主文 1 被告本町化学及び被告大阪ガスケミカルは、原告に対し、連帯して、1億8271万7331円及びうち1億7925万6484円に対する平成27年5月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告本町化学及び被告水ingは、原告に対し、連帯して、2億2144万4 742円及びうち2億1688万0481円に対する平成28年6月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 4 本判決は、上記1、2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求主文1、2項同旨。 第2 事案の概要本件は、地方公共団体である原告が、原告が県内の関城浄水場で使用する活性炭の再生業務について実施した平成26年度及び平成27年度の2回の一般競 争入札において、被告らを含む16の事業者が、事前に再生業務の供給予定者及び入札価格を調整する談合行為をし、原告は、かかる談合行為がなければ形成されたであろう落札価格と、現実の落札価格との差額分につき損害を被ったなどと主張して、①被告本町化学及び被告大阪ガスケミカルに対し、共同不法行為に基づき、平成26年度の入札に関する損害金合計1億8271万7331円(損害 金元本1億6295万6484円、弁護士費用1630万円、確定遅延損害金346万0847円)及びうち損害金元本と弁護士費用の合計1億7925万6484円に対する不法行為の日より後の日である平成27年5月25日から支払済みまで民法(平成29年度法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、②被告本町化学及び被告水i ngに対し、共同不法行為に基づき、平成27年度の入札に関する損害金 年度法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、②被告本町化学及び被告水i ngに対し、共同不法行為に基づき、平成27年度の入札に関する損害金合計2 億2144万4742円(損害金元本1億9716万0481円、弁護士費用1972万円、確定遅延損害金456万4261円)及びうち損害金元本と弁護士費用の合計2億1688万0481円に対する不法行為の日より後の日である平成28年6月24日から支払済みまで上記同旨の遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提事実次の事実は、括弧内に掲げた証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実のほか、当事者間に争いがない。 (1) 当事者等ア原告は、地方自治法1条の3第1項及び第2項の定める普通地方公共団体 であり、茨城県公営企業の設置等に関する条例1条1項1号に基づき、地方公営企業として、地方公営企業法2条1項1号の定める水道事業を設置し、経営している。なお、水道事業を含む原告の公営事業の管理者は企業局長であり(同条例3条2項)、企業局長は、当該業務の執行に関し原告を代表する(同法8条1項)。 原告は、水道事業用施設として、関城浄水場(以下「本件浄水場」という。)を含む10の浄水場を所有している。 イ被告本町化学は、医薬品、医薬部外品、工業薬品の製造、販売等を目的とする株式会社である。 ウ被告大阪ガスケミカルは、活性炭及び関連製品並びに吸着剤等の製造及び 販売を目的とする株式会社である。被告大阪ガスケミカルは、平成27年4月1日、日本エンバイロケミカルズ株式会社を吸収合併し、その権利義務を承継した(以下「被告大阪ガスケミカル」には吸収合併前の日本エンバイロケミカルズ株式会社も含むものとする。)。 は、平成27年4月1日、日本エンバイロケミカルズ株式会社を吸収合併し、その権利義務を承継した(以下「被告大阪ガスケミカル」には吸収合併前の日本エンバイロケミカルズ株式会社も含むものとする。)。 エ被告水ingは、環境衛生施設、公害防止プラント、発電施設及びこれら の施設の維持並びに管理業務等を目的とする株式会社である。 (2) 原告による浄水場用活性炭の調達原告は、次のとおり、一般競争入札の方法により業者を決定した上で、年度ごとに粉末活性炭の購入単価契約や粒状活性炭再生業務の委託単価契約を締結し、これに基づき、原告が所有する浄水場で使用する活性炭を随時調達していた。 ア原告は、毎年2月、ホームページ上に、入札参加資格や委託する業務内容等(活性炭の仕様、契約期間中の予定数量等)に関する入札公告を行い、その掲載後速やかに入札説明書を配布する。その後、業者から入札参加資格等の確認申請、原告による入札参加資格等の確認決定を行い、3月中に入札参加資格者による入札を行って、落札者を決定する。かかる入札において、参 加者は、粉末活性炭の購入については1kg当たりの単価、粒状活性炭の再生業務については1池当たりの単価を入札価格として提示して入札に参加する。 イ入札にかかる調達期間(入札後に締結する単価契約の期間)は、原則として、粉末活性炭の購入は毎年4月1日から翌年3月31日まで、粒状活性炭 の再生業務は4月1日から翌年5月31日までである。 ウ原告は、入札により、粉末活性炭の購入単価(1kg当たり)、粒状活性炭再生業務の委託単価(1池当たり)を決定し、その単価に基づき、落札業者との間で、購入単価契約又は再生業務委託単価契約を締結する。 エ原告は、上記各単価契約に基づき、粉末活性炭の納品量や粒状 活性炭再生業務の委託単価(1池当たり)を決定し、その単価に基づき、落札業者との間で、購入単価契約又は再生業務委託単価契約を締結する。 エ原告は、上記各単価契約に基づき、粉末活性炭の納品量や粒状活性炭の再 生業務量に応じた代金を、落札業者に対して支払う。 (3) 窓口業者浄水場向けの活性炭の納入や再生等を行う業者(メーカー)は、これらの業務に関して地方公共団体等が実施する入札に、自ら参加するほか、各地方公共団体等の有資格者名簿に登録のある他の業者を自社の代理店として入札に参 加させている(以下、メーカーが自社の代理店として入札に参加させる業者を 「窓口業者」という。)。 (4) 平成26年度及び平成27年度の本件浄水場に関する入札ア原告は、平成26年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成26年3月25日、一般競争入札(以下、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の一般競争入札を指すものとして、入札対象年度ごとに「平成2 6年度入札」などという。)を実施した。平成26年度入札は、被告大阪ガスケミカルの窓口業者であるサンアグロ株式会社(以下「サンアグロ」という。)が、1池当たり685万円の単価で落札し、原告は、サンアグロとの間で、同年4月1日、1池当たりの単価を739万8000円(うち54万8000円は消費税及び地方消費税)、契約期間を同日から平成27年5月31日 までとする、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の業務委託単価契約(以下「平成26年度契約」という。)を締結した(甲4、甲5、甲8、甲10の1)。 イ原告は、平成27年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成27年3月16日、一般競争入札(平成27年度入札)(以下、平成26 年度入札と平成27年度入 8、甲10の1)。 イ原告は、平成27年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成27年3月16日、一般競争入札(平成27年度入札)(以下、平成26 年度入札と平成27年度入札を併せて「本件各入札」という。)を実施した。 平成27年度入札は、被告水ingの窓口業者である株式会社マルシェ薬品(以下「マルシェ薬品」という。)が、1池当たり708万円の単価で落札し、原告は、マルシェ薬品との間で、同年4月1日、1池当たりの単価を764万6400円(うち56万6400円)、契約期間を同日から平成28年5 月31日までとする、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の業務委託単価契約(以下「平成27年度契約」という。)を締結した(甲6、甲7、甲9、甲10の2)。 (5) 原告による委託料の支払原告は、サンアグロに対し、平成26年度契約に基づき、別紙業務委託費の 支払一覧「H26(2014)年度」中「支払日」欄記載の日に、同「支払額 (円)」欄記載の額の業務委託費を支払い、マルシェ薬品に対し、同別紙「H27(2015)年度」中「支払日」欄記載の日に、同「支払額(円)」欄記載の額の業務委託費を支払った(甲11、甲12)。 (6) 課徴金納付命令等ア公正取引委員会は、平成29年2月21日、別紙業者一覧中番号1、2、 4、5、7、8、9、10、12、13、14、15、16の業者に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)47条1項4号に基づき、立入検査を行った。 イ公正取引委員会は、令和元年11月22日、被告らは、他の事業者と共同して、本件浄水場を含む東日本に所在する126の浄水場に供給する活性炭 について、供給予定者(自社の活性炭を供給すべき者)を決定し 取引委員会は、令和元年11月22日、被告らは、他の事業者と共同して、本件浄水場を含む東日本に所在する126の浄水場に供給する活性炭 について、供給予定者(自社の活性炭を供給すべき者)を決定し、供給予定者が被告本町化学を通じて活性炭を供給できるようにしており、独占禁止法2条6項の規定する不当な取引制限に該当し、同法3条の規定に違反するなどとして、被告本町化学に対して課徴金1億6143万円、被告大阪ガスケミカルに対して課徴金2608万円、被告水ingに対して課徴金2213 万円の納付を命じた。なお、被告大阪ガスケミカル及び被告水ingは、公正取引委員会の調査開始日以降に、同委員会に違反行為の内容を報告し、資料を提供したため、課徴金が30パーセント減額された(独占禁止法(令和元年法律第45号による改正前のもの。)7条の2第12項)(甲1から甲3)。 ウ公正取引委員会は、上記同日、別紙業者一覧中番号1、2、4、5、7、 8、9、10、12、13、14、15の業者に対し、取締役会等において、今後他の事業者と共同して浄水場向けの活性炭について供給予定者を決定せず自主的に供給することを決議することなどを命じる排除措置命令をした(甲1から甲3)。 エ被告本町化学は、公正取引委員会の上記各命令を不服として、東京地方裁 判所に対し、上記各命令の取消しを求める訴えを提起した。 (7) 平成28年度以降の本件浄水場に関する入札ア原告は、平成28年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成28年3月15日、一般競争入札(平成28年度入札)を実施し、セラケム株式会社(以下「セラケム」という。)の窓口業者であるITSトレーディング株式会社(以下「ITSトレーディング」という。)が1池当たり21 2万円 競争入札(平成28年度入札)を実施し、セラケム株式会社(以下「セラケム」という。)の窓口業者であるITSトレーディング株式会社(以下「ITSトレーディング」という。)が1池当たり21 2万円で落札した(甲13の1)。 イ原告は、平成29年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成29年3月15日、一般競争入札(平成29年度入札)を実施し、有限会社島田商店が1池当たり193万5000円で落札した(甲13の2)。 ウ原告は、平成30年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、 平成30年3月13日、一般競争入札(平成30年度入札)を実施し、株式会社後藤商店(以下「後藤商店」という。)が1池当たり140万円で落札した(甲13の3)。 エ原告は、平成31年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成31年3月13日、一般競争入札(平成31年度入札)を実施し、IT Sトレーディングが1池当たり249万円で落札した(甲13の4)。 オ原告は、令和2年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、令和2年3月17日、一般競争入札(令和2年度入札)を実施し、後藤商店が1池当たり210万円で落札した(甲13の4)。 2 争点 本件の争点は、①被告らの不法行為の成否、②原告の損害額である。 (1) 被告らの不法行為の成否(原告の主張)ア被告らを含む別紙業者一覧記載の16の業者(以下「16社」という。)は、原告が実施する活性炭の入札に、自社が供給する活性炭(自社の名称、 銘柄、品番、商標等を付した活性炭)を取り扱う販売業者(窓口業者)等を 参加させ、又は自らが参加していた。 16社は、東日本に所在する地方公共団体の浄水場に供給する活性炭につき、各社の利益を確保する 商標等を付した活性炭)を取り扱う販売業者(窓口業者)等を 参加させ、又は自らが参加していた。 16社は、東日本に所在する地方公共団体の浄水場に供給する活性炭につき、各社の利益を確保するため、自社の活性炭を供給する供給予定者を事前に決定し、その他の業者は、供給予定者が供給できるよう協力する旨の合意(以下「本件基本合意」という。)をした。そして、遅くとも平成25年10 月24日以降、かかる合意の下に、①被告本町化学は、活性炭の入札に先立ち、16社のうち被告本町化学を除く他の15社(以下「15社」という。)と個別に面談をし、15社に対して、入札物件、自社の活性炭を供給した者、受注者となった窓口業者、契約数量、落札金額等の情報を年度ごとにまとめた入札結果表を配布し、②15社は、被告本町化学に対し、入札結果表の中 から自社が供給予定者となることを希望するものを伝え、③被告本町化学は、15社からの希望、入札結果表に記載の供給実績等を勘案して、15社のいずれかを各物件の供給予定者として割り振り、④供給予定者の窓口業者が提示する入札価格を、供給予定者若しくは被告本町化学が単独で、又は両者の協議により決定し、⑤供給予定者以外の業者は、供給予定者の窓口業者の入 札予定価格よりも高い価格を、自社の窓口業者に提示させていた。 イまた、被告らは、平成24年から、原告が本件浄水場及び新治浄水場について発注する活性炭の納入、再生業務について、被告大阪ガスケミカルと被告水ingが毎年交互に落札メーカーとなることを合意していた。 ウ被告らは、本件各入札について、本件基本合意及び上記イの合意に基づき、 事前に、平成26年度入札は被告大阪ガスケミカル、平成27年度入札は被告水ingを供給予定者と決定し、その入札予定価格を平成26年度 本件各入札について、本件基本合意及び上記イの合意に基づき、 事前に、平成26年度入札は被告大阪ガスケミカル、平成27年度入札は被告水ingを供給予定者と決定し、その入札予定価格を平成26年度入札は685万円、平成27年度入札は708万円として、他の業者の窓口業者にはそれよりも高い価格で入札をさせた。 エこのように、被告らは、他の業者と本件基本合意をし、これに基づき、本 件各入札に当たって、供給予定者及び入札価格を事前に調整した。被告らの 行為は、原告が自由競争によって形成される公正な価格により活性炭を調達することを妨げる談合行為であり、不法行為を構成する。 (被告本町化学の主張)ア供給予定者は、従来から活性炭メーカーの間で定められたルールによって決定されていた。被告本町化学は、当該ルールに従って供給予定者が決定さ れるに当たって、活性炭メーカーからの指示を受けて、①当該ルールにより自動的に供給予定者が定まる物件については、そのメーカーが供給予定者となることを連絡し、②自動的に供給予定者が定まらない場合には、活性炭供給能力が高く、16社間で強い影響力を有していたメーカーの意向を確認し、その他のメーカーにその案を伝え、各メーカーが了解するかを判断した結果 を他の活性炭メーカーに連絡していた。被告本町化学が行った行為は、事務的、機械的な連絡に過ぎず、被告本町化学が供給予定者を決定したり、主体的に連絡を取ったりしたことはない。 イ活性炭メーカーは、被告本町化学が連絡行為等をしなくとも、メーカー間で直接連絡を取り合うことで、談合行為をすることができた。活性炭メーカ ーは、被告本町化学を介在させることで、談合行為が発覚しにくくなると考えて、被告本町化学を利用したのであり、本件の談合に当たって被告本 取り合うことで、談合行為をすることができた。活性炭メーカ ーは、被告本町化学を介在させることで、談合行為が発覚しにくくなると考えて、被告本町化学を利用したのであり、本件の談合に当たって被告本町化学の行為は重要なものではなかった。被告本町化学は、活性炭メーカーに手足として利用されたのであり、その行為は違法性を欠く。 ウ被告本町化学は、独占禁止法2条6項の「事業者」に当たらないから、被 告本町化学の行為は不法行為に当たらない。 エしたがって、被告本町化学は不法行為責任を負わない。 (被告大阪ガスケミカルの主張)ア被告大阪ガスケミカル及び被告本町化学が本件基本合意に関与する全事業者との間で平成26年度入札における供給予定者を決定したことや、協力 価格を決定し、これを他の事業者へ連絡したことなどの個別調整行為につい て、原告の立証は不十分である。 イ仮に平成26年度入札について個別調整行為があったとしても、平成26年度入札は一般競争入札であるから、個別調整行為に関与した事業者らは、第三者(アウトサイダー)が入札に参加する可能性があるとして、アウトサイダーとの競争を意識して入札価格を決定していた。したがって、平成26 年度入札の落札価格は競争によって形成された落札価格と同程度といえ、原告の権利、利益は侵害されていない。 (被告水ingの主張)ア本件各入札について、被告水ingが被告本町化学から協力価格を伝えられたり、これを自社の窓口業者に伝えたりしたことはない。被告大阪ガスケ ミカルと、本件浄水場及び新治浄水場の案件を交互に落札するとの合意をしたこともない。被告水ingが、本件各入札について、個別調整行為をしたことは立証されていない。 イ仮に本件各入札について個別調整が行われていたと 場及び新治浄水場の案件を交互に落札するとの合意をしたこともない。被告水ingが、本件各入札について、個別調整行為をしたことは立証されていない。 イ仮に本件各入札について個別調整が行われていたとしても、それに関与していない第三者(アウトサイダー)が入札に参加する可能性は常にあり、個 別調整に関与していた事業者としても、アウトサイダーとの競争に対抗し得るような価格を入札価格とせざるを得なかった。そのため、本件各入札の落札価格は、自由かつ公正な競争により形成されたものであり、原告の権利、利益は侵害されていない。 (2) 原告の損害額 (原告の主張)ア被告らの行為により原告が被った損害は、現実の落札価格(以下「現実落札価格」という。)から、当該不法行為がなければ形成されたであろう落札価格(以下「想定落札価格」という。)を差し引いた額である。そして、16社は、本件各入札以前から、活性炭の入札案件について供給予定者及び入札価 格を調整していた疑いがあるため、談合行為が終了し、その影響を受けなく なった平成28年度以降、令和2年度までに実施された、本件浄水場にかかる粒状活性炭再生業務の入札における落札価格の平均をもって、本件各入札における想定落札価格と推認するのが相当である。 イ損害額元本は、平成26年度入札に関しては1億6295万6484円、平成27年度入札に関しては1億9716万0481円である。その計算方 法は、別紙原告主張損害額元本のとおりであり、年度ごとに、想定落札価格(平均落札価格)と現実落札価格との差額が現実落札価格に占める割合(損害割合)を算出し、これを年度ごとに支払った業務委託費の総額に乗じた金額が、損害額元本となる。 ウ本件で請求する確定遅延損害金は、平成26年度入札に関して 格との差額が現実落札価格に占める割合(損害割合)を算出し、これを年度ごとに支払った業務委託費の総額に乗じた金額が、損害額元本となる。 ウ本件で請求する確定遅延損害金は、平成26年度入札に関しては346万 0847円、平成27年度入札に関しては456万4261円である。その計算方法は、別紙業務委託費の支払一覧及び別紙確定損害金の計算書のとおりである。原告は、別紙業務委託費の支払一覧中「支払日」欄記載の日に同別紙中「支払額(円)」欄記載の金額の業務委託費を支払っており、これに年度ごとの上記損害割合を乗じた金額が同別紙中「請求額(円)」欄記載の金額 である。そして、かかる各金額について、平成26年度入札分に関しては各支払日から平成27年5月24日まで、平成27年度入札分に関しては各支払日から平成28年6月23日までの年5分の割合の日割り計算をした金額が、別紙確定損害金の計算書中「損害金(円)」欄記載の金額であり、これが原告が請求する確定遅延損害金である。 エ原告は、被告らの不法行為により本件訴えの提起を余儀なくされ、弁護士にその提起及び追行を委任せざるを得なかったから、平成26年度入札に関して1630万円、平成27年度入札に関して1972万円の弁護士費用は、本件と相当因果関係のある損害である。 オしたがって、原告は、被告らに対し、次の金員の支払を請求する。 (ア) 被告本町化学及び被告大阪ガスケミカルに対し、平成26年度入札に係 る損害金合計1億8271万7331円(損害金元本1億6295万6484円、弁護士費用1630万円、確定遅延損害金346万0847円)。 (イ) 被告本町化学及び被告水ingに対し、平成27年度入札に係る損害金合計2億2144万4742円(損害金元本1億9716万04 円、弁護士費用1630万円、確定遅延損害金346万0847円)。 (イ) 被告本町化学及び被告水ingに対し、平成27年度入札に係る損害金合計2億2144万4742円(損害金元本1億9716万0481円、弁護士費用1972万円、確定遅延損害金456万4261円)。 (被告本町化学の主張)ア中華人民共和国(以下「中国」という。)産の活性炭の輸入価格が下落し、重油価格が変動するなど、平成26年度及び平成27年度と平成28年度以降で、落札価格の形成に影響を及ぼす経済的要因等に顕著な変動があり、平成28年度以降の現実落札価格の平均をもって想定落札価格を推認するの は相当ではない。 イ予測的な判断による損害の算定は控えめにするべきであり、仮に平成28年度以降の落札価格をもって損害額を算定するとしても、落札価格と予定価格(予定価格とは、原告が、茨城県企業局会計規定に基づき定める落札価格の上限であり、落札価格はこれを上回ることができない。)の比率(落札率) をもって想定落札価格を推認するべきである。また、平成28年度入札及び平成30年度入札の落札率は極端に低い異常値であり、これらの年度は想定落札率の算出から除外するべきである。加えて、落札率が50パーセントを下回る場合には、当該年度の入札はおよそ一般的な落札傾向を示しているとはいえないため、当該年度も想定落札率の算出から除外するべきである。そ うすると、平成31年度入札の落札率75.68パーセントをもって本件各入札の想定落札率とするべきであり、これを基に損害を算定すると、平成26年度入札に関しては5479万4293円、平成27年度入札に関しては3634万4402円となり、本件の損害は、これを超えるものではない。 ウ民事訴訟法248条により相当な損害額が認定される 成26年度入札に関しては5479万4293円、平成27年度入札に関しては3634万4402円となり、本件の損害は、これを超えるものではない。 ウ民事訴訟法248条により相当な損害額が認定される場合であっても、上 記同様に、損害の算定は控えめにするべきである。 (被告大阪ガスケミカルの主張)ア上記(1)で主張のとおり、平成26年度入札の落札価格はアウトサイダーとの競争を意識して形成された競争価格であり、原告に損害は発生していない。 イ平成26年度入札と平成28年度以降の入札時において、価格形成の前提 となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等に変動がないことについて、原告の立証は不十分であり、平成28年度以降の入札における落札価格をもって想定落札価格を推認することはできない。 ウ本件基本合意が存在していたにもかかわらず、平成28年度入札の落札価格は本件各入札より低下しており、平成29年度以降の入札の落札価格は年 度ごとにばらつきがある。その価格低下や落札価格の変動の原因は本件基本合意の存否以外の何らかの事情によるものであり、経済的要因等に変動があった可能性がある。 エ本件各入札とその後の入札では発注業務の内容に変更があるため、平成28年度以降の入札の落札価格から本件各入札の想定落札価格を推認できな い。 オ令和3年度以降の入札における事情も考慮して想定落札価格を推認するべきである。 (被告水ingの主張)ア上記(1)で主張のとおり、平成27年度入札の落札価格はアウトサイダー との競争を意識して形成された競争価格であり、原告に損害は発生していない。 イ入札における落札価格は種々の条件が複雑に絡み合って形成されるものであり、落札価格の形成に影響を及ぼす経済的要因等 との競争を意識して形成された競争価格であり、原告に損害は発生していない。 イ入札における落札価格は種々の条件が複雑に絡み合って形成されるものであり、落札価格の形成に影響を及ぼす経済的要因等にさしたる変動がないことは想定し難い。そして、活性炭の製造・再生・輸送のコストにおいて相 当大きな比重を占める燃料費が大幅に変動している上、燃料費の変動と原告 の活性炭の入札の落札価格の変動には一定の相関が認められる。また、低価格・低品質な海外製の活性炭の流入により、国内における活性炭の販売価格水準は低下傾向にある。加えて、原告の活性炭の入札における落札価格は年度ごとに相当のばらつきがあり、落札価格は経済的要因の変動等により常に大きな影響を受けている。したがって、平成27年度入札時とその後の入札 時とで、価格形成に影響を及ぼす経済的要因等にさしたる変動がないとは認められず、平成28年度以降の入札の落札価格から平成27年度入札の想定落札価格を推認することはできない。 ウ平成28年度以降のわずか5件の入札における落札価格の平均をもって想定落札価格を認定することはできない 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告らの不法行為の成否)について(1) 認定事実括弧内の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア基本合意 16社は、遅くとも平成25年10月24日以降、次のとおり、東日本地区所在の地方公共団体が発注する浄水場(本件浄水場を含む。)における粉末活性炭の納入、粒状活性炭の再生等の業務の入札について、事前に供給予定者を決定し、その窓口業者の入札予定価格を決め、供給予定者以外の業者はその入札予定価格よりも高い協力価格を窓口業者に提示させる旨合意(本 件基本合意)し、供給予定 入札について、事前に供給予定者を決定し、その窓口業者の入札予定価格を決め、供給予定者以外の業者はその入札予定価格よりも高い協力価格を窓口業者に提示させる旨合意(本 件基本合意)し、供給予定者は被告本町化学を介して活性炭を供給できるようにしていた(甲14から甲16)。 (ア) 被告本町化学の営業担当者は、15社の担当者と、毎年11月頃から翌年1月あるいは2月頃までの間に、面談を実施していた。かかる面談において、被告本町化学の営業担当者は、被告本町化学において作成した入札 結果表(活性炭に係る入札の結果をまとめたもの。)及び予定見込表(地方 自治体により今後発注が見込まれる活性炭の入札について参考見積の実施状況等を取りまとめたもの。)を示すなどしながら、15社から、どの物件において活性炭の納入及び再生業務を行う業者(供給予定者)となりたいかの希望を聴取していた。そして、被告本町化学の営業担当者は、15社からの希望に加え、過去の納入実績や供給量のバランス等を考慮して、 各物件における供給予定者をどこにするかの方針を決め、各業者にこれを伝えて了承を取っていた。 (イ) 供給予定者の窓口業者の入札価格は、入札前に、被告本町化学と供給予定者が相談して決めていた。かかる入札価格については、被告本町化学又は供給予定者が、当該窓口業者に連絡していた。 (ウ) 被告本町化学は、供給予定者の窓口業者の入札価格を基に、それよりも高い価格を協力価格として定め、供給予定者以外の業者に伝達し、他の業者は自社の窓口業者に当該協力価格で入札に参加させ、供給予定者が落札できるよう協力していた。 イ個別調整行為 被告らは、本件基本合意に基づき、本件各入札について、次のとおり、被告大阪ガスケミカル及び被告水ingの窓口 入札に参加させ、供給予定者が落札できるよう協力していた。 イ個別調整行為 被告らは、本件基本合意に基づき、本件各入札について、次のとおり、被告大阪ガスケミカル及び被告水ingの窓口業者が落札できるよう調整行為(個別調整行為)をした(甲14から甲16、甲26)。 (ア) 被告らは、平成25年頃までに、原告が発注する本件浄水場及び新治浄水場における粒状活性炭再生業務の一般競争入札について、被告大阪ガス ケミカルと被告水ingが、毎年交互に、各浄水場の案件の供給予定者となる旨、本件浄水場の方が新治浄水場よりも再生業務の発注量が多くなることから、被告大阪ガスケミカル及び被告水ingのうち、本件浄水場の供給予定者となった方が、他方に対して、粒状活性炭の再生業務の一部を委託し、それぞれが請け負う再生業務の数量が同程度になるよう調整する 旨合意していた。 (イ) 被告本町化学の営業担当者と被告大阪ガスケミカルの営業担当者は、平成25年11月頃から平成26年1月頃に面談をした。かかる面談において、被告大阪ガスケミカルの営業担当者は、被告本町化学の営業担当者に対し、平成26年度入札は被告大阪ガスケミカルが供給予定者となることを確認し、被告本町化学の営業担当者はこれを了承して、被告大阪ガスケ ミカルが平成26年度入札の供給予定者に決定された。 その後、被告大阪ガスケミカルの営業担当者は、被告本町化学の営業担当者との間で協議の上、平成26年度入札におけるサンアグロ(被告大阪ガスケミカルの窓口業者)の入札予定価格を685万円と決定した。また、被告本町化学の営業担当者又は被告大阪ガスケミカルの営業担当者は、1 6社のうち平成26年度入札に参加する予定の他の業者に対し、上記同額以上で入札するよう連絡した。 85万円と決定した。また、被告本町化学の営業担当者又は被告大阪ガスケミカルの営業担当者は、1 6社のうち平成26年度入札に参加する予定の他の業者に対し、上記同額以上で入札するよう連絡した。 そして、平成26年度入札は、上記同額で、サンアグロが落札した(前提事実(4)ア)。 (ウ) 被告本町化学の営業担当者は、被告水ingの営業担当者に対し、原告 が平成27年度入札の公告をした平成27年2月18日頃、平成27年度入札の供給予定者は被告水ingにしようと考えている旨伝え、被告水ingの担当者はこれを了承し、被告水ingが平成27年度入札の供給予定者と決定された。 その後、被告本町化学の営業担当者は、被告水ingの営業担当者に対 し、平成27年度入札における被告水ingの窓口業者の入札予定価格を708万円とする旨提案し、被告水ingはこれを了承して、入札予定価格が上記同額と決定され、被告水ingは、マルシェ薬品(被告水ingの窓口業者)に、上記同額で入札させた。また、被告本町化学の営業担当者又は被告水ingの営業担当者は、16社のうち平成27年度入札に参 加する予定の他の業者に対し、上記同額以上で入札するよう連絡した。 そして、平成27年度入札は、上記同額で、マルシェ薬品が落札した(前提事実(4)イ)。 (2) 検討ア被告らの不法行為責任について上記(1)アのとおり、被告らを含む16社は、東日本地区に所在する地方 公共団体が発注する浄水場用活性炭の納入、再生等の業務の入札案件について、供給予定者及び入札価格を事前に調整する旨合意(本件基本合意)し、これに基づき、上記(1)イのとおり、被告本町化学及び被告大阪ガスケミカルは、平成26年度入札において、供給予定者を被告大阪ガスケミカ 供給予定者及び入札価格を事前に調整する旨合意(本件基本合意)し、これに基づき、上記(1)イのとおり、被告本町化学及び被告大阪ガスケミカルは、平成26年度入札において、供給予定者を被告大阪ガスケミカルとし、その窓口業者であるサンアグロの入札価格を事前に決め、被告本町化学及び 被告水ingは、平成27年度入札において、供給予定者を被告水ingとし、その窓口業者であるマルシェ薬品の入札価格を事前に決めていた(本件個別調整行為)。被告らのかかる行為は、原告の公正な競争の下に形成された低廉な価格によって契約を締結する利益を侵害する不法行為に当たるというべきである。 イ被告本町化学の主張について(ア) 被告本町化学は、自社が行った行為は、活性炭メーカー間のルールによって決定された供給予定者等の情報を、他のメーカーに連絡する事務的、機械的なものに過ぎず、被告本町化学において供給予定者を決定したり、主体的に連絡を取ったりしたことはない旨、被告本町化学は、活性炭メー カーに利用されたものであり、自社が行った行為は本件の談合において重要なものではなく、違法性を欠く旨主張する。 しかしながら、被告本町化学の活性炭営業担当者の供述調書(甲14)中には、上記(1)アに沿う記載部分がある一方で、被告本町化学の上記主張に沿う記載部分はなく、その他上記主張を裏付ける証拠はない。また、 本件各入札について、被告本町化学が上記主張のとおりの連絡をしていた のであれば、かかる行為は、活性炭メーカー間での供給予定者及び入札価格の事前調整の一端を担うものであり、上記ア同様に不法行為に該当するものというべきである。 したがって、被告本町化学の上記主張は採用できない。 (イ) 被告本町化学は、自社が独占禁止法2条6項の「事業者」 整の一端を担うものであり、上記ア同様に不法行為に該当するものというべきである。 したがって、被告本町化学の上記主張は採用できない。 (イ) 被告本町化学は、自社が独占禁止法2条6項の「事業者」に当たらず、 独占禁止法に反する行為はしていない旨主張するが、独占禁止法に違反することが不法行為責任を負う要件となるものではなく、仮に被告本町化学が上記「事業者」に当たらないとしても、上記に認定した被告本町化学の不法行為責任の成否が左右されるものではない。 ウ被告大阪ガスケミカル及び被告水ingの主張について (ア) 被告大阪ガスケミカル及び被告水ingは、不法行為について原告の立証が不十分である旨主張する。 しかしながら、被告大阪ガスケミカル及び被告水ingが本件各入札に関して個別調整行為をしたと認められることは上記に認定のとおりである。そして、本件基本合意は、全ての入札案件について、逐一、16社の 全てが直接に関与して供給予定者を決定していたものではなく、被告本町化学を介して供給予定者を決定し、他の業者は被告本町化学又は供給予定者から協力価格の連絡を受け、その額で窓口業者に入札させ、供給予定者の落札に協力するというものであった。供給予定者及び入札価格の事前決定と、他の業者による協力価格での入札があれば、公正な競争は害され得 るのであって、原告による不法行為の立証として、被告らが本件基本合意に関与する全当事者との間で本件各入札の供給予定者を決定したことの立証まで要するものとは解されない。また、本件各入札に、本件基本合意に関与していない第三者が入札に参加したとの事情はうかがわれず、本件各入札については、本件基本合意の下に本件個別調整行為が行われたこと をもって、サンアグロ又はマルシェ薬品以外の入札参加業者 に関与していない第三者が入札に参加したとの事情はうかがわれず、本件各入札については、本件基本合意の下に本件個別調整行為が行われたこと25をもって、サンアグロ又はマルシェ薬品以外の入札参加業者(窓口業者)18 に対して被告らから直接にあるいは活性炭供給業者を介して協力価格が伝達されたことを推認することができ、これを妨げる事情はない。かかる伝達の日時、態様、方法等の詳細は明らかでないものの、そのような伝達の下に窓口業者らが入札に参加したことが認められれば、原告が自由競争によって形成される公正な価格により活性炭を調達する法的利益を侵害5されたものと認めるに十分であり、その詳細の認定までは要しないものと解される。 したがって、被告大阪ガスケミカル及び被告水ingの上記主張は採用できない。 (イ) 被告大阪ガスケミカル及び被告水ingは、本件各入札は一般競争入札10であり、本件基本合意に参加していないアウトサイダーが入札に参加することがあり得たのであるから、本件各入札は競争原理が働いていたものであり、原告の法的利益は侵害されていない旨主張する。しかしながら、入札参加予定者らによって供給予定者や入札価格を事前に調整する談合行為が行われた入札については、少なくとも当該談合行為者ら間での競争は15阻害されているのであるから、抽象的にアウトサイダーが入札に参加する可能性があったとしても、その一事をもって、直ちに当該入札において競争原理が働いていたということはできない。そのため、本件各入札が一般競争入札であったことのみを理由に、被告らの不法行為責任を否定することはできない。そして、被告本町化学の活性炭営業担当者及び被告大阪ガ20スケミカルの営業担当者の供述調書(甲14の2、甲15の1)中には、本件基本合意に関し、アウ 告らの不法行為責任を否定することはできない。そして、被告本町化学の活性炭営業担当者及び被告大阪ガ スケミカルの営業担当者の供述調書(甲14の2、甲15の1)中には、本件基本合意に関し、アウトサイダーの参加が見込まれる入札案件については、アウトサイダーよりも低い価格で入札するための調整をしていたとの旨の記載部分があるが、本件各入札について、アウトサイダーが入札に参加する可能性が具体的に見込まれており、被告らが、そのことを前提に 入札価格を決定したとの事情はうかがわれない。そうすると、本件各入札 について、入札参加可能性のあるアウトサイダーとの競争原理が現実に働いていたということはできない。 したがって、被告大阪ガスケミカル及び被告水ingの上記主張は採用できない。 (3) 小括 以上によれば、①被告本町化学及び被告大阪ガスケミカルは、平成26年度入札に関し、共同不法行為者として、連帯して不法行為責任を負い、②被告本町化学と被告水ingは、平成27年度入札に関し、共同不法行為者として、連帯して不法行為責任を負うと認めるのが相当である。 2 争点(2)(原告の損害額) (1) 総論入札談合によって当該入札の発注者に生じる損害は、談合が行われなければ当該入札において形成されたであろう想定落札価格と、実際の落札価格(現実落札価格)との差額をもって算定することができると解され、本件各入札のように単価契約を前提とするものについては、上記差額が現実落札価格に占める 割合(損害割合)を算出し、単価契約に基づき発注者が支出した費用に、当該損害割合を乗じた額をもって損害額と認めるのが相当である。 そして、ここにいう想定落札価格は、現実には存在しなかった価格であり、これを直接に推計することは困難であ づき発注者が支出した費用に、当該損害割合を乗じた額をもって損害額と認めるのが相当である。 そして、ここにいう想定落札価格は、現実には存在しなかった価格であり、これを直接に推計することは困難であるから、現実に存在した落札価格を手掛かりとしてこれを推計することが許され、一般的には、入札価格形成の前提と なる経済条件、市場構造その他の経済的要因等に変動がない限り、当該入札の直前の入札における落札価格(以下「直前価格」という。)をもって想定落札価格を推認するのが相当である(最高裁平成元年12月8日第二小法廷判決・民集43巻11号1259頁参照)。しかしながら、談合行為が相当長期にわたる場合や、当該入札の前においても同様の談合行為が行われていた疑いがある 場合には、直前価格をもって想定落札価格を推認することは相当でなく、談合 行為終了後、公正かつ自由な競争によって行われた入札における現実の落札価格をもって想定落札価格を合理的に推認することができると解するのが相当である。 (2) 本件各入札の想定落札価格ア証拠(甲14の6)及び弁論の全趣旨によれば、16社の全部又は一部の 業者は、本件各入札以前においても、長期間にわたり、東日本地区に所在する地方公共団体の浄水場向け活性炭の納入及び再生業務について、事前に供給予定者やその入札価格を調整していたことが認められ、本件各入札における原告の損害について、本件各入札の直前に実施された入札における落札価格(直前価格)をもって想定落札価格を推認することは相当ではない。 イそこで、本件各入札以降に実施された本件浄水場における粒状活性炭再生業務の入札での落札価格をもって、本件各入札の想定落札価格を推認することができるか検討する。 この点、証拠(甲1から甲3、甲14の そこで、本件各入札以降に実施された本件浄水場における粒状活性炭再生業務の入札での落札価格をもって、本件各入札の想定落札価格を推認することができるか検討する。 この点、証拠(甲1から甲3、甲14の2、甲14の5)及び弁論の全趣旨によれば、セラケムは、平成27年10月27日に本件基本合意から離脱 したことが認められるところ、平成28年度入札はセラケムが離脱した日より後の平成28年3月15日に実施され、セラケムの窓口業者が落札していることから(前提事実(7)ア)、平成28年度入札においては、競争原理が働いていたものといえ、その落札結果を基礎として想定落札価格を推認し得るものと解される。また、平成29年度以降の入札は、平成29年2月21日 に公正取引委員会が立入検査を実施した(前提事実(6)ア)よりも後に行われたものであり、入札実施時点で既に本件基本合意は解消されており、その影響を受けていないものと認められるから、想定落札価格を推認する基礎とし得るものと解される。 そして、本件各入札と平成28年度以降の本件浄水場における粒状活性炭 再生業務の入札は、同一浄水場における同種業務についての入札であるとこ ろ、証拠(甲8、甲9、甲23、甲25から甲31)及び弁論の全趣旨によれば、本件各入札から令和2年度入札まで、原告の発注する業務の仕様は、その基本部分において共通していることが認められ、かかる仕様において、入札価格形成に影響を及ぼす顕著な点に変更があるとの事情はうかがわれない。その上で、平成28年度から令和2年度まで合計5件の入札が行われ、 それぞれの落札価格は前提事実(7)に認定したとおりであるところ(別紙原告主張損害額元本参照)、上記5件の入札のうち、最も落札価格が高かったのは令和元年度入札の249万円で 件の入札が行われ、 それぞれの落札価格は前提事実(7)に認定したとおりであるところ(別紙原告主張損害額元本参照)、上記5件の入札のうち、最も落札価格が高かったのは令和元年度入札の249万円であるのに対し、最も落札価格が低かったのは平成30年度の140万円であって、平成28年度から令和2年度入札までの落札価格の変動幅は全体を通じ大きいものとまではいえない。しかる に、談合解消以降相当数の入札が行われている場合には、価格形成の前提となる事情にさしたる変化がなくとも、入札参加者の経営判断等種々の要因により、入札ごとに落札価格に一定の変動があり得ることを前提に、その変動を平準化するべく、平均値を求めて、これをもって想定落札価格と推認することは合理的といえる。上記の落札価格の変動幅に照らせば、上記5件の入 札をもって、本件各入札における想定落札価格を合理的に推認するに足りる相当数の入札が行われているといえ、上記5件の入札における落札価格の平均値をもって、本件各入札における想定落札価格を合理的に推認することができるというべきである。 以上によれば、本件各入札における想定落札価格は、平成28年度から令 和2年度までの入札における落札価格の平均値である200万9000円と認めるのが相当である。 (3) 被告らの主張についてア被告本町化学の主張について(ア) 被告本町化学は、平成28年度以降の入札は、中国産の活性炭の輸入価 格や重油価格(A重油価格)の下落の影響を受けており、本件各入札時と の比較において、落札価格形成に影響を及ぼす顕著な経済的要因等に変動があるから、平成28年度以降の入札における落札価格をもって、本件各入札の想定落札価格を推認することはできないと主張する。 しかしながら、本件の入 落札価格形成に影響を及ぼす顕著な経済的要因等に変動があるから、平成28年度以降の入札における落札価格をもって、本件各入札の想定落札価格を推認することはできないと主張する。 しかしながら、本件の入札は、粒状活性炭の再生業務であって、新たな活性炭を納入することを主たる内容とするものではなく、活性炭の輸入価 格の変動が、再生業務の価格形成にどのような影響を及ぼすのかは明らかでない。また、被告本町化学の主張によれば、活性炭の輸入価格の変動は、翌年以降の活性炭の再生業務の価格へ影響を及ぼすとのことであるが、被告本町化学が主張する中国産の活性炭の輸入価格の平均単価は、平成29年度(平成30年度の再生業務の価格に影響)には前年度比6.09パー セント増となっているが、平成30年度入札の落札価格は平成29年度入札の落札価格よりも下落しており、中国産の活性炭の輸入価格の変動は、必ずしも活性炭の再生業務の価格に相関的な影響を与えるものとは認められない。加えて、被告本町化学は、平成28年度の中国産活性炭輸入価格(平成29年度の再生業務の価格に影響)の平均単価は、前年度比で約 20パーセント下落しており、平成29年度以降の入札においてはその影響が残っていると主張するが、上記のとおり中国産の活性炭の輸入価格の変動が活性炭の再生業務の価格に相関するものとはいえない上、令和元年度入札及び令和2年度入札の落札価格は平成29年度及び平成30年度入札の落札価格を上回っており、平成28年度の中国産活性炭輸入価格の 平均単価の下落が、平成29年度入札以降の入札価格の形成に顕著かつ継続的な影響を与えているものとは認められない。その他、中国産の活性炭の輸入価格の変動が、平成29年度以降の入札における落札価格をもって想定落札価格を推認することを不相当と 入札価格の形成に顕著かつ継続的な影響を与えているものとは認められない。その他、中国産の活性炭の輸入価格の変動が、平成29年度以降の入札における落札価格をもって想定落札価格を推認することを不相当とするほどに、活性炭の再生業務の価格形成に顕著な影響を及ぼすものであることを認めるに足りる証拠は ない。 また、重油価格(A重油価格)の変動についても、これが活性炭の再生業務の価格にどのような影響を及ぼすのかは証拠上明らかでなく、これが活性炭の再生業務の価格形成に顕著な影響を及ぼすものであることを認めるに足りる証拠はない。 したがって、被告本町化学の上記主張は採用できない。 (イ) また、被告本町化学は、落札率を用いて損害を算定するべきであると主張する。しかしながら、本件においては、本件各入札以降、同一浄水場における同種業務についての入札が実施されており、前記のとおり、落札価格それ自体を比較することによって、想定落札価格を合理的に推認し、損害を算定することができるのであるから、落札率を用いて損害を算定する べき理由はない。 イ被告大阪ガスケミカルの主張について(ア) 被告大阪ガスケミカルは、平成26年度入札の落札価格はアウトサイダーとの競争を意識して形成された競争価格であり、原告に損害は発生していないと主張するが、平成26年度入札について競争原理が働いていたと 認められないことは前記1(2)ウ(イ)に説示のとおりであり、被告大阪ガスケミカルの上記主張は採用できない。 (イ) 被告大阪ガスケミカルは、平成26年度入札と平成28年度以降の入札時において、価格形成の前提となる経済的要因等に変動がないことについて原告の立証が不十分である旨、年度ごとに落札価格のばらつきがあるこ と等から平成26年度 6年度入札と平成28年度以降の入札時において、価格形成の前提となる経済的要因等に変動がないことについて原告の立証が不十分である旨、年度ごとに落札価格のばらつきがあるこ と等から平成26年度入札と平成28年度以降の入札時では価格形成の前提となる経済的要因等に変動があった可能性がある旨主張する。しかしながら、これらの主張は、具体的な経済的要因等の変動を指摘するものではなく、平成26年度入札時から平成28年度以降の入札時までにおいて、入札価格の形成に顕著な影響を与え得る経済的要因等に変動があったと の具体的な事情はうかがわれないから、上記のとおり、平成28年度以降 の入札における落札価格を基礎として平成26年度入札の落札価格を合理的に推認することができると認められ、被告大阪ガスケミカルの上記主張は採用できない。 (ウ) 被告大阪ガスケミカルは、平成26年度入札と平成28年度以降の入札とでは、発注業務の仕様に変更があるから、平成28年度以降の入札の落 札価格から平成26年度入札の想定落札価格を推認することはできない旨主張するが、被告大阪ガスケミカルが主張する仕様の変更について、入札価格の形成に影響を及ぼすことやその程度は本件の証拠上明らかでなく、上記のとおり、入札価格の形成に影響を及ぼす顕著な仕様変更があったとの事情はうかがわれないから、被告大阪ガスケミカルの上記主張は採 用できない。 ウ被告水ingの主張について(ア) 被告水ingは、平成27年度入札の落札価格はアウトサイダーとの競争を意識して形成された競争価格であり、原告に損害は発生していないと主張するが、平成27年度入札について競争原理が働いていたと認められ ないことは前記1(2)ウ(イ)に説示のとおりであり、被告水ingの上記主張は 競争価格であり、原告に損害は発生していないと主張するが、平成27年度入札について競争原理が働いていたと認められ ないことは前記1(2)ウ(イ)に説示のとおりであり、被告水ingの上記主張は採用できない。 (イ) 被告水ingは、燃料費の変動や海外製の活性炭の流入等、平成27年度入札時から平成28年度以降の入札時までにおいて、入札価格の形成に顕著な影響を与え得る経済的要因等に変動があった旨主張する。しかしな がら、燃料費の変動や海外製の活性炭の流入が粒状活性炭再生業務の落札価格にいかなる影響を及ぼすのかは本件の証拠上明らかでなく、その他経済的要因等に変動があったとの事情はうかがわれないから、被告水ingの主張は採用できない。 (4) 損害額の算定 ア以上を前提に原告の損害を計算するに、本件各入札における原告の損害割 合(現実落札価格に占める想定落札価格と現実落札価格の差額分の割合)は、別紙原告主張損害額元本中「損害割合」欄記載のとおりである。そして、原告が、平成26年度契約及び平成27年度契約に基づき支出した業務委託費の総額に、上記損害割合を乗じた額は、同別紙中の「損害額」欄記載のとおりであり、かかる金額が、原告の損害金元本と認められる。 イまた、原告が平成26年度契約及び平成27年度契約に基づき支出した個別の業務委託費に、それぞれ上記割合を乗じた額は、別紙業務委託費の支払一覧中「請求額(円)」欄記載のとおりである。そして、かかる金額について、各支払日から、別紙確定損害金の計算書中「終期」欄記載の日までに発生した遅延損害金は、同別紙中「損害金(円)(円未満切捨)」欄及び「損害金合 計(円)(円未満切捨)」欄記載のとおりである。 ウ加えて、弁論の全趣旨によれば、原告は本件訴えの提起及 までに発生した遅延損害金は、同別紙中「損害金(円)(円未満切捨)」欄及び「損害金合 計(円)(円未満切捨)」欄記載のとおりである。 ウ加えて、弁論の全趣旨によれば、原告は本件訴えの提起及び追行を訴訟代理人弁護士に委任したことが認められ、これに要した弁護士費用として、上記アの損害金元本の約1割に相当する金額(平成26年度入札につき1630万円、平成27年度入札につき1972万円)は、本件個別調整行為と相 当因果関係のある損害と認められる。 3 総括以上に説示したところによれば、被告本町化学及び被告大阪ガスケミカルは連帯して下記(1)の金員を、被告本町化学及び被告水ingは連帯して下記(2)の金員を、原告に対し支払う義務を負うものと認められる。 (1) 平成26年度入札について損害金元本:1億6295万6484円弁護士費用:1630万円確定遅延損害金:346万0847円遅延損害金:損害金元本及び弁護士費用合計1億7925万6484円に対 する平成27年5月25日から支払済みまで年5分の割合に よる金員(2) 平成27年度入札について損害金元本:1億9716万0481円弁護士費用:1972万円確定遅延損害金:456万4261円 遅延損害金:損害金元本及び弁護士費用合計2億1688万0481円に対する平成28年6月24日から支払済みまで年5分の割合による金員第4 結論よって、原告の請求は理由があるから、これを認容し、訴訟費用の負担につき、 民事訴訟法61条を、仮執行宣言につき、同法259条1項本文をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。なお、仮執行免脱宣言は、相当でないから、これを付さないこととする。 水戸地方裁判所民事 民事訴訟法61条を、仮執行宣言につき、同法259条1項本文をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。なお、仮執行免脱宣言は、相当でないから、これを付さないこととする。 水戸地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官三上乃理子 裁判官田島敬太 裁判官西田祥平は、退官により、署名、押印することができない。 裁判長裁判官三上乃理子
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