平成27年9月16日判決言渡 平成27年(行ケ)第10061号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成27年8月5日判決 原告 株式会社おくりびとアカデミー 訴訟代理人弁理士 星野裕司 被告 特許庁長官 指定代理人 清棲保美 榎本政実 井出英一郎 内山進 根岸克弘 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2014-20782号事件について平成27年2月23日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1)ア原告は,平成25年6月14日,「納棺士」の文字を標準文字で表してなる商標(以下「本願商標」という。)について,指定役務を下記のとおりとして,商標登録出願(商願2013-46145号。以下「本願」という。)をした(甲1)。 記(指定役務)第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,カウンセリング理論とその技法の教授,資格検定試験に関する情報の提供,資格検定試験の実施,資格の認定及び資格の付与,講演会・セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。 ,資格の認定及び資格の付与,講演会・セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),音楽又は教育研修のための施設の提供」第45類「納棺,納棺に関する相談,遺体への死化粧の施術,身の上相談,葬儀の執行,葬儀の執行に関する相談,祭壇の貸与,墓地又は納骨堂の提供,墓地又は納骨堂に関する相談,納骨堂の管理,遺体の入浴・洗浄」イ原告は,平成25年10月3日付けの拒絶理由通知(以下「本件拒絶理由通知」という。甲2)を受けたため,同年11月15日付け意見書(甲3)を提出するとともに,同日付け手続補正書(甲4)により,本願の指定役務から第41類「講演会・セミナーの企画・運営又は開催,書籍の制作」及び第45類「葬儀の執行,葬儀の執行に関する相談」を削除する補正(以下「本件補正」という。)をした。 本件補正後の指定役務は,下記のとおりである。 (本件補正後の指定役務)第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,カウンセリング理論とその技法の教授,資格検定試験に関する情報の提供,資格検定試験の実施,資格- 3 -の認定及び資格の付与,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),音楽又は教育研修のための施設の提供」第45類「納棺,納棺に関する相談,遺体への死化粧の施術,身の上相談, 演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),音楽又は教育研修のための施設の提供」第45類「納棺,納棺に関する相談,遺体への死化粧の施術,身の上相談,祭壇の貸与,墓地又は納骨堂の提供,墓地又は納骨堂に関する相談,納骨堂の管理,遺体の入浴・洗浄」(2) 原告は,平成26年7月9日付けの拒絶査定(以下「本件拒絶査定」という。甲5)を受けたので,同年10月14日,拒絶査定不服審判を請求した(甲6)。 特許庁は,上記請求を不服2014-20782号事件として審理を行い,平成27年2月23日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年3月5日,原告に送達された。 (3) 原告は,平成27年4月2日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,本願商標は,その文字構成に照らせば,「納棺の役割をもった者」程の意味合いを認識させるものとみるのが相当であり,また,第45類に属する「納棺,納棺に関する相談,遺体への死化粧の施術」といった役務(以下「本件役務」という場合がある。)は,「納棺士」と称する専門的な知識や技術を有する者により提供される場合があるというのが実情であることからすると,本願商標をその指定役務中の本件役務について使用した場合,これに接する需要者は,その役務が「納棺士」により提供されるものであること,すなわち,役務の質を- 4 -表してなるものと認識するにとどまるとみるのが相当であって,本願商標は,本件役務については,役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といえるから,商標法3条1項3号に該当し,商標登録を受ける のと認識するにとどまるとみるのが相当であって,本願商標は,本件役務については,役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といえるから,商標法3条1項3号に該当し,商標登録を受けることができないというものである。 第3 当事者の主張 1 原告の主張(1) 取消事由1(本願商標の商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)ア本願商標の需要者は,葬儀業者か,身内の死に直面した者すなわち遺族である。 そして,「士」の語には,「さむらい。武士。」との意味があり,需要者である身内の死に直面した者においては,納棺という死者を扱う役務の提供者は,高度な知識や技能はもとより,武士のような強い存在であることが,需要者の信頼を得る要素の一つとなる。つまり,「納棺士」だからこそ,「士」の語の武士としての意味合いが強くなり,これにより本願商標の「納棺士」に大きな信頼,信用が化体し得るものといえる。 イ納棺の業務を行う者を意味する語としては,「納棺師」の語が,「納棺士」の語よりも,葬儀業者や遺族の間で広く用いられており,複数の辞典に掲載され,映画,テレビ,書籍等でも使用されるなど,使用される場面や使用主体も多岐にわたっている(甲7ないし40)。 このように納棺の業務を行う者を表す語としては,「納棺師」の語が,「納棺士」の語よりも,広く世の中に知られており,「納棺士」の語は納棺の業務を行う者を表す語として定着しているとはいえない。 ウ本件審決は「納棺士」と称する専門的な知識や技術を有する者により提供される場合がある実情があることの根拠として,「納棺士」の語の使用例としてウェブサイトの記事(本件審決の「別掲」。審決書3頁ないし5頁)を挙げる。 - 5 -しかしながら,本件審決が挙げる使用例中の葬儀業者「丸喜冠葬」のウェブ して,「納棺士」の語の使用例としてウェブサイトの記事(本件審決の「別掲」。審決書3頁ないし5頁)を挙げる。 - 5 -しかしながら,本件審決が挙げる使用例中の葬儀業者「丸喜冠葬」のウェブサイト(本件審決の「別掲」の(8)。乙18)については,「納棺士」の記載がウェブサイト作成業者による誤記であることが判明したことを理由に,後日「納棺師」と訂正されている。このようにウェブサイトは,その運営主体自らが作成を行わず,ウェブ作成業者が作成,更新することも少なくないから,ウェブサイトに掲載されているという事実のみをもって,そのサイトの運営主体による使用であると直ちに認定することはできない。 そして,葬儀業者の観点に立てば,「納棺士」の誤記を「納棺師」と訂正したことに照らしても,本願商標の「納棺士」が自他役務の識別力を有することは明らかである。 また,本件審決は,「納棺士」の使用例のみを示し,納棺の業務を行う者を表す語として広く知られている「納棺師」の使用例を具体的に示していないため,「納棺師」の存在を適切に考慮して判断したものとはいえない。 エ以上のとおり,本願商標の「納棺士」の語は,本件役務の需要者である身内の死に直面した者においては,「士」の語が武士の意味合いを強く発揮し得るものであり,取引者,需要者である葬儀業者においては,自他役務の識別力を有すること,納棺の業務を行う者を表す語としては,「納棺師」の語が,「納棺士」の語よりも,広く世の中に知られており,「納棺士」の語は納棺の業務を行う者を表す語として定着しているとはいえないことからすると,本願商標は,本件役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえない。 したがって,本願商標が商標法3条1項3号の商標に該当するとした本件審決の判断は誤りで ことからすると,本願商標は,本件役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえない。 したがって,本願商標が商標法3条1項3号の商標に該当するとした本件審決の判断は誤りである。 (2) 取消事由2(手続違背)ア本件拒絶理由通知(甲2)には,商標法3条1項3号の拒絶理由が存在- 6 -する指定役務について,単に「納棺に関連した役務」としか記載されておらず,具体的に示されていなかった。 次に,本件拒絶査定(甲5)は,拒絶理由が存在する指定役務について,「第41類「納棺士に関する知識の教授,納棺士に関する資格検定試験に関する情報の提供,納棺士に関する資格検定試験の実施,納棺士に関する資格の認定及び資格の付与,納棺士に関する講演会・セミナーの企画・運営又は開催」等,第44類「遺体の入浴・洗浄,納棺,納棺に関する相談」等」と述べるが,「等」の語の存在により,どの指定役務まで拒絶理由が及んでいるのか,その外縁が不明確であり,出願人としては手探りでその後の対応をしなければならず,焦点を絞った主張が困難であるから,本件拒絶査定は,指定役務を明確にして拒絶理由を示す義務を果たしていない。 また,上記のとおり,本件拒絶査定には「納棺士に関する講演会・セミナーの企画・運営又は開催」が拒絶理由が存在する指定役務に含まれているが,この指定役務は,本願の指定役務とは異なるものであり,本件拒絶理由通知において示された審査対象とも異なっている。 そして,本件審決は,拒絶理由が存在する指定役務は,第45類「納棺,納棺に関する相談,遺体への死化粧の施術」のみであり,本願商標がそれ以外の第45類の指定役務及び第41類の全ての指定役務との関係では,商標法3条1項3号に該当しないことを初めて明らかにした。 そうすると,第41類の全 への死化粧の施術」のみであり,本願商標がそれ以外の第45類の指定役務及び第41類の全ての指定役務との関係では,商標法3条1項3号に該当しないことを初めて明らかにした。 そうすると,第41類の全ての指定役務及び第45類の指定役務のうち,少なくとも「遺体の入浴・洗浄」は,本件拒絶理由通知記載の「納棺に関連した役務」に含まれないことになるにもかかわらず,これらの指定役務について拒絶の理由を通知して意見書を提出する機会を与えることなく,本件拒絶査定がされたことになるから,商標法15条の2に違反する。 また,本件審決が示した拒絶理由が存在する指定役務中,特に「遺体への死化粧の施術」は,本願の審査及び本件審判手続を通じて全く原告に通- 7 -知されることがなかったから,商標法55条の2第1項,15条の2に違反する。 イ以上の本願の審査及び本件審判の経過によれば,本願の審査手続においては,商標法15条の2違反の瑕疵があり,本件審判手続においては,本願の審査手続における上記瑕疵について審理をしなかった瑕疵があるほか,拒絶理由が存在する指定役務の存在が明らかとなった時点で,出願人である原告に対し,同法55条の2第1項,15条の2により,本件拒絶査定の理由とは異なる拒絶の理由を発見した場合に当たるとして拒絶理由を通知し,意見書の提出や補正の機会を与えるべきであったにもかかわらず,これを怠ったまま,本件審決をした瑕疵がある。 したがって,本願の審査及び本件審判手続には,商標法55条の2第1項,15条の2に違反する手続違背があるから,本件審決は,違法である。 2 被告の主張(1) 取消事由1(本願商標の商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)に対しア本願商標は,「死体を棺に収めること。」を意味する「納棺」の語と「一定の資格・役割をも 法である。 2 被告の主張(1) 取消事由1(本願商標の商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)に対しア本願商標は,「死体を棺に収めること。」を意味する「納棺」の語と「一定の資格・役割をもった者。」等の意味を有し,特定の業務に関する職名を示すものとして「消防士,航海士,機関士」のように使用されている「士」の語とを組み合わせてなるものと容易に看取し,理解されるから,本願商標は,その構成文字に相応して,「納棺の役割をもった者」程の意味合いを認識させるものといえる。なお,「士」の語に「さむらい」等の意味があるとしても,「一定の資格・役割をもった者」の意味もあり,納棺を行う者について「納棺士」の文字が使用されているのであるから,本願商標が「納棺の役割をもった者」の意味合いを認識させることを否定する根拠にはならない。 また,仮に「士」の文字が「師」の文字と比べて需要者から信頼感を持たれることがあるとしても,そのことと「士」の文字を使用した場合に自- 8 -他役務の識別力を有するかとは別異のことである。 次に,「納棺」に際しては,亡くなった人の体を清め,死装束を着せ,化粧をし,棺に収めることなどが行われるが,これらの役務は専門的な知識や技能を持つ者によって提供されることが一般的であり,このような者を表す語として,ウェブサイト等では「納棺士」の文字が使用されている実情がある(乙3ないし19)。 そして,本願商標の指定役務中,第45類「納棺,納棺に関する相談,遺体への死化粧の施術,遺体の入浴・洗浄」は,納棺を行う者すなわち「納棺士」により提供される役務そのものであるといえる。 そうすると,本願商標を上記各役務について使用しても,これに接する取引者,需要者は,容易に「納棺士に関する役務」であることを理解し,単に役務の質を表し より提供される役務そのものであるといえる。 そうすると,本願商標を上記各役務について使用しても,これに接する取引者,需要者は,容易に「納棺士に関する役務」であることを理解し,単に役務の質を表したものとして認識するにとどまるというべきであるから,本願商標は,役務の質を普通に用いられる方法で表したものからなる商標であって,取引者,需要者が自他役務を識別するための標識と認識し得ないものとして,商標法3条1項3号に該当する。 イこれに対し原告は,「納棺士」の語がウェブサイトに掲載されているという事実のみをもって,そのサイトの運営主体による使用であると直ちに認定することはできないなどとして,本件審決が挙げたウェブサイトにおける「納棺士」の使用例をもって本願商標が商標法3条1項3号に該当することの根拠にならない旨主張する。 しかしながら,ウェブサイトの運営主体は,そのウェブサイトにおいて自己の業務を説明し,宣伝等を行っており,たとえ,ウェブサイトの作成,更新等の技術的な作業を第三者に委託していたとしても,そこに表示されている情報に対しては,運営主体が責任をもって提供,管理しているのが通常であるから,ウェブサイトの情報について,運営主体の使用であることを否定することは妥当ではない。 - 9 -したがって,原告の上記主張は失当である。 ウ以上によれば,本願商標は商標法3条1項3号に該当するとした本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由1は理由がない。 (2) 取消事由2(手続違背)に対し本件拒絶理由通知は,本願商標を「本願指定役務中「納棺に関連した役務」に使用した場合,…役務の質(内容)を表示するにすぎない」と認定判断し,出願人である原告に対し,意見書を提出する機会を与えた。 次に,本件拒絶査定は,「本願商標をその 役務中「納棺に関連した役務」に使用した場合,…役務の質(内容)を表示するにすぎない」と認定判断し,出願人である原告に対し,意見書を提出する機会を与えた。 次に,本件拒絶査定は,「本願商標をその指定役務中,第41類「納棺士に関する知識の教授,納棺士に関する資格検定試験に関する情報の提供,納棺士に関する資格検定試験の実施,納棺士に関する資格の認定及び資格の付与,納棺士に関する講演会・セミナーの企画・運営又は開催」等,第44類「遺体の入浴・洗浄,納棺,納棺に関する相談」等に使用した時は,…これに接する取引者,需要者にその役務の質(内容)を表示したものと認識させるに止まるもの」と認定判断した(なお,本件拒絶査定中の「第44類」は「第45類」の誤記である。)。 さらに,本件審決は,「本願商標をその指定役務中の第45類「納棺,納棺に関する相談,遺体への死化粧の施術」について使用した場合,これに接する需要者は,…役務の質を表してなるものと認識するにとどまる」と認定判断した。そして,第45類「納棺,納棺に関する相談,遺体への死化粧の施術」(本件役務)が,本件拒絶理由通知記載の「納棺に関連した役務」の範疇にあることは明らかである。 以上によれば,本件審決において本願商標が商標法3条1項3号に該当すると認定した本件役務について,本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定の各段階において,原告に対して明確に通知し,意見を述べる機会を与えていることは明らかである。実際に,原告は,平成25年11月15日付けの意見書(甲3)及び平成26年10月14日付けの審判請求書(甲6)において,- 10 -本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定に対してそれぞれ意見を述べている。 したがって,本願の審査及び本件審判手続に手続違背の違法があるものとはいえないから,原告主張の 甲6)において,- 10 -本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定に対してそれぞれ意見を述べている。 したがって,本願の審査及び本件審判手続に手続違背の違法があるものとはいえないから,原告主張の取消事由2は理由がない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(本願商標の商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について(1) 本願商標の商標法3条1項3号該当性についてア商標法3条1項3号が,その役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途,態様,提供の方法若しくは時期その他の特徴,数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について商標登録の要件を欠くと規定しているのは,このような商標は,指定役務との関係で,その役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途その他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他役務の識別力を欠くものであることによるものと解される。 そうすると,本願商標が,本件役務について役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには,本件審決がされた平成27年2月23日の時点において,本願商標が本件役務との関係で役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり,本願商標の取引者,需要者によって本願商標が本件役務に使用された場合に,将来を含め,役務の質を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される。 イ(ア) これを本件についてみるに,本願商標は,「納棺士」の漢字3文字を標準文字で表してなるものであり,本願商標から「ノウカンシ」の称呼が生じる。 認識されるものであれば足りると解される。 イ(ア) これを本件についてみるに,本願商標は,「納棺士」の漢字3文字を標準文字で表してなるものであり,本願商標から「ノウカンシ」の称呼が生じる。 - 11 -広辞苑第六版(平成20年1月11日発行。乙1及び2)によれば,本願商標を構成する「納棺」の語は,「死体を棺に納めること。」を意味し,「士」の語は,「兵卒の指揮をつかさどる人。また,軍人。兵。」,「近世封建社会の身分の一つ。もののふ。さむらい。」,「学徳を修めたりっぱな男子。また,男子の敬称。」,「一定の資格・役割をもった者。」などを意味することが認められる。 そして,「士」の語が「一定の資格・役割をもった者。」という意味で用いられる場合には,「弁護士,弁理士,税理士,栄養士,消防士,航海士,機関士」などのように,その業務や役割などを表す語に続けて付されるのが通常であることからすると,「納棺」,すなわち「死体を棺に納めること。」という業務や役割を表す語に続けて付された「士」の語についても,「一定の資格・役割をもった者。」という意味で用いられているものと自然に理解することができる。 したがって,本願商標は,その言語構成に照らし,「死者を棺に納める資格ないし役割をもった者」との意味合いを一般に想起させるものということができる。 (イ) 次に,証拠(甲9ないし40,乙3ないし19)及び弁論の全趣旨によれば,①「納棺」の際には,死者の身体を洗い清め,死装束を着せ,髪型を整え,死化粧を施した上で遺体を棺に納める儀式が一般的に執り行われていること,②この儀式は,元来は遺族や親族によって執り行われていたが,必要な知識や技能を持つ者が,専業的に,葬儀業者の従業員として,あるいは葬儀業者から請け負って,遺族等とともに執り行われるのが ていること,②この儀式は,元来は遺族や親族によって執り行われていたが,必要な知識や技能を持つ者が,専業的に,葬儀業者の従業員として,あるいは葬儀業者から請け負って,遺族等とともに執り行われるのが通常であること,③葬儀業者等のウェブサイト(乙3ないし12,17ないし19)及び新聞記事(1994年(平成6年)11月22日付け北海道新聞朝刊(乙13),2007年(平成19年)4月5日付け毎日新聞(乙14),2008年(平成20年)5月10日付け- 12 -河北新報朝刊(乙15),2013年(平成25年)4月28日付け毎日新聞(乙16))には,この儀式を専業的に執り行う者を「納棺士」と表示している例がみられることが認められる。 (ウ) 以上によれば,本件審決日当時,本願商標は,その言語構成に照らし,「死者を棺に納める資格ないし役割をもった者」との意味合いを一般に想起させるものであり,葬儀業者,遺族等によって納棺の際に執り行われる儀式を専業的に提供する者を表す語として認識されるものであったものと認められる。 そうすると,本願商標は,本件役務である「納棺,納棺に関する相談,遺体への死化粧の施術」に使用されたときは,その役務が「死者を棺に納める資格ないし役割をもった者」によって提供されるという役務の質を表示するものとして,取引者,需要者である葬儀業者,遺族等によって一般に認識されるものであり,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであったものと認められるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,自他役務識別力を欠くものというべきである。 加えて,本願商標は,標準文字で構成されているから,「納棺士」の文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるということができる。 し 務識別力を欠くものというべきである。 加えて,本願商標は,標準文字で構成されているから,「納棺士」の文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるということができる。 したがって,本願商標は,商標法3条1項3号に該当するものと認められる。 (2) 原告の主張について原告は,本願商標の「納棺士」の語は,本件役務の需要者である身内の死に直面した者においては,「士」の語が武士の意味合いを強く発揮し得るものであり,取引者,需要者である葬儀業者においては,自他役務の識別力を有すること,納棺の業務を行う者を表す語としては,「納棺師」の語が,「納- 13 -棺士」の語よりも,広く世の中に知られており,「納棺士」の語は納棺の業務を行う者を表す語として定着しているとはいえないことからすると,本願商標は,本件役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえないから,商標法3条1項3号に該当しない旨主張する。 しかしながら,原告の主張は,以下のとおり理由がない。 ア 「士」の語には「兵卒の指揮をつかさどる人。また,軍人。兵。」,「近世封建社会の身分の一つ。もののふ。さむらい。」との意味もあり(前記(1)イ(ア)),このような意味で用いられ,語尾に「士」が付される場合としては,「勇士,武士,兵士」のような例はあるが,「弁護士,弁理士,税理士,栄養士,消防士,航海士,機関士」などのように,その業務や役割などを表す語に続けて付される場合には,「一定の資格・役割をもった者。」との意味に理解されるのが通常であるから,「納棺」という業務や役割を表す語に続けて付された「士」の語についても,これと同様に,「一定の資格・役割をもった者。」との意味に理解されるものであり,武士の意味合いを強く発揮し得るものということ ,「納棺」という業務や役割を表す語に続けて付された「士」の語についても,これと同様に,「一定の資格・役割をもった者。」との意味に理解されるものであり,武士の意味合いを強く発揮し得るものということはできない。 イ 「コトバンク」のウェブサイト(甲31)に,「知恵蔵2015の解説」として,「納棺師」の語について,「亡くなった人の体を清め,死装束を着せ,きれいに化粧して棺に納める仕事。葬儀というしめやかな儀式にかかわる職業のため,あまり知られていなかったが,納棺師を描いた映画「おくりびと」が第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したことで,一躍,注目を浴びる職業となった。」との記事が掲載され,「webilo」のウェブサイト(甲32)に,「納棺師」の見出し語について,「納棺師(のうかんし)は,死者を棺に納めるために必要な作業と関連商品の販売を行う職業人である。」との掲載があるほか,証拠(甲9ないし30,33ないし40)によれば,「納棺師」の語が,納棺の際に執り行われる儀式を専業的に提供する者を表す語として,葬儀業者,斎場,テレビ番組「NH- 14 -Kスペシャル」等のウェブサイトや,新聞,書籍等でも使用されていることが認められる。 他方で,本願商標を構成する「納棺士」の語についても,本件審決日当時,その言語構成に照らし,「死者を棺に納める資格ないし役割をもった者」との意味合いを一般に想起させるものであり,葬儀業者,遺族等によって,納棺の際に執り行われる儀式を専業的に提供する者を表す語として認識されるものであったものと認められることは,前記(1)イ(ウ)に認定のとおりであるから,本願商標は,本件役務である「納棺,納棺に関する相談,遺体への死化粧の施術」に使用されたときは,その役務が「死者を棺に納める資格ないし役割をもった者」によっ (1)イ(ウ)に認定のとおりであるから,本願商標は,本件役務である「納棺,納棺に関する相談,遺体への死化粧の施術」に使用されたときは,その役務が「死者を棺に納める資格ないし役割をもった者」によって提供されるという役務の質を表示するものとして,取引者,需要者である葬儀業者,遺族等によって一般に認識されるものであり,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであったものと認められる。 そして,本願商標が本件役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるとして商標法3条1項3号に該当するというためには,本件審決日当時において,本願商標が本件役務との関係で役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり,本願商標の取引者,需要者によって本願商標が本件役務に使用された場合に,将来を含め,役務の質を表示したものと一般に認識されるものであれば足り,それが一般に用いられていた実情があったことまで必要とするものではないというべきであるから,納棺の業務を行う者を表す語として,「納棺師」の語が,「納棺士」の語よりも,広く世の中に知られているかどうかによって,本願商標の同号該当性が左右されるものではない。 ウしたがって,本願商標が商標法3条1項3号に該当しないとの原告の主張は,理由がない。 (3) 小括- 15 -以上のとおり,本願商標は,本件審決日当時において,本件役務との関係で商標法3条1項3号に該当する商標であったと認められるから,これと同旨の本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(手続違背)について(1) 原告は,本願の審査及び本件審判手続には,商標法55条の2第1項,15条の2に違反する手続違背があるから,本件審決は,違法である旨主張す 理由がない。 2 取消事由2(手続違背)について(1) 原告は,本願の審査及び本件審判手続には,商標法55条の2第1項,15条の2に違反する手続違背があるから,本件審決は,違法である旨主張する。 ア前記第2の事実と証拠(甲1ないし6)によれば,本願の出願経過等として,以下の事実が認められる。 (ア) 特許庁審査官は,本願について,平成25年10月3日付けで本件拒絶理由通知をした。 本件拒絶理由通知(甲2)には,「拒絶の理由1」として,「この商標登録出願に係る商標は「納棺士」の文字よりなるところ,そのうちの「納棺」の文字部分は「死者を棺に納めること」を意味する語であり,それ以外の「士」の文字部分は「1.学徳を修めたりっぱな男子,2. 男子の敬称,3.一定の資格・役割をもった者」等の意味を有し,「弁護士,弁理士,税理士,栄養士」として使われる語であることからすると,これを本願指定役務中「納棺に関連した役務」に使用した場合,それに接する取引者・需要者は単に「死者を棺に納める人」程度を想起するものでありますから,役務の質(内容)を表示するにすぎないものと認めます。したがって,この商標登録出願に係る商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記役務以外の第45類「葬儀の執行」の役務に使用するときは,役務の質の誤認を生じさせるおそれがありますので,商標法第4条第1項第16号に該当します。」との記載があった。 また,本件拒絶理由通知には,意見があれば,本件拒絶理由通知の発送日(平成25年10月8日)から「40日以内に意見書を提出してく- 16 -ださい。」との記載があった。 (イ) 原告は,本件拒絶理由通知に対して,平成25年11月15日付け意見書を提出するとともに,同日付け手続補正書により本願の指定役務について本件補正をし 16 -ださい。」との記載があった。 (イ) 原告は,本件拒絶理由通知に対して,平成25年11月15日付け意見書を提出するとともに,同日付け手続補正書により本願の指定役務について本件補正をした。 本件補正によって,本願の指定役務(前記第2の1(1)ア)から第41類「講演会・セミナーの企画・運営又は開催,書籍の制作」及び第45類「葬儀の執行,葬儀の執行に関する相談」が削除され,本件補正後の指定役務は,前記第2の1(1)イのとおりとなった。 また,平成25年11月15日付け意見書(甲3)には,本件拒絶理由通知記載の「拒絶の理由1」に対する意見として次のような記載があった。 a 「(「士の文字部分」が)『「弁護士,弁理士,税理士,栄養士」として使われる語であることからすると,これを本願指定役務中「納棺に関連した役務」に使用した場合,それに接する取引者・需要者は単に「死者を棺に納める人」程度を想起するものでありますから,役務の質(内容)を表示するにすぎないものと認めます。』との認定に対しては承服できません。」,「本拒絶理由通知では述べられていませんが,「士」の文字には,「さむらい。武士。」(…)の意味があります。…つまり,「納棺士」だからこそ,「士」の文字部分の武士としての意味合いが強くなり,これにより本願商標「納棺士」に大きな信頼,信用が化体し得るのです。」,「このように,武士の意味を持ち,死者を扱う役務に使用することにより,その意味をより強く発揮し得る「士」の文字と,死者を棺に納めることを意味する「納棺」の文字とを結合した造語である「納棺士」は,役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ではないので,商標法第3条第1項第3号に該当するものでないことは明らかです。」- 17 -b 「また,本拒絶理 ある「納棺士」は,役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ではないので,商標法第3条第1項第3号に該当するものでないことは明らかです。」- 17 -b 「また,本拒絶理由通知に関し,出願人は,役務「葬儀の執行」に商標「納棺士」を使用しても役務の質の誤認を生じさせるものではないと考えますが,本補正により,「葬儀の執行,葬儀の執行に関する相談」を削除しましたので,商標法第4条第1項第16号に該当しないことは明らかになったものと思料いたします。」(ウ) 特許庁審査官は,本願について,平成26年7月9日付けで本件拒絶査定をした。 本件拒絶査定(甲5)には,「理由」として,次のような記載があった。 a 「この商標登録出願については,平成25年10月3日付けで通知した理由1.(商標法第3条第1項第3号に該当する。)により,商標として登録をすることができません。」b 「…本願商標は「納棺士」の文字の漢字を標準文字で表してなるものでありますが,「納棺士」の語は下記添付資料のサイトによれば,葬儀に関する役務を提供するものとして複数の者が使用しています。」,「そうすると,本願商標をその指定役務中,第41類「納棺士に関する知識の教授,納棺士に関する資格検定試験に関する情報の提供,納棺士に関する資格検定試験の実施,納棺士に関する資格の認定及び資格の付与,納棺士に関する講演会・セミナーの企画・運営又は開催」等,第44類「遺体の入浴・洗浄,納棺,納棺に関する相談」等に使用した時は,該商標は何人もその使用を欲するものといわざるを得ませんので,自他役務の識別力を認めることができず,これに接する取引者,需要者にその役務の質(内容)を表示したものと認識させるに止まるものとみるのが相当であって,出所の表示機能や自他役務の識別機 ませんので,自他役務の識別力を認めることができず,これに接する取引者,需要者にその役務の質(内容)を表示したものと認識させるに止まるものとみるのが相当であって,出所の表示機能や自他役務の識別機能を果たすものはないというべきです。」c 「したがって,他の拒絶理由を検討することもなく,本願商標は商- 18 -標法第3条に該当するため,先の認定を覆すことはできません。」(エ) 原告は,平成26年10月14日,本件拒絶査定に対する拒絶査定不服審判を請求した。 同日付け審判請求書(甲6)には,「3.本願商標が登録されるべき理由」の「(1) 商標法第3条第1項第3号について」として,次のような記載があった。 a 「(1-4) 原査定の違法性…しかし,審査官は出願人の上記主張1を誤認し,また上記主張2については何ら見解を示さず,また審査官が拒絶理由通知書の理由1で自ら法第3条第1項第3号該当の論拠とした,「士」が単なる「人」の意味であることの妥当性については弁明せず,原査定において「納棺士」が掲載されたサイトの事例を新たに持ち出して法第3条第1項第3号を理由に直ちに拒絶査定を行った。これは意図的かつ一方的な論旨の変更であり,原査定において新たに追加したサイトの事例は単なる理由の補強とはならず,実質的に出願人に意見を述べる機会を与えなかったことになり,商標法第15条の2に違反している可能性が高い。」,「特に,審査官は,原査定の冒頭で,『この商標登録出願については,平成25年10月3日付けで通知した理由1.(商標法第3条第1項第3号に該当する。)により,商標として登録をすることができません。』と述べておきながら,尚書き以降では,出所の表示機能や自他役務の識別機能を認めることができないとして,本願商標は商標法第3条に該当すると認 当する。)により,商標として登録をすることができません。』と述べておきながら,尚書き以降では,出所の表示機能や自他役務の識別機能を認めることができないとして,本願商標は商標法第3条に該当すると認定している。拒絶理由通知のときよりも,さらに曖昧かつ漠然とした内容になっている。仮に,この認定が,結果的に他の号(法第3条第1項各号における3号以外の号)を含むものであれば,明らかに出願人に意見を述べる機会を与えることなく拒絶査定を行ったことになり商標法第15条の2に該当し,重大- 19 -かつ深刻な問題である。」b 「(1-5)法第3条第1項第3号についての結論以上のごとく,原査定において審査官が示したサイトの事例は,「納棺士」が法第3条第1項第3号に該当することの証拠となり得ず,また上述した主張1および主張2により,「納棺士」は,役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ではなく法第3条第1項第3号に該当しないことは明らかである。」(オ) 本件審決は,本願商標をその指定役務中の第45類に属する「納棺,納棺に関する相談,遺体への死化粧の施術」(本件役務)について使用した場合,これに接する需要者は,その役務が「納棺士」により提供されるものであること,すなわち,役務の質を表してなるものと認識するにとどまるとみるのが相当であって,本願商標は,本件役務については,役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といえるから,商標法3条1項3号に該当し,商標登録を受けることができない旨判断した。 イ前記アの認定事実によれば,①本件拒絶査定には,その理由として,本件拒絶理由通知で通知した「理由1.(商標法第3条第1項第3号に該当する。)」により,商標登録をすることができない旨の記載があり,本件拒絶査 認定事実によれば,①本件拒絶査定には,その理由として,本件拒絶理由通知で通知した「理由1.(商標法第3条第1項第3号に該当する。)」により,商標登録をすることができない旨の記載があり,本件拒絶査定は,その拒絶理由が本件拒絶理由通知記載の「理由1」(商標法3条1項3号該当)と同一であることを明確に示していること,②本件拒絶理由通知記載の「理由1」(商標法3条1項3号該当)の拒絶理由は,本願商標を本願指定役務中「納棺に関連した役務」に使用した場合には,役務の質(内容)を表示するにすぎないものであるから,本願商標は,商標法3条1項3号に該当するというものであり,本件拒絶査定においては,「納棺に関連した役務」として,具体的に,納棺士に関する「第41類」の役務のほか,「第44類「遺体の入浴・洗浄,納棺,納棺に関する相談」- 20 -等」(ただし,「第44類」は「第45類」の誤記である。)を挙げて,これらの役務との関係において,本願商標は,取引者,需要者にその役務の質(内容)を表示したものと認識させるにとどまるものとみるのが相当であるから,本願商標は,商標法3条1項3号に該当する拒絶理由がある旨判断したこと,③本件審決は,本願商標は,第45類「納棺,納棺に関する相談,遺体への死化粧の施術」(本件役務)との関係において,役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから,商標法3条1項3号に該当する拒絶理由がある旨判断したことが認められる。 そして,本件審決が商標法3条1項3号に該当する拒絶理由があるとした本願商標の指定役務中の本件役務が,本件拒絶理由通知記載の「納棺に関連した役務」に含まれることは明らかであり,本件拒絶査定記載の「「遺体の入浴・洗浄,納棺,納棺に関する相談」等」に含まれることも明らかである。 中の本件役務が,本件拒絶理由通知記載の「納棺に関連した役務」に含まれることは明らかであり,本件拒絶査定記載の「「遺体の入浴・洗浄,納棺,納棺に関する相談」等」に含まれることも明らかである。 そうすると,本件拒絶査定における拒絶理由は,本件拒絶理由通知で既に通知されていたものと認められ,また,本件審決における拒絶理由は,本件拒絶査定における拒絶理由と実質的に同一であるものと認められるから,本件拒絶査定における拒絶理由と異なる新たな拒絶理由を構成するものとはいえない。 したがって,本願の審査及び本件審判手続において,商標法55条の2第1項,15条の2に違反する手続違背があるものと認めることはできない。 ウこれに対し原告は,①本件拒絶理由通知には,商標法3条1項3号の拒絶理由が存在する指定役務について,単に「納棺に関連した役務」としか記載されておらず,具体的に示されていなかったこと,本件拒絶査定が拒絶理由が存在する指定役務として述べる第41類及び第44類の役務には- 21 -「等」の語が存在することにより,どの指定役務まで拒絶理由が及んでいるのか,その外縁が不明確であることからすると,本件拒絶査定は,指定役務を明確にして拒絶理由を示す義務を果たしていない,②本件審決は,拒絶理由が存在する指定役務は,第45類「納棺,納棺に関する相談,遺体への死化粧の施術」のみであり,本願商標がそれ以外の第45類の指定役務及び第41類の全ての指定役務との関係では,商標法3条1項3号に該当しないことを初めて明らかにしたことからすると,第41類の全ての指定役務及び第45類の指定役務のうち,少なくとも「遺体の入浴・洗浄」は,本件拒絶理由通知記載の「納棺に関連した役務」に含まれないことになるにもかかわらず,これらの指定役務について拒絶の理由を通知し 指定役務及び第45類の指定役務のうち,少なくとも「遺体の入浴・洗浄」は,本件拒絶理由通知記載の「納棺に関連した役務」に含まれないことになるにもかかわらず,これらの指定役務について拒絶の理由を通知して意見書を提出する機会を与えることなく,本件拒絶査定がされたことになるから,商標法15条の2に違反する,③本件審決が示した拒絶理由が存在する指定役務中,特に「遺体への死化粧の施術」は,本願の審査及び本件審判手続を通じて全く原告に通知されることがなかったから,商標法55条の2第1項,15条の2に違反するなどと主張する。 しかしながら,原告の主張は,以下のとおり理由がない。 (ア) 上記①及び③について前記アの認定事実によれば,原告は,平成25年11月15日付け意見書において,本件拒絶理由通知記載の「拒絶の理由1」に対する意見として,武士の意味を持ち,死者を扱う役務に使用することにより,その意味をより強く発揮し得る「士」の文字と,死者を棺に納めることを意味する「納棺」の文字とを結合した造語である,本願商標の「納棺士」は,役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ではないから,商標法3条1項3号に該当するものでない旨述べ,さらには,平成26年10月14日付け審判請求書において,「納棺士」は,役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標では- 22 -なく,本願商標は商標法3条1項3号に該当しないから,本件拒絶査定が誤りである旨を詳細に述べていることが認められる。 上記認定事実によれば,原告は,本件拒絶査定及び本件審決に先立って,商標法3条1項3号の拒絶理由に対して意見を述べる機会を付与され,実際に意見を述べていることは明らかである。 また,本件拒絶理由通知には,商標法3条1項3号の拒絶理由が存 及び本件審決に先立って,商標法3条1項3号の拒絶理由に対して意見を述べる機会を付与され,実際に意見を述べていることは明らかである。 また,本件拒絶理由通知には,商標法3条1項3号の拒絶理由が存在する指定役務について本願指定役務中の「納棺に関連した役務」と記載され,「納棺に関連した役務」に該当する個々の役務の記載がなかったことや,本件拒絶査定には,同号の拒絶理由が存在する指定役務として挙げた役務に「等」の語が存在することをもって,原告が同号の拒絶理由に対する意見を述べる上で不利益を受けたものと認めることはできない。 さらに,「納棺」の際には,死者の身体を洗い清め,死装束を着せ,髪型を整え,死化粧を施した上で遺体を棺に納める儀式が一般的に執り行われていること(前記1(1)イ(イ))からすると,本件審決が商標法3条1項3号の拒絶理由が存在する指定役務として示した「遺体への死化粧の施術」が,「納棺に関連した役務」に該当することは自明であるから,本件拒絶査定に具体的に示されていなかったからといって,原告が同号の拒絶理由に対する意見を述べる上で不利益を受けたものと認めることはできない。 以上によれば,原告主張の上記①及び③の事情は,本願の審査及び本件審判手続において商標法55条の2第1項,15条の2違反があることの根拠となるものではない。 (イ) 上記②について本件審決が,本願の指定役務中第45類「納棺,納棺に関する相談,遺体への死化粧の施術」との関係で本願商標が商標法3条1項3号に該- 23 -当する旨判断したからといって,当然に本願商標がその余の本願の指定役務との関係で同号に該当しないとの判断を示したものとはいえないから,原告主張の上記②の点は,その前提において採用することができない。 (2) 以上のとおり,本願 然に本願商標がその余の本願の指定役務との関係で同号に該当しないとの判断を示したものとはいえないから,原告主張の上記②の点は,その前提において採用することができない。 (2) 以上のとおり,本願の審査及び本件審判手続において,商標法55条の2第1項,15条の2に違反する手続違背があるものと認めることはできないから,原告主張の取消事由2は理由がない。 3 結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。 したがって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官田中正哉 裁判官神谷厚毅
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