平成14(わ)21 強盗殺人被告

裁判年月日・裁判所
平成14年7月31日 盛岡地方裁判所
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判決文本文2,922 文字)

主文 被告人を無期懲役に処する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,いわゆる出会い系サイトによる女性とのメール交換に夢中になっていたところ,これを続けるのに必要な携帯電話使用料を支払うために残しておいた金員をパチスロで使い果たしてしまったことから,伯母のA(当時70歳)にその使用料等を無心しようと考え,岩手県遠野市a町b地割c番地d所在のA方を訪ねた。被告人は,平成14年1月27日午後3時20分ころ,同所1階居間において,Aに3万円を貸してほしい旨頼んだところ,これを断られたが,女性と会う寸前までいっているメール交換を絶対中断するわけにはいかず,A方には現金が必ずあるから,捜してでも現金を奪取しようとして,そのために邪魔になるAを殺害して金員を強取しようと決意し,礼服のズボンの裾を直すため被告人の前でしゃがんでいるAの隙を見て,前記居間の床の間に置かれていた木製置物(重量約3.2キログラム)を両手でつかむや,Aの頭部に振り下ろし,さらに俯せに倒れていたAの後頭部に両手で持った木製置物を5,6回打ち付け,よって,そのころ,前記居間において,Aを外傷性脳障害により死亡させて殺害した上,前記居間にあったA所有の現金4000円を強取したものである。 (法令の適用)被告人の判示所為は刑法240条後段に該当するところ,所定刑中無期懲役刑を選択し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,遊興費欲しさに現金を奪取しようとして伯母である被害者を同女宅居間において木製置物でその頭部を殴打して殺害し,現金4000円を強取した事案である。 まず,犯行に至る経緯についてみると,被告人は,前刑で服役し,平成13年10月25日仮出獄したが,地 を同女宅居間において木製置物でその頭部を殴打して殺害し,現金4000円を強取した事案である。 まず,犯行に至る経緯についてみると,被告人は,前刑で服役し,平成13年10月25日仮出獄したが,地元では前科者として知られているため女性に相手にされないと考え,出会い系サイトにおける女性との出会い及び交際を期待して,出会い系サイトで知り合った女性とのメール交換にのめり込んでいたところ,パチスロに没頭してメール交換を続けるために最低限残しておいた携帯電話使用料を費消してしまったが,携帯電話使用料の請求を受けていたため,支払わないと携帯電話が使用できなくなり,女性と会う寸前までいっているため,どうしても続けたいメール交換ができなくなると考え,他に借金できるあてもなく,頼りにしていたのは被害者だけであったのに,断られた上に取りあってもらえなかったことから,被害者を殺害してでも,金員を奪取しようと決意し,本件犯行に及んだものであるが,メール交換が大事なのであれば,携帯電話使用料の支払いのために残しておいた金員を使わなければよいのに,パチスロという遊興のために金員を使い,自ら窮地に陥っているものであり,犯行に至る経緯において,被告人に酌量すべきものはない。また,被告人は,被害者から断られるや,僅か3万円の携帯電話使用料等欲しさに,逡巡することなく,現金を捜すのに邪魔だという理由で被害者を殺害することとし,首を絞めて殺害する方法を考えたが,結局,判示のとおり木製置物を打ち付けて殺害しているのであり,その動機は余りに自己中心的かつ短絡的であり,自己の思い通りにするため,簡単に人の生命を奪うというのは,到底許されるべきことではなく,強く非難されなければならない。 次に,その犯行態様をみると,被告人は,その足下にしゃがんで,礼服の裾を調整することに夢中で, るため,簡単に人の生命を奪うというのは,到底許されるべきことではなく,強く非難されなければならない。 次に,その犯行態様をみると,被告人は,その足下にしゃがんで,礼服の裾を調整することに夢中で,全く無防備な態勢でいた被害者に対し,その頭部目がけて重さが約3. 2キログラムもある木製置物を振り下ろして殴打し,その後金員を物色中,俯せに倒れ込んだ被害者が頭を動かしているのを認めるや,とどめを刺すため,さらに無抵抗の被害者の頭部に前記置物を数回打ち付けたもので,執拗かつ残虐なものである。 そして,被告人は,被害者の金員のみならず,命まで奪ったのである。被害者は,甥である被告人を幼少時から我が子同然に可愛がり,前刑服役中も被告人の身を案じ,仮出所時には函館まで迎えに行き,その後も,肩身の狭い思いをしている被告人を外出に誘い出すなど,ことあるごとに被告人に目をかけてきたものであり,母親以上に被告人に尽くしてきたもので,被告人に感謝されこそすれ,恨みに思われる筋合いはなく,落ち度は全くない。被害者の遺族らも,なぜ被告人は被害者を殺害したのか理解に苦しむと異口同音に述べている。被害者は,孫らの結婚式を楽しみにしていたのに,そのような充実した余生を被告人に奪われたもので,被害者の無念さ,驚愕はいかばかりであったか,察するに余りある。しかも,被害を受けてから絶命するまで一定の時間があったことや現場の状況からすると,絶命までの痛みや苦しみは筆舌に尽くしがたいものであったと窺われる。また,遺族らも,口々に被害者の死を嘆き悲しみ,被害者の命を奪った被告人に対する怒りを露わにし,極刑に処することを望んでいるが,けだし当然である。 さらに,被告人は,犯行の翌日にもパチスロに興じ,被害者の死亡が発覚した後も,携帯電話の使用料やパチスロ代欲しさに雇主に借金を申し込んで 露わにし,極刑に処することを望んでいるが,けだし当然である。 さらに,被告人は,犯行の翌日にもパチスロに興じ,被害者の死亡が発覚した後も,携帯電話の使用料やパチスロ代欲しさに雇主に借金を申し込んでおり,重大犯罪を犯してもなお遊興費を気にかけていたもので,そこには悔悟の念など微塵も感じられず,犯行後の事情も悪い。 しかも,被告人は,前刑で服役した上,仮出所後保護観察となり,保護司の指導を受けていたにもかかわらず,仮出所後3か月あまりで出会い系サイトのメール交換にのめり込み,仕事をさぼってパチスロをするという服役前と同様の自堕落な生活に戻った末,本件に及んでいるもので,その矯正は困難であると言わざるを得ない。 以上によれば,被告人の刑事責任は極めて重大である。 したがって,本件犯行には計画性はなく,現場で思いついた犯行であること,強取金額が多額ではなかったこと,被告人が,当公判廷において,「伯母ちゃんに毎日手をあわせ,一生償っていきたい。」,「伯母ちゃんのために絶対もう一度更生する。」などと被告人なりに反省の情や更生の意思を示していることなど被告人のために斟酌すべき事情を考慮しても,酌量減軽すべき事情はなく,主文のとおりの無期懲役刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑-無期懲役)平成14年7月31日盛岡地方裁判所刑事部裁判長裁判官卯木誠裁判官遠藤東路裁判官菊池浩也

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