平成22(行ウ)459 行政処分無効確認請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年7月20日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-81582.txt

判決文本文24,893 文字)

平成23年7月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官山下京子平成22年(行ウ)第459号行政処分無効確認請求事件口頭弁論終結日平成23年4月18日判決熊本県山鹿市<以下略>原告 X同訴訟代理人弁護士木下健治同補佐人弁理士唐木浄治東京都千代田区<以下略>被告国処分行政庁特許庁長官岩井良行同訴訟代理人弁護士大西達夫同指定代理人高橋良昌同佐藤一行同大江摩弥子同河原研治 主文 1 本件訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 特許庁長官が四国計測工業株式会社に対して,平成15年1月31日付けでした同社を特許出願人とする平成14年9月4日付け特許願(特願2002-259297号)についての発明者補正手続を受理した処分は,無効であることを確認する。 2 特許庁長官が四国計測工業株式会社に対して,平成16年5月10日付け受 付番号第503 2002-259297号)についての発明者補正手続を受理した処分は,無効であることを確認する。 2 特許庁長官が四国計測工業株式会社に対して,平成16年5月10日付け受 付番号第50300162656号をもってした上記1の特許出願に関する職権訂正処分は,無効であることを確認する。 3 特許庁長官が四国計測工業株式会社に対してした平成16年4月2日付けの上記1の特許出願に対する「公開特許公報」(特開2004-101204)の掲載は,無効であることを確認する。 4 特許庁長官が四国計測工業株式会社に対してした平成19年10月24日付けの上記1の特許出願に関する特許公報(特許第3998184号)の掲載処分は,無効であることを確認する。 5 特許庁長官が四国計測工業株式会社に対してした平成19年7月30日起案の上記1の特許出願の特許査定処分は,無効であることを確認する。 6 特許庁長官が四国計測工業株式会社に対してした平成19年8月17日付けの上記1の特許出願の権利設定登録(特許第3998184号)の処分は,無効であることを確認する。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告に対し,四国計測工業株式会社を特許出願人とする平成14年9月4日付け特許願(特願2002-259297号)について,真の発明者が原告であるなどと主張して,①当該特許出願について行われた発明者を変更する手続補正の受理(請求1項),②上記①の手続補正に係る内容等についての職権訂正(請求2項),③上記②の訂正前の発明者を掲載した公開特許公報の掲載(請求3項),④上記②の訂正前の発明者を掲載した特許公報の掲載(請求4項),⑤当該特許出願についての特許査定(請求5項),⑥上記⑤の特許権についての設定登録(請求6項)がいずれも無効であることの確認を求め ),④上記②の訂正前の発明者を掲載した特許公報の掲載(請求4項),⑤当該特許出願についての特許査定(請求5項),⑥上記⑤の特許権についての設定登録(請求6項)がいずれも無効であることの確認を求めた事案である。 1 前提事実((1)~(6),(8)~(13)の各事実のうち,無効審判請求及び審決取消訴訟が提起され,それぞれ審判請求不成立,請求棄却の結論であったことは当事者間に争いがない。その余は後掲の証拠等により認められる。なお,争いの ない事実についても,関係証拠を挙げた。)(1) 特許出願四国計測工業株式会社(以下「四国計測」という。)は,平成14年9月4日,特許庁長官に対し,発明の名称を「有精卵の検査法および装置」とする発明(以下「本件発明」という。)について,特許願(特願2002-259297号,以下「本願」という。)を提出した。本願の出願当初に提出された願書では,発明者は,香川県仲多度郡<以下略>四国計測内を住所又は居所とするA,B,C及びDの4名(以下「Aら4名」という。)とされていた。 (甲1,乙5)(2) 手続補正書の提出四国計測は,平成15年1月31日,特許庁長官に対し,本願の出願当初に提出された願書について,発明者欄の記載を補正することを内容とする手続補正書(以下「本件手続補正書」という。)を提出した。本件手続補正書では,【手続補正 1】として,【補正対象書類名】特許願,【補正対象項目名】発明者,【補正方法】追加とされ,【補正の内容】の【発明者】は,香川県観音寺市<以下略>財団法人阪大微生物病研究会観音寺研究所内を住所又は居所とするE及びFの2名(以下「Eら2名」という。)とされていた。 (甲2,4の1,4の2。甲2の記載内容は,甲4の1の職権訂正後の内容が記 法人阪大微生物病研究会観音寺研究所内を住所又は居所とするE及びFの2名(以下「Eら2名」という。)とされていた。 (甲2,4の1,4の2。甲2の記載内容は,甲4の1の職権訂正後の内容が記載されているものである。)(3) 手続補足書の提出四国計測は,平成15年2月3日,特許庁長官に対し,本件手続補正書を補足する手続補足書(以下「本件手続補足書」という。)を提出した。本件手続補足書では,【補足対象書類名】手続補正書,【補足の内容】発明者相互の宣誓書,発明者変更の理由を記載した書面とされ,発明者相互の宣誓書 2通(Aら4名とEら2名が相互に本件発明が6名の共同発明であることに相違ない旨を述べたものである。)と発明者変更の理由を記載した書面1通が提出された。 (甲3の1~3の4)(4) 公開特許公報の掲載特許庁長官は,平成16年4月2日,本願を出願公開し,特許庁が発行した本願に係る公開特許公報(特開2004-101204号,以下「本件公開公報」という。)には,発明者としてEら2名が掲載された。 (甲17,20の1,乙1)(5) 本件手続補正書の発明者の記載についての職権訂正特許庁長官は,本件手続補正書について,平成16年5月10日,職権により,【手続補正 1】欄の【補正方法】及び【補正の内容】の【発明者】の各欄の記載について,【補正方法】の欄の記載を追加から変更に,【補正の内容】の【発明者】の欄の記載を,Eら2名から,Eら2名にAら4名を加えた合計6名に,それぞれ訂正し(以下「本件訂正」という。),四国計測に通知した。 (甲4の1,4の2,乙2)(6) 本件公開公報についての訂正公報特許庁は,平成16年9月9日,本件公開公報について,発明者の誤載によ 件訂正」という。),四国計測に通知した。 (甲4の1,4の2,乙2)(6) 本件公開公報についての訂正公報特許庁は,平成16年9月9日,本件公開公報について,発明者の誤載により下記のとおり全文を訂正することを【訂正要旨】とし,発明者としてAら4名とEら2名の合計6名を掲載した訂正公報を発行した。 (甲20の2,乙3)(7) 出願審査請求四国計測は,平成17年8月12日,特許庁長官に対し,本願についての出願審査請求をした。 (乙4) (8) 特許査定審査官は,平成19年7月30日,本願について,拒絶の理由を発見しないとして,特許査定をした(以下「本件特許査定」といい,本件特許査定に係る特許を「本件特許」という。)。 (甲8)(9) 特許権の設定の登録特許庁長官は,平成19年8月17日,本件特許に係る特許権(以下「本件特許権」という。)について,設定の登録をした(特許第3998184号,以下「本件設定登録」という。)。 (乙5)(10) 特許公報の掲載特許庁は,平成19年10月24日,本件特許について,特許番号,登録日,特許権者,発明者等を掲載した特許公報(以下「本件特許公報」という。 )を発行し,本件特許公報には,発明者としてEら2名が掲載された。 (甲21の1,乙6)(11) 本件特許公報についての訂正公報特許庁は,平成19年12月26日,本件特許公報について,発明者の脱落により下記のとおり全文を訂正することを【訂正要旨】とし,発明者としてAら4名とEら2名の合計6名を掲載した訂正公報を発行した。 (甲21の2,乙7)(12) 無効審判請求原告は,平成20年10月16日,四国計測を被請求人として とし,発明者としてAら4名とEら2名の合計6名を掲載した訂正公報を発行した。 (甲21の2,乙7)(12) 無効審判請求原告は,平成20年10月16日,四国計測を被請求人として,本件特許について特許無効審判を請求し(無効2008-800209号,以下「前件無効審判」という。),①本願についてされた特許請求の範囲の補正が新規事項の追加禁止に違反する,②上記①の補正が却下されるべきものであるとすると,本件発明は新規性及び進歩性がない発明である,③本件特許は, 原告が開発した装置をあたかも四国計測が開発したようにホームページに掲載するとともに,財団法人阪大微生物病研究会に持ち込み,その研究者を発明者にして四国計測が本願をした疑いがあり,また,本件特許の出願時における発明者がEら2名でありながら,その後Aら4名が発明者に追加されていることなどによると,正しい発明者は出願時の発明者ではなく追加された発明者であるから,出願時の発明者は冒認発明者であるなどと主張した。 しかし,特許庁は,平成21年6月30日,前件無効審判について,請求は成り立たない旨の審決をした(以下「前件審決」という。)。 (甲16の1,甲33の1,乙8,10)(13) 審決取消訴訟原告は,平成21年8月5日,知的財産高等裁判所に対し,四国計測を被告として,前件審決について,審決取消訴訟を提起し(同裁判所平成21年(行ケ)第10213号事件,以下「前訴審決取消訴訟」という。),①本願についてされた特許請求の範囲の補正は,本件発明について新規事項を追加するものであり,特許法17条の2第3項の規定する要件を満たさないから,前件審決が当該補正は同項の要件を満たすとした判断は誤りである,②本件発明の発明者が原告であることは明らかであり,四国計 を追加するものであり,特許法17条の2第3項の規定する要件を満たさないから,前件審決が当該補正は同項の要件を満たすとした判断は誤りである,②本件発明の発明者が原告であることは明らかであり,四国計測は原告から特許を受ける権利を承継していないなど,本件特許は四国計測の冒認出願に対してされたものであるから,前件審決が本件特許は冒認出願に対してされたものではないとした判断は誤りである,③審判には原告に充分な主張の機会を与えなかったなどの手続上の誤りがあるなどと主張した。しかし,同裁判所は,平成22年4月27日,前訴審決取消訴訟について,原告の請求を棄却する旨の判決をした(以下「前訴判決」という。)。 (甲33の2)(14) 前訴判決及び前件審決の確定前訴判決が確定したため,前件審決も平成22年5月11日確定した。 (乙5) 2 争点(1) 本案前の争点ア訴訟類型選択の適否イ処分性の有無ウ原告適格の有無エ狭義の訴えの利益の有無(2) 本案の争点本件手続補正書の受理(請求1項),本件訂正(請求2項),本件公開公報の掲載(請求3項),本件特許公報の掲載(請求4項),本件特許査定(請求5項)及び本件査定登録(請求6項)についての無効事由の有無 3 争点に関する当事者の主張(1) 本案前の争点についてア訴訟類型選択の適否(争点(1)ア)について(被告の主張)(ア) 特許法及びその関連法規においては,特許権を発生させる処分(特許査定,設定の登録)の効力を争う手段として,特許無効審判の手続が定められており,特許を無効とする理由が制限的に列挙され(特許法123条1項各号),特許無効審判によってのみ特許を無効とすることがで 許査定,設定の登録)の効力を争う手段として,特許無効審判の手続が定められており,特許を無効とする理由が制限的に列挙され(特許法123条1項各号),特許無効審判によってのみ特許を無効とすることができ,裁判所その他の機関が特許を無効にする処分をすることはできないとされるとともに,特許無効の審決が確定したときは特許権が初めから存在しなかったものとみなす旨規定されている(同法125条)。また,特許無効審判の審決に対する取消しの訴え(審決取消訴訟)について,行政事件訴訟法の特則として,東京高等裁判所の専属管轄(特許法178条1項)及び同裁判所の特別の支部である知的財産高等裁判所による取扱い(知的財産高等裁判所設置法2条2号),出訴期間の制限(特 許法178条3項),裁決主義(同条6項),被告適格(同法179条ただし書)等が定められている。 (イ) これは,特許すべき旨の査定から特許権の設定の登録に至るまでの特許権を発生させる一連の処分(以下「特許処分」という。)が,特許出願,出願公開,審査請求等といった一連の手続において,不特定多数の第三者にその特許出願に係る発明の内容を公開した上で,方式要件・実体要件両面にわたる厳格かつ専門技術的な審査を経て行われるものであること,特許処分によっていったん有効に発生した特許権の効力をさかのぼって失わせた場合には,特許権者のみならずその特許権についての専用実施権者,通常実施権者等の第三者の利害にも重大な影響を及ぼすものとなることに照らし,通常の行政事件訴訟法による抗告訴訟の手続によってではなく,特許無効審判及びその審決取消訴訟という特別な手続によって初めてその処分の効力を否定できるとすることにより,特許処分及びこれにより発生した特許権の法的安定性を確保し,もって発明を奨励し,産業の発達に寄 無効審判及びその審決取消訴訟という特別な手続によって初めてその処分の効力を否定できるとすることにより,特許処分及びこれにより発生した特許権の法的安定性を確保し,もって発明を奨励し,産業の発達に寄与するとの特許法の目的(同法1条)を実現するという趣旨によるものであると解される。 他方,本来無効とされるべき特許に係る特許発明について,特許権者に独占権を付与することは,第三者にとって本来認められるべき自由な技術の利用を阻害し,公共の利益に反する結果を招くこととなる。そのような観点から,特許法では,一定の無効理由(同法123条1項2号及び6号)以外の無効理由については何人でも特許無効審判を請求することができるとされ(同条2項),審判請求の期間につき,特許権の設定の登録後はいつでも請求することができ,特許権の消滅後においても請求することができるとされている(同条3項)ほか,特許無効審判の確定審決(請求不成立審決)の登録があったときは,同一の事実及び同一の証拠に基づく無効審判の請求は確定審決の一事不再理効によって 制限されるものの(同法167条),これと異なる事実又は証拠に基づく無効審判は何人でも同法123条2項の規定により請求することができるものとされている。 (ウ) このように,特許法等の関係法規においては,特許処分及びこれにより発生する特許権の法的安定性と,特許を無効とすべき公共の利益ないし第三者の固有の利益との調和の観点から,特許の有効性を争う手続として,特許無効審判によるものとし,特許処分の効力が否定される場合を法定の無効理由が認められる場合に限定する一方で,特許無効審判の請求期間について制限を加えず,請求人適格や確定審決後の再度の無効審判請求を幅広く認めているのである。そうすると,特許無効審判及びそ を法定の無効理由が認められる場合に限定する一方で,特許無効審判の請求期間について制限を加えず,請求人適格や確定審決後の再度の無効審判請求を幅広く認めているのである。そうすると,特許無効審判及びその審判の審決取消訴訟は,特許処分の効力を争う者にとっては,その処分の違法が取り消し得べき瑕疵であるか,それとも処分の当然無効をもたらす重大かつ明白な瑕疵であるかを問わず,特許処分の公定力を否定して特許を対世的に無効とするための唯一の行政争訟の手続であり,特許処分について,行政事件訴訟法の無効等確認の訴えに関する規定は適用されず,特許無効審判及びその審決に対する審決取消訴訟によらずにその当然無効を主張することは許されないと解するのが相当である。 したがって,本件訴えのうち,特許処分としての本件特許査定及び本件設定登録の無効確認を求める訴え(請求5項及び6項)は,訴訟類型の選択を誤ったものというべきであり,本件手続補正書の受理,本件訂正並びに本件公開公報及び本件特許公報の各掲載の無効確認を求める訴え(請求1項~4項)も,その重大かつ明白な違法による当然無効を本件特許の無効の根拠として主張する点において,やはり訴訟類型の選択を誤ったものというほかない。 (原告の主張) 特許法195条の3の規定は,行政手続法の適用除外条項であり,特許法又は特許法に基づく命令の規定による処分については,行政手続法第2章及び第3章の規定は適用しない旨を定めている。この特許法等に基づく処分に対する手続等が行政手続法の適用除外とされているのは,特許庁長官が定めている審査基準で定められている処分のことであり,審査基準で定められている中に願書等の受理手続等は含まれていない。願書に記載されている発明者と特許出願人に関する審査についての のは,特許庁長官が定めている審査基準で定められている処分のことであり,審査基準で定められている中に願書等の受理手続等は含まれていない。願書に記載されている発明者と特許出願人に関する審査についての審査手続は,審査基準の適用外となっているので,これに対する不服は特許無効審判手続でなく,行政事件訴訟手続で行われるべきである。 審査基準は,特許庁に対して特許出願された発明の内容(明細書,特許請求の範囲,発明の詳細な説明,図面,要約等)を審査して拒絶査定又は特許査定の処分をすることになっており,発明者及び特許出願人について定めている願書について何ら定めておらず,運用上は審査官には願書について審査する権限も責任も義務もないことになっている。 したがって,特許出願の願書に関する行政手続は,特許法によらず一般法である行政事件訴訟で審理することになるものと解する。 (被告の反論)確かに,特許出願に関する手続が特許法で定める方式に違反しているときその他不適法な場合には,特許・実用新案審査基準に基づく審査官の実体審査に入ることなく,方式審査のみに基づいて,同法18条1項又は18条の2第1項の規定による却下処分がされ,その処分に不服があるときは,行政不服審査法による不服申立てを経て,取消訴訟を提起することができる(同法184条の2参照)。 しかしながら,いわゆる冒認出願が特許出願について拒絶理由とされ(特許法49条7号),更には特許無効審判における無効理由とされていること(同法123条1項6号)からも明らかなとおり,特許出願の願書に記 載された特許出願人及び発明者に関する事項については,これも審査官による実体審査の対象となり,更には特許無効審判における冒認出願等の無効理由についての審理の対象と おり,特許出願の願書に記 載された特許出願人及び発明者に関する事項については,これも審査官による実体審査の対象となり,更には特許無効審判における冒認出願等の無効理由についての審理の対象となることは明らかである。 イ処分性の有無(争点(1)イ)について(被告の主張)(ア) 無効等確認の訴え(行政事件訴訟法3条4項)の対象とされる「処分」とは,行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解するのが相当である(最高裁昭和30年2月24日第一小法廷判決・民集9巻2号217頁,最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。 (イ) そこで,本件訂正の経過についてみると,本件手続補正書では,補正方法欄の記載が追加,発明者欄の記載がEら2名とされており,本件手続補足書では,本件手続補正書による手続補正が,本件発明の共同発明者として,Aら4名にEら2名を追加した6名を発明者とする趣旨の手続補正である旨明示していたにもかかわらず,本件公開公報で発明者としてEら2名のみが掲載されてしまったのを受けて,特許庁長官において,既に提出済みであって,特許庁の電子計算機に備え付けられたファイルに記録されている本件手続補正書の補正方法欄の記載を変更に,発明者欄の記載をEら2名及びAら4名にそれぞれ職権で訂正したというものである。 すなわち,本件手続補正書は,本件手続補足書と併せて読めば,手続補正をした手続者(出願人)の合理的意思(本願の出願当初に提出された願書の発明者欄の記載を,Aら4名のみから,Eら2名及びAら すなわち,本件手続補正書は,本件手続補足書と併せて読めば,手続補正をした手続者(出願人)の合理的意思(本願の出願当初に提出された願書の発明者欄の記載を,Aら4名のみから,Eら2名及びAら4名の合計6名に補正する意思)が明示されており,ただ形式的な記載事項 に不備があったものである。そのような不備がある場合,本来であれば手続補正書を提出した手続者(出願人)において,自らが提出した手続補正書の記載内容を訂正すべきところ,特許出願手続における事務処理の便宜上,特許庁長官において,既に提出を受けて特許庁のファイル記録事項に記録されている手続補正書の記載内容を直接訂正したものと認められる。そうすると,本件訂正は,本件手続補正書による手続補正の効果という点において,手続者(出願人)自らが行う本件手続補正書の訂正と何ら変わるところがない上,特許庁のファイル記録事項の訂正という点では行政組織内部で行われる事実行為にすぎないのであるから,行政庁が公権力の行使として行う行為とは認められず,その行為によって直接国民の権利義務ないし法律上の地位に影響を与えるものということもできない。 したがって,本件訂正は,行政事件訴訟法による抗告訴訟の対象となる処分には当たらないというべきである。 (ウ) 次に,公開特許公報の発行は,出願公開の方法として特許庁が行うものであるところ(特許法64条1項及び2項,193条1項),出願公開制度の趣旨・目的は,審査請求制度(同法48条の3)の下では,審査の遅延により,出願された発明について先願(同法39条)の地位を持つ特許出願の内容が長期間公表されないまま,同一の発明について第三者が重複して研究投資,技術開発を行うことがあり,そのような第三者にとって予想外の時期に先願が権利化され,企業 同法39条)の地位を持つ特許出願の内容が長期間公表されないまま,同一の発明について第三者が重複して研究投資,技術開発を行うことがあり,そのような第三者にとって予想外の時期に先願が権利化され,企業活動の遂行を不安定にするなどの弊害を生ずるので,出願後一定の期間を経過したときは,審査の進行状況に関係なく,特許出願の内容を一般公衆に公表することにより,審査の遅延による上記弊害を除去するというところにある。 そして,出願公開の法的効果としては,これにより出願公開された特許出願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載 された発明と同一の発明について,第三者がした後の特許出願を拒絶する根拠とされ(特許法29条の2),出願公開された発明の特許出願人には,特許権の設定登録前に業としてその発明を実施した者に対する補償金請求権が付与される(同法65条1項)ほか,出願公開後にその特許出願に係る発明を第三者が実施している場合において必要があるときは,審査官にその特許出願を他の特許出願に優先して審査させることができるものとされている(同法48条の6,特許法施行規則31条の3)。しかしながら,これらの出願公開の法的効果によって生ずる国民の権利義務ないし法的地位への影響についてみると,出願公開された特許出願に係る拡大先願が後願を排除する効力は,特定の個別具体的な後願に対してではなく,当該拡大先願の出願日より後に同一の発明についてされた後願一般に及ぶものである。補償金請求権の付与や優先審査の法的効果についてみても,これらにより第三者に生ずる不利益は,いずれも出願公開後に特許出願に係る発明と同一の発明を業として実施する不特定の第三者一般に及ぶものであり,特定の実施行為を行う第三者を対象として生ずるものではなく,これらによる 者に生ずる不利益は,いずれも出願公開後に特許出願に係る発明と同一の発明を業として実施する不特定の第三者一般に及ぶものであり,特定の実施行為を行う第三者を対象として生ずるものではなく,これらによる利益を享受する特許出願人との関係においても,それぞれ出願公開以外の要件(補償金請求権については警告,特許権の設定の登録等,優先審査についてはその必要性等)を満たさなければ法律効果を生じないものである。そうすると,特許法に規定する出願公開の法的効果は,特許出願の内容の一般公衆への公表という行政行為について法が特に定めた効果であって,出願公開そのものが直接に国民の権利義務ないし法的地位に変動をもたらす性質を有するものということはできない。 したがって,本件公開公報の発行は,抗告訴訟の対象となる処分には当たらないというべきである。 (エ) 本件特許公報の発行についてみると,特許権の設定の登録があった ときは,特許庁が,特許権者の氏名又は名称及び住所又は居所,願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容,特許番号及び設定の登録の年月日その他の必要な事項を掲載した特許公報を発行するものとされている(特許法66条3項,193条1項)。 特許権自体は設定の登録により発生し(同法66条1項),かつその権利の内容は特許登録原簿によって公示するものとされている(同法27条1項1号)ところ,特許掲載公報の発行自体は,広く公衆に特許権の内容を公開する趣旨で行われる行政行為にすぎず,上記各事項の特許掲載公報への掲載によって,直接に国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する法律効果を生ずるものではない。 したがって,本件特許公報の発行も,抗告訴訟の対象となる処分には当たらないものというべきである。 て,直接に国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する法律効果を生ずるものではない。 したがって,本件特許公報の発行も,抗告訴訟の対象となる処分には当たらないものというべきである。 (原告の主張)(ア) 本件訂正は,その後の手続に重大な影響を及ぼす手続上の処分であり,単なる事実行為ではなく,処分性があるといえる。 (イ) 本件公開公報の掲載は,たとえ特許権が設定された後に,職権で発明者が訂正されたとしても,その間は,後願者が正確な情報を得られなくなり,後願者の権利に重大な影響を及ぼすものであり,国民の法的地位に変動をもたらす性質を有しないということはできない。 (ウ) 本件特許公報の掲載は,発行された特許公報のみにより,国民は,その内容を知り,その内容に不服の場合は,是正手続が認められるべきであるから,処分性があるといえる。 ウ原告適格の有無(争点(1)ウ)について(被告の主張)(ア) 行政事件訴訟法36条にいう当該処分の無効等の確認を求めるにつき「法律上の利益を有する者」の意義については,行政事件訴訟法9条 2項の処分等の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」と同義に解するのが相当であり,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうとされている(最高裁平成4年9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号571頁参照)。 また,処分等の無効確認訴訟を提起し得るための要件の一つである,当該処分等の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない場合とは,当該処分等に基づいて生ずる法律関係に関し,処分等の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴 ,当該処分等の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない場合とは,当該処分等に基づいて生ずる法律関係に関し,処分等の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟によっては,その処分等のため被っている不利益を排除することができない場合はもとより,当該処分等に起因する紛争を解決するための争訟形態として,当該処分等の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟との比較において,当該処分等の無効確認を求める訴えのほうがより直截的で適切な争訟形態であるとみるべき場合をも意味するものと解するのが相当である(最高裁昭和45年11月6日第二小法廷判決・民集24巻12号1721頁,最高裁昭和62年4月17日第二小法廷判決・民集41巻3号286頁,前掲最高裁平成4年9月22日第三小法廷判決参照)。 (イ) そこで本件についてこれをみると,原告は,請求各項記載の処分の無効確認がされなければ,真の発明者である原告が,後日特許権を侵害する者として,四国計測から損害賠償請求を受けるなどの被害を被るおそれがある旨主張する。仮にこのような特許権の侵害に係る訴訟の相手方となり得る被害を受けるおそれのある者(以下「被疑侵害者」という。 )が,行政事件訴訟法36条に規定する当該処分の無効等の確認を求めるにつき「法律上の利益を有する者」に当たるとしても,そのような被害を受けるおそれがあるというためには,当該特許権が有効に存続する ことが前提事項として必要であると解される。 しかしながら,特許法104条の3第1項の規定によれば,特許権等の侵害に係る訴訟において,当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは,特許権者等は,相手方に対しその権利を行使することができないとされており,被疑侵害者は, れば,特許権等の侵害に係る訴訟において,当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは,特許権者等は,相手方に対しその権利を行使することができないとされており,被疑侵害者は,特許権侵害差止請求,損害賠償請求等の訴訟の被告として,同項の規定により当該特許が特許無効審判により無効にされることになる旨の抗弁を提出することができるほか,自らが原告となって特許権侵害差止請求権,損害賠償債務等の不存在確認を求める訴えを提起し,その請求原因として当該特許の無効理由を主張立証することができるものとされている(以下,被疑侵害者が被告となる場合と原告となる場合とを併せて「侵害訴訟」という。)。したがって,侵害訴訟において,被疑侵害者が同項の規定により当該特許が無効にされるべきことを理由として特許権者等の権利行使の制限を主張するときは,その侵害訴訟は,特許処分という「当該処分・・・の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴え」に該当するものというべきである。 もっとも,既に自らが請求した特許無効審判について請求不成立の確定審決が登録されている被疑侵害者が侵害訴訟においても当事者となる場合には,特許法167条の規定による一事不再理効が及ぶものとして,又は仮に確定審決の一事不再理効が直ちには及ばないとしても,権利者との関係で同一当事者間において既に解決済みの紛争を不当に蒸し返す訴訟上の信義則違反として,同法104条の3第1項の規定による特許の無効の主張が許されないのではないかということが問題とはなり得る。しかし,確定審決の一事不再理効の客観的範囲は,当該特許無効審判と「同一の事実及び同一の証拠」にのみ及ぶものであるから,これと異なる事実又は証拠に基づいて,後の侵害訴訟において被疑侵害 者が特許法104条の 一事不再理効の客観的範囲は,当該特許無効審判と「同一の事実及び同一の証拠」にのみ及ぶものであるから,これと異なる事実又は証拠に基づいて,後の侵害訴訟において被疑侵害 者が特許法104条の3第1項の規定による当該特許の無効の主張をすることは,同法167条の規定によって何ら妨げられるものではない。 (ウ) 以上によれば,原告は,侵害訴訟における特許権者等の相手方として,特許法104条の3第1項の規定により,本件特許が無効にされるべきことを主張することができるのであるから,本件特許に係る特許処分に起因する紛争を解決するための争訟形態として,当該処分の無効を前提とする民事訴訟である侵害訴訟と比較して,本件特許に係る特許処分の無効確認訴訟のほうがより直截的で適切な争訟形態であるということはできない。 したがって,本件訴えは,いずれも行政事件訴訟法36条に規定する無効確認の訴えの原告適格の要件を欠いたものである。 (原告の主張)(ア) 請求各項に係る処分の無効確認がされなければ,真の発明者である原告が,後日特許権を侵害する者として,四国計測より損害賠償請求を受ける等の被害を被るおそれがある。審査基準に該当しない行政処分の無効は,無効審判及び審決取消訴訟で判断できないので,本件訴訟によるほか,原告の権利の救済の方法はない。 (イ) 確かに,侵害訴訟の提起あるいは,反論の機会があるかも知れないが,現に,真の発明者が,特許権者でないとして,攻撃,非難されている状態は真の発明者の権利が侵害されているといえるので,早急に裁判所による救済が必要であることは否めない。すなわち,原告が,本願と同一発明について出願したが拒絶査定となり,さらに,その後に改良発明についても出願しているが,拒絶査定となり,特 えるので,早急に裁判所による救済が必要であることは否めない。すなわち,原告が,本願と同一発明について出願したが拒絶査定となり,さらに,その後に改良発明についても出願しているが,拒絶査定となり,特許権を取得できないことになり,現在不利益を受けている。 (ウ) 侵害訴訟における特許法104条の3第1項の規定による特許の無効主張が可能であるとすれば,原告としては,有効な訴訟方法となるが, 問題は,現在において,原告の真の発明者としての権利が,無効な出願による特許査定がされたことにより,直截的に侵害されようとしている状況にある以上,直ちに,権利救済の有効な手段として,無効確認訴訟を提起できると解すべきである。 エ狭義の訴えの利益の有無(争点(1)エ)について(被告の主張)原告が本件訴えによって救済を求める法律上の利益(行政事件訴訟法36条)は,要するに真の発明者であるにもかかわらず,冒認出願である本願についてされた当然無効の特許処分により発生した本件特許権の被疑侵害者として権利行使を受ける地位に立たされてしまうという被害を免れることにあると解される。そうすると,既に本件特許査定がされており,本願に係る事件が特許庁に係属していない以上,本願の手続につき本件手続補正書(本件訂正後のもの)の提出による手続補正がされる前の状態を回復することは不可能なのであるから(特許法17条1項本文参照),仮に本件手続補正書の受理及び本件訂正の無効が確認されたとしても,本件特許査定及び本件設定登録の効力に何らの影響を与えるものではなく,これにより原告が本件特許権等の権利者による権利行使を免れることはできない。その一方で,原告は,前件無効審判とは異なる事実又は証拠に基づく特許無効審判の請求,あるいは侵害訴訟における ものではなく,これにより原告が本件特許権等の権利者による権利行使を免れることはできない。その一方で,原告は,前件無効審判とは異なる事実又は証拠に基づく特許無効審判の請求,あるいは侵害訴訟における特許法104条の3第1項の規定による特許権者等の権利行使の制限の主張によって,依然として本件特許の有効性,更には自らに対する本件特許権の権利行使を争うことができる状況にある。 そうすると,本件手続補正書の受理及び本件訂正については,もはや原告はその無効確認を求める訴えの利益を有しないものというべきである。 (原告の主張)本件手続補正書の受理及び本件訂正が無効であるとするならば,その後 の特許査定も無効となるはずであるから,原告に訴えの利益がないとはいえない。 (2) 本件手続補正書の受理(請求1項),本件訂正(請求2項),本件公開公報の掲載(請求3項),本件特許公報の掲載(請求4項),本件特許査定(請求5項)及び本件査定登録(請求6項)についての無効事由の有無(争点(2))について(原告の主張)ア本願は,Aら4名の共同発明者で特許出願され,その後,特許出願人から発明者を変更する本件手続補正書が提出された。この発明者の変更は,Aら4名とEら2名との6名による共同発明である旨の補正である。特許庁長官は,この発明者変更を認め,本件訂正を行い,本件手続補正書を受理した。その受理理由は,特許出願をする際に代理人の過失による理由と,上記6名が共同発明である旨の宣誓書を同時に提出したことを理由としている。しかし,出願手続をした弁理士には重大な違法(単なるミスでない。)があり,また特許出願人の四国計測が事前チェックしなかったことにも重大明白な瑕疵(違法)があったから,正当な補正の理由にはなり得 る。しかし,出願手続をした弁理士には重大な違法(単なるミスでない。)があり,また特許出願人の四国計測が事前チェックしなかったことにも重大明白な瑕疵(違法)があったから,正当な補正の理由にはなり得ず,この発明者の変更は,特許庁長官において受理すべきでなく,宣誓書のみによって,特許権の発明者の実質的な審査をせずに受理した処分は重大明白な瑕疵があり,無効な受理処分である。 イ本件手続補正書を受理し,その内容を精査せず,しかも補正指令(特許法17条3項)もかけずに出願人の補正理由をそのまま認め,本件訂正を行ったことは重大かつ明白な瑕疵がある。特に,本件発明が共同開発による職務発明(同法35条)であるから,単なる発明者のみの補正手続でなく,四国計測と財団法人阪大微生物病研究会観音寺研究所の共同出願(同法38条)に変更すべきであり,単なる職権訂正処分による補正受理手続をしたことには,重大かつ明白な瑕疵が存在する。この受理処分に基づく 本件特許査定は,正当な特許出願にした審査手続といえず,本来は拒絶査定(同法49条)とすべきものである。 ウ本件公開公報と本件特許公報とに記載されている発明者は,正しい発明者でないから特許庁は違法な公報を発行したことになる。財団法人阪大微生物病研究会観音寺研究所の職務発明の記載手続がされていないので,重大明白な瑕疵がある。 本件公開公報と本件特許公報には,発明者としてAら2名が記載されており,職権で発明者を6名に変更していながら,Aら2名のみを掲載して発行したものである。特許出願された発明は出願公開され,また設定登録された特許は公報を発行することが特許庁に義務づけられているから,これらの公報の発行は特許庁の専権事項であり,すべて正しい内容のものであるべきことは当然である。ところ 明は出願公開され,また設定登録された特許は公報を発行することが特許庁に義務づけられているから,これらの公報の発行は特許庁の専権事項であり,すべて正しい内容のものであるべきことは当然である。ところが,本件の公開特許公報と特許公報の発明者が出願時と補正時と公開時と登録時で異なっており,しかも真正な発明者が記載されていないことは,重大かつ明白な瑕疵のある公報の発行である。 また,本件公開公報は,2回発行されているが,発明者のみを訂正して発行すればよいのに,明細書を含む全文を訂正して発行しているところに問題がある。公開特許公報を発行することは,特許庁の内部資料ではなく部外者に対する資料である。同一の特許出願について実際の発行日が異なる公開公報を同一の日付で再発行した本件では,部外者は,どちらが正しい公開公報であるかについて,2通とも取り寄せなければ真実の発明者を知ることができなくなる。これは公開特許公報の発行処分の重大明白な瑕疵である。 さらに,本件特許公報については,特許権の設定登録後に発行された特許公報について,特許権者(特許出願人)の訂正審判請求(特許法126条)によらずに担当調査官の職権で訂正したことに,重大かつ明白な瑕疵 がある。 エ本件において,四国計測は財団法人阪大微生物病研究会から特許を受ける権利を承継していない。かかるときは,審査官はその特許出願について拒絶査定をしなければならない。しかるに拒絶査定せずに特許査定することは特許法49条1項7号に反するものであり,重大明白な瑕疵である。 本件特許査定には,発送日の明記がなく,そもそも効力の発生していない無効な処分である。特に,電子出願制度を採用している我が国の特許制度においては,特許庁の内外に対する出願業務すべてが電子(紙は使用せず)で行っ には,発送日の明記がなく,そもそも効力の発生していない無効な処分である。特に,電子出願制度を採用している我が国の特許制度においては,特許庁の内外に対する出願業務すべてが電子(紙は使用せず)で行っているので,本件特許査定も書面ではなくオンラインで行っている。その結果,発送日のない特許査定はありえないことになる。特許庁が発信し,相手方が受信したことが確認されて初めて発送日が記載されるからである。発送日の記載がないと,いつ特許査定が発送されたか不明確であり,特許出願人は納付期限(通常は特許査定日から30日以内)に特許権設定の登録料が特許庁に納付されているか否かを判断することができない。 この発送日の記載のない本件特許査定は,重大明白な瑕疵のある無効な査定であるから,特許出願人が特許査定の通知を受信していないのに,納付期限までに特許権設定の登録料を納付し,かつそれを特許庁が受理し,本件設定登録をして取得した本件特許権は当然無効と解さざるを得ない。 (被告の主張)ア本件手続補正書については,方式審査便覧に規定する発明者を変更する場合の補正に必要な書面として,発明者相互の宣誓書2通及び発明者変更の理由を記載した書面1通が添付されており,それらの添付書類の記載内容も,発明者相互の宣誓書及び変更の理由を記載した書面として上記規定に適合するものであると認められるから,本件手続補正書の提出に係る手続が特許法17条1項及び4項並びに36条1項2号で定める方式に違 反するものということはできず,補正命令(同法17条3項2号)や手続却下(同法18条1項)の対象となるものではない。 イ本件訂正は,本件手続補正書における発明者の変更の補正に関する記載内容を,本件手続補足書等も併せ考慮して,特許出願人が補正をしようとし 却下(同法18条1項)の対象となるものではない。 イ本件訂正は,本件手続補正書における発明者の変更の補正に関する記載内容を,本件手続補足書等も併せ考慮して,特許出願人が補正をしようとした内容に沿った記載に訂正したものであるところ,手続の補正による必要のない手続補正書の記載内容の訂正について,手続をする者にその訂正を求めることまではせずに,特許出願手続に係る事務処理の便宜上,職権によりその記載内容を訂正することも,特許庁長官の裁量の範囲内の事項と解するのが相当である。 仮に本件発明が四国計測と財団法人阪大微生物病研究会観音寺研究所の各従業者等の共同発明でありかつ職務発明であったとしても,その職務発明の特許を受ける権利を有するのはその発明をした従業者等であり,またその従業者等が使用者等でない者に特許を受ける権利を譲渡することについて,特許法上何らの制限も定められておらず,権利の承継を証明する書面の提出やその提出を命ずべきことも義務付けられていない。そうすると,本件発明が共同発明でありかつ職務発明であるか否かは,本件手続補正書の提出により発明者を変更(追加)する補正の適法性に何ら影響を与えるものではなく,本願,あるいは本件手続補正書による発明者の補正に当たって,権利の承継を証明する書面や共同発明に関する証明資料の提出を命じなかったことをもって,本件手続補正書による発明者の変更の補正を却下せず,本件訂正をしたこと,更には本件特許査定をした処分に重大かつ明白な違法があったということはできない。 原告の主張のうち,本件手続補正書及び本件訂正による発明者の変更の補正の違法性をいう部分は,既に前件無効審判及び前訴審決取消訴訟において,本件特許の無効理由としての冒認出願についての無効理由及び審決取消事由として審理判 手続補正書及び本件訂正による発明者の変更の補正の違法性をいう部分は,既に前件無効審判及び前訴審決取消訴訟において,本件特許の無効理由としての冒認出願についての無効理由及び審決取消事由として審理判断がされているところと同一の具体的事実及び証 拠に基づくものである。そうすると,当該主張は,前訴審決取消訴訟において本件特許の無効理由としては存在しないことが確定されたのと同一の特許処分の違法事由について,無効確認訴訟の訴訟物としての処分の重大かつ明白な違法性等を主張する点において,前訴判決の既判力に抵触し,又は少なくとも紛争の不当な蒸し返しであって信義則に反するものであり,また同一の事実及び同一の証拠に基づく主張である点において,前件審決の一事不再理効(特許法167条)にも反するものである。 ウ特許庁が特許法193条2項各号,64条2項各号,66条3項各号等に掲げる事項を掲載することにより特許公報を発行するものとされている趣旨,目的は,一般公衆に特許出願の内容,特許権の内容等を広く公開することにあるから,そのような趣旨,目的を著しく損ない,およそ特許出願や特許権の内容等の公示とは認められないような重要な掲載事項の欠落等が存在しない限り,単に特許公報の掲載事項に形式的な不備,誤記等が存在することの一事をもって,当該特許公報の発行に重大かつ明白な違法があるということはできないと解するのが相当である。 本件公開公報及び本件特許公報のように,訂正を必要とする発明者の記載がそのまま掲載されたために,特許出願の願書に記載されているものとみるべき発明者の一部の者が脱落する不備があったからといって,およそ特許出願や特許権の内容等の公示とは認められないような重要な掲載事項の欠落等が存在するとまでいうことはできない。また,職務発明 のとみるべき発明者の一部の者が脱落する不備があったからといって,およそ特許出願や特許権の内容等の公示とは認められないような重要な掲載事項の欠落等が存在するとまでいうことはできない。また,職務発明であることは,何ら公開特許公報及び特許掲載公報その他の特許公報に掲載すべき事項として掲げられていない(特許法64条2項,66条3項,193条2項)。 エ特許法及び特許法に基づく命令においては,特許査定に発送日を記載しなければならない旨の規定はない。しかし,発送日については,特許査定の謄本の送達を電子情報処理組織を使用して行う場合には,発送日がすな わち送達日となり,その処分の効力の発生やその後に行う手続の期間の計算等について重要な情報となるなどの観点から,特許庁における実務上の取扱いとして,特許査定の謄本には発送日の記録(記載)がされているものである。 したがって,本件特許査定に特許庁からの発送日が明記されているか否かは,本件特許査定の効力には何ら影響を及ぼすものではない。 また,原告が本件特許査定に発送日の記載がないことの証拠として提出した甲8号証は,工業所有権に関する手続等の特例に関する法律2条1項の電子情報処理組織における特許庁の使用に係る電子計算機に備えられたファイル(同法3条2項)の一部の写しであって,特許法52条2項の規定により特許出願人に送達しなければならないとされる本件特許査定の謄本とは異なるものである。本件特許査定及びその謄本の送達も,電子情報処理組織を使用して行われたものであり,平成19年8月2日,四国計測の出願代理人であるG弁理士の使用に係る入出力装置に備えられたファイルへの記録がされた時に本件特許査定の謄本が同弁理士に到達したものとみなされ(工業所有権に関する手続等の特例に関 8月2日,四国計測の出願代理人であるG弁理士の使用に係る入出力装置に備えられたファイルへの記録がされた時に本件特許査定の謄本が同弁理士に到達したものとみなされ(工業所有権に関する手続等の特例に関する法律5条3項),この時点で,発送日が設定され,出願マスタに発送日が記録される。 同弁理士は,自己の使用に係る電子計算機において受信した発送書類の内容をメイン画面に表示させて確認すると,表示される発送書類のファイルの内容に発送日が表示される。このようにして送達された謄本には発送日を平成19年8月2日とする記載があると認められる。そして,本件特許査定の謄本の原本に相当するファイルの記録自体は,四国計測又はG弁理士の手元にあるものと推測される。 第3 当裁判所の判断 1 本案前の争点―訴訟類型選択の適否(争点(1)ア)について(1) 特許権は,特許出願(特許法36条),出願公開(同法64条),審査請 求(同法48条の3)等の手続を経て,審査官の審査(同法47条)により,特許査定(同法51条)がされた上で,特許権の設定の登録によって成立する。もっとも,成立した特許権に瑕疵があるにもかかわらず,その存続を認めると,特許権者は発明の実施を独占することによって不当な利益を得る反面,他の者は当該発明の実施が妨げられ,産業の発達が妨げられるなどの弊害が生じるから,このような特許権を無効として遡及的に消滅させるため,特許法は,特許無効審判を定めている(同法123条)。 特許無効審判は,特許庁長官が指定する審判官の合議体が行い(特許法136条~138条),その手続は裁判類似の手続により行われる(同法第6章)。また,特許無効審判では,無効理由が限定されている(同法123条1項)ものの,原則として何人でもその請求ができる(同条2項)ほか 条~138条),その手続は裁判類似の手続により行われる(同法第6章)。また,特許無効審判では,無効理由が限定されている(同法123条1項)ものの,原則として何人でもその請求ができる(同条2項)ほか,特許権の消滅後においても請求ができる(同条3項)。さらに,特許無効審判の確定審決の登録があったときは,同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができない一事不再理効が生じる(同法167条)ものの,これと異なる事実又は証拠に基づく特許無効審判の請求は妨げられない。 そして,特許無効審判の審決に対する取消訴訟については,行政事件訴訟法の特則として,東京高等裁判所の特別の支部である知的財産高等裁判所の専属管轄(特許法178条1項,知的財産高等裁判所設置法2条2号),裁決主義(特許法178条6項)等が定められている。 (2) 以上のとおり,特許法は,特許権を無効として消滅させるため,特許無効審判を定め,その審理対象の高度な専門的技術性を考慮して,審判官の合議体が審理を行うものとした。審決には裁判と同様の公正さが必要とされるため,その手続は裁判類似の手続により行われ,また,特許無効審判では,無効理由は限定されるものの,請求人適格が緩和され,請求期間についても制限がなく,その審決に対する不服申立てとして,裁決主義による取消訴訟を 採用している。以上の特許法の定めを考慮すると,特許無効審判及びその審決に対する取消訴訟は,特許権を成立させる行政処分である特許査定と特許権の設定の登録について,その対世的効力を否定して特許権を無効とするための唯一の行政争訟であると解するのが相当であり(特許無効審判の審決に対する取消訴訟は,行政事件訴訟法1条の「他の法律に特別の定めがある場合」に該当する。),そのように解しても救済手段と 効とするための唯一の行政争訟であると解するのが相当であり(特許無効審判の審決に対する取消訴訟は,行政事件訴訟法1条の「他の法律に特別の定めがある場合」に該当する。),そのように解しても救済手段として欠けるところはないというべきである。 そうすると,特許無効審判及びその審決に対する取消訴訟によらないで,特許査定と特許権の設定の登録の瑕疵を主張して,その対世的効力を争うことは許されないから,本件特許査定及び本件設定登録の無効確認の訴え(請求5項及び6項)は,いずれも不適法である。 したがって,本件訴えのうち,本件特許査定及び本件設定登録の無効確認の訴え(請求5項及び6項)は,いずれも不適法であるから却下を免れない。 (3) これに対し,原告は,願書に記載されている発明者と特許出願人に関する審査についての審査手続は,審査基準の適用外となっているので,これに対する不服は特許無効審判手続でなく,行政事件訴訟手続で行われるべきであるなどと主張する。 しかしながら,特許法は,冒認出願について,特許出願の拒絶理由と定める(同法49条7号)ほか,特許無効審判の無効理由と定めている(同法123条1項6号)のであって,特許出願の願書に記載された特許出願人及び発明者に関する事項は,特許出願の審査の対象であり,特許無効審判の審理の対象であるから,原告の主張は前提に欠けるといわざるを得ない。 2 本案前の争点―処分性の有無(争点(1)イ)について(1) 処分性判断の基準行政事件訴訟法3条2項にいう行政庁の処分(同条4項の処分と同じ。)とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によっ て,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解するの 項の処分と同じ。)とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によっ て,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。 (2) 本件手続補正書の受理(請求1項)について特許法においては,特許出願手続上の受理について,行政事件訴訟法3条2項にいう行政庁の処分であることを根拠付ける規定はない。本件手続補正書の受理(発明者を変更する手続補正の受理)をみても,特許出願手続においてその補正を受領する行為にすぎないのであって,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではないから,同項にいう行政庁の処分に当たるとはいえない。 したがって,本件手続補正書の受理(発明者を変更する手続補正の受理)は,抗告訴訟の対象である処分には当たらない。 (3) 本件訂正(請求2項)について本件訂正は,本件手続補正書では,補正方法欄の記載が追加,発明者欄の記載がEら2名とされていたにもかかわらず,本件公開公報で発明者としてEら2名のみが掲載されたため,特許庁長官において,職権により,本件手続補正書の補正方法欄の記載を変更に,発明者欄の記載をEら2名及びAら4名にそれぞれ訂正したものである(前提事実(2),(4)及び(5))。 以上のとおり,本件訂正は,本件手続補正書に沿って,発明者の記載を訂正したものであり,特許出願手続における行政庁の事実行為にすぎないのであって,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではないから,行政事件訴訟法3条2項にいう行政庁の処分に当たるとは 特許出願手続における行政庁の事実行為にすぎないのであって,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではないから,行政事件訴訟法3条2項にいう行政庁の処分に当たるとはいえない。 したがって,本件訂正は,抗告訴訟の対象である処分には当たらない。 (4) 本件公開公報の掲載(請求3項)について 出願公開(特許法64条1項)は,出願公告制度では実体審査手続の期間中は出願発明の内容が公表されないために,同一技術の開発が重複して行われることがあるという不合理を回避するために導入されたものであり,公開特許公報の発行は,出願公開の方法として特許庁が行うものである(同法64条2項,193条1項)。そして,出願公開の効果として,その願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明(拡大先願)と同一の出願(後願)が拒絶され(同法29条の2),出願公開された発明の特許出願人には,特許権の設定登録前に業としてその発明を実施した者に対して補償金請求権が付与される(同法65条1項)ほか,優先審査に関する定め(同法48条の6)がある。 そこで検討するに,拡大先願は,先願の明細書や図面に記載されている発明は原則としていずれ公開されるものであり,後願は社会に対して新しいものを提供していないことなどを根拠として,出願公開を条件として公知を擬制し,同一の後願一般を排斥するものであって,特定の個別具体的な後願を排斥するものではないから,出願公開を条件として特許法が特別に定めた一般的な効果というべきである。また,補償金請求権は,出願公開後には出願公開された発明が模倣される危険があるために,特許法が特別に認めた請求権であって,特許出願人の警告等を要件として,特許権の設定の登録があった後に べきである。また,補償金請求権は,出願公開後には出願公開された発明が模倣される危険があるために,特許法が特別に認めた請求権であって,特許出願人の警告等を要件として,特許権の設定の登録があった後に,その登録前に業としてその発明を実施した者に対して行使することができるのであるから,拡大先願と同様に,出願公開を条件として特許法が特別に定めた一般的な効果というべきである。優先審査も,同様に出願公開を条件とする一般的な効果を定めるものにすぎない。 そうすると,出願公開(及び出願公開の方法としての公開特許公報の発行)は,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではないから,行政事件訴訟法3条2項にいう行政庁の処分に当たるとはいえない。 したがって,本件公開公報の掲載(発行)は,抗告訴訟の対象である処分には当たらない。 (5) 本件特許公報の掲載(請求4項)について特許権は設定の登録により発生し(特許法66条1項),その権利の内容は特許登録原簿によって公示され(同法27条1項1号),特許庁は,特許権の設定の登録があったときは,特許権者の氏名・住所,特許出願の番号及び年月日,発明者の氏名・住所等を掲載した特許公報を発行する(同法66条3項,193条1項)。この特許公報の掲載(発行)は,特許権の内容を公開する趣旨で行われるものにすぎないのであって,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではないから,行政事件訴訟法3条2項にいう行政庁の処分に当たるとはいえない。 したがって,本件特許公報の掲載(発行)も,抗告訴訟の対象である処分には当たらない。 (6) まとめ以上のとおり,本件手続補正書の受理(請求1項),本件訂正(請求2 ない。 したがって,本件特許公報の掲載(発行)も,抗告訴訟の対象である処分には当たらない。 (6) まとめ以上のとおり,本件手続補正書の受理(請求1項),本件訂正(請求2項),本件公開公報の掲載(請求3項)及び本件特許公報の掲載(請求4項)は,いずれも抗告訴訟の対象である処分には当たらない。 したがって,本件訴えのうち,本件手続補正書の受理,本件訂正,本件公開公報の掲載及び本件特許公報の掲載の無効確認の訴え(請求1項~4項)は,いずれも不適法であるから却下を免れない。 3 結論よって,本件訴えは,いずれも不適法であるから却下することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官小川雅敏 裁判官森川さつき

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る