主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 被告らは,原告に対し,各自6200万円及びこれに対する平成10年7月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (3) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁主文同旨第2 当事者の主張 1 請求原因(1) 当事者ア原告は,繊維原料の加工,販売を目的とする株式会社である。 イ被告A株式会社は,羊毛,綿花,化繊その他の繊維原料およびその製品等並びにその技術の輸出入および売買等を目的とする株式会社であり,被告Bは,被告Aの従業員であり,平成9年4月ころより原告の担当者となったものである。 (2) 加工委託契約の締結ア原告は,昭和55年4月18日,被告Aとの間で,以下の内容の加工委託契約(以下「本件契約」という。)を締結した。 (ア) 被告Aは,原告に対して被告A所有の原料の加工を委託し,原告はこれを受託するものとする。加工委託すべき品種,数量,納期,加工賃などについては,委託事項発生の都度,被告Aより原告に交付する指図書に定めるところによる。 (イ) 本件契約の有効期間は,契約の日より3年間とする。ただし期間満了1か月前までに原告及び被告Aのいずれからも意思表示のないときは,1年間延長されるものとし,その後も同様とする。 イ原告は,昭和58年7月1日,被告Aとの間で本件契約を更新して上記アと同内容の契約書を交わした。 ウ原告は,昭和61年7月1日,被告Aとの間で,本件契約につき,有効期間についてはあらかじめ定めず,3か月前の予告により本件契約を解約できるとの内容に変更することを合意した。 (3) 本件契約の専属性ア原告は,本件契約締結に先立ち,被告Aとの 件契約につき,有効期間についてはあらかじめ定めず,3か月前の予告により本件契約を解約できるとの内容に変更することを合意した。 (3) 本件契約の専属性ア原告は,本件契約締結に先立ち,被告Aとの間で,原告工場の操業については被告Aが保証するかわりに,原告は被告A以外からの仕事は行わない旨合意し,本件契約締結以降,被告Aの専属的下請工場としてその経営基盤の全てを被告Aの発注に依存したが,上記操業保証の見返りとして原告の加工賃単価は他の紡績業者よりも1ないし2割ほど安価であった。 イ原告は,昭和62年にC工場を取得し,同じ頃最新式の紡績機械を導入するなど,被告Aの要望に応じて総額4億円余りの費用をかけて物的設備を整えてきた。 ウ原告は,平成9年5月ころ,被告Aと協議のうえで,今後の紡績業に対応し従来の量産体制から付加価値のある商品を加工できる体制にすべく,原告工場の一つであるD工場を閉鎖して機械をE工場に移す等のリストラを行った。 (4) 被告Aによる解約の意思表示ア被告Bは,平成9年12月,原告代表者Fに対し何らの予告もなく「おやめになったらどうか。」と述べて,今後の発注を打ち切る旨通告した。 イ原告は,平成10年4月27日,被告Aに対し一方的取引中止は認められない旨通知したところ,被告Aは同年5月21日付け内容証明郵便で本件契約を解約するとの意思表示をした。 ウ原告は,上記のように,長い年月にわたり被告Aの専属的下請工場としてその要請に応えて物的設備を整え,継続的に被告Aからの加工委託を受けてきたものであり,経営基盤は完全に被告Aに依存していた。このような継続的契約関係にある当事者間においては,公平の原則ないし信義誠実の原則により解約権の行使は制限され,委託者側は相当の予告期間(3か月では不十分である。)を設けるか相当の補償を していた。このような継続的契約関係にある当事者間においては,公平の原則ないし信義誠実の原則により解約権の行使は制限され,委託者側は相当の予告期間(3か月では不十分である。)を設けるか相当の補償をしない限り,やむを得ない特段の事情がなければ一方的に解約することは許されない。 したがって,相当な予告期間もなく損失補償もしない被告Aによる上記解約は違法であり,被告Aは一方的な上記取引打切りによって原告が被った損害を賠償する責任がある。 (5) 被告Aの違法な解約による損害原告の1か月の純利益は250万円を下らないところ,原告は,被告Aの一方的解約によりこれを喪失したのであるが,被告Aとの取引が長年にわたっており,被告Aの専属加工先であることが業界に周知されているから,他の取引先に移行することは困難で,上記程度の利益を上げるまでには少なくとも2年はかかるところ,その間の得べかりし利益は,ホフマン式計算法により年6分の割合による中間利息を控除して一時に請求しうる金額を計算すると,金5508万円となる。 (6) 被告Aの原綿違いによる債務不履行責任ないし補償約束ア原告は,平成9年3月ころ,被告Aから訴外G株式会社発注にかかる糸30トンの加工委託を受けたが,その原綿構成は,100Vが40パーセント,102V(4インチ)が15パーセント,76V(3インチ)が45パーセントであった。 イところが,被告Aは原告に納入すべき原綿を間違え,4インチ主体の梳毛紡績を専門とする原告の工場では梳くことの非常に困難な,76V(3インチ)の割合が100パーセントの原綿(以下「本件原綿」という。)を納入した。そこで原告は,被告Aに対して本件原綿では加工不能であると伝えたところ,同被告は見本だけでも紡績するよう強く求めた。 ウ原告が上記アで加工委託を受けたとおりの 以下「本件原綿」という。)を納入した。そこで原告は,被告Aに対して本件原綿では加工不能であると伝えたところ,同被告は見本だけでも紡績するよう強く求めた。 ウ原告が上記アで加工委託を受けたとおりの原綿であれば,原告C工場において20日間で加工できる分量であったが,上記イの事情から同工場では73日間この原綿の加工にかかりきりになる結果となり,被告Aの上記原綿違いの債務不履行に基づくおよそ1200万円の損害を被った。 エ仮に,上記債務不履行責任が認められないとしても,被告Aは,平成9年5月29日,原告に対し,C工場において従来の原料の加工日数に比して53日の余分な日数を要し,その間収益を上げることができなかったことによる600万円の補償を約した。 (7) 被告Bの不法行為責任ア被告Bの不法行為(ア) 原告は,糸の出荷の際には,被告Aの名古屋紙パルプ課より仕入れた段ボール箱を使用していたところ,被告Bは,平成10年2月頃,被告Aの審査部に対し,原告は同年3月に廃業するのでそれ以降は段ボールを売らないようにと告げ,あたかも原告が廃業するかのような風評を流布し,もって原告の信用を毀損した。 (イ) 被告Bは,平成9年4月以降,原告担当者として被告Aの原告に対する与信枠を掌握し,事実上メーカーからの原告向け発注を受けるか否かを決し,原告の操業一切を左右しうる立場にあったが,メーカーからの原告向け発注をとるための努力を放棄し,また,原告が被告Bを頼らずに別ルートで仕事を受注しようとすることを妨害した。 (ウ) 被告Bは,原告担当者としてG株式会社および糸の販売業者である訴外H株式会社から原告への発注を確保すべき立場にあったが,G株式会社およびH株式会社に対する対応を誤り,これらメーカーからの原告向け発注が打ち切られるという結果を招いた。 イ損 の販売業者である訴外H株式会社から原告への発注を確保すべき立場にあったが,G株式会社およびH株式会社に対する対応を誤り,これらメーカーからの原告向け発注が打ち切られるという結果を招いた。 イ損害被告Bは,以上の行為により原告を廃業に追い込み,原告に対し上記(5)及び(6)ウの損害を与えた。 (8) よって,原告は,被告Aに対し主位的に債務不履行,予備的に不法行為に基づく損害賠償として,被告Bに対し不法行為に基づく損害賠償として,それぞれ上記(5)及び(6)ウの合計の内金6200万円及びこれに対する弁済期の経過した後である平成10年7月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因に対する認否(1) 被告Aア請求原因(1)は認める。 イ請求原因(2)は認める。 ウ請求原因(3)アのうち,加工賃単価が安価であったことは認め,その余は否認する。 同(3)イのうち,被告Aの要望に応じてとの部分は否認し,その余は不知。 同(3)ウのうち,被告Aと協議のうえとの部分は否認し,その余は不知。設備投資等は,原告の経営判断によるもので,被告Aやその担当者が指示等をした事実はない。 エ請求原因(4)アのうち,被告Bが「おやめになったらどうか。」と告げたことは認め,その余は否認する。 同(4)イは認め,同(4)ウは否認ないし争う。そもそも本件契約は,専属的なものでも一定の発注を保証するものでもない。 オ請求原因(5)は否認ないし争う。 カ請求原因(6)アのうち,原綿構成の主張については否認し,その余は認める。原綿構成は,102V(4インチ)が15パーセント,76V(3インチ)が85パーセントであり,加工依頼書に明記されている。 同(6)イのうち,原告が被告Aに対して加工不能であると伝えたとの部 める。原綿構成は,102V(4インチ)が15パーセント,76V(3インチ)が85パーセントであり,加工依頼書に明記されている。 同(6)イのうち,原告が被告Aに対して加工不能であると伝えたとの部分は認め,その余は否認する。 同(6)ウ,エはいずれも否認する。 (2) 被告Bア請求原因(1)アは認め,同(1)イのうち,被告Bに関する部分は認める。 イ請求原因(7)はいずれも否認する。 3 抗弁(1) 本件契約の解約がやむを得ないことの評価根拠事実-原告の債務不履行及び国内紡績業の推移によるメーカーからの原告向け発注の打切りア納期遅れ(ア) 被告Aは,G株式会社からの発注を受けて同社から原綿を購入し,原告に紡績加工を委託して完成した糸をG株式会社に販売するという取引を行っていた。 (イ) 被告Aは,平成9年5月19日,原告との間で,原告C工場分として,月産30トンを目安にG株式会社の2/32綛を加工し,生産能力に余力が出た場合には,I株式会社等他のメーカーからの紡績を受けること,原告E工場分として,G株式会社の2/56Cを月間20トン加工し,余力があれば他のメーカーの糸を加工することを合意した。 (ウ) 被告Aは,上記合意に基づき,平成9年5月29日,原告との間で,C工場分として2/32綛30トン(納期は同年6月末日),同年6月17日,E工場分として2/56C20トン(納期は同年7月末日)の加工委託契約を締結した。 (エ) ところが,原告は,C工場分の加工完了を同年9月15日まで遅延し,被告Aが予定していた同年7月ないし9月分の合計90トンについて,原告への加工委託が不能となり,同被告は別の加工業者を手配することを余儀なくされた。また,E工場分についても加工完了は同年9月末日まで遅延した。 (オ) 被告Aは,この間,原告に対し,上記 について,原告への加工委託が不能となり,同被告は別の加工業者を手配することを余儀なくされた。また,E工場分についても加工完了は同年9月末日まで遅延した。 (オ) 被告Aは,この間,原告に対し,上記の納期遅れが改善されなければ今後の取引継続は困難であると警告し,また,同年7月23日,G株式会社の担当者から原告に対し,納期遅れが著しいため今後原告向けの発注は難しい旨の通告がなされた。 (カ) G株式会社は,同年8月26日,被告Aに対し,同年9月の原料投入をもって原告向け発注を打ち切る旨を通告した。 イ重量不足(ア) 被告Aは,H株式会社の発注を受けて原料を別の業者から購入し,原告に紡績加工を委託して完成した糸を一旦被告A倉庫に保管し,H株式会社からオーダーがある都度販売するという取引を行っていた。 (イ) 被告Aは,平成9年6月ころ,H株式会社から,原告が紡績した同年5月納入分の糸に重量不足がある旨のクレームを受けたので,原告が紡績した糸の重量を調べたところ,明らかな重量不足が散見されたが,これは原告紡績の歩留まり(投入原料あたりからできる糸の重量の割合)の低さに起因することが判明した。 (ウ) 被告Aは,平成9年6月26日,原告に対し重量不足が解消されなければH株式会社との取引継続は困難であると警告した。 (エ) H株式会社は,平成9年9月,被告Aに対し,原告の紡績した糸は購入したくないとの意向を表明した。 (オ) H株式会社は,平成9年12月,被告Aに対し,原告が紡績した糸に重量不足がある旨及び2本撚の中に4本撚の糸が混入している旨のクレームと,あわせて原告への発注を打ち切るとの通知をした。 ウ紡績取引の状況商社が介入する紡績取引においては,紡績業者の選択権限は発注元にあり,商社たる被告Aとしては発注元の意向に逆らってまで原告に加工 あわせて原告への発注を打ち切るとの通知をした。 ウ紡績取引の状況商社が介入する紡績取引においては,紡績業者の選択権限は発注元にあり,商社たる被告Aとしては発注元の意向に逆らってまで原告に加工委託することはできない立場にある。 エ国内紡績業の衰退紡績の国内生産量は昭和60年頃から一貫して減少傾向にあるところ,原告の行っている梳毛紡績に限っていえば,需要の低下と安価な輸入品の攻勢で,国内生産量は平成10年には昭和60年の半分以下にまで落ち込み,特に平成5年以降の落ち込みは顕著である。 このような状況の中で,生産コストの安い海外への紡績業のシフトが進み国内紡績業者の競争が激化し,より技術力が高く,納期,重量管理等の確実な業者へと発注が集中し紡績業者の淘汰が進行した。 オまとめ国内紡績業を巡る上記エのような厳しい状況の下で,上記ア,イのような大幅な納期遅れや重量不足を起こした原告に対し,被告Aがメーカーからの発注を確保することはもはや不可能だったのであり,G株式会社及びH株式会社が原告向け発注を打ち切ったことにより本件契約を解約したのはやむを得なかったというべきである。 (2) 相当の猶予期間被告Aは,平成9年12月2日,原告に対して抗弁(1)イ(オ)のH株式会社からの原告向け発注打切りの通告を伝えた際,本件契約解消について協議したが,原告が平成10年4月以降は廃業等の対応も考えるのでそれまでは仕事をつないで欲しいと要望したのでこれを受け入れ,原告に対し,平成10年3月まで紡績加工を委託して本件契約を継続し,それによって原告は同年6月まで操業することができたのであるから,相当の猶予期間を与えたというべきである。 4 抗弁に対する認否(1) 抗弁(1)アのうち,(ア)は認め,(イ),(エ)ないし(カ)はいずれも否認する。 6月まで操業することができたのであるから,相当の猶予期間を与えたというべきである。 4 抗弁に対する認否(1) 抗弁(1)アのうち,(ア)は認め,(イ),(エ)ないし(カ)はいずれも否認する。 同(1)ア(ウ)のうち,E工場分として20トンの加工委託契約を締結したとの部分は否認し,その余は認める。 (2) 抗弁(1)イのうち,(ア)は認め,(ウ),(エ)は否認する。 同(1)イ(イ)のうち,被告AがH株式会社から重量不足のクレームを受けたとの部分は認め,その余は否認する。 同(1)イ(オ)のうち,H株式会社が原告への発注を打ち切るとの通知をしたとの部分は否認し,その余は認める。 (3) 抗弁(1)ウ,エは不知。 (4) 抗弁(1)オは否認ないし争う。 (5) 抗弁(2)のうち,被告Aが原告との間で本件契約解消について協議したとの部分,その際原告が平成10年4月以降は廃業等の対応も考えるので,それまでは仕事をつないで欲しいとの要望を表明したとの部分及び相当の猶予期間を与えたとの部分は否認し,その余は認める。 5 再抗弁本件契約の解約がやむを得ないことの評価障害事実(1) 納期遅れについてア G株式会社は,もともと梳毛紡については自社工場等での紡績加工を主体としており,G株式会社にとって原告はあくまでスポット的加工先であり,納期の急がない分があれば発注していたにすぎず,平成9年6月及び7月の発注分についても納期の定めはあるものの,G株式会社にとって急がないものであった。 イ C工場での2/32綛30トンの加工完了が遅延したのは,被告Aの原綿違いによる工場の停滞の影響が続いていたことと,同被告が原告の加工の最中に番手の変更,仕立ての変更,見本作り等を指示してきたためである。 E工場での2/56C20トンの加工完了が遅延したのは,被告Aが原 よる工場の停滞の影響が続いていたことと,同被告が原告の加工の最中に番手の変更,仕立ての変更,見本作り等を指示してきたためである。 E工場での2/56C20トンの加工完了が遅延したのは,被告Aが原告の加工の最中に,2/56Cを途中で打ち切ってスポット商品である2/28Cに大至急仕掛かれと指示してきたからである。 ウ G株式会社は原告への発注打切りの際,他の紡績業者への発注も打ち切っており,原告への発注打切りはG株式会社自身の仕事が減少したことが原因である。 (2) 重量不足についてア H株式会社からの重量不足のクレームは,原告が被告Bの指示に従って,それまで続けていた入れ目(糸を多めに巻くこと)をなくしたからである。すなわち,H株式会社向けの糸については,平成9年3月頃まで,原料代は被告A負担,加工代は原告負担で2パーセント程度入れ目をしており,過去10年間一度も重量不足のクレームを受けたことはなかった。ところが,同年4月ころ,被告Bから通常取引で構わないとの指示を受けたので,H株式会社向けの糸について入れ目をなくして正確な重量管理に努めたところ,H株式会社から以前の重量管理に戻して欲しいとのクレームがきたのである。 イ原告が加工する糸は,重量不足以外には品質等何ら問題はなく,H株式会社との取引は継続可能であった。 ウメーカーから商社に対してクレームがきたときは,商社と紡績業者が話し合い,クレーム代金をその後の加工賃から差し引く等の処置で対処できたはずである。ところが,被告は平成9年12月のH株式会社からの重量不足のクレームの際に,原告に対してクレーム代の請求を一切しないまま,いきなりH株式会社との取引打切りを通告したのである。 (3) 他のメーカーからの受注の可能性原告には,当時,J株式会社やI株式会社等の仕事もあり,G株式会社及 してクレーム代の請求を一切しないまま,いきなりH株式会社との取引打切りを通告したのである。 (3) 他のメーカーからの受注の可能性原告には,当時,J株式会社やI株式会社等の仕事もあり,G株式会社及びH株式会社からの原告向け発注が打ち切られたとしても本件契約の継続は可能であった。 ところが,被告AはJ株式会社等からの原告向け発注を確保するための努力を放棄した。 (4) まとめ以上のように,被告Aの主張する納期遅れ及び重量不足は,G株式会社ないしH株式会社からの原告向け発注を確保することを不可能ならしめるほどのものではなく,被告Aの指示等にも起因することなのである。また,G株式会社及びH株式会社からの発注が打ち切られても,J株式会社等他のメーカーからの受注は十分可能だったのである。 そうすると,G株式会社及びH株式会社からの発注打切りを理由とする本件契約の解約はやむを得ない事由に基づくものとはいえない。 6 再抗弁に対する認否(1) 再抗弁(1)アのうち,G株式会社にとって原告がスポット的加工先であったとの部分は認め,その余は否認する。 同(1)イのうち,被告Aが番手変更等を指示したとの部分及び2/56Cを打ち切って2/28Cに仕掛かるよう指示したとの部分は認め,その余は否認する。 同(1)ウは不知。 (2) 再抗弁(2)アは否認する。 同(2)イのうち,重量不足以外には品質等に何ら問題なかったとの部分は認め,その余は否認する。 同(2)ウのうち,原告にクレーム代を請求しなかったとの部分は認め,その余は否認する。 (3) 再抗弁(3),(4)は否認する。 理由 1 請求原因(1),(2)及び(4)イの各事実は当事者間に争いがない。 2 甲第1ないし第3号証,第4号証の1・2,第5号証,第6号証の1・2,第7号証,第8号証の1・2,第9 )は否認する。 理由 1 請求原因(1),(2)及び(4)イの各事実は当事者間に争いがない。 2 甲第1ないし第3号証,第4号証の1・2,第5号証,第6号証の1・2,第7号証,第8号証の1・2,第9ないし第32号証,第36ないし第55号証,第62ないし第64号証,第66ないし第70号証,第73ないし第75号証,第78号証,第79号証,乙第1ないし第3号証の各1・2,第4号証の1ないし3,第5及び第6号証の各1・2,第7号証,第8号証,第9ないし第12号証の各1・2,第13ないし第16号証,証人K,同Lの各証言,原告代表者及び被告B本人の各尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められ,甲第51号証,第62号証,第79号証,乙第7号証,第14号証,第15号証の各供述記載,証人K,同Lの各証言,原告代表者及び被告B本人尋問の結果中,この認定に反する部分はいずれも採用することができない(なお,この認定事実の一部は,当事者間に争いがない。)。 (1) 原告は,原告代表者が昭和42年に興した繊維商社の生産部門として昭和44年に設立され,当初はウール専門の工場(愛知県西春日井郡a町所在)として操業していたが,その後のアクリル需要の拡大から化合繊紡績を主力におくようになり,昭和50年以降,E,Dの2工場を取得してメーカーや商社の加工委託を受けるようになった。なお,原告は4インチの長繊維を扱う梳毛紡績を専門としており,また,自社工場では紡績工程のうちの前紡及び精紡を担当し,その前後の工程であるトップ加工及び撚糸加工については外注していた。 (2) 原告は,昭和55年ころ,取引先であったJ株式会社からM株式会社の仕事を紹介されたが,同社の仕事をするためには商社である被告Aを通す必要があったことから,本件契約を締結して同被告との取引が始まった。 原告は,昭和55年ころ,取引先であったJ株式会社からM株式会社の仕事を紹介されたが,同社の仕事をするためには商社である被告Aを通す必要があったことから,本件契約を締結して同被告との取引が始まった。なお,当時,原告が取引していた商社は,N株式会社,株式会社O及びP株式会社であった。 (3) 本件契約締結当時,アクリルの需要は拡大傾向にあり,被告Aは,メーカーからアクリル毛混糸増産の強い要請を受けていたため,その紡績加工先を是非とも確保したい状況にあった。そこで,当時の被告A化合繊原料部第2課課長Kは,本件契約締結に先立ち,原告代表者に対し,原告工場の100パーセント操業を確保できるよう努力するとして,被告Aからの仕事に専念するよう強く要請した(もっとも,同被告以外からの受注を禁止する趣旨ではなかった。)。 原告はかかる要請を受けて,それまで取引のあった商社等との取引を漸次打ち切り,被告Aから発注される紡績加工のみに専念するようになり,その結果,営業部門を廃止し,昭和57年ころには原告の生産量のほとんどを被告Aの発注に依存するようになった。他方,被告Aは,原告を重要中核加工先と位置づけていたが,このような協力加工先は原告一社ではなく,Q,R等があったが,これらの加工先は被告A以外からも一定量の受注をとっていた。そして,被告Aは,メーカーや糸商からの発注を受けて原告ら加工先に紡績加工を委託していたが,どの紡績業者を選定するかについては,メーカーや糸商が指定する場合はそれが優先した。 原告と被告Aとの取引は,国内紡績業の変動によっても左右され,原告の操業率が6割程度になることもあったが,平成3年ないし4年ころまでは概ね拡大の傾向にあった。そして,原告は,上記のように取引額が拡大する中で,昭和62年にC工場を取得し,リース契約により最新式の機械 業率が6割程度になることもあったが,平成3年ないし4年ころまでは概ね拡大の傾向にあった。そして,原告は,上記のように取引額が拡大する中で,昭和62年にC工場を取得し,リース契約により最新式の機械設備を整えた他,D工場にも機械設備を備えた。また,原告は,平成9年5月ころ,生産性を上げるため,E工場を閉鎖してD工場に統合した。 (4) 国内梳毛紡績は,平成元年ころに生産量のピークを迎えたが,その後次第に安価な輸入品におされていき,特に平成5年以降はその減少が著しくなり,平成7年ないし8年ころになると,梳毛紡績業の海外シフトの動きが激しくなった。そうした中で,被告Aは,平成9年に繊維原料部門の取引先を縮小していく方針をとった。 同年4月,G株式会社及びH株式会社からの原告向け発注を扱う担当者が被告A化合繊原料部第一課課長のSから羊毛合繊原料部の被告Bに交代した。なお,G株式会社は,加工先の主力をQとしており,原告については,納期の急がない分を必要な時にだけ発注するというスポット的な加工先とみていた。 また,当時,J株式会社及びI株式会社からの原告向け発注を担当していたのは,被告Aリビング部第2課のT及びUであった。 (5) 原告は,平成9年2月26日,被告AからG株式会社発注のナイロン混糸30トン(原綿構成は,102V(4インチ)が15パーセント,76V(3インチ)が85パーセントである。)の紡績加工委託を受けた(なお,原告は,合意された原綿構成は,4インチのものが55パーセント,3インチのものが45パーセントであったと主張し,原告代表者は,その尋問において,被告Bとの電話でそのように確認したと供述するが,加工依頼書の記載内容と相違しているうえ,その違いについて首肯できる説明がなく,措信できないし,他に原告の上記主張を認めるに足りる証拠 尋問において,被告Bとの電話でそのように確認したと供述するが,加工依頼書の記載内容と相違しているうえ,その違いについて首肯できる説明がなく,措信できないし,他に原告の上記主張を認めるに足りる証拠はない。)。ところが,納入された原綿は,短繊維である76Vの割合が100パーセントのものであったため,C工場で加工にかかったところ,梳毛紡績を専門とする原告の機械にはうまくかからず,加工は困難を極めた。そこで,原告は,同年3月17日,被告Aに対して加工不能である旨伝えたところ,同月19日,G株式会社の技術者が応援のため原告C工場に派遣された。G株式会社としては,ナイロン混という構成や76Vのカット長から原告の機械では加工しづらいであろうことはある程度認識していたが,加工賃を割増にしており,また,展示会への出品を予定していたため,その分だけでも加工して欲しいと強く要請し,また,翌20日には102Vを23.1パーセントとする構成の原料に入れ替えた。そして,原告は上記要請に応え,C工場でこの加工にかかりきりになり,同年5月末になってようやく加工し終えたが,従来の原料の加工日数に比して53日の余分な日数を要した(以下この顛末を「本件原綿問題」という。)。 この間,同年4月には加工賃850万円が原告に前払いされ,歩留まりロス分についてはG株式会社負担とすることになったが,原告代表者は,それでは不十分であるとして,同年5月27日,G株式会社のL及び被告Bと面談し,両名に対して今回の加工紡績の件で1200万円くらいの損失が生じたので,その半分の600万円は負担して欲しいと要求した。これに対し,両名はこれに応ずる姿勢を示さなかったが,被告Bは原告の損失をできるだけカバーしたいと考え,その後にG株式会社と交渉した結果,今後G株式会社のトレロンの加工賃を1キ して欲しいと要求した。これに対し,両名はこれに応ずる姿勢を示さなかったが,被告Bは原告の損失をできるだけカバーしたいと考え,その後にG株式会社と交渉した結果,今後G株式会社のトレロンの加工賃を1キロあたり10円増にして月に30トンの委託をすることにより月々30万円ずつ返していくこと,G株式会社はマイヤー糸の需要があれば原告に発注するとの内諾を取り付け,同月29日,その旨を原告に対してファックスで通知したが,「総額いくら返せるのかはまた相談させてください。」と付記した。原告代表者は,その後の同年6月11日,被告A大阪本社に出向き,被告Bに対し,今後G株式会社からの仕事が切れるようなら損失全額の1200万円を負担して欲しいと要請したが,そのことについて特段の合意はされなかった。 (6) 被告Aは,同年5月,G株式会社から,同年6月から9月にかけて加工すべき月間30トンの糸の原告向け発注内諾を得ており,同年5月19日,原告代表者に対し,①C工場分として月産30トンを目安にG株式会社の2/32綛を加工し,生産に余裕が出た場合はI株式会社等他のメーカーからの紡績を受けること,②E工場分としてG株式会社の2/56Cを月間20トン加工し,余力があれば他のメーカーの糸を加工することを打診した。原告代表者は,既にJ株式会社のボンネル30トン,I株式会社のベスロン20トンを受託していたため,その返事を留保していたが,同月29日になって,被告Aとの間で,C工場分としてG株式会社発注にかかる2/32綛30トンを納期6月末日の約定で加工委託するとの合意をし,同年6月17日には,E工場分として2/56C20トンを納期同年7月末日の約定で加工委託するとの合意をした。 ところが,原告は,上記2/32綛の加工完了を同年9月15日まで遅延し,上記2/56Cの完了につ 7日には,E工場分として2/56C20トンを納期同年7月末日の約定で加工委託するとの合意をした。 ところが,原告は,上記2/32綛の加工完了を同年9月15日まで遅延し,上記2/56Cの完了については同月末日まで遅延した。 G株式会社及び被告Aは上記納期遅れについて困惑し,G株式会社からの催促を受けた被告Bはしばしば原告に連絡したが,原告代表者は,いつごろどれくらい完了するかについての明確な返答をしなかった。そこで,G株式会社のLは,同年7月23日,名古屋に出向いて原告代表者に面談し,遅延している分の催促と今後の見通しをはっきりさせて欲しいと要請し,さらに,このままではG株式会社としても発注予定を根本的に考え直さなければならない旨を通告したが,原告代表者は具体的な見通しについて回答しなかった。 同年8月26日になり,被告Bは,G株式会社紡績生産室のVから,E工場9月分の原料投入を以て原告向け発注を打ち切るとの通告を受け,その旨原告に連絡した。 そして,G株式会社の原告向け発注は,同年9月1日発注分を以て打ち切られた。原告代表者は,その後の同年9月9日にLに電話して発注打切りの理由を質問したが,その際,本件原綿問題による損失補償については言及せず,また,そのころ,被告Aに対しても,本件原綿問題による損失補償について要求したり,問題にすることはなかった。 なお,被告Aは,上記納期遅れのため,その後に原告向け発注を予定していた同年7月ないし9月までに加工すべき2/32綛については別の業者に加工委託することとなった。 (7) 原告は,被告Aを通じて,H株式会社のキャゼット48という銘柄の糸を10年来紡績していたが,その間一度もH株式会社からクレームを受けるようなことはなかったが,平成9年6月に,初めて同年5月納入分の糸の重量不足を指摘され て,H株式会社のキャゼット48という銘柄の糸を10年来紡績していたが,その間一度もH株式会社からクレームを受けるようなことはなかったが,平成9年6月に,初めて同年5月納入分の糸の重量不足を指摘された。その原因は,従来,加工賃原告負担,原料代被告負担で2パーセント程度入れ目(糸を多めに巻くこと)をしていたところ,担当者が被告Bに交代してから入れ目をしなくなったことに起因するものであった(なお,この点に関し,被告Aは,上記担当者の交代前から重量不足のクレームがあったと主張し,被告Bの供述には,平成8年秋にも重量不足があったとH株式会社の担当者から聞いたとする部分があるが,同被告は,その時点での解決方法等につきH株式会社の担当者や前任者Sに直接確認したわけではなく,また,同人からの引継の際に,重量不足のクレームがあったということは聞いていないとも供述しているのであるから,同被告の前記供述部分は採用できず,他に被告Aの上記主張を認めるに足りる証拠はない。)。 このクレームの件に関し,原告代表者は,H株式会社の部長Wから,従来どおり入れ目をしてくれれば今後も取引を続けたいと言われたが,原告代表者は,被告Aには従来のように原料代を負担する意思がないと受けとめており,そうすると,原告が入れ目の負担の全額を被ることになると予測して,これを受け入れなかった。 その後の同年12月2日,被告Aは,H株式会社から,重量不足及び2本撚糸の中に4本撚糸が混入しているとのクレームと,あわせて原告への発注を打ち切るとの通告を受けたので,これを原告に伝えたところ,原告代表者は,東京のH株式会社本社に同行して説明したいと申し出たが,それ以上に対応策を申し出ることはなかった。そこで,被告Bは,原告代表者に対し,もう仕事を確保することはできないので,おやめになったらどう は,東京のH株式会社本社に同行して説明したいと申し出たが,それ以上に対応策を申し出ることはなかった。そこで,被告Bは,原告代表者に対し,もう仕事を確保することはできないので,おやめになったらどうかと告げた。これに対し,原告代表者は,なんとかH株式会社だけでもつないで欲しいと要請した。被告Bは,これを受けて,H株式会社からの上記通告前の時点で,平成10年1月から同年3月にかけて原告に発注する予定であったキャゼット48の加工委託分につき,H株式会社に了解を取り付けたうえ,改めて原告に発注した。なお,被告Aリビング部第2課のTらが担当するJ株式会社及びI株式会社からの原告向け発注は,そのころ既に確保されていなかった。 その後の平成10年1月,被告Aは,H株式会社から重量不足のクレーム代として97万円の請求を受け,同年2月にその旨を原告代表者に伝えたが,原告はそれを負担するとの姿勢を示さなかったので,原告に対してそれ以上強く請求することを控えた。 (8) 原告は,被告Bの上記発言を一方的取引停止と受けとめ,被告Aに対し,平成10年4月28日到達の書面で抗議するとともに取引の継続を申し出たところ,被告Aは,同年5月21日付け書面により,一方的取引停止ではなく,メーカーからの発注打切りによるものであると反論するとともに本件契約を解約する旨の意思表示をした。そして,同年6月,原告から被告Aに上記H株式会社の最後のキャゼット48の加工委託製品の引渡しがなされ,その後両者の取引は途絶えた。 なお,この時点において,原告が設備投資に利用したリース契約はすべてリース期間が満了しており,また,その支払は一社を除いて完了していた。 (9) 被告Aは,本件契約の解約の意思表示をした上記書面及び同年8月10日付け書面において,本件原綿問題による損失について,補償 ース期間が満了しており,また,その支払は一社を除いて完了していた。 (9) 被告Aは,本件契約の解約の意思表示をした上記書面及び同年8月10日付け書面において,本件原綿問題による損失について,補償の合意がなされたことは否定しつつも協議する用意があるとの意向を示していたが,平成11年2月2日差出しの書面において,同被告に本件原綿問題の責任はないこと,また,G株式会社の加工賃上乗せ(1か月分)及び歩留まり補償金の免除として80万円を既に支払っていること並びにその後の歩留まり補償金及び上記H株式会社からの重量不足のクレーム代の合計330万円についてその請求を猶予してきたことを理由に協議の意思を撤回した。 3 前記争いのない事実と上記認定事実を前提に判断する。 (1) 被告Aの解約権の行使についてア本件契約は,被告Aに対し原告への一定数量の発注を義務づけるものとは認められず,また,契約期間の定めがなく,3か月前の予告により解約できる旨の条項を含んでいる。 しかしながら,本件契約は,被告Aが原告工場の100パーセント操業を確保できるよう努力するので,同被告発注の仕事に専念するようにと強く要請し,原告がその要請を受けて締結されたものであり,しかも,原告は,それまで取引のあった商社等との取引を漸次打ち切り,その後20年近くもの間,被告Aから発注される紡績加工に専念して原告の生産量のほとんどを被告Aの発注に依存してきたものであり,被告Aの他の協力加工先であるQ,R等に比してはるかに専属性が高く,同被告は,このような事情を十分に知っていたものと認められる。また,本件契約の期間については,当初は3年間とされていたが,昭和61年に期間の定めのないものに変更されたが,このころになって,原告及び被告Aとも,本件契約が相当長期間継続するとの認識を有していた た,本件契約の期間については,当初は3年間とされていたが,昭和61年に期間の定めのないものに変更されたが,このころになって,原告及び被告Aとも,本件契約が相当長期間継続するとの認識を有していたことが窺われるのである。 かかる事情からすると,本件契約の継続性に対する原告の信頼は保護されるべきものであり,公平の原則ないし信義誠実の原則により,被告Aの解約権の行使はそれ相当の制限を受けるものと考えられるから,やむを得ない特段の事情がない限り,相当の予告期間を与えるか相当の補償がなされないままの解約権の行使は許されないというべきである。 そこで,まず,被告Aの解約権の行使にやむを得ない事由があったか否かについて検討する。 イ G株式会社の発注打切りについて前記認定のとおり,原告は,被告Aから受注したG株式会社発注にかかる糸の加工委託について,C工場分については2か月半遅延し,E工場分については2か月遅延して,G株式会社や同被告を困惑させた。この間,被告Aが番手変更等を指示したこと及び2/56Cを打ち切って2/28Cに仕掛かるよう指示したことは当事者間に争いがないところ,これらの事情がある程度上記各遅延に影響した可能性は否定できないとしても,むしろ,原告代表者が,その尋問において,ボンネル,ベスロンも並行して受注していることは被告Bは担当者として知っているはずであるのに,G株式会社において本当に要る分だけ優先して加工するとの打合せがなかったから,加工依頼書に書かれている納期については切実感を感じなかったとする趣旨の供述をしていることから明らかなように,原告代表者には受注時点から納期を遵守する意思が希薄であったことが最大の理由であると認められる。しかも,原告代表者は,被告BやG株式会社のLからの問い合わせに対して明確な返答をしなかったばか ように,原告代表者には受注時点から納期を遵守する意思が希薄であったことが最大の理由であると認められる。しかも,原告代表者は,被告BやG株式会社のLからの問い合わせに対して明確な返答をしなかったばかりか,このままではG株式会社としても発注予定を根本的に考え直さなければならないとの警告にも適切な対応をしなかった。そうした経過により,原告代表者の上記のような対応がG株式会社の原告に対する発注打切りを招き,その結果,被告AがG株式会社からの原告向け発注を確保できなくなったものと認められるから,G株式会社の発注打切りについて被告Aの責めに帰すべき事由は見いだせない。 ウ H株式会社の発注打切りについて前記認定のとおり,H株式会社から発注打切りが通告されたのは,原告の加工品の重量不足が原因であり,重量管理は,本来,原告の責任に属するものである。もっとも,従前は,加工賃原告負担,原料代被告負担で2パーセント程度入れ目をすることにより,原告が重量管理を励行しないですんでいたことがあり,また,H株式会社も入れ目がなされるならば,原告への発注を継続したいとの意向を持っていたことは認められるが,他方で,被告Aが従前どおり原料代を負担して入れ目に協力する義務があることを認めるに足りる証拠はなく,しかも,国内紡績業をめぐる経済情勢において,同被告がこのような特別の計らいを今後はしないと判断したことを非難することはできない。そうすると,原告が重量管理を励行しないで重量不足の加工品を生じさせたことにより,H株式会社が原告に対する発注を打ち切ることとなり,その結果,被告AがH株式会社からの原告向け発注を確保できなくなったものというべきであるから,H株式会社の発注打切りについも被告Aの責めに帰すべき事由はない。 エ G株式会社及びH株式会社以外のメーカーからの受注 がH株式会社からの原告向け発注を確保できなくなったものというべきであるから,H株式会社の発注打切りについも被告Aの責めに帰すべき事由はない。 エ G株式会社及びH株式会社以外のメーカーからの受注原告は,G株式会社及びH株式会社以外のメーカーからの受注も可能であったのに被告Aはそのための努力を怠ったと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。かえって,前記認定のとおり,国内梳毛紡績業の衰退に伴う紡績業者間の競争の激化の中で,被告Aリビング部第2課のTらが担当するJ株式会社及びI株式会社からの原告向け発注も既に確保できなかったことが認められるし,被告Aが原告への発注を妨害したことを認めるに足りる証拠はない。 オ以上からすると,被告Aが本件契約を解約したのは,メーカーからの原告向け発注を確保することができなくなったことに起因するもので,やむを得ない事由に基づくものであると認められるから,その余の点を判断するまでもなく,本件契約の解約を理由とする損害賠償請求は理由がない。 (2) 本件原綿問題に基づく損害賠償請求についてア原告は,被告Aが事前に電話によって明示した構成とは異なる原綿を供給した債務不履行(不完全履行)が原因で本件原綿問題が生じ,損害を被った旨を主張するが,同主張を認められないことは前記認定のとおりである。もっとも,同被告が原告に対し,加工依頼書に記載された原綿構成とは異なる構成の原綿を投入したことは前示のとおりであるが,この点をとらえて同被告に不完全履行があったと言うこともできない。なぜなら,原告は,本件原綿の加工依頼については,それが結果として当初予定を53日間も超過する作業を要する程度に困難な作業を内容としていたとしても,本件原綿構成では加工困難であることを認識しつつこれを承諾したことを自認しており,いわば本件原綿の投 れが結果として当初予定を53日間も超過する作業を要する程度に困難な作業を内容としていたとしても,本件原綿構成では加工困難であることを認識しつつこれを承諾したことを自認しており,いわば本件原綿の投入を履行として認容しているとも言うことができるからである。 したがって,原告の被告Aに対する本件原綿問題(債務不履行)を理由とする損害賠償請求は,いずれにしても理由がない。 イ次に,原告の主張する補償約束について検討する。確かに,被告Aには,加工賃仕事の原告に対して困難な仕事を頼んで損失を被らせたという認識があることは窺われるし,前記認定のとおり,原告代表者が1200万円くらいの損失が生じたので,その半分の600万円は負担して欲しいと要求したのに対し,被告Bは原告の損失をできるだけカバーしたいと考え,G株式会社と交渉し,トレロンの加工賃を1キロあたり10円増しにして月に30トンの委託をすることにより月々30万円ずつ返していくこと,G株式会社はマイヤー糸の需要があれば原告に発注するとの内諾を取り付け,同月29日,その旨を原告に対してファックスで通知したこと,被告Aは,本件契約の解約の意思表示をした前記書面及び平成10年8月10日付け書面において,本件原綿問題による損失補償の合意がなされたことは否定しつつ,補償問題を協議する用意があるとの意向を示していたことが認められる。しかしながら,他方で,被告BはG株式会社と交渉してG株式会社の負担で原告の損失をカバーしたいと考えていたものと窺えることや,「総額いくら返せるのかはまた相談させてください。」と明記していることからすると,被告Bの上記通知が法的義務にまで高められていたとまで解することはできず,他に損失補償の合意が成立したことを認めるに足りる証拠はない。 ウ以上からすると,被告Aの本件原綿問 していることからすると,被告Bの上記通知が法的義務にまで高められていたとまで解することはできず,他に損失補償の合意が成立したことを認めるに足りる証拠はない。 ウ以上からすると,被告Aの本件原綿問題による債務不履行責任ないし補償約束を理由とする損害賠償請求は理由がない。 (3) 被告Bの不法行為責任被告Bは,原告に対する与信枠を申請し,直接メーカーと交渉するなど,事実上原告の受注に影響を及ぼしうる立場にあったことは認められるが,同被告がメーカーからの原告向け発注確保のための努力を放棄したとか,原告の受注を妨害したとの事実,あるいは,クレームの際にH株式会社及びG株式会社への対応を誤ったとの事実,また,被告Bが積極的に原告を廃業に追いやったとの事実は,いずれもこれを認めるに足りる証拠はない。 また,原告は,被告Bが平成10年2月ころ,被告Aの大阪審査部に対して原告が同年3月に廃業するのでそれ以降は段ボールを売らないように告げたと主張し,原告代表者は,その尋問において,これに沿うかのごとき供述をするが,具体的な根拠を示さない推測であって採用できず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 以上からして,被告Bの不法行為を理由とする損害賠償請求は理由がない。 4 結論以上のとおりであって,本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第8部裁判長裁判官野田弘明裁判官日下部克通裁判官秋武郁代
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