- 1 -平成22年1月22日判決言渡平成18年第20728号損害賠償請求事件 判決 主文 1 被告らは,原告A1に対し,連帯して1510万円及びこれに対する平成17年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは,原告A2に対し,連帯して305万円及びこれに対する平成17年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告らは,原告A3に対し,連帯して305万円及びこれに対する平成17年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,これを5分し,その1を被告らの負担とし,その余は原告らの負担とする。 6 この判決の第1項ないし第3項は,仮に執行することができる。ただし,被告らが,原告A1に対し1200万円,原告A2に対し240万円,原告A3に対し240万円の担保を供するときは,その仮執行を免れることができる。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告らは,原告A1に対し,連帯して5957万5332円及びこれに対する平成17年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは,原告A2に対し,連帯して1254万7747円及びこれに対す- 2 -る平成17年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告らは,原告A3に対し,連帯して1254万7747円及びこれに対する平成17年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,亡A4の相続人である原告らが,被告B1が設置,経営するB2病院に に対する平成17年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,亡A4の相続人である原告らが,被告B1が設置,経営するB2病院において,被告B3を含むB2病院の担当医師らのA4に対する,不必要な肝生検を行った過失,これにより生じた肝内の腫瘤が血腫であるにもかかわらず肝内血腫に対する穿刺を行った過失,これにより生じた腹腔内出血について適切な術後管理を怠った過失により,A4が死亡したとして,被告らに対し,被告B1については不法行為(使用者責任)又は診療契約上の債務不履行に基づき,被告B3については不法行為に基づき,連帯しての損害賠償を求めた事案である。 2 前提となる事実(証拠等を掲記しない事実は争いのない事実である。) 当事者ア原告A1は,A4(昭和39年a月b日生まれの女性)の夫であり,原告A2はA4の父,原告A3はA4の母であり,A4に子はなく,A4の相続人は原告らのみである(甲C1ないし3,弁論の全趣旨)。 イ被告B1は,B2病院を経営する学校法人である。被告B3は,平成17年当時,B2病院の消化器外科に勤務していた医師である。 診療経過ア A4は,右上腕外側に圧痛を伴う硬結が出現したため,平成16年8月24日,C診療所(D医師)を受診し,その後,同診療所での通院治療を継続した。同年9月中旬ころから,感冒様の症状を伴うようになった。A4は,同年10月ころ,右上腕の腫脹に加え,39℃の発熱,両下腿の腫脹・紅斑が出現したことから,B2病院を紹介され,同月15日,B2病- 3 -院の皮膚科を受診し,結節性紅斑が疑われ,皮膚生検等の検査が実施され,サワシリンカプセル(アモキシシリン水和物,ペニシリン系抗菌薬)等の内服が開始された。 介され,同月15日,B2病- 3 -院の皮膚科を受診し,結節性紅斑が疑われ,皮膚生検等の検査が実施され,サワシリンカプセル(アモキシシリン水和物,ペニシリン系抗菌薬)等の内服が開始された。 A4は,同月16日,19日にも,B2病院の皮膚科を受診し,同月19日には,上記皮膚生検の病理組織診断の結果では,結節性紅斑に矛盾しない所見であり,悪性の証拠はないことが報告されたが,症状が改善しないことなどから,同月20日,B2病院の皮膚科に入院した。その際には,右上腕,両下腿,足背の発赤,腫脹,疼痛,熱感が認められた。 その後,A4は,プレドニゾロン(プレドニン,副腎皮質ホルモン製剤)の内服等の治療により,両下腿の発赤,腫脹は改善し,右上腕の硬結にも改善傾向がみられ,右上腿,両下腿の熱感もほぼ消退したことから,同年11月9日,B2病院を退院し,その後,通院治療を継続した。 A4は,同年12月13日,B2病院の皮膚科を受診したところ,疼痛を伴う紅斑が両下腿,特に左下腿へ出現しており,血液検査の結果,肝機能障害が認められた。 A4は,平成17年1月5日(以下,日付は,特に年を表記しない限り,平成17年の日付である。),B2病院の皮膚科を受診したところ,両下腿,主に左下腿を中心として,熱感や色素沈着を伴った3~30mm大ほどの紅斑が多数散在しているのが認められ,その後の状態によって入院を検討することになった。(甲A10,甲C8,乙A2,3,15,乙A16の1ないし8,原告A1)イ A4は,1月25日から38℃以上の発熱が続いていること,食欲不良が続いていることなどから,2月4日,B2病院の消化器肝臓内科に再入院した。 A4は,同月7日,B2病院の血液膠原病内科へのコンサルトの結果, 38℃以上の発熱が続いていること,食欲不良が続いていることなどから,2月4日,B2病院の消化器肝臓内科に再入院した。 A4は,同月7日,B2病院の血液膠原病内科へのコンサルトの結果,同科から,血球貪食症候群(HPS)等の血液疾患の可能性の方が高いの- 4 -ではないかとの指摘を受けて,骨髄生検(マルク)が施行され,骨髄像検査の結果では,マクロファージ(強い貪食能を有する大型の単核細胞)については血球貪食の認められるものもあるが,数の増加は認められず,積極的にHPSを考えさせるものではないことが報告された。同月12日には,採血検査の結果,A4に凝固系の異常がみられ,これを播種性血管内凝固症候群(DIC)の診断基準(昭和63年度厚生省DIC研究班の診断基準)に当てはめると,A4のDICスコアは7点であり,DICの状態にあると判定されたため,FOY(蛋白分解酵素阻害薬)1500mgの投与が開始され,同月14日には,肝生検が行われた。なお,同月15日,A4のDICスコアは8点と悪化した。 そして,同月22日,肝生検及び皮膚生検の検体に対する病理組織診断の結果から,A4は,結節性紅斑ではなく,皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫(SPTCL)であると診断された。 A4は,同月23日,CHOP療法(オンコビン(アルカロイド系抗癌剤),エンドキサン(アルキル化剤抗癌剤),アドリアシン(抗生物質抗癌剤)という3種類の抗腫瘍剤とステロイドであるプレドニンを併用投与する多剤併用投与法)が開始された。 同月28日,腹部エコー検査が行われ,A4の肝臓に腫瘤様の塊がみられたことから,CT検査が行われた。3月1日にはMRI検査も行われ,上記塊について,胆汁瘻,血腫,膿瘍のいずれかであることが疑われ,同日,肝穿刺が行わ コー検査が行われ,A4の肝臓に腫瘤様の塊がみられたことから,CT検査が行われた。3月1日にはMRI検査も行われ,上記塊について,胆汁瘻,血腫,膿瘍のいずれかであることが疑われ,同日,肝穿刺が行われ,肝穿刺後,A4は,内科病棟の自室に戻った。 その後,A4は,同日午後10時ころ腹痛を訴え,ソセゴン(非麻薬性鎮痛薬)が投与されるなどしたが,その後,午後11時50分ころには,意識レベルが低下し,JCS(ジャパン・コーマ・スケール)でⅢ-300(痛み刺激に反応しない状態)となり,心肺蘇生措置が開始されたが,同月2日午前1時45分ころに死亡した。(甲A11,甲C8,乙A1,- 5 -2,4,乙A5の1ないし4,乙A6の1ないし5,乙A7ないし12,乙A13の1及び2,乙A14,15,乙A16の1ないし8,乙A17の1ないし6,証人E,原告A1,被告B3)ウ B2病院の消化器外科部長であるF医師は,3月2日,原告A1及び原告A3に対し,同月1日,A4の肝内腫瘤に対して穿刺を行ったこと,肝内腫瘤は,膿瘍ではなく,凝血塊が軽度吸引できたのみであり,血腫であったと考えられること,後で報告を受け,CT,MRIを見たが,まず80から90%血腫が考えられ,もし事前にみていたら,穿刺は指示せず,経過観察を指示したと思うこと,今回の事態に至った全責任はF医師にあり,お詫び申し上げるとともに,今後,誠意ある対応をしていくこと,まず,第三者機関(警察,,医療安全評価機構)に連絡を取り,司法解剖も含め対応を求めようと思うことなどを伝えた。 同月3日,X医務院において,A4の行政解剖が行われ,その後,死因について,腹腔内出血が直接死因とされ,肝内血腫穿刺がその原因であるとされた。(甲C8,乙A1,4,原告A1) 3 争点 B2 日,X医務院において,A4の行政解剖が行われ,その後,死因について,腹腔内出血が直接死因とされ,肝内血腫穿刺がその原因であるとされた。(甲C8,乙A1,4,原告A1) 3 争点 B2病院の担当医師が肝生検を実施したことについての過失の有無 被告B3が肝穿刺を実施したことについての過失の有無 B2病院の担当医師による肝穿刺後の術後管理についての過失の有無 各過失と結果(A4の死亡)との間の因果関係の有無 損害の有無及びその額 4 争点についての当事者の主張 争点(B2病院の担当医師が肝生検を実施したことについての過失の有無)について(原告らの主張)ア肝生検実施前の患者の状態- 6 -2月12日患者のDIC(播種性血管内凝固症候群)スコアは7点で,患者はDICの状態にあり,止血及び炎症反応の制御システムが破綻していた(甲B1の493頁)。 イ肝生検を行う必要性がなかったこと2月14日の肝生検実施にあたり,DIC状態にある患者に対する,侵襲的肝生検の必要性及び危険性について検討した形跡がなく,その必要性及び危険性について患者や家族に対する個別具体的な説明もない。 肝機能障害の存在は皮膚科初診時に判明しており,その段階での肝生検実施であればまだしも,DICの状態での肝生検実施は危険であり,あえてこれを実施する必要性はない。また,原因たる病名が確定していない段階で肝生検を実施しても進行度(病期)を測ることはできない。 血球貪食症候群(HPS)はその原因の鑑別が肝要であり,HPSの存在の診断のみのために,DICの状態にあるこの時期に侵襲的肝生検を実施する必要性はない。また,HPSの段階での診断(リンパ腫関連血 血球貪食症候群(HPS)はその原因の鑑別が肝要であり,HPSの存在の診断のみのために,DICの状態にあるこの時期に侵襲的肝生検を実施する必要性はない。また,HPSの段階での診断(リンパ腫関連血球貪食症候群(LAHS)の診断ではない。)に肝生検が有用であるとの医学文献はない。本件では,既に実施した非侵襲的なマルクによってHPSが鑑別できており,肝生検実施の必要性は全くない。 皮膚生検の検体に対する特殊染色(免疫染色)を実施して,結節性紅斑ではなく原因疾患である皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫が分かったのであり(乙A1の171頁,乙A2の37頁),肝生検では結局何も分からなかったのである(HPSの存在が分かっても原因は分からない。)。 ウ肝生検の実施に過失があることDICの状態にある患者に対する肝生検の実施は危険な肝内血腫及び腹腔内出血をもたらす可能性が高いにもかかわらず,肝生検の必要性について検討せずに,侵襲が高く不必要な肝生検を実施し,肝内血腫をもたらした過失がある。さらに,この肝生検は被告B3による後の肝穿刺につなが- 7 -っている。 (被告B1の主張)ア肝生検実施前の患者の状態A4の入院時の血液検査においては,D-Dダイマーは148.0μg/mℓ(以下,単位は省略する。),PT(プロトロンビン時間)は16.4秒(以下,単位は省略する。),PT比は1.38,PT%は57,フィブリノゲンは64mg/dℓ(以下,単位は省略する。),血小板は17万/μℓ(以下,単位は省略する。)であり凝固系の数値は低下していた。もっとも,出血傾向というものはなく,DICの疑いはあったものの,DICの状態であったというものではない。 2月12日には,DICスコア7点となっておりDICの診断がなさ 固系の数値は低下していた。もっとも,出血傾向というものはなく,DICの疑いはあったものの,DICの状態であったというものではない。 2月12日には,DICスコア7点となっておりDICの診断がなされたため,B2病院では,直ちに蛋白分解酵素阻害薬(FOY)を投与するなどして,DICの改善に努めている。 2月14日には,PTは14.8,PT比は1.24,PT%は67,フィブリノゲンは77,血小板は11万9000であり,止血が十分可能と判断される程度のデータであった。 そもそも,肝生検は,肝機能障害が存在する場合に多く行われることから,凝固系の異常がみられる患者に対して行うことは当然の前提とされるのであって,数値上凝固異常がみられる場合に,肝生検の実施を行わないというのは本末転倒である。肝生検自体,血小板は3万でも問題ないとの報告すらあるのであり,凝固系の異常から,直ちに肝生検が否定されるものではない。 本件でも,凝固異常は比較的軽微であり,後述のように,慎重に補充療法を実施していることもあり,止血自体は十分可能であるから,肝生検が禁忌とされる理由はない。 イ肝生検を行う必要性があったこと A4は,2月4日に入院した際には,38℃以上の発熱が続いているとのこ- 8 -とで,不明熱と診断されており,更に原因不明の肝機能障害(肝脾腫)の診断であり,これらの原因を精査する必要があった。 同月7日の段階では,いまだ複数の鑑別疾患を念頭におきながら,確定診断のためには更なる精査を必要としている状況であった。そして,この日に行われた骨髄検査の結果は,骨髄像検査において同日血球貪食症候群(HPS)の所見はないとのレポートがあり(乙A1の57頁,161頁),更に骨髄穿刺吸引組織標本検査に関する2月10日付け病理組織診断報告書において,「血 結果は,骨髄像検査において同日血球貪食症候群(HPS)の所見はないとのレポートがあり(乙A1の57頁,161頁),更に骨髄穿刺吸引組織標本検査に関する2月10日付け病理組織診断報告書において,「血球貪食症候群を疑う所見はあるが,少数であり,完全には同定困難です。」「検索範囲内では悪性を示唆する所見は認められません。」とされていたのであって(乙A1の165頁),2月10日の段階でも血球貪食症候群と診断することは困難であった。 なお,同月19日付け病理組織診断報告書(乙A1の169頁)は,同月14日に実施した肝生検の結果であって,この記載を根拠に肝生検の要否を論ずることは許されない。 本件では,骨髄穿刺吸引組織標本検査の結果のみでは「血球貪食症候群を疑う所見はあるが,少数であり,完全には同定困難である,検索範囲内では悪性を示唆する所見はない」というものであったが,この所見と,肝生検の所見を併せて判断することにより,初めて血球貪食症候群と診断できたのである。 このように,A4の不明熱,肝機能障害の原因を特定することは困難を極めていた。 他方で,A4の様態は,2月8日には,AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)240IU/ℓ(以下,単位は省略する。),ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)141IU/ℓ(以下,単位は省略する。)となっており肝機能障害(肝脾腫)が悪化している。さらに,WBC(白血球数)も1000/μℓ(以下,単位は省略する。)台が続く状態であり,同月12日にはDICの診断もなされている。 - 9 -このようなA4の状態からは,速やかに肝機能障害,肝脾腫,不明熱等の確定診断を行い,治療に入れるようにしなければ,早急に重篤な状態になる可能性が高かった。 この時点までの経過において,各種血液検査・画像検 なA4の状態からは,速やかに肝機能障害,肝脾腫,不明熱等の確定診断を行い,治療に入れるようにしなければ,早急に重篤な状態になる可能性が高かった。 この時点までの経過において,各種血液検査・画像検査・骨髄像検査,その他各種検査においても原因が確定できていない状況であり,この原因不明の肝機能障害,肝脾腫,不明熱の診断のために肝生検を行う必要があったのである。 肝機能障害,肝脾腫が存在する状態で,かつ,確定診断ができていないという場合,肝生検を行わないとする判断はあり得ない。 そして,本件では,同月14日に行われた肝カンファレンスの後において,更にA4の診療について検討が加えられ,その結果,肝生検のリスクと,確定診断を行って治療を開始するというメリットを比較した上で,肝生検を施行した。 本件肝生検を行う際には,A4の病状は出血傾向を伴うDICの可能性が考えられるため,通常よりも出血のリスクは高いと説明するなど,B2病院は,DICや出血に関する危険性についての説明を詳しく行い,その上で肝生検の同意を得ている。 血球貪食症候群の最終診断に肝生検が有用であること,時期を失することなく肝生検を実施すべきことが文献上も認められているところ(乙B1の208頁,甲B1の11頁),本件では,肝生検の結果から血球貪食症候群が疑われて,皮膚生検の検体に対する免疫染色を行うことになった。すなわち,肝生検なしには診断が確定していなかったのであり,診断の確定に大きな意義を有していたのである。 なお,骨髄穿刺(マルク)も侵襲的な検査であることに変わりはなく,骨髄穿刺(マルク)によっては血球貪食症候群は判明していなかった。 ウ肝生検の実施に過失はないこと2月14日に行われた肝生検は,原因検索のために肝生検が不可欠とされる状- 10 -況下において,慎重な マルク)によっては血球貪食症候群は判明していなかった。 ウ肝生検の実施に過失はないこと2月14日に行われた肝生検は,原因検索のために肝生検が不可欠とされる状- 10 -況下において,慎重な方法で行われており,肝生検の実施に過失はない。 本件では,フィブリノゲン値が77で,A4の体重が概ね50kgであったことから,慎重を期すために4単位のFFPを投与しており,十分な補充療法を行った上で適切に実施している。 また,アドナ・トランサミンなどの止血剤を用いるなどの十分な配慮をしながら,18ゲージという比較的細い針で慎重に行っている。 なお,翌日も腹部も腹部エコーを施行し,腹腔内・肝内に異常のないことを確認している。 争点(被告B3が肝穿刺を実施したことについての過失の有無)について(原告らの主張)ア被告B3に肝穿刺を実施した過失があること 肝穿刺実施前のA4の状態DICの状態が継続し,肝生検実施の結果,肝内出血が進行しており,ヘモグロビン(HGB)値が2月28日午前6時の8.4g/dℓ(以下,単位は省略する。乙A1の128頁)から3月1日午前6時に7. 3(乙A1の129頁)に急激に低下していた。 3月1日のA4の状況については,血小板の値が2月14日の11万9000から,3月1日の7万3000と相当程度落ちており,DICは悪化していると捉えるのが正しい。 また,2月28日のWBC1600,CRP(C反応性蛋白)0.70mg/dℓ(以下,単位は省略する。)という数値は低く,膿瘍であれば前日の段階で既に上昇しているはずであり,肝穿刺を実施した当日のCRP2.30の数値も膿瘍を前提とするデータとしては低すぎ,また,WBC,CRPが高値を示す疾患は感染性 いう数値は低く,膿瘍であれば前日の段階で既に上昇しているはずであり,肝穿刺を実施した当日のCRP2.30の数値も膿瘍を前提とするデータとしては低すぎ,また,WBC,CRPが高値を示す疾患は感染性に限定されるものではなく,悪性腫瘍,外傷,薬剤障害によっても上昇する(現実にも膿瘍では- 11 -なかった。)。A4は前日から自発性の腹痛を訴えており,HGBの低下は腹痛との関連で捉えるべきであり,肝内出血を真っ先に考える必要があった。上記のデータ及び臨床症状は膿瘍を疑わせるものではない。 3月1日の段階で,G医師らは,肝膿瘍が疑われる場合に,MRIの結果を待たずに抗生剤であるセオタックス及びダラシンの追加投与を検討し,現実に投与をしている(乙A1の130頁,256頁)が,その効果を待たずに,同日,被告B3が肝穿刺を実施しており,B2病院の担当医師らの治療方針に一貫性はない。 被告らは,血液疾患の好中球減少時には,血液培養で陽性ではなくとも感染症として積極的に治療を行うべきであると主張するが,本例では好中球数は74以上であり,2月28日には128を示しており,すべての検査において好中球の減少は見られないので,被告らの主張はその前提を欠き,失当である。 また,被告らは,死亡後に判明した血液培養検査結果から,メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MR-CNS)が検出されたことをもって,感染により白血球・CRPが増加した可能性が高いと主張するが,2月24日の血液培養では,明確な感染は確認されておらず,その後,死亡後まで検査がされておらず,院内感染が疑われるMRCNSにいつ感染したのか,その感染が原因で白血球・CRPが上昇したのか全く明らかではなく,肝膿瘍形成の可能性とも直接結びつかない。 死亡後まで検査がされておらず,院内感染が疑われるMRCNSにいつ感染したのか,その感染が原因で白血球・CRPが上昇したのか全く明らかではなく,肝膿瘍形成の可能性とも直接結びつかない。 肝穿刺実施前において,血腫が疑われていたこと放射線科のH医師は,血腫が最も疑われると判断し,MRI所見において放射線科のI医師は膿瘍は否定的で血腫ないし胆汁瘻の可能性を指摘し,J医師は血腫ないし胆汁瘻を疑い,F医師も事前にCT,MRIを見ていれば80~90%血腫の疑いがあると判断し,超音波検査所見でも肝内の塊が1日で4cmから6cmに急激に成長していることか- 12 -ら,肝穿刺実施前には膿瘍ではなく血腫が疑われていた。 肝穿刺を行う必要性はなかったこと被告B3は,肝内の塊を膿瘍と誤診して感染拡大を防ぐため,排膿目的で肝穿刺を実施したが,WBC・CRPの数値などの事前のデータでも,膿瘍の可能性は極めて乏しい以上,肝穿刺を実施する必要性はない。 現実に血腫であり,肝穿刺を実施する必要性はなかった。 また,胆汁瘻が疑われたとしても,胆汁瘻の場合,速やかに排泄する必要があるか否かは,ケースバイケースであり,肝内に留まっている場合は安全であり,これを排泄する必要は乏しい。 被告B3に肝穿刺を実施した過失があること被告B3には,肝穿刺実施前に,膿瘍の可能性は極めて乏しく血腫が最も疑われていたにもかかわらず,膿瘍と誤診し,肝内出血が進行していた患者に対し,急激な肝内出血を助長する危険が大であり,必要性のない肝穿刺を実施した過失がある。 イ被告B3の肝穿刺の実施方法に過失があること被告B3は,試験穿刺を細い23G(ゲージ)のカテラン針で肝穿刺を実施し 危険が大であり,必要性のない肝穿刺を実施した過失がある。 イ被告B3の肝穿刺の実施方法に過失があること被告B3は,試験穿刺を細い23G(ゲージ)のカテラン針で肝穿刺を実施し,確定診断後適切な処置をすべきであるところ,太い18Gの針で肝穿刺を実施し,肝内の出血及び腹腔内出血を助長しているため,不適切であり,肝穿刺の実施方法に過失がある。 (被告らの主張)ア被告B3が肝穿刺を実施したことに過失はないこと 肝穿刺実施前のA4の状態2月28日に,A4は激しい腹痛を訴えた。そのため,B2病院では,血液膠原病内科の医師が腹部エコーを施行したところ,肝内に一部腫瘤様にみえる部分が存在した。 そのため,血液膠原病内科から肝膿瘍を疑っての試験穿刺の依頼を受- 13 -けた被告B3は,再度エコーを行った結果4cm大の塊が認められた。 3月1日には,WBCが4900(2月28日は1600),CRPが2.30(2月28日は0.70)と増加していた。A4死亡後に判明した血液培養の結果では,3月1日の午前中に行われた血液培養のうち1本からは,メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MR-CNS)が検出されており,実際に感染により白血球(WBC)・CRPが増加した可能性が極めて高い。 また,A4は当時,発熱及び右肋骨弓下を中心に自発性の激痛を訴えて,腹部を屈曲し苦悶様の表情であった。 なお,同日の血液検査データ上,D-Dダイマー28.8,PT比0.97,PT%99,フィブリノゲン134,血小板7万3000と,やや改善傾向となり,DICの治療の効果がみられている。これらの凝固系の数値からすれば,止血は十分に可能と考えられる。 また,若干低下している血小板に関しても,肝 ン134,血小板7万3000と,やや改善傾向となり,DICの治療の効果がみられている。これらの凝固系の数値からすれば,止血は十分に可能と考えられる。 また,若干低下している血小板に関しても,肝生検や腰椎穿刺などの観血的処置前に行われる予防的血小板輸血は,血小板数5万を目標に輸血を行うことが望ましいとされている。しかも,肝生検の場合には,3万の基準で問題ないとの報告があり,本件の血小板7万3000という値は,本来であれば血小板輸血すら不要な数値である。 このように,当時のA4の血液データは,血小板輸血等の予防的措置なしに肝穿刺を許容するものであったが,B2病院では,なお慎重を期して血小板輸血を行っているのである。 なお,急変後の血液検査上,血小板は8万3000とかなり維持されていたことからも,穿刺時に,肝穿刺が不可能なほどの凝固異常がなかったことが裏付けられる。 また,2月23日には7.3,同月24日は7.7となっているヘモグロビン(HGB)値の推移からすれば,2月28日から3月1日の低下は,何ら急- 14 -激な低下とはいえない。 肝穿刺実施前において,胆汁瘻,血腫,肝膿瘍が疑われていたことa 2月28日に行われた1回目のエコー所見では,肝内に一部腫瘤様にみえる部分が存在したことから,血液膠原病内科では,肝膿瘍と穿孔の鑑別の必要性があると判断し,緊急CT及び消化器外科へコンサルトを求め,場合によっては穿刺を行うよう依頼をした(乙A1の124頁)。 そして,内科主治医のK医師から,消化器外科病棟医長のL医師に診療依頼がなされ,CT画像の供覧の上,病状説明を受けて,K医師,L医師及び被告B3の検討の下,肝穿刺が必要であるとの判断に至った。被告B3は,再度エコーを行った結果4cm大の塊が認められ,膿瘍とは性状 頼がなされ,CT画像の供覧の上,病状説明を受けて,K医師,L医師及び被告B3の検討の下,肝穿刺が必要であるとの判断に至った。被告B3は,再度エコーを行った結果4cm大の塊が認められ,膿瘍とは性状がやや異なったこと,2月14日に肝生検を行っていたことから,血腫の可能性も否定できないと判断し,直ちに,試験穿刺やPTAD(経皮的肝膿瘍ドレナージ)を行うことは避け,J医師にコンサルトを求めた。 その結果,血腫または胆汁瘻の可能性が指摘され,MRIの施行を行うように指示されたことから,2月28日中に穿刺を行うことを避け,翌日MRIを施行し,その所見から再度判断することとした。 b 3月1日には,WBCが4.9(4900)(28日は1.6(1600)),CRPが2.30(28日は0.70)と増加していたことから,感染も疑われ,抗生剤の投与もされている(乙A1の130頁,257頁)。この臨床経過は,肝膿瘍・胆汁瘻の可能性を示唆するものである。 さらに,同日実施されたMRIの検査結果報告書(乙A1の146頁)では,「MRI上,血性とは言えず,外傷機転であればbiloma(胆汁瘻)が疑われる。」とされており,血腫の可能性は低く,- 15 -胆汁瘻である疑いが高いとの診断となっている。 そして,内科主治医である血液膠原病内科の病棟医長のM医師,L医師及び被告B3とで検討を重ねて,感染を伴い,発熱,疼痛がみられると判断した。 このように,エコーの他,CT,MRIを行った結果,同時点においては,胆汁瘻,血腫,肝膿瘍の3つの可能性があり,被告B3としては,胆汁瘻である可能性が最も高いという判断に至ったのである(massの大きさが4cmから6cmとなっていることは,肝膿瘍よりも胆汁瘻・血腫に合致する所見であり(ただし,エコー所見では,角度 しては,胆汁瘻である可能性が最も高いという判断に至ったのである(massの大きさが4cmから6cmとなっていることは,肝膿瘍よりも胆汁瘻・血腫に合致する所見であり(ただし,エコー所見では,角度によりmassサイズが異なるので,肝膿瘍を否定する所見ではない。),MRI上の所見は胆汁瘻に合致するものであった。また,WBC,CRPが上昇していることは炎症を示唆する所見であり,血腫よりも胆汁瘻・肝膿瘍に馴染む所見である。)。 肝穿刺を行う必要性があったこと当時のA4はHPS(血球貪食症候群)を合併したSPTCL(皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫)に罹患し,その治療目的でCHOP療法を行っていたことから,WBCが減少しており,今後,0になることが予想されていた。 また,血液疾患の好中球減少時(治療による好中球減少も含む。)の発熱は,血液培養陽性率が低く(10数%に留まる),感染症の確証を得ることは極めて困難であるが,他方で,不明熱の8割が抗菌薬又は抗真菌薬により解熱(一時的な反応)がみられ,確定診断には至らないものの実際にはその多くは感染症であると推定されるとの報告もみられている。そのため,現在ではその重要性が認識され,febrileneutropenia(FN=発熱性好中球減少症)として「病名」が付けられ,血液培養が陽性にならない場合でも,感染症として積極的- 16 -に治療を行うべきであるとされている。 このように,好中球減少時の感染は,致死的な経過をたどることがあり,早期の治療が求められることがあるため,FNは感染症エマージェンシーとして治療に当たらなければならない。 したがって,抗腫瘍剤を用いている場合には,仮に培養の結果,菌が同定されなくとも,WBC減少時の発熱というだけであっても,常に,感染症を念頭におきな ェンシーとして治療に当たらなければならない。 したがって,抗腫瘍剤を用いている場合には,仮に培養の結果,菌が同定されなくとも,WBC減少時の発熱というだけであっても,常に,感染症を念頭におきながら治療を行わなければならない。 そのような状況のもと,胆汁瘻又は肝膿瘍であった場合,感染症等の発症から敗血症への移行が予想され,その場合には化学療法の継続も困難となり,致死的な状態に陥ってしまう。そのため,胆汁瘻や肝膿瘍の場合には,速やかに排出を行う必要があった。 さらに,本件では,胆汁瘻,血腫,肝膿瘍が疑われたが,これらのいずれであるかは,実際に穿刺を行わない限り診断できず,確定診断をするためにも穿刺は必要であった。また,画像上では,感染の有無を判断することはできないところ,感染の有無,起炎菌の同定を行う必要からも,肝穿刺は必須であった。 肝穿刺を実施したことに過失はないことこのように,本件では,胆汁瘻,血腫,肝膿瘍の可能性が疑われていたのであり,これらを確定し,胆汁瘻や肝膿瘍であった場合には,速やかにドレナージを行うことが必須であった。 他方で,A4の状態はDIC疑いの状態であったものの,肝穿刺のリスクを上回る有用性があったのであり,肝穿刺の実施に過失はない。肝穿刺を行った時点での凝固能は肝生検を行った時点よりも改善されており,その上に更に血小板輸血までも実施して行っているのであって,リスクが大きいものではなかった。 また,実際に,3月1日午前中に行われた血液培養のうち1本からは,- 17 -MR-CNS(メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)が検出されており,実際に感染があった可能性が極めて高いことからしても,感染を疑ったB2病院の判断が適切であったことを裏付けている。 なお,本件では,胆汁瘻,血腫,肝膿瘍の可 ーゼ陰性ブドウ球菌)が検出されており,実際に感染があった可能性が極めて高いことからしても,感染を疑ったB2病院の判断が適切であったことを裏付けている。 なお,本件では,胆汁瘻,血腫,肝膿瘍の可能性があり,肝穿刺が必要であるとの判断を行ったのは,B2病院としての判断であり,被告B3単独の判断ではない。 イ肝穿刺の実施方法が適切であったこと本件の肝穿刺を行う際には,A4の状態を考慮して,血小板輸血を10単位行っている(乙A1の256頁)。 また,18Gの穿刺針を用いてエコー下で慎重に行い,穿刺後も滲出液が出ていないか確認している。この穿刺針の太さについては,穿刺した結果,胆汁瘻や肝膿瘍であった場合に,それを排出する必要性,1度の穿刺で確実に目的を達成する必要性と,他方でなるべく侵襲の少ないように細い針を用いる必要性とを総合的に考慮して決定したのであり,適切な穿刺針の太さである。 そして,肝穿刺終了した際にも,圧迫止血を行い,皮下にたまりがないかなどの確認も行っている。 このように,肝穿刺の実施方法は適切である。 争点(B2病院の担当医師による肝穿刺後の術後管理についての過失の有無)について(原告らの主張)ア肝穿刺術後の患者の状態肝生検実施後,肝内出血が進行しており,肝穿刺の結果血腫を引いたことから肝内出血が確認され,肝内血腫穿刺により更なる出血と腹腔内出血が生じていた。 剖検所見(乙A4の1頁)では,肝右葉実質内血腫は3つの部分からな- 18 -り,その所見から3回にわたる出血があると考えられる。肝生検直後2月28日まで画像診断がなされておらず出血時期は確定できないが,肝生検後のある時期に出血を起こし,DIC状態下の肝生検という 18 -り,その所見から3回にわたる出血があると考えられる。肝生検直後2月28日まで画像診断がなされておらず出血時期は確定できないが,肝生検後のある時期に出血を起こし,DIC状態下の肝生検という侵襲的検査の合併症であることは疑いの余地はない。 イ腹腔内出血が疑われたこと術後,18時の血液検査ではHGBが7.3から6.8に低下しており,更なる肝内出血及び腹腔内出血が疑われ,20時にはA4が腹痛を訴えおり,その段階ではより重篤な状態の腹腔内出血が疑われた。 被告らは,疼痛は2月28日から一貫して継続していたと主張するが,3月1日20時及び22時の看護記録(乙A1の307頁)では腹痛の増大を示しており,ほかに嘔吐や大量失禁もみられ,それまでの状態とは異なる明らかな異常所見があり,腹腔内所見を疑わない理由はない。 ウ出血が疑われた場合に行うべき措置血腫を引いたことを確認した以上,肝ドレナージ終了後から,バイタルチェック(血圧,脈拍,呼吸,体温,意識)を頻回に繰り返し,厳重な管理の下でA4が出血していないことを確認する必要があり,出血の疑いがある場合は直ちに血液検査,腹部超音波検査を実施し,出血が確認された場合は,輸血,輸液を行い,更には肝動脈塞栓術を行い,場合によっては開腹による圧迫止血を実施して止血すべきである。 エソセゴンの投与は禁忌であることソセゴンは,全身状態が著しく悪化している患者に投与すると,呼吸抑制を増強することがあり,また,疼痛解除による血管拡張により血圧低下を生じさせることから,禁忌とされており,本件において,A4は肝穿刺術により肝内出血及び腹腔内出血が生じて全身状態が著しく悪化しており,ソセゴン投与はショックを引き起こす可能性があり,禁忌である 下を生じさせることから,禁忌とされており,本件において,A4は肝穿刺術により肝内出血及び腹腔内出血が生じて全身状態が著しく悪化しており,ソセゴン投与はショックを引き起こす可能性があり,禁忌である。 オ肝穿刺術後の管理に過失があること- 19 -肝穿刺術施行により,肝内出血が確認され,穿刺術施行により更なる肝内出血と腹腔内出血を生ずることが疑われている以上,経験豊富な医療スタッフの監視のもとに緊急処置が可能な施設での厳重な監視が必要であるにもかかわらず,A4を一般病棟に移し,A4の状況・危険性に対する問題意識の欠如した当直医師に格別の指示をせずに漫然と術後管理をゆだね,その結果腹腔内出血を見落とし,止血のための緊急処置をする機会を失わせ,それどころか禁忌であるソセゴン投与によりA4を致命的な危機に至らせており,B2病院の担当医師らの肝穿刺術後管理に過失がある。 (被告らの主張)ア肝穿刺術後の患者の状態そもそも,肝生検後,翌日の腹部エコーにおいては,出血がないことが確認されている(乙A1の85頁)。そのため,この肝生検により肝内出血に至ったと断定することはできない。肝生検後,遅発性に(24時間を経過して)出血すること自体極めて稀であり,A4の全身状態,治療経過に鑑みれば,肝生検とは異なる機序で出血が生じた可能性も高いところであって,解剖所見の結果も,肝生検後より,肝内出血が生じていたことを根拠付ける内容とはなっていない。 そして,3月1日午前6時の段階では,HGBは7.3であった後,午後6時30分でのHGBは6.8と,わずかに0.5の減少が認められていたにすぎなかった。また,午後8時30分の所見では,腹部は柔軟で平ら,圧痛は穿刺部に少しある程度で,ほかにはなく,筋性防 た後,午後6時30分でのHGBは6.8と,わずかに0.5の減少が認められていたにすぎなかった。また,午後8時30分の所見では,腹部は柔軟で平ら,圧痛は穿刺部に少しある程度で,ほかにはなく,筋性防御もブルンベルグ徴候もないという,ほぼ異常所見がないものであった。さらに,A4は,急変時まで意識清明であり,呼吸状態,血圧も安定していた。 イ腹腔内出血を疑う所見はないこと通常,HGBの0.5の低下は,日内変動や輸液によっても容易に生じるもの- 20 -であり,かつ,A4の場合,血球貪食症候群(HPS)を合併した皮下脂肪組織織炎様T細胞リンパ腫(SPTCL)という血液疾患に罹患していたことから,HGBの減少の原因としては,原疾患による影響をも考慮する必要がある。 そのため,HGBの減少により腹腔内出血を疑うことはできない。 また,急変時まで薬物によるコントロール可能な疼痛以外の症状がなく,腹部所見の異常もない。この疼痛は,2月28日から一貫して継続していたものであり,その他の腹部所見やバイタルサインに異常がない安定した状態であったことからすれば,腹腔内出血を疑うことはできない。 ウ出血が疑われた場合に行うべき措置そもそも,本件では出血は疑うことができない。 仮に腹腔内出血が疑われた場合にも,本件の場合,解剖所見上,血球貪食像が相当広がっていたことや,脳を含んだ他臓器へのリンパ腫の浸潤の影響や,臓器の機能障害が生じていた可能性が高く,基礎疾患が不良であることから開腹止血は不可能である。 また,肝動脈塞栓術は動脈性の出血を止めるものであるところ,本件経過及び解剖上からも明らかなように,本件の出血源が動脈ではなく,動脈塞栓術による止血は期待できない。しかも,化学療法直後であったことから,同手術を実施した場 性の出血を止めるものであるところ,本件経過及び解剖上からも明らかなように,本件の出血源が動脈ではなく,動脈塞栓術による止血は期待できない。しかも,化学療法直後であったことから,同手術を実施した場合には肝壊死,肝機能悪化,感染等による死亡リスクをいたずらに高める結果となりかねない。そのため,肝動脈塞栓術を施行すべき義務はない。 エソセゴンの投与は禁忌ではないことソセゴンには,血管拡張作用はなく(甲B4),出血を助長するようなものではない。 また,重篤な呼吸抑制状態にはなく,全身状態が著しく悪化していたわけでもないのであるから,ソセゴン投与は禁忌ではない。 オ肝穿刺術後の管理に過失はないこと- 21 -A4は,HPSを伴うSPTCLの患者であり,同疾患が生命予後を期待することさえ難しい疾患であることにかんがみれば,血液内科における詳細な観察が不可欠であり,しかも,既に化学療法が開始されており,WBCの減少が予想されていたことから,クリーンルーム(無菌層流装置利用下)での管理が求められていた。そこで,本件では,血液内科(無菌層流装置利用下)において,定期的なバイタルチェックが行われ(乙A1の307頁),被告B3をはじめとする消化器外科の医師との連携が図られており,A4の病状に変化があった場合には直ぐに駆けつけられる態勢が整えられていたのであるから,B2病院の担当医師らによる管理には何ら過失はない。 争点(各過失と結果(A4の死亡)との間の因果関係の有無)について(原告らの主張)ア患者の死亡原因患者の死亡原因は肝内血腫穿刺による腹腔内出血である。 すなわち,剖検記録(乙A4)の,死因欄には,直接の死因として,腹腔内出血が記載されており,その原因と ア患者の死亡原因患者の死亡原因は肝内血腫穿刺による腹腔内出血である。 すなわち,剖検記録(乙A4)の,死因欄には,直接の死因として,腹腔内出血が記載されており,その原因として肝内血腫穿刺が記載されている。 また,「肝穿刺にもとづく肝実質内血腫」として,「肝右葉実質内血腫(8×7×5㎝大)」,「新鮮な肝穿刺痕」,「やや経過のある肝穿刺痕:の上方2.7cmのところ0.2×0.2cm大,2個組織学的に浅層では,繊細な線維性結合組織で置換,深層で血腫と連続.創洞付近の門脈枝・中心静脈内腔に器質化血栓の存在.」と記載されている。 そして,上記,からの腹腔内出血(1550mℓ,凝血少量含む);諸臓器の貧血と記載されている。 剖検所見は,このように肝穿刺術と腹腔内出血による死亡との明確な因果関係を示している。 - 22 -さらに,上記は被告B3の肝穿刺術による変化を記載し,はそれより前の肝生検による変化,肝内出血を記載し,両者の肝内血腫が連続していることを示している。 イ前記の過失(肝生検についての過失)とA4の死亡との間に因果関係があること不必要な肝生検術施行の過失により肝内出血が生じ,その結果生じた肝内の塊が血腫であるにもかかわらず,被告B3が膿瘍と誤診し,肝内血腫穿刺に至ったものであり,肝生検がなければ,肝内血腫穿刺もなくA4が死亡することもなかったといえるから,前記の過失とA4の死亡との間には因果関係がある。 ウ前記の過失(肝穿刺についての過失)とA4の死亡との間に因果関係があること被告B3の不要かつ危険な肝穿刺術を施行した過失行為の結果,肝内血腫を穿刺し,その結果腹腔内出血が生じて死に至ったもので 失(肝穿刺についての過失)とA4の死亡との間に因果関係があること被告B3の不要かつ危険な肝穿刺術を施行した過失行為の結果,肝内血腫を穿刺し,その結果腹腔内出血が生じて死に至ったものであり,前記の過失行為とA4の死亡との間には因果関係がある。 また,太い針で肝穿刺術を施行した結果,肝内出血と腹腔内出血を助長したものであり,このこととA4の死亡との間にも因果関係がある。 エ前記の過失(術後管理についての過失)とA4の死亡との間に因果関係があること適切な術後管理を怠った結果,適切な止血術が実施されず,腹腔内出血を生じさせかつ助長させ患者の救命ができなかったのであり,B2病院の担当医師らによる術後管理についての過失とA4の死亡との間には因果関係がある。また,ソセゴンの投与は,呼吸抑制と血圧低下を生じさせたのであり,そのこととA4の死亡との間には因果関係がある。 (被告らの主張)ア患者の死亡原因- 23 - 出血量からは腹腔内出血が急変の原因となり,死亡に至ったとは考えにくく,死亡原因は不明である。 A4の剖検記録(乙A4)によれば,腹腔内の出血量は凝血を含めても1550mℓである。 これは,3月3日午後1時に行われた剖検時の出血量であるから,本件の急変時である同月1日午後11時40分の段階では,更にこの量よりも少ない出血量であったといえる。 A4の体重は52kg(乙A4の1頁)であり,循環血液量は,体重の約13分の1とされているから,同人の場合の循環血液量は約4000mℓと推測される。失血死に至るには,この循環血液量の2分の1が失われる必要があると考えられる。しかしながら,本件における腹腔内の出血量は,解剖の段階においても1550mℓにとどまる。しかも,本 0mℓと推測される。失血死に至るには,この循環血液量の2分の1が失われる必要があると考えられる。しかしながら,本件における腹腔内の出血量は,解剖の段階においても1550mℓにとどまる。しかも,本件では,急変後直ちに蘇生措置を開始し,輸液だけでも2000mℓ以上を投与し,さらに,MAP輸血も6単位(全血相当で1200mℓ分)を急速に輸血している。これらの大量輸血・輸液により,同時点におけるA4の体内循環血液量は少なくとも6000mℓ~7000mℓと推測されるのであり,この4分の1にも満たない出血量で死亡に至ったとは考えられない。 そのため,A4の死因について,腹腔内出血が原因となっていると断定することはできず,基礎疾患(HPSを合併したSPTCL)による影響が強く示唆される。 すなわち,T細胞リンパ腫に血球貪食症候群が合併していた場合,50%生存期間はわずかに69日との報告がある上(乙B1の213頁),皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫自体,化学療法に抵抗性なものが多く,予後が悪い。本件では,解剖によると,肝臓,脾臓,骨髄,リンパ節などリンパ関連臓器のすべてにおいてマクロファージによる血球貪食像が認められており,血球貪食像が相当広がっていたことや,脳に腫脹があり分水嶺の混濁が- 24 -みられ,脳の顆粒層の脱失傾向がみられていることからすれば,脳を含んだ他臓器へのリンパ腫の浸潤の影響や,臓器の機能障害が生じていた可能性が高い。 したがって,本件では,A4の死因について,腹腔内出血が原因となっているとはいえない。 イ肝生検とA4の死亡との間に因果関係はないこと肝生検を行った翌日の腹部エコーにおいては,出血がないことが確認されている(乙A1の85頁)。そのため,この肝生検により肝内出血に至ったと断定することはできない。 亡との間に因果関係はないこと肝生検を行った翌日の腹部エコーにおいては,出血がないことが確認されている(乙A1の85頁)。そのため,この肝生検により肝内出血に至ったと断定することはできない。 剖検記録(乙A4)においても,「やや経過のある肝穿刺痕」は,「深層で血腫と連続」しているものの,その血腫は「①周囲が繊細な線維性結合組織で被包される部分,②数日程度の経過を有する壊死肝組織に接する部分,③新鮮な壊死肝組織ないし壊死傾向に乏しい肝組織に接する部分」で構成されており,そのいずれの部分に接しているのかは不明である。そのため,血腫の形成が,肝生検によってなされたかは明らかではない。 むしろ,肝生検は浅層で行われるところ,剖検記録においては,浅層では,線維性結合組織で置換されており,治癒している。さらに,通常,1つの傷が治癒する過程で,部位ごとに差異はないことからしても,肝穿刺痕が深層で血腫と連続したのは,何らかの原因で発生した血腫が巨大化したことによって,既に治癒していた肝生検の痕に接したことから生じたと考えるのが合理的である。 したがって,そもそも肝生検と肝内血腫との間の因果関係が否定され,死亡との間の因果関係も否定される。 ウ肝穿刺とA4の死亡との間に因果関係はないこと剖検記録によれば,肝臓に比較的新鮮な肝内血腫の存在は確認されているが,そのほかの血管からの出血の有無についての記載はなく,腹腔内の正確な出血源は不明である。同人がDICあるいはDIC疑いの状態にあったことからは,穿- 25 -刺部以外からの出血の可能性も否定できない。特に悪性リンパ腫の場合,腫瘍に対して化学療法を行い,化学療法に対する反応がみられた場合に,組織に浸潤している腫瘍が縮小することから,出血や浸潤臓器の穿孔等を来す場合がみられる。 性も否定できない。特に悪性リンパ腫の場合,腫瘍に対して化学療法を行い,化学療法に対する反応がみられた場合に,組織に浸潤している腫瘍が縮小することから,出血や浸潤臓器の穿孔等を来す場合がみられる。本件でも,CHOP療法により,LDH(乳酸脱水素酵素)が改善しており,治療に反応していることから,肝組織に浸潤していた腫瘍が縮小することにより,出血が生じた可能性もある。 また,HPSでは,感染や出血が死因となることもあるとされているように(甲B3の14頁),HPSのために出血が生じた可能性も残る。 さらに,剖検記録添付の写真は,不鮮明なものであり,肝臓の血腫の状態がどのようになっているかは明らかではなく,腹腔内出血と肝生検・穿刺との関係は不明である。 加えて,肝生検後の遅発性血腫の予後は決して好ましいものではなく,特に,A4は,HPSを併発したSPTCLの患者であり,全身状態が不良であったことにかんがみれば,同合併症を発症した時点において,死亡のリスクが極めて高まっていたものと評価でき,2月28日に確認された像が血腫であったと仮定した場合,その大きさから,自然吸収あるいは止血される可能性は低いと考えるのが合理的である。そのため,3月1日の肝穿刺がなくとも,腹腔内出血に至っていたことも十分に考えられる。 のみならず,本件の場合,仮に肝動脈造影を先行させたとしても,本件の肝内血腫が動脈出血によるものでない場合には,動脈造影によっても何も分からず,単に侵襲を加えたのみであり,動脈性出血が否定されたとして,次に行う措置としては,本件と同様に穿刺を行うことになるのであり,その後の経過は本件と同様となる。また,本件の肝内血腫が,仮性動脈瘤の破綻など,動脈出血によるものである場合であっても,動脈造影を実施しても,破綻している血管や動脈瘤が見付からな とになるのであり,その後の経過は本件と同様となる。また,本件の肝内血腫が,仮性動脈瘤の破綻など,動脈出血によるものである場合であっても,動脈造影を実施しても,破綻している血管や動脈瘤が見付からない可能性の方が高く,やはり確定診断のために肝穿刺を実施し,本件と同様の経過をたどることになる。 - 26 -したがって,肝穿刺と死亡との間の因果関係は否定される。 エ術後管理とA4の死亡との間に因果関係はないことそもそも,剖検所見でみられている腹腔内出血が生じたのは,急変時から急変後であると考えられ,肝穿刺後に継続して出血していたものではない。すなわち,①肝穿刺の際にエコーにて出血がないことを十分に確認していること,②血液検査データも積極的に出血を示唆するものではないこと,③午後8時30分ころに被告B3が診察した時点では会話可能で,腹部所見にも異常がなかったこと,④穿刺後1時間おきに看護師が巡回しているが,コントロール可能な腹痛(腹痛自体は28日から継続している。)以外に異常を訴えてはいないこと,⑤血圧も,午後6時,午後10時のいずれの時点においても120以上あったこと,⑥突然の意識消失(尿失禁を伴う。)がみられたことなどからすれば,本件では腹腔内出血を来したのは急変時から急変後であると考えるのが合理的である。 このことからすれば,腹腔内出血を生じていない以上,術後管理と死亡との間の因果関係は否定される。 さらに,本件具体的状況下では,腹腔内出血の出血量は,死亡に至るほど多量なものとはいえず,基礎疾患等のほかの要因で死亡したと考えるのが合理的である。そのため,仮に穿刺後のいつかの時点で輸血をしたとしても,それにより,急変が避けられたという高度の蓋然性はない。 ソセゴンは,出血を助長するようなものではないため,ソセゴンの投与と腹 合理的である。そのため,仮に穿刺後のいつかの時点で輸血をしたとしても,それにより,急変が避けられたという高度の蓋然性はない。 ソセゴンは,出血を助長するようなものではないため,ソセゴンの投与と腹腔内出血とは無関係である。そのため,ソセゴンの投与と死亡との間にも因果関係はない。 争点(損害の有無及びその額)について(原告らの主張)ア A4の損害 逸失利益 4444万6483円- 27 -A4は40才の有職の主婦であり,国立大学を4年で中退した学歴があるので,同年齢高専・短大卒学歴女子の平均年収は433万6200円(賃金センサス平成16年第1巻第1表)である。就労可能年数は67才までの27年間であり,そのライプニッツ計数は14.643である。生活費控除率を30%とすれば,逸失利益は,4444万6483円である。 (計算式)433万6200円×(1-0.3)×14.643=4444万6483円 慰謝料 2400万円A4は原告A1の妻であり,A4固有の慰謝料は2400万円と評価される。 合計 6844万6483円イ原告A1の固有の損害 葬儀費用 252万4343円 原告A1固有の慰謝料 600万円原告A1は最愛の妻を亡くし,妻の死亡後は,神経性の疾患に罹り,治療を受けるなどした。原告A1の固有の慰謝料は,600万円が相当である。 合計 852万43 最愛の妻を亡くし,妻の死亡後は,神経性の疾患に罹り,治療を受けるなどした。原告A1の固有の慰謝料は,600万円が相当である。 合計 852万4343円ウ弁護士費用原告らの請求総額は,7697万0826円であり,弁護士費用は,合計770万円が相当である。その内訳としては,原告A1について542万円,原告A2,原告A3について各114万円を請求する。 エ相続A4の相続人は原告ら3名であり,法定相続分は原告A1が3分の2,- 28 -原告A2,原告A3が各6分の1であるから,A4固有の損害について,原告ら3名は損害賠償請求権を法定相続分に従って相続した。原告らが相続したA4固有の損害賠償請求権の内訳は,原告A1について4563万0989円,原告A2,原告A3について,各1140万7747円である。 オまとめよって,原告らは被告ら各自に対し,原告A1につき損害賠償として5957万5332円,原告A2,原告A3につき各1254万7747円及びこれらに本件医療事故日である3月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告らの主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる(末尾に認定の根拠となった証拠等を示す。)。 B2病院への入院A4は,右上腕外側に圧痛を伴う硬結が出現したため,平成16年8月24日,C診療所(D医師)を受診し,その後,同診療所での通院治療を継続した。同年9月中旬ころから,感冒様の症状を伴うようになった。A4は,同年10月ころ,右上腕の腫脹に加え,39℃の発熱,両下腿の腫脹・紅斑が 所(D医師)を受診し,その後,同診療所での通院治療を継続した。同年9月中旬ころから,感冒様の症状を伴うようになった。A4は,同年10月ころ,右上腕の腫脹に加え,39℃の発熱,両下腿の腫脹・紅斑が出現したことから,B2病院を紹介され,同月15日,B2病院の皮膚科を受診した。A4は,同日,皮膚生検,咽頭粘液培養,血液検査等を受け,左下腿伸側中心に触れると硬い紅斑が散在し,一部では融合して局面を形成していること,咽頭発赤がみられること,右上腕外側を中心として表面に赤みを伴わない板状硬結がみられることから,結節性紅斑が疑われ,サワシリ- 29 -ンカプセル,ロキソニン(非ステロイド性抗炎症薬),ムコスタ(粘液産性・分泌促進薬),ヨウ化カリウム(電解質製剤)が内服投与された。同月16日,19日もB2病院の皮膚科を受診し,同月16日には,下腿の熱感を訴え,同月19日には,咽頭粘液培養の結果,常在菌のみが検出されたことが判明したものの,左下腿伸側から内側にかけて生検部位を中心に赤色になっており,熱感が強く,圧痛が認められた。また,右上腕外側は,熱感と板状硬結がみられたが,赤みは目立たなかった。A4は,これらの所見から,結節性紅斑と蜂窩織炎(フレグモーネ)が疑われ,上記皮膚生検の病理組織診断の結果では,結節性紅斑に矛盾しない所見であり,悪性の証拠はないことが報告され,ユナシンS(ペニシリン系抗菌薬)3gの点滴が開始された。 なお,同日の体温は36.5℃であり,血液検査の結果では,CRPは6. 88であった。 しかし,A4の症状が改善しないことなどから,同月20日,B2病院の皮膚科に入院し,同日には体温が40℃台に上昇した。血液検査の結果では,WBCは4900,CRPは5.85であり,同月21日の血液検査の結果では,WBCは4900,CRPは4. 月20日,B2病院の皮膚科に入院し,同日には体温が40℃台に上昇した。血液検査の結果では,WBCは4900,CRPは5.85であり,同月21日の血液検査の結果では,WBCは4900,CRPは4.73であった。同月22日,午前6時ころから,39℃台の発熱があり,両下腿の著明な浮腫が持続し,両下腿の境界不明瞭な浸潤や紅斑や拡大傾向はないが,消退もしておらず,強い圧痛がみられ,右上腕の発赤腫脹も持続していた。同月23日,朝に39.5℃までの発熱があり,両下腿,右上肢の圧痕性の浮腫が強い状態であった。 ヨウ化カリウムの投与が中止され,プレドニゾロン一日30mgの投与が開始された。なお,同月22日,A4に対し,脂肪織にリンパ球主体の浸潤があり,現治療では不十分と考えられるので,プレドニゾロンを使用したいこと,その副作用として,血圧上昇,血糖上昇,消化管出血,感染,骨粗しょう症,眼障害などがあり,下腿の症状が感染によるものであるとすると,増悪する可能性があることについて説明があり,同人はプレドニゾロンの使用- 30 -を了承していた。同月24日,両下腿の腫脹の軽度改善がみられ,左下腿後面・右下腿内側には硬結が残るものの,両下腿内側の紅斑は徐々に褐色調となっており,一部硬結がみられるが,右上肢の紅斑が減退しており,プレドニゾロンの投与による軽度改善傾向がみられた旨診断された。B2病院の原医師は,同月25日,A4を回診し,ユナシンが肝障害の原因になっていることを疑い,その投与を中止するとともに,結節性紅斑にしては大きすぎる,皮下脂肪織炎があったために発熱があった,プレドニゾロンが効いた反応としては結節性紅斑様であると診断した。 同月28日,両下腿の浮腫が減退し,暗紅色調となっており,浸潤もほとんど触れないが,軽度熱感がみられた。右上腕から前腕 があった,プレドニゾロンが効いた反応としては結節性紅斑様であると診断した。 同月28日,両下腿の浮腫が減退し,暗紅色調となっており,浸潤もほとんど触れないが,軽度熱感がみられた。右上腕から前腕は左に比べると,やや浮腫状だが,発赤はみられなかった。しかし,右上腕外側は板状硬結が残り,軽度熱感がみられた。これらの所見から,丹毒や蜂窩織炎が疑われた。 血液検査の結果では,CRPは0.38であった。心窩部に持続する痛みがあると訴えたが,腹部は柔らかで平らであり,腸音は普通であった。 同月29日,右上腕外側に手掌大の範囲で圧痛,自発痛のある板状硬結がみられ,右上腕から前腕中枢3分の1の部分にかけて熱感が強くみられた。 両下腿には板状硬結がはっきりしないが,外側で熱感が強くみられた。心窩部に持続する痛みがあり,胃十二指腸潰瘍の疑いがあると診断された。なお,プレドニゾロンの処方が30mgから15mgに変更された。同月30日,心窩部に圧痛があるものの,腹痛は改善していると診断された。同月31日には,昨夜に39℃台の発熱があったとのことであり,皮疹は右上腕に硬結を残すのみとなり,下腿は色素沈着となり良好な状態となった。 同年11月1日,A4の体温は36.8℃であり,腹痛はほとんどないとのことであり,右上腕に熱感,圧痛,硬結がみられた。両下腿は,褐色色素沈着がみられ,わずかに熱感があった。腹部圧痛はなく,針反応もみられなかった。血液検査の結果は,WBCは5600,CRPは0.63であった。 - 31 -同月2日には,39℃の発熱があり,同月4日には,体温は36℃台後半となったが,微熱が気になるとのことであり,同月5日には,体温は37.2℃であったが,右上腕に熱感が残るが,軽度改善傾向にあると診断された。 同月7日,右上腕の熱感はなく,硬結の改善 36℃台後半となったが,微熱が気になるとのことであり,同月5日には,体温は37.2℃であったが,右上腕に熱感が残るが,軽度改善傾向にあると診断された。 同月7日,右上腕の熱感はなく,硬結の改善傾向がみられた。右上腿の熱感や腫脹もなかった。同月8日,右上腕の硬結は改善し,右下腿の熱感が消失した。胃生検の病理組織診断の結果では,びらん性胃炎と診断された。 A4は,同月9日,右上腕の硬結が鶏卵大に残存するが,熱感はほとんどなく,圧痛も少しみられたにすぎなかったため(なお,同月8日の上腕CTの読影では,蜂窩織炎の疑いがあると診断された。),B2病院を退院し,その後は,B2病院の皮膚科への通院治療を継続することとされた。 A4は,11月26日,B2病院の皮膚科を受診し,発熱はないものの,下腿に痛みを伴う紅斑の新生がみられ,右上腕の赤みも増したことから,結節性紅斑が再燃したと診断され,プレドニゾロンの処方が10mgから15mgに増量された。同年12月3日,前日に39℃台の熱が出たとのことであったが,上腕の硬結も,下腿の紅斑の状態も改善していると診断された。 12月13日,B2病院の皮膚科を受診したところ,疼痛を伴う紅斑が両下腿,特に左下腿へ出現しており,プレドニゾロンの処方が15mgから30mgに増量された。また,血液検査の結果,ASTは62,ALTは42,LDHは903IU/ℓ(以下,単位は省略する。)であり,肝機能障害が認められた。WBCは3700,CRPは0.49であった。 同月20日,腹部超音波検査(エコー検査)の結果,肝臓に直径7~8cm大の腫瘍が見付かり,血管腫の疑いがあると診断され,平成17年1月18日にMRI検査を実施することとされた。同月24日には,紅斑痛はあるものの,症状の再燃なく,熱感もないことから,プレドニゾロ cm大の腫瘍が見付かり,血管腫の疑いがあると診断され,平成17年1月18日にMRI検査を実施することとされた。同月24日には,紅斑痛はあるものの,症状の再燃なく,熱感もないことから,プレドニゾロンの処方が30mgから25mgに変更され,更に1月1日からは20mgに変更することとされた。 - 32 -A4は,平成17年1月5日,B2病院の皮膚科を受診し,年明けより腫れが酷くなったと訴え,体温は36.7℃であるものの,両下腿,主に左下腿を中心として,熱感や色素沈着を伴った3~30mm大ほどの紅斑が多数散在しているのがみられ,その後の状態によって入院を検討することとなった。 同月8日,両下腿遠位部に圧痛を伴わない色素沈着化した円形紅斑が多発し,それぞれは孤立性であった。熱感に左右差はなかったが,左下腿の浮腫が強く,生検部は,依然として潰瘍化していた。プレドニゾロンの処方が20mgから15mgに変更された。同月18日には,予定されていた腹部MRI検査が行われたが,異常所見は認められなかった。 同月21日,下腿の潰瘍は上昇しておらず,紅斑の新生や圧痛はみられなかったが,強い顔面浮腫がみられた。体温は38.2℃であり,ウイルス感染と肝機能障害の疑いがあると診断された。(甲A10,甲C8,乙A2,3,15,乙A16の1ないし8,原告A1) B2病院への再入院A4は,平成17年1月25日から38℃以上の発熱が続いていること,食欲不良が続いていること,結節性紅斑による発熱は考えにくいことなどから,平成17年2月4日,B2病院に再入院した。同日午前11時5分ころの血液検査の結果では,WBCは2400,CRPは0.90,HGBは12.0,血小板は20万2000,ASTは212,ALTは131,LDHは1844であり,同日午後5時1 。同日午前11時5分ころの血液検査の結果では,WBCは2400,CRPは0.90,HGBは12.0,血小板は20万2000,ASTは212,ALTは131,LDHは1844であり,同日午後5時11分ころの血液検査の結果では,WBCは1600,CRPは0.90,HGBは11.3,血小板は17万1000,ASTは197,ALTは129,LDHは1831,PTは16. 4,PT%は57,PT比は1.38,PT・INRは1.29,フィブリノーゲンは64,D-Dダイマーは148.0であった。 同月4日の午後11時30分ころと同月5日午前6時50分ころには,3- 33 -9℃台の発熱があったが,同月5日の診察の際には,痛みは全くないとのことであり,下腿に浮腫はあるものの,腹部エコーでは器質的病変は認められなかった。血液検査の結果は,WBCは1600,CRPは0.81,HGBは11.1,血小板は18万1000,ASTは198,ALTは124,LDHは1790であった。同月6日の午前1時ころの体温は38.3℃,午前8時ころの体温は39.6℃であったが,A4の皮疹の増悪はなく,顔面や右眼の周りに強く浮腫がみられ,原告A2及び原告A3に対し,結節性紅斑のためステロイド内服中であったこと,平成16年10月ころから肝機能不全があり,平成17年1月25日ころから発熱があり,入院となったこと,肝機能不全の原因として,ウイルス,自己免疫等が考えられ,現在,検査中であるが,結果は出ていないこと,現在,補液を行い,安静として経過をみているが,状態の変化があれば,薬の処置の追加があり得ることが説明された。 N医師は,2月7日,A4を回診し,結節性紅斑であるのかを疑い,WBCが低いことから血液疾患の疑いがあるとして,膠原病の検索をすることとし,B2病院の血液膠原病 追加があり得ることが説明された。 N医師は,2月7日,A4を回診し,結節性紅斑であるのかを疑い,WBCが低いことから血液疾患の疑いがあるとして,膠原病の検索をすることとし,B2病院の血液膠原病内科のO医師にコンサルトしたところ,HPS(血球貪食症候群)等の血液疾患の可能性の方が高いとの意見であり,早急に骨髄生検(マルク)を実施するよう助言されたことから,同日,骨髄生検が施行された。なお,同月7日の血液検査の結果は,WBCは1400,CRPは1.11,HGBは10.6,血小板は15万,ASTは165,ALTは113,LDHは1634であった。同月8日には,顔面,両下肢に浮腫は残存しているものの,結節性紅斑の皮疹の再燃はなく,紅色調は褐色調となり落ち着いてると診断され,A4を回診した皮膚科のP医師は,組織をもう一度チェックすべきであるとの意見であった。腹部骨盤CT検査が行われた。 同月9日には,上記骨髄生検の骨髄像検査の結果では,有核細胞密度は低- 34 -下しているが,急性白血病などを疑わせるような芽細胞の増加は認められないこと,マクロファージについては血球貪食の認められるものもあるが,数の増加は認められず,積極的にHPSを考えさせるものではないこと,小型のリンパ球系の幼若球を思わせるものがわずかに認められることが報告された。血液検査の結果は,WBCは1600,CRPは1.31,HGBは11.3,血小板は15万3000,ASTは210,ALTは141,LDHは1822であった。 同月10日には,上記骨髄生検(骨髄穿刺)の検体についての病理組織診断の結果では,一部に組織球と考えられる細胞の赤血球の貪食像に類似した像が少数認められ,核崩壊物が少量であるが散在性にみられ,血球貪食症候群(HPS)を疑う所見が認められるが,少数であり 病理組織診断の結果では,一部に組織球と考えられる細胞の赤血球の貪食像に類似した像が少数認められ,核崩壊物が少量であるが散在性にみられ,血球貪食症候群(HPS)を疑う所見が認められるが,少数であり,完全には断定困難であり,本検体の検索範囲内では悪性を示唆する所見は認められないことが報告された。また,上記腹部骨盤CT検査の結果では,肝臓の右葉前下区域(S5)に小さい低吸収域があり,嚢腫の疑いがあり,膿瘍などの空間占拠性病変・腫瘤性病変(SOL)はみられず,脾臓には軽度の脾腫がみられたが,リンパ節に腫脹はみられなかった。 同月11日,A4の体温は,39.6℃に上昇した。同月12日の血液検査の結果では,WBCは1000,CRPは1.82,HGBは10.1,血小板は11万9000,ASTは213,ALTは138,LDHは1684,PTは15.7,PT%は61,PT比は1.32,PT・INRは1.25,フィブリノゲンは64,FDP(フィブリノゲン分解産物)は132.1μg/mℓ(以下,単位は省略する。),D-Dダイマーは113. 2であり,DICの診断基準に当てはめると,DICスコアは7点(FDP値が3点,血小板値が1点,フィブリノゲンが2点,PT比が1点)であり,DICの状態にあると判定されたため,FOY1500mgの投与が開始され,感染を防ぐため,プレドニゾロンの投与を中止することとされた。また,- 35 -血液内科のM医師及びQ医師に対してコンサルトしたところ,ウイルス感染の可能性もあるが,肝・脾のリンパ腫の否定は必要であり,肝生検,骨髄生検,ガリウムシンチなどの検査の必要性があるとの意見であった。(甲A11,甲C8,乙A1,2,乙A9ないし11,乙A15,乙A16の1ないし8,乙A17の1ないし6,証人E,原告A1,被告B3)⑶ ,ガリウムシンチなどの検査の必要性があるとの意見であった。(甲A11,甲C8,乙A1,2,乙A9ないし11,乙A15,乙A16の1ないし8,乙A17の1ないし6,証人E,原告A1,被告B3)⑶ 肝生検の実施とその後の状態2月14日午前6時ころの血液検査の結果では,WBCは1100,CRPは2.08,HGBは10.4,血小板は11万9000,ASTは169,ALTは110,LDHは1711,PTは14.8,PT%は67,PT比は1.24,PT・INRは1.19,フィブリノゲンは77であり,その後,午後4時30分ころ,肝生検が行われ,18Gの針で2回穿刺された。また,FFP(新鮮凍結血漿)4単位が投与された。肝生検後である午後7時ころの血液検査の結果では,WBCは1200,CRPは2.19,HGBは9.4,血小板は11万5000,ASTは174,ALTは110,LDHは1711,PTは15.0,PT%は66,PT比は1.26,PT・INRは1.20,フィブリノゲンは85であり,午後10時の血液検査の結果では,WBCは800,HGBは9.1,血小板は10万7000であった。 さらに,同日,A4及び原告A1に対し,A4が不明熱で入院し,原因を調べているが,現時点では不明であること,ウイルス感染症,血液疾患(リンパ腫),膠原病等の可能性が考えられ,諸検査を行っていること,ただし,診療経過から,出血傾向を伴うDICの可能性が考えられ,既に治療を行っていること,DICは重篤になると急変し,致命的であることが説明された。 A4は,同月15日には,高熱が持続して,腹の中と腰が痛いとの訴えがあり,腹部エコーが実施されたが,モリソン窩に滲出はみられず,肝生検穿刺部にも明らかな異常はなかったため,様子を観察することとされた。午前- 36 -6時 熱が持続して,腹の中と腰が痛いとの訴えがあり,腹部エコーが実施されたが,モリソン窩に滲出はみられず,肝生検穿刺部にも明らかな異常はなかったため,様子を観察することとされた。午前- 36 -6時の血液検査の結果では,WBCは1300,CRPは2.53,HGBは9.8,血小板は10万7000,フィブリノゲンは81,FDPは42. 9,PT比は1.31,PT・INRは1.24であり,DICスコアは8点と悪化した。同月16日の血液検査の結果では,WBCは1300,CRPは3.10,HGBは10.1,血小板は11万4000,フィブリノゲンは75,FDPは47.8,PTは15.1,PT%は65,PT比は1. 27,PT・INRは1.21であった。また,内科外来において骨髄生検が実施された。 同月17日,病理医であるR医師から,皮膚,肝の検体を比べているが,s-IL2(悪性リンパ腫マーカー)も上昇しており,リンパ腫も否定しきれていないこと,特殊染色を行い,評価をしてみることが報告され,原告A1に対し,特殊染色の結果を待ってリンパ腫かどうかの結論が出そうであることが伝えられた。同月18日には,体温が39.2℃となった。皮膚科医師から,他大学へ標本を出したところリンパ腫の可能性があるとのことであり,特殊染色の結果を待つこととなった。同日の血液検査の結果では,WBCは1300,CRPは1.97,HGBは10.1,血小板は10万2000,ASTは165,ALTは81,LDHは1818,PTは15.4,PT%は64,PT比は1.29,PT・INRは1.23,FDPは109.5であった。 同月19日,平成16年10月15日の皮膚生検の検体についての病理組織診断の訂正報告がされ,deepercutと免疫染色を施行して再検討した結果,細胞傷害性T細胞由来の は109.5であった。 同月19日,平成16年10月15日の皮膚生検の検体についての病理組織診断の訂正報告がされ,deepercutと免疫染色を施行して再検討した結果,細胞傷害性T細胞由来のSPTCL(皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫)と考えられる旨の報告がされた。また,R医師から,皮膚科の標本を再検討した結果,T細胞リンパ腫の可能性が否定できないこと,追加で肝生検検体の免疫染色を行うこと,肝生検の結果も併せるとHPSの合併も否定できないこと,再度骨髄検査の所見で貪食作用のチェックをすることが- 37 -報告された。さらに,3日間のステロイドパルス療法(ソルメドロール(コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム,副腎皮質ホルモン製剤)1000mg)が開始された。血液検査の結果では,WBCは1200,CRPは1. 47,HGBは10.2,血小板は8万7000,ASTは138,ALTは71,LDHは1703であった。また,同月20日の血液検査の結果では,WBCは900,CRPは2.49,HGBは9.3,血小板は7万6000,ASTは133,ALTは67,LDHは1698,PTは14. 2,PT%は72,PT比は1.19,PT・INRは1.15,フィブリノゲンは75であった。 同月21日,A4及びその家族に対し,不明熱にて入院中,原因として,感染,悪性疾患(リンパ腫),膠原病を考え,各種検査を行ったが,原因不明であること,現在,平成16年10月の皮膚生検,骨髄生検,肝生検の特殊染色を行い,その結果を待っていること,入院後,高熱が続き,体力の消耗が強く,また,病状も急速に悪化したため,2月19日からステロイドパルス療法を開始したこと,ステロイドの効果により現在解熱しているが,今後,ステロイドの減量による病態が再燃し,急激な経過をたどり,死亡 強く,また,病状も急速に悪化したため,2月19日からステロイドパルス療法を開始したこと,ステロイドの効果により現在解熱しているが,今後,ステロイドの減量による病態が再燃し,急激な経過をたどり,死亡する可能性もあること,診断,治療に非常に難渋しており,厳しい状態であること,病理の最終報告でも診断が付かないようであれば,セカンドオピニオンも考えていることが伝えられた。同日,肝生検の検体についての病理組織診断結果の追加報告があり,同検体では細胞傷害性T細胞由来の異型細胞は認められず,SPTCLの浸潤は検索範囲内では認められないこと,SPTCLではリンパ節や他臓器への転移はまれで,末期にはしばしばHPSを生じることが報告されていること,同検体では組織球系細胞が赤血球を貪食する像が認められ,同検体の肝脾腫大は類似病態の可能性が疑われることが報告された。血液検査の結果では,WBCは1800,CRPは1.50,HGBは8.4,血小板は9万9000,ASTは102,ALTは63,LD- 38 -Hは1374,PT%は63,PT比は1.31,PT・INRは1.25であった。 A4は,同月22日,肝生検及び皮膚生検からSPTCLと診断され,病名がSPTCLであること,この疾患の特徴として,皮疹(皮下脂肪織炎),肝脾腫,白血球及び血小板減少,貧血,発熱,凝固障害等を来しやすいこと,治療としては,CHOP療法を行い,安定してきたら更に強い治療を行う予定であること,その副作用として,嘔気,脱毛,白血球減少による感染症等があることなどについて説明を受けた。同日から,B2病院では,血液内科とも兼科してA4の診療に当たることとされた。同日の血液検査の結果は,WBCは2100,CRPは0.82,HGBは8.4,血小板は10万8000,ASTは112,ALTは8 ,B2病院では,血液内科とも兼科してA4の診療に当たることとされた。同日の血液検査の結果は,WBCは2100,CRPは0.82,HGBは8.4,血小板は10万8000,ASTは112,ALTは82,LDHは1125,PTは160. 0,PT%は5であった。 同月23日,FFP6単位が投与され,CHOP療法が開始され,オンコビン2mg,エンドキサン1170mg,アドリアシン78mg,プレドニン60mgが投与された。また,原告A1は,B細胞性リンパ腫に比べて,予後不良であり,治癒する確率は50%程度である旨を伝えられた。血液検査の結果は,WBCは1800,CRPは0.48,HGBは7.8,血小板は11万1000,ASTは325,ALTは202,LDHは1108,PTは16.5,PT%は59,PT比は1.39,PT・INRは1.30,フィブリノゲンは50,FDPは81.3,D-Dダイマーは83.1であった。 同月24日午前4時30分ころに39.4℃まで発熱し,血液培養検査が行われるとともに,FOY,オルガラン(血液凝固阻止剤)の投与が開始された。血液検査の結果では,WBCは1700,CRPは0.61,HGBは7.7,血小板は9万3000,ASTは329,ALTは261,LDHは1136,PTは12.4,PT%は89,PT比は1.04,PT・- 39 -INRは1.03,フィブリノゲンは91,FDPは41.6,D-Dダイマーは70.3であった。 同月25日,発熱が持続し,同月24日の血液培養検査の結果,バチルス菌が検出された(ただし,本来検出されるべきでない菌が混入したことによるコンタミネーションである可能性があるとされた。)。また,同月23日の腸骨よりの骨髄穿刺の結果,塩基性の強い芽細胞や核の濃染される小型のリンパ球が認められ,か されるべきでない菌が混入したことによるコンタミネーションである可能性があるとされた。)。また,同月23日の腸骨よりの骨髄穿刺の結果,塩基性の強い芽細胞や核の濃染される小型のリンパ球が認められ,かご細胞も多いことから,リンパ腫の骨髄浸潤の疑いがあると診断された。同月25日の血液検査の結果では,WBCは1300,CRPは1.85,HGBは8.0,血小板は10万,ASTは185,ALTは209,LDHは998,PTは11.3,PT%は100,PT比は0.95,PT・INRは0.96,フィブリノゲンは127,FDPは56.6,D-Dダイマーは91.1であった。また,同月26日の診察時の体温は36.5℃であり,同日の体温は36℃台が維持されていた。同月27日も,体温は36℃台が推移しており,発熱はなかった。この日をもってプレドニゾロンの投与が終了した。(甲A11,甲C8,乙A1,乙A9ないし11,乙A14,証人E,原告A1,被告B3)なお,原告らは,2月14日の肝生検の際に,16Gの針が使用された旨主張し,カルテ(乙A1の81頁)には16Gの針が使用された旨記載されている部分がある。しかし,上記記載については,S医師が,通常の肝生検においては十分な検体を得るために16Gの針を用いることが多く,カルテに記載するまでに少し時間が空いてしまったため,16Gの針が使用されたと誤って記載した旨供述しているところであり(乙A11),同カルテのほかの部分には,18Gの針が使用された旨記載されていること(乙A1の150頁)に加えて,上記肝生検を行ったE医師も,合併症や肝生検に必要十分な量を考えて,細めの18Gの針を用いたと,明確かつ具体的な根拠を示して供述している(乙A10,証人E)ことからすれば,上記肝生検の際に- 40 -は,18Gの針が使用され 併症や肝生検に必要十分な量を考えて,細めの18Gの針を用いたと,明確かつ具体的な根拠を示して供述している(乙A10,証人E)ことからすれば,上記肝生検の際に- 40 -は,18Gの針が使用されたと認めるのが相当である。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 また,甲B第9号証及び証人Tの証言中には,平成16年10月15日に採取した皮膚生検の検体について特殊染色検査を実施しなかったために,悪性リンパ腫の確定診断が遅れたとする部分があり,鑑定人U1の鑑定意見中には,B2病院の皮膚科を受診した当初は結節性紅斑ともいえる病状であり,特殊染色を実施することは困難であったといえるものの,発熱等のA4の臨床症状が改善しない時点では,更に詳しい検査を考慮する可能性はあったのではないかとする部分もある。しかし,SPTCLは,まれな細胞障害性T細胞由来の悪性リンパ腫で,世界で200余例の報告があるのみであり,これまで少数例の症例報告が主体で,その臨床像,治療法及び予後因子に関して詳細は分かっていないとされていること(鑑定人U2及び同U3の各鑑定意見,乙A4)のほか,A4がB2病院の皮膚科を受診した当初は,結節性紅斑と診断してやむを得ない症状等であり,平成16年11月9日の退院時には,プレドニゾロンの投与等によって,その症状は改善傾向にあったこと,その後,2月4日にB2病院の消化器内科に入院するまでの通院期間中は,発熱,肝機能障害,両下腿への紅斑,浮腫の出現等が認められたものの,結節性紅斑の再燃も考えられたことなどから,血液検査,腹部超音波検査,細菌培養検査,プレドニゾロンの増減量等の措置が行われていたこと等,本件における臨床経過にかんがみると,A4がHPSを伴うSPTCLであることについて確定診断が遅れたということはできない。 査,細菌培養検査,プレドニゾロンの増減量等の措置が行われていたこと等,本件における臨床経過にかんがみると,A4がHPSを伴うSPTCLであることについて確定診断が遅れたということはできない。 ⑷ 肝穿刺の実施とその後の状態2月28日午前6時ころの血液検査の結果では,WBCは1600,CRPは0.70,HGBは8.4,血小板は11万3000,ASTは128,ALTは225,LDHは800,PTは12.2,PT%は91,PT比は1.03,PT・INRは1.02,フィブリノゲンは55,FDPは4- 41 -6.4,D-Dダイマーは47.7であった。その後,A4は,朝ヨーグルトを食べた後から腹痛があると訴え,心窩部に圧痛があったが,筋性防御等はみられず,ソセゴン(非麻薬性鎮痛薬)15mg及びアタラックスP(非ベンゾジアゼピン系抗不安薬)25mgが投与され,いったんは症状の改善をみたが,その後,再度腹痛の訴えがあった。そこで,B2病院の血液膠原病内科のVが診察したところ,筋性防御がみられるとともに,断続的な腹痛と聴音の減退がみられた。そのため,腹部エコー検査(1回目)と胸腹部レントゲン検査が行われ,腹部エコー検査において,肝臓に肝腫大があり,脂肪肝がみられ,一部局在性(占拠性)病変(SOL)様にみえる部位があるとの所見が得られ,肝膿瘍や穿孔の鑑別が必要であると判断された。そこで,Vは,血液膠原病内科の上級医であるK医師に連絡し,午後4時ころ,緊急に腹部CT(単純CTと造影CT)検査を実施したところ,肝右葉に辺縁が低吸収域で,比較的境界明瞭で内部が不均一な,造影剤によっても造影されない腫瘤像が確認された。 K医師は,腹部CTでは,内部が不均一であり,内部の一部が感染を伴っている可能性があると考え,同科で同じグループであるWとともに,消 部が不均一な,造影剤によっても造影されない腫瘤像が確認された。 K医師は,腹部CTでは,内部が不均一であり,内部の一部が感染を伴っている可能性があると考え,同科で同じグループであるWとともに,消化器外科病棟医長であるL医師にCT画像を持ち込んでコンサルトをし,K医師,L医師及び被告B3による検討の結果,肝膿瘍の場合には,速やかに経皮的肝膿瘍ドレナージ(PTAD)を実施する必要があるとの結論となった。 そこで,K医師と被告B3は,A4及び原告A1に対し,K医師からは,現在の腹痛の原因として肝膿瘍の存在が最も考えられ,感染の可能性があれば穿刺を行ってその起炎菌を同定した上で,適切な治療を開始しなければ,CHOP療法後の血球減少時に敗血症等の重篤な感染症に発展する可能性が極めて高いこと,肝膿瘍の場合には内容物を排出しなければ,感染症によって致命的となる可能性があることを説明し,被告B3からは,穿刺の方法,出血を含む合併症のほか,一般的な合併症の危険率は約3%であり,まれで- 42 -はあるが死亡することもあることなどについて説明し,A4及び原告A1はPTADを受けることに同意した。 その後,被告B3が,午後6時ころ,エコー下でのPTAD実施のため,腹部エコー(2回目)を実施したところ,直径4cm大の占拠性病変(SOL)様に見える充実性の塊(mass)があり,膿瘍とは性状がやや異なるようにみえたから,消化器外科の上級医であるJ医師にコンサルトしたところ,J医師は,血腫,胆汁性嚢胞(胆汁瘻)の可能性があることから,MRI検査により質的判断を行う方がよいとの意見であった。そこで,被告B3は,K医師と再検討を行い,MRIを撮影することとして,同月28日にPTADを実施することは見送り,WBC,CRPが上昇したり,発熱があった場合に穿刺を う方がよいとの意見であった。そこで,被告B3は,K医師と再検討を行い,MRIを撮影することとして,同月28日にPTADを実施することは見送り,WBC,CRPが上昇したり,発熱があった場合に穿刺を行うこととし,CTで今後のmassの増大傾向の有無を確認していくこととした。なお,午後6時ころと午後9時ころには,ソセゴン30mgを入れた生理食塩水100mℓのうち,それぞれ50mℓが点滴投与された。 3月1日午前6時ころの血液検査の結果では,WBCは4900,CRPは2.30,HGBは7.3,血小板は7万6000,ASTは257,ALTは315,LDHは920,PTは11.6,PT%は99,PT比は0.97,PT・INRは0.98,D-Dダイマーは28.8,FDPは19.4,フィブリノゲンは134であった。同日の検査結果では,化学療法のために1000~2000で推移していたWBCの顕著な増加とCRPの上昇,肝機能の悪化がみられ,DICの診断基準では,血清FDPで1点,血小板で2点,血漿フィブリノゲンで1点,基礎疾患1点の合計5点であり,「白血病及び類縁疾患,再生不良性貧血,抗腫瘍剤投与後などの骨髄巨核球減少が顕著で,高度の血小板減少を見る場合」を当てはめた場合には,6点であり,DICの疑いがある状態と判断された。A4の体温は,午前6時30分ころには約40℃に上昇し,午前7時40分ころは約39℃であり,- 43 -午前9時ころには36.8℃に低下したが,午後2時ころには約39℃に上昇した。これを受けて,MRIの結果を待たず,腸内細菌群(大腸菌など)と嫌気性グラム陰性桿菌(バクテロイデス)に対する抗生物質であるセオタックス(1g×4回/日)及びダラシン(600mg×3回/日)の投与が決定された。 また,放射線科のH医師にコンサルトした ど)と嫌気性グラム陰性桿菌(バクテロイデス)に対する抗生物質であるセオタックス(1g×4回/日)及びダラシン(600mg×3回/日)の投与が決定された。 また,放射線科のH医師にコンサルトした結果,典型的ではないが,造影CTに高吸収域があり,血腫が最も疑われるとの意見であり,MRI検査を実施するよう指示された。A4は継続して腹痛を訴えていたことから,午前7時30分ころにはソセゴン30mgを入れた生理食塩水100mℓのうち40mℓが点滴投与され,午後2時ころにもソセゴン30mgを入れた生理食塩水100mℓが点滴投与された。さらに,午後4時30分ころには,肝穿刺に備えて,血小板10単位が投与された。加えて,MRI検査の結果について,放射線科のI医師から,胆嚢の吸収域と近く,胆汁瘻の可能性もある旨が口頭で報告された(なお,3月2日には,同医師から,MRI検査の結果について,肝前区域に直径7cmの嚢胞性塊があり,その内容は,MRI上,血性とはいえず,外傷機転であれば胆汁性肝嚢胞が疑われること,周囲肝組織の浮腫所見は認められず,膿瘍としては非典型であること,その他,腹水,イレウスの所見は認められないことが記載されたMR検査結果報告書が提出されている。)。 血液膠原病内科病棟医長のM医師,L医師及び被告B3は,放射線科のMRI読影結果等をも踏まえて再度検討を行った結果,A4の肝内のmassは感染を伴う胆汁瘻が最も疑わしく,次いで血腫や肝膿瘍の可能性があるのではないかと考えた。そして,A4が感染を伴っており,それによる発熱や疼痛が見られる状態であれば,化学療法等の影響によってWBCが今後更に減少していくことが予想され,感染症により重篤な事態に陥る危険性が高く,化学療法の継続も難しくなることから,感染を伴う胆汁瘻や肝膿瘍であれば- 44 れば,化学療法等の影響によってWBCが今後更に減少していくことが予想され,感染症により重篤な事態に陥る危険性が高く,化学療法の継続も難しくなることから,感染を伴う胆汁瘻や肝膿瘍であれば- 44 -緊急に穿刺して排出する必要があると判断した。 そして,3月1日午後4時40分ころ,被告B3は,A4の肝内のmassに対して肝穿刺を行った。その際にも,A4は,右肋骨弓下を中心に自発性の激痛を訴え,腹部を屈曲し,苦悶様の表情を浮かべており,体温は38℃台であった。肝穿刺の際には,右葉前区(S5),右葉後区(S6)の領域にある直径6cm大の腫瘍(腫瘤)に対し,ドップラーにより血流のない部位を確認し,エコー下で18G(ゲージ)の針による穿刺を行った。血腫の排液があり,肝内massは血腫であることを鑑別できたことから,ドレナージを行うことは中止した。この血腫は,アクティブなもの(活動性の出血)ではなく,少量を吸引して培養検査,成分分析検査に提出した。血腫と鑑別できたことから,穿刺針円筒を抜いた状態で流出がないことを確認し,穿刺針を抜去し,15分間圧迫して肝穿刺を終了した。また,腹部エコーにより,穿刺後のモリソン窩や横隔膜下等の腹腔内にたまりがないこと,massが増大していないことを確認した。穿刺後,A4は,午後6時ころ,内科病棟にある自室に帰室した。 被告B3は,原告A1に対し,肝穿刺を実施したところ血性成分が排液されたこと,血腫の疑いがあり,このまま保存的に経過観察すること,血腫が増大傾向ならば血管造影,手術等をも考慮すること,今後感染等があり,肝膿瘍へ移行する可能性があり,その際には再度穿刺することを説明した。 同日午後6時30分ころの血液検査の結果では,WBCは3000,CRPは4.20,HGBは6.8,血小板は11万7000,ASTは2 へ移行する可能性があり,その際には再度穿刺することを説明した。 同日午後6時30分ころの血液検査の結果では,WBCは3000,CRPは4.20,HGBは6.8,血小板は11万7000,ASTは225,ALTは310,LDHは833であった。 同日午後8時20分ころ,ソセゴン30mgを入れた生理食塩水100mℓが点滴投与され,午後8時30分ころ,被告B3がA4を回診したところ,A4の腹部は,柔らかく,平らであり,心窩部に圧痛はみられなかった。穿刺部位に少し圧痛がみられたが,ブルンベルグ徴候はなく,筋性防御もみられなかった。A4は,午後10時ころ,腹痛を訴えたため,ソセゴン30m- 45 -gを入れた生理食塩水100mℓが点滴投与された。 同日午後11時40分ころ,A4は,ナースコールをして腹痛を訴えたが,午後11時50分ころ,A4の意識レベルが低下し,JCSでⅢ-300となり,心臓マッサージなどの心肺蘇生措置が開始された。午後11時55分ころには,腹部エコーにより,モリソン窩に滲出液の貯留が認められた。午後11時57分ころ,硫酸アトロピン(カウンターショック(電気的除細動)の前投与薬)1単位及びボスミン(強心薬)1単位が投与された。同月2日午前0時ころ,挿管チューブが気管内に挿入され,その後も,心肺蘇生措置が行われ,MAP(濃厚赤血球)6単位が輸血されるなどした。午前0時15分ころの血液検査の結果では,HGBは3.2,HCT(ヘマトクリット値)は10.5%(以下,単位は省略する。)であり,A4は,午前1時45分ころに死亡が確認された。なお,同月1日午前6時30分ころに採取された血液の培養検査の結果について,同月4日付けで,1本からMR-CNS(メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)が検出されたと報告された。(甲A11,甲C お,同月1日午前6時30分ころに採取された血液の培養検査の結果について,同月4日付けで,1本からMR-CNS(メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)が検出されたと報告された。(甲A11,甲C8,乙A1,乙A5の1ないし4,乙A6の1ないし5,乙A7ないし9,乙A12,乙A13の1及び2,乙A14,原告A1,被告B3)⑸ A4の死亡後のB2病院の医師らの対応等3月2日のB2病院の消化器外科のモーニングカンファレンスにおいて,F医師は,CT上,肝生検前にはmass(塊)がなく,その時点で既に発熱があり,今回(3月1日)の発熱は以前よりある発熱と同じで,肝膿瘍は否定的である,経過から考えてCTのmass(塊)は血腫である,肝穿刺の適応については,再度,J医師又は教授に再度コンサルトすべきであった,穿刺を23Gカテラン針ですべきであったのではないかとの意見を述べ,被告B3らは,A4の死因については,血腫増大による腹腔内出血,肋間動脈損傷,穿刺部からの出血が考えられると報告した。 - 46 -また,F医師は,同日,原告A1及び原告A3に対し,3月1日午後5時ころ,血液膠原病内科より依頼があり,A4の肝内腫瘤に対して穿刺を行ったこと,膿瘍ではなく,凝血塊が軽度吸引できたのみであり,血腫であったと考えられること,午後8時ころに再度回診した際は異変がなかったが,午後11時45分ころに急変し,内科及び外科が対処したが,死亡という残念な結果になったこと,後で報告を受け,CT,MRIを見たが,まず80から90%血腫が考えられ,もし事前にこれらを見ていたら,穿刺は指示せず,経過観察を指示したと思うこと,今回の事態に至った全責任はF医師にあり,お詫び申し上げるとともに,今後,誠意ある対応をしていくこと,まず,第三者機関(警察,,医療安全評価 いたら,穿刺は指示せず,経過観察を指示したと思うこと,今回の事態に至った全責任はF医師にあり,お詫び申し上げるとともに,今後,誠意ある対応をしていくこと,まず,第三者機関(警察,,医療安全評価機構)に連絡を取り,司法解剖も含め対応を求めようと思うことなどを伝えた。さらに,原告A1が,穿刺をする適応,必要があったのかと質問したのに対し,F医師は,もしF医師が画像を見ていたら,穿刺の指示は出さなかったのであり,画像を見ていないのはF医師の責任であり,誠に申し訳ないと思っており,改めてお詫びすると述べた。さらに,原告A1が,リンパ腫と告知を受けた際,全身に回っており,治癒確率は50%と言われたが,診断がつくまでに時間がかかったので,いつからみて50%であったのか,もし助かる可能性が低いのであれば,鎮痛をしてあげて,もっと一緒にいたかった旨伝えたのに対し,M医師は,リンパ腫という診断がついてから50%とデータからは考えている,ただし,あくまで確率の世界の話であって,A4にしてみれば,0ないし100%となるから,一般的にはそういう話し方をせざるを得ない,50%というのは,リンパ腫自体が悪くなって死亡する場合や,今回の合併症等も含めて考えられ,積極的治療に値する数字であると考えていると説明した。 3月3日,X医務院においてA4の行政解剖が行われ,その後,以下の診断等が報告された。 ア肝穿刺に基づく肝実質内血腫- 47 - 肝右葉実質内血腫(8×7×5cm大):組織学的に①周囲が繊細な線維性結合組織で被包される部分,②数日程度の経過を有する壊死肝組織に接する部分,③新鮮な壊死肝組織ないし壊死傾向に乏しい肝組織に接する部分が観察される。 新鮮な肝穿刺痕(肝右葉前面;0.3×0.1cm大):表面に凝血塊付着。組織学的にスリッ る壊死肝組織に接する部分,③新鮮な壊死肝組織ないし壊死傾向に乏しい肝組織に接する部分が観察される。 新鮮な肝穿刺痕(肝右葉前面;0.3×0.1cm大):表面に凝血塊付着。組織学的にスリット状の小孔。内壁に新鮮血栓の付着。比較的新鮮な肝内血腫と連続。*右季肋部外側に皮膚穿刺痕 やや経過のある肝穿刺痕;の上方2.7cmのところに0.2×0. 2cm大,2個。組織学的に浅層では,繊細な線維性結合組織で置換,深層で血腫と連続。創洞付近の門脈枝・中心静脈内腔に器質化血栓の存在。*皮膚表面の穿刺痕は不明。 イア,からの腹腔内出血(1550mℓ,凝血少量含む);諸臓器の貧血ウ血球貪食症候群を示唆する所見組織学:肝,脾,骨髄,リンパ節などにおいて,しばしばマクロファージによる血球貪食像エ SPTCLオ肺水腫カ脳腫脹(1292g):分水嶺の混濁を伴う。 死因については,腹腔内出血が直接死因とされ,肝内血腫穿刺がその原因であるとされた。(甲C8,乙A1,4,原告A1) 2 医学的知見 結節性紅斑ア病態発赤を伴う皮下結節が主に下腿伸側に多発し,全身症状として,発熱,関節痛を伴うことがある。圧痛や熱感を認めることもあるが,潰瘍形成はない。前駆症状として上気道炎が認められることもある。成人女性に多く,- 48 -通常3~6週間で瘢痕を残さず治癒するとされる。結節性紅斑は,このような特有の臨床像を呈し,病理組織学的に皮下脂肪組織の線維性隔壁の炎症を伴う疾患を指す。 原因としては,感染症,サルコイドーシス,ベーチェット病,潰瘍性大腸炎,クローン病,薬剤性など多様である。感染症としては,上気道感染,結核,ハンセン病,ウイルス,真菌などがある。 イ診断方法 しては,感染症,サルコイドーシス,ベーチェット病,潰瘍性大腸炎,クローン病,薬剤性など多様である。感染症としては,上気道感染,結核,ハンセン病,ウイルス,真菌などがある。 イ診断方法確定診断には皮膚生検が必要であり,病変の主体が皮下脂肪組織なので,十分な深さの脂肪組織を採取する。血液検査では,一般にWBC増多,赤沈亢進,CRP高値が認められる。また,基礎疾患検索のための検査も適宜必要である。 ウ治療方法治療方針は,基礎疾患の有無を検討し,特発性であれば安静,対症療法などを中心に治療する。発熱,関節痛などの全身症状を伴う場合は,入院も考慮する。非ステロイド性抗炎症薬の投与が第1選択である。重症例では,副腎皮質ステロイドの短期内服療法を行う。(甲B1) 血球貪食症候群(HPS)ア病態骨髄,リンパ節,脾臓,脳脊髄液などに赤血球,血小板,有核細胞,リンパ球などの血球を貪食した細胞が一定程度以上に検出される病気の一群を血球貪食症候群(HPS)という。HPSでは,リンパ球系細胞(T,B,NK細胞など)が単クローン性に増殖して高サイトカイン血症を来し,高サイトカイン血症がリンパ球,単球,組織球などを異常に活性化する。 その結果,病理組織学的に病巣部分に組織球が増殖し,単核細胞の浸潤と血球の貪食像がみられるに至る。 上記の臓器,組織において血球貪食細胞が増え,一定程度以上になると,- 49 -臨床上,発熱,皮疹,リンパ節腫大,肝脾腫,末梢血液における二系統血球減少又は汎血球減少,マクロファージ活性化のマーカーである高フェリチン血症,高LDH血症などの症候が現れ,重症化すると,DICや多臓器不全を来す。 イ診断方法検査に最も手近な臓器は骨髄であり,HPSでは ァージ活性化のマーカーである高フェリチン血症,高LDH血症などの症候が現れ,重症化すると,DICや多臓器不全を来す。 イ診断方法検査に最も手近な臓器は骨髄であり,HPSでは,骨髄穿刺は1回にとどめず,間隔をおいて少なくとも3回は施行することが望ましいとされる。 また,必要であれば,骨髄生検をすべきであるとされる。最終的には,骨髄やリンパ節において,一定程度以上に血球貪食細胞が増加していることが診断の決め手になるとされる。 悪性リンパ腫は,HPSに関連する基礎疾患として重要な部分を占める。 HPSの約40%を占め,そのほとんどがT細胞由来であるとされる。リンパ腫関連血球貪食症候群(LAHS)の腫瘍臨床症状は,1週間以上続く高熱と肝脾腫であるとされる。まれにリンパ節腫大と,非定型皮疹を認めることもある。様々な程度の進行性の血球減少に加え,高LDH血症や高フェリチン血症,そして凝固異常が認められる。これらの症状は疾患非特異的であり,Epstein-Barrウイルス(EBV)感染症や全身性エリテマトーデス等の基礎疾患も想定し,検査を進める必要がある。 同時に血球減少の検査のため,積極的に骨髄穿刺を行う。HPSの原因疾患は多岐にわたるが,LAHSの場合にはリンパ腫細胞の明らかな骨髄浸潤がLAHS症例の約半数で認められ,骨髄穿刺のみでリンパ腫の診断が確定する症例もある。疑わしい場合は,DIC(播種性血管内凝固症候群)や血小板減少に対して十分な補充療法を行い,時期を逸することなく肝生検を施行し,確定診断を得るべきであるとされている。 ウ治療方法HPSにおける発熱の原因は二つ考えられる。一つはHPSの病勢を反映- 50 -する発熱であり,もう一つはWBC減少や免疫不全宿主に基づく感染しやすい宿主の条件であると いる。 ウ治療方法HPSにおける発熱の原因は二つ考えられる。一つはHPSの病勢を反映- 50 -する発熱であり,もう一つはWBC減少や免疫不全宿主に基づく感染しやすい宿主の条件であるとされる。HPSにおける出血傾向は,主に肝機能障害に基づく凝固因子の産生障害,血小板減少,DICの合併によるとされ,血小板と凝固因子の補充,あるいはDICへの対策が必要になるとされる。なお,一般に,HPSは経過が進行性かつ急速で,重症な例では低タンパク血症,低ナトリウム血症を伴って呼吸不全を来し,最終段階では,DICや多臓器不全に陥って死に至る。感染や出血が死因になることもある。 エ予後リンパ腫の確定診断が得られず,抗癌剤非投与の場合はHPS診断から約11日で死亡する。リンパ腫の表現型別50%生存期間はT/NK-LAHS(リンパ腫関連血球貪食症候群)が69日,B-LAHSが242日であり,有意にT/NK-LAHSが予後不良であるとの報告や,リンパ腫を含む造血系の悪性腫瘍についてみると,HPSを併発した群としなかった群の平均生存期間はそれぞれ7か月と48か月で大差があり,成人のリンパ腫関連のHPSのなかでも,T/NK細胞リンパ腫関連のものは特に予後不良であるとの報告がある。(甲B3,10,乙B1) 皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫(SPTCL)ア病態皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫(SPTCL)は,成熟T細胞腫瘍に属するリンパ腫であり,腫瘍化した細胞障害性T細胞は,皮下組織に浸潤する特徴を有する。異型の強い種々の大きさの腫瘍性リンパ球は核が変形し,脂肪壊死など脂肪織炎様の病理所見を呈している。非ホジキンリンパ腫(NHL)全体の1%,あるいは成熟T/NKリンパ腫の0.9%と非常にまれなサブタイプ 強い種々の大きさの腫瘍性リンパ球は核が変形し,脂肪壊死など脂肪織炎様の病理所見を呈している。非ホジキンリンパ腫(NHL)全体の1%,あるいは成熟T/NKリンパ腫の0.9%と非常にまれなサブタイプであるとされる。性差別発症頻度では,女性がやや多く,20%以上の患者で皮膚に症状を有する膠原病などの自己免疫疾患との関連が深いとされる。すなわち,深部脂肪織炎狼瘡や全身性エリテマ- 51 -ドーデスなどの皮膚症状と重なり合うことがある。また,SPTCLの初期症状が小葉性脂肪織炎と酷似することもあるとされる。 イ症状SPTCLの浸潤部位は皮膚に限定し,多発する皮下結節は主として四肢や体幹に出現する。皮下結節の大きさは,通常は径が0.5mmから数cmにわたり,大きい結節では壊死を伴う。患者の50%が発熱,全身痛や全身倦怠感など全身的な症状を有し,汎血球減少症,肝機能障害などの臨床検査値異常を認め,15~20%に血球貪食症候群(HPS)を認める。肝脾腫は認めるが,末梢リンパ節腫大は通常は認めない。臨床的には,SPTCLは,多彩な病態をとる末梢T細胞リンパ腫(PTCL)の一つであることに留意すべきであるとされる。 ウ治療方法SPTCLは,まれな細胞障害性T細胞由来の悪性リンパ腫で,世界で200余例の報告があるのみであり,これまで少数例の症例報告が主体で,その臨床像,治療法及び予後因子に関して詳細は分かっていないとされている。SPTCLの初期には,局所的な皮膚症状のみで副腎皮質ステロイドの治療で症状の改善や自然消失も認められる。進行すると,全身的な併用化学療法の適応となり,CHOP療法が広く用いられている。しかし,抗腫瘍効果(治療効果)は得られるが短期的で,多くは再発・憎悪し致死的な転帰をたどるとされる。特にHPSを伴うSPTCL 全身的な併用化学療法の適応となり,CHOP療法が広く用いられている。しかし,抗腫瘍効果(治療効果)は得られるが短期的で,多くは再発・憎悪し致死的な転帰をたどるとされる。特にHPSを伴うSPTCLでは,急激な経過をたどり,治療に抵抗性であるとされる。 エ予後2008年のWHO分類では,SPTCLの5年生存率は80%,InternationalProjectでは64%であり,比較的良好とされているが,これは病初期の比較的インドレントな状態を含むためであり,びまん性大細胞リンパ腫の解析により出された予後予測- 52 -因子である国際予後因子(IPI。年齢,病気,パフォーマンス・ステータス(PS),リンパ節以外の病変数が2つ以上,LDH異常値の5項目を確認し,4点以上がハイリスクとされている。)を用いると,因子0,1(低リスク)の5年後生存率は60%であるが,因子4,5(高リスク)のそれは0%であったとされる。リンパ節や他の臓器への拡大浸潤の頻度は少ないが,汎血球減少を伴うHPS及び肝脾腫は高い頻度で合併し,急激で予後不良な臨床経過をたどる。強力な化学療法を行っても,予後は概して不良であるとする欧米の文献もある。また,一般に,皮膚以外の臓器,特に骨髄浸潤を来し,HPSの合併がある時期のSPTCLの治療成績は極めて不良であるとされる。(甲B7,8,乙A14,乙B4,6,9,鑑定人U2及び同U3の鑑定意見) 播種性血管内凝固症候群(DIC)ア病態播種性血管内凝固症候群(DIC)は,基礎疾患の存在下で止血及び炎症反応の制御システムが破綻する結果,出血傾向と血栓症による臓器障害を来す症候群である。基礎疾患は,感染症,悪性腫瘍,産科疾患,外傷,ショック,熱傷,血管病変など様々であり,重篤なものが多い 及び炎症反応の制御システムが破綻する結果,出血傾向と血栓症による臓器障害を来す症候群である。基礎疾患は,感染症,悪性腫瘍,産科疾患,外傷,ショック,熱傷,血管病変など様々であり,重篤なものが多い。DICの引き金は,組織因子で代表される凝固活性化物質の産生亢進であり,その結果,トロンビンが継続的に産生され,血管内に放出されることにより,全身の主として細小血管内に血栓が多発する。その一方で,血小板及び凝固因子が消費されて減少するとともに,二次的に線溶系が活性化される結果,出血傾向を来す。 イ診断方法DICの診断は,まずDICを合併する基礎疾患,次いで臨床症状,すなわち,出血症状と臓器症状の有無を確認し,最終的に凝固学的検査所見- 53 -により確定する(別紙播種性血管内凝固(DIC)の診断基準参照)。一般に診断確定のための検査としては,血小板数の低下,PT(プロトロンビン時間),APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)の延長,フィブリノゲンの減少(ただし,代償期には増加),FDPの増加で十分であるとされる。そのほかに,トロンビン生成亢進,線溶系亢進を評価する目的で,D-Dダイマー,TAT(トロンビン-アンチトロンビンⅢ複合体),PIC(プラスミン-アンチプラスミン複合体)などの補助検査も参考になるとされている。 ウ治療方法DICに対する治療方法については,基礎疾患に対する治療,すなわち原因の除去が最優先されるべきである。補助療法である血小板及び凝固因子の補充療法と抗凝固療法の有効性,適応については,明確な結論は得られていない。すなわちヘパリンでさえも有効性は確定的ではなく,ほかの抗凝固薬はヘパリンと比較して有効性を検討しているものが多いとされる。一般に,出血症状が主であって,血栓症による臓 明確な結論は得られていない。すなわちヘパリンでさえも有効性は確定的ではなく,ほかの抗凝固薬はヘパリンと比較して有効性を検討しているものが多いとされる。一般に,出血症状が主であって,血栓症による臓器障害がないか,あっても軽い場合,血小板輸血,新鮮凍結血漿の輸注による補充療法を積極的に行って止血に努めるべきである。ただし,感染症などで臓器障害が明らかな場合,あるいは補充療法だけでは十分な治療効果が得られない場合には,抗凝固療法を併用するとされる。(甲B1,乙B5) 3 争点(B2病院の担当医師が肝生検を実施したことについての過失の有無)について原告らは,①DIC状態にあるA4に対する肝生検は,危険な肝内血腫及び腹腔内出血をもたらす可能性が高いこと,②本件では既に実施した非侵襲的な骨髄生検(マルク)によってHPSが鑑別できているのに加えて,原因たる病名が確定していない段階で肝生検を実施しても進行度を測ることはできないため,肝生検の必要性はなかったことから,B2病院の担当医師が肝生検を実施- 54 -したことには過失がある旨主張する。 しかし,前記1,⑶及び2⑵で認定した事実並びに証拠(乙A10,11,乙B4,証人E,鑑定の結果)によれば,2月14日当時,A4に原因不明の発熱と肝機能障害が認められ,同月7日に行われた骨髄生検の検体についての病理組織診断の結果では,血球貪食症候群(HPS)を疑う所見が認められるが,少数であり,完全には断定困難であり,同検体の検索範囲内では悪性を示唆する所見は認められないと報告されていたところ,LAHSが疑わしい場合は,DICや血小板減少に対して十分な補充療法を行い,時期を逸することなく肝生検を施行し,確定診断を得るべきであるとされていること(前記2⑵の事実)などからすると,2月14日当時の Sが疑わしい場合は,DICや血小板減少に対して十分な補充療法を行い,時期を逸することなく肝生検を施行し,確定診断を得るべきであるとされていること(前記2⑵の事実)などからすると,2月14日当時のA4の病状等に照らすと,仮に上記病理組織診断結果の報告及びA4の臨床症状等から,肝生検を実施せずにHPSを診断できたと解する余地があるとしても,HPSやリンパ腫などの原因となる疾患を検索・鑑別するために肝生検を実施する必要性があったことが認められる。 また,2月12日当時のA4のDICスコアは7点でありA4がDICの状態にあったとしても,肝生検に際してFFP4単位が投与されていることのほか,2月14日の血液検査の結果では,血小板は11万9000,PTは14. 8,PT%は67,PT比は1.24,PT・INRは1.19,フィブリノゲンは77である。一般に,肝生検などの観血的処置前に行われる予防的輸血では,血小板数5万を目標に輸血を行うことが望ましく,肝生検では3万の基準で問題はないとする報告があり,FFPの投与開始基準としてPT・INR2.0以上とする文献もあること(乙B2の2162頁,2163頁),鑑定人U4の鑑定意見においても,肝生検の禁忌となる血液凝固障害の一般的な目安としては,おおよそPT・INRが1.5以上,血小板が6万未満であるとされ,十分に肝生検の適応はあったとされていること(鑑定調書4頁)などからすると,2月14日当時のA4には,肝生検の適応があったと認められる。 - 55 -なお,証人T作成の鑑定意見書(甲B9)及び同人の証言中には,肝生検はその必要性が乏しく,DICの患者に対する侵襲の大きい肝生検は不適切であるとする部分があるが,上記認定判断に照らし,採用することができない。 これらの事情に加えて,鑑定の結果におい には,肝生検はその必要性が乏しく,DICの患者に対する侵襲の大きい肝生検は不適切であるとする部分があるが,上記認定判断に照らし,採用することができない。 これらの事情に加えて,鑑定の結果においても,B2病院の担当医師が肝生検を実施したことに不適切な点はないとされていることからすると,B2病院の担当医師が2月14日にA4に肝生検を実施したことについて過失があるということはできない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 なお,鑑定人U2の鑑定意見では,肝生検後の管理について,A4は,肝生検という観血的処置に伴う局所出血の危険な状態にあり,肝生検後にも,フィブリノゲンが100未満の低い状態が継続しているにもかかわらず,FFPの投与が継続されなかったことは不適切であるとされており,乙B第2号証(2163頁)のFFP投与開始基準にはこれに沿う部分がある。 しかし,乙B第2号証においても,FFPの投与に関する質の高い大規模無作為試験はまだ行われていないので,上記基準は確立したものではなく,現段階で最も確からしいエビデンスは,いかなる患者を対象にしても常にFFPの予防的投与の有効性を否定し続けていることであるとされており,鑑定人U2の鑑定意見でも,上記のようなFFPの投与は広く行われているが,これについてのエビデンスはないとされている。また,鑑定人U1,同U4及び同U3の鑑定意見では,当時のA4のフィブリノゲンの値から,FFPを投与するか否かについては意見が分かれるところであるとされている。 これらの事情からすると,B2病院の担当医師が肝生検後にFFPの投与を継続しなかったことに過失があるとはいうことができない。 4 争点(被告B3が肝穿刺を実施したことについての過失の有無)について原告らは,①肝穿刺実 病院の担当医師が肝生検後にFFPの投与を継続しなかったことに過失があるとはいうことができない。 4 争点(被告B3が肝穿刺を実施したことについての過失の有無)について原告らは,①肝穿刺実施前のA4の状態は,DICの状態が継続しており,肝穿刺実施前に肝内の腫瘤(腫瘍)は血腫であることが最も疑われていたため,- 56 -肝穿刺の実施は急激な肝内出血を助長する危険が大きかったこと,②A4のWBC・CRPの数値などの事前のデータからしても,上記腫瘤(腫瘍)が膿瘍である可能性は極めて乏しく,これが胆汁瘻である場合にも,排泄する必要は乏しいことなどからすると,被告B3には,上記腫瘤を膿瘍と誤診し,肝内出血が進行していたA4に対し,急激な肝内出血を助長する危険が大きく,必要性のない肝穿刺を実施した過失がある旨主張するので,以下検討する。 前記1⑶ないし⑸で認定した事実及び証拠(甲B9,12,証人T,鑑定の結果)によれば,A4の前記臨床経過,腹部CT検査(単純CT,造影CT)及びMRI検査からすると,3月1日の肝穿刺が実施された際には,上記肝内腫瘤(腫瘍)は,肝膿瘍や胆汁瘻である可能性も否定できないものの,血腫であることが最も疑われるところであったこと(当時の放射線科医師へのコンサルトの結果では,H医師は,上記肝内腫瘤は,造影CTに高吸収域があり,血腫が最も疑われるとの意見であり,I医師は,MRI検査の結果では,胆嚢の吸収域と近く,胆汁瘻の可能性もあるとの意見であって,MRI検査の結果は,血腫が疑われるとの造影CT検査の所見と矛盾するものではないこと)が認められる。なお,I医師作成の3月2日付けのMR検査報告書(乙A1の146頁)には,肝前区域に直径7cmの嚢胞性塊があり,その内容は,MRI上,血性とはいえず,外傷機転であれば胆汁性肝 いこと)が認められる。なお,I医師作成の3月2日付けのMR検査報告書(乙A1の146頁)には,肝前区域に直径7cmの嚢胞性塊があり,その内容は,MRI上,血性とはいえず,外傷機転であれば胆汁性肝嚢胞が疑われ,周囲肝組織の浮腫所見は認められず,膿瘍としては非典型であるとの記載があり,I医師は,MRI検査からは,外傷機転としては肝内胆管損傷による胆汁瘻の可能性が高いと診断するのが妥当であり,次に疑われるものとしては膿瘍の可能性であり,血腫の可能性が高いとは診断できない(乙A12)とするが,これらの証拠はいずれも前記認定と矛盾するものではない。 ところが,被告B3らは,上記肝内腫瘤(mass)は,血腫や肝膿瘍の可能性があるものの,感染を伴う胆汁瘻が最も疑わしいと判断し,A4が感染を伴っており,それによる発熱や疼痛がみられる状態であれば,化学療法等の影- 57 -響によってWBC数が更に減少していくことが予想され,感染症により重篤な事態に陥る危険性が高く,化学療法の継続も難しくなることから,感染を伴う胆汁瘻や肝膿瘍であれば緊急に穿刺して排出する必要があると判断して,A4に対する肝穿刺を決定したのであり,被告B3らが,上記のとおり肝内腫瘤は血腫であることが最も疑われるにもかかわらず,感染を伴う胆汁瘻が最も疑わしいと判断し,A4に対する肝穿刺を実施したことは不適切であったといわざるを得ない。 そして,仮に被告B3らが上記肝内腫瘤は血腫であることが最も疑われると判断した場合には,診療経過等に照らすと,A4はDICあるいはDICの疑いがあり,オルガラン(血液凝固阻止剤)を継続的に投与されている状態であるにもかかわらず,遅発性の出血が生じていることが疑われ,A4に出血傾向がある可能性が高いことになるから,3月1日の時点では肝穿刺を実施すべき ガラン(血液凝固阻止剤)を継続的に投与されている状態であるにもかかわらず,遅発性の出血が生じていることが疑われ,A4に出血傾向がある可能性が高いことになるから,3月1日の時点では肝穿刺を実施すべきではなく,実際にもこれを実施しなかったものと認められる。このことは,前記のとおり,被告B3は,肝穿刺の実施により上記肝内腫瘤が血腫であることを確認した後,原告A1に対し,血腫の疑いがあり,このまま保存的に経過観察すること,血腫が増大傾向ならば,血管造影,手術等をも考慮すること,今後感染等があり,肝膿瘍へ移行する可能性があり,その際には穿刺することを説明したこと,B2病院のF医師も,原告A1及び原告A3に対し,CT,MRIからは,80から90%血腫が考えられ,事前にこれらをみていたら,穿刺は指示せず,経過観察を指示したと思うと述べていることからも,明らかというべきである(なお,A4の2月14日のDICスコアは7点,2月15日のDICスコアは8点であったこと,被告B3らは,3月1日のDICスコアは5点であり,白血病及び類縁疾患,再生不良性貧血,抗腫瘍剤投与後などの骨髄巨核球減少が顕著で,高度の血小板減少をみる場合に当てはめた場合には6点となり,DICの疑いがある状態と判断していたこと(乙A9,被告B3)は前記認定のとおりである。また,鑑定人U1の鑑定意見では,3月1日の時- 58 -点で,A4は,FDPが上昇し,プロトロンビン,凝固の機能が低下していることから,DICの状態にあったとされている。)。 本件における鑑定の結果をみても,鑑定人U2の鑑定意見では,肝内腫瘤(腫瘍)について血腫の可能性が高く,背景にDICがあり,抗凝固剤が投与されている状態で,出血しやすい肝穿刺をするのは,相当の理由がないと許されないとされているところであり,血腫 意見では,肝内腫瘤(腫瘍)について血腫の可能性が高く,背景にDICがあり,抗凝固剤が投与されている状態で,出血しやすい肝穿刺をするのは,相当の理由がないと許されないとされているところであり,血腫が感染している可能性があるとしても,抗生剤の投与によって対応し,肝穿刺を実施すべきではなかったとされている。 また,鑑定人U1の鑑定意見でも,A4の場合には,血腫が鑑別診断の第一に挙げられ,肝穿刺を実施した場合には,そこからの出血と腹腔内出血等の合併症が起きる可能性が高いことからすると,肝穿刺を行う前に,より侵襲の少ない血管造影検査あるいはMR胆道造影などによる質的診断を行うべきであり,そして,感染症の可能性に関しても,本件における肝膿瘍の起炎菌は基本的に腸管から由来する菌であり,スペクトルも決まっているため,必ずしも肝穿刺を実施して菌を同定しなくとも,抗生剤で対応することができ,リンパ腫の影響によるWBCの低下についても,G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)の投与により対応できた可能性が高いから,肝穿刺を実施したことは不適切であり,このことは仮に血腫が感染している可能性がある場合も同様であるとされている。 さらに,鑑定人U4の鑑定事項に対する意見の要旨では,肝穿刺の適応については不適切とはいえないとされているものの,鑑定意見では,A4の発熱が以前から認められていたこと,CRPが2.3程度の軽度の上昇にすぎなかったことから,緊急に3月1日の夕方に肝穿刺を行う理由は乏しく,血管造影を実施したり,抗生剤を投与したりすること等による,保存的治療(内科的治療)も可能である,仮に血腫が感染している可能性がある場合も同様であり,肝穿刺を実施する前に,動脈性出血が否定的であること,発熱の原因が肝内血腫の感染以外に考えられないことを確認すべきであるとされ 療)も可能である,仮に血腫が感染している可能性がある場合も同様であり,肝穿刺を実施する前に,動脈性出血が否定的であること,発熱の原因が肝内血腫の感染以外に考えられないことを確認すべきであるとされているところである。 - 59 -これに対し,鑑定人U3の鑑定意見では,肝穿刺を行わずに保存的治療を行う選択もあり,後からみれば,もう少し穏当にやっていた方がよかったという意見が大勢を占めるのはやむを得ないが,その時点の主治医の判断を尊重したいとして,被告B3が肝穿刺を実施したことは適切であると結論されるものの,3月1日のA4の感染の症状について,発熱に関しては以前からあり,この発熱をもって感染症が進行したとはいえないし,CRPの上昇もわずかであることを考えると,この時点で,非常に重篤な感染症があったと判断するだけの材料はないが,その日に感染の兆候が明らかでないとしても,A4は全身状態が悪い状態であることからすると,血腫に感染があり,数時間の経過で病状が変わらないとは断言できないから,感染の可能性が高く,穿刺の必要性があるといった主治医の判断は,少し後からみると問題なしとしないが,瑕疵があるというほど責められる判断ミスではないとされている。したがって,鑑定人U3の鑑定意見は,その結論はともかく,その前提となっている医学的知見及び医学的評価については,他の鑑定人らの鑑定意見と対立するものではないというべきである。 加えて,3月1日午前6時30分ころに採取された血液の培養検査の結果では,そのうちの1本からMR-CNS(メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)が検出されているところ,鑑定人U2の鑑定意見では,血液をボトルに入れる際に検体外から菌が入ってしまうコンタミネーションということがしばしばあり,特に上記菌は肝膿瘍の起因菌として主要 性ブドウ球菌)が検出されているところ,鑑定人U2の鑑定意見では,血液をボトルに入れる際に検体外から菌が入ってしまうコンタミネーションということがしばしばあり,特に上記菌は肝膿瘍の起因菌として主要なものでなく,コンタミネーションがあり得る菌であるから,そのことを積極的な根拠として肝膿瘍を強く疑うことはしないとされているところであり,他の鑑定人らの意見もこれと同趣旨である(なお,被告らは,各鑑定人の鑑定意見は,実際と異なり,肝穿刺により得られた血腫からの血液培養であることが前提となっている旨主張するが,鑑定人U2の鑑定意見では,MR-CNSは肝膿瘍の起因菌として主要なものではなく,血液をボトルに入れる際に生じたコンタミネーションであ- 60 -ると指摘されているところであり,これは必ずしも肝穿刺の手技を前提とするものではないから,被告らの上記主張は,鑑定人U2の上記意見の相当性を左右するものではない。)。 これらのことからすれば,それまでの臨床経過,腹部CT検査,MRI検査の結果等からすると,A4の肝内病変(肝内腫瘤)は,胆汁瘻や肝膿瘍である可能性も否定できないものの,血腫であることが最も疑われる状態であり,仮にA4に感染の可能性や疑いがあったとしても,抗生剤の投与等により対応可能な状態であり,緊急に肝穿刺を実施しなければならない必要性は必ずしも高くなく,他方で,A4はDICあるいはDICの疑いがあり,オルガラン(血液凝固阻止剤)を継続的に投与されている状態であり,しかも,A4の肝内病変は血腫であり,遅発性の出血が生じていることが疑われることから,肝穿刺を実施した場合,これにより腹腔内出血等の合併症が生じる高度の危険性があり,少なくとも3月1日の時点では,抗生剤の投与等による保存的療法(内科的治療)を行い,肝穿刺を実施すべき れることから,肝穿刺を実施した場合,これにより腹腔内出血等の合併症が生じる高度の危険性があり,少なくとも3月1日の時点では,抗生剤の投与等による保存的療法(内科的治療)を行い,肝穿刺を実施すべきではなかったといえる。したがって,それにもかかわらず,被告B3らが,A4の肝内病変(肝内腫瘤)は感染を伴う胆汁瘻が最も疑わしいとして,A4に対する肝穿刺を実施したことには,当時の医療水準に照らしても,過失があるというべきである。 なお,被告らは,①A4はHPSを合併したSPTCLに罹患し,その治療目的でCHOP療法を行っていたことから,WBCが減少しており,肝内腫瘤(腫瘍)が胆汁瘻又は肝膿瘍であった場合,感染症等の発症から敗血症への移行が予想され,致死的な状態に陥ることに加えて,3月1日午前に採取された血液培養からMR-CNSが検出されており,感染の可能性が極めて高かったこと,②肝穿刺を行った時点でのA4の凝固能は肝生検を行った時点よりも改善しており,更に血小板輸血まで実施して肝穿刺を行っており,リスクが大きいものではなかったことなどからすると,被告B3が肝穿刺を実施したことに過失はない旨主張し,証拠(乙A9,14,乙B3,4,被告B3)にはこれ- 61 -に沿う部分がある。 しかし,これらの証拠はいずれも,A4の臨床経過,腹部CT検査,MRI検査の結果等によれば,胆汁瘻や肝膿瘍である可能性は否定できないものの,最も疑わしいのは血腫であること,A4はDICあるいはDICの疑いがあり,オルガラン(血液凝固阻止剤)を継続的に投与されている状態であることなどの前記認定事実を前提としないものであって,にわかに採用することができないというべきである。加えて,上記で認定判断したとおり,3月1日当時のA4の病態は,仮にA4が感染症に罹患し 状態であることなどの前記認定事実を前提としないものであって,にわかに採用することができないというべきである。加えて,上記で認定判断したとおり,3月1日当時のA4の病態は,仮にA4が感染症に罹患していた可能性があるとしても,必ずしも肝穿刺によって菌を同定しなくとも,抗生剤の投与等により対応できる可能性があったと認められるから,少なくとも,3月1日の時点において,血腫であることが最も疑われるA4の肝内病変(腫瘤)に対して,腹腔内出血等の合併症が生じる高度の危険性がある肝穿刺を実施する必要性があったとは認めることができない。 したがって,被告らの上記主張は採用することができない。 以上によれば,被告B3が肝穿刺を実施したことには過失があるというべきである。 次に,原告らは,被告B3は,細い23Gのカテラン針で肝穿刺を実施すべきところ,太い18Gの針で肝穿刺を実施しており,肝穿刺の実施方法にも過失がある旨主張する。 しかし,証拠(乙A9,14,乙B3,4,被告B3,鑑定の結果)によれば,肝内病変が膿瘍であった場合には,穿刺後に内容液を採取するとともに,ドレナージを実施することが予定されていたことからすると,太い針で1回穿刺するのと細い針で2回穿刺するのとどちらがよいのかについてはエビデンスがあるわけではなく,慣れている方法により行うのがよいとする考えもあるところであり,被告B3が肝穿刺を実施する際に18Gの針を用いたこと自体が不適切であるとはいうことができない。 - 62 -したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 5 争点(B2病院の担当医師による肝穿刺後の術後管理についての過失の有無)について原告らは,①肝穿刺後,A4のHGBが低下し,腹痛を訴え,ほかに嘔吐や大量失禁も ることができない。 5 争点(B2病院の担当医師による肝穿刺後の術後管理についての過失の有無)について原告らは,①肝穿刺後,A4のHGBが低下し,腹痛を訴え,ほかに嘔吐や大量失禁もみられたことから,腹腔内出血が疑われたにもかかわらず,これを見落とし,止血のための緊急処置をする機会を失わせ,②禁忌であるソセゴンの投与により,A4を致命的な危機に至らせていることなどから,被告B3を含むB2病院の担当医師による肝穿刺術後の管理には過失がある旨主張する。 そして,鑑定人U2の鑑定意見では,肝穿刺後にもオルガランが投与されていること,凝固因子であるFFPの補充を検討すべきであったにもかかわらず,これがされていないことから,B2病院の担当医師らによる術後管理は不適切であるとされているが,他方で,3月1日午前6時ころのA4のフィブリノゲンは134であることから,自分はFFPを投与するかもしれないが,人によって見解が違うと思うともされているところである。また,鑑定人U1,同U3の各鑑定意見では,術後管理に明らかな過失あるいは不適切な点はないとされているところであり,鑑定人U1の鑑定意見では,DICによる出血を考えてオルガランを投与したことは必ずしも不適切ではなく,FFPの補充についても明らかなアクティブな出血があると考えていなければ入れないと思うとされ,鑑定人U4の鑑定意見では,オルガランの投与を中止し,FFPを投与したとしても,おそらく結果の発生を防止できなかったと思うとされている。 これらの事情のほか,FFPの投与に関する基準についてはエビデンスがなく,確立したものではないとされていることは前記3のとおりであり,これらのことからすれば,B2病院の担当医師らが,肝穿刺後にオルガランを投与し,FFPの補充を検討しなかった についてはエビデンスがなく,確立したものではないとされていることは前記3のとおりであり,これらのことからすれば,B2病院の担当医師らが,肝穿刺後にオルガランを投与し,FFPの補充を検討しなかったことが,過失に当たるとはいうことができない。 また,前記1⑶,⑷で認定した事実及び証拠(乙A9,14,乙B3,4,被告B3,鑑定の結果)によれば,A4に激しい腹痛がみられたことから,鎮- 63 -痛薬であるソセゴンが投与されたものの,A4に,呼吸抑制は生じておらず,ソセゴンの投与が禁忌であるとはいえないこと,ソセゴンの投与による血圧低下や呼吸抑制の副作用はみられなかったこと,ソセゴンが出血の直接の原因を増悪させる因子とは考えられないとされていることが認められるところであり,これによれば,ソセゴンの投与が不適切であったとはいうことができない。 さらに,原告らは,A4が肝穿刺後に内科病棟に戻されたことにも問題があると主張するが,A4が内科病棟に戻されたのは,WBCが低下しており,感染症の危険性が高く,それまでも内科病棟で無菌層流装置によって無菌状態とされた部屋にいたことから内科病棟に戻すのが妥当と判断されたことによるものであり(乙A9,被告B3),このことをもって,B2病院の担当医師に過失があるとはいえず,ほかにB2病院の担当医師らによる肝穿刺後の管理に過失があると認めるに足りる証拠はない。 なお,証人T作成の鑑定意見書(甲B9)には,B2病院の担当医師らは,肝穿刺後に十分なバイタルチェックをしておらず,しかも,禁忌であるソセゴンを投与していることから,術後管理に重大かつ致命的な誤りがあるとする部分があるが,上記認定判断に照らし,採用することができない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 6 争点( いることから,術後管理に重大かつ致命的な誤りがあるとする部分があるが,上記認定判断に照らし,採用することができない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 6 争点(各過失と結果(A4の死亡)との間の因果関係の有無)について被告B3が肝穿刺を実施した過失とA4の3月2日の死亡との間の因果関係について検討する。 まず,前記1⑷,⑸で認定した事実によれば,A4は,肝穿刺後,腹腔内出血が生じていることが認められるところ,腹腔内出血の原因について,鑑定人U2の鑑定意見では,解剖の結果,穿刺部位以外に出血源がないことから,肝穿刺がA4の腹腔内出血の原因であるとされ,鑑定人U1及び同U4各鑑定意見でも,腹腔内出血の原因は,肝穿刺であるとされているところである。また,鑑定人U3の鑑定意見では,心肺蘇生措置の際に肝血腫が破綻した可能性が高- 64 -いとされているものの,肝穿刺との関連性は否定できないとされている。 前記解剖の結果のほか,上記各鑑定意見からすると,A4の腹腔内出血は,被告B3が実施した肝穿刺が原因となって生じたと認めるのが相当である。 次に,A4の死亡原因について,鑑定人U2の鑑定意見では,3月1日のA4の夜の急変時の臨床所見はショックであるが,昇圧剤への反応がないこと,HGBが3.2と著明に低下していること,解剖所見上,穿刺部に一致した肝表面の出血とそれに連続する肝内の比較的新鮮な血腫があり,その他に出血がなかったことから,A4の死亡原因は,肝穿刺が原因の腹腔内出血によるショック死であるとされているところであり,鑑定人U1の鑑定意見においても,腹腔内出血によって,急速にHCTが低下し,循環不全となって死亡したものと考えられるから,A4の死亡原因は,肝穿刺による腹腔内出血であ であるとされているところであり,鑑定人U1の鑑定意見においても,腹腔内出血によって,急速にHCTが低下し,循環不全となって死亡したものと考えられるから,A4の死亡原因は,肝穿刺による腹腔内出血であったと考えるのが合理的であるとされている。鑑定人U4の鑑定意見では,剖検では腹腔内に1550mℓの出血が認められているものの,この程度の出血量では,基礎疾患のない症例であれば,出血性ショックの状態には陥っても急死するには至らない可能性も十分あるが,急速な出血であれば高度の血圧低下から急性心不全へ進行してもおかしくないと考えられ,本症例では,A4に重篤な基礎疾患があり,それに対する化学療法が施行された状態で,全身状態が不良であったと考えられ,そこに出血性ショックが加わったため短時間に死に至ったと考えられるとされており,臨床経過的に悪性リンパ腫の増悪やDICの悪化による多臓器不全や化学療法の有害事象による死亡は否定的であるし,剖検所見でも他に急変死の原因となる疾患の存在は否定的であるとされているところであり,死亡原因は,肝穿刺が契機となった腹腔内出血による出血性ショックであるとされている。さらに,U3鑑定人の鑑定意見では,本件における死亡の原因は,SPTCLによる腫瘍死であるとされているが,これは,SPTCLという腫瘍があった故に起きた事象であり,最後の一瞬起きた事象だけをとらえてそれが死因であるというのは違和感を感じるからそのように判断したもの- 65 -であって,死に至った引き金が腹腔内出血によるショックであり,出血性ショックが心停止に関連していたことを否定するものではないとされているところである。 これらの事情からすれば,A4は,被告B3が実施した肝穿刺による腹腔内出血が原因となって死亡したと認めるのが相当である。 さら たことを否定するものではないとされているところである。 これらの事情からすれば,A4は,被告B3が実施した肝穿刺による腹腔内出血が原因となって死亡したと認めるのが相当である。 さらに,肝穿刺とA4の死亡との関係について,鑑定人U2の鑑定意見では,一般的に,リンパ腫は化学療法に反応することが多い上,化学療法実施後のA4のLDHの下がり方からすると,化学療法による寛解が期待できる可能性があり,A4が感染により死亡する危険性は取り分け高いわけではなく,A4が現在生存している可能性もあったとされている。鑑定人U1の鑑定意見では,非常に低い確率ではあるが,肝穿刺をしなくとも出血した可能性はあるが,肝穿刺をしていなければ,化学療法がある程度は奏効して,A4は3月2日に死亡せず,数か月生存した可能性が高いとされているところである。鑑定人U4及び同U3の鑑定意見でも,肝穿刺を実施なくとも腹腔内出血に至っていた可能性はあるものの,肝穿刺が実施されていなければ,3月2日の時点でA4が生存していた可能性は高いとされている。 以上のことからすると,被告B3が,肝穿刺を実施していなければ,A4が死亡した3月2日の時点においてなお生存していた高度の蓋然性があると認めるのが相当である。なお,A4の病態等に照らすと,肝穿刺を実施しなくとも,腹腔内出血が生じて死亡した可能性があることは否定できないとしても,本件では肝穿刺によって腹腔内出血が生じたと認められる以上,上記認定判断を左右するものではない。 これに対し,被告らは,①1550mℓという腹腔内の出血量からは,腹腔内出血が死亡の原因となったとは考え難いこと,②HPSを合併したSPTCLによる影響が強く示唆され,CHOP療法により肝組織に浸潤していた腫瘍が縮小することにより出血した可能 内の出血量からは,腹腔内出血が死亡の原因となったとは考え難いこと,②HPSを合併したSPTCLによる影響が強く示唆され,CHOP療法により肝組織に浸潤していた腫瘍が縮小することにより出血した可能性もあり,DICあるいはDIC疑いの状- 66 -態にあったことから,穿刺部以外からの出血の可能性も否定できないこと,③HPSを合併したSPTCLを罹患したA4の肝生検後の遅発性血腫の予後は好ましくないことなどから,肝穿刺とA4の死亡との間に因果関係はない旨主張し,証拠(乙A9,14,乙B3,4,被告B3)にはこれに沿う部分がある。 しかし,上記の認定判断に加え,被告ら提出にかかる乙B第4号証においても,臨床経過から本件患者の死亡原因はSPTCLによる腫瘍死を第一に考えるが,直接的な死因としては,腹腔内出血による出血性ショックと評価されると結論し,解剖において確認された腹腔内出血量はそれ自体では致死的な量とはいえないが,本件患者の場合には,SPTCL(HPS合併,IPI-Highリスク)の基礎疾患があり,PS(パフォーマンス・ステータス)4(身の回りのこともできず,常に介助を要し,終日就床を必要とする状態)と全身状態が極めて不良な状態で,腹腔内出血に至ったために死亡するに至ったものと評価できるとされているところであり,これらに照らすと,上記各証拠はいずれも採用することができず,ほかにA4が肝穿刺による腹腔内出血以外の原因により死亡したと認めるに足りる的確な証拠はない。 したがって,被告らの上記主張は採用することができない。 以上によれば,被告B3が肝穿刺を実施した過失と,A4が3月2日に死亡したこととの間には因果関係があるというべきである。 7 争点(損害の有無及びその額)について 逸失利益について 上によれば,被告B3が肝穿刺を実施した過失と,A4が3月2日に死亡したこととの間には因果関係があるというべきである。 7 争点(損害の有無及びその額)について 逸失利益について前記1ないし⑸,2⑵ないし⑷,6で認定判断した事実によれば,A4にはHPSを伴ったSPTCLという重篤な基礎疾患があり,肝穿刺が実施されず,3月2日の時点においてなお生存していたとしても,B2病院を退院し,就労可能な程度まで回復することができたとは認められない。 したがって,被告B3が肝穿刺を実施した過失により,A4が労働能力を- 67 -喪失したということはできないから,原告らの主張するA4の逸失利益が上記過失による損害であるとは認められない。 そして,本件事案の内容,B2病院の担当医師らによる診療の経過,被告B3の過失の内容と態様,A4にHPSを伴うSPTCLという重篤な基礎疾患があったこと,SPTCLは,その治療法や予後因子等について詳細は解明されておらず,その予後は概して不良であり,特にHPSを伴うSPTCLでは,急激な経過をたどり,治療に抵抗性であるとされていること,A4の場合にも,その日常生活動作はかなり制限されたであろうと予測されることなど,本件訴訟に顕れた一切の事情を考慮すると,A4の死亡慰謝料は1650万円と認めるのが相当である。 原告A1は,A4の夫として,上記慰謝料請求権の3分の2である1100万円を,原告A2は,A4の父として,原告A3は,A4の母として,それぞれ上記慰謝料請求権の6分の1である275万円ずつを相続により取得した。 また,原告A1は,A4の葬儀費用として150万円以上を支出したことが認められるところ(甲C7の1ないし16),相当因果関係のある葬儀費用相当分 ある275万円ずつを相続により取得した。 また,原告A1は,A4の葬儀費用として150万円以上を支出したことが認められるところ(甲C7の1ないし16),相当因果関係のある葬儀費用相当分の損害は,本件訴訟に顕れた一切の事情に照らし,150万円と認めるのが相当である。 さらに,証拠(甲C8ないし10,原告A1)によれば,原告A1は,妻であるA4を突然失ったことにより,心因性不眠症,自律神経失調症,過敏性腸症候群,うつ状態(反応性うつ)となって,約3か月間休職せざるを得ず,その後も通院治療を継続し,残業時間の制限を受け,夜勤勤務を禁止されている状態であることが認められるところであり,このほか,本件訴訟に顕れた一切の事情を考慮すると,原告A1の固有の慰謝料は120万円と認めるのが相当である。 原告らは弁護士である原告訴訟代理人に本件訴訟の提起・追行を依頼し,- 68 -相当額の報酬を支払うことを約したことが認められる(弁論の全趣旨)ところ,弁護士費用相当分の損害については,本件事案の性質・内容,訴訟の経過,認容額等に照らし,原告A1については140万円,原告A2及び原告A3についてはそれぞれ30万円と認めるのが相当である。 8 結論以上のとおりであり,原告らの請求は,主文第1項ないし第3項の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないのでこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部 裁判長裁判官村田 渉 裁判官倉澤守春 裁判官平野 望 裁判官倉澤守春 裁判官平野 望
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