令和5年12月21日判決言渡・同日原本領収裁判所書記官平成28年第20446号損害賠償請求事件(以下「第1事件」という。)平成29年第10989号損害賠償請求事件(以下「第2事件」という。)口頭弁論終結日令和5年7月20日判決 当事者の表示別冊1当事者目録記載のとおり主文 1 被告は、別紙1認容額等一覧表の「原告」欄記載の各原告に対し、同各原告に係る同一覧表の「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する同一覧表の「処分日」欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 前項の原告らのその余の請求及びその余の原告らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用の負担は、別紙2訴訟費用負担目録記載のとおりとする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 第1事件⑴ 被告は、第1事件原告1~第1事件原告16、第1事件原告18、第1事件原告20、第1事件原告22~第1事件原告27、第1事件原告29、第1事件原告30、第1事件原告32~第1事件原告36、第1事件原告38、第1事件原告39、第1事件原告41、第1事件原告42、第1事件原告44及び 第1事件原告45に対し、同各原告に係る別紙3第1事件請求額一覧表「主位的算出方法」の「2008年8月13日から2015年4月3日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計金額欄を除く。)、「2015年4月4日から2015年9月7日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計欄を除く。)及び「2015年9月8日から2015年11月12日 に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計金額欄を除く。)記載 の各金員並 損害」欄(ただし、原告ごとの合計欄を除く。)及び「2015年9月8日から2015年11月12日 に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計金額欄を除く。)記載 の各金員並びにこれらに対する各「左記株式の最終取得日」欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 被告は、第1事件原告19及び第1事件原告37に対し、同各原告に係る別紙3第1事件請求額一覧表「予備的算出方法」の「2008年8月13日から2015年4月3日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごと の合計金額欄を除く。)、「2015年4月4日から2015年9月7日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計金額欄を除く。)及び「2015年9月8日から2015年11月12日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計金額欄を除く。)記載の各金員並びにこれらに対する各「左記株式の最終取得日」欄記載の各日から各支払済みま で年5分の割合による金員を支払え。 2 第2事件⑴ 被告は、第2事件原告1、第2事件原告2、第2事件原告4~第2事件原告17、第2事件原告19、第2事件原告22~第2事件原告37、第2事件原告40~第2事件原告54、第2事件原告56~第2事件原告62、 第2事件原告64~第2事件原告70に対し、同各原告に係る別紙4第2事件請求額一覧表「主位的算出方法」の「2008年8月13日から2015年4月3日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計金額欄を除く。)、「2015年4月4日から2015年9月7日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計金額欄を除く。)及び「201 5年9月8日から2015年11月12日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告 4日から2015年9月7日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計金額欄を除く。)及び「201 5年9月8日から2015年11月12日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計金額欄を除く。)記載の各金員並びにこれらに対する各「左記株式の最終取得日」欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 被告は、第2事件原告18に対し、別紙4第2事件請求額一覧表「主位的 算出方法」の原告番号18、20及び21に係る「2008年8月13日か ら2015年4月3日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計金額欄を除く。)、「2015年4月4日から2015年9月7日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計金額欄を除く。)及び「2015年9月8日から2015年11月12日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計金額欄を除く。)記載の各金員並びにこ れらに対する各「左記株式の最終取得日」欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑶ 被告は、第2事件原告38に対し、別紙4第2事件請求額一覧表「主位的算出方法」の原告番号38及び39に係る「2008年8月13日から2015年4月3日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、合計金額欄を除 く。)、「2015年4月4日から2015年9月7日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、合計金額欄を除く。)及び「2015年9月8日から2015年11月12日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、合計金額欄を除く。)記載の各金員並びにこれらに対する各「左記株式の最終取得日」欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑷ 被告は、第2事件原告55に対し、同原告に係る別紙 欄を除く。)記載の各金員並びにこれらに対する各「左記株式の最終取得日」欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑷ 被告は、第2事件原告55に対し、同原告に係る別紙4第2事件請求額一覧表「予備的算出方法」の「2008年8月13日から2015年4月3日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計金額欄を除く。)、「2015年4月4日から2015年9月7日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計金額欄を除く。)及び「2015年9月8日か ら2015年11月12日に取得した株式に係る損害」欄(ただし、原告ごとの合計金額欄を除く。)記載の各金員並びにこれらに対する各「左記株式の最終取得日」欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は、被告の発行済株式(以下「被告株式」という。)を証券取引所において 売買したと主張する原告らが、①被告が提出して公衆の縦覧に供された第170期(平成20年4月1日~平成21年3月31日)から第176期第3四半期(平成26年10月1日~同年12月31日)までの有価証券報告書及び四半期報告書(別紙5有価証券報告書等一覧表のとおり。以下、有価証券報告書及び四半期報告書を併せて「有価証券報告書等」という。)に、被告の不適切な会計処理に起 因する重要な事項についての虚偽記載があったこと、②上記①のとおり虚偽記載があったにもかかわらず、被告が提出して公衆の縦覧に供された第170期から第175期までの内部統制報告書に、被告の財務報告に係る内部統制は有効であると判断したと記載され、重要な事項についての虚偽記載があったこと、③被告が、同社の連結子会社において減損損失を計上したことの開示を怠り、適時開示 書に、被告の財務報告に係る内部統制は有効であると判断したと記載され、重要な事項についての虚偽記載があったこと、③被告が、同社の連結子会社において減損損失を計上したことの開示を怠り、適時開示 義務違反があったことから、被告株式の株価が下落する損害を被ったと主張して、被告に対し、不法行為(民法709条、715条、会社法350条)に基づく損害賠償請求として、また、上記①及び②については、選択的に金融商品取引法(以下、平成26年法律第44号による改正の前後を問わず、「金商法」という。)21条の2第1項に基づく損害賠償請求として、各原告が別紙3第1事件 請求額一覧表又は別紙4第2事件請求額一覧表記載の各金員及びこれに対する被告株式の各取得日(各原告の請求する損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の起算日は上記第1に記載のとおりである。)から各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実、顕著な事実並びに後掲証拠〔以下、特に言及しない限り枝番を含む。〕及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)⑴ 当事者等ア原告らは、海外の機関投資家等である。原告らの中には、振替株式である被告株式を証券取引所において取得する際、振替口座簿上の増加記録を自己 の名義では取得せず、委託したカストディアン(サブ・カストディアンやノ ミニー等を含む。以下同じ。)の名義で取得したと主張する者(以下、このような原告を「非名義株主原告」ということがある。)が含まれている。(弁論の全趣旨)イ被告は、電気機械器具、計量器及び医療機械器具等の製造業等を営む株式会社であり、(本件口頭弁論終結時において)株式会社東京証券取引所のプ ライ がある。)が含まれている。(弁論の全趣旨)イ被告は、電気機械器具、計量器及び医療機械器具等の製造業等を営む株式会社であり、(本件口頭弁論終結時において)株式会社東京証券取引所のプ ライム市場及び株式会社名古屋証券取引所のプレミア市場(いずれも令和4年4月4日の市場区分再編前は市場第一部)に上場しており、その事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までである。被告株式は、社債、株式等の振替に関する法律(以下「社債等振替法」という。)に基づく振替株式である。(弁論の全趣旨) ウ被告は、平成18年、ウェスチングハウス社(原子力発電機器、原子燃料の設計、製造、保守等を行う米国のウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニー社を中核とする企業グループを指す。以下「WEC」という。)を買収した(以下、被告によるWEC買収に伴い被告の子会社として設立された買収目的会社等のWECを含む企業グループを「WECグループ」とい う。)。(甲4、5、弁論の全趣旨)⑵ 被告による有価証券報告書等の提出ア被告は、別紙5有価証券報告書等一覧表の「事業年度」欄記載の事業年度について、同表の「提出日」欄記載の各日に、同表の「会計期間」欄記載の会計期間に係る同表の「報告書」欄記載の報告書を関東財務局長に対して提 出した(同表記載の各有価証券報告書を併せて「本件有価証券報告書」といい、同表記載の各四半期報告書を併せて「本件四半期報告書」といい、本件有価証券報告書と本件四半期報告書を併せて「本件有価証券報告書等」という。)。本件有価証券報告書等は、同表の「提出日」欄記載の各提出日の頃、公衆の縦覧に供された。(乙1、3~17、顕著な事実、弁論の全趣旨) イ本件有価証券報告書等には、以下の①~⑥の項目(そのうち②~⑥の項 報告書等は、同表の「提出日」欄記載の各提出日の頃、公衆の縦覧に供された。(乙1、3~17、顕著な事実、弁論の全趣旨) イ本件有価証券報告書等には、以下の①~⑥の項目(そのうち②~⑥の項 目は原告らが主要な虚偽記載と主張する項目である。)について、別紙6訂正額等一覧表の「①訂正前」欄に記載のとおりの数値が記載されていた。 (乙1、3~17、顕著な事実、弁論の全趣旨)① 売上高② 継続事業からの税金等調整前当期純利益(損失)(ただし、第176 期については、継続事業からの税金等調整前四半期純利益(損失)。以下、これらを併せて「税引前当期純損益」ということがある。)③ 当社株主に帰属する当期純利益(損失)(ただし、第176期については、当社株主に帰属する四半期純利益(損失)。以下、これらを併せて「当期純損益」ということがある。) ④ 株主資本合計⑤ 資本合計⑥ 負債、少数株主持分及び資本合計又は負債及び資本合計別紙6の「④訂正前」欄記載の数値は、被告が後述の非継続事業及び事業買収に係る組替えを理由に各数値を訂正したものである(被告はこの訂 正は虚偽記載に当たらないと主張する。)。上記組替えの金額は、別紙6の「⑥組換え」欄に記載のとおりである。 被告は、以下の理由から、❶非継続事業に関する組替えと❷事業買収に関する組替えを行ったとしている。 ❶非継続事業に関する組替えに関しては、被告が連結決算において採用 する米国会計基準においては、ある財務報告の時点における非継続事業(既に処分されたか又は処分予定の事業)について、当該非継続事業の損益は、継続事業の損益とは区分して、非継続事業の損益として報告することが要求されているとともに、時点の異なる財務情報の比較可能性の確保のため、当 たか又は処分予定の事業)について、当該非継続事業の損益は、継続事業の損益とは区分して、非継続事業の損益として報告することが要求されているとともに、時点の異なる財務情報の比較可能性の確保のため、当該財務報告において比較対象として記載される過去の財務諸表 においても非継続事業であったものとして遡及修正を行うことが要求さ れている(この点に係る組替えを「非継続事業に関する組替え」という。)。 そして、被告において、携帯電話事業及び光学ドライブ事業は、第171期の有価証券報告書の提出時点においては非継続事業ではなかったが、携帯電話事業が第172期に、光学ドライブ事業が第175期に、それぞれ非継続事業となり、これらに伴う非継続事業に関する組替えがされた。 次に、❷事業買収に関する組替えについては、事業買収を行った場合、買収企業は、当該買収によって取得した買収対象企業の資産及び負債の全てを時価にて評価し、買収企業の財務諸表に取り込む手続(PPA)が必要となり、その際、買収対象企業に存在すると考えられる償却無形資産(ブランドネーム、ノウハウ等)も識別して評価する必要があるところ(この 点に係る組替えを「事業買収に関する組替え」という。)、これら償却無形資産は買収前の買収対象企業の財務諸表には計上されていないため、その算定に時間を要し、PPAの手続は、買収後最大1年間を要する実情にある。そして、被告は、第173期中にランディス・ギア社を買収したが、翌期である第174期に、この事業買収について米国会計基準に基づく取 得金額の資産及び負債への配分が完了したため、第174期の有価証券報告書において、第173期の数値を遡及的に組み替えて表示した(乙6・2頁・注2)。また、被告が第174期中に行った米国法人IBM社のリテール 産及び負債への配分が完了したため、第174期の有価証券報告書において、第173期の数値を遡及的に組み替えて表示した(乙6・2頁・注2)。また、被告が第174期中に行った米国法人IBM社のリテール・ストア・ソリューション事業の買収に関しても、翌期である第175期の有価証券報告書において、第174期の数値を遡及的に組み替えて 表示した(乙7・2頁・注3)。そこで、これらに伴う事業買収に関する組替えがされた。(乙1、3~17、顕著な事実、弁論の全趣旨)⑶ 本件有価証券報告書等の訂正に至る経緯等ア被告は、平成27年2月12日、証券取引等監視委員会から、金商法26条1項に基づく報告命令を受けた。(甲23・14頁) イ被告は、平成27年4月3日、「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」 と題する書面を公表した(以下「本件公表」といい、本件公表がされた当該日を「本件公表日」という。)。当該書面には、①被告の平成25年度における一部インフラ関連の工事進行基準適用案件に係る会計処理について、調査を必要とする事項が判明したこと、②被告は、社外の専門家を含む特別調査委員会を設置し、事実関係の調査を行うこと、③今後の予定として、本件の 被告の業績に及ぼす影響は現在のところ明らかになっておらず、直ちに調査に着手し、1か月程度を目途に実施する予定であることの記載がある。(甲6)同日中に、被告において工事費用の過小見積りにより利益が過大計上されていた可能性がある旨が広く報道された。(顕著な事実) ウ被告は、平成27年5月8日、「第三者委員会設置のお知らせ」と題する書面を公表した。当該書面には、要旨、以下の記載がある。(甲7)① 本日現在までの特別調査委員会による調査の過程で、一部インフラ関連の工事進行基準適 月8日、「第三者委員会設置のお知らせ」と題する書面を公表した。当該書面には、要旨、以下の記載がある。(甲7)① 本日現在までの特別調査委員会による調査の過程で、一部インフラ関連の工事進行基準適用案件において、工事原価総額が過少に見積もられ、工事損失(工事損失引当金を含む。)が適時に計上されていないなどの事象 が判明した。 ② 工事進行基準案件における工事原価総額の見積りの問題以外にも更なる調査を必要とする事項が判明しており、これらの事実関係の詳細調査及び発生原因の究明にはなお時間を要する見込みである。 ③ 現状の特別調査委員会の枠組みから、日本弁護士連合会の定めるガイド ラインに準拠した第三者委員会による調査の枠組みに移行する旨を決定した。 ④ 特別調査委員会によるこれまでの調査結果によれば、平成25年度以前の過年度決算修正を行う可能性が生じており、これと併せて平成26年度決算への影響額を見極めていることから、決算発表については平成27年 6月以降となる見込みである。 エ被告は、平成27年5月13日、「現時点で判明している過年度修正額見込み及び第三者委員会設置に関する補足説明」と題する書面を公表した。当該書面には、要旨、以下の記載がある。(甲8)① 工事原価総額の過少見積りとそれに伴う工事損失(引当金)計上時期に関する過年度の要修正額として、平成23年度から平成25年度までの累 計の営業損益ベースでマイナス500億円強を見込んでいるが、この見込みは現時点におけるものであり、新たに設置される第三者委員会においては判断が異なる可能性がある。 ② 特別調査委員会の調査の過程で、工事進行基準適用案件以外でも更なる調査が必要な事項が判明しており、その具体的内容は、損失引当計上の時 期・金額 員会においては判断が異なる可能性がある。 ② 特別調査委員会の調査の過程で、工事進行基準適用案件以外でも更なる調査が必要な事項が判明しており、その具体的内容は、損失引当計上の時 期・金額の妥当性、経費計上時期の妥当性、在庫の評価の妥当性等であるが、これらについて被告として、全社的、網羅的に調査する必要があると判断しており、上記事項により更なる過年度決算の修正が必要となるか否か、また、必要となった場合の要修正額の規模は現時点では不明である。 オ被告は、平成27年5月22日、「第三者委員会の調査対象に関するお知 らせ」と題する書面を公表した。当該書面には、第三者委員会の調査対象となる会計処理は、以下の4点である旨の記載がある。(甲9)① 工事進行基準適用案件に係る会計処理② 映像事業における経費計上に係る会計処理③ ディスクリート、システムLSIを主とする半導体事業における在庫の 評価に係る会計処理④ パソコン(以下「PC」という。)事業における部品取引等に係る会計処理カ第三者委員会は、上記オの4点の会計処理等に関し、平成27年7月20日付けの調査報告書(以下「本件調査報告書」という。)を作成した。その要 旨は、別紙7本件調査報告書の要旨に記載のとおりである。本件調査報告書 において、税引前当期純損益について、工事進行基準に関する要修正額、部品取引に関する要修正額、経費計上に関する要修正額、半導体在庫に関する要修正額の合計は、別紙8本件調査報告書指摘の要修正額一覧表に記載のとおりと判断された。(甲2、23)キ被告は、平成27年7月20日、「第三者委員会調査報告書の受領及び判 明した過年度決算の修正における今後の当社の対応についてのお知らせ」と題する書面を公表した。当該書面 た。(甲2、23)キ被告は、平成27年7月20日、「第三者委員会調査報告書の受領及び判 明した過年度決算の修正における今後の当社の対応についてのお知らせ」と題する書面を公表した。当該書面には、本件調査報告書に記載のある上記カの要修正額が記載され、その累計はマイナス1518億円となること、被告の自主チェック(第三者委員会委嘱案件以外に、被告独自のチェックに基づくものをいう。)による同じ期間の要修正額は、マイナス44億円となるこ となどが記載されている。(甲11)ク被告は、平成27年9月7日、「過年度決算の修正、2014年度決算の概要及び第176期有価証券報告書の提出並びに再発防止策の骨子等についてのお知らせ」と題する書面を公表した。 上記書面には、被告で検証手続を実施し、新日本有限責任監査法人の監査 手続を経た結果、過年度決算の修正(税金等調整前当期純損益(連結))の概要について、本件調査報告書に基づく要修正額、自主チェック、固定資産の減損、派生影響等を踏まえ、修正額の合計は、別紙9被告公表の要修正額一覧表の表1のとおりであるとの記載がある。なお、同表に関し、①「派生影響等(9月7日開示)」には、平成27年8月18日の公表以降に修正判断した 4件の案件が含まれていること、②派生影響とは、固定資産の減損に伴う減価償却費及び売却損益計算に関する誤謬の訂正並びに株式取得により買収した海外子会社の資産評価が完了したことによる買収時に計上した数値の修正の2件であること、③固定資産減損額(過去に遡り固定資産を減損したことによる減価償却費の戻りを含む。)は、平成27年8月18日に公表し た金額であるマイナス440億円をマイナス465億円に訂正したもので あることの記載がある。 また、上記書面には、 による減価償却費の戻りを含む。)は、平成27年8月18日に公表し た金額であるマイナス440億円をマイナス465億円に訂正したもので あることの記載がある。 また、上記書面には、継続事業税引前損益の修正額の内訳は、別紙9被告公表の要修正額一覧表の表2のとおりであるとの記載がある。さらに、同表に関し、工事進行基準、映像事業における経費計上等、PC事業における部品取引等、半導体事業における部品取引等は、第三者委員会委嘱案件であり、 映像事業とPC事業の経費処理について一部修正を不要と判断した案件を反映させた数値となっていること、「自主チェック等」には、第三者委員会委嘱案件以外に、平成27年7月20日に開示した被告独自の自主チェックに基づく修正の対象となった案件(修正額マイナス44億円)に加え、同一覧表の表1の「その他」及び「派生影響等(9月7日開示)」を含んでいること の記載がある。(以上、甲1)ケ被告は、平成27年9月7日、関東財務局長に対し、本件有価証券報告書等の訂正報告書を提出した。(乙1、8~17。以下、これらの訂正報告書を併せて「本件訂正報告書」ということがある。)⑷ 本件訂正報告書 被告は、本件訂正報告書において、「税引前当期純損益」、「当期純損益」、「株主資本合計」、「資本合計」、「負債及び資本合計」、「負債、少数株主持分及び資本合計」の各項目について、別紙6の「②訂正後」欄に記載のとおりの数値に修正した。第175期有価証券報告書に記載された各期の各費目の額(別紙6の「①訂正前」欄)と、本件訂正報告書に記載された各期の各費目の額(別紙 6の「②訂正後」欄)との差額は、別紙6の「③訂正額」欄に記載のとおりである。(乙1、8~17)また、被告は、平成27年9月7日に開示した 本件訂正報告書に記載された各期の各費目の額(別紙 6の「②訂正後」欄)との差額は、別紙6の「③訂正額」欄に記載のとおりである。(乙1、8~17)また、被告は、平成27年9月7日に開示した過年度決算の訂正に際し、別紙10減損損失の追加計上一覧表に記載のとおりの減損損失の追加計上を行った。(その証拠は、同別紙の「証拠」欄に記載のとおりである。) ⑸ 本件訂正報告書と第175期有価証券報告書との間の各期の各費目の差額 に影響を与えた会計処理等被告において本件訂正報告書を提出する際の修正に影響を与えたものは、被告の説明によれば、工事進行基準に係る会計処理、映像事業における経費計上及び部品取引に係る会計処理、PC事業における部品取引等に係る会計処理、半導体事業における在庫評価に係る会計処理に係る修正のほか、被告による自 主チェックに伴う修正、減損損失の追加計上に伴う修正、減損損失の追加計上に伴う減価償却費に係る修正であった。(前提事実⑶ク、弁論の全趣旨)⑹ 被告による役員等に対する責任追及訴訟等被告は、平成27年11月7日、同社の取締役又は執行役の地位にあった者らに対し、同社において「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」(会 社法431条)に違反する違法な会計処理がされたことについて善管注意義務違反があり、過年度決算修正のために本来支払う必要のなかった専門家への報酬を支払ったこと、有価証券報告書の虚偽記載に関し課徴金を納付したことなどにより損害を被ったなどと主張して、同法423条1項に基づく損害賠償を請求する訴訟を東京地方裁判所に提起し(会社提起訴訟)、被告の株主は、 平成28年5月21日、会社提起訴訟において被告とされなかった取締役又は執行役の地位にあった者らに対し、上記と 損害賠償を請求する訴訟を東京地方裁判所に提起し(会社提起訴訟)、被告の株主は、 平成28年5月21日、会社提起訴訟において被告とされなかった取締役又は執行役の地位にあった者らに対し、上記と同様の主張をして、同項に基づく損害賠償を請求する訴訟を同裁判所に提起した(株主代表訴訟)(平成27年(ワ)第31552号、平成28年(ワ)第329号、同第16322号、同第16367号)。 東京地方裁判所は、令和5年3月28日、上記各請求を一部認容する判決を言い渡した。(以上、顕著な事実)⑺ 金融庁の課徴金納付命令金融庁長官は、平成27年12月24日、被告に対し、課徴金73億7350万円を納付することを命ずる決定をした(以下「本件課徴金納付命令」とい う。)。その理由の要旨は、以下のとおりである。(甲33) 被告は、一部の工事進行基準適用案件において、工事損失引当金の過少計上及び売上げの過大計上を行ったほか、映像事業、PC事業及び半導体事業等の一部において、売上原価の過少計上、費用の過少計上などを行った。これらの結果、被告は、関東財務局長に対し、①第173期及び第174期について、重要な事項につき虚偽の記載がある有価証券報告書を提出し、また、②第17 1期、第173期及び第174期について、それぞれの期の有価証券報告書を参照書類とする発行登録追補書類を提出し、社債券を取得させ、もって重要な事項につき虚偽の記載がある発行開示書類に基づく募集により有価証券を取得させた。重要な事項についての虚偽の記載に当たるものは、次のとおりである。 ① 第171期有価証券報告書に、同期の連結当期純損益が539億4300万円(百万円未満切り捨て)の損失であるところを197億4300万円(百万円未満切り捨て)の損失 次のとおりである。 ① 第171期有価証券報告書に、同期の連結当期純損益が539億4300万円(百万円未満切り捨て)の損失であるところを197億4300万円(百万円未満切り捨て)の損失と記載した。 ② 第173期有価証券報告書に、同期の連結当期純損益が31億9400万円(百万円未満切り捨て)の利益であるところを700億5400万円(百 万円未満切り捨て)の利益であると記載した。 ③ 第174期有価証券報告書に、同期の連結当期純損益が134億2500万円(百万円未満切り捨て)の利益であるところを773億6600万円(百万円未満切り捨て)の利益であると記載した。 ⑻ 内部統制報告書 ア被告は、その内部統制報告書(第170期~第175期)において、「評価結果に関する事項」として「上記の評価の結果、当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効であると判断しました。」旨を記載した(以下「本件内部統制報告書」という。)。(甲3、弁論の全趣旨、顕著な事実) イ被告は、平成27年9月7日、第171期以降に提出した内部統制報告書 (第171期~第175期)について、被告において過去数年間にわたって利益の先取りや費用の先送り等不適切な会計処理が継続されてきたことが判明し、このことは、意図的な利益の嵩上げのために各カンパニー(自主経営責任(損益責任)を負う被告の事業区分(組織)をいう。)における内部統制及び単体決算や連結決算に関する内部統制が無効化され、被告の会計処 理基準が適切に運用されていなかったことにより発生したものであり、内部統制は有効に機能していなかったなどとして、各期末現在の「財務報告に係る内部統制は有効でないと判断しました。」旨を記載した。(甲3)⑼ WECに関す ていなかったことにより発生したものであり、内部統制は有効に機能していなかったなどとして、各期末現在の「財務報告に係る内部統制は有効でないと判断しました。」旨を記載した。(甲3)⑼ WECに関する減損ア株式会社日経BPが発行する「日経ビジネス」は、平成27年11月12 日、①被告が平成18年に買収した米原子力子会社であるWECにおいて、原発の新規建設が不調だったことなどを受け、単体決算で平成24年度に約1110億円、平成25年度に約480億円の減損処理をし、平成24年度及び平成25年度に赤字(WEC単体)に転落したことが内部資料で判明したこと、②同紙がその旨を指摘するまで、被告は、同社の連結決算には影響 がなく、会計ルール上も問題がないとして、事実を開示せず、WECの赤字を隠蔽したことを報じた(以下「WECに関する本件報道」という。)。(甲4、弁論の全趣旨)イ被告は、平成27年11月13日、「当社の原子力事業に関する一部報道について」と題する書面を公表した。当該書面には、WECに関する本件報 道について、WECに係るのれんについて米国会計基準に則り年次で減損テストを行っていること、被告は平成18年度にWECを買収して以降、連結ベースで減損損失は認識していないこと、被告連結ベースでの減損テストはWECが所属する被告事業部門全体として実施するため、当該事業部門全体としての収益性が確保されていることから減損損失を計上していないこと などが記載されている。(甲5) ⑽ 原告らの主張する取引第1事件原告らは、東京証券取引所において、別冊2の各原告の取引履歴のとおり、それぞれ、「取引日」欄記載の年月日に、「勘定名」欄記載のファンド名において、「1株当りの取引価格」欄記載の価格(円)で、「購入」 原告らは、東京証券取引所において、別冊2の各原告の取引履歴のとおり、それぞれ、「取引日」欄記載の年月日に、「勘定名」欄記載のファンド名において、「1株当りの取引価格」欄記載の価格(円)で、「購入」欄記載の数量の被告株式を購入し、「1株当りの取引価格」欄記載の価格(円)で、「売 却」欄記載の数量の被告株式を売却したと主張する。また、第2事件原告らは、東京証券取引所において、別冊3の各原告の取引履歴のとおり、それぞれ、「取引日」欄記載の年月日に、「勘定名」欄記載のファンド名において、「1株当りの取引価格」欄記載の価格(円)で、「購入」欄記載の数量の被告株式を購入し、「1株当りの取引価格」欄記載の価格(円)で、「売却」欄記載の数量の被告株 式を売却したと主張する(以下、原告らが主張する上記の購入や売却を全体として「本件各取引」という。)。なお、本件各取引に関し、原告らの中には、振替株式である被告株式を証券取引所において取得する際、振替口座簿上の増加記録を自己の名義では取得せず、委託をしたカストディアン名義で取得したと主張する者が存在する。カストディアンによる上場株式の購入がされる場合、 カストディアンが、当該株式について振替口座簿上の増加記録を受けるとともに、売買代金の決済を行うことになる。(甲41、甲A118、弁論の全趣旨)⑾ 本件各訴えの提起第1事件の訴えは、平成28年6月22日に提起され、第2事件の訴えは、平成29年4月3日に提起された。(顕著な事実) ⑿ 本件審理中の当事者間の承継及び訴えの取下げア第2事件の訴え提起時の原告で「第2事件原告39」とされていた法人(フレンズ・ライフ・リミテッド)は、平成29年10月1日、その事業の全てを第2事件原告38に譲渡した。(甲A144 下げア第2事件の訴え提起時の原告で「第2事件原告39」とされていた法人(フレンズ・ライフ・リミテッド)は、平成29年10月1日、その事業の全てを第2事件原告38に譲渡した。(甲A144、弁論の全趣旨)イ第2事件原告18(ザ・カナダ・ライフ・アシュアランス・カンパニー) は、令和2年1月1 日、第2事件の訴え提起時の原告で「第2事件原告18」 とされていた法人(ザ・グレイト・ウェスト・ライフ・アシュアランス・カンパニー)、「第2事件原告20」とされていた法人(ザ・カナダ・ライフ・アシュアランス・カンパニー)及び「第2事件原告21」とされていた法人(ロンドン・ライフ・インシュアランス・カンパニー)の権利義務を新設合併により包括承継した。(弁論の全趣旨) ウ第1事件及び第2事件の各訴え提起時の原告で、「第1事件原告17」、「第1事件原告21」、「第1事件原告28」、「第1事件原告31」、「第1事件原告40」、「第1事件原告43」、「第2事件原告3」、「第2事件原告39」及び「第2事件原告63」とされていた各法人は、いずれも訴えを取り下げた。 (顕著な事実) 2 本件の争点⑴ 争点1(名義株主でない原告が有価証券を「取得した者」(金商法21条の2第1項)に該当するか)⑵ 争点2(名義株主でない原告が不法行為に基づく損害賠償請求権を有するか)⑶ 争点3(名義株主該当性) ⑷ 争点4(有価証券報告書等の虚偽記載による不法行為責任等の成否)⑸ 争点5(内部統制報告書の虚偽記載による不法行為責任等の成否)⑹ 争点6(適時開示義務違反による不法行為責任の成否)⑺ 争点7(損害額) 3 争点に関する当事者の主張 ⑴ 争点1(名義株主でない原告が有価証券を「取得し る不法行為責任等の成否)⑹ 争点6(適時開示義務違反による不法行為責任の成否)⑺ 争点7(損害額) 3 争点に関する当事者の主張 ⑴ 争点1(名義株主でない原告が有価証券を「取得した者」(金商法21条の2第1項)に該当するか)(原告らの主張)投資者の保護という金商法1条が定める金商法の目的や、金商法21条の2の趣旨が投資者の保護にあることからすれば、同条1項に基づく損害賠償請求 権の主体を名義株主に限定すべきではない。金商法21条の2第1項の「取得し た者」には、自己の振替口座簿に株式の増加記録を受けた名義株主である原告に限られず、名義株主でない原告も含まれると解すべきである。 (被告の主張)金商法21条の2第1項の「取得した者」について、「取得」という概念は、有価証券を法的に取得して株主の地位を獲得する意味であると解されているか ら、自らの名義で株式を取得した者をいう。そして、振替株式の場合、振替口座簿への記載又は記録が譲渡の効力要件であるから(社債等振替法128条1項、140条)、金商法21条の2第1項の「取得した者」とは、名義株主以外にはあり得ない。したがって、名義株主でない原告は、金商法21条の2第1項の「取得した者」には当たらない。 ⑵ 争点2(名義株主でない原告が不法行為に基づく損害賠償請求権を有するか)(原告らの主張)ア本件訴訟において、カストディ契約の法的性質について、信託契約の場合、名義株主であるカストディアンが原告となって損害賠償請求をし、他方、委任契約と寄託契約の双方の性格を有する契約の場合、カストディアンでない者(名義株主で ない者)が原告となって損害賠償請求をしている。後者について、カストディアンは、非名義株主原告から被告株式 任契約と寄託契約の双方の性格を有する契約の場合、カストディアンでない者(名義株主で ない者)が原告となって損害賠償請求をしている。後者について、カストディアンは、非名義株主原告から被告株式の取得・保管等を委託されて自らの振替口座簿に増加記録を受けているにすぎない。そして、非名義株主原告は、自ら出捐を行い、被告株式に係る損益を享受する実質株主であるから、被告に対する損害賠償請求権を行使することができると解すべきである。 すなわち、原告らは、機関投資家として、グローバル・カストディアンを選定し、グローバル・カストディアンにおいて、日本国内に所在する金融機関をサブ・カストディアンとして選定し、名義株主はサブ・カストディアン又はその指定する名称(いわゆるノミニー名義)として、機関投資家本人から署名や委任状を得ることなく円滑かつ迅速に大量の取引やこれに伴う事務処理を行うこととしたものであり、 非名義株主原告は、自らの資金と投資判断により、サブ・カストディアン又はノミ ニー名義で被告株式を取得している。被告株式から生ずる全ての損益は実質株主である非名義株主原告に帰属し、「権利又は法律上保護される利益」(民法709条)を侵害されたのは非名義株主原告である(株式の売買について何ら判断を行っていないカストディアンには自己決定権の侵害は生じておらず、被告株式の取得に係る自己決定権の侵害は非名義株主原告に生じている。また、カストディアンが倒産し た場合に、投資家である非名義株主原告は倒産隔離による利益を享受する立場にあることを考慮すると、非名義株主原告に法律上保護される利益があることは一層明らかである。) から、非名義株主原告の被告に対する損害賠償請求を認めるべきである。 イなお、会社法では、株主名簿の確定的効力とし 慮すると、非名義株主原告に法律上保護される利益があることは一層明らかである。) から、非名義株主原告の被告に対する損害賠償請求を認めるべきである。 イなお、会社法では、株主名簿の確定的効力として、会社は、株主名簿の名 義書換がされない限り、名簿上の株主を株主として扱えば足りることとされている。しかしながら、原告らは、本件訴訟において、被告が有価証券報告書等の虚偽記載を行ったことにより被った損害の賠償を求めているのであり、株主として、自益権や共益権の行使を行っているわけではない。また、株主名簿の確定的効力は、集団的法律関係を画一的に処理する会社の便宜の ための制度であるが、本件訴訟のように、被告株式を取得した投資家が個別に訴訟を提起して損害賠償を求める場合に、集団的法律関係の画一的処理の要請は働かない。そのため、非名義株主原告の不法行為に基づく損害賠償請求を認めることに問題はない。 ウ被告は、名義株主でない者が発行会社に対して損害賠償請求を有し得ると すれば、実際上、発行会社は同一の株式に係る損害につき名義株主とそうでない者の双方から請求を受ける可能性があり、二重払いの危険がある旨主張する。しかし、本件において株主名簿上の株主となっているカストディアンは、機関投資家である非名義株主原告との合意によって形式的に被告株式の名義人となっているにすぎない上、本件の虚偽記載に係る損害賠償請求権は 既に時効期間(金商法21条の3、20条、民法724条)が経過しており、 名義株主が自ら損害賠償請求をすることは考えられない。また、非名義株主原告が被告株式の取引に利用したカストディアンとして特定したカストディアンに関する取引履歴等を確認すれば、二重請求の有無は容易に確認可能であり、非名義株主原告による損害賠償請 ない。また、非名義株主原告が被告株式の取引に利用したカストディアンとして特定したカストディアンに関する取引履歴等を確認すれば、二重請求の有無は容易に確認可能であり、非名義株主原告による損害賠償請求権の行使を許容したとしても、二重払いの危険は生じない。 エ以上のことからすれば、名義株主ではない原告も不法行為に基づく損害賠償請求権を有する。 (被告の主張)アそもそも株式を取得した株主と評価できなければ、権利・利益の侵害も損害の発生もあり得ない。そして、株式を取得して株主となった者とは、通常 は株主名簿上の株主となった者を意味し、被告株式のような振替株式の場合、自己の振替口座簿に当該株式の増加記録を受けた株主を意味する(社債等振替法128条、140条)。したがって、名義株主でない原告は、損害賠償請求権を有しない。 イまた、カストディ契約が信託契約であると解される場合で、かつ、カスト ディアンの名義で被告株式が保有されている場合、信託財産である株式についての損害賠償請求権を行使できるのは受託者たるカストディアンであり、受益者たる投資家ではない。この点に関し、原告ら自身も投資家とカストディアンとの間の契約関係が信託である場合(すなわち、カストディアンが原告となっている場合)に、当該投資家が損害賠償請求権を有しないことを自 認している。そして、非名義株主原告である第1事件原告42及び第2事件原告38について、そのカストディ契約の法的性質は、開示された契約書によれば、信託契約であることが確認されている。また、その他の非名義株主原告についても、カストディ契約が信託契約とは異なる性質のものであることは具体的に主張立証されていない。さらに、上記アの振替株式に係る日本 の法制度を前提とすれば、全ての原告らの の非名義株主原告についても、カストディ契約が信託契約とは異なる性質のものであることは具体的に主張立証されていない。さらに、上記アの振替株式に係る日本 の法制度を前提とすれば、全ての原告らのカストディ契約は信託契約として の性質を備えているというべきである。以上によれば、信託契約である以上、非名義株主原告に損害賠償請求権は帰属していない。 ウさらに、名義株主でない原告が、株式を取得した名義株主に代わり、実質株主として損害賠償請求を行うには、名義株主が自己には損害賠償請求権が存在しないことを表明することに加え、名義株主でない原告が、①剰余金配 当請求権、②残余財産分配請求権、③株主総会における議決権を有するとともに、④当該株式の取得資金を自己が拠出したこと、⑤当該株式の取得という行為を自己の意思で行ったこと、⑥本来の価値を反映した(価格の下落した)株式の売却代金が自己に帰属すること(株式がまだ処分されていない場合は、処分された場合の対価が自らに帰属すること)が必要であると解され る。しかし、本件において、名義株主でない原告は上記の諸点について十分な主張立証をしないから、やはり損害賠償請求権を有していない。 エ加えて、自ら実質株主と主張する者が自由に損害賠償請求を行うことを許容すれば、発行会社には、二重払いの危険が生ずる。本件の審理過程でも明らかになったとおり、原告らにおいてカストディアン作成の取引履歴に関す る報告書の作成をするだけでも相当の時間を要し、また、重層的なカストディの連鎖の中に存在する当事者の数や締結される各契約の内容は、投資家や国によって全く異なるところ、本件においてそれらは全く明らかにされていない。多くの機関投資家の取引履歴は膨大であり、株式の重層的な保有構造の把握も容易でないから や締結される各契約の内容は、投資家や国によって全く異なるところ、本件においてそれらは全く明らかにされていない。多くの機関投資家の取引履歴は膨大であり、株式の重層的な保有構造の把握も容易でないから、同一の株式について二重払いを防止する確認がで きるというのは非現実的である。 オ以上のことからすれば、名義株主ではない原告は、およそ不法行為に基づく損害賠償請求権を有しない。 ⑶ 争点3(名義株主該当性)(原告らの主張) ア原告らのうち、自己名義で被告株式を取得したのは、第2事件原告2、第 2事件原告17、第2事件原告27、第2事件原告42、第2事件原告59、第2事件原告60、第2事件原告62及び第2事件原告67(合計8名)である。 イ第2事件原告2(ザバンクオブニューヨークメロン)は、「THEBANKOFNEWYORK 132561」との名義を平成21年3月 9日から平成29年7月31日までの間に使用しており、本件に係る被告株式の売買を行っていた。 ウ第2事件原告17(ステートストリートトラストカンパニーカナダ)は、「OM02 STATESTREET 808424 CLIENTOMNI」との名義で本件に係る被告株式の売買を行っていた。この名 義は架空名義であり、このような名称の法人が存在しているわけではないが、第2事件原告17は、この名義(ノミニー名)で取引を行ったものである。 なお、被告株式を取得する際に使用した上記名義の口座は、第2事件原告17の関連会社である米国法人StateStreetBankandTrustCompanyが開設したものである。 (被告の主張)ア第2事件原告42、第2事件原告59、第2事件原告60、第2事件原告62及 tateStreetBankandTrustCompanyが開設したものである。 (被告の主張)ア第2事件原告42、第2事件原告59、第2事件原告60、第2事件原告62及び第2事件原告67(合計5名)がそれぞれ自己名義で被告株式を取得して取引をしたことを積極的には争わない。 イ他方、第2事件原告2は、「THEBANKOFNEWYORK 132561」との名義を平成21年3月9日から平成29年7月31日までの間に使用したと主張するが、被告が株主名簿管理人から取得した株主名と照合した結果、そのような事実は認められなかった。 ウまた、第2事件原告17(カナダ法人)は、名義人(「OM02 STATESTREET 808424 CLIENTOMNI」)と名称及び 住所が一致していない。そして、上記名義人の口座について、原告らの主張 のとおり、第2事件原告17の関連会社である米国法人(StateStreetBankandTrustCompany)が開設したのであるとすれば、当該口座において取得された被告株式の名義株主はむしろ同米国法人となるのであって、結局、第2事件原告17が自己名義で被告株式を取得したとはいえない。 エさらに、第2事件原告27(ステート・ストリート・バンク・アンド・トラスト・カンパニー)は、本件に関して被告株式の取得を自己名義ではなく「MizuhoBank」名義で行っているから、自己名義で被告株式を取得したとはいえない。 ⑷ 争点4(有価証券報告書等の虚偽記載による不法行為責任等の成否) (原告らの主張)ア虚偽記載の範囲原告らは、第170期の第1四半期から第176期の第3四半期までの有価証券報告書等(本件有価証券報告 等の虚偽記載による不法行為責任等の成否) (原告らの主張)ア虚偽記載の範囲原告らは、第170期の第1四半期から第176期の第3四半期までの有価証券報告書等(本件有価証券報告書等)の訂正前の記載の全てが重要な事項についての虚偽記載であると主張するものであるが、中心的に主張する虚 偽記載は、別紙11原告ら主張の主要な虚偽記載の項目及び金額の「項目」欄記載の各項目(①継続事業からの税金等調整前当期純損益(税引前損益)、②当社株主に帰属する当期純損益(当期純損益)、③株主資本合計、④資本合計(総資産)、⑤負債、少数株主持分及び資本合計又は負債及び資本合計(総資産))について、同表の「訂正前」欄記載の金額から同表の「訂正後」欄記載の金額 を控除した残額(同表の「訂正額」欄記載の金額)が虚偽記載に当たる(主要なもの以外では、虚偽記載として、売上高等が虚偽記載に当たる。)。そして、会計処理の違法性(虚偽性)が認められるのは、被告が訂正した内容(別紙9表2参照。前提事実⑶ク)に沿って、①工事進行基準、②映像事業における経費計上、③PC事業における部品取引等、④半導体事業における在庫の評価等、⑤自主 チェック等(自主チェックに別紙9表1の「その他」及び派生影響等を含む。以下 同じ。)、⑥上記各修正に派生する減損及びこれに伴う減価償却費である(減損損失の追加計上も虚偽記載に当たることは、下記ウのとおりである。)。 イ虚偽記載が重要な事項についてのものであること被告が認める当期純損益のみならず、原告らがその他の虚偽記載として主張する項目も投資者の投資判断に重要な影響を与えるというべきである。有 価証券報告書の冒頭に「主要な経営指標等の推移」として、当期純損益のみならず、売上高、純資産額などの最近 の虚偽記載として主張する項目も投資者の投資判断に重要な影響を与えるというべきである。有 価証券報告書の冒頭に「主要な経営指標等の推移」として、当期純損益のみならず、売上高、純資産額などの最近5連結会計年度に係る推移を記載することとされていることから分かるように、投資者は当期純損益のみに着目して投資判断しているわけではない。そして、特に上記アの項目の虚偽記載は、企業の業績の根幹に関わる重要な項目の虚偽記載であり、その規模も数百億円から数千億円に上るか ら、「重要な事項」についての虚偽記載に当たることは明らかである。 ウ減損損失の追加計上は虚偽記載に当たること被告の主張によれば、本件訂正報告書のうち、減損損失の追加計上は、不正会計に起因した過年度決算の訂正項目を各決算期当時における見積りの将来キャッシュフロー予測に加え、これを過年度決算の訂正時点(平成27 年9月時点)における各決算期当時における最善の将来キャッシュフロー予測と遡及的にみなした結果として認識されたものであるから、減損損失の追加計上(訂正)が被告による不正会計(虚偽記載)により必要になったことは明らかである。そうすると、訂正前の有価証券報告書等における減損損失の不計上(又は計上不足)は虚偽記載に該当するというべきである。 エ責任原因本件有価証券報告書等の虚偽記載は、被告の原告らに対する不法行為責任(民法709条、715条、会社法350条)を生じさせるとともに金商法21条の2が定める責任も生じさせる。 オ除斥期間又は消滅時効の主張に対し 除斥期間又は消滅時効の主張は、否認し争う。 (被告の主張)ア被告が争わない重要な事項についての虚偽記載の範囲被告は、第171期、第173期及び第174期の各有価 対し 除斥期間又は消滅時効の主張は、否認し争う。 (被告の主張)ア被告が争わない重要な事項についての虚偽記載の範囲被告は、第171期、第173期及び第174期の各有価証券報告書の当期純損益に、重要な事項についての虚偽の記載が存在したことは積極的に争わない。他方、本件有価証券報告書等のうち、その他のものには、重要な事 項についての虚偽記載は存在しない。その詳細は、以下のとおりである。 イ減損損失の追加計上は虚偽記載に当たらないこと本件訂正報告書のうち、「減損損失の追加計上及びこれに伴う減価償却費の修正」の数値は、①「減損損失の追加計上」と、②「これに伴う減価償却費の修正」(減損損失の追加計上に伴う減価償却費の調整及び処分損益の調 整)で構成される。被告は、このうち、「減損損失の追加計上」の部分については、これを計上しなかったことが虚偽記載であるという原告らの主張を争っているが、「これに伴う減価償却費の修正」の部分については、原告らの主張を積極的には争わない。そこで、争いのある減損損失の追加計上については、被告は、平成27年9月7日に開示した過年度決算の訂正に際し、別 紙10減損損失の追加計上一覧表に記載のとおりの減損損失の追加計上を行った。この点に関し、被告は、過年度決算の訂正に際して、あくまでも米国会計基準において許容される範囲で簡便かつ保守的に減損損失を追加計上したに過ぎず、訂正前の各決算時点において米国会計基準に基づいて減損損失を認識すべきであったことを理由に追加計上をしたわけではない。また、 過年度決算の訂正に際して減損損失の追加計上の対象となったいずれの事業についても、被告の訂正前の各決算当時の将来キャッシュフローの見積りに、訂正時における営業損益の訂正額 けではない。また、 過年度決算の訂正に際して減損損失の追加計上の対象となったいずれの事業についても、被告の訂正前の各決算当時の将来キャッシュフローの見積りに、訂正時における営業損益の訂正額を反映して将来キャッシュフローの見積りを算定し直したとしても、割引前の将来キャッシュフローの見積り額が帳簿価額を大幅に上回っている。したがって、被告が過年度決算の訂正に際 して行った減損損失の追加計上に伴う訂正部分が「虚偽記載」であるという 原告らの主張には、理由がない。 ウ組替えによる訂正部分は虚偽記載に当たらないこと事業買収に関する組替え被告は、平成24年3月期(第173期)中にランディス・ギア社を買収したが、翌期である第174期に、この事業買収について米国会計基準 に基づく取得金額の資産及び負債への配分が完了したため、第174期の有価証券報告書において、第173期の数値を遡及的に組み替えて表示した。同様に、被告が平成25年3月期(第174期)中に行った米国法人IBM社のリテール・ストア・ソリューション事業の買収に関しても、翌期である第175期の有価証券報告書において、第174期の数値を遡及 的に組み替えて表示した。これら事業買収に関する組替えは、翌期の有価証券報告書提出時点で既に行われていたものであり、平成27年9月7日に提出された本件訂正報告書において組み替えられたものではなく、このような組替えに伴う訂正部分は、いずれも虚偽記載には当たらない。 非継続事業に関する組替え 被告は、第171期以降の訂正報告書において、非継続事業に関する組替えを理由とする数値の変更を行った。これらの組替えは、米国会計基準において、ある財務報告の時点における非継続事業について、当該非継続事業の損 171期以降の訂正報告書において、非継続事業に関する組替えを理由とする数値の変更を行った。これらの組替えは、米国会計基準において、ある財務報告の時点における非継続事業について、当該非継続事業の損益は、継続事業の損益とは区別して、非継続事業の損益として報告することが要求されているとともに、時点の異なる財務情報の比較可能 性の確保のため、当該財務報告において比較対象として記載される過去の財務諸表においても非継続事業であったものとして組み替えて表示することが要求されているがゆえに行われたものである。このような組替えに伴う訂正部分は、いずれも虚偽記載には当たらない。 エ第170期、第172期及び第175期の通期並びに第176期の第3四半期 については重要な事項についての虚偽記載がないこと 第172期及び第175期の通期並びに第176期の第3四半期の「当社株主に帰属する当期純利益(損失)」(当期純損益)については、本件訂正報告書の訂正後に増額しており、投資判断を誤らせる内容の虚偽記載に当たらない。 また、第170期については、もともと連結当期純損失が極めて多額であり、約553億円という訂正額は相対的に低額であって、純損失額が3435億 5900万円か3988億7800万円かによって、投資者の被告株式への投資判断が重大な影響を受けるとは考え難い。さらに、上記訂正額のうち、減損損失の追加計上による影響額は虚偽記載による訂正には該当しないところ、減損損失の追加計上の当期純損益への影響額(247億6800万円)を控除した訂正額は約306億円であり、訂正前の数値からの訂正比率は約 8.8%に過ぎず、投資者の被告株式への投資判断への影響が軽微であることは一層明らかであるから、重要な事項についての虚偽記載は存在しない 額は約306億円であり、訂正前の数値からの訂正比率は約 8.8%に過ぎず、投資者の被告株式への投資判断への影響が軽微であることは一層明らかであるから、重要な事項についての虚偽記載は存在しない。 オ当期純損益以外の項目は「重要な事項」の虚偽記載に当たらないこと財務諸表上の数値に訂正があったとしても、企業規模等を踏まえて、各項目の数値の差異が、投資者の企業の評価自体に重要な差異をもたらすものでなければ、か かる訂正が投資判断に重大な影響を及ぼすものとは認められない。そうすると、原告らの主張のうち、当期純損益以外の項目は、投資判断に重大な影響を与えるものではなく、重要な事項の虚偽記載に当たらない。 カ小括第170期から第175期における当期純利益の訂正額のうち、上記のと おり虚偽記載に該当しない減損損失の追加計上による影響額(ただし、各年度の実効税率に基づいて算定したもの)及びかかる影響額を控除した訂正額等を表にまとめると、別紙12被告試算の訂正額等一覧表に記載のとおりである(なお、同表において、第173期及び第174期の「①訂正前の「当社株主に帰属する当期純損失」」欄記載の数値は、事業買収に関する組替え 後の数値である。他方、非継続事業に関する組替えは、当期純利益には影響 がないことから、その影響を分析する必要はない。)。 キ除斥期間又は消滅時効金商法21条の2第1項に基づく損害賠償請求権は、金商法21条の3による読み替え後の金商法20条の準用によって、請求権者が、①虚偽記載等について知った時又は相当な注意をもって知ることができる時から2年間 行使しないときは消滅し、また、②虚偽記載等に係る書類が提出された時から5年間行使しないときも消滅する。そうすると、原告らは、 について知った時又は相当な注意をもって知ることができる時から2年間 行使しないときは消滅し、また、②虚偽記載等に係る書類が提出された時から5年間行使しないときも消滅する。そうすると、原告らは、第1事件について平成28年6月22日に、第2事件について平成29年4月3日にそれぞれ訴えを提起しているところ、上記②の規定により、原告らが金商法21条の2第1項に基づく損害賠償請求の対象とする被告株式のうち、第1事件 について平成23年8月10日以前に、第2事件について平成24年6月22日以前に、それぞれ取得された被告株式に係る請求権は、いずれも除斥期間の経過によって既に消滅している(なお、金商法20条後段の期間は除斥期間であると解されるが、除斥期間ではなく短期消滅時効と解された場合に備え、念のため、被告は、令和元年5月22日の本件弁論準備手続期日にお いて、時効を援用するとの意思表示をした。)。 ⑸ 争点5(内部統制報告書の虚偽記載による不法行為責任等の成否)(原告らの主張)ア本件内部統制報告書の虚偽記載被告において、有価証券報告書等に係る虚偽記載が、少なくとも第170 期以降、6年以上にわたって行われていた。ところが、被告は、本件内部統制報告書(第170期~第175期)において、「当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効であると判断しました。」と記載し(前提事実⑻ア)、虚偽記載を行った(以下「本件内部統制報告書に係る虚偽記載」といい、「本件有価証券報告書等に係る虚偽記載」と併せて「原告ら 主張の虚偽記載」という。)。この点に関し、被告は、平成27年9月7日、 第171期以降に提出した内部統制報告書(第171期~第175期)における虚偽記載について認め、上記各内部統制報告 主張の虚偽記載」という。)。この点に関し、被告は、平成27年9月7日、 第171期以降に提出した内部統制報告書(第171期~第175期)における虚偽記載について認め、上記各内部統制報告書の各記載について、各期末現在の「財務報告に係る内部統制は有効でないと判断しました」などと訂正を行っている(前提事実⑻イ)。 本件内部統制報告書に係る虚偽記載は、重要な事項についての虚偽記載に 該当するというべきである。 イ責任原因本件内部統制報告書に係る虚偽記載は、被告の原告らに対する不法行為責任(民法709条、715条、会社法350条)を生じさせるとともに金商法21条の2が定める責任も生じさせる。 (被告の主張)被告が平成27年9月7日に各内部統制報告書に係る訂正報告書を提出したのは(前提事実⑻イ)、平成27年4月3日以降に実施された調査の結果、平成21年3月期から平成26年3月期までの各事業年度末日時点における被告の財務報告に係る内部統制が有効でなかったと判断するに至った ためである。そして、内部統制報告書は、制度上、客観的に内部統制が有効であるか否かを記載する報告書ではなく、「内部統制の評価」を記載する報告書であるから(金商法24条の4の4第1項)、当該記載が虚偽であるか否かは、当時「内部統制は有効であると判断」したことが事実に反していたかによって決せられる。事後的に内部統制が有効でなかったことが判明した 場合であっても、内部統制報告書の提出当時、提出者が「内部統制は有効である」と判断したのであれば、「内部統制は有効であると判断」したとの記載が虚偽であったことにはならない。そして、本件内部統制報告書を提出した時点において、財務報告に係る内部統制は有効であると判断した事実は虚偽ではない。 部統制は有効であると判断」したとの記載が虚偽であったことにはならない。そして、本件内部統制報告書を提出した時点において、財務報告に係る内部統制は有効であると判断した事実は虚偽ではない。 また、一般に、内部統制報告書において内部統制に不備がある旨の記載が されたとしても、投資者はそれを重視しているとはいえず、そのような記載は株式の価格形成に影響するものではない。そのため、原告らが主張する本件内部統制報告書に係る虚偽記載につき、原告らにこれと相当因果関係のある損害は認められない。 ⑹ 争点6(適時開示義務違反による不法行為責任の成否) (原告らの主張)ア適時開示義務違反等WECグループは、平成24年度において、のれんの減損損失として約9億3000万ドルを計上していた。当該事実は、東京証券取引所の適時開示基準の「子会社の業務遂行の過程で生じた損害」のうち「損害の額が、直前 連結会計年度の末日における連結純資産の3%に相当する額以上」という要件に該当する事実である(上場規程403条2号a、上場規程施行規則404条1号a)。そうすると、被告は、遅くともWECグループが当該減損損失を計上した平成25年夏頃までには、この事実を開示すべきであったが、それにもかかわらず、WECに関する本件報道がされた日の翌日(平成27年 11月13日)まで、同事実の公表を怠った(以下、原告らが主張する、被告が同事実の公表を怠ったことを「本件適時開示義務違反」という。)。 また、WECグループの減損損失が開示されるまでの間、執行役上席常務、CFOを含む被告の役職員は、WECの経営が順調であって、被告において開示すべき損失は同社に発生していないかのような説明を行って投資家を 欺いたから、適時開示関連違法行為(以下「 役上席常務、CFOを含む被告の役職員は、WECの経営が順調であって、被告において開示すべき損失は同社に発生していないかのような説明を行って投資家を 欺いたから、適時開示関連違法行為(以下「本件適時開示関連違法行為」といい、これを本件適時開示義務違反と併せて「本件適時開示義務違反等」という。)として、違法行為に当たる。 イ責任原因本件適時開示義務違反等は、被告の原告らに対する不法行為(民法709 条、715条、会社法350条)を構成する。 (被告の主張)原告らが指摘するのれんの減損損失の計上は、WECを含む企業グルーブ(WECグループ)の決算上で認識したものであり、平成24年度において、連結決算上、減損テストの結果、減損の必要性が認められなかったので、被告において減損損失は認識されていないし、被告の訂正後の有価証券報 告書等に記載されている連結財務諸表(四半期連結財務諸表を含む。)上でものれんの減損損失は認識されておらず、かつ、当該連結財務諸表に独立監査人の無限定適正意見又は無限定の結論の表明が付されている。このように、WECグループの上記減損損失の計上は、被告の連結決算に影響を及ぼす事象ではなかった。かかる事情に照らせば、被告は、上記減損損失の計上 について、上場規程に基づく開示義務を負わないし、金商法上も、投資者保護のため必要かつ適当なものとして開示義務を負うものではない。また、当時、適時開示基準の要件に該当するかは一義的に明確でなかったから、被告に注意義務違反(故意又は過失)は認められない。 さらに、上述したとおり、原告らが適時開示義務の対象として主張するW ECグループの減損損失は、被告の連結決算に影響を及ぼすものではなく、このような被告の連結決算に何ら影響を及ぼさない子会 さらに、上述したとおり、原告らが適時開示義務の対象として主張するW ECグループの減損損失は、被告の連結決算に影響を及ぼすものではなく、このような被告の連結決算に何ら影響を及ぼさない子会社グループの減損損失は、投資家の判断に影響を及ぼさないから、株価下落の要因となったとはいえない。 本件適時開示関連違法行為が不法行為を構成することは、争う。 ⑺ 争点7(損害額)(原告らの主張)ア損害の内容損害の内容として、株式の取得に当たって虚偽記載によって嵩上げされていた株式の価値に相当する額の金銭等の支出をしたこと(高値取得損害)に 加え、虚偽記載等の発覚後における発行会社の信用毀損、ろうばい売り等に より生じた株価の下落分は、賠償の対象となる損害に含まれる。 イ主位的算出方法原告らの損害は、被告株式の取得時期に応じて、以下の三つのグループに分けられる。以下の(i)‐①及び②は、原告ら主張の虚偽記載と本件適時開示義務違反等の双方の影響を受けている株式に係る損害であり、(ii) は、原告ら主張の虚偽記載が発覚し、その開示が行われた後、本件適時開示義務違反中に取得された株式に係る損害である。 (i)- ①平成20年8月13日(第170期第1四半期報告書の提出日の翌日)~平成27年4月3日(本件公表日)の間に購入され、かつ、同日時点で保有されていた株式についての損害 (i)- ②平成27年4月4日(本件公表日の翌日)~同年9月7日(本件訂正報告書の提出日)の間に購入された株式についての損害(ii)平成27年9月8日(本件訂正報告書の提出日の翌日)~同年11月12日(WECに関する本件報道がされた日)の間に購入され、かつ、同日時点で保有されていた株式についての損害 平成 (ii)平成27年9月8日(本件訂正報告書の提出日の翌日)~同年11月12日(WECに関する本件報道がされた日)の間に購入され、かつ、同日時点で保有されていた株式についての損害 平成27年4月4日以降、原告ら主張の虚偽記載及び本件適時開示義務違反等が発覚したことにより、被告の株価は著しく下落した。このような株価の下落には、虚偽記載により嵩上げされていた株価が真実の情報を反映した株価に戻ることにより生ずる下落(高値取得損害)や、虚偽記載等の発覚後における発行会社の信用毀損、ろうばい売り等により生じた株価 の下落分により生ずる株式価値の低下が含まれるが、いずれにせよ、虚偽記載と相当因果関係のある限度で、発行会社は投資家に対して損害賠償責任を負う。被告の株価は、平成28年2月12日に1株158円(終値)で底打ちし、その後、同年3月から同年5月中旬にかけて概ね200円から240円程度の幅で安定的に推移していることから、遅くとも、平成2 8年2月12日から3か月を経た同年5月11日までには、被告株価は、 原告ら主張の虚偽記載及び本件適時開示義務違反等に関わる情報を織り込んだものということができる。このため、遅くとも平成28年5月11日以降の株価の変動は、原告ら主張の虚偽記載及び本件適時開示義務違反等とは無関係の変動といえる。以上を前提にすると、原告らの損害は、以下のとおり算出される。 a 原告らが平成20年8月13日以降に行った被告株式の各購入、売却取引について、先入先出法により紐付けを行う。他方、平成20年8月12日時点で保有していた被告株式がある場合には、先入先出法により、同月13日以降、これらの株式が始めに売却されたものとする。また、先入先出法による紐付けは、被告株式の取引が行われた勘定(ファ 8月12日時点で保有していた被告株式がある場合には、先入先出法により、同月13日以降、これらの株式が始めに売却されたものとする。また、先入先出法による紐付けは、被告株式の取引が行われた勘定(ファ ンド)ごとに行う。なお、これまでの裁判実務においても、請求対象株式の特定方法として先入先出法が合理的な手法と認められてきたものである。 b (i)- ①については、平成27年4月3日の終値512円と売却価格の差額が損害額となる。ただし、平成28年5月11日までに売却され ていない株式については、上記512円と同日の終値(220円)との差額である292円(1株当たり)が賠償されるべき損害額となる。 (i)- ②については、取得価格と売却価格の差額が損害額となる。平成28年5月11日までに売却されていない株式については、同様に、取得価格と同日の終値(220円)との差額が賠償されるべき損害額と なる。 (ii)については、平成27年11月12日の終値313円と売却価格の差額が損害額となる。ただし、平成28年5月11日までに売却されていない株式については、同日の終値(220円)との差額である93円(1株当たり)が賠償されるべき損害額となる。 主位的算出方法をまとめると、別紙13原告ら主張の損害額算定方法の 表1に記載のとおりとなる。 原告らの一部は、本件公表日後に被告株式を取得しているが、被告による虚偽記載に関する開示は、平成27年4月3日以降も段階的に小出しに行われており、当該小出しの開示に対してその都度市場が反応して株価が下落していることからも明らかなとおり、同日に虚偽記載の事実が全て開 示されたわけでも、同日の開示により投資家が2248億円(税引前)もの巨額の利益水増しを含む してその都度市場が反応して株価が下落していることからも明らかなとおり、同日に虚偽記載の事実が全て開 示されたわけでも、同日の開示により投資家が2248億円(税引前)もの巨額の利益水増しを含むその後の開示内容を認識し得たわけでもなく、その後も被告が小出しの情報開示を行い、被告株式の株価は、嵩上げされた状態が継続していた。そこで、平成27年4月4日以降に被告株式を取得した原告らについても損害賠償請求が認められるべきである。 平成27年4月3日以降の被告株価の推移や、比較対象となる株価の過去の動きを分析(回帰分析)し、それに基づき対象株式の株価の変動を予測する「マーケット・モデル」による試算等からすれば、被告株価の下落が原告ら主張の虚偽記載という被告固有の事情に起因することは明らかである。 ウ予備的算出方法 仮に、主位的算出方法が認められない場合も、原告らは、少なくとも、以下の計算式に算出された金額については損害賠償が認められるべきである。原告らには、被告株式を取引したことにより、取得価格との売却価格との差額(値下り)が現実の損害として生じているところ、被告株価の 値下りは、(i)‐①については、虚偽記載が発覚した平成27年4月3日までの株価の下落を除き、また、(ii)については、本件適時開示義務違反が発覚した同年11月12日までの株価の下落を除き、原告ら主張の虚偽記載及び本件適時開示義務違反等と相当因果関係のある損害に当たるからである。 a 原告らが平成20年8月13日以降に行った被告株式を各購入、売却 取引について先入先出法により紐付けを行う(なお、平成20年8月12日時点で原告らが保有していた被告株式がある場合には、先入先出法により、同月13日以降、これら た被告株式を各購入、売却 取引について先入先出法により紐付けを行う(なお、平成20年8月12日時点で原告らが保有していた被告株式がある場合には、先入先出法により、同月13日以降、これらの株式が始めに売却されたものとする。 また、先入先出法による紐付けは、被告株式の取引が行われた勘定(ファンド)ごとに行う。)。 b (i)- ①については、平成27年4月3日の終値(512円)と取得価格の低い方の金額と売却価格の差額が損害額となる。ただし、口頭弁論終結時において売却されていない株式については、上記低い方の金額と口頭弁論終結時における株価との差額が賠償されるべき損害額となる。 (i)- ②については、取得価格と売却価格の差額が損害額となる。口頭弁論終結時において売却されていない株式については、同様に、取得価格と口頭弁論終結時における株価との差額が賠償されるべき損害額となる。 (ii)については、平成27年11月12日の終値313円と取得価 格の低い方の金額と売却価格の差額が損害額となる。ただし、口頭弁論終結時において売却されていない株式については、上記低い方の金額と口頭弁論終結時における株価との差額が賠償されるべき損害額となる。 予備的算出方法をまとめると、別紙13原告ら主張の損害額算定方法の表2に記載のとおりとなる。 エ弁護士費用相当額の損害原告らは、海外の機関投資家であり、上記損害を回復するために、日本の弁護士である原告ら代理人に依頼して本件訴訟を提起することが必要になったものである。弁護士費用としては損害額の10%が相当である。 オ結論 以上の算定に基づく原告らの損害額は、別紙3第1事件請求額一覧表及び 別紙4第2事件請求額一覧表に ある。弁護士費用としては損害額の10%が相当である。 オ結論 以上の算定に基づく原告らの損害額は、別紙3第1事件請求額一覧表及び 別紙4第2事件請求額一覧表に記載のとおりである。 (被告の主張)原告らの主張する主位的算出方法及び予備的算出方法は、いずれも否認し争う。 ア損害の内容(高値取得損害に限られること) 原告らは、主位的算出方法及び予備的算出方法のいずれにおいても、虚偽記載等の発覚後における「発行会社の信用毀損、ろうばい売り等」により生じた株価の下落分が、賠償の対象となる損害に含まれることを主張する。しかし、原告らが請求できる損害は高値取得損害に限られる。すなわち、原告らは、「虚偽記載なければ取得なし」とはいえない投資者であり、「当該有価 証券を取得する」ことについての自己決定権の侵害はなく、「当該有価証券を適正な価格で取得する」ことについての自己決定権の侵害のみが存在し得る。したがって、当該投資者は、虚偽記載によって嵩上げされていた株式の価値に相当する額の金銭等の支出をしたこと(高値取得損害)が損害となる一方で、虚偽記載による信用毀損やろうばい売りによる株価下落は、会社の 事故や業績の悪化等による株価下落と同様に、株主が一般的にその地位に基づいて被る損失に他ならず、かかる株価下落は差額(損害)には含まれない。 また、投資家が株式を取得する以上、事故や業績の悪化等のみならず役職員の不正行為による株価下落のリスクをも負っており、これらは当該企業の所有者であるところの株主が、本来負担すべきものである。 イ株式の取得後にされた虚偽記載に起因する株価下落は損害賠償の対象ではないこと有価証券報告書等の虚偽記載に基づく損害賠償請求においては、株式の取得 、本来負担すべきものである。 イ株式の取得後にされた虚偽記載に起因する株価下落は損害賠償の対象ではないこと有価証券報告書等の虚偽記載に基づく損害賠償請求においては、株式の取得時点における重要な虚偽記載が違法行為を構成し得る一方で、取得後にされた虚偽記載は無関係であり、株式の取得後にされた虚偽記載に起因する株 価下落は損害賠償の対象ではない。 ウ平成27年4月3日から同年10月9日の株価下落は、原告ら主張の虚偽記載に起因する下落ではないこと被告株式の株価は、平成27年9月29日に底を打った後、同年10月9日にかけて急激に回復し、その後安定的に推移しており、このような実際の株価の推移からしても、遅くとも、本件訂正報告書を公表し、訂正の全容が 明らかとなった平成27年9月7日から約1か月後の同年10月9日までに、本件訂正報告書の公表による影響が株価に織り込まれたものと考えられる。すなわち、同日までに、原告ら主張の虚偽記載による株式の価値の嵩上げは解消されており、被告株式は嵩上げ額を含まない価格となっているものと評価することができる。したがって、平成27年10月9日より後の被告 株式の株価の下落には、原告ら主張の虚偽記載によって嵩上げされた株式の価値を解消するための株価下落は含まれない。そして、平成27年4月3日から同年10月9日までの被告株式の株価下落は、市況の悪化、とりわけ電機産業の事業環境の悪化による株価の下落がほとんどであり、原告ら主張の虚偽記載とは無関係な株価の下落である。また、仮に、原告ら主張の虚偽記 載に起因する株価の下落があったとしても、「重要な事項についての虚偽記載」に基づく下落額は小さく、虚偽記載と相当因果関係のある損害はほとんどないというべきである。 エ 原告ら主張の虚偽記 載に起因する株価の下落があったとしても、「重要な事項についての虚偽記載」に基づく下落額は小さく、虚偽記載と相当因果関係のある損害はほとんどないというべきである。 エ請求対象株式は、平成22年6月24日から平成27年4月3日までの間に取得され、同日の取引終了時において未処分であった被告株式に限られる こと有価証券報告書等の虚偽記載により損害が生ずる株主は、「重要な事項に関する虚偽記載」のある開示書類が公衆の縦覧に供された時点以降に株式を取得し、「重要な事項に関する虚偽記載」が存すること(又はそのおそれ)が公表された時点でその株式を保有している株主である。そうすると、請求対 象期間の始期については、第171期の有価証券報告書が提出された日の翌 日である平成22年6月24日以降に取得された株式に限られる。次に、請求対象期間の終期については、遅くとも、被告が本件公表(特別調査委員会の設置に関するお知らせ)をした平成27年4月3日である。平成27年4月4日以降に被告株式を取得した原告らは、その取得時点において、被告において過年度決算の修正が必要となり得ることを認識し、そのリスクを引き 受けた上で被告株式を取得したものである。したがって、実際に被告において過年度修正が必要となり、それに伴う株価の下落によって当該原告らが投資損失を被ったとしても、そのような損失のリスクは当該原告ら自身が負うべきものであって、原告ら主張の虚偽記載と相当因果関係のある損害ではない。 オ先入先出法ではなく、総平均法と同様の考え方により、請求対象株式を特定すべきこと原告らは、先入先出法によって取得価格と売却価格を算定している。しかし、株券が発行されず数量のみによって把握される振替株式制度の下におい 総平均法と同様の考え方により、請求対象株式を特定すべきこと原告らは、先入先出法によって取得価格と売却価格を算定している。しかし、株券が発行されず数量のみによって把握される振替株式制度の下においては、投資者がその取得と売却を繰り返したとしても、特定の株券と紐付け られた特定の株式が売買されるわけではなく、投資者の会社に対する持分割合が増減するのみである。このような抽象的な持分割合の一部が譲渡された際に、もともと有していた持分のどの部分が譲渡されたかを問うことは無意味であり、そもそも、特定の株券との紐付けがない以上、取得と処分の対応関係を特定することはできない。したがって、原告らの主張する先入先出法 は、振替株式の特性に全く適合せず、請求対象株式の特定方法として合理性がない。そこで、総平均法と同様の考え方により、請求対象株式を特定すべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(名義株主でない原告が有価証券を「取得した者」(金商法21条の2第1項) に該当するか) ⑴ 社債等振替法は、株式を発行する会社が現在の株主を把握し、株主の権利行使という集団的法律関係を画一的に処理することを可能とするため、振替株式についての権利の帰属は振替口座簿の記載又は記録により定まるものとし(社債等振替法128条1項)、振替口座簿上の名義人(加入者)がその口座に記録された振替株式についての権利を適法に有するものと推定すると規定する とともに(社債等振替法143条)、振替株式の譲渡においては、振替株式の流通性を確保するため、株券発行会社における株式譲渡についての株券の交付を効力発生要件と定める会社法128条1項に相当する実質を振替株式についても実現するため、当該株式に係る振替口座簿上の増加記録を譲渡の効力発生要件と定 券発行会社における株式譲渡についての株券の交付を効力発生要件と定める会社法128条1項に相当する実質を振替株式についても実現するため、当該株式に係る振替口座簿上の増加記録を譲渡の効力発生要件と定め(社債等振替法140条)、振替口座簿上の増加記録を受けていない 場合、株式譲渡の効力は発生しないこととしている。そうすると、振替株式の譲渡がされた場合、これに対応する振替口座簿上の増加記録を受けていない者が当該振替株式を取得したとの効力は生じず、当該譲渡について自己の振替口座簿に増加記録を受けた者こそが法的な効力をもって当該振替株式を取得するということになる。金商法21条の2第1項は、同項の適用対象となる者について、「有価証券を・・・取得し た者」と規定しており、この文言に照らすと、振替株式の譲渡に対応する振替口座簿上の増加記録を受けた者すなわち名義株主が、金商法2条2項により有価証券とみなされる有価証券表示権利を取得した者として、これに当たると解することが、社債等振替法の規律を踏まえた自然な文理解釈というべきである。 そして、金商法21条の2は、有価証券報告書等の虚偽記載等によって損害を被っ た投資家の保護の見地から、一般不法行為の規定の特則として、その立証責任を緩和した規定であり(最高裁平成22年(受)第755号~第759号同24年3月13日第三小法廷判決・民集66巻5号1957頁参照)、同条の適用範囲は安易に拡大すべきではない。 以上のことからすれば、自己の振替口座簿に増加記録を受けた名義株主が上記「取 得した者」に当たると解するのが相当である。 なお、原告らは、民法上の所有権の帰属と会社法や社債等振替法上の権利の帰属とは別であり、前者については非名義株主原告とカストディアンとの間の契約で定めるこ たると解するのが相当である。 なお、原告らは、民法上の所有権の帰属と会社法や社債等振替法上の権利の帰属とは別であり、前者については非名義株主原告とカストディアンとの間の契約で定めることができるから、被告株式についての法的権利(所有権)は非名義株主原告が取得したものといえる旨主張する。しかし、本件で問題となっている被告株式についての法的権利は、無体物である振替株式についての金商法上の所有権ないし金商法2条2 項の有価証券表示権利であって、その実体は会社法上の株主権と解されるところ、振替株式に関する上記社債等振替法の規律から離れて、有体物についての物権として観念される「民法上の所有権」に関する一般論により上記法的権利の帰属を決することができるものではない。非名義株主原告とカストディアンとの間の契約で定められる債権的権利が有価証券表示権利に当たらないことはもとより、仮に同契約において 「民法上の所有権」である「被告株式についての法的権利」が非名義株主原告に帰属する旨を定めたといったところで、振替株式に係る有価証券表示権利を非名義株主原告が取得できるものではない。原告らの上記主張は採用することができない。 ⑵ 以上によれば、原告らのうち、本件に関して自己名義で被告株式を取得していない者(非名義株主原告)は、自己の振替口座簿に増加記録を受けた名義株主では ないから、上記「取得した者」には当たらず、非名義株主原告による金商法21条の2第1項に基づく損害賠償請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がない。 2 争点2(名義株主でない原告が不法行為に基づく損害賠償請求権を有するか)⑴ 上述のとおり、社債等振替法は、振替口座簿上の名義人(加入者)がその口座に記録された振替株式についての権利を適法に有するものと推定し、振替 でない原告が不法行為に基づく損害賠償請求権を有するか)⑴ 上述のとおり、社債等振替法は、振替口座簿上の名義人(加入者)がその口座に記録された振替株式についての権利を適法に有するものと推定し、振替口 座簿の増加記録を受けていない場合、株式譲渡の効力は発生しないことを定めているから、市場で購入された振替株式である被告株式の法的な所有者(金商法上の「所有者」の意。株主権を有する者)は、名義株主であって、その背後にいる実質的な投資家である非名義株主原告ではないというべきであり、それにもかかわらず本件において非名義株主原告を被告株式の法的な所有者とすべき特 段の事情は認められない。すなわち、本件において、振替株式である被告株式 の譲渡人から当該株式を購入取得したのは、名義株主であって、非名義株主原告ではないというべきである。 したがって、振替株式の価値の毀損が生じたことによって直接的に損害を被るのはあくまでその所有者である(株主権を有する)名義株主である。そもそも、非名義株主原告と名義株主との契約関係が信託であれば(本件ではその可能性を排斥し切れ ていない。)、被告に対して損害賠償請求権を行使し得る権利者が受託者である名義株主であることは明らかである(信託の受益者である非名義株主原告は、信託スキームの内部関係において名義株主に対する請求をすることができるにすぎない。)が、非名義株主原告と名義株主との契約関係が信託でない場合であっても、名義株主が株主権を有し、上記(直接的な)損害についての被告に対する損害賠償請求権を有する のであって、本件において名義株主に帰属する同じ債権が非名義株主原告にも帰属するとする法的根拠は見いだせない。そして、非名義株主原告において、直接の被害者である名義株主には生じない独自の損害( のであって、本件において名義株主に帰属する同じ債権が非名義株主原告にも帰属するとする法的根拠は見いだせない。そして、非名義株主原告において、直接の被害者である名義株主には生じない独自の損害(いわゆる間接損害)が発生したとはうかがわれない。もとより非名義株主原告は、株主権を有せず、名義株主に対する債権を有するのみであるところ、上記のとおり被告の行為により直接損害を被ったのは名義株 主であり、非名義株主原告主張の損害はそれと同じ損害であり独自の損害ではないこと、本件における被告による侵害態様や、被告が非名義株主原告の名義株主に対する債権を害する故意を有していたとは認められないこと、社債等振替法を含む会社法の秩序等を併せ考慮すると、被告が非名義株主原告の債権を侵害する不法行為をしたと認めることもできない。 なお、このように解しても、名義株主が非名義株主原告の指示等を受けて被告に対して損害賠償請求権を自ら行使したり、(それが現在のカストディ契約の実務上現実的でないというのであれば)非名義株主原告が名義株主から当該債権の譲渡を受けたりすることは可能であり(本件において、たとえ非名義株主原告が、自らが「実質株主」として損害賠償請求権を有するとの見解を抱いていたとしても、本論点に係る法 的リスクがあることは明らかであった以上、その法的リスクへの対応として、消滅時 効が完成する前に訴えを提起するに当たり、自身の上記見解からは「念のため」という位置付けになるが、上記のような債権譲渡を受けておくといった対処をとることは可能であった。)、本件においてそのことが困難であったことをうかがわせる事情は認められないから、非名義株主原告の権利保護に欠けるところはない。 よって、非名義株主原告による不法行為に基づく損害賠償請求は認め った。)、本件においてそのことが困難であったことをうかがわせる事情は認められないから、非名義株主原告の権利保護に欠けるところはない。 よって、非名義株主原告による不法行為に基づく損害賠償請求は認められない。 アこれに対し、原告らは、機関投資家として、グローバル・カストディアン(銀行)を選定し、グローバル・カストディアンにおいて、日本国内に所在する金融機関(銀行)をサブ・カストディアンとして選定し、名義株主はサブ・カストディアン又はその指定する名称(いわゆるノミニー名義)として、機関投資家本人から署名や委任状を得ることなく円滑かつ迅速に大量の取引やこれに伴う事務処理を行うことと したものであり、非名義株主原告は自らの資金と投資判断により、サブ・カストディアン又はノミニー名義で被告株式を取得しており、非名義株主原告は被告株式の実質株主であって、被告株式から生ずる全ての損益は非名義株主原告に帰属し、権利又は法律上保護された利益を侵害されたのは非名義株主原告である(名義株主であるカストディアンは、非名義株主原告の投資判断により行われた投資の決済業務 を行っているにすぎない。株式の売買について何ら判断を行っていないカストディアンには自己決定権の侵害は生じておらず、被告株式の取得に係る自己決定権の侵害は非名義株主原告に生じている。)から、非名義株主原告の被告に対する損害賠償請求を認めるべきである旨主張する。この点に関連して、原告らは、株主の認定については、一般私法上の法律行為の場合と同じく、真に契約の当事者とし て申込みをした者が社員としての権利を取得し、義務を負担するものと解すべきであるから、他人の承諾を得てその名義を用い出資払込みをした場合においては、名義人すなわち名義貸与者ではなく、実質上の出資払込人すなわち名義 が社員としての権利を取得し、義務を負担するものと解すべきであるから、他人の承諾を得てその名義を用い出資払込みをした場合においては、名義人すなわち名義貸与者ではなく、実質上の出資払込人すなわち名義借用者がその株主となる(最高裁昭和42年(オ)第231号同年11月17日第二小法廷判決・民集21巻9号2448頁参照)と主張する。 しかし、前述のとおり、社債等振替法は、振替口座簿上の増加記録を受けて いない場合、株式譲渡の効力は発生しないことを定めており、本件において非名義株主原告を被告株式の所有者とする特段の事情は認められない。原告らによっても、非名義株主原告ではなく名義株主が被告に対して剰余金配当請求や議決権行使を行うことになるのであって、株主権を有するのは名義株主であるというほかない(名義株主は、単なる名義貸しをしているわけではなく、会社法上の権利が 現に帰属し、実質株主の指図等を受けるにせよ現実にその法的権利を行使するのであるから、決して単なる「名ばかり」の株主ということはできないし、「決済業務」のみを行うというわけでもない。)から、株主権に係る損害賠償請求権(株主権を高値で取得させられたことによる損害ないし取得した株主権の価値が下落した損害の賠償請求権)は、名義株主に帰属すると解するのが自然である。この点に関し 更に敷衍すると、上記のとおり名義株主が株主権及びこれに係る上記損害賠償請求権を有することは疑いがないところ、同一の損害について同時に複数の者が上記の損害賠償請求権を有し、これらが連帯債権になるなどといった法律上の根拠を本件において見いだすことはできないから、非名義株主原告が名義株主と共に上記損害賠償請求権を有するという事態は法的に想定し難いものといわざるを得ない。なお、 原告らは、「自己決 法律上の根拠を本件において見いだすことはできないから、非名義株主原告が名義株主と共に上記損害賠償請求権を有するという事態は法的に想定し難いものといわざるを得ない。なお、 原告らは、「自己決定権」の侵害が生じているのは投資判断をした非名義株主原告であることから、本件の損害賠償請求権が非名義株主原告に帰属する旨をも主張するが、本件の損害賠償請求は、株式を高値(嵩上げされた価格)で取得させられた損害及び取得した株式の株価が下落した損害の賠償を請求するものであって、本件で認めるべき被侵害利益(民法709条の「権利又は法律上保護される利益」)は 財産権とみるのが相当であり、機関投資家がカストディアンを通じて業として株式投資を行っている中で生じた本件のような純然たる経済的事案において人格権の一内容である「自己決定権」の侵害による損害賠償請求権を認めることは困難であるし、いずれにせよ、本件において株式を取得した者は既述のとおり名義株主であり、それに係る損害(株式を高値で取得させられた損害及び取得した株式の株価が 下落した損害)が帰属するのは名義株主であって非名義株主原告ではないから、本 件の損害賠償請求権は非名義株主原告に帰属するものではないというべきである。 また、原告らは、被告株式から生ずる損益が非名義株主原告に帰属することを強調するが、信託の場合を想起すれば明らかなように、損害賠償請求権等の法的な権利義務の帰属主体と経済的な損益の(最終的な)帰属主体とが一致するとは限らない。 加えて、株式購入資金の拠出者の認定自体容易ではないし、また、非名義株主原告と名義株主との個々の法律関係は証拠上必ずしも明らかでないことなどからすれば、仮に非名義株主原告が株式取得の資金を拠出していたとしても、そのことをもって直ちに 体容易ではないし、また、非名義株主原告と名義株主との個々の法律関係は証拠上必ずしも明らかでないことなどからすれば、仮に非名義株主原告が株式取得の資金を拠出していたとしても、そのことをもって直ちに非名義株主原告が不法行為に基づく損害賠償請求権を行使することができるとはいえない。 以上によれば、原告らの上記主張は採用することができない。なお、原告らが引用する上記判例は、株式の引受けの場面における実質上の引受人を株主と認定したものであって、振替株式の譲渡における株主の認定が問題となっている本件には適切でない。 イ次に、原告らは、損害賠償請求の場面においては、集団的法律関係の画一的処理 の要請は働かず、株主名簿の記載は重要性を有しない旨主張する。 しかし、①原告らは、信託契約を締結した場合については、名義株主であるカストディアンが原告となって損害賠償請求をし、他方、委任契約と寄託契約の双方の性格を有する契約を締結した場合については、カストディアン(名義株主)ではなく実質株主が原告となって損害賠償請求をしていると説明するが、これらの契約の 解釈をめぐって争われており、被告にとって、名義株主が損害賠償請求権者になる場合と原告らの主張する実質株主が損害賠償請求権者になる場合との峻別は困難であって、二重払いのリスクがあること、②被告株式の取引数及び株主数は膨大であり、かつ、機関投資家とカストディアンとの法律関係は多様であって、国際的な株式投資で用いられる重層的な投資スキームにおいては、株主としての実質的な 権能(資産の管理、投資運用の判断、議決権行使の判断等)が分属している ものや収益の分配が複雑なものが含まれる上、機関投資家の背後には資金を拠出した投資家が更に存在すること、資金の出捐や資金の流れについては無 資運用の判断、議決権行使の判断等)が分属している ものや収益の分配が複雑なものが含まれる上、機関投資家の背後には資金を拠出した投資家が更に存在すること、資金の出捐や資金の流れについては無数のパターンがあり得ることなどからして、原告らの主張する実質株主の判断(資金の出捐をした者や投資判断をした者が誰かという判断を含む。)を的確に行うことは著しく困難であり、基準として機能し難いこと(そのような著しく困難な判断を仮に的確 に行い切るとすれば、全体として多大なコストを生じさせることになろう。なお、仮に、資金の出捐をした者や投資判断をした者という観点から「実質株主」である損害賠償請求権者を判断するという見解を採った場合には、原告らが念頭に置いている典型的なカストディアンのケースに限らず、広く資金の出捐や投資判断をした「実質株主」による損害賠償請求を認めるということになりかねず、そうなると、 発行会社にとって、ますます名義株主が損害賠償請求者であるか否かの判断の困難性及びそのコストが増大することとなる。)、③本件訴訟においても原告の数は多数に上るほか、実際に被告に対して本件類似の訴訟は多数提起されていること(顕著な事実)を総合すると、本件のような上場会社の有価証券報告書等の虚偽記載による高値取得損害等の賠償請求のケースにおいて、会社法の秩序に沿った集団的法 律関係の画一的処理の要請が実質的に認められることは明らかであり(これを軽視すると、収拾が付かずに混乱する事態が生じたり、社会経済的に膨大なコストを生じさせたりするおそれがあり、かえって効率的な被害者救済を妨げるおそれがある。)、原告らの上記主張は採用することができない。むしろ、以上の諸点に照らすと、こうしたケースにおいては、実質的にみても、名義株主か否かによって損害 、かえって効率的な被害者救済を妨げるおそれがある。)、原告らの上記主張は採用することができない。むしろ、以上の諸点に照らすと、こうしたケースにおいては、実質的にみても、名義株主か否かによって損害 賠償請求権者か否かを判断することに合理性があるといえる。 なお、原告らは、本件において虚偽記載分に係る損害賠償請求権は既に時効期間が経過しており、名義株主が損害賠償請求をする可能性はないから、二重払いの危険がないとも主張しているが、上記損害賠償請求権者の判定に係る問題は、まずは時効完成前の段階で問題となるところ、その段階で集団的法律関係の画一的処理の 要請について上記説示した内容が妥当することは明らかであり、本件において時効 期間を徒過したからといって、損害賠償請求権の帰属について時効完成前におけるのと別異に解することはできないから、原告らの上記主張は採用することができない。 ウさらに、原告らは、カストディ契約の顧客である投資家は、カストディアンが倒産した場合において倒産隔離による利益を享受する立場にあるから、この点を考慮 すれば、投資家である非名義株主原告には、本件で各原告が主張する損害賠償請求に関し、私法上保護されるべき利益又は法律上保護される利益の損害が生ずると解すべきである旨主張する。 しかし、カストディアンの資産について投資家と一般債権者との利害調整が問題となる倒産隔離の場面と、投資家の判断を誤らせることによって生じた損失につい て発行会社に対して損害賠償請求をする場面とでは、利益状況が異なり、直ちには同列に論じられない。すなわち、カストディアンが倒産した場合においては、倒産者の限られた財産を利害関係者間で公平に分配すべき要請が働くため、分別管理されている振替株式につき、当該カストディアンの一般 同列に論じられない。すなわち、カストディアンが倒産した場合においては、倒産者の限られた財産を利害関係者間で公平に分配すべき要請が働くため、分別管理されている振替株式につき、当該カストディアンの一般債権者の引当てとせずに投資家に帰属させる権利処理に合理性があるとしても、そのような状況にない通常の場 面において、発行会社に対する振替株式に係る損害賠償請求権の帰属主体が、名義株主であるカストディアンではなく投資家であると解する必要があるものではない。また、投資家の利益保護の点については、投資家の上記損失は、カストディアンを通じて発行会社に対して損害賠償請求を行うことや、投資家がカストディアンから損害賠償請求権の譲渡を受けて請求することなどによって補塡することが可 能であると解されるから、投資家である非名義株主原告を被告株式の法的所有者として評価して損害賠償請求を肯定すべき特段の事情は見いだし難い。さらに、発行会社に対する損害賠償請求の場面では、上記イのとおり、二重払いのリスクやその防止のためのコストの問題を看過することができない。これらの諸点に照らせば、倒産隔離の観点から、本件における非名義株主原告の被告に対する不法行為に基づ く損害賠償請求を肯定することはできない。 エその余の原告らの主張も以上の判断を左右するに足りず、非名義株主原告の不法行為に基づく損害賠償請求の可否に関する原告らの主張はいずれも採用することができない。 3 争点3(名義株主該当性)⑴ 実質的に争いのある名義株主の範囲 原告らは、原告らのうち、本件に関して自己名義で被告株式を取得したのは、第2事件原告2、第2事件原告17、第2事件原告27、第2事件原告42、第2事件原告59、第2事件原告60、第2事件原告62及び第2事 は、原告らのうち、本件に関して自己名義で被告株式を取得したのは、第2事件原告2、第2事件原告17、第2事件原告27、第2事件原告42、第2事件原告59、第2事件原告60、第2事件原告62及び第2事件原告67(合計8名)であると主張する。 この点に関し、被告は、上記8名のうち、第2事件原告42、第2事件原告 59、第2事件原告60、第2事件原告62及び第2事件原告67(合計5名)が本件に関してそれぞれ自己名義で被告株式を取得したことを積極的には争っておらず、上記5名は、本件に関していずれも自己名義で被告株式を取得したと認められる。他方、第2事件原告27(ステート・ストリート・バンク・アンド・トラスト・カンパニー)は、被告株式の取得を自己名義ではなく、「Mi zuhoBank」名義で行っていることが認められ(弁論の全趣旨)、自己名義で被告株式を取得したとはいえないことは明らかである。そこで、以下、第2事件原告2及び第2事件原告17が本件に関してそれぞれ自己名義で被告株式を取得したといえるかを検討する。 ⑵ 第2事件原告2について 原告らは、第2事件原告2(ザバンクオブニューヨークメロン)について、「THEBANKOFNEWYORK 132561」との名義を平成21年3月9日から平成29年7月31日まで使用しており、本件に関する取引も当該名義で行ったと主張する。 しかし、被告は、株主名簿管理人から取得した株主名と照合した結果、「TH EBANKOFNEWYORK 132561」との名義は、直近時 点では存在したものの、平成21年3月9日から平成29年7月31日までの間に登録された履歴は発見されておらず、直近時点で存在した上記名義人の株主名義上の住所は、原告らの主張する住所 近時 点では存在したものの、平成21年3月9日から平成29年7月31日までの間に登録された履歴は発見されておらず、直近時点で存在した上記名義人の株主名義上の住所は、原告らの主張する住所と異なると述べていること(弁論の全趣旨)に照らせば、第2事件原告2が本件に関して自己名義で被告株式を取得したとは直ちには認められないところ、これを認めるに足りる証拠はない。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 ⑶ 第2事件原告17について原告らは、第2事件原告17(ステートストリートトラストカンパニーカナダ)について、「OM02 STATESTREET 808424CLIENTOMNI」との架空名義(実在しない法人の名義)で本件に関 して被告株式を取得しており、当該名義人は第2事件原告17を指すと主張する。 しかし、①第2事件原告17と上記名義人とは名称及び住所(前者の住所は(住所省略)であり、後者の住所は(住所省略)である。)が一致していないこと(弁論の全趣旨)、②上記名義人の口座は、第2事件原告17の関連会社(米 国法人である「StateStreetBankandTrustCompany」)が開設しており(弁論の全趣旨)、同社において被告株式が取得された可能性が排斥できないことに照らせば、第2事件原告17が上記名義人の住所は自らが米国内で通常連絡先としている住所であると陳述していること(甲A147)を考慮しても、第2事件原告17が本件に関する取引において 自己名義(自己のことを指す名義)で被告株式を取得したとは認めるに足りない。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 ⑷ 結論以上によれば、原告らのうち、本件に関して自己名義で被 自己のことを指す名義)で被告株式を取得したとは認めるに足りない。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 ⑷ 結論以上によれば、原告らのうち、本件に関して自己名義で被告株式を取得した のは、第2事件原告42、第2事件原告59、第2事件原告60、第2事件原 告62及び第2事件原告67の5名であると認められる(以下、この5名の原告を「本件名義株主原告ら」という。)。そして、本件名義株主原告らは、別冊3の各原告の取引履歴において、それぞれ、「取引日」欄記載の年月日において、「勘定名」欄記載のファンド名において、「1株当りの取引価格」欄記載の価格(円)で、「購入」欄記載の数量の被告株式を購入し、「1株当りの取引価 格」欄記載の価格(円)で、「売却」欄記載の数量の被告株式を売却したと認められる(甲C1-42、甲C1-59、甲C1-60、甲C1-62、甲C1-67、弁論の全趣旨)。本件名義株主原告ら以外の原告らの請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がないから、以下の争点は、本件名義株主原告らについてのみ論ずる。 4 争点4(有価証券報告書等の虚偽記載による不法行為責任等の成否)⑴ 有価証券報告書等の虚偽記載による不法行為責任の成否金商法の規定に基づき提出される財務計算に関する書類は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従って作成しなければならないとされている(金商法193条、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則1条 1項等参照)。このことに照らせば、有価証券報告書等の記載が、不法行為責任が成立し得る虚偽記載であるか否かや、金商法21条の2第1項にいう「虚偽の記載」に該当するか否かは、投資者の投資判断及び市場における当該有価証券の価格形成に重要な影響を与 書等の記載が、不法行為責任が成立し得る虚偽記載であるか否かや、金商法21条の2第1項にいう「虚偽の記載」に該当するか否かは、投資者の投資判断及び市場における当該有価証券の価格形成に重要な影響を与える事項について、当該記載が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に違反した会計処理によってされたか否かに基 づき判断すべきである。 ⑵ 重要な事項についての虚偽記載の範囲被告は、別紙12被告試算の訂正額等一覧表の記載に沿って、訂正前後の有価証券報告書等の連結財務諸表における当期純損益について、組替え(以下の「組替え」を指す。)と減損損失の追加計上(以下の「減損」を指す。)を除い た以下の各差額部分は、重要な事項についての虚偽記載に該当することを認め ている(別紙6の「⑧減損損失の追加計上控除後」欄参照)。 ① 第171期:マイナス288億9000万円(訂正額マイナス342億円-減損マイナス53億1000万円=マイナス288億9000万円)② 第173期:マイナス318億6000万円 (訂正額マイナス705億1100万円-減損マイナス350億円-組替えマイナス36億5100万円=マイナス318億6000万円)③ 第174期:マイナス478億4800万円(訂正額マイナス641億0800万円-減損マイナス160億9300万円-組替えマイナス1億6700万円=マイナス478億4800万円) そして、被告において本件訂正報告書を提出する際の修正に影響を与えたものは、工事進行基準に係る会計処理に係る修正等であり(前提事実⑸)、被告は、本件調査報告書で指摘された①工事進行基準適用案件に係る会計処理、②映像事業における経費計上等に係る会計処理、③PC事業における部品取引等に係る会計処理及び④半導体事業 あり(前提事実⑸)、被告は、本件調査報告書で指摘された①工事進行基準適用案件に係る会計処理、②映像事業における経費計上等に係る会計処理、③PC事業における部品取引等に係る会計処理及び④半導体事業における在庫の評価に係る会計処理の会計 処理上の違法性(別紙7参照)を積極的に争っておらず、これに加え、被告自らが行った⑤自主チェック等(自主チェックに別紙9表1の「その他」及び派生影響等を含む内容)に係る項目について会計処理上違法であることも積極的には争っていないこと(別紙9表2参照)からすれば、工事進行基準適用案件において見積もることが可能であった損失額に対応する引当金を計上しなかったなどの被告 の会計処理は、米国会計基準に違反する違法なものであったと推定するのが相当である。そうすると、本件有価証券報告書等のうち、少なくとも、第171期、第173期及び第174期の当期純損益のうち、第171期のマイナス288億9000万円、第173期のマイナス318億6000万円、第174期のマイナス478億4800万円の各部分(以下、これらの部分を併せて「本 件虚偽記載部分」という。)に関しては、一般に公正妥当と認められる企業会 計の基準に違反した会計処理に基づきされたものであると推認され、この推認を覆すに足りる証拠はないというべきである。そして、当期純損益は、投資者の投資判断及び市場における当該有価証券の価格形成に重要な影響を与える事項であり、別紙6の「④訂正前」欄及び「⑧減損損失の追加計上控除後」欄記載のとおり、その額が多額で虚偽記載が占める割合が大きいことに照らして も、本件有価証券報告書等のうち本件虚偽記載部分は、重要な事項についての虚偽記載があると認めるのが相当である。他方、本件有価証券報告書等のうち本件虚偽記 記載が占める割合が大きいことに照らして も、本件有価証券報告書等のうち本件虚偽記載部分は、重要な事項についての虚偽記載があると認めるのが相当である。他方、本件有価証券報告書等のうち本件虚偽記載部分以外の部分について、重要な事項についての虚偽記載があると認めるに足りる証拠はない。原告らは、当期純損益以外の項目について重要な虚偽記載があったと主張するが、それらの点に会計処理の違法性があったこ とを的確に裏付ける証拠はなく、採用することができない。 したがって、本件虚偽記載部分のみ、重要な事項についての虚偽記載があると認められ、不法行為上違法であるといえる。 ⑶ 虚偽記載の範囲と損害額との関係なお、重要な事項についての虚偽記載の範囲が、本件虚偽記載部分にとどま るからといって、①本件虚偽記載部分の内容は、投資家が最も着目する当期純損益についてのものであり、その訂正額や割合に照らしても、本件訂正報告書の最重要部分に当たるといえること、②売上高、売上原価、販管費等の損益計算書上の数値は、当期純損益を計算する上で考慮されていること、③後述のとおり、高値取得損害を考慮した損害額の厳密な認定は極めて困難であり、民訴 法248条を適用して相当な損害額を認定することになること及び後記7で認定する損害額の内容に照らせば、原告らの主張する本件有価証券報告書等の訂正内容が全て重要な虚偽記載に当たるとした場合と上記認定のとおり本件虚偽記載部分のみが重要な虚偽記載に当たるとした場合とで、損害額の認定に差異は生じないというべきである。 ⑷ 原告らの主張について アこれに対し、原告らは、本件有価証券報告書等のうち本件訂正報告書等により訂正された箇所の全部が重要な事項についての虚偽記載であり、そのうち、主要な虚偽記 ⑷ 原告らの主張について アこれに対し、原告らは、本件有価証券報告書等のうち本件訂正報告書等により訂正された箇所の全部が重要な事項についての虚偽記載であり、そのうち、主要な虚偽記載として主張するのは別紙11記載のとおりであって、①本件調査報告書は、本件有価証券報告書等の重要な事項について不適切な会計処理が存在し、それに基づき有価証券報告書等の「当期純損益」等の数値 に誤った記載がされたことを明らかにしている、②本件有価証券報告書等の訂正は、虚偽の記載が存在することを理由に行われたものであるから、本件有価証券報告書等のうち被告による訂正前後で記載が異なる箇所は全て虚偽記載である、③本件有価証券報告書等の「当期純損益」の訂正のうち、組替え部分と減損損失の追加計上部分も虚偽記載に当たる旨主張する。 イしかし、上記ア①に関しては、第一に、第172期及び第175期の各有価証券報告書の訂正額から、虚偽記載に当たらない減損損失追加計上分を控除すると、その残額は第172期が266億4200万円、第175期が190億9900万円となり、いずれも当期純利益を増加させるものである(別紙6の「⑧減損損失の追加計上控除後」欄参照)。このように利益を過少 に記載していたとされる場合には、株式の取得者に虚偽記載と相当因果関係のある損害が生ずるとは認め難い。そうすると、上記の当期純利益を増加させる訂正部分については、被告株式を取得した者との関係では、重要な事項についての虚偽記載に当たらないと解するのが相当である。したがって、第172期及び第175期の各有価証券報告書の当期純損益について、仮に虚 偽記載が存在するとしても、それが重要な事項についての虚偽記載に該当するとは認められない。 また、第170期については、当期純損 及び第175期の各有価証券報告書の当期純損益について、仮に虚 偽記載が存在するとしても、それが重要な事項についての虚偽記載に該当するとは認められない。 また、第170期については、当期純損失が3435億5900万円と多額であるのに対し、訂正後は3988億7800万円であり、訂正率が約16%にとどまり、純損失額が3435億5900万円か3988億7800 万円かによって、投資者の被告株式への投資判断が重大な影響を受けるとは 考え難い。さらに、後述するとおり、上記訂正額のうち、減損損失の追加計上による影響額は虚偽記載による訂正には該当しないところ、減損損失の追加計上の当期純損益への影響額(247億6800万円)を控除した訂正額は約306億円であり、訂正前の数値からの訂正比率は約9%にとどまるから(当期純損益について別紙6の「④訂正前」欄及び「⑧減損損失の追加計 上控除後」欄参照)、投資者の被告株式への投資判断に対する影響が軽微であることは一層明らかであって、重要な事項についての虚偽記載は存在しない。 第二に、別紙8記載のとおり、本件調査報告書は、第170期から第176期第3四半期までの「売上高」及び「税引前当期純損益」につき修正が必 要と指摘しているが、それ以外の項目(「当期純損益」、「株主資本」、「純資産」、「総資産」等)の修正には言及していない。また、原告らは、本件調査報告書で指摘された「不適切な会計処理」及びそれによる要修正額が、当期純利益以外の項目のうち、どの項目にいくらの増減を生ずるのかについて具体的な立証をしていない。したがって、本件調査報告書の存在をもって、直 ちに原告らの主張する重要な事項についての虚偽記載が存在するとはいえない。 第三に、本件調査報告書において修正が必要と 体的な立証をしていない。したがって、本件調査報告書の存在をもって、直 ちに原告らの主張する重要な事項についての虚偽記載が存在するとはいえない。 第三に、本件調査報告書において修正が必要とされた売上高(別紙8参照)は、平成24年度が最大で858億円であるが、同年度の被告の訂正前の有価証券報告書における売上高は約5兆8000億円であり(別紙6参照)、 その占める割合(約1.4%)は小さいから、重要な事項についての虚偽記載があるとは直ちにはいえない。 第四に、仮に本件調査報告書における税引前当期純損益の要修正額が本件有価証券報告書等に反映されたとしても、それにより投資者の投資判断及び市場における被告株式の価格形成に重要な影響を与えると認めるに足りる 証拠はない。 以上の検討によれば、本件調査報告書の記載から、本件有価証券報告書等において、当事者間に争いのある範囲に関して重要な事項についての虚偽記載の存在を直ちに導くことはできず、原告らの主張は採用することができない。 ウ上記ア②に関しては、金商法は、有価証券報告書の提出者が当該報告書及 びその添付書類のうちに訂正を必要とするものがあると認めたときは、自発的な訂正が可能である旨を定めており(24条の2第1項、7条1項)、被告が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に違反するとはいえなくても、より保守的な会計処理に基づき記載を訂正した可能性が排斥できないことからすれば、訂正がされたことをもって直ちに虚偽の記載があったと断ず ることはできない。 エ上記ア③に関しては、以下の組替えと減損損失の追加計上は、虚偽記載に当たるとはいえない。 組替え被告において、①携帯電話事業及び光学ドライブ事業は、第171期の 有価証券報告書の提出時 上記ア③に関しては、以下の組替えと減損損失の追加計上は、虚偽記載に当たるとはいえない。 組替え被告において、①携帯電話事業及び光学ドライブ事業は、第171期の 有価証券報告書の提出時点においては非継続事業ではなかったが、携帯電話事業が第172期に、光学ドライブ事業が第175期に、それぞれ非継続事業となり、これらに伴う非継続事業に関する組替えがされたこと、②第173期中に買収したランディス・ギア社及び第174期中に買収したIBM社のリテール・ストア・ソリューション事業について、各買収の翌 期の財務諸表にPPAの手続を反映させるとともに、各買収の当期の財務諸表を遡及的に組み替えて表示し、これらに伴う事業買収に関する組替えがされたことが認められる(前提事実⑵イ、弁論の全趣旨)。 また、本件訂正報告書が提出される以前に、第175期有価証券報告書において、第171期から第174期までの組替えに係る訂正が行われて いる (乙7、顕著な事実、弁論の全趣旨)。 これらのことに照らせば、非継続事業に関する組替えと事業買収に関する組替えが虚偽記載に当たるとは認められない。 減損損失の追加計上米国会計基準においては、減損の兆候が把握された長期性資産について、当該資産の帳簿価額が回収不能(割引前の将来キャッシュフローの総額が 帳簿価額を下回ること)であり、かつ、公正価値を上回る(帳簿価額が割引後将来キャッシュフローを上回る)ことが明らかになった場合に減損損失を認識しなければならないとされている。 この点に関し、被告は、当初の本件有価証券報告書等の作成時には減損の兆候が把握されず、帳簿価額が回収不能とは認められなかった旨主張し、 これに沿って、被告の経理担当従業員である森本朋雄は、米国会計基準で認め 告は、当初の本件有価証券報告書等の作成時には減損の兆候が把握されず、帳簿価額が回収不能とは認められなかった旨主張し、 これに沿って、被告の経理担当従業員である森本朋雄は、米国会計基準で認められる範囲内で可能な限り簡便かつ保守的に見積もったことにより上記訂正を行った旨の供述をする(乙34・21~22頁)。そうすると、上記減損損失追加計上分が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に違反した会計処理によるものとして虚偽記載に該当するためには、上記 の当初の本件有価証券報告書等の作成時におけるキャッシュフローの見積りが不合理であり、当時の本来のキャッシュフロー見積りの合計額が帳簿価額を下回っていたと認められる必要があるが、原告らはこの点につき的確な立証をしない。そのため、被告が減損損失を計上していなかったことが一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に違反した会計処理で あったと認めるに足りる証拠はなく、本件有価証券報告書等の「当期純損益」の訂正のうち、減損損失追加計上に関する訂正(実効税率を控除後の数値は、別紙12の⑥欄記載のとおりである。)は虚偽記載に当たるとは認められない。 オ以上によれば、原告らの上記アの主張は、本件虚偽記載部分以外について は、いずれも採用することができない。 ⑸ 被告の不法行為責任の成否被告の代表取締役社長や事業グループ担当執行役といった経営トップらが、不適正な会計処理が多くのカンパニーにおいて同時並行的かつ組織的に実行又は継続されていたことについて、これに関与したか、少なくともその継続を認識し得たのに、中止又は是正を指示しなかったこと、幹部職員等の担当者も、 経営トップらが有している見かけ上の当期利益の嵩上げという目的の下で、不適切な会計処理を実行し又は継続し ともその継続を認識し得たのに、中止又は是正を指示しなかったこと、幹部職員等の担当者も、 経営トップらが有している見かけ上の当期利益の嵩上げという目的の下で、不適切な会計処理を実行し又は継続したことが、本件虚偽記載部分に係る不適切な会計処理の原因となったと認められる(甲23、弁論の全趣旨)。このことに照らせば、被告の組織体としての行動として、不適切な会計処理が行われてきたとみることができ、その結果、本件虚偽記載部分を含む本件有価証券報告書 等が提出され、投資者の財産権という重要な法益が侵害されたものであり、かつ、少なくとも上述した者のいずれかに過失があるということができる。 そうすると、法人としての被告は、有価証券報告書等の提出に当たり、その重要な事項について虚偽記載がないように配慮すべき注意義務を怠ったものとして、本件名義株主原告らに対して民法709条に基づく損害賠償責任を負 うというべきである。 ⑹ 補足後記5、6のとおり、内部統制報告書の記載内容や適時開示義務違反等を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求は認められない。 また、被告に対する金商法21条の2に基づく請求は、除斥期間の制限があ り、弁護士費用を損害として主張することも認められないと解されるため、その認容額は、これと選択的併合の関係にある不法行為に基づく請求についての認容額を超えないというべきであるから、金商法21条の2に基づく請求は検討を要しない。 そこで、争点7(損害額)については、後記7のとおり、有価証券報告書等 の虚偽記載による不法行為によって生ずる損害額のみを論ずる。 5 争点5(内部統制報告書の虚偽記載による不法行為責任等の成否)⑴ 原告らの主張原告らは、被告が本件内部統制報告書において、内部統制が有効 行為によって生ずる損害額のみを論ずる。 5 争点5(内部統制報告書の虚偽記載による不法行為責任等の成否)⑴ 原告らの主張原告らは、被告が本件内部統制報告書において、内部統制が有効である旨を記載している点をもって、重要な事項についての虚偽記載に該当し、これによって被告株式の株価が下落した旨主張する。 ⑵ 検討被告は、第170期から第176期までの各内部統制報告書の「評価結果に関する事項」において「上記の評価の結果、当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効であると判断しました。」と記載していたことが認められる(前提事実⑻ア)。しかし、内部統制報告書において、内部 統制に不備がない旨の記載がされたとしても、同記載を投資家は殊更重視しているとはいえず、それによって株式の価格形成に影響があるとは認められない。 したがって、いずれにせよ、内部統制報告書の虚偽記載によって、被告株式の株価下落について、相当因果関係のある損害が発生したとは認められず、原告らの上記⑴の主張は採用することができない。 ⑶ 結論以上によれば、本件内部統制報告書の虚偽記載を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求及び金商法21条の2第1項に基づく損害賠償請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がない。 6 争点6(適時開示義務違反による不法行為責任の成否) ⑴ 原告らの主張原告らは、WECグループで減損計上をした平成25年夏頃には、被告は当該減損計上の事実を開示すべきであったにもかかわらず、WECに関する本件報道がされた日(平成27年11月12日)の翌日まで開示を怠ったから、被告には適時開示義務違反があり、WECに関する本件報道がされた後の被告株 式の株価の下落について、被告の適時開示義務 本件報道がされた日(平成27年11月12日)の翌日まで開示を怠ったから、被告には適時開示義務違反があり、WECに関する本件報道がされた後の被告株 式の株価の下落について、被告の適時開示義務違反に基づく損害が含まれてい る旨主張する。 ⑵ 認定事実WECグループの減損に関し、前提事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア被告は、平成27年11月13日、WECに関する本件報道を受け、「当社 の原子力事業に関する一部報道について」と題する書面を公表した。当該書面には、WECに係るのれんについて米国会計基準に則り年次で減損テストを行っており、被告は平成18年度にWECを買収して以降、連結ベースで減損損失は認識していないこと、被告連結ベースでの減損テストはWECが所属する被告事業部門全体として実施するため、当該事業部門全体としての 収益性が確保されていることから減損損失を計上していないことなどが記載されている。(前提事実⑼)イ被告は、平成27年11月17日、上記アの補足説明として、「当社子会社であるウェスチングハウス社に係るのれんの減損について」と題する書面を公表した。当該書面には、要旨、以下の記載がある。(甲16) ① WECグループ及び被告連結ベースにおけるのれんの減損テストの方法平成18年度に被告がWECグループを買収した際、米国会計基準に基づきWECグループ及び被告連結ベースで約29億3000万ドル(当時のレートで3500億円相当)ののれんを計上した。それ以来、のれんは 米国会計基準に則り年次でWECグループ及び被告連結ベースでそれぞれ減損テストを実施している。減損テストでは、対象となるのれんを含む事業の公正価値と当該事業の帳簿価額とを比較し、公正価 んは 米国会計基準に則り年次でWECグループ及び被告連結ベースでそれぞれ減損テストを実施している。減損テストでは、対象となるのれんを含む事業の公正価値と当該事業の帳簿価額とを比較し、公正価値が上回っている場合には減損不要と判断し、下回っている場合にはのれんの公正価値を測定し、その測定したのれんの公正価値とのれんの帳簿価額との差額を減 損損失として認識する。WECグループは、四つのプロダクトライン(事 業分野)で形成されており、のれんについてもそれぞれのプロダクトライン毎に行っている。一方、被告連結ベースでは、WECグループとWEC担当事業部(平成26年度からは、グローバル事業戦略上、国内原子力事業と組織体制を一体化した、原子力事業部)全体で減損判定テストを行っている。 ② 平成18年度から平成23年度ののれんの減損判定年次でのWECグループ及び被告連結ベースでの各年それぞれの減損テストの結果、いずれにおいても事業の公正価値がその帳簿価額を上回っていたため、のれんの減損は認識されなかった。 ③ 平成24年度ののれんの減損判定 WECグループについては、平成23年に発生した福島の原子力発電所の事故の影響によって、全世界で受注を計画していた原子力発電所建設案件の建設計画が後ろ倒しになったことなどから、四つのプロダクトラインのうち、監視制御システムの開発・設計・製造・保守サービス等を担当する「オートメーション」で約2億5000万ドル(約205億円)、新 規プラント建設向けエンジニアリング・機器製造/調達・プロジェクトマネジメントを担当する「新規建設」で約6億8000万ドル(約557億円)、合計で約9億3000万ドル(約762億円)ののれんの減損損失を計上した。 一方、被告連結ベースの 造/調達・プロジェクトマネジメントを担当する「新規建設」で約6億8000万ドル(約557億円)、合計で約9億3000万ドル(約762億円)ののれんの減損損失を計上した。 一方、被告連結ベースののれんについては、上記の二つのプロダクトラ イン及び残りの二つのプロダクトライン(保守メンテナンス(定期検査)・改良保全・機器製造・エンジニアリング・大型改修等を担当する「サービス」、燃料体の製造・販売等を担当する「燃料」)並びにWEC担当事業部全体の公正価値は、帳簿価額を上回っていたため、のれんの減損は認識されなかった。 ④ 平成25年度ののれんの減損判定 WECグループについては、原子力発電所建設案件の受注時期が更に後ろ倒しになることが見込まれたことなどから、受注済みのAP1000TM建設案件においてコストオーバーラン(建設費用の想定額超過)が発生したこと等により、減損テストの結果、「新規建設」のプロダクトラインで約3億9000万ドル(約394億円)ののれんの減損損失を計上し た。 一方、被告連結ベースののれんについては、平成24年度同様、「新規建設」以外の三つのプロダクトライン(安全保護系監視制御システム・既存プラント向け保守メンテナンス等を担当する「オートメーション・フィールドサービス」、新規プラント及び既存プラント向けエンジニアリング・ 改良保全・機器製造・大型改修等を担当する「エンジニアリング・機器・大型工事」、燃料体の製造・販売等を担当する「燃料」)のそれぞれにおいて、公正価値が帳簿価額を上回っており、四つのプロダクトライン合計及びWEC担当事業部全体の公正価値は、帳簿価額を上回っていたため、のれんの減損は認識されなかった。 ⑤ 平成26年度ののれんの減損判定WECグループ ており、四つのプロダクトライン合計及びWEC担当事業部全体の公正価値は、帳簿価額を上回っていたため、のれんの減損は認識されなかった。 ⑤ 平成26年度ののれんの減損判定WECグループについては、減損テストの結果、プロダクトライン毎の公正価値が平成25年度に減損した帳簿価額を上回っていたため、のれんの減損は認識されなかった。 被告連結ベースののれんについても、減損テストの結果、原子力事業部 全体の公正価値が帳簿価額を上回っているため、のれんの減損は認識されなかった。 なお、平成27年9月末時点で、WECグループののれんは約15億2000万ドル(約1828億円)、被告連結ベースののれんは約3441億円である。 ⑥ 平成24年度の適時開示 WECグループの減損については、被告の連結財務諸表に影響を及ぼすものではないが、平成24年度については適時開示基準に該当しており、適時適切に開示すべきであった。 ウ被告が平成27年9月7日に提出した本件訂正報告書の連結財務諸表にはWECグループの減損損失は記載されていない。(乙1、8~17、弁論 の全趣旨)⑶ 検討適時開示義務は、証券取引所の自主規制として取引所と発行会社との間の関係を規律する上場規程により定められたものであるから、当該義務違反があるからといって、直ちに投資者との関係で不法行為上違法となるものではなく、 投資者に重要な情報を適時に伝えるという適時開示規制の趣旨を踏まえ、適時開示の対象となった情報の性質・内容、適時開示義務違反の態様、経緯等の諸般の事情を総合考慮して違法性を判断することが相当である。 本件において、①被告は、米国会計基準に則り年次でWECグループ及び被告連結ベースでそれぞれ減損テストを実施 開示義務違反の態様、経緯等の諸般の事情を総合考慮して違法性を判断することが相当である。 本件において、①被告は、米国会計基準に則り年次でWECグループ及び被告連結ベースでそれぞれ減損テストを実施しており、減損テストでは、対象と なるのれんを含む事業の公正価値と当該事業の帳簿価額とを比較し、公正価値が上回っている場合には減損不要と判断しており、被告連結ベースでは、事業の公正価値がその帳簿価額を上回っていたため、のれんの減損は認識されなかったとの見解を示していること(上記⑵イ)、②本件訂正報告書の連結財務諸表においてもWECグループの減損損失は認識されていないこと(上記⑵ウ) に照らせば、WECグループの減損損失が、被告の連結決算に影響を及ぼしたとは認めるに足りない。そうすると、WECグループの減損損失が被告の連結決算に影響を及ぼしたとはいえないことを考慮すれば、被告がWECグループの減損損失を適時開示しなかったことについて、投資者との関係で不法行為上違法ということはできない。また、被告の連結決算に影響を及ぼしたとはいえ ないから、被告株式の株価の下落要因になったとも直ちにはいえない。 したがって、原告らの上記の主張は採用することができない。 なお、原告らは、WECグループの減損損失が開示されるまでの間、執行役上席常務、CFOを含む被告の役職員はWECの経営が順調であって、被告において開示すべき損失は同社に発生していないかのような説明を行って投資家を欺いたから(本件適時開示関連違法行為)、これは違法行為に当たるとも 主張する。しかし、この点に関して、違法性を基礎付ける事実の的確な主張立証はされておらず、原告らの上記主張も採用することができない。 ⑷ 結論以上によれば、本件適時開示義務違反等を理由 も 主張する。しかし、この点に関して、違法性を基礎付ける事実の的確な主張立証はされておらず、原告らの上記主張も採用することができない。 ⑷ 結論以上によれば、本件適時開示義務違反等を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がない。 7 争点7(損害額)⑴ 総論投資者が有価証券報告書等に虚偽記載がされている振替株式である上場株式を取引所市場において取得した場合に、当該虚偽記載によって被った損害とは、口頭弁論終結時を基準として、対象となる期間中の取引を評価して、投資 家に生じたといえる虚偽記載と相当因果関係のあるものをいうと解される。 以下では、①まずは虚偽記載による損害の内容を確認した上で、②被告株式の下落した株価のうち相当因果関係のある部分が損害の対象となるから、その損害額の算定方法を提示し、③損害賠償請求の対象となる被告株式の範囲(被告株式の取得時期及び処分時期に基づいてその範囲を確定させる。)を定め、 本件で損害賠償請求の対象となる被告株式(以下「算定対象株式」という。)を確定させることで損害額を決定する。 ⑵ 損害の内容ア高値取得部分の損害まず、投資家は、本件虚偽記載部分がなかった場合の株式の価値を超える 部分(すなわち、虚偽記載部分の存在によって株価が不当に高く評価され、 嵩上げされた株式価値相当分)について出捐したことで損害を被っているから、実際の情報が反映されないことで価値が高く評価された株式価値相当分(高値取得部分)は、本件虚偽記載部分と相当因果関係のある損害に当たる。 イ信用毀損・ろうばい売りによる株価下落の損害次に、本件虚偽記載部分が発覚したことで、信用毀損等が生じ、投資家 が保有する株式を売却する行動 偽記載部分と相当因果関係のある損害に当たる。 イ信用毀損・ろうばい売りによる株価下落の損害次に、本件虚偽記載部分が発覚したことで、信用毀損等が生じ、投資家 が保有する株式を売却する行動に出ること(以下「ろうばい売り等」という。)は、被告には予見可能性があり、ろうばい売り等から生ずる株価の下落についても虚偽記載という不法行為によって通常生ずる損害というべきである。 これに対し、被告は、仮に本件虚偽記載部分公表後に、信用毀損やろう ばい売りが生じたことによって株価が下落したとしても、①「当該有価証券を適正な価格で取得する」ことについての自己決定権を侵害した損害しか存在し得ないこと、②企業の所有者である投資家は役職員の不正行為による株価下落のリスクを負担すべきであるから、その下落額については、損害賠償は認められないと解すべきである旨主張する。 しかし、上記①に関しては、本件虚偽記載によって投資家が被告株式の売買に係る適正な意思決定を阻害されたのは被告株式の取得時であるとしても、その後に生じた事象に係る損害についても、不法行為と相当因果関係があれば、賠償が認められることは当然である。本件虚偽記載部分の内容に照らすと、それが虚偽であることが明るみになれば、投資家が信用 毀損等を懸念して被告株式を売却する行動に出ることは予見可能であるから、ろうばい売り等から生ずる株価の下落分は不法行為と相当因果関係のある損害というべきであって、賠償が認められる損害が被告の主張する損害に限定されるものではない。 上記②に関しては、有価証券報告書等の重要事項についての虚偽記載が 違法である根拠は、投資家の判断を誤らせて市場の機能を害することにあ るから、投資家が株式を取得する前の虚偽記載に起因する損害については 価証券報告書等の重要事項についての虚偽記載が 違法である根拠は、投資家の判断を誤らせて市場の機能を害することにあ るから、投資家が株式を取得する前の虚偽記載に起因する損害については、投資家の判断を誤らせることによって生じた損失として、ろうばい売り等による株価下落の損失についても投資家を保護すべきである。当該損失を投資家が甘受すべきであるとの被告の主張は採用することができない。 ウ小括 以上によれば、本件虚偽記載部分と相当因果関係のある損害は、高値取得部分及びろうばい売り等から生ずる損害がこれに当たるというべきである。 そして、上記損害は、本件虚偽記載部分が発覚して株価が下落する過程で顕在化し、その下落分に反映されるものと考えられる。そうすると、損害の算定に当たって、下落分を把握する必要があり、まず、①本件公表後の株価の 推移を見て、虚偽記載の発覚前後の株価の下落のうち、虚偽記載と相当因果関係のある株価下落の範囲を確定する。次に、②上記①の範囲の株価下落に、市場要因など、虚偽記載と無関係な要因によると認められる下落分がある場合には、その下落分は相当因果関係のある損害とはいえないから、これを控除する。さらに、③本件虚偽記載部分は継続的に行われて累積して増加して おり、取得時期によって虚偽記載の程度は異なるから(すなわち、本件公表時に取得時期が近いほど虚偽記載部分は増加するから)、それに応じた修正を行う必要がある。また、④原告らが処分した被告株式の中には、取得時期及び処分時期によっては、処分価額が取得価額を上回るものなどがあるから、投資家が虚偽記載によって被った損害について、相当因果関係の見地等から、 取得価額と処分価額を考慮して損害額を認定する必要がある。以上を踏まえて損害額を検討するが、⑤高 るものなどがあるから、投資家が虚偽記載によって被った損害について、相当因果関係の見地等から、 取得価額と処分価額を考慮して損害額を認定する必要がある。以上を踏まえて損害額を検討するが、⑤高値取得部分及びろうばい売り等が株価下落分に与えた程度は、その性質上、正確に把握することは困難なものである上、本件では複数期にわたって内容の異なる虚偽記載がされており、被告株式の取得時期に応じて高値取得部分は異なり、また、ろうばい売り等による株価下 落への影響も異なるため、株価下落分の把握は極めて困難というべきであっ て、上記損害は、損害の性質上その額を立証することが極めて困難なときに当たるから、民訴法248条を適用して、相当な損害額を認定するのが相当である。 以上のとおり、①本件虚偽記載部分と相当因果関係のある株価下落の範囲を確定し、②本件虚偽記載部分と無関係な要因によると認められる下落分を 控除し、③取得時期による修正をし、④取得価額と処分価額による調整を行い、⑤民訴法248条を適用して、相当な損害額を認定する。 ⑶ ①本件虚偽記載部分と相当因果関係のある株価下落の範囲ア認定事実被告の株価の推移に関し、前提事実、顕著な事実、後掲証拠及び弁論の全 趣旨によれば、以下の事実が認められる。 平成27年4月3日から平成28年5月11日までの被告の株価の推移は、別紙14被告株式の株価推移一覧表に記載のとおりである。(甲18)被告は、平成27年4月3日、社内の調査委員会である特別調査委員会 の設置を公表した(本件公表)。(前提事実⑶イ)本件公表後に株価が下落し始め、同日の被告株式の終値は512.4円であったが、翌取引日の同月6日に487.4円に下落した。(甲18)その後、平成2 設置を公表した(本件公表)。(前提事実⑶イ)本件公表後に株価が下落し始め、同日の被告株式の終値は512.4円であったが、翌取引日の同月6日に487.4円に下落した。(甲18)その後、平成27年4月中は概ね480円台から490円台で推移していたが、被告が同年5月8日に第三者委員会への移行等を公表すると(前 提事実⑶ウ)、翌取引日である同月11日には被告株式は403.3円まで急落した。その後、同年6月中は概ね415円台から450円台で推移していたが、同年7月から同年8月にかけて400円台を割り込むようになった。(甲18)平成27年9月7日(同日時点で被告株式の株価は352.7円であっ た。)に本件訂正報告書が公衆の縦覧に供されると、更に下落傾向が続き、 同月29日に291.9円で底打ちした。(前提事実⑶ケ、甲18)平成27年9月29日以降、被告株式の株価は、反転上昇し、同年10月9日には348.7円まで回復した。(甲18)イ検討上記認定事実によれば、①平成27年9月7日に本件訂正報告書が公衆の 縦覧に供され(前提事実⑶ケ)、この時点で本件虚偽記載部分の全容が明らかになったといえること、②これに伴い、株価は、同日に352.7円であったものが、同月29日に291.9円まで下がった後、同年10月9日に348.7円まで回復していることからすると、同年9月29日には本件虚偽記載部分の影響が一応市場に反映し尽くされて株価に織り込まれたと考 えるのが相当である。 以上によれば、本件虚偽記載部分と相当因果関係のある株価下落の範囲は、株価が底を打った平成27年9月29日と考えられるから、終期は同日と認めるのが相当であり、当該期間の下落分は220.5円(512.4円-291.9円)となる。 因果関係のある株価下落の範囲は、株価が底を打った平成27年9月29日と考えられるから、終期は同日と認めるのが相当であり、当該期間の下落分は220.5円(512.4円-291.9円)となる。 ⑷ ②本件虚偽記載部分と無関係な要因によると認められる下落分②本件虚偽記載部分と無関係な要因によると認められる下落分として、市場全体の傾向による下落分について検討する。 ア認定事実市場全体の傾向による下落分に関して、顕著な事実、後掲証拠及び弁論の 全趣旨によれば、以下の事実を指摘することができる。 日経平均株価は、平成27年4月3日の終値が1万9435円08銭であり、同年9月29日の終値が1万6930円84銭であり、この間に約13%が下落した。この下落に関連して、電気機器業界の下落が目立ち、中国景気の急減速などの市場要因によるものであるとの報道が同年7月 15日にされた。(乙38、41、弁論の全趣旨) 被告の属する大手電機・重電産業において、被告同様に中国向け売上比率の高いパナソニック、三菱重工、シャープ、三菱電機、日立の5社(以下「パナソニックら5社」という。)の株式の株価は、平成27年4月3日から同年9月29日までの間に、別紙15株価推移対照一覧表に記載のとおりに変動しており、同日時点で同年4月3日時点の約71%の株価であ ったから、平均して約29%下落したものである。(乙39、40、47~49、弁論の全趣旨)被告株式とパナソニックら5社の株価推移は、少なくとも同年6月以降については、変動の程度こそ異なるものの、共通した下落傾向があると認められる。(別紙15、弁論の全趣旨) イ検討上記認定事実によれば、平成27年4月3日から同年9 降については、変動の程度こそ異なるものの、共通した下落傾向があると認められる。(別紙15、弁論の全趣旨) イ検討上記認定事実によれば、平成27年4月3日から同年9月29日までの間の被告株式の下落の一定程度は、本件虚偽記載部分の発覚とは無関係な市場要因が被告株式の株価形成に影響を及ぼしたというべきであり、パナソニックら5社といった事業規模・構造等が類似している会社の株価も上記期間内 に概ね30%下落しているから、市場要因による被告株式の株価の下落分は、30%として、この部分は本件虚偽記載部分と相当因果関係のある損害とは認めないのが相当である。 ⑸ ③取得時期及び虚偽記載の程度に応じた修正ア五つの期間による修正 本件虚偽記載部分は、第171期から第175期までの間にされており、被告株式を取得した時期によって虚偽記載の程度は異なり、ひいては損害額も異なるから、以下の対象期間①~⑤に分けて修正することが相当である。 第175期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された日の翌日である平成26年6月26日から平成27年4月3日までの間(以下「対象期間⑤」 という。) 本件虚偽記載部分と相当因果関係のある被告株式の株価の下落の範囲(公表後下落額)から、本件虚偽記載部分とは相当因果関係のない市場要因による下落分として、(公表後下落額の)30%相当額を控除した額(以下「調整後下落額」という。)は、本件虚偽記載部分(すなわち、当期純損益について、第171期のマイナス288億9000万円、第173期の マイナス318億6000万円、第174期のマイナス478億4800万円の各部分)の発覚による影響を全て反映したものであるから、本件名義株主原告らが対象期間⑤の期間中に取得したと評 173期の マイナス318億6000万円、第174期のマイナス478億4800万円の各部分)の発覚による影響を全て反映したものであるから、本件名義株主原告らが対象期間⑤の期間中に取得したと評価される被告株式については、調整後下落額をもって本件名義株主原告らの(1株当たりの)損害とするのが相当である。 第174期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された日の翌日である平成25年6月26日から平成26年6月25日までの間(以下「対象期間④」という。)被告株式を取得した時期が対象期間④の期間内である場合には、第175期以降の虚偽記載による株価への影響が生ずる以前に取得したことに なる。もっとも、既に述べたところによれば、第175期に関しては重要な事項についての虚偽記載はなく、虚偽記載部分は対象期間⑤と同一であるから、対象期間⑤で述べた調整後下落額と同額を本件名義株主原告らの損害とするのが相当である。 第173期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された日の翌日である平 成24年6月23日から平成25年6月25日までの間(以下「対象期間③」という。)被告株式を取得した時期が対象期間③の期間内である場合には、第174期以降の虚偽記載による株価への影響が生ずる以前に取得したことになる。そして、対象期間③に関する重要な事項についての虚偽記載部分は、 当期純損益について、第171期のマイナス288億9000万円、第1 73期のマイナス318億6000万円である。また、直近の財務情報の方が株価に与える影響が大きいと考えられることも考慮すると、対象期間③の期間中に取得したと評価される被告株式については、対象期間⑤で述べた調整後下落額の60%に相当する額を本件名義株主原告らの損害とするのが相当である。 考えられることも考慮すると、対象期間③の期間中に取得したと評価される被告株式については、対象期間⑤で述べた調整後下落額の60%に相当する額を本件名義株主原告らの損害とするのが相当である。 第172期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された日の翌日である平成23年6月23日から平成24年6月22日までの間(以下「対象期間②」という。)被告株式を取得した時期が対象期間②の期間内である場合には、第173期以降の虚偽記載による株価への影響が生ずる以前に取得したことに なる。そして、対象期間②に関する重要な事項についての虚偽記載部分は、当期純損益について、第171期のマイナス288億9000万円である。 また、直近の財務情報の方が株価に与える影響が大きいと考えられることも踏まえると、対象期間②の期間中に取得したと評価される被告株式については、対象期間⑤で述べた調整後下落額の30%に相当する額を本件名 義株主原告らの損害とするのが相当である。 第171期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された日の翌日である平成22年6月24日から平成23年6月22日までの間(以下「対象期間①」という。)被告株式を取得した時期が対象期間①の期間内である場合には、第17 2期以降の虚偽記載による株価への影響が生ずる以前に取得したことになる。そして、対象期間①に関する重要な事項についての虚偽記載部分は、対象期間②と同一であるから、対象期間①の期間中に取得したと評価される被告株式については、対象期間②と同様、対象期間⑤で述べた調整後下落額の30%に相当する額を本件名義株主原告らの損害とするのが相当 である。 イ原告らの主張についてこれに対し、原告らは、被告株式を取得した後の虚偽記載に関しても被告に対する損害賠償請 に相当する額を本件名義株主原告らの損害とするのが相当 である。 イ原告らの主張についてこれに対し、原告らは、被告株式を取得した後の虚偽記載に関しても被告に対する損害賠償請求が認められるべきである旨主張する。 しかし、株式を取得した後は、株主として、株式会社の構成員たる地位にあるのであって、自らが構成員となっている会社が行った不正会計に係る不 法行為について、社外の者と同様に、当該会社に対して損害賠償請求をすることは、株式会社の構造に照らして認め難い。株主は、むしろ、自らが構成員となっている会社において執行機関による不正会計等の不法行為が行われないよう注意を払い、取締役の選解任その他を通じて、会社の不正会計による損害の発生を未然に防止すべき立場にあり、それでも取締役らが不正会 計を行った場合には、制度上は、株主代表訴訟により取締役らに対して損害賠償請求をし、会社の損害を回復することを通じて、株主の持分価値に係る損害を回復することが予定されているのであって、会社法上、株主が、会社に対して、自らが株主である間にされた虚偽記載に関して直接請求することは予定されていないというべきである。 そうすると、株主が株式を取得した後に、会社が虚偽記載を行った場合、これによって株価が下落したとしても、株主は会社に対して直接にその下落分の損害賠償請求をすることはできないと解するのが相当であり、原告らの上記主張は採用することができない。 ⑹ ④取得価額や処分価額による修正 ア相当因果関係の見地からの修正原告らが被った現実化した損害は、本件公表後の株価の下落額であり、基本的には、取得価額から処分価額を控除した金額が想定されるが、相当因果関係の見地から、以下のとおり修正することが相当である。 イ取得 らが被った現実化した損害は、本件公表後の株価の下落額であり、基本的には、取得価額から処分価額を控除した金額が想定されるが、相当因果関係の見地から、以下のとおり修正することが相当である。 イ取得価額の修正 まず、本件で損害賠償の対象となる株式(算定対象株式)は、本件公表日 (平成27年4月3日)以前に取得されたものであるが、取得価額が512. 4円(本件公表日の株価)よりも高額な場合、その差額は本件虚偽記載部分と無関係に上昇していたものであるから、本件虚偽記載部分と相当因果関係がある損害とはいえない。したがって、この場合、取得価額からではなく、512.4円から控除することが相当である。 他方、取得価額が512.4円よりも低額な場合についても、その差額は本件虚偽記載部分と無関係に下落していた結果であるから、本件虚偽記載部分と相当因果関係がある損害とはいえない。したがって、この場合、512. 4円ではなく、取得価額から控除することが相当である。 ウ処分価額の修正 まず、処分価額が291.9円(本件虚偽記載部分に起因する終期の株価)を超える場合、原告らの損害は現実化したものに限られるから、291.9円ではなく、これを上回る処分価額を基準として損害を算定すべきである。 したがって、この場合、291.9円ではなく、処分価額を控除することが相当である。 他方、処分価額が291.9円を下回る場合、その差額は本件虚偽記載部分と無関係に下落していた結果であるから、処分価額ではなく、291.9円を基準として損害を算定すべきである。したがって、この場合、処分価額ではなく、291.9円を控除することが相当である。 エ小括 以上の取得価額及び処分価額における調整をまとめると、本件虚偽記載部分と相当因果関 べきである。したがって、この場合、処分価額ではなく、291.9円を控除することが相当である。 エ小括 以上の取得価額及び処分価額における調整をまとめると、本件虚偽記載部分と相当因果関係がある株価の下落の範囲を求める算式は、以下のとおりである(ただし、その算出額がマイナスになる場合、ゼロとする。)。また、後記⑺オのとおり、取得価額は、ファンド別の平均値(損害賠償請求の対象期間(平成22年6月24日から平成27年4月3日まで)中の株式取得数に 対する約定金額の合計を、同期間中の株式取得数の合計で除すことによって 算出する。)によることが相当である。 Ⅰ 取得価額(ファンド別平均値)<512.4円、かつ、処分価額<291.9円の株式:取得価額(ファンド別平均値)-291.9円Ⅱ 取得価額(ファンド別平均値)<512.4円、かつ、処分価額≧29 1.9円の株式:取得価額(ファンド別平均値)-処分価額Ⅲ 取得価額(ファンド別平均値)≧512.4円、かつ、処分価額<291.9円の株式:512.4円-291.9円 Ⅳ 取得価額(ファンド別平均値)≧512.4円、かつ、処分価額≧291.9円の株式:512.4円-処分価額⑺ 算定対象株式の特定(期間による限定及び総平均法と同様の方法の採用)ア期間による限定 有価証券報告書等に虚偽記載があったことにより被る損害は、①虚偽記載のある有価証券報告書等が公衆の縦覧に供されてから、本件虚偽記載部分があること(又はそのおそれ)が発覚するまで(すなわち、被告が本件公表をした平成27年4月3日まで)に取得した株式を、②有価証券報告書等に虚偽記載があることが発覚した以降に処分した際に現実化するも のと解される。したがって、算定対象 (すなわち、被告が本件公表をした平成27年4月3日まで)に取得した株式を、②有価証券報告書等に虚偽記載があることが発覚した以降に処分した際に現実化するも のと解される。したがって、算定対象株式は、①本件虚偽記載部分のある有価証券報告書等の開示後、被告が本件公表をした平成27年4月3日までに取得され、かつ、②同日までに未処分であることを要する。 本件において、被告が虚偽記載のある第171期有価証券報告書を提出したのは平成22年6月23日における取引終了後であるから、①その翌 日である同月24日以降、被告が本件公表をした平成27年4月3日まで に取得され、かつ、②同日の取引終了時において未処分であった株式であることを要する。 これに対し、原告らは、被告による虚偽記載に関する開示は、平成27年4月3日以降も段階的に小出しに行われ、当該小出しの開示に対してその都度市場が反応して株価が下落しており、同日に虚偽記載の事実が全て 開示されたわけでも、同日の開示により投資家が巨額の利益水増しを含むその後の開示内容を認識し得たわけでもなく、被告が情報を小出しに開示したため、被告株式の株価は嵩上げがされた状態が継続していたから、被告が本件公表をした同日より後に取得した被告株式についても損害賠償請求の対象とすべきである旨主張する。 しかし、被告は、平成27年4月3日、工事進行基準適用案件に係る会計処理の適正性について調査を要する事項が判明したとして特別調査委員会を設置することなどを書面により公表し(本件公表)、同書面には被告の業績に影響を及ぼす可能性がある旨が記載されていること、同日中に被告において工事費用の過小見積りにより利益が過大計上されていた可 能性がある旨が広く報道されたことが認められる(前提 には被告の業績に影響を及ぼす可能性がある旨が記載されていること、同日中に被告において工事費用の過小見積りにより利益が過大計上されていた可 能性がある旨が広く報道されたことが認められる(前提事実⑶イ)。これらの事情に照らせば、一般投資家は、同日中には被告の過年度の有価証券報告書等の記載に誤りがある疑いがあることを認識し得たということができる。そうすると、本件公表後に取得した被告株式については、今後の株価の動向が虚偽記載による影響を受ける可能性があることを認識した 上で、あえて株価下落のリスクを引き受けて同株式を取得したものと認められる。したがって、その後の被告株式の株価の下落は、同株式を取得した時点で同株式に内在しており、かつ、認識されていたリスクが現実化したにすぎないから、この株価の下落に係る損害と虚偽記載との間には相当因果関係がないというべきである。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 以上によれば、①平成22年6月24日以降、被告が本件公表をした平成27年4月3日までに取得され、かつ、②同日の取引終了時において未処分であったとの判定が必要となる。この点に関し、本件虚偽記載部分のある有価証券報告書等の開示(すなわち、公衆の縦覧に供された)時点において、既に被告株式を保有し、かつ、当該開示後にも被告株式を取得し、 その後、本件虚偽記載部分があること(又はそのおそれがあること)が発覚するまでの間に、被告株式の一部の処分を行い、他の一部は平成27年4月3日(本件公表)までに未処分であった場合、処分した株式(算定対象株式ではない株式)と未処分の株式(算定対象株式)を峻別して特定する必要がある。 イ総平均法と同様の方法の採用このような損害賠償請求の対象となる算定 った場合、処分した株式(算定対象株式ではない株式)と未処分の株式(算定対象株式)を峻別して特定する必要がある。 イ総平均法と同様の方法の採用このような損害賠償請求の対象となる算定対象株式の特定方法について、原告らは、先入先出法を主張し、被告は、総平均法と同様の方法によるべきであると主張する。 そこで検討すると、被告株式は振替株式であり、株券が発行されず、数 量のみによって把握されており(社債等振替法128条参照)、没個性的な株主たる地位の割合的単位にすぎず、株式の取得及び処分は、その株式の持分割合の増減として把握される。このような振替株式の性質からすれば、個々の取得と処分とを紐付けせず、一定期間内の取得と処分とを割合的に捉えて棚卸資産の取得価額を算定するという総平均法の考え方を算 定対象株式の特定に用いることが相当である(なお、総平均法の考え方を純粋に適用するのではなく、上記⑸のとおり、取得時期及び虚偽記載の程度に応じた修正は行う。)。 これに対し、原告らは、先に取得したものから先に処分するという流れを想定する先入先出法を採用すべきであると主張する。 しかし、上記の方法は、被告株式の個々の取得と処分とを紐付けるもの であるが、そのような発想は、上記で述べた振替株式の性質に適合しない。また、特に機関投資家を含む原告らのような多数回の売買を繰り返している投資家の場合、被告株式の個々の取得と処分との対応関係を明らかにすることは現実的に困難であり、この点からも先入先出法は算定方法としては相当とはいえない。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 ウ算定対象株式の数量総平均法の考えを用いて、算定対象株式の数量を算定する場合、以下の計算式で算出するのが合理 とはいえない。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 ウ算定対象株式の数量総平均法の考えを用いて、算定対象株式の数量を算定する場合、以下の計算式で算出するのが合理的である。すなわち、その具体的な算定方法としては、①損害賠償請求の対象期間の終期(平成27年4月3日時点)の 保有株式数(未処分株式数)を、②対象期間の始期(平成22年6月24日時点)の保有株式数(損害賠償請求の対象外のもの)と、③対象期間中(平成22年6月24日から平成27年4月3日まで)の取得株式数とで案分した、後者の数量をもって、④算定対象株式の数量とするのが相当である。以下、別紙1認容額等一覧表及び別紙16損害額計算過程一覧表に おいて、各別紙記載の「ファンド番号」欄記載のファンド番号によって特定されるファンド別の取引のまとまり(以下「取引単位」という。)で計算を行う(なお、別紙1及び別紙16の①~㉜の符号は、以下の本文中の計算式の符号に対応している。また、損害額の計算過程における小数点以下の処理は、別紙1及び別紙16の各欄記載のとおりである。)。 (計算式)④算定対象株式の数量=①終期の未処分株式数×③対象期間の取得株式数/(②始期の保有株式数+③対象期間の取得株式数) 本件各取引のうち本件名義株主原告らに係るものについて、終期の未処 分株式数は別紙16①欄、始期の保有株式数は別紙16②欄、対象期間の 取得株式数は別紙16③欄記載のとおりであり、これを基に計算をすると、算定対象株式の数量は、別紙16④欄記載のとおりとなる。 エ処分総数に対する算定対象株式の数量及び割合上記のとおり、有価証券報告書等に虚偽記載があったことにより被る損害は、有価証券報告書等に虚偽記載があ 数量は、別紙16④欄記載のとおりとなる。 エ処分総数に対する算定対象株式の数量及び割合上記のとおり、有価証券報告書等に虚偽記載があったことにより被る損害は、有価証券報告書等に虚偽記載があることが発覚した以降に処分した際に 現実化するものと解されるから、損害賠償請求が認められるためには、本件口頭弁論終結時までに被告株式を処分したことを要するというべきである。 この点に関し、損害賠償請求の対象期間(平成22年6月24日から平成27年4月3日まで)後、本件名義株主原告らが本件口頭弁論終結時までに、それまで保有していた被告株式を処分した総数は別紙16⑤欄記載のとお りであり、これに対する算定対象株式の数量は、以下の計算式により求めることができる。その結果は、別紙16⑧欄記載のとおりである(なお、別紙16⑦欄記載のとおり、いずれの本件名義株主原告らも、本件各取引に関して、本件口頭弁論終結時の未処分株式を有しない。)。 (計算式) ⑧算定対象株式のうち本件口頭弁論終結時までに処分された数量=④算定対象株式数×⑤終期後、本件口頭弁論終結時までの処分総数/(⑤終期後、本件口頭弁論終結時までの処分総数+⑦本件口頭弁論終結時の未処分株式数)⑦本件口頭弁論終結時の未処分株式数 =①終期の未処分株式数+⑥終期後、本件口頭弁論終結時までの取得株式総数-⑤終期後、本件口頭弁論終結時までの処分総数また、⑤終期後、本件口頭弁論終結時までの処分総数に対する、⑧算定対象株式のうち本件口頭弁論終結時までに処分された数量の割合は、以下の計算式により求めることができる。その結果は、別紙16⑨欄記載のとおりで ある。 (計算式)⑨処分数に対する算定対象株式の割合=⑧算定対象株式のうち本件口頭弁論終結時ま の計算式により求めることができる。その結果は、別紙16⑨欄記載のとおりで ある。 (計算式)⑨処分数に対する算定対象株式の割合=⑧算定対象株式のうち本件口頭弁論終結時までに処分された数量/⑤終期後、本件口頭弁論終結時までの処分総数オ損害賠償請求の対象期間中に取得した株式の取得単価(ファンド別平均値) の算出損害賠償請求の対象期間中(平成22年6月24日から平成27年4月3日まで)に取得した株式の取得価額は、ファンド別の平均値により、以下の計算式により求めることが相当である。その結果は、別紙16⑪欄記載のとおりである。 (計算式)⑪取得価額(ファンド別平均値)=⑩対象期間中の取得株式数に対応する約定金額の合計/③対象期間中の取得株式数の合計カ取引単位ごとの控除前損害額 上記で説示したところを踏まえ、以下の区分に従い、取引単位ごとに1株当たりの損害額(公表後下落額)を算出する。その計算結果は、別紙1⑭欄記載のとおりである。 なお、本件名義株主原告らの取得価額(ファンド別平均値)は、いずれも512.4円を下回っているから(別紙1⑪)、以下のⅢ及びⅣは本件で は適用がないため、取得価額(ファンド別平均値)を512.4円に修正する必要はない。他方、処分価額は、291.9円より低額なものが存在するから(別紙1⑫)、その場合、以下のⅠを適用して処分価額を修正する。修正処分価額(別紙1⑬)は、当該修正後の数値である(計算の便宜上、修正しなかった処分価額も含めて修正後の処分価額を別紙1⑬欄に記 載した。)。その結果、1株当たりの損害額は、別紙1⑭欄記載のとおりで ある。なお、修正処分単価が取得価額を上回る場合、1株当たりの損害額は0円とする。 Ⅰ ⑪ を別紙1⑬欄に記 載した。)。その結果、1株当たりの損害額は、別紙1⑭欄記載のとおりで ある。なお、修正処分単価が取得価額を上回る場合、1株当たりの損害額は0円とする。 Ⅰ ⑪取得価額(ファンド別平均値)<512.4円、かつ、⑫処分価額<291.9円の株式:⑪取得価額(ファンド別平均値)-291.9円 Ⅱ ⑪取得価額(ファンド別平均値)<512.4円、かつ、⑫処分価額≧291.9円の株式:⑪取得価額(ファンド別平均値)-⑫処分価額Ⅲ ⑪取得価額(ファンド別平均値)≧512.4円、かつ、⑫処分価額<291.9円の株式 :512.4円-291.9円Ⅳ ⑪取得価額(ファンド別平均値)≧512.4円、かつ、⑫処分価額≧291.9円の株式:512.4円-⑫処分価額以上を前提に、取引単位ごとに、本件虚偽記載部分と相当因果関係のな い市場要因による株価下落分と取得時期に応じた影響額分の控除前の損害額(以下「控除前損害額」という。)を以下の計算式により算定する。なお、⑮取引単位別の処分数に⑨処分数に対する算定対象株式の割合を乗じた結果が、以下の⑯算定対象株式に係る処分数である。 (計算式) ⑰控除前損害額=⑭1株当たりの損害額×⑯算定対象株式に係る処分数⑯算定対象株式に係る処分数=⑮取引単位別の処分数×⑨処分数に対する算定対象株式の割合上記の算定結果は、別紙1⑰欄記載のとおりである。 キ本件虚偽記載部分と相当因果関係のない市場要因による株価下落分の控 除上記のとおり、本件虚偽記載部分と相当因果関係のない市場要因による株価下落分は公表後下落額の30%であると認められる。したがって、上記で求めた控除前損害額から、上記の30%を控除する。そこ 除上記のとおり、本件虚偽記載部分と相当因果関係のない市場要因による株価下落分は公表後下落額の30%であると認められる。したがって、上記で求めた控除前損害額から、上記の30%を控除する。そこで、別紙1⑱欄記載のとおり、市場要因による株価下落分控除率として70%を乗ずる。 ク取得時期に応じた影響額分の反映上記のとおり、被告株式の取得時期に応じて原告らに生じた損害額は異なると考えられるから、本件有価証券報告書等の縦覧期間ごとに損害を算定する必要があるが、以下の手順により求めることが相当である。 ① 各期の有価証券報告書が公衆の縦覧に供された取得時期別の株式取得 数を算出する。 その各数値は、別紙16⑲~㉓欄記載のとおりである。 ② 取得時期別の取得割合を以下の計算式により算出する。 (計算式)取得時期別の取得割合 =取得時期別の取得株式数/対象期間取得株式数③ 上記②で求められる取得時期別の取得割合に上記で検討した取得時期に応じた虚偽記載の影響額の割合(対象期間①及び②につき30%、対象期間③につき60%、対象期間④及び⑤につき100%)を乗じたものを取得時期別に算出し、これを足し合わせたものを取得時期による控除率と する。 その各数値は、別紙16㉙欄記載のとおりである。 ケ小括控除前損害額(別紙1⑰)に市場要因による株価下落分控除率(別紙1⑱)と取得時期による控除率(別紙1㉙)を乗じ、控除後損害額(別紙1㉚)を 算定する。以上の計算過程を経て得られた控除後損害額は、別紙1㉚欄記載 のとおりである。 ⑻ 弁護士費用相当額の損害弁護士費用相当額の損害は、本件虚偽記載部分に係る不法行為と相当因果関係のあるものというべきである。そして、不法行為に基づく損害 ㉚欄記載 のとおりである。 ⑻ 弁護士費用相当額の損害弁護士費用相当額の損害は、本件虚偽記載部分に係る不法行為と相当因果関係のあるものというべきである。そして、不法行為に基づく損害賠償の認容額など本件における一切の事情を考慮して、弁護士費用相当額の損害は、別紙1 「ファンド番号」欄記載の各取引に係る同表の「弁護士費用相当額」欄(別紙1㉛欄)記載のとおりの金額を相当とする。 ⑼ 損害額合計以上によれば、本件虚偽記載部分に係る不法行為に基づく損害額の合計は、別紙1の「原告」欄記載の各原告に係る同別紙の「認容額」欄(別紙1㉜欄) 記載のとおりの金額となる(別紙1のとおり、ファンド別に認容額を記載した。)。 ⑽ 遅延損害金の起算点不法行為による損害賠償債務は、損害の発生と同時に遅滞に陥るものと解するのが相当である(最高裁昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第三 小法廷判決・民集16巻9号1834頁参照)。そして、本件名義株主原告らが被った本件虚偽記載部分に係る損害は、本件公表後、被告株式を処分して初めて現実化して発生したといえるから、損害の発生は処分時であるというべきである。したがって、被告株式の処分時から遅延損害金の発生が認められるから、被告は、本件名義株主原告らに対し、各原告に係る別紙1の「認容額」欄記載 の各金員に対する同別紙の「処分日」欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。 第4 結論以上によれば、原告らの請求は、本件名義株主原告らが主文1項記載の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し、その余の請求は理由がないからいず れも棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第8部 主文 の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し、その余の請求は理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 理由 東京地方裁判所民事第8部 裁判長裁判官笹本哲朗 裁判官浅川啓 裁判官内林尚久
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