平成31(ワ)227等 商標権侵害差止請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年2月18日 東京地方裁判所
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判決文本文20,410 文字)

令和3年2月18日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成31年(ワ)第227号商標権侵害差止請求事件平成31年(ワ)第5196号同反訴請求事件口頭弁論終結日令和2年12月17日判決 本訴原告・反訴被告 X1(以下「原告」という。) 同訴訟代理人弁護士石 川 慶一郎 本訴被告・反訴原告 Y1(以下「被告」という。) 同訴訟代理人弁護士田辺克彦 貝塚光啓大寺正史山本浩貴主文 1 被告は,別紙被告標章目録記載の標章を,美容液,美容クリーム, 美容液を浸透させたフェイスマスク,美容液を浸透させたアイマスク若しくは別紙被告商品目録記載11から13の各商品又はその包装に付し,被告標章を付した美容液,美容クリーム,美容液を浸透させたフェイスマスク,美容液を浸透させたアイマスク又は別紙被告商品目録記載11から13の各商品を販売し,販売のために展示してはなら ない。 2 被告は,別紙被告標章目録記載の標章を付した美容液,美容クリーム,美容液を浸透させたフェイスマスク及びアイマスク並びに別紙被告商品目録記載11から13の各商品を廃棄せよ。 3 原告のその余の各本訴請求及び被告の反訴請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,本訴・反訴を通じて,これを10分し,その1を原告 の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求等 1 本訴請求⑴ 被告は,別紙被告標章目録記載の標章(以下「被告標章」という。)を, 美容液,美容クリ の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求等 1 本訴請求⑴ 被告は,別紙被告標章目録記載の標章(以下「被告標章」という。)を, 美容液,美容クリーム,フェイスマスク,アイマスク,健康食品若しくはその包装に付し,又は被告標章を付した美容液,美容クリーム,フェイスマスク,アイマスク,健康食品を販売し,販売のために展示してはならない。 ⑵ 被告は,被告標章を付した美容液,美容クリーム,フェイスマスク,アイマスク及び健康食品を廃棄せよ。 ⑶ 仮執行宣言 2 反訴請求原告は,被告に対し,別紙商標権目録記載の商標権(以下「本件商標権」という。)について,別紙登録目録記載の登録(以下「本件登録」という。)の抹消登録手続をせよ。 第2 事案の概要本訴は,原告が,被告に対し,被告による被告標章の使用が原告の有する本件商標権を侵害するなどと主張して,商標権による侵害停止,予防請求権(商標法36条1項)に基づき,被告標章を美容液等(予備的に,別紙被告商品目録記載の各商品(以下,番号に応じ「被告商品1」等といい,併せて「各被告 商品」という。)を含む。)及びその包装に付すこと並びに被告標章を付した 美容液等(同前)を販売すること及び販売等のために展示することの差止めを求めるとともに,侵害行為組成物廃棄等請求権(同条2項)に基づき,被告標章を付した美容液等(同前)の廃棄を求める事案である。 反訴は,被告が,原告に対し,被告から原告に対し本件商標権を譲渡する契約は詐欺により取り消され若しくは錯誤無効であり,又は,債務不履行により 解除されたから,被告が本件商標権を有するなどと主張して,本件商標権又は債務不履行解除による原状回復請求権に基づき,本件登録の抹 欺により取り消され若しくは錯誤無効であり,又は,債務不履行により 解除されたから,被告が本件商標権を有するなどと主張して,本件商標権又は債務不履行解除による原状回復請求権に基づき,本件登録の抹消登録手続を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実。証拠は文末に括弧で付記した。なお,書証は特記しない限り枝番を全て含む。以 下同じ。)⑴ 当事者ア原告(平成29年12月の変更前の商号はX2)は,化粧品の販売等を目的とする株式会社である。 原告代表者であるA(平成29年9月に中華人民共和国(以下「中国」 という。)籍から帰化する前の氏名はB。以下,帰化の前後を通じて「A」という。)は,昭和52年生まれの女性である。 イ被告(平成24年4月の変更前の商号はY2)は,化粧品の製造,販売等を目的とする株式会社である。 被告代表者であるC(以下「C」という。)は,昭和28年生まれの男 性である。 (⑴につき,争いがない事実のほか,甲1,2,6,66)⑵ 事実経過ア被告は,平成21年1月に設立され,平成26年4月以降は,Cが代表取締役,Aが取締役である。 CとAは,平成21年11月,婚姻した。 原告は,平成26年6月に設立され,Aの甥であるというDことE(以下「D」という。)が代表取締役に就任したが,平成27年2月,Dに代わりAが代表取締役に就任した。 (本項につき,争いがない事実のほか,甲1,2,6,66,67,弁論の全趣旨) イ被告は,(日にちは省略),本件商標権に係る商標(以下「本件商標」という。)につき,商標登録出願をし,(日にちは省略),設定の登録がされた。(甲3) 67,弁論の全趣旨) イ被告は,(日にちは省略),本件商標権に係る商標(以下「本件商標」という。)につき,商標登録出願をし,(日にちは省略),設定の登録がされた。(甲3)ウ Dは,平成28年2月,化粧品等の販売及び輸出入等を目的とするZ(以下「Z」という。)を設立し,代表取締役に就任した。(甲7) 原告及びZは,被告から「(標章の記載は省略)」の標章等を付した商品(以下「本件ブランド商品」という。)を仕入れ,中国に輸出するようになった。(争いがない事実のほか,弁論の全趣旨)エ原告と被告は,平成29年11月24日,被告が原告に対し本件商標権を譲渡する旨の契約(以下「本件譲渡契約」という。)を締結した。被告 は,被告が原告に本件商標権を譲渡したことに間違いがない旨記載した同日付け「譲渡証書」と題する書面(以下「本件証書」という。)を作成した。(争いがない事実のほか,甲4)オまた,原告と被告は,平成29年11月24日,次の各内容を含む「覚書」と題する書面(以下「本件覚書」といい,以下の各条項を番号に応 じて「本件覚書条項①」などという。)を作成した。(甲12)①原告は,被告以外の者に本件ブランド商品の製造を発注できない。 (1項)②原告が他社に本件商標権を譲渡した場合であっても,被告は本件ブランド商品を製造する権利を有する。(3項) ③被告は,株式会社大丸松坂屋百貨店(以下「大丸百貨店」という。) における販売を継続することができるが,大丸百貨店と協議の上,2年後に同契約上の地位を原告に移行するよう調整する。(2,5項)④原告,被告及びZの間の債権債務関係は平成29年11月の決算時を基準に新たに開始し,「債務は時間をかけて,両者協力して清算する」 年後に同契約上の地位を原告に移行するよう調整する。(2,5項)④原告,被告及びZの間の債権債務関係は平成29年11月の決算時を基準に新たに開始し,「債務は時間をかけて,両者協力して清算する」。(4項) カ本件商標権について,(日にちは省略),本件証書を添付書面として被告から原告に対する移転登録手続申請がされ,本件登録がされた。(甲9,10,31)キ被告は,平成30年1月,原告に対し,本件ブランド商品の原告に対する販売価格を値上げするとともに支払時期を前払に変更する旨通知した。 (甲13,弁論の全趣旨)原告は,同年3月12日,大丸百貨店に対し,本件商標権の権利者は原告であるところ,原告と被告との取引は平成29年12月納品分をもって終了しており,以降,被告から大丸百貨店において原告の許諾に基づかない本件ブランド商品の製造,販売がされる懸念がある旨などを通知 した。(乙22)Aは,同月,被告の取締役を解任された。(甲2)原告及びZは,東京地方裁判所に,被告を被告として前渡金返還請求訴訟(事件番号省略)を,また,Aは,東京家庭裁判所に,Cを被告として離婚等請求訴訟(事件番号省略)をそれぞれ提起し,その他,関係者 間に複数の訴訟等が係属した。(乙49,50,弁論の全趣旨)原告は,第三者に本件ブランド商品の製造を発注し,同年4月頃からその納品を受けるようになった。(争いがない)⑶ 被告の行為等被告は,被告標章を付した各被告商品を,大丸百貨店等において販売し, また,中国に輸出している。 なお,被告商品1から10は,美容液,美容液を浸透させたフェイスマスク等であって,本件商標の指定商品と同一又は類似の商品である。また,被告商 いて販売し, また,中国に輸出している。 なお,被告商品1から10は,美容液,美容液を浸透させたフェイスマスク等であって,本件商標の指定商品と同一又は類似の商品である。また,被告商品11(スムージー),被告商品12(コラーゲン飲料)及び被告商品13(酵素・生薬エキス)は,飲料ないし食品である。 (本項につき,争いがない事実のほか,甲27~29,弁論の全趣旨) ⑷ 本件訴訟経過等原告は,平成31年1月9日,本件訴えを提起した。 被告は,同年3月1日,反訴を提起し,同月15日,原告に対し,同日送達の反訴状をもって,本件譲渡契約に係る意思表示を取り消し,又は,本件譲渡契約を解除する旨の意思表示をした。 (本項につき,当裁判所に顕著) 2 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は,①被告が本件商標と同一又は類似の被告標章を付して本件商標の指定商品と同一又は類似の商品を販売し又は販売するおそれがあるか。(本訴請求原 因)②被告が原告の詐欺により又は錯誤に基づき本件譲渡契約を締結したか。 (本訴抗弁・反訴請求原因)③原告が本件譲渡契約に係る債務を履行しなかったか。(本訴抗弁・反訴請求原因) ④原告による本件商標権に基づく差止請求等が権利濫用か。(本訴抗弁)⑤原告に債務不履行についての帰責事由が存在しないか。(本訴再抗弁・反訴抗弁(上記③に対し))である。 ⑴ 争点①(被告が本件商標と同一又は類似の被告標章を付して本件商標の指 定商品と同一又は類似の商品を販売し又は販売するおそれがあるか。)につ いて(原告の主張)被告は,本件商標と同一又は類似の被告標章を付して本件商標の指定商品と同一又は類似の各被 定商品と同一又は類似の商品を販売し又は販売するおそれがあるか。)につ いて(原告の主張)被告は,本件商標と同一又は類似の被告標章を付して本件商標の指定商品と同一又は類似の各被告商品を販売しており,販売するおそれがある。 被告商品11から13は,美肌や老化予防等をうたう飲料ないし食品であ り,美容液に類似する。 (被告の主張)被告商品11から13は,飲料ないし食品であり,本件商標の指定商品と同一でも類似でもない。 ⑵ 争点②(被告が原告の詐欺により又は錯誤に基づき本件譲渡契約を締結し たか。)について(被告の主張)被告は,原告の詐欺により,又は,錯誤に基づき,本件譲渡契約を締結した。 原告は,本件譲渡契約締結の時点で,本件商標権のみならず本件ブランド 商品の製造販売に関する権限等も全て取得することを企図しており,本件覚書に定められた債務を履行する意思がないのに,これがあるかのように装い,本件覚書を作成して被告を欺罔した。そのため,被告は,本件覚書の内容が遵守されるものと誤信し,被告に本件証書の作成を強いられ,本件譲渡契約を締結した。 (原告の主張)原告に,被告が主張する欺罔の意思はなかった。 本件譲渡契約締結当時,原告代表者であったAは,被告の取締役であり被告代表者であるCの配偶者でもあったのであり,被告が商品の製造に係る利益を得ることを望んで本件覚書を作成した。 なお,本件商標権は,従前,形式的に被告が保有していたにすぎないとこ ろ,原告が中国の電子商取引サイトであるアリババ(TmallGlobal(天猫国際))に出店するに当たり本件商標権を自ら保有する必要があったことから,原告に譲渡されるに至ったも すぎないとこ ろ,原告が中国の電子商取引サイトであるアリババ(TmallGlobal(天猫国際))に出店するに当たり本件商標権を自ら保有する必要があったことから,原告に譲渡されるに至ったものである。 ⑶ 争点③(原告が本件譲渡契約に係る債務を履行しなかったか。)について(被告の主張) 本件覚書は本件譲渡契約と一体としてその内容を成すものである。 原告は,Aによる被告名義の銀行預金口座からの不正な出送金,多量の出荷申込み,平成29年10月分及び同年11月分の商品代金の不払を経て,被告に対してクーデターを起こし,平成30年4月頃以降,第三者に本件ブランド商品の製造を発注するようになり,本件覚書条項①及び②に違反した。 また,同年3月以降,大丸百貨店に対し,被告との関係を悪化させるような文書を送付するなどし,本件覚書条項③に違反した。 さらに,本件覚書条項④は,従前,原告,被告及びZにおいて,本件ブランド商品代金を極めて低廉に設定し,毎月の取引状況に応じて決済せずに必要に応じて資金を融通し合うなどしていたことから,このような関係を正常 化するため,商品代金を見直し,毎月の取引状況のとおりに支払うことを確認した趣旨であったが,それにもかかわらず,原告は,平成29年10月分及び同年11月分の商品代金を支払わず,本件覚書条項④に違反した。 Aは,被告の取締役であったことを利用して原被告の間で勝手に資金を移動させていたところ,原告から被告に対する前渡金などというものは存在し ないし,代金について翌月末払の約定があるにもかかわらず当月末に決済していたはずがない。 (原告の主張)本件譲渡契約と本件覚書は別の合意である。また,仮にそうでないとしても,本件覚書に定められた債務の履行の有無 約定があるにもかかわらず当月末に決済していたはずがない。 (原告の主張)本件譲渡契約と本件覚書は別の合意である。また,仮にそうでないとしても,本件覚書に定められた債務の履行の有無は,本件商標権の譲渡の法的効 力に何ら影響を及ぼさないから,原告の主張は失当である。 本件覚書条項④を被告主張のように解釈することはできないし,原告と被告の間では,平成29年7月以降,毎月,原告が被告に前渡金を支払い,当月分の商品代金を当月末日に前渡金から充当する方法により支払っていたのであり,同年10月分及び同年11月分の代金も各月末日に前渡金から支払われているから,原告による代金不払の事実は存在しない。なお,本件覚書 条項④は,同年12月以降,当月分の商品代金を当月末日に前渡金から支払うことを合意したものであり,原告は,同月末に,同月分の支払に充てるための前渡金として被告に1882万1804円を支払った。 ⑷ 争点④(原告による本件商標権に基づく差止請求等が権利濫用か。)について (被告の主張)原告が,本件ブランド商品の製造販売に関する権限等を全て取得することを企図して,誠実に協議を行うことなく被告に対し本件譲渡契約の締結を強要した上,一方的に本件覚書を反故にし,本件商標権を形式的に有することを利用して被告に大きな経済的損失を与えていること等,原告による本件商 標権の取得意図や経過,権利行使の態様に照らせば,原告による本件商標権に基づく差止請求等は権利濫用であり,許されない。 (原告の主張)否認ないし争う。 ⑸ 争点⑤(原告に債務不履行についての帰責事由が存在しないか。)につい て(原告の主張)原告は,被告が,本件ブランド商品代金を一方的に値上げした 主張)否認ないし争う。 ⑸ 争点⑤(原告に債務不履行についての帰責事由が存在しないか。)につい て(原告の主張)原告は,被告が,本件ブランド商品代金を一方的に値上げした上で前払とし,この条件によらない注文は一切受け付けず,代金支払済みの商品も引き渡さないという暴挙に出たことから,第三者に本件ブランド商品の製造を発 注することを余儀なくされ,また,大丸百貨店に通知をするに至ったのであ り,原告の本件覚書に定められた債務の不履行は被告の責めに帰すべき事由によるものであって,原告には帰責事由は存在しない。 (被告の主張)商品代金の値上げや支払時期を前払としたのは,本件覚書条項④の内容を具体化したものにすぎないし,商品を引き渡さなかったのは,原告に代金支 払の意思がないことが明らかになったからである。原告は,被告の要求に納得ができないのであれば,被告と協議すべきであったのであり,一方的に本件覚書を反故にすることは許されない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前提事実,証拠(各項末尾に掲記するほか,甲60,61,70,71,乙52,原告代表者(A),被告代表者(C)。ただし,いずれも後記認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 ⑴ CとAは,平成19年頃,Aの経営していた飲食店にCが客として訪れたことから知り合い,両者は,平成21年11月,婚姻した。両者の間には平 成20年及び平成24年に子が生まれた。 被告は,平成21年1月に設立され,設立時はAが代表取締役であったが,平成24年12月,Aに代わりCが代表取締役となり,Aは取締役も辞任した。その後,Aは,平成26年4月には取締役に就任し,平成30年3月に解 21年1月に設立され,設立時はAが代表取締役であったが,平成24年12月,Aに代わりCが代表取締役となり,Aは取締役も辞任した。その後,Aは,平成26年4月には取締役に就任し,平成30年3月に解任されるまで,取締役であり副社長と呼ばれていた。被告への現在の出資 割合は,Cが60%,Aが40%とされている。(甲2,66,67)原告は,平成26年6月に設立され,設立時はDが代表取締役であったが,平成27年2月にDに代わりAが代表取締役となった。 Zは,Dが代表取締役の会社である。 被告は,他社から委託を受けて他社の名前で販売する化粧品を製造する (OEM)ほか,「(商標等の記載は省略)」というブランドを付した本件 ブランド商品,具体的には,美容液,美容クリーム,美容液を浸透させたフェイスマスク,被告商品11から13と同じ商品名のスムージー,コラーゲン飲料及び酵素・生薬エキス等を製造,販売していた。被告は,製品の製造を他社に委ね,製造された製品を埼玉県行田市にある被告の倉庫(以下「被告倉庫」という。)等に保管していた。被告は,本件ブランド商品について, 自社のウェブサイトで紹介し,大丸百貨店において販売するほか,従前は,原告及びZに本件ブランド商品を販売して,原告及びZが本件ブランド商品を中国等で販売していた。現在は,被告は,各被告商品を原告及びZを介さず,販売している。被告では,Cが化粧品の開発等を行っていて,経理は,Aがその多くを担当していた。 原告は,被告がCの交際相手の経営する会社から化粧品容器を購入していることを知ったAが平成26年6月に設立した会社であり,当初は,第三者に委託して化粧品容器を製造してこれを被告に販売していたが,その後,原告から本件ブランド商品を する会社から化粧品容器を購入していることを知ったAが平成26年6月に設立した会社であり,当初は,第三者に委託して化粧品容器を製造してこれを被告に販売していたが,その後,原告から本件ブランド商品を購入して中国に輸出するようになり,化粧品容器の製造は被告がして,原告は,本件ブランド商品を中国に輸出することに特 化するようになった。Zも原告から本件ブランド商品を購入して中国に輸出していた。原告及びZが被告から購入した本件ブランド商品も本件倉庫に保管されており,そこから出荷されていた。 原告及びZは,被告商品1と同じ商品名の美容液を主力商品として,被告からこれを購入して中国に輸出しており,その輸出額が増加したことにより, 被告の売上げも大きく増加した。平成27年5月,Cは,Dに対して,中国のビジネスをしていて妻が嫌っている人からカプセルを買いたいと言われたが,「妻がやっているビジネスだから無理だと断った!」などと送信したことがあった。(甲35,乙2~4,42~44) 原告,Z及び被告の資金繰りや,これら会社の間の資金の移動には,Aが 深くかかわっていた。原告及びZから被告に対して,月末に送金されること も多く,例えば,平成29年の5月以降についてみると,原告から被告に対し,5月26日に3938万円余り,6月26日に3000万円余り,7月28日に2100万円,7月31日に700万円,8月29日に1000万円,8月30日に1917万円余り,9月8日に900万円,9月27日に1000万円,9月28日に996万円余り,9月29日に1000万円, 10月31日に600万円,11月1日に700万円が送金された。また,同じ期間,Zから被告に対し,5月26日に2000万円,6月1日に1700万年,6月29 円余り,9月29日に1000万円, 10月31日に600万円,11月1日に700万円が送金された。また,同じ期間,Zから被告に対し,5月26日に2000万円,6月1日に1700万年,6月29日に4611万円余り,7月31日に3200万円,8月30日に1072万円余り,9月29日に合計4190万円余り,10月31日に247万円が送金された。(甲36,42ないし44,乙14) これらの送金について,Aは,被告に対する資金を融通するため,被告に対して販売代金の前渡金を送金し,その後,販売代金を差し引く方法で代金決済がされていた旨供述する。 被告の資金繰りが行き詰まったことがあったことを認めるに足りる証拠はない。 CとAは,平成23年に一軒家を購入したが,平成29年7月,より広い建物で居住するため,東京都練馬区の321.78㎡の土地をC3分の1,A3分の2の持分割合で2億4000万円で取得した。(甲40)原告,Z及び被告は,同じ場所に事務所を設けていて,同年末に共に事務所を移転する予定であった。もっとも,同年夏頃からCとDの関係の悪化が 顕著になっていったことから,原告及びZは,同年11月中旬頃,被告とは別の事務所に移転することを決めた。(乙26~28) 原告と被告は,平成29年11月24日,被告が原告に対し本件商標権を譲渡する旨の本件譲渡契約を締結した。被告は,被告が原告に本件商標権を譲渡したことに間違いがない旨記載した同日付け本件証書を作成した。また, 原告と被告は,同日,本件覚書を作成した。 同日,Dが,Cに対し,被告において本件ブランド商品に類似する商品を製造して他社に販売してはならない旨確認するメッセージを送信したところ,Cは,Dに対し,「大丈夫,絶対に作らない!」と 。 同日,Dが,Cに対し,被告において本件ブランド商品に類似する商品を製造して他社に販売してはならない旨確認するメッセージを送信したところ,Cは,Dに対し,「大丈夫,絶対に作らない!」とのメッセージを返信した。 (甲4,12,32)平成29年11月27日,Aが,被告の取締役として,被告名義の銀行預 金口座から,台湾の化粧品の容器メーカーに対し2227万円余り,Zに対し1400万円など合計3710万1600円を出金した。これについて,被告の従業員は,Cに対し,A及びDが被告を倒産させようとしていると報告した。(争いがない事実のほか,乙5,6)Cは,同月30日,Aに対し,上記出金について刑事告訴するつもりであ る旨のメッセージを送信した。(甲38)Zは,被告に対し,同年12月1日に2700万円,同月4日に1000万円を送金した。(争いがない)平成29年12月,原告と被告は,本件ブランド商品の取引についてのやり取りをして,また,現に,本件ブランド商品の取引をした。例えば,Aと Cは,少なくとも同月6日から21日まで,商品の発送についての確認等をLINEのアプリケーションを使って行い,原告の社員と被告の社員は納品,発送の依頼等を電子メールで行った。(甲45)。 また,同月10日には,CはDに対し,「・・・Y1(判決注:被告)が危なかった時,君たちの中国ビジネスが上手く行き出し,会社の危機を救い, その後も大きく発展して会社を大きくしたのです!・・・しかし,私が何よりも大切だった家族や家庭が壊れようとしています,いや,もう遅いかもしれない,私は原点に戻ることにしました!そこで,提案があります,ひとつは今受けている(商標の記載は省略)は今後は他社で作る,これはY1が抜くコストを無くし,利益が増える います,いや,もう遅いかもしれない,私は原点に戻ることにしました!そこで,提案があります,ひとつは今受けている(商標の記載は省略)は今後は他社で作る,これはY1が抜くコストを無くし,利益が増えるから,そして大丸は契約が終われば返すこ と。・・・だから君たちは新しいビジネスを展開してください。・・」など という文面を送信した。(甲11)被告は,同月18日,原告に対し,被告及び被告の関連会社と原告及びZの間の本件ブランド商品等の取引に関し,同年10月分までの取引に係る未払代金942万9240円と,同年11月分の取引に係る代金1300万6200円の合計2243万5540円を,同年12月27日までに支払うよ う求める請求をした。原告は,同月28日,被告に対し,同額から,原告が被告に売り戻した大丸百貨店における販売用の商品代金361万4500円を相殺した額に相当する額であるとして,被告に対し,1882万0940円を支払った。(甲36,41,42,65,69,乙12)なお,原告と被告の間の同年12月分の本件ブランド商品の取引に係る代 金は220万0800円であった。(甲58)被告は,平成30年1月5日,原告に対し,本件ブランド商品の原告に対する販売価格を値上げするとともに,支払時期を前払に変更し,商品の出荷は代金支払確認後に行う旨通知した。また,同日,原告に対し,被告の在庫品は別として,本件ブランド商品の製造販売元を被告から変更するよう求め るとともに,以後,被告は他社製品の製造(OEM)受託会社として事業を行っていく予定である旨通知した。原告は,被告に対し,複数回にわたり商品の出荷を求めたが,被告従業員から,理由は分からないがCの指示により出荷できないとして拒否された。(甲13,14,16,46~51) ていく予定である旨通知した。原告は,被告に対し,複数回にわたり商品の出荷を求めたが,被告従業員から,理由は分からないがCの指示により出荷できないとして拒否された。(甲13,14,16,46~51)原告は,弁護士に委任して,被告に対し,平成30年1月19日頃,原告 が被告倉庫に保管している在庫品は代金支払済みのものであり,速やかに出荷を求める旨の書面を送付した。また,同年2月5日頃,被告が一方的に本件ブランド商品の代金を値上げした上,支払時期を変更し,また,代金支払済みの商品を出荷しないことは,原告との間の信頼関係を著しく害する行為であるとして,同月8日までに,従前の取引条件に戻すこと及び代金支払済 みの商品を出荷することを求めるとともに,上記要求に係る事項が履行され ない場合には,改めて催告することなく本件覚書に係る合意を解除する旨通知した。そして,原告は,同月23日頃,本件覚書に係る合意は同月8日をもって解除されたこと,したがって大丸百貨店における販売の終了を通知するよう求める旨を通知した。(甲15,52,乙14,15)被告は,平成30年3月6日,被告のウェブサイトに,本件ブランド商品 について,被告が製造販売する真正品以外の模倣品が出回っているとして注意を促す通知を掲載した。(甲54)原告は,同月12日,大丸百貨店に対し,本件商標権の権利者は原告であるところ,原告と被告との取引は平成29年12月納品分をもって終了しており,以降,被告から大丸百貨店に対し原告の許諾に基づかない本件ブラン ド商品が製造,販売される懸念がある旨などを通知した。 Aは,平成30年3月,被告の取締役を解任された。 ⑿ 原告は,第三者に対して本件ブランド商品の製造を発注し,平成30年4月頃から,その納品を受けるように ,販売される懸念がある旨などを通知した。 Aは,平成30年3月,被告の取締役を解任された。 ⑿ 原告は,第三者に対して本件ブランド商品の製造を発注し,平成30年4月頃から,その納品を受けるようになった。 被告は,現在,各被告商品を製造,販売している。 2 争点②(被告が原告の詐欺により又は錯誤に基づき本件譲渡契約を締結したか。)について自身が商標権者であるとの原告の主張に対し,被告は,本件譲渡契約の無効等を主張して,原告が現在,商標権を有していない旨主張するので,事案に鑑み,まず争点②を検討する。 ⑴ 被告代表者であるCは,本件譲渡契約を締結した経緯について,平成29年11月24日,被告の事務所で仕事をしていた際,原告従業員から電話で突然に原告に本件商標権を譲渡するよう求められ断ったところ,Aから電話で被告従業員全員を集めるように言われ,その後,怒鳴り散らしながら被告の事務所に押しかけて来たAとDから,被告従業員全員の前で,本件譲渡契 約を締結するよう求められ,一旦は断ったが,AとDが異常な雰囲気であっ たことから,混乱を鎮めるためにやむを得ず本件覚書の締結を条件に本件譲渡契約を締結したものであり,本件覚書が遵守されないのであれば本件譲渡契約を締結することはなく,Aによる被告名義の銀行預金口座からの不正な出送金,多量の出荷申込み,商品代金不払等の同日以降の原告の態度を考えると原告は被告から本件ブランド商品に係る事業を全て奪うことを計画して いたのではないかと思うなどと供述等する(被告代表者,乙52)。 ⑵ しかしながら,原告が,被告から,本件ブランド商品の製造販売に関する権限等,本件ブランド商品に係る事業を全て奪うために,本件覚書の各条項を遵守する意思がないにもかかわらず,これを秘し 2)。 ⑵ しかしながら,原告が,被告から,本件ブランド商品の製造販売に関する権限等,本件ブランド商品に係る事業を全て奪うために,本件覚書の各条項を遵守する意思がないにもかかわらず,これを秘して本件覚書を作成し,被告を欺罔して本件譲渡契約を締結させたという事実について,Cの前記供述 等に係る内容は憶測であって,他にこれを直接認める足りる証拠はない。 被告は,Aによる被告名義の銀行預金口座からの出送金,原告による多量の出荷申込み,商品代金不払等の各事実の存在を指摘する。しかしながら,被告が平成30年1月頃に原告に対し本件ブランド商品代金の値上げ等を通知した書面や本件ブランド商品の製造販売元変更を被告から変更するよう求 めた書面には,上記の各事実について特段の記載はなく(甲13,16),被告が原告に対して本件ブランド商品の出荷を拒否した際にも,被告従業員から理由は分からないがCの指示により出荷できないと説明したのみであった(前記1⑼)。かえって,原告は,本件譲渡契約締結後の平成29年12月頃には,被告との間で従前どおり本件ブランド商品の取引を行っていた。 また,Cが,Dに対し,原告において被告との取引を止めて本件ブランド商品の製造を他社に委託することにより被告が得ている利益分の利益の増大を図ってはどうかと提案したりもした(同⑻)。これらは,同月頃,被告がAによる被告名義の銀行預金口座からの出送金や出荷申込みが,被告を倒産させるためのものと考えていたことと相いれない行動であるといえる。 Aは,平成29年11月27日,被告名義の銀行預金口座から,化粧品の 容器メーカーやZ等に対して合計3710万円余りを出金した(前記1)。 Aは,上記出金後の出来事について,事情を知らない新しい被告の従業員が本件譲 7日,被告名義の銀行預金口座から,化粧品の 容器メーカーやZ等に対して合計3710万円余りを出金した(前記1)。 Aは,上記出金後の出来事について,事情を知らない新しい被告の従業員が本件譲渡契約を締結したことなどと関係付けてAやDが被告を倒産させようとしていると勝手に想像して海外出張中のCに報告し,Cがそれを真に受けて立腹したが,その後話合いをしてCは自分が勘違いをしていたことを認め たこと,前同日の時点で被告の口座の残高が少なくなっても月末に被告に対して送金することで資金繰りに問題が生じなかったはずであると供述等する。 この点について,従前から,被告,原告,Zの入出金については,Aが担当していて,実際に,従前から,各月末には,原告やZから被告に対し,相当額の金銭が送金されており,これらによって,被告の資金繰りが行き詰まっ たことはなかった(同)。そして,被告から本件ブランド商品を購入していた原告にとり,被告が継続して本件ブランド商品を製造することは原告及び原告の代表取締役であり被告の取締役であったAに利益となることであり,被告を倒産させようとするとは直ちには考え難いこと(なお,平成30年1月に被告が本件ブランド商品の出荷を拒否するようになり,原告は第三者に その製造を委託することとなったが,同年3月になって,その商品を入手できることとなった。同⑿)などの事情がある。したがって,平成29年11月の出金をもって,Aが被告の倒産を図ったなどと認めるには足りない。 また,原告は,平成29年11月に,被告倉庫から本件ブランド商品を出荷することを指示した。しかし,原告は被告から購入した商品を被告倉庫に 保管していたのであり(前記1),Aは代金が支払済みである本件ブランド商品に対して送付を指示したのみであることを 品を出荷することを指示した。しかし,原告は被告から購入した商品を被告倉庫に 保管していたのであり(前記1),Aは代金が支払済みである本件ブランド商品に対して送付を指示したのみであることを供述する。これらに照らすと,上記の出荷の指示が直ちに被告を害する意図でされたものであると認めるに足りない。 さらに,Cは,本件覚書条項④について,平成29年11月から,被告の 原告に対する事業資金融通に係る前渡金返還債務が存在しないことを前提に, 原被告間で低廉に設定していた本件ブランド商品の価格を相当な額に値上げした上で取引を新たに開始することを定めたものであるなどと供述等する(被告代表者,乙52)。しかし,本件覚書条項④は,基準時より前に何らかの債務があることを前提として,債権債務関係の清算について原被告間の協力をうたうものであって,被告代表者が供述等する趣旨であることが記載 されているものではない。そして,原告は,同年12月に前記1⑻のような送金をしていた。被告は,本件覚書条項④が被告代表者が供述する趣旨であるとした上で原告の商品代金不払等を主張するのであるが,本件覚書条項④が上記のとおりの内容であることや上記送金等から,その後の原告の代金の支払状況等をもって,原告において,被告が主張する意図に基づいて欺罔の 意図を有して本件譲渡契約を締結したと認めることができるものではない。 平成30年1月以降の原告の行動についてみると,原告は,本件ブランド商品を中国等に販売することに特化していたところ,被告が,同月に本件ブランド商品の出荷を拒否し,原告からの数度の求めにも応じることなくそのような態度を取り続けていて,本件ブランド商品を売ることができなくなっ た。そこで,原告は,その後,本件覚書に係る合意を解除する旨の 品の出荷を拒否し,原告からの数度の求めにも応じることなくそのような態度を取り続けていて,本件ブランド商品を売ることができなくなっ た。そこで,原告は,その後,本件覚書に係る合意を解除する旨の意思表示をするなどしたほか,第三者に対し本件ブランド商品の製造を発注して,同年4月頃からその納品を受けることとなった(前記1)。このように,原告が第三者に対し本件ブランド商品の製造を委託したのは,上記の経緯後のことであって,この発注をもって,本件覚書が,被告主張のように本件ブラ ンド商品に係る事業を全て奪うことを意図して作成されたとは認められない。 原告は大丸百貨店に対して被告が納品する商品に対する懸念も伝えたが(同⑾),これも,上記の経緯後のことであり,これをもって,本件譲渡契約が,被告主張のように本件ブランド商品に係る事業を全て奪うことを意図して作成されたとは認められない。 以上によれば,被告の指摘に係る上記の各事実から,原告が被告から本件 ブランド商品に係る事業を奪おうとしていたとは認めるに足りない。したがって,原告に上記の意図があることを前提とする,本件譲渡契約の詐欺の取り消しの主張には理由がなく,また,本件譲渡契約の錯誤無効の主張にも理由がない。 3 争点③(原告が本件譲渡契約に係る債務を履行しなかったか。)について 自身が商標権者であるとの原告の主張に対し,被告は,本件覚書に債務不履行があり,それにより本件譲渡契約も解除されて原告が商標権を有していない旨主張するので,事案に鑑み,次に争点③を検討する。 ⑴ 被告代表者(C)は,本件覚書は,本件譲渡契約を締結するに当たり,本件商標権を譲渡することとの引き換えの内容として定めたものである等と供 述等する(被告代表者,乙52)。 ⑵ る。 ⑴ 被告代表者(C)は,本件覚書は,本件譲渡契約を締結するに当たり,本件商標権を譲渡することとの引き換えの内容として定めたものである等と供 述等する(被告代表者,乙52)。 ⑵ 確かに,本件覚書は本件譲渡契約の締結と同日に作成されている(前記1⑹)。 ここで,Aは,本件譲渡契約を締結したのは,原告が中国の電子商取引サイトであるアリババにおいて本件ブランド商品を販売するに当たり本件商標 権を自ら保有する必要があったからであり,本件覚書は,Cが,原被告間で本件商標権を譲り渡した後も従前の取引を継続することを示して被告従業員を安心させるために,原告に作成を求めたにすぎず,原告も本件覚書条項①から③のとおり被告との間で従前の取引を継続するつもりであった旨供述等する(原告代表者,甲70)。 この点に関し,被告代表者であるCと原告代表者であるAは夫婦であり,その関係は,少なくとも平成29年7月頃までは自宅建築のために相当額の土地を共同で取得するなど円満な関係にあり(前記1),その後本件譲渡契約締結までの間,その関係が悪化する特段の出来事があったことはうかがわれず,本件譲渡契約締結後もCはAとの夫婦関係が良好に継続することを 願っていたこともうかがわれる(同)。そして,被告は,原告は,Aが本 件ブランド商品に係る事業を行うために設立した会社であり,原告及びZが本件ブランド商品を中国に輸出して,その輸出額が増加したことによって,被告の売上げが大きく増加したのであり(同),かつ,Cは,本件譲渡契約締結の前後を通じて,本件ブランド商品に係る事業とAとの強い結び付きを認めていた(同,)。これらからすると,被告が,Aから求められて, Aが代表取締役を務めていて本件ブランド商品に係る事業を行う原告 後を通じて,本件ブランド商品に係る事業とAとの強い結び付きを認めていた(同,)。これらからすると,被告が,Aから求められて, Aが代表取締役を務めていて本件ブランド商品に係る事業を行う原告に対し,原告が本件ブランド商品に係る事業を展開するに当たって不可欠な本件商標権を譲渡することは不自然ではない。 他方,Aから本件商標権の譲渡を求められたCは本件覚書を作成するように求め,本件商標権の譲渡と同日,原告と被告との間で本件覚書が作成され た。本件覚書の内容からすると,被告は,本件商標権を原告に譲渡した後も,本件ブランド商品の製造,販売による利益を維持することを企図して本件覚書が作成されたといえる。もっとも,本件覚書条項②は原告の義務を直接的に定めたものではない。本件覚書条項③は,2年間の被告の権利を定めるとともに,その後の調整を定めるが,その調整の具体的内容は定められていな い。本件覚書条項④は,文言自体は抽象的で,債権債務関係の清算について原被告間の協力をうたうものともいえる。 そして,本件覚書は,本件譲渡証書とは別に作成され,本件覚書には,本件覚書に反した場合に本件商標権譲渡の効力等がどうなるかについての定めはない。このことに,既発生の商標権譲渡の効力が覆る場合は明確であるべ きこと,本件覚書には上記のとおり被告の行うべき内容が一義的に確定しているとはいえない部分もあること,前記のとおり,本件商標権をめぐる事情から被告から原告に本件商標権を譲渡することが不自然とまではいえないことなどからすると,本件覚書において,仮に原告が法的な義務を負う部分があるとしても,その義務の違反によって本件譲渡契約に基づく本件商標権の 被告から原告への譲渡の効力が覆ることはないと解するのが相当である。被 告はその利益 に原告が法的な義務を負う部分があるとしても,その義務の違反によって本件譲渡契約に基づく本件商標権の 被告から原告への譲渡の効力が覆ることはないと解するのが相当である。被 告はその利益を維持することを企図して本件覚書を締結したといえるが,その目的は,本件覚書に原告が法的な義務を負う部分があれば,その部分の義務を前提とする請求をすることにより達成されるとするのが相当である。 以上によれば,本件覚書は本件譲渡契約と同日に作成されたものではあるが,本件覚書条項①から④に反したかどうかは本件譲渡契約の法的効力に影 響を及ぼすものではないから,原告が本件覚書条項①から④に違反したことをもって本件譲渡契約の解除の原因となる旨の被告の主張は失当である。したがって,原告は,本件商標権を有する。 なお,本件覚書条項①や,本件覚書条項②のうち被告が大丸百貨店に継続して販売できるとの条項の内容は相当に明確であるところ,仮にこれらの不 履行が本件譲渡契約の効力に影響する場合があると解したとしても,法律関係を明確に述べずに被告において本件ブランド商品を原告に販売しなくなったといえる本件の状況下においては,被告は,原告が第三者に対し本件ブランド商品の製造を発注したり,大丸百貨店に対し被告による販売等についての懸念を伝えたりしたことを理由として本件譲渡契約の効力が消滅する旨を 主張することは許されないと解される。 4 争点①(被告が本件商標と同一又は類似の被告標章を付して本件商標の指定商品と同一又は類似の商品を販売し又は販売するおそれがあるか。)について⑴ 本件商標は,「(商標の記載は省略)」等のいずれも「(商標の記載は省略)」の称呼を生じ得る欧文字等からなるものである。被告標章は,本件商 標のうちの「(商標の れがあるか。)について⑴ 本件商標は,「(商標の記載は省略)」等のいずれも「(商標の記載は省略)」の称呼を生じ得る欧文字等からなるものである。被告標章は,本件商 標のうちの「(商標の記載は省略)」について「(商標の一部の記載は省略)」と「(商標の一部の記載は省略)」の間に空白を設けたものであり,本件商標と被告標章は外観において類似するといい得る。また,被告標章からは「(商標の記載は省略)」との称呼が生じ得て,本件商標の上記構成に照らしても被告標章が本件商標と異なる観念,称呼を有するとはいえない。 被告標章は,その外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶, 連想等を総合して全体的に観察すれば,本件商標と同一又は類似の商品に使用された場合には商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあり,本件商標に類似するものと認められる。 ⑵ 被告商品1から10は,美容液,美容液を浸透させたマスク等であって,本件商標の指定商品と同一又は類似の商品である(前記第2の1⑶)ところ, 被告商品1から10を含む美容液,美容クリーム並びにフェイスマスク及びアイマスクのうち美容液を浸透させたものは本件商標の指定商品と同一又は類似の商品であり,かつ,被告は被告標章を付してこれらの商品を販売し又は販売するおそれがあると認められる。他方,上記の範囲を超えるフェイスマスク及びアイマスクについて,本件商標の指定商品と類似する商品である とは認めるに足りない。 また,被告商品11から13は,飲料ないし食品であるが,被告商品11及び被告商品12は,美肌や老化予防等の美容成分を含むことをうたうスムージー及びコラーゲン飲料であり,被告商品13は,多種の美容成分を含むことをうたう酵素・生薬エキスであって,いずれも被告のウェブサイトに 告商品12は,美肌や老化予防等の美容成分を含むことをうたうスムージー及びコラーゲン飲料であり,被告商品13は,多種の美容成分を含むことをうたう酵素・生薬エキスであって,いずれも被告のウェブサイトにお いては「化粧品」という項目において美容液等の商品と共に販売されていること(甲17~30,乙42),従前も,被告は自ら又は原告を通じて,本件ブランドに係る商品として,美容液等と共に被告商品11から13と同じ商品名でスムージー,コラーゲン飲料及び酵素・生薬エキスを販売していたこと(前記1⑶),美容液等の化粧品を製造,販売する会社が美容成分等を 含む食品等を製造,販売することも一般にあり得ること等の取引の実態に照らせば,被告商品11から13に本件商標と同一又は類似の標章を使用するときは,原告の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められ,したがって,これらの商品は,本件商標の指定商品と類似する商品であり,かつ,被告は被告標章を付してこれらの商品を販売し又は販売するおそ れがあると認められる。他方,被告商品11から13以外の健康食品一般が, 本件商標の指定商品と類似する商品であるとは認めるに足りない。 ⑶ 以上から,被告は,本件商標と類似の被告標章を,商品又はその包装に付して,各被告商品を含む本件商標の指定商品と同一又は類似の商品である美容液,美容クリーム,美容液を浸透させたフェイスマスク及びアイマスク並びに被告商品11から13を販売し又は販売するおそれがあると認められる。 また,本件において,被告による本件商標権侵害を予防するためには,侵害行為組成物である被告標章を付した美容液,美容クリーム,美容液を浸透させたフェイスマスク及びアイマスク並びに被告商品11から13を廃棄する必要があると認められる。 商標権侵害を予防するためには,侵害行為組成物である被告標章を付した美容液,美容クリーム,美容液を浸透させたフェイスマスク及びアイマスク並びに被告商品11から13を廃棄する必要があると認められる。 5 争点④(原告による本件商標権に基づく差止請求等が権利濫用か。)につい て原告が,本件ブランド商品の製造販売に関する権限等を全て取得することを企図して,誠実に協議を行うことなく被告に対し本件譲渡契約の締結を強要したり,一方的に本件覚書を反故にしたりした等の被告主張に係る事実(前記第2の2⑷(被告の主張))はいずれも認めるに足りない(前記2,3)。した がって,これらの事実等の存在を前提として,原告による本件商標権に基づく差止請求等が権利濫用であるとの被告の主張は理由がなく,また,他に原告の請求が権利濫用になると認めるに足りる事情もない。 第4 結論以上のとおり,原告の本訴請求は,被告に対し,被告標章を美容液,美容ク リーム,美容液を浸透させたフェイスマスク,美容液を浸透させたアイマスク若しくは被告商品11から13又はその包装に付し,被告標章を付したこれらの商品を販売し,販売のために展示してはならないこと,これらの商品を廃棄することを求める限度において理由があるから同限度で認容し,その余の各請求は理由がないからいずれも棄却し,被告の反訴請求は理由がないからいずれ も棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。なお,仮執行宣言は相当でないからこれを付さない。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官佐伯良子 裁判 事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官佐伯良子 裁判官佐藤雅浩 別紙被告標章目録 (省略)以上 別紙商標権目録登録番号(省略)出願日(省略)登録日(省略)商標(省略)(省略)(省略)(省略)指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分第3類せっけん類,歯磨き,美顔液,香料以上 別紙登録目録登録商標登録番号(省略)移転登録順位付記(省略)登録原因(省略)受付年月日(省略)受付番号(省略)以上 別紙被告商品目録 1(省略) 2(省略) 3(省略) 4(省略) 5(省略) 6(省略) 7(省略) 8(省略) 9(省略) 10(省略) 11(省略) 12(省略) 13(省略)以上

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