平成18年5月24日判決言渡平成16年第1572号損害賠償請求事件( )ワ判決主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告らは、原告に対し、連帯して1221万1907円及びこれに対する平成13年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要事案の要旨 東京都文京区の区議会議員であった亡aは、文京区からの委託により健康診断を行っていた被告bが経営する付属診療所において、平成13年10月1日、被告c医師による乳がん健診を受けたが、その際には特に異常がないと診断された。 亡aは、その翌年に他の医師による乳がん健診を受けた際、乳がんが発見され、他の病院において抗がん剤療法を受けたものであるが、同人は、実際には乳がんは平成13年当時にも発生しており、被告c医師が必要な検査をしなかったなどの過失により、乳がんの発見が遅れ、そのために抗がん剤治療による苦痛とがんの転移による死への恐怖に苛まれることになったとして、被告らに対し、不法行為に基づき、損害賠償及び健診日(不法行為日)である平成13年10月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 なお、その後、亡aが死亡したため、原告dが本件訴訟を承継した。 (認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した前提となる事実 証拠のページ番号を〔〕内に示す)。 当事者( )ア原告関係亡a(以下「a」という)は、昭和28年9月5日生まれの女性であ。 り、平成7年5月から平成15年4月まで文京区議会議員であったが、その後、平成17年11月25日、死亡した(甲A17〔1、丙A1、弁〕論の全趣旨。そのため、aの父である原告が本件訴訟を承継 あ。 り、平成7年5月から平成15年4月まで文京区議会議員であったが、その後、平成17年11月25日、死亡した(甲A17〔1、丙A1、弁〕論の全趣旨。そのため、aの父である原告が本件訴訟を承継した(裁判)所に顕著な事実。 )イ被告関係被告b(以下「被告b」という)は、医事衛生の進歩、公衆衛生の()ア。 向上と発展、国民福祉の増進に資することを目的とし、医事衛生の研究及び振興、衛生思想の普及啓発、健康診断並びに健康管理に関する相談及び指導その他の事業を行う財団法人であり、付属診療所(以下「被告病院」という)を経営している(丙B1、2。 。 )被告c(以下「被告c」という)は、平成13年10月1日当時、()イ。 被告病院において乳房科健康診断業務に従事していた医師である(争いのない事実、乙A1〔3、弁論の全趣旨。 〕) 健康診断について( )被告bは、昭和42年4月から、一般健康診断、がん検診など職域、地域及び学校における健康診断業務を行っており(丙B2、東京都文京区との))。 間で、平成13年5月30日、婦人健康診断委託契約を締結した(丙B3 aによる乳がん健診の受診( )aは、上記委託契約に基づいて実施される婦人健康診断の受診を申し込んだ上、平成13年10月1日、被告病院において、同健康診断を受診した(争いのない事実、弁論の全趣旨。 ) 争点 平成13年10月1日(健診時)における乳房線検査(マンモグラフ( )Xィ)の実施義務の有無 被告cによる説明義務違反ないし指示義務違反の有無( ) 説明・指示義務違反と乳がん発見遅滞との間の因果関係の有無(判断する( )必要がなかった争点) 損害額(判断する必要がなかった争点)( )争点についての当事者の主張 別紙「主 ( ) 説明・指示義務違反と乳がん発見遅滞との間の因果関係の有無(判断する( )必要がなかった争点) 損害額(判断する必要がなかった争点)( )争点についての当事者の主張 別紙「主張要約書」記載のとおりである(この「主張要約書」は、本件第11回弁論準備手続期日において当事者双方が陳述した内容を基本とし、その後の主張をふまえて一部加筆修正したものである。 。)第3当裁判所の判断事実認定 前記第2-2記載の前提となる事実及び証拠等(認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した証拠のページ番号等を〔〕内に示す。以下同じ)によれば、次の事実が認められる。 。 東京都文京区から被告bへの健診委託( )東京都文京区(以下単に「文京区」という)は、被告bとの間で、平成。 13年5月30日、同日から平成14年3月20日までの期間について、文京区が被告bに対して次の内容の婦人健康診断を委託するとの合意をした(以下「本件委託健診」という。丙B3。 )婦人科健康診断婦人科専門医による問診・診察●子宮頸部細胞診膣拡大鏡検査判定*必要に応じ次の検査を行う。 組織診(子宮頸部、子宮内膜) 細胞診(子宮内膜)超音波断層撮影乳房科健康診断外科専門医による問診・診察●判定*必要に応じ次の検査を行う。 乳汁細胞診乳房線撮影(2方向)X乳房線撮影(4方向)X超音波断層撮影 aによる健康診断の受診(以下「本件健診」という)とその結果の告知( )。 ア受診に至るまでの経緯aは、文京区議会議員になる以前は、文京区民として区民向けの集団検診を、文京区議会議員になった後は、本件委託健診と同内容の委託健診を毎年受けており(平成11年及び12年の検診においては、いずれも異常なしとの診断を受けていた( 前は、文京区民として区民向けの集団検診を、文京区議会議員になった後は、本件委託健診と同内容の委託健診を毎年受けており(平成11年及び12年の検診においては、いずれも異常なしとの診断を受けていた(甲A3、4、平成13年当時も文京区議)。)会議員であったことから、上記の委託健診を同年においても受診することとした。aは、平成13年10月1日までに婦人健康診断通知書(丙A8の1)及び婦人検診に関する質問票(以下「質問票」という。丙A8の2)を受け取り、それぞれについて必要事項を記入した。その際、質問票のうち「乳房科に関する質問」との記載以下の部分について、aは「過、、去の授乳状況「豊胸術(美容整形)の有無「自覚症状」欄の「しこ」、」、[]り「いたみ」等についてそれぞれその有無を記載した(甲A17」、。 〔1、a〔4ないし6)〕〕イ乳房科の検診の受診aは、平成13年10月1日、被告病院を訪れ、本件委託健診に基づ( )アく婦人健康診断として、婦人科担当のe医師による問診・診察、子宮頸 部の細胞診及び膣拡大鏡検査を受けたほか、次のとおり乳房科の検査を受診した(甲A1〔1、2、丙A1〔1、2、丙B3〔6。 〕〕〕)乳房科においては、aは、医師による問診に先立ち、看護師から問診を受けた。その際、看護師は、aが事前に提出した質問票の内容をなぞるように問診をし、そのほかに気になることがないかaに対して尋ねた。 看護師は、他方、aが質問票に記入した内容を検診録の表紙に転記した(甲A1〔1、丙A1〔1、a〔6ないし8、被告c〔22、2〕〕〕 。 〕)検診録の表紙(甲A1〔1、丙A1〔1)には、最上部に氏名、所( )イ〕〕属等の欄があり、その下に婦人科に関する欄、更にその下に乳房科に関する欄がある。 〔22、2〕〕〕 。 〕)検診録の表紙(甲A1〔1、丙A1〔1)には、最上部に氏名、所( )イ〕〕属等の欄があり、その下に婦人科に関する欄、更にその下に乳房科に関する欄がある。同表紙のうち、乳房科に関する欄については「授乳状、況「豊胸術有無」についてそれぞれ「無」の文字が丸で囲まれている」、)。 (それぞれの「無」の文字を包含するように縦長の丸で囲まれている「自覚症状」の「しこり」については「無」の「いたみ」については、「2.有」の「乳首からの異常分泌物」については「無」の「その他、、気になること」については「2.有」の文字がそれぞれ丸で囲まれ、上記2つの「有」の文字のそれぞれ右側を起点及び終点として逆くの字型の直線が引かれ、また、逆くの字の頂点よりやや下部に「時々有り」と、手書き文字での記載がある(甲A1〔1、丙A1〔1)。 〕〕aは、その後、診察室に入室した。被告cは、上記問診票を確認して( )ウからaに対して問診をし、aの両乳房について触診及び視診を実施した(甲A1〔2、乙A1〔5、丙A1〔2、被告c〔1ないし3。 〕〕〕〕)その上で、被告cは、触診及び視診の結果、aの左右乳房にしこり、びらん、変形及び陥没乳頭等が認められなかったことから、左右ともに異常がなく、右側腋窩リンパ節、左側腋窩リンパ節及びその他のリンパ節を触知しなかった旨を検診録の結果記載欄に記載し「触診視診所見、、」 「臨床診断」欄はともに「41異常なし」に「総合判定」欄は「4、 異常所見なし」にそれぞれ丸を付した(甲A1〔2、3、乙A1〕〔5、丙A1〔2、3、被告c〔19、38。 〕〕〕)被告cは、本件委託健診の契約内容に加え「必要に応じ」とは「視、触診により異常を認めた場合」をいうものとの た(甲A1〔2、3、乙A1〕〔5、丙A1〔2、3、被告c〔19、38。 〕〕〕)被告cは、本件委託健診の契約内容に加え「必要に応じ」とは「視、触診により異常を認めた場合」をいうものとの認識のもと、aについては視触診の結果、異常がみられなかったことから、超音波検査等の画像診断のための検査を実施しなかった(被告c〔32。 〕)ウ上記の後日、被告bは、aに対し、上記結果を記載した婦人健康診断結果報告書を送付した(甲A2。 ) 本件健診後の経過( )アしこりの自覚と検診の繰上げ受診aは、本件健診後も、1ないし2か月ごとに乳房の触診をするなど自己検診をしていたところ、平成14年6月ころから右乳房に鈍い痛みを何度か感じ、しこりもあるように感じた。同人は、同年7月後半には右乳房に鋭い痛みを感じ、しこりが大きくなっていると感じた。そこで、aは、同年8月末に受診すると申し込んでいた文京区の委託健診の受診時期を繰り上げてもらい、同年8月15日に被告病院において文京区の健康診断を受けた(甲A17〔1、2、a〔13、14)。 〕〕イ腫瘤の発見上記健康診断のうち乳房科の検診において、担当医師であったf医師は、問診及び触診を実施し、左乳房については異常なしとの診断をしたが、右乳房の乳首及びその周辺部位に可動性の悪いしこりを認め、がんの疑いがあったことから、乳房超音波検査(エコー検査)を実施した。その結果、aの右乳房に2.39×1.77×1.43センチメートル(以下においては「」と表記することとし、以下、長さに関わる単位について同様cm。 、とする)の腫瘤影があり、左乳房に嚢胞があるとの所見を得たことから f医師は、aに対し、紹介状を書くのでどの病院がよいかと尋ねたところ、aは、仕事をしながら通えるところがよいと考え、 cm。 、とする)の腫瘤影があり、左乳房に嚢胞があるとの所見を得たことから f医師は、aに対し、紹介状を書くのでどの病院がよいかと尋ねたところ、aは、仕事をしながら通えるところがよいと考え、g病院を希望した。そこで、f医師は、aに対し、同病院への紹介状を書いて交付した(甲A。 5〔2、A17〔2、丙A2〔2、A3、A4、A6、A7、a〔1〕〕〕6、17。丙A3及び4についてはいずれも枝番号を含む)〕。 ウh病院での治療しかしながら、aは、平成14年8月16日から乳がん検診で一番実績のある病院について調査をした上、平成14年8月20日、h病院を受診した(甲A16〔12、a〔17。 〕〕)h病院の担当医師は、同日、aの乳房について診察し、右乳房にがんの疑いがあると診断し、乳房線検査(マンモグラフィ)及び乳腺超音波X検査(エコー検査)をすることとし、いずれも同年9月3日に施行された(甲A16〔12、68。 〕)その上で、aを担当したi医師は、同年9月12日、上記各検査の結果、mmmm右乳房に26×31×19の石灰化を伴う腫瘤が、右腋窩に16の腫大が三、四個、左乳腺に1未満の嚢胞があり、結果として右乳房cmの腫瘤は浸潤性乳管がんであり、リンパ節転移があるとの所見を得た(甲A16〔12、55、56。また、j医師は、aから経過について聞き〕)取った上、aの腫瘤の進行度は20、病期は、触診時のしTNMstageIIBこりの大きさは3.8×3.7であるとの所見を得た。その上で、acmから、年末年始に海外出張の予定があるので化学療法をなるべく早く始めたいとの希望が述べられたことから、j医師は、aに対して針生検を同年9月17日に実施した上で化学療法を同月19日に開始することとした。 、年末年始に海外出張の予定があるので化学療法をなるべく早く始めたいとの希望が述べられたことから、j医師は、aに対して針生検を同年9月17日に実施した上で化学療法を同月19日に開始することとした。 (甲A16〔13、14)〕同年9月17日には針生検がaに対して行われ、同月19日に確定診断に至ることが困難であることから、aの同意を得たうえ、同月24日から 化学治療を開始することとした。同月24日、k医師は、上記針生検の結H果等から、aの右乳房のがんについて、浸潤性乳管ガン(グレード3、2(1+、エストロゲン受容体((2+、プロゲステロン受容体ERER)))((+)であると確定診断した(甲A16〔14、63ないし6PgR))。 5)〕 自己検診に関する認識等( )アaの認識aは、昭和63年から平成5年までは文京区の保健所で乳がん検診を毎年受けていた。この間、希望者向けに行われた自己検診講習会にも参加し、その後、定期的に自己検診を行っていた(甲A27〔5)。 〕イパンフレット(丙A9)の配付被告病院は、乳房科の検診を初めて受診した者に対し「月に1度は乳、房の自己検診を年に1度は専門医の検診を受けましょう」との文で始。 まり「乳ガンの早期発見は、定期的に乳房の自己検診を行い、しこりな、どに気が付いたら、すぐに専門医に診せることです」との記載のほか、。 自己検診の方法、注意等の記載があるパンフレットを看護師をとおして手交しており、aも、これを見た記憶があり、その記載内容は理解していた(丙A9、a〔27、被告c〔45、65。 〕〕)医学的知見 証拠等によれば、次の医学的知見が認められる。 乳がんの進行度(甲B1〔10、11、B2〔35、36、乙B2〔2( )〕〕0)〕)、乳が 告c〔45、65。 〕〕)医学的知見 証拠等によれば、次の医学的知見が認められる。 乳がんの進行度(甲B1〔10、11、B2〔35、36、乙B2〔2( )〕〕0)〕)、乳がんは乳腺組織に発生するがんであるが、その進行度は、原発巣(T所属リンパ節(、遠隔転移()の3要素により分類されており、そのNM)。 相関によりステージ()、、、、、に分類されるstageIIIAIIBIIIAIIIBIVTcmcm上記分類のうち、2は原発巣の大きさが2.0より大きく5.0 以下のものをいい、1は原発巣が存在する乳房と同じ側の腋窩のリンパ節Nに可動性のある転移が存在する場合をいい、0は遠隔転移が認められないM場合をいう。20は、病期に当たる。 TNMIIB 乳がんの悪性度(甲B1〔17)( )〕乳がんの悪性度とは、臨床的に転移、再発のしやすさを指し、h病院では、悪性度をグレード1ないし3の3段階に分類しており、数が大きいほど悪性度が大きい。 乳がんの自覚症状と痛みについて( )ア乳がんの診断に至る自覚症状としては、乳房腫瘤(74パーセント(以下単に「%」と表記する、疼痛(6%、異常乳頭分泌物(4%、浮。))))腫、発赤、陥凹などがある(甲B2〔33。 〕)イこれらのうち、疼痛(痛み)については、痛みの原因が乳がんでないことを除外診断することが重要であり、乳房の痛みを主訴として乳がんが発見されることは全体の1割にも満たないが、侮ることはできないという指摘がある(甲B20〔6。しかし、乳房の痛みを訴える女性は乳がんに〕)罹患しているか否かにかかわりなく相当数に上るところ、上記指摘においても、乳がんに罹患している女性がそうでない きないという指摘がある(甲B20〔6。しかし、乳房の痛みを訴える女性は乳がんに〕)罹患しているか否かにかかわりなく相当数に上るところ、上記指摘においても、乳がんに罹患している女性がそうでない女性よりも乳房の痛みを訴える割合が高いか否かについては何ら言及しておらず、被告cは自己の経験に基づき両者に有意な差異はないと述べており(被告c〔13、4 、これに反する証拠はない。 〕)他方、乳房腫瘤については、乳がんの徴候として関係を有するが、乳房の痛みは乳がんの徴候として関係を有するとは認められないとした研究結果がある(乙B9。 )〕、( )4乳がんの診断方法(甲B3、B18〔46ないし50、B24、B29乙B2)乳がんの診断をするには、次のことを行う。 ア診察(問診、視診・触診)問診( )ア自己検診を行っているか否か、異常と思った時期、しこりに気づいてからの時間経過・変化、乳腺の病気の既往があるか否か、血縁者における乳がん患者の有無等を尋ねる。 視診( )イ立位ないし座位で患者と向かい合い、患者の上肢を下げ、挙上させるなどして乳房や乳頭の変化(対称性、変形、乳頭・乳房皮膚の変化(甲B3、乙B2〔8)を観察する。 〕)皮膚の陥凹の有無、乳房の膨隆や浮腫、発赤潰瘍、乳頭陥没の有無をみる。 触診( )ウなるべく幅の広いベッドを使用し、背中に6ないし7の厚さの枕cmを入れて仰臥位に寝せ、上肢を肘で支えて頭上に挙上させ、乳房を伸展させた位置で行う。 しこりの有無、大きさ、位置、堅さ、表面の状態、境目、可動性の有無、分泌物の有無等を調べる。その際、乳房のみならず脇の下(リンパ節)のしこりの有無も調べる。 触診の確診率は一般的には必ずしも高くなく、診断医の能力によっても大きく異なる(甲B3〔9、10。ま 無、分泌物の有無等を調べる。その際、乳房のみならず脇の下(リンパ節)のしこりの有無も調べる。 触診の確診率は一般的には必ずしも高くなく、診断医の能力によっても大きく異なる(甲B3〔9、10。また、触診においては、大きさ〕)が1に満たない腫瘤を触知できない(甲B39〔63。 cm〕)イ画像診断乳房線検査(マンモグラフィ、超音波検査、サーモグラフィ等があX)る(ただし、サーモグラフィについては、乳管内視鏡、、などとMRICTともに、まだ補助的な診断方法であって単独で診断に用いられることはほとんどないとの指摘がある(乙B2〔19。 〕)。) Xc超音波検査や乳房線検査(マンモグラフィ)においては、大きさ1以下の腫瘤についても発見することが可能な場合もある(甲B18m〔58、B39〔63。 〕〕)ウ細胞・組織診断(穿刺吸引細胞診、生検)エ全身検索 乳がん検診の目的、方法等( )ア目的乳がん検診は、疫学的にはがんの二次予防、すなわち、がんになった者をできるだけ早く発見して、死を回避することで、集団としての乳がん死亡率を減少させることを目的としている(甲B21〔48、B23〔1〕46、B43〔941。 〕〕)イ方法厚生省(当時)は、平成12年3月31日「がん予防重点健康教育及、びがん検診実施のための指針(平成10年3月31日付け老健第64」号)を改正し(老健第65号、同年4月1日から実施したところ、乳が)ん検診の実施内容のうち、対象者と検診感覚並びに指針及び触診の留意点については、次のとおり定められている(丙B4〔5、6。 〕)①対象者と検診間隔50歳未満の対象者…原則として同一人につき年1回検診(問●診及び視触診によるもの)を実施する。 50歳以上の ついては、次のとおり定められている(丙B4〔5、6。 〕)①対象者と検診間隔50歳未満の対象者…原則として同一人につき年1回検診(問●診及び視触診によるもの)を実施する。 50歳以上の対象者…原則として同一人につき2年に1回(問●診、視触診及び乳房線検査(マンモグXラフィ)によるもの)を実施する(地域の実施体制等を勘案して乳房線検査(マXンモグラフィ)を実施しない場合は、50歳未満の対象者と同一) ②視診の留意点乳房の大きさ及び形、乳房皮膚の陥凹、膨隆、浮腫及び発赤、乳頭陥凹並びに乳頭びらんの有無について観察する。 ③触診の留意点指腹法、指先交互法等により、両手で乳房の内側から外側(又は外側から内側)に、かつ、頭側から尾側に向かって、乳房を軽く胸壁に向かって圧迫するように行う。 乳房の触診●腫瘤、結節及び硬結の有無、性状等を診察する。 リンパ節の触診●脇窩リンパ節及び鎖骨上窩リンパ節の腫脹の有無、性状等を診察する。 乳頭の触診●乳頭からの異常な分泌物の有無、性状等を診察する。 ウ評価集団検診は、それぞれの段階のスクリーニング精度や、検診システム全体としての精度管理が確立されている必要があり、そのうち、スクリーニング精度については、スクリーニングの感度(検診した集団のうちがんがある人について陽性であると判定できた割合、ないし、病気である人を病気であると判断できる確率、特異度(がんでない健康な人について陰性)であると判定できた割合、ないし、健康な人を健康であると判定できる確率)などによって評価される(甲B21〔50、B23〔150、被告〕〕c〔17。 〕)スクリーニングテストとしては、感度も特異度も高い値が得られることが望ましい。感度が高ければ乳がんを見逃す頻度は低くなり、特 価される(甲B21〔50、B23〔150、被告〕〕c〔17。 〕)スクリーニングテストとしては、感度も特異度も高い値が得られることが望ましい。感度が高ければ乳がんを見逃す頻度は低くなり、特異度が高。 、ければ2次スクリーニングを省略し得ることとなる(甲B23〔150 151。なお、被告cも同趣旨を述べる(被告c〔17)〕〕)。 乳がんの検診に関する検討等( )ア財団法人日本公衆衛生協会は、平成13年3月発表の「新たながん検診手法の有効性の評価」と題する報告書において、乳がんについて、視触診による乳がん検診の有効性には限界があり、乳房線検査(マンモグラXフィ)の49歳以下に対する有効性の確認についてはまだ十分ではないが、40ないし49歳の乳がん罹患率が最も高いことや、乳房線検査(マXンモグラフィ)併用検診が導入された場合、もっとも費用効果比に優れていることから、40歳代に対しても視触診との併用による乳房線検査X(マンモグラフィ)導入を検討すべきであるとしている(甲B4。 )イ我が国においては、乳房線検査(マンモグラフィ)を使った集団検X診について、有効であるという報告と無効であるという報告とがあり、いずれの報告にも弱点があるため、賛否両論であったとの指摘がある(甲B1〔24。 〕)ウ文京区は、平成16年度の乳がん検診から、全員に対して乳房線検X)。 査(マンモグラフィ)を実施するよう、検診内容を変更した(甲B14 腫瘍容積の倍増時間(ダブリングタイム)について(乙B1〔560、( )〕弁論の全趣旨)ダブリングタイムとは、がん腫瘤が倍増する時間のことをいい、がん細胞世代時間、がん細胞数倍増時間及びがん腫瘤容積倍増時間があるが、単にダブリングタイムというときは、最後者を指す。 〕弁論の全趣旨)ダブリングタイムとは、がん腫瘤が倍増する時間のことをいい、がん細胞世代時間、がん細胞数倍増時間及びがん腫瘤容積倍増時間があるが、単にダブリングタイムというときは、最後者を指す。 ダブリングタイムは、経時的な腫瘍容積の変化はほとんどが指数曲線を呈することを前提とし、臨床的に得られたがん腫瘤の大きさをもとにして、次の計算式により算出される(計算式のうち、は腫瘤の径がからに発td1d2育するのに要した時間をいう。 ・はいずれも特定時点における腫瘤のd1d2径の長さ(腫瘤の長径と短径の和の2分の1)である。 。) 〔計算式〕/(-)td2d1loglog争点1 (平成13年10月1日(健診時)における乳房線検査(マンモ ( )Xグラフィ)の実施義務の有無)について 上記認定事実に対する評価( )ア上記11 及び同2 において認定したとおり、aは、平成13年10月( )( )( )ア1日、被告病院において、外来受診ではなく本件健診委託に基づく婦人健康診断として乳房科検診を受診したものであるところ(上記12 、( ))集団検診は、その内容が契約によって定められており、しかもその内容は、検診者の乳房を視触診し、必要に応じて、乳房線検査(マンモXグラフィ)や超音波検査を施行するものとされていた(上記11 。 ( ))上記にいう「必要に応じて」とは、上記25 イにおいて認定した厚生( )省の基準からすれば原則として40歳代の女性には乳房線検査(マXンモグラフィ)等を実施すべきとはされていないことや、行うべき検査が医学的検査であることからして、その必要性の判断は医師がするものであるところ、医師が必要性を感ずるのは通常、病変が存在するとの疑いを感じた場合で 等を実施すべきとはされていないことや、行うべき検査が医学的検査であることからして、その必要性の判断は医師がするものであるところ、医師が必要性を感ずるのは通常、病変が存在するとの疑いを感じた場合であると考えられることからすれば、問診及び視触診の結果異常があると認められた場合をいうものと解するのが相当であるから、結局、本件健診の内容は、医師が受検者に対して問診をし、検診者Xの乳房を視触診した上、異常があると認められた場合に限り、乳房線検査(マンモグラフィ)や超音波検査を施行するというものであったと認められる。 そして、上記24 において認定したところによれば、乳がんの診断を( )( )イする際の手順としては、乳房に痛みがあることを問診等で確認することは求められていないところ、ある症状が医学的にある病気の徴候である場合にはこれを診断すべき要素とするのが通常であると考えられることからすれば、乳房の痛みが乳がんの存在を疑わせる徴候とは考えられて いないということができる。また、上記23 において認定したとおり、( )乳房に痛みを感じたことをきっかけとして乳がんが発見された場合はあるものの、乳房の痛みと乳がんとの関係については有意な関係があると認めるに足りる医学的知見は見当たらず、これらのことからすれば、乳房の痛みが医学的に乳がんの存在を疑わせる徴候であるとの確立した医学的知見は認められない。 なお「婦人健診に関する質問票(丙A8)には、自覚症状としての、」痛みの有無を問う欄が設けられているが、これは、患者が乳房の痛みを訴えることにより痛みの部位を重点的に触診してしこりの有無を確かめたり、乳がん以外の乳房の病気全般の発見が期待されることによるものであり、痛みのみによって乳がんの存在を疑う趣旨ではないと認められる(被告c〔2 より痛みの部位を重点的に触診してしこりの有無を確かめたり、乳がん以外の乳房の病気全般の発見が期待されることによるものであり、痛みのみによって乳がんの存在を疑う趣旨ではないと認められる(被告c〔23。 〕)したがって、本件健診においては、問診の結果、乳房の痛みがあると( )ウ認められたとしても、このことのみが乳がんの徴候とはならない以上、さらに視触診によって何らかの異常が認められなければ、2次的検診として乳房線検査(マンモグラフィ)や超音波検査を施行することにXならないことになる。 イ他方、上記25 において認定したとおり、集団検診の目的は、がんにな( )った者をできるだけ早く発見して死を回避することで、集団としての乳がん死亡率を減少させることにあり、その有効性を評価する際にも、感度(がんのある者を陽性と判定する割合)及び特異度(がんのない者を陰性と判定する割合)のいずれもが高値である場合を以て適切と評価され、そのような評価を得るために、1次的な検診として視触診をし、異常であると認められた場合に2次的な検診として乳房線検査(マンモグラフXィ)等を実施するとの段階的な内容が定められているものと認められる。 このように、集団検診は、個々の受検者について疾患の有無を確定診断す ることを目的とするものではなく、集団としての死亡率を減少させるとの観点から一定割合の有病者を効率よく発見し得るように実施すべき内容が明確に定められているのであるから、医師には、集団検診の実施者として、その内容を誠実に履行すべき義務があり、かつ、それをもって足りるというべきである。 ウ以上ア及びイからすれば、本件健診を担当した医師は、受検者について問診及び視触診を実施し、その結果異常があると認められた場合に限り乳房線検査(マンモグラフィ)や超 て足りるというべきである。 ウ以上ア及びイからすれば、本件健診を担当した医師は、受検者について問診及び視触診を実施し、その結果異常があると認められた場合に限り乳房線検査(マンモグラフィ)や超音波検査を実施すれば足りるのであXり、かつ、乳房の痛みがあることのみでは異常があるとは認められないのであるから、乳房の痛みがあることのみを端緒として、乳房線検査X(マンモグラフィ)等を実施すべき注意義務があるとは認められない。 本件においては、被告cは、上記12 イにおいて認定したとおり、乳房( )の痛みを訴えるaに対して問診及び視触診を実施し、異常がないと判定したものであるが、上記のとおり乳房線検査(マンモグラフィ)等を実X施すべき注意義務が認められないから、被告cに、乳房の痛みを端緒として乳房線検査(マンモグラフィ)等を実施すべき注意義務はないのでXあって、同人及び被告bに同注意義務違反をした過失はない。 原告の主張に対する判断( )ア原告は、上記23 の医学的知見に関する指摘を前提に、乳房の痛みがあ( )ると訴える者に対して乳房線検査(マンモグラフィ)等を実施すべきX注意義務があるにもかかわらず、被告cは、乳房の痛みについて詳細に問診することなく、乳房の痛みを軽視して乳房線検査(マンモグラフXィ)等を実施しなかったと主張し、その理由として、本件委託検診のうち、「仕様書に明示されていない事項であっても、受託業務の性質上当然必要なものは、乙(被告b)の負担で行うことができる」との内容(丙B3〔1条(総則)2項)について、これを、文京区との関係では、被告b〕 の負担で、被告bと受検者との関係では受検者の負担で乳汁細胞診・乳房線検査(マンモグラフィ・超音波断層撮影等の検査を行うことができX)ると解釈 いて、これを、文京区との関係では、被告b〕 の負担で、被告bと受検者との関係では受検者の負担で乳汁細胞診・乳房線検査(マンモグラフィ・超音波断層撮影等の検査を行うことができX)ると解釈し、これを前提に、本件健診が、規定の検査以外は全額自己負担となることを理由として、受検者が拒まない限り、規定外の検査の追加を回避する理由はないこと等を挙げる。 イしかしながら、原告が依拠する医学的知見が認められない以上、原告の主張は前提において誤りであるといわざるを得ない。のみならず、原告が指摘する上記契約文言は、仕様書に明示されてはいないが、明示された業務に通常随伴する事項に関するものと解するのが素直な解釈というべきであり、問診や視触診に通常随伴するものでない検査を想定した文言ではないと解すべきである。また、上記1 アにおいて認定説示したとおり、集団( )検診は、目的と方法、評価の点において、外来受診のように、来院した個々の患者について診療を施すことを目的とし、ある症状を訴えてきた患者に対してその納得が得られるまで検査等を実施し、病気の有無を診断して治療することとは異なるものであって、原告は、この点を看過ないし混同したものといわざるを得ない。 むしろ、集団検診であることを前提とする以上、本件においてaに対して乳房線検査(マンモグラフィ)等が実施されなかったことについてXは、上記26 で認定した指摘がされているように、集団検診の制度自体の( )内在的な問題であるといわざるを得ないのであって(なお、上記26 ウに( )おいて認定したとおり、文京区においては、現在は40歳代の女性に対しても乳房線検査(マンモグラフィ)等を原則として実施している、X。)これを医師ないし検診受託病院の責任であるとする原告の主張は採用できない。 争 文京区においては、現在は40歳代の女性に対しても乳房線検査(マンモグラフィ)等を原則として実施している、X。)これを医師ないし検診受託病院の責任であるとする原告の主張は採用できない。 争点2 (被告cによる説明義務違反ないし指示義務違反の有無)について ( ) 上記認定事実に対する評価( ) ア上記31 アにおいて認定説示したとおり、乳房の痛みは乳がんの徴候( )( )イとなる症状とは認められない。 このことを前提とすると、上記12 イにおいて認定したとおり、aには、( )乳房の痛みのほかには特に自覚症状がなく、かつ、被告cがaの乳房を視触診した結果、しこり等の所見もなく異常がなかったのである。そうすると、aは、乳がんとの関係では無症状で異常がなかったことになる。 イ他方、一般に、経過観察等の指示は何らかの症状ないし異常所見がみられた場合にはじめて指示されるものであって、このことからすれば、無症状、異常なしとの診断をした受検者ないし患者に対して特に指示すべき事項はないし、医師としては、病気の徴候を示して、これが現れたと考えられるときに外来受診するよう助言することが考え得るにとどまる。他方、病気の徴候であると確定できない要素について、これをことさらに取り上げて外来受診のきっかけとするよう助言することは、受検者ないし患者との関係で適切さを欠く場合もあると考えられるところ、集団検診のようにいわば多数の者に画一的な検査を実施する場においてこれをすることはむしろ受検者に対して無用の誤解を与えるおそれさえあるというべきである。 以上に照らすと、集団検診において、無症状で異常のない受検者に対しては、受検者が特定の症状を特に気にして医師に対して訴えるなどの特段の事情がない限り、経過観察をするとか特定の検査等を受診する ある。 以上に照らすと、集団検診において、無症状で異常のない受検者に対しては、受検者が特定の症状を特に気にして医師に対して訴えるなどの特段の事情がない限り、経過観察をするとか特定の検査等を受診するといったことを指示することについては、医師に対してそのような注意義務を課することはできないというべきである。すなわち、被告らにおいてaに対して指示ないし説明すべき事項があるとするならば、それは、他の受検者と同様に、定期的に自己検診を行って異常に気づけば直ちに専門医を受診することに止まるのであり、前記14 イにおいて認定したとおり、その旨を( )記載したパンフレットが受検者に交付されていて、aもその内容を理解していたのであるから、被告らにおいては、なすべき指示・説明を行ってい たと認められる。 ウしたがって、aの検診を担当した被告cに、乳がんの徴候とは認められない乳房の痛みについて経過観察等をして外来受診するよう説明ないし指示すべき義務はないというべきであって、被告c及び被告bに、乳房の痛みについて経過観察等をして外来受診するよう説明ないし指示すべき義務に違反した過失はない。 原告の主張に対する判断( )ア原告は、平成13年10月1日における本件健診日の経過について、被告cが、aに対して座位でのみで仰臥位での触診をせず、しかもaが訴えた乳房の痛みについて、左右の別等の位置の特定をすることもなく「気、のせいで心配ない」と述べたにとどまったと主張し、aも同旨を述べる(a〔4、5、26。 〕)イしかしながら、被告cは、痛み自体の存在を否定するような発言をする、、ことはないとして「気のせいで」との発言については強く否定しており仮にそのような発言があったとしても、その発言の趣意は痛みがあっても心配は要らないという点にあると を否定するような発言をする、、ことはないとして「気のせいで」との発言については強く否定しており仮にそのような発言があったとしても、その発言の趣意は痛みがあっても心配は要らないという点にあるところ、前記のとおり、乳房の痛みが乳がんの徴候とは認められない以上、乳がんとの関係で心配ないと述べたとしても、このことは、被告cの説明ないし指示義務違反の成否について、その結論を左右するものではない。 結論 以上によれば、原告が主張する過失が被告らのいずれについても認められないから(争点1 及び2 、その余の争点(争点3 及び4 )について判断するま( )( )( )( ))でもなく、被告らに損害賠償義務が発生しないことは明らかである。 したがって、原告の請求にはいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官藤山雅行裁判官金光秀明裁判官萩原孝基 (別紙)主張要約書第1平成13年10月1日(健診時)における乳房線検査(マンモグラフXィ)の実施義務の有無(争点1 )( )()原告の主張集団乳がん検診担当医師の注意義務 乳がん初期患者鑑別の一般的指標( )ア乳がん初期患者の症状としては、腫瘤(しこり)○疼痛○乳頭異常分泌○浮腫、発赤、陥没○などがそれぞれパーセンテージをもって指摘されており、一般的指標になるものである。 これらの症状の中には他の疾患の症状としても生ずることもあり、疾患によっては治療法が禁忌となる場合もあるので、鑑別をして、治療法を指示することが必要になる。 被告b及び被告cの注意義務は、大都会における乳腺疾患を扱う外科医(以下「乳腺外科医」という)の臨床医学の実践としての医療水準に基づ 場合もあるので、鑑別をして、治療法を指示することが必要になる。 被告b及び被告cの注意義務は、大都会における乳腺疾患を扱う外科医(以下「乳腺外科医」という)の臨床医学の実践としての医療水準に基づく注意義務と同じでなければならない。すなわち、主観的、客観的にがんが疑われる場合は、その確診と治療への橋渡しをしなくてはならないし、良性疾患、悪性疾患の鑑別が必要な場合は、鑑別検査をした上 で、良性または悪性に対する治療への橋渡しを伝えなければならない。 イ乳腺外科医を訪ねる受診者は、①自覚症状はないが、念のため検診を求める人②何らかの異常な自覚症状があり、医学的に診断を求める人に大別できるが、これを「痛み」の有無「しこり」の有無によって二次、元で分類すれば、イ痛みがなく、しこりもない人ロ痛みがなく、しこりがある人ハ痛みがあり、しこりがない人ニ痛みがあり、しこりもある人となる。 痛みは受診者にのみわかる症状であり、しこりは受診者がわかることのある症状であり、かつ医師が触診によってわかることのある症状である。 しこりを触診により発見できる率は低いとされ、これを過度に重視することは誤りである。 すなわち、しこりも人の感覚でわかる場合、人の感覚でもわからない場合があるのであり、しこりがないからと言って乳がんではないと断定できるものではない。 痛みについても、乳がんの初期患者に於いて自覚される率は報告者によって巾はあるものの、3~10%前後の報告がなされており(甲B2〔33頁・6%、甲B24〔30頁・2.5~7.3%、甲B29・〕〕4.7%、乳がんを疑う立派な症状の一つと言ってよく、別の明確な理)由により乳がん以外の疾患を措定できる場合を除き、乳がんに全く関係ないと排除することはできないし、排除する根拠はない。 上の 〕4.7%、乳がんを疑う立派な症状の一つと言ってよく、別の明確な理)由により乳がん以外の疾患を措定できる場合を除き、乳がんに全く関係ないと排除することはできないし、排除する根拠はない。 上の例でいうと、 イは、乳がんを疑う手がかりがないことを意味する○ロは、乳がんの疑いは否定できないので、良・悪の鑑別の必要な場○合に当たるハは、乳がんの疑いはそれだけでは否定はできないので、良・悪の○鑑別が必要な場合に当たるニは、乳がんの疑いもあるが、良性の疑いもあるので、良・悪の鑑○別が必要な場合に当たるのであって、ロ、ハ及びニの場合は、乳腺の症状がある場合として良悪の鑑別がまず考えられなくてはならない。 仮に、ハの場合が月経痛も疑われる場合であれば、月経期を外した時期での診察が必要であることを明確に受診者に伝える必要がある。 aは本件乳がん検診に際して、以前から時々右乳房に痛みがあることを被告cに申告した。 また、月経日の申告もしており、検診日はその20日後に当たる。 月経前一週間位乳房に痛みを生ずることがあるとされているが、aの申告した痛みの原因が何かが重要な問題である。 ウ以上から、被告cは、aに対して、次の説明と勧告をすべきであった。 [1]月経前後ある期間はその影響で痛みがある場合があるが、期間の経過と共に消失すること。 [2]痛みの原因が良性・悪性を問わず、疾患の兆候であることも考えられること。 [3]月経後の時期をずらして精密検査を受ける必要があること。 [4]検査は(乳腺)外科で受診すること。 、実際、乳がんは、通常、痛みを伴わないものとされていたが、それは患者に対して症状としての痛みを強調しすぎると誤った暗示を与えてしまうおそれがあるとの判断に基づき、一般人に乳がんの症状を啓蒙する 場合には、腫瘤こそ 、痛みを伴わないものとされていたが、それは患者に対して症状としての痛みを強調しすぎると誤った暗示を与えてしまうおそれがあるとの判断に基づき、一般人に乳がんの症状を啓蒙する 場合には、腫瘤こそ乳がんの最も重要な警告症状であり、その腫瘤は当然には痛みを伴わない。裏を返せば痛みがなくても腫瘤はありうるので自己検診が望ましい、ということを強調すべきというにすぎない。がん病変による周囲組織の圧迫・破壊・変性などによって痛みは生ずるのである。 そして、乳がんの場合、3~10%のケースは痛み(疼痛・圧痛)を、主訴とし、腫瘤に次ぐ症状(自覚症状として「しこり」のない場合には最も多い症状)に挙げられているのであり、痛みを無視することはまちがいなく早期発見の妨げになる。 エaは、本件健診時48歳だったので、行政の基準では視触診のみの対象者であったが、わが国では乳がん罹患率の最も高い年齢であった。 腫瘍の大きさと予後との間には、腫瘍増大につれて直線的に成績が低下するという密接な負の関係がみられる。乳がんの場合、腫瘍最大径がcmc 以下の場合は10年生存率が92.3%であるのに対し、1.1以上2以下の場合は77.9%、2.1以上3以下の場合mcmcmcmには67.5%と大幅に低下する。 したがって、治療成績の向上・死亡率の低下のためには、早期発見が重要となるが、前記のとおり、疼痛は、しこりに次ぐ重要な症状なのであるから、乳がん診療にあたる医師としては、患者の痛みの訴えを安易に考えてはならない。 集団検診契約の内容と担当医の注意義務の程度( )。 ア被告bは文京区との契約により文京区職員の乳がん検診を委託された集団検診の目的は、早期発見、早期治療であり、無自覚症状者の救()アい上げを中心として、検診の機会を治療に結び 度( )。 ア被告bは文京区との契約により文京区職員の乳がん検診を委託された集団検診の目的は、早期発見、早期治療であり、無自覚症状者の救()アい上げを中心として、検診の機会を治療に結びつけて、死亡者を減らし、また患者のを守ることにある。 QOL方法としては問診、視診、触診によりがんの疑いのある者を発見す()イ ることが第一である。 次に乳がんの疑いのある場合は、速やかに乳房線検査(マンモグXラフィ、超音波測量器などにより、精査し、確診をすることが必要で)ある。 被告bは乳房線検査(マンモグラフィ、超音波などの検査機器を( )ウX)所持しており、被告医師が、上記精査を指示すればaの痛みの症状を精査し乳がんを発見することができたものである。従って、被告cはaに対し2次検診を提示するべき注意義務があった。 aはこれまで、月経の時期のこのような痛みを一度も感じたことがなく本件健診の前、平成13年7月頃から時々感ずる痛みが異常と感じたために「気になる点」であると被告cにわざわざ告げている。 最近の乳がん検診では「視触診のみ」を廃止し、40代からⅩ線の検診をすると厚労省も検診の見直しをしているが、これは視触診のみではがんの早期発見が困難だからである。このことは医学界の常識でもあった。 aはまさに痛みをともなう自覚症状を訴え、乳がんの懸念を持ちながら検診を受けた者である。そのような者に対しては、単なる問診や触診だけでなく各種機器の利用による検診を受けるよう勧めるのが医師本来の態度であるべきである。 検診は、被告bと文京区との委託契約により実施されたが、aは費用を自分で負担し、自ら検診を受けたものである。 被告bは、文京区との間でなされた本件乳がん健診を含む委託契約、書に添付された仕様書により健診を行うことを 京区との委託契約により実施されたが、aは費用を自分で負担し、自ら検診を受けたものである。 被告bは、文京区との間でなされた本件乳がん健診を含む委託契約、書に添付された仕様書により健診を行うことを約し、その仕様書には「必要に応じ乳房X-P(2方向(4方向、超音波断層撮影を行)、)う」旨記載され、前記契約書1条には「仕様書に明示されていない事、項であっても受託業務の性質上当然必要なものは乙(注・被告bのこ と)の負担で行う」旨約されている。 本健診は、被告bの施設において実施され、同被告には当然前記検査設備が存在したものであることを前提とすれば、被告cが乳汁細胞診、乳房線検査(マンモグラフィ)等の検査を行うことに何らの制X約もないことは明らかである。 イところで、集団検診や人間ドックに代表されるような、いわゆる健()ア康診断は(そのほとんどが健常者を対象者とするのだから)早期発見、を目的・使命として実施されるものである。しかし、乳がん健診で原則的に実施されてきた視触診の診断率は必ずしも高くなく(甲B3、〔9~10頁〕によれば、乳がんの患者を対象としたにもかかわらず触診診断の感度は75.4%であった、かねてより視触診のみによ。)る診断・早期発見には限界のあることが医学界でも認識されていた。 X()イそこで、本件健診においても、50歳以上の対象者に対して乳房線検査(マンモグラフィ)が実施されていた。また、当時すでに、49歳未満の者に対しても、乳房線検査(マンモグラフィ)の導入をX検討すべきとされていた。 本件健診時におけるaの状態 本件健診時におけるaの乳がんの存在( )aは検診時「痛み」があり、痛みの進展により検診を受け乳がんが発見されているので(痛みの連続性の延長上に発見された)検診 本件健診時におけるaの状態 本件健診時におけるaの乳がんの存在( )aは検診時「痛み」があり、痛みの進展により検診を受け乳がんが発見されているので(痛みの連続性の延長上に発見された)検診時乳がんは存在した。 ア検診時におけるaの乳がんの大きさ被告らは、本件健診時には腫瘍は0.2程度であったから、たとmmえ乳房線検査(マンモグラフィ)を実施しても乳がんを発見することXは困難であったという。 しかし、本件では、本件健診時に撮影された画像が残っているわけでは ないので、乳がんの発見が不可能であったということが画像上示されているわけではない。 また、被告cは「0.2ミリ程度では痛むということもない」ともい、うが、原告が本件健診時に既に右乳房に痛みを感じていたことからすれば、むしろ、腫瘍は既に(乳管内に止まらず周囲の組織に浸潤し)痛みを感ずる程度の大きさに達していたことが推認される。 被告らが本件健診時の腫瘍の大きさを0.2程度と断定する根拠mmは、平成14年8月15日の腫瘍径と同年9月3日のそれとを比較し、ダブリングタイムを16.3日と算出した上で出されたものである。 しかし、被告らの主張するダブリングタイム計算式は、がん腫瘤が対数的に増大するという前提のもとで定められたにすぎず、乳がん患者を対象に、治療を施さずに腫瘍の生育状況を観察した結果として得られた法則ではなく、あくまで腫瘤が一定の速度(勾配)で倍増するとの仮定の下に計算式を借用しているにすぎない。しかし、実際にはがんの発育に伴ってダブリングタイムは変化するのであって、腫瘤が同速度で倍増するとの実証はないから、同計算式を借用して本件健診時の腫瘍径を推測することはできない。そして、本件において、平成14年8月15日から同年9月3日にかけては、既に腫瘍の最長 って、腫瘤が同速度で倍増するとの実証はないから、同計算式を借用して本件健診時の腫瘍径を推測することはできない。そして、本件において、平成14年8月15日から同年9月3日にかけては、既に腫瘍の最長径が2を超えていて、腫瘤容積の増大cm速度が加速していた時期であるから、この時期のデータを基礎とすることには慎重でなければならない。そうである以上、ダブリングタイム計算式は、がんの見落とし事例などを対象にその分布や平均値を調べるなどするには有用であるが、過去の腫瘍径を推測することは無意味である。 強いていうならば、本件においても、ダブリングタイムの統計上最も分布の多い31日以上61日未満であったと仮定して本件健診時の腫瘍径を推計せざるを得ない。その結果、平成13年10月1日当時の腫瘍径は1. 79ないし5.75であったことがうかがわれる(したがって、乳mm 房線検査(マンモグラフィ)を実施すれば乳がんを発見できた可能性Xがある。そして、このように考えれば、平成14年6月1日当時の腫瘍。)径は1ないし1.4、同年8月1日当時の腫瘍径は1.5ないし1. cm であるところ、このことは、腫瘍径が2ないし3になるとしこcmcmりに気づくものが多いという事実や、平成14年6月始めころにaが「しこりかな」と思ったことがあり、同年7月下旬になってしこりを確認したとのaの供述にも合致する。 イaが本件健診に先立ち、右乳房に痛みを感じていたことaは、平成13年の夏ごろより一貫して右乳房に痛みを覚え乳がんの不安を抱いていたものであるところ、結局、後に乳がんに罹患していたことが発覚したのだから、aが感じた乳房の痛みは、乳がんに起因するものであったことは明らかである。 ところで、被告らによれば、わずか0.2程度の腫瘤が痛みとしmm 結局、後に乳がんに罹患していたことが発覚したのだから、aが感じた乳房の痛みは、乳がんに起因するものであったことは明らかである。 ところで、被告らによれば、わずか0.2程度の腫瘤が痛みとしmmて知覚されることは考えられないということであるが、aが痛みを感じたという事実に鑑みれば、腫瘍が痛みを感じる程度の大きさに達していたとみるのが自然であって、腫瘤の大きさを0.2程度と断ずるこmmとこそ誤りである。 ウ石灰化の程度腫瘍それ自体を画像上捉えることができなかったとしても、乳がんの、石灰化を捉えることは可能である(甲A18、19によれば、石灰化は乳房線検査(マンモグラフィ)上、0.44ぐらいの大きさからXmm描出される。 。)以上につき、被告らは「腫瘍が0.44に達しない段階では、そ、mmの一部である石灰化も描出されない」と言うが、乳がんに伴なう石灰化の実体は、腫瘍(病巣)の周辺に集まる蓚酸カルシウムで、腫瘍の一部ではないから、腫瘍が0.44に達しないからといって、石灰化をmm 捉えることができないというわけではない。 本件健診時にaが乳房の痛みを訴えたこと( )アaは、過去被告bにおいて毎年の検診を受けていたが、それまでは特に自覚症状もなく、結果も異常所見なしであった。ところが、平成13、年度は、その夏頃より右乳房に痛みを感じ不安になっていた折でもあり事前に渡される質問票にも「右乳房に痛みのあること」を記載したほか、、「実父が胃癌に罹ったこと」を記載して、右乳房に痛みを感じ乳がんの不安を抱いていることを表した。以上の事実は、aが、翌年に乳がん(の疑い)を指摘された際「あのとき(=本件健診時に)右乳房の痛み、を訴えたにもかかわらず、なぜ取り上げてもらえなかったのか」と腹立たしい気持ちに ることを表した。以上の事実は、aが、翌年に乳がん(の疑い)を指摘された際「あのとき(=本件健診時に)右乳房の痛み、を訴えたにもかかわらず、なぜ取り上げてもらえなかったのか」と腹立たしい気持ちになり、まずは自らが右乳房の痛みを訴えた事実を確認すべく、直ちに質問票を取り寄せようとした事実からも明らかである。 イ以上に対し、被告らは「aが痛みを訴えていたのが右の乳房であった、か不明」と主張するが、aの感じた痛みは乳がんの不安を抱かせるもので(現に、aは乳がんに罹った、右乳房であった。 。)。 また、左右どちらか不明なら、問診時に確認すれば済んだことであるなお、被告cは、aが痛みないし、しこりを自覚した時期に齟齬があ、ると主張するが、最初に痛みを感じたのは、平成13年の夏から秋ごろその後も痛みは続いていたが、本件健診時に「痛みは気のせい」と言われていたので、aは、不安をうち消してきた。しかし、平成14年6月ころからは右乳房に鈍い痛みを何度か感じ、しこりもあるように感じ、同年7月後半には右乳房に鋭い痛みを感じ、しこりも大きくなっていると感じた。そこで、aは、乳がんを強く疑うようになった。 被告cの診察内容 乳がんの症状として疼痛を訴えるものは3~10%であり、疼痛は、腫( )瘤に次ぐ症状(しこりを自覚しない場合には、最も多い症状)であった。 したがって、被告cは、乳がん診療にあたる医師として、①治癒成績を向上させ、死亡率を減少させるには、早期発見こそが重要であること、②それに反して、視触診には限界のあることを十分認識し、③aが疼痛を訴えていること、④疼痛は(自覚症状として「しこり」のない場合には、最も、多い)重要な症状であること、⑤aの年齢・経歴などを踏まえた上で、aの訴え(=右乳房の疼痛)を精査し、乳がん診断の端緒 痛を訴えていること、④疼痛は(自覚症状として「しこり」のない場合には、最も、多い)重要な症状であること、⑤aの年齢・経歴などを踏まえた上で、aの訴え(=右乳房の疼痛)を精査し、乳がん診断の端緒としなければならなかった。 つまり、被告cは、aに対し、痛みの部位(片側か両側か・どのくらい)痛いのか・動かなくても痛いか・痛みのために不眠か・いつから・どの時間帯が痛いか・持続的か間欠的か・どこが痛いのか・痛みの性質はどういうものか(刺すような痛みなのか、焼けるような痛みなのか・(月経前の痛みの)ような生理的範囲のものではなく病気を疑うような)不安を抱くものかを問診し、aの訴えを精査して早期発見(本件では、具体的には乳房線検査X(マンモグラフィ)の実施)に努めなければならなかった。 ところが、被告cは、aの訴えを精査せず、右乳房の痛みを診察の端緒と( )しなかった。そのため、被告cは、aに対して乳房線検査(マンモグラXフィ)もしくは超音波検査を実施せず、その結果、乳がんを見落とした。 そればかりか、被告cは「(触知可能な)しこりがない」との理由で「痛( )、、みは気のせい」と診断を下し、aをして「痛みは乳がんに起因するもので、はない」と誤解させた。 被告bは委託契約に基づいて受診希望者に対し、婦人科健康診断及び乳房( )科健康診断を行い、乳房科健康診断は原則として外科専門医による問診及び触診を行い、必要に応じて乳汁細胞診、乳房線検査(マンモグラフィ、X)超音波断層撮影を行うと主張するが、それをaに対して行っていない。 まとめ 乳がんの集団検診の目的は早期発見、早期治療を目指し、自覚症状のない 人でも医師が救い上げることが目的である。 受検者には、症状のない人だけでなくある人もいる。 医師は臨床医学 ない。 まとめ 乳がんの集団検診の目的は早期発見、早期治療を目指し、自覚症状のない 人でも医師が救い上げることが目的である。 受検者には、症状のない人だけでなくある人もいる。 医師は臨床医学の実践としての医療水準に基づいて、自覚症状の有無を問わず、注意深く診る必要がある。 特に痛みの有無としこりの有無は必ずしも連関するものではないため、しこりのある者を精査するとしても、痛みのあるものにはその原因を見極め、腫瘍の有無、良性悪性の鑑別のため精査するべき注意義務がある。 集団検診の時間的限界が伴う場合は、近い精査日を指定するなどによるべきである。また被告bは精査のための超音波断層撮影装置、マンモグラフィなどの検査機器が備置されていたので容易に検査ができた。 aの右乳房の痛みと、痛みの進展により10か月後24と診断された痛mmみと、腫瘤の関連性からみて、集団検診時に精査していれば、乳がんの初期段階が機器によってキャッチされ可視下に置かれたことはまちがいない。 被告cは、aから右乳房痛の訴えを聞いていながら、これを殆ど無視して、心配ないなどと述べたことは間違いなく、少なくとも痛みに関して詳しく質問した形跡がない。 このことによりaの乳がんの早期発見を逸し、病期となって初めて治療IIBを受けるまで、治療の機を逸し、症状を進展させ、その後aが苦しむ原因となったものである。 ()被告らの主張集団乳がん検診担当医師の注意義務 乳がん初期患者鑑別の一般的指標( )、原告は、乳房の痛みが乳がんを疑うべき症状の一つであると主張するが医学的に誤った主張である。医学的には、乳房の痛みと乳がんの間の相関関係は完全に否定されており、乳房の痛みを理由として乳がんを疑うべき 医学的根拠は全く認められていない。 原告は、乳がん初期患者におい に誤った主張である。医学的には、乳房の痛みと乳がんの間の相関関係は完全に否定されており、乳房の痛みを理由として乳がんを疑うべき 医学的根拠は全く認められていない。 原告は、乳がん初期患者において痛みが自覚される率が3~10%前後あるとの報告をもって痛みが乳がんを疑うべき症状であると主張するよう、であるが、乳房の痛みは健康な者であってもしばしば自覚するものであり健康な者に対して同様の調査を行えばこれと同率かあるいはそれ以上の率(乳がん発生の可能性の低い若年者ほど乳房の痛みを感じやすいため)の健康な者が痛みの自覚症状を訴えるはずである。 仮に痛みを訴える者に対して、そのこと故に、集団検診においてさらなる検査を行わなければならないとしたら、理論的には痛みを訴えない他のすべての受検者に対してもさらなる検査を勧めなければならないことになる。痛みと乳がんの相関関係が否定されている以上、乳がんとの関係で、痛みを訴えている受検者を、痛みを訴えていない受検者と区別して特別扱いする理由は全くないからである。しかしながら、後述する集団検診の特殊性からしても、そのようなことは不可能であるし、また、受検者と医療機関との間の集団検診に関する契約からしてもそのようなことは要求されていない。 集団検診の特殊性( )集団検診としての乳がん検診は、一次検診として多数の受検者の中から乳がんの疑いのある者、さらに検査を要する者を選別(スクリーニング)、することを目的とするものである。一般的に、乳がんの検査方法としては問診、視診及び触診の他に、乳房線撮影(マンモグラフィ、超音波断層X)撮影(エコー検査、検査、乳汁細胞診など多様な検査があるが、多数)MRIの受検者を対象とする集団検診では、乳腺外科の診察のようにそれら全ての検査を行っていては集団検診の フィ、超音波断層X)撮影(エコー検査、検査、乳汁細胞診など多様な検査があるが、多数)MRIの受検者を対象とする集団検診では、乳腺外科の診察のようにそれら全ての検査を行っていては集団検診のシステム自体が成り立たない。そのような根本的な性質の違いから、集団検診と一般の診療では患者・受検者と医療機関の間の契約内容が異なり、集団検診に関する契約では、予め検査を 行う項目が限定的に決められている。一次検診としての乳がん集団検診において行うべき検査の内容は、この契約の内容によって規定されているものである。 本件集団検診における担当医の注意義務の程度( )、ア文京区と被告bとの間で結ばれていた本件健診に関する委託契約では。 検査項目は、第一次的には、外科専門医が行う問診及び視触診であった集団検診においても、乳汁細胞診、乳房線撮影、超音波断層撮影などXが追加的に行われる場合があるが、それらについては、問診及び視触診。 の結果、外科専門医が必要と判断した場合にのみ行うこととされていた以上のような検査項目の内容は、当時の厚生省老人保健福祉局老人保健課が出していた「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」にも合致するものであった。すなわち、aは本件健診当時48歳であったが、上記指針によれば、乳がん検診の検診項目としては、50歳未満の対象者については、問診並びに視診及び触診を行うものとされ、乳房線検査(マンモグラフィ)は50歳以上の対象者について、しかXも「原則として」行うとされているにすぎなかった。これは、年齢の若い女性の場合、残存乳腺が多く、それに邪魔されて腫瘤の読影が難しいため、乳房線撮影の集団検診における有効性について医学的確証がなXかったことによるものである。このように、乳房線検査(マンモグラX 性の場合、残存乳腺が多く、それに邪魔されて腫瘤の読影が難しいため、乳房線撮影の集団検診における有効性について医学的確証がなXかったことによるものである。このように、乳房線検査(マンモグラX。 フィ)の対象上記のように限定されていたことには十分な理由があったイ上記のような被告bの行う検診の内容については、集団検診の受検希望者に対して配布する「婦人健康診断のおすすめ」と題するパンフレット等に記載され、受検希望者に予め告知されていた。 そして、aは、以上のような検診の内容を前提として、本件健診の受検を申し込み、本件健診を受検した。 ウしたがって、担当医は、問診及び視触診によってaの乳がんの有無を 検査すれば足り、乳房線撮影その他の検査は、問診、視触診の結果、X異常が認められ、担当医が医学的に必要と判断した場合にのみ行えば足りるものであった。 エこの点、原告は、最近、厚生労働省が従来の指針を見直し、問診及び視触診と乳房線撮影との併用検診を行うよう指針を改めたことを挙げXるが、厚生労働省の指針の見直しが行われたのは本件健診から約2年が経過した後のことであり、本件健診とは関係がない。 本件健診時におけるaの状態 本件健診時に発見可能な乳がんが存在しなかったこと( )アダブリングタイムについて及び同計算に基づくaの乳がんの大きさがん細胞は、1個が2個、2個が4個というように倍々に増殖していくことから、ある時点のがん腫瘤の大きさ()とそれとは別の時点のd1がん腫瘤の大きさ()が分かれば、そこからがんが2倍に増殖するたd2めに要する時間(ダブリングタイム:)を計算できる。そして、ダブDTリングタイムが分かれば、さらに別の時点のがん腫瘤の大きさ()をd0計算上推定することができる。 、、、の間で d2めに要する時間(ダブリングタイム:)を計算できる。そして、ダブDTリングタイムが分かれば、さらに別の時点のがん腫瘤の大きさ()をd0計算上推定することができる。 、、、の間では次の関係が成り立つことが、医学上一般的にDTd0d1d2認められている。 =×1/10(-)DTloglogtd2d1※=腫瘤がからまで発育するのに要した時間td1d2=初回に計測した腫瘤径で、腫瘤陰影の長径と短径の和の2分のd1 =終回に計測した腫瘤径で、腫瘤陰影の長径と短径の和の2分のd2 =×1/10(-)DTloglogt'd1d0※=腫瘤がからまで発育するのに要した時間t'd0d1 =算出したい時点の腫瘤径で、腫瘤陰影の長径と短径の和の2分d0の1本件では、平成14年8月15日の被告bでの超音波断層撮影において、腫瘤の大きさは23.9×17.7×14.3()であった。同年9mm月3日のh病院における同じく超音波断層撮影においては、腫瘤の大きさは31×26×19()であった。 mmこれに基づいて本件健診時のがん腫瘤の大きさを計算すると、=19日t=(2.39+1.43)÷2=1.91()=0.2810d1d1cmlog=(3.1+1.9)÷2=2.5()=0.3979d2d2cmlog=19×0.1×1/(0.3979-0.2810)DT=16.253(約16.3日)本件健診の行われた平成13年10月1日から初回に腫瘤径を計測した平成14年8月15日までは318日経過しているので、318日t'=16.3=318×0.1×1/(0.2810-)logd0=0.281-{318×1/(10×16.3)}lo 測した平成14年8月15日までは318日経過しているので、318日t'=16.3=318×0.1×1/(0.2810-)logd0=0.281-{318×1/(10×16.3)}logd0=-1.6699=10の(-1.6699)乗d0=0.02138()=0.2138()cmmmしたがって、本件健診時のがん腫瘤の大きさは、約0.2138とmm計算される。 aのがんの病理所見では核分裂像多数を認め、組織学的グレード(悪性度)がグレード3とされ、その増殖スピードは他症例の平均よりも相当に速いものと推測されるが、上記ダブリングタイムはこの病理所見とも一致し、信頼性の高い数値と考えられる。 また、ダブリングタイムの算定の基礎となるデータにつき、異なる検査機関のデータを用いてはいるが、超音波断層撮影機器の計測マークはがん腫瘤の大きさの絶対値を計るものであって、検査機器の種類や検査機関の違いによっては大きな違いを生じない。 、さらに、被告bで行った超音波断層撮影は高解像度の機器が使用され実際にも極めて明瞭にがんの低エコー領域(黒い部分)と正常乳腺の高エコー領域(白っぽい部分)が描出されており、計測マークの位置も適切であって、高い精度の計測がなされていると評価できる。 これに対して、一般的に、写真は5幅の水平方向のスライス写CTmm真であり、数の腫瘤の割面の大きさを計測する場合には、3次元の連cm。 続的な断層写真である超音波断層撮影に比べて、精度が劣るものであるなお、平成15年8月27日から平成16年1月15日当時、aの乳、がんの増殖スピードは、既に行われていた化学療法や放射線療法の効果さらには当時継続中であったタモキシフェンによるホルモン療法の効果によって大幅に抑制されていたものと考えら 1月15日当時、aの乳、がんの増殖スピードは、既に行われていた化学療法や放射線療法の効果さらには当時継続中であったタモキシフェンによるホルモン療法の効果によって大幅に抑制されていたものと考えられる。 特に、aの乳がんの増殖スピードがタモキシフェン服用によって大幅に減速していたとの点は、aの乳がんの病理所見からも裏付けられる。 aのh病院における病理検査結果によれば、aの乳がんは「2+(6ER0%から70%、1+」で、エストロゲン受容体が強陽性、プロゲス)PgRテロン受容体も陽性の性質を有する乳がんである。したがって、aの乳がんは、タモキシフェンによるホルモン療法に対してかなりの感受性を有するがん、すなわちホルモン療法により相当程度増殖を抑えられるタイプの乳がんであって、平成15年8月27日から平成16年1月15日当時、その増殖スピードは、当時継続中であったホルモン療法によって、相当程度抑制されていたものと考えるのが相当である(さらに、それ以前の化学療法、放射線療法の効果によっても、aの乳がんの増殖力が減殺されてい たと考えられる。 。)ゆえに、この時期の乳がんの大きさを基礎にダブリングタイムを算出することには全く合理性がない。 むしろ、化学療法、放射線療法、ホルモン療法といった各種療法によって乳がんの増殖スピードが抑制されていたこの時期のデータを根拠としてさえ、ダブリングタイムが54.5日となるのであって、治療開始以前の増殖スピードが極めて速いものであったことが推測される。 m以上のように、本件健診当時のaの乳がんの大きさは約0.2138と算定されるが、このような微細な大きさの腫瘤を触診で感知することmが不可能なことは明らかである。また、乳房線撮影や超音波断層撮影でXも、乳がんを発見するには、腫瘤径がおおよそ 約0.2138と算定されるが、このような微細な大きさの腫瘤を触診で感知することmが不可能なことは明らかである。また、乳房線撮影や超音波断層撮影でXも、乳がんを発見するには、腫瘤径がおおよそ5程度は必要である。 mmしたがって、本件健診当時のaの乳がんは、視触診のみならず乳房線X撮影や超音波断層撮影でも発見不可能な大きさであった。 イ石灰化の程度と乳がんの発見可能性乳がんの石灰化はがんの腫瘤の一部が石灰化するものであるので、石灰化する部分はがん腫瘤全体から見ればそのごく一部にすぎない。本件では、がん腫瘤全体の大きさですら0.2138であったのであるから、石mm灰化部分は、仮に本件健診時に石灰化部分が生じていたとしても、0.2 よりもはるかに小さく、およそ乳房線撮影の画像上に描出mmXされる大きさではなかった。 本件健診時には、aは右乳房のしこりを訴えていないこと( )本件健診時に、aは、乳房のしこり、乳頭異常分泌等の自覚症状を訴えていなかった。 被告cの診察内容 本件健診を担当した被告cは、まず、事前にa本人が記入し、その後、看護師が補充した問診事項の記載を確認した。問診事項に対するaの回答は、 乳房に関しては、痛みが時々あるが、乳頭からの異常分泌物やしこりの自覚症状はないというものであった。 問診に引き続き、被告cは、aの左右乳房の視触診を行った。視診については、乳頭からの異常分泌、乳頭の陥没その他の異常は特に見られなかった。触診は、左右の乳房並びに左右の腋下リンパ節及び鎖骨上リンパ節について、仰臥位、あるいは仰臥位と座位を併用して行ったが、特にしこり、腫脹、乳頭からの異常分泌等は認められなかった。 さらに、触診に際して、被告cは、痛みを訴える受検者に対しては、月経周期にある受検者であれば 臥位、あるいは仰臥位と座位を併用して行ったが、特にしこり、腫脹、乳頭からの異常分泌等は認められなかった。 さらに、触診に際して、被告cは、痛みを訴える受検者に対しては、月経周期にある受検者であれば、一般に「どこに痛みを感じますか。月経前に痛みは強まりますか」といった質問をする。その上で、特定の部位に痛みを訴えた。 場合には、それを参考に触診を行うが、本件では、痛みを感じる部分を含めて、上記のとおり、しこり、腫脹等の異常は認められなかったものである。 視触診によって、乳頭からの異常分泌や乳頭の陥没、乳房及びリンパ節のしこり、腫脹等がいずれも認められなかったことから、被告は、aについて、異常なしと判定した。 なお、aは、被告cが「痛みは気のせいで大丈夫」と言ったと主張してい、るが、閉経前の女性の場合、月経直前等に乳腺が張って乳房の痛みを引き起こすことはよくあることなので、被告cが、乳房の痛みを訴える受検者に対して「痛みは気のせい」などと回答することはあり得ない。 なお、痛みと乳がんの相関関係については、繰り返しになるので、前述第1(被告らの主張)11 を引用するが、医学的には、乳房の痛みと乳がんとの相( )関関係は完全に否定されており、乳房の痛みを理由として乳がんを疑うべき医学的根拠は全く認められていない。 さらに、上記のとおり、本件健診時のaの乳がんの大きさは約0.2138と推定されるが、このような微細な乳がんが周囲の神経を圧迫刺激して痛mmみを発生させることはおよそ考えられず、結果としてみても、本件健診時にa が訴えていた痛みが乳がんと無関係な痛みであったことは明白である。 まとめ 以上のように、本件健診において、被告cには、視触診によって異常を認め得ないような場合にまで、乳房線撮影、超音波断層撮影等を施行する義X務はな 無関係な痛みであったことは明白である。 まとめ 以上のように、本件健診において、被告cには、視触診によって異常を認め得ないような場合にまで、乳房線撮影、超音波断層撮影等を施行する義X務はなかった。そして、aについては、問診及び視触診の結果、乳がんを疑うべき異常は何ら認められなかった。乳房の痛みについては、乳がんとの相関関係が医学的に否定されており、乳がんを疑うべき症状とは言えない。 結果的にも、aの乳がんは、本件健診当時、仮に発生していたとしても約0.2138という極めて微小なものであり、およそ視触診によって発mm見することは不可能なものであったばかりか、仮に乳房線撮影や超音波断X層撮影を行っても発見不可能なものであった。また、およそ神経等を圧迫刺激して乳房の痛みを発生させるような大きさではなく、本件健診当時、aの訴えていた痛みが乳がんと無関係なものであったことも明らかである。 以上より、被告cの行った検診に過失はない。 第2被告cによる説明義務違反ないし指示義務違反の有無(争点2 )( )()原告の主張被告cには説明義務ないし指示義務があること 腫瘍の大きさと予後との関係と早期発見の重要性( )「乳癌の原発巣の大きさとリンパ節転移や遠隔転移の頻度は乳癌の予後を規定する最も重要な因子であり、この両者は明かに相関していることから、できるだけ小さな原発病巣を発見して治療することによって乳癌の生存率が向上することは確かである。……検診によって小さな癌を発見することこそが、生存率を向上させ、かつ、手術を縮小することによる患者のの向上にも役立つことになる。 QOL」 また、腫瘍の大きさと予後との間には、腫瘍増大につれて直線的に成績が低下するという明らかな負の関係がみられ、乳がんの場合、腫瘍最大径cmc 患者のの向上にも役立つことになる。 QOL」 また、腫瘍の大きさと予後との間には、腫瘍増大につれて直線的に成績が低下するという明らかな負の関係がみられ、乳がんの場合、腫瘍最大径cmcが1以下の場合は10年生存率が92.3%であるのに対し、1.1以上2以下の場合は77.9%、2.1以上3以下の場合にmcmcmcmは67.5%と大幅に低下する。 したがって、治療成績の向上・死亡率の低下のためには、乳がんの原発巣が小さいうちに早期発見することが重要となる。 aが右乳房に痛みがあると訴えたこと( )アaは、平成13年10月1日の健診受診時に、乳房の痛みを右乳房について訴えていた。 この点について、被告b作成の問診票に「痛み」が「時々あり」としか記していない。そして、被告らは、そのことを論拠にして「そのよう、な(部位を特定した)訴えはなかった」というのであればまだしも、問診票(被告作成)を根拠に「右乳房に痛みありとの訴えはなかった」などと主張するが、不合理である。 また、被告らは「そのような特徴的な訴えがあれば、転記者はそのま、、ま転記するはず」などと言うが、被告らは痛みを軽視しているのだから「右乳房に痛みあり」との(質問票の)記載を特徴的な訴えと認識することはない。つまり、問診票で左右が特定されていないのは転記者が省略したからであって、問診票の記載(=転記者の認識)を根拠に「aによる訴えがなかった」と断定することはできない。 イ本件健診にあたって、aが訴えた痛みが右乳房のそれであることは、次のことから明らかである。 ①aは、平成14年8月20日にh病院に提出するため作成した乳腺予診カードでは、右乳房につき「時々痛い」と記し、乳房の痛みは右乳房についてであることを予診にあたり述べており(甲A16〔1 である。 ①aは、平成14年8月20日にh病院に提出するため作成した乳腺予診カードでは、右乳房につき「時々痛い」と記し、乳房の痛みは右乳房についてであることを予診にあたり述べており(甲A16〔10 頁、このことから右乳房の痛みの訴えは一貫している。また、同年〕)9月12日に同病院のj医師に対する経過の説明には、集団検診の頃OKである「昨年秋よりにぶい痛み」が「昨年10月の集団検診でと」言われた旨、説明している。この記載だけでは、乳房の痛みが右乳房か左乳房かははっきりしないが、しかし、前記予診カード(甲A16〔10頁)で、右乳房が痛いと訴えている上でのことであるから、〕これに引き続く診療日の乳房の痛みが、当然、右乳房の痛みについての説明であることは明らかである。このことは、少なくとも、aは本件集団検診の約10か月余後には、本件集団検診時に痛みがあったのは右乳房についてであることを、医師に申告しているのである。 ②そしてaが、本件集団検診にあたり被告らに提出したのは、婦人健康診断通知書(丙A8の1、2)であるところ、その質問票「乳房科に関する質問」の自覚症状欄には「いたみ」に関する項目があり、かつ、その具体的項目は「1.無2.有」だけであったが、aは、同箇所には「有」に○をし、更にその上「その他気になるところ」欄の、項目の「有」にも○をつけて、これに続けて「右乳房が時々痛む」と記したものである。 上記に述べたとおり、本件診療の約10か月余後に、本件診療当時に右乳房に痛みがあった旨担当医師に説明している以上、本件診療当時にも乳房の痛みは右側であった旨記述していたことは、容易に推認されるものである。 ウaは、平成14年8月15日に乳がん(の疑い)を指摘され、その4日後の8月19日に問診票のコピーが欲しいと被告財団法人 乳房の痛みは右側であった旨記述していたことは、容易に推認されるものである。 ウaは、平成14年8月15日に乳がん(の疑い)を指摘され、その4日後の8月19日に問診票のコピーが欲しいと被告財団法人に依頼している。この時、aが依頼した問診票とは、丙A8号証の2の用紙にa自身が記したものであり、その依頼の理由は、10か月余後になってがんの疑いがあると指摘された右乳房に、検診時に右乳房が時々痛むと記載 していたことを証明したかったからである。aのこの客観的行動は「あ、のとき(=本件健診時に)右乳房の痛みを訴えたにもかかわらず、なぜ取り上げてもらえなかったのか」と腹立たしい気持ちになり、まずは自らが右乳房の痛みを訴えた事実を確認すべく、直ちに質問票を取り寄せようとしたことからも明らかである。ところが、この時点では、被告の弁解によっても1年以内で、それが存在していたはずであったのに、被告が送付したのは甲A1号証であった。 ダブリングタイム計算による乳がんの大きさの変化( )すでに第1の2の1 で述べたとおり、aの乳がんの腫瘤径は、本件診療( )時で約5であった。 mmところで、本件健診の結果、担当医が被検診者に対して告げるべき判定結果の種別中の経過観察については、1か月後、3か月後、6か月後、1年後という類型があるが、そのいずれの時点をとっても、約5以上のmm大きさがあったということができる。 仮に、被告らの主張に基づき、本件健診時における腫瘍の大きさが0. 程度にすぎなかったと仮定しても、マンモグラフィーは、微細石灰mm化や1以下の乳がんのようにしこりを触れない早期乳がんの発見に貢mm献するものであり、本件健診から52日後の平成13年11月22日には腫瘍自体も0.44に達するから、被告らの立場に立っても石灰化 や1以下の乳がんのようにしこりを触れない早期乳がんの発見に貢mm献するものであり、本件健診から52日後の平成13年11月22日には腫瘍自体も0.44に達するから、被告らの立場に立っても石灰化なmmいし腫瘤を画像上捉えることは可能であったし、別表記載のとおり、さらに1か月後(本件健診から3か月後)ないし2か月後には、病変の変化を画像上捉えることが可能であった。 被告cがすべき説明ないし指示 1 ①乳房に関する視触診ではその確診率は高くなく、限界や見落としがあ( )り、死亡率を減少させるのは有用かどうか疑問視されている。 また、非触知病変が特殊な病態ではなく、多くはその延長上に触知腫 瘤があると認識するならば、早期治療のために非触知病変の診断が必須である。そのことゆえに、非触知病変発見のきっかけとなる、無症状画像併用検診・自覚症状の精査等は必須である。とりわけ、疼痛は、前記のとおり、しこりに次ぐ重要な症状なのであるから、乳がん診療にあたる医師としては、患者の訴えを安易に考えてはならない。 ②乳房疼痛は、腫瘤(しこり)程ではもとよりないが、その他の乳がんの症状としては2番目に頻度が高く、乳がんの初期患者に自覚される割合は3~10%前後の報告がなされているが(前記第1の1、100人)に3人ないし10人というその割合は、決して軽視してはならない高い割合であるといってよい「片方のバストに急に痛みが起きたり、生理で。 もないのに不規則な痛みがある時は、治療が必要な場合もあります。すぐに専門医の診療を受けて下さい」と示唆する文献もある。 ③しかも、aの乳がんの痛みは右乳房のみであり、その発現の仕方も時、々というもので、生理等と連動した周期性のものではなかった。そこでaの乳房の痛みは、乳腺症等に基づくものとは異なることが推測さ ③しかも、aの乳がんの痛みは右乳房のみであり、その発現の仕方も時、々というもので、生理等と連動した周期性のものではなかった。そこでaの乳房の痛みは、乳腺症等に基づくものとは異なることが推測されていた。 ④そして、従前、aは、1年毎に乳がん検診をしてきており、本件当時の婦人科的検診では、e医師により1年後の経過観察の所見が出されていたことから、本件当時に乳房の痛みに関する適切な指導がなされない場合には、その後も自覚症状が続いても約1年間、これが放置されることは容易に予想し得たところである。 ⑤一方、前記(第2(原告の主張)11 )のとおり、乳がんは原発巣が( )小さいうちに早期発見することが重要であり、また、ダブリングタイムの一般的知見によっても、一たび症状が発現した場合の乳がんは、1年間ものブランクのうちに相当大きくなり、かつ、転移する可能性があることは、医師として承知し、あるいは念頭に置いておいて然るべきであ った。現に、aの乳がんは病期はに達しており、腋下のリンパ節にIIBも転移していたものである。 ⑥しかも、本件健診票には、判定欄が予め設けられているが、それによれば、検診を担当した医師は、「1、異常なし2、精査(精密検査)3、経観(経過観察)→1か月後、3か月後、6か月後、1年後4、その他」のいずれか一を選定することが予定されていた。この判定欄は、検診という大量処理に当たって、検診結果に基づく最低限の振り分けを看過しないように予め整理し、用意された項目であるといってよい。 以上によれば、被告医師としては、上記1 ①~⑤について考慮し、aに( )( )対して、経過を観察した上、もしも、痛みの症状が続くようであれば精密検査を受ける必要があることを指導助言すべき注意義務があったというべきである は、上記1 ①~⑤について考慮し、aに( )( )対して、経過を観察した上、もしも、痛みの症状が続くようであれば精密検査を受ける必要があることを指導助言すべき注意義務があったというべきである。 被告cの実際の説明ないし指示 ところが、被告cは、aの申告した痛みの症状について、その具体的な内容等について確認する等して、これに注意を払うことはなく、痛みについては心配ない、気のせいだ等と述べただけで、前記2に述べたような痛みの症状について経過を観察し、これが続くようであれば精密検査を受けるべき旨の説明・指導義務を怠ったものである。 被告cが、aに対する検診に対して極めて杜撰な処理をしたことは、検診結果を記した記録において、左右乳房の触診・視診の結果について問題ないと記したほか、リンパ節の可能性についてマイナスであったことを記したものの、総合判定結果を記すべき判定欄(右下)にはいかなる結果も記していないことから、容易に推認し得るところである。 まとめ 乳がんは、早期発見、早期治療が肝要であり、具体的な症状が乳がんに起因している場合に1年間無為に経過した場合には、がんは相当進行し、他に転移してしまうことがありうるところ、乳がんの症状として疼痛を訴えるものはしこり(腫瘤)についでおり、その割合も3~10%もあるから、軽視することはできない。特に、aの場合、乳腺症の場合のような、月経と連動、した周期性の両乳房の痛みとは異なり、右乳房の非周期性の疼痛であるから、乳がんに起因している疑いがあった上、乳がん検診における視診、触診では見落としが少なくなく、且つ又、非触知病変の発見の重要性が説かれる実情にある。被告cは、過去の検診状況から、本件当時、乳房の痛みについて特別の指導がない限り、約1年後の検診まで、aが精密検査などを受ける機会 が少なくなく、且つ又、非触知病変の発見の重要性が説かれる実情にある。被告cは、過去の検診状況から、本件当時、乳房の痛みについて特別の指導がない限り、約1年後の検診まで、aが精密検査などを受ける機会を逸することは予見できたものである上、本件健診においては、その結果として、総合判定の項目があり、記載箇所があり、3か月、6か月といった経過観察指示項目も用意されていたのであるから、被告cとしては、少なくとも今後も疼痛の症状が続くようであれば、専門医による精密検査を受けるように指導するべきであったのに、これを怠って、漫然と疼痛については問題ないかのような、気のせいであるかのような応答をしたために、aは本件健診後も右乳房の疼痛を時々覚えていたが、専門医師による精密検査を受診するべき必要性を認識できず、その機会を逸して、乳がんがステージに至IIBるまで発見することができず、かつ、腋下リンパ節への転移という結果も招来するなど早期診断、早期治療の機会を奪われたものである。 ()被告らの主張本件健診時におけるaの状態から、乳がんを疑う必要がないこと 本件健診時にaが左右いずれの乳房に痛みを訴えていたかは、現在では( )明らかでないが、片側のみ痛むと訴えていたならば、特徴的な訴えである 以上、その旨問診欄に記載されるはずであるが、実際にはそのような記載はないので、問診票記入時に、aはそのような訴えをしていなかった可能性が大きい。 また、被告cは、乳房の痛みを訴える受検者については、視触診の段階で、月経周期にある受検者であれば、一般に「どこに痛みを感じますか。 月経前に痛みは強まりますか」といった質問をし、その上で触診を行うの。 で、本件でもそのような手順を取ったはずであるが、本件では、痛みを訴えた部分を含めて、しこり、腫脹等の異常は 痛みを感じますか。 月経前に痛みは強まりますか」といった質問をし、その上で触診を行うの。 で、本件でもそのような手順を取ったはずであるが、本件では、痛みを訴えた部分を含めて、しこり、腫脹等の異常は全く認められなかった。 、以上のように、視触診の結果、aには乳頭からの異常分泌や乳頭の陥没乳房及びリンパ節のしこり、腫脹等がいずれも認められなかったのであるから、乳がんを疑うべき根拠は全くなかった。 痛みの自覚症状の点については、第1(被告らの主張)11 のとおり、( )( )医学的には、乳房の痛みと乳がんとの間には全く相関関係がなく、痛みを触診の参考とする以上に、痛みを訴えていることから乳がんを疑うべきであるという医学的根拠は認められていない。 、( )3さらに、痛みは腫瘤が乳房内の神経を圧迫刺激して生じるものであるが結果として見ても、前述のとおり、本件健診時のaの乳がんの大きさは約0.2138であり、およそ乳房に痛みを発生させるような大きさでmmはなく、本件健診時のaの乳房の痛みが乳がんを原因とするものでなかったことは明らかである。 以上より、本件健診当時、aには視触診の結果、乳がんを疑うべき症状はなかった。 被告cの実際の説明ないし指示 被告cは、乳房の痛みを訴える受検者については以上のような手順で視触診を行い、その結果腫瘤が認められなければ「痛みを感じる部分も含めてしこりには触れませんでした。月経前の乳房の痛みは、ほとんどの場合、病的 なものではありません」とアドバイスする。このような説明は、健康な受検。 者に対して不必要な不安を与えないようにするためであるが、当然、次の検診までの1年間に乳がんが絶対に発症しないことを意味するものではない。 さらに、被告cは、特に異常の認められなかった受検者に対して、一般的に「自 要な不安を与えないようにするためであるが、当然、次の検診までの1年間に乳がんが絶対に発症しないことを意味するものではない。 さらに、被告cは、特に異常の認められなかった受検者に対して、一般的に「自己検診の習慣をつけ、異常を感じたら外科の病院で診察を受けて下さ、い」とアドバイスしている。 。 、また、被告bでは、昭和63年ころから、乳房検診の初回受検者に対して検診受検後も1月に一度は乳房自己検診の習慣をつけること、その他乳房自己検診の具体的方法を記したパンフレットを渡している。aも本件健診以前にこのパンフレットを受け取り、自己検診の必要性やその方法については分かっていた。 被告cは、集団検診に際して、いつも上記のような説明やアドバイスをしているので、aに対しても同様の説明、アドバイスを行ったはずである。 なお、被告cが、aに対して「痛みは気のせいで」などと言っていないことは前述のとおりである。 本件健診当時aの訴えていた痛みが乳がんと全く無関係なものであり、また、乳房の痛みを乳がんとの相関関係が医学的に否定されている以上、上記のような説明、アドバイスを超えた説明を受検者にする義務は考えられない。 以上より、被告cに説明義務違反はない。 第3説明・指示義務違反と乳がん発見遅滞との間の因果関係の有無(争点3 )( )()原告の主張 aは、右乳房の痛みについて、不安を覚えて本件健診を受けたが、被告cからは何ら適切な説明・指導はなく、右乳房の痛みは何ら心配ないものと理解した。そして、本件当時、aは文京区議会議員として多忙な日々を送って いたことから、相変わらず、右乳房に時々痛みを感じることはあったが、それを異常なものとは考えることができずに、日々の仕事に忙殺され、精密検査を受ける必要があることには思い至らなかった。 その結果、aは たことから、相変わらず、右乳房に時々痛みを感じることはあったが、それを異常なものとは考えることができずに、日々の仕事に忙殺され、精密検査を受ける必要があることには思い至らなかった。 その結果、aは平成14年8月15日、乳がんの定期健診を受けるまでの10か月余にわたって、乳がんの痛みの症状が続いていたのに、これを問題視できずに精密検査を受ける必要性に思い至らず、その機会を逸し、その間に乳がんは増殖し、がん細胞の右腋窩リンパ節への転移の結果を生じたものである。 被告cが前記の経過観察・精密検査の指導義務を履行していたならば、aは、右乳房の痛みが持続していたのであるから、いかに多忙を極めていたとしても、然るべき医療機関において、マンモグラフィー検査等による精密検査を受けたはずであり、その結果、早期に乳がんの診断を受け、早期の治療を開始することができたことは明らかである。 ()被告らの主張第2(被告らの主張)に記載したとおり、原告の主張はその前提を欠く。 ( )なお、痛みと乳がんの間に相関関係がないことは第1(被告らの主張)11その他に記載したとおりである。また、被告cが、本件健診時にaに対して行った説明、アドバイスについては、第2(被告らの主張)2で述べたとおりである。 第4損害額(争点4 )( )()原告の主張次の1ないし6の合計金は金352万3487円であるところ、それらのうち金221万1907円を内金請求し、これに7の慰謝料1000万円を加え た1221万1907円を請求する。 60万6650円治療費平成14年8月20日から平成16年1月20日までの間、h病院にて治療を受けた治療費の合計である。 2万9320円薬剤費aが平成14年9月24日から平成16年1月20日までに支払った薬剤費の合計である。 月20日から平成16年1月20日までの間、h病院にて治療を受けた治療費の合計である。 2万9320円薬剤費aが平成14年9月24日から平成16年1月20日までに支払った薬剤費の合計である。 146万6175円抗がん食品代、aが抗がんのために購入した健康食品の代金合計である。これについては甲A第16号証・15頁に「不要である」との記載はあるが、口頭では担当医から服用の許諾を得たので、服用を続けたものである。また、同25頁には、服用する健康食品を変えた記載があるが「不要」もしくは「勧めない」旨の記載はない。また、l病院に転院後も、担当医から服用の許諾を得ている。 4万0600円交通費aが上記h病院に通院した交通費の合計である。 6万9162円雑費aが、頭髪が抜け落ちたために必要になったカツラやその他雑品を購入するのに用いた額の合計である。 平成16年2月17日以降の治療費等 aの損害のうち、その後の乳がん治療にかかる医療費と医療を受けるための交通費は次のとおりである。 h病院(H16.2.17~16.12.17)( )医療費249,410円くすり代22,630円交通費(通院19回)11,680円 m病院(H16.12.18~17.3.17)( )医療費176,120円交通費(通院8回)10,720円 l病院(H17.4.4~17.6.27)( )医療費466,030円くすり代37,350円交通費(通院8回)18,640円 雑費(入院雑費、かつら等)46,840円( ) 健康食品272,160円( )以上合計1,311,580円 1000万0000円慰謝料aは、被告cが適切な診療・指示をしてくれていれば、乳がんを早期に発見でき、腋下リンパ節 ) 健康食品272,160円( )以上合計1,311,580円 1000万0000円慰謝料aは、被告cが適切な診療・指示をしてくれていれば、乳がんを早期に発見でき、腋下リンパ節転移という事態を回避し得た可能性が高く、かつ、がんそのものについても、手術を経ずに化学療法や放射線治療で腫瘍を消滅させえたか、あるいは乳房温存法によるより侵襲の少ない治療の機会を与えられ、予後もよく、死に対する恐怖も軽減された。aには、そのような早期治療の可能性の一切を奪われたもので、そのことによる精神的苦痛は、1000万円を下らない。 ()被告らの主張 aが1から6の支出をしたとの点は不知。 また、いずれの費用も、仮にaの乳がんがより早期に発見されていたとしても支出したはずの費用であり、原告が主張する本件過失行為との間の因果関係が認められない。特に、抗がん食品については、h病院の医師から服用を勧めないと指示されていたにも拘わらず、aの独自の判断で服用していたものであり、不必要な支出であるから、本件過失行為との間の因果関係がな い。 なお、甲A第16号証25頁には服用する健康食品を変更した旨の記載があるが、同箇所の記載によれば、新しく服用し始めた健康食品も従前服用を勧めないと医師からアドバイスされていた食品と同じ乳酸菌生成物質であり、医学的に服用が勧められないものであることに変わりはない。したがって、服用する健康食品の種類を変更した後に関しても、健康食品に関する出費は本件過失行為との間に因果関係がない。 上記(原告の主張)7の慰謝料の記載に関して、仮に被告cの指示によって現実よりも早期にaの乳がんが発見されていたとしても、aの乳がんの悪性度等からして、その時点で既に腋下リンパ節に転移していた可能性が高い。また、仮に乳がんが の記載に関して、仮に被告cの指示によって現実よりも早期にaの乳がんが発見されていたとしても、aの乳がんの悪性度等からして、その時点で既に腋下リンパ節に転移していた可能性が高い。また、仮に乳がんがより早期に発見されても、通常、乳がんが化学療法、放射線療法のみで消失する例は少なく、結局、外科的に切除することになったものと思われる。したがって、慰謝料算定の基礎として原告の主張するところは医学的に見て根拠に乏しい。 以上
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