主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は,控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人玉川税務署長が控訴人P1に対して平成14年1月31日付けでした,控訴人P1の平成12年分所得税についての過少申告加算税の賦課決定(ただし,平成16年3月3日付け決定によって一部取り消された後のもの)を取り消す。 3 被控訴人玉川税務署長が控訴人P1に対して平成14年5月28日付けでした,控訴人P1の平成12年分所得税についての更正(ただし,平成14年10月24日付け異議決定によって一部取り消された後のもの)のうち,納付すべき税額4001万3000円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定(ただし,平成14年10月24日付け異議決定によって一部取り消された後のもの)を取り消す。 4 被控訴人目黒税務署長が被控訴人P2に対して平成14年6月26日付けでした,控訴人P2の平成12年分所得税についての更正のうち,納付すべき税額8359万2300円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。 5 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要 1 控訴人ら及びP3は,昭和63年12月15日,父P4所有の原判決別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という。)を代金6億8198万1608円で共有取得し(控訴人らは各5分の2の持分),同日,安田信託銀行株式会社(現在の「みずほ信託銀行株式会社」。以下「安田信託」という。)との間で,本件土地及び本件土地上に建築する建物を信託財産とする信託契約を締結し(以下「本件信託契約」といい,本件信託契約に基づく受益者の権利を「本件信託受 銀行株式会社」。以下「安田信託」という。)との間で,本件土地及び本件土地上に建築する建物を信託財産とする信託契約を締結し(以下「本件信託契約」といい,本件信託契約に基づく受益者の権利を「本件信託受益権」という。),平成3年9月20日に同目録記載2の建物(以下「本件建物」という。)が完成した。控訴人ら及びP3は,平成12年2月2日,安田信託との間で,本件信託契約の変更契約を締結し,同日,ミッションアンダルシアL.L.Cに対し,本件信託受益権を合計32億4777万3505円で譲渡した。控訴人らは,平成12年分所得税の確定申告について,本件信託受益権の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算に当たって,①本件土地を取得するための借入金に係る利子のうち本件土地から収益を上げることができなかった期間に係る部分,②上記期間に係る本件土地の固定資産税及び都市計画税,並びに③本件土地についての所有権移転登記に係る登録免許税及び本件信託契約に基づく信託登記に係る登録免許税(以下「本件登録免許税②」という。)が存在し,これらが譲渡所得の金額の計算上,総収入金額から控除されるべき取得費に該当するとして申告したところ,控訴人P1の申告については被控訴人玉川税務署長から,控訴人P2の申告については被控訴人目黒税務署長から,それぞれ否認され,更正及び過少申告加算税の賦課決定を受けた。 本件は,控訴人P1が被控訴人玉川税務署長に対し(1審甲事件),また,控訴人P2が被控訴人目黒税務署長に対し(1審乙事件),それぞれ譲渡所得の金額の計算上,総収入金額から控除されるべき上記各取得費を控除しなかった各処分は違法である旨主張して,それらの取消しを求める事案である。 原審は,上記①ないし③は総収入金額から控除されるべき取得費には該当せず,被控訴人らがした上記更 記各取得費を控除しなかった各処分は違法である旨主張して,それらの取消しを求める事案である。 原審は,上記①ないし③は総収入金額から控除されるべき取得費には該当せず,被控訴人らがした上記更正及び過少申告加算税の賦課決定に違法はないとして控訴人らの請求を棄却したので,控訴人らが控訴した。 2 関係法令の定め,前提事実,被控訴人らが主張する控訴人らの所得税額等,争点,争点に関する当事者の主張の要旨は,次のとおり,原判決を訂正し,当審における控訴人らの主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」第二の二ないし六に摘示のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の訂正)(1) 原判決6頁18行目の「本件信託契約」から同20行目の「目的とし」までを「本件信託契約は,本件土地の上に建物(当初は,地上9階,塔屋1階建で,延べ面積3787.13㎡,用途事務所とされていたが,平成元年4月からの法規制の変更により,本件建物が建築された。)を建築し,本件土地と共に信託財産(以下,本件土地及び本件建物を「本件信託財産」という。)とし,建物を第三者へ賃貸することを目的とし」に改める。 (2) 同8頁1行目冒頭から同4行目末尾までを次のとおり改める。 「(八) 控訴人ら及びP3は,平成4年2月27日,安田信託との間で,「土地信託変更契約書」の締結をした(甲3,8)。 (九) 控訴人ら及びP3は,平成12年2月2日,安田信託との間で,「土地信託変更契約書」(不動産管理処分信託契約)の締結をし(以下「本件信託変更契約」という。),本件信託契約につき,信託期間を昭和63年12月15日から平成22年2月2日までとした(甲6の別紙G)。 これと同時に,控訴人ら及びP3は,平成12年2月2日,ミッ 」という。),本件信託契約につき,信託期間を昭和63年12月15日から平成22年2月2日までとした(甲6の別紙G)。 これと同時に,控訴人ら及びP3は,平成12年2月2日,ミッションアンダルシアL.L.Cに対して,本件信託受益権(本件信託変更契約における委託者としての一切の権利義務も含まれる。)を合計32億4777万3505円(消費税額9777万3505円を含む。)で譲渡し,同日,譲渡代金の全額を受領した。」(3) 同40頁18行目の「受託者」を「受益者」に改める。 (当審における控訴人らの主張)控訴人らは,次の点を理論上の基礎として,原判決摘示の控訴人らの主張を敷衍する。 (1) 譲渡所得の本質は,資産が譲渡によって所有者の手を離れるのを機会に,その所有期間中の増加益を清算して課税しようとするものであるが,譲渡所得も所得である以上,その課税標準は,「人の担税力を増加させる経済的利益」として把握されなければならないから,譲渡所得の計算上,取得費を控除するのは,資産の値上がり益から「担税力を増加させる経済的利得」に該当しない部分の金額を控除する趣旨であり,本件土地を使用できない期間の借入利子及び同期間に応じた公租公課は,担税力を減少させるものであるから,本件信託受益権の譲渡益から控除されるべき取得費に該当する。 (2) 本件譲渡資産は,本件信託受益権であり,本件土地及び本件建物そのものが譲渡されたわけではないから,本件信託受益権の取得費を譲渡の収入金額から控除して譲渡所得を算定すべきである。 したがって,本件建物が平成3年9月に完成し本件信託受益権が発生するまでの間に支出した本件借入金利子は本件土地をその取得に係る用途に供する上で必要な準備費用,本件公租公課は本件信 ある。 したがって,本件建物が平成3年9月に完成し本件信託受益権が発生するまでの間に支出した本件借入金利子は本件土地をその取得に係る用途に供する上で必要な準備費用,本件公租公課は本件信託受益権を取得するまでの準備費用ということができ本件信託受益権を取得するための付随費用として,また,本件登録免許税②は本件信託受益権の「取得に要する費用」として,いずれも取得費の算入が認められるべきである。 第3 当裁判所の判断当裁判所も,控訴人らの請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり,原判決を訂正し,当審における控訴人らの主張に対する判断を付加するほか,原判決の「事実及び理由」第三の一ないし五に説示のとおりであるから,これを引用する。 1 原判決の訂正(1) 原判決49頁11行目冒頭から同15行目末尾までを次のとおり改める。 「 本件信託契約は,本件土地の上に建物を建築し,本件土地と共に信託財産とし,建物を第三者へ賃貸することを目的とし,受益者を委託者である控訴人ら及びP3とし,受託者である安田信託が本件信託財産を管理・運営するものであり,信託期間は,契約日から昭和78年12月31日までとされていた。 本件信託契約では,信託の元本は,①本件信託財産及び本件信託財産に関して取得した敷金・入居保証金等,②信託された金銭,③本件信託財産の代償として取得した財産,④借入金債務及び本件信託財産の賃貸に関して受入れた敷金・入居保証金等の返還債務,⑤その他これらに準ずる資産及び債務とされ,信託の収益は,本件信託財産より生ずる賃貸料及び信託財産に属する金銭の運用により生ずる利益等とされていた。」(2) 同52頁9行目末尾に「控訴人らは,上記③ないし⑥については,その10%を本件 収益は,本件信託財産より生ずる賃貸料及び信託財産に属する金銭の運用により生ずる利益等とされていた。」(2) 同52頁9行目末尾に「控訴人らは,上記③ないし⑥については,その10%を本件土地に係る支払利息として土地の取得費とし,また,①については,平成2年分の不動産所得の必要経費に138万8594円を,本件土地の取得費に329万4123円を振り分けした。」を加える。 (3) 同52頁10行目冒頭から同57頁9行目末尾までを次のとおり改める。 「8 本件建物は,平成3年10月1日からソニーが賃借し,その期間は,平成13年9月30日までの10年間であり,本件信託契約は平成15年12月31日までとされていた。 控訴人ら及びP3は,借入金の返済について,バブル景気の時代であった計画の当初は心配していなかったが,その後の景気低迷により,ソニーに撤退されると多額の借入金の返済ができなくなるおそれが生じたことから,本件信託受益権を譲渡して借入金の返済をする方がよいのではないかと考えるようになり,買主を探したところ,ミッションアンダルシアL.L.Cが購入することになった。 そこで,控訴人ら及びP3は,平成12年2月2日,安田信託との間で,「土地信託変更契約書」(不動産管理処分信託契約)の締結をして本件信託変更契約をし,信託期間を昭和63年12月15日から平成22年2月2日までとする等の契約内容の変更をし,同時に,平成12年2月2日,ミッションアンダルシアL.L.Cに対して,本件信託受益権(本件信託変更契約における委託者としての一切の権利義務も含まれる。)を合計32億4777万3505円(消費税額9777万3505円を含む。)で譲渡し,同日,譲渡代金の全額を受領した。 二譲 信託変更契約における委託者としての一切の権利義務も含まれる。)を合計32億4777万3505円(消費税額9777万3505円を含む。)で譲渡し,同日,譲渡代金の全額を受領した。 二譲渡所得における取得費の解釈について 1 所得税法は,所得の発生原因により10種類の各種所得を規定し(所得税法2条1項21号),それぞれの所得の性質,担税力の相違に応じた計算方法を規定する。たとえば,各種所得における収入金額から控除すべき金額についても,純所得への課税を目的とする不動産所得,事業所得,雑所得については,必要経費として当該所得の総収入金額を得るため「直接に要した費用の額及びその年における販売費,一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額」と規定し(同法37条1項),資産の所有期間中の増加益への課税を目的とする譲渡所得にあっては,取得費として「その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額」と規定する(同法38条)。その上で,退職所得金額及び山林所得金額以外の8種の所得については各所得の金額を合計した総所得金額をもって課税所得とすることを原則としている(同法21条,22条)。このような所得税法の仕組みに照らせば,譲渡所得の取得費についても,まず法の文言をその文意及び譲渡所得の性質から読み取るとともに,文理解釈のみでの調整が困難であるときは納税者に有利な調整を含めて,他の各種所得との間で整合性を保つよう解釈する必要がある。 2 譲渡所得の本質は,キャビタル・ゲイン,すなわち所有資産の価値の増加益であって,譲渡所得に対する課税は,資産が譲渡によって所有者の手を離れるのを機会に,その所有期間中の増加益を清算して課税しようとするものである(最高裁判所昭和43年10月31日第一 産の価値の増加益であって,譲渡所得に対する課税は,資産が譲渡によって所有者の手を離れるのを機会に,その所有期間中の増加益を清算して課税しようとするものである(最高裁判所昭和43年10月31日第一小法廷判決・裁判集民事92号797頁,最高裁判所昭和47年12月26日第三小法廷判決・民集26巻10号2083頁参照)。このように譲渡所得課税は資産の保有期間中これを使用する利益を考慮に入れるものではない。また,譲渡資産の取得時の交換価値を構成する金額,譲渡資産の価値を増加させるのに要した費用及び資産価値を実現する譲渡に要した費用は,課税対象利益であるキャビタル・ゲインを享受するために不可欠な支出であり,総収入金額のうちこの部分に担税力を見出すことはできない。そこで,譲渡所得の金額は,譲渡所得に係る総収入金額からその譲渡所得の基因となった資産の取得費及び譲渡費用の合計額を控除し,その残額の合計額から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とされ(所得税法33条3項),この資産の取得費とは,当該資産が時の経過により減価する資産(減価資産)でないときはその資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の合計額をいい,譲渡資産が減価資産であるときは,その合計額からその保有期間中の減価の額を控除した金額とされている(同法38条)。 なお,「その資産の取得に要した金額」には,当該資産の客観的価値を構成すべき取得代価のほか,当該資産を取得するための付随費用も含まれると解されるが,その文理に即して考えれば,この付随費用も,当該資産の取得に通常,必要不可欠な費用と解すべきであり,当該資産の取得に際して支出された費用であっても,それを利用するための維持,管理に必要な費用を含まないと解すべきである。 三本件借入金利子について 欠な費用と解すべきであり,当該資産の取得に際して支出された費用であっても,それを利用するための維持,管理に必要な費用を含まないと解すべきである。 三本件借入金利子について 1 本件借入金利子は,控訴人らが支払った本件土地を取得するための借入金に係る利子のうち平成2年2月1日から平成3年9月30日までの間に係る部分である。そこで,固定資産を取得するために借り入れた資金の利子がその固定資産を譲渡した場合の譲渡所得の金額の計算上控除する取得費に算入されるか否かについて検討する。 (一) 固定資産を購入する者が,その購入資金を借入れにより賄う場合には,借入金の利子の支払が必要となるが,この利子をもって,当該固定資産を取得するための取得代価又は付随費用ということはできない。なぜならば,購入資金の借入金利子が取得代価を構成しないことは明らかであり,また,購入資金の調達方法を借入金によるか自己資金によるか,いくらまでを借入金によるかは購入者の有する資産の全般的運用に関する判断によるものであり,固定資産の取得に当然に借入れが付随する関係にはないから,一般に,上記借入金の利子が当該固定資産を取得するための付随費用ということもできない。このことは,購入資金に相当する金銭を別途運用しながら購入資金を借り入れる場合,あるいは,当該土地の購入資金を自己資金で賄ったが故に,資金需要が逼迫し,購入資金相当額を借り入れる場合を想定対比してみれば明らかである。したがって,上記借入金の利子は,原則として譲渡所得の金額の計算上,所得税法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」に該当しないものと解すべきである。 さらに,融資により不動産を取得した場合の借入金の利子などのように,不動産の取得後に,そ 所得税法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」に該当しないものと解すべきである。 さらに,融資により不動産を取得した場合の借入金の利子などのように,不動産の取得後に,その不動産に関連して支出した種々の金員を無限定に当該不動産の取得費に算入することを許すと,その支出の原因となる契約の内容,締結時期等,当事者が任意に定め得る事柄によって取得費の額が左右されることとなる。また,有価証券を売却したり,預貯金を取り崩して不動産を取得した者も,これらによる将来の見込利益を喪失しているわけであるが,この見込み利益を取得費に算入する余地はないことと対比すれば,借入利子を取得費とするときは,種々の立場の者につき公正な課税を行うことが困難になるといわざるを得ない。 (二) もっとも,個人が不動産を取得する場合などには,一般的には,資産運用上の配慮よりも購入資金の不足が借入れの原因となっており,その借入れなくしては当該資産を取得することができない関係にある。また,資産を取得したとしても即座に当該資産を使用することができるとは限らず,当該資産の使用を開始するまでに多少なりとも時間がかかる場合があり得る。このような場合,資産を使用することなく利子の支払を余儀なくされるところ,即座に利用可能な状態で資産を購入した場合には利用利益のための費用と解することができ,不動産所得等にあってはその金額の計算上は,必要費用に算入することができることと比べて,課税上の均衡を失することになる。さらに,資産を譲渡する者が,取得する者の意向に沿って,時間と手間をかけて即座に利用可能な状態で資産を譲り渡した場合,これらの費用を含めて取得代価の額が形成され,これらの費用が「資産の取得に要した費用」を構成することとの均衡を図る必要もある。 て,時間と手間をかけて即座に利用可能な状態で資産を譲り渡した場合,これらの費用を含めて取得代価の額が形成され,これらの費用が「資産の取得に要した費用」を構成することとの均衡を図る必要もある。 このような関係からすると,譲受人が使用していない固定資産を取得する場合には,その資産の使用を開始し得るまでの期間に対応する借入金利子は,通常必要と認められる範囲で,当該資産をその取得に係る用途に供する上で必要な準備費用と解する余地が生ずる。この場合に,使用を開始し得る時期の認定の不安定さを避け,課税の公平を保持するとの観点から,その資産の使用を開始するまでの期間に対応する借入金利子を当該資産を取得するための付随費用に当たるものとして,所得税法38条1項にいう「資産の取得に要した費用」に含まれると解することも所得税法の趣旨に合致するものということができる。 しかし,この取扱いは,借入金利子負担の費用への配分という観点から,同項にいう「資産の取得に要した費用」の範囲を拡大して処理するものであり,当該資産の使用の有無ないし使用開始の日を判断するに当たっては,その使用方法が当該資産の価値に見合う収益を生ずるものであるか否か,取得者が当該資産を取得した目的や資産の利用方法に関する意図等,取得者の主観的な事情を考慮することなく,客観的に「使用の有無ないし使用開始の日」を認定するのが相当である。資産をどのように利用するかは,利用者の自由にまかされていることであるから,譲渡所得の算定に当たり使用方法の内容に立ち入ることは相当ではなく,また,取得者の主観的事情によって,当該資産取得のための借入金の利子が取得費に算入できるか否かが異なり得ることとなれば,当該資産の使用開始可能性を判断する場合以上に,課税をめぐる法律 当ではなく,また,取得者の主観的事情によって,当該資産取得のための借入金の利子が取得費に算入できるか否かが異なり得ることとなれば,当該資産の使用開始可能性を判断する場合以上に,課税をめぐる法律関係の安定性や租税負担の公平を損なう結果となるからである。 (三) また,譲受人が借入金により取得した固定資産を取得した当初から使用していた場合や,取得した当初は未使用であったが,その後いったん使用し始めた後に譲渡した場合には,その固定資産について使用開始後譲渡の日までの間に使用しなかった中断期間があったとしても,その使用しなかった期間に対応する借入金の利子とその資産の取得との間に前記(二)に判示したような関係があるとは認め難い。また,使用開始をした後に,使用の中断が生じ,その後,当該固定資産の利用状況が変更されたからといって,その変更後の状態によって借入金の利子を取得費に算入すべきであるとする合理的な理由も認められない。 したがって,借入金により固定資産を取得した場合であっても,当初から使用中の固定資産であったり,あるいは,いったん使用を開始した場合には,使用の中断期間があったとしても,使用開始後譲渡までの日の期間に対応する借入金の利子は,原則どおり,その固定資産の取得費又は取得価額に算入すべきではない。」(4) 同57頁10行目の「4」を「2」に,同58頁3行目の「5」を「3」に,同22行目の「6」を「4」に,同59頁3行目の「三」を「四」に改める。 (5) 同60頁2行目冒頭から同頁9行目末尾までを次のとおり改める。 「4 控訴人らは,本件公租公課は,本件土地を取得し,本件建物を建て,譲渡に係る資産である本件信託受益権を取得するための準備費用ということができ,当該不動産 末尾までを次のとおり改める。 「4 控訴人らは,本件公租公課は,本件土地を取得し,本件建物を建て,譲渡に係る資産である本件信託受益権を取得するための準備費用ということができ,当該不動産を取得するための付随費用に当たるものとして,「資産の取得に要した金額」に含まれる旨主張する。 しかし,控訴人らは,本件土地を取得した結果として,本件建物の建築期間を含めて本件公租公課を負担することになったのであって,本件信託受益権を取得するための準備費用として本件公租公課を負担したのではない。控訴人らの上記主張は,固定資産税及び都市計画税の性質を無視した独自の主張をするものであって,採用することができない。」(6) 同60頁13行目冒頭から同63頁11行目末尾までを次のとおり改める。 「四本件各登録免許税について 1 業務の用に供される資産の取得に伴い支出された登録免許税が,当該資産を譲渡した場合の譲渡所得の計算上,取得費に含まれるか否かについて検討する。 2 所得税法38条1項に規定する資産の取得費のうち「その資産の取得に要した金額」には,当該資産の客観的価値を構成すべき取得代価のほか,当該資産を取得するために通常,必要不可欠な付随費用も含まれることは既に説示したとおりである。 不動産所有権を取得した場合の所有権の移転登記は,一般に,所有権の取得に関する費用ということができるが,他方で,所有者としての不動産利用の前提となる手続ということもできる。その意味で,所得税法上,登録免許税を各種所得の必要経費として扱うか,譲渡所得における取得費における付随費用として扱うかは,文言及び課税の公平をも考慮した判断を要するものといえる。 「取得に要した 法上,登録免許税を各種所得の必要経費として扱うか,譲渡所得における取得費における付随費用として扱うかは,文言及び課税の公平をも考慮した判断を要するものといえる。 「取得に要した」との文言からは,取得費用は,通常,その費用なしでは当該資産を取得することができないか,著しく困難になるような費用であり,当該資産を取得した後の権利の確保に関する費用を含まないと解されるから,対抗要件としての登記,登録に係る登録免許税は,譲渡所得における取得費には含まれず,むしろ,不動産所得,事業所得等を生ずべき業務について生じた費用(所得税法37条1項)と解することが文理に沿うものということができる。ただし,当該不動産が業務用資産ではなく,当該不動産について不動産所得,事業所得等が生じない場合には,これらの所得における必要経費とする余地はないから,課税の公平の観点からも,当該資産が譲渡されたときは,付随費用として,その譲渡所得における取得費に含めることが合理的である。 3 ところで,所得税基本通達37-5は,「業務の用に供される資産に係る固定資産税,登録免許税(登録に要する費用を含み,その資産の取得価額に算入されるものを除く。),不動産取得税,地価税,特別土地保有税,事業所税,自動車取得税等は,当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入する。」とし,同通達38-9は,「固定資産(業務の用に供されるものを除く。以下この項において同じ。)に係る登録免許税(登録に要する費用を含む。),不動産取得税等固定資産の取得に伴い納付することとなる租税公課は,当該固定資産の取得費に算入する。」としている。これは,個人の非業務用資産については,①取得費に含まれない支出は,家事費として,各種所得金額の計算上,控除することができないこと, となる租税公課は,当該固定資産の取得費に算入する。」としている。これは,個人の非業務用資産については,①取得費に含まれない支出は,家事費として,各種所得金額の計算上,控除することができないこと,②非業務用資産として取得したとしてもその後業務用資産に転用されることがあり得ること,③企業会計上の扱いや法人税における取扱いに照らせば,非業務用の固定資産の登録免許税を取得費に加えないことについての不公平感も否定し難いところがあることなどから,通達において譲渡所得の計算上,取得費に算入することとし,取得費の範囲を政策的に拡大しているものと考えられ,これを違法というべきではないが,この政策的な取得費の拡大を原則とし,業務の用に供される資産についても,上記登録免許税が取得費に含まれると解すべきものではない。 4 減価償却資産の譲渡所得における取得費については,資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の合計額に相当する金額から業務の用に供されていた期間の償却費の額の累計及びその余の期間の減価の額の合計額を控除したものとされ(所得税法38条2項),所得税法施行令126条1項の規定は,不動産所得,事業所得等の必要経費に算入すべき償却費の計算における取得価額につき当該資産の購入の代価に購入のために要した費用を加算した金額と規定する。したがって,減価償却資産については,譲渡所得において控除される取得費と不動産所得,事業所得等の必要経費に算入すべき償却費の計算における取得価額との間に解釈の不一致を生じないような解釈をとるべきである。 この点につき,資産の取得価額に算入される登録免許税に関する所得税基本通達49-3は,「減価償却資産に係る登録免許税(登録を要する費用を含む。)をその資産の取得価額に算入するかどうかについては この点につき,資産の取得価額に算入される登録免許税に関する所得税基本通達49-3は,「減価償却資産に係る登録免許税(登録を要する費用を含む。)をその資産の取得価額に算入するかどうかについては,次による。(1) 特許権,鉱業権のように登録により権利が発生する資産に係るものは,取得価額に算入する。(2) 船舶,航空機,自動車のように業務の用に供するについて登録を要する資産に係るものは,取得価額に算入しないことができる。(3) (1)及び(2)以外の資産に係るものは,取得価額に算入しない。」としている。すなわち,登録が単に対抗要件に止まらず権利の取得要件とされる(1)の資産については,取得価額に算入した上,償却費として経費化され,上記(2)の業務の用に供するについて登録を要する資産について支出した登録免許税も,単なる対抗要件に止まらず,その支出が資産取得のためにされ,業務の用に供されるためのものであるから,本来取得価額に算入すべきであるが,その支出が資産の取得後にされることを考慮し,取得価額に算入するか否かを納税者の選択に任せることとし,事務所・店舗等の不動産の所有権保存登記等の登録免許税のように(3)に属するものは,業務上の維持管理上の費用に属するものであり,取得価額に算入する性質のものではないから,全額必要経費に算入することとされており,上記説示とも一致する。 5 なお,法人税法における減価償却資産の取得価額についての法人税法施行令54条の規定は,上記の所得税法施行令126条1項の規定と同様の規定ぶりでありながら,減価償却費の計算における取得価額に登録免許税を含めることができると解されている。これは,法人税においては,所得税のように各種所得ごとに収入,必要経費等を規定し,各種所得間の課税の矛盾を回避するという方式で 費の計算における取得価額に登録免許税を含めることができると解されている。これは,法人税においては,所得税のように各種所得ごとに収入,必要経費等を規定し,各種所得間の課税の矛盾を回避するという方式ではなく,所得の性質や発生原因による区別を設けることなく,各事業年度の益金の額から損金の額を控除した所得を課税標準としていること(法人税法21条,22条1項),並びに収益及び損金に算入すべき金額は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準により計算することとするところ(同条4項),企業会計上,減価償却資産の取得価額には,付随費用を含むとされていることから,付随費用に含まれるものとして,登録免許税等を資産の取得価額に含めることも認められているのである。このような法人税法と所得税法との違いを考慮すれば,法人税法上費用とすることができるからといって,所得税法上も取得費とすることができるという根拠にはならない。 6 平成4年最高裁判決は『資産の取得に要した金額』につき,「当該資産の客観的価格を構成すべき取得代金の額のほか,登録免許税,仲介手数料等当該資産を取得するための付随費用の額も含まれる」と判示するが,同判決は,個人の居住の用に供される不動産を取得するための借入金の利子が,当該不動産の譲渡による譲渡所得の金額の計算上,総収入金額から控除されるべき取得費に該当するか否かが争点となった事件に関するものであって,業務の用に供される不動産を取得した際に支出された登録免許税についての判断を示すものではなく,上記判断に影響を与えるものではない。」(7) 同63頁12行目の「5」を「7」に改める。 (8) 同64頁13行目の「本件土地」の次に「ないし本件信託受益権」を加え,同14行目の「6」を「8」に改める。 2 当審における控 (7) 同63頁12行目の「5」を「7」に改める。 (8) 同64頁13行目の「本件土地」の次に「ないし本件信託受益権」を加え,同14行目の「6」を「8」に改める。 2 当審における控訴人らの主張に対する判断(1) 譲渡所得の計算上,取得費を控除するのは,資産の譲渡に係る増加益を含む総収入金額から「担税力を増加させる経済的利得」に該当しない部分の金額を控除する趣旨であることは控訴人らの指摘するとおりであるが,資産の増加益を離れて,納税者の担税力あるいは純資産を減少させる支出が控除されるべき取得費に含まれるものではない。論旨は,担税力あるいは純資産の減少という一般的概念をもって,資産の取得に要する費用を論ずるものであり,文理に沿わないばかりか,各種所得の性質及びそれに基づく計算方法の区分,ひいては,取得費と必要経費との区別をあいまいにするものであって,採用することができない。 (2) 信託は,信託譲渡により受託者の所有名義とされた財産を信託目的に従い,受託者が管理,処分し,信託期間中は信託収益を生ずべき財産として管理し,信託終了時には信託契約に定める者又は委託者に返還することを趣旨とする契約であり,信託財産については,受託者への信託財産の譲渡,信託財産の受託者財産からの独立性といった信託契約に特有の性質を有するが,信託財産からの収益という点では,信託収益は信託財産に関する管理委託契約から生ずる資産収入としての実質を有し,また,信託受益権は信託契約上から生ずる債権であるが,信託財産の返還請求権者が受益者である場合の信託受益権の譲渡は,実質的には,収益管理契約上の債権債務が付随した信託財産の譲渡ということができる。所得税法は,このような信託の基本的な性格を踏まえ,同法13条1項ただし書に定める信託を除き,信託財産 益権の譲渡は,実質的には,収益管理契約上の債権債務が付随した信託財産の譲渡ということができる。所得税法は,このような信託の基本的な性格を踏まえ,同法13条1項ただし書に定める信託を除き,信託財産に帰せられる収入・支出につき,受益者が特定している場合には受益者が信託財産を有するものとみなして所得税法の規定を適用する旨規定する。すなわち,受益者が特定している場合には,受益者が信託財産を有して,信託財産からの収入を得,信託財産への支出をしたものとして,所得税法の規定が適用される。したがって,信託財産の譲渡による譲渡所得については,譲渡に係る所得も譲渡にかかる取得費,譲渡費用も受益者に帰属するものとして譲渡所得の計算がされることになるし,信託受益権の譲渡も,所得課税の原因は,原則として,信託財産の譲渡と解すべきことになる。 既に認定したとおり,控訴人ら及びP3は,控訴人らが所有していた本件土地上に本件建物を建築し,これを賃貸管理することを趣旨として,安田信託との間において,控訴人ら及びP3を委託者,安田信託を受託者として,本件信託契約を締結し,さらに,控訴人ら及びP3を受益者として,①本件信託財産及び本件信託財産に関して取得した敷金・入居保証金等,②信託された金銭,③本件信託財産の代償として取得した財産,④借入金債務及び本件信託財産の賃貸に関して受入れた敷金・入居保証金等の返還債務,⑤その他これらに準ずる資産及び債務を信託元本とし,本件信託財産より生ずる賃貸料及び信託財産に属する金銭の運用により生ずる利益等を信託の収益とする本件信託受益権を設定し,本件信託財産は受託者である安田信託が引き続き有していたところ,控訴人ら及びP3が本件信託受益権を譲渡したものである。 そうすると,控訴人らによる本件信託受益権の譲渡に係る を設定し,本件信託財産は受託者である安田信託が引き続き有していたところ,控訴人ら及びP3が本件信託受益権を譲渡したものである。 そうすると,控訴人らによる本件信託受益権の譲渡に係る取得費の計算については,信託の設定により委託者から受託者へ移転し,その受託者が引き続き有しているものである本件土地に関しては,控訴人らが本件土地を引き続き有しているものとして,所得税法38条の規定を適用して計算することとなるから,譲渡所得に係る取得費も,本件信託受益権を取得するまでの準備費用等としてではなく,本件土地の取得費として検討すべきものである。したがって,本件信託受益権を固有の譲渡資産とし,これを取得するための付随費用として取得費の算入を検討すべき旨の控訴人らの主張は採用できない。 3 よって,原判決は相当であり,控訴人らの本件控訴は理由がないのでいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第11民事部裁判長裁判官富越和厚裁判官桐ヶ谷敬三裁判官佐藤道明
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