平成31(行ウ)36 課徴金納付命令処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年1月21日 東京地方裁判所
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判決文本文73,241 文字)

令和4年1月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成31年(行ウ)第36号(以下「第36号事件」という。),同第37号(以下「第37号事件」という。)課徴金納付命令処分取消請求事件口頭弁論終結日令和3年9月17日判決 主文 1 金融庁長官が平成30年12月20日付けで原告aに対してした課徴金2万円を国庫に納付することを命ずる旨の処分を取り消す。 2 金融庁長官が平成30年12月20日付けで原告bに対してした課徴金4万円を国庫に納付することを命ずる旨の処分を取り消す。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 第36号事件主文第1項に同旨 2 第37号事件主文第2項に同旨第2 事案の概要 1 本件は,株式会社モルフォ(以下「モルフォ」という。)の従業員であった原告らが,モルフォの「業務執行を決定する機関」が株式会社デンソー(以下 「デンソー」という。)との「業務上の提携」を「行うことについての決定」をした旨の重要事実(以下「本件重要事実」という。)を知りながら,法定の除外事由がないのに,本件重要事実の公表(以下「本件公表」という。)がされた平成27年12月11日より前にしたモルフォの株式の取引が金融商品取引法(平成30年法律第41号による改正前のもの。以下「金商法」という。) 166条1項1号,同条2項1号ヨの内部者取引(以下,「インサイダー取引」 といい,インサイダー取引に係る情報を「インサイダー情報」というときがある。)に当たるとして,内閣総理大臣から権限の委任を受けた金融庁長官から平成30年12月20日付けでそれぞれ課徴金納付命令を受けたため,各課徴金納付命令の取消しを求める事案である。 2 法令 がある。)に当たるとして,内閣総理大臣から権限の委任を受けた金融庁長官から平成30年12月20日付けでそれぞれ課徴金納付命令を受けたため,各課徴金納付命令の取消しを求める事案である。 2 法令の定め ⑴ 内部者取引(インサイダー取引)の禁止金商法166条1項1号は,上場会社等の使用人その他の従業者であって,上場会社等に係る業務等に関する重要事実をその者の職務に関し知ったものは,当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ,当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等をしてはならない旨を定める。 ⑵ 重要事実金商法166条2項1号ヨは,同条1項に規定する業務等に関する重要事実として,上場会社等の業務執行を決定する機関が,業務上の提携その他の同号イからカまでに掲げる事項に準ずる事項として政令で定める事項を行うことについての決定をしたこと(投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なも のとして内閣府令で定める基準に該当するものを除く。)を掲げる。 金融商品取引法施行令(平成31年政令第162号による改正前のもの。 以下「施行令」という。)28条1号は,金商法166条2項1号ヨに規定する政令で定める事項として,業務上の提携又は業務上の提携の解消を掲げる。 課徴金納付命令金商法175条1項2号は,金商法166条1項の規定に違反して,自己の計算において有価証券の買付け等(同項に規定する業務等に関する重要事実の公表がされた日以前6月以内に行われたものに限る。)をした者があるときは,内閣総理大臣は,その者に対し,当該有価証券の買付け等について 業務等に関する重要事実の公表がされた後2週間における最も高い価格に当 該有価証券の買付け等の数量を乗じて得た額から当該有価証券の買付け ,その者に対し,当該有価証券の買付け等について 業務等に関する重要事実の公表がされた後2週間における最も高い価格に当 該有価証券の買付け等の数量を乗じて得た額から当該有価証券の買付け等について当該有価証券の買付け等をした価格にその数量を乗じて得た額を控除した額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない旨を定める。 権限の委任 金商法194条の7は,内閣総理大臣は,金商法による権限を金融庁長官に委任する旨を定める。 3 前提事実(掲記の証拠(証拠の表記は,枝番を含む場合がある。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実。なお,証拠を挙げていない事実は,当事者間に争いがない。) ⑴ モルフォについてアモルフォは,平成16年5月に設立された画像処理技術の研究開発等を目的とする株式会社であり,平成23年7月に東京証券取引所マザーズ市場に株式を上場した。(乙A5)イ eは,モルフォの創業者であり,その設立以降代表取締役を務めており, 平成27年当時も,モルフォの唯一の代表取締役であって,後述するCTO室室長を兼任していた。(甲A6,乙A5)モルフォには,他の取締役として,平成27年当時,常務取締役であるf,取締役であるgらがいた。(乙A15・資料1・31,32頁)なお,平成26年10月31日時点のモルフォの発行済株式総数は,1 62万4600株であったが,eは,このうち16万4600株(発行済株式総数の10.13%)を保有しており,eを除くモルフォの取締役及び監査役の保有株式数の合計は,1万5000株に満たないものであった。 (乙A15・資料1・26,27,31,32頁,乙A18)ウモルフォには,平成27年当時 り,eを除くモルフォの取締役及び監査役の保有株式数の合計は,1万5000株に満たないものであった。 (乙A15・資料1・26,27,31,32頁,乙A18)ウモルフォには,平成27年当時,ディープラーニング(人間の脳の仕組 みを模した機械学習の新たな手法。以下「DL」と表記することがある。) の研究開発を担当するCTO室,スマートフォン等の組込機器において画像処理を行うソフトウェアの開発やライセンス販売等を行うエンベデッドIP事業部(以下「EIP事業部」という。),サーバ等において画像処理や画像認識を行うソフトウェアの開発やライセンス販売及びディープラーニングを用いた画像認識技術の営業等を行うネットワークサービス事 業部,その他の技術開発を行うプロダクト開発部等の部署が設置されていた。(甲A6,乙A5,7)エ EIP事業部においては,毎週月曜日にEIP事業部定例会議が開催されており,この定例会議では,EIP事業部の出席者が,担当案件の進捗状況について,同部の営業担当部員が作成する「エンベデッドIP事業部 定例会議週報」と題する週報(以下「営業週報」という。)及び同部の技術担当部員が作成する「エンデベッドIP事業部進捗報告」と題する週報(以下「技術週報」という。)を,会議室のスクリーンにプロジェクターで投影するなどし,これを読み上げて報告を行っていた。 プロダクト開発部においては,毎週月曜日にプロダクト開発部定例会議 (以下単に「定例会議」というときがある。)が開催されており,この定例会議では,EIP事業部の出席者が担当案件の進捗状況について,技術週報に基づき報告を行っていた。(乙A7・5~8頁)なお,営業週報及び技術週報は,モルフォ社内の共有フォルダに保存され,EIP 例会議では,EIP事業部の出席者が担当案件の進捗状況について,技術週報に基づき報告を行っていた。(乙A7・5~8頁)なお,営業週報及び技術週報は,モルフォ社内の共有フォルダに保存され,EIP事業部部員であれば営業週報及び技術週報の双方を,プロダク ト開発部部員であれば技術週報を,いつでも閲覧することが可能であった。 ⑵ 原告らについてア原告aは,平成24年4月にモルフォに入社し,平成27年10月当時,プロダクト開発部に所属していた。原告aは,主にスマートフォン分野のシステムエンジニアとして顧客に対する技術サポート等を担当していた。 (甲2) イ原告bは,平成19年にモルフォに入社し,平成23年11月からプロダクト開発部部長を務めている。(乙G2)⑶ デンソーについてデンソーは,自動車部品の研究・開発・製造・販売等の事業を国内外で展開する株式会社である。平成27年当時,デンソーは,自動車部品世界トッ プシェアクラスの地位を確立していた。(乙A5・資料5,乙A30,弁論の全趣旨)本件公表モルフォは,平成27年12月11日,TDnetにより,「株式会社デンソーとの資本業務提携及び第三者割当による新株式発行に関するお知らせ」 を公表した(本件公表)。 本件公表では,モルフォが,同日の取締役会において,デンソーとの間で,共同研究開発を目的とした下記アからウまでの業務提携(以下「本件業務提携」という。)を行うとともに,モルフォがデンソーに普通株式26万1800株の第三者割当増資を行うこと(以下,本件業務提携部分と併せて「本 件資本業務提携」という。)を決定した旨の公表がされた。(甲1)。 アディープラーニングによる画像認識技術の車載機器への適用に関する基礎 増資を行うこと(以下,本件業務提携部分と併せて「本 件資本業務提携」という。)を決定した旨の公表がされた。(甲1)。 アディープラーニングによる画像認識技術の車載機器への適用に関する基礎的研究イ画像認識技術を始めとする各種画像処理技術を応用した,電子ミラー等の車載機器に関する研究開発・製品化 ウ上記研究開発の成果に基づく製品・サービスのマーケティングにおける連携本件公表に至る事実経過アデンソーは,平成27年5月26日(以下,平成27年の出来事については,年の表記を省略することがある。)に半導体チップメーカーである NVIDAJapan(以下「NVIDA」という。)が主催したイベ ントにおいて,モルフォのCTO室シニアリサーチャーであるhが行ったディープラーニングに関する講演に興味を持ち,モルフォに対し,ディープラーニングに関する話を聞きたいなどと依頼した。 イ 6月15日の打合せモルフォとデンソーは,6月15日,モルフォの会議室において打合せ を行い(以下「6月15日の打合せ」という。),モルフォからは,eのほか,h,ネットワークサービス事業部部長であるiが出席し,デンソーからは走行安全技術企画室担当次長のjらが出席した。 この6月15日の打合せ以降,モルフォとデンソーとの間では,モルフォの画像処理技術及びディープラーニングを用いた画像認識技術(以下, これらの技術を「本件技術」という。)をデンソーが開発する車載カメラ等に活用することについての可能性の検討が行われるようになった(以下,このモルフォとデンソーの本件技術の活用に関する検討・交渉等を広く「本件協業」という。ただし,本件協業の内容がどの時点で「業務上の提携」に該当するに至ったかについては,後述のとおり争 なった(以下,このモルフォとデンソーの本件技術の活用に関する検討・交渉等を広く「本件協業」という。ただし,本件協業の内容がどの時点で「業務上の提携」に該当するに至ったかについては,後述のとおり争いがある。)。 ウ本件秘密保持契約モルフォとデンソーは,本件協業により相互に提供する情報が第三者に漏えいすることを防ぐ目的で,7月29日付けで秘密保持契約(以下「本件秘密保持契約」という。)を締結した。 エ 8月4日の打合せ モルフォとデンソーは,8月4日,モルフォの会議室において打合せを行い(以下「8月4日の打合せ」という。),モルフォからは,h,iらのほかEIP事業部副部長であるk,同事業部担当マネージャーであるlが出席し,デンソーからはjらが出席した。 オ本件回答 iは,8月4日の打合せの後すぐに,eに対し,本件秘密保持契約の締 結手続が完了したこと,次回から具体的な技術に関する協議に進むことなど,8月4日の打合せの内容を報告した。 その際,eは,iの報告に対し,「分かりました。」と答えた(以下「本件回答」という。)とされている。(乙A5・10頁)カ 8月26日の打合せ モルフォとデンソーは,8月26日,愛知県刈谷市に所在するデンソー本社において打合せを行い(以下「8月26日の打合せ」という。),モルフォからは,h,k及びlが出席した。 その際,h,k及びlは,デンソーから提供された画像にノイズ除去処理や明るさ補正処理を施したサンプル画像(以下「本件サンプル画像」と いう。)を持参し,デンソーとの打合せに臨んだ。 キ 9月11日の打合せモルフォとデンソーは,9月11日,モルフォの会議室において打合せを行い(以下「9月11日の打合せ」という。) いう。)を持参し,デンソーとの打合せに臨んだ。 キ 9月11日の打合せモルフォとデンソーは,9月11日,モルフォの会議室において打合せを行い(以下「9月11日の打合せ」という。),モルフォからは,k及びlが出席し,デンソーからは,走行安全企画室長であるm及びjが出席 した。 ク本件会食k及びlは,9月11日の打合せ後,m及びjと会食を行った(以下「本件会食」という。)。この席上で,mから,デンソーがモルフォに対し資本提携や出資の意向も有している旨の申出を受けた(以下「本件資本 提携の申出」という。)。 ケ 9月18日の打合せeは,9月14日以降,fから,デンソーが資本提携や出資の意向を有している旨の報告を受けた。 eは,9月18日,g,k及びlを集めて打合せを行った(以下「9月 18日の打合せ」という。)。 コ 9月24日の打合せモルフォとデンソーは,9月24日,モルフォの会議室において打合せを行い(以下「9月24日の打合せ」という。),モルフォからは,e,f,g,k及びlが出席し,デンソーからは,走行安全事業部長で常務執行役員のn,m及びjが出席した。 サ本件公表の合意モルフォとデンソーは,10月15日,第三者割当増資の方法で本件資本業務提携を行うことに合意し,11月5日頃,本件資本業務提携を12月11日に公表すること,デンソーが取得するモルフォの株式数を第三者割当増資後の発行済株式総数の5%となる26万1800株とすることな どを合意した。(甲1,乙A5・17頁)原告らによる本件各取引ア原告aは,モルフォ従業員持株会(以下「本件持株会」という。)において拠出口数(月例。以下同じ。)を20口2万円としていたところ,10月6日, 1,乙A5・17頁)原告らによる本件各取引ア原告aは,モルフォ従業員持株会(以下「本件持株会」という。)において拠出口数(月例。以下同じ。)を20口2万円としていたところ,10月6日,拠出口数を40口4万円に増加させた。 本件持株会は,SMBC日興証券株式会社(以下「SMBC日興証券」という。)を通じ,モルフォの株式を,本件公表前の10月26日に200株,11月26日に200株それぞれ買い付けた。 これにより,原告aは,インサイダー取引から除外される従前の拠出口数20口分に対応する買付けを除き,増加させた拠出口数20口分に対応 する買付けとして,モルフォの株式8.250株を買付価額合計3万6814円で買い付けたこととなった(以下「本件a取引」という。)。(乙F1,2)イ原告bは,本件持株会において拠出口数を10口1万円としていたところ,10月1日,拠出口数を50口5万円に増加させた。 本件持株会は,SMBC日興証券を通じ,モルフォの株式を,本件公表 前の10月26日に200株,11月26日に200株それぞれ買い付けた。 これにより,原告bは,インサイダー取引から除外される従前の拠出口数10分口に対応する買付けを除き,増加させた拠出口数40口分に対応する買付けとして,モルフォの株式16.500株を買付価額合計7万3 629円で買い付けたこととなった(以下,「本件b取引」といい,本件a取引と併せて「本件各取引」という。)。(乙G2)ウモルフォの株式の,本件公表がされた12月11日の後2週間における最も高い価格は,7320円であった。(乙F1,乙G1)審判手続の開始 金融庁長官は,原告らが遅くとも9月28日までに,原告らがその職務に関し本件重要事実を知りながら, 2週間における最も高い価格は,7320円であった。(乙F1,乙G1)審判手続の開始 金融庁長官は,原告らが遅くとも9月28日までに,原告らがその職務に関し本件重要事実を知りながら,法定の除外事由がないのに,本件公表がされた12月11日より前に自己の計算において本件各取引をしたとして,原告らに対し,平成29年2月27日付けで,金商法178条1項に基づき,同項16号に該当する事実に係る審判手続開始決定をした。(乙F1,乙G 1)本件各納付命令等金融庁長官は,平成30年12月20日付けで,原告aに対し課徴金2万円を国庫に納付することを命ずる旨の処分(甲3。以下「原告a納付命令」という。)を,原告bに対し課徴金4万円を国庫に納付することを命ずる旨 の処分(甲3の2。以下,「原告b納付命令」といい,原告a納付命令と併せて「本件各納付命令」という。)をそれぞれした。 本件各訴え原告らは,平成31年1月23日,本件各訴えを提起した。(顕著な事実) 4 争点 eが「業務執行を決定する機関」に該当するか(争点1) 本件回答が「業務執行を決定する機関」がした「業務上の提携」を「行うことについての決定」に該当するか(争点2)原告らが本件重要事実を自己の職務に関し「知つた」といえるか(争点3) 5 争点に関する当事者の主張⑴ eが「業務執行を決定する機関」に該当するか(争点1) (被告の主張)ア金商法166条2項1号の「業務執行を決定する機関」とは,会社法所定の決定権限のある機関には限られず,実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことの機関であれば足り,具体的にいかなる機関を「業務執行を決定する機関」に捉えるかについては,会社により,ま た決 る機関には限られず,実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことの機関であれば足り,具体的にいかなる機関を「業務執行を決定する機関」に捉えるかについては,会社により,ま た決定の対象となる事項によって異なるため,その実情に照らして個別に判断されるべきである。 イ ①eは,モルフォの創始者であり,モルフォの設立以降,代表取締役社長を務めており,モルフォの最高責任者として,その経営方針及び事業戦略等の意思決定をしていた。②モルフォの第11期有価証券報告書(平成 25年11月1日から平成26年10月31日まで)において,eはモルフォグループの最高責任者として,経営方針及び事業戦略等を決定すると記載されており,モルフォにおいては,eが多大な影響力を持ち,重要事項を単独で決定し得る存在であることや,そのようなeによる決定が,投資者の投資判断に影響を及ぼし得る性質のものであることが対外的に表明 されていた。③当時,モルフォがデンソーに対してエクスクルーシブの権利を付与することは,いずれもモルフォの事業・経営方針に大きな影響を及ぼす事項であり,今後のモルフォの方針を決定する上で,極めて重要なものであったといえるところ,eは,8月までに,自らの判断に基づいて,デンソーに対してエクスクルーシブの権利を付与することが可能である旨 回答した。 これらの事情からすれば,eが単独でモルフォの「業務執行を決定する機関」であったことは明らかである。 ウこれに対し,原告らは,モルフォの「業務執行を決定する機関」は,eとgの合議体である旨主張するが,gがeと同一の立場にあることを示す客観的な資料はない。また,原告らの主張のとおりeとgが経営方針につ いて合議したことがあったとしても,いかなる経営判断の ,eとgの合議体である旨主張するが,gがeと同一の立場にあることを示す客観的な資料はない。また,原告らの主張のとおりeとgが経営方針につ いて合議したことがあったとしても,いかなる経営判断の場面におけるものなのか明らかではなく,原告らの主張は抽象的なものにとどまる。 仮に,デンソーからの本件資本提携の申出を受けて,eが打合せにおいてgの意見を改めて聞くなどしていたとしても,そのことだけで,gが実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行う機関に含まれる ということはできない。 (原告らの主張)ア金商法166条2項1号の「業務執行を決定する機関」に該当するか否かの判断は,実質的に行われるべきものであり,当該企業における普段の意思決定の実情に即した判断がされるべきである。 イ本件では,以下の事情からして,モルフォの「業務執行を決定する機関」は,eとgの合議体である。 すなわち,①gは,1月にモルフォの取締役に就任したが,これはeがgの企業経営手腕を高く評価し,モルフォの事業部門の責任者として取締役就任を打診したことがきっかけであった。このようにgは,企業経営の 経験を買われ,モルフォの経営判断に参画するために事業部門の責任者に就いたという経緯がある。②また,gがモルフォの取締役に就任した以降,eとgは,事業面の重要な業務方針について合議をしてモルフォの方針を決定していた。しかも,合議では,eの発案についてgが相談に乗ってただ是認するというものでは決してなく,むしろgが提案をしたり,eの考 えと異なる意見をgが述べたりしてgの意見どおりの方針に決まったこと や,gの反対で契約締結に至らなかったこともあったのであり,実質的な合議がされていた。③デンソーから本件資本提携の申出 えと異なる意見をgが述べたりしてgの意見どおりの方針に決まったこと や,gの反対で契約締結に至らなかったこともあったのであり,実質的な合議がされていた。③デンソーから本件資本提携の申出がされた9月11日の本件会食では,モルフォのkは,デンソーのjらに対し,「社長は技術面,gは経営面を見ている」などと発言し,そのためデンソーとの交渉にはgを同席させる旨述べた。このことは,モルフォ社内でも事業面につ いては,eとgの合議体で決めているという認識がされていたことを表している。④そして,デンソーとの交渉でも,モルフォの社員からgに報告と相談がされ,その後,eが加わって方針についてgと合議した。 このような①から④までの経緯及びモルフォ社内での報告・意思決定の手順等に照らせば,モルフォにおいて,事業面の「業務執行を決定する機 関」がeとgの合議体であったことは明白である。 ウ被告は,モルフォの第11期有価証券報告書のうち,eがモルフォグループの最高責任者として経営方針及び事業戦略等を決定する旨の記載のみを取り上げて主張しているが,被告の引用は恣意的であるばかりか,その内容を曲解したものである。 上記有価証券報告書の記載の趣旨は,モルフォが技術的専門性を極めたeによって創業され,その土台の上に成り立つ企業であることを示した上で,そのために,eが最後はモルフォの経営方針や事業戦略について決断し,かじ取りを行って全責任を負うことを明示し,特に研究開発分野ではeの持つ技術的知見に依存する側面が大きいことを明らかにしたもので あって,eが個々の業務執行について一人で決めていることを示したものではないし,そのように読む投資家はいない。 なお,被告が依拠する上記有価証券報告書では,取締役会がモルフォの重要事項の意 あって,eが個々の業務執行について一人で決めていることを示したものではないし,そのように読む投資家はいない。 なお,被告が依拠する上記有価証券報告書では,取締役会がモルフォの重要事項の意思決定を行っていることや,モルフォの執行会議では取締役会の決議事項以外の経営に関する重要な事項について審議・決定すること が明らかにされており,eが単独で個々の業務執行を決定しているわけで はないことを明示している。 ⑵ 本件回答が「業務執行を決定する機関」がした「業務上の提携」を「行うことについての決定」に該当するか(争点2)(被告の主張)本件では,モルフォの「業務執行を決定する機関」であるeが本件回答を したことで,遅くとも8月4日までに金商法166条2項1号ヨ及び施行令28条1号の「業務上の提携」を「行うことについての決定」をした。 ア 「業務上の提携」について金商法166条2項1号ヨ及び施行令28条1号の「業務上の提携」とは,会社が他の企業と一定の業務を遂行することをいい,協力して行う業 務の内容について限定はなく,また,協力の形式も問わないとされ,いわゆる技術提携,開発提携等がその典型例であるとされる。「業務上の提携」の意義の主眼は,会社が他の企業と協力して一定の業務を遂行することにあるのであり,一般的な呼称にとらわれることなく,会社が他の企業と協力して行う技術活用等は全て「業務上の提携」に含まれる。 本件において,デンソーは,ディープラーニングによる画像認識技術を車載カメラに組み込み搭載することによる車載危険検知ユニットの新機種(以下「新規車載カメラ等」という。)を,ディープラーニングについての研究が進んでいる企業と共同開発すること(以下「本件共同開発」という。)を最終的に計 載することによる車載危険検知ユニットの新機種(以下「新規車載カメラ等」という。)を,ディープラーニングについての研究が進んでいる企業と共同開発すること(以下「本件共同開発」という。)を最終的に計画していた。 そして,デンソーは,モルフォに対し,8月4日の打合せにおいて,本件技術の活用等をした画像処理及び画像認識の分野で技術的に本件共同開発を実現することができるか否かを平成27年末までに判断したい旨の要望(以下「本件共同開発可否の判断に関する要望」という。)をした。一般に,共同開発の合意の可否についての交渉において,交渉当事者は,当 該開発の成果を十分なものにする又は最大化するために,互いに相手方が 共同開発を行うに足りるだけの技術力があるか否かに最大の関心があることから,それを確認するための作業が交渉における中心的な事項になる。 そうすると,この本件共同開発可否の判断に関する要望について検討・交渉することは,モルフォにおいて,デンソーとの間で,「業務上の提携」の一つである技術提携等の可否についての交渉を行うことにほかならない ものであった。 イ 「行うことについての決定」をしたことについて金商法166条2項1号柱書きの「行うことについての決定」をしたとは,「業務執行を決定する機関」において,①同号に掲げる事項そのものを会社の業務として行う旨の決定に限らず,②同号に掲げる事項の実現を 意図して,当該事項に向けた作業等(調査や準備,交渉等の諸活動)を会社の業務として行うことも含まれる。 eは,以下のとおり,8月4日の打合せ後に本件回答をしたことで,デンソーからの本件共同開発可否の判断に関する要望に対し,本件共同開発可否についての交渉をするために必要不可欠な作業(以下「本件共同開発 に とおり,8月4日の打合せ後に本件回答をしたことで,デンソーからの本件共同開発可否の判断に関する要望に対し,本件共同開発可否についての交渉をするために必要不可欠な作業(以下「本件共同開発 に関する作業」という。)を,モルフォの業務として行っていくことを明示的に了承し,もって「業務上の提携」を「行うことについての決定」をした。 すなわち,モルフォは,平成27年当時,車載組込分野を戦略的に重要なターゲットと位置付けた上で,新規ハードウエアへの対応に向けた 事業者等との連携強化による技術開発を検討していた。一方,デンソーは,新規車載カメラ等にディープラーニングの技術を利用することができないかとの考えを有しており,モルフォの技術に対し興味を持った。 このような状況において6月15日の打合せが行われたところ,その際,モルフォとデンソーは,本件秘密保持契約締結後に,デンソーの新 規車載カメラ等にモルフォの本件技術を活用することの可否に関する初 期検討を協力して進めていくことを内容とする本件協業に合意した。この本件協業は,正にモルフォの平成27年当時の上記経営方針に合致するものであり,かつ,モルフォの企業価値を高めるものであった。 以上からすると,eを含むモルフォの役員は,6月15日の打合せ後において,モルフォの経営方針に合致する相手方としてデンソーを適切 と考え,デンソーとの本件協業に強い関心を持ち,その実現を意図していた。 その後,モルフォのiとデンソーのjとの間で,本件秘密保持契約の内容について交渉を重ねた上で,本件秘密保持契約が締結された。eも,6月15日の打合せ以降のiとjの間でやり取りされたメールを受信し ており,本件秘密保持契約の締結に係る進捗状況や今後の打合せ内容を了知していた ねた上で,本件秘密保持契約が締結された。eも,6月15日の打合せ以降のiとjの間でやり取りされたメールを受信し ており,本件秘密保持契約の締結に係る進捗状況や今後の打合せ内容を了知していた。 そして,8月4日の打合せ前の時点において,モルフォのiとデンソーのjは,デンソーが8月4日の打合せで提示する課題や希望のほかに,8月26日の打合せにおいて実務者を交えて具体案の議論を進 めていくことをメールでやり取りしており,前記のとおりeもこのことを了知していた。 8月4日の打合せでは,デンソーから①本件共同開発可否の判断に関する要望,②車載カメラの高画質化に関して,前方カメラによる先端運転支援システムの認識向上のためのノイズ除去・ブレ除去・ダイナミッ クレンジ補正により画像処理を行うこと及び周辺カメラの画質向上のため,歪み補正・ダイナミックレンジ補正・合成などによる画像処理を行う旨の要望,③ディープラーニング関連として,車載カメラの映像から場面や起こり得るリスクの認識の可否及び安全運転指導のためのドライブレコーダーの自動分析化などについて開発の検討を進めたい旨の要望 (以下,②及び③を併せて「車載カメラの高画質化・ディープラーニン グに関する要望」という。)がされた。 このうち,車載カメラの高画質化・ディープラーニングに関する要望については,6月15日の打合せにおいて,モルフォとデンソーが合意した本件協業を進めていくことについてのデンソーとしての課題や希望に当たるものであり,これに関し実務者も交えた具体案の議論を8月2 6日の打合せにおいて行うことが確認された。 他方で,本件共同開発可否の判断に関する要望については,打合せに出席したモルフォの担当者の一存で決められる事項ではなかったため,i の議論を8月2 6日の打合せにおいて行うことが確認された。 他方で,本件共同開発可否の判断に関する要望については,打合せに出席したモルフォの担当者の一存で決められる事項ではなかったため,iは,eに対し,本件共同開発可否の判断に関する要望を報告し,eにその実施の可否の判断を仰いだ。 このデンソーからの本件共同開発可否の判断に関する要望では,モルフォとデンソーが,平成27年末までに,2,3か月で終了するような小プロジェクトを複数行うことが予定されており,この小プロジェクトが成功した場合には,モルフォは,デンソーから本件共同開発の実現が技術的に可能であると判断され,その結果,両社の間で本件共同開発の 実施について合意が成立することになると考えられた。すなわち,8月4日の打合せにおいて,デンソーは,モルフォに対して「協業を進める場合には,自動車分野に関してはDN(デンソーの意味)だけと行うようなエクスクルーシブを結ぶことが可能か」と聞いたところ,モルフォからは,「規模感等にもよるが可能であるという返答」があった。デン ソーが,上記のとおりエクスクルーシブの権利に言及したということは,小プロジェクトが成功した場合には,モルフォとデンソーとの間で,本件技術の活用等のための画像処理と画像処理技術の分野での共同開発に関する合意が成立することを当然に視野に入れていたことを裏付けている。 このため,モルフォとデンソーが平成27年末までに行う予定の小プ ロジェクトの実施並びにその実施方法及びその成果等に関する実務者を交えた具体的な議論は,本件共同開発に関する合意の可否についての交渉のために必要不可欠な作業(本件共同開発に関する作業)に当たるものであった。 以上からすると,eは,前記のとおり6月15日の打 を交えた具体的な議論は,本件共同開発に関する合意の可否についての交渉のために必要不可欠な作業(本件共同開発に関する作業)に当たるものであった。 以上からすると,eは,前記のとおり6月15日の打合せ以降デン ソーとの本件協業に強い関心を持っていたところ,8月4日の打合せ後のiの報告に対し,本件共同開発に関する合意の成立を意図して本件回答をすることで,本件共同開発可否の判断に関する要望を了承したものである。 したがって,デンソーからの本件共同開発可否の判断に関する要望に 対し,eが本件回答をしたことによって,eは,本件共同開発に関する作業をモルフォの業務として行っていくことを明示的に了承し,もって「業務上の提携」の一つである技術提携等を「行うことについての決定」をしたものである。 この結果,8月4日の打合せ後において,eがデンソーとの交渉を進 めることを了承した本件共同開発に関する事項は,9月24日の打合せによりデンソーとの間で事実上合意され,12月11日に本件資本業務提携の内容として公表(本件公表)がされるに至ったものである。 ウこれに対し,原告らは,モルフォが「業務上の提携」を「行うことについての決定」をした時期に関しるる指摘し,被告の主張を論難するが,以 上の経過からすれば,これらの原告らの主張に理由がないことは明らかである。 (原告らの主張)eが8月4日に本件回答をしたことをもって,「業務上の提携」を「行うことについての決定」をしたとする被告の主張は誤っている。モルフォの 「業務執行を決定する機関」は,eとgの合議体であり,モルフォにおいて 「業務上の提携」を「行うことについての決定」がされたのは,9月18日の打合せの時である。 ア 「業務上の提携 「業務執行を決定する機関」は,eとgの合議体であり,モルフォにおいて 「業務上の提携」を「行うことについての決定」がされたのは,9月18日の打合せの時である。 ア 「業務上の提携」について金商法166条2項1号ヨ及び施行令28条1号の「業務上の提携」については,十分な理由付けがないまま,企業が他企業と協力して一定の業 務を遂行することであり,協力の内容に限定はなくその形式も問わないと一般的に解されているが,このような解釈は,企業活動の社会的実態及び経済界の常識からかけ離れた定義である。そして,インサイダー取引については,刑罰規定の構成要件にもなっていることからすれば,このような定義は,明らかに限定性を欠いた漠然不明確なものであり,法令解釈とし て不当である。 「業務上の提携」については,証券市場の公平性を確保しつつ,規制範囲を明確化するために,投資家の投資判断に影響を及ぼし得るものとして重要な事項を客観的に明らかに類型化したものの一つである以上,このような観点からの分析と定義付けが不可欠である。企業は,通常,あらゆる 場面であらゆる企業とのあらゆる協力形態の下で事業を遂行しているところ,それら全てが投資家の投資判断に影響を及ぼすものであるとは考え難い。金商法166条2項1号ヨ及び施行令28条1号の「業務上の提携」は,あらゆる企業取引形態の中で投資家の投資判断に影響を及ぼすものと考えられ,かつ,それが客観的・外形的にみて「業務上の提携」といえる だけの強い結び付き(協力関係)とその継続性があることが最低限不可欠であると解するべきである。 本件においては,モルフォは,9月11日の打合せ後の本件会食において,デンソーから本件共同開発のための本件資本提携の申出を初めて明示的に があることが最低限不可欠であると解するべきである。 本件においては,モルフォは,9月11日の打合せ後の本件会食において,デンソーから本件共同開発のための本件資本提携の申出を初めて明示的に提案され,その検討を求められた。このデンソーからの提案内容は, 投資家の投資判断に影響を及ぼすものであるかという観点から見ても,ま た,原告らが主張する継続性や両者の結び付きとしての協力関係という観点からも,「業務上の提携」と呼ぶにふさわしい提案であったが,それ以前にモルフォとデンソーとの間で「業務上の提携」と呼ぶにふさわしい提案がされたことはなかった。 イ 「行うことについての決定」をしたことについて 上記のとおり9月11日の打合せ後の本件会食時に,デンソーからモルフォに対し「業務上の提携」と呼ぶにふさわしい本件資本提携の申出がされたのであるが,同申出に対し,モルフォが業務として「行うことについての決定」をしたのは,9月18日の打合せにおいて,eとgが合議して方針を決めた時である。 これに対し,被告は,8月4日の打合せ後に,eがiに対し本件回答をしたことをもって,「業務上の提携」を「行うことについての決定」をしたと主張するが,以下の理由から誤っている。 モルフォの営業活動は,顧客となる営業先企業に自社技術の紹介を行い,営業先企業の要望に応じてその提供する試作機(以下,デモ機も含 めて「試作機等」という。)に,モルフォの技術をカスタマイズして組み込むなどしてデモンストレーションを行いその評価を得て,営業先企業が要望する形態にして受注することができるように努力する形で行われている。 このため,モルフォでは,通常のビジネスモデルであるライセンス提 供又は受託開発に限らず,日々の営業先企業 業先企業が要望する形態にして受注することができるように努力する形で行われている。 このため,モルフォでは,通常のビジネスモデルであるライセンス提 供又は受託開発に限らず,日々の営業先企業との活動を広く「協業」と呼び,こうした協業に向けた営業活動を行うに当たっては,eの判断は要しない。 被告は,モルフォとデンソーが初めて顔合わせをした6月15日の打合せにおいて,大企業であるデンソーとの「業務上の提携」に向けた作 業を行うことになれば,モルフォの企業価値が高まるものであったから, eがデンソーとの本件協業に強い関心と興味をもっていたと主張し,これをもってeが本件回答をしたことにより「業務上の提携」を「行うことについての決定」がされた旨主張するが誤っている。 モルフォでは,6月15日の打合せ以前の営業活動として,車載分野において複数の企業との間で営業活動又は交渉を行っていたものであり, ディープラーニングに関する本件技術の活用についても,秘密保持契約を締結した営業先企業との間で協議を行うなどしていた。つまり,6月15日の打合せにeが出席したのは,特別な事情があったからではなく,単にNVIDAの担当者からeに対し,デンソーからの依頼が伝えられたからであり,他の企業に対して行うのと同様にモルフォの紹介をする ためにすぎなかった。 被告は,eが6月15日の打合せ後に本件秘密保持契約を締結することに了承したこと,その後,iがデンソーのjとの間で本件秘密保持契約の締結に関する協議を進めるなどし,eがこうした経緯をメールで把握していたこと,7月29日付けでモルフォとデンソーとの間で本件秘 密保持契約が締結されたことなどの事情をもって,eが本件回答をしたことにより「業務上の提携」を「行うこ うした経緯をメールで把握していたこと,7月29日付けでモルフォとデンソーとの間で本件秘 密保持契約が締結されたことなどの事情をもって,eが本件回答をしたことにより「業務上の提携」を「行うことについての決定」がされた旨主張する。 しかし,モルフォの営業活動では,自社の技術力を評価してもらい顧客となる営業先企業との取引につなげていくために,自社の技術を一定 程度開示せざるを得ないことから,秘密保持契約を締結することが常に必要となるのであり,秘密保持契約を締結したことは,モルフォでは営業活動を始めるための取り掛かりという意味合いしかない。秘密保持契約の締結に当たっては,モルフォにおいて定型書式を用意し,各部門長の権限と裁量で締結手続を進めていたのであり,普段からeが関与する ことはなかった。 現に,モルフォがデンソーとの打合せを始めた6月以降の5か月間だけでも,モルフォは,営業活動を始めるに当たり31社と秘密保持契約を取り交わしているが,eは,そのいずれにも関与していない。また,モルフォの社員からeに対し交渉状況がメールで送信されていたとしても,eがそれを逐一確認・把握することはない。 このようなモルフォにおける秘密保持契約締結の意義,契約締結の実情等を踏まえれば,モルフォがデンソーとの間で本件秘密保持契約を締結したことが,「業務上の提携」に向けた交渉を始めたことの根拠となるものではないし,e個人が「業務上の提携」を「行うことについての決定」をしたことの根拠となるものでもない。 被告は,8月4日の打合せ後,eがiからデンソーと具体的な技術に関する協議に進むことの報告を受けて,eが「分かりました」と本件回答をしたことにより「業務上の提携」を「行うことについての決定」をした旨主 は,8月4日の打合せ後,eがiからデンソーと具体的な技術に関する協議に進むことの報告を受けて,eが「分かりました」と本件回答をしたことにより「業務上の提携」を「行うことについての決定」をした旨主張するが誤っている。 すなわち,被告は,8月4日の打合せにおいて,デンソーからモル フォに対し,本件共同開発可否の判断に関する要望を含む提案がされたとし,iの報告は,eに対し,本件共同開発可否の判断を仰いだものであり,これに対するeの本件回答は,デンソーとの共同開発に関する具体的な検討に不可欠な作業を,モルフォの業務として行っていくことを明示的に了承し,もって「業務上の提携」を「行うことについての決定」 をした旨主張する。 しかし,8月4日の打合せは,デンソーがモルフォの本件技術を自社製品に活用することに関する願望を述べた上で,モルフォの技術レベルを見定めるために幾つかの課題を与えることとなっただけで終了したものであり,モルフォがデンソーから受注すべき業務の具体的な手順や内 容が決められることはなく,また,今後のモルフォとデンソーの取引形 態に関する何らの提案や協議もなかった。 また,8月4日の打合せの時点で,デンソーは,本件共同開発の相手方をモルフォに絞り込むどころか,モルフォを含む複数の企業に対し同じような働きかけを行い,それらの企業の対応と実力を見極めようとして課題を出していた状況であった。このように,8月4日の打合せ時点 では,デンソーが複数の企業の素性や技術の基礎力を見るため課題を出し競わせる一環として,モルフォにも課題を出してデモンストレーションを求めていたのであって,「業務上の提携」に関する具体的な準備・検討の議論がされたのでもなければ,その議論を進める合意をしたものでもない。 ,モルフォにも課題を出してデモンストレーションを求めていたのであって,「業務上の提携」に関する具体的な準備・検討の議論がされたのでもなければ,その議論を進める合意をしたものでもない。 そして,モルフォがデンソーからの上記課題に対応して行う活動は,モルフォの初期の営業活動として自社技術を開示し,営業先企業が開発を考える製品の仕様や機能に応えられる技術力があるか否かを評価してもらうためのものであって,「業務上の提携」に向けた作業というものではない。 また,被告は,iがeに対し8月4日の打合せの結果を報告した際,eがiに対し「分かりました」と本件回答をしたことをもって,「業務上の提携」を「行うことについての決定」をした旨主張する。 しかし,eが「分かりました」と明確に発言したとされること自体がそもそも不自然であり,eが上記発言をした旨供述したのは,証券取引 等監視委員会の調査官が誘導的に質問した結果によるものと考えられるから,その言葉尻を捉えて「業務上の提携」を「行うことについての決定」がされたとするのは不適切である。 仮に,eがiに対し本件回答のような発言をしたとしても,iは,デンソーとの交渉に関し,モルフォ側の暫定的な対応をしていた人物であ り,8月4日の打合せには,今後新しくモルフォ側の担当となるkとl をデンソーに紹介するために,いわば顔つなぎ役として出席したにすぎない。そして,iが報告した内容は,①デンソーとの案件をkらに引き継いだこと,②本件秘密保持契約を締結したこと,③今後,デンソーとの間では技術に関する話合いに進むこと,という簡素で表層的なものであり,その報告はモルフォ社内で他の社員がいる中で行われたものであ る。 これらの事情からすると,iがeに対し上記報告 ンソーとの間では技術に関する話合いに進むこと,という簡素で表層的なものであり,その報告はモルフォ社内で他の社員がいる中で行われたものであ る。 これらの事情からすると,iがeに対し上記報告をした際,eがモルフォの業務執行について会社の機関として決断を求められていなかったことは明らかである。また,eが「分かりました」と発言したからといって,それがiの現状報告を理解したという意味にとどまらず,「業 務上の提携」を「行うことについての決定」をしたと解する余地はないし,次回のデンソーとの8月26日の打合せに出席しなくなる一社員のiに対し,会社の機関としての決定を表明することは考え難い。 被告は,8月26日の打合せにおいて,事前にデンソーからモルフォに対して出された課題に対し,モルフォの本件技術を施した本件サンプ ル画像に関するデモンストレーションが行われたことをもって,eが本件回答をしたことにより「業務上の提携」を「行うことについての決定」がされた旨主張する。 しかし,モルフォが行った上記デモンストレーションは,モルフォの担当者らが,社内決裁も不要な範囲で無償で本件技術を用いてデンソー から与えられた課題をこなしたというだけのものであり,モルフォが普段からどの営業先企業に対しても行っている通常の営業活動にとどまるものであり,およそ「業務上の提携」に向けた作業とはいえない。 他方で,モルフォは,9月11日の本件会食において,デンソーから本件共同開発のための本件資本提携の申出がされたものであるが,これ は前記のとおり「業務上の提携」と呼ぶにふさわしい内容を持った提案 であった。そして,デンソーからの本件資本提携の申出について,モルフォの業務として検討を開始することの決定,すな は前記のとおり「業務上の提携」と呼ぶにふさわしい内容を持った提案 であった。そして,デンソーからの本件資本提携の申出について,モルフォの業務として検討を開始することの決定,すなわち「業務上の提携」を「行うことについての決定」がされたのは,9月18日の打合せにおいて,eとgが合議した時であった。このことは,その後,eとgが,デンソーからの本件資本提携の申出を受け入れるため,①エンジニアの 採用計画,②専任社員の在り方,③デンソーに求める対価の額,④エクスクルーシブの権利の在り方という課題の検討を行ったことによって裏付けられている。 ⑶ 原告らが本件重要事実を自己の職務に関し「知つた」といえるか(争点3)(被告の主張) ア金商法166条1項1号にいう重要事実をその者の職務に関し「知つた」とは,投資者の投資判断に影響を及ぼすべき当該事実の内容の一部を知った場合も含まれ,当該事実が金商法所定のインサイダー取引の構成要件に当てはまるとの認識までは必要がない。 イ原告aは,プロダクト開発部部員として,少なくとも9月7日,同月1 4日及び同月28日のプロダクト開発部定例会議に出席し,原告bは,プロダクト開発部部長として,8月24日,同月31日,9月7日,同月14日及び同月28日のプロダクト開発部定例会議に出席し,それぞれ技術週報に基づく報告を受けた。また,各回の技術週報は,プロダクト開発部部員がアクセスすることができるモルフォ社内の共有フォルダに保存され ており,原告らを含むプロダクト開発部部員は,いつでも閲覧することができる環境にあった。 ウ原告らは,プロダクト開発部定例会議に出席した際には技術週報を読み,kらから技術週報に基づく報告を受けることによって,また,プロダクト開発部定 つでも閲覧することができる環境にあった。 ウ原告らは,プロダクト開発部定例会議に出席した際には技術週報を読み,kらから技術週報に基づく報告を受けることによって,また,プロダクト開発部定例会議を欠席した際には,モルフォ社内の共有フォルダ上に保存 されている技術週報を確認することによって,モルフォとデンソーとの間 で,モルフォの本件技術をデンソーの新規車載カメラに搭載するという両社が協力して行う本件技術活用等について,日程や内容を含め,具体性を増す方向で協議が進行しており,特に本件技術の活用等のための画像処理と画像認識の分野での本件共同開発の可否に関する交渉等に関し,デンソーのnとの間で口頭合意に至っていることを認識していたと認められる。 また,プロダクト開発部定例会議には,EIP事業部の技術担当部員のほか,eが室長を兼任しているCTO室の役職員も出席していたところ,各定例会議においては,モルフォとデンソーが協力して行う本件技術活用等について具体性を増す方向で協議が進行しているにもかかわらず,eを含めたCTO室の役職員は,協議を止めたり,異議を唱えたりするような ことはなかったのであるから,各プロダクト開発部定例会議に出席していた者は,モルフォとデンソーとの協議が,EIP事業部単独あるいはプロダクト開発部単独で行っている案件ではなくモルフォが会社として進めていることを認識していたものである。 エ特に,原告bは,プロダクト開発部部長として同部の職務を円滑に遂行 すべく指揮を執るため,各会議において報告事項とされた内容をについて,EIP事業部からの報告も含めて当然に承知していたものといえる。また,モルフォにおいては,営業担当者がモルフォのサーバに設けられた客先議事録掲示板と呼ばれる共有 いて報告事項とされた内容をについて,EIP事業部からの報告も含めて当然に承知していたものといえる。また,モルフォにおいては,営業担当者がモルフォのサーバに設けられた客先議事録掲示板と呼ばれる共有フォルダに顧客との協議や交渉等に関する議事録を投稿すると原告bの宛先を含むメールアドレスに対し,情報共有のた めに投稿内容を知らせるメールが送信されていた。複数の部下を抱えるプロダクト開発部部長である原告bは,同部に作業依頼が来る可能性のある共同開発案件の進捗に無関心であったとは到底考えられず,同部の業務が円滑に遂行されるべく指揮を執るために,上記客先議事録掲示板に投稿されたデンソーとの案件についての議事録についても,関心を持って閲読し ていたことが強く推認される。 オ以上によれば,原告aについては,遅くとも10月5日までに,原告bについては,遅くとも9月28日までに,本件重要事実を自己の職務に関し「知つた」と認められる。 (原告らの主張)ア 「業務上の提携」を「行うことについての決定」をしたことを自己の職 務に関し「知つた」とは,投資家の投資判断に重要な影響を及ぼすものであり,内部者として特権的立場にあるか否かという観点から,通常取引ではなし得ない事業上の共同での取組を行うことについて決定したことを認識することができる程度に知ったことをいうと解すべきである。 イ被告は,原告aについては遅くとも10月5日までに,原告bについて は遅くとも9月28日までに,それぞれ行われた定例会議に出席したことにより,本件重要事実を自己の職務に関し「知つた」旨主張するが,原告らは,上記各時点でこれを知ることはできなかった。 すなわち,モルフォがデンソーから9月11日に本件資本提携の申出を受けたことや,e及 り,本件重要事実を自己の職務に関し「知つた」旨主張するが,原告らは,上記各時点でこれを知ることはできなかった。 すなわち,モルフォがデンソーから9月11日に本件資本提携の申出を受けたことや,e及びgがデンソーからの本件資本提携の申出の内容を了 承し,これを行う方向で準備検討を始めることを決めたことは,モルフォ社内でも伏せられており,定例会議の報告資料である営業週報及び技術週報にもそのことを推知させる記載はなかった。 また,被告が引用する営業週報及び技術週報の記述並びにこれに基づいた説明は,いずれもモルフォがどの営業先企業が相手でも通常行う普段の 営業活動に関する報告をしたにとどまるのであって,本件重要事実を示すものではなく,また推知させるものでもない。むしろ,デンソーに関する営業週報及び技術週報の記載内容は,普段からモルフォが行っている営業先企業に対する営業活動と異なるものではなく,他の投資家との間で情報の偏在や情報量の格差を伴わない内容であった。原告らがモルフォに入社 してから,デンソー以外に一件も「業務上の提携」に関する案件がなかっ たことからすれば,原告らにおいて,本件各取引をする前に本件重要事実を知ることはできなかった。 ウ原告らの個別の事情をみても,原告aの入社時期,入社後の働き方,担当分野,担当業務,モルフォでの業務経験の程度,プロダクト開発部定例会議の趣旨,進行方法,資料の量,内容等の個別事情を加味しても,原告 aにおいて,遅くとも10月5日までに,本件重要事実を自己の職務に関し「知つた」とは認められない。 また,原告bがプロダクト開発部部長であることを考慮に入れても,プロダクト開発部定例会議の趣旨,進行方法,資料の量,内容,特にデンソーとの「業務上の提携」を行う場合の担当部署で とは認められない。 また,原告bがプロダクト開発部部長であることを考慮に入れても,プロダクト開発部定例会議の趣旨,進行方法,資料の量,内容,特にデンソーとの「業務上の提携」を行う場合の担当部署ではないこと,EIP事 業部の報告・依頼内容が,プロダクト開発部が通常の営業活動として行う試作開発に関するものであったこと等の事情を総合すれば,原告bにおいて,遅くとも9月28日までに,本件重要事実を自己の職務に関し「知つた」とは認められない。 エこれに対し,被告は,原告らがインサイダー情報を知って,それを理由 (動機)に本件持株会に入会し又は拠出口数を増加させたかのような主張をするが,そもそも,本件は,個別の事情を問う以前の問題として,本件持株会への入会や拠出口数の増加をインサイダー取引と捉えることの不自然さがまず理解されるべきである。すなわち,一般的に従業員持株会は,投資口数を細分化し,継続的,定期的に自社株式を買い続けることで,従 業員らをして少額でも自社に投資することができるようにし,リスクを分散して自社株式を買い付けることができるように設計されており,本件持株会もそのように設計されている。こうした従業員持株会の仕組みであるがゆえに,仮にインサイダー情報を知ったとしても,従業員持株会に入会した従業員は,その後,間もない時期に公表され,それにより影響を受け た株価の自社株式を買い続けることになる側面を併せ持つこととなる。こ の結果,従業員持株会への入会や拠出口数の増加は,「早耳情報を利用し,他の投資家よりも先んじて売買をして得をする」という典型的なインサイダー取引とそもそも整合しない行為である。 したがって,原告らの本件持株会への入会や拠出口数の増加について,被告が主張するように,原告らが本件重要 先んじて売買をして得をする」という典型的なインサイダー取引とそもそも整合しない行為である。 したがって,原告らの本件持株会への入会や拠出口数の増加について,被告が主張するように,原告らが本件重要事実を自己の職務に関し「知つ た」ことで,それを動機としてインサイダー取引を行ったものであると捉えること自体が不自然,不合理である。 なお,原告らの個別事情をみても,原告らが本件持株会への入会や拠出口数の増加をしたことについて,その動機や態様に不自然な点はない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。なお,この認定に反する証拠は,その限度で採用することができない。 平成27年当時のモルフォとデンソーの状況等 アモルフォは,平成27年当時,国内外のスマートフォン分野を中心とした技術開発及び製品開発を行っていたところ,新事業領域への展開に関し,画像データから得られる各種情報を活用した新たな分野を創出し,積極的に事業領域の拡大を図っていく方針を採用していた。その方針において「中長期的な新たな事業ドメインとして検討している領域」の一 つとして,「その他組込分野(車載,監視カメラなど)」を挙げていた。 (乙A15・資料1・11頁,乙A18) モルフォのビジネスモデルは,主として,①ソフトウェアを開発して製品化し,これを顧客とライセンス契約を締結して提供することで,ライセンス料を得る製品提供型の事業,②顧客からのテーマや規模・時間 等の進め方の指定を受け,当該顧客のために研究開発を行って収入を得 る受託研究・開発型の事業,③顧客とテーマ等や人的リソースを提供し合うなどして共同で新たな研究・開発をする共同研究 等の進め方の指定を受け,当該顧客のために研究開発を行って収入を得 る受託研究・開発型の事業,③顧客とテーマ等や人的リソースを提供し合うなどして共同で新たな研究・開発をする共同研究型の事業があった。 (甲A5・22~24頁,甲A6・3頁,乙A15・資料1・6頁)イ他方で,デンソーは,平成25年頃から,ディープラーニングを用いた画像認識技術等を組み込んだ新規車載カメラ等の研究開発を企画していた がその研究が遅れていたところ,平成27年春頃の時点では,jを中心として,ディープラーニングを用いた画像認識技術の研究が進んでいる企業を共同開発相手として選び,ディープラーニングを用いた画像認識技術等を組み込んだ新規車載カメラ等の製品を共同開発すること(本件共同開発)を検討していた。(甲A9,乙A14・1,2頁・資料1) デンソーからの依頼アモルフォは,平成27年3月頃,半導体チップメーカーであるNVIDAから,NVIDAが主催するディープラーニングのイベントにおける講演の依頼を受けた。eは,上記依頼を受けて,モルフォのCTO室シニアリサーチャーであるhに指示し,5月26日,ディープラーニングに関す る講演を行わせた。 このイベントには,モルフォのほか,株式会社PreferredNetworks(以下「プリファードネットワークス」という。),株式会社クロスコンパスインテリジェンス(以下「クロスコンパス」という。)及び株式会社システム計画研究所(以下「システム計画研究所」という。) も参加して,講演を行った。 イ上記イベントにはデンソーのjも出席しており,jはhが行った講演内容に興味を持ち,モルフォからディープラーニングに関する話を詳しく聞きたいなどとNVIDAに依頼した。NVIDAの担当 行った。 イ上記イベントにはデンソーのjも出席しており,jはhが行った講演内容に興味を持ち,モルフォからディープラーニングに関する話を詳しく聞きたいなどとNVIDAに依頼した。NVIDAの担当者oは,モルフォのeに対し,デンソーの上記依頼をメールで直接打診し,これに応じたe は,自らデンソーとの6月15日の打合せの日を調整した。 ウ他方で,jは,6月15日の打合せに臨むに際し,デンソー社内の担当部署にモルフォの調査を依頼し,モルフォの経営状況等を確認した。 また,jは,モルフォ以外のプリファードネットワークス,クロスコンパス及びシステム計画研究所の担当者とも個別に会って,ディープラーニングに関する話を聞いてみることにした。 (甲A9,10,11,22,23,乙A5・3,4頁,乙A6・2頁,乙A14・資料1~3,乙A17・資料1,3)6月15日の打合せアモルフォとデンソーは,6月15日,モルフォの会議室において打合せを行い(6月15日の打合せ),モルフォからは,eのほか,h及び iが出席し,デンソーからはjらが出席した。 打合せに際し,モルフォとデンソーはこれまで取引関係がなかったことから,お互いの会社の紹介等をすることになり,デンソーからは,ディープラーニングを用いた画像認識技術等を組み込んだ新規車載カメラ等について,3年後をめどとした開発を検討しているとの説明がされ, これに対し,eは,モルフォのディープラーニングを利用した画像認識技術及び画像処理技術(本件技術)について紹介するなどした。 デンソーは,eから紹介された本件技術に興味を持ち,一般的な車載カメラについてもこの技術を活用することができるのではないかとの見解を示した。 このほか打合せの中で,eは,車 などした。 デンソーは,eから紹介された本件技術に興味を持ち,一般的な車載カメラについてもこの技術を活用することができるのではないかとの見解を示した。 このほか打合せの中で,eは,車両分野でライセンス契約を締結する場合は,仮に年間200から300万台を販売したとして,1台当たり100円のライセンス料の支払を受けることが望ましいことなどについても言及したが,エクスクルーシブの権利の付与については言及しなかった(甲A12)。 6月15日の打合せの結果,モルフォとデンソーは,本件協業として, 本件技術の新規車載カメラ等への活用についての可能性を検討していくこととし,またその検討のために相互に提供する情報が第三者に漏えいすることを防ぐため,本件秘密保持契約を締結することに合意した。 (甲A5・12,13頁,甲A6・資料5,甲A9,12,乙A5・4~6頁・資料1,乙A6・2,3頁,乙A14・資料5) イeは,6月15日の打合せ後,デンソーとの交渉を担当する者を選任する必要があると考え,事業部門を管掌する取締役であるgにその人選を委ねた。gは,iから6月15日の打合せの報告を受け,iに対し,デンソーとの協議や交渉は,iのネットワークサービス事業部ではなくEIP事業部に担当させる旨指示した。 この指示を受けて,iは,EIP事業部部長であったqに対し,6月15日の打合せでモルフォとデンソーが話し合った内容等を記載した客先議事録(件名:20150615 デンソー車載危険検知ユニット向け初回協議。甲A20・資料1)を引用した上で,デンソーとの交渉担当をEIP事業部から選ぶよう依頼するメールを送信した。そして, qは,6月17日,EIP事業部副部長のk及び同事業部マネージャーのlを担当 A20・資料1)を引用した上で,デンソーとの交渉担当をEIP事業部から選ぶよう依頼するメールを送信した。そして, qは,6月17日,EIP事業部副部長のk及び同事業部マネージャーのlを担当者に選出し,iに対し,その旨記載したメールを送信した。 なお,上記客先議事録は,6月15日の打合せ後にiが作成したものであり,同議事録には,6月15日の打合せの目的・背景について「NVIDAo氏の紹介で初対面。先方の要望を聞いた上でNDA(秘密保 持契約のこと。)締結に進める。」との記載があり,打合せの結果として「先方のアプリケーションは車載危険検知ユニット。3年後の新機種に向けてモルフォDL(ディープラーニングのこと。)認識エンジン及び,MovieSolid(手ブレ補正の画像処理ソフトのこと。)の初期検討に進める事で合意」した旨の記載がある。 このようなiからqに対するメール,qからiに対するメール等につ いては,メールの「CC」欄の宛先にe,g及びEIP事業部部員が含まれていた。 (甲A20・資料1,乙A5・7頁,乙A6・5,6頁,乙A7・3頁,乙A8・3~5頁・資料1,乙A11)本件秘密保持契約の締結等 ア前記のとおり,iは,デンソーとの本件協業に関する交渉をk及びlに引き継ぐことになったが,デンソーとの本件秘密保持契約の締結手続については,既にjとの間で作業を始めていたことから,引き続きjとの間でメール等を用いて協議や交渉を行った。 iとjは,6月16日から同月22日までの間,モルフォが提示した 本件秘密保持契約に係る契約書(以下「本件秘密保持契約書」という。)案をベースとして内容の検討を行っていくことを確認し,その後数度の修正等が行われた。 これらの修 ルフォが提示した 本件秘密保持契約に係る契約書(以下「本件秘密保持契約書」という。)案をベースとして内容の検討を行っていくことを確認し,その後数度の修正等が行われた。 これらの修正経過を経て,モルフォとデンソーは,7月29日付けで本件秘密保持契約書に調印し,本件秘密保持契約を締結した。 この本件秘密保持契約書においては,「本件検討」に関連して相手方から開示された一切の情報(本件秘密保持契約期間前に開示された情報も含む。)について秘密保持義務が定められており,ここでいう「本件検討」とは,モルフォ又はデンソーが保有する画像処理技術その他の技術に関する,モルフォとデンソーとの間の事業提携,共同開発及び研究 並びに使用許諾等の可能性の評価・検討をいうと定義されている。 なお,モルフォでは,一般的に秘密保持契約を締結する際には「契約決裁兼押印申請書」を使用し,部門長に決裁を仰ぐことになっており,本件秘密保持契約についても,部門長であるi自身が起案し自ら決裁することで,本件秘密保持契約締結に係るモルフォ社内の処理を完了させ た。 (甲A9,乙A6・6,7頁,乙A13,乙A14・資料7)イこのように,iは,jとの間で,本件秘密保持契約書案の協議・交渉を進めていたところ,7月20日,jから,本件秘密保持契約締結に係る社内手続がもうすぐ完了するため,「今後の件のざっくりとした相談」を行いたい旨の申入れを受けた。 この申入れを受けて,iは,日程調整を行い,7月21日,jに対し,8月4日及び同月26日に打合せが可能である旨の回答をした。(乙A13・資料16,17) 日程調整後,jは,iに対し,8月4日の打合せでは,調印済みの本件秘密保持契約書の授受と,「今後の委託・共同開発 同月26日に打合せが可能である旨の回答をした。(乙A13・資料16,17) 日程調整後,jは,iに対し,8月4日の打合せでは,調印済みの本件秘密保持契約書の授受と,「今後の委託・共同開発案件に関する具体 的なご相談」として「御社携帯組み込みソフトウェアの車載への転用の可能性プロセッサ(ISP)依存性が懸念事項になります」,「深層学習の車載応用に関して動画像への応用に関してお話を伺えればと思います」とのデンソーの課題や希望を相談事項として伝え,8月26日の打合せでは,愛知県刈谷市に所在するデンソー本社において,上記相 談事項について実務者を交えた具体案の議論を行いたい旨の打診をした。 iは,jに対し,提案された日程及び内容で打合せを行うことを了承する旨の回答をした。(乙A13・資料18,19) なお,eは,6月16日以降,iとjとのやり取りに係るメールの「CC」欄の宛先に入っていたため,本件秘密保持契約締結に関する協 議・交渉や今後の打合せに関するメールを受信していた。(乙A13・資料1~21) デンソー内での検討状況アデンソーは,前記のとおりモルフォとの本件秘密保持契約の締結手続を進める一方で,6月15日の打合せ後も,モルフォ以外の企業との本件共 同開発の可能性について検討し,株式会社三井住友銀行(以下「三井住友 銀行」という。)の担当者に依頼して,ディープラーニングを用いた画像認識技術が進んでいる企業を調査するなどした結果,三井住友銀行の担当者からNVIDAのイベントに参加していたクロスコンパス及びシステム計画研究所を教示された。 イデンソーは,6,7月頃,NVIDAのイベントに参加していたプリ ファードネットワークスと打合せをしたところ,プ ントに参加していたクロスコンパス及びシステム計画研究所を教示された。 イデンソーは,6,7月頃,NVIDAのイベントに参加していたプリ ファードネットワークスと打合せをしたところ,プリファードネットワークスがデンソーの関連会社であるトヨタ自動車株式会社と共同開発を行うことを検討していると聞き,プリファードネットワークスを本件共同開発の候補から外した。 ウデンソーは,7月29日,システム計画研究所及びクロスコンパスとそ れぞれ打合せを行った。その結果,システム計画研究所は,ディープラーニングについて試行を始めたばかりの段階であることが判明したものの,一般技術開発のパートナーとしては有望であると感じ,一般的なソフト開発請負会社として活用することを検討することにした。 他方で,クロスコンパスについては,平成24年からディープラーニン グの研究開発を開始しているとのことであったことから,その実力と対応を見定めるために,8月末から小プロジェクトの検討を行い本件共同開発の可能性について検討することにした。 これらの方針・所感については,7月末から8月6日頃までにデンソー走行安全事業部内で開かれた定例会において,議論し共有されたもので あった。 (甲A9,13,14,乙A14・資料8,9)8月4日の打合せアモルフォとデンソーは,8月4日,モルフォの会議室において打合せを行い(8月4日の打合せ),モルフォからは,h,iのほか,新たに 担当となったk及びlが出席し,デンソーからはjらが出席した。この 日の打合せにおいては,まず,モルフォとデンソーとの間で,本件秘密保持契約書の授受が行われた。 その後,デンソーから,モルフォに対し,今後の進め方について打合せ資料を提示 この 日の打合せにおいては,まず,モルフォとデンソーとの間で,本件秘密保持契約書の授受が行われた。 その後,デンソーから,モルフォに対し,今後の進め方について打合せ資料を提示しながら,車載カメラ用の画像処理及び画像認識の2分野での協業の検討を進めたいとの意向が示された。また,デンソーは, 「まずは技術的な成立性を早急に見極め」たいとのことで,デンソー提供の画像に対しモルフォの技術を試行することを提案し,スケジュールに関し,8月26日の打合せ時にこの試行結果に対する技術面での協議を実施した後,2,3か月程度で完結する複数の小プロジェクトを始め,その結果を踏まえて平成27年末までに本件共同開発へ移行するか否か について判断したいとの意向を示した(以下,8月4日の打合せ時のデンソーからの上記提示内容を「本件提示」という。)。 イ本件提示に際し,デンソーがモルフォに提示した画像処理分野及び画像認識分野の要望内容は,以下のとおりである。 画像処理車載カメラ映像の高画質化 ① ADAS(アドバンスド・ドライビング・アシスト・システム=事故などの可能性を事前に検知し回避する先端運転支援システムのこと。)の認識を向上させるために,ノイズ除去,ブレ除去,ダイナミックレンジ補正(明るい部分の白飛びや暗い部分の黒潰れなどを補正すること。)による前方カメラの画像処理を行うこと。 ② ゆがみ補正,ダイナミックレンジ補正,合成などにより周辺カメラの画質を向上させること。 画像認識ディープラーニング関連① 車載カメラの映像からの場面や起こり得るリスクを推定・認識すること(危険予知)。 ② 現状では人が実施しているドライブレコーダーの動画解析を自動化 ープラーニング関連① 車載カメラの映像からの場面や起こり得るリスクを推定・認識すること(危険予知)。 ② 現状では人が実施しているドライブレコーダーの動画解析を自動化 すること。 ウデンソーからの本件提示を受けて,モルフォは,デンソーに対し,デンソーから提供を受けたサンプル画像に,モルフォのソフトウェアによる画像処理を試行した結果を,8月26日の打合せ時に提示することを約束するとともに,デンソーの上記要望内容に対する提案を行う旨の回答をした。 なお,デンソーからの上記試行に係る依頼内容は,「車載カメラ映像(VGA)の超解像など高画質化。動画像生成対応。リアビューカメラ映像などを高画質化して,高精細で見やすい映像をリアルタイム生成。夜間や拡大画像を綺麗に見せる技術の検討」であるとされ,「車載プロセッサでのリアルタイム動作」が試行段階の目標とされていた。 (甲A6・資料6,甲A9,15,24,乙A5・8~10頁・資料2,乙A7・4頁,乙A8・6~9頁・資料2,3,乙A14・資料10,11,乙A29)本件回答ア iは,8月4日の打合せの後すぐに,eに対し,「秘密保持契約の締結 が終わりました。」,「今度は,刈谷に行って技術者同士での技術に関する話に進むそうです。」などと述べて打合せ内容を報告した。 その際,eは,モルフォ社内の自席におり,他の社員もいる中で,iからの上記報告に「分かりました。」と答えた(本件回答)にとどまり,それ以上に自らの意見を述べることなどはしなかった。 その後,iは,gにも同様の内容の報告をしたが,gからも格別意見を述べられることはなかった。iは,k及びlに,デンソーとの交渉が引き継がれたことから,i自身はデンソーとの交渉から外れることとなっ その後,iは,gにも同様の内容の報告をしたが,gからも格別意見を述べられることはなかった。iは,k及びlに,デンソーとの交渉が引き継がれたことから,i自身はデンソーとの交渉から外れることとなった。 (甲A5・15,16頁,乙A5・10,11頁,乙A6・8頁,弁論の全趣旨) イ lは,8月10日,f及びEIP事業部部員が出席したEIP事業部定 例会議において,8月4日の打合せの内容を営業週報に基づき報告した。 また,lは,同打合せの概要を記載した客先議事録(件名:デンソー議事録20150804。甲A20・資料2)を作成し,これを同月11日にモルフォ社内で使用されている客先議事録掲示板と呼ばれる共有フォルダ(以下単に「客先議事録掲示板」という。)に投稿し,その内容はeを含 むモルフォの技術者全員等にメールで送信された。 上記営業週報には,「その他活動④」の一つとして「デンソー(New)」という赤字の記載と共に以下の概括的な記載があり,客先議事録にも同様の記載がある。(甲A6・資料6,乙A8・6~11頁・資料3,4) 「Morphoと画像処理・画像認識(DL)での協業を検討したい2~3か月完結程度の小プロジェクトをスタートし,結果をもって年末までの協業の判断を行いたい」8月26日の打合せアモルフォは,8月4日の打合せ後にデンソーから提供を受けたサンプル 画像にモルフォのソフトウェアによる画像処理を試行する作業を進めることとし,期限までに当該作業を行い本件サンプル画像を作成した。 イモルフォのh,k及びlは,8月26日,本件サンプル画像を持参して,愛知県刈谷市に所在するデンソー本社を訪れ,デンソーと打合せを行った(8月26日の打合せ)。 ル画像を作成した。 イモルフォのh,k及びlは,8月26日,本件サンプル画像を持参して,愛知県刈谷市に所在するデンソー本社を訪れ,デンソーと打合せを行った(8月26日の打合せ)。 ウこの打合せでは,モルフォからデンソーに対し,モルフォの有する画像処理技術についての説明・提案と共に,本件サンプル画像に係る画像処理結果の説明がされたところ,本件サンプル画像を見たデンソーは,モルフォがデンソーの要望に応えたこととその技術を高く評価した。 その後,デンソーから,モルフォに対し,デンソーの新規車載カメラ等 を構成する前方カメラ,サラウンドビューカメラ及び電子ミラー等が有す るそれぞれの技術的な課題についての説明がされ,これを踏まえて協議が行われた結果,デンソー内部でモルフォの本件技術をどのように活用していくかなどについて検討し方向性を固めた上で,モルフォと改めて協議することとなった。 8月26日の打合せの結果,デンソーは,本件協業に関しモルフォとの 具体的な検討や協議を速めていく必要があると認識するとともに,モルフォもデンソーが本件協業に前向きであるとの認識を持った。(甲A9,20・資料3,乙A5・12,13頁・資料3,乙A7・9~11頁・資料1-2,乙A8・資料6・1,2枚目,乙A14・資料12)エ lは,8月26日の打合せの概要を記載した客先議事録(件名:デン ソー議事録20150826。甲A20・資料3)を作成し,これを8月31日に客先議事録掲示板に投稿し,その内容はeを含むモルフォの技術者全員等にメールでも送信された。また,lは,同日,f及びEIP事業部部員が出席した定例会議において,営業週報に基づき8月26日の打合せの内容を報告した。 なお,上記営業週 技術者全員等にメールでも送信された。また,lは,同日,f及びEIP事業部部員が出席した定例会議において,営業週報に基づき8月26日の打合せの内容を報告した。 なお,上記営業週報には,下記の記載があり,上記客先議事録にも同旨の記載がある。(甲A6・資料7,乙A7・8~10頁・資料1-2,乙A8・13頁・資料6)「8/26打合せ。サンプル画像にWDR/Dehazer/MovieSolid処理画像の紹介・説明」「前方カメラ・周辺カメラ・電子ミ ラーの各事業グループでの検討に向けた方向性を纏めてもらい,今後の進め方を協議していく」本件活動計画アgとEIP事業部は,9月8日付けで,モルフォの13期売上/活動計画及び中期売上/活動計画(本件活動計画)を作成し,これに基づき, モルフォは,同月上旬頃,第13期事業年度(平成27年11月1日か ら平成28年10月末日まで)の予算策定をした。 本件活動計画では,車載機器関連について51頁から55頁までにまとめられて記載されているが,デンソーについては本件秘密保持契約を締結したばかりで受注につながる確度も低いと考えられたため,何ら言及されていなかった。また,本件活動計画の68頁に記載された「13 期活動計画まとめ」表では,モルフォの各顧客との案件を,売上高や受注可能性等に応じて,S(前期売上上位7社又は売上拡大が強く見込まれる戦略顧客),A(売上拡大が見込まれる),B(継続取引,協業の可能性がある),C(取引の潜在的可能性がある),といったようにランク付けがされていたが,モルフォが13期において車載機器関連でメ インターゲットと捉えていたアルプス電気はCランクに位置付けられていたものの,デンソーについてはランク付けがさ いったようにランク付けがされていたが,モルフォが13期において車載機器関連でメ インターゲットと捉えていたアルプス電気はCランクに位置付けられていたものの,デンソーについてはランク付けがされておらず,本件活動計画上に社名も記載されていなかった。(甲A5・17,20頁,甲A6・16,17頁・資料8)イ他方で,kは,11月に新設する事業企画部部長に就任予定であったと ころ,9月11日の打合せ後の9月24日までに事業企画部の事業計画を作成し,g及びqにメールで送信した。kは,上記事業計画に,「中期目標」として「13期の数値目標に対して 14期は約3倍⇒3.50億,15期は約6倍⇒6.00億」などと記載し,「中期活動計画」として「デンソーとの業務資本提携,協業関係強化」などと記載し,デンソーと の本件資本業務提携に係る契約の締結ができ,これを継続していけば,事業企画部の売上げとして,第15期事業年度(平成29年11月1日から平成30年10月末日まで)には6億円を計上することができると見込んでいた。(乙A7・18,19頁・資料3)9月11日の打合せ アデンソーは,9月8日,mやjら出席の上で本社会議室において打合せ を行い,本件共同開発の相手方としてモルフォを選択することとし,モルフォとの資本提携の可能性の協議に向けた進め方を検討した。 なお,上記の検討に先立ち,デンソー走行安全技術企画室が8月31日付けで作成した「マル秘」資料である「画像認識・知能化技術開発の全体像とアライアンスに関して」には,モルフォとの交渉経緯を整理した上で, モルフォについて「DNに足りない先端分野,View系の2分野を備えた稀有なベンチャーであり,技術的にも申し分無い感触。年内は小プロジェクトで技術力とパ ,モルフォとの交渉経緯を整理した上で, モルフォについて「DNに足りない先端分野,View系の2分野を備えた稀有なベンチャーであり,技術的にも申し分無い感触。年内は小プロジェクトで技術力とパートナーシップの見極めを行うが,並行して“協業”の形に関して事業G,経営企画等全社の力を借りながら,探っていきたい。」との評価が記載されており,「技術以外のQ&A」の欄に「自動車 分野に関してのエクスクルーシブを結ぶことができるか→Yes(e)」との記載がある。(甲A9,乙A14・16頁・資料4,乙A23)イモルフォとデンソーは,9月11日,モルフォの会議室において打合せを行い(9月11日の打合せ),モルフォからは,k及びlが出席し,デンソーからは,m及びjが出席した。 この日の技術的な打合せでは,デンソーからモルフォに対し,モルフォの明るさ補正のソフトウェア等を組み込んだ画像処理の結果を評価する機材を開発し,これらのソフトウェアを組み込んだ装置を自動車に搭載して実際に走行させた結果を,社内で確認するなどのテストを行いたいとの要望が提案された。(甲A5・9~10頁,甲A9,乙A5・13~14 頁・資料4,乙A7・12~13頁・資料1-4,乙A8・資料6,乙A14)ウ k及びlは,9月11日の打合せ後,m及びjと会食を行った(本件会食)。 この席上で,k及びlは,mから,デンソーがモルフォとの業務面の提 携だけではなく,資本提携や出資の意向も有している旨の申出を受けた (本件資本提携の申出)。これに対し,k及びlは,驚きながらも,出資規模については検討する必要があるが,出資を受け入れることで基本的に問題はない旨の回答をした。 また,mは,k及びlに対し,デンソーが出資を行うに際し,デンソーに対 k及びlは,驚きながらも,出資規模については検討する必要があるが,出資を受け入れることで基本的に問題はない旨の回答をした。 また,mは,k及びlに対し,デンソーが出資を行うに際し,デンソーに対し自動車分野に関してエクスクルーシブの権利を付与することの可否 やモルフォの社員のうち2,3人程度をデンソーとの業務に専従させることの可否についても打診し,スケジュールについても,9月24日の打合せにnを同行させ,モルフォと合意することができれば,すぐにでも資本業務提携に係る契約締結に向けた準備をしたいとの意向を示した。 これについて,k及びlは,mの上記打診は基本的に受入れが可能であ ると回答するとともに,9月24日の打合せには,gが同席すること,モルフォでは,eが技術面を,gが経営面を見ていることなどを話した。 (甲A9,16,乙A7・15~17頁・資料2,乙A14・資料13)エ kは,9月14日午後0時51分,gに宛てて,本件会食においてデンソーからされた本件資本提携の申出の内容を報告するメールを作成し, 「CC」欄の宛先にfも入れて送信した。 上記メールには,mからkらが聞いた内容をまとめたものとして「来年1月から日本橋に東京オフィスを開設,設計開発を行う予定」,「前回の訪問で,モルフォの技術(カメラ技術及びDL,両方)及び会社に対して先方事業部が大きな興味と期待を持っている。」,「今まで色々な会社に 命題を与えてきたが,即,処理結果や返答した会社はモルフォ以外無かった点も大きな評価」,「DENSOとしては協業と出資を考えている(既にeさんの持分や時価総額等の調べられている様子で具体的に話を先方からされました)」,「中長期目線での協業提案であり,真剣である。というお話を戴きました。」との記載があり,kは,自分 考えている(既にeさんの持分や時価総額等の調べられている様子で具体的に話を先方からされました)」,「中長期目線での協業提案であり,真剣である。というお話を戴きました。」との記載があり,kは,自分の考えとして「モル フォとしてはDENSOを抑える=自動車業界をほぼ抑える=新規事業分 野の開拓であり,DENSO一社で国内外の自動車メーカーと同サプライヤーを押さえられるため,会社としてDENSO事業部を作っても良いくらいのお話かと考えております。(DENSO様とのお付き合いは今回が最初で最後の機会であると感じてます。)」と記載し,エンジニアの増員も必要となることから「13期採用計画の見直し,相談をさせていただけ れば幸いです。」と記載した。(甲A18・資料1,乙A7)オ 9月14日のEIP事業部定例会議の営業週報には,9月11日の打合せ内容について,以下のような記載がされている。 「9/11(金)具体的なアクションについて打ち合わせ:画像処理IPの個別案件及びDeepLearningについて社内の実機評価用の 車載カメラシステム(前方・後方・サイド・電子ミラー)向けで動画ブレ補正・霞除去・WDR・ノイズ除去・超解像を検討したいとのこと」,「12月から走行評価したい」,「上記提案に対して,モルフォ側で技術面・ビジネス面での取り組みを方を纏め,9月末or10月頭に提案」,「9/24(木)走行安全事業部 n来社予定」(甲A6・資料3) 9月18日の打合せア eは,9月14日以降,fを含めた数人の社員と打合せをした後,fから「ちょっと話をしたい。相談したいことがある。」と言われてfと二人だけになったところ,「デンソーが何かすごいことになってるらしいよ。」と言われ,デンソーからの本件資本提携の申出等 せをした後,fから「ちょっと話をしたい。相談したいことがある。」と言われてfと二人だけになったところ,「デンソーが何かすごいことになってるらしいよ。」と言われ,デンソーからの本件資本提携の申出等について報告を受けた。 eは,fに対し,「本当なの。」と聞き返し,デンソーほどの大きな会社が短期間で出資を検討するほどまでにモルフォの技術に興味を持ったことに驚いた。 eは,fに対し,fが資本政策を含む管理部門を管掌する常務取締役であったことから,本件資本提携の申出に係る条件について検討したい旨を 述べた。(甲A5・1~3,45頁,甲A6・13,14頁,乙A5・1 4,15頁)イ eは,9月18日,g,k及びlを集めて打合せを行った(9月18日の打合せ)。なお,この9月18日の打合せは,正式な取締役会を招集したり,取締役全員を集めたりして開催したものではなかった。 この打合せにおいて,eは,デンソーとの本件資本提携の申出を了承す ることで進めたいとの意向を示す一方で,CTO室室長も兼務していたことから,これによりモルフォのエンジニアのうち何名かをデンソーとの業務に専従させることで,他の業務に影響が出ないかを懸念した。 これに対し,gは,他の業務に影響が出る可能性はあるものの,車載組込分野の事業はモルフォにとって新しい事業領域に進出するきっかけとな ることを指摘し,増員等の対応を責任を持って行うので事業部門としては推進していきたいとの意見を述べた。 ウ eも,gの上記意見を聞きそのとおりであると考えて同意し,モルフォの方針としてデンソーとの本件資本提携の申出を了承することとした。 エそして,eは,g,k及びlに対し,デンソーがモルフォの株式を保有 することに賛成するが,デンソーに対しては, ,モルフォの方針としてデンソーとの本件資本提携の申出を了承することとした。 エそして,eは,g,k及びlに対し,デンソーがモルフォの株式を保有 することに賛成するが,デンソーに対しては,株式保有の条件として,第三者割当増資ではなく,まず市場での買付けを打診するとともに,eの持株比率であった約10%を超えないようにすることを提示するように伝えた。 (甲A5・4~7頁,甲A8,乙A5・15,16頁,乙A7・17頁,弁 論の全趣旨)9月24日の打合せ等アモルフォとデンソーは,9月24日,モルフォの会議室において打合せを行い(9月24日の打合せ),モルフォからは,e,f,g,k及びlが出席し,デンソーからは,走行安全事業部長のn,m及びjが出席した。 イこの打合せにおいて,モルフォとデンソーは,本件技術を活用した新規 車載カメラ等について本件共同開発を行うこと,デンソーとの資本提携を進めることを承諾し,もって,本件資本業務提携について口頭で合意するとともに,モルフォからデンソーに対し,後日,株式保有に関し市場買付けの打診及び持株比率に関する条件を伝えることとなった。 (甲A5・10~11頁,甲A6・14~15頁,甲A8,9,17,乙A 5・16頁,乙A7・資料1-5,乙A8・資料6,乙A14・資料14)本件公表に至る経緯アモルフォは,10月1日,デンソーに対し,同日付け作成の「資本提携のご提案」を提示し,具体的な持株比率として5~10%(金額規模10億円程度),市場での買付けを希望する旨を伝えた。(甲A6・資料10, 甲A18・資料2,乙A25)なお,上記「資本提携のご提案」の「ラフスケジュール」の項目には,「【前提】技術提携検討自体がインサイダー情報となるため, 旨を伝えた。(甲A6・資料10, 甲A18・資料2,乙A25)なお,上記「資本提携のご提案」の「ラフスケジュール」の項目には,「【前提】技術提携検討自体がインサイダー情報となるため,株式取得は必然的に技術提携開示後となる。 技術提携の検討/出資規模他資本面の検討(10~11月) 技術提携に係る契約を締結し,資本提携に同契約内で言及するか別途覚書等締結。(11月~12月) 技術提携を開示後,買付開始。10~20営業日で完了。(12月中)※弊社の決算発表日である12月11日以降の買付がインサイダー取引回避の観点から望ましいと考えます。」との記載がある。 イこれと並行してモルフォでは,10月5日,デンソーとの本件資本業務提携の内容についてどのような提案をすべきか話し合うため,打合せを行った。同打合せには,e,f,g,k及びlが出席し,デンソーとの本件資本業務提携の内容,対価,期間等の詳細について検討を行った。その際,gからは,ライセンス契約の在り方に関し,積極的に意見が示された。 lは,上記打合せの結果について,「デンソー協業の件打ち合わせ備 忘録」と題するメールを作成し,出席者に送信した。同メールには,「協業の金額 5億/年⇒単月赤字が脱却できる観点からもベスト」,「協業の年間契約とは別に,製品化後は,商用ライセンス料を徴収する契約とすること。-商用ライセンス化できないと,モルフォにはメリットなし」,「今回の協業は,必ずプレスリリースへ」との記載がある。(甲A6・1 7,18頁・資料9,甲A18・資料3,乙A27)ウその後,デンソーから,10月9日,モルフォに出資する意義が薄れるため,市場買付けではなく第三者割当増資の方法によりモルフォの株式を取 7,18頁・資料9,甲A18・資料3,乙A27)ウその後,デンソーから,10月9日,モルフォに出資する意義が薄れるため,市場買付けではなく第三者割当増資の方法によりモルフォの株式を取得したい旨の回答がされた。 これに対し,モルフォは,株式の取得について改めて市場買付けの方法 を打診したものの,デンソーが飽くまで第三者割当増資の方法にこだわったことから,結局,デンソーの申出を了承した。 その結果,モルフォとデンソーは,10月15日,第三者割当増資の方法で本件資本業務提携を行うことを合意し,11月5日頃,本件資本業務提携を12月11日に公表すること,11月25日頃,デンソーが取得す るモルフォの株式数を第三者割当増資後の発行済株式総数の5%となる26万1800株とすることなどを合意した。(乙A5・16,17頁)エモルフォとデンソーは,12月11日付けで,本件資本業務提携に係る契約書に調印した。(乙A24) 本件公表 モルフォは,12月11日,TDnetにより,「株式会社デンソーとの資本業務提携及び第三者割当による新株式発行に関するお知らせ」を公表した(本件公表)。 2 eが「業務執行を決定する機関」に該当するか(争点1)について金商法166条2項1号柱書きにいう「業務執行を決定する機関」とは, 会社法所定の決定権限のある機関には限られず,実質的に会社の意思決定と 同視されるような意思決定を行うことのできる機関であれば足りると解するのが相当である(最高裁平成10年(あ)第1146号,第1229号同11年6月10日第一小法廷判決・刑集53巻5号415頁参照)。 本件においては,以下の理由から,eは,実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うこ (あ)第1146号,第1229号同11年6月10日第一小法廷判決・刑集53巻5号415頁参照)。 本件においては,以下の理由から,eは,実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関であったと認められる。 アすなわち,前記前提事実イのとおり,eがモルフォの創業者であり,モルフォの設立以降,代表取締役を務めていたこと,eがモルフォの発行済株式総数のうち約1割を保有する筆頭株主であり,その持株割合は他の株主及び取締役の持株数と比較しても圧倒的に多い(乙A15・資料1・27,31頁)ことからすれば,eは,モルフォの意思決定において大き な影響力を有していたということができる(乙A9・11,12頁)。 これを裏付けるように,モルフォが金融庁に対して金商法24条に基づき提出した第11期有価証券報告書(平成27年1月29日提出)及び第12期有価証券報告書(平成28年1月28日提出)には,「特定人物への依存について」の項目において,「eは,当社グループの最高責任者と して,経営方針及び事業戦略等を決定するとともに新規技術のアイデア創出から当該技術の製品化にわたり重要な役割を果たしております。」と記載されているものである(乙A15・資料1・13頁,資料2・13頁)。 この記載は,モルフォとデンソーとの本件協業に関しインサイダー取引が問題となる前に作成されたものであり,かつ,上記各有価証券報告書が金 商法の上記規定に基づき公的機関に提出されたものであることに鑑みると,上記「特定人物への依存について」の項目に記載された内容は,当時のモルフォ社内での意思決定手続の実情を如実に表したものとして,信用することができる。 イまた,前記認定事実イのとおり,モルフォの担当者は,デンソーと の間の に記載された内容は,当時のモルフォ社内での意思決定手続の実情を如実に表したものとして,信用することができる。 イまた,前記認定事実イのとおり,モルフォの担当者は,デンソーと の間の交渉経過等をメール等で逐一eに報告しているほか,eは,デン ソーからの本件資本提携の申出を検討するに当たり,9月18日の打合せを行ったが,これは正式な取締役会を招集したり,取締役全員を集めたりして開催したものではなかった(認定事実イ)。そして,9月18日の打合せでは,gから意見が述べられたものの,最終的には,e自身において,gの意見を踏まえてデンソーからの本件資本提携の申出を了承する旨 決定したと認められる(認定事実ウ)。他方で,本件証拠上,モルフォの内部規定等によってeの権限が限定されていたことをうかがわせる事情はない。 ウ以上からすれば,モルフォにおいては,eが,実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関であったといえ,金 商法166条2項1号柱書きにいう「業務執行を決定する機関」に該当するというべきである。 ⑶アこれに対し,原告らは,モルフォにおいては,事業政策に関してはeとgが合議して判断を行っていたものであり,e単独では「業務執行を決定する機関」に該当しない旨主張する。 イ前記認定事実ウによれば,本件会食において,デンソーからモルフォに対して本件資本提携の申出がされた際,モルフォのk及びlは,本件資本提携の申出に対する回答をすることになる9月24日の打合せにgが同席すること,モルフォではeが技術面を,gが経営面を見ていると話したことが認められるのであり,この事実は,原告らの上記主張に沿うもので あるといえる。 しかしながら,前記説示したとおり,eは, すること,モルフォではeが技術面を,gが経営面を見ていると話したことが認められるのであり,この事実は,原告らの上記主張に沿うもので あるといえる。 しかしながら,前記説示したとおり,eは,gやfら他の取締役と比較してモルフォの意思決定について大きな影響力を有しており,本件資本提携の申出に対しても,正式な取締役会を招集したり,取締役全員を集めたりすることなく,gの意見を聞いた上で,e自身の判断として本件資本提 携の申出を了承するという重要な意思決定を行っていることからすれば, 前記認定事実ウによっても前記ウの認定判断は左右されない。原告らが主張する事情は,eが,業務執行に関しgと適宜相談をし,その助言を踏まえ,意思決定をしていたことを示す事情にとどまると評価すべきである。 ウ以上からすれば,原告らの前記主張は採用することができない。 3 本件回答が「業務執行を決定する機関」がした「業務上の提携」を「行うことについての決定」に該当するか(争点2)について判断の枠組み金商法166条2項1号ヨ及び施行令28条1号にいう「業務上の提携」とは,会社が他の企業と協力して一定の業務を遂行することをいい,協力し て行う業務の内容に限定はなく,協力の形式も問わないと解され,いわゆる仕入・販売提携,生産提携,技術提携及び開発提携等がこれに当たると解される(乙A2)。 そして,金商法166条2項1号柱書きにいう当該「業務上の提携」を「行うことについての決定をした」とは,「業務執行を決定する機関」にお いて当該「業務上の提携」それ自体や当該「業務上の提携」に向けた作業等を会社の業務として行う旨を決定したことをいうものであり,当該決定をしたというためには,当該機関において当該「業務上の提携」の実 いて当該「業務上の提携」それ自体や当該「業務上の提携」に向けた作業等を会社の業務として行う旨を決定したことをいうものであり,当該決定をしたというためには,当該機関において当該「業務上の提携」の実現を意図して行ったことを要するが,当該「業務上の提携」が確実に実行されるとの予測が成り立つことを要せず(前掲最高裁平成11年6月10日第一小法廷判 決参照),当該「業務上の提携」の実現可能性があることが具体的に認められることも要しないと解される(最高裁平成21年(あ)第375号同23年6月6日第一小法廷決定・刑集65巻4号385頁参照)。 他方で,金商法166条1項が,インサイダー取引を規制しているのは,上場会社等の会社関係者は,一般に,当該上場会社等の内部情報を一般投資 家より早く,よりよく知ることができる立場にあるところ,これらの者が一 般投資家の知り得ない内部情報を不当に利用して当該上場会社等の特定有価証券等の売買取引をすることは,証券取引市場における公平性,公正性を著しく害し,一般投資家の利益と証券取引市場に対する信頼を著しく損なうものであることから,このような不当な行為を防止することを目的としていると解される。上記趣旨に鑑みると,同条2項1号柱書きにいう当該「業務上 の提携」を「行うことについての決定」は,それが一般投資家の投資判断に影響を及ぼすべきものであるという観点から,ある程度具体的な内容を持つものでなければならないと解するのが相当である。このことは,「業務上の提携」の内容が,前記のとおり広く解釈されていることからすると,より一層妥当するというべきである。 本件資本業務提携についての決定ア本件において,最終的に実現し,12月11日の本件公表によって公表された本件資本業務提携は, いることからすると,より一層妥当するというべきである。 本件資本業務提携についての決定ア本件において,最終的に実現し,12月11日の本件公表によって公表された本件資本業務提携は,モルフォが,デンソーとの間で①ディープラーニングによる画像認識技術の車載機器への適用に関する基礎的研究,②画像認識技術を始めとする各種画像処理技術を応用した,電子ミラー等 の車載機器に関する研究開発・製品化,③上記研究開発の成果に基づく製品・サービスのマーケティングにおける連携などの本件業務提携を行うとともに,④モルフォがデンソーに普通株式26万1800株の第三者割当増資をすることで資本提携を行うというもので(前提事実),これが「業務上の提携」に当たることは明らかである。 イそして,本件資本業務提携は,その内容等に照らすと,9月11日の打合せ後の本件会食においてデンソーからモルフォに対しされた本件資本提携の申出が具体化したものと認められるところ,eがモルフォとして本件資本提携の申出を了承する旨の決定をしたのは,前記認定事実ウによると,9月18日の打合せの時であるというべきである。そうすると,モル フォにおいて,本件資本業務提携に係る「業務上の提携」を「行うことに ついての決定」がされたのは,9月18日であると認められるのであり,原告らも同旨の主張をしているものである。 ウこれに対し,被告は,本件資本提携の申出に先立ち,資本提携の有無にかかわらず,eが8月4日の打合せ後に本件回答をしたことによって,モルフォがデンソーとの「業務上の提携」を「行うことについての決定」を した旨主張をするので,本件回答の時点において想定されていた本件協業の内容が,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の具体的な内容を デンソーとの「業務上の提携」を「行うことについての決定」を した旨主張をするので,本件回答の時点において想定されていた本件協業の内容が,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の具体的な内容を持った「業務上の提携」といえるものであったかについて検討した上で,更に本件回答がそのような「業務上の提携」の実現を意図して行った,当該提携に向けた作業等を会社の業務として「行うことについての決定」を したものといえるかについて検討することとする。 ⑶ 「業務上の提携」に当たるかについてア 6月15日の打合せについて 前記認定事実アによれば,モルフォとデンソーは,6月15日の打合せの結果,本件協業として,モルフォの本件技術を新規車載カメラ 等へ活用することについての可能性を検討していくこととし,またその検討をしていくため,相互に提供する情報が第三者に漏えいすることを防ぐために本件秘密保持契約を締結することに合意したものである。 このような合意がされたのは,6月15日の打合せにおいて,デンソーからディープラーニングを用いた画像認識技術等を組み込んだ新規 車載カメラ等の3年後をめどとした開発を検討しているとの説明がされ,これに対しモルフォが本件技術を紹介したところ,デンソーが興味を示したからである(認定事実ア)。 しかしながら,6月15日の打合せ時点においては,モルフォの本件技術を活用してデンソーが企画している新規車載カメラ等を開発すると いう本件共同開発又は本件共同開発に向けた作業を行うことが決定され たのではなく,モルフォがデンソーの相手方として本件共同開発に係る作業を行う技術力等を有するか否かを見極めるための検討を行っていくことに同意したにとどまるというべきである。これ 決定され たのではなく,モルフォがデンソーの相手方として本件共同開発に係る作業を行う技術力等を有するか否かを見極めるための検討を行っていくことに同意したにとどまるというべきである。これを裏付けるように,デンソーは,6月15日の打合せ時点では,モルフォ以外の3社とも個別に会ってディープラーニングに関する話を聞くこととして,本件共同 開発の相手方の調査・選定をしていたものである(認定事実)。 また,6月15日の打合せ時点では,デンソーもモルフォも,これまで互いに取引関係がなく,その能力や業務に対する信用性も測りかねる状況にあったのであり,秘密保持契約も締結されていないため,モルフォもデンソーも相互に有する技術内容・技術レベルを具体的に明らか にしていなかったものであるから(甲A6・8,9頁),本件共同開発に向けた具体的内容を持った合意をする状況になかったと認められる。 そうすると,6月15日の打合せにおいて,モルフォとデンソーとの間で,本件協業の内容として,モルフォの本件技術を新規車載カメラ等へ活用することについての可能性を検討していくことが合意されたとし ても,それはモルフォが本件共同開発の相手方となり得るか否かという初期検討を行うという程度の抽象的なものにすぎず,eが供述しているとおり,この段階における本件協業は,モルフォの通常のビジネスモデルに属する案件の交渉に入った段階にとどまるものというべきである(甲A5・14,15頁,甲A6・8,9頁)。 したがって,6月15日の打合せの段階において, モルフォとデンソーとの間の本件協業の内容が,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の具体的な内容を持つものとして「業務上の提携」に当たるものであったとはいえない。 イ本件秘密保持契約の締結につ ルフォとデンソーとの間の本件協業の内容が,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の具体的な内容を持つものとして「業務上の提携」に当たるものであったとはいえない。 イ本件秘密保持契約の締結について 前記認定事実アによれば,モルフォとデンソーは,本件協業に関し, 7月29日付けで本件秘密保持契約を締結したことが認められるが,モルフォにおいては,新規顧客との間で案件の検討に入るときには,通常のプロセスとして秘密保持契約を締結しており,6月から10月までの間だけでも,デンソー以外に31社との間で秘密保持契約が締結されていた(甲A5・13,14頁,甲A6・7頁,甲A21)。 このようなモルフォにおける秘密保持契約の位置付けからすると,モルフォとデンソーが本件秘密保持契約を締結したからといって,6月15日の打合せの内容以上に,モルフォとデンソーとの本件協業の内容が具体化したということもできない。本件秘密保持契約が締結されたという事実は,モルフォとデンソーがお互いに自社の技術を開示しその後の検討を行うた めの条件を整えたものにとどまると評価すべきである。 したがって,本件秘密保持契約が締結された時点で,モルフォとデンソーとの間の本件協業の内容が,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の具体的な内容を持つものとして「業務上の提携」に当たるものであったとはいえない。 ウ 8月4日の打合せについて 前記認定事実ア及びウによれば,8月4日の打合せにおいて,デンソーからモルフォに対し,画像処理・画像認識の2分野での協業の検討を進めたいこと,2,3か月程度で完結する複数の小プロジェクトを始め,その結果をもって平成27年末までに本件共同開発へ移行するか 否かについて判断したいことなど 画像認識の2分野での協業の検討を進めたいこと,2,3か月程度で完結する複数の小プロジェクトを始め,その結果をもって平成27年末までに本件共同開発へ移行するか 否かについて判断したいことなどの意向が示され(本件提示),これに対し,モルフォの担当者は,8月26日の打合せにおいてデンソーの本件提示に係る要望内容に対する提案を行う旨を回答したことが認められる。 この点について,被告は,デンソーからモルフォに対してされた本件 提示が,本件共同開発可否の判断に関する要望を含むものであると主張 しており,その趣旨はそこで提案された内容が「業務上の提携」として一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の具体的な内容を持つものであった旨主張するものと解される。 そこで検討するに,8月4日の打合せにおけるデンソーの打合せ資料(甲A15,乙A14・資料10-2)には,今後の進め方について, 「車載カメラ用 1)画像処理 2)画像認識の2分野での協業検討を進めたいと思います。まずは技術的な成立性を早急に見極めさせて頂けないでしょうか。」と記載されており,同資料3頁目以降には,これらの画像処理及び画像認識に関して,デンソーの要望内容等が記載されていたものである。 上記のデンソーの打合せ資料の記載内容は,6月15日の打合せ内容よりも具体的なものとなっており,その結果,モルフォとデンソーとの本件協業に関する打合せ内容も,抽象的なものから具体的,技術的内容を含んだものとなったことが認められる。 しかしながら,上記のデンソーの打合せ資料に記載された要望内容等 は,デンソー自体が新規車載カメラ等の開発に際し抱えている課題や問題意識を列記したものにとどまり,その内容が具体的であるからといって,直ちにモルフ デンソーの打合せ資料に記載された要望内容等 は,デンソー自体が新規車載カメラ等の開発に際し抱えている課題や問題意識を列記したものにとどまり,その内容が具体的であるからといって,直ちにモルフォとデンソーとの本件協業の内容自体が,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の具体的な内容を持つものになったということはできない。 また,前記認定事実アのとおり,8月4日の打合せにおいて,デンソーがモルフォに対してした本件提示は,デンソーの前記資料に「まずは技術的な成立性を早急に見極め」たいと記載されていることからすると,平成27年末までに本件共同開発の相手方を選定するために,モルフォの技術力等を見定めるための検討を行うことの可否について意向 を確認するとともに,その検討に必要な課題を提示する趣旨のものとい うべきである。このことからすると,この時点でのモルフォとデンソーとの本件協業は,相手方の技術力等を見定めるための準備段階にあったものと評価すべきである。 なお,本件提示では,複数の小プロジェクトを実施することも予定されているが,これは飽くまでデンソーがモルフォの技術力等を見定める ための手段なのであり,かつ,小プロジェクトの内容も具体的に明らかとなっていなかったのであるから,このような小プロジェクトが予定されていることのみをもって,「業務上の提携」として独自の意味を持つものと評価すべきではないというべきである。 さらに,デンソーは,7月29日,ディープラーニングの研究開発を 行っているシステム計画研究所及びクロスコンパスとそれぞれ打合せを行い,その結果を踏まえて,モルフォと並行して8月末からクロスコンパスとも小プロジェクトの検討を行い本件共同開発の可能性について検討することとし ステム計画研究所及びクロスコンパスとそれぞれ打合せを行い,その結果を踏まえて,モルフォと並行して8月末からクロスコンパスとも小プロジェクトの検討を行い本件共同開発の可能性について検討することとしていたものである(認定事実ウ)。このことは,デンソーとしては,8月4日の打合せの段階でも,モルフォ以外の企業も候 補に入れて本件共同開発の相手方を選定している状況にあったことを示すものであり,上記の認定判断を裏付けるものである。 そうすると,デンソーがモルフォに対してした本件提示は,本件共同開発の相手方を複数の候補から選定する方法の一環にとどまるものであり,これに対応してモルフォが検討・作業を行うことは,通常の取引に おいて顧客獲得に向けられた営業活動の範囲内のものと評価すべきものであったということができる。 そして,モルフォ社内においても,この段階におけるデンソーとの本件協業は,8月10日のEIP事業部定例会議において,lから営業週報に基づき「その他活動④」の一つとして概括的に報告されているにと どまっていること(認定事実イ)からすると,他の企業に対する営業 活動とほぼ同程度又はそれ以下に位置付けられ,特筆すべき内容を伴うものと認識されていなかったと認められる。 これらの事情からすると,本件提示がされたとしても,この段階におけるモルフォとデンソーとの間の本件協業は,いまだ営業活動の域を出ない成熟度の低いものであったというべきである。 なお,被告は,8月4日の打合せにおいて,デンソーがモルフォに対しエクスクルーシブの権利の付与について言及し,同日までにeがデンソーに対しエクスクルーシブの権利を付与したかのような主張をし,これをもって「業務上の提携」を「行うことについての決定」がされた旨 しエクスクルーシブの権利の付与について言及し,同日までにeがデンソーに対しエクスクルーシブの権利を付与したかのような主張をし,これをもって「業務上の提携」を「行うことについての決定」がされた旨主張する。 証拠(乙A14・資料11)によれば,8月4日の打合せについてデンソーのjが作成した「8月4日モルフォ打ち合わせ議事メモ」には,デンソー側が「仮に協業を進める場合には,自動車分野に関してはDN(デンソーのこと)だけと行うようなエクスクルーシブを結ぶことが可能か」と質問したところ,モルフォ側が「規模感等にもよるが,それは 可能であるという返答あり」と回答した旨の記載があることが認められる。 しかしながら,8月4日の打合せにおいて,デンソーがモルフォに対しエクスクルーシブの権利の付与について言及したことをもって,モルフォとデンソーとの本件協業が直ちに「業務上の提携」に該当するもの となったと認めることはできない。 また,eが8月4日の打合せに出席していないことは前記認定事実のとおりであり,e自身がエクスクルーシブの権利の付与について直接判断したものではないし,モルフォ側がしたとされるエクスクルーシブの権利の付与についての上記回答は,その記載内容からすると一般論とし ての回答の域を出ないものであったと評価するのが相当であり,何らか の意思決定を含むものであったとはいえない。 この点につき,前記認定したところによると,デンソー走行安全技術企画室が8月31日付けで作成した「マル秘」資料である「画像認識・知能化技術開発の全体像とアライアンスに関して」には,「自動車分野に関してのエクスクルーシブを結ぶことができるか→Yes(e)」と の記載があることが認められる。 しかし,eがデンソーとの打合せに 化技術開発の全体像とアライアンスに関して」には,「自動車分野に関してのエクスクルーシブを結ぶことができるか→Yes(e)」と の記載があることが認められる。 しかし,eがデンソーとの打合せに直接参加したのは,8月4日以前では6月15日の打合せに限られるが,本件証拠上,モルフォ及びデンソーがそれぞれ作成した6月15日の打合せの議事の記録(甲A6・資料5,乙A9・資料2,乙A14・資料5)には,本件秘密保持契約の 締結について合意した旨の記載はあるものの,エクスクルーシブの権利の付与に言及した記載はない。このことからすると,eが6月15日の打合せにおいて,エクスクルーシブの権利の付与について言及したとは認められない。また,モルフォ側の記録において,デンソーがモルフォに対し,エクスクルーシブの権利の付与について言及したことが認めら れるのは,9月11日の本件会食の時であり,それ以前にデンソーからモルフォに対しエクスクルーシブの権利の付与について言及したと認められる客観的な資料はない。 そうすると,デンソー走行安全技術企画室が8月31日付けで作成した上記資料の記載内容から直ちに,8月4日の打合せ以降8月末までに eがデンソーに対しエクスクルーシブの権利を付与したと認めることも困難である。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 以上によれば,8月4日の打合せの段階において,モルフォとデンソーとの間の本件協業の内容が,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす 程度の具体的な内容を持つものとして「業務上の提携」に当たるもので あったとはいえない。 エ 8月26日の打合せについて前記認定事実ウによれば,8月26日の打合せにおいて,モルフォは,本件サンプル画像を持参した上 」に当たるもので あったとはいえない。 エ 8月26日の打合せについて前記認定事実ウによれば,8月26日の打合せにおいて,モルフォは,本件サンプル画像を持参した上で愛知県刈谷市に所在するデンソー本社を訪れ,デンソーに対し,モルフォの有する画像処理技術についての説明・ 提案等と共に本件サンプル画像に係る画像処理結果を説明したこと,デンソーはモルフォがデンソーの要望に応えたこととその技術力を高く評価したこと,その上で,モルフォとデンソーとの間で技術的な課題などについての協議が行われたことが認められる。 しかしながら,8月26日の打合せの内容は,8月4日の打合せにおい てされた本件提示に対する回答にとどまるのであり,8月4日の打合せで想定されていたものと同程度のものにすぎず,それ以上に具体化していたものではなかったというべきである。 したがって,8月26日の打合せ段階において,モルフォとデンソーとの間の本件協業の内容が,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の具 体的な内容を持つものとして「業務上の提携」に当たるものであったとはいえない。 オ 9月11日の打合せについて前記認定事実イによれば,9月11日の打合せにおいて,モルフォはデンソーとの間で技術的な課題などについての協議を行い,デンソーから, モルフォの明るさ補正のソフトウェア等を組み込んだ画像処理結果を評価する機材を開発し,これらのソフトウェアを組み込んだ装置を自動車に搭載して実際に走行させて,その結果を社内で確認するなどのテストを行いたい旨の要望がされたことが認められる。 上記のデンソーからの要望は,これまで行われていたデンソーがモル フォの技術力等を見定めるためにしていた要望よりも,本件 るなどのテストを行いたい旨の要望がされたことが認められる。 上記のデンソーからの要望は,これまで行われていたデンソーがモル フォの技術力等を見定めるためにしていた要望よりも,本件共同開発の内 容に踏み込んだ格段に具体的なものであったということができる。すなわち,デンソーの上記要望は,モルフォとデンソーがそれぞれの技術を用いて共同で試作装置を作成しこれを自動車に搭載した上で,実際の走行データを基に検証を行うというものであって,正に,デンソーが計画していた新規車載カメラ等の本件共同開発の初期段階に当たる内容であったという ことができる。 そして,デンソーは,9月11日の時点までに,本件共同開発の相手方としてモルフォを選択することにしたことは前記認定事実アのとおりであり,その上で前記要望をしたのであるから,これらの事情からすると,9月11日の打合せにおいて,モルフォとデンソーとの間で検討された本 件協業の内容は,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の具体的な内容を持った「業務上の提携」に当たるものであったということができる。 カ本件会食について前記のとおり9月11日の打合せにおいて検討された本件協業の内容は,「業務上の提携」に当たるところ,前記認定事実ウのとおり,k及びl は,その後行われた本件会食において,mからデンソーが,モルフォとの業務面の提携だけでなく,資本提携や出資の意向も有している旨の申出(本件資本提携の申出)を受けたものである。そして,本件会食では,このほかにモルフォとデンソーとの間でエクスクルーシブの権利を付与することの可否やモルフォの社員を2,3人程度デンソーとの業務に専従させ ることの可否についても話し合われ,更に9月24日の打合せにはデンソー ォとデンソーとの間でエクスクルーシブの権利を付与することの可否やモルフォの社員を2,3人程度デンソーとの業務に専従させ ることの可否についても話し合われ,更に9月24日の打合せにはデンソーのnも同行してモルフォと合意することができれば,本件資本業務提携に係る契約を締結することについても話合いがされたことが認められる。 上記のとおり本件会食において交渉・検討された本件協業に関する内容は,資本提携に加えて本件共同開発に係る人的・法的体制の整備に関する ものであったから,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の具体的な 内容を持った「業務上の提携」に当たるものであったということができる。 キ小括以上検討したところによれば,モルフォとデンソーとの本件協業の内容は,9月11日の打合せ及び本件会食の時点において,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の具体的な内容を持った「業務上の提携」に当た るものとなったということができるが,それ以前には,そのような具体的な内容を持った「業務上の提携」に当たるものであったということはできない。 そして,前記認定事実ウのとおり,eは9月18日の打合せにおいて,本件会食でデンソーからされた本件資本提携の申出を了承する旨の決定を したと認められ,これをもって「業務執行を決定する機関」が本件資本業務提携に係る作業をモルフォの業務として「行うことについての決定」,すなわち「業務上の提携」を「行うことについての決定」をし,9月24日の打合せにおいて,eとn出席の下,モルフォとデンソーとの間で,本件資本業務提携が口頭で合意されたと認められる(認定事実)。 したがって,被告の前記主張は採用することができない。 本件回答が「行うことについての決定」 モルフォとデンソーとの間で,本件資本業務提携が口頭で合意されたと認められる(認定事実)。 したがって,被告の前記主張は採用することができない。 本件回答が「行うことについての決定」に当たるかについてア次に,本件回答が金商法166条2項1号柱書きの「行うことについての決定」に当たるかについて検討するに,被告は,8月4日の打合せに出席したiから,デンソーからの本件共同開発可否の判断に関する要望を受 けたことなどの打合せ内容の報告がされたことに対し,eが「分かりました」と本件回答をしたことをもって,デンソーとの本件共同開発に関する作業をモルフォの業務として行っていくことを明示的に了承し,もって「業務上の提携」を「行うことについての決定」をした旨主張する。 前記認定事実アによれば,iは,8月4日の打合せの後すぐに,eに 対し,「秘密保持契約の締結が終わりました。」,「今度は刈谷に行って 技術者同士で技術に関する話に進むそうです。」などと述べて打合せ内容を報告したところ,これに対しeが「分かりました。」と答え(本件回答),それ以上自らの意見を述べなかったことが認められる。 しかしながら,前記説示したとおり,8月4日の打合せの段階においては,本件協業の内容は,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の具体 的な内容を持った「業務上の提携」に当たるものではなかったのであるから,本件回答をもって「業務上の提携」を「行うことについての決定」がされたとは認められない。 イこの点をおくとしても,仮に8月4日の打合せにおいてデンソーから本件提示がされたことにより,本件協業の内容が「業務上の提携」に当たる 余地があるとしても,前記認定したiの発言内容からすれば,iのeに対する8月4日の打 8月4日の打合せにおいてデンソーから本件提示がされたことにより,本件協業の内容が「業務上の提携」に当たる 余地があるとしても,前記認定したiの発言内容からすれば,iのeに対する8月4日の打合せ内容の報告は,モルフォとデンソーとの間で本件秘密保持契約が無事に締結されたことと,デンソーとの今後の協議が,愛知県刈谷市に所在するデンソー本社において技術者同士で技術面に関して話し合うことになったという事実経過を報告することに主眼が置かれていた とみるのが自然である。 ウこれに対し,被告は,8月4日の打合せにおいて,デンソーから本件共同開発可否の判断に関する要望がされたが,打合せに出席したモルフォの担当者らの一存で決められる事項ではなかったため,iは,eに対して本件共同開発可否の判断に関する要望を報告して,eにその実施 の可否の判断を仰いだ旨主張する。 しかしながら,iがeに対してした8月4日の打合せの報告内容は前記のとおり簡潔なものであり,被告の主張するような本件共同開発可否の判断に関する要望について,eの判断を仰ぐために特にされたことをうかがわせる内容とはなっていない。 これを裏付けるように,デンソーとの交渉は,8月4日の打合せ後, iからEIP事業部のk及びlに引き継がれ,iは外れることとなっていた(認定事実ア及びア)のであるから,被告が主張するような重要な判断をeに仰ぐのであれば,iのみならず後任のk及びlも同席させて,eに判断・指示を直接仰ぐのが自然であるし,仮に同席させることが困難であったとしても,少なくともeがした判断・指示の結果に ついて,iからk及びlに対し個別に伝達されるべきであるが,本件証拠上,そのような事実があったことは認められない。 したがって,被告の上記主張は としても,少なくともeがした判断・指示の結果に ついて,iからk及びlに対し個別に伝達されるべきであるが,本件証拠上,そのような事実があったことは認められない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 また,被告は,eが8月4日の打合せ前の時点において,e自身が6月15日の打合せ以降デンソーとの本件協業について強い興味を示して おり,iとjとの間のメールを受信していたことから,8月4日の打合せ内容を事前に認識していたかのような主張をし,これを前提に本件回答程度の内容でも「業務上の提携」を「行うことについての決定」に当たるかのような主張をする。 しかしながら,eが,前記認定事実アのとおりモルフォの新規事 業領域の一つとして挙げていた「その他組込分野(車載,監視カメラなど)」について,大手自動車部品メーカーであるデンソーとの本件協業に興味を持っていたことは否定することができないとしても,eが,8月4日の打合せ内容を事前に十分に認識していたとするには疑問がある。 すなわち,前記認定事実イによれば,6月15日の打合せにe自身が 出席したのは,NVIDAの担当者oから直接eに対しデンソーの依頼内容が打診されたといういきさつがあったからであると考えるのが自然であり,それ以降の打合せについては,本件資本提携の申出を了承することとした後の9月24日の打合せまで,eが参加したことはないのであるから,このような事実は,被告の上記主張と相いれないものである。 他方で,前記認定事実イによれば,eは,6月16日以降,iと jとのメールの「CC」欄の宛先に入っていたため,本件秘密保持契約締結についての協議・検討や今後の打合せに関するメールを受信していたことは認められるものの,e自身が,これ 6日以降,iと jとのメールの「CC」欄の宛先に入っていたため,本件秘密保持契約締結についての協議・検討や今後の打合せに関するメールを受信していたことは認められるものの,e自身が,これらのメールについて直接返信したり,あるいはこれらのメールの内容についてiに問い合わせたりしたことはうかがえない。 eは,モルフォの代表取締役でありCTO室室長を兼務していたものであるから(前提事実イ),日々大量のメールを受信していたと推認されるのであり,そうだとすると,上記のとおりiとjとのメールを受信していたことのみをもって,その内容を逐一把握していたとは考え難い。 さらに,モルフォにおいては,秘密保持契約の締結は部門長判断で決裁されており,現に本件秘密保持契約も担当部長であるiが起案し自ら決裁しモルフォ社内の手続を完結させたのであり(認定事実ア),e自身は本件秘密保持契約の締結手続に何ら関与していないものである。 したがって,eが8月4日の打合せ内容を事前に認識していたことを 前提とする被告の上記主張は採用することができない。 エ以上認定説示した事情に照らすと,iからeに対してされた8月4日の打合せ内容の報告は,前記のとおり本件秘密保持契約が無事に締結されたことと,デンソーとの今後の協議が,愛知県刈谷市に所在するデンソー本社において技術者同士で技術面に関し話し合うことになったという事実経 過を報告することを主眼としたものであり,eに対し何らかの判断を仰ぐものであったとはいえないのであって,それゆえに,eも「分かりました。」と述べて,それ以上自らの意見を述べなかったものである。すなわち,eの本件回答は,iが報告した事実経過を了承する趣旨の発言であったと評価するのが相当であり,それ以上に何らかの eも「分かりました。」と述べて,それ以上自らの意見を述べなかったものである。すなわち,eの本件回答は,iが報告した事実経過を了承する趣旨の発言であったと評価するのが相当であり,それ以上に何らかの意思決定を含むもので あったと認めることはできない(甲A5・15,16頁,甲A6・12 頁)。 オこのことは,①8月10日のEIP事業部定例会議において,lが8月4日の打合せ内容を報告した営業週報や客先議事録に,デンソーに関する記載が追加されたものの,その内容は概括的なものにとどまり,eが何らかの決定を行ったことをうかがわせる記載がないこと(認定事実イ), ②9月8日付けで作成されたモルフォの本件活動計画においては,デンソーは顧客先としてランク付けされておらず,社名すら記載されていないこと(認定事実ア),③他方で,デンソーから本件資本提携の申出があった後の同月24日にkが作成した事業企画部の企画書には,デンソーとの本件資本業務提携が締結されたことを踏まえて,売上目標と共に具体 的な記載がされていること(認定事実イ)などの各事実によっても裏付けられているというべきである。 カしたがって,仮に,8月4日の打合せにおいてデンソーがモルフォに対し本件提示をしたことをもって,本件協業の内容が「業務上の提携」に当たるとみる余地があったとしても,eがiに対してした本件回答が,「業 務上の提携」に向けた作業等を会社の業務として「行うことについての決定」をしたものであると認めることはできない。 以上によれば,被告の主張するように8月4日の打合せ後にされた本件回答が,モルフォの「業務執行を決定する機関」による「業務上の提携」を「行うことについての決定」に当たるとは認められない。 したがって,被告の前 するように8月4日の打合せ後にされた本件回答が,モルフォの「業務執行を決定する機関」による「業務上の提携」を「行うことについての決定」に当たるとは認められない。 したがって,被告の前記主張は採用することができない。 4 原告らが本件重要事実を自己の職務に関し「知つた」といえるか(争点3)について⑴ 被告は,原告aは遅くとも10月5日までに,原告bは遅くとも9月28日までに,モルフォの「業務執行を決定する機関」であるeが,「業務上の 提携」を「行うことについての決定」をしたこと(本件重要事実)を,自己 の職務に関し「知つた」旨主張するところ,前記説示した金商法166条1項の趣旨に鑑みれば,同項1号にいう重要事実をその者の職務に関し「知つた」についても,その認識の内容が一般投資家の投資判断に影響を及ぼし得る性質のものであるか否かという観点から検討するのが相当である。 このような見地からすれば,金商法166条1項1号にいう重要事実をそ の者の職務に関し「知つた」といえるためには,「業務執行を決定する機関」により重要事実に係る決定がされたことについての少なくとも未必的な認識があれば足り,当該決定に係る事項が確実に実行されることが予測されるとの認識や,当該決定が金商法166条1項1号,同条2項1号ヨ,施行令8条1号の構成要件に当てはまるとの認識までは要しないと解するのが相当で あるが,その場合であっても,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の内容であることの認識を要すると解すべきである。 ⑵ そして,「業務執行を決定する機関」であるeが,「業務上の提携」を「行うことについての決定」をした(本件重要事実)のは,9月18日の打合せの時であり,それ以前にモルフォにおいて「業務上の提携」を「行うこ 務執行を決定する機関」であるeが,「業務上の提携」を「行うことについての決定」をした(本件重要事実)のは,9月18日の打合せの時であり,それ以前にモルフォにおいて「業務上の提携」を「行うこ とについての決定」がされたと認められないことは,前記認定説示のとおりである。 そうすると,原告らが金商法166条1項1号にいう重要事実を自己の職務に関し「知つた」といえるか否かについては,9月18日の打合せ以降の原告らの認識を問題にすれば足りる。 このような前提に基づき検討するに,前記前提事実,前記認定事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。なお,この認定に反する証拠は,その限度で採用することができない。 アプロダクト開発部定例会議での報告内容モルフォにおいては,毎週月曜日午前11時から1 時間程度,プロダク ト開発部部員,CTO室室員数名及びEIP事業部の技術担当部員による プロダクト開発部定例会議を開催していた。 プロダクト開発部定例会議においては,プロダクト開発部部員から成る四つのチームが,原告bに対し,1チーム当たり10分から15分程度で,技術週報等の資料に基づき業務内容を報告し,最後にkほかEIP事業部部員が,プロダクト開発部と情報共有を図らなければならない案件に関し, 営業活動の進捗等について報告していた(甲35,40,乙F2,原告b本人調書9,18頁)。 イ 9月24日の打合せ等eは,9月18日の打合せにおいて,デンソーとの「業務上の提携」を「行うことについての決定」をし,これを踏まえて,モルフォとデン ソーは,9月24日の打合せを行った。9月24日の打合せには,モルフォからは,eらが出席し,デンソーからは,走行安全事業部長のnら うことについての決定」をし,これを踏まえて,モルフォとデン ソーは,9月24日の打合せを行った。9月24日の打合せには,モルフォからは,eらが出席し,デンソーからは,走行安全事業部長のnらが出席した上で,モルフォとデンソーは,本件技術を活用した新規車載カメラ等について本件共同開発を行うこと,デンソーとの資本提携を進めることを承諾し,もって,本件資本業務提携について口頭で合意した。 fは,デンソーとの本件協業に関わっているe,g,k,l,i,hほか2名に対し,9月28日,「デンソーとの資本提携に関する注意事項」と題するメール(以下「fメール」という。)を送信した。 fメールには,①モルフォの全社会などで「モルフォは来期以降のステップとして市場変更を検討している」という情報(以下「市場変更情 報」という。)が周知されているが,デンソーとの接触に際し市場変更情報を伝えないようにすること,②デンソーとは,本件資本業務提携の受入条件等を検討しているところ,市場変更情報がデンソーに伝わると,市場変更情報の実現度の高低にもよるが,デンソーがインサイダー情報を保持しているとみなされるおそれがあること,③その結果,モルフォ とデンソーとの本件資本業務提携のスケジュールに重大な悪影響を及ぼ す可能性があること,④デンソーとの今後のやり取りの中で,市場変更情報を始めとするモルフォのインサイダー情報をデンソーに伝えないよう情報管理に留意すること,⑤fメールの宛先以外で社内関係者が漏れている場合や今後関係者が増加する場合には,その者にも周知・共有すること,などが記載されていた。(乙A26) kは,EIP事業部のマネージャーであるpに対し,9月29日,fメールを添付した上で,9月24日の打合せにおいてデ その者にも周知・共有すること,などが記載されていた。(乙A26) kは,EIP事業部のマネージャーであるpに対し,9月29日,fメールを添付した上で,9月24日の打合せにおいてデンソーと本件資本業務提携を締結することがほぼ合意されたことなどを記載したメールを送信した。なお,kは,pに対する同メールの末尾に「持ち株会の口数増とか個人的なものは目を瞑ります」などと記載した。(乙A7,2 6)ウ 9月28日の定例会議モルフォでは,9月28日にプロダクト開発部定例会議が開かれ,原告らはこれに出席した。同定例会議において,kは「エンベデッドIP事業部進捗報告 EIP-P 2015/9/28」と題する技術週報 (以下「9月28日の技術週報」という。)に基づき,デンソーとの9月24日の打合せの内容を報告した。(乙A7,乙F2)9月28日の技術週報には,デンソーに関し「9/24 n(常務役員)様来社打合せ協業を口頭合意,契約等の手続を進めていく第一弾として,カメラ性能の向上としてVideoRefiner,De hazer,WDR,Super-zoomのデモ機開発 1.システム構成案を提示 2.本件試作開発の見積り提示」などの記載がある。 (乙A7・資料1-5)原告aは,プロダクト開発部定例会議でデンソーの社名を聞くようになってから,同僚にデンソーとはどういう会社なのかと聞いたところ, その相手から「知らないのか」などと知らないことをやゆするようなこ とを言われたため,立腹したことがあった。その後,原告aは,インターネットで,デンソーのことを検索し自動車部品を扱っているいわゆる大企業であることを知った。(乙F2)原告bは,プロダクト開発部部長として,モルフォ社内の各 とがあった。その後,原告aは,インターネットで,デンソーのことを検索し自動車部品を扱っているいわゆる大企業であることを知った。(乙F2)原告bは,プロダクト開発部部長として,モルフォ社内の各部署に向けて,試作機等の開発についてもプロダクト開発部の部員を使うことに なるので,相手方企業から費用として500万円以上の支払を受けるように求めており,デンソーの件に関しても費用の支払を受けるように求めたことがあった。(原告b本人調書11,13,28頁)エ 10月5日の定例会義 モルフォでは,10月5日にプロダクト開発部定例会議が開かれ,原 告らはこれに出席した。同定例会議では,欠席したkに代わりEIP事業部の技術担当部員が,10月5日の技術週報に基づき,デンソーの案件について進捗状況を報告した。(乙A7・8,14,15頁,弁論の全趣旨) 10月5日の技術週報には,デンソーに関し「10/9(fri)D ENSOjさまと打合せ。案件第一弾として VideoRefiner,De-hazer,Super-Zoom,WDRの統合PCツールの開発を受託することに成りました。この件に関しては単純な人月単価で見積りを出しています。(同社他プロジェクトに先立って実施するプロジェクト) 600万円ほどを想定(人月単価200M×3) 後ほ どEIPよりアプリケーション仕様を提出します。」「納期は12/M位,当該ツールをインストールしたPCを実車に乗せて評価するという目的です。」との記載がある。(乙A7・資料1-6)オ本件持株会における入会及び拠出口数の変更等について 本件持株会は,本件持株会の会員(以下,単に「会員」という。)が 継続的にモルフォの株式を取得することにより,会員の経営 -6)オ本件持株会における入会及び拠出口数の変更等について 本件持株会は,本件持株会の会員(以下,単に「会員」という。)が 継続的にモルフォの株式を取得することにより,会員の経営への参画意 識の向上及び財産形成の一助とすることを目的として組織された民法上の組合である(モルフォ従業員持株会規約(以下「規約」という。)2条,3条)。 本件持株会の会員は,モルフォの従業員に限られ(規約4条),モルフォの従業員は,本件持株会の理事長に申し出て,原則として毎年4月 及び10月に本件持株会に入会することができる。退会はいつでもすることができるが,一度退会した者は,原則として再入会することができない(規約5条1項)。 会員は,毎月の給与受領時に本件持株会への出資として月例拠出を行い(規約7条1項),月例拠出については一口を1000円とし,会員 一人につき100口を限度とする(モルフォ従業員持株会運営細則(以下「細則」という。)8条1項)。拠出口数の変更を希望する会員は,原則として毎年4月及び10月の7日までに届出を行う(細則11条)。 入会を希望する従業員又は会員は,会社(モルフォ)及び子会社に係る未発表の重要事実を知得していない場合に限り,入会,退会及び拠出 口数の変更等の申出を行うことができ,理事長は,同申出に係る従業員又は会員の未発表の重要事実の知得について,厳正に審査する(規約6条)。(乙F3の4,乙G3の4)カ本件a取引に至る経過原告aは,平成24年4月にモルフォに入社したところ,拠出する金 額に対してモルフォから10%の奨励金が補助されるため,本件持株会に拠出口数を20口2万円として入会した。 原告aは,平成27年頃,チャイナ・ショックと呼ばれる株価 したところ,拠出する金 額に対してモルフォから10%の奨励金が補助されるため,本件持株会に拠出口数を20口2万円として入会した。 原告aは,平成27年頃,チャイナ・ショックと呼ばれる株価の下落を受けて,本件持株会とは別に月々購入していた投資信託や株式の時価評価額が下落したため,上記のとおり奨励金が出るモルフォの株式を購 入する方が得をすると判断して,本件持株会の拠出口数を増加させるこ ととした。 原告aは,10月6日,本件持株会の拠出口数を40口4万円に増加させ,その結果,原告aは,本件公表前に増加させた拠出口数20口分に対応する買付けとして,モルフォの株式8.250株を買付価額合計3万6814円で買い付けたこととなった(本件a取引)。(乙F2) キ本件b取引に至る経過原告bは,本件持株会の拠出口数を10口1万円としていたところ,モルフォの株式を保有し続けることはリスクであると考えるようになり,平成27年4月頃,本件持株会の保有持株を現金化し,拠出口数を一口に変更しようと考えていたが,申込期限を徒過した。 このため,原告bは,本件持株会の持分株式を現金化することを先延ばしし,当時の持分株式数が110株程度であったことから,100株未満の端株を単元株である100株にするために,本件持株会の拠出口数を増加させることとした。なお,原告bは,会社内部の者しか知らない情報を基に株式市場で株の売買を行うことは,インサイダー取引に該 当するという知識を有していたが,従業員持株会を介した株式の取得がインサイダー取引の対象になるとは考えていなかった。 原告bは,10月1日,拠出口数を50口5万円に増加させ,その結果,本件公表前に増加させた拠出口数40口分に対応する買付けとして,モ の取得がインサイダー取引の対象になるとは考えていなかった。 原告bは,10月1日,拠出口数を50口5万円に増加させ,その結果,本件公表前に増加させた拠出口数40口分に対応する買付けとして,モルフォの株式16.500株を買付価額合計7万3629円で買い付 けたこととなった(本件b取引)。(乙G2,原告b本人調書32,33頁)原告aについての検討ア被告は,原告aは遅くとも10月5日までに本件重要事実を自己の職務に関し「知つた」旨主張するところ,前記認定事実のとおり,モルフォ とデンソーとの9月24日の打合せにおいては,モルフォからはeらが, デンソーからはnらが出席した上で,モルフォとデンソーは,本件技術を活用した新規車載カメラ等について本件共同開発を行うとともに,デンソーとの資本提携を進めることを承諾し,もって,本件資本業務提携について口頭で合意したものである。そして,原告aも出席した9月28日のプロダクト開発部定例会議において,kは9月28日の技術週報に基づき, 9月24日の打合せの内容を報告したものである。 kが報告した9月28日の技術週報には,「9/24 n(常務役員)様来社打合せ協業を口頭合意,契約等の手続を進めていく」などの記載があることからすると,この報告により,原告aは,9月24日の打合せにおいて,モルフォとデンソーが「協業を口頭合意」したことを認識した と認められる。 そして,前記3オに説示したところによれば,9月11日の打合せ以降,モルフォとデンソーとの本件協業の内容は,客観的には,本件共同開発の内容に踏み込んだ格段に具体的なものとなっており,デンソーが計画していた新規車載カメラ等の本件共同開発の初期段階に当たる内容の検討 を行っていたものである。 イ ,客観的には,本件共同開発の内容に踏み込んだ格段に具体的なものとなっており,デンソーが計画していた新規車載カメラ等の本件共同開発の初期段階に当たる内容の検討 を行っていたものである。 イしかしながら,デンソーからモルフォに対し本件資本提携の申出がされたのは,9月11日の本件会食時であったところ,kは,同月14日午後0時51分,gに宛てて,本件会食においてデンソーからされた本件資本提携の申出の内容を報告するメールを作成し,「CC」欄の宛先にfも入 れて送信しているが(前記認定事実エ),同メールには「ちなみに本内容は,暫く限られた範囲のみで展開させていただきます。」と記載し情報の管理を願い出ていたことが認められる(乙A7・資料2)。 さらに,kは,デンソーからの本件資本提携の申出に係る情報を広くモルフォ社内の社員に共有するのは適切ではないと考え,これ以降,kが作 成した技術週報では,モルフォがデンソーと本件資本提携の申出を受け入 れる方針を決めたことやそれに向けた作業を行っていることを,モルフォの他の社員に知られないようにするために,デンソーとの本件協業に関する内容については抽象的に記載するようにしていたことが認められる(甲A24・23頁,乙A7・資料2)。これを裏付けるように,kが作成した9月14日の技術週報には,9月11日の打合せ後の本件会食において, デンソーから本件資本提携の申出があったことをうかがわせる記載はない(乙A7・資料1-3)。 また,fメールによれば,9月24日の打合せにおいて,モルフォとデンソーが本件資本業務提携について口頭で合意したことを踏まえて,モルフォの関係者に対し,デンソーとの今後のやり取りの中で,市場変更情報 を始めとするモルフォのインサイダー情報をデン ルフォとデンソーが本件資本業務提携について口頭で合意したことを踏まえて,モルフォの関係者に対し,デンソーとの今後のやり取りの中で,市場変更情報 を始めとするモルフォのインサイダー情報をデンソーに伝えないようにし,デンソーとの本件資本業務提携に支障が生ずることがないように情報管理に留意するよう周知していることが認められる(前記イ)。 これらの事情からすると,モルフォ社内においては,デンソーとの本件資本業務提携を含む本件協業については,インサイダー取引に該当する可 能性があることを踏まえて情報管理が行われていたと認められるから,モルフォの幹部職員はおくとしても,原告aのようなプロダクト開発部の一般部員が,9月24日の打合せにおいて,モルフォとデンソーとの間で,本件資本業務提携について口頭で合意がされたことを具体的に認識していたとは認め難い。 ウこのように原告aは,9月24日の打合せにおいて,モルフォとデンソーとの間で本件資本業務提携について口頭で合意がされたことを具体的に認識していなかったというべきであるが,他方で,9月28日の技術週報によって,eがデンソーとの間で「協業を口頭合意」したこと自体は認識したと認められるから,これにより原告aにおいて,eが「業 務上の提携」を「行うことについての決定」をしたこと(本件重要事実) を,自己の職務に関し「知つた」といえるか否かを検討する必要がある。 そこで検討するに,9月28日の技術週報には,9月24日の打合せ内容として,「協業を口頭合意,契約等の手続を進めていく」の後に「第一弾として,カメラ性能の向上としてVideoRefiner,Dehazer,WDR,Super-zoomのデモ機開発 1.シ ステム構成案を提示 2.本件試作開発 続を進めていく」の後に「第一弾として,カメラ性能の向上としてVideoRefiner,Dehazer,WDR,Super-zoomのデモ機開発 1.シ ステム構成案を提示 2.本件試作開発の見積り提示」との記載がされているものである(前記ウ及び)。この9月28日の技術週報の記載内容からすれば,デンソーとの「協業」は,モルフォの本件技術を活用してカメラ性能を向上させた試作機等を開発し,システム構成案の提示と試作開発に係る見積りを提示することを内容とするものであった と理解することができる。 しかしながら,モルフォにおいては,モルフォの技術に関心を持った営業先企業の要望に応じて,秘密保持契約を締結した上で,簡易なデモンストレーションを無料で行い,更にこのような営業先企業から自社製品にモルフォの技術を搭載して機能を確かめたいとの要望が出された場 合には,原則として予算500万円程度の有償契約を締結し,おおむね2,3か月程度の期間で試作機を開発したり,その機能評価を行ったりすることのなどの営業活動を一般的に行っていることが認められる(甲A5・13~16頁,甲A27・6~8頁,甲A36,40,原告b本人調書1~3頁)。 このことを裏付けるように,8月10日の営業週報には,lが担当する案件だけを概観してみても,「クリューシステムズ ■搭載製品:監視カメラ・年末までに試作。 2015年2~3月に量産⇒2016年12月量産予定に変更」,「Casio(New) ■モルフォ製品:歪み補正,その他各種製 品 ■搭載製品:魚眼レンズ搭載カメラ(新製品)連動のスマホアプリ ■特徴:魚眼レンズ搭載カメラで撮影された動画をスマホアプリに転送。 ■開発スケジュール:2016年1月カメラH/W構成F ■搭載製品:魚眼レンズ搭載カメラ(新製品)連動のスマホアプリ ■特徴:魚眼レンズ搭載カメラで撮影された動画をスマホアプリに転送。 ■開発スケジュール:2016年1月カメラH/W構成Fix16年5月カメラ&アプリリリース予定 ■今後アクション:8月末にアプリ向け提案IPと概算価格の提案 ■その他:顔検出は,カシオからソースコードを開示してもらい,モルフォで実装することに」, 「ルネサス □6/25打ち合わせ。OIS+EISの協調動作の評価結果の説明 □ルネサスOIS+モルフォEISでの,市場開拓を目的に協業を検討。NDA締結へ」,「住友三井オートサービス □7/6に弊社にて打ち合わせ □車載用のドライブカメラの動画解析プロジェクトの件で,相談依頼。車内の インカメラで撮影したドライバーの姿勢・動作解析にDeepLearningを活用したい □7/29に打ち合わせ実施。実現化のための諸条件(学習データ・有償評価金額・年間利用料など)を先方で検討することに」,「トヨタ自動車 □NWS部にトーメン経由で問合わせのあったDe epLearningの開発案件 □EIP事業部のビジネスへの展開を目指す □7/23に東富士研究所を訪問 □DL開発に向け,現地調査及び打ち合わせ □EIP事業として,各種画像処理S/Wのデモ □トヨタ側から,当社画像処理IPを,どのような技術や課題,システムに検討・応用できそうかの検討内容を提示頂くことに。Movi eSolid, Dehazer,超解像に興味ありの様子」,「東京ウェルズ □半導体外観検査装置向けに,画像処理IPとDLを検討 □良品・不良品をDLによる自動認識の合同プロジェクトに向け,8/5に当社にて打ち合わせ □東京ウェルズより 」,「東京ウェルズ □半導体外観検査装置向けに,画像処理IPとDLを検討 □良品・不良品をDLによる自動認識の合同プロジェクトに向け,8/5に当社にて打ち合わせ □東京ウェルズより,2~3名のエンジニアをアサイン予定 □PCツール(13製品)を有償提供予定」 「KTシステム □富士通ゼネラルエレクトロニクスのNシステム向 けナンバープレート読み取りの画像処理案件 □7月末にKTシステムの画像処理の開発受託についての結果が出る予定 □富士通ゼネラルから頂いた画像を,補正(Dehaser⇒Denoiser⇒WDR)し,8/7に提出」などの記載があることが認められる(甲A31・45枚目以降 )。 これらの記載やその他の定例会議の資料(甲A34,35)からすると,モルフォは,デンソーとの交渉と並行しながら,複数の営業先企業を相手方に一般的な営業活動として試作機等の開発及びその有効性の評価などの交渉・検討を行うとともに,その開発のために有償契約の交渉・締結等をしていたということができる。 そして,モルフォにおいては,このような営業先企業との単なる営業活動にも「協業」という用語を使用していたものであり,これらの活動が必ずしも「業務上の提携」を意味するものではなかったことが認められる(甲2の2,甲A5・10,49~51頁,甲A6・4~6頁,甲A7,8・6頁,甲A19,24)。 上記のようなモルフォの営業活動の実態や原告aがプロダクト開発部において一般部員として主にスマートフォン分野に関する顧客の技術サポート業務に従事していた事実を併せ考慮すると,原告aとしては,9月28日の技術週報に記載された「協業を口頭合意」の内容について,モルフォが通常の営業活動として行う試作機等の開 に関する顧客の技術サポート業務に従事していた事実を併せ考慮すると,原告aとしては,9月28日の技術週報に記載された「協業を口頭合意」の内容について,モルフォが通常の営業活動として行う試作機等の開発及びその見積りを 提示することに合意したという程度の内容を認識したにとどまるものであったというべきである。 このほか前提事実エ,前記アによれば,プロダクト開発部定例会議においては1時間程度という限られた時間の中で大部の技術週報等の資料に基づき報告が行われているものであり,kほかEIP事業部部員 からの報告内容は簡潔なものにとどまると考えられること,デンソーに 関する9月28日の技術週報の記載内容も上記の程度にとどまり,他の案件と比較して強調されているものでもなく,その記載内容に照らし上記「協業」の内容が「業務上の提携」に該当するものであったことをうかがわせる記載もないことなどの事情が認められる。 これらの事情からすると,原告aにおいて,9月28日の技術週報に よる報告を受けて,モルフォとデンソーとの間で「協業を口頭合意」したことを知ったとしても,上記のとおり通常の営業活動の範囲内のものであると認識したにとどまるものであったというべきであり,これが「業務上の提携」に該当するものであるとの未必的な認識や,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の内容のものであるとの認識を有して いたと認めることは困難である。 エ次に,原告aは,10月5日のプロダクト開発部定例会議に出席していることが認められるところ,同定例会議においては,欠席したkに代わりEIP事業部の技術担当部員が,10月5日の技術週報に基づきデンソーとの案件の進捗について報告したこと,10月5日の技術週報に は,「10/9( fri) 例会議においては,欠席したkに代わりEIP事業部の技術担当部員が,10月5日の技術週報に基づきデンソーとの案件の進捗について報告したこと,10月5日の技術週報に は,「10/9( fri)DENSOjさまと打合せ。案件第一弾として VideoRefiner, De-hazer,Super-Zoom,WDRの統合PCツールの開発を受託することに成りました。 この件に関しては単純な人月単価で見積りを出しています。(同社他プロジェクトに先立って実施するプロジェクト) 600万円ほどを想定 (人月単価200M×3) 後ほどEIPよりアプリケーション仕様を提出します。」「納期は12/M位,当該ツールをインストールしたPCを実車に乗せて評価するという目的です。」との記載がされていたことが認められる(前記エ)。 この10月5日の技術週報の記載内容によれば,デンソーの案件につ いては,①10月9日金曜日にjと打合せが予定されていること,②モ ルフォの本件技術を統合したPCツールの受託開発を行うことになったこと,③その予算については600万円と見積りをしていること,④納期は12月中旬であり受託開発したPCツールを実車に搭載しその機能評価を行うことを目的としていることなどの進捗があったことが認められ,原告aにおいてもこれらの進捗状況を認識したことが認められる。 しかしながら,上記のとおり報告された内容は,9月28日の技術週報に「デモ機開発 1.システム構成案を提示 2.本件試作開発の見積り提示」と記載されたデンソーとの「協業」に関する続報であると認められ,原告aが,同日の時点でこれが「業務上の提携」に当たるものであることを「知つた」といえないことは前記説示のとおりである。 10月 記載されたデンソーとの「協業」に関する続報であると認められ,原告aが,同日の時点でこれが「業務上の提携」に当たるものであることを「知つた」といえないことは前記説示のとおりである。 10月5日の技術週報において追加された内容についても,モルフォが行うこととなった本件技術を統合したPCツールの受託開発は,これを実車に搭載して機能評価を行うといった試作段階のものであり,その予算も600万円にとどまるものであって,その記載内容のみからすれば,依然としてモルフォの一般的な営業活動の範囲内である試作機等の 受託開発にとどまるものであったということができる。 そして,前記ウに認定したモルフォの営業活動の実態や原告aがプロダクト開発部において一般部員として主にスマートフォン分野に関する顧客の技術サポート業務に従事していた事実を併せ考慮すると,原告aとしては,10月5日の技術週報に記載された内容について,モル フォがデンソーに対する通常の営業活動として試作機等の受託開発を600万円で行うことになったという程度の内容を認識したにとどまるというべきである。 このほか前記前提事実エ,前記アの認定事実によれば,プロダクト開発部定例会議においては1時間程度という限られた時間の中で大部 の技術週報等の資料に基づき報告が行われているものであり,特に10 月5日の定例会議においては,欠席したkに代わりEIP事業部の他の技術担当部員が報告を行ったことからすると,その報告内容は普段よりも簡潔なものであった可能性が高かったと考えられること,デンソーに関する10月5日の技術週報の記載内容も上記の程度にとどまり,他の案件と比較して強調されているものでもなく,その記載内容に照らし, 上記報告内容が「業務上の提携」に該当するもの こと,デンソーに関する10月5日の技術週報の記載内容も上記の程度にとどまり,他の案件と比較して強調されているものでもなく,その記載内容に照らし, 上記報告内容が「業務上の提携」に該当するものであったことをうかがわせる記載もないことなどの事情が認められる。 これらの事情によれば,原告aにおいて,10月5日の技術週報による報告を受けて,モルフォがデンソーに対し試作機等の受託開発を600万円で行うこととなったことを知ったとしても,通常の営業活動の範 囲内のものであると認識したにとどまるものであったというべきであり,これが「業務上の提携」に該当するものであるとの未必的な認識や,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の内容のものであるとの認識を有していたと認めることは困難である。 なお,原告aが,原告a取引をしたことについて,デンソーに関する 情報があったことが動機の一つとなった(乙F2)としても,これが「業務上の提携」に該当するものであるとの未必的な認識もなかった以上,前記認定判断を左右するものではない。 オそうすると,原告aが,遅くとも10月5日までに,本件重要事実を自己の職務に関し「知つた」とまでは認められない。 原告bについての検討ア被告は,原告bが,遅くとも9月28日までに,本件重要事実を自己の職務に関し「知つた」旨主張するところ,前記認定事実のとおり,モルフォとデンソーは9月24日の打合せにおいて本件資本業務提携について口頭で合意したものであり,原告bが出席した9月28日のプロダクト開 発部定例会議においては,kから9月28日の技術週報に基づき9月24 日の打合せの内容が報告され,これにより,原告bもeがデンソーとの「協業を口頭合意」したことを認識したと認めること 発部定例会議においては,kから9月28日の技術週報に基づき9月24 日の打合せの内容が報告され,これにより,原告bもeがデンソーとの「協業を口頭合意」したことを認識したと認めることができる。 イそこでまず,原告bが,遅くとも9月28日までに,モルフォとデンソーとの間で本件資本業務提携について口頭で合意されたことを具体的に認識していたか検討する。 前記前提事実イのとおり,原告bは,プロダクト開発部部長であった者であるから,伝達されるモルフォ社内の情報の量や内容については,プロダクト開発部の一般部員であった原告aと同列に論じ難いものがある。 しかしながら,モルフォとデンソーとの本件協業は,主としてEIP 事業部において対応していたものであり,原告bが所管するプロダクト開発部の担当するものではなかったところ,前記イ及びイに認定したところによれば,モルフォ社内においては,デンソーとの本件資本業務提携を含む本件協業については,インサイダー取引に該当する可能性があることを踏まえて情報管理が行われていたと認められるのであり, 原告bについては,本件会食後のkからg宛のメールやfメールの宛先に含まれていなかったものである。 また,前記アに認定したところによれば,プロダクト開発部定例会議においては,プロダクト開発部部員から成る四つのチームが,原告bに対し,1チーム当たり10分から15分程度で,技術週報等の資料に 基づき業務内容を報告し,最後にkほかEIP事業部部員が,プロダクト開発部と情報共有を図らなければならない案件に関し,営業活動の進捗等について報告をしていたことが認められる。これによれば,原告bも,プロダクト開発部以外の案件に関する情報は,専らkほかEIP事業部員が行う技術週 有を図らなければならない案件に関し,営業活動の進捗等について報告をしていたことが認められる。これによれば,原告bも,プロダクト開発部以外の案件に関する情報は,専らkほかEIP事業部員が行う技術週報に基づく報告を聞くことで得ていたと認めること ができる。そして,kが作成した9月28日の技術週報の記載は,前記 認定した程度の記載にとどまるものであり,これに先立ちデンソーから本件資本提携の申出がされた9月11日の打合せ及び本件会食に関する9月14日の技術週報にも,そのような申出がされたことをうかがわせる記載もなかった。 この点に関し,被告は,原告bには,プロダクト開発部の一般部員と は異なり,営業担当者がモルフォのサーバに設けられた客先議事録掲示板に顧客との協議や交渉等に関する議事録を投稿すると,原告bの宛先を含むメールアドレスに対し情報共有のために投稿内容を知らせるメールが送信されていた旨主張し,これをもって,原告bがモルフォとデンソーとの本件協業に関する交渉内容を把握していた旨主張する。 しかしながら,原告bは,被告主張のとおり客先議事録掲示板に投稿された議事録の内容を知らせるメールを受信していたものの,平成27年当時のモルフォにおいては,大量のメールが整理されることなく原告bを含むモルフォ社内の技術担当部員に共有されていたこと(原告b本人調書20,21頁)からすると,被告の上記主張は抽象的な可能性を 指摘するにとどまるものであり,このほか原告bが客先議事録掲示板に投稿された議事録を読み,モルフォとデンソーとの本件協業に関する交渉内容を具体的に把握していたことを裏付ける的確な証拠はないから,被告の上記主張は採用することができない。 以上によれば,原告bが,遅くとも9月28日までに,モ デンソーとの本件協業に関する交渉内容を具体的に把握していたことを裏付ける的確な証拠はないから,被告の上記主張は採用することができない。 以上によれば,原告bが,遅くとも9月28日までに,モルフォとデ ンソーとの間で本件資本業務提携について口頭で合意されたことを具体的に認識していたということはできない。 ウ次に,原告bは,9月28日の技術週報によって,eがデンソーとの間で「協業を口頭合意」したこと自体は認識したと認められるから,これにより原告bにおいて,eが「業務上の提携」を「行うことについて の決定」をしたこと(本件重要事実)を,自己の職務に関し「知つた」 といえるか否かについて検討する。 前記認定説示したとおり,9月28日の技術週報には,9月24日の打合せ内容として,「協業を口頭合意,契約等の手続を進めていく」の後に「第一弾として,カメラ性能の向上としてVideoRefiner,Dehazer,WDR,Super-zoomのデモ機開発 1.システム構成案を提示 2.本件試作開発の見積り提示」との記載がされているものである(前記ウ及び)。 この9月28日の技術週報の記載内容からすれば,デンソーとの上記「協業」は,モルフォの本件技術を活用してカメラ性能を向上させた試作機等を開発し,システム構成案の提示と試作開発に係る見積りを提示 することを内容とするものであったと理解することができる。 そして,モルフォは,デンソーとの交渉と並行しながら,複数の営業先企業を相手方に一般的な営業活動として試作機等の開発及びその有効性の評価などの交渉・検討を行うとともに,その開発のために有償契約の交渉・締結等をしていたものであって,モルフォにおいては,このよ うな営業先企業との単なる 動として試作機等の開発及びその有効性の評価などの交渉・検討を行うとともに,その開発のために有償契約の交渉・締結等をしていたものであって,モルフォにおいては,このよ うな営業先企業との単なる営業活動にも「協業」という用語を使用していたものであり,これらの活動が必ずしも「業務上の提携」を意味するものではなかったことが認められる。 これを裏付けるように,プロダクト開発部定例会議の資料によれば,モルフォがデンソーと交渉をしていた前後の時期に,東京ウェルズとの 間で,モルフォのディープラーニングに関する技術を応用した「協業」に関し600万円で同技術の有効性評価契約を締結することに合意したこと,パナソニックとの間で,500万円で試作機の開発を受託し,モルフォの技術の有効性評価を行う契約を締結したことが記載されており(甲A34),原告bもその内容を当然に認識していたものと認められ るが,これらの営業活動の内容は,前記認定したモルフォとデンソーと の上記「協業」と同様のものであったと評価することができる。 このようなモルフォの営業活動の実態に照らせば,プロダクト開発部部長であった原告bとしても,9月28日の技術週報に記載された「協業を口頭合意」の内容について,モルフォが通常の営業活動として行う試作機等の開発及びその見積りを提示することに合意したという程度の 内容を認識したにとどまるものであったというべきである。 この点に関し,原告bは,デンソーの件についても試作機等の開発に関し費用の支払を受けるように求めていたことが認められる。しかしながら,bのこのような行動は,一般に試作機等の開発についてもプロダクト開発部の部員を使うことになることから,プロダクト開発部部長と してモルフォ社内の全部署に対し,試作機等 められる。しかしながら,bのこのような行動は,一般に試作機等の開発についてもプロダクト開発部の部員を使うことになることから,プロダクト開発部部長と してモルフォ社内の全部署に対し,試作機等の開発に関して相手方企業から費用として500万円以上の支払を受けるように求めていたことに基づくものであり,このような事実をもって,9月28日の技術週報に記載された試作機等の開発等がモルフォの通常の営業活動の域を超えるものであったということはできない。 このほか前提事実エ,前記アの認定事実によれば,プロダクト開発部定例会議においては1時間程度という限られた時間の中で大部の技術週報等の資料に基づき報告が行われていたものであり,kほかEIP事業部部員からの報告内容は簡潔なものにとどまると考えられること,デンソーに関する9月28日の技術週報の記載内容も前記の程度にとど まり,他の案件と比較して強調されているものでもなく,その記載内容に照らし上記「協業」の内容が「業務上の提携」に該当するものであったことをうかがわせる記載もないことなどの事情が認められる。 これらの事情からすると,原告bにおいて,9月28日の技術週報による報告を受けて,モルフォとデンソーとの間で「協業を口頭合意」し たことを知ったとしても,上記のとおり通常の営業活動の範囲内のもの であると認識したにとどまるものであったというべきであり,これが「業務上の提携」に該当するものであるとの未必的な認識や,一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の内容のものであるとの認識を有していたと認めることは困難である。 エしたがって,原告bが,9月28日の時点で,本件重要事実を自己の 職務に関し「知つた」と認めることはできない。 その他 との認識を有していたと認めることは困難である。 エしたがって,原告bが,9月28日の時点で,本件重要事実を自己の 職務に関し「知つた」と認めることはできない。 その他アこれに対し,被告は,原告らが本件重要事実を自己の職務に関し「知つた」上で,本件各取引を行った旨主張するが,前記前提事実及び前記カ及びキに認定したところによれば,原告らはいずれも本件持株会の拠出 口数の増加により,本件各取引を行ったものである。本件持株会においては,毎年4月と10月にこれらの申込みをしなければ,入会や拠出口数の増加が原則としてできないこととされているところ,原告らはいずれも申込期限の直前である同月1日又は6日に当該申込みをし,本件各取引を行ったものである。 このような本件持株会の制度やその申込期限からすると,原告らがeが「業務上の提携」を「行うことについての決定」をした9月18日の打合せ後に本件各取引を行ったからといって,本件重要事実を自己の職務に関し「知つた」と推認することはできない。なお,fメールによれば,9月末の時点で,モルフォ社内において市場変更情報が共有されていたと認め られることからすると,この実現を見込んで,原告らを含む複数のモルフォの従業員が,10月の申込時期に本件持株会への入会や拠出口数の増加をしたとしても不自然とはいえない。 イむしろ,本件持株会の仕組みからすると,モルフォの従業員が,インサイダー取引により利益を得ることを目的としながら,本件持株会の制度を 利用して株式の売買を行うことには何らの合理性もないのであり,これを もってインサイダー取引に該当するとして,原告らに課徴金を課すという被告の論理構成には無理があるといわざるを得ない。 すなわち,本件持株会 行うことには何らの合理性もないのであり,これを もってインサイダー取引に該当するとして,原告らに課徴金を課すという被告の論理構成には無理があるといわざるを得ない。 すなわち,本件持株会においては,会社関係者がインサイダー情報に接したとしても,前記認定のとおり本件持株会への入会及び拠出口数の変更を行うことのできる時期が年2回に限られ,また,一度退会した者は原則 として再入会することができないとされている上に,株式の買付けについては,本件持株会が一括購入し会員の拠出口数等の割合に応じて当該株式の持分が算出され(規約10条,11条),株式の途中引出しについても,持分株式数が100株以上になったとき100株を単位としてその交付を受けることができる(規約17条)とされているものである。 このような本件持株会の仕組みからすると,インサイダー情報に接した会社関係者が,インサイダー取引により利益を得ることを目的としながら,本件持株会の制度を利用して株式の売買を行う場合には,インサイダー情報が公表される前に株式を購入したり,拠出口数を増加させたりしようとしても,これを適宜のタイミングで自由に行うことができない上に,イン サイダー情報の公開後は,本件持株会を退会しない限り,公開された情報により影響を受け高値となった株価で株式の購入を強いられることとなり,その目的を達することが困難となる。また,上記のとおり,株式の途中引出しについても制限がある以上,適宜のタイミングで持分株式を売却することができず,高値で株式を売却し利益を確定させることも困難である。 したがって,被告の主張はこの点からも失当である。 5 小括よって,原告らが被告主張の時期までに本件重要事実を自己の職務に関し「知つた」と認めることはできな ことも困難である。 したがって,被告の主張はこの点からも失当である。 小括 よって,原告らが被告主張の時期までに本件重要事実を自己の職務に関し「知った」と認めることはできないから,本件各納付命令は,処分要件を欠き違法でありいずれも取消しを免れない。 結論 以上によれば,原告らの請求には理由があるから,いずれも認容することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官市原義孝 裁判官小西圭一 裁判官和田崇寛 別紙指定代理人目録省略

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