平成15(ネ)282 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成15年11月12日 広島高等裁判所 広島地方裁判所 平成13(ワ)292
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判決文本文11,648 文字)

判決 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要被控訴人らは,被控訴人らの子A運転の普通乗用車が,控訴人が自己のため運行の用に供していた車両に衝突されてAが死亡したとして,控訴人に対し自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)に基づき,同車両の運転者に対し民法709条に基づき,Aの死亡による損害金及びこれに対する事故発生日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 原審は,運転者については,赤信号で交差点に進入したとは認定できず,速度超過も事故発生と因果関係が認定できないとして請求を棄却したが,運行供用者である控訴人については,自賠法3条但し書きの事由が認められないとして,請求の一部を認容した。運転者に対しては控訴がされなかったので,同人の不法行為の成否は当裁判所の判断の対象ではない。 1 争いのない事実(末尾に証拠の記載のないもの)及び証拠により容易に認められる事実(1) 次の交通事故が発生した(以下「本件事故」という。)。 ア日時平成11年1月31日午前2時45分ころイ場所広島市西区己斐本町二丁目21番13号先国道2号線旭橋西詰交差点(以下「本件交差点」という。)ウ態様国道2号線を宮島方面から岡山方面(西から東)に向かって直進中のB運転の大型貨物自動車(11トン車。以下「B車」という。)と,太田川放水 (以下「本件交差点」という。)ウ態様国道2号線を宮島方面から岡山方面(西から東)に向かって直進中のB運転の大型貨物自動車(11トン車。以下「B車」という。)と,太田川放水路西側堤防上の片側1車線の道路(最高速度時速40キロメートル)をp方面からq方面(北から南)に向かって直進中のA運転の普通乗用自動車(以下「A車」という。)が,本件交差点内において衝突した。 (2) Aは,同日,本件事故により死亡した。 (3) 被控訴人らは,Aの両親であり,その相続人である。(甲3)(4) 控訴人はB車を保有し,自己のため運行の用に供していた。 2 争点(1) 自賠法3条但し書所定の免責事由の有無。 (2) 過失相殺の可否。 (3) 損害額。 3 争点(1)(自賠法3条但し書所定の免責事由の有無)に関する当事者の主張(1) 控訴人の主張本件事故は,Aが出勤を急ぎ赤信号を無視して本件交差点に進入したために発生したことが強く疑われ,控訴人には自賠法3条但し書き所定の免責事由がある。 ア Bは,「A車が本件交差点にブレーキを踏むことなく,ハンドルを切ることもなく,真っ直ぐ入ってきました。」と供述している(尋問調書85,87項)が,この供述は,本件事故現場にA車のスリップ痕,ブレーキ痕が全く存在しなかった事実(甲9,乙1)と符合し,信用できる。ところが,本件交差点は比較的見通しの良い十字路交差点であり(甲5,乙3),B車からのライトの差し込みがあることをも考えると,Aが,右方から進行して来る大型トラックに全く気づかないはずはない。にもかかわらず,A車が本件交差点にブレーキを踏むことなく,ハンドルを切ることもなく,真っ直ぐ入ってきたことは,Aの運転が異常な状況にあったこと,例えば,居眠り運転 ックに全く気づかないはずはない。にもかかわらず,A車が本件交差点にブレーキを踏むことなく,ハンドルを切ることもなく,真っ直ぐ入ってきたことは,Aの運転が異常な状況にあったこと,例えば,居眠り運転,よほど先を急いでいたことを強く疑わせる。 イ Aは,本件事故の前日,勤務会社の先輩たちと食事会をしており(被控訴人Cの尋問調書62ないし65項),いつもより帰宅が遅くなったことが窺われる。 また,本件事故日のAの出勤時間は午前3時30分であった(同調書21,22項)が,実際には出勤時間の30分前には作業服に着替えていなければならなかった(甲9)から,Aは,午前3時には出社しなければならなかった。そして,本件事故発生時刻が午前2時45分ころであり,本件事故現場から出勤先まで車で20分から25分要するため,Aは明らかに遅刻する状況にあった。 加えて,被控訴人Cの供述によれば,Aは小学校のころから何か用事があると1時間前から準備する子であったのであり,このようなAの性格が災いして,出勤時間に間に合うため相当急いで車を走らせていたことが十分窺われる。 (2) 被控訴人らの主張ア Bは,「西広島バイパス出口交差点(以下「バイパス交差点」という。)に差しかかったとき,対面信号は赤色,左折青矢印であったので,停まろうとして減速したところ,同交差点10メートル手前地点で青信号に変わったため,加速して進行し,本件交差点に至った。」と供述する。 しかしながら,バイパス交差点は本件交差点の約200メートル西にあるところ,①B車のタコグラフの解析によれば,本件事故の際に急制動をかける前の30秒間において,速度が落ちたのは時速約90キロメートルから83キロメートルになった程度であり,減速したとはいえないし,到底10メート 車のタコグラフの解析によれば,本件事故の際に急制動をかける前の30秒間において,速度が落ちたのは時速約90キロメートルから83キロメートルになった程度であり,減速したとはいえないし,到底10メートルの距離で停止できるような速度ではない。②B車の速度からすればB車がバイパスを降り始めてから衝突までの時間が30秒を超えることはないといえるところ,この間に減速後加速した形跡はない。③B供述のとおりであれば,バイパス交差点の対面信号はB車が接近するまでは直進車線は赤色であるから,先行車両が停止していたはずであるから,そのような状況の下で上記のような速度で進行接近することはあり得ない。これらの点で,Bの供述は客観的事実と矛盾している。 イ控訴人提出のD株式会社の報告書(乙5)によるタコグラフの解析によっても,B車は,バイパスを降りてからバイパス交差点を通過する際の時速は90キロメートルであったことが認められるが,同交差点は深夜であっても東西南北方向とも通行車両が途絶えることはほとんどないこと,同交差点手前道路はかなり急な下り坂であること,バイパスやその橋脚等があるため交差道路を走る車両は見え難いことからすれば,衝突の危険がないと確信できなければ,同所を上記のような速度で進行することはできないと考えられる。そうすると,B車の同交差点における対面信号は,B車がこれを通過するかなり前から既に青色であったとみるのが自然である。 ウ控訴人提出の信号サイクル解析報告書(乙4)によれば,バイパス交差点の信号が青色となってから27秒以上経過した後にB車が同交差点に進入した場合には,本件交差点に進入する時点の信号は赤色であることが認められる。 エ前記D株式会社の報告書によれば,B車は,バイパス交差点を通過後時速90キロメートルまで加速しつつ 同交差点に進入した場合には,本件交差点に進入する時点の信号は赤色であることが認められる。 エ前記D株式会社の報告書によれば,B車は,バイパス交差点を通過後時速90キロメートルまで加速しつつ進行し,その後急激に時速60キロメートルまで速度を落とし,さらに速度を落とす過程で急ブレーキをかけたとされる。 そうであるとすれば,その走行は,時速90キロメートルで走り続けていたそれまでのB車の走行ぶりと明らかに異なり,この事実からすれば,上記のとおりB車が減速した時,本件交差点の対面信号は赤色であったか,又は,黄色から赤色に変わったことが強く推認される。 4 争点(2)(過失相殺の可否)に関する当事者の主張(1) 控訴人の主張仮に,A車が本件交差点に赤信号で進入したことが認められないとしても,本件交差点が見通しの良い交差点であること,A車からみてB車からのライトの差し込みがあったと推認されること,A車はブレーキをかけた痕跡がないこと等の点を考慮すると,Aには左右の安全を怠った過失がある。そうであれば,Bに赤色信号無視があったとしても,上記の点からAには過失相殺がなされるべきであり,原判決判断のとおりBに赤色信号無視があったと認めるに足りる証拠はないのであるから,一層の減額が認められるべきである。上記のような判断をしながら過失相殺による減額をしなかった原判決は,正義,公平の理念に反するものであり,不当である。 (2) 被控訴人らの主張A車の対面信号が青色であった可能性がある以上,Aに信号無視の過失があったかどうかは明らかでないから,本件で過失相殺をするのは相当でない(大阪高裁平成5年3月24日判決参照,甲22)。 5 争点(3)(損害額)に関する当事者の主張この点に関する双方の主張は,原判決事実摘示中,請求 ないから,本件で過失相殺をするのは相当でない(大阪高裁平成5年3月24日判決参照,甲22)。 5 争点(3)(損害額)に関する当事者の主張この点に関する双方の主張は,原判決事実摘示中,請求原因の(4)(原判決4頁6行目から7頁8行目まで)及び請求原因に対する認否の(4)(原判決8頁4行目から12行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし4頁13行目「終業」を「修業」と改める。)。 第3 当裁判所の判断 1 前記争いのない事実,証拠(甲1,2,4,5,9,10,17,24,25,31,乙1ないし4,原審における被告B及び被控訴人C各本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) B(昭和39年8月20日生まれ,本件事故当時34歳)は,控訴人に勤務し,長距離輸送のトラックの運転手として働いていた者であり,B車を運転してu県v市まで貨物を運んだ後,r県s郡t町の控訴人会社に帰る途中で(積載貨物はなかった。),西広島バイパスを東進し,これを降りて,その出口であるバイパス交差点を通過し,片側3車線の国道2号線(最高速度時速50キロメートル)を,第3車線(中央分離帯寄り)から第2車線に寄せつつ直進進行し,本件交差点に差しかかった。 (2) A(昭和48年12月26日生まれ,本件事故当時25歳)は,有限会社Eに就職し,両親の住むa県を離れ,広島市中区において単身で生活していた者であるところ,当時の同社におけるAの出勤時間は午前3時30分であった。 Aは,同社に出勤するため,A車を運転して,太田川放水路西側堤防上の片側1車線の道路(最高速度時速40キロメートル)をp方面から勤務先のある広島市西区のq地区方面(北から南)に向かって直進進行し,本件交差点に差しかかった。 (3) Bは,本件交差点 側堤防上の片側1車線の道路(最高速度時速40キロメートル)をp方面から勤務先のある広島市西区のq地区方面(北から南)に向かって直進進行し,本件交差点に差しかかった。 (3) Bは,本件交差点に進入しようとした際,A車を左斜め前方に発見し,急ブレーキをかけたが間に合わず,本件交差点のほぼ中央付近で,B車の前部左側がA車の前部右側に衝突した。 (4) 衝突後,B車は,本件交差点東側の新旭橋中央分離帯の高さ0.1メートルの縁石に右前輪を乗り上げ,さらにアーチ型欄干に右前輪を乗り上げて,左側に横転した。このアーチ型欄干には,西端(縁石乗り上げ地点から約2メートル)から東方向に水平距離にして8.8メートル,高さ3.8メートルの位置にB車の右前輪のタイヤ痕が残っていた。 他方,A車は,衝突の衝撃により,前部を左に振り,右運転席のドアが開くとともに,約16.9メートル飛ばされ,約270度回転して本件交差点東方道路第1車線上に西向きで停止した。Aは車両の外に放り出され,横転したB車の下敷きとなって圧死した。 (5) 本件事故後,本件交差点の東西方向には,B車の車輪(B車は前輪1軸2輪,後輪は2軸4輪いずれもダブルタイヤで,全長約12メートル,車体前端から後輪後軸までが約8.5メートル)のブレーキ痕が残存していた。その開始地点は本件交差点の西側停止線から約6メートル西側の地点であり,左右両輪の痕跡が第2車線と第3車線の区分線を跨いで印象され,右側が交差点東側の中央分離帯の縁石に乗り上げるまで継続して印象されていた。ブレーキ痕の長さは,開始地点を後輪後軸タイヤの痕跡として,衝突時の後輪後軸地点までが約21.5メートル,衝突地点から縁石乗り上げ地点までが約7メートルであり,B車の(横転)停止地点は衝突地点から約25.8メートルであった( 点を後輪後軸タイヤの痕跡として,衝突時の後輪後軸地点までが約21.5メートル,衝突地点から縁石乗り上げ地点までが約7メートルであり,B車の(横転)停止地点は衝突地点から約25.8メートルであった(なお警察作成の実況見分調書(甲4,乙1)には,ブレーキ痕の長さが記入されていないものの,図面はかなり精密に記載されていると見られるので,図上計測したものである。甲17,24)。 (6) 本件事故現場付近の道路はアスファルトの舗装がなされており,本件事故当時の路面は乾燥していた。東西方向は市内の幹線道路の一つである国道2号線で,冬の深夜ではあったが,車両の通行量は「普通」であり,稀ではなかった。 (7) バイパス交差点と本件交差点の距離は約200メートル(甲6),本件交差点西側停止線から衝突地点までの距離は約24メートルである。なお,バイパス交差点の東側(の西進車線)停止線から本件交差点西側停止線までの距離は約185メートルである(甲4)が,各西側停止線間の距離を示す資料はない。 (8) 本件事故時における,バイパス交差点と本件交差点の各信号は共に周期100秒で連動しており,そのサイクルの関係は下記のとおりである。即ち,バイパス交差点の東進信号が青色になった時から33秒間は本件交差点の東進信号は青色である。バイパス交差点の東進信号の青色が終ったときには,本件交差点の東進信号は既に赤色で39秒後まで続く。 バイパス交差点本件交差点時間東進方向東進方向南進方向青青赤 33秒青黄赤 3秒青赤赤 2秒青 青赤 33秒青黄赤 3秒青赤赤 2秒青赤青 4秒黄赤青 3秒赤赤青 30秒赤赤黄 3秒赤赤赤 3秒赤青赤 8秒赤(左折は青) 青赤 11秒 2 B車の速度について(1) 証拠(甲4,8)によれば,B車にはタコグラフが取り付けられていたが,これによると,急ブレーキがかけられた時点でのB車の速度は時速約83キロメートルであったこと,それより10秒前のそれは時速約90キロメートル,同20秒前のそれは時速約93キロメートル,同30秒前のそれは時速約100キロメートルであったことが認められる。 (2) 上記認定は広島県警察本部刑事部科学捜査研究所のタコグラフ解析に依拠したものであるところ,これと異なるFの意見(甲13)は,それがタコグラフの写しによる判定であること等を考慮し,採用しない。もっとも,同意見と上記認定にさほど大きな差違はない。 他方,D株式会社は,同じタコグラフの解析の結果,急ブレーキがかけられた時点でのB車の速度は時速約60キロメートルであると判定している(乙5)が,上記の警察の科学捜査研究所の解析と齟齬しているのはともかく,本件事故直前に時速90キロメートルから時速60キロメートルに減速したとして設定した「y」点が,急制動によりほぼ垂直 している(乙5)が,上記の警察の科学捜査研究所の解析と齟齬しているのはともかく,本件事故直前に時速90キロメートルから時速60キロメートルに減速したとして設定した「y」点が,急制動によりほぼ垂直の速度変化を描いた部分の中間の1点とも見られ,同点を把握しえるか疑問がある。 それだけではなく,証拠(甲4,17,24)によれば,8トントラック(空積み)の停止距離(運転者の足がブレーキを踏み始めた地点から停止するまでの距離)は,時速60キロメートルで走行する場合は22.5メートル,時速80キロメートルの場合は40メートル,20トントラック(空積み)では時速60キロメートルで走行する場合は27.0メートル,時速80キロメートルの場合は48メートルと報告されていること,本件において衝突地点までのB車のブレーキ痕(後輪後軸)の長さは約21.3メートルであり,一般にブレーキを踏み始めてからブレーキが効き始めるまでの時間は0.08秒とされ,時速60キロメートルであればその間の走行距離は約1.3メートルであるから,Bがブレーキを踏み始めてから衝突するまでの走行距離は22.6メートルとなり,衝突地点から縁石までの距離が7メートルあるから,上記報告に照らせば,B車(11トン車,空積み)が時速60キロメートルで走行していたならば縁石に乗り上げる前に停止し得たと考えられること,ところがB車の右側前輪は,縁石に乗り上げただけではなく,欄干を駆け上がり,衝突地点から水平距離にして約17.8メートル(欄干西端から8.8メートル),高さ3.8メートルの位置に痕を残して転落横転したのであり,その停止位置は衝突地点から約25.8メートルもあったこと,結局,Bの足がB車のブレーキに触れた地点からB車が実際に停止した地点までの距離は48.4メートルにも及ぶことが認めら 転落横転したのであり,その停止位置は衝突地点から約25.8メートルもあったこと,結局,Bの足がB車のブレーキに触れた地点からB車が実際に停止した地点までの距離は48.4メートルにも及ぶことが認められ,これらの事実にかんがみれば,Bが急ブレーキをかけた時点でのB車の速度が時速60キロメートル程度であったとは到底考えられないので,上記D株式会社の判定は採用できないというべきである。 また,同様の理由から,「急ブレーキをかけた時の速度は時速約70キロメートルである。」とのBの供述(乙2,原審における本人尋問)も信用できない。 3 争点(1)(自賠法3条ただし書所定事由の有無)について(1) B供述の要旨アバイパス交差点の信号についてBは,①平成11年2月21日,株式会社Gの担当者に対し,バイパス交差点の対面信号は,西広島バイパスから下りかけたときは赤であったが,下り坂の半分くらいのところで青に変わったと述べ(甲9),②陳述書(乙2)においては,バイパス交差点に接近したところ,対面信号が赤・左折青矢印であったので,一時停止しようと速度を緩めたが,10メートルくらい手前でその信号が青に変わったので,一時停止することなく再び加速してバイパス交差点を通過したと述べ,③本人尋問においては,西広島バイパスから時速約75キロメートルの速度でバイパス交差点への下り坂に入り,下り坂の半分くらいの地点で対面信号が赤・左折青矢印であることに気づいたので,排気ブレーキをかけて時速約70キロメートルに減速したところ,約3秒後に対面信号が青に変わったので,一時停止することなく再び加速して通過したと供述している。 イ本件交差点の信号についてBは,①平成11年2月10日の警察による実況見分の際には,衝突地点手前69.4 変わったので,一時停止することなく再び加速して通過したと供述している。 イ本件交差点の信号についてBは,①平成11年2月10日の警察による実況見分の際には,衝突地点手前69.4メートルの地点(実況見分調書見取図<ア>の地点)で本件交差点の対面信号が青であることを確認したと述べ,②平成11年2月21日,株式会社Gの担当者に対しては,本件交差点の対面信号は,バイパス交差点を通り過ぎて見たときは青になっており,いつ青に変わったか分からない,最後に本件交差点の青信号を確認したのは,A車を発見する直前であると述べ,③陳述書(乙2)においては,バイパス交差点を通過してすぐに,本件交差点の対面信号が青であることを確認し,本件交差点に差し掛かる45メートルくらい前で,対面信号が青であることを再び確認したと述べ,④本人尋問においては,上記①と同旨の供述をしている。 (2) B供述の信用性についてところで,前記1(8)に認定のとおり,バイパス交差点の東進信号が青色になってから33秒間は本件交差点の東進信号も青色であるから,仮に,上記(1)のB供述のとおりB車がバイパス交差点を通過する直前に同交差点の対面信号が赤・左折青から青色に変わったのであれば,B車の速度が時速約85キロメートル前後であり,両交差点間の距離約200メートルを走るのに8秒程度しか要しないので,B車が本件交差点に進入する時の対面信号は青色であったことになる。 そこで,同供述の信用性について検討するに,まず,バイパス交差点は自動車専用道路ともいえる高架道路からの出口であり,一般に車両は高速で走行してきた直後であること,バイパス交差点と本件交差点間の距離は約200メートルしかないこと,B車の衝突10秒前時点の速度は時速90キロメートルであり,B車は,そ の出口であり,一般に車両は高速で走行してきた直後であること,バイパス交差点と本件交差点間の距離は約200メートルしかないこと,B車の衝突10秒前時点の速度は時速90キロメートルであり,B車は,それ以降僅かに減速して急制動開始時点では時速83キロメートルの速度となったこと,その10秒間の平均速度を85キロメートルとしても秒速23.6メートルであり,衝突10秒前にはバイパス交差点の西側約36メートルにあったことになることを考慮すると,B車は時速約85キロメートルを下らない速度でバイパス交差点手前の下り坂を進行し,ほぼ同速度でバイパス交差点を通過し,衝突直前にはやや減速した時速83キロメートル程度であったことが推認され,その間加速した事実は前記タコグラフの記録からしても認められない。したがって,「下り坂の途中で赤・左折青の信号を認め減速したが,青に変わったので加速した。」とのBの供述は,この間に加速した形跡がないとのタコグラフ記録と矛盾する。次に,Bが供述する(原審本人尋問)とおりその進路前方には先行車両がなかったとしても,下り坂を進行する大型貨物車が交差点に差しかかった際,対面信号が赤色であれば,その運転者は交差点の停止線前で停止することが可能な程度に減速しようとするのが自然であり,時速85キロメートルの速度のままで接近するとはまず考えられない。したがって,この点でも赤信号を見ながら接近したとのB供述は不自然である。さらに,前記(1)イのとおり,Bの供述は,本件交差点の対面信号が青色であることを確認した地点についてかなりの変遷があるし,同供述を裏付ける客観的な証拠もない。 以上説示した点を総合考慮すると,Bの前記供述は,全体として信用性に乏しく,これによってB車が対面信号が青色の時本件交差点に進入したと認めることはできず,他にこ 裏付ける客観的な証拠もない。 以上説示した点を総合考慮すると,Bの前記供述は,全体として信用性に乏しく,これによってB車が対面信号が青色の時本件交差点に進入したと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 (3) 控訴人の主張について控訴人主張(前記「第2 事案の概要」の3)のとおり,本件事故現場にA車のブレーキ痕が全く存在しなかったことからすれば,A車はブレーキを踏むことなく,ハンドルを切ることもなく本件交差点に進入したことが一応は推認される。しかし,A車の本件交差点における対面信号が青色であったとすれば,一般にブレーキを作動させる前の空走距離が存在することをも考慮すると,Aは,対面信号が青色であったため右方からの進入車がないものと信じ本件交差点に進入通過しようとした際,高速で接近するB車に気づいて,急ブレーキをかけ,あるいは,急ハンドル切ろうとしたものの,作動させる間もなく,B車と衝突するに至ったとの可能性は否定できない。したがって,A車のブレーキ痕が全く存在しなかった事実から,Aが居眠り運転や先を急ぐ余りの信号無視等の異常な運転をしていたとまで認めることはできないというべきである。 また,控訴人は,Aの出勤時刻の点を指摘し,「Aの勤務先では,従業員は,出勤時刻午前3時30分の30分前である午前3時には作業服に着替えていなければならなかった。したがって,Aは,本件事故当時明らかに遅刻する状況にあった。」と主張するが,同主張に沿う報告書(甲9)は,「情報によると出勤時間の30分前である午前3時には作業服に着替えていなければならないシステムであった。」とするものに過ぎず,その裏付けを欠くから,これをたやすく採用することはできない。そのうえ,Aの勤務先のあるq地区は本件交差点から距離にして5キロ 服に着替えていなければならないシステムであった。」とするものに過ぎず,その裏付けを欠くから,これをたやすく採用することはできない。そのうえ,Aの勤務先のあるq地区は本件交差点から距離にして5キロメートル前後であり(当裁判所に顕著である。),交通量も少ない冬期の深夜であれば車で5分程度であったと認められ(甲31),この点に関する,甲9の記載や被控訴人Cの供述は採用できず,Aが遅刻をおそれて急いでいたとは認められない。さらに,証拠上(甲31),Aは事故の前夜,職場の同僚らと食事会をしたことが認められが,それが夜遅くまで続いたとの証拠もなく,事故時睡眠不足であったのではないかと疑わせる事情ともいえない。その他,A車が本件交差点に赤色信号を無視して進入したと推認し得る証拠はない。 (4) 以上によれば,争点(1)に関する控訴人の主張はいずれも採用できず,自賠法3条ただし書の事由の証明があったとはいえないから,控訴人は,被控訴人らに対し,自賠法3条の損害賠償責任を負うといえる。 4 争点(2)(過失相殺の可否)について前示のとおりA車が赤信号であったにもかかわらず本件交差点に進入したことを認めるに足りる証拠はないから,A車の対面信号が青色であった場合を前提としてもなおAに過失があったといえる場合に初めて過失相殺ができるというべきところ,信号機の設置されている交差点における直進車相互の衝突事故においては,青色信号で進入した運転者には特段の事情のない限り過失はないとするのが相当である。本件では,本件交差点にかなり接近した地点まで進行したA車からみて右方から進入して来る車両に対する見通しは比較的良いと認められ,A車の進路前方にB車からのライトの差し込みがあったことが推認される(いずれも甲5による。)。しかしながら,証拠(甲4,5)によれば みて右方から進入して来る車両に対する見通しは比較的良いと認められ,A車の進路前方にB車からのライトの差し込みがあったことが推認される(いずれも甲5による。)。しかしながら,証拠(甲4,5)によれば,A車進行道路からみて右方には店舗等の建物数棟が存在しB車進行道路への見通しを一部遮っていること,両道路の間には,やや狭小な道路や空地があり,かなりの隔たりがあること,現場は深夜も相当の交通量のある広い交差点であり街照灯で照明されていて,差込むライトの接近はさほど目立たないことが認められ,Aは本件交差点に進入する直前でなければ,時速80キロメートルを超える高速で接近してくるB車に気づくことはできなかったと推認されるから,上記の控訴人主張に沿う事実を考慮しても,Aに左右安全の確認を怠った過失があるとまではいえないし,他にこれを肯認するに足りる証拠はない。したがって,この点に関する控訴人の主張は採用できない。 5 争点(3)(損害額)についてこの点に関する当裁判所の判断は原判決の判断と同じであるから,原判決の「理由」欄の「第4 損害」の欄の記載を全部引用する。 6 よって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第3部裁判長裁判官下司正明裁判官能勢顯男裁判官齋藤憲次

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