- 1 -平成18年10月2日判決言渡平成15年(ワ)第21149号損害賠償請求事件(第1事件)平成16年(ワ)第21512号損害賠償請求事件(第2事件)判決主文 第1事件被告及び第2事件被告は,原告に対し,連帯して,金40万円及びこれに対する第1事件被告は平成15年10月7日から,第2事件被告は平成16年10月22日から,各支払済みまで,年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告の負担とし,その余を第1,第2事件各被告の連帯負担とする。 事実及び理由 第1請求 第1事件第1事件被告は,原告に対し,金120万円及びこれに対する平成15年10月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事件第2事件被告は,原告に対し,金120万円及びこれに対する平成16年10月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告が,文部科学大臣及び国立大学法人法施行前の九州大学総長に対して,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という)に基づき「国立大学医学部附属病院長会議常置委員会組織の在り方問。 - 2 -題小委員会作業部会Aサブワーキンググループ」の議事録及び提出資料等の開示請求を行ったところ,九州大学総長が同議事録について文書不存在を理由に不開示決定をしたことにより,精神的苦痛を受けたと主張し,第1,第2事件,,,各被告に対して国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として連帯して120万円(慰謝料及び弁護士費用)及びこれに対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで,民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 ,,(),なお原告は当初被告 して120万円(慰謝料及び弁護士費用)及びこれに対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで,民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 ,,(),なお原告は当初被告国のみを相手方として訴えを提起したが第1事件国立大学法人法の施行(平成16年4月1日)に伴い,第1事件被告の地位を国立大学法人九州大学(以下,国立大学法人法施行前の九州大学についても区別せず,第1事件被告を「被告大学」という)が承継した可能性があること。 を受け(ただし,この点については原告は争っている,国を相手方として第。)2事件を提起し(以下第2事件被告を「被告国」といい,被告大学と被告国を併せて「被告ら」という,両事件は併合して審理された。 。) 争いのない事実等(証拠によって認定した事実は末尾に証拠を掲記する)。 (1)原告原告は,平成14年12月31日まで東京大学教授大学院医学系研究科輸血医学教授及び同大学附属病院輸血部部長の職にあった者で,在職当時,日本輸血学会副会長も務めていた者であるが,後記の本件提言に反対し,抗議の意味を込めて同大学を辞職した(原告本人。 )(2)本件提言ア平成14年3月,国立大学医学部附属病院長会議常置委員会は,同委員会の下部組織である組織の在り方問題小委員会作業部会Aサブワーキング(「」。),グループ以下サブワーキンググループというの議論を踏まえて「国立大学附属病院の医療提供機能強化を目指したマネジメント改革について(提言(以下「本件提言」という)を取りまとめた。 )」。 - 3 -,(「」。)当時文部科学省高等教育局医学教育課以下医学教育課というは,大学病院指導室を置いて大学病院の組織及び運営に関する企画立案,援助及び助言等に関する事務を扱うこ - 3 -,(「」。)当時文部科学省高等教育局医学教育課以下医学教育課というは,大学病院指導室を置いて大学病院の組織及び運営に関する企画立案,援助及び助言等に関する事務を扱うこととされており,A医学教育課長,B同課大学病院指導室長,C同課課長補佐(後に医学教育課を離れ大臣官房国際課専門官,大臣官房総務課専門官となるが,引き続きサブワーキンググループに関与した)及びD同課課長補佐(いずれも当時。以下それ。 ぞれ「A課長「B室長「C補佐」及び「D補佐」という)らは,,」,」,。 サブワーキンググループ会議にオブザーバーとして出席した(同会議の開催年月日と同省からの出席者は別紙のとおり※省略(乙28,弁論の全)趣旨。 )イ本件提言は,国立大学の独立行政法人化を意識して,国立大学附属病院が効果的かつ効率的な運営のためのマネジメント改革を行うべきである旨提言するもので,具体的には,病院長のリーダーシップとその支援体制,効率的運営を図るための病院組織及び医療の質の向上を目指した病院機能。 ,「,,等に関する改革案が提言されているこのうち中央診療施設輸血部病理部及び薬剤部の改善では以下の内容を含む提言がなされている甲」,(9。 )(ア)診療支援部(仮称)の設置検査部及び輸血部等に所属する医療技術職員を,診療支援部(仮称)の所属として一元的に組織し,同部部長には副病院長又は医療技術職員を充てる。既存の組織を抜本的に見直し,必要と判断される部門に対しては同部から人員を配置し,現在専任として配置されている部長及び副,,。 部長は将来的に診療科との併任とするが診療科長との併任は避けるまた,各部門所属の事務職員についても,一元的な人事管理を行う。 (イ)外部委託の促進中央診療施設及び輸血部等 る部長及び副,,。 部長は将来的に診療科との併任とするが診療科長との併任は避けるまた,各部門所属の事務職員についても,一元的な人事管理を行う。 (イ)外部委託の促進中央診療施設及び輸血部等の業務のうち,外部委託が可能な業務につ- 4 -いては,患者サービスの向上,経費節減及び業務の効率的実施の観点から,外部委託を原則とする。 (3)原告による情報開示請求と同請求に対する被告らの対応等ア原告による情報開示請求原告は,文部科学大臣に対し,平成15年1月29日,情報公開法4条1項に基づき,開示請求対象を「国立大学医学部附属病院長会議常置委員会組織の在り方問題小委員会作業部会Aサブワーキンググループの会議録及び提出資料,その他一切の文書」として,開示請求をするとともに(以下「本件開示請求1」という,被告大学総長に対しても,同月30日,。)同様の開示請求を行った(以下「本件開示請求2」といい,本件開示請求1及び2を併せて「本件各開示請求」という。 。)本件開示請求1については,担当部署である医学教育課が対応することになった(弁論の全趣旨。 )イ被告らによる移送文部科学大臣は,本件開示請求1に対して,同年2月18日,請求対象とされた行政文書のうち「文部科学省が提出した資料(①座長の依頼により各委員から提出された意見を整理した資料,②文部科学省からの出席者の意見として提出した資料,③事実説明のための参考資料)を除く分(会議録並びに九州大学及び各委員が提出した資料,その他一切の文書」に)ついて「被告大学において作成した文書であり,被告大学において開示,決定等を行うのが最も適切であるため」との理由で被告大学に移送した。 また,被告大学総長も,本件開示請求2に対して,同請求に関する文書のうち同省が提出した資料については「同 ,被告大学において開示,決定等を行うのが最も適切であるため」との理由で被告大学に移送した。 また,被告大学総長も,本件開示請求2に対して,同請求に関する文書のうち同省が提出した資料については「同省において開示決定等を行う,のが最も適切であるため」との理由で同省に移送した(乙2。 )ウ本件各開示請求に対する文部科学省の対応文部科学大臣は,本件開示請求1に対して,同年2月25日付けで,同- 5 -請求で対象とされた行政文書のうち,被告大学に移送した分を除く文部科学省が提出した資料(①座長の依頼により各委員から提出された意見を整理した資料,②同省からの出席者の意見として提出した資料,③事実説明のための参考資料)につき,開示決定をし(甲4,被告大学からの移送)分である本件開示請求2に対しても,同月28日付けで同様の決定をした(乙21。 )エ本件各開示請求等に対する被告大学の対応等(ア)被告大学総長は,同月24日付けで,本件開示請求1のうち文部科学大臣より移送を受けた分及び同請求2に対する決定期間を「第三者,への意見照会に時間を要するため」との理由で30日間延長する旨決定した(甲3,乙6。 )(イ)被告大学総長は,同年3月26日,原告に対し,本件開示請求1にの開示請求対象文書のうち「組織の在り方問題小委員会作業部会Aサ,ブワーキンググループの議事録(第1回~第6回」については,文書)不存在を理由に不開示決定の通知をし(甲5の1,サブワーキンググ)ループ会議の資料,開催通知等については,個人情報が含まれているこ()。 とを理由に一部不開示とする部分開示決定の通知を行った甲5の2また,同日,本件開示請求2についても同様の決定をした(乙12,以下,両不開示決定を併せて「本件各不開示決定」という。 。)(ウ)被告 を理由に一部不開示とする部分開示決定の通知を行った甲5の2また,同日,本件開示請求2についても同様の決定をした(乙12,以下,両不開示決定を併せて「本件各不開示決定」という。 。)(ウ)被告大学は,同年4月24日,サブワーキンググループ会議の議事録の体裁をした文書に「国立大学医学部附属病院長会議常置委員会組,織の在り方問題小委員会作業部会Aサブワーキンググループのメモ議(「事録)についてこのことについて,別綴じになっていた標記資料を」ご参考までにお送りいたします」と記載した文書を付して原告に対し。 て送付した(甲6,以下この際に原告に送付された議事録の体裁をした文書を「本件議事録」という。 。)- 6 -(エ)原告は,同年5月22日,被告大学総長に対し,行政不服審査法に,(,)。 基づき本件各不開示決定に対する異議申立てをした甲7乙15(オ)被告大学総長は,同年6月4日,再調査の結果,前記異議申立てのあったサブワーキンググループ会議の議事録(第1回ないし第6回会議の分)の存在が明らかになり,当該文書を行政文書として開示することが相当と判断したとの理由で,本件各不開示決定を取り消し,当該文書(,,「」。),を全部開示する旨決定し甲8乙20以下本件開示決定という,(,同月23日原告に当該文書この文書は本件議事録と同じものであり「」。)()。 以下これも本件議事録というの写しを送付した弁論の全趣旨(カ)被告大学総長は,同年8月13日付けで,被告大学附属病院(以下「被告大学病院」という)事務部長E及び同総務課長Fを,行政文書。 開示請求があった際,会議記録についての認識不足により,議事録はない旨の回答を行ったため,文書不存在による非開示という誤った決定を行わせたとして 」という)事務部長E及び同総務課長Fを,行政文書。 開示請求があった際,会議記録についての認識不足により,議事録はない旨の回答を行ったため,文書不存在による非開示という誤った決定を行わせたとして,厳重注意処分とした(乙17の1,2。 )(4)本件提言に関する国会質疑と報道等アG衆議院議員(以下「G議員」という)は,平成14年11月1日,。 「国民の視点にたった良質かつ安全な医療の推進のために国立大学病院薬剤部の組織体制の充実・強化に関する質問主意書」を衆議院に提出し,本件質問主意書の質問事項は,医学教育課へ送付された(乙22,23。 )当該質問主意書は,本件提言の作成過程における文部科学省の関与について,原案作成の有無,検討会及びワーキンググループ会議への同省からの出席者名と回数,具体的な発言内容について時系列で明らかにすることなどを求めたものである。 イ医学教育課は,同課課長等数名がオブザーバーとしてそれぞれ複数回出席し,求めに応じて事実の説明,意見陳述,各委員から提出された意見の整理等の事務的作業を行ったが,提言の原案作成は行っていないこと並び- 7 -に「サブワーキンググループ会議の各会合ごとの文部科学省からの出席者名及び具体的な発言内容については,記録が存在しないため,お答えできない」などとする旨の答弁書案を作成した(乙25。当該答弁書案は,)同月26日に閣議決定を経て,同月27日,正式な答弁書(以下「本件答弁書」という)としてG議員に送付された(弁論の全趣旨。 。 )ウしかし,平成15年4月10日ころ,週刊新潮の同月17日号に,ジャーナリストのJによる,サブワーキンググループ会議の第1回から第5回会議の議事録が存在する旨及びその内容に関して文部科学省を批判する内容の記事が掲載された(甲22,以下「本件報道」 17日号に,ジャーナリストのJによる,サブワーキンググループ会議の第1回から第5回会議の議事録が存在する旨及びその内容に関して文部科学省を批判する内容の記事が掲載された(甲22,以下「本件報道」という。 。)この後,同省高等教育局長は,衆議院文部科学委員会において本件議事録が存在することが判明した旨答弁し,文部科学大臣は,本件答弁書に間違(),った内容を記載したことは誠に遺憾である旨答弁するとともに乙26医学教育課大学病院指導室長を訓告,同省事務次官ら6名を厳重注意とする処分をした(甲23。また,政府は事実関係を改めた答弁書を閣議決)定した(乙28。 )(5)本件議事録についてア本件議事録は,サブワーキンググループ会議の事務局を務めていた被告大学病院総務課が,会議の発言内容をテープ起こししたものを議事録と題して作成したものであり,被告大学病院は,これを文部科学省に送り,その了解を得た後,各委員に送付していた(同省及び各委員へは,第5回会議までの分が送付されたが,第6回会議の分は作成されたものの配布されなかった(弁論の全趣旨。 。))イ本件議事録は,第1回及び第2回会議の分については,発言者の氏名が明記されているが,同省の指示により,第3回会議以降の分については発言者の氏名が明記されなくなった(弁論の全趣旨。 )ウ原告は,平成15年1月25日ころ,第6回会議の分を除く本件議事録- 8 -を,会議の出席者から独自に入手していた(原告本人。 ) 争点 (1)九州大学の国立大学法人化による第1事件の被告の地位の承継の有無(2)被告らは国家賠償法1条1項の損害賠償責任を負うか(3)損害 争点(1)についての当事者の主張(被告らの主張)(1)本件の被告の地位は被告大学に承継されている。 原告が主張す 有無(2)被告らは国家賠償法1条1項の損害賠償責任を負うか(3)損害 争点(1)についての当事者の主張(被告らの主張)(1)本件の被告の地位は被告大学に承継されている。 原告が主張する不法行為(本件各不開示決定及び同決定後の被告大学の対応)の主体は被告大学総長等である。 国立大学法人の成立の際,現に国が有する権利及び義務のうち,各国立大学法人が行う業務に関するもの(国立大学法人法22条1項等)は,当該国立大学法人等が承継するが(同法附則9条,同法施行令(平成15年政令第478号)附則4条,情報公開法に基づく不開示決定は,国立大学法人法)22条1項7号の「前各号の業務に附帯する業務を行うこと」に該当するから,情報公開法に基づき国立大学の長等が国立大学法人の成立前にした行為についての権利義務関係は,国立大学法人に承継される(国立大学法人法附則9条。 )したがって,本件の被告は,国立大学法人九州大学とすべきである。 (原告の主張)(1)本件の被告の地位は被告大学に承継されない。 本件不法行為の主体のうち被告大学に所属している者も,行為当時は国家公務員であったのであるから,これらの者の行為についても国が責任を負うべきである。 被告らは,国立大学法人法の施行により被告の地位が被告大学に承継された旨主張するが,以下のとおり,そのような解釈は誤りであり,本件の被告- 9 -は国のままであるというべきである。 ア同法の施行によっても,文部科学省職員の行為に基づく責任は承継の対象にならず,被告国の損害賠償債務として残るというべきである。 同法22条1項は,国立大学法人への債権債務の承継については限定的に解釈すべきであるところ,国立大学医学部附属病院長会議の下部組織の議事録の作成は,被告大学の附帯業務ではなく,本件各開示請求に関する 法22条1項は,国立大学法人への債権債務の承継については限定的に解釈すべきであるところ,国立大学医学部附属病院長会議の下部組織の議事録の作成は,被告大学の附帯業務ではなく,本件各開示請求に関する業務は,同条項7号の「前各号に附帯する業務」も含め同条項のいずれにも当たらない。 イ本件各開示請求の対象文書は,文部科学省が主導したサブワーキンググループ会議の会議録その他一切の文書であるから,本件各開示請求は,同省が一括して対応すべきであった。また,被告大学は,本件答弁書の内容に従い本件各不開示決定をし,同省職員のアドバイスに基づいて本件各不開示決定を取り消さないまま本件議事録を原告に送付するなど,同省の意向に従って行動した。 (2)予備的主張仮に,被告大学職員の行為による責任が被告大学に承継されるとしても,本件の国家賠償責任は,被告大学職員と文部科学省職員の双方の行為に起因するものであるから,同省職員の行為に起因する責任については,被告国自身の責任として残り,被告大学には承継されない。 争点(2)についての当事者の主張(原告の主張)(1)原告には国家賠償法上保護されるべき権利利益が存する。 ア本件不法行為は,情報公開法の定める手続に従って情報の開示を受ける権利を侵害するものである。 被告らは,同法に基づく開示請求権は公益的権利であって,立法政策によってその範囲が決まると主張する。 - 10 -原告も,憲法上の知る権利が直ちに具体的な行政文書の開示請求権になると主張するものではないが,情報公開法の立法過程によれば,同法に基づく開示請求権は,主観的権利の要素を含む知る権利をも包摂した国民主権の理念に基づき,これを具体化する制度として制定されたものであるから,開示請求権には知る権利という主観的要素(本来的に個人の権利であるという 権は,主観的権利の要素を含む知る権利をも包摂した国民主権の理念に基づき,これを具体化する制度として制定されたものであるから,開示請求権には知る権利という主観的要素(本来的に個人の権利であるという側面)も含まれると解すべきである。 イまた,被告らは,原告の主張する精神的利益は,開示請求権の周辺に存する派生的な事実上の利益に過ぎない旨主張するが,原告は,争点(3)に,,関して主張するように法律が定める権利行使を妨げられたことについて具体的な精神的被害を被ったとして損害賠償請求をしているのであって,このような損害賠償請求が認められることは,情報公開条例に基づく開示請求に伴う違法行為について国家賠償を認めてきた多くの裁判例からも明らかである。 (2)被告らの担当職員は職務上の法的義務を負う。 国民が具体的に保障されている権利を行使するに際しては,これに対する義務の履行は国家機関にとって具体的な責務であり,当該開示請求者との関係で職務上の開示義務を負う。 したがって,情報公開法の性格に関する議論に関わらず,少なくとも具体,。 的に情報公開請求をした者に対しては実施機関は具体的な法的義務を負う(3)本件の事実経過及び文部科学省による意図的な文書隠しの背景等ア医学教育課が本件議事録を保有していなかったこと及び文部科学省の職員にその存在自体の記憶がなく,本件答弁書作成のため被告大学に問い合わせたことは否認する。 イ厚生労働省は,平成13年11月7日に包括医療制度導入について医学教育課に説明を行ったが,当該制度の導入により,国立大学附属病院の収入が減少し,文部科学省の影響力が減少すると考えた同省職員(A課長)- 11 -は,本件提言において国立大学医学部附属病院長会議が自ら国立大学附属病院の合理化案を示すことで,本件提言を同制度導入阻 入が減少し,文部科学省の影響力が減少すると考えた同省職員(A課長)- 11 -は,本件提言において国立大学医学部附属病院長会議が自ら国立大学附属病院の合理化案を示すことで,本件提言を同制度導入阻止の運動のための道具として利用しようと考えた。そのため,本件提言は,医療の実情を知らない同省職員の強い影響の下,輸血部を含めた中央診療施設の業務の外注化と専門性の否定等,現代医療の流れに逆行するような極端な合理化案が盛り込まれた上で取りまとめられた。 しかし,同省は,国会の政府答弁において本件提言の策定に関して同省の関与はない旨答弁していたこととの整合性を取る必要からも,本件提言の策定に関する同省の関与の事実を隠蔽し,本件提言は,病院長会議が主体的に議論して取りまとめたものであるとの体裁を維持したいと考え,本件議事録を不存在とし,サブワーキンググループ会議での議論の具体的内容が明らかにされることを回避する意図を有していた。 ウ国立大学法人法施行前の旧国立大学は,文部科学省の一部局に過ぎず,その人事権は同省にあり,旧国立大学の職員は常に同省の意向に従って行動するという明確な支配従属関係にあった。 (4)被告らの違法行為(主位的主張)ア本件不法行為被告らの不法行為は,本件各開示請求に対して,職務を行うに当たり,文部科学省の職員の指示により被告大学が本件不開示決定をした上で,適切な説明を欠いたまま被告大学職員が本件議事録を原告に送りつけたこと等の一連の行為である。 イ文部科学省職員の指示に基づく意図的な文書隠し(ア)同省(医学教育課)職員は,本件提言が同省の主導により策定され,,たことを隠蔽するため本件議事録が実際は存在することを承知の上で本件答弁書を作成する際に確立していた本件議事録を存在しないものとするとの意向を被告大学病院総 件提言が同省の主導により策定され,,たことを隠蔽するため本件議事録が実際は存在することを承知の上で本件答弁書を作成する際に確立していた本件議事録を存在しないものとするとの意向を被告大学病院総務課職員に伝えて,それに沿う処理をす- 12 -るよう指示した。被告大学職員は,当該指示を受けて意図的に本件議事録を不存在として本件各不開示決定を行った。 (イ)文部科学省職員が本件議事録の存在を認識していたこと及び本件議事録を存在しないものとする意向が同省にあったことは,以下の事情から明らかである。 ,「」,,a本件議事録の表紙には議事録と明記されており被告大学は本件議事録を医学教育課に送付してその内容について了解を得ていた。 b本件議事録中の出席者の発言にも,B室長の発言を含め本件議事録が存在することを前提とした発言が6箇所あり,サブワーキンググル,。 ープ会議に出席していたA課長ら同省職員は当該発言を聞いていたc本件議事録の存在が同省からの参加者全員の記憶から欠落していたこと及び各会議の本件議事録をその都度廃棄していたということも,本件議事録の性質及び作成目的からしてあり得ない。 d本件答弁書は,その重要性からいって,サブワーキンググループ会議に出席した同省の職員の確認を得て作成されているはずである。 eG議員の質問主意書は,資料の形式を問わずに,サブワーキンググループ会議への同省からの出席者名と回数,具体的な発言内容等について質問したものであるから,本件議事録によればこれらについて十分答弁が可能である。 (ウ)被告大学職員は,本件議事録は備忘録であって正式な議事録ではなく,また行政文書とも認識していなかったと主張する。 しかしながら,本件各開示請求の対象は「会議録及び提出資料その他一切の文書」であって「正 告大学職員は,本件議事録は備忘録であって正式な議事録ではなく,また行政文書とも認識していなかったと主張する。 しかしながら,本件各開示請求の対象は「会議録及び提出資料その他一切の文書」であって「正式な議事録」に限定してはいないのである,から,本件議事録のような体裁の文書を開示請求の対象となる文書と考えなかったはずはないし,それを措いても,本件議事録が情報公開法に- 13 -いう行政文書に該当することは明らかである。 ウ本件各不開示決定を取り消す前に原告に本件議事録を送付したこと本件報道によって本件議事録の存在を隠しきれない事態に至ると,被告大学職員は,直ちに本件各不開示決定を取り消して開示決定をすべきところ,これをせずに済まそうと考え,原告に対して適切な説明等をすることなく本件議事録を送りつけた。 当該送付行為も,被告大学独自の判断ではなく,被告大学職員が,医学教育課職員とのやりとりの中で,原告にも本件議事録を渡すよう提案されたことに基づくものである。 (5)被告らの違法行為(予備的主張)仮に,本件各不開示決定が,被告らの主張する事実経過に基づき被告大学の重大な過失に基づきなされたものであったとしても,前記の同省と旧,,国立大学との明確な支配従属関係からいえば同省が本件答弁書において本件議事録は不存在であるとの見解を有していたことから,被告大学職員,。 は自ら主体的に判断することなく同省の見解に従ったというべきであるしたがって,被告大学の本件各不開示決定は,同省が本件答弁書においてサブワーキンググループ会議の記録はない旨答弁した上,被告大学が本件各開示請求について,同省の見解に従って判断するのを漫然と放置したことに基づくのであって,同決定はこれら同省職員の重大な過失によって引き起こされたというべきである。また,被告大学 上,被告大学が本件各開示請求について,同省の見解に従って判断するのを漫然と放置したことに基づくのであって,同決定はこれら同省職員の重大な過失によって引き起こされたというべきである。また,被告大学が本件各不開示決定を取り消さずに本件議事録を原告に送付したのも,同省職員が被告大学職員に対して,原告に本件議事録の写しを送付すべき旨アドバイスをしたために引き起こされたものであるから,同省職員には重大な過失があったというべきである。 (6)被告らの責任の性質文部科学省職員は,本件各不開示決定を当時同省の監督下にあった被告- 14 -大学をしてなさしめた,いわば実質的な主犯であり,あるいは少なくとも教唆者であるから,被告らは共同不法行為責任を負う。 したがって,被告らの損害賠償債務は連帯債務である。 (被告らの主張)(1)原告には国家賠償法上保護されるべき権利利益の侵害が認められない。 ア国家賠償法上の違法が認められるためには,侵害されたとされる権利ないし利益が,単にある法令により権利又は利益として規定されているだけ,,では足りず国家賠償法上保護される権利又は利益であることを要するが同法の趣旨からすれば,同法上保護されるべき権利ないし利益は,個人の私的な権利ないし利益をいうと解すべきである。 しかしながら,情報公開法に基づき行政文書の開示を受けることに関して,国家賠償法上保護されるべき個人の私的な権利ないし利益は原則として認められない。 このことは,情報公開法における開示請求権の法的性質から明らかであり,同請求権は同法3条によって創設されたものであって,同法の開示請求権,不開示事由,開示請求の手続等の規定及び趣旨並びに立案過程における議論からすれば,同請求権は専ら行政運営の監視及び透明性の確保という公益のために付与され,この見地から のであって,同法の開示請求権,不開示事由,開示請求の手続等の規定及び趣旨並びに立案過程における議論からすれば,同請求権は専ら行政運営の監視及び透明性の確保という公益のために付与され,この見地から行使されるべき公益的権利であり,個々人の私的な利益のための権利と位置づけられるものではない。開示請求権のこのような性質からすれば,行政文書の開示によって,個々人の具体的な権利ないし利益が満足されるということにはならない。 したがって,同法に基づく不開示決定の判断に誤りがある場合でも,当該決定が取り消されることは別として,直ちに国家賠償法上保護されるべき私的な権利ないし利益が侵害され,同法上の違法と評価されることにはならない。 イ原告が国家賠償法上保護されるべき利益があることの根拠として主張す- 15 -る精神的苦痛は,本件各不開示決定が意図的な虚偽の根拠に基づくもので,。 ,あるという事実とは異なる原告の思い込みによるところが大きいまた原告が,本件各開示請求以前の時点で本件議事録のうち5回分を既に入手していたこと等からすれば,原告のいう精神的苦痛は,同決定がなされたことによるものというよりも,本件提言が輸血部を軽視ないし否定するものであり,文部科学省がこれを一方的にとりまとめたとの思いによるところが大きいというべきである。 情報公開法の目的が,専ら適正な行政の運用の監視,確保という国民全体の一般的利益の実現にあることに照らせば,原告の主張する精神的利益なるものは,適正な行政権の発動に関して国民各人の抱く正義感情の満足といったものとしか評価し得ず,そのような主観的満足は,開示請求権の周辺に存する派生的な事実上の利益にすぎないのであるから,これを国家賠償法上保護された権利利益ということは到底できない。 さらに,本件では,本件各不開示決定か ず,そのような主観的満足は,開示請求権の周辺に存する派生的な事実上の利益にすぎないのであるから,これを国家賠償法上保護された権利利益ということは到底できない。 さらに,本件では,本件各不開示決定から約1か月後には,被告大学から原告に第6回目のものを含む本件議事録が全て送付されていることからすれば,原告に本件不開示決定がなされたことによる精神的苦痛があったとしても,当該苦痛は,民法710条や同法711条が規定するところの精神的苦痛に匹敵するものとはいえず,国家賠償法上保護されるべき法的利益と評価することはできない。 (2)被告らの職員は職務上の法的義務を負わないア国家賠償法1条1項の違法性が認められるためには,公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して,当該国民の同法上保護されるべき権利利益を侵害したことが必要であると解される。 前記の開示請求権の趣旨目的及び公益的性質からすれば,本件で公務員が負担する義務は,専ら適正な行政運営の確保を目的として国民全体に対して負うものと解すべきであるから,公務員は個別の開示請求者に対して- 16 -情報公開法上の義務を負っておらず,国家賠償責任は原則として発生しないものと考えられる。 イもっとも,被告らの立場によっても,いかなる場合にも一切国家賠償責任が発生しないとするものではなく,公務員が当該請求者に対する不当な意図で開示請求に係る文書を破棄したり,文書を隠して不服申立てや抗告訴訟による救済の機会をも失わせるなどの特別の事情があるような場合には,例外的に国家賠償責任が認められる余地もあると考えられる。 ウ文部科学省の職員には職務上の法的義務違反を考える余地はない(ア)そもそも,文部科学省の職員は,被告大学の情報公開に関する職務を行う者ではない。同省の職員は,個別の開示請 もあると考えられる。 ウ文部科学省の職員には職務上の法的義務違反を考える余地はない(ア)そもそも,文部科学省の職員は,被告大学の情報公開に関する職務を行う者ではない。同省の職員は,個別の開示請求者との関係ではもちろん,そもそも国民全体に対してすら職務上の法的義務を負わないのであるから,国家賠償責任が認められる余地はないというべきである。 (イ)仮に,同省の職員が,職務として被告大学の情報公開に関する職務に関与できる余地があったとしても,国家賠償責任については,前記イで述べたところがそのまま当てはまるから,国家賠償責任が認められるのは,前記のような特別の事情があるような場合に限られると考えられる。 (3)被告大学の職員の行為に違法はないこと被告大学には,以下のとおり文書隠しの意図はなく,国家賠償責任が認められるような特別の事情は存在しない。 ア本件各不開示決定の当時,被告大学病院は,本件議事録の存在は認識していたものの,本件議事録は備忘録としてテープ起こしをした単なる会議メモに替わるものにすぎず,行政文書に該当しないとの認識であった。 被告大学病院の職員が本件議事録を行政文書に該当しないと判断したことは,①本件議事録を作成した趣旨が,各委員の作業の便宜のため,単なる備忘録として,サブワーキンググループでの会議の発言内容をテープ起- 17 -こししたものを議事録と題して作成し,これを会議終了後,各委員に送付するというものであること,②第1回会議で議事録を作成し保存するという決定がなされず,その後も各委員の間で議事録作成についての合意がなされず,また,各会議の席上で前回の議事録について承認を得るという手続も行われなかったこと,③最後の第6回会議については,備忘録としての必要性もなくなったことから,本件議事録の作成はしたものの,文 されず,また,各会議の席上で前回の議事録について承認を得るという手続も行われなかったこと,③最後の第6回会議については,備忘録としての必要性もなくなったことから,本件議事録の作成はしたものの,文部科学省や各委員への送付もしていなかったこと,④本件答弁書において「会議の記録がない」との答弁がなされていたことなどからすれば,原告の。 請求に対する不当な意図があってのことではなく,行政文書性の判断を誤ったものであることは明らかである。 イ被告大学病院総務課の職員が,行政文書性の判断を誤ったこと自体は認めるが,少なくとも本件議事録のうち第6回目の会議の分については,文部科学省や各委員に配布せず,本件議事録が,文書の作成または取得に関与した職員個人の段階にとどまる場合に該当し,情報公開法にいう行政文書に当たらない可能性もあったのであるから,原告の主張のように,本件議事録が一見して明らかに行政文書であるとする点は失当である。 ウまた,被告大学総長が,原告に対し,平成15年4月24日,本件議事録を送付したのは,文部科学省がG議員に対して被告大学から取り寄せた本件議事録を渡したことにかんがみ,原告にできるだけ早く本件議事録が渡ることを重視して,情報提供という形で書類を送付したものであり,情報公開法が求める手続を無視したり,本件各不開示決定を取り消さずに済ませようとの意図があったということはない。 (4)文部科学省の職員の行為に違法はないこと原告は,文部科学省の職員が被告大学の職員に文書隠しを指示した旨主張するが,以下のとおり,同省職員による違法な公権力の行使自体存在しないのであるから,被告国は国家賠償責任を負わない。 - 18 -,,ア医学教育課では被告大学病院から送付されてきた本件議事録について正式な議事録として作成されたものとの認 力の行使自体存在しないのであるから,被告国は国家賠償責任を負わない。 - 18 -,,ア医学教育課では被告大学病院から送付されてきた本件議事録について正式な議事録として作成されたものとの認識がなく,また,オブザーバーとして参加していたにすぎなかったため,出席者において適宜廃棄していたもので,課内で回覧に付したり,決裁を要する文書として扱っていなか。 ,,,ったそのため本件答弁書を作成する際には課内に保管されておらず職員の記憶からも欠落していた。 その結果,本件答弁書案作成の担当者は,被告大学病院総務課に議事録の有無を問い合わせた際に,被告大学病院職員からの正式な議事録はない,。 という趣旨の回答を受け本件議事録は存在しない趣旨であると誤解した本件開示請求1を受理した際も,医学教育課では,本件議事録を保有していなかったため,被告大学において対応するのが妥当と判断して移送したもので,それ以降の本件各不開示決定に至るまでの過程は,被告大学内部での検討であり,同省が,不存在を理由に不開示決定をするように指示した等の共同不法行為的な関与をした事実はなく,そもそも同省職員による違法な公権力の行使自体が存在しなかったものというほかない。 イ①本件議事録は,第6回目の会議の分を除いて毎回各委員に配布され,その取扱いは各委員に委ねられており,委員以外の第三者であっても,本件議事録は比較的容易に入手できる状況にあったのであるから,同省が本件議事録を隠すことは実際上不可能であること,②国会議員の質問主意書に対する答弁書は,厳格な手続を経て決定され,内閣の統一見解としての重要性を有するから,虚偽の答弁書を作成することは,虚偽が発覚した場合の責任の重大さのリスク等を考えれば,あり得ないこと,③もし同省に本件議事録を隠す意図があるなら,本件開 ,内閣の統一見解としての重要性を有するから,虚偽の答弁書を作成することは,虚偽が発覚した場合の責任の重大さのリスク等を考えれば,あり得ないこと,③もし同省に本件議事録を隠す意図があるなら,本件開示請求1について,被告大学に移送するなどせずに,そのまま不存在として非開示決定をすればよかったはずであることから,同省には本件議事録を隠す意図がなかったことは,本件提言の策定が同省主導によるものか否かにかかわらず明らかである。 - 19 -ウ原告は,本件答弁書作成にあたり,医学教育課の職員らが本件議事録の存在について失念していたことは不自然である旨主張する。 しかしながら,サブワーキンググループ会議に出席した医学教育課の職員のうち,本件議事録を利用していたのは,本件提言の原案作成に必要な事務的な作業を被告大学病院とともに行ったC補佐であったところ,被告大学病院から送付された本件議事録は,送付を受けた担当者からCに渡され,他の出席者には特に求めがない限り配布しなかった。このことから,当該担当者及びC以外は,本件議事録の存在についての認識が極めて希薄であった。また,本件答弁書を作成する際には,本件議事録は既に廃棄され医学教育課内には存在していなかったこと,本件答弁書作成時点は同会議が終了してから約1年が経過していること,Cは異動により海外へ赴任しており同人への確認を怠ったことなどからすれば,医学教育課の職員らが,本件議事録の存在を知らず,あるいは存在したことを失念してしまっていたとしても,なんら不自然なことではない。 (5)原告の予備的主張に対する主張被告らに国家賠償責任が認められるのは,前記で述べたような特別の事情がある場合に限られるところ,そのような特別の事情は存しない。 また,原告は,G議員の質問主意書に対して,本件答弁書において記録が 張被告らに国家賠償責任が認められるのは,前記で述べたような特別の事情がある場合に限られるところ,そのような特別の事情は存しない。 また,原告は,G議員の質問主意書に対して,本件答弁書において記録がない旨答弁したことが,被告大学の判断に影響を与え,その結果本件各不開示決定に至ったとして,被告国の行為の違法を主張するが,当該答弁書をみて被告大学職員がいかなる判断をしたかについては,そもそも文部科学省側が関知するところではないから,当該主張は失当である。 争点(3)についての当事者の主張(原告の主張)(1)原告の被った損害は120万円(精神的損害に対する慰謝料100万円及び弁護士費用20万円)である。 - 20 -(2)原告は,本件提言が,国立大学附属病院の中央診療部門を解体し,国民の医療環境に深刻な打撃を与えるものであること,医療の実情を知らない文部科学省の官僚の主導により策定されたことに危機感を持ち,職を辞して抗議するとともに,本件提言に対する合理的な批判をするため策定経過を明らかにすべく,本件各開示請求をした。原告は,本件各開示請求をする前に本件議事録の一部を入手していたが,それは公開しないという条件で入手したものであり,それが本当にサブワーキンググループ会議の議事録に間違いないのか,議事録の全部なのか一部なのかも明らかではないことから,正規の開示請求手続により開示を受ける必要があった。 そのため,原告は,不存在であるとの理由による本件各不開示決定に驚き落胆するとともに,本件議事録の入手が遅れたために,本件提言に対する適時の批判が困難となった。さらに,同決定への対応のため弁護士と打合せをする必要が生じ,種々の負担を余儀なくされた。 また,本件議事録の存在が本件報道により明らかになった後,趣旨が不明なまま本件議事録の写しが送 困難となった。さらに,同決定への対応のため弁護士と打合せをする必要が生じ,種々の負担を余儀なくされた。 また,本件議事録の存在が本件報道により明らかになった後,趣旨が不明なまま本件議事録の写しが送られてきたことで,原告は,送付されてきた本件議事録の写しが本件各開示請求に関する文書なのか,本件各不開示決定がどうなるのか等について困惑し,弁護士との打合せのために時間的経済的負担を余儀なくされた。 なお,本件のように故意の文書隠しが行われた場合,後日開示請求の対象文書を入手したとしても,損害を少なく見積もることはできない。 (被告らの主張)否認し,争う。 第3当裁判所の判断 争点(1)(九州大学の国立大学法人化による第1事件の被告の地位の承継の有無)について本件では,平成16年4月1日からの旧国立大学の独立行政法人化と関連し- 21 -て,被告とされるべき者が誰であるかについて争いがあるので,まずこの点について判断する。 (1)原告は,被告大学職員も,本件行為当時は国家公務員であったこと,本件各開示請求に関する業務は国立大学法人法22条1項各号の業務に該当しないことから,同法の施行によっても,本件の国家賠償責任は被告大学に承継されず,本件で被告とされるべきは被告国だけである旨主張する。 しかしながら,原告が不法行為として主張する本件各不開示決定及び被告大学が同決定を取り消さないままに本件議事録の写しを原告に送付した行為は,原告の主張するように文部科学省職員の指示や影響を受けてなされたものであったとしても,第1次的には被告大学総長ないし職員によってなされたものであることは明らかであり,これを同省職員の行為とみることはできない。また,当該行為の性質からいって,当該行為は被告大学の運営に附帯する業務として同法22条1項7号に該当すると解 よってなされたものであることは明らかであり,これを同省職員の行為とみることはできない。また,当該行為の性質からいって,当該行為は被告大学の運営に附帯する業務として同法22条1項7号に該当すると解するのが相当である。 平成16年4月1日の国立大学法人の成立の際に国が負う義務のうち,各国立大学法人が行う同法22条1項に規定する業務に関するものは,原則として当該国立大学法人が承継するのであるから(同法附則9条,同法施行令附則4条,同法22条1項7号の附帯業務に当たる被告大学職員の前記行)為に基づく損害賠償債務も,被告大学が承継することとなる。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できず,被告大学職員の当該行為に関する損害賠償請求訴訟の被告は被告大学とすべきである。 (2)しかし,原告は文部科学省職員の行為も不法行為に該当するとも主張しているところ,当該行為に基づく国家賠償責任は,被告大学が承継するものではなく,依然として被告国が負うべきものであるから,第2事件において同省職員の行為を問題として被告を国とすることについては,何ら問題はない。 したがって,以下では被告を被告大学及び被告国として,被告らが被告大- 22 -学職員及び文部科学省職員の行為について国家賠償責任を負うか否かについて検討する。 本件各開示請求前後の経過前記争いのない事実等並びに証拠(甲7,9,10,14ないし16の1,18,20,22,31,32,34,36,39,44,46の1,乙3ないし5,7ないし10,13ないし15,18,19,証人B,同H,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 (1)国立大学医学部附属病院長会議等の概要ア国立大学医学部附属病院長会議(以下「病院長会議」という)。 病院長会議は,国立大学の大学附属病院及び医 弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 (1)国立大学医学部附属病院長会議等の概要ア国立大学医学部附属病院長会議(以下「病院長会議」という)。 病院長会議は,国立大学の大学附属病院及び医学部附属病院における諸問題を協議すること等を目的として設置されたもので,全国42の国立大学ないし国立大学医学部の附属病院の院長で構成されている。 イ国立大学医学部附属病院長会議常置委員会同常置委員会は,病院長会議に常設される下部組織であり,大学病院の管理運営上協議する必要のある事項等を処理するものである。 ウ国立大学医学部附属病院長会議常置委員会組織の在り方問題小委員会同小委員会は,専門的事項を検討するために同常置委員会に設置された下部組織の一つであり,独立行政法人化への対応を念頭に置いた検討を行。 。 うことを目的とされていた委員長には当時の被告大学病院長が就任したエ組織の在り方問題小委員会作業部会A,,,同小委員会は独立行政法人化への準備として平成13年6月21日作業部会A及び作業部会Bを設置した。同作業部会Aでは,マネジメントシステムの在り方を検討することとされ,部会長には,被告大学病院のI副病院長(以下「I副院長」という)が就任した。 。 オサブワーキンググループ及び本件議事録(ア)同作業部会Aの検討事項であるマネジメントシステムの在り方を具- 23 -体的に検討し,原案を作成するため,サブワーキンググループが同作業部会Aの下に設置された。座長には,I副院長が就任した。 (イ)サブワーキンググループ会議においては,会議の議事録を作成し保存するという決定が明示的になされることはなく,会議の席上で前回会議の議事録について承認を得るという手続も取られることはなかった。 (ウ)本件議事録は,被告大学病院総務課から医学教育課 録を作成し保存するという決定が明示的になされることはなく,会議の席上で前回会議の議事録について承認を得るという手続も取られることはなかった。 (ウ)本件議事録は,被告大学病院総務課から医学教育課の担当係長宛に送られ,毎回の会議ごとに各委員の意見を取りまとめて書面化し,試案化する作業を担当していたC補佐に渡された。 (2)文部科学省と旧国立大学との関係独立行政法人化される前の国立大学は,文部科学大臣の所轄に属し,財政上の独自性を有しないだけでなく,教員の人事は教授会が決定するものの,事務系管理職の人事は文部科学省が統括するなど,その予算や組織の運営な,。 ど多くの点について実質的には同省の広範な指揮監督の下に置かれていた(3)本件提言の取りまとめ後の動向ア平成14年4月18日付けで,A課長名で,各国立大学附属病院長に対して「国立大学附属病院の医療提供機能強化を目指したマネジメント改,『革について(提言』への取り組みについて(依頼」と題する通知が発せ))られた。同通知には,本件提言が「誠に時宜を得たもの」で「その内容も意欲的なものと考えて」いる「各大学附属病院には更なるマネジメント,改革の推進を期待する「なお,平成15年度概算要求については,その」,枠組みが固まらない段階ではありますが,①標記提言の趣旨を具体化する構想,②標記提言に積極的に取り組んでいる大学の意欲的な構想,を中心,。」に取り組んでまいりたいと考えておりますので念のため申し添えますとの記載がある(以下「A課長の通知」という。 。)イ同年5月30日の参議院厚生労働委員会において,文部科学大臣官房審議官は,本件提言は病院長会議が自主的にまとめたものと理解している旨- 24 -答弁した。 同年6月9日付けの日本経済新聞には,A課長の話として,本 参議院厚生労働委員会において,文部科学大臣官房審議官は,本件提言は病院長会議が自主的にまとめたものと理解している旨- 24 -答弁した。 同年6月9日付けの日本経済新聞には,A課長の話として,本件提言の作成過程で医学教育課の担当者も意見を述べたり資料を出したりしたものの,原案は出していない旨の記事が掲載され,同年11月22日の全国国立大学附属病院輸血部会議においては,D補佐が,同省職員は本件提言の原案を書いていない旨発言した。 ウ本件提言の影響(ア)日本輸血学会評議員会は,同年5月10日,本件提言の撤回を求める決議をした。 (イ)原告を含む日本輸血学会の会員19名は,本件提言に反対し,同年,,,7月16日日本弁護士連合会に対し文部科学大臣及び病院長会議に中央診療施設及び輸血部等の解体を止め,これらを維持・充実させるべき旨の勧告をすることを求める人権救済の申立てをした。 日本弁護士連合会は,平成16年9月18日,本件提言の輸血関係業務に関する改革が実施されることについて反対する意見書を発表した。 (ウ)その他,本件提言に対しては,医療関係者やメディア等から,医療の実態にそぐわない,文部科学省の官僚が主導して作成されたなどといった批判ないし反対意見が出された。 (4)本件各開示請求に対する被告大学の対応ア被告大学総長は,平成15年2月4日,本件開示請求2を受け,被告大学附属病院長に対し,開示又は不開示についての意見を求めた。 イ被告大学病院において,同月5日,被告大学病院情報公開委員会が開催された。 被告大学病院総務課では,本件議事録は会議の委員の発言内容について備忘録として作成したメモ程度のものと考えたこと及びG議員に対する本件答弁書において,文部科学省がサブワーキンググループ会議の記録は存- 25 -在しないと 件議事録は会議の委員の発言内容について備忘録として作成したメモ程度のものと考えたこと及びG議員に対する本件答弁書において,文部科学省がサブワーキンググループ会議の記録は存- 25 -在しないと回答していることから,本件議事録は開示請求対象の行政文書には該当しないと判断し,被告大学病院情報公開委員会には本件議事録を資料として提出しなかった。 ,,,同委員会ではI副院長から行政文書の開示請求について説明があり審議の結果,サブワーキンググループの開催通知及び会議資料を開示する旨の合意が得られた。 ウ被告大学病院長は,同月19日,被告大学総長に対し,意見照会に対する回答として,サブワーキンググループの開催通知,会議資料及び関係文書の写しを送付したが,本件議事録は送付しなかった。 エ同月28日,被告大学情報公開実施委員会の審議の結果,サブワーキンググループの座長を務めていたI副院長に開示の可否について意見照会することとなり,被告大学総長は,同年3月3日,意見照会を行った。 オ同月6日,I副院長から,上記意見照会に対して,意見はない旨の回答があり,被告大学情報公開実施委員会の審議(書面回議)の結果,サブワーキンググループの議事録については,文書不存在を理由に不開示とすること等が,同月19日に了承された。 カその後,前記争いのない事実等のとおり,被告大学総長は,同月26日に原告に対して本件各不開示決定をした。 (5)本件報道後の文部科学省及び被告大学の対応等ア本件報道(平成15年4月10日ころ)を受け,医学教育課は,被告大学病院に電話で本件報道の内容の真偽について問い合わせなどをして本件報道の内容が正しいことを確認し,被告大学より本件議事録の写しを取り寄せた上,G議員に対し,サブワーキンググループ会議の記録が存在したことを報告し 件報道の内容の真偽について問い合わせなどをして本件報道の内容が正しいことを確認し,被告大学より本件議事録の写しを取り寄せた上,G議員に対し,サブワーキンググループ会議の記録が存在したことを報告し,質問主意書に対して結果的に虚偽の答弁を行ったことにつき謝罪するとともに,取り寄せた本件議事録(第6回会議の分を含む)の写しを交付することとした。 - 26 -また,医学教育課は,被告大学事務局総務部総務課に対して,医学教育課がG議員に本件議事録の写しを交付し,また,Jにも交付する予定であることを伝え,原告に対しても早急に本件議事録の写しを交付してはどうかとアドバイスした。 被告大学事務局総務部総務課は,当該アドバイスを受け,同省の本件答弁書の誤りについての正式見解が出ておらず,被告大学として同省の判断を待たずに本件議事録を行政文書として開示することはためらわれたこと等もあって,行政文書性の判断を留保したまま,同月24日,原告に本件議事録の写しを送付した。 イ本件報道がなされた後,医学教育課は,新聞の取材に対し,同省が国会で本件答弁書の誤りを認めたことについて「会議の事務局を務めた九州,大学がテープを起こしただけの発言の記録は正式な議事録ではないととらえていた」と答えた。 (6)原告の異議申立てに対する被告大学の対応等ア原告の本件各不開示決定に対する異議申立て(平成15年5月22日)を受け,被告大学総長は,同月30日,サブワーキンググループの座長を務めていたI副院長に対し,本件議事録の開示の可否について意見照会したところ,同年6月2日,同人から,特に意見はないこと及び同人がサブワーキンググループの委員に意見を求めたところ,被告大学病院が作成した本件議事録は「議事録」と銘打ってはいても,サブワーキンググループ会議で議事録として承認を から,特に意見はないこと及び同人がサブワーキンググループの委員に意見を求めたところ,被告大学病院が作成した本件議事録は「議事録」と銘打ってはいても,サブワーキンググループ会議で議事録として承認を受けたものではなく,委員が次回の会議の参考とするために被告大学病院が作成した「メモ」であると解釈しているとの意見があった旨の回答があった。 イ被告大学は,同月3日,情報公開実施委員会を開催し,審議の結果,本件各不開示決定をいずれも取り消し,本件議事録を全部開示することが承認された。 - 27 - 争点(2)(被告らは国家賠償法1条1項の損害賠償責任を負うか)について(1)本件における被侵害利益及び被告らの職員が負う法的義務についてア被告らは,情報公開法に基づく開示請求権が公益的権利であり,個々人の私的な利益のための権利ではないことから,不開示決定の判断に誤りが,,ある場合でも直ちに国家賠償法上の違法と評価されることにはならない被告ら職員は個別の開示請求者に対して職務上の法的義務を負わず,例外的な事情のない限り国家賠償責任を負うことはない旨主張する。 イ情報公開法に基づく開示請求権は,行政運営の公開性の向上と政府の説明責務の確保という観点から,同法3条によって創設されたものであり,主として公益的性質を有するものであることは,同法の各規定やその趣旨及び立法経緯等から明らかなところである。 しかしながら,各人が自由に様々な意見,知識,情報に接し,これを摂,,取する機会を持つことはその者が個人として自己の思想及び人格を形成発展させ,社会生活の中にこれを反映させていく上において欠くことのできないものであり,民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達,交流の確保という基本的原理を真に実効あるものたらしめるためにも必要であって,このよ の中にこれを反映させていく上において欠くことのできないものであり,民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達,交流の確保という基本的原理を真に実効あるものたらしめるためにも必要であって,このような情報等に接し,これを摂取する自由は,表現の自由を保障している憲法21条1項の趣旨,目的から,いわばその派生原理として当然に導かれるものであるところ(最高裁判所昭和58年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁,最高裁判所平成元年3月8日大法廷),,判決・民集43巻2号89頁参照情報公開法に基づく情報公開制度が,,同法1条の公益目的の実現に資するとともに開示請求者の情報等に接しこれを摂取する自由にも資するものであることは明らかであるから(開示請求権が国民主権の理念に基礎を置くものであることや同法の立法経緯にかんがみれば,情報公開制度が当該自由と何ら関係のないものとして位置づけられていると解することはできない,このような観点からも,同法。)- 28 -に基づく行政文書の開示請求は正当な理由なく妨げられてはならないというべきである。 したがって,同法の規定に基づいて開示請求をした開示請求者が,理由なく行政文書の開示を妨げられないという利益は,国家賠償法上の保護の対象になり,開示請求を受けた行政機関等の担当職員は,開示請求者に対し,不当に上記利益を妨げることのないように,同法の規定及び趣旨に従って適切に当該請求を処理すべき職務上の注意義務を負うものと解するのが相当である。 ,(,,よってこの点に関する被告らの主張は採用できないなお被告らは文部科学省の職員については,職務上の法的義務違反を考える余地はないとも主張するが,この点については後述する。 。)(2)本件各不開示決定に関する被告大学職員の行為の違法性ア情 なお被告らは文部科学省の職員については,職務上の法的義務違反を考える余地はないとも主張するが,この点については後述する。 。)(2)本件各不開示決定に関する被告大学職員の行為の違法性ア情報公開法に基づく開示請求を受けた行政機関等の公務員が,開示請求に対して誤った判断をした場合,そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものでないとしても,当該請求を処理するに当たって,公務員が,前記の職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該判断を行ったと認め得るような事情がある場合には,当該公務員の行為は,同条項上の違法の評価を受けるものと解するのが相当である(最高裁判所平成5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863号参照。 )したがって,公務員が不当な意図で開示請求に係る文書を破棄したなどの特別の事情があるような場合に限って例外的に国家賠償責任を負う旨の被告らの主張は,採用できない。 イ本件議事録の行政文書性本件各不開示決定に関する被告大学職員の行為の違法性を判断する前提として,本件議事録が本件各開示請求の対象としての情報公開法上の行政- 29 -文書に該当するか否かについて検討する。 ,,被告大学の職員が本件議事録の行政文書性に関する判断を誤ったこと本件各不開示決定が結果的に誤ったものであったことは,被告大学も認めるところであるが,被告らは,本件議事録が行政文書に当たらない可能性もあった旨主張し,証拠(乙18,19,証人H)中にもこれに沿う部分がある。 しかしながら,本件各開示請求においては,本件議事録が正規の議事録か否かが問題なのではなく「サブワーキンググループの会議録及び提出,資料,その他一切の文書」に該当するか否かが問題であるところ,本件議事録がその体裁,内容からいっ いては,本件議事録が正規の議事録か否かが問題なのではなく「サブワーキンググループの会議録及び提出,資料,その他一切の文書」に該当するか否かが問題であるところ,本件議事録がその体裁,内容からいってこれに該当することは明らかである。 ,,,そして本件議事録はサブワーキンググループの各会議が終了した後次の会議が開催されるまでに被告大学病院総務課において作成され,医学教育課にまず送られてその了解を得た後に,各委員に送付されていたのであるから,その作成又は取得に関与した職員が個人として作成又は取得したものということはできず,被告大学において業務上の必要性から利用又は保存しているものであり,情報公開法にいう行政文書,すなわち行政機関の職員が職務上作成した文書であって,当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして,当該行政機関が保有しているものに該当することは明らかである(本件議事録のうち第6回会議の分について医学教育課や各委員に送付されていなかったことも,この認定を左右するものではない。 。)したがって,この点に関する被告らの主張は採用できない。 ウ原告の主位的主張について(ア)原告は,文部科学省職員が被告大学職員に本件議事録を存在しないものとする意向を伝えるなどして故意に文書隠しを指示し,当該指示に基づいて被告大学が本件各不開示決定をしたと主張する。 (イ)本件議事録(甲24の1,25の1,26の1,27の1,28の- 30 -1,29の1)によれば,サブワーキンググループの第1回会議において,B室長が本件提言に盛り込むべき事項について項目立てがなされた資料を示しながら説明し(甲24の4,第2回会議以降は,同省から)「マネジメントシステムの改革試案」又は「国立大学医学部附属病院のマネジメントシステム改革について(案」等と題 て項目立てがなされた資料を示しながら説明し(甲24の4,第2回会議以降は,同省から)「マネジメントシステムの改革試案」又は「国立大学医学部附属病院のマネジメントシステム改革について(案」等と題した書面(C補佐が)前回会議で話し合われた事項をまとめ,第1回会議に同省が提出した本件提言に盛り込むべき事項を示した資料に肉付けしていったものと思われるもの)が提出されており(甲25の2,26の2,27の2,28の2,これが会議では「C試案「Cレポート」ないし「文部科学省)」,案」などと呼ばれ,ほぼこれに沿う形で議論が進んでいったこと,厚生労働省が医学教育課に包括医療制度導入の説明を行った後の第4回会議の冒頭では,文部科学省の職員が,同省は包括医療制度について厚生労働省の考えを了解したわけではない旨発言していること,第4回会議に提出された「C試案」には,C補佐によってリスクマネジメント体制の構築の具体案が盛り込まれていること,第5回会議では「今後さらに,検討が必要なポイント(案」と題する文書(甲28の2)が,同省か)ら「C課長補佐の方から具体的に強い提言をしなければいけないということで,また提案がございます」として提出されていること,当該文書について,C補佐と思われる人物が「既にこの報告書のフォーマット,も大体でき上がりつつあるわけですが,実は実弾が全然込められていない。若干医療情報部の廃止とか幾つかありますけれども,まだまだ全体にわたっての実弾が入っていませんので,それをこれから込めていただかなければならないというのと,あと,まだ少し検討が足りない部分について,記載させていただきました」と説明していること,当該文書には,職員の評価方法,院内組織の具体的合理化案等各項目について提言に盛り込むべき事項と今後の作業スケジュール 少し検討が足りない部分について,記載させていただきました」と説明していること,当該文書には,職員の評価方法,院内組織の具体的合理化案等各項目について提言に盛り込むべき事項と今後の作業スケジュールが具体的に記載されてお- 31 -り,C補佐がこれらの各項目について説明しつつ,スケジュールに従い取りまとめるよう発言していること,第6回会議では,D補佐から「中間まとめ追加案(D私案(甲29の2)が提出されたこと等が認めら)」れる。 (ウ)以上によれば,特にサブワーキンググループ会議の後半以降,文部科学省が会議を主導していったこと,同省の意図が本件提言の内容に一定程度反映されていることが認められる(B室長は「C試案」には,,C補佐自身の考えは原則的に入っておらず,委員の意見をまとめただけであり,本件提言は同省の意向とは別のものである旨証言するが,前記認定した事実に照らし,到底採用できない。また,A課長の通知等も。)踏まえると,同省ないし医学教育課が,本件提言の実施に強い意欲を有していたことが認められる。 このことに加え,前記認定のとおり同省は本件答弁書や国会質疑等において,本件提言には同省の影響はない旨の立場を取っていたこと等を踏まえると,同省ないし医学教育課としては,本件議事録が公にされ,本件提言策定の過程が明らかにされることは避けたいとの意向を有していたことが窺われる。 しかしながら,本件議事録のうち第5回会議までの分は,サブワーキンググループの各委員にも配布されており,本件各開示請求に関して本件議事録を不存在として処理したとしても,本件議事録が公にされる可能性を排除することができないこと(現に原告が同委員から本件議事録の一部を入手していたことは前記のとおりである,本件答弁書作成時。)において医学教育課に本件議事録 ても,本件議事録が公にされる可能性を排除することができないこと(現に原告が同委員から本件議事録の一部を入手していたことは前記のとおりである,本件答弁書作成時。)において医学教育課に本件議事録が存在していたことを認めるに足りる証拠はないこと,本件全証拠によっても同省職員の文書隠しの指示についての時期,指示をした主体,指示内容等について具体的に特定することはできないこと等からすれば,同省職員による故意の文書隠しの指示- 32 -によって,被告大学が本件各不開示決定をなしたとまでは認めることができないといわざるを得ない。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。 エ原告の予備的主張について(ア)前記認定のとおり,被告大学病院総務課は,本件議事録を開示請求対象の行政文書には該当しないと判断して,被告大学病院情報公開委員会に対して本件議事録を資料として提出せず,また,同委員会においてI副院長も開示対象文書から本件議事録が除かれていることについて特段異議を述べたことは窺われない。その結果,被告大学病院長は,被告大学総長に対して,本件議事録を除いた行政文書を開示することについて意見はない旨回答し,本件議事録を被告大学に送付しなかったと認められる。 また,その後に行われた被告大学情報公開実施委員会の意見照会に対しても,I副院長は意見はない旨回答し,当該回答と前記被告大学病院長の意見を踏まえて,被告大学では,サブワーキンググループの会議録は不存在を理由に不開示とすることが意思形成されたと認められる。 ,,以上の判断過程においてI副院長及び被告大学病院総務課の職員は本件議事録の開示請求対象としての行政文書性の判断を誤ったというべきであり,特に後者は,本件答弁書において文部科学省がサブワーキンググループ会議の記録は存在しないと 長及び被告大学病院総務課の職員は本件議事録の開示請求対象としての行政文書性の判断を誤ったというべきであり,特に後者は,本件答弁書において文部科学省がサブワーキンググループ会議の記録は存在しないと回答したことから,行政文書性について主体的に判断せず,安易に本件議事録について,備忘録として作成したメモ程度のものにすぎないと認識し,開示請求対象の行政文書には該当しないと判断した点に,重大な過失が存するというべきである。 (イ)したがって,被告大学職員らは,情報公開法の規定及び趣旨に従って適切に当該請求を処理すべき職務上の注意義務を尽くすことなく,漫然と本件議事録を開示請求対象の行政文書に当たらないと判断し,これ- 33 -が被告大学の行った文書不存在を理由とする本件各不開示決定につながったというべきであるから,被告大学職員らの当該行為は国家賠償法上違法であることは明らかである。 (3)本件各不開示決定に関する文部科学省職員の行為の違法性ア同省職員が故意に文書隠しの指示をなしたという原告の主位的主張が採用できないことは前記のとおりであるので,以下,予備的主張について判断する。 イ被告らは,本件答弁書を作成する際には,本件議事録の存在自体が医学教育課職員の記憶から欠落していたと主張するので,この点についてまず判断する。 ,,(ア)前記争いのない事実等のとおりサブワーキンググループ会議には毎回複数の医学教育課職員が出席していたところ,本件議事録(甲25,,),,,の126の128の1によれば第2回会議において司会者が今回の議事録を早急に作成する旨発言し,第5回会議では発言者名は明らかでないものの「ちょっとオフレコと言っても,これは議事録が残,」,「」,るらしいんですがこれは私も前回の議事録を読ませて 今回の議事録を早急に作成する旨発言し,第5回会議では発言者名は明らかでないものの「ちょっとオフレコと言っても,これは議事録が残,」,「」,るらしいんですがこれは私も前回の議事録を読ませていただいて「議事録から削除していただきたいと思います「今日までの検討の。」,議事録の起こしが1週間かかりますので」といった発言がなされていること(当然,出席していた各医学教育課職員はこれらの発言を聞いていた)及び第3回会議においては,B室長がC補佐の作成したメモを読。 み上げる形ではあるが「ちょっと議事録も読み直して見たんですけれども」と発言していることが認められる。以上のことから,医学教育課職員も含めた出席者にとっては,同会議において議事録が作成されていることは共通の認識であったというべきである。 また,被告らは,本件議事録は被告大学から送付を受けた担当者からC補佐に渡され,他の出席者には原則として配布しなかったなどと主張- 34 -するが,被告大学病院が本件議事録を医学教育課に送付していたのは,その了解を得てから各委員に送付するという手順を踏むためであるから,医学教育課からのC補佐以外の出席者が自己の発言について何ら確認をしなかったということも考え難いところである。 したがって,同会議が開催されていた当時,医学教育課職員は本件議事録が存在することを十分認識していたと認められ,本件議事録の送付を受けた担当者及びC補佐以外の医学教育課職員は,その存在についての認識が極めて希薄であったとの被告らの主張は採用できない。 (イ)そして,医学教育課職員は,以下のとおり本件答弁書案を作成する時点及び本件開示請求1がなされた時点においても,当該認識を有していたというべきである。 被告らは,同会議が終了してから約1年が経過していること及び当時海外 員は,以下のとおり本件答弁書案を作成する時点及び本件開示請求1がなされた時点においても,当該認識を有していたというべきである。 被告らは,同会議が終了してから約1年が経過していること及び当時海外へ赴任していたC補佐への確認を怠ったことなどから,本件議事録の存在が記憶から欠落していたなどと主張する。 しかしながら,会議での具体的な発言内容についての記憶ならともかく,議事録が存在するか否かという明白な事実について,約1年という特段長いとはいえない期間の経過により,記憶が欠落するということ自体にわかに措信し難いだけでなく,同会議にはC補佐を除いても医学教育課職員が毎回5名ないし7名出席していること及び本件提言については,取りまとめ直後から国会やメディア等で同省の関与が疑われるなど注目されていたこと等からすれば,同会議に出席したすべての医学教育課職員の記憶から,本件議事録の存在についての認識が欠落していたという主張は到底採用できない。 仮に万が一,出席していた医学教育課職員全員の記憶からその認識が欠落していたとしても,国会議員に対する政府答弁書の重要性からすれば,その作成に当たって同会議の具体的経緯について綿密な調査が行わ- 35 -れたはずであるから,C補佐に対して,例え同人が海外に赴任していたとしても,確認や調査等をしなかったとは通常考えられないし,少なくとも被告大学から本件議事録の送付を受けていたという担当職員に調査をしないはずがない。 したがって,医学教育課職員は,これらの者に対する調査から当然本件議事録が存在するということは認識していたというべきである。 以上の事実は,前記認定のとおり,医学教育課が本件報道後に,新聞の取材に対して被告大学が作成した本件議事録は正式な議事録ではないととらえていた旨答えたこと,本件開示請求1の被告大 というべきである。 以上の事実は,前記認定のとおり,医学教育課が本件報道後に,新聞の取材に対して被告大学が作成した本件議事録は正式な議事録ではないととらえていた旨答えたこと,本件開示請求1の被告大学への移送決定において「会議録並びに九州大学及び各委員が提出した資料,その他,一切の文書」は「被告大学において作成した文書であり,被告大学において開示決定等を行うのが最も適切である」と記載していることからも認められる。 ウ文部科学省職員の職務上の法的義務予算や組織運営を含む多くの点において旧国立大学は同省の広範な指揮監督下に置かれていたという前記認定の旧国立大学と同省の実質的な関係からすれば,本件当時,被告大学の職員において,同省の意向や方針に逆らうような判断をすることは困難であったことが認められる。 このような状況に加え,前記のとおり医学教育課職員が本件議事録の存在を認識しており,このことは本件議事録の作成経緯(被告大学病院は本件議事録をまず同省に送り,その了解を得た後にサブワーキンググループの委員に送付していたことなど)から被告大学病院職員においても当然に認識していたと考えられること,それにもかかわらず同省が本件答弁書においてサブワーキンググループ会議の記録は存在しない旨答弁していたこと及び当初本件開示請求1は文部科学大臣に宛ててなされたところ,医学教育課内に本件議事録が存在しないことを受けて,被告大学に一部移送さ- 36 -れたという経緯が存すること等の本件各事情の下では,同省職員も,被告大学職員が情報公開法の規定及び趣旨に従って主体的かつ適切に開示請求を処理し得るよう協力すべき職務上の法的義務を負うと解するのが相当である。 したがって,同省職員は直接本件各開示請求に対する決定を行うものではないといった形式的な理由をもって,同 かつ適切に開示請求を処理し得るよう協力すべき職務上の法的義務を負うと解するのが相当である。 したがって,同省職員は直接本件各開示請求に対する決定を行うものではないといった形式的な理由をもって,同省職員については職務上の法的義務違反を考える余地はなく,本件答弁書をみて被告大学総長がいかなる判断をしたかについては同省が関知するところではないとする被告らの主張は採用できない。 エ同省職員の違法行為前記認定した同省と旧国立大学との実質的な指揮監督関係,本件議事録の作成経緯及び本件開示請求1が被告大学に移送された経緯等にかんがみれば,同省が被告大学に何らの指示説明をせず放置すれば,同省が本件答弁書でサブワーキンググループ会議の具体的内容について,記録が存在しないため答えられないという立場を取ったことを受け,被告大学が本件各開示請求に対して主体的に判断することをせず,本件答弁書の内容に沿う形で,本件議事録は開示対象の行政文書に該当しない又は本件議事録は存在しないという判断をすることは,医学教育課職員は十分予想することができたというべきである。そして,前記認定のとおり,医学教育課職員には,本件議事録が存在するとの認識があったのであるから,早期に被告大学に対して本件答弁書の誤りを是正する説明をして,被告大学職員が主体的かつ適正に本件各開示請求に対して判断できるようにすることは十分可能であったというべきである。にもかかわらず,医学教育課職員は,被告大学に対してそのような是正の説明をすることを怠り,漫然と放置したことにより,被告大学病院総務課職員らが本件議事録の行政文書性等に関する判断を誤ったものということができる。 - 37 -したがって,医学教育課職員には,前記職務上の法的義務を尽くすことなく本件答弁書における誤りを是正せず漫然と放置した重 議事録の行政文書性等に関する判断を誤ったものということができる。 - 37 -したがって,医学教育課職員には,前記職務上の法的義務を尽くすことなく本件答弁書における誤りを是正せず漫然と放置した重大な過失があったというべきであり,また,医学教育課職員の当該不作為は,国家賠償法上違法であると解するのが相当である。 (4)小括ア前記各被告ら職員の行為は,国家賠償法1条1項の公権力の行使に該当し,また,前記認定の各事実及び前記(2)(3)で示した判断によれば,被告ら職員の各行為にはいずれにも重大な過失があったことが認められ,被告らは,前記各行為について同条項の責任を負うものというべきである。 イなお,被告らの当該各不法行為は,前記(2)(3)で判示したところからすれば,共同不法行為の関係にあるといえる。 (5)被告大学による本件議事録の写しの送付行為について原告は,被告大学が本件各不開示決定を取り消す前に本件議事録の写しを送付した行為も,不法行為として主張する。 しかしながら,前記認定のとおり,被告大学は,医学教育課職員のアドバイスに基づいて原告に本件議事録を送付したことが認められるが,本件全証拠によっても,被告大学に本件各不開示決定を取り消さずに済まそうとする意図があったとまでは認めることはできない。また,本件各不開示決定を取り消すなどの手続を踏んだ上で本件議事録の写しを送付した方が,より情報公開法の趣旨に沿うことは否定できないとしても,被告大学が,文部科学省がG議員やJに本件議事録の写しを交付することとのバランスを考慮して,原告にも送付したことは,送付した趣旨について適切な説明がなされなかったという問題点があるものの,国家賠償法上違法と評価するまでには至らない。 ,,,。 したがって被告らは当該送付行為に関して国家賠償責任 したことは,送付した趣旨について適切な説明がなされなかったという問題点があるものの,国家賠償法上違法と評価するまでには至らない。 ,,,。 したがって被告らは当該送付行為に関して国家賠償責任を負わない 争点(3)(損害)について- 38 -前記争いのない事実及び認定事実に加え,甲第31号証,原告本人尋問及び弁論の全趣旨によれば,原告の理由なく行政文書の開示請求を妨げられないという利益は,本件各不開示決定によって侵害され,これによって原告は相当程度の精神的苦痛を受けるとともに,弁護士との打合せ等に要する種々の負担を負ったものと認められる。 被告らの過失の重大性等本件の諸般の事情を考慮すれば,原告が本件各不開示請求より前の時点で,非公式に本件議事録のうち第1回から第5回分を入手していたこと及び本件各不開示決定の約2か月余り後に同決定が取り消された等の事情を考慮しても,これを慰謝するための金員としては30万円が相当であり,弁護士費用として10万円を損害として認めるのが相当である。 第4 結論 以上によれば,原告の請求は,主文第1項の限度で理由があるからその範囲について認容し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,仮執行宣言については,その必要がないものと認めて却下することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第17部荒井勉裁判長裁判官竹内浩史裁判官吉田豊裁判官- 39 -
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