平成17(ワ)2218 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成20年10月31日 名古屋地方裁判所
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判決文本文25,046 文字)

平成17年(ワ)第2218号損害賠償請求事件判決主文 被告は,原告Cに対し,330万円及びこれに対する平成16年6月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用はこれを25分し,うち1を被告の負担とし,その余を原告らの負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求被告は,原告A,原告Bに対し各300万円及び原告Cに対し9687万円並びにこれらに対する平成16年6月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要,(),,,本件はD昭和16年1月29日生が肝腫瘍の治療目的で被告が開設運営する病院に入院し,手術による治療を受けたところ,多臓器不全となり死亡したことにつき,適応のない手術が行われ,術後の感染症対策も不十分であったとして,同人の遺族である原告らが,被告に対し,不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償及びこれらに対するDが死亡した日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 前提事実,,。 以下の事実は当事者間に争いがないか掲記の証拠により容易に認められる(1)当事者ア原告ら原告AはDの妻であり,原告BはDの子であるが,いずれも相続を放棄し ている。 原告Cは,Dの弟であり,Dの相続人である(以上甲C1,C3の1な。 いし6,C4ないし9)イ被告被告は,愛知県a市b町cにおいて,被告病院を開設,運営する学校法人である。 F医師は,当時,E大学消化器内科教授であり,被告病院において,Dの治療を担当した。 (2)医学的知見アRFA(ラジオ波焼灼術。甲B1)経皮的,腹腔鏡下又は開腹下に,電 する学校法人である。 F医師は,当時,E大学消化器内科教授であり,被告病院において,Dの治療を担当した。 (2)医学的知見アRFA(ラジオ波焼灼術。甲B1)経皮的,腹腔鏡下又は開腹下に,電極を病変に挿入し,電極周囲をラジオ波により誘電加熱し,がんを壊死させる治療法をいう。 イPEIT(経皮的エタノール注入療法。甲B9),。 腫瘍内に直接無水エタノールを注入し蛋白凝固壊死させる治療法をいうウ経カテーテル肝動脈塞栓術(甲B9,乙B10)カテーテルを腫瘍の栄養動脈に進め,抗がん剤を併用して塞栓し,腫瘍に対する血流を阻害することによって腫瘍を融解壊死させる手法をいう。 エChild-Pugh分類(乙B5)脳症・腹水の有無及び血液生化学検査(ビリルビン,アルブミン,プロトロンビン時間等)の所見を点数化し,肝硬変をABCの3段階に分類する方法をいう。一般に,Aが最も軽症で,Cが最も重症とされる。 (3)診療経過の概略以下,平成16年の出来事については,年の記載を省略する。 アDは,平成3年に心筋梗塞で冠動脈バイパス術による血行再建療法を受けたほか,非定型抗酸菌症に罹患し,さらにC型慢性肝炎及び肝硬変に罹患していたところ,平成14年3月に肝細胞がんを発症し,被告病院において, 開腹によるRFAを受けた。その後も,再発した肝細胞がんの治療のため,PEITを3回受け,通院治療を続けていた。 イ4月12日,Dは,肝腫瘍の治療の目的で,被告病院に入院した。 ,,,(,「」ウ4月13日DはF医師によりRFAを受けた以下本件RFAという。 。)エ4月20日,Dは,F医師により,PEITを受けた(以下「本件PEIT」という。 。)オ4月23日,Dは,再度PEITを受ける予定であったが,容態が悪化したため,中 FAという。 。)エ4月20日,Dは,F医師により,PEITを受けた(以下「本件PEIT」という。 。)オ4月23日,Dは,再度PEITを受ける予定であったが,容態が悪化したため,中止となった。 カ6月4日,Dは,被告病院において多臓器不全により死亡した。 本件における争点(1)適応のないRFA及びPEITを実施した注意義務違反の有無(2)術後感染症対策の適否(3)説明義務違反の有無(4)因果関係の存否(5)損害 争点に関する当事者の主張(1)争点(1)(適応のないRFA及びPEITを実施した注意義務違反の有無)について(原告らの主張)ア肝細胞癌に対してRFAないしPEITを実施するためには,医療水準として,(ア)血小板5万/㎜以上,かつ,プロトロンビン時間(血液凝固時 間を示す指標)50%以上,(イ)コントロール不能の腹水がないこと,(ウ)腫瘍最大径が3㎝以下,(エ)腫瘍の個数が3個以内,という適応基準を満たす必要がある。さらに,九州大学においては,(オ)総ビリルビン値が3.0mg/dl以下であることが適応基準とされている。このうち,(ア)の血小板数 は侵襲的治療の前提として血液凝固止血機能を図ることに目的がある。(ア)のプロトロンビン時間,(イ)及び(オ)は侵襲的治療に耐え得る肝予備能の指標である。(ウ)及び(エ)は,腫瘍の進展度の指標であり,予後を判断する因子である。 イ本件においては,上記(ア)及び(ウ)の基準は満たされているが,以下のと,,,おり基準を満たしていない項目があったのであるから被告病院の医師はDに対し,RFA及びPEITを実施すべきではなかった。 (ア)コントロール可能な腹水とは,治療により腹水が速やかに消失する場合をいうところ,RFA及びPEITの実施に のであるから被告病院の医師はDに対し,RFA及びPEITを実施すべきではなかった。 (ア)コントロール可能な腹水とは,治療により腹水が速やかに消失する場合をいうところ,RFA及びPEITの実施に際し,Dの腹水は消失してなかったのであるから,コントロール不能な難治性腹水が存在したというべきである。 (イ)腫瘍はS1,S7,S8に各1個,S5に2個の合計5個存在した。 3個超の腫瘍の存在は,治療による予後の延長がほとんど期待できないがゆえに,RFA及びPEITの適応から外されている。 (ウ)総ビリルビン値は3.2mg/dlであった。 ウしたがって,F医師が,Dに対し,本件RFA及び本件PEITを実施したことについては,RFA及びPEITの適応判断を誤った過失があるというべきである。 (被告の主張)RFA及びPEITの適応基準については,各施設で未だ一定していない。 腫瘍径を問わないものや,総ビリルビン値が4mg/dl未満でプロトロンビン時間が40%以上ないし総ビリルビン値が3mg/dlでプロトロンビン時間が50%以上であることなどの基準も存在する。すなわち,原告の主張する適応基準は絶対的なものではない。 被告病院における適応基準は,(ア)腫瘍径は原則として3cm以内,(イ)門脈に腫瘍血栓がない,(ウ)総ビリルビン値が3mg/dlを超えていない,(エ)コン トロール不能の腹水がないこと,である。また,具体的個別的症状に応じて緩やかな基準で対応しているのが実情である。したがって,適応基準をわずかに超えて実施したことに過失はない。 個別の基準に関する主張は以下のとおりである。 ,,ア腹水について少量の腹水があってもRFA及びPEITが行われており利尿剤やアルブミン製剤により腹水が減少ないし消失すれば,コントロール良好ということになる。 る主張は以下のとおりである。 ,,ア腹水について少量の腹水があってもRFA及びPEITが行われており利尿剤やアルブミン製剤により腹水が減少ないし消失すれば,コントロール良好ということになる。Dの腹水は少量であり,低アルブミン血症が原因と,,,考えられたがアルブミン製剤の投与により腹水の減少が認められたからコントロール不能な腹水には当たらない。 イ腫瘍の個数について,被告病院でも,原則として,3個以下であることをRFA及びPEITの適応条件としている。ただし,場合により5個程度であっても,RFA及びPEITは可能であると考えている。なぜなら,一度にすべての腫瘍を治療しなくても,大きな腫瘍だけを治療することにより,生命予後の延長が期待できるからである。多くの施設で,腫瘍の個数が3個を超える場合にも,RFA及びPEITを行っている。 本件においては,RFA及びPEITによる治療の対象となった腫瘍は2個であり,他の2~3個は無治療で経過観察する予定であった。腫瘍個数が多い場合,経カテーテル肝動脈塞栓術を行うこともあるが,Dは造影剤アレルギーがあったため,これを行うことはできなかった。 ウ総ビリルビン値について,施術前の値は3.2mg/dlと,基準をわずかに0.2mg/dl上回っているのみである。2月27日には2.4mg/dlであったことからしても,治療を中止する理由にはならない。 (2)争点(2)(PEIT実施に際する感染症対策の適否)について(原告らの主張)ア一般に,肝硬変患者においては,好中球・肝細網内皮系(異物を貪食することにより生体の防御に関与している細胞の総称)の機能低下や,門脈大循 環短絡(肝硬変などにより門脈圧が上昇することにより,腸管から吸収された栄養や毒素が肝臓を経由しないで直接体循環へ流れること)による より生体の防御に関与している細胞の総称)の機能低下や,門脈大循 環短絡(肝硬変などにより門脈圧が上昇することにより,腸管から吸収された栄養や毒素が肝臓を経由しないで直接体循環へ流れること)による細菌の全身循環への流入などにより菌血症(細菌が血液中から検出される状態)を合併しやすい。特に,重症肝硬変患者は,易感染性宿主と考えられている。 したがって,細菌感染症ないし菌血症が死亡原因と関連する重要な因子で,,あることからすればRFA及びPEIT等の経皮的侵襲行為を実施した後術後合併症として,何らかの感染症の症状を覚知した場合においては,術後管理の一環として,適正・有効な抗生剤投与を行うなどの感染症対策を行うべき注意義務がある。 イ本件において,Dに対し,本件PEITの実施に際して,従前から非定型抗酸菌症に対する治療として使用されていたクラリス及び咳嗽増強時にクラリスの代わりに内服指示されているクラビットが投与されていたが,術後3日目に当たる4月23日に施行された血液検査の結果,CRP値が5mg/dlと炎症反応の上昇が認められ,術後感染が明らかとなった。しかるに,被告病院の医療従事者は,直ちに当該感染症に無効と判断されるクラリス及びク,。 ラビットの投与を中止せずしかるべき適正・有効な抗生剤の投与を怠った抗生剤の投与の必要性如何については,医療従事者が判断し,患者に説得すべきが当然であるのに,被告病院の医師が,素人であるDに「何かあったらクラビットを服用してください」などという曖昧な指示をしたこと自体,本件に関する一連の医療行為のずさんさを強く示唆している。 ウ被告病院の医療従事者が抗生剤の薬剤変更又は新たな抗生剤の投与を怠った結果,感染症を重篤化させ,肝不全・腎不全等を惹起した可能性が否定できない。 (被告の主張)アDに対 を強く示唆している。 ウ被告病院の医療従事者が抗生剤の薬剤変更又は新たな抗生剤の投与を怠った結果,感染症を重篤化させ,肝不全・腎不全等を惹起した可能性が否定できない。 (被告の主張)アDに対しては,平成14年12月ころから診断されていた非定型抗酸菌症に対する治療として,クラリス及びクラビットが処方されていたところ,本 件RFA及び本件PEITの際に,Dが「クラリス及びクラビットを内服していたので,抗生剤投与はいらない」と申し出たことから「何かあったら,クラビットを内服してください」と指示し,抗生剤を投与しなかった。 イ4月23日のCRP値上昇については,同日の腹部超音波検査では肝臓に異常なく,前日に血痰があり,胸部XPで左肺野の陰影が増強していたことから,呼吸器感染症の増悪と考えた。そこで,クラリスとクラビットを継続投与とし,同月26日の採血データを見て抗生剤の変更を考慮する予定であった。 (3)争点(3)(説明義務違反の有無)について(原告らの主張)ア医師は,RFA及びPEITを実施するに際し,患者に対し,RFA及びPEITに付随する危険性,他に選択可能な治療方法の内容と利害得失,予後などについて,説明すべき注意義務がある。 イしかるに,被告病院の医師は,上記注意義務に違反し,Dに対して,(ア)本件RFA及び本件PEITが適応を欠くこと,(イ)肝不全,菌血症などの重大な合併症の危険性があること,(ウ)当該医療行為を選択せず,薬物治療を続けるなどした場合の予後,などについて説明することを怠った。 ウDは,本件RFA及び本件PEITが実施された当時,会社を経営しており,その整理のためにも,病院外での社会生活を少しでも長く続けるべく,延命期間を重視していたのであり,上記注意義務が尽くされていれば,本件RFA及び本件PE EITが実施された当時,会社を経営しており,その整理のためにも,病院外での社会生活を少しでも長く続けるべく,延命期間を重視していたのであり,上記注意義務が尽くされていれば,本件RFA及び本件PEITを承諾しなかった。 (被告の主張)アRFA及びPEITについては,上記(1)及び(2)における被告の主張にあるとおり,適応があったから,適応がなかった旨を説明する義務はない。 イRFAについては,4月13日に,F医師が,D及び原告Aに対し,同日午前中に行った造影超音波検査の結果,S5に19mmの結節が認められ,こ れを治療するには,RFAが最も治療効果が高いこと,経カテーテル肝動脈塞栓術ができないことを説明した。合併症については,出血,胆管炎,膿瘍などがまれに見られること,肝不全,菌血症などの重大な合併症の危険性があること,を説明した。Dは以前にもRFAを受けているが,その際にも,経カテーテル肝動脈塞栓術など他の治療方法がないこと,危険がかなりあることを説明していた。 ウPEITについては,本件PEIT以前にも2回実施しているところ,本件PEITに際しては,一般的な合併症について説明した。 (4)争点(4)(因果関係の存否)について(原告らの主張)本件RFA及び本件PEITにより何らかの感染症が惹起され,それが契機となり,肝不全・腎不全・呼吸不全・心不全などの多臓器不全に至り,Dは死亡したと考えられる。 とすれば,上記争点(1)・(3)の過失がなく,本件RFA及び本件PEITが実施されていなければ,Dが平成16年6月4日の時点でなお生存していた高度の蓋然性があることは明らかである。仮に,本件RFA及び本件PEITが実施されたとしても,上記争点(2)の過失がなければ,同様にDが平成16年6月4日の時点でなお生存していた高度の蓋然性 ていた高度の蓋然性があることは明らかである。仮に,本件RFA及び本件PEITが実施されたとしても,上記争点(2)の過失がなければ,同様にDが平成16年6月4日の時点でなお生存していた高度の蓋然性があることは明らかである。 したがって,上記各過失と原告の損害との間には因果関係が認められる。 (被告の主張)アDは,本件RFA施行14日後,本件PEIT施行6日後に当たる4月26日にどこかの感染が引き金となった脱水を主因として急性腎不全が発症したが,これは直ちに血液透析を導入することで克服できた。4月25日に発熱がなく,脈拍が正常であったことやボルタレン坐薬が原因となった可能性も考えられることからすると,術後感染症が急性腎不全の原因と考えるには不自然な点が多い。 イDは,持病の非定型抗酸菌症や冠動脈疾患が元で呼吸不全・心不全に陥ったことが原因で肝不全となり,死亡したものである。本件RFA及び本件PEIT後に肝不全は発生しておらず,これらの術による肝機能への影響や本件PEIT後の術後感染症が肝不全を起こしたとは考えられない。 ウ原告の主張する注意義務を尽くした場合に,Dが平成16年6月4日の時点で生存していた高度の蓋然性があるとは断定できない。 (5)争点(5)(損害)について(原告らの主張)ア逸失利益7067万円Dは,株式会社Gからの役員報酬として年1140万円及び株式会社Hからの給与所得として年600万円を得ていたほか,雑収入があり,その合計は1744万8000円であった。これに平均余命19.54年のうち7年間に相当するライプニッツ係数(5.7863)を乗じ,生活費としてその3割を控除すると,逸失利益は上記金額になる。 イ死亡慰謝料2000万円Dは,被告の注意義務違反により,腹痛,呼吸苦などの症状に苦しむとともに,自 ツ係数(5.7863)を乗じ,生活費としてその3割を控除すると,逸失利益は上記金額になる。 イ死亡慰謝料2000万円Dは,被告の注意義務違反により,腹痛,呼吸苦などの症状に苦しむとともに,自らが経営していた事業活動について十分な引継ぎができない状態で不慮の死を迎えたのであり,Dの無念など諸事情を勘案すれば,同人の精神的苦痛に相当する慰謝料は2000万円は下らない。 ウ遺族固有の慰謝料各300万円被告の注意義務違反により,思いがけずDの死亡という結果を受け入れざるを得なくなった原告A及び原告Bの無念・喪失感,精神的苦痛に対する慰謝料はそれぞれ300万円を下ることはない。 エ葬儀費用120万円原告Cの損害として計上する。 オ弁護士費用500万円 原告らは,本件医療事故を巡る示談交渉を原告ら代理人に委任するも,F医師が交渉に応じなかったため,本件訴訟提起を余儀なくされた。本件事案の調査及び立証の困難さなどを考慮すれば,被告の注意義務違反と相当因果関係のある弁護士費用としては500万円が相当である。これは,原告Cの損害として計上する。 カ合計以上を合計すると,原告A及び原告Bの損害額はそれぞれ300万円,原告Cの損害額は,9687万円となる。 (被告の主張)争う。 第3当裁判所の判断 争点(1)(適応のないRFA及びPEITを実施した注意義務違反の有無)について(1)原告らは,Dの状態が,RFA及びPEITの適応基準のうち,①腫瘍の個数が3個以内,②コントロール不能の腹水がないこと,③総ビリルビン値が3.0mg/dl以下であること,の3つを満たさないにもかかわらず,Dに対し,本件RFA及び本件PEITを実施したことは,RFA及びPEITの適応判断を誤った過失があるというべきである旨主張する。 (2)前記前 l以下であること,の3つを満たさないにもかかわらず,Dに対し,本件RFA及び本件PEITを実施したことは,RFA及びPEITの適応判断を誤った過失があるというべきである旨主張する。 (2)前記前提事実及び証拠(甲B9,乙A1,A3,A6,A8,B10,証人Fの証言)によれば,F医師らが,本件RFAないし本件PEITの適応判断を行った経緯について,以下の事実が認められる。 ア1月28日実施の上腹部MRI検査により,被告病院の医師らは,Dの肝臓のS5区域にある腫瘍が,前回(平成15年9月24日)行われた検査より増大していると診断した(乙A1の44・53頁)。 イ2月27日,被告病院のI技師らは,Dに対し腹部超音波検査を行った結果,S5区域の腫瘍について,超音波検査上は肝細胞がんを疑うが,明 瞭に描出することが困難である旨診断した(乙A1の86頁)。 ウ3月26日,被告病院のI技師らは,Dに対し再度腹部超音波検査を行い,S5区域の腫瘍がPEIT可能と思われる旨診断した。 同日,被告病院消化器外科においてDの主治医であったJ医師がDを診察し,超音波検査の結果,PEIT可能と診断された旨を伝え,アルダクトン(利尿降圧剤)等28日分を処方した。また同日,J医師は,F医師に対し,超音波検査の結果,Dの肝臓のS5区域にある肝細胞がんが同定され,PEIT可能との連絡を受けたこと,Dは4月12日又は4月19日の週での加療を希望していることを伝え,S5区域の腫瘍に対するPEIT実施を依頼した(以上乙A1の49・88・156頁)。 エ4月12日,Dは肝臓の腫瘍に対するPEIT又はRFA実施目的で被告病院に入院した。同日実施の血液検査の結果,総ビリルビン値は3.2mg/dlであった。同日以降,アルダクトンが処方された(乙A1の17。 0頁,乙A 臓の腫瘍に対するPEIT又はRFA実施目的で被告病院に入院した。同日実施の血液検査の結果,総ビリルビン値は3.2mg/dlであった。同日以降,アルダクトンが処方された(乙A1の17。 0頁,乙A6の10・152・278ないし297頁)オ4月13日,Dに対し,造影超音波検査が実施され,S5区域に約19mmの結節があることが確認された。なお,当該超音波検査の報告書には,腹水の存在は指摘されていない。 F医師は,S5区域の結節の大きさが19mmであり,PEITによって治療する場合には4回くらい実施しなければならないこと,一方,RFAであれば1回で焼灼できると考えられたこと,Dの腫瘍は超音波検査により安定して描出しにくいものであったこと,Dが仕事上の都合等により早期退院を希望していたことなどから,同日確認されたS5区域の結節に対しては,同日中にRFAを実施することが適当であると判断した。 ,,,なお肝細胞がんに対する治療方法としてはRFAやPEITの他に経カテーテル肝動脈塞栓術を始めとする経カテーテル治療もあるが,Dはヨード過敏であることから血管造影を行えないため,経カテーテル治療を 実施することができなかった。また,Dは,心筋梗塞による冠動脈バイパス術による血行再建療法を実施し,肺疾患(非定型抗酸菌症。昭和37年・38年に肺切除術を実施。本件当時再燃していた)の既往があったこ。 ,,。 となどからF医師らは生体肝移植についても実施困難と判断していた(以上甲B9,乙A3の2頁,A6の3・89頁,A8,B10,証人F4・8ないし9・14ないし15・20ないし21頁),,,。 ,カ同日F医師は当該S5区域の結節に対しRFAを実施したなおこの時点で,Dの肝臓には,4個又は5個の腫瘍が存在した(甲A6の。 12・ 4ないし15・20ないし21頁),,,。 ,カ同日F医師は当該S5区域の結節に対しRFAを実施したなおこの時点で,Dの肝臓には,4個又は5個の腫瘍が存在した(甲A6の。 12・89頁,証人F10・14・38ないし39頁),. ,(。 キ4月14日 8℃の発熱があったがCRPC反応性タンパク炎症マーカーである)値や白血球数等に目立った異常はなかった(乙。 。 A6の144・152・283頁)ク4月15日,体温は36℃台になり,腹水の減少がみられた。同日から4月17日まで,アルブミン・カッター(低アルブミン血症に対する効能がある)が投与された(乙A6の13・287ないし291頁)。 。 ケ4月17日,F医師は,Dに対し超音波検査を実施し,腹水がかなり減少していること,本件RFAの対象としたS5区域の病変はかなり低エコー化しており,RFAの効果があったと思われること,S8区域にある12mmの病変がよく描出できることのなどを確認し,来週PEIT又はRFAを実施するのが適当であると判断した(乙A6の13・92頁)。 コ4月19日,腹部MRI検査の結果,本件RFAの効果は不十分であったと診断された。なお,同検査において,腹水は認められなかった。同日実施の血液検査の結果,総ビリルビン値は3.2mg/dlであった。 同日,Dは,午後1時から午後5時までの間外出した(以上乙A6の。 13・88・152・296頁)サ4月20日,F医師は,S8区域の病変に対し,PEITを実施した。 (乙A6の18頁)(3)次に,RFA及びPEITの適応基準について検討する。 ア腫瘍の個数についてRFA及びPEITの適応基準として,一般には,腫瘍径3cm以下の病変が3個以内であること,との基準が挙げられることが多い( に,RFA及びPEITの適応基準について検討する。 ア腫瘍の個数についてRFA及びPEITの適応基準として,一般には,腫瘍径3cm以下の病変が3個以内であること,との基準が挙げられることが多い(甲B1,B2,B4,B7,B10,B11,乙B1,B2,B4,B6,B9,B10,鑑定の結果。 )上記(2)で認定したとおり,本件RFA及び本件PEIT実施時においてDの肝臓に存在する腫瘍は4ないし5個であったと認められるのでD,(()の肝臓は肝硬変により変形・萎縮剖検時において通常の4割以下の重量しており,ある腫瘍が肝臓のどの区域に存在するかの表現が,検者によって異なり得るため,厳密に個数を特定するのが困難である。乙A3の45頁,A6の3・88頁,証人F6・37ないし38頁,上記基準から。)は外れることになる。 しかし,証拠(甲B1,B9,B11,乙B2,B4,B6,B8,B10,鑑定の結果)によれば,上記基準は一応の目安であって絶対的なものではなく,他に効果的な治療法がなくRFAを行うことにより生存期間が延長すると判断される場合や,肝機能が良好で患者のコンプライアンスがよい場合には,上記基準以上の大きさや個数の場合にも行われるとされること,実際に,上記基準を超える大きさや個数の病変が存在する肝臓に対しRFAを実施した例が相当数報告されており,腫瘍径3cm以下の病変が3個以内であること,の基準を満たす症例は59%であるとか,67%であるとの報告があること,PEITについては,腫瘍経や個数にとらわれずに積極的に行っているとの報告があること(この報告によると,腫瘍径11.2cmの症例や,腫瘍数13個の症例についても,PEITを実施したとされる,腫瘍の個数が3個以内との基準が設けられた理由は,。) 医療資源の適正使用とい こと(この報告によると,腫瘍径11.2cmの症例や,腫瘍数13個の症例についても,PEITを実施したとされる,腫瘍の個数が3個以内との基準が設けられた理由は,。) 医療資源の適正使用という考え方に基づくもの,すなわち,3個を超える腫瘍が存在する場合には,無数にまだ見えない腫瘍が肝内転移を起こしている可能性があるため,医師の労力の割に患者の生命予後の改善が期待できないという費用対効果の観点に立つと,経カテーテル肝動脈塞栓術を選択する方がよいとの考えに立脚するものであり,合併症発症の危険を高めることにはつながらないこと,肝硬変がChild-Pugh分類でChild Cのケースについては,3個を超える腫瘍が存在する場合には合併症の危険が高まるということが可能性としては考えられるが,一般的にはあまりみられな,。 ,,いこと以上の事実が認められるこれらに加えDの体質及び既往から肝細胞がんに対する治療法として他の選択肢がなかったと認められる上,Dにはがんの転移をうかがわせる所見もなく(剖検時においても転移なしと診断されている,原発巣である肝内の腫瘍に対する治療を行えば,生)命予後を延長できた可能性は到底否定され得ないこと(鑑定の結果によれば,Dに対し本件RFA及び本件PEITを実施しなかった場合,予後はさらに短かった可能性があるとされる)を併せみれば,Dの肝臓に存在。 する腫瘍が4個ないし5個であったことが,RFA及びPEITの適応を否定するものとはいえない。 イ腹水についてRFA及びPEITの適応基準として,一般に「コントロール不能の,腹水がないこと」が挙げられている(甲B1,B10,B11,乙B2,B6,B9。この「コントロール不能の腹水がないこと」の意味につい)て名古屋市立大学大学院医学研究科のK医師及びL ール不能の,腹水がないこと」が挙げられている(甲B1,B10,B11,乙B2,B6,B9。この「コントロール不能の腹水がないこと」の意味につい)て名古屋市立大学大学院医学研究科のK医師及びL医師作成の意見書甲,(),「」。 B11によれば薬物療法で腹水が消失可能な状態をいうとされる(2)の認定事実によれば,Dには,3月26日の超音波検査時に腹水の存在が確認されているが,アルダクトンやアルブミン・カッターの投与により,4月17日段階で腹水がかなり減少し,4月19日には腹水が認め られない状態となっているから,本件RFA当時Dに存在した腹水は薬物療法で消失可能な状態であったものであり「コントロール不能の腹水」,ではなかったものと認められる。 もっとも,4月13日の超音波検査の報告書には腹水の存在は指摘されていないが,4月15日の医師記録及び4月17日の超音波検査の報告書に腹水が減少した旨の記述があることからすれば,本件RFA実施時においては,少量の腹水が存在していたと推認される(F医師も,入院時ないし本件RFA実施時に少量の腹水が存在していたことは認めている。乙A8,証人F43頁。すなわち,3月26日以降アルダクトンが処方さ。)れていたが,4月13日段階では少量の腹水が存在したままの状態であって,Dの腹水に明らかな減少を認めたのは4月15日であるから,本件RFAの術前段階の状態のみからDの腹水が「コントロール不能の腹水」でないかどうかは判然としなかったものである。一方,前述のとおり,本件PEIT実施前日には腹水は認められなくなり「コントロール不能の腹,水」ではないと判明していたのであるから,本件PEITに関しては,腹水に関する一般的な適応基準を満たしていたものといえる。 ウ総ビリルビン値について総ビ 認められなくなり「コントロール不能の腹,水」ではないと判明していたのであるから,本件PEITに関しては,腹水に関する一般的な適応基準を満たしていたものといえる。 ウ総ビリルビン値について総ビリルビン値について,本件各証拠によれば,①RFAについて3. 0mg/dl未満を適応とするもの(甲B2(九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科・甲B7・乙A8(被告病院,2.0mg/dl以下を適応)))とするもの(乙B9,②RFA及びPEITの双方について3.0mg/)(),. dl未満を適応とするもの甲B11添付書面3③PEITについて30mg/dl未満又はプロトロンビン時間40%を越えるものを適用とするもの(甲B10(埼玉医科大学第三内科学教室)がある一方,④RFAに)ついて総ビリルビン値を適用基準に含めないもの(甲B1・乙B4(いずれも東京大学消化器内科,乙B6(富山医薬大学(現富山大学)も存)) 在する。すなわち,総ビリルビン値については,これを適応基準という形で考慮するかどうかを含めて統一的な知見はなく,RFA及びPEITについて,総ビリルビン値3.0mg/dl以下という基準は一般的なものではない(鑑定の結果)というほかない。 また,総ビリルビン値3.0mg/dlを越えることが合併症発症の危険を高めることは一般にはないとされる(鑑定の結果。 )したがって,Dの総ビリルビン値が3.2mg/dlであったことは,RFA及びPEITの適応を否定するものではないというべきである。 (4)そこで,本件RFA及び本件PEITを実施したF医師らの判断の適否について検討する。 (3)で述べたとおり,本件RFA実施時において,結果としてDの腹水は「コントロール不能の腹水」ではなかったものであるが,術前の状態からはDの腹水が「 施したF医師らの判断の適否について検討する。 (3)で述べたとおり,本件RFA実施時において,結果としてDの腹水は「コントロール不能の腹水」ではなかったものであるが,術前の状態からはDの腹水が「コントロール不能の腹水」でないかどうかが判然としなかったものである。そして,RFA及びPEITの適応基準として「コントロール不能の腹水でないこと」が挙げられる理由は,肝表面にRFAの凝固針を刺した時に腹壁によって圧迫止血が困難となり,出血の危険が上昇することか,(),らコントロールできている方が望ましいためとされること鑑定の結果Dの肝硬変はChild-pugh分類でChild Cという重症の肝硬変であり(鑑定の結果,肝硬変症のある患者にとって手術侵襲は通常の場合に比べ過大なも)のとなる可能性があること(甲B3の1,本件RFA及び本件PEITを)実施することとなった経緯(上記(2))からすれば,本件RFA自体1,2日を争うような緊急性を要するものとは認められないことに照らせば,Dに,,対しRFAを実施するに際してはもう少し強力に腹水コントロールを試み「コントロール不能の腹水」でないことを見定めるべきであったと解するのが相当である。 この点について,Dは,従前実施されたPEITの際に,入院予定約1週 間のところ,3日又は5日しか入院しなかったこと(乙A4の2・8・29頁,A5の2・10頁,証人F9頁,本件RFA及び本件PEITに係る)入院についても「1週間以内に私は退院するからね「来週仕事で人に会,」わなきゃいかんから,とにかく早くやってくれ」などと早期退院を希望していたこと(証人F9・41頁,そして特に,Dの腫瘍は超音波による描出)が困難であること(証人F4頁。現に,S5区域の腫瘍について,1月28日実施のMRI く早くやってくれ」などと早期退院を希望していたこと(証人F9・41頁,そして特に,Dの腫瘍は超音波による描出)が困難であること(証人F4頁。現に,S5区域の腫瘍について,1月28日実施のMRI検査により増大が指摘されたが,2月27日の超音波検査では明瞭に描出できず,3月26日にようやく描出できている(上記(2),))といった事情からすると,F医師が,Dの便宜を考え,超音波検査によりS5区域の腫瘍を描出できた4月13日中にRFAを実施するのが適当であると判断したのも理解できないではないが,そうであれば,患者に対し,現に患者に存在する腹水が「コントロール不能の腹水」でないことの確認が取れないこと,腹水のコントロールのためには少し時間がかかるため,ある程度長期の入院加療が必要になる(鑑定の結果)こと,腹水がコントロール不能である場合は出血の危険が上昇することといった事項を説明すべきであり,そうでない限り,当該患者に対しRFAを実施することは注意義務に反するものというべきである。しかるに,F医師は,このような説明を行わず,一般的な説明を行って本件RFAを実施したというのであるから(乙A8,証人F9・19・44頁,本件RFAを実施したF医師の判断は医師として)の注意義務に反するものというほかない。 争点(2)(術後感染症対策の適否)について(1)前記前提事実及び証拠(乙A6,A8,証人F)によれば,本件PEIT実施後の経緯について,以下の事実が認められる。 ア4月20日午後3時35分ころ,本件PEITが終了した。 午後10時ころ,38.3℃の発熱があった。医師からボルタレン坐薬(解熱鎮痛剤)投与の指示があったが,Dがこれを拒否したため,クーリ ングのみ実施された(以上乙A6の298頁)。 イ4月21日午前6時ころ,体温は 3℃の発熱があった。医師からボルタレン坐薬(解熱鎮痛剤)投与の指示があったが,Dがこれを拒否したため,クーリ ングのみ実施された(以上乙A6の298頁)。 イ4月21日午前6時ころ,体温は36.8℃であり,午後2時ころは37.2℃であった(乙A6の300頁)。 ウ4月22日午後2時ころ,体温は37.3℃であり,午後5時ころは37.7℃であった(乙A6の302頁)。 エ4月23日午後2時ころ,体温は37.7℃であり,黄疸が見られた。 F医師は,同日予定されていたPEITを中止することとした。 超音波検査の結果,腹水は不変であり,胆管拡張は認められなかった。 また,胸部X線検査の結果,Dの左肺野の陰影が増強していることが認められた。血液検査の結果は,CRPが5.0mg/dl,白血球数が9.0×10/μlであった。 F医師は,超音波検査の結果肝臓に異常が認められなかったこと,Dから前日夜に血痰があったと説明されたこと,胸部X線検査の結果陰影の増強が認められたことから,呼吸器感染の増悪であると考え,従前から継続的に投与されていたクラリス及び咳嗽増強時にはクラビットの服用を継続し,経過観察することとした。 午後5時ころ,体温が38.0℃に上昇していたため,ボルタレン坐薬が挿肛された。午後8時ころ,体温は36.4℃になった(以上乙A6。 の15ないし17・144・152・304頁,乙A8,証人F50頁)オ4月24日午後2時ころ,体温は37.3℃であり,黄疸がみられた。 Dには,室内を片付ける行為がない,電話等を床に置く,ベッドの真ん中に頭があり,身体を折った状態で臥床している,などの異常行動がみられた。そこで,F医師は,4月26日の血液検査の結果を見て対応を検討することとした。 午後5時ころ,体温が38.4℃に上昇していたため,ボル あり,身体を折った状態で臥床している,などの異常行動がみられた。そこで,F医師は,4月26日の血液検査の結果を見て対応を検討することとした。 午後5時ころ,体温が38.4℃に上昇していたため,ボルタレン坐薬が挿肛された(以上乙A6の17・307頁,乙A8)。 カ4月25日午後4時ころ,体温は35.6℃であり,黄疸がみられた。 (乙A6の310頁),,. ,キ4月26日午前8時ころ血液検査が実施されCRP118mg/dl白血球数18.9×10/μl,カリウム7.3mEq/l,尿素窒素86mg /dl,クレアチニン5.0mg/dlであった。 午前8時20分ころ,嘔吐があった。 ,,. ,,午前9時ころ末梢冷感があり体温は347℃収縮期血圧90台無尿であった。 被告病院の医師らは,急性腎不全と判断し,緊急血液透析を実施した。 同日実施された超音波検査の結果,肝臓に腫瘍,胆管拡張及び腹水は認められなかった。同日から,抗生剤がセファメジンンに変更され,ガンマ()・ベニン重症感染症に対し抗生物質と併用して投与される血液成分製剤と併用し投与された。Dには,失見当識,不明言動がみられた(以上乙。 A6の17ないし19・145・154・312ないし315・323頁)ク4月27日午前8時ころの血液検査の結果は,CRP9.4mg/dl,白血球数16.1×10/μl,カリウム4.8mEq/l,尿素窒素75mg/ dl,クレアチニン4.3mg/dlであった。また,同日の血液透析後の血液検査の結果は,CRP8.8mg/dl,白血球数12.6×10/μl,カ リウム3.8mEq/l,尿素窒素33mg/dl,クレアチニン2.0mg/dlであった。Dには,失見当識,傾眠傾向,不明言動など意識状態の悪化がみられた。 午後 白血球数12.6×10/μl,カ リウム3.8mEq/l,尿素窒素33mg/dl,クレアチニン2.0mg/dlであった。Dには,失見当識,傾眠傾向,不明言動など意識状態の悪化がみられた。 午後7時20分ころ,気管内挿管がされ,人工呼吸器にて呼吸管理がされることになった。 同日,Dの肺炎は軽度と判断された(以上乙A6の23・146・1。 55・322ないし324頁) (2)以上を前提に,本件PEIT実施後の感染症対策の適否について検討する。 ア本件PEIT実施後,午後10時ころに発熱が認められている(38. 3℃。もっとも,PEIT・RFAのいずれの治療法でも,治療後の発)熱は大部分の症例で認められるとされること(甲B11の添付書面3,)本件RFA実施の際も翌日に発熱がみられたこと(乙A6の283頁,)20日午後10時ころ発熱が認められた際,ボルタレン坐薬を挿肛せず,クーリングの実施のみによって翌21日には36℃台になったこと((1)アイ)からすれば,上記20日午後10時ころの発熱をもって感染症等の異常兆候とみることはできない。 イしかし,21日午後には微熱が復活し,23日午後2時ころの体温は37.7℃,血液検査の結果,CRP値が5.0mg/dlと明らかな感染兆候を示した。白血球数は9.0×10/μlと基準値内ではあるが,4月1 9日時点の白血球数は4.1×10/μlであったから(乙A6の144 頁,4日のうちに倍以上に増加したことを示しており,やはり感染症を)うかがわせる兆候と解される。 ウそして,F医師らは,超音波検査の結果肝臓に異常がみられない一方,胸部X線検査により肺の陰影増悪が認められたことから,呼吸器感染の増悪と判断し,クラリス及び咳嗽増強時にはクラビットを投与して経過観察することとしたものである 検査の結果肝臓に異常がみられない一方,胸部X線検査により肺の陰影増悪が認められたことから,呼吸器感染の増悪と判断し,クラリス及び咳嗽増強時にはクラビットを投与して経過観察することとしたものであるが((1)エ,クラリスは,非定型抗酸菌症の)治療薬として入院中継続的に投与されていたものであり(乙A6の278ないし303頁,かかる投与にもかかわらずDが明らかな感染兆候を示)したのであれば,クラリスは,Dに感染兆候を引き起こしている感染症に無効なものと評価されるのであるから(甲B11,鑑定の結果,当該感),。 染症に対応するため抗生剤の変更又は新規投与が必要というべきであるまた,クラビットは咳嗽増強時にクラリスに代わって内服するよう医師 の指示がなされていたところ,4月12日ないし22日までの間にクラビットが投与された形跡はないことから(乙A6の278ないし301頁の各指示にはクラビットを咳嗽増強時に内服する旨記載されているが,303頁と異なり,クラビットの項目に看護師の押印がないので,実際には投与されたとは認められない,クラビットが当該感染症に無効と評価す。)ることはできないものの,仮にクラビットを投与して経過観察を行うのであれば,クラリスが無効であると評価される以上「咳嗽増強時」に限定,して投与を行うのは不適当であり,少なくとも継続的な投与を指示すべきものである。 しかるに,F医師は,Dに発症した感染症に無効と評価されるクラリスを継続投与することとし,かつ,クラビットの投与は咳嗽増強時との指示を変更しなかったものであり(乙A6の303ないし309頁,DはCh)ild-Pugh分類でChild Cの重症肝硬変患者であり,肝硬変患者は,免疫組織である肝細網内皮系の機能が低下するため免疫力が低下し,特に重症の肝硬変患者 6の303ないし309頁,DはCh)ild-Pugh分類でChild Cの重症肝硬変患者であり,肝硬変患者は,免疫組織である肝細網内皮系の機能が低下するため免疫力が低下し,特に重症の肝硬変患者は易感染性宿主と考えられていること(甲B3の1,B11,鑑定の結果)に照らせば,F医師の上記対応はDに対する感染症対策として適切さを欠き,注意義務に反するものというべきである。 なお,F医師は,Dが,本件PEITの際又は4月23日に診察をした際に「クラリス及びクラビットを内服していたので,抗生剤投与はいら,ない」旨申し出たことから,抗生剤を投与せず「何かあればクラビット,を服用してください」と指示していた旨供述する(乙A8,証人F51ないし52頁。しかしながら,仮に上記のとおりDが発言したとしても,)上記発言は,クラリスが上記感染症に無効と評価されることの説明を受けた上でのものではないから(証人52頁,F医師がかかるDの希望に従)って抗生剤の変更又は新規投与を行わなかったとしても,これをもって医師の注意義務を尽くしたものということはできない。 争点(3)(説明義務違反の有無)について(1)一般に,医師は,患者の疾患の治療のために手術を実施するに当たっては,診療契約に基づき,特別の事情のない限り,患者に対し,当該疾患の診断(病名と病状,実施予定の手術の内容,手術に付随する危険性,他に選)択可能な治療方法があれば,その内容と利害得失,予後などについて説明すべき義務があり,また,医療水準として確立した療法(術式)が複数存在する場合には,患者がそのいずれを選択するかにつき熟慮の上判断することができるような仕方で,それぞれの療法(術式)の違いや利害得失を分かりやすく説明することが求められると解される(最高裁平成13年11月27日 ,患者がそのいずれを選択するかにつき熟慮の上判断することができるような仕方で,それぞれの療法(術式)の違いや利害得失を分かりやすく説明することが求められると解される(最高裁平成13年11月27日第三小法廷判決・民集55巻6号1154頁参照。 )(2)本件RFAについて,説明義務違反の有無を検討する。 ア本件RFAの適応1(4)で認定のとおり,Dの腹水が「コントロール不能の腹水」でないことの確認が取れないこと,腹水のコントロールのためには少し時間がかかるため,ある程度長期の入院加療が必要になること及び腹水がコントロール不能である場合は出血の危険が上昇することは説明していないと認められ,このことは,上記手術に付随する危険性につき十分な説明を尽くしていないものと評価せざるを得ない。 イ重大な合併症の危険性証拠(甲B2,B3の1,乙B3)によれば,RFAの合併症として肝不全があり得ること,肝硬変の患者の場合,手術侵襲が術後肝不全の誘因になりやすいこと,Child Cの症例はChild A又はBの症例に比べて合併症発症率が高いと報告されていることが認められる。 もっとも,東京大学消化器内科の報告(甲B1)によれば,平成13年末までに肝細胞がんに対しRFAを実施した延べ636例(うちChild Cは86例)のうち,合併症として肝不全を発症したものはなかったとされ ている。また,証拠(甲B11の添付書面4,乙B3)によれば,近畿地区の38医療施設において平成14年5月までにRFAが実施された2614例のうち,肝不全が発症した症例は2例(約0.077%)であった,,,,ことまた海外において平成13年1月末までの論文を解析した結果肝不全の発症は0.8%であったと報告されていることが認められる。後二者の報告の母集団に,Chil 77%)であった,,,,ことまた海外において平成13年1月末までの論文を解析した結果肝不全の発症は0.8%であったと報告されていることが認められる。後二者の報告の母集団に,Child Cの肝硬変患者がどの程度含まれているか明らかでないが,我が国の報告である前二者についてみれば,前述のとおり,Child Cの症例はChild A又はBの症例に比べて合併症発症率が高いと報告されていることを考慮しても,Child Cの肝硬変患者に対し,RFAを実施した場合の肝不全の発症率は極めて低いものといわざるを得ないまたRFAの合併症として肝不全を掲げていない文献も存在する甲。 ,(B7,乙B1。したがって,F医師が,合併症として肝不全が発症しう)ることを説明しなかったとしても,このことをもって直ちに説明義務に反するものということはできない。 また,菌血症については,本件証拠上RFAの合併症としての発症の報告例がなく(甲B1,B2,B7,B11の添付書面4,乙B1,B3,B4,また,鑑定の結果によれば,RFA又はPEITにより,感染症)から敗血症(鑑定人は,菌血症と同義に使用している,多臓器不全とい)う転帰をたどることは極めてまれであると認められるから,F医師が,合併症として菌血症が発症しうることを説明しなかったとしても,このことをもって直ちに説明義務に反するものということはできない。 ウ本件RFAを選択しなかった場合の予後RFAを実施しなかった場合の予後は,これとRFAを実施した場合の危険性とを比較することによって,患者は,RFAを受けるか否かを決定することができるのであるから,患者の自己決定にとって重要な事項であるといえる。したがって,RFAを実施するに当たり,担当医師は,患者 に対し,RFAを実施しなかった場合の を受けるか否かを決定することができるのであるから,患者の自己決定にとって重要な事項であるといえる。したがって,RFAを実施するに当たり,担当医師は,患者 に対し,RFAを実施しなかった場合の予後についても説明することが求められると解するべきである。 しかし,証拠(証人F20,44頁)によれば,F医師は,Dに対し,RFAを実施しなかった場合の予後について説明しなかったと認められるから,かかるF医師の対応は,上記説明義務を尽くしていないものというほかない。 (3)本件PEITについて,説明義務違反の有無を検討する。 ア本件PEITの適応1(3)で説示のとおり,本件PEITがその適応を満たしていなかったとは認められないから,原告らの主張は失当である。 イ重大な合併症の危険性肝不全・菌血症のいずれについても,本件証拠上PEITの合併症とし(,,,),ての発症の報告例がなく甲B9B10B11の添付書面3乙B1また,鑑定の結果によれば,RFA又はPEITにより,感染症から敗血症,多臓器不全という転帰をたどることは極めてまれであると認められるから,F医師が,合併症として肝不全や菌血症が発症しうることを説明しなかったとしても,このことをもって直ちに説明義務に反するものということはできない。 ウ本件PEITを選択しなかった場合の予後PEITを実施しなかった場合の予後は,これとPEITを実施した場合の危険性等を比較することによって,患者は,PEITを受けるか否かを決定することができるのであるから,患者の自己決定にとって重要な事項であるといえる。したがって,PEITを実施するに当たり,担当医師は,患者に対し,PEITを実施した場合の危険性と併せて,PEITを実施しなかった場合の予後についても説明することが求められると解するべ るといえる。したがって,PEITを実施するに当たり,担当医師は,患者に対し,PEITを実施した場合の危険性と併せて,PEITを実施しなかった場合の予後についても説明することが求められると解するべきである。 しかし,証拠(証人F20・44・47頁)によれば,F医師は,Dに対し,PEITを実施しなかった場合の予後について説明しなかったと認められるから,かかるF医師の対応は,上記説明義務を尽くしていないものといわざるを得ない。 争点(4)(因果関係の存否)について(1)Dの死亡に至る機序について,鑑定の結果によれば,本件RFAあるいは本件PEITにより何らかの感染症が誘発ないし惹起され,それが契機となり,肝不全・腎不全・呼吸不全・心不全などの多臓器不全に至り,死亡したものとされる。 ア2(1)の認定事実及び証拠(乙A1,A6)によれば,感染症発症後のDの容態の推移について,体温の変化から,4月22日には感染症が発症,. (),. したことこのころの総ビリルビン値は53mg/dl4月23日 3mg/dl(4月26日)であり,プロトロンビン時間の減少が認められることから,従前と比べて明らかな肝機能の低下をうかがわせること(もっ,,. とも総ビリルビン値はその後やや減少し4月27日及び28日には38mg/dlまで低下していること,4月26日の血中アンモニア値は80μg/dlと基準値内であることから,異常言動が肝性脳症によるものとは断定できず,急性腎不全の影響も否定できないことからすれば,このころ,Dが不可逆的な肝不全に陥っていたとまで認めることはできない,4。)月26日に急性腎不全を発症したこと,同日の血液透析中に高カリウムが原因と考えられる除脈・頻脈がみられたが,翌27日には不整脈はみられなくなったこと( っていたとまで認めることはできない,4。)月26日に急性腎不全を発症したこと,同日の血液透析中に高カリウムが原因と考えられる除脈・頻脈がみられたが,翌27日には不整脈はみられなくなったこと(乙A1の151頁,乙A6の18頁,同日,呼吸困難)から気管内挿管されたこと(乙A6の23・324頁。以後死亡に至るまで,抜管されていない,5月10日に再度心不全症状(頻脈)がみら。)れるようになったこと(乙A6の41・42頁,最終的には,高度の肝)不全状態(5月31日の総ビリルビン値は18.5mg/dl ,貧血(赤血) 球数及び血色素量の低下,血圧低下,乏尿・無尿となり(乙A6の60)・61・151頁,多臓器不全で死亡したこと,以上のとおり認められ)る。 ,,,イ以上の経緯からすると何らかの感染症が契機となり肝不全・腎不全そして呼吸不全・心不全に至ったとする鑑定の内容は合理的と認められる。なお,鑑定の結果は,本件RFAも感染症の発症に寄与した可能性があるとされるが,1(2)で認定した事実によれば,本件RFAの翌日である4月14日に発熱したものの,同日実施の血液検査の結果CRP値や白血球数値に特に異常はなく,発熱も4月15日には治まっていることからすれば,本件RFAによって非定型抗酸菌症の悪化やその他の感染症の発症が惹起されたとはいい得ないし,本件RFA後の総ビリルビン値には著変がないことから(4月14日は3.8mg/dl,4月19日は3.2mg/dl,乙A6の152頁,本件RFAが肝機能の悪化に大きく寄与したと)も認め難い。したがって,Dは,本件PEITにより何らかの感染症が誘発され,それが契機となり,肝不全・腎不全・呼吸不全・心不全などの多臓器不全に至り,死亡したものと認められる。 被告は,Dの死亡と本件PEI い。したがって,Dは,本件PEITにより何らかの感染症が誘発され,それが契機となり,肝不全・腎不全・呼吸不全・心不全などの多臓器不全に至り,死亡したものと認められる。 被告は,Dの死亡と本件PEITは無関係である旨主張するが,上記アの事象はすべて本件PEIT実施後に発生しており,この時期に,手術侵襲等とは無関係に既往の非定型抗酸菌症や冠動脈疾患が悪化したというのは唐突に過ぎ,上記認定を覆すに足る合理性を認めるのは困難である(もっとも,これらの既往がDの死亡に影響を及ぼしていることは否定できない。 。)(2)そこで,既に認定した注意義務違反とDの死亡との因果関係について検討する。 ア本件RFAを実施した注意義務違反についてかかる判断は注意義務に反するものではあるが(ただし,結果としてD の腹水はコントロール不能の腹水ではなかった,上記(1)のとおり,本。)件RFAによって本件PEIT後に発生した感染症が惹起されたとはいえないし,肝機能の悪化に大きく寄与したとみることもできないから,かかる注意義務違反がなければ,6月4日午前2時18分時点においてDがなお生存していたであろうと高度の蓋然性をもって認めることはできない。 イ4月23日に抗生剤の変更ないし新規投与を行わなかった注意義務違反について鑑定の結果によれば,Child Cの肝硬変患者が感染症を発症し,一度肝不全及び腎不全を発症した場合,感染症が改善されても多臓器不全に陥ることを防止することは極めて困難であるため,抗生剤によってDに発症した感染症を完全に抑えきれたとすれば多臓器不全に陥らなかった可能性も残るが,その可能性は極めて低いと認められる。しかも,これは感染症を完全に抑えきれた前提での可能性であるところ,本件の場合,4月23日に投与されたクラビットが無効であっ 器不全に陥らなかった可能性も残るが,その可能性は極めて低いと認められる。しかも,これは感染症を完全に抑えきれた前提での可能性であるところ,本件の場合,4月23日に投与されたクラビットが無効であったと認めるに足る証拠はないため,抗生剤投与の着手が遅延したのは約2日と認められ,しかも,早期投与された抗生剤が当該感染症に有効でない可能性も否定はできないことからすれば,2日間抗生剤を早期投与することによって,感染症を完全に抑えきることができたとみるには強い疑問が残る。したがって,上記注意義務違反がなければ,6月4日午前2時18分時点においてDがなお生存していたであろうと高度の蓋然性をもって認めることはできないというほかない。なお,鑑定人は,個人的見解としては6月4日より少し生命予後を延長できた可能性はある旨述べるが,上記説示の諸点に照らせば,これをもって直ちにDが死亡した時点で生存していた高度の蓋然性があると即断することはできない。 もっとも,一般に,感染症が発症した場合には,抗生剤の投与は早期に行うに如くはなく,これによって,4月26日に発症した急性腎不全の帰 趨や多臓器不全の進行にも影響を及ぼした可能性があり,6月4日午前2時18分時点でDが生存していたことについて,相当程度の可能性はあったと認められる。 ウ説明義務違反について本件RFAに関し,上記1のとおり,腹水は少量であり,Dは早期退院を希望していたこと,Dの肝臓の腫瘍は超音波検査での描出が困難であることからすると,仮に腹水の点についてF医師がDに説明していれば,Dが本件RFAを受けなかったと認めるには疑問が残らざるを得ないし,アで説示のとおり,本件RFAの実施とDの死亡との間の因果関係は認められないから,結局,本件RFAに関する説明義務違反とDの死亡との間にも因果関係 受けなかったと認めるには疑問が残らざるを得ないし,アで説示のとおり,本件RFAの実施とDの死亡との間の因果関係は認められないから,結局,本件RFAに関する説明義務違反とDの死亡との間にも因果関係を認めることはできない。 また,本件RFA及び本件PEITを実施しなかった場合の予後を説明したとしても,それ自体が本件RFAや本件PEITを受けないとの判断に繋がるものではない。併せて,本件RFA及び本件PEITを実施した場合の予後を伝えたとしても,鑑定の結果によれば,本件RFA及び本件PEITを実施しなかった場合,Dの生命の平均予後(50%生存)は,これらの治療を実施した場合と比べて短縮した可能性があったと認められるから,直ちにDが本件RFA及び本件PEITを受けないと判断したと認めることもできないというほかない。 したがって,説明義務違反とDの死亡との間に因果関係を認めることはできない。 争点(5)(損害)について以上によれば,被告は,Dに対し,4月23日に抗生剤の変更ないし新規投与を行わなかったことによって,Dがその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性を侵害したものであるから,被告は,Dに対し,その被った損害を賠償する義務を負うというべきである(最高裁平成12年9月22日 第二小法廷判決・民集54巻7号2574頁参照。また,F医師の説明義務)違反により,Dは,本件RFA及び本件PEITを受けるかどうかを決定するに十分な情報を得ることができなかったのであるから,被告は,上記説明を尽くさなかったことによって,Dの病状及び手術に関する説明を受ける利益を侵害したものであり,これによってDが被った精神的損害を賠償する義務を負うと解される。原告らの請求は,かかる各請求をも包含するものと解される。 そして,Dが上記可能性及び説 に関する説明を受ける利益を侵害したものであり,これによってDが被った精神的損害を賠償する義務を負うと解される。原告らの請求は,かかる各請求をも包含するものと解される。 そして,Dが上記可能性及び説明を受ける利益を侵害され,その結果被った精神的苦痛に対する慰謝料については,本件事案の内容,Dがその死亡の時点において生存していた可能性の程度及び予後等のほか,本件に現れた一切の事情を斟酌し,300万円をもって相当と認める。弁護士費用については,30万円をもって相当と認める。なお,その余の請求(逸失利益,遺族固有の慰謝料等)は,Dが上記可能性等を侵害されたことによって生じた損害とは認められない。 結論 以上の次第で,原告らの本訴請求は,主文第1項の限度で理由があるから,これを一部認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法64条本文,65条1項本文を,仮執行宣言について同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第4部裁判長裁判官永野圧彦裁判官寺本明広裁判官大寄悦加

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