平成13(行ウ)11 財産管理を怠る事実の違法確認等請求

裁判年月日・裁判所
平成15年2月4日 神戸地方裁判所
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判決文本文20,118 文字)

判決平成15年2月4日神戸地方裁判所平成13年(行ウ)第11号財産管理を怠る事実の違法確認等請求事件 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告龍野市長甲が,別紙物件目録記載1の土地上に設置された別紙工作物目録記載1及び同2の各工作物について,被告乙に収去の請求をすることを怠ることは違法であることを確認する。 2 被告乙は,龍野市に対し,別紙物件目録記載1の土地上に設置された別紙工作物目録記載(1)及び(2)の各工作物を収去せよ。 第2 事案の概要本件は,龍野市の住民である原告らが,被告龍野市長甲(以下,「被告龍野市長」という。)が,龍野市道(以下,「市道」という。)の道路管理者である龍野市の執行機関として,道路管理権を行使して,市道を一般交通の用に供するために,良好な状態に維持管理すべき義務があるところ,市道であり,龍野市がその敷地を所有する別紙物件目録1記載の土地(以下,「本件(1)土地」という。)上に,被告乙が別紙工作物目録記載1及び2の各工作物(以下,それぞれ「自動販売機」及び「擁壁」といい,両者あわせて「本件工作物」という。)を設置して,本件(1)土地を不法占拠しているにもかかわらず,被告龍野市長が,龍野市所有財産である本件(1)土地の管理を怠り,道路管理権を行使せずに本件工作物を放置しているとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下同じ。)242条の2第1項3号に基づき,被告龍野市長が本件(1)土地の管理を怠っていることが違法であることの確認を求めるとともに,被告乙に対し,同法242条の2第1項4号後段により,龍野市に代 下同じ。)242条の2第1項3号に基づき,被告龍野市長が本件(1)土地の管理を怠っていることが違法であることの確認を求めるとともに,被告乙に対し,同法242条の2第1項4号後段により,龍野市に代位し,本件(1)土地についての同市の所有権に基づき,不法占拠物たる本件工作物の収去をそれぞれ求めた事案である。 1 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,証拠上容易に認定することができる(末尾に証拠を掲記しない事実は当事者に争いがない。)。 (1) 当事者ア原告ら及び被告乙は,龍野市民であり,このうち,原告丙は,龍野市A自治会の会長である。 イ被告龍野市長は,龍野市の財産管理者として,龍野市の所有財産の管理権を有するとともに,同市の道路管理者として,市道の管理権を有している。 (2) 権利関係及び現在の状況ア本件(1)土地は,道路法8条に基づく認定を受けた市道中井1号線(以下,「中井1号線」という。)の一部であり,後記のとおり,龍野市が,訴外丁から寄付を受け,現在同市が所有している。 (甲1ないし3)イ別紙物件目録記載2の土地(以下,「本件(2)土地」という。)は,かつて,戊がその所有権を有していたが,昭和61年12月1日に,同人が死亡して,同人の子である被告乙が同土地の所有権を相続により取得し,現在に至るまでこれを所有している。 (甲5,6)ウ本件(1)土地と本件(2)土地は隣接している(但し,その境界線につ (甲5,6)ウ本件(1)土地と本件(2)土地は隣接している(但し,その境界線については,争いがある。以下,本件(1)土地と本件(2)土地との境界線を,「本件境界線」といい,両土地をあわせて「本件各土地」という。)。 エ本件(1)土地は,昭和8年度以降,平成9年度まで,公有地等を対象とする非課税措置が取られたことはなかった。 (弁論の全趣旨)(3) 事実経過ア中井1号線認定までの経緯本件(1)土地は,かつて龍野市の前身である揖保郡小宅村が所有していた村道であった。 (甲12,弁論の全趣旨)同土地は,昭和7年に一旦廃道敷となり,同年12月23日,当時の小宅村が,同村中井地区の代表者であった己に無償で交付した。 昭和26年4月1日に,揖保郡小宅村が吸収合併された揖保郡龍野町を含めた5町村が合併して,龍野市となった後,昭和32年に,本件(1)土地を含む道路が,市道中井1号線(以下,「中井1号線」という。)と認定された。 (甲12,丙6,弁論の全趣旨)イ戊による本件(2)土地の建築確認申請戊は,昭和44年10月8日に建築確認申請を行い,同月22日付で建築確認を受け,そのころ,同確認通知書(乙1)の送付を受けた。 戊による本件(2)土地の建築確認申請戊は,昭和44年10月8日に建築確認申請を行い,同月22日付で建築確認を受け,そのころ,同確認通知書(乙1)の送付を受けた。 同確認通知書によれば,中井1号線の幅員は2.8メートルとされている。 (乙1)ウ龍野市と戊との官民境界協定昭和53年10月28日,被告龍野市長と戊との間で,本件(1)土地と本件(2)土地について官民境界協定(乙2)を締結した(以下,「本件境界協定」という。)。 乙2添付の平面図によれば,中井1号線の幅員は,同図面A点とA’点,B点とB’点,同C点とC’点では,それぞれ3.22メートル,3.22メートル,3.15メートルとされている。 ただし,この時点では,丁が本件(1)土地を所有しており,龍野市は同土地の所有権を有していなかった。 (甲2,乙2)エ被告乙による本件工作物の設置とそれに対する原告らによる苦情申出後の被告龍野市長ないし龍野市と原告ら及び被告乙との交渉経過(ア) 被告乙は,平成8年7月ころ,本件工作物を別紙図面C’,D’及びEの各点を結んだ直線で囲まれた部分の土地(以下,「本件係争部分」という。)上に設置したところ,平成8年10月3日,原告庚が,龍野市に対し,被告乙が擁壁を積んで市道上にはみ出していると苦情を申し出た。 (イ) 被告乙は,平成9年10月6日,被告龍野市長に対し本件境界協定 ところ,平成8年10月3日,原告庚が,龍野市に対し,被告乙が擁壁を積んで市道上にはみ出していると苦情を申し出た。 (イ) 被告乙は,平成9年10月6日,被告龍野市長に対し本件境界協定の解除を通知し,そのころ同通知が被告龍野市長に到達した。その後,被告らと,丁は,同年10月25日,本件境界線について,現地立会を行ったが,この際は,互いの主張線の相違を確認しただけであった。 (丙1,弁論の全趣旨)(ウ) 被告乙は,同年11月26日,龍野市に対して,本件境界線及び本件工作物の撤去についての和解案を書面で提案した(以下,「本件和解案」という。)。 その中では,本件境界線を,昭和44年当時の市道幅員2.8メートルと本件境界協定における市道幅員3.15メートルないし3.22メートルの中間となる別紙図面キ,ク,カ,オの各点を直線で結んだ線とすることで境界を確認し,A自治会の賛同を得た後に,被告乙は擁壁を撤去して,同部分を龍野市に道路として提供するというものであった。 (弁論の全趣旨)(エ) 龍野市は,平成10年1月19日,己の相続人である丁から本件(1)土地の寄付を受けた。 (甲2)(オ) 同月26日及び同年3月17日,龍野市は,被告乙に対し,土地境界確認についての書面を送付し,同月25日,本件各土地の実測作業を実施して,上記被 (甲2)(オ) 同月26日及び同年3月17日,龍野市は,被告乙に対し,土地境界確認についての書面を送付し,同月25日,本件各土地の実測作業を実施して,上記被告乙が提出した本件和解案を図面化した。 (乙4,5,弁論の全趣旨)(カ) 平成10年4月26日,A自治会役員会が開催され,当時龍野市建設課長であった辛が本件和解案にA自治会が賛同するよう説得を行ったが,同自治会はこれを拒否した。 (キ) 平成11年1月13日,被告らは,龍野市民会館会議室において,本件に関する全資料の検討とA自治会の説得に向けて話し合うとともに,本件和解案の内容について変更しないことを確認した。 (弁論の全趣旨)(ク) 同年3月15日,龍野市役所市長室において,被告龍野市長が,原告丙に対し,本件和解案に賛同するよう説得したが,原告丙はこれを拒否した。 その後同年5月25日及び同年8月25日に,原告丙と龍野市職員が話し合ったが,原告丙は本件和解案に同意しなかった。 (ケ) 平成12年6月4日,龍野市役所会議室において,龍野市建設課長壬ならびに同市職員辛及び癸が,原告丙及び被告乙と三者協議会を行い,被告乙は,本件和解案を基礎とした「協議書(案)」(丙5)を提出したものの,原告丙がこれに反対したため,壬課長の提案で,同年8月6日ないし同月13日に再度話し合いを持つこととなった。しかし,原告丙がその後翻意したため,2度目の三者協議会は中止となった。 したものの,原告丙がこれに反対したため,壬課長の提案で,同年8月6日ないし同月13日に再度話し合いを持つこととなった。しかし,原告丙がその後翻意したため,2度目の三者協議会は中止となった。 (丙5,弁論の全趣旨)(コ) 同年7月31日,A自治会が龍野市に対し嘆願書を提出し,その後同年11月28日及び同年12月19日に,被告龍野市長と原告丙が協議した。その際,原告丙が,「官民協定をした事実があるではないか。官民協定どおり,乙氏に境界を認めさせてほしい。」と申し入れたのに対し,被告龍野市長は,「何とか円満解決してくれ。」と答えたものの,原告丙が,A自治会の総意で官民協定どおりでないと認められないと述べ,合意には至らなかった。 (甲15,弁論の全趣旨)(サ) 平成13年1月31日,原告庚が龍野市役所を訪れ,龍野市職員が対応した。その際,同職員は,龍野市としては円満解決を望んでおり,原告庚としても元のように通行できる状態になればよいのではないかと尋ねた。 (シ) 平成13年8月3日,被告らは,平成12年6月4日に被告乙が提出した協議書(案)の内容について変更しないことを確認した。 (4) 監査請求原告らは,平成13年2月21日,龍野市監査委員に対し,同月16日付龍野市職員措置請求書(甲13)を提出して,被告龍野市長が道路管理に必要な措置を講じるとともに,被告乙に対して,不法行為に基づく損害賠償請求権を行使するよう求めることを内容とする監査請求をした(以下,「本件監査請求」とい 13)を提出して,被告龍野市長が道路管理に必要な措置を講じるとともに,被告乙に対して,不法行為に基づく損害賠償請求権を行使するよう求めることを内容とする監査請求をした(以下,「本件監査請求」という。)。 しかし,同監査委員は,同年4月12日付「住民監査請求にかかる監査結果について(通知)」と題する書面をもって,原告らに対し,本件監査請求について棄却決定をし,同書面は,同月13日に原告らに到達した。 (甲11,13) 2 本件の争点(1) 法律上の争訟性の有無(争点1)(2) 原告らの住民監査請求の適法性(争点2)(3) 原告らが主張する被告龍野市長の怠る事実が住民訴訟の対象となる「財産の管理」に関する事項であるか否か(争点3)(4) 原告らの被告龍野市長に対する請求に訴えの利益があるか否か(争点4)(5) 被告龍野市長の道路管理の適法性(争点5) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(法律上の争訟性の有無)について(被告乙)そもそも,本件境界線は,別紙図面キ,ク,カ,オの各点を結んだ直線であり,本件係争部分上に存在する本件工作物は,本件(2)土地上に存在している。 そして,被告ら間で協議が行われているのは,本件境界線の位置及び将来に向けて中井1号線の道路区域をどの位置に変更するのが適当であるかについてである。 被告らは,平成9年10月以降,上記事項に関する協議を重ね,本件和解案の内容でほぼ合意に達しているのであり,被告らの間に法律上の争訟はない。土地所有者でない原告らの主張は,むしろ被告ら間 被告らは,平成9年10月以降,上記事項に関する協議を重ね,本件和解案の内容でほぼ合意に達しているのであり,被告らの間に法律上の争訟はない。土地所有者でない原告らの主張は,むしろ被告ら間の協議を妨害するおそれが多大にある。 よって,本件訴えは,法律上の争訟性を欠く不適法な訴えであるから,却下されるべきである。 (2) 争点2(原告らの住民監査請求の適法性)について(原告ら)「怠る事実」に係る請求については,地方自治法242条2項の期間制限はないから,被告乙の主張は理由がない。 (被告乙)本件監査請求は,監査請求期間経過後になされた不適法な請求であるから,本件訴えは,適法な監査請求前置を欠いており,不適法である。 (3) 争点3(原告らが主張する被告龍野市長の怠る事実が住民訴訟の対象となる「財産の管理」に関する事項であるか否か)について(原告ら)本件係争部分は,龍野市が所有しており,地方自治法238条1項1号の「不動産」である。 同部分の面積は,0.447平方メートルであり,その価格は1万0770円である。 したがって,被告乙は,1万0770円の財産的価値のある龍野市が所有する本件係争部分を不法占有しているものであって,龍野市は,同部分の賃料ないし使用料相当額の損害を現実に被っており,さらに,被告龍野市長がこれを放置し続ければ,被告乙が同部分を時効取得するおそれもある。 よって,被告龍野市長が,被告乙の本件係争部分内にある本件工作物についての不法占有を放置していることは,地方自治法242条の2第1項3号の公有財産の管理を怠る事実に該当する。 (被告龍野市長)住民訴訟の対象となる「違 部分内にある本件工作物についての不法占有を放置していることは,地方自治法242条の2第1項3号の公有財産の管理を怠る事実に該当する。 (被告龍野市長)住民訴訟の対象となる「違法な行為又は怠る事実」とは,公有財産の財産的価値を維持保全する財務的管理についての違法な行為又は怠る事実をいう。 そして,本件係争部分が仮に市道に含まれるとしても,原告らが「怠る事実」であると主張しているのは,市道上に存在する本件工作物を撤去しないことであるところ,かかる道路上の障害物の除去行為は,円滑な道路交通の確保を目的とする道路行政行為であり,財務的管理を直接の目的とする財務会計上の行為ということはできない。 したがって,本件訴えは,住民訴訟の対象とならず不適法であり,却下されるべきである。 (4) 争点4(原告らの被告龍野市長に対する請求に訴えの利益があるか否か)について(原告ら)いわゆる3号請求と4号請求を併合して行うことは可能であるとされているから,被告龍野市長に対する請求が訴えの利益を欠くということはできない。 (被告龍野市長)原告らは,被告龍野市長に代位して,怠る事実にかかる相手方である被告乙に対して4号訴訟を提起しているので,被告龍野市長に対する訴えは,訴えの利益を欠く。 (5) 争点5(被告龍野市長の道路管理の適法性)について(原告ら)本件(1)土地は,昭和7年以後小宅村民の道路として公共の用に供され,昭和32年,本件(1)土地を含む道路が,中井1号線と認定された後も,中井地区の住民は本件(1)土地を龍野市の所有地と認識していた。 龍野市と戊が昭和53年に本件境界協定を締結したのは,戊を含めた中井地区の住 を含む道路が,中井1号線と認定された後も,中井地区の住民は本件(1)土地を龍野市の所有地と認識していた。 龍野市と戊が昭和53年に本件境界協定を締結したのは,戊を含めた中井地区の住民が本件(1)土地を龍野市の所有地と認識していたからであり,本件境界線は,本件境界協定で確認された別紙図面A’,B’,C’の各点を直線で結んだ線であり,中井1号線は同道路の北側にある側溝から南に3.22メートルの幅員で存在していたものであるから,本件工作物は,中井1号線上にあり,同道路上における通行が妨害されている。 仮に,本件境界協定当時,龍野市が本件(1)土地の所有権を有していなかったとしても,丁が龍野市に本件(1)土地を寄付した平成10年1月21日の時点で,無効原因は治癒され,本件境界協定は現在も効力を有するものである。 戊が提出した建築確認申請書(乙1)は,同人が建物建築のため龍野市に提出したものであり,本件境界線の確認の証拠にはならない。 被告龍野市長は,中井1号線の道路管理者として,道路を一般交通の用に供するために,道路を良好な状態に維持管理すべき義務がある。 したがって,被告乙は,本件工作物を所有して中井1号線の市民及び車両の通行を妨害しているから,被告龍野市長は道路管理者として被告乙に対し,道路管理権を行使して本件工作物の収去を求めるべきであるにもかかわらず,被告乙に譲歩する姿勢に終始し,本件境界協定における境界線ではなく,本件和解案に従って本件境界線を定めようとするなど,本件工作物の撤去等の管理を怠り,一般交通の妨害状態を放置することによって,上記争点3の原告らの主張で述べたとおり,使用料相当額の損害を与え続けているのであり,違法である。 そして,龍野市 作物の撤去等の管理を怠り,一般交通の妨害状態を放置することによって,上記争点3の原告らの主張で述べたとおり,使用料相当額の損害を与え続けているのであり,違法である。 そして,龍野市は,所有権に基づき,被告乙に対し,本件工作物を撤去することを求める権利を有する。 同被告は,本件係争部分の占有について,所有の意思が客観的に認められないから,同部分を時効取得していない。 (被告龍野市長)昭和44年に戊が建築確認申請を出した際の市道の幅員は2.8メートルであり,擁壁部分は市道上になかった。 平成8年10月3日に原告庚が,被告乙が市道にはみ出してブロックを積んでいると苦情を述べた部分は,約30センチメートルの三角部分に過ぎず,その部分は舗装されていないものの,道路に面する数軒の住民が利用するだけで通行の妨げになるものではなかった。 したがって,本件工作物は,中井1号線上の通行にとって特段の支障をもたらさず,道路敷地としての財産的価値を害していないことから,被告龍野市長は,直ちに本件工作物を撤去するのではなく被告乙と交渉を続けて円満な解決を図ることとし,その結果,被告乙と本件和解案でほぼ合意が成立している。 本件和解案は,中井1号線の一部について,被告乙の所有権を認めることを内容とするものであるが,そもそも龍野市が丁から本件(1)土地の寄付を受けるまでに,同人と戊ないし被告乙との間では境界協定がなされておらず,本件境界線及び本件各土地付近における中井1号線の道路幅は確定していない。そして,本件(1)土地はかつて丁が所有していたのであって,仮に被告乙にその一部の所有権を認めたとしても,本件和解案によれば,同部分について龍野市が道路として使用することを 道路幅は確定していない。そして,本件(1)土地はかつて丁が所有していたのであって,仮に被告乙にその一部の所有権を認めたとしても,本件和解案によれば,同部分について龍野市が道路として使用することを認めており,また,他の市道の道路幅員と何ら矛盾を生じることはない上,同被告が自ら擁壁を撤去することで問題の解決を達成できるのであるから,何ら問題はないといえる。 にもかかわらず,A自治会が本件和解案に賛同しないために,合意が成立していないものである。 また,本件和解案での合意が成立すれば,被告乙は,任意に擁壁を撤去することを約束しているのであるから,龍野市が,同被告に対して,本件工作物の撤去請求訴訟を提起する必要もない。 よって,被告龍野市長の道路管理に何ら違法はない。 本来,龍野市と被告乙が和解することについて,A自治会の了解を得る必要性はないが,実質的には,同自治会内の争いであるため,龍野市としては本件の円満な解決を図るべく同自治会の了解を得るべきと考え,被告龍野市長は,A自治会長である原告丙及び実質的当事者である原告庚に対し,本件和解案による和解の方向で問題を解決したい旨申し入れ,同人らの理解を得ようとしたが,同人らは本件境界協定の内容以外での合意は承諾できないとして反対し,話し合いにも応じないため,被告乙との間での合意は未だ成立していないにすぎない。 (被告乙)本件境界協定は,本件(1)土地が丁所有であったにもかかわらず,当時戊が国有里道であると誤認していたことに基づいて締結されたものであり,その後被告乙が,これに気づき,平成9年10月6日,被告龍野市長に対し同協定解除を通知し,同日同通知が被告龍野市長に到達したことで,同協定は失効したものである。 て締結されたものであり,その後被告乙が,これに気づき,平成9年10月6日,被告龍野市長に対し同協定解除を通知し,同日同通知が被告龍野市長に到達したことで,同協定は失効したものである。 本件境界線は,戊が昭和44年に行った建築確認申請時の図面のとおりであって,現在,本件工作物はいずれも本件(2)土地内にあるから,同土地の所有権を有する被告乙は,本件工作物を撤去する義務を負わない。 また,中井1号線のアスファルト舗装の範囲は,工作物の設置前後で変わっていないから,被告乙は工作物の設置により,同道路の通行等を妨害しておらず,交通問題が被告らの間で現実の協議課題となっていない。 そして,争点1被告乙の主張のとおり,被告乙は,被告龍野市長と道路区域の変更について協議を行い,本件和解案の内容でほぼ合意に達しているにもかかわらず,原告丙らの妨害行為によって合意の成立が妨げられているのであるから,被告乙が本件工作物の撤去を行わないことについても違法性は存しない。 被告乙は,昭和44年11月24日当時,本件係争部分を占有しており,その際,同部分の所有権が自己にあると信じていた。そして,同被告は,昭和54年11月24日経過時においても,同部分を占有していた。 また,被告乙は,昭和53年10月28日当時,本件係争部分を占有しており,平成10年10月28日経過時においても,同部分を占有していた。 被告乙は,龍野市の代表者である被告龍野市長に対し,平成14年9月30日の本件口頭弁論期日において,上記各時効を援用するとの意思表示をした。 第3 争点に対する判断 1 争点1(法律上の争訟性の有無)についてそもそも住民訴訟は,個人の具体的権利利益を離れ,地域住民全体の利益 日において,上記各時効を援用するとの意思表示をした。 第3 争点に対する判断 1 争点1(法律上の争訟性の有無)についてそもそも住民訴訟は,個人の具体的権利利益を離れ,地域住民全体の利益のため,普通地方公共団体の住民に対し,住民としての資格において当該普通地方公共団体の機関又は職員の違法な財務会計行為を予防又は是正するために特に法律によって認められた訴訟類型であり,当事者間の具体的な権利・法律関係に関する紛争である「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)には該当しないが,同項における「その他法律において特に定める」場合に該当し,裁判所が審理・判断を下すことが許容されている。 したがって,法律上の争訟性を欠くが故に本件訴えが不適法であるとする被告乙の主張は理由がない。 なお,被告乙は,同被告と被告龍野市長との間では,本件境界線及び本件工作物の撤去に関する紛争については,もはや本件和解案で合意済みであるから,両被告間にはそもそも紛争自体が存在しておらず,その点で法律上の「争訟」性を欠いていると主張しているとも解される。 しかしながら,原告らが,本件(1)土地上に本件工作物が撤去されずに放置されているとしてその違法性を主張し,被告らは,これに対して,当該不作為に違法性はないと主張して争っているのであるから,原告らと被告らとの間に争いは生じているから,被告乙の主張は失当であり,理由がない。執行機関と怠る事実との相手方との間で,怠る事実に関して合意が成立した場合に,同被告の主張を認めることは,執行機関と相手方との馴れ合いを容認することにつながりかねず,相当ではない。 2 争点2(原告らの住民監査請求の適法性)について地方自治法242条1項は,普通地方公共団体の住民が当該普通地方公共団体の違法,不当な財務 認することにつながりかねず,相当ではない。 2 争点2(原告らの住民監査請求の適法性)について地方自治法242条1項は,普通地方公共団体の住民が当該普通地方公共団体の違法,不当な財務会計上の行為又は怠る事実につき監査請求をすることができると規定しているところ,同条2項は,上記の監査請求の対象事項のうち「行為」については,これがあった日又は終わった日から1年を経過したときは監査請求をすることができないものと規定しているが,上記の対象事項のうち「怠る事実」についてはこのような期間制限は規定されていない。 同規定が,「行為」について「これがあった日又は終わった日」から1年以内に監査請求をすることを義務づけていることからすれば,いまだ当該行為が終了していない継続的行為については,それが存続する限りは監査請求期間を制限しないこととしているものと解される。だとすれば,同項は「怠る事実」についても同様にこれが存続する限りはこれを制限しないこととし,そのために「怠る事実」については監査請求期間を規定しなかったものと解すべきである。 したがって,財産の管理を怠る事実に係る監査請求については,当該監査請求が財務会計上の行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とするものでない場合には,地方自治法242条2項の適用はなく,住民はいつでも監査請求をすることができると解すべきである(最高裁判所昭和53年6月23日判決・判例時報897号54頁参照)。 本件についてこれをみると,原告が「財産の管理を怠る事実」として主張しているのは,本件工作物を撤去しないことであるから,当該監査請求が財務会計上の行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産 が「財産の管理を怠る事実」として主張しているのは,本件工作物を撤去しないことであるから,当該監査請求が財務会計上の行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とするものでない。 したがって,本件においては,地方自治法242条2項の適用はなく,原告はいつでも監査請求をすることができるのであるから,監査請求期間の徒過を理由に本件訴えが不適法であるとの被告乙の主張は理由がない。 3 争点3(原告らが主張する被告龍野市長の怠る事実が住民訴訟の対象となる「財産の管理」に関する事項であるか否か)について本件で,原告らは,本件係争部分の所有権は龍野市が有しており,被告龍野市長が,本件係争部分の管理を違法に怠っていると主張しているところ,地方自治体が所有権を有する土地が地方自治法242条の「財産」に該当することは明らかであり,当該財産の財産的価値が例え僅少なものにとどまる場合であっても,地方自治法242条及び同法242条の2が,住民訴訟の対象となる財産について,その財産的価値の多寡によって取扱いを区々にしておらず,また,僅少なものにとどまるが故に住民訴訟の対象とならないと解すれば,住民訴訟という特別な訴訟形態を認めて当該普通地方公共団体の機関又は職員の違法な財務会計行為を予防又は是正しようとした地方自治法の趣旨を全うすることはできないから,本件係争部分の管理を怠る事実も,住民訴訟の対象となると解すべきである。 被告龍野市長は,道路上の障害物の除去行為は,円滑な道路交通の確保を目的とする道路行政行為であり,財務的管理を直接の目的とする財務会計上の行為ということはできないと主張する。 確かに,本件で原告らがその行使を懈怠していると主張する道路管理権は,道路法71条にそ とする道路行政行為であり,財務的管理を直接の目的とする財務会計上の行為ということはできないと主張する。 確かに,本件で原告らがその行使を懈怠していると主張する道路管理権は,道路法71条にその根拠を置くものであるところ,道路網の整備によって,交通の発達及び公共の福祉の増進を図ろうとした道路法の立法目的からすれば,道路管理権も,第一次的には,当該道路を一般交通の用に供する施設としての道路本来の機能を発揮させるとの道路行政上の行為として行使されるものである。 しかしながら,道路も,その存在する敷地の所有権・使用借権等何らかの権原なくして設置されるものではないから,道路上の不法占拠物等の障害物を防止・除去するとの道路管理権の作用は,当該敷地上を道路として使用・占用する権原を有する地方自治体が,その権原の行使を十全ならしめるために認められる妨害排除請求権の行使としての側面もまた有するということができる。 そして,道路法4条により,道路を構成する敷地等については私権を行使することができないとされていることからすれば,道路管理上の障害物については,地方自治体が,道路管理権者として,道路管理権を行使してこれを除去するなどの方法により対処するものであって,当該地方自治体が道路管理権とは無関係に単に所有権等に基づく妨害排除請求としてその除去を求めることは通常行われないと考えられるから(なお,この点に関し,道路のような公共の用に供せられるべき物については,明示ないし黙示に公用廃止のない限り民法上の取得時効の規定によりその所有権を取得することもできないと解するのが相当であり(最高裁昭和51年12月24日判決・民集30巻11号1104頁各参照),龍野市が本件係争部分の所有権を失うことはありえないことから,損害として観念しうるのは本来徴収すべ きないと解するのが相当であり(最高裁昭和51年12月24日判決・民集30巻11号1104頁各参照),龍野市が本件係争部分の所有権を失うことはありえないことから,損害として観念しうるのは本来徴収すべき道路占用料相当額の損害であるところ,占用料の徴収は道路法39条により,同条但書の例外を除き,道路管理者の権限とされているのであって,このことからも道路管理権とは無関係に私権である所有権に基づく妨害排除請求として不法占拠物の除去等を求めることは考えられないということができる。),道路上の不法占拠物の存在によって地方自治体の財産である当該土地の所有権が侵害され,また同土地の使用料相当額の損害を現実に被っているにもかかわらず,当該物についてこれを除去する等の対処がされないまま放置され,当該敷地の財産的価値が減少するおそれがあるような場合には,当該地方自治体の住民は,道路管理権者である地方自治体の執行機関に対して住民訴訟を提起し,当該不作為が違法であることの確認を求めることができると解すべきであり,道路管理権の行使が道路行政上の側面を有していることは,当該住民訴訟を不適法ならしめるものではなく,単に,当該不作為の適法性を判断するにあたっての一要素となるにすぎないと解すべきである。 したがって,この点に関する被告龍野市長の主張は理由がない。 4 争点4(原告らの被告龍野市長に対する請求に訴えの利益があるか否か)について本件訴えは,被告龍野市長が,龍野市の財産である本件係争部分の管理を違法に行っているとして,被告龍野市長に対して,当該不作為の違法確認を求めるとともに,当該怠る事実の相手方である被告乙に対して,龍野市に代位して,本件工作物の収去を求める訴えが併合提起されているところ,前者は地方自治法242条の2第1項3号に基づく請求( 違法確認を求めるとともに,当該怠る事実の相手方である被告乙に対して,龍野市に代位して,本件工作物の収去を求める訴えが併合提起されているところ,前者は地方自治法242条の2第1項3号に基づく請求(以下,「3号請求」という。)であり,後者は,同項4号に基づく請求(以下,「4号請求」という。)である。 そして,3号請求と4号請求の併合提起の可否については,同項が,両請求の間に優先順位を定めていないことや両請求の当事者,効果の相異等に鑑みると,地方自治体の執行機関等の違法な財務会計行為を是正し,当該地方自治体の有する実体法上の請求権の行使の実効性を確保する手段として,3号請求と4号請求のいずれが有効適切であるかは個々の事案によって異なるというべきであって,事案によっては,怠る事実の相手方を被告とする4号請求によるよりも執行機関を被告とする3号請求による判決の関係行政庁に対する拘束力により,当該地方自治体自身による違法な財務会計行為又は怠る事実の是正の実行を待つ方が,目的を達成するのに適切と考えられる場合もありうるということができる。 だとすれば,3号請求を4号請求との関係において補充的なものと解する根拠はなく,同一の違法な財務会計行為または怠る事実について3号請求と4号請求の双方が成り立つ場合に,いずれの請求によるか,また双方の請求を併合して提起するかは,原告である住民の判断に委ねられているのと解すべきであるから,3号請求と4号請求を併合提起した本件訴えも訴えの利益を欠くということはできず,適法な訴えであるというべきである(最高裁平成13年12月13日第一小法廷判決・民集55巻7号1500頁参照)。 よって,この点に関する被告龍野市長の主張は理由がない。 5 争点5(被告龍野市長の道路管理の適法性)について( 3年12月13日第一小法廷判決・民集55巻7号1500頁参照)。 よって,この点に関する被告龍野市長の主張は理由がない。 5 争点5(被告龍野市長の道路管理の適法性)について(1) 本件境界線の位置及び本件係争部分の所有関係についてア本件係争部分の所有関係については,原告らと被告乙との間で争いがあり,仮に,同部分が本件(2)土地に属し,その所有権が被告乙にあるのであれば,本件工作物も龍野市が所有する土地上に存在しないこととなり,同土地上の本件工作物を放置していたとしても,龍野市の財産の管理を怠っていることにはそもそもあたらないことととなる。 したがって,本件係争部分の管理についての適法性を判断する前提として,本件係争部分の所有関係を認定する必要がある。 イそこで検討するに,前記前提事実(3)ウのとおり,乙2添付の平面図によれば,中井1号線の幅員は,同図面A点とA’点,B点とB’点,同C点とC’点では,それぞれ3.22メートル,3.22メートル,3.15メートルとされていること及び証人辛の証言によれば,別紙図面のA,A’,B,B’,C及びC’の各点は,上記乙2添付の本件境界協定の締結の際に作成された平面図をもとにして,同図面におけるA,A’,B,B’,C及びC’の各点の位置を現況に合わせて測量・確定した上で作成されたものであることが認められることから,本件境界協定において龍野市と戊との間で合意された本件境界線は,現況では別紙図面A’,B’及びC’の各点を結んだ直線であると認められる。 だとすれば,戊が,本件境界協定を締結して,龍野市との間で,本件境界線が別紙図面A’,B’及びC’の各点を結んだ直線であることを確認している以上,特段の事情のない限り,本件境界線は, だとすれば,戊が,本件境界協定を締結して,龍野市との間で,本件境界線が別紙図面A’,B’及びC’の各点を結んだ直線であることを確認している以上,特段の事情のない限り,本件境界線は,別紙図面A’,B’及びC’の各点を結んだ直線で認めるのが相当であり,本件工作物は,本件(1)土地上に存在すると認められる。 ウこの点,被告乙は,戊は本件(1)土地の所有者は龍野市であると誤認していたことに基づいて本件境界協定を締結したのであって,同土地が丁の所有であったことに気づいた同被告が,本件境界協定の解除を龍野市に通知したことによって,同協定は失効したと主張する。 しかし,本件境界協定は,当時本件(1)土地の所有者であった丁ではなく,同土地の占有者にすぎなかった龍野市との間で締結されたものであるが,前記前提事実(3)ア及びエ(エ)のとおり,本件(1)土地は,昭和32年以降,己が死亡してこれを丁が相続し,その後平成10年1月19日に丁が同土地を龍野市に寄付するまでの間,一貫して中井1号線の敷地として使用されてきたものであり,丁が同土地を寄付した際も,龍野市から何らの対価を受けることなく,無償で譲渡していると認められること,また,証人辛によれば,同土地を寄付した際,丁は,市道の底地の中に民地が存在するというのは問題であるので,龍野市に本件(1)土地を譲渡したいと申し出たことが認められ,これらの事実からすれば,丁は,本件境界協定当時,本件(1)土地は,中井1号線の敷地であって単にその名義が自己名義となっているにすぎず,その管理権は,本件(1)土地の範囲を画する権限も含めて,道路管理者である龍野市に委ねられていると認識し,少なくとも黙示に,龍野市に対し,本件境界協定を締結する権限を授与していたと推認するのが相当である 管理権は,本件(1)土地の範囲を画する権限も含めて,道路管理者である龍野市に委ねられていると認識し,少なくとも黙示に,龍野市に対し,本件境界協定を締結する権限を授与していたと推認するのが相当である。 以上からすれば,被告龍野市長は,本件境界線について,戊との間で確認する権限を有していたものであり,本件境界協定の締結によって,その効果は丁にも及び,上記両土地間の私法上の境界も同協定の内容どおり確定されたものであると認めるのが相当である。 よって,本件境界協定が,戊と被告龍野市長との間で締結され,当時の本件(1)土地の所有者であった丁が関与していなかったことによって,同協定の効力が左右されるものではないと認めるのが相当であるから,本件境界協定の失効を理由に,本件係争部分が本件(2)土地に含まれるとする被告乙の主張は理由がない。 エまた,被告乙は,本件係争部分の所有権の時効取得を主張するが,前記3で述べたとおり,道路を含めた公共用財産については,明示または黙示に公用廃止がなされない限り,時効取得することはできないと解されるところ,本件係争部分について,道路としての公用を明示ないし黙示に廃止したとの事実は証拠上認められないから,上記被告乙の主張も理由がない。 (2) 被告龍野市長の道路管理の懈怠についてア前記前提事実(3)エ(ア)ないし(ウ)及び(オ)のとおり,原告庚が被告龍野市長に対して,本件工作物が市道上に存在していると苦情を申し出た平成8年10月3日以降,被告龍野市長は,被告乙との間で,本件工作物の撤去について交渉を行い,その結果,本件境界線を本件境界協定における境界線と同被告が主張する境界線の中間部分とすること,本件工作物については,A自治会長である原告丙が本件境界線を上 で,本件工作物の撤去について交渉を行い,その結果,本件境界線を本件境界協定における境界線と同被告が主張する境界線の中間部分とすること,本件工作物については,A自治会長である原告丙が本件境界線を上記のとおりとすることについて異議を述べることなく合意した場合には,被告乙が任意にこれを撤去することを内容とする本件和解案が被告乙から提案された事実が認められ,証人辛の証言及び弁論の全趣旨によれば,龍野市も,概ね本件和解案の内容で被告乙と合意するとの方針を決めた事実が認められる。 そして,その後,前記前提事実(3)エ(カ)ないし(サ)のとおり,被告龍野市長及び龍野市職員は,平成10年4月ころ以降,原告丙らA自治会長の役員との間で交渉を行い,同市が本件和解案の内容で,本件境界線及び本件工作物の処理について被告乙と和解することについてA自治会が同意するよう求めたものの,原告丙らA自治会役員は,本件境界協定以外の内容による合意には同意しない旨述べて,本件和解案への同意を拒否し続けているため,本件工作物が撤去されないままになっていることが認められ,この間,証人辛の証言によれば,龍野市職員は,A自治会役員との間で,1か月に1回程度電話ないし直接面談して交渉を行い,本件和解案に対して同意するよう求めてきた事実が認められる。 イそして,本件和解案は,本件境界線の位置について,本件境界協定より東側に存在することで合意することを内容としており,それまで龍野市が,その所有財産であると主張していた部分の一部について被告乙にその所有権を認めることで同被告に譲歩した内容となっているところ,原告らは,被告龍野市長は,本件境界協定の内容に従って,被告乙との間で交渉すべきであり,被告乙に対して譲歩した本件和解案の内容で同被告と和解すべきではないと主張 被告に譲歩した内容となっているところ,原告らは,被告龍野市長は,本件境界協定の内容に従って,被告乙との間で交渉すべきであり,被告乙に対して譲歩した本件和解案の内容で同被告と和解すべきではないと主張する。 しかしながら,乙2によれば,本件境界協定は,戊と被告龍野市長との間で締結されたものであり,本件(1)土地の所有者である丁は当事者として同協定の締結に加わっていないこと,証人辛の証言によれば,龍野市が丁から本件(1)土地の所有権の寄付を受けた際にも,同土地の範囲が明確ではなく,中井1号線の南側に一部存在する側溝の所有権関係も明確ではなかったことがそれぞれ認められ,上記事実によれば,本件(1)土地の所有者である丁が本件境界協定の当事者となっていなかった以上,本件境界協定の効力が同人には及ばないと解されるおそれがないとはいえず,その他に同土地の範囲を明らかにする証拠が存在しないことからすれば,かかる状況の下で,被告龍野市長が,本件境界線及び本件工作物に関して被告乙と交渉するにあたり,同協定の内容に従って,本件境界線を,別紙図面A’,B’及びC’の各点を結ぶ直線とすることで合意する以外に一切の譲歩をすることも許されず,譲歩した場合には当該合意の締結は違法となると解することは,本件境界線に関する上記事情及び証拠関係を無視し,無理を強いるものであるといわざるをえない。 そして,乙2によれば,中井1号線の北側に沿って存在する側溝の幅が0.51メートルであることが認められるところ,丙2ないし4によれば,中井1号線の南側部分(被告乙所有地上に設置された塀と接する部分)には未舗装部分が存在し,その幅は,上記側溝の幅とほぼ同じかやや広いと認めることができる。 だとすれば,本件和解案のとおり,本件境界協定による境界 乙所有地上に設置された塀と接する部分)には未舗装部分が存在し,その幅は,上記側溝の幅とほぼ同じかやや広いと認めることができる。 だとすれば,本件和解案のとおり,本件境界協定による境界線と被告乙が主張する境界線の中間で本件境界線を定めることとして,被告龍野市長が,被告乙に対し,本件境界線の位置について前者の境界線よりも30センチメートルほど北側に引くとの譲歩をしたとしても,その譲歩した部分の土地は,前記認定のとおり,未舗装部分の土地に限られると認められるから,舗装部分を龍野市の所有地上にある市道として使用してきた現状を維持することができるということができる。 加えて,前記前提事実(3)エ(ウ)のとおり,本件和解案では,被告乙は,上記譲歩した部分の土地を龍野市が道路として無償で使用することに同意するとしていることが認められ,前記3で述べたとおり,道路を構成する敷地等については私権を行使することができないとされていることからすれば,結局,本件和解案の内容に従って被告乙と合意することによって,本件境界協定の内容に従った形で本件係争部分を含めた土地全体を道路として使用することができ,当該部分について被告乙は私権を行使することはできないのであるから,本件境界協定と本件和解案とのいずれの内容に従って合意するかで,得ることができる実質的な財産的価値はほぼ等価とみることもできる。 したがって,以上のような本件境界線に関する事情及び証拠関係ならびに本件和解案の内容に従って合意することによる龍野市の財産への影響を総合すれば,被告龍野市長が,本件和解案の内容に従って,被告乙と合意しようとしていることが,被告龍野市長がその裁量権を逸脱し,違法に龍野市の財産の減少をもたらすものであると認めることはできない。 ば,被告龍野市長が,本件和解案の内容に従って,被告乙と合意しようとしていることが,被告龍野市長がその裁量権を逸脱し,違法に龍野市の財産の減少をもたらすものであると認めることはできない。 ウまた,前記アで認定したとおり,被告龍野市長は,平成10年4月ころ以降A自治会役員に対して,同被告が,本件和解案の内容に従って,被告乙と合意することについて同意するよう求めてきたものの,前記前提事実(4)のとおり,平成13年2月21日に,原告らが本件に関して監査請求をするまでの約3年間にわたり,A自治会役員の同意を得ることができないまま本件工作物が放置されていることが認められる。 しかしながら,証人辛の証言及び弁論の全趣旨によれば,本件境界協定による本件境界線によっても,本件工作物によって占拠されている本件(1)土地の部分の面積は,0.447平方メートルとわずかであり,中井1号線の通行にとって特段支障となるものではないこと,原告ら以外に本件工作物について周辺住民から苦情が申し立てられることはなかったことが認められる。 これに対して,本件和解案の内容で被告乙と和解契約を締結すれば,本件工作物については被告乙が任意にこれを撤去することになるのであり,行政代執行等の強制措置を講じる必要性がなくなる。 以上のような事情からすれば,本件工作物を放置しても特段の支障がない以上,強制的な手段をもって本件工作物の撤去を行うよりは,被告乙との間で本件和解案の内容に従って和解を締結し,同被告が任意に本件工作物を撤去するという手段による本件の解決を選択した被告龍野市長の判断が裁量権を逸脱し,違法なものであるということもできない。 エ以上のとおり,被告龍野市長が,本件工作物を強制的な手段等で撤去するという う手段による本件の解決を選択した被告龍野市長の判断が裁量権を逸脱し,違法なものであるということもできない。 エ以上のとおり,被告龍野市長が,本件工作物を強制的な手段等で撤去するという手段をとらず,本件和解案の内容で被告乙と和解し,同被告が任意に本件工作物を撤去するとの手段を選択したこと,和解を締結することについてA自治会の同意を求めて交渉を続けてきたことは,被告ら間の馴れ合いと認められないのはもちろん,その裁量権を逸脱した違法なものであるということはできず,その結果として本件工作物が撤去されないままとなっていることについても,違法に財産の管理を怠っているということはできない。 (3) 被告乙に対する請求について地方自治法242条の2第1項によれば,同項4号に規定されている普通地方公共団体に代位して行う怠る事実の相手方に対する原状回復の請求ないし妨害排除請求は,監査請求に係る違法な行為又は怠る事実について訴えをもってすることができると規定されており,代位請求が認容されるためには,当該怠る事実が違法であることが必要であることは明らかである。 そして,前記認定説示したとおり,本件において,被告龍野市長が,本件工作物を撤去しないことが裁量権を逸脱した違法なものであると認めることはできないから,被告乙に対する請求はその前提を欠き,理由がない。 6 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第5民事部裁判長裁判官前坂光雄 条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第5民事部裁判長裁判官前坂光雄 裁判官寺本明広 裁判官窪田俊秀工作物目録 1 清涼飲料水自動販売機(別紙図面赤斜線部分)正面幅  100センチメートル奥行幅  63センチメートル高さ 180センチメートル 2 二段積コンクリートブロック擁壁(別紙図面緑斜線部分)長さ  300センチメートル奥行幅  15センチメートル高さ  40センチメートル ンチメートル奥行幅  15センチメートル高さ  40センチメートル

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