- 1 -主文 原告が,被告の数学科教諭(教育職員)として労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 被告は,原告に対し,50万0404円及び内金5万8000円に対する平成17年4月23日から,内金5万8000円に対する平成17年5月23日から,内金12万8803円に対する平成17年6月23日から,内金8万1601円に対する平成17年7月23日から,内金5万8000円に対する平成17年8月23日から,内金5万8000円に対する平成17年9月23日から,内金5万8000円に対する平成17年10月23日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告に対し,100万円及びこれに対する平成17年7月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,これを10分し,その9を被告の負担とし,その1を原告の負担とする。 この判決は,第2項及び第3項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1請求 原告が,被告の数学科教諭(教育職員)として労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 被告は,原告に対し,50万0404円及び内金5万8000円に対する平成17年4月23日から,内金5万8000円に対する平成17年5月23日から,内金12万8803円に対する平成17年6月23日から,内金8万1601円に対する平成17年7月23日から,内金5万8000円に対する平成17年8月23日から,内金5万8000円に対する平成17年9月23日から,内金5万8000円に対する平成17年10月23日から,それぞれ支- 2 -払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告に対し,200万円及びこれに対する平成17年3月24日から支 内金5万8000円に対する平成17年10月23日から,それぞれ支- 2 -払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告に対し,200万円及びこれに対する平成17年3月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 争いのない事実(明らかに争わない事実を含む。)(1)被告は,α学園高等学校(以下「本件高校」という。)等を経営する学校法人であり,原告は,大学を卒業後,昭和53年4月1日,被告に高等学校の数学科教諭(教育職員)として就職し,平成17年3月末日まで,本件高校において数学科教諭としての職務に従事していた。 (2)被告は,平成16年10月30日,理事会の決定であるとして,原告の過去の行為を理由に,「本件高校の目指す経営並びに教育方針に照らして教師としての適格性に欠ける」との理由で,平成17年4月以降,教科の授業並びに部,係及びクラブ顧問などのすべての業務から原告を排除する旨を通知した。 (3)被告は,平成17年3月24日,原告に対し,同年4月1日付けで,原告を教育職員から事務職員に配置転換する旨の命令(以下「本件配転命令」という。)を発した。本件配転命令により,原告の本俸は,60万円(教育職員33号俸)から54万2000円(大卒事務の34号俸)に変更された。 なお,被告においては,当月分の給与は当月22日に支払われることになっていた。 (4)被告の就業規則11条には,「(1項)学園は,業務上の都合により,職員に配置転換(職種の変更を含む。以下異動という。)を命ずることがある。(2項)異動については,本人の希望を参考とし,能力,健康,家庭事情を考慮して公平に行う。(3項)職員は,正当な理由のない限り,異動を拒むことはできない。」との定めがある。 (5)被告は,平成17年6月6日, については,本人の希望を参考とし,能力,健康,家庭事情を考慮して公平に行う。(3項)職員は,正当な理由のない限り,異動を拒むことはできない。」との定めがある。 (5)被告は,平成17年6月6日,原告を同月7日から出勤停止3日間の懲- 3 -戒処分に付した(以下,これを「第1次懲戒処分」という。)。処分通知書(甲6)には,処分理由として,同年5月13日,機密文書であることを知りながら,学校に無断で,生徒の氏名,点数等が記載され,各生徒が絶対に他人に知られたくない個人情報を包含する平成16年度評定一覧表を職員室の教務ロッカーから持ち出してコピーし,そのコピーを他人に示すため,個人情報にいかなる配慮をすることもなくそのまま学校外に持ち出した行為が就業規則32条2ないし5号に該当すると記載されている。同処分に伴い,被告は,3日間の出勤停止期間中の給与相当分7万0803円を6月分の給与から減額して支給した。 (6)原告は,本件配転命令が無効であるとして,「事務職員」としての業務を命ずる業務命令に従う義務のないことの確認及び教育職員としての給与の支払を求める仮処分を申し立てていたが,裁判所は,平成17年6月13日付けで,原告が「事務職員」としての業務を命ずる業務命令に従う義務がないことを認める仮処分命令(以下「本件仮処分命令」という。)を発した。 (7)被告は,平成17年6月14日,本件仮処分命令に基づき,正式に業務内容が決定するまでの業務として,以下の業務命令を発した。 ア名称を職員とし,職員室の名札も職員とする。 イ出勤簿は職員室の教員用の綴りに移動する。 ウ教員の職務である各部・係の補助を行う。 エ指導要録の電子ファイリングによる整理を行う。 オ職員室等の整理整頓を行う。 カ職員朝礼に出席する。 キ校長が必要と認める場合は職員 りに移動する。 ウ教員の職務である各部・係の補助を行う。 エ指導要録の電子ファイリングによる整理を行う。 オ職員室等の整理整頓を行う。 カ職員朝礼に出席する。 キ校長が必要と認める場合は職員会議に出席する。 ク外出に関しては職員用の用紙に記入し,必要以外の外出は慎む。 ケ6月15日は,日直として学校に残り職員室の整理整頓を行う。 更に必要と認められる事柄については決定を細かく検討後指示する。 - 4 -(8)原告は,上記(7)の業務命令のうち,イ,カ,キ及びケについては受け入れるが,ウ,エ,オについては拒否することとし,被告に対し,平成17年6月24日付けでその旨の意思を表明した。 (9)被告は,平成17年7月4日,原告を譴責処分に付した(以下,これを「第2次懲戒処分」という。)。処分通知書(甲13)には,処分理由として,「校長が必要と認める場合は職員会議に出席する。」との同年6月14日付け業務命令に従わず会議に出席し,校長からの退席命令にも従わなかったことが就業規則30条4号に該当すると記載されている。 また,被告は,同年7月4日,同年6月14日付け業務命令のうちウ,エ,オ,キ,クについて履行されていないとして,直ちに同命令に従って業務に就くことを命じた。 (10)被告は,平成17年7月9日,原告を同月11日出勤停止1日間の懲戒処分に付した(以下,これを「第3次懲戒処分」という。)。処分通知書(甲15)には,処分理由として,同年6月14日付け及び同年7月4日付けの「校長が必要と認める場合は職員会議に出席する。」との業務命令に再度違反して会議に出席し,校長からの退席命令にも従わなかったこと,指導要録の電子ファイリングによる整理も行わず,その他の業務命令についても依然行われていないことが就業規則30条4号に該当すると記載されて 反して会議に出席し,校長からの退席命令にも従わなかったこと,指導要録の電子ファイリングによる整理も行わず,その他の業務命令についても依然行われていないことが就業規則30条4号に該当すると記載されている。 同処分に伴い,被告は,1日間の出勤停止期間中の給与相当分2万3601円を6月分の給与から減額して支給した。 また,被告は,同年7月9日,同年6月14日付け(ウ,エ,オ,キ,ク)及び7月4日付け各業務命令が履行されていないとして,直ちに同命令に従って業務に就くことを命じた。 原告の主張(1)被告のした本件配転命令,第1次懲戒処分,第2次懲戒処分及び第3次懲戒処分はいずれも無効である。原告と被告との間の労働契約は,就業規則- 5 -11条1項とは関わりなく,原告の職種を「数学科教諭(教育職員)」と特定して締結されたものである。そして,事務職員への配置転換は,この労働契約に違反したものであり,人事権の濫用として無効である。 もっとも,原告は,職種を「数学科教諭(教育職員)」に特定した労働契約においても,解雇に相当する事由があった場合に,罪一等を減じて事務職員に配置転換することまでを否定するつもりはない。しかし,本件において原告には解雇に相当する事由は存在しないのであるから,このような配置転換を認める余地はない。 (2)本件配転命令及び上記各懲戒処分はいずれも無効であるばかりでなく,不法行為をも構成するものである。特に,第2次及び第3次懲戒処分は,本件仮処分命令に反するものであり,違法であることは明らかである。これらの不法行為により,原告は精神神経科への通院を余儀なくされ,現在も通院している。原告の被った精神的苦痛を金銭に換算すると,200万円を下ることはない。 (3)よって,原告は,被告に対し,数学科教諭(教育職員)として労働契約 神神経科への通院を余儀なくされ,現在も通院している。原告の被った精神的苦痛を金銭に換算すると,200万円を下ることはない。 (3)よって,原告は,被告に対し,数学科教諭(教育職員)として労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,平成17年4月分及び5月分給与の減額分各5万8000円,同年6月分減額分及び第1次懲戒処分に伴う減額分12万8803円,同年7月分減額分及び第2次懲戒処分に伴う減額分8万1601円,同年8月分ないし10月分減額分各5万8000円の合計50万0404円及びこれに対する各支払日の翌日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金並びに慰謝料200万円及びこれに対する不法行為の日である平成17年3月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める。 被告の主張(1)本件配転命令の有効性本件配転命令は,以下のとおり,原告について教育職員としての資質を著- 6 -しく欠くことが明らかな事実が存在したために,就業規則11条1項に基づいて行ったものである。 ア授業能力が低かった本件高校は,生徒1人1人を大切にし,人間形成の大切な時期の生徒の成長を保護者と教職員が一丸となって支えてきた学校であり,数学教育もその方針に基づき,個々の生徒の能力や適性に合わせてなされてきている。 ところが,原告は,生徒に教科内容を真に理解させようとする姿勢を持ち合わせておらず,数学がわかってきた生徒により有効な進路を開き,数学がよくわからない生徒に数学のおもしろさや有益性を示して学習意欲を高めることが全くできないまま平成17年を迎えたのである。 (ア)1学年の数学1学年の数学は授業時間数が多く,以後の基礎ともなるので,必要な教育を確実に行いうるように,教員間の連携をとり,クラス間に差が出 とが全くできないまま平成17年を迎えたのである。 (ア)1学年の数学1学年の数学は授業時間数が多く,以後の基礎ともなるので,必要な教育を確実に行いうるように,教員間の連携をとり,クラス間に差が出ないように全員が心がけている。ところが,原告は,基本問題の反復練習を生徒に課すことを怠り,また時として難問を課して生徒に失望感を与えて自分が得意になるだけの授業をしていた。その結果,学力差がなく割り振られた各クラスの定期試験の結果の比較において,原告の担当したクラスの平均点が他のクラスの平均点より10点以上も低くなるという有様であり,原告には1学年を担当させることは避けなければならなくなった。 (イ)理系クラスの数学理系クラスの生徒であっても基礎学力が十分でない者がかなりいるから,計算演習や基本事項を確認する復習が不可欠である。大学進学に向けては相応の受験指導もしなければならない。そのためには補習や課外授業を積極的に行わなければならない。ところが,原告は,専任教員の中でただ1人長期休業中の課外授業に加わらず,「補習をやるなんて普- 7 -段の授業をちゃんとやっていないみたいじゃないか」「受験勉強などは予備校でやればいいので学校で課外授業などをやる必要はない」というのが持論であったから,理系クラスを担当させることも避けなければならなかった。 (ウ)授業時間の不足原告は,欠勤遅刻が多く,また当日の連絡で授業を休むことが多かった。そのため,他の教員による代替等ができず,自習となることが多かったが,その授業時間の不足を補習で補うこともなかった。 (エ)生徒の評価平成15年度,16年度に実施したアンケートによれば,原告の授業について,「自己の世界に入って授業をしているので睡眠の授業になっている。ただ平常点を20点以上つけてくれる。」「教 (エ)生徒の評価平成15年度,16年度に実施したアンケートによれば,原告の授業について,「自己の世界に入って授業をしているので睡眠の授業になっている。ただ平常点を20点以上つけてくれる。」「教師を辞めた方がいいと思います。少なくともこのクラスの担当はやめて下さい。」「授業内容不明,授業の説明の仕方,進め方が非常に悪い。」「何を話しているのかわからない。」「試験監督に遅刻しないで下さい。」という評価がされており,これは他の教員には見られないことであった。要するに原告の授業はわからないのであって,このことは教育職員としての不適格性を示すものである。 (オ)保護者の評価保護者会の席上で,原告の授業について生徒がわからないと言っているとの不満が多く述べられており,さらには後述する授業中の携帯電話による通話が問題とされた。 (カ)学級担任としての能力,同僚の評価原告が学級担任をすると,学級に対して生徒の着席場所を指定しないばかりか固定さえもせず,掃除の指示もしないため,生徒や保護者からの批判も強く,平成6年度からは学級担任をさせることができなくなっ- 8 -ていた。原告自身もそれを当然のこととして受け止め,何の異議も申し出ていない。同僚の教員の中からも,「担任を持たせないでほしい」「学年に入れないでほしい」「部に入れないでほしい」「クラスの授業を担当させないでほしい」との要望が管理職に寄せられていた。 イ同僚教職員との協調性が欠如していた(ア)授業における協調性の欠如前述のように原告は,当日の連絡で授業を休むことが多かったため,クラス間の成績の差が大きく自習時間が多いことを見かねた他の教員が自習課題を作ったり,代行で問題演習を行ったこともあった。ところが,出勤した原告は,感謝の言葉を述べないばかりか,あきれたことに提出され ス間の成績の差が大きく自習時間が多いことを見かねた他の教員が自習課題を作ったり,代行で問題演習を行ったこともあった。ところが,出勤した原告は,感謝の言葉を述べないばかりか,あきれたことに提出された自習課題を見もせずにゴミ箱に捨てた。原告の欠勤による自習授業を,他教科の教員であるそのクラスの担任が指導したことに対して原告は「越権行為だ」と抗議した。原告は,冬期や夏期の課外授業を長らく行っておらず,そのしわ寄せは他の教員に及んでいるのであり,協調性がないことは明らかである。 (イ)ホームステイ研修旅行妨害本件高校は,歴史的にも英語教育に力を注いできたところ,平成4年度はオーストラリアにおけるホームステイ研修旅行を実施した。これは希望者に対するものであったが,英語科の教員が努力を重ねて作り上げた優れたものであった。しかるに,原告は,参加費が高いとの理由をつけて,生徒に不参加を呼びかけてその妨害をした。そのため,原告が担任をしていたクラスからは1人の参加者も出なかった。これは同僚教員や生徒に著しい不信感を抱かせるものであった。 (ウ)学校説明会学校説明会は,生徒や保護者にとっては志望校決定の大きな要素となっており,私立学校を運営する上で重要な学校行事であり,全教職員が- 9 -協力して行っている。ところが,原告は例えば退職勧告のなされた平成16年秋の学校説明会においては,与えられた受付担当業務を放棄して生徒ホールの椅子に腰掛けて休んでいたし,それまでも協力する姿勢を示したことはなかった。 (エ)引越の手伝い本件高校においては,校舎改修のため平成16年9月に仮校舎に移転したが,その引越作業においても,原告は喫煙室でタバコを吸って時間をつぶすだけで,仕事を手伝う協調性は全く見せなかった。 ウ生徒に対する教育的愛情がなく生徒の範たり ため平成16年9月に仮校舎に移転したが,その引越作業においても,原告は喫煙室でタバコを吸って時間をつぶすだけで,仕事を手伝う協調性は全く見せなかった。 ウ生徒に対する教育的愛情がなく生徒の範たりえない(ア)授業時間中の携帯電話での私用通話原告は,平成12年ころから授業時間中に授業を放棄して携帯電話を使用して私用の通話をしており,これは平成14年ころまで続いていた。 このことは保護者会でも問題となり,当時のPTA役員から学年主任に苦情の申出がなされた。また,試験監督中に突然携帯電話の着信音が鳴り,原告が廊下に飛び出して電話に出る様子を各クラスの試験監督が廊下に顔を出して目撃してあきれかえったこともある。 (イ)学園車両用駐車場の不法占拠本件高校には敷地内に駐車場があるが,同駐車場は被告に管理権があり,学園所有の車両を優先して駐車させることに何の疑問もなく,仮に労働組合が何かを要求しても,協定等がされるまでは被告の管理権に何らの制約も生ずる余地がない。ところが,原告は,原則として認められておらず,かつ届出通勤方法と異なる自家用車通勤を続けたばかりか,同駐車場を「自分も仕事で学校に来るのであるから駐車してもよいはずで,その場合は学園車両は他へ駐車すればよい。早い者勝ちである。」との理屈でしばしば不法占拠した。 (ウ)定期試験結果の改ざん- 10 -本件高校では,学期の成績が30点以下の生徒には,次の学期への準備として補習授業を学期末に行っているところ,原告は,平成12年の定期試験において,数名の生徒の点数に加点をして補習授業を回避しようとした。このときは,生徒が実際にとった点数より多く得点が記入されていたので担任教員に相談し,原告も訂正に応じている。 (エ)柔道部の顧問として生徒を傷つける発言原告は,平成15年度において,柔 うとした。このときは,生徒が実際にとった点数より多く得点が記入されていたので担任教員に相談し,原告も訂正に応じている。 (エ)柔道部の顧問として生徒を傷つける発言原告は,平成15年度において,柔道部の顧問をしていたところ,原告が引率した公式戦に出場した部員が第3回戦で敗退し,顧問である原告に詫びると,原告は嬉しそうに,「これで次の引率がなくなってよかった」と発言し,当該生徒にかなりのショックと怒りを与えた。 (オ)職員会議での発言本件高校では,生徒に居眠りをさせない授業を展開するよう努力しているところ,平成16年9月15日の職員会議において,原告は,「1人も居眠りをしていない授業がどれだけあるのか。そのような生徒は放置しておけばよい」との暴言を吐いて会議の真剣な雰囲気を壊してしまった。職員会議での自由な発言が一つ一つ評価の対象となるものではないが,このような暴言は自由な発言の範囲を超えるものであり,生徒に対する教育的愛情がないことを如実に示すものである。 (カ)喫煙本件高校では定められた場所以外での喫煙は禁じられているところ,原告はこれに違反して校舎の物陰やガレージで喫煙しているところを目撃されている。これは不体裁この上ないことであって,生徒の範となり得ない。 (キ)職業意識の欠如原告は,授業の空き時間は自由に外出してよいとの理解で外出していた。生徒がこれを知ったらどう思うか。「岩崎先生ならそうだろう」と- 11 -思うのかもしれないが,これまた生徒の範たり得ないことはいうまでもない。 以上の事実に対し,被告の理事や先輩教員は,原告に対し,事実が判明した場合には注意して改めさせてきたが,そもそも20余年にわたり教育職員であった者が,このようなことで注意を受けなければならないということ自体,異常この上ないことである。原告 原告に対し,事実が判明した場合には注意して改めさせてきたが,そもそも20余年にわたり教育職員であった者が,このようなことで注意を受けなければならないということ自体,異常この上ないことである。原告は,教育職員として,生徒に教科内容について理解させるという態度に欠け,生徒や保護者から授業がわからないとの苦情が絶えずあり,平成16年10月末においては,理事会として,半年先の新年度に備えてあらかじめ原告に対し,教育職員を続けることはできない旨と退職を勧告する旨を告げたのであるが,その後も原告の勤務状況が改まったということはない。 被告の就業規則は,職員の範囲を,教育職員,事務職員,用務等と定めた上で(3条2項),上記のとおり11条1項において「学園は,業務上の都合により,職員に配置転換(職種の変更を含む)を命ずることがある。」と定めており,実際にも必要に応じて職種変更を命じてきている。 教育職員として不適である原告に対し,当然に解雇するという措置をとらずに,被告としては,温情ある人事措置を講じているのである。 (2)第1次懲戒処分について処分理由は,前記のとおりであるが,被告が処分量定の上で特に重大と考えたのは,原告が事情聴取において,評定一覧表は「私信であって公簿ではない」から自由に持ち出してよいと主張して反省の色が全くなかったことである。生徒に対する愛情がひとかけらもなく,生徒の個人情報,それも成績そのものをこのように扱うことを明言する学校職員に懲戒処分は当然である。 教育職員であればより厳しい処分が想定されるところである。 (3)第2次懲戒処分及び第3次懲戒処分について原告は,命ぜられた業務の履行を意図的に怠り,剰え不必要に職員会議に- 12 -出席しようとしたため,2度にわたって懲戒処分を受けたのである。 (4)不法行為について 分及び第3次懲戒処分について原告は,命ぜられた業務の履行を意図的に怠り,剰え不必要に職員会議に- 12 -出席しようとしたため,2度にわたって懲戒処分を受けたのである。 (4)不法行為について争う。本件配転命令,第1次懲戒処分,第2次懲戒処分及び第3次懲戒処分のいずれも有効であることは上記のとおりであり,これらが不法行為を構成することはない。 被告の主張に対する原告の反論(1)本件配転命令について被告は,本件配転命令の理由として,原告が教員としての適格性を欠く旨主張するが,この人事評価は誤りである。この誤った人事評価に基づく事務職員への配置転換は,人事権の濫用として無効である。 ア授業能力が低いとの主張について(ア)1学年及び理系クラスの数学について被告の主張は争う。原告は数学ができる。高校の数学教師で数学に関する論文を雑誌に掲載したり,英語で論文を書いたりする者は稀であり,原告はその稀な教師の1人なのである。また,クラスの平均点が低かったとの主張は不知。原告が1学年の数学の授業を担当していたのは平成10年ころまでであるが,当時のクラスの平均点がどのようになっていたかは一切明らかにされておらず,原告は認否のしようがない。要するに,原告の担当クラスの平均点が低い話も,1学年の授業を持たせない話もすべてa校長,b主任を含めた数学科の教員らが陰でこそこそと行った話である。 (イ)授業時間の不足について原告の遅刻早退等が他の教諭と比較して多いか少ないかは原告には不明である。しかし,原告はこれまで遅刻早退等を理由に懲戒処分を受けたことはない。 (ウ)生徒の評価について- 13 -被告の提出するアンケート(乙6)の平成15年度のグラフを見ると確かに原告の評価は低かったが,本件配転命令までにこれが改善されていることも同 たことはない。 (ウ)生徒の評価について- 13 -被告の提出するアンケート(乙6)の平成15年度のグラフを見ると確かに原告の評価は低かったが,本件配転命令までにこれが改善されていることも同アンケートから明らかである。被告の主張するアンケートは,無記名であることを奇貨として教師に対する罵詈雑言を並べただけのものであり,教育者としてはこのようなアンケートを書いた生徒が存在したことを恥ずべきである。 むしろ,被告が平成17年3月ころ,生徒を対象に行った「平成16年度3学期授業アンケート」の結果(甲21)を見れば,原告の授業が生徒達に非常に評価されていることは明らかであり,被告の主張は理由がない。 (エ)保護者の評価について原告も保護者のみならず生徒,同僚から原告の授業に対する不満を耳にしたことはあるが,その内容に理由があり,改善すべきと思われる点は改善してきている。授業に対する不満は原告に限られたものではなく,他の教員に対しても存在するのであって,原告に対する不満が他の教員の場合に比して殊更に多いという立証はなされていない。また,保護者や生徒からの不満の多寡は必ずしも授業の能力を評価する基準にはならない。 (オ)学級担任としての能力,同僚の評価について被告の主張は争う。原告は,平成4年4月から平成6年3月までの2年間,本件高校の教員労働組合の組合長を務めていた。これは同僚の教員が原告に信望を寄せていることを意味する。さらに,本件配転命令に際しても,組合は原告への協力を決議している。このような事実は,原告が同僚教職員と円滑な人間関係を築いていることの現れである。 イ同僚教職員との協調性が欠如しているのとの主張について(ア)授業における協調性の欠如について- 14 -(原告の陳述済み準備書面にはこの点の主張はないが,平成1 築いていることの現れである。 イ同僚教職員との協調性が欠如しているのとの主張について(ア)授業における協調性の欠如について- 14 -(原告の陳述済み準備書面にはこの点の主張はないが,平成18年9月25日付け準備書面6頁で引用する陳述書の中に甲第32号証を含めるのを失念したものと解されるので,同号証の記載をここに摘示する。)他の教員が作成し生徒が取り組んだ課題を中も見ずに捨てたとの主張のうち,同課題を生徒に返却しなかったことは認めるが,これを廃棄したかどうかは記憶にない。ただし,必要のないものなので何らかの形で処分したことは事実である。原告は,次の授業の予定を考慮して,自習に先立ち,教科書のポイントとなるページを指定しておいた。ところが,同僚の教員が勝手に自習課題なるものを配布して回収した。これは原告の授業の進度と無関係に配布回収されたものであり,返却しても混乱を招くだけであるので,返却はしなかった。いずれにせよ,この件に関して非難されるべきは原告の授業計画に勝手に介入した他の教員であって,原告ではない。 原告がここ数年補習授業を行っていないことは事実であるが,これは原告が補習授業を拒否したからではなく,他の数学科教員が原告に補習授業が必要となるようなクラスの授業を担当させなかったからであって,原告が非難される理由はない。 (イ)ホームステイ研修旅行妨害について研修旅行を企画した教員らが,これを自画自賛することを非難するつもりはない。しかし,原告は,これが当時存在した海外ホームステイ旅行の中でベストなものだとは思っていなかった。そこで,生徒から質問されて正直にその旨答えたまでのことであり,何ら非難には価しない。 更に良いホームステイ旅行が存在するにもかかわらず,被告の旅行がベストであると生徒に話すことこそ教師として許され そこで,生徒から質問されて正直にその旨答えたまでのことであり,何ら非難には価しない。 更に良いホームステイ旅行が存在するにもかかわらず,被告の旅行がベストであると生徒に話すことこそ教師として許されざることである。 (ウ)学校説明会について- 15 -原告は,囲碁部入部希望の中学生を顧問の教員に会わせるなど,精一杯協力した。 (エ)引越の手伝いについて引越の際に原告が特に仕事を怠けていたとの事実はない。 ウ生徒に対する教育的愛情がなく生徒の範たり得ないとされた件について(ア)授業中の携帯電話の私用通話について携帯電話を使用したのは,原告が当時引きこもりの子を預かっていたからである。パソコンのメールで数学を教えていただけの高校生が,突然に兵庫県から原告の住む横浜まで原告を頼って出てきたのが,きっかけである。原告は,当然のこととしてその子の両親にも連絡したが,本人が精神的に不安定な状態にあり,本人が強く希望したこともあって,原告がしばらくその子を預かることになった。このような場合,この子を預かることを拒否することは可能である。しかし,原告がこれを拒否すれば,この子は自殺をしてしまったかも知れない。本人のためを考え,この子を預かることとした原告の行為は賞賛されることはあれ,非難されるべきことではない。教育者としては当たり前のことである。 このような事情で,原告は,何回か授業中に携帯電話に出たことはある。しかし,なぜ原告が携帯電話に出るかについては,生徒に事情を説明していた。これは社会における実践の教育である。普通の生徒は,原告が見ず知らずの引きこもりの子を引き取っていることを知れば,原告を尊敬することはあっても,これを非難することはない。さらに,その子の生命にかかわるような事情の下で,原告が何回か携帯電話に出たところで,「先生も の引きこもりの子を引き取っていることを知れば,原告を尊敬することはあっても,これを非難することはない。さらに,その子の生命にかかわるような事情の下で,原告が何回か携帯電話に出たところで,「先生も大変だな」と受け止めるのが普通で,授業の妨げになるとして非難する生徒はいない。原告は,学校において,人間としての優しさを教え,またこれを実践したのみである。 (イ)学園駐車場の不法占拠について- 16 -校内の駐車場の使用方法について明確なルールはなかった。唯一あったのは,身体障害のある教諭が学校に来る日はその教諭のために駐車場を空けておくということのみであった。そのため,原告に限らず,他の教員も必要に応じて校内の駐車場に駐車していた。このように,校内の駐車場に駐車したことは何らルールに反する行為ではなく,教員としての適格性の問題にはならない。 (ウ)定期試験結果の改ざんについてこのような事実はない。平常点についていうなら,教員全員が「操作」するものである。他の教員ら同様,原告も生徒のためを思っての「操作」をすることは多少なりともあるが,決して補習授業をしなくて済むように「操作」しているのではない。どれも生徒のためを考えてやっていることであり,このようにいわれるのは非常に腹立たしい。 この補習制度は,1週間学校に来て苦労した生徒には31点をやるという一種の罰ゲームであり,実際のところ原告はこの補習制度には反対であるが,そんな原告ももちろん,過去に生徒達に赤点を付けて補習をしたことはある。原告は,授業中に,「僕は赤点は付けない。赤点の威嚇によって授業を維持するのは嫌だから」と話したことがあるので,生徒達がそれを誤解することはあったかも知れない。しかし,同時に「赤点を取るのは余程のことがなければあり得ない。ごく普通に勉強すれば,自然に赤 て授業を維持するのは嫌だから」と話したことがあるので,生徒達がそれを誤解することはあったかも知れない。しかし,同時に「赤点を取るのは余程のことがなければあり得ない。ごく普通に勉強すれば,自然に赤点はクリアされるものだ」とも話している。 (エ)柔道部の顧問として生徒を傷つける発言について平成15年度に,柔道部の生徒が公式戦第3回戦で敗退した際,同生徒は顧問である原告に敗戦を詫びてきたので,原告は,「そんなにすまながることはない,そんなに気にしなくていい」という意味で,「これで次の引率がなくなってよかった」と発言したのである。もし,原告の発言によって同生徒が「かなりのショックと怒り」を覚えたのであった- 17 -ら誤解であるし,同生徒自身又は担任教員なりが発言の真意を問い質してくれればすぐに誤解を解いたであろう。しかし,当時同教員からそのような話は全くなかった。 (オ)職員会議での発言について平成16年9月15日の職員会議において,ある教員が,授業中居眠りをしてしまう生徒,ノートを取らない生徒の指導方法について困っていることを告白し,どうしたらよいかについて校長に意見を求めたことがあった。これに対し,校長が,「それなら保護者か担任にその生徒の横に立っていてもらいましょうかね」と発言したため,原告は,「もうだめだ」と思い,手を挙げて発言し,「担任に横に立っていてもらうというが,担任自身も普段から授業を持っているわけだし,そうでなくても忙しい。それなのに横に立っていてもらうなどとは何事だ。また,親に立っていてもらうなどとはもってのほかである。私自身は,自分の授業では寝ることは許していないが,しかしよく考えるとこれは昔からある問題であり,なぜここまでしてこのことをことさらに大きく取り上げるのか理解に苦しむ」という趣旨の発言をした。こ 。私自身は,自分の授業では寝ることは許していないが,しかしよく考えるとこれは昔からある問題であり,なぜここまでしてこのことをことさらに大きく取り上げるのか理解に苦しむ」という趣旨の発言をした。これは,居眠りを正当化せよとの意味合いからでは断じてない。そもそも原告は,居眠りをする生徒を個々の事情が明白でない限りはそのまま放置したりはしない。 居眠りをするのは論外だと考えているし,その会議でもそのように発言した。 (カ)喫煙について原告を含めた喫煙者である教員が校門付近で喫煙していたこと,これが職員会議で決めたルールに違反していないことはa校長も認めており,何ら非難されるべきことではない。 (2)第1次懲戒処分について第1次懲戒処分は懲戒権の濫用として無効である。原告が持ち出した評定- 18 -一覧表は,原告が自己の担当する授業における各生徒の評点を一覧にしたもので,原告が個人所有のパソコンで作成したものであり,これに原告が確認の捺印をしたものが職員室の教務ロッカーに保管してあった。この教務ロッカー内にある評定一覧表は,教育職員であれば誰でも必要に応じて閲覧,コピーが可能なものであり,これをコピーしたところで何ら非違行為として責められるべきものではない。原告は,これを裁判所に証拠として提出する目的でコピーを取り,仮処分事件の代理人でもあった本件の原告代理人にこれを渡した。原告代理人は,この評定一覧表が真正であることを担保する必要があったこと,仮処分事件であり非公開とされていること,同事件の相手方が当該一覧表の保管者である被告であることから,個人情報が第三者に渡る危険はないと考え,あえて個人名を隠すことなく裁判所に提出した。 このように,原告の行為は何ら懲戒処分の対象となる類のものではない。 (3)第2次懲戒処分及び第3次懲戒処分 ら,個人情報が第三者に渡る危険はないと考え,あえて個人名を隠すことなく裁判所に提出した。 このように,原告の行為は何ら懲戒処分の対象となる類のものではない。 (3)第2次懲戒処分及び第3次懲戒処分について被告の平成17年6月14日付け及び同年7月4日付け業務命令の「校長が必要と認める場合は職員会議に出席する。」との条項は,本件仮処分命令に反する違法なものであるから,この業務命令に反したことは懲戒処分の理由とはなり得ない。 第3当裁判所の判断 本件配転命令の有効性(1)原被告間の労働契約の性質原告は,就業規則11条1項の定めにかかわらず,原被告間の労働契約は,教員という職種に限定されたものであり,他の職種には一切変更することが認められず,本件配転命令は無効である旨主張するが,原被告間の労働契約に就業規則11条1項の定めを排除する旨の特約が存在することを認めるに足りる証拠はないから,同主張は採用することができない。 もっとも,教員という職業は高度の専門性を有するものであり,教員とし- 19 -て労働契約を締結した原告に対して事務職員への配置転換を命ずることは,解雇にも匹敵するほどの重大な処分であるから,これを行うためには,解雇にも匹敵するほどの高度の必要性がある場合であって,かつ適正な手続を経た場合でなければならないというべきである。そして,このこと自体は被告も争わないので,以下,解雇にも匹敵するほどの高度の必要性及び適正な手続を経たことが認められるか否かを検討することとする。 (2)授業能力についてア授業能力そのものについて被告は,原告の授業内容について,アンケート結果を援用して,生徒の理解を全く無視した授業を展開することが多くあったこと,原告の担当したクラスの平均点が他のクラスよりも10点以上低かったこと,授業内容 告は,原告の授業内容について,アンケート結果を援用して,生徒の理解を全く無視した授業を展開することが多くあったこと,原告の担当したクラスの平均点が他のクラスよりも10点以上低かったこと,授業内容がわからないとの声が各クラスから上がり,保護者会でもたびたび取り上げられていたこと等を主張し,a校長の陳述書(乙2)にはこれに沿う記載もある。 まず,アンケート結果について検討すると,乙第6号証によれば,本件高校では平成15年度及び平成16年度の各学期ごとに生徒に対するアンケートを実施したこと,同アンケートの内容は,教員の評価に関する質問項目として,「先生の声の大きさはちょうど良いと思いますか」「先生の説明はわかりやすいですか」「先生の黒板の使い方は良いと思いますか」等合計12項目につき,「はい」「どちらかといえばそう思う」「どちらかといえばそう思わない」「いいえ」で答えるほか,授業についての感想,要望を記載するという内容のものであったこと,その結果によれば,同じ科目を担当した他の教員と原告とを比較したところ,平成15年度の数Ⅱ(高2)及び数C(高3)については明らかに原告の評価が低く,これは年度を通じてほとんど変化がないのに対し,平成16年度の数A(高1),数Ⅱ(高2)及び数A(高2)については1学期は他の教員とそれほどの- 20 -差はないが,2学期,3学期と進むにつれて,他の教員にはほとんど変化がみられないのに対し,原告の評価が次第に高くなっていることが認められる。この結果をみる限り,平成15年度については明らかに劣る評価となっているといわざるを得ないが,平成16年度については他の教員と遜色がないかむしろ上回っているということができる。ただ,生徒に対するアンケート結果は教員としての授業能力を判断する際の資料の1つでしかないと考えら ざるを得ないが,平成16年度については他の教員と遜色がないかむしろ上回っているということができる。ただ,生徒に対するアンケート結果は教員としての授業能力を判断する際の資料の1つでしかないと考えられる上,証拠(乙8)によれば,本件高校では,進路別コース,習熟度別コースに分かれたクラス編成をしていることが認められるところ,それぞれのクラスごとに数学という科目への動機付けも異なると考えられるから,同じ授業をしていてもクラスによってその評価が異なることが考えられるにもかかわらず,上記結果は必ずしも同一条件の下での比較か否かが明確でないから,結局のところ上記結果だけからは原告の授業能力は未だ不明であるといわざるを得ない。 また,平均点の低さ,保護者会での意見についての各陳述は,いずれも客観的証拠に基づかないものであり,証拠価値に乏しく,結局のところ原告の授業能力については不明というほかない。また,これほどまでに原告の授業内容について問題意識を持っていたのであれば,注意を喚起する等の措置を全くとっていなかったというのはむしろ学校として怠慢であるし,それを本件配転命令の理由とすることは手続的にも適正を欠くといわざるを得ない。 また,a校長は,証人として,校長に就任する以前に原告の所属する数学科教諭の1人としても,原告の授業内容に問題があること,数学科という教員団の一員としての協調性のなさについて問題意識を持っていたといいつつ,何らこれを改めるよう進言したりしたことも,学校当局に対して働きかけたこともなく,教頭に就任した平成14年以降も管理職の一員として原告に対して指導ないし注意をしたことはないと証言しているのであ- 21 -って(証人a(以下「a証人」という。)の証言調書14頁),真に原告の授業内容及び協調性のなさについて問題があったのであれ 原告に対して指導ないし注意をしたことはないと証言しているのであ- 21 -って(証人a(以下「a証人」という。)の証言調書14頁),真に原告の授業内容及び協調性のなさについて問題があったのであれば,当然に取るべき措置を誰もとっていなかったことは明らかであるし,むしろそのような措置を誰もとっていなかったことに照らすと,そのような事実がなかったのではないかとすら疑われるところである。もっとも,a校長は,証人として,授業に対する生徒又は保護者からのクレームについては,教科会で適宜原告に対して生徒又は保護者から不満が出ている事について話をした旨証言するが(同14頁),これに対する原告の反応については記憶にないと答えるなど,そもそも不満が出ている旨本当に話したのかすら疑わしいのであって,同証言は採用することができない。 なお,この点に関し,a証人は,事実上の注意,始末書,懲戒処分等を科したとしても原告が教員としての適格性を回復するような努力をするとは思えなかったと証言するが(同32頁),本件配転命令は教員としての原告を解雇するにも匹敵する処分であり,その処分に先立ってこれらにより努力を促すことはいわば必要的というべきであって,上記証言は何ら上記判断を左右しないというべきである。 また,被告は,本件高校においては生徒の学力アップのために課外授業を行っているところ,原告はこれについても参加していなかったと主張する。しかし,証人b(以下「b証人」という。)は,原告の授業内容に問題があり,1年生を担当させると,他の教員が担当したクラスに比して平均点が異常に低くなることがあり,これでは2年次以降の学習の妨げとなり,ひいては数学嫌いを助長することになりかねないため,1年生を担当させることはできず,他方,2,3年生の理系クラスは高度な内容を目指しつつも 低くなることがあり,これでは2年次以降の学習の妨げとなり,ひいては数学嫌いを助長することになりかねないため,1年生を担当させることはできず,他方,2,3年生の理系クラスは高度な内容を目指しつつも基本的事項の反復もしなければならず,それも原告には無理であるため,結局相対的に難易度の低い2,3年生の文系クラスか国際英語コースしか担当させることができなかった旨,そしてこれらのクラスは課外- 22 -授業の必要性が低いため,特に数学科として原告に対して課外授業を依頼したこともなく,このように至った理由について原告に伝えたことはなかった旨証言する(同人の証言調書7,9頁)。仮に,同証人の証言どおり原告の授業内容に問題があったとしても,原告の現に担当していたクラスの課外授業の必要性が低かった以上,依頼もしていないのに課外授業に参加しないことを非難することはできないばかりでなく,その理由を原告に伝えたことはなく,原告としては何ら改善の機会は与えられていなかったというのであるから,本件配転命令の理由とすることはできないというべきである。 そして,a証人は,その理由として,原告は数学科教諭の中で信頼がなかったため,原告に割当をすることができなかった旨を証言するが,そのような原告の姿勢に対して学校当局はもちろんのこと,数学科においても誰1人注意をして本人の意欲を喚起する等の措置はとってこなかったことはa校長自身が証人として認めるところであって(同人の証言調書8頁),課外授業を担当しなかったことについても,本件配転命令の理由とすることはできないといわざるを得ない。 イ学級担任としての能力について被告は,原告が学級担任をすると,学級に対して生徒の着席場所を指定しないばかりか固定さえもせず,掃除の指示もしないため,生徒や保護者からの批判も強かったと主 ない。 イ学級担任としての能力について被告は,原告が学級担任をすると,学級に対して生徒の着席場所を指定しないばかりか固定さえもせず,掃除の指示もしないため,生徒や保護者からの批判も強かったと主張する。乙第5号証にはこれに沿う陳述もあるが,同陳述を裏付ける客観的証拠は存在せず,同陳述のみでは同主張を認めるには足りない。 ウその他原告の協調性について,b証人は,原告が協調性に乏しく,原告と同じ学年の他クラスを受け持つのは嫌だという声が数学科教員の間から上がっていたと証言するが,これは数学科教員が集まる教科会の席ではなく,数- 23 -学科主任であるbに対して個別に訴えがあったということであり,同人もこれを受けて原告に注意を促す等の措置はとらなかったというのであるから(同人の証言調書8頁),協調性の欠如についての同僚の評価という点についても本件配転命令の理由とすることはできないといわざるを得ない。 なお,被告が原告の授業能力が低かったことの1つとして挙げた授業時間数の不足については(3)において述べる。 (3)授業における協調性について被告は,原告に欠勤が多く,突然の欠勤については他の教員が自習課題を作成して生徒に課したこともあったところ,後日机上においてあった生徒から提出された同課題を中身も見ずに捨てたことがあったと主張し,b証人は,同主張に沿う証言をする(同人の証言調書4頁)。 アまず,欠勤については,乙第6号証によれば,平成11年度病欠6日,欠勤1日,遅刻16日,早退4日,平成12年度病欠10日,遅刻4回,早退2回,平成13年度病欠6日,遅刻6回,平成14年度病欠3日,遅刻14回,早退2回,平成15年度事故欠3日,病欠1日,遅刻13日,早退7回,平成16年度遅刻2回,早退3回があったことが認められ,決して少ないとはいえな 欠6日,遅刻6回,平成14年度病欠3日,遅刻14回,早退2回,平成15年度事故欠3日,病欠1日,遅刻13日,早退7回,平成16年度遅刻2回,早退3回があったことが認められ,決して少ないとはいえないが,これらのみでは本件配転命令の理由としては薄弱であるといわざるを得ない。 イ次に,課題を捨てた件について,原告もこれを処分した事実については争わず,原告は,原告の進度を無視して勝手にそのような課題を課した教員を非難するが,当該教員としては何もせずに生徒を放置することができず見かねてしたことであろうから,何も手当をせず突然欠勤した原告が当該教員を非難するのは筋違いであるばかりでなく,中身も見ずに捨てるということは課題に取り組んだ生徒に対しても失礼であって,この点については生徒に対する愛情が欠如しているとの被告の主張にも理由があると思われる。しかし,この点についても,そもそもいつの出来事か不明である- 24 -ばかりでなく,被告から何らの注意も与えられていないのであり,本件配転命令の理由とすることはできないといわざるを得ない。 (4)ホームステイ研修旅行の妨害について証拠(乙2,5,a証人の証言)によれば,本件高校は歴史的に英語教育に力を注いできたこと,その一環として平成4年にオーストラリアへのホームステイ研修旅行を企画したこと,原告は,同研修旅行について参加費が高い等の意見を述べたため,原告が担任をしていたクラスからは参加者が出なかったことが認められる。 この点に関し,原告は,他により良いホームステイ研修旅行が存在するにもかかわらず,被告の研修旅行がベストであると発言することこそ教師として許されざることであるなどとして同発言を正当化しようとするが,個人としては賛成しかねることであっても,学校という組織で決定した事項について反対の趣旨 修旅行がベストであると発言することこそ教師として許されざることであるなどとして同発言を正当化しようとするが,個人としては賛成しかねることであっても,学校という組織で決定した事項について反対の趣旨の発言をすることにより生徒が困惑することを忘れた主張であって採用することができない。しかしながら,同発言は平成4年の出来事であり,本件配転命令の理由としては余りに薄弱であるといわざるを得ない。 (5)学校説明会での非協力的態度について証拠(乙2)によれば,被告は,本件高校の受験を希望する中学生及びその保護者を対象として学校説明会を開催していることが認められるところ,被告は,平成16年秋に開催された学校説明会において,原告は受付担当業務を命ぜられたにもかかわらず同業務を放棄し,生徒ホールの椅子に腰掛けて休んでいたばかりでなく,それまでも協力する姿勢を示したことがなかった旨主張するが,同主張を的確に裏付ける証拠はない。a証人は,同主張に沿う証言をし,乙第3号証(cの陳述書)にも同旨の記載があるが,これを客観的に裏付ける証拠は何ら存在せず,同記載のみでは同主張を認めることはできない。 (6)引越の手伝いについて- 25 -証拠(乙2)によれば,本件高校は,平成16年に校舎改修のため肩書地住所から千代田区<以下略>の仮校舎に移転したことが認められるところ,被告は,原告がその際の作業において喫煙室でタバコを吸って時間をつぶすだけで,仕事を手伝う協調性は全く見せなかった旨主張するが,同主張を的確に裏付ける証拠はない。a校長の陳述書(乙2)には同主張に沿う記載があるが,これを客観的に裏付ける証拠は何ら存在せず,同記載のみでは同主張を認めることはできない。 (7)授業中の携帯電話による私用通話について証拠(甲24,乙2,a証人の証言,原告本人尋問の 載があるが,これを客観的に裏付ける証拠は何ら存在せず,同記載のみでは同主張を認めることはできない。 (7)授業中の携帯電話による私用通話について証拠(甲24,乙2,a証人の証言,原告本人尋問の結果)によれば,平成13年ころ,原告がパソコンのメールで知り合い,数学を教えていただけの間柄であった兵庫県在住の女子高校生が,両親との不和から原告を頼って家出をしてきたことがあったこと,同女子高校生は不登校であった上に引きこもり状態にあり,精神的に不安定だったため,同人の両親とも相談した上,原告が自宅でしばらく預かることとしたこと,その際,原告は日中原告の自宅に1人でいる同女子高校生が緊急に原告に連絡をするための方法として原告の携帯電話の番号を知らせたこと,その後同女子高校生は精神的に落ち着いたため兵庫県の自宅に戻ったこと,平成14年ころ,原告の父親が認知症のため徘徊を始めたため,行方不明になることがしばしばあり,原告の兄弟の中では原告が一番職場が近かったため,連絡を受けて探しに出る必要から,緊急の連絡手段として原告の携帯電話を利用することとしていたこと,実際に上記女子高校生又は原告の母親から原告の授業中ないし試験監督中に5回程度着信があり,原告はその都度通話をしたが,その際着信音が鳴り響いたために騒動になったこともあったこと,そのいずれについても本件配転命令以前にこの件に関して注意等を受けたことはなかったことが認められる。 以上を前提に判断するに,引きこもり状態にある女子高校生を預かっていたこと,徘徊する父親の安否を気遣う必要があったことは,いずれも原告に- 26 -とって一種の緊急事態にあったことは否定できないにせよ,授業中ないし試験監督中は教員である原告としては職務の遂行中なのであって,これらの連絡は,自らの携帯電話ではではなく,学 も原告に- 26 -とって一種の緊急事態にあったことは否定できないにせよ,授業中ないし試験監督中は教員である原告としては職務の遂行中なのであって,これらの連絡は,自らの携帯電話ではではなく,学校宛てに電話をするよう指示をし,授業又は試験終了後に伝言するか授業又は試験中に何人かが伝言するかは電話を受けた担当者の判断に委ねるべきであって,それをせずに自らが携帯電話で受信をすることは教員としてあるまじきこととして非難されてもやむを得ないというべきである。しかしながら,各通話時点で着信音が鳴る等他の教員の知るところとなったにもかかわらず,何ら注意等されておらず,かつ平成15年以降は通話の事実自体がないというのであり,本件配転命令の理由としては余りに薄弱であるといわざるを得ない。 (8)学園車両用駐車場の不法占拠についてa証人の証言によれば,被告においては,従前自家用車による通勤を禁止はしてこなかったこと,学園車両用駐車場は駐車できる台数に限りがあるにもかかわらず,平成16年4月までは使用方法をめぐり学校当局と労働組合との協議がまとまらず,労働組合は先着順との見解をとっていたこと,原告は従前自分が自家用車を駐車させたことにより学園車両を駐車することができなくなったとしてもそれはお互い様であるとの認識で自家用車を学園車両用駐車場に駐車し,そのため学園車両が駐車できなくなったことがあったが,平成16年4月に自家用車を駐車させて校長から注意を受けた後は,事務長の許可を得て1回駐車したにとどまっていることが認められる(同人の証言調書21頁)。 以上によれば,平成16年4月以前は原告も学園車両用駐車場を自由に使用していたというのであり,原告は,そのことにより学園車両を駐車させることができなくなったことについて,本件訴訟においても,自分も公務のた れば,平成16年4月以前は原告も学園車両用駐車場を自由に使用していたというのであり,原告は,そのことにより学園車両を駐車させることができなくなったことについて,本件訴訟においても,自分も公務のために通勤してきているのであるからお互い様であるなどとの認識を明らかにする(原告の陳述書(甲24)11頁)。しかし,原告本人尋問の結果によ- 27 -れば,原告は電車により通勤していると申告して通勤手当を受領していることが認められるのであって(本人尋問調書24頁),本来自家用車による通勤をすること自体被告に届け出るべき事柄であるのに原告にはその点の認識が一切ないばかりか,そのような立場にある原告の自家用車を駐車させることと学園車両の駐車との優先関係についてお互い様であるとの認識を示すなど,組織人としてはあるまじき感覚を有しているといわざるを得ず,これはひいては教員としての適格性にもつながりかねないものである。しかし,他方において,被告もそのように限られた台数しか駐車できない駐車場の使用方法についてのルール作り及びこれを教職員に周知させる努力を怠ってきたこと,そのため原告の駐車行為について格別注意を促すこともなかったこともまた前記のとおりであって,校長から注意を受けた平成16年4月以降無断で駐車をしたために学園車両に迷惑をかけた事実も認められない以上,それ以前の駐車行為を本件配転命令の理由とすることはできないといわざるを得ない。 なお,この点について,被告は,同駐車場は被告に管理権があり,学園所有の車両を優先して駐車させることに何の疑問もなく,仮に労働組合が何かを要求しても,協定等がされるまでは被告の管理権に何らの制約も生ずる余地がない旨を主張する。確かに法律論としてはそのとおりである。しかし,これまで本件高校においてそのような法律論どおりに 組合が何かを要求しても,協定等がされるまでは被告の管理権に何らの制約も生ずる余地がない旨を主張する。確かに法律論としてはそのとおりである。しかし,これまで本件高校においてそのような法律論どおりに管理を行ってきたわけではなく,教職員の駐車を黙認してきた実態もあるというのであるから,そのような中で原告の駐車行為を本件配転命令の理由とすることには無理があるといわざるを得ない。 (9)定期試験結果の改ざんについて証拠(乙2)によれば,本件高校においては,成績評定に際し,試験の点数の70パーセントを生徒の持ち点とし,残りの30パーセントを小テスト,ノート,レポート等の授業参加度,いわゆる平常点とし,学期の成績が30- 28 -点以下の生徒には次の学期への準備として補習授業を学期末に行うこととされていたことが認められるところ,被告は,原告が,試験の点数や平常点を水増しすることで補習授業を受ける生徒がいない状態にしたと主張するが,同事実を認めるに足りる的確な証拠はない。a校長は,陳述書(乙2)及び証人尋問において,これに沿う陳述又は証言(同人の証言調書8頁)をするが,これを裏付ける客観的証拠はなく,同証言のみでは同主張事実を認めるには足りない。 (10)柔道部の顧問として生徒を傷つける発言について証拠(甲24,33,乙4)によれば,従前柔道部の顧問をしていた教員が都合により顧問を続けることができなくなった際,原告が同部の顧問を引き受けたこと,平成15年の公式戦で3回戦で敗退した部員が顧問である原告に敗戦したことを詫びたのに対し,「これで次の試合の引率がなくなってよかった」旨の発言をしたこと,当該部員は同発言によりショックと怒りを覚えたことが認められる。同発言については原告も争わず,同発言の趣旨は,「そんなにすまながることはない,そんなに 引率がなくなってよかった」旨の発言をしたこと,当該部員は同発言によりショックと怒りを覚えたことが認められる。同発言については原告も争わず,同発言の趣旨は,「そんなにすまながることはない,そんなに気にしなくていい」という意味であったと主張する。しかし,上記発言がそのような意味であるとは解し難く,同発言によって当該部員がいたく傷ついたであろうことは想像に難くない。ただ,証拠(甲24(13頁))によれば,同発言の後,当該部員の訴えを受けた担任教員も,そのことで原告に注意するなど原告に反省を促す等の措置は一切とっていないことが認められるのであり,同発言は本件配転命令の理由としては余りに薄弱であるといわざるを得ない。 (11)職員会議での発言について証拠(甲24,33,乙2,a証人の証言,原告本人尋問の結果)によれば,本件高校においては,授業中生徒が居眠りをすることが日常化しており,教員間においてもこのことが問題視されており,これにどう対処すべきについてかは日常的に話題となっていたこと,平成16年9月15日の職員会議- 29 -においてこのことが話題となり,ある教員が,どう起こそうとしても寝てしまう生徒がいる,いったん起こしても教壇に戻って振り返るともう寝ているような場合どうすべきかと発言した際,a校長がこれに対して,保護者か担任にその生徒の横に立っていてもらってはどうかという趣旨の発言をしたのを受けて,原告が,担任自身も授業をしている時間帯であり,現実的に無理であるし,保護者に立ってもらうなどとはもってのほかである,自分自身は授業中寝ることは許していないが,これは昔からよくある問題であり,なぜここまでしてこのことを取り上げるのか理解に苦しむという趣旨の発言をしたことが認められる。そして,原告は,その発言中に,居眠りを放置しておけばよ 許していないが,これは昔からよくある問題であり,なぜここまでしてこのことを取り上げるのか理解に苦しむという趣旨の発言をしたことが認められる。そして,原告は,その発言中に,居眠りを放置しておけばよいという趣旨の発言をしたことも否定しないところ,原告の発言を全体としてとらえれば,生徒の居眠りに対して直接的現実的な対処方法を挙げた校長に対して,教育全体のあり方の中で居眠りの問題をとらえるべきであると発言したものと認められるのであって,同発言をもって生徒に対する愛情を欠いた冷たく突き放す趣旨の発言と解することはできない。 また,そもそも,職員会議での発言は,限られた出席者の中で自由な雰囲気の中でされたものであって,これを理由に何らかの処分をすることは本来望ましいものでなく,原告の上記発言も容易に解決策の見出せない問題について一つの考えを示したにすぎないものであるから,これをもって本件配転命令の理由とすることはできないというべきである。 (12)喫煙について被告は,本件高校では定められた場所以外での喫煙は禁じられているところ,原告はこれに違反して校舎の物陰やガレージで喫煙した旨主張するが,a証人によれば,本件高校においては,従前校内での喫煙について何ら規制がなかったところ,一部の非喫煙者から職員室での喫煙を禁止してほしい旨の申入れがあり,当初は,換気扇の近くを,その後元ボイラー室を喫煙場所とすることがいずれも職員会議で決められたこと,職員室以外の場所での喫- 30 -煙については何ら取決めがされていなかったことが認められ(同人の証言調書22ないし24頁),原告が他の教員とともに校門付近で喫煙した事実があることは原告も自認している。そうすると,原告が校門付近で喫煙したこと自体は,職員会議での取決めには違反しないことが明らかである。もっとも 24頁),原告が他の教員とともに校門付近で喫煙した事実があることは原告も自認している。そうすると,原告が校門付近で喫煙したこと自体は,職員会議での取決めには違反しないことが明らかである。もっとも,被告の主張は,原告の喫煙が単に職員会議での取決めに違反することを問題視するのみではなく,不体裁であって生徒の範たり得ないとの趣旨をも含むものと解されるが,上記喫煙行為が生徒の範としてふさわしくないものであることは確かであるものの,教員としての地位を剥奪するに足りる事由であるとまでは解されない。 したがって,同行為は本件配転命令の理由としては余りに薄弱であるというべきである。 (13)職業意識の欠如原告本人尋問の結果によれば,原告は,授業の空き時間は自由に外出してよいとの理解で外出していたことが認められる。このことは原告の職業意識を疑わせるものではあるものの,その時期並びに時間の長短及び回数までは明らかでない上,同事実を理由として処分等がされたことはないのであるから,これを本件配転命令の理由とすることには無理があるといわざるを得ない。 (14)小括以上によれば,被告が本件配転命令の理由として挙げた諸事実は,当該事実が証拠上認められないか((2)イ,(5),(6),(9)),あるいは認められたとしても,そもそも本件配転命令の理由とすることができないか((2)アウ,(3)イ,(8),(11),(13)),教員としての地位を剥奪するための事実としては余りに薄弱なもの((3)ア,(4),(7),(10),(12))であり,(3)ア,(4),(7),(10),(12)のすべてを総合しても,原告に教員としての適格性を根本的- 31 -に否定するような事情があるとまでは認められず,解雇に匹敵するほどの高度の必要性があるとはいえないばかりか,同事実 0),(12)のすべてを総合しても,原告に教員としての適格性を根本的- 31 -に否定するような事情があるとまでは認められず,解雇に匹敵するほどの高度の必要性があるとはいえないばかりか,同事実について指導したり処分を科したりして改善を促すなど,教員から事務職員への配置転換に際して必要とされる適正な手続も経ていないから,本件配転命令は無効であると評価せざるを得ない。この点に関し,a証人は,いみじくも,被告が指摘するような原告の問題点は仮にそれが存在するものであっても,従前の本件高校においては許容範囲であるとして放置されていたところ,a証人が校長及び理事に就任した平成16年度以降,学校の方針を見直すこととなり,原告に対して退職勧告することとし,本件配転命令をするに至ったのであることを自認しているのであって(同人の証言調書18頁),従前そのような問題を放置しておきながら平成17年に至って急に方針を改めて本件配転命令を実施したことは明らかであり,そのような処分に相当性を認めることはできない。 なお,この点に関しては,本件配転命令に先立ち,平成16年10月に,教師としての適格性に欠けることを指摘し,平成17年4月以降教科の授業等すべての業務から原告を排除する旨の通知をしている点が一応問題となるが,同通知により,原告に対して格別の指導ないし注意がなされた形跡はなく,単に本件配転命令の予告をしているにすぎないから,同通知をしていることは上記判断を左右しない。 第1次懲戒処分の有効性処分通知書に第1次懲戒処分の理由として記載された事実は,第2の1(5)記載のとおりであり,同記載の事実を原告が行ったことについても原告は争わない(この評定一覧表は,甲9と同一のものであるが,弁論の全趣旨によれば,仮処分事件においては,生徒の氏名も抹消せずそのまま 5)記載のとおりであり,同記載の事実を原告が行ったことについても原告は争わない(この評定一覧表は,甲9と同一のものであるが,弁論の全趣旨によれば,仮処分事件においては,生徒の氏名も抹消せずそのままにして提出したことが認められる。)。この点について,被告は,処分量定の上で特に重大と考えたのは,原告が事情聴取において,評定一覧表は私信であって公簿ではないから自由に持ち出してよいと主張して反省の色が全くなかったことであり,- 32 -このことからも生徒に対する愛情がひとかけらもなく,生徒の個人情報それも成績そのものをこのように扱うことを明言する学校職員に懲戒処分は当然である旨主張する。 証拠(甲24)によれば,原告が評定一覧表を持ち出しコピーをとったのは,本件配転命令の効力を争うために申し立てた仮処分事件の審尋期日に疎明資料として提出するためであったことが認められるところ,本件配転命令が無効であることは上記のとおりであるから,第1次懲戒処分の効力を判断するに当たっても,当該行為が本件配転命令の効力を争うために申し立てた仮処分事件に提出する動機の下にされたという事実は重視せざるを得ない。もっとも,本件配転命令が無効であるからといって,同仮処分事件においていかなる証拠提出行為をしても許されるというものではないが,その動機が重視されることは否定できない。そして,証拠(甲24,原告本人尋問の結果(本人尋問調書25頁),a証人の証言)によれば,評定一覧表は指導要録を作成するための重要な資料であり,各教員が作成して押印した後,少なくとも5年間学校が保管することとされていた書類であることが認められるが,実際には,厳重に金庫等に保管されることはなく,また,各教員が作成した際のパソコン内のデータについても消去を命じたりはしていないことも認められるのであっ こととされていた書類であることが認められるが,実際には,厳重に金庫等に保管されることはなく,また,各教員が作成した際のパソコン内のデータについても消去を命じたりはしていないことも認められるのであって,これを単なる私信であるとする原告の見解には賛成することができないものの,上記のような管理のあり方が原告の上記のような解釈を助長した面があることも否定できないのであり,裁判所への提出に際して氏名をそのままにした点に疑問が残るものの,本件配転命令の効力を争うためという動機及び非公開の手続であり,第三者の目に触れる可能性は少なかった点に照らすと,あえて懲戒処分をもって臨む必要のある行為とまでは認められないというべきである。 したがって,第1次懲戒処分は効力を有しない。 第2次懲戒処分及び第3次懲戒処分の有効性(1)第2次懲戒処分について- 33 -第2次懲戒処分は,「校長が必要と認める場合は職員会議に出席する。」との同年6月14日付け業務命令に従わず会議に出席し,校長からの退席命令にも従わなかったことが就業規則30条4号に該当するとしてされたものであるところ,職員会議に出席することは教員としての地位に当然付随する権限と解され,同業務命令は原告の教員としての立場を危うくするものであって,人事権を濫用するものであるとともに本件仮処分命令にも反するものと評価せざるを得ない。 したがって,同業務命令に違反したことを理由としてされた第2次懲戒処分は効力を有しないことに帰する。 (2)第3次懲戒処分について第3次懲戒処分は,同年6月14日付け及び同年7月4日付けの「校長が必要と認める場合は職員会議に出席する。」との業務命令に再度違反して会議に出席し,校長からの退席命令にも従わなかったこと,指導要録の電子ファイリングによる整理も行わず,その他の業 4日付けの「校長が必要と認める場合は職員会議に出席する。」との業務命令に再度違反して会議に出席し,校長からの退席命令にも従わなかったこと,指導要録の電子ファイリングによる整理も行わず,その他の業務命令についても依然行われていないことが就業規則30条4号に該当するとしてされたものである。 まず,職員会議に出席したこと及び退席命令に従わなかったことを理由として懲戒処分をすることが人事権の濫用であり本件仮処分命令にも反するものであることは(1)に説示したとおりである。 次に,指導要録の電子ファイリングによる整理については,証拠(乙2,a証人の証言)によれば,指導要録とは,生徒の氏名,出身中学校,学習成績,活動記録等を記録したものであって,20年間保管が義務付けられているが,本件高校では20年以上前のものも多数保管されており,紙質の劣化が著しいため,電子ファイリング化する構想があったこと,その作業としては,市販のファイリングソフトを利用して画像を取り込み,その後その他のソフトを利用してデータを分類整理し,検索,抽出などの工夫をすること,これにより在校生の指導について教職員の業務の効率化を図るほか,さらに- 34 -は卒業後進路などの関連について分析し新しい企画活用を進めることが期待されていたところであったことが認められる。 以上によれば,これらの作業の中に教員としての経験,能力が必要とされる面があることは否定できない。しかし,他方,必ずしも教員としての経験,能力を必要としない作業が含まれていることもまた否定できないのであり,これらの分担を決めないままにすべての作業を原告に命ずることは,人事権の濫用となり本件仮処分命令にも反するものといわざるを得ない。 したがって,同業務命令に違反したことを理由とする第3次懲戒処分もまた無効である。 減額 まにすべての作業を原告に命ずることは,人事権の濫用となり本件仮処分命令にも反するものといわざるを得ない。 したがって,同業務命令に違反したことを理由とする第3次懲戒処分もまた無効である。 減額分の給与額本件配転命令に伴い原告の給与が平成17年4月以降5万8000円減額されたこと,第1次懲戒処分に伴う減額分として7万0803円が6月分給与から更に減額されたこと,第3次懲戒処分に伴う減額分として2万3601円が7月分給与から更に減額されたことは当事者間に争いがないから,被告は原告に対し,平成17年4月分及び5月分給与の減額分各5万8000円,同年6月分減額分及び第1次懲戒処分に伴う減額分12万8803円,同年7月分減額分及び第3次懲戒処分に伴う減額分8万1601円,同年8月分ないし10月分減額分各5万8000円の合計50万0404円を支払う義務がある。 不法行為の成否以上のように,本件配転命令,第1次懲戒処分,第2次懲戒処分及び第3次懲戒処分のいずれもが無効である以上,これら各処分をしたことについて故意又は過失がある限り不法行為を構成するところ,上記のような経緯でした本件配転命令に関して被告には少なくとも過失があるといわざるを得ない。 そして,本件配転命令,第1次懲戒処分,第2次懲戒処分及び第3次懲戒処分により原告が被った精神的苦痛を慰謝すべき金額としては100万円をもって相当とする。 - 35 -第4 結論 以上によれば,原告の請求は,数学科教諭(教育職員)としての労働契約上の権利を有する地位の確認並びに平成17年4月分及び5月分給与の減額分各5万8000円,同年6月分減額分及び第1次懲戒処分に伴う減額分12万8803円,同年7月分減額分及び第3次懲戒処分に伴う減額分8万1601円,同年8月分ないし10月分減額分各5万8000 減額分各5万8000円,同年6月分減額分及び第1次懲戒処分に伴う減額分12万8803円,同年7月分減額分及び第3次懲戒処分に伴う減額分8万1601円,同年8月分ないし10月分減額分各5万8000円の合計50万0404円とそれぞれに対する各支払日の翌日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払並びに慰謝料100万円及びこれに対する最後の不法行為の日である平成17年17年7月9日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第19部裁判官蓮井俊治
▼ クリックして全文を表示