平成22年(ワ)第2973号不当利得返還請求事件判決 主文 1 被告Y1は,原告に対し,金153万8020円及びこれに対する平成22年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Y2は,原告に対し,金147万4022円及びこれに対する平成22年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告Y3は,原告に対し,金241万6735円及びこれに対する平成22年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告Y4は,原告に対し,金152万2891円及びこれに対する平成22年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は被告らの負担とする。 7 この判決は,第1項から第4項までに限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告Y1は,原告に対し,金407万8523円及びこれに対する平成22年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Y2は,原告に対し,金580万0433円及びこれに対する平成22年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告Y3は,原告に対し,金659万0533円及びこれに対する平成22年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告Y4は,原告に対し,金272万3804円及びこれに対する平成22年5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 訴訟費用は被告らの負担とする。 第2 事案の概要 本件は,平成17年4月1日以降稲沢市内の消防事務を直接所掌している原告が,同市内の消防活動 5分の割合による金員を支払え。 5 訴訟費用は被告らの負担とする。 第2 事案の概要 本件は,平成17年4月1日以降稲沢市内の消防事務を直接所掌している原告が,同市内の消防活動に従事する消防職員のうちの消防吏員であった被告らに対し,被告らが主幹又は副主幹として支給を受けていた管理職手当は,労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」,いわゆる管理監督者(以下,単に「管理監督者」ともいう。)に該当する場合に支給を受けられるものであったところ,主幹及び副主幹は管理監督者に当たらないことから,不当利得になるとして,不当利得返還請求権に基づき,上記管理職手当相当額の返還と訴状送達の日の翌日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 なお,本件訴訟に先立ち,被告らは,原告に対し,被告らは管理監督者に該当しないとして,時間外労働,休日労働及び深夜労働に対する時間外勤務手当,休日勤務手当及び深夜勤務手当(以下「時間外勤務手当等」ともいう。)の支払を求める訴訟を提起したところ,被告らは労働基準法上の管理監督者に該当しないとして,原告に対し被告らへの平成20年3月31日までに行った時間外労働,休日労働及び深夜労働に対するもののうち消滅時効完成分を除いた時間外手当等の支払を命じる判決が確定し(名古屋高等裁判所平成20年(行コ)第21号,同第40号休日勤務手当・夜間勤務手当,未払賃金請求控訴,同附帯控訴事件(原審名古屋地方裁判所平成18年(行ウ)第4号,同第32号),以下「前件第1訴訟」という。),続いて,平成20年4月1日から平成21年11月30日までに行った時間外勤務,休日勤務及び深夜勤務に対する時間外勤務手当等の支払を求める訴訟を提起し,同様に,原告に対し被告らへの時 訟」という。),続いて,平成20年4月1日から平成21年11月30日までに行った時間外勤務,休日勤務及び深夜勤務に対する時間外勤務手当等の支払を求める訴訟を提起し,同様に,原告に対し被告らへの時間外手当等の支払を命じる判決が確定した(名古屋地方裁判所平成22年(行ウ)第17号未払賃金請求事件,以下「前件第2訴訟」といい,第1訴訟及び第2訴訟を合わせ,「前件各訴訟」という。)。 1 争いのない事実等(証拠を掲記した事実以外は,争いがない。)(1)ア被告らは,いずれも,平成14年3月31日までは稲沢市ほか二町消防 組合(以下「本件組合1」ともいう。)の職員として,同年4月1日から平成17年3月31日までは,稲沢市外二町衛生組合及び稲沢中島水道企業団との組織統合により設立され,本件組合1の債権債務を承継した稲沢中島広域事務組合(以下「本件組合2」ともいう。)の職員として,同年4月1日からは,本件組合2の解散を受けて同組合の債権債務を承継し,稲沢市内の消防事務を直接所掌するようになった原告の職員として,同市内における消防活動及びその関連事務に従事する消防職員であったが,被告Y1及び被告Y2は,平成21年3月31日をもって原告を定年退職した。 なお,本件組合1及び本件組合2のいずれについても,その職員の給与については,稲沢市職員の給与に関する条例(以下「給与条例」ともいう。)及び稲沢市職員の給与の支給等に関する規則(以下「給与規則」ともいう。)を準用する旨定められていた。 イ被告らは,以下の時期から,被告Y1及び被告Y2においては平成21年3月31日までの間,被告Y3及び被告Y4においては同年11月30日までの間,副主幹ないし主幹の職にあった。被告らは,交替制勤務に従事し,その間,本件組合1,本件組合2 被告Y2においては平成21年3月31日までの間,被告Y3及び被告Y4においては同年11月30日までの間,副主幹ないし主幹の職にあった。被告らは,交替制勤務に従事し,その間,本件組合1,本件組合2ないし原告から,別紙管理職手当支給額表(添付省略)のとおり,管理職手当の支給を受けていた。 (副主幹) (主幹)被告Y1 平成10年4月1日以降平成12年4月1日以降被告Y2 平成9年4月1日以降平成16年4月1日以降被告Y3 平成10年4月1日以降平成12年4月1日以降被告Y4 平成12年4月1日以降平成21年4月1日以降なお,消防職員のうち消防吏員については,階級制が採用されており,階級と職名について,以下のように対応していた(平成18年法律第65号による改正前の消防組織法14条の4第2項,昭和37年5月23日消 防庁告示第6号参照)。(甲1,2,弁論の全趣旨)(階級) (職名)消防監部長(消防長)消防司令長次長(消防署長)・課長(分署長を含む。)消防司令主幹・副主幹消防司令補係長・主査消防士長係員消防副士長係員消防士係員ウ被告らは,以下の期間,副主幹ないし主幹の職にあると同時に,交替制勤務に従事し(交替制勤務に従事する職員を,以下「交替制勤務職員」ともいう。),その間,本件組合1,本件組合2ないし原告から,別紙1の管理職手当支給額表(添付省略)のとおり,管理職手当の支給を受けていた。 (管理職手当受給期間)被告Y1 の間,本件組合1,本件組合2ないし原告から,別紙1の管理職手当支給額表(添付省略)のとおり,管理職手当の支給を受けていた。 (管理職手当受給期間)被告Y1 平成15年4月1日から平成21年3月31日まで被告Y2 平成11年12月1日から平成21年3月31日まで被告Y3 平成11年12月1日から平成21年11月30日まで被告Y4 平成17年4月1日から平成21年11月30日までエ被告らが就いていた交替制勤務に従事する副主幹ないし主幹の地位は,後記カのとおり,平成21年12月1日に改正給与規則(乙7)が施行されるまでは(ただし,副主幹は,同年4月1日をもって廃止されている。),原告においては,給与条例10条1項の「管理又は監督の地位にある職員」(以下「給与条例上の管理監督職員」ないし単に「管理監督職員」ともいう。なお,労働基準法上の管理監督者に該当するか否かを問わず,一般的な見地から,管理職の立場ないしその立場にある者を,単に「管理職」と もいう。)と位置づけられ,以下のような職務を分担し,これに伴う職責を負っていた。なお,本件組合1,本件組合2及び原告の消防本部等における決裁権限を分掌する者は,課長以上の者とされ,任命権者への助言機関である庁議の構成員も課長以上であったが,主幹及び副主幹は,職場の実情に応じ,上司の命を受けて,任命権者である消防長の職務を代行する課長の補佐をし,時には,課長に代わって代行していた。(甲1,2,弁論の全趣旨)(ア) 管理職としての主幹・副主幹の職務としては,次のようなものがあった。 a 年度当初において,他係の主幹,副主幹及び主査と調整の上,所属職員の週休日の割振り・指定に関する原案を作成し,課長を補佐する。 としての主幹・副主幹の職務としては,次のようなものがあった。 a 年度当初において,他係の主幹,副主幹及び主査と調整の上,所属職員の週休日の割振り・指定に関する原案を作成し,課長を補佐する。 b 年度当初において,所属職員の担当事務(水利,防火査察,統計等)の指名に関する原案を作成し,課長を補佐する。 c 所属職員から年次有給休暇の届出があった場合,人員を把握し,割振りを実施して,必要に応じて取得日の調整を行うなど,申請の取りまとめを行い,また,病気休暇,特別休暇,介護休暇及び組合休暇の承認申請があった場合も,人員を把握し,割振りを実施して,同申請の取りまとめを行う。なお,上記各申請の許可等の決裁権は,課長が有しており,各申請の許可,有給休暇の時季変更権の行使の権限は,課長が有しており,主幹・副主幹がこれを補佐していた。 d 当務日ごとに,各消防車両への搭乗人員の配置を行う。また,当務日の人員及び機械器具等の異常の有無を把握し,異常があれば課長に報告する。 e 主幹及び副主幹より上位である課長以上の職位者は日勤となり,かつ,土日・祝日には出勤しないため,これにより課長以上の者が不在となる勤務時間及び仮眠時間において,当務職員に対して,災害出動 に伴う時間外勤務命令を発したり,休憩時間の繰上げ,繰下げの指示を発する。 f 消防士から消防副士長へ,消防副士長から消防士長への昇任試験に当たり,所属職員の勤務評定を行い,勤務評定表を提出する。 g 所属職員の時間外勤務について,事案終了書(119番通報を受け付ける情報指令係で作成した書面で,通報受信時刻,現場での活動内容,帰署した時間を記入したもの)を確認し,時間外勤務命令簿への記載事務を行う。 h 火災現場における統括指揮者は現場指揮者であるところ,現場指揮者には,分隊 書面で,通報受信時刻,現場での活動内容,帰署した時間を記入したもの)を確認し,時間外勤務命令簿への記載事務を行う。 h 火災現場における統括指揮者は現場指揮者であるところ,現場指揮者には,分隊で活動する場合は分隊長,小隊で活動する場合は小隊長,中隊で活動する場合は中隊長が当たるが,中隊長不在の場合は小隊長が当たることとされているところ,分隊長及び小隊長には主幹・副主幹が当たり,中隊長には課長が当たることとなっている。このため,主幹・副主幹は,分隊ないし小隊で活動する場合,現場指揮者としての重責を担うばかりでなく,課長が不在である土日・祝日・夜間の火災現場において,消防活動全般の指揮,情報収集及び災害状況の把握,隊員の安全確保,隊の増強又は削減の決定,並びに火勢鎮圧及び鎮火の決定を行っていた。 i 対外的な訓練(企業等への消防訓練)への職員派遣要請に応じて,週休日として指定されている日においても,企業等に出向いて指導・講評を行ったり,一般市民からの苦情処理に係長として当たるなどしていた。 (イ) 割り振られた勤務時間以外にも管理職としての補勤対応が続き,休憩時間や仮眠時間がまったく取れなくなることもあり,その勤務態様は,労働基準法上の労働時間や休暇等の規制の枠を超えていた面があり,出退勤については,タイムカードや出勤簿による管理はされておらず,課 長等の上司による点呼や確認もなかった。 (ウ) 主幹及び副主幹に支給される管理職手当の金額は,その管理職としての職責と職務に見合うものとして定められていたものであり,労働時間や休暇等に関する労働基準法上の規制の枠を超えて活動するという勤務態様を考慮に入れたものであった。 オ交替制勤務職員の勤務形態は,2週間を1単位として勤務日等が定められ,各勤務日( 働時間や休暇等に関する労働基準法上の規制の枠を超えて活動するという勤務態様を考慮に入れたものであった。 オ交替制勤務職員の勤務形態は,2週間を1単位として勤務日等が定められ,各勤務日(当務日)における拘束時間は,午前8時30分から翌日の午前8時30分までの24時間で,そのうち休憩時間(仮眠時間を含む)を除く所定勤務時間は16時間であった(なお,平成21年3月27日に規則が改正され,以後の所定勤務時間は15時間30分となった。)。 カ給与条例10条1項においては,「管理職手当は,管理又は監督の地位にある職員の職のうち市長が規則で指定するものについて,その職務の特殊性に基づき支給する」と定められ,平成21年12月1日に改正給与規則が施行されるまでは,給与規則の5条1項において,「条例第10条第1項の規定により管理職手当を支給する職」として主幹及び副主幹が指定され,主幹及び副主幹に対し同規則所定の管理職手当が支給される一方,時間外勤務,休日勤務及び深夜勤務に対する時間外勤務手当等を支給されていなかったが,同日に施行された改正給与規則により,給与条例上の管理監督職員から,消防職員で交替制勤務に従事する主幹の指定が外され,管理職手当が支給されない代わりに,時間外勤務手当等が支給されるようになった(なお,副主幹の職は,平成21年4月1日をもって廃止された。)。 (2)ア被告らは,平成18年5月19日,原告に対し,被告らは労働基準法上の管理監督者に該当しないとして,時間外勤務及び深夜勤務に対する時間外勤務手当等の支払を求める前件第1訴訟を提起したところ(控訴審において休日勤務に対する休日勤務手当の請求が追加された。),原告は,①被告らは,前記(1)のエのとおり,管理職員として重い職責と職務を分担し ていたものであ 第1訴訟を提起したところ(控訴審において休日勤務に対する休日勤務手当の請求が追加された。),原告は,①被告らは,前記(1)のエのとおり,管理職員として重い職責と職務を分担し ていたものであり,給与条例10条1項の「管理又は監督の地位にある職員の職のうち市長が規則で指定するもの」に該当し,時間外勤務手当等の受給権は有しないこと,②被告らに支払った管理職手当は,性質上,被告らの請求に係る時間外勤務手当等に充当されるべきであることなどを主張して争ったものの,平成21年11月11日,名古屋高等裁判所は,①につき,被告らは労働基準法上の管理監督者に該当せず,給与条例10条1項の「管理又は監督の地位にある職員」にも該当しない(給与条例10条1項の「管理又は監督の地位にある職員」は,労働基準法上の管理監督者と同義と解するのが相当である。)と,②につき,給与規則が,本来,管理監督者に該当しない主幹及び副主幹を給与条例10条1項の「管理又は監督の地位にある職員」に指定しているのは,給与条例による委任の範囲を逸脱したものであり,被告らに支払われた管理職手当は本来支給されるべきではなかったものであり,法律上の原因を欠いた不当な利得というべきであって,これを法律上有効な弁済と認めることはできないと,それぞれ判示して,原告に対し被告らへの平成20年3月31日までに行った時間外勤務,休日勤務及び深夜勤務に対するもののうち消滅時効完成分を除いた時間外勤務手当等の支払を命ずるに至り,同判決は確定したところ,被告らは,続いて,平成20年4月1日から平成21年11月30日までに行った時間外勤務,休日勤務及び深夜勤務に対する時間外勤務手当等の支払を求める前件第2訴訟を提起し,同様に,原告に対し被告らへの時間外勤務手当等の支払を命じる判決が確定した。 イ 0日までに行った時間外勤務,休日勤務及び深夜勤務に対する時間外勤務手当等の支払を求める前件第2訴訟を提起し,同様に,原告に対し被告らへの時間外勤務手当等の支払を命じる判決が確定した。 イ前件第1訴訟で原告に支払を命じられた内容は,以下のとおりであり,原告は,これを支払った。なお,別紙2の管理職手当支給額に対する休日,時間外及び深夜勤務手当額比較表(発生額・弁済額・残額)(添付省略)のうちの平成19年度までの弁済額(青字)がその元金部分である(時間外勤務手当につき,平成16年度は同年10月1日から平成17年3月3 1日まで,平成17年度は全期間,平成18年度は同年8月1日から平成19年3月31日まで,平成19年度は全期間,休日勤務手当につき,平成17年度は全期間,平成18年度は同年8月1日から平成19年3月31日まで,平成19年度は全期間,深夜勤務手当につき,平成16年度は全期間,平成17年度は全期間,平成18年度は同年8月1日から平成19年3月31日まで,平成19年度は全期間)。 (ア) 原告は,被告Y1に対し,金100万9770円及びうち金38万7024円に対する平成18年5月30日から,うち金1万7696円に対する同年11月3日から,うち金37万5331円に対する平成20年9月4日から,うち金22万9719円に対する平成21年2月20日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (イ) 原告は,被告Y2に対し,金93万8107円及びうち金39万7488円に対する平成18年5月30日から,うち金1万1243円に対する同年11月3日から,うち金29万0288円に対する平成20年9月4日から,うち金23万9088円に対する平成21年2月20日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (ウ) 対する同年11月3日から,うち金29万0288円に対する平成20年9月4日から,うち金23万9088円に対する平成21年2月20日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (ウ) 原告は,被告Y3に対し,金139万2373円及びうち金39万3240円に対する平成18年5月30日から,うち金2万9041円に対する同年11月3日から,うち金7852円に対する平成19年9月8日から,うち金72万5949円に対する平成20年9月4日から,うち金23万6291円に対する平成21年2月20日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (エ) 原告は,被告Y4に対し,金88万2518円及びうち金19万8466円に対する平成18年5月30日から,うち金3500円に対する同年11月3日から,うち金1万9000円に対する平成19年9月8日から,うち金42万5875円に対する平成20年9月4日から,う ち金23万5677円に対する平成21年2月20日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ウ前件第2訴訟で原告に支払を命じられた内容は,以下のとおりであり,原告は,これを支払った。なお,別紙2の管理職手当支給額に対する休日,時間外及び深夜勤務手当額比較表(発生額・弁済額・残額)(添付省略)のうちの平成20年度及び平成21年度の弁済額(青字)がその元金部分である。 (ア) 原告は,被告Y1に対し,金52万8250円及びこれに対する平成22年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (イ) 原告は,被告Y2に対し,金53万5915円及びこれに対する平成22年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (ウ) 原告は,被告Y3に対し,金127万7928円及びこれに対する平 告は,被告Y2に対し,金53万5915円及びこれに対する平成22年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (ウ) 原告は,被告Y3に対し,金127万7928円及びこれに対する平成22年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (エ) 原告は,被告Y4に対し,金79万8453円及びこれに対する平成22年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 原告は,前件第1訴訟の控訴審判決を踏まえ,同判決確定前の平成21年11月18日,被告らに対し,原告が被告らに支払うべき時間外勤務手当等と,被告らが原告に対して返還すべき管理職手当とを合意相殺し,差額金は相互に請求しない旨の示談を提案したものの,被告らはこれに応じなかったことから,原告は,やむなく本件訴訟を提起するに至ったものである。 なお,原告は,消防職員で交替制勤務に従事する主幹(廃止前に副主幹であった者を含む)のうち被告ら以外の者との間では,その者らに支払うべき時間外勤務手当等とその者らから返還を求めるべき管理職手当とを対当額にて相殺し,過不足が生じても相互にこれを請求しない旨の合意を被告ら以外の対象者全員との間で成立させて解決している。 2 争点 (1) 不当利得の成否(請求原因)(原告の主張)前件第1訴訟の控訴審判決は,交替制勤務に従事する主幹ないし副主幹であった被告らについて,労働基準法上の管理監督者に該当せず,給与条例上の管理監督職員にも該当しないとして,原告に対し,被告らに対する時間外勤務手当等の支払を命じる一方,管理監督者と認められない者に対して管理職手当を支給するとの給与規則の定めは,その限りにおいて条例による委任の範囲を逸脱したものというべきであり,給与条例に違反 時間外勤務手当等の支払を命じる一方,管理監督者と認められない者に対して管理職手当を支給するとの給与規則の定めは,その限りにおいて条例による委任の範囲を逸脱したものというべきであり,給与条例に違反し,違法無効であって,給与条例上は管理職手当の支給を受ける対象ではなかったにもかかわらず,同条例に違反して管理職手当の支給を受けていたものであるから,被告らに支払われた管理職手当は法律上の原因を欠いた不当な利得というべきであると判示し,被告らは,支給を受けた管理職手当について不当利得返還義務を負うことを明らかにしており,同判決は確定しているから,被告らが不当利得返還義務を負うことは明らかである。 被告らは,被告らが労働基準法上の管理監督者に該当しないとしても,給与条例10条1項の「管理監督職員」をこれと同義に解さなければならない理由はなく,被告らは給与条例上の管理監督職員にあたり,給与規則に基づいて管理職手当の支給を受けていたのであるから,法律上の原因を欠いていたものではない旨主張するけれども,この争点は,前件第1訴訟において解決済みである。 なるほど,条例制定権が地方公共団体が有する権能であることは確かであるが,法律に違反する条例の制定権は存せず,原告の給与条例が,自治省のひな形とは異なり,労働基準法違反の内容を含む条例を議決したとは考えられないし,原告の給与条例が制定された昭和36年2月3日とほぼ時期を同じくする同年8月15日には,実例自治丁公発第70号が出されており,管理職手当の「支給対象は,労働基準法41条2号に規定する『監督若しくは 管理の地位にある者』とすべきものと解する。この手当の支給される者には時間外勤務手当は支給すべきではない。」とされており,このような考え方は,各地方自治体で共有されていたもの 監督若しくは 管理の地位にある者』とすべきものと解する。この手当の支給される者には時間外勤務手当は支給すべきではない。」とされており,このような考え方は,各地方自治体で共有されていたものと考えられる。 そもそも,地方自治法204条2項は,普通地方公共団体が条例で職員に対して支給し得る手当の種類を定めており,管理職手当も他の諸手当と同じくそこに列記されていることから,地方自治体が制定する管理職手当は,地方自治法が規定する管理職手当と同義でなければならないところ,地方自治法204条2項にいう諸手当は,国家公務員に対して支給される同種の諸手当と内容的に相応すべきものと解されており,管理職手当とあるのは,国家公務員に対するものとしては,「俸給の特別調整額」として管理,監督の地位にあるものに支給されているものであり,この「俸給の特別調整額」の支給を受ける者は,一般職の職員の給与に関する法律19条の8第2項により,超過勤務手当等の支給を受けないとされている。そうすると,地方自治法204条2項に規定され,地方自治体が制定する給与条例における管理職手当は,時間外勤務手当等の支給を受けない者,すなわち,労働基準法上の管理監督者に支給される手当としか解し得ないものであり,拡大解釈の余地はないというべきである。 また,被告らは,被告らに利得がないこと,原告に損失がないこと,被告らの利得と原告と損失との相当因果関係がないことなどについても縷々主張しているけれども,実質的に見れば,すべて法律上の原因の存否に関わる主張というべきであって,被告らが管理職手当の支給を受けたことに法律上の原因がない以上,原告の損失のもとに被告らに利得が生じており,原告の損失と被告らの利得との間に相当因果関係があることは明らかというべきである。 (被告らの 理職手当の支給を受けたことに法律上の原因がない以上,原告の損失のもとに被告らに利得が生じており,原告の損失と被告らの利得との間に相当因果関係があることは明らかというべきである。 (被告らの主張)否認ないし争う。以下のとおり,原告の被告らに対する不当利得返還請求 権は発生していない。 ア法律上の原因のあること前件第1訴訟の控訴審判決は,給与条例上の管理監督職員を労働基準法の管理監督者を同義のものと解釈しているけれども,かかる解釈は誤ったものである。なるほど,給与条例は,戦後まもなく自治省が作成したひな形をもとに各地方自治体の事務方が作成した条例案を各地方自治体の議会が議決して条例としたものであり,自治省が作成したひな形においては,条例上の管理監督職員を労働基準法上の管理監督者と同義のものとされていたことが,地方自治の発展の中で,条例上の管理監督職員の範囲が拡大してきており,条例制定当時のひな形の解釈は妥当しないものとなっているところ,原告の給与条例は,昭和36年2月3日に制定されたものであって,自治省がひな形を作成してからかなりの時間を経ている上,原告においては,給与規則により長きにわたって主幹及び副主幹を給与条例上の管理監督職員として扱ってきており,勤務の実態も給与規則による待遇に沿うものであったことからすれば,給与条例の解釈において,同条例上の管理監督職員を労働基準法上の管理監督者と同義と解さなければならない必然性はまったくないというべきである。民間企業においても,いわゆる管理監督者にあたらない管理職は多数存在しているのであり,地方公務員においても,どのような範囲で管理職を設けるかは各地方自治体が決定できることであって,管理監督者にあたらない管理職を認めないという解釈は,今日では らない管理職は多数存在しているのであり,地方公務員においても,どのような範囲で管理職を設けるかは各地方自治体が決定できることであって,管理監督者にあたらない管理職を認めないという解釈は,今日では妥当しないというべきであり,主幹及び副主幹を給与条例上の管理監督職員とした給与規則の規定は,何ら給与条例による委任の範囲を逸脱したものとはいえない。 イ被告らに利得がないこと被告らが原告主張の管理職手当の支給を受けたのは,被告らが原告によって「管理職」として副主幹ないし主幹の職を命ぜられ,原告の規則及び 命令に従って,その重い職責を負いながら,副主幹ないし主幹としてなすべきものとされていた「管理職」としての職務を分担して,管理職手当を含む給与全体と対価的に見合う労務を提供してきたのであり,被告らが提供した労務と管理職手当を含めて支給を受けた給与とは,正当な対価関係に立つものであり,被告らが給与条例上の管理監督職員にあたらず,管理職手当が支給されないものであったなら,そもそも「管理職」としての重い職責を負って「管理職」としての職務を分担して労務を提供することもなかったわけであり,被告らが原告からの職務命令に従って管理職手当を含む給与全体と対価的に見合う労務を提供してきたことからすれば,被告らが管理職手当の支給を受けたからといって,何ら「利得」は生じていないというべきである。 ウ原告に損失がないこと原告は,平成21年12月1日に改正給与規則が施行されるまでは(ただし,副主幹は,同年4月1日をもって廃止された。)主幹及び副主幹を給与条例上の管理監督職員と位置づけ,被告らに対し管理職手当を支給する代わりに,被告らに対し副主幹ないし主幹の辞令を発し,被告らから,「管理職」としての重い職責と職務の分 された。)主幹及び副主幹を給与条例上の管理監督職員と位置づけ,被告らに対し管理職手当を支給する代わりに,被告らに対し副主幹ないし主幹の辞令を発し,被告らから,「管理職」としての重い職責と職務の分担に応じた労務の提供を受けてきたものであり,その提供を受けた労務の内容は,対価的に管理職手当に見合ったものであったから,原告には,何ら「損失」を生じていないというべきである。 エ被告らの利得と原告の損失の因果関係がないこと被告らは,原告から管理職手当の支給を受けており,被告らが原告に提供した労務の対価として管理職手当を含む給与の支給を受けたという意味では,因果関係があるとはいえるものの,被告らの利得により原告が損失を被るという意味での因果関係は存在しない。 (2) 善意の受益者の場合における現存利益の有無(抗弁) (被告らの主張)被告らが,善意の受益者であることは明らかであるところ,被告らに「現存利益」は存在しないというべきである。すなわち,被告らが支給を受けた管理職手当の金額は,給与総額と比較すれば少額であり,支給方法も一定額を継続的に支給するものであったから,管理職手当による収入増加分は,昇給の場合と同様に理解できるところ,収入増に伴って,生活規模が拡大し,生活費において応分の支出の増加が生じており,また,忘年会の会費や夜勤の際の差入れなど職場の交際費の面においても負担が増加していたものであり,もし管理職手当の支給を受けなければそれなりの生活設計をして生活を維持していたものであって,管理職手当による収入増加分は,生活規模の拡大によって既に費消されてきているから,被告らが得た利益は,有形的に現存しないばかりでなく,それを得たことによって喪失を免れた財産もなく,その他これを得なかったなら による収入増加分は,生活規模の拡大によって既に費消されてきているから,被告らが得た利益は,有形的に現存しないばかりでなく,それを得たことによって喪失を免れた財産もなく,その他これを得なかったならば,他の財産を費消していたであろうと認められる事情もないというべきであり,先例(高松高裁昭和45年4月24日判決・判例タイムズ248号147頁)に照らしても,現存利益があるとは認められない。 (原告の主張)否認ないし争う。被告らが支給を受けていた管理職手当は,少額とはいえない上,被告らが先例として挙げている裁判例の事案とは,事案をまったく異にしており,被告らは,地方公務員として相応の収入を得て,少なくとも通常のレベル以上の生活をなしていたものであり(地方公務員の賃金は,従業員50人以上の企業の賃金水準と均衡を取って決定されており,かつ,福利厚生,退職金のベースも民間企業のそれ以上と認識されている。),被告らは,現在の収入状況や資産状態について何らの主張立証もしていないことからして,被告らが得た利益が,有形的に現存しないとか,それを得たことによって喪失を免れた財産もないとか,その他これを得なかったならば,他 の財産を費消していたであろうと認められる事情はないなどといえるはずがない。 また,被告らは,前件第1訴訟の提起時において,自らが時間外勤務手当等の支給を受ける職員であると主張していたことからすれば,給与条例上の管理監督職員に当たらないことを自認していたというべきであり,遅くとも,平成18年5月19日以降に支給を受けた管理職手当については,悪意の受益者に当たるというべきである。 (3) 信義則違反の成否(抗弁)(被告らの主張)ア信義則違反(その1)(本訴請求全体に対して) けた管理職手当については,悪意の受益者に当たるというべきである。 (3) 信義則違反の成否(抗弁)(被告らの主張)ア信義則違反(その1)(本訴請求全体に対して)(ア) 禁反言の原則違反原告は,前件各訴訟において,一貫して,被告らは給与条例上の管理監督職員に該当するとともに,労働基準法上の管理監督者に該当するとした上,給与規則に従って管理職手当の支給を受けているから,時間外勤務手当等を支払う必要はない旨主張していたことからも分かるとおり,原告は,稲沢市火災出動規程や稲沢市警防活動等に関する規程などの規則により,管理的業務の内容を定めるとともに,給与規則などにより,主幹及び副主幹を管理職であると規定し,管理職手当を支給してきたところ,被告らは,かかる規則に基づいて主幹ないし副主幹として職務を遂行し,それに対する対価として管理職手当の支給を受けてきたのであり,前件第1訴訟の控訴審判決により,主幹及び副主幹を給与条例上の管理監督職員であるとして管理職手当を支給していたのが,同条例の解釈を誤ったものであると判断されたからといって,過去10年分の管理職手当の返還を求めることは,信義誠実の原則,とりわけ禁反言の原則に違反するものであって,そもそも許されないというべきである。 (イ) 平等原則違反ないし権利濫用 a 平成21年12月1日に施行された改正給与規則5条の,給与条例上の管理監督職員から交替制勤務に従事する主幹を除外した規定は,同じ主幹職でありながら,交替制勤務に従事することを理由に管理職手当の支給対象から除外するものであり,何ら合理性のない差別的取扱いであり,憲法14条,地方公務員法5条,13条に違反して無効というべきであり,交替制勤務に従事する主幹に対して ることを理由に管理職手当の支給対象から除外するものであり,何ら合理性のない差別的取扱いであり,憲法14条,地方公務員法5条,13条に違反して無効というべきであり,交替制勤務に従事する主幹に対しては,すべて管理職手当を支給するとの従前の規則が効力を有しているというべきである。 b 原告は,地方公務員法13条により,職員の平等取扱原則が課せられているところ,被告らにのみ過去に支給した管理職手当について不当利得返還請求の訴訟を提起するのは,平等取扱原則違反であり,また,被告らが,前件各訴訟を提起したことに対する報復としてなされたものであって,悪意に満ちた恣意的訴訟であって不当訴訟であり,権利の濫用である。 イ信義則違反(その2)(被告らが前件各訴訟において時間外勤務手当等の支払を受けた期間に対して)(ア) 給与条例による委任の範囲を逸脱して給与規則を制定したのは原告の市長であり,管理職手当の支給は,原告のみに帰責事由があること被告らが,管理職手当の支給を受けたのは,原告から副主幹ないし主幹を命ぜられ,原告の市長が定めた給与規則に管理職手当の支給が定められていたからであり,原告の市長がそのような給与規則を定めたのは,給与条例により,管理職手当の支給を,市長が定める規則による指定に委任していたからであって,被告らは,原告の職務命令に従い,副主幹ないし主幹の職務を誠実に遂行し,その対価として,管理職手当を含む給与の支給を受けていただけであり,被告らには何の落ち度もないにもかかわらず,不当利得として返還を求めることは,信義誠実の原則にも とるものである。 (イ) 被告らが管理職手当を含む給与全体と対価的に見合う労務を提供していること被告らは,原告から,「管理職」と 求めることは,信義誠実の原則にも とるものである。 (イ) 被告らが管理職手当を含む給与全体と対価的に見合う労務を提供していること被告らは,原告から,「管理職」として副主幹ないし主幹の職を命ぜられ,原告の規則及び命令に従って,その重い職責を負いながら,副主幹ないし主幹としてなすべきものとされていた「管理職」としての職務を分担して,管理職手当を含む給与全体と対価的に見合う労務を提供してきたのであり,仮に,給与規則が給与条例の委任の範囲を逸脱した違法なものであったとしても,管理職手当の返還を強いられ,被告らが副主幹ないし主幹としてなすべきものとされていた「管理職」としての職務を分担して提供した労務に対する正当な対価が支払われないことになるのであれば,不公平この上ないというべきである。 (ウ) 前件各訴訟において認容された時間外勤務手当等の金額が過少であったこと被告らは,原告により,時間外勤務手当等の支給対象者ではないと言われ,原告は,被告らについて出退勤の管理をしていなかったものであり,時間外勤務命令簿への記載も,原告はむしろ「書くな」という姿勢であって,正確な記載がまったくなされておらず(平成17年度までは,その記載は,不正確この上ないものである。),被告らが,時間外勤務をどの程度行っていたかを証明することには,非常な困難を伴っている。 被告らは,前件各訴訟において,各種出動報告書の情報開示請求を行い,これらの資料から特定できた時間外勤務等について時間外勤務手当等の請求をしたものの,もともと出動記録は,被告らの時間外勤務等の全体を網羅的に記録したものではなかったから,被告らによる時間外勤務手当等の請求は,非常に限定的なものであったが(平成18年度以降の時間外勤務命令簿の記載 もともと出動記録は,被告らの時間外勤務等の全体を網羅的に記録したものではなかったから,被告らによる時間外勤務手当等の請求は,非常に限定的なものであったが(平成18年度以降の時間外勤務命令簿の記載は,前件第1訴訟の準備に入っていた時期以 降であるため,被告Y3については正確になされているが,他の被告においては,平成17年度までと比べれば,記載が相応になされているものの,記載忘れもあるため,実際より少ないものであった。),被告らは,時間外勤務手当等の支払を受けるべき地位にあることの確認を求めることが,訴訟の最大の目的であったため,訴訟経済を考慮し,立証可能な範囲に請求を限定したものであり,実態より過少な請求となっていたことは明らかであるところ,かかる事態を生じたのは,原告が被告らを時間外勤務手当等の支給対象外と扱い,出退勤の管理をしてこなかったからである。 被告らは,予備的に,時間外勤務手当等を自働債権とする相殺の抗弁を主張してはいるけれども,前件各訴訟において認容された時間外勤務手当等の金額が実態より過少であることからすれば,相殺によっては,およそ公平な解決が図られないというべきである。 (エ) 休日勤務手当の支給対象となることが分かっておれば,代休を取得することなく,有給休暇を取得しており,休日勤務手当の算定において代休取得分を控除することが公平に反すること代休取得は,年間120時間丸々取っていたわけではなく,実際の取得は被告らそれぞれで異なっており,一律,年間120時間取得したことを前提とする計算は不合理である上,そもそも被告らは,原告から,時間外勤務手当等の支給対象者ではないと言われ,休日勤務手当の支給を受けられない一方,休日勤務年間120時間分について,半ば強制的に「代休」を取るよう指導を 理である上,そもそも被告らは,原告から,時間外勤務手当等の支給対象者ではないと言われ,休日勤務手当の支給を受けられない一方,休日勤務年間120時間分について,半ば強制的に「代休」を取るよう指導を受けていたことから,休日勤務手当の支給を受けられないのであれば,代休を取るのが当然と考え,代休を取得してきたものであるが,休日勤務手当の支給を受けられると分かっていれば,代休を取得することなく,有給休暇を取得するという選択もできたのであり,有給休暇の未消化が多い場合には,代休を取得せずに有給休 暇を消化していたはずであって,休日勤務手当の算定において代休取得分を控除するのは,公平に反するというべきである。 (オ) 前件第1訴訟における弁済の抗弁の蒸し返しにあたること原告は,前件第1訴訟において,被告らの時間外勤務手当等の請求に対し,原告が支給していた管理職手当には,時間外勤務手当等の趣旨が含まれているとして,弁済の抗弁を主張していたものであるところ,同訴訟の控訴審判決において,時間外勤務手当等と管理職手当との相殺は許されないと判断され,弁済の抗弁を退けられたにもかかわらず,過去に支払った管理職手当について不当利得であるとして返還を求めることは,実質的に,前件第1訴訟において否定された弁済の抗弁を蒸し返すものであり,信義則に違反して許されない。 ウ信義則違反(その3)(被告らが前件各訴訟において時間外勤務手当等の支払を受けていない期間に対して)(ア) 給与条例による委任の範囲を逸脱して給与規則を制定したのは原告の市長であり,管理職手当の支給は,原告のみに帰責事由があること上記イの(ア)に同じ。 (イ) 被告らが管理職手当と対価的に見合う労務を提供していること たのは原告の市長であり,管理職手当の支給は,原告のみに帰責事由があること上記イの(ア)に同じ。 (イ) 被告らが管理職手当と対価的に見合う労務を提供していること上記イの(イ)に同じ。 (ウ) 反対債権である時間外勤務手当等の立証が困難であること上記イのに同じ。 (エ) 休日勤務手当の支給対象となることが分かっておれば,代休を取得することなく,有給休暇を取得するなど,異なる対応をとっていたこと上記イの(エ)に同じ。 (オ) 原告は,前件第1訴訟において,被告らが請求した時間外勤務手当等の請求に対し,2年の消滅時効を援用したことにより,2年以前の時間外勤務手当等については請求棄却判決が確定しているところ,自らは, 2年の消滅時効を援用し,時効完成分について請求棄却の確定判決を得ていながら,前件各訴訟において被告らの請求が棄却となった期間を含め,被告らが請求できなかった過去分に遡って,管理職手当の返還を求めることは,信義則に違反するとともに,当事者間の公平や相殺の期待利益をも害するものであって,許されないというべきである。 本来,時効によって消滅した時間外勤務手当等と,原告らが返還を求める管理職手当とは,各年度ごとに対応しているものであり,管理職手当の返還請求権に対応する反対債権である時間外勤務手当等の支払義務について消滅時効を援用しながら,自らは管理職手当の返還を求めること自体は,信義則に違反するものであり,このことは,先例においても指摘されていることである(東京地裁昭和62年3月12日判決・判例時報1263号25頁)。 (原告の主張)否認ないし争う。 被告らが前件各訴訟で請求した時間外勤務手当 ても指摘されていることである(東京地裁昭和62年3月12日判決・判例時報1263号25頁)。 (原告の主張)否認ないし争う。 被告らが前件各訴訟で請求した時間外勤務手当等の金額は,被告らと原告との間で協議し,相互に内容を確認して事実上の合意をした上で,被告らが主張し,原告がこれを認めるとの認否をしたものであり,正確性は担保されており,その金額が過少であったということはない。 原告は,職員の時間外勤務,深夜勤務の把握を時間外勤務命令簿により行っており,被告らについても同様であったところ,そもそも,時間外勤務命令簿は,平成17年度以前より,当直責任者の主幹又は副主幹が作成するものとされていたのであり,被告らは,副主幹ないし主幹として,所属職員の時間外勤務につき,事案終了書を確認し,時間外勤務命令簿への記載事務を行う立場にあった。被告らは,前件第1訴訟の控訴審において,平成18年4月1日以降の時間外勤務手当等の請求を追加したが,被告らの勤務時間数及び手当額については,時間外勤務命令簿に基づいて,被告らと原告との間 で数次にわたるすり合わせの結果,確認されたものである。 被告らは,当直責任者として,時間外勤務命令簿を作成する立場にあったのであるから,被告らがその職務上の義務を怠った結果として時間外勤務命令簿の記載が不正確になったとしても,原告の本訴請求が信義則違反になるものではないし,勤務日誌と時間外勤務命令簿の各記載を精査すれば,被告らの時間外勤務等の勤務時間は確定できるものであり,相殺による処理が不公平になるということはない。 休日勤務における代休取得については,被告らにおいても,前件第1訴訟において,実際の代休取得時間数を問わずに,代休取得時間を年間120時間とする算定方 理が不公平になるということはない。 休日勤務における代休取得については,被告らにおいても,前件第1訴訟において,実際の代休取得時間数を問わずに,代休取得時間を年間120時間とする算定方法をとっていたものであり,本訴になって,これと異なる主張をするのは,それこそ信義則違反である。 被告らは,時間外勤務手当等の請求権が時効になっているのに,管理職手当の返還を求めることは,信義則に違反する旨主張するけれども,時効が完成していたとしても,相殺適状にあった場合には,自働債権として行使できるのであるから,何ら公平を害することはなく,信義則違反には当たらないというべきである。 (4) 消滅時効(予備的抗弁1)(被告らの主張)原告は,民法の債権の消滅時効に沿って過去10年分に遡って管理職手当の返還を請求しているところ,原告の不当利得返還請求権は,地方自治法236条1項及び2項により,時効の援用を要することなく5年間で時効消滅している。 地方自治法236条1項は,「時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか」とあることから,一般的には,公法上の債権か私法上の債権かで区別し,私法上の債権については,民法,商法,労働基準法等私法関係を規律する時効の規定が適用されると説明されているけれども,公法上の債権と私 法上の債権の区別は必ずしも明確でないのみならず,地方自治法236条が地方公共団体の権利関係を早期に確定するという趣旨のものであることからすれば,私法上の債権であるからといって,消滅時効期間を10年間とするのは,同条項の規定の趣旨を没却することになるものであり,短期消滅時効に関する民法等の規定が「他の法律の定め」に当たることはともかくとして,債権一般の10年間の消滅時効を定めた民法167条が とするのは,同条項の規定の趣旨を没却することになるものであり,短期消滅時効に関する民法等の規定が「他の法律の定め」に当たることはともかくとして,債権一般の10年間の消滅時効を定めた民法167条が「他の法律の定め」に当たると解するのは相当でなく,結局,地方自治法236条は,民法167条の特別規定であり,民法168条以下の短期消滅時効の規定が更にその特別規定であるという関係にあるというべきである。 また,公法上の債権と私法上の債権とで適用を分けるとしても,本訴請求に係る地方公共団体が誤って支給した手当の返還請求は,公務員に対して誤支給した給与の返納を求めるものであり,「公法上の債権」として地方自治法236条の規定が適用されるべきものである。すなわち,一般に,地方公共団体が,職員である地方公務員に誤って手当を過払いした場合には,それが判明した時点で,直ちに返納を命ずることができるのであり,返納を求めることのできる地方公共団体の請求権は,地方自治法236条の5年間の消滅時効に服することは,確立した実務的取扱いとなっている。 (原告の主張)争う。原告の本訴請求権は,民法上の不当利得返還請求権であるから,10年の消滅時効に服するものである。 (5) 相殺(予備的抗弁2の1)(被告らの主張)被告らは,副主幹ないし主幹の辞令を受け,その重い職責を担い,原告の規則及び命令に従って,その重い職責を負いながら,副主幹ないし主幹としてなすべきものとされていた「管理職」としての職務を分担して労務を提供してきたものであり,管理職手当は,その副主幹ないし主幹としての職責の 負担と職務の分担に従った労務提供に見合う対価として,給与規則の規定に従い,支給されてきたものであるところ,被告らが支給を受けてきた管理 り,管理職手当は,その副主幹ないし主幹としての職責の 負担と職務の分担に従った労務提供に見合う対価として,給与規則の規定に従い,支給されてきたものであるところ,被告らが支給を受けてきた管理職手当が不当利得になるというのであれば,原告が,被告らから提供を受けてきた副主幹ないし主幹としての職責の負担と職務の分担に従った労務も不当利得になることは明らかである。 しかして,被告らが,副主幹ないし主幹としてその職責の負担と職務の分担に従って提供した労務は,管理職手当の受給と対価的に見合うものであったから,原告が,被告らが副主幹ないし主幹として行った労務提供によって得た不当利得は,管理職手当相当額になるというべきである。 被告らは,原告に対し,本訴請求に係る原告の被告らに対する不当利得返還請求権と被告らによる副主幹ないし主幹として行った労務提供に基づく被告らの原告に対する不当利得返還請求権とを対当額で相殺する旨の意思表示を平成22年6月17日の第1回口頭弁論期日においてなした。 (原告の主張)争う。原告は,被告らに対し,給与を支払っており,管理職手当の返還を求めたからといって,労務提供の対価を支払っていないということにはならない。 (6) 相殺(予備的抗弁2の2)(被告らの主張)被告らが就いていた副主幹及び主幹は,労働基準法上の管理監督者に当たらないことから,被告らは,副主幹ないし主幹として交替制勤務に従事していた間,時間外勤務,休日勤務,深夜勤務に従事したにもかかわらず,前件各訴訟において支払を命ぜられた分以外は,時間外勤務手当,休日勤務手当,深夜勤務手当の支払を受けておらず,未払給与が存在する(以下「未払時間外勤務手当等」という。)。 時間外勤務手当等の支給について いて支払を命ぜられた分以外は,時間外勤務手当,休日勤務手当,深夜勤務手当の支払を受けておらず,未払給与が存在する(以下「未払時間外勤務手当等」という。)。 時間外勤務手当等の支給については,当月の勤務において発生した時間外 勤務手当,休日勤務手当,夜間勤務手当及び特殊勤務手当は,その翌月の給与の支給日に支給することとされていたことから(給与規則16条),本訴請求に係る原告の不当利得返還請求権と相殺適状となる被告らの未払時間外勤務手当等の請求権は,当該管理職手当の支給日から2年前に支給日が到来している分まで遡ることになる。例えば,平成19年12月21日を支給日とする管理職手当と相殺適状にあるのは,給与の時効期間である2年前までである平成17年12月21日以降に支給日が到来する未払時間外勤務手当等であり,平成17年12月21日に支給日が到来するのは,同年11月1日から同月30日までの勤務にかかる分である。 被告らは,原告に対し,本訴請求に係る原告の被告らに対する不当利得返還請求権と被告らの原告に対する未払時間外勤務手当等の請求権(ただし,当該管理職手当の支給日の2年前の支給日分のもの)とを対当額で相殺する旨の意思表示を平成22年6月17日の第1回口頭弁論期日においてなした。 ところで,被告らの時間外勤務等の勤務時間は,平成17年度までは,時間外勤務命令簿の記載がおよそ不正確であり,各種出動報告書の記載も,被告らの時間外勤務等の全体を記載したものではないところ,平成18年度以降の時間外勤務命令簿の記載は,被告Y3については正確なものであり,他の被告については,記載漏れがかなりあるものの,平成17年度までに比べれば相応に記載されているから,被告らの時間外勤務手当等の金額は,平成18年度から平成20年度ま 3については正確なものであり,他の被告については,記載漏れがかなりあるものの,平成17年度までに比べれば相応に記載されているから,被告らの時間外勤務手当等の金額は,平成18年度から平成20年度までの金額の平均額をもってその額とすべきである。 深夜勤務手当の金額については,原告の主張どおりであり,異論はない。 休日勤務手当の金額については,前記のとおり,代休取得分について,被告らは,有給休暇の取得を選択できたというべきであるから,少なくとも,不当利得返還義務の範囲を決定するにあたっては,代休取得分を控除するの は,相当でないというべきである。 そうすると,被告らの自働債権の債権額は,平成16年度以降分については,別紙5の比較表(添付省略)のとおりとなる。 (原告の主張)争う。被告らが前件各訴訟において時間外勤務手当等の支払を受けた期間については,その支払をもって時間外勤務手当等は完済されており,被告らが前件各訴訟において時間外勤務手当等の支払を受けた期間については,原告において勤務日誌と時間外勤務命令簿により時間外勤務等の勤務時間を算出して計算すると,別紙2の管理職手当支給額に対する休日,時間外及び深夜勤務手当額比較表(発生額・弁済額・残額)(添付省略)のうちの発生額(黒字)のとおりとなり,これと差引きすると,不当利得として返還すべき残額(赤字)のとおりとなる(休日勤務手当の計算においては,代休取得分を控除するのは当然のことである。)。 なお,休日勤務手当において,実際の代休取得時間数分を控除して計算すると,別紙3の管理職手当支給額に対する休日,時間外及び深夜勤務手当額比較表(発生額・弁済額・残額)(実際の代休取得時間数を基礎として)(添付省略)のとおりとなり,時間外勤務手当において,被告 算すると,別紙3の管理職手当支給額に対する休日,時間外及び深夜勤務手当額比較表(発生額・弁済額・残額)(実際の代休取得時間数を基礎として)(添付省略)のとおりとなり,時間外勤務手当において,被告らの主張する平成18年度ないし平成20年度の時間外勤務手当の平均額を適用(ただし,休日勤務手当は,別紙2(添付省略)に同じ。)して計算すると,別紙4の管理職手当支給額に対する休日,時間外及び深夜勤務手当額比較表(弁済後金額)(被告らの主張する平成18年度ないし平成20年度の時間外勤務手当の平均額を適用)(添付省略)のとおりとなる。 (7) 信義則違反の成否(相殺の予備的抗弁2の2に対する再抗弁)(原告の主張)そもそも,給与条例10条3項により,管理職手当と,時間外勤務手当等とは併給が認められていないところ,原告は本訴請求において平成11年1 2月1日以降に支給した管理職手当(ただし,被告Y2及び被告Y3)の返還を求めているのに対し,被告らは,その2年前まで遡って時間外勤務手当等による相殺を主張するけれども,かかる相殺を認めた場合,賃金債権を受働債権とする相殺が認められない結果,平成9年度ないし平成11年度については,併給を認める結果になること,平成9年度ないし平成11年度の被告らの勤務に関する記録は残っておらず,自働債権の存否及び金額の確認が不可能であること(もっとも証明責任は,被告らが負っている。)からすれば,原告が返還を請求している管理職手当の支給日以前を支給日とする時間外勤務手当等を自働債権とする相殺の主張は,信義則に違反し,権利の濫用であって,許されないというべきである。 (被告らの主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(不当利得の成否)について(1) 前記争い 義則に違反し,権利の濫用であって,許されないというべきである。 (被告らの主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(不当利得の成否)について(1) 前記争いのない事実等及び弁論の全趣旨からして,当裁判所も,前件第1訴訟の控訴審判決と同様,被告らは,労働基準法上の管理監督者に該当せず,また,被告らが給与条例上の管理監督職員であることを理由に管理職手当の支給を受ける権利があったとする被告らの主張にも理由がないものと判断する。 なるほど,被告らは,本訴請求に係る期間,原告から,給与規則において給与条例上の管理監督職員と位置づけられていた交替制勤務に従事する副主幹ないし主幹の職を命ぜられ,原告の規則及び命令に従って,労働基準法上の管理監督者とまではいえなかったものの,管理職員としての職責を負いながら,副主幹ないし主幹としてなすべきものとされていた管理職員としての職務を分担し,その職務を誠実に遂行していたものであり,その労務提供の対価として,管理職手当を含む給与の支給を受けていたものであって,被告 らに対する管理職手当の支給は,給与規則の定めに従ったものであり,前件第1訴訟の控訴審判決において,被告らに対する管理職手当の支給が,給与条例による委任の範囲を逸脱したもので違法であると判断されるまでは,原告も被告らも,関係者はすべて,被告らに対する管理職手当の支給が,給与条例及び給与規則に基づいた適法なものであると認識していたことは,明らかであるが,給与条例にいう管理監督職員が,労働基準法上の管理監督者と同義と解され,交替制勤務に従事する主幹及び副主幹が管理監督者にあたるとは認められない以上,交替制勤務に従事する主幹及び副主幹を管理職手当の支給対象とした給与規則の規定が,給与条例による委任の 者と同義と解され,交替制勤務に従事する主幹及び副主幹が管理監督者にあたるとは認められない以上,交替制勤務に従事する主幹及び副主幹を管理職手当の支給対象とした給与規則の規定が,給与条例による委任の範囲を逸脱したものであったと解することは,やむを得ないことというべきであり,本訴請求に係る期間,原告が被告らに対し管理職手当を支給したことは,給与条例の適用を誤った違法なものであり,給与規則の当該部分は無効であったということになるから,被告らは,法律上の原因なく管理職手当の支給を受けたものと言わなければならない。 (2) もっとも,交替制勤務に従事する主幹及び副主幹に対する管理職手当の支給は,主幹ないし副主幹として定められた職責を負い,管理職としての職務を分担し,交替制勤務に従事することによる消防吏員としての通常の時間外勤務,休日勤務及び深夜勤務をも含む執務時間内外にわたる職務を遂行することによる労務提供の対価として支給されていたものであり,管理職手当を含む給与の支給と上記労務提供とは対価関係にあったものである。 そうすると,この場合において,管理職手当の支給にかかる給与規則が給与条例に違反して無効であったことを理由に,支払われた管理職手当の全額が不当利得返還の対象となるとすると,給与と労務提供との間の対価的均衡が失われることになる。すなわち,交替制勤務に従事することによる消防吏員としての通常の時間外勤務,休日勤務及び深夜勤務を含め,被告らが主幹ないし副主幹として提供した労務のうち時間外勤務命令簿などによって把握 された執務時間外の活動に対応する給与については,給与条例及び給与規則によって支払請求が可能であり,その限度では,給与と労務との間の対価的均衡はなお保たれているものの,その余の部分の労務提供に対しては,原告において, 動に対応する給与については,給与条例及び給与規則によって支払請求が可能であり,その限度では,給与と労務との間の対価的均衡はなお保たれているものの,その余の部分の労務提供に対しては,原告において,副主幹を廃止するとともに,交替制勤務に従事する主幹を管理職手当の支給対象となる管理監督職員から除外する給与規則の改正をしたのみで,給与条例に違反して管理職手当が支給された間における被告らの主幹ないし副主幹としての労務提供に対する救済措置を何ら講じなかった結果,給与条例及び給与規則上,他に何らの対価の支払を請求し得ない以上,支払われた管理職手当の全額を返還した場合には,その限度で給与と労務提供との間の対価的均衡が失われることになるものである。したがって,支給された管理職手当が法律上の原因を欠くことで不当利得返還請求の対象となるにしても,不当利得法の本質が,利得者と損失者との間に生じた不均衡を実質的に調整することにあることにかんがみると,その返還を要する範囲は,給与と労務提供との間の対価的均衡を失わない限度にとどまるものと解するのが相当である。 この点を,更に敷衍すると,管理職手当は,管理又は監督の地位にある一定範囲の職員に対して,その職務ないし勤務形態の特殊性に基づいて支給される手当である。地方公共団体において,管理又は監督の地位にある職員は,一般の職員の指揮・監督,労務管理・業務管理,地方公共団体の管理運営に係る業務の遂行など,その職務について困難性と高度の責任を有しているほか,その勤務の形態においても,一般の職員とは異なった特殊性が認められものである。まず,職務の困難性及び責任の度合いについては,本来的には給料表上の級の格付の上で考慮されるべきものであるが,職階制の実施がされていない中にあって,そうした級の格付だけでは十分に評価し切れな である。まず,職務の困難性及び責任の度合いについては,本来的には給料表上の級の格付の上で考慮されるべきものであるが,職階制の実施がされていない中にあって,そうした級の格付だけでは十分に評価し切れない面があるため,個別的な給与上の調整的措置を講じる必要が生じてくる。また,勤務の形態の面からは,管理又は監督の地位に基づく職務は,必ずしも正規 の執務時間をもって活動が終了するわけではない上,執務時間外の活動については,その職務が定型的,定量的なものでなく,質的にも困難性を伴うとともに,管理運営に係る重い責任を常時担っていることから,一般の職員の時間外勤務等のように,その執務時間外の活動の実績を時間で計測することが実情に沿わないほか,その計測自体も困難であるとともに,その活動には高度の自由裁量が認められるという事情も加わって,その計測が不適当と判断される場合が少なくないといえる。そこで,これらのような管理又は監督の地位にある職員の職務内容及び勤務形態の特殊性を考慮して,労務提供に対する給与の対価的均衡を得るために,給与を特別に調整するのが,管理職手当制度の趣旨であり,国家公務員における俸給の特別調整額と同趣旨のものである。地方公務員の給与は,職務と責任に応じて決定されるものであるところ(職務給の原則。地方公務員法24条1項),管理職手当は,職階制が実施されていない中にあって,職務給の原則に則り,管理又は監督の地位にある職員の労務提供と正に対価関係に立つ反対給付の一内容を構成していると認められるものである。 確かに,交替制勤務に従事する主幹及び副主幹の職は,労働基準法上の管理監督者には当たらないと評価されるものであり,管理監督者の場合と完全に同視することはできないけれども,原告においては,これらの職を,給与条例上の管理監督職員と位 及び副主幹の職は,労働基準法上の管理監督者には当たらないと評価されるものであり,管理監督者の場合と完全に同視することはできないけれども,原告においては,これらの職を,給与条例上の管理監督職員と位置づけ,管理監督職員に準ずる職務と責任を負わせ,勤務の実態としても,管理監督職員の職務を補佐し,あるいは,その職務の一部を代行させていたことは,原告においても自認するところであって,交替制勤務に従事する主幹及び副主幹が管理監督職員に当たらないとの司法判断が確定したからといって,給与と労務提供との対価的均衡の回復が図られなくてよいとする理由にはならないというべきである。 (3) しかしながら,被告らは,前件各訴訟において,原告に対し,交替制勤務に従事する主幹及び副主幹の職が,労働基準法上の管理監督者に当たらない として,時間外勤務等を行ったことによる時間外勤務手当等の請求をし,消滅時効完成分を除き,その支払を受けているものであるところ,給与条例及び給与規則上,管理職手当と時間外勤務手当等の併給を認めていないことは明らかであり,少なくとも,併給分については,金額的に重なり合う限度で,被告らの不当利得となると認めるのが相当である。 このように解した場合,被告らに対して支払われるべき時間外勤務手当等の金額が,支給された管理職手当と同じか,あるいは,それを上回った場合,被告らには時間外勤務手当等しか支払われないことになり,主幹ないし副主幹の管理職としての活動の実績に対する評価がされない結果になるけれども,もともと給与規則において,主幹ないし副主幹としての労務提供と給与との対価的均衡の調整は,管理職手当の限度でなされていたものであり,その管理職手当も本来は給与条例上支給できないものであったのであるから,不当利得として返還すべき受益 し副主幹としての労務提供と給与との対価的均衡の調整は,管理職手当の限度でなされていたものであり,その管理職手当も本来は給与条例上支給できないものであったのであるから,不当利得として返還すべき受益の範囲で考慮することはできても,積極的に対価の支払を求める請求権までは認められない以上,やむを得ないことというべきである。 2 争点(3)(信義則違反の成否)について(1) 信義則違反(その1)と信義則違反(その2)(被告らが前件各訴訟において時間外勤務手当等の支払を受けた期間に対して)について被告らは,前件各訴訟により,時間外勤務手当等として,遅延損害金を除けば,被告Y1は,153万8020円,被告Y2は,147万4022円,被告Y3は,267万0301円,被告Y4は,168万0971円の支払を受けているところ,休日勤務手当について前件各訴訟において採用された方式によって被告らの時間外勤務手当等を計算すると,別紙2の管理職手当支給額に対する休日,時間外及び深夜勤務手当額比較表(発生額・弁済額・残額)(添付省略)のとおり,時間外勤務手当等の額が管理職手当の金額を上回るのは,被告Y3について,平成17年度5万7650円,平成20年 度10万8934円,平成21年度8万6982円,被告Y4について,平成17年度13万5160円,平成21年度2万2920円があるのみであり,それ以外は,管理職手当の支給額が,時間外勤務手当等の支払額を上回っていることが認められる。 前記のとおり,給与条例及び給与規則上,管理職手当と時間外勤務手当等の併給が認められていないことは明らかであり,少なくとも,併給分については,被告らの不当利得となるというべきところ,遅延損害金を除けば,被告らの不当利得額は,被告Y1が,153万8020 勤務手当等の併給が認められていないことは明らかであり,少なくとも,併給分については,被告らの不当利得となるというべきところ,遅延損害金を除けば,被告らの不当利得額は,被告Y1が,153万8020円,被告Y2が,147万4022円,被告Y3が,241万6735円,被告Y4が,152万2891円になるというべきである。 また,管理職手当の支給額が,時間外勤務手当等の支払額を上回っている年度について,その差額分を被告らが不当利得として返還すべきか問題になるところ,もしこれを認めた場合,被告らは,主幹ないし副主幹としての職責を負い,管理職として分担していた職務を遂行しながら,主幹・副主幹より下位の者と同様の時間外勤務等の勤務時間に応じた時間外勤務手当等の支払を受けるのみで,主幹ないし副主幹としての職務遂行の対価は何ら支払われない結果になること,もともと主幹ないし副主幹としての職務遂行の対価として管理職手当を含む給与が支給されることになっていたものであり,管理職手当を含む給与の全体額は被告らの労務提供と対価的に見合うものとして設定されていたこと,給与条例の解釈を誤り,同条例による委任の範囲を逸脱して給与規則を制定したのは,原告の過誤であり,被告らに管理職手当の支給をしたことについては,原告のみに帰責事由があり,被告らには何の落ち度もないこと,被告らの時間外勤務手当等の勤務時間が時間外勤務命令簿に概ね正確に記載されるようになったのは,被告らが前件第1訴訟の準備を開始した平成18年度以降であり,それ以前は,被告らは,時間外勤務手当等の支給対象外とされ,出退勤管理の対象とはされていなかったことから, 時間外勤務命令簿の記載も不正確であったと推認されるところ,前件第1訴訟において,被告らは,各種出動報告書などから特定できた時間外勤 外とされ,出退勤管理の対象とはされていなかったことから, 時間外勤務命令簿の記載も不正確であったと推認されるところ,前件第1訴訟において,被告らは,各種出動報告書などから特定できた時間外勤務等の勤務時間をもとに時間外勤務手当等の請求をしたものであり,少なくとも時間外勤務手当については,実際よりも過少な請求となっている可能性が高いこと,かかる事態は,原告が,被告らを時間外勤務手当等の支給対象外である給与条例上の管理監督職員と位置づけ,出退勤管理の対象としていなかったことに起因するものであり,主幹ないし副主幹が時間外勤務命令簿の作成を担当していたからといって,出退勤管理の対象であった被告らの部下についてではなく,被告ら自身についての勤怠記録の不十分さにより時間外勤務の勤務時間の正確な把握ができないことを被告らの職務懈怠によるものであるとして被告らのみの責めに帰すことは,原告の管理者としての落ち度を棚に上げ,事前に予測できない不利益を被告らに一方的に課すものであり,著しく公平に反すること,被告らに対する管理職手当の支給は,給与条例及び給与規則に沿って行われていたものであり,主幹ないし副主幹としての勤務実態があったことから,被告らにおいては,管理職手当について返還を求められることがありうるものとはおよそ考えられないものであったことは明らかであるところ,月々の給与に従って生活設計をなし,その生活設計に従って生計のやりくりをし,収入の増加により自ずと生活規模も拡大し,消費も増えていたであろうことは優に推認でき,給与条例主義に反する支給であったからといって,被告らが収入に見合う形で立ててきた生活設計を無視して,管理職手当全額の返還を求めることは,公務員労働関係における信頼の原則を裏切るものであることなどからすれば,その差額分について,被 からといって,被告らが収入に見合う形で立ててきた生活設計を無視して,管理職手当全額の返還を求めることは,公務員労働関係における信頼の原則を裏切るものであることなどからすれば,その差額分について,被告らに,原告の損失の下に不当な利得があったとは,にわかに認めがたく,仮に,給与条例主義の下,形式的には,不当利得返還義務が発生していると解する余地があるとしても,その不当利得返還請求は,信義則に違反するものというべきであり,許されないというべきである。 被告らは,原告が被告らに対し本訴請求に係る不当利得返還請求権を行使すること自体,禁反言の原則に違反するものであり,信義則に違反して許されない旨主張するけれども,前件第1訴訟の控訴審判決により,給与規則による交替制勤務に従事する主幹及び副主幹への管理職手当の支給が,給与条例主義に反するものであり,違法であると判断されたことから,やむなく本件訴訟を提起しているものであることからすると,禁反言の原則に違反するものとはいえない。また,被告らは,原告の被告らに対する本訴の提起は,平等取扱原則に違反するとも主張するけれども,原告は,本訴提起に先立ち,被告らに対し,他の交替制勤務に従事していた副主幹ないし主幹であった消防吏員に対して提示したのと同一条件での和解の申し出をしたにもかかわらず,被告らがこれを拒否したことから,本訴提起に至っているものであり,平等取扱原則に違反するものでないことは明らかである。 (2) 信義則違反(その3)(被告らが前件各訴訟において時間外勤務手当等の支払を受けていない期間に対して)について前記の管理職手当の支給額が時間外勤務手当等の支払額を上回っている年度について,その差額分を被告らが不当利得として返還すべきか否かについて判示した理由,とりわ いない期間に対して)について前記の管理職手当の支給額が時間外勤務手当等の支払額を上回っている年度について,その差額分を被告らが不当利得として返還すべきか否かについて判示した理由,とりわけ,被告らには,給与規則により,主幹ないし副主幹としての職務遂行の対価として管理職手当を含む給与の全体が支給されることになっていたものであり,管理職手当を含む給与の全体額は被告らの労務提供と対価的に見合うものとして設定されていたばかりでなく,主幹ないし副主幹の職は,時間外勤務手当等の支給対象とならないとされていたため,そのことも加味して管理職手当の金額が定められていたものであり,交替制勤務に従事する消防吏員としての通常の時間外勤務等に加え,主幹ないし副主幹という管理職としての執務時間外の活動をもしていたことを加味すれば,管理職手当を含む給与の全体額は,被告らの労務提供に見合うものであったと推認されるものであり,仮に,被告らが支給を受けた管理職手当の金 額が,原告が被告らに支払うべきであった時間外勤務手当等の金額を上回っている期間があったとしても,原告が被告らに主幹ないし副主幹としてその職責を負わせ,管理職としての職務を分担させて労務の提供をさせたことに対する対価的均衡を考慮に入れれば,管理職手当の支給を受けたことについて,被告らに,原告の損失の下に不当な利得をあったとは,にわかに認めがたく,また,被告らが前件各訴訟において時間外勤務手当等の支払を受けていない期間においては,被告らが出退勤管理の対象とされていなかった結果,被告らの時間外勤務等の勤務時間の把握がより困難となっていると推認されることなどをも考慮すれば,仮に,給与条例主義の下,形式的には,不当利得返還義務が発生していると解する余地があるとしても,その不当利得返還請求は,信 の勤務時間の把握がより困難となっていると推認されることなどをも考慮すれば,仮に,給与条例主義の下,形式的には,不当利得返還義務が発生していると解する余地があるとしても,その不当利得返還請求は,信義則に違反するものというべきであり,許されないというべきである。 3 争点(2)(現存利益の有無)について被告らの主張には,考慮すべき点がないとはいえないが,前記信義則違反の抗弁を認めるに当たって斟酌した事情を超えて,現存利益がまったくないといえるほどの事情は,本件全証拠によっても,認めるに足りないというべきである。 4 争点(4)(消滅時効)について原告の本訴請求は,民法上の不当利得返還請求権に基づくものであり,消滅時効期間は,10年になるから,被告らの主張は失当である。 5 争点(5)及び(6)(相殺)について(1) 争点(5)の相殺(予備的抗弁2の1)について被告らが,自働債権として主張している副主幹ないし主幹として行った労務提供に基づく不当利得返還請求権は,本件全証拠によっても,価額の算定が困難である上,前記のとおり,給与条例及び給与規則上,管理職手当と時間外勤務手当等の併給を認めていないことは明らかであるから,被告らが前 件各訴訟において時間外勤務手当等の支払を受けた期間については,併給を生じる限度で不当利得返還義務が残るものというべきであって,そのことは,相殺の抗弁が認められた場合にも同様であり,また,被告らが前件各訴訟において時間外勤務手当等の支払を受けていない期間については,時間外勤務手当等が支払われていないことを考慮しても,その労務提供の対価として,管理職手当として支給された金額を上回る金員の請求を認めることはできないから,結局,いずれの期間においても,結論に差異を生ずる 務手当等が支払われていないことを考慮しても,その労務提供の対価として,管理職手当として支給された金額を上回る金員の請求を認めることはできないから,結局,いずれの期間においても,結論に差異を生ずるものではないというべきである。 (2) 争点(6)の相殺(予備的抗弁2の2)について被告らは,未払時間外勤務手当等の金額を算定するに当たり,休日勤務手当について,代休取得分を控除するのは相当でない旨主張するけれども,代休を取得しながら,同時に休日勤務手当を認めるのは,併給を認めることになるものであり,失当である。 また,被告らは,不当利得として返還を求められている管理職手当と相殺適状関係にある未払時間外勤務手当等の請求権は,当該管理職手当の支給日の2年前の支給日分までのものであることを理由に,2年前までの分までを含めた未払時間外勤務手当等の請求権を自働債権として主張しているところ,未払時間外勤務手当等のうち管理職手当と金額的に重なり合う部分について,これを自働債権として将来の管理職手当との相殺に供することを認めることは,実質的に管理職手当との併給を認める結果になり,公平を著しく害するものであるから,信義則に違反するものであって,許されないというべきである。もっとも,未払時間外勤務手当等の金額が,管理職手当の金額を上回っている場合には,その差額分について,これを自働債権として相殺に供することは可能であるといえるけれども,本件全証拠によっても,被告らが前件各訴訟において時間外勤務手当等の支払を受けていない期間において,かかる差額分が発生しているとは,認めるに足りないというべきである。 第4 結論よって,原告の被告らに対する本訴各請求は,主文第1項ないし第4項の限度で理由があり,その余は理由がないから,主文 額分が発生しているとは,認めるに足りないというべきである。 第4 結論よって,原告の被告らに対する本訴各請求は,主文第1項ないし第4項の限度で理由があり,その余は理由がないから,主文のとおり判決する。なお,原告は,被告ら以外の交替制勤務に従事する副主幹ないし主幹であった消防吏員全員と同様に,和解により主文と同旨の解決をすることを被告らに申し出たにもかかわらず,被告らが,これを拒否したことにより本件訴訟に至っているものであり,原告においては,本件訴訟を提起することなく円満な解決を図るべく誠意をもって対応していたことなどの事情に照らし,訴訟費用については,これを全部被告らの負担とするのが相当である。 名古屋地方裁判所民事第1部裁判長裁判官田近年則 裁判官日比野 幹 裁判官鈴木輝子
▼ クリックして全文を表示