主文 被告人を懲役20年に処する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は,昭和58年ころ,Aと知り合い,同人から覚せい剤や小遣いをもらうなどするうち,同人を兄貴分として信頼し,恩義を感じ,Aの言うことならどんなことでも聞いてやらなければならないと感じるまでになっていた。そして,被告人は,昭和58年5月,Aの服役中に同人の妻や愛人に覚せい剤を与えて肉体関係を持つなどしたBをAが殺害した際に,同人に協力を求められ,上記Bの殺害に加わったことから懲役11年に処せられ,服役した。 Aは,平成10年3月に刑務所を出所した後,土木作業員として稼働し,同年秋ころには,Cの名称で土木建設業を営むようになった。一方,被告人は,前記刑の執行を受け終わった後,更に別の罪を犯して服役し,平成11年2月に出所し,広島県山県郡a町内の建設業者の従業員として稼働し,その事務所敷地内のコンテナ住居に寝起きするようになったが,そのころ,被告人のほうからAに連絡を取り,Aとの付き合いを再開した。 被告人は,平成12年初めころ,覚せい剤を使用していることを理由に,当時の勤め先を解雇され,職と住居を失うことになったが,Aは,被告人を前記殺人事件に引き込んで長期間の服役を余儀なくさせたことについて負い目を感じていた上,被告人の技術を必要としていたことから,被告人を雇用することとし,他の従業員よりも高額の日当を支払ったり,被告人のために住居を用意したばかりでなく,平成12年9月1日付けでCを有限会社にした際には,被告人を常務取締役にするなど厚遇したので,被告人は,Aを頼りになる存在として信頼し,更に強く恩義を感じるようになった。 一方,Dは,大型ダンプカーを1台所有し,従業員2名を使って土木業を営んでいたが,仕事 取締役にするなど厚遇したので,被告人は,Aを頼りになる存在として信頼し,更に強く恩義を感じるようになった。 一方,Dは,大型ダンプカーを1台所有し,従業員2名を使って土木業を営んでいたが,仕事が少なかったことから,Aが,Dに対して,Cの仕事を請け負わせたり,従業員の給料を用立ててやるなどし,平成12年に入ったころには,DをCの従業員として雇い入れた上,同人のダンプカーを買い取った。ところが,このダンプカーの代金の支払をめぐってAとDとの間で激しいトラブルとなったり,Dが,仕事の進め方などについてもことあるごとに,他の従業員らの前でもかまわず,社長であるAを手厳しく批判していたばかりでなく,Cの従業員旅行の旅行積立金をめぐって,Dが他の従業員をも巻き込んで,Aと激しく対立した。 これらに対して,Aは,自己の言い分に理が少ないものがあったことに加えて,Dが元暴力団組員で体格もよく,気も荒いため同人を恐ろしく思っていたことから,従業員であるDから,他の従業員の面前で厳しく批判されても,正面切って強く反論することもできず,そのことによって恥をかかされても,同人を力ずくで制圧したり解雇したりできないことを非常に悔しく感じていた。 被告人は,Dとは特に悪い関係にはなかったが,同人と周囲の者とのトラブルを見聞きしたり,Dが種々の悪事を自慢げに話すのを聞き,同人に対して警戒感を抱いていた。そして,被告人がAから専用車として与えられていた自動車をDに貸してやったところ,同人にその自動車を勝手に売却処分されてしまったことから,同人に馬鹿にされていると感じ,強い憤りを感じたものの,体格がよく気も荒い同人を恐れていたことから,周囲の者に対しては強がりを言うものの,Dに対しては直接抗議をすることもできず,そのことを屈辱に感じていた。 平成13年3月末ころ い憤りを感じたものの,体格がよく気も荒い同人を恐れていたことから,周囲の者に対しては強がりを言うものの,Dに対しては直接抗議をすることもできず,そのことを屈辱に感じていた。 平成13年3月末ころ,被告人は,既にCを解雇されていたが,生活費に窮したことから,借金をするためにAと会った際,同人から,Dに対して強い憤懣を抱いているにもかかわらず,同人を解雇することができず,対応に苦慮していることを聞き,覚せい剤を使用していて気が大きくなっていたこともあって,軽い気持ちで,同人を殺せばいいという意味で,「おらんようにすればええじゃろうが。」と言ったところ,Aはそれを真剣に受け止めた。 そして,Aは,同年4月8日ころの午前9時ないし午前10時ころ,当時の被告人方を訪れ,被告人を屋外に連れ出した上,被告人に対して,Dを殺害する決意を告げた上,同人の殺害に協力してくれるよう頼んだ。これに対して,被告人は,自らもDに対して憤懣を募らせ,屈辱感を抱いていたことに加え,同人の殺害は自らが提案したことでもあり,また,Aに更に協力してその恩義に報いなければならないと考え,Aに協力してDを殺害することを決意した。そこで,Aと被告人は,Cが管理する広島県庄原市b町字cd番地所在の資材置場で,Dに一人で作業をさせ,昼休みに,2人で同所を訪れ,包丁でDを刺殺した上,その死体を同所の地中に埋めることを計画し,実行日を同月11日と決めた。 そこで,Aは,Dに対し,前記資材置場に放置されている故障したブルドーザーをその場に埋める作業をするよう指示したが,同月9日又は10日ころ,Dから,同月11日は仕事を休む旨の申し出があったので,実行日を同月12日に変更することとして,被告人にその旨伝え,被告人もそれを了承した。 同月12日朝,Aは,Dを前記資材置場まで自動車で送って Dから,同月11日は仕事を休む旨の申し出があったので,実行日を同月12日に変更することとして,被告人にその旨伝え,被告人もそれを了承した。 同月12日朝,Aは,Dを前記資材置場まで自動車で送って行き,他の工事現場を巡回するなどした後,午前11時ころに上記資材置場に戻ってきたところ,Dが指示どおりにパワーショベルを使用して穴を掘り,ブルドーザーを地中に埋める作業をしていたので,同人の作業を手伝ったり,近くのコンビニエンスストアで弁当を買って来るなどしながら,被告人が来るのを待った。 一方,被告人は,同日朝,自宅から出刃包丁1本を持ち出し,以前から自動車内にあった洋包丁1本とともに所持して,同日正午ころ,自動車で前記資材置場に到着し,上記包丁2本をいつでも取り出せるように上記自動車の運転席シートの上に置き,運転席側のドアを開けたままDらに近付き,Dに被告人らの意図を察知されないよう,あらかじめ打ち合わせてあったとおり,Aに対して未払いの給料を請求しに来たかのように装って話し掛け,さらに,Dの注意をAからそらすため,Dに対して,自動車を勝手に売却したことをなじって口論を仕掛けた。 (罪となるべき事実)被告人は,前記Aと共謀の上,第1 平成13年4月12日正午ころ,前記Cが管理する,広島県庄原市b町字cd番地所在の前記資材置場において,前記D(当時46歳)に対し,Aが,あらかじめ準備していた牛刀様の包丁1本でいきなりDの腹部を2回突き刺し,更に,その傍らに立っていた被告人が前記自動車内から取り出して所持していた前記包丁2本のうち,洋包丁1本をもぎ取って,Dの腹部を2回突き刺し,被告人が,所持していた出刃包丁1本でDの背部を2回くらい突き刺すなどして,そのころ,同所において同人を失血死させて死亡させ,もって同人を殺害した第2 同日午後1 ぎ取って,Dの腹部を2回突き刺し,被告人が,所持していた出刃包丁1本でDの背部を2回くらい突き刺すなどして,そのころ,同所において同人を失血死させて死亡させ,もって同人を殺害した第2 同日午後1時ころ,前記第1記載の場所において,同所の地面を油圧ショベルで掘削して,その穴に前記Dの死体を投入して埋め戻し,もって,同人の死体を遺棄したものである。 (証拠の標目)(省略)(弁護人の主張に対する判断)弁護人は,被告人が本件犯行を捜査官に初めて供述した時点では,捜査官は,本件の事件性についても,被告人が本件の犯人であることについても,確証を抱いていなかったのであるから,被告人には自首が成立する旨主張する。 そこで検討するに,関係各証拠によれば,捜査官は,服役中の被告人に面会して,本件被害者のことで知っていることを話してほしいと促したところ,被告人は,その場では犯行を自供する決心が付かず,気持ちを整理したいので翌日に再度来てほしい旨述べ,翌日,再び面会に来た捜査官に本件犯行の自供を始めたことが認められるところ,被告人は,本件犯行後,Cの従業員ら周辺者に対して本件犯行をほのめかす言動をしていたことに加え,AとDとの間に激しいトラブルがあった直後に,AがDに特段必要のない作業を命じ,その日から同人の姿が見えなくなり,その後,Aが前記資材置場の掘削や整地について異常なほど神経質になっていたことなどから,Cの従業員の間では,Aと被告人がDを殺害して,その遺体を上記資材置場に埋めているのではないかというもっぱらのうわさであったことなどを併せ考えれば,捜査官は,被告人らが本件各事件の犯人であることを,相当高い蓋然性をもって特定した上で,被告人に任意の供述を促したと見るべきであり,したがって,被告人に自首は成立しない。 (累犯前科及び確定裁判) 捜査官は,被告人らが本件各事件の犯人であることを,相当高い蓋然性をもって特定した上で,被告人に任意の供述を促したと見るべきであり,したがって,被告人に自首は成立しない。 (累犯前科及び確定裁判)(省略)(法令の適用)(省略)(量刑の理由)本件は,被告人がAと共謀して,同人の経営する土木建設会社の従業員を,資材置場に誘い出して刺殺した上,その遺体をその場に埋めたという,殺人及び死体遺棄の事案である。 被告人は,自己がAから借りて使用していた自動車を被害者に貸してやったところ,これを勝手に売却されるなどしたことから,同人に馬鹿にされていると感じながらも,同人を恐れて正面切って抗議もできず,そのことを屈辱と感じていたことに加え,被告人が強い恩義を感じていたAが,従業員である被害者に面目をつぶされながら,同人を恐れて強い態度に出ることができず,その扱いに苦慮しており,被告人の提案を真に受けてDを殺害しようと考えていることを知り,Aに協力しようと考えて本件犯行に及んだものであって,その動機は,余りに短絡的かつ自己中心的であり,また,個人的恩義が人命に優先するという極めて非人道的な価値観に基づくものであって,誠に悪質と言うほかない。 そして,その犯行も,あらかじめ,第三者に目撃,発見されにくい資材置場を犯行場所として選び,そこで被害者に1人で作業をさせるように段取りをし,被害者に疑いを抱かれないように芝居を打った上で,被害者を不意打ちにして殺害し,遺体を埋めたという極めて計画的なものであるだけでなく,あらかじめ準備していた出刃包丁など殺傷能力が極めて大きい凶器を用いて,全く無防備の被害者を2人がかりで至近距離から襲撃し,何らの迷いもなく,その腹部などを力一杯突き刺すなどした上,その遺体を土中に埋めて放置するという,卑劣かつ情け容赦 能力が極めて大きい凶器を用いて,全く無防備の被害者を2人がかりで至近距離から襲撃し,何らの迷いもなく,その腹部などを力一杯突き刺すなどした上,その遺体を土中に埋めて放置するという,卑劣かつ情け容赦のない残忍なものである。 そして,被告人は,Aから協力を求められたという理由だけで,恩義さえある友人を生き埋めにして殺害したという殺人の前科を有するところ,本件は,その動機も態様も全く軌を一にするものであり,人命の尊厳に対する配慮はみじんもうかがわれず,人命軽視の態度は甚だしい。 被害者は,46歳という働き盛りで,一家の支えとして家族を養い,特に先天的な障害を持つ二男を慈しむ生活を送っていたところ,被告人らとのトラブルはあったものの,殺害される理由など全くないのに,突然,妻と幼い子供らを残したまま,理不尽にも命を奪われたものであって,その無念さは察するに余りある。 また,被害者の家族は,被害者が殺害され土中に埋められているという事実を知らないまま,1年近くにわたり,不安な思いを抱きながら被害者の帰りを待ち続けた末に,被害者が殺害されたという事実を知らされた上,いまだに遺体が発見されていないものであって,その衝撃や悲嘆は想像を絶するものがあり,さらに,愛する夫であり,父親として一家の支えでもあった被害者を被告人らの手で奪われ,困窮生活を余儀なくされているのであって,被告人らに対する怒りや恨みも筆舌に尽くしがたいものと推察される。 それにもかかわらず,被告人らからは,被害弁償は全く行われておらず,将来にわたってもその見込みはほとんどないのであって,その処罰感情が峻烈であるのも当然と言うべきである。 加えて,本件の残忍な犯行が,地域社会に与えたであろう衝撃や不安も無視することはできない。 さらに,被告人は,前記殺人の前科を含め,11犯にも及 の処罰感情が峻烈であるのも当然と言うべきである。 加えて,本件の残忍な犯行が,地域社会に与えたであろう衝撃や不安も無視することはできない。 さらに,被告人は,前記殺人の前科を含め,11犯にも及ぶ多数の前科を有しており,前刑終了後も覚せい剤の使用を続けるなど,その犯罪性向は非常に根深いことに加え,本件犯行後,何食わぬ顔で,被害者の年老いた母親をだまして金銭を巻き上げるなど,犯行後の行状も劣悪である。 これらによれば,被告人の刑事責任は非常に重大である。 そこで,本件各犯行を主導したのはAであって,被告人の本件への関与は比較的従属的であったこと,本件各犯行や被告人の前科の内容に照らせば厳しい処罰が当然予想されるにもかかわらず,自ら本件各犯行の詳細を明らかにし,確たる物証がない本件事案の解明に積極的に協力するなど,反省の情が顕著であることや,被告人の年齢など,被告人のために斟酌できる事情を考慮してもなお,被告人に対しては,主文程度の刑をもって臨み,その刑事責任を全うさせるとともに,長く贖罪の生活を送らせる必要がある。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑-懲役20年)平成15年1月8日広島地方裁判所刑事第一部裁判長裁判官山森茂生裁判官髙原章裁判官寺元義人
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