平成14年(行ウ)第8号不当利得返還請求事件(以下「甲事件」という),平成15年(行ウ)第22号報酬支払差止請求事件(以下「乙事件」という)主文 被告Aは,岡山市に対し,金8300万2200円及びこれに対する平成14年5月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告事業管理者は,被告Aに対し,平成14年度期末手当の加算金として,金7411万7200円の金員の支払いをしてはならない。 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実 及び理由第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨 甲事件(一)被告Aは,岡山市に対し,金8300万2200円及びこれに対する平成14年5月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (二)訴訟費用は被告Aの負担とする。 (三)(一)につき仮執行宣言 乙事件(一)被告事業管理者は,被告Aに対し,平成14年度期末手当の加算金として,金7411万7200円の金員の支払いをしてはならない。 (二)訴訟費用は被告事業管理者の負担とする。 二請求の趣旨に対する各答弁 原告らの請求を棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 第二事案の概要一前提事実(当事者間に争いがないか,挙示する証拠あるいは弁論の全趣旨に より容易に認められる事実。書証の表示は基本的に甲事件の番号による) 当事者(一)原告らは,いずれも岡山市の住民である。 (二)被告Aは,岡山市から,同市の病院事業が毎年多額の赤字を出していることから(平成10年度の単年度赤字は約9億8600万円,同年度末における累積赤字は75億3200万円),その収支の改善を図ることを依頼され,平成12年4月24日,岡山市非常勤嘱託職員に就任した後,同年7月1日,岡山市長から岡山市病院事業管理者に任命されたが, における累積赤字は75億3200万円),その収支の改善を図ることを依頼され,平成12年4月24日,岡山市非常勤嘱託職員に就任した後,同年7月1日,岡山市長から岡山市病院事業管理者に任命されたが,平成15年10月31日,退任した。 同日,事業管理者が欠けたため,地方公営企業法(以下「公企法」という)13条に基づき,Bが,岡山市病院事業管理者職務代理者として岡山市病院事業の予算執行権限を有することとなり,さらに,平成16年7月,同人が被告事業管理者に任命された。 被告Aに対する期末手当加算金支給(一)岡山市は,平成12年3月22日,公企法及び同法施行令に基づき,岡山市病院事業を行うため,総合病院岡山市立市民病院,岡山市立吉備病院及び岡山市立せのお病院の3病院を設置し,それまで公企法の財務規定等しか適用されなかった岡山市病院事業に管理者の規定を含む公企法の全部を適用する旨の条例(同年7月1日施行)を制定した(甲1)。 (二)岡山市は,同年6月19日,「岡山市病院事業管理者の給与に関する条例」を制定した(以下「改正前条例」という)。その内容は,①管理者の給料月額は,岡山市職員の給与に関する条例(以下「職員給与条例」という)別表第1行政職給料表の9級を基準に市長が定める(2条;9級の上限60万2600円),②管理者の諸手当の種類及びその額並びに支給方法は,別に条例で定めるほか,職員給与条例別表第1行政職給料表の9級に属する職員の例による。ただし,職員給与条例14条の3に定める管 理職手当の額は,給料月額の100分の25に相当する額とする(3条),③3条により準用する職員給与条例18条2項に定める期末手当の額は,当分の間,別に市長が定める基準により算出した額を加算した額(以下,この加算金を「本件加算金」という)とすることができる(附 条),③3条により準用する職員給与条例18条2項に定める期末手当の額は,当分の間,別に市長が定める基準により算出した額を加算した額(以下,この加算金を「本件加算金」という)とすることができる(附則2項)というものであった(甲2,3)。 (三)岡山市長は,改正前条例附則2項に基づき,平成12年7月1日,「岡山市病院事業管理者成功報酬支給要綱」(以下「支給要綱」という)を制定した。その内容は,「この要綱は,前年度と比較して収支差額(総収益から総費用を引いたもの,ただし,減価償却費等を除く)が改善し,かつ功労があったと市長が認めた場合に適用する」(2条),「期末手当に加算することができる額は,当年度決算における収支差額を前年度決算の収支差額と比較して改善した額に100分の20の範囲内で市長が別に定める率を乗じて得た額とする」(3条)というものであった(甲4)。 (四)岡山市病院事業の決算は,平成11年度で4億3911万2063円の赤字,平成12年度で2410万0977円の赤字,平成13年度で3億4648万5413円の黒字となった。これによれば,平成12年度の収支は,前年度比4億1501万1086円(以下「平成12年度改善額」という),平成13年度の収支は,前年度比3億7058万6390円(以下「平成13年度改善額」という),それぞれ改善した。 岡山市長は,平成12年度改善額に,100分の20を乗じた8300万2200円(100円未満の端数切捨て)を期末手当の加算額とする平成13年度岡山市病院事業会計補正予算案を岡山市議会に提出し,同案は平成13年12月14日に可決され,同加算金は,平成14年3月15日に被告Aへ支払われることとなった。 (五)岡山市長は,平成13年度の本件加算金の支払いを保留して,平成14年3月12日,「改正前条例の 3年12月14日に可決され,同加算金は,平成14年3月15日に被告Aへ支払われることとなった。 (五)岡山市長は,平成13年度の本件加算金の支払いを保留して,平成14年3月12日,「改正前条例の一部を改正する条例」案を岡山市議会に 提出し,同案は同月19日に可決された(以下「改正条例」という)。その内容は,管理者の給料月額を90万7900円と定めるほか,「改正前条例附則2項を次のとおり改める。『管理者に3月に支給すべき期末手当の額は,当分の間,給与条例18条2項の規定による額に,病院事業会計決算における前々年度の収支差額と前年度の収支差額とを比較して改善された額に100分の20を乗じて得た額を加算した額(その額に100円未満の端数が生じたときは,これを切り捨てた額)とする』」(以下,改正条例により改正された後の改正前条例附則2項を「本件規定」という),「改正条例は,公布の日から施行し,平成12年7月1日から適用する」(改正条例附則1項)というものであった(甲7)。 これにより,被告Aに支給される平成13年度の本件加算金は,本件規定に基づいて算出されることとなった。 (六)被告Aは,月額90万7900円の給与(年額1089万4800円)並びに3.55月分の期末手当,1.15月分の勤勉手当及び諸手当のほか,平成14年3月25日,総合病院岡山市立市民病院から,平成13年度の本件加算金として8300万2200円(本件規定に基づき,平成12年度改善額に100分の20を乗じ,100円未満の端数を切り捨てて算出された額)を受け取った(甲11ないし14,乙事件甲4)。 (七)また,被告Aは,平成14年度において,月額90万7900円の給与(年額1089万4800円)並びに3.5月分の期末手当,1.15月分の勤勉手当及び諸手当を支給されたが,さ ,乙事件甲4)。 (七)また,被告Aは,平成14年度において,月額90万7900円の給与(年額1089万4800円)並びに3.5月分の期末手当,1.15月分の勤勉手当及び諸手当を支給されたが,さらに岡山市議会は,平成15年2月21日,被告Aに支給される平成14年度の本件加算金として7411万7200円(本件規定に基づき,平成13年度改善額に100分の20を乗じ,100円未満の端数を切り捨てて算出された額)を計上する予算案を可決したことから,平成15年3月には同加算金が被告Aへ支給されることとなったが,同被告は,本件口頭弁論終結時において,同加 算金の受領を留保している。 原告らによる監査請求(一)甲事件原告らは,平成14年3月6日,岡山市監査委員に対し,被告Aに対する平成13年度の本件加算金の支払差止めを求めて職員措置請求をなした。これに対し,監査委員は,平成14年3月22日,「特別職の報酬についても,その職務を具体的に明示した上,これを適正に評価した額となるよう条例で定めるべきである。本件加算額はそのような評価の手続きを経るものにはなっていないが,病院経営の危機的な状況に鑑み,いわば緊急避難的なものとして支給される限りにおいて,違法又は不当と評価されないと考えられる。病院事業管理者の期末手当の加算に当たっては,その事業の評価や効果を住民に十分説明すべき説明責任を果たす意味からも,経営改善に何がどう貢献しているのかを精査するため,情報公開を進めるなどにより,議会との連携を十分に図るとともに,第三者をメンバーに入れた評価委員会,査定委員会などの審議を経るなど,広く市民の意見を聞いて公正を期するよう改善されたい」との意見を提出した上,監査請求は理由がないとする監査結果を通知し,同日,同原告らに到達した(甲15,16,17の 定委員会などの審議を経るなど,広く市民の意見を聞いて公正を期するよう改善されたい」との意見を提出した上,監査請求は理由がないとする監査結果を通知し,同日,同原告らに到達した(甲15,16,17の1,2)。 甲事件原告らは,平成14年4月19日,甲事件訴訟を提起した。 (二)乙事件原告らは,平成15年10月17日,岡山市監査委員に対し,被告Aに対する平成14年度の本件加算金の支払差止めを求めて職員措置請求をなしたが,平成15年11月27日ないし28日ころ,理由がないとする監査結果が到達した(乙事件甲1,2)ことから,同年12月24日,乙事件訴訟を提起した。 二本件請求原告らは,①本件規定による本件加算金の支払いは,公企法38条3項,17条の2,32条,7条の2第6項,地方自治法204条,2条14項及び地 方財政法4条1項の各条項に違反する違法なものである,②その審議過程や内容からみても,本件規定は条例制定権の濫用により制定されたものであるから無効であると主張して, 平成14年法律第4号による改正前の地方自治法(以下,単に「地方自治法」という)242条の2第1項4号に基づき,甲事件原告らは,被告Aに対し,不当利得金8300万2200円(平成13年度の本件加算額)及びこれに対する甲事件訴状送達の日の翌日である平成14年5月5日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を岡山市に支払うよう代位請求し(甲事件), 地方自治法242条の2第1項1号に基づき,乙事件原告らは,被告事業管理者に対し,被告Aに対する平成14年度の本件加算金7411万7200円の支払差止めを求めた(乙事件)。 三 争点 本件規定による本件加算金の支払いは違法か(一)公企法38条3項違反(二)公企法17条の2違反(三)公企法7条の2第6 金7411万7200円の支払差止めを求めた(乙事件)。 三 争点 本件規定による本件加算金の支払いは違法か(一)公企法38条3項違反(二)公企法17条の2違反(三)公企法7条の2第6項違反(四)公企法32条違反(五)地方自治法204条違反(六)地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項違反 本件規定の制定は条例制定権の濫用に当たるか(一)内容(二)制定過程四争点についての当事者双方の主張 本件規定による本件加算金の支払いは違法か(一)公企法38条3項違反 (1)原告らの主張事業管理者は特別職の公務員(地方公務員法3条3項1号の3)であるから,一般職の公務員に適用される地方公務員法の給与に関する諸規定は適用されず(同法4条2項),給料等の額及び支払方法は,地方自治法204条3項により条例で定めるべきこととされているが,条例制定に係る議会の裁量といえども無制限ではなく,これを限定する法律の外枠は存在し(憲法92条,地方自治法1条,2条),これを超えた内容の条例の定めは裁量権の濫用として違法となる。 公企法は,地方公営企業の「組織,財務及びこれに従事する職員の身分取扱いその他企業の経営の根本基準」を定める(1条)法律であり,同法4条で,「地方公営企業の設置や経営の基本事項は条例で定めなければならない」とし,3条で「地方公営企業は,常に企業の経済性を発揮するととともに,その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない」と基本原則を定めるとともに,5条において「地方公営企業に関する法令並びに条例,規則及びその他の規程は,すべて3条に規定する基本原則に合致するものでなければならない」と定め,前記外枠をはめている。 事業管理者は,地方公営企業の業務の執行責任者であり,その設置の 法令並びに条例,規則及びその他の規程は,すべて3条に規定する基本原則に合致するものでなければならない」と定め,前記外枠をはめている。 事業管理者は,地方公営企業の業務の執行責任者であり,その設置の根拠が公企法にある以上,前記1条所定の根本基準を定める同法の外枠を超えることはできない。 公企法38条3項は,「企業職員の給与は,生計費,同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与,当該地方公営企業の経営の状況その他の事情を考慮して定めなければならない」と定めている。 事業管理者は,特別職公務員であり(地方公務員法3条3項1号の3),公企法の規定上は「企業職員」と区別されるが(公企法15条), 一方,当該地方公共団体の長の業務の執行補助者であり(同法16条),常勤でなければならないとされていること(同法7条の2第6項)から,管理者の給与内容を決するに当たっては,同法38条3項が準用されるものと解すべきである。 岡山市病院事業の経営状況,他の公営病院事業管理者の報酬の実情,民間事業の経営常識,市長,助役,収入役等の給与の金額等を考慮すると,本件規定は,岡山市病院事業の経営状況に反し,同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与の状況を全く無視したものであり,本件規定による本件加算金の支払いは,公企法38条3項に反し,違法であるから無効である。 (2)被告らの反論地方公共団体の長は,管理者に対して一般的,包括的な指揮監督権を有しているものではなく,①当該地方公共団体の住民の福祉に重大な影響がある地方公営企業の業務執行に関し,福祉を確保するため必要があるとき又は②管理者以外の地方公共団体の機関の権限に関する事務の執行と当該地方公営企業の業務の執行との調整を図るために必要があるときに がある地方公営企業の業務執行に関し,福祉を確保するため必要があるとき又は②管理者以外の地方公共団体の機関の権限に関する事務の執行と当該地方公営企業の業務の執行との調整を図るために必要があるときに限り,必要な指示をすることができるに過ぎず,管理者は,地方公共団体の長の業務の執行補助者ではない。 公企法38条は,一般職に属する地方公務員の給与について定めた地方公務員法24条3項の特則的性格を有するものであり,企業職員の給与額を決定するに当たって考慮しなければならないのは,単なる「国又は地方公共団体の公務員及び民間の労働者の給与」ではなく,「同一又は類似の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業従事者の給与」であることを明確に定めて,同一労働同一賃金の原則を貫徹しようとする定めである。したがって,特別職である事業管理者の給与については,もとより地方公務員法が適用されず(同法4条2項),地方公務員法24 条3項もその特別法である公企法38条も,直接適用あるいは準用される余地はない。それ故に,公企法も,事業管理者と企業職員とを明確に区分した上で,38条3項において,敢えて「企業職員」に限定して給与規定を定めているのである。 (二)公企法17条の2違反(1)原告らの主張公企法17条の2第2項は「地方公営企業の特別会計においては,その経費は,第1項の規定に定める場合を除き,当該地方公営企業の経営に伴う収入をもって充てなければならない」と定め,第1項において例外的に,性質上経営収入をもって充てることが適当でない経費(1号,例えば看護師の確保を図るために行う事業に要する経費)と,経営収入のみをもって充てることが客観的に困難であると認められる経費(2号,例えば僻地における医療の確保を図るために設置された病院で採算をとるのが困難であると認められ めに行う事業に要する経費)と,経営収入のみをもって充てることが客観的に困難であると認められる経費(2号,例えば僻地における医療の確保を図るために設置された病院で採算をとるのが困難であると認められるものに要する経費)に限って,一般会計あるいは他の特別会計から,出資,長期貸付,負担金の支出等の形で負担できるとしている。 平成13年度,平成14年度の本件加算金は,当該各年度岡山市病院事業会計の経費として補正予算により承認され,改正条例を経て支給が決定されたが,補正予算の承認及び条例の改正時点において,同加算金支出に見合う当該年度の医業収入の増加の見込みは全くなかったことから,同加算金は,医業収入以外の一般会計等からの負担金等から支出されることは必定であった。 本件規定は,平成13年度の本件加算金支出が公企法17条の2第2項に反することが明確であったにもかかわらず制定されており,議会の裁量を超えた違法なものであり,平成14年度の本件加算金の補正予算を承認した市議会の議決は,議会の裁量を超えた違法なものである。 したがって,本件規定による本件加算金の支払いは,公企法17条の2第2項に反し,違法であるから無効である。 (2)被告らの反論平成13年度事業会計補正予算及びその予算説明書からすれば,平成13年度の本件加算金は,岡山市病院事業会計から支出されていることが明らかであり,他会計からの繰入金及び負担金等は,同加算金支出に一切充てられていない。原告らの主張によれば,赤字企業等は当該事業に係るいかなる費用も支出できないことになりかねず,失当である。 (三)公企法7条の2第6項違反(1)原告らの主張事業管理者は,地方公営企業の経営について広汎な権限を有すると同時に,当該地方公共団体の長の執行補助者であり(公企法7条の2第1項,第8項 。 (三)公企法7条の2第6項違反(1)原告らの主張事業管理者は,地方公営企業の経営について広汎な権限を有すると同時に,当該地方公共団体の長の執行補助者であり(公企法7条の2第1項,第8項,16条,24条2項)重大な責任を負っていることから,当該地方公営企業の通常の執務時間内にはその事業所内において勤務することが義務づけられ,その執務時間及び職務上の注意力の全てをその職務遂行のために用いるため,公企法7条の2第6項(第11項,地方公務員法35条)において,「管理者は,常勤とする」と定められている。 しかるに被告Aは東京都内に在住し,平成12年7月1日就任以降,岡山市立病院に出勤したのは週に3日程度であり,常勤による執務義務を果たしていないのであって,このような者に対して期末手当の加算を認め,本件規定によって本件加算金を支払うのは,同条に違反し,違法であるから無効である。 (2)被告らの反論事業管理者の勤務日及び勤務時間については,公企法あるいは地方自治法に何らの定めはなく,そもそも,事業管理者が常勤とされている趣 旨は,管理者が広汎な指揮監督権を有し,その職務内容が極めて困難で重責を負っていることから,企業職員に対して適宜適切な指示,対応ができるよう管理業務を適切十二分に遂行しなければならないということにある。管理者が地方公共団体の長の業務の執行補助者ではないことは前述のとおりであり,管理者は,当該地方公営企業の通常の執務時間内にその事業所内において勤務することを義務づけられてはいない。被告Aは,週2ないし3回は岡山市立病院で執務するが,それのみならず,各大学の医師の獲得折衝,製薬会社との薬価交渉等,岡山市病院事業を改善すべく東奔西走しているのであって,常勤義務を十二分に果たしており,病院の経営に関する指示を行うた で執務するが,それのみならず,各大学の医師の獲得折衝,製薬会社との薬価交渉等,岡山市病院事業を改善すべく東奔西走しているのであって,常勤義務を十二分に果たしており,病院の経営に関する指示を行うため,週末,祝日を問わず何時でも連絡が取れる態勢を整えていた。 (四)公企法32条違反(1)原告らの主張公企法32条1項は,「地方公営企業は,毎事業年度利益を生じた場合において前事業年度から繰り越した欠損金があるときは,その利益をもってその欠損金を埋め,なお残額があるときは,政令で定めるところにより,その残額の20分の1を下らない金額を減債積立金又は利益積立金として積み立てなければならない」旨定め,当該年度に利益が生じていても,累積欠損がある場合には,利益を穴埋めに使用しなければならないとしている。本件規定は,当年度に黒字が発生せず,累積欠損が存在する場合にも,賞与の意味合いを持つ成功報酬としての本件加算金を支払うものであるから,公企法32条1項に違反する。 したがって,本件規定による本件加算金の支払いは,公企法32条1項に反し,違法であるから無効である。 (2)被告らの反論公企法32条は,未処分利益が存する場合におけるその利益処分の制 限を規定したものであるが,本件加算金は,収支差額が前年度より改善された時点で改善額の20%を支払うというもので,利益がある場合にのみ支払うものではないから,利益処分の性質を有するものではなく,あくまでも費用に該当するものである。平成13年度補正予算等において,同年度の本件加算金が医業費用(のうち給与費)として計上されているのは,この趣旨である。したがって,本件規定は,利益処分に関する規定である公企法32条とは何ら関係がない。 (五)地方自治法204条違反(1)原告らの主張ア地方自治法20 して計上されているのは,この趣旨である。したがって,本件規定は,利益処分に関する規定である公企法32条とは何ら関係がない。 (五)地方自治法204条違反(1)原告らの主張ア地方自治法204条2項(ア)事業管理者は,特別職の常勤職員であるから,その給与等の額及び支払方法は,地方自治法204条に基づく必要がある。 同法204条2項は,手当を法定しているところ,同項所定の「期末手当」とは,生計費が一時的に増大する盆と暮を中心に,その生計費を補充するために支給される手当であって,生活補給金としての性格を有し,「勤勉手当」は,一定期間における職員の精勤に対する報償として支給される能率給的な性格を有すると解されており,期末手当と勤勉手当をあわせたものが民間企業における賞与(ボーナス)に相当する。 被告Aは,職員給与条例別表第1行政職給料表の9級に属する職員の例によって,期末手当及び勤勉手当を受給し,給与月額の100分の25に相当する管理職手当を受給しており,手厚く,期末手当,勤勉手当及び管理職手当を受給している。 本件加算金は,さらに収支改善額の100分の20の額を期末手当として支給するものであり,このような規定は,「勤勉手当の要素も加味して期末手当の額が一般職員よりも多く定められている通 常の給付額」を大きく逸脱しており,地方自治法204条2項に定める期末手当の趣旨に反し,違法である。 (イ)前々年度と前年度の収支差額の改善額が生じたという結果のみに基づき本件加算金を支給するという仕方は,準委任又は請負に類するものであり,本件加算金の実質は,成功報酬というべきものであり,職務専念義務に対する生活保障給としての給料,その他諸手当,旅費等を支給する常勤職員の給与体系とは相容れないものである。地方自治法あるいは公企法は,管理者に の実質は,成功報酬というべきものであり,職務専念義務に対する生活保障給としての給料,その他諸手当,旅費等を支給する常勤職員の給与体系とは相容れないものである。地方自治法あるいは公企法は,管理者に成功報酬を支給することを予定していないというべきである。 イ地方自治法204条3項本件規定は,収支改善額に100分の20を乗じて得た額を本件加算金として支給するとするが,このような規定の仕方は,本件加算金の額が条例の規定上確定しておらず,「給与,手当及び旅費の額を条例で定めなければならない」とする地方自治法204条3項に違反する。 (2)被告らの反論ア地方自治法204条2項(ア)民間企業では,委任契約に基づく報酬を受けるべき役員と,労働契約に基づく給与を受けるべき従業員では,賞与の内容や性質は大きく異なることは当然である。原告ら主張の「期末手当」の定義は,民間企業であれば,従業員に相当する地方公務員の一般職の職員に妥当するものであり,民間企業の役員に相当する地方公営企業の管理者には,妥当しない。 (イ)期末手当の該当性地方自治法204条2項は,給与体系の合理化を図る趣旨で手当の種類を法律で限定列挙しており,他方で,憲法で保障された団体 自治から導かれる給与条例主義の条項(地方自治法204条3項,204条の2)もあり,これらを整合的に理解するならば,手当の種類までは法律で限定するものの,いかなる勤務について,いかなる支給基準,方法,額をもって支給するかは,地方議会に一定の裁量権が認められるものと解さざるを得ない。 また,その裁量の範囲については,「一般職の職員の給与に関する法律」の適用を受ける一般職の国家公務員に勤務形態が近く,手当の種類等についても,一般職の国家公務員と対応関係が認められる一般職の地方公務員と,「特別職 範囲については,「一般職の職員の給与に関する法律」の適用を受ける一般職の国家公務員に勤務形態が近く,手当の種類等についても,一般職の国家公務員と対応関係が認められる一般職の地方公務員と,「特別職の職員の給与に関する法律」の適用を受ける特別職の国家公務員の手当との対応関係がなく,給与均衡の原則の適用もない特別職の地方公務員とを比較すると,前者よりも後者の方が地方議会の裁量の幅は広いと解される。 「期末手当」は,地方自治法上において定義規定がなく,また,「夜間勤務手当」や「武力攻撃災害等派遣手当」とは異なり,文言自体からは,最低限の性質としては期末に支払われることが要件であると考えられるものの,それ以外に明確にその内容が確定するものではないので,地方議会の裁量の幅は広いと考えられる。なお,国家公務員の指定職職員については,勤務成績を反映させる手当として「期末特別手当」が創設されていることから,現在においては,「期末」という文言を生活補給金の意味に限定して捉えることは不適当であり,地方自治体の特別職の地方公務員について,勤務成績を反映させる手当として,「期末手当」を適用することも地方議会の裁量の範囲内であると考えられる。 さらに,特別職の地方公務員の中でも,地方自治体の長や委員会の委員等と比して,企業の経済性を発揮することが掲げられている地方公営企業の管理者については,公企法,地方自治法,地方公務 員法は,民間企業の経営者に対するのに類似した給与規律を許容していると解されるので,民間企業の経営者と同レベルの業績連動型の報酬や成功報酬を支給することが許されると考えられる。 民間企業の経営者,特に企業再建のために外部から就任した者の賞与やインセンティブ報酬との均衡を考えれば,本件は,長年の赤字体質が染みついて再建が非常に困難な病院事業 することが許されると考えられる。 民間企業の経営者,特に企業再建のために外部から就任した者の賞与やインセンティブ報酬との均衡を考えれば,本件は,長年の赤字体質が染みついて再建が非常に困難な病院事業であり,かつ管理者としては,医師としての能力だけでなく,病院経営者としての能力や幅広い人脈を有することが必須であることからして,余人をもって被告Aには替え難いことを踏まえると,本件規定によって本件加算金を支給することも地方議会の裁量の範囲内であるといえる。 (ウ)実質的にみて給与に該当すること仮に,管理者のような常勤の特別職については,その職務の特殊性等は,手当ではなく,給与によって評価することが本則であると解した場合には,本件加算金は,条例上,期末手当加算額と位置付けられているものの,実質的には,その職務の特殊性に照らし決定された給与の一部であると解することも可能である。 イ地方自治法204条3項地方自治法204条3項は,給料や手当の具体的な金額自体を条例で確定しなければならないことを求めるものではなく,条例の規定により給料や手当の具体的な金額が一義的に確定できることを求めているに過ぎない。そして,本件では,本件規定により給料や手当の具体的な金額が一義的に確定できるので,同項に違反しない。 (六)地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項違反(1)原告らの主張ア地方自治法2条14項は,「地方公共団体は,その事務を処理するに当たっては,住民の福祉の増進に努めるとともに,最少の経費で最 大の効果を挙げるようにしなければならない」と規定し,地方財政法4条1項は,「地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて,これを支出してはならない」と規定している。 地方自治法2条16項,17項の法意に照らせば,こ し,地方財政法4条1項は,「地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて,これを支出してはならない」と規定している。 地方自治法2条16項,17項の法意に照らせば,これらは,単に執行担当職員に対して事務のあり方を示すにとどまるものではなく,上記各法条の趣旨が著しく損なわれ,社会通念上も著しく妥当性を欠くと認められる場合には,上記各法条に反する条例の定め,あるいは条例に基づく行為も無効になると解すべきである。 イ本件規定は,累積赤字が90億円に達し,単年度の収支も赤字であるのに,前々年度と前年度の収支を比較して改善していれば,収支の改善内容や改善に対する管理者の貢献の程度等を全く考慮することなく,病院事業管理者に対し,高額な給与支給に加え,成功報酬として「収支差額」の20%を機械的に支払うものとしている。しかも,本件規定は,一種の白紙委任規定であり,「収支差額」の金額によっては,市長給与の数倍の期末手当加算額を管理者に支給することも可能とし,管理者が前々年度と前年度の「収支差額」を恣意的に増大させたとしても期末手当加算額の支給に歯止めをかけることができない内容になっている。 したがって,本件規定は,社会通念上著しく妥当性を欠いており,本件規定による本件加算金の支払いは,地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項に違反し,違法であるから無効である。 (2)被告らの反論本件規定は,計数による事業再建の実績を期末手当に反映させることにより,地方公営企業の経営に多大な権限を有する事業管理者に対し,大きなモチベーションとインセンティブを与え,その能力を最大限に発 揮させることにより,従前は経営が困難であった岡山市病院事業の経営の能率性・効率性を向上させようとするものであるから,上記各規定に反するものとは ンとインセンティブを与え,その能力を最大限に発 揮させることにより,従前は経営が困難であった岡山市病院事業の経営の能率性・効率性を向上させようとするものであるから,上記各規定に反するものとはいえない。 本件規定の制定は条例制定権の濫用に当たるか(一)内容(1)原告らの主張特別職の給与内容は条例で定められるといっても,いかなる内容でも許されるわけではなく,その職務を適正に評価した額になるように定めるべきである。また,公企法及び地方自治法は,成功報酬的な金銭の支給を予定していない。 本件規定は,収支改善額に100分の20を乗じて得た額とのみ規定されており,職務に対する適正な評価の手続きを経るものとはなっていない上,甚大な赤字を累積しているという当該地方公営企業の財務状態を考慮せずに,高額の成功報酬の支給を可能とするものであるから,条例制定権を濫用して制定されたものである。 (2)被告らの反論事業管理者については職務の実績を計数で評価することが可能であり,また,特に経営困難な企業を再建する段階においては,その計数による実績を期末手当に反映することが客観的・合理的であるので,むしろ企業の経済性を範とする公企法の精神にも合致するものと考えられる。 (二)制定過程(1)原告らの主張改正条例成立に至る経緯をみると,議会のチェック機能が全く働いていないことが明らかである。 すなわち,岡山市は,被告Aの根拠のない要求に屈して,同被告との間で,期末手当の加算額を収支差額の20%とすることを合意していた にもかかわらず,合意を明らかにすれば市議会の承認を得ることは難しいと考え,平成12年6月の市議会において,合意を隠しつつ虚偽の答弁を行い,改正前条例を可決させて布石を打った後,支給要綱策定,平成13年度補正予算成立といった既 すれば市議会の承認を得ることは難しいと考え,平成12年6月の市議会において,合意を隠しつつ虚偽の答弁を行い,改正前条例を可決させて布石を打った後,支給要綱策定,平成13年度補正予算成立といった既成事実を積み重ねることで,ようやく改正条例を可決させ,合意を実現させたのである。 本件加算金のように,病院事業管理者に対して,通常の給与,手当に加えて,「収支差額」の改善額に一定の比率を乗じた「成功報酬」的な手当を支給している例は,全国に多数存在する公営病院事業において皆無である。このような全国的にみて皆無の手当を支給することについての法的な問題を議論した形跡がなく,議会のチェック機能が働いていないといえる。 結局,岡山市当局の違法な手法に対し,市議会のチェック機能は全く働いていないのであって,同議会の怠慢により,条例制定権が濫用されたものである。 (2)被告らの反論原告らの主張は,議会運営の政治的不当性を論じるに過ぎず,本件規定の有効性とは無関係である。また,岡山市は,当時の岡山市病院事業の置かれていた社会的状況,経営状況及び解決すべき課題の重要性と困難さ並びに適切な人材を確保するための必要性等の諸事情を総合的・具体的に検討して,収支差額の20%を加算することが妥当であると判断したのであるから,その判断には合理的根拠が存する。 他の公営病院事業において,本件加算金のような手当が支給されていないことは,認める。しかし,この事態は,そもそも事業管理者設置の例が少なかったこと,病院事業経営に対する真摯な取り組みがなされなかったことによるものと思われる。 第三争点についての当裁判所の判断 一本件規定による本件加算金の支払いは違法か 公企法38条3項違反について(一)事業管理者は特別職の公務員(地方公務員法3条3項1号の3)である 。 第三争点についての当裁判所の判断 一本件規定による本件加算金の支払いは違法か 公企法38条3項違反について(一)事業管理者は特別職の公務員(地方公務員法3条3項1号の3)であるから,一般職の公務員に適用される地方公務員法の給与に関する諸規定は適用されず(同法4条2項),給料等の額及び支払方法は,地方自治法204条3項により条例で定めるべきこととされているが,条例制定に係る議会の裁量といえども無制限ではなく,これを限定する法の枠組みを超えた内容の条例の定めは違法となる。 公企法は,地方公営企業の「組織,財務及びこれに従事する職員の身分取扱いその他企業の経営の根本基準」を定める(1条)法律であり,「地方公営企業は,常に企業の経済性を発揮するととともに,その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない」(3条)と基本原則を定めている。 事業管理者は,地方公営企業の業務の執行責任者であり,その設置の根拠が公企法にある以上,前記根本基準を定める同法の外枠を超えることはできない。 したがって,地方公営企業に係る条例や管理者の権限の範囲を限定する法の枠組みを規定する法規の解釈に当たっては,上記の根本基準や基本原則を念頭に置くべきこととなることはいうまでもない。 (二)公企法38条3項は,一般職に属する地方公務員の給与について定めた地方公務員法24条3項の特則的性格を有するものであり,企業職員の給与額を決定するに当たって考慮しなければならないのは,単なる「国又は地方公共団体の公務員及び民間の労働者の給与」ではなく,「同一又は類似の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業従事者の給与」であることを明確に定めて,同一労働同一賃金の原則を貫徹しようとする定めであるものと解される。特別職である事業管理者の給与について 同一又は類似の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業従事者の給与」であることを明確に定めて,同一労働同一賃金の原則を貫徹しようとする定めであるものと解される。特別職である事業管理者の給与については,地方公務 員法24条3項が適用されない以上,その特則である公企法38条も適用あるいは準用されないこととなり,それ故に,公企法も,事業管理者と企業職員とを明確に区分した上で,38条3項において,敢えて「企業職員」に限定して給与規定を定めているところである。 地方公営企業は,地方行政の一環として地方公共団体により経営されるものであり,最終的な経営責任は地方公共団体の長が負うべきものであることから,事業管理者は独立の執行機関とはされず,長の補助機関とされている。しかし,公営企業の自立性を明らかにし,経営の能率性を担保するため,公企法及び地方公務員法は,昭和41年に改正され,事業管理者は,広く民間からも経営手腕を有する者を選任すべく自由任用職とされ,その権限が大幅に強化されたこと(公企法9条)から特別職公務員とされ,身分保障がなされた上で(同法7条の2),長の一般的・包括的な指揮命令権を制限する(同法16条)などして,その自主性と責任が強化された。 このような改正に伴い,事業管理者は,特別職の公務員として,公企法の規定上も,事業管理者の補助職員である企業職員と明確に区別されるに至ったものであり,この点からも,管理者の給与につき公企法38条3項が準用されると解することは困難である。管理者が常勤とされていることによって,上記解釈に影響するものではないし,前記の根本基準や基本原則を念頭に置いたとしても,別異に解釈しうるものでもない。 (三)そうすると,本件規定による本件加算金の支払いが公企法38条3項に触れるものとは認められない。 公企法17 前記の根本基準や基本原則を念頭に置いたとしても,別異に解釈しうるものでもない。 (三)そうすると,本件規定による本件加算金の支払いが公企法38条3項に触れるものとは認められない。 公企法17条の2違反について(一)同条の趣旨は,地方公営企業の経費負担の原則として,まず,一般会計等において負担すべき経費を明確に定め,次に,それら以外の経費は企業会計から支出すべきものとして,いわゆる独立採算の原則を定めるものであって,地方公営企業がその事業に係る費用を支出する際に,当該費用 の金額に対応した具体的な事業収入の見込みがあることを要するものではない。 (二)乙第21号証の1,2によれば,岡山市病院事業会計の平成13年度補正予算につき,受入資金の補正予定額がゼロとされ,支払資金の補正予定額がマイナス計上されており,平成13年度の本件加算金は,同事業会計から支出され,他会計からの繰入金,負担金等が一切充てられていないことが明らかである。また,平成14年度の本件加算金が,同事業会計以外の会計から支出されるという事情も窺えない。 そうすると,本件規定による本件加算金の支払いが公企法17条の2に違反するものとは認め難い。 公企法7条の2第6項違反について(一)同条項によって,事業管理者は常勤とすると定められている趣旨は,管理者が広汎な指揮監督権を有し,その職務内容が極めて困難で重責を負っている(公企法8条ないし15条)ことから,企業職員に対して適宜適切な指示,対応ができるよう管理業務を適切十二分に遂行しなければならないことにある。 而して,事業管理者は,地方公共団体の長の補助機関とされているが,長の一般的・包括的な指揮命令権を制限する(公企法16条)などして,その自主性と責任が明確にされており,特別職の公務員として,公企法の規定 ,事業管理者は,地方公共団体の長の補助機関とされているが,長の一般的・包括的な指揮命令権を制限する(公企法16条)などして,その自主性と責任が明確にされており,特別職の公務員として,公企法の規定上も,事業管理者の補助職員である企業職員と明確に区別された地位にあって,事業管理者の勤務日及び勤務時間については,公企法あるいは地方自治法に何らの定めもなく,当該地方公営企業の通常の執務時間内にその事業所内において勤務することが義務づけられてはいない。 (二)被告A本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によると,被告Aは,岡山市立病院の収支差額を改善するために事業管理者に就任したが,東京都内に在住し,週3日程度,岡山市立病院で執務し,各大学の医師の獲得折衝, 製薬会社との薬価交渉等のために他所に出かけることが多く,また自己の連絡先は始終明らかにしており,東京にいて,岡山市立病院からFAX通信を受けて病院の経営状況を把握するなどして,岡山市病院事業管理者の執務を遂行していたことが認められる。 そして,被告Aの病院事業管理者として期待される立場や上記勤務状況に鑑みると,被告Aが,病院事業管理者としての常勤義務を懈怠したものとまでは認め難い。 そうすると,本件規定による本件加算金の支払いが公企法7条の2第6項に違反するものとは認め難い。 公企法32条違反について(一)同条は,当該年度に,地方公営企業の収益から費用を差し引いた後の利益が生じていても,その利益を累積欠損等の穴埋めや利益積立金等に使用しなければならないとして,利益処分について制限している。 (二)乙第21号証の2及び弁論の全趣旨によれば,岡山市病院事業において,本件加算金は管理者に対する「期末手当」として計上され,病院事業における管理者の期末手当として,費用(款・病院事業費用,項・医 二)乙第21号証の2及び弁論の全趣旨によれば,岡山市病院事業において,本件加算金は管理者に対する「期末手当」として計上され,病院事業における管理者の期末手当として,費用(款・病院事業費用,項・医業費用,目・給与費)に区分されて(公企法2条,同法施行規則2条,同別表第1号。乙21の2),岡山市病院事業会計補正予算が成立し,期末手当加算金の名目で,被告Aに本件加算金が支払われたことが認められる。 したがって,本件加算金が費用として支払われた後に利益が生じるかどうかが決まることとなり,本件加算金の支払いは利益処分には当たらないこととなる結果,公企法32条の適用を受けないこととなる。 そうすると,本件規定による本件加算金の支払いが公企法32条に違反するものとは認められない。 地方自治法204条違反について(一)地方自治法204条2項違反 (1)地方議会の裁量権の範囲特別職の常勤の公務員である病院事業管理者に対しては,地方自治法204条が適用され,普通地方公共団体は,管理者に対し,給料及び旅費(同条1項)を支給することが義務づけられるほか,同条2項に列挙する手当を支給することができるが,これらの金額,支給方法は条例で定めなければならず(同条3項,給与条例決定主義),普通地方公共団体は,管理者に対し,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずに支給することができない(同法204条の2)。すなわち,地方自治法は,地方公共団体の条例による自主的決定の余地を専ら法定手当の種類からの選択と給与その他の給付の額,支給方法に限定しており,その限りで地方議会の裁量権を認めているものの,法定手当以外の手当を創設することについての裁量権は認めていない。したがって,条例において,名目上,法定手当として支給することを定めた場合であ ており,その限りで地方議会の裁量権を認めているものの,法定手当以外の手当を創設することについての裁量権は認めていない。したがって,条例において,名目上,法定手当として支給することを定めた場合であっても,その金員が法定手当の性質を有しない場合には,地方自治法204条2項,204条の2に違反することになる。 (2)「手当」該当性ア手当の性質(ア)地方自治法204条所定の「給料」とは,常勤の職員が行う勤務に対する反対給付であり,「手当」とは,正規の勤務時間外の勤務及び正規の勤務時間に直接対応しない給付であって,給料を補充する性質のものである。 そして,同条2項の「期末手当」とは,その沿革において,生計費が一時的に増大する盆と暮を中心に,その生計費を補充するために支給される手当であって,勤務成績に応じて支給される「勤勉手当」(同項)とは異なり,勤務の状況に応じた増減を予定しない手当であると解されてきた。また,平成9年に同項に 「期末特別手当」が追加規定されたのは,従来,国家公務員一般職のうちのいわゆる指定職職員については,その地位・職責からして勤務成績に基づいて支給する勤勉手当の支給対象とされていなかったところ,指定職職員であっても勤務成績が不良のものについて特別給としての期末手当を減額できるように,期末手当に代えて期末特別手当が設けられたことに対応したものであり,このことからも,同項の「期末手当」は,その沿革だけでなく現在の公務員の給与体系においても,勤務の状況に応じた増減を予定していないものといわねばならない。 (イ)被告らは,地方公務員の法定の給与の支給基準や額等については地方議会に一定の裁量権があり,特別職であり,企業の経済性を発揮することが掲げられている地方公営企業の管理者については,その裁量内において,民間企 ,地方公務員の法定の給与の支給基準や額等については地方議会に一定の裁量権があり,特別職であり,企業の経済性を発揮することが掲げられている地方公営企業の管理者については,その裁量内において,民間企業の経営者と同じように成功報酬の支払いが許容されると主張する。しかし,地方公営企業の管理者も地方公務員である以上,地方議会に一定の裁量があるとしても,地方自治法204条所定の給与が予定しているものを逸脱した趣旨や性格の給与を支給することは同条に違反して許されない。そして,地方公務員の職務は,それ自体,直接又は間接的に住民の福祉の維持・増大に関わるものであり,勤勉な公務の遂行によって,住民の福祉の維持・増大に寄与するものと観念されており,そのような地方公務員の職務の性質上,一定の結果を発生させるべき職責を負うものではなく,もともと成功報酬の支払いを観念し難いこと,同条2項で勤務成績に応じて支給されることが予定されている「勤勉手当」ですら,一定期間における職員の精勤に対する報償として支給されるにとどまり,勤務時間や勤務実態に基づかずに結果として決算上の収支改善があればその結 果そのものについて支払うという成功報酬の性質を含むものとは解されないことに加え,現実に病院事業管理者に対して通常の給与に加えて収支差額の改善額に一定の比率を乗じた成功報酬的な手当を支給している例は全国の公営病院事業において皆無であることにも照らして考えると,特別職の地方公務員である地方公営企業の管理者について,同条2項が「期末手当」その他の手当として成功報酬の支払いを是認しているものとは解し難い。 イ本件加算金の「手当」該当性本件加算金は,条例における名目上は,期末手当加算額とされているが,本件規定を含む条例の制定過程において,本件加算金を成功報酬と位置付けて しているものとは解し難い。 イ本件加算金の「手当」該当性本件加算金は,条例における名目上は,期末手当加算額とされているが,本件規定を含む条例の制定過程において,本件加算金を成功報酬と位置付けて審議されてきたこと(甲4,23,24,25の1,2,甲26,27,28の1ないし7,甲31の2,乙18,19),その給付額は,決算における収支改善額に100分の20を乗じて算出され,給料月額あるいは勤務時間や勤務実態に基づいて算出されるものでなく,多大な精勤があっても,収支改善額がなければ,本件加算金は全く支給されない一方,精勤に値しない勤務実態であっても,結果として収支改善額があれば,本件加算金が支給されるものであって,決算上の収支改善結果そのものに対して支払われる給付であるといえるから,その実質は,収支改善結果に対する成功報酬であると解される。 そして,上記の「期末手当」の性質のほか,被告Aは,本来の期末手当として月額給料の3.55月分あるいは3.5月分の額に相当する期末手当の支給を受けていることにも鑑みると,本件加算金には「期末手当」の性質が含まれていないと認めるのが相当である。 よって,本件加算金は,地方自治法204条2項の「期末手当」に当たらないものというほかない。 また,上記の「勤勉手当」の性質のほか,被告Aは,本来の勤勉手当として月額給料の1.15月分の額に相当する勤勉手当の支給を受けていることにも鑑みると,勤務時間や勤務実態を反映することなく,結果そのものに対して支払われる本件加算金は,地方自治法204条2項の「勤勉手当」にも当たらない。さらに,本件加算金は,同項所定のその余の法定手当にも該当しない。 (3)「給料」該当性被告らは,管理者の職務の特殊性に鑑みると,本件加算金が地方自治法204条1項の「給料」の一部と 当たらない。さらに,本件加算金は,同項所定のその余の法定手当にも該当しない。 (3)「給料」該当性被告らは,管理者の職務の特殊性に鑑みると,本件加算金が地方自治法204条1項の「給料」の一部と解することも可能であると主張する。 この点,同項の「給料」とは,常勤の職員が行う勤務に対する反対給付であると解されるところ,被告Aに対する給料は,当初,改正前条例において行政職の最上級である9級(上限60万2600円)と定められ,その後の改正条例により,月額90万7900円に改められたものであり,この月額90万7900円の給料は,既に管理者の地位の特殊性に基づく増額要素も考慮されたものと認めるのが相当であり,これが被告Aの勤務に対する反対給付として同項の「給料」に該当するものであって,本件加算金のような公務遂行の結果に対する成功報酬的給付は,「給料」には該当しない。 (4)したがって,本件規定による本件加算金の支払いは,法律の規定に基づかない支給であるから,地方自治法204条2項,204条の2に違反する。 (二)本件加算金の支払いの効力(1)地方自治法2条16項,17項によれば,地方公共団体は法令に違反してその事務を処理することができず,これに違反して行った地方公共団体の行為は無効とされる。そして,公企法は地方公営企業の経営に 関して地方自治法,地方財政法,地方公務員法の特例を定めるもの(公企法6条)であるところ,公企法において,地方自治法2条16項,17項の適用除外がされていない以上,地方公営企業においても,上記法条の適用があることとなる。 よって,本件規定による本件加算金の支払いは,地方自治法204条2項,204条の2に反する違法なものとして無効であるといわざるを得ない。 (2)確かに,乙第1ないし第35,第39,第40号 なる。 よって,本件規定による本件加算金の支払いは,地方自治法204条2項,204条の2に反する違法なものとして無効であるといわざるを得ない。 (2)確かに,乙第1ないし第35,第39,第40号証,証人Cの証言,被告A本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,①岡山市病院事業の経営は,毎年数億円の赤字を出し,平成10年度末の累積赤字額は75億円超に上るなど,その経営は深刻な危機に陥っていたところ,有識者から再三提言を受けても,その状況は一向に好転しなかったこと,②岡山市は,同事業の管理者に良き人材を迎えて事態の打開を図ろうと考えたところ,その経歴等から,被告Aは病院経営者として極めて優れた手腕を発揮すると見込まれたこと,③岡山市は,被告Aとの話合いを通じて,収支改善額の20%が期末手当として加算されれば,同被告が事業管理者に就任してくれると考え,同被告にその旨の提案をして事業管理者への就任の承諾を得たこと,④被告Aが岡山市病院事業管理者に就任した後,同事業の医療体制や施設設備の改善が図られた一方,その収支も劇的に改善し,被告Aが,事業管理者に在任中,同事業の改善に大きな功績を挙げたことが認められる。しかしながら,そのような事情があったにせよ,本件規定による本件加算金の支払いが,地方自治法204条,204条の2に反して違法,無効であって許されないものとの法的判断を左右することはできないものというほかない。 二 結論 してみれば,その余の点につき触れるまでもなく,地方自治法242条の2 第1項4号に基づき,被告Aに対し,不当利得金8300万2200円(平成13年度の本件加算額)及びこれに対する甲事件訴状送達の日の翌日である平成14年5月5日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を岡山市に支払うよう求める甲事件原告らの 2200円(平成13年度の本件加算額)及びこれに対する甲事件訴状送達の日の翌日である平成14年5月5日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を岡山市に支払うよう求める甲事件原告らの本件代位請求,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,被告事業管理者に対し,被告Aに対する平成14年度の本件加算金7411万7200円の支払差止めを求める乙事件原告らの請求は,いずれも理由がある。 第四結語以上の次第で,原告らの本件請求はいずれも理由があるから認容すべく,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用し,仮執行宣言の申立てについては相当でないから却下し,主文のとおり判決する。 岡山地方裁判所第1民事部金馬健二裁判長裁判官徳岡治裁判官辻井由雅裁判官
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