務に男子製図工と一緒に従事し、全員解雇を経て再入社後は設計課に属して前同様の業務に従事し、昭和二四年七月部品検査課に配置され男子従業員とともに治具を操作して部品検査の業務に従事した。そして、昭和二四年一一月一二日解雇されたのであるが、翌年七月一日復帰し購買部受渡係に配属され生産計画の樹立と右計画に基く材料の購入の発注、購入材料の受入れ、生産現場への引渡等に関する事務に従事した。次いで、本件合併による機構改革のため機工具類の倉庫から生産現場への払 買部受渡係に配属され生産計画の樹立と右計画に基く材料の購入の発注、購入材料の受入れ、生産現場への引渡等に関する事務に従事した。次いで、本件合併による機構改革のため機工具類の倉庫から生産現場への払出業務に変更させられ、この業務に従事してきた。5 被控訴会社の賃金体系は勤続年数に比例し年々一定割合で上昇するというようなものではなく、労働能率のアンバランスは男子従業員に比べて女子従業員のほうがより早期に到来するということはなく、仮りに右の事実が認められるとしても、そのような事態を生じさせたのは被控訴会社の責任でこれを本件男女差別定年制の存在理由として主張することは信義則に反する。被控訴会社の賃金体系では、勤続年数に応じて上昇する賃金の額は一方的査定によつてきめられる部分が極めて大幅に留保されており、現実の運用上は女子は男子より低賃金に押えられ、その差は勤続年数に応じて拡大する。6 被控訴会社において従来から満五〇才を超えてなお勤続する女子従業員がいなかつたとしても、それは本件定年制が維持された当然の結果であつて、そのことを本件制度設定の動機として合理性を認める根拠とすることは不当である。 体系では、勤続年数に応じて上昇する賃金の額は一方的査定によつてきめられる部分が極めて大幅に留保されており、現実の運用上は女子は男子より低賃金に押えられ、その差は勤続年数に応じて拡大する。6 被控訴会社において従来から満五〇才を超えてなお勤続する女子従業員がいなかつたとしても、それは本件定年制が維持された当然の結果であつて、そのことを本件制度設定の動機として合理性を認める根拠とすることは不当である。7 就業規則五七条二項但書に定める定年延長の措置も、その発動は完全かつ一方的に被控訴会社の意思に委ねられているもので、定年制度全体を合理的ならしめる根拠にはならない。(四) 本件解雇は解雇権の乱用として無効である。本件解雇の唯一の理由は使用者側の都合であつて、控訴人には何ら責められるべき理由のないところ、控訴人はこれによつて現に生計の危機に瀕しており、他に再就職の道を求めるとしても、従前と同程度の賃金その他の労働条件と従来の経験を有効に活用し得る職種を兼ね備えた職場を見出すことは現在の社会状況下では極めて困難である。一方、被控訴会社にとつて、本件定 就職の道を求めるとしても、従前と同程度の賃金その他の労働条件と従来の経験を有効に活用し得る職種を兼ね備えた職場を見出すことは現在の社会状況下では極めて困難である。一方、被控訴会社にとつて、本件定年制を控訴人に適用しないこととする不利益損害は皆無である。本件定年制を適用し得ないことによつて労働条件の統一化・画一化が妨げられるとしても、それは企業合併のためであつて、企業合併によつて巨大な経済的利益を享受しておきながらその結果として発生した不統一を従業員の犠牲において統一化し画一化することは憲法上も信義則上も許されない。のみならず、旧プリンスの従業員は合併前からの被控訴会社の従業員とは殆んどすべて(少くとも定年制の関係で問題となる旧プリンスの女子従業員は全員)事業所を異にしており、その間の人事交流はないのであるから、事実上被控訴会社において労働条件の不斉合・不統一による不便・不利益は考えられない。控訴人が解雇された昭和四四年一月三一日当時被控訴会社従業員中旧プリンスの女子従業員は約四〇〇名に過ぎず、そのうち大正一四年生れのAほか数名以外は四〇才未満で、これらが満五〇才に達するのは昭和五四年以降のことである。その頃の我国および被控訴会社における労働市場の需給状況・労働人口・労働力の性別、年令別構成等が現在に比較しどのように変化しているか、したがつて、その頃まで本件男女差別定年制が被控訴会社に存続しているかは予断を許さないところである。 控訴会社従業員中旧プリンスの女子従業員は約四〇〇名に過ぎず、そのうち大正一四年生れのAほか数名以外は四〇才未満で、これらが満五〇才に達するのは昭和五四年以降のことである。その頃の我国および被控訴会社における労働市場の需給状況・労働人口・労働力の性別、年令別構成等が現在に比較しどのように変化しているか、したがつて、その頃まで本件男女差別定年制が被控訴会社に存続しているかは予断を許さないところである。いまここで「世界の日産」と自称する巨大企業体たる被控訴会社が今後十年以上ほとんど適用の場のない本件男女差別定年制の適用をたつた一人の女子の労働者にあくまで固執する合理的必要は全くない。被控訴会社就業規則五七条二項但書(会社において定年の延長を特に必要と認めたときは一定期間に限りこれを延長することがある。)の 適用をたつた一人の女子の労働者にあくまで固執する合理的必要は全くない。被控訴会社就業規則五七条二項但書(会社において定年の延長を特に必要と認めたときは一定期間に限りこれを延長することがある。)の趣旨からいつても本件のような形式上の理由を唯一の根拠とする定年解雇は権利の乱用である。(疏明)(省略) 理由 一控訴人が昭和二一年一月一五日富士産業株式会社(以下富士産業と略称する。)に雇用され同会社荻窪工場に勤務していたこと、昭和二五年七月富士精密工業株式会社(以下富士精密と略称する。)が富士産業から右荻窪工場を含む営業の一部譲渡を受けたこと、富士精密は昭和三六年二月その商号をプリンス自動車工業株式会社(以下プリンス自工と略称する。)と変更し、昭和四一年八月一日被控訴人(以下被控訴会社ともいう。)に吸収合併(以下本件合併という。)されたこと、控訴人が、被控訴会社においても本件合併後前記荻窪工場を勤務場所とし、同工場総務部施設課所属の従業員として勤務していたことは当事者間に争いない。二被控訴人は、昭和二四年一一月一二日企業整備に基く人員整理により控訴人は富士産業から解雇されたものであると主張し、控訴人もこれを認めるのであるが、控訴人が昭和二五年六月三〇日東京地方裁判所のなした仮処分決定により仮りに富士産業の従業員たる地位を保全されていたものであることも当事者間に争いのないところであり、被控訴人も控訴人を従業員として処遇しなければならない富士産業の右仮処分に基く義務は、プリンス自工、被控訴会社において順次承継したことを争わないのであるから、本件においては、富士産業のなした前記解雇の効力については論及するを要しない。 るが、控訴人が昭和二五年六月三〇日東京地方裁判所のなした仮処分決定により仮りに富士産業の従業員たる地位を保全されていたものであることも当事者間に争いのないところであり、被控訴人も控訴人を従業員として処遇しなければならない富士産業の右仮処分に基く義務は、プリンス自工、被控訴会社において順次承継したことを争わないのであるから、本件においては、富士産業のなした前記解雇の効力については論及するを要しない。三しかるところ、被控訴人が昭和四三年一二月二五日控訴人に対し、「控訴人は昭和四四年一月一四日をもつて、会 であるから、本件においては、富士産業のなした前記解雇の効力については論及するを要しない。三しかるところ、被控訴人が昭和四三年一二月二五日控訴人に対し、「控訴人は昭和四四年一月一四日をもつて、会社の就業規則第五七条により同月末日限り退職を命ずる」旨の通告(以下本件退職通告という。)をなし、昭和四四年二月一日以降控訴人を従業員として取扱わず就労を拒否していること、被控訴会社の就業規則第五七条第一項には従業員は男子満五五才、女子満五〇才をもつて定年とする旨定められているところ、控訴人が大正八年一月一五日生れの女子で昭和四四年一月一四日をもつて満五〇才に達するものであることは当事者間に争いない。そして、右就業規則の条項は控訴人に適用されるべきではないと控訴人は主張し争いがあるので次項以下においてこの点の判断する。四控訴人は、まず、控訴人の定年については本件合併前においてプリンス自工とその従業員間の雇用関係を規律していたプリンス自工の就業規則第四五条による満五五才とされるべきであるという。しかしながら、控訴人の定年についても、本件協約の効力により被控訴会社の就業規則が適用されるべきものと解するのが相当である。その理由は原判決説示の理由(原判決一一枚目裏五行目から一六枚目裏末行まで)と同一であるからこれを引用する。五次に、控訴人は被控訴会社の就業規則第五七条第一項中女子の定年に関する部分は何ら合理的理由に基づくことなく、専ら労働者の性別を理由とする差別であるから本件協約中女子定年に関する部分は民法第九〇条に違反し無効である、と主張する。そして、本件協約が、本件合併期日において被控訴会社に吸収合併されるプリンス自工の従業員の労働条件その他の待遇に関する基準を合併時における被控訴会社の労働条件その他の待遇に関する基準に統一する方法 会社の就業規則第五七条第一項中女子の定年に関する部分は何ら合理的理由に基づくことなく、専ら労働者の性別を理由とする差別であるから本件協約中女子定年に関する部分は民法第九〇条に違反し無効である、と主張する。そして、本件協約が、本件合併期日において被控訴会社に吸収合併されるプリンス自工の従業員の労働条件その他の待遇に関する基準を合併時における被控訴会社の労働条件その他の待遇に関する基準に統一する方法 そして、本件協約が、本件合併期日において被控訴会社に吸収合併されるプリンス自工の従業員の労働条件その他の待遇に関する基準を合併時における被控訴会社の労働条件その他の待遇に関する基準に統一する方法として締結され、従業員の定年に関しては合併に伴う経過措置として昭和四〇年中に定年年令に達するものについては従来の慣行に基づく既得権を保障する措置がとられたが、その他については被控訴会社の基準によるものとされ、被控訴会社においては就業規則第五七条一項によつて女子の定年年令は男子のそれより低く満五〇才とされていたことは前示のとおりである。ところで、定年年令についても右のように女子のそれを男子のそれより低くする取扱は、それが専ら女子であることのみを理由とする以外に他に合理的理由が認められないときは憲法第一四条の趣旨に反し公序良俗に反するものと解するのが相当であるところ、本件協約の目的、その締結経過は右のとおりであるから、被控訴会社の男女別定年制をそのまゝ本件合併時以後におけるプリンス自工の事業場においても採用することに合理的根拠があるものと認められない限り、本件協約中女子の定年年令に関する部分は専ら女子であることのみを理由とするものとして無効とすべきである。控訴人の前記主張は以上の見地に基いて判断すべきである。そこで、成立に争いのない疏乙第四号証、第一一号証、第一三号証、原審証人Bの証言により成立の認められる疏甲第二七号証、当審証人A、同Cの各証言に弁論の全趣旨を総合すると人間の生理的機能の年令的変化という点においては男女間に特別の差はないが、一般的にみて生理的機能水準自体は女子は男子に劣り、女子の五〇才のそれに匹敵する男子の年令は五二才位、女子五五才のそれに匹敵する男子の年令は七〇才位とみられていること、プリンス自工も被控訴会社も自動車 般的にみて生理的機能水準自体は女子は男子に劣り、女子の五〇才のそれに匹敵する男子の年令は五二才位、女子五五才のそれに匹敵する男子の年令は七〇才位とみられていること、プリンス自工も被控訴会社も自動車製造を業とする企業であり、女子従業員は特に生産部門においては男子と同等の作業を要求し得ない分野があり、看護婦・電話交換手・タイピストなどの専門職種は別として庶務・人事・経理・設計等の部門でいわゆる一般事務に従事しているものが大部分であること、被控訴会社は年功序列型の賃金体系を採用しておる(プリンス自工も同様である)こと、以上の事実がそれぞれ認められるのであつて、右事実からすれば、本件合併後におけるプリンス自工の事業場の従業員についても、被控訴会社の従前の従業員についてと同様に、女子従業員は一般的にいつて職場が男子のそれよりも狭く限定され、その職場での業務は入社後数年すれば習熟し、それ以上の勤続年数を重ねてもその企業への貢献度は男子従業員に比して向上せず、賃金と労働能率のアンバランスは男子従業員より早期に生ずるとみることができる。 ぞれ認められるのであつて、右事実からすれば、本件合併後におけるプリンス自工の事業場の従業員についても、被控訴会社の従前の従業員についてと同様に、女子従業員は一般的にいつて職場が男子のそれよりも狭く限定され、その職場での業務は入社後数年すれば習熟し、それ以上の勤続年数を重ねてもその企業への貢献度は男子従業員に比して向上せず、賃金と労働能率のアンバランスは男子従業員より早期に生ずるとみることができる。してみれば、プリンス自工の従業員の待遇に関する基準を本件合併時における被控訴会社の従業員の待遇に関する基準に統一させることとし、その結果定年年令について男女の差別取扱をすることとする本件協約が専ら女子であることのみを理由とするものではないというべきであるから、控訴人の主張は採用できない。控訴人は、生理的機能の優劣に関係がなく女子や高年令者に不向きではない職種職場が被控訴会社には多数あり、控訴人自身そのような職種・職場で業務に従事してきたと主張し、前記のごとき事情は合理的理由を認める根拠にはならないというのであるが、どのような職種・職場にどのような従業員を雇用し、配置するかは使用者の事業経営方針によつて定められ 業務に従事してきたと主張し、前記のごとき事情は合理的理由を認める根拠にはならないというのであるが、どのような職種・職場にどのような従業員を雇用し、配置するかは使用者の事業経営方針によつて定められるべきものであつて、被控訴会社のような重工業を営む会社において使用者の経営方針に従つた雇用配置をするときは(その巧拙はともかく)、前述のごとき女子従業員に対する評価が一般的になされる以上、これを理由とする男女の差別取扱が合理的根拠を欠く公序良俗に反するものということはできない。また、控訴人は男女の賃金には格差があり、女子従業員の労働能率と賃金のアンバランスは男子のそれより早期に生ずることはないという。そして、当審証人Aの証言とこれにより成立の認められる疏甲第三四ないし第四〇号証によると、被控訴会社の賃金支給の現実は従業員の勤続年数が同等なのに賃金の上昇という面では女子は男子より一般に劣つていることが窺われるのであるが、このことから、昇給額決定の諸条件が性別を除いてすべて同一である場合にもなおかつ格差があるものと速断することはできず前記判断の妨げとするに足りない。次に、控訴人は定年年令に関し男女を差別する取扱をすることを必要とする事態が生じたとしても、それは被控訴会社が自ら招いたもので、このことを理由とする差別取扱は信義則に反するという。 金の上昇という面では女子は男子より一般に劣つていることが窺われるのであるが、このことから、昇給額決定の諸条件が性別を除いてすべて同一である場合にもなおかつ格差があるものと速断することはできず前記判断の妨げとするに足りない。次に、控訴人は定年年令に関し男女を差別する取扱をすることを必要とする事態が生じたとしても、それは被控訴会社が自ら招いたもので、このことを理由とする差別取扱は信義則に反するという。しかしながら、差別取扱の必要の有無は経営の実態に即して判断せられるべきものであつて、他の経営方針をとることにより避け得るものであるかどうかまでも判断すべきものではないから被控訴会社の経営の実態が異常のものでない限り、控訴人の所論は採用できない。六次に控訴人は本件解雇は解雇権の乱用として無効であると主張する。しかしながら本件協約を無効とすべき理由はなく、その効力が協約当事者たる労働組合に属しない控訴人にも 控訴人の所論は採用できない。六次に控訴人は本件解雇は解雇権の乱用として無効であると主張する。しかしながら本件協約を無効とすべき理由はなく、その効力が協約当事者たる労働組合に属しない控訴人にも及ぼされる以上控訴人主張の事情あるの故をもつて解雇権の乱用というに該らないからこの点の控訴人の主張も採用できない。七してみれば、控訴人が満五〇才に達した月の末日である昭和四四年一月三一日をもつて控訴人と被控訴人間においては雇用関係は(保全処分により保全されたものも含めて)すべて終了したものというべきであり、したがつて被保全権利の疏明なきに帰し、保証をもつて疏明に代えることは相当でない。よつてこれと同趣旨において控訴人の本件申請を棄却した原判決は相当であり控訴人の本件控訴は理由がないから棄却し、民事訴訟法第八九条により控訴費用は控訴人の負担とし、主文のとおり判決する。(裁判官谷口茂栄綿引末男宍戸清七)
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