平成26年5月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(ワ)第7563号損害賠償請求事件(口頭弁論終結の日平成26年4月21日)判決東京都中央区<以下略>原告リーフラス株式会社同訴訟代理人弁護士伊東 眞同佐藤健太福岡市<以下略>被告 A同訴訟代理人弁護士川副正敏同大神昌憲同福地正明同守田尚弘 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,1878万4260円及びこれに対する平成24年6月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,子供向けスポーツスクールの運営受託等を目的とする株式会社である原告が,原告の従業員(原告運営の「こころ剣道教室」と称する剣道教室(以下「原告剣道教室」という。)で指導員をしていた。)であった被告に対し,被告は,原告を退職した後,「あすなろ剣道教室」と称する剣道教室(以 下「被告剣道教室」という。)を開設したが,その際,原告から開示された営業秘密である顧客情報を使用して原告剣道教室に在籍していた生徒を被告剣道教室に勧誘したと主張した上,①被告の上記行為が不正競争防止法2条 剣道教室」という。)を開設したが,その際,原告から開示された営業秘密である顧客情報を使用して原告剣道教室に在籍していた生徒を被告剣道教室に勧誘したと主張した上,①被告の上記行為が不正競争防止法2条1項7号に該当するとして,同法4条に基づく損害賠償金595万5000円(なお,原告は,平成25年12月12日付け原告第2準備書面5頁において,その主張に係る損害賠償金の額を556万0800円に改めたが,請求の減縮をしていない。)の支払を求めるとともに,②被告の上記行為が違約罰を定めた原告の就業規則(以下「原告就業規則」という。)49条6項に該当するとして,違約金1112万1600円の支払を求め,さらに,③被告の上記行為と因果関係のある原告の損害であるとして,弁護士費用170万7660円の支払を求めた事案である(なお,原告は,附帯請求として,被告の上記勧誘行為の日(不正競争を行った日であり,上記違約罰の発生原因となる不正行為を行った日)である平成24年6月15日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。)。 1 前提事実(当事者間に争いがない事実及び各末尾に掲げた証拠により容易に認定される事実。ただし,当事者間に争いがない事実であっても,参考のために証拠を掲げたものもある。)(1) 原告は,子供向けスポーツスクールの運営受託等を目的とする株式会社であり,福岡市内及びその周辺において,原告剣道教室を運営している(甲13,14)。 (2) 被告は,原告設立当初である平成13年8月から原告に入社し,平成21年6月からは原告の剣道事業部の責任者となり,平成24年2月末までは,主として原告剣道教室において指導員として従事し,同年3月頃から原告関連の専門学校へ出向していた(甲14)。 (3) 原告就業規則49条6項 原告の剣道事業部の責任者となり,平成24年2月末までは,主として原告剣道教室において指導員として従事し,同年3月頃から原告関連の専門学校へ出向していた(甲14)。 (3) 原告就業規則49条6項には,次のとおり規定されている(甲5)。 「個人情報及び営業ノウハウなどの会社情報を活用しての商行為(特定非営 利活動も含む)に関与した者は,損害賠償として退職時の年俸の2年分の額の罰金を科すものとする。なお,退職後2年間は有効とする。」(4) 原告は,被告が業務について不正な行為を行った等(従業員に対する暴言等)として,平成24年4月30日をもって被告を解雇した。これに対し,被告は,同年5月31日,原告を相手方として,福岡地方裁判所に対し,同解雇が無効であると主張して,雇用契約上の権利を有することを確認することなどを求める労働審判を申し立てた(乙1)。同審判手続において,同年9月21日,被告が同年4月30日限り原告を退職したことを確認するとともに,原告が被告に解決金300万円を支払うことなどを内容とする審判が告知され(乙7),その後,同審判は確定した。 (5) 被告は,上記労働審判係属中の平成24年6月12日,福岡市内を中心として,子供向けの剣道教室である被告剣道教室を設立した。なお,被告剣道教室は,平成25年2月,被告を理事長とする特定非営利活動法人あすなろ剣道教室として認証された(争いがない。なお,同法人の定款につき甲9の1)。 2 争点(1) 原告の保有する顧客に関する情報が不正競争防止法2条6項の営業秘密に該当するか(争点1)。 (2) 被告が,原告の保有する顧客に関する情報を使用し,不正競争防止法2条1項7号に該当する不正競争を行ったか(争点2)。 (3) 被告が,原告の保有する顧客に関する情報を使用し,原告就 1)。 (2) 被告が,原告の保有する顧客に関する情報を使用し,不正競争防止法2条1項7号に該当する不正競争を行ったか(争点2)。 (3) 被告が,原告の保有する顧客に関する情報を使用し,原告就業規則に規定する不正行為を行ったか(争点3)。 (4) 原告が被った損害の発生及びその額(争点4) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(原告の保有する顧客に関する情報が不正競争防止法2条6項の営業秘密に該当するか)について (原告の主張)ア本件顧客情報原告は,運営するスポーツ教室の入会確認書に顧客が記載した「生徒の氏名,性別,生年月日,保護者氏名,住所」等の情報を各スポーツ教室ごとに顧客データベースとしてまとめている(以下,このデータベースを「顧客データベース」といい,入会確認書に記載された情報と顧客データベースに登録された情報を合わせて「本件顧客情報」という。)。 イ秘密管理性顧客データベースは原告本店のシステム課で登録されており,顧客データベースにアクセスするには,ログインIDとパスワードが必要である。 各教室の指導員については,生徒に連絡をとる必要があるため,原告から携帯電話やスマートフォンが支給され,各指導員は,これらの機器からIDとパスワードを用いることで顧客データベースを閲覧できた。ただし,各指導員が閲覧できる範囲は,自己が指導しているスポーツ教室(被告の場合は原告剣道教室)に限定されており,上記機器は,各指導員が退職する際には原告に返還されることになっていた。 入会確認書は,原告本店が福岡にあった時には,本店の商品管理課の施錠できる棚で保管され,鍵は商品管理課長が管理し,原告本店が東京に移転した後は,本店のシステム課において鍵付きロッカーで保管され,鍵はシステム課長が管理している。 さ 時には,本店の商品管理課の施錠できる棚で保管され,鍵は商品管理課長が管理し,原告本店が東京に移転した後は,本店のシステム課において鍵付きロッカーで保管され,鍵はシステム課長が管理している。 さらに,本件顧客情報には個人情報が含まれるところ,原告は,原告就業規則において個人情報の取扱いについて規定を設け,平成20年より適用された個人情報の保護に関する管理規定(甲6)において本件顧客情報を含む個人情報の取扱いについて定めていた。 ウ有用性・非公知性本件顧客情報により,原告のスポーツ教室に通う子供達の年齢,受講 しているスポーツの種類等が分かり,生徒の好きなスポーツが明らかとなる。したがって,本件顧客情報は子供向けのスポーツ教室を運営する上で有用な情報である。また,本件顧客情報は一般に入手できない情報であるから非公知の情報である。 エ以上より,本件顧客情報は原告の営業秘密に該当する。 (被告の主張)ア本件顧客情報の登録及び管理方法の詳細については不知。 イ原告が退職する従業員に対して署名を求めていた秘密保持に関する誓約書(乙8)には,秘密情報の定義として,①財務,人事等に関する情報,②他社との業務提携に関する情報,③上司又は営業秘密等管理責任者により秘密情報として指定された情報,④以上の他,原告が特に秘密保持対象として指定した情報であるとされているところ,原告は従業員に対して本件顧客情報が営業秘密に当たることを明示しておらず,本件顧客情報は上記のいずれにも該当しない。 よって,本件顧客情報が原告の営業秘密であることは争う。 (2) 争点2(被告が,原告の保有する顧客に関する情報を使用し,不正競争防止法2条1項7号に該当する不正競争を行ったか)について(原告の主張)ア本件顧客情報の使用被告は,平成 争う。 (2) 争点2(被告が,原告の保有する顧客に関する情報を使用し,不正競争防止法2条1項7号に該当する不正競争を行ったか)について(原告の主張)ア本件顧客情報の使用被告は,平成24年6月15日ころ,本件顧客情報を使用して,原告剣道教室の生徒及び以前に原告剣道教室の生徒であった者がいる家庭にのみ,被告が主催する被告剣道教室への勧誘のチラシを配布した。 被告が本件顧客情報を使用して原告剣道教室に関係する家庭のみに上記チラシの配布を行ったことは,従前原告剣道教室に在籍していた生徒のうち少なくとも14名の生徒が被告剣道教室に移籍し,そのうち12名は,被告剣道教室設立直前の平成24年6月5日もしくは同教室設立直後の同 年7月5日までに原告剣道教室から退会を申し出ていたこと,また,平成21年9月から平成24年9月までの3年間について,原告剣道教室の退会人数を確認したところ,平成24年4月から同年8月までの退会人数がそれまでと比較して突出して多いこと,原告剣道教室の生徒の保護者から被告のチラシがポスティングされたと聞いたことなどから明らかである。 イ原告の開示による本件顧客情報の取得被告は,原告剣道教室の指導員であったことから,原告から本件顧客情報を開示されて取得しているものである。 ウ図利加害目的被告は,原告から解雇を言い渡された際,退職時に署名・捺印することとなっている誓約書への署名捺印を拒否し,担当者に対して,退職後に被告自ら剣道教室を開くことを明らかにしていた。 また,被告は,原告の従業員に対して,平成23年10月頃から原告が訴外B株式会社に乗っ取られる,会社が潰れるなどと言いふらし,原告の経営方針に対する反感を持っていたことからすると,原告に対する対抗心から被告剣道教室を開設し,原告剣道教室の生 年10月頃から原告が訴外B株式会社に乗っ取られる,会社が潰れるなどと言いふらし,原告の経営方針に対する反感を持っていたことからすると,原告に対する対抗心から被告剣道教室を開設し,原告剣道教室の生徒が一人でも減少することを企てたものといえる。 さらに,被告剣道教室は原告剣道教室よりも入会金や会費が安いこと,被告は,原告剣道教室が所在する地域に合わせて被告剣道教室を開催していること,原告剣道教室に在籍していた生徒が合理的理由もなく地理的に不自然な被告剣道教室に移籍していることなどからも,被告が原告剣道教室の生徒数を減少させるという加害の意図を有していたことが裏付けられる。 上記から被告に図利加害目的があることは明らかである。 エ故意又は過失 被告は,原告設立当初からの従業員であり,本件顧客情報が原告の営業秘密に該当することを認識していたにもかかわらず,本件顧客情報を使用して,原告剣道教室の生徒や同教室の生徒であった者に対する勧誘を行ったものであり,営業秘密の不正使用について故意があった。 オ以上より,被告が本件顧客情報を使用して,原告剣道教室の生徒に対して被告剣道教室への勧誘を行った行為は,不正競争防止法2条1項7号に該当する。 (被告の主張)ア被告は原告剣道教室の生徒又は生徒であった者のいる家庭のみにチラシを配布したのではなく,被告剣道教室の体験会を実施するため,平成24年6月の1か月間に合計4万6000枚のチラシを印刷会社に注文し,体験会の会場となる福岡市内の小学校の校区周辺の家庭のポストに被告自ら投函したもので,中には新聞販売店を通じて日刊紙に折り込む形で配布したものも存する。 イ被告が本件顧客情報を原告から開示されて取得した事実はない。すなわち,被告が原告の従業員であった当時は,支給さ 函したもので,中には新聞販売店を通じて日刊紙に折り込む形で配布したものも存する。 イ被告が本件顧客情報を原告から開示されて取得した事実はない。すなわち,被告が原告の従業員であった当時は,支給された携帯電話等を用いて本件顧客情報の一部にアクセスすることができたにすぎず,平成24年4月に原告から解雇通知を受けた時点で被告が本件顧客情報を文書又はデータの形で保有していた事実はなく,その後に新たに取得した事実もない。 ウ被告が解雇を通告された際,原告が用意した誓約書への署名捺印を拒否した理由は,同誓約書には,原告就業規則に定めのない向後3年間の競業避止義務が記載されるなど受け入れ難い内容だったからであり,また,原告に対する対抗心から被告剣道教室を開いたものでもない。 エ上記のとおり,被告が本件顧客情報を使用して生徒の勧誘を行った事実はなく,不正競争行為の故意又は過失を論ずる前提を欠いている。 オ以上から,被告が不正競争防止法2条1項7号に該当する不正競争行為を行ったとの原告の主張は争う。 (3) 争点3(被告が,原告の保有する顧客に関する情報を使用し,原告就業規則に規定する不正行為を行ったか)について(原告の主張)ア被告が,原告の退職前又は退職後に,本件顧客情報を使用し,原告剣道教室の生徒や以前生徒であった者に対する勧誘を行ったという被告の行為は,退職後2年間のうちに個人情報や営業ノウハウ等の会社情報を活用しての商行為に関与した者に対して罰金を科すという規定である原告就業規則49条6項に該当する行為である。 イこの点,被告は,原告就業規則49条6項は,労働基準法16条に違反する旨主張する。しかし,同条の趣旨は,奴隷的拘束及び苦役からの自由の原則(憲法18条),強制労働禁止の原則(労働基準法5条)の実質化や の点,被告は,原告就業規則49条6項は,労働基準法16条に違反する旨主張する。しかし,同条の趣旨は,奴隷的拘束及び苦役からの自由の原則(憲法18条),強制労働禁止の原則(労働基準法5条)の実質化や労働者の退職の自由意思の確保にあるところ,原告就業規則49条6項の規定は,強制労働を強いるための規定でも,労働者の退職の自由意思を確保するための規定でもなく,退職後の被告の行動を問題としている本件訴訟では労働基準法16条の問題となり得ない。 (被告の主張)争う。そもそも原告就業規則49条6項は,損害賠償額の予定を禁じた労働基準法16条に反するものであり,同法13条によって無効であるから,就業規則違反に基づく原告の損害賠償請求は成り立ち得ない。 (4) 争点4(原告が被った損害の発生及びその額)について(原告の主張)被告が原告の本件顧客情報を不正に使用したことにより,原告には下記のとおりの損害が発生した。 ア不正競争防止法違反による損害 原告剣道教室から被告剣道教室に移籍した者が実際に何名いるかは定かでないが,少なくとも14名は存在する。そして,この14名の移籍と被告による被告剣道教室への勧誘行為との間には因果関係が認められる。 被告が14人の生徒に勧誘行為を行わなければ,原告には年間119万1000円の利益が見込まれ,少なくとも各生徒が5年間は通い続けると想定すると,被告による勧誘行為による原告の損害額は少なくとも595万5000円をくだらない。 イ違約罰原告就業規則49条6項には,同規定中に「罰金」とされていることからも明らかなとおり,同項は違約罰を規定したものであり,被告の退職時の月俸は46万3400円である。 したがって,罰金としての金額は1112万1600円(46万3400円×24か月=1112万 からも明らかなとおり,同項は違約罰を規定したものであり,被告の退職時の月俸は46万3400円である。 したがって,罰金としての金額は1112万1600円(46万3400円×24か月=1112万1600円)となる。 ウ弁護士費用原告は,上記のとおり,被告による営業秘密の不正利用及び就業規則違反により,弁護士費用を支出せざるを得なくなった。 したがって,上記ア及びイの合計額である1707万6600円の少なくとも1割に相当する170万7660円については,被告の行為との間に相当因果関係が認められる。 エ損害額合計上記アないしウの合計額は1878万4260円となる。 よって,原告は,被告に対し,不正競争防止法4条に基づく損害賠償及び原告就業規則49条6項違反による違約罰の合計として1878万4260円及びこれに対する被告が不正競争行為として勧誘行為を行い,就業規則違反の行為を行ったと認められる平成24年6月15日から支払済みまで,年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)全て争う。なお,不正競争防止法違反による損害について,原告は,生徒14名について年間119万1000円の利益が見込まれ,かつ,5年間は通い続けると仮定しているが,年間の利益についても在籍期間についても根拠がない。 第3 当裁判所の判断 1 争点2(被告が,原告の保有する顧客に関する情報を使用し,不正競争防止法2条1項7号に該当する不正競争を行ったか)について(1) 前記前提事実に後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 ア被告が原告剣道教室の指導員をしていた平成24年2月末日当時,原告剣道教室は福岡県内に17教室あり,生徒数は合計319名であった(甲13)。 イ被告は,平成24年3月1日 が認められる。 ア被告が原告剣道教室の指導員をしていた平成24年2月末日当時,原告剣道教室は福岡県内に17教室あり,生徒数は合計319名であった(甲13)。 イ被告は,平成24年3月1日から同年4月末日まで,原告関連の専門学校へ出向していたが,同年2月末までは,原告剣道教室における本件顧客情報にアクセスすることができた(甲14)。 しかし,被告によるアクセスの日時,範囲,態様及び頻度等を具体的に示す証拠は提出されておらず,被告が同年3月1日以降も当該情報を文書又はデータの形で保有し続けていたと認めるに足りる証拠もない。 ウ被告は,平成24年6月6日,被告剣道教室の新規会員募集のため,「たのしく学べる体験会あすなろ剣道教室」と題し,体験日時,対象年齢(年長から中学生),体験教室の場所(姪北小学校体育館),体験会の申し込み先として電話番号やURL(被告のフェイスブックのURL)等が記載されたA4両面フルカラーのチラシ(以下「本件チラシ1」という。)1万8000枚の印刷を印刷会社に発注し,印刷会社から被告宅に本件チラシ1が配達された同月11日以降,数日を掛けて,体験会の会場 となる福岡市内の姪北小学校の校区周辺を自らまわり,各家庭のポストに本件チラシ1の大半を投函した。そして,本件チラシ1の配布後の同月15日,当時原告剣道教室の生徒であった保護者から「チラシ,入っていました・・」と被告のフェイスブックに書き込みがあったほか,同月17日には,原告剣道教室の生徒でない保護者からも,被告のフェイスブックに被告開催の体験会に参加したい旨の書き込みがあった(甲1,3,14,乙9ないし11,16,19)。 さらに被告は,同月17日ころ,上記1万8000枚のうち4000枚は,新聞販売店を通じて日刊紙に折り込む形で配布し,同月 したい旨の書き込みがあった(甲1,3,14,乙9ないし11,16,19)。 さらに被告は,同月17日ころ,上記1万8000枚のうち4000枚は,新聞販売店を通じて日刊紙に折り込む形で配布し,同月18日ころには,本件チラシ1とほぼ同じ内容で,被告剣道教室の新規会員を募集するため,体験教室日時,体験会会場(西体育館),各会場練習日(西陵小学校体育館,壱岐東小学校体育館,壱岐小学校体育館)等が記載されたチラシ(以下「本件チラシ2」という。)2万8000枚を印刷会社に注文して,同月20日以降に被告自ら会場近辺の家庭のポストに投函した(乙12ないし14,19)。 エ平成24年9月5日付けの被告のフェイスブックに公開されている被告剣道教室の生徒の集合写真に写っている21名の生徒のうち13名が原告剣道教室に在籍した者であった(甲10の1及び2,14)。 (2)ア上記(1)で認定した事実によれば,被告は,4万6000枚に及ぶチラシの印刷を印刷会社に注文し,被告剣道教室への勧誘のための体験会の会場となる小学校周辺の家庭のポストに自ら投函し,あるいは,新聞の折り込み広告として入れることにより,不特定多数の家庭に対して被告剣道教室への新規会員の募集を行ったものと認めるのが相当であり,本件顧客情報を使用することによって,原告剣道教室の生徒に関係する特定の家庭に対してのみ被告剣道教室に勧誘した事実は認められない。 イこの点,原告は,被告が本件チラシ1及び同2を原告剣道教室の生徒 に関係する家庭のみに配布した旨主張する。 確かに,甲1には,原告剣道教室に従前在籍しており,被告剣道教室に入会したとされる生徒14名のうち,5名については平成24年6月5日に,7名について同年7月5日に,それぞれ原告剣道教室の退会の受付がされたことを示す記載 剣道教室に従前在籍しており,被告剣道教室に入会したとされる生徒14名のうち,5名については平成24年6月5日に,7名について同年7月5日に,それぞれ原告剣道教室の退会の受付がされたことを示す記載があり,甲2には,原告剣道教室からの退会者数が,同年4月につき16名(なお,同月は被告が原告剣道教室の指導員でなくなった同年3月の翌月であり,本件チラシ1及び同2が配布される前である。),同年5月につき4名,同年6月につき9名,同年7月につき12名,同年8月につき14名であったことを示す記載がある。 しかし,これらの事実が認められるとしても,被告が原告剣道教室の指導員でなくなったり,原告を解雇されたりしたことと,原告剣道教室の退会者数の上昇との間に,相関関係のある可能性がうかがわれるにすぎず,原告剣道教室において被告の指導を受けてきた生徒やその保護者の中に,被告が原告剣道教室を辞めて新たに被告剣道教室を開設したのであれば,引き続き被告から剣道の指導を受けたいと考える者が相当数あったとしても特に不合理であるとはいえないことを併せ考えれば,甲1,2の記載をもって,直ちに被告が本件チラシ1及び同2を原告剣道教室の生徒に関係する家庭のみに配布したと推認することはできない。 なお,甲12には,原告剣道教室の飯倉中央会場の近くに居住する生徒2名が原告剣道教室を退会し,その居住地から遠い場所に会場が所在する被告剣道教室に入会したことを示す記載があるが,甲1には,上記2名のうち1名が平成24年1月1日に,1名が同年10月5日に,それぞれ原告剣道教室の退会の受付がされたことを示す記載があり,これらはいずれも本件チラシ1及び同2の配布時期とは近接していないから,被告が本件チラシ1及び同2を原告剣道教室の生徒に関係する家庭のみに配布したと推認する理由にはなら されたことを示す記載があり,これらはいずれも本件チラシ1及び同2の配布時期とは近接していないから,被告が本件チラシ1及び同2を原告剣道教室の生徒に関係する家庭のみに配布したと推認する理由にはならない。 以上のほか,甲の陳述書(甲14)を含む原告提出のすべての証拠を総合しても,被告が本件チラシ1及び同2を原告剣道教室の生徒に関係する家庭のみに配布した事実を推認するには足りない(そもそも,被告が本件チラシ1及び同2を原告剣道教室の生徒に関係する家庭のみに配布するのであれば,4万6000枚ものチラシの印刷を発注する必要がないことは,自明である。)。 ウ原告は,被告が原告から開示された顧客情報を使用した旨主張するが,上記(1)イのとおり,被告が平成24年3月1日以降も本件顧客情報を文書又はデータの形で保有し続けていたと認めるに足りる証拠はない。 (3) 以上のとおり,被告が本件顧客情報を使用したという客観的事実を認めることができない以上,その余の点について検討するまでもなく,被告の行為が不正競争防止法2条1項7号に該当すると認めることはできない。 2 争点3(被告が,原告の保有する顧客に関する情報を使用し,原告就業規則に規定する不正行為を行ったか)について上記1のとおり,原告がその営業秘密であるとする本件顧客情報を被告が使用した事実は,これを認めることができないから,被告の行為が原告就業規則49条6項の「個人情報を活用しての商行為(特定非営利活動を含む)」に該当するということもできない。 3 結論以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官嶋 主文 について判断するまでもなく,本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 理由 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官嶋末和秀 裁判官鈴木千帆 裁判官西村康夫
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