令和3(ネ)10082 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和4年10月18日 知的財産高等裁判所 3部 判決 控訴棄却 大阪地方裁判所 令和2(ワ)3862
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判決文本文15,305 文字)

1令和4年10月18日判決言渡令和3年(ネ)第10082号 損害賠償請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所令和2年(ワ)第3862号)口頭弁論終結日 令和4年7月12日判 決5 控訴人 X同訴訟代理人弁護士 拾 井 美 香 被控訴人 株式会社クオリティファースト10 同訴訟代理人弁護士 岡 田 春 夫同 瓜 生 嘉 子同訴訟代理人弁理士 井 澤 眞 樹 子主 文151 本件控訴を棄却する。 2 控訴人の当審における拡張請求を棄却する。 3 当審における訴訟費用は全て控訴人の負担とする。 事実及び理由第1 控訴の趣旨201 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人に対し、3000万円及びこれに対する令和2年4月23日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え(控訴人は、当審において、原審における300万円の損害賠償請求を、このように拡張した。)。 第2 事案の概要等251 事案の概要 2⑴ 本件は、発明の名称を「包装用積層フィルム又は該包装用積層フィルムで成形された包装袋及び包装用積層フィルムの製造方法。」とする特許(特許第6422064号。以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する控訴人が、被控訴人に対し、被控訴人が原判決別紙被告製品目録記載の各製品を販売することは本件特許権の侵害に当たると主5張して、不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。 権」という。)を有する控訴人が、被控訴人に対し、被控訴人が原判決別紙被告製品目録記載の各製品を販売することは本件特許権の侵害に当たると主5張して、不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。 ⑵ 原審は、上記各製品に用いられている積層フィルムをヒートシール方式によりピロー状に成形した包装袋(被告包装袋)は本件特許の請求項1及び2記載の各発明(本件各発明)の技術的範囲に属するものとは認められず、また、本件特許は乙14に記載された製品(乙14製品)に対する新規性を欠10くものであって特許無効審判により無効にされるべきものであるとして、控訴人の請求を棄却した。これを不服として、控訴人は、本件控訴を提起した。 ⑶ 控訴人は、原審においては300万円の損害賠償を求めていたが、当審において請求を拡張し、控訴人の損害額合計1億7617万3934円のうち3000万円及びこれに対する令和2年4月23日(本件訴えを提起した日)15から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正後のもの)所定の年3分の割合による遅延損害金の損害賠償を求めている。 2 前提事実、争点及び争点についての当事者の主張前提事実、争点及び争点についての当事者の主張は、以下のとおり原判決を補正し、後記3のとおり当審における補充主張を付加するほかは、原判決「事20実及び理由」の第2の1及び2並びに第3(原判決1頁26行目ないし15頁16行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決3頁8行目の「いる」を「いること」に改める。 ⑵ 原判決4頁17行目末尾に改行して次のとおり加える。 「⑹ 無効審判請求等25ア 被控訴人及び大阪シーリング印刷株式会社は、令和3年5月31日、 3特許庁に対し、本件特許権につき、 7行目末尾に改行して次のとおり加える。 「⑹ 無効審判請求等25ア 被控訴人及び大阪シーリング印刷株式会社は、令和3年5月31日、 3特許庁に対し、本件特許権につき、無効審判請求をした(無効2021-800047号。以下「本件無効審判請求事件」という。)。 イ 控訴人は、令和3年10月9日、本件無効審判請求事件において、本件特許の請求項1ないし4を訂正する旨の訂正請求をした(以下「本件訂正」という。)。(甲48)」53 当審における補充主張⑴ 争点1-2(「シーラント層」(構成要件C)の意義)について〔控訴人の主張〕ア クレーム解釈について以下のとおり、本件各発明に係る積層フィルム又は包装袋には、ミシン10目加工が基材フィルムのみならずシーラント層にも及んでいるものが含まれるから、被告包装袋は、そのミシン目が積層フィルムを貫通しているか否かにかかわらず、構成要件Cを充足する。 (ア) 本件特許の請求項1においては、「前記基材フィルムの印刷面側には少なくともシーラント層が積層されて」とだけ記載されており、シーラ15ント層がミシン目加工の前後いずれに積層されたかは特定されていないから、基材フィルムにミシン目加工がされた後にシーラント層が積層されるとは限らない。 (イ) 本件特許の出願時における請求項1ないし3の内容及びその後の補正の内容からすれば、本件発明1には、グラビア版インラインミシン目加20工、ダイカッターインラインミシン目加工、ダイカッターオフラインミシン目加工及びレーザーミシン目加工の各製造方法による包装袋が含まれているものと解するのが相当である。そうすると、本件発明1に係る包装袋には、ダイカッターオフラインミシン目加工及びレーザーミシン ミシン目加工及びレーザーミシン目加工の各製造方法による包装袋が含まれているものと解するのが相当である。そうすると、本件発明1に係る包装袋には、ダイカッターオフラインミシン目加工及びレーザーミシン加工によってシーラント層にもミシン目の孔が開く場合も含まれること25となる。 4(ウ) 本件明細書において使用されている「密封」に係る用語は、いずれも「すきまなく、きっちりと封をする」という意味で用いられているものであり、包装袋に孔がないという意味ではない。また、他の様々な製品においても、「密封」の語は、封をするという意味で用いられており、空気を通さない「気密性」の語とは異なる。 5(エ) 本件発明1の特許請求の範囲及び本件明細書の記載からすれば、本件各発明が共通して有する特徴は、いずれの方法で製造された場合であっても、包装袋のバージン性、新たな方法での開封及び内容物の取り出しやすさにあるのであって、包装物の気密性(原判決がいうところの密封性)は、ミシン目の加工方法によって生じ得る副次的な要素にすぎず、10本件各発明の主要な要素ではない。 イ 被告包装袋のミシン目は積層フィルムを貫通していないこと以下のとおり、被告包装袋のミシン目は積層フィルムを貫通していないから、本件各発明のシーラント層が気密性(密封性)のある層であると解釈した場合であっても、被告包装袋は構成要件Cを充足する。 15(ア) 控訴人が実施した水漏れ確認実験においては、複数の被告製品について、取出口のミシン目部分からの水漏れは確認できなかった。また、控訴人が実施したおもりによる実験においては、複数の被告製品について、四隅のR部分に45gのおもりを載せても同部分は沈まなかった。これらの実験結果に照らせば、被告包装袋のミシン目は なかった。また、控訴人が実施したおもりによる実験においては、複数の被告製品について、四隅のR部分に45gのおもりを載せても同部分は沈まなかった。これらの実験結果に照らせば、被告包装袋のミシン目は積層フィルムを貫通20していないものと認められる。 (イ) 被告包装袋は、本件各発明が想定する製造方法のうちダイカッターオフラインミシン目加工を行うことによって製造されたものであり、加工方法が共通する両者は当然に同じ構成となる。この点に関し、被控訴人は、被告包装袋には貫通用ダイロールを用いてミシン目加工を行ってい25ると主張するが、被控訴人が提出した刃型製造記録(乙37)の記載内 5容からすれば、刃型全体を「ズボ抜き」にする指示がされているとみることはできないし、ダイカッターロールに係る模式図(乙36)は、記載された図面間に齟齬がある上、技術的に不可解な内容である。また、被告製品の製造に係る指示が記載されているとされる乙10及び乙11の記載内容は、被告包装袋のミシン目が積層フィルムを貫通しているこ5との根拠となるものではない。 (ウ) 被控訴人が実施したシールチェック液による透過実験の結果において、シールチェック液の染み出しが確認できるのは、ミシン目加工や包装袋の作業工程で生じたと思われる破断のある中央クロス部、カモメ部及びR部のみである上、大半のミシン目では薄赤い線状に着色するだけで染10み出しは確認できないことなどからすれば、かかる実験結果をもって、被告包装袋のミシン目が積層フィルムを貫通しているということはできない。 また、被控訴人が用いたシールチェック液は、ヒートシール部分が完全に密閉されているか否かをチェックするためのものであり、ミシン目15の貫通の有無を確認するための液ではない上、非常に浸 ない。 また、被控訴人が用いたシールチェック液は、ヒートシール部分が完全に密閉されているか否かをチェックするためのものであり、ミシン目15の貫通の有無を確認するための液ではない上、非常に浸透性・膨潤(溶解)性が高い化学品であることなどからすれば、被控訴人が実施した上記実験は、明らかに不適切な方法によるものである。 〔被控訴人の主張〕ア クレーム解釈について20(ア) 本件発明1の技術的範囲は、補正前の出願時における特許請求の範囲の記載から定めるものではなく、現在の請求項の記載に基づいて解釈すべきである。なお、出願時の請求項1ないし3の記載をみても、シーラント層にミシン目の孔が開く場合も含まれるものと解釈するのは誤りである。 25(イ) 本件各発明に係る補正の経過をみても、出願時の請求項1ないし3は、 6製造方法の記載を含んでいたものの、いずれも物の発明であることから、製造方法にかかわらず、基材フィルムにミシン目や貫通溝が入り、その印刷面側に設けられたシーラント層にはミシン目や貫通溝の入らない構成の積層フィルムが記載されていたものであり、補正によってこの構成が明確になったにすぎない。 5(ウ) 「密封」の語に係る控訴人の主張は、独自の定義にすぎない。封をした部分のシーラント層にミシン目や溝が貫通し、内容物が外部に漏れ出たり外部の環境による影響を受けたりする状態では、「密封性」が保たれているなどといえない。 (エ) そもそも、シーラント層にミシン目等が入っている密封性のない包装10袋は、本件発明1の技術的範囲には含まれない。また、本件各発明は、完全密封性やバージン性を保つことができないという従来技術の課題をシーラント層を設けることによって解決しているのであるから、密封性を有するシーラント の技術的範囲には含まれない。また、本件各発明は、完全密封性やバージン性を保つことができないという従来技術の課題をシーラント層を設けることによって解決しているのであるから、密封性を有するシーラント層が本件各発明の特徴であることは当然であり、これが副次的な要素であるなどということはできない。 15イ 被告包装袋は本件各発明の技術的範囲に属さないこと(ア) 控訴人が実施した水漏れ確認実験は、控訴人が用いた液体が水と同じ浸透性や表面張力等を有するものであれば、濡れ性の低い積層フィルムに存在する微細孔を加圧なしに短時間で通過することは考え難い上、詳細な実験条件も明らかではないから、客観性・信用性に乏しい。実際に20も、被控訴人が実施した同様の実験においては、着色した水はカッターで貫通させたミシン目状の切目等ですら浸透することができなかった。 また、控訴人が実施したおもりによる実験は、貫通の有無を確かめる実験として意味のあるものではない。 (イ) 被告包装袋は、ダイカッターロールの切り刃によりミシン目が貫通す25るように加工されており、このことは製造工程に係る資料(乙36及び 737)からも明らかである。また、乙10及び乙11の記載内容等に不合理な点はなく、これらの書面によれば、被告包装袋は、ミシン目が積層フィルムを貫通するように製造されていることは明らかである。 (ウ) 被控訴人及びその関係者が実施した各種実験(乙38ないし40、46ないし49)においては、被告包装袋のミシン目が積層フィルムを貫5通していることが確認されている。また、被控訴人が実験に用いたシールチェック液は、食品のポリ袋等の包装材のシールチェックやピンホールチェックのために一般的に用いられている市販のものであり、通常の 通していることが確認されている。また、被控訴人が実験に用いたシールチェック液は、食品のポリ袋等の包装材のシールチェックやピンホールチェックのために一般的に用いられている市販のものであり、通常の使用によってポリエチレン等のフィルム基材を侵すようなものではない。 ⑵ 争点2-2(乙14による新規性欠如の有無)について10〔控訴人の主張〕原判決が指摘する本件明細書の段落【0029】及び【0031】の記載は、補正前の請求項4に関するものであり、いずれも本件各発明に関するものではない。また、本件発明1及び2には、取出口の領域に封止シールを貼付するという構成は含まれておらず、乙14製品のように封止シールを開封15の手段として利用することはできない。さらに、ミシン目等の一般的な機能・役割のほか、本件各発明の構成要件に開封手段として封止シール等が含まれていないこと、本件明細書の記載内容からすれば、本件各発明のミシン目等は、指でつまんで破断することによって開封することを想定したものであり、封止シールによる開封は想定していない。 20したがって、開封手段に係る本件各発明の構成要件E及び乙14製品の構成E’は一致しないから、本件各発明が乙14製品に対する新規性を欠くということはできない。 〔被控訴人の主張〕本件発明1の構成要件Eにおいては、開封方法について何ら限定されてお25らず、ミシン目又は溝部が開封により取出口になりさえすれば、どのような 8開封方法であってもよいから、構成要件Eと乙14製品の構成E’との同一性を否定する控訴人の主張は誤りである。 ⑶ 訂正の再抗弁(当審における新たな主張)〔控訴人の主張〕控訴人は、本件各発明の構成要件B2と乙14製品の構成要件B’との一5致を回避するために、本件無効 訴人の主張は誤りである。 ⑶ 訂正の再抗弁(当審における新たな主張)〔控訴人の主張〕控訴人は、本件各発明の構成要件B2と乙14製品の構成要件B’との一5致を回避するために、本件無効審判請求事件において本件訂正をした。以下のとおり、本件訂正によって控訴人の請求は認められる。 ア 訂正事項(ア) 請求項1について控訴人は、本件訂正において、請求項1のうち、次の下線部分を削除10した。 「表層の基材フィルムに絵柄の印刷が施され、前記基材フィルムには、前記絵柄に対応した、略円形又は略四角形の形状のミシン目又は基材フィルムを貫通する溝若しくは前記略円形又は前記略四角形の中央部で二分された形状のミシン目又は基材フィルムを貫通する溝が設けられ、15前記基材フィルムの印刷面側には少なくともシーラント層が積層されて、非シール部に前記ミシン目又は溝部が設けられ該ミシン目又は溝部が開封により取出口になることを特徴とする包装袋」(イ) 請求項2について訂正前の請求項2は、請求項1を引用するものであるから、一群の請20求項として訂正される。 イ 訂正要件に適合すること本件訂正は、いずれも本件発明1及び2における切れ目を「ミシン目」に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるなど、訂正要件に適合するものである。 25ウ 無効理由が解消すること 9(ア) 本件訂正により、本件各発明と乙14製品との一致が問題となる構成要件B2が削除されるから、乙14製品に係る無効理由(新規性欠如)は解消される。 (イ) 本件発明1 の構成要件B1の「ミシン目」は、包装フィルムに所定の間隔で設けられた連続した小穴であるのに対し、乙14製品の構成B’5の に係る無効理由(新規性欠如)は解消される。 (イ) 本件発明1 の構成要件B1の「ミシン目」は、包装フィルムに所定の間隔で設けられた連続した小穴であるのに対し、乙14製品の構成B’5の「カット」は、包装フィルムを構成する材料の一部をカットする抜き加工であり、明らかに相違する。また、本件発明1 の構成要件B1の「ミシン目」は、該ミシン目部分を指で破り取出口を形成するものであるのに対し、乙14製品の構成B’の「カット」は、取出口部分に貼り合わされた該封止シールをねじることで取出口を形成し、かつ、該封止シー10ルを再度貼り合わせることによって再封性を担保したものであり、この点においても両者は相違する。 エ 訂正後のクレームであっても充足が認められること被告包装袋を開封して取出口となる略四角形の形状及び中央で二分された形状の切れ目は、「ミシン目」であって基材フィルムを貫通する溝では15ないから、本件訂正後のクレームであっても、被告包装袋は、本件各発明を侵害するものである。 〔被控訴人の主張〕ア 無効理由は解消しないこと包装袋の属する技術分野において、「ミシン目」と「ハーフカット」とは20その機能も技術的な意味も全く同じものであり、積層フィルムの開封のための構成としては実質的に同一であるといえるから、本件訂正が認められて「溝部」に関する記載が削除されたとしても、本件各発明及び乙14製品は、同一の構成である。 イ 被告包装袋は訂正後の技術的範囲に属さないこと25本件訂正がされたとしても、被告包装袋が本件各発明の技術的範囲に属 10さないことには何ら変わりがない。 ⑷ 訂正後のクレームに対する無効の主張(当審における新たな主張)〔被控訴人の主張〕訂正の再抗弁が認められたとし 装袋が本件各発明の技術的範囲に属 10さないことには何ら変わりがない。 ⑷ 訂正後のクレームに対する無効の主張(当審における新たな主張)〔被控訴人の主張〕訂正の再抗弁が認められたとしても、包装袋の属する技術分野において、「ミシン目」及び「ハーフカット」は、その機能も技術的な意味も全く同じ5ものである上、ありふれた慣用技術であるから、乙14製品に取出口を形成するために、基材フィルムに「カット」を設ける代わりに「ミシン目」を設けることは、当業者が容易になし得る程度の単なる設計事項にすぎない。 したがって、本件訂正後の本件各発明は、進歩性を欠くものである。 〔控訴人の主張〕10ア 本件発明1は、ミシン目自体に特許性があるものではないから、ミシン目が慣用技術であるからといって、本件発明1に進歩性がないということにはならない。 イ 包装袋を抜き加工した場合には、封止シールを貼り付けるなどの脱落防止措置を講じる必要があるのに対し、全周にわたって破断するものではな15いミシン目は、封止シール等を貼付する必要はなく、それのみで独立した取出口となる。そして、乙14製品はこのような効果を奏するものではなく、他の従来技術を含めても、略円形又は略四角形の形状のミシン目を取出口とすることを示唆するようなものは存在しない。したがって、本件各発明は、乙14製品と比較して、当業者が予測できない有利な効果を奏す20るものであるから、進歩性がある。 ⑸ 控訴人の損害額(当審における請求の拡張)〔控訴人の主張〕被控訴人は、平成29年8月23日から被告包装袋を使用した被告商品を販売しているところ、被告商品の売上高は年間20億円を下らないから、実25施料率を3%とすると、同日から本件訴えが提起された令和2年4月23日 9年8月23日から被告包装袋を使用した被告商品を販売しているところ、被告商品の売上高は年間20億円を下らないから、実25施料率を3%とすると、同日から本件訴えが提起された令和2年4月23日 11までの被告商品の販売に対する実施料相当額は、1億6016万3934円であり、この請求額と相当因果関係を有する弁護士費用の額は、1601万円である(合計1億7617万3934円)。 〔被控訴人の主張〕否認し、又は争う。 5第3 当裁判所の判断1 争点1(被告包装袋は本件各発明の技術的範囲に属するか)について当裁判所も、原審と同様に、被告包装袋は本件各発明の技術的範囲に属するとは認められないと判断する。 その理由は、以下の⑴のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」の10第4の1及び2(原判決15頁18行目ないし28頁17行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決の補正ア 原判決15頁22行目冒頭に次のとおり加える。 「商品を販売するための包装袋には、各種の性能、機能が求められるが、15性能面では内容物を保護するための密封性、耐破袋性、保形性などがある。 更に劣化防止のためのバリアー性、遮光性、などがある。一方、消費者が購入後の使用、保管等に関して利便性としては、内容物を取り出す開封性、開封後の保存、保管性及び再密封性、内容物を使い切る取出し性などがある。」20イ 原判決18頁14行目末尾に改行して次のとおり加える。 「【0013】本発明の任意の形状で開封口を設ける方法は、本発明者が・・・にて提案したグラビア印刷機を用いて、絵柄の印刷と開封を容易にするミシン目の加工とをグラビア印刷インラインで行うことに関して詳細に記載して25 任意の形状で開封口を設ける方法は、本発明者が・・・にて提案したグラビア印刷機を用いて、絵柄の印刷と開封を容易にするミシン目の加工とをグラビア印刷インラインで行うことに関して詳細に記載して25いる。」 12ウ 原判決18頁22行目末尾に改行して次のとおり加える。 「【0015】本発明のミシン目を有する包装用積層フィルムは、グラビア印刷機を用いて、絵柄印刷とミシン目加工をグラビア印刷インラインで行う必要はなく、オフラインでミシン目加工を行ってもよい。印刷に使用する基材フィ5ルムは、12μから40μ程度と薄膜であり、ダイカッターの刃先とアンビルロールの間隔(ダイカッターの刃先とアンビルロールの接触を防ぐクリアランス)を管理することは困難であり、アンビルロールの外周に0,2mmから0,6mmの1層又は2層で構成する自己粘着層を設ければ安定したミシン目を形成することができる。または、先に記載したグラビア10版と自己粘着層が外周に設けられたニップ圧胴とを圧接できる装置を用い略円形又は略四角形等の形状にミシン目加工をオフラインで行ってもよい。・・・」エ 原判決24頁14行目冒頭ないし18行目末尾を次のとおり改める。 「このように、本件発明1の特許請求の範囲においては、『表層の基材フ15ィルム』については断続的に切り込みを入れるミシン目又は基材フィルムを貫通する溝が設けられることが明示されているのに対し、『シーラント層』については基材フィルムの印刷面側に積層されることが示されているにすぎないことからすれば、特許請求の範囲の文言解釈としては、『表層の基材フィルム』とは異なり、『シーラント層』にはミシン目又は溝が設けら20れているものではないと解するのが自然であるといえる。」 ないことからすれば、特許請求の範囲の文言解釈としては、『表層の基材フィルム』とは異なり、『シーラント層』にはミシン目又は溝が設けら20れているものではないと解するのが自然であるといえる。」オ 原判決25頁18行目末尾に次のとおり加える。 「また、本件各発明においては、内容物の保護や保存性の確保もその課題の一つとされているところ(【0001】、【0005】及び【0007】)、包装される内容物としては、ウェットティッシュ(【0003】)や食品(図255等)等、様々なものが想定されているといえ、これらの内容物について 13は、乾燥や湿気による品質の劣化や異物の混入を防ぐ必要があるといえる。」カ 原判決25頁19行目冒頭ないし22行目末尾を次のとおり改める。 「そして、本件各発明は、取出口となるミシン目又は溝の加工が施された基材フィルムに、シーラントフィルム等を貼り合わせることにより、包5装用積層フィルムを密封性のあるものとし、これを使用することにより、バージン性や開放性等を兼ね備えた包装袋とすることで、上記の各課題を解決しようとするものであるといえるところ、上記の密封性については、様々な内容物の品質の劣化や異物の混入等を防ぐことができる程度の密封性が想定されているというべきであり、このような本件各発明の技術的10意義を考慮すると、本件各発明のシーラント層にミシン目又は溝の加工が及んだ場合には、上記の意味における密封性を確保することができず、発明の目的を達成することができなくなってしまうというべきである。 以上のとおり、本件明細書から読み取ることができる本件各発明の技術的意義からすれば、本件各発明のシーラント層は、ミシン目又は溝の加工15が及んでいないものとみるのが相当である。」 。 以上のとおり、本件明細書から読み取ることができる本件各発明の技術的意義からすれば、本件各発明のシーラント層は、ミシン目又は溝の加工15が及んでいないものとみるのが相当である。」キ 原判決27頁16行目冒頭ないし17行目末尾を次のとおり改める。 「オ 以上のとおり、本件発明1の特許請求の範囲の文言解釈及び本件明細書から読み取ることができる本件各発明の技術的意義からすれば、本件各発明のシーラント層は、ミシン目又は溝の加工がされていないとみる20のが相当であり、本件明細書の他の記載をみても、ミシン目等が積層フィルムの全層に及んでいる例は開示されていないといえることからすれば、構成要件Cの『シーラント層』は、ミシン目又は溝の加工がされていないものと解釈するのが相当である。」⑵ 控訴人の当審における補充主張に対する判断25ア 前記第2の3⑴〔控訴人の主張〕ア(ア)について 14(ア) 控訴人は、構成要件Cの「シーラント層」の解釈に関し、本件特許の請求項1の記載によれば、シーラント層がミシン目加工の前後いずれにおいて積層されたかは特定されていないから、基材フィルムにミシン目加工がされた後にシーラント層が積層されるとは限らない旨主張する。 確かに、本件発明1の特許請求の範囲の文言上、シーラント層がミシ5ン目加工の前後いずれにおいて積層されるものであるかは特定されていない。 しかしながら、本件発明1の特許請求の範囲の文言解釈としては、「表層の基材フィルム」とは異なり、「シーラント層」にはミシン目又は溝が設けられるものではないと解するのが自然であるといえることは、前記10のとおり補正して引用する原判決の説示(原判決24頁11行目ないし18行目)のとおりである。そして、本 」にはミシン目又は溝が設けられるものではないと解するのが自然であるといえることは、前記10のとおり補正して引用する原判決の説示(原判決24頁11行目ないし18行目)のとおりである。そして、本件各発明の技術的意義等を考慮すれば、上記の解釈が相当であることについても、前記のとおり補正して引用する原判決の説示(原判決24頁19行目ないし27頁17行目)のとおりである。 15(イ) したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 イ 同〔控訴人の主張〕ア(イ)について(ア) 控訴人は、構成要件Cの「シーラント層」の解釈に関し、本件明細書に記載されている各製造方法によれば、本件発明1に係る包装袋には、ダイカッターオフラインミシン目加工及びレーザーミシン目加工によ20ってシーラント層にもミシン目の孔が開く場合も含まれることとなる旨主張する。 しかしながら、ダイカッターオフラインミシン目加工について言及する本件明細書の段落【0015】には、「ミシン目加工をグラビア印刷インラインで行う必要はなく、オフラインでミシン目加工を行ってもよい」25と記載されているにすぎず、シーラント層にもミシン目の孔が開くこと 15が記載されているものではない。 また、レーザーミシン目加工について言及する本件明細書の段落【0016】及び【0017】には、シーラント層が設けられた後にレーザー加工を行い、基材フィルムと隣接するフィルム層又は樹脂層の全部又は一部を除去する製造方法が記載されているものの、かかる記載のほか、5本件明細書の他の記載内容をもっても、本件明細書において、ミシン目等が積層フィルムの全層を貫通する例が開示されているということはできないことは、前記のとおり補正して引用する原判決の説示(原判決25頁23行目ないし27 内容をもっても、本件明細書において、ミシン目等が積層フィルムの全層を貫通する例が開示されているということはできないことは、前記のとおり補正して引用する原判決の説示(原判決25頁23行目ないし27頁15行目)のとおりである。 (イ) したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 10ウ 同〔控訴人の主張〕ア(ウ)及び(エ)について(ア) 控訴人は、構成要件Cの「シーラント層」の解釈に関し、本件明細書において用いられている「密封」に係る用語は空気を通さない「気密性」の語とは異なるものである上、本件発明1の特許請求の範囲及び本件明細書の記載からすれば、包装物の気密性は本件各発明の主要な要素では15ない旨主張する。 しかしながら、本件明細書の記載から読み取ることができる本件各発明の技術的意義を考慮すると、本件各発明のシーラント層にミシン目又は溝の加工が及んだ場合には、本件各発明において要求される程度の密封性を確保することができず、発明の目的を達成することができなくな20ってしまうというべきであることは、前記のとおり補正して引用する原判決の説示(原判決24頁19行目ないし25頁22行目)のとおりである。そうすると、本件各発明において、包装物の密封性は、発明の主要な要素であるというべきである。 なお、控訴人は、上記主張に関し、「密封」に係る用語の意義について25種々の例を挙げるが(甲65ないし71(枝番があるものについては枝 16番を含む。以下同じ。))、これらの例を考慮しても、上記結論を左右するものではない。 (イ) したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 エ 同〔控訴人の主張〕イ(ア)について(ア) 控訴人は、被告包装袋のミシン目が積層フィルムを貫通 はない。 (イ) したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 エ 同〔控訴人の主張〕イ(ア)について(ア) 控訴人は、被告包装袋のミシン目が積層フィルムを貫通しているか否5かに関し、控訴人が実施した水漏れ確認実験及びおもりによる実験の結果に照らせば、被告包装袋のミシン目は積層フィルムを貫通していないものと認められる旨主張する。 しかしながら、控訴人が実施した水漏れ確認実験について検討するに、証拠(甲58)及び弁論の全趣旨によれば、同実験は、着色した水を用10いて、被告包装袋のミシン目から水が漏れるか否かを確認する内容であったと認められるところ、被控訴人において実施した実験の結果(乙40ないし44)からすれば、このような実験において、シールチェック液等を用いず、表面張力のある水を用いることは相当でないというべきであるから、控訴人が実施した水漏れ確認実験の結果をもって、被告包15装袋のミシン目が積層フィルムを貫通していないと認められるものではないというべきである。 また、控訴人が実施したおもりによる実験は、単に被告包装袋のミシン目の上におもりを乗せるという内容にすぎないことからすれば、同実験の結果をもって、被告包装袋のミシン目が積層フィルムを貫通してい20ないと認められるものではないというべきである。 (イ) したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 オ 同〔控訴人の主張〕イ(イ)について(ア) 控訴人は、被告包装袋はダイカッターオフラインミシン目加工を行うことによって製造されたものであるから、本件各発明と同様にミシン目25が積層フィルムを貫通していない旨主張する。 17しかしながら、被控訴人から依頼 ラインミシン目加工を行うことによって製造されたものであるから、本件各発明と同様にミシン目25が積層フィルムを貫通していない旨主張する。 17しかしながら、被控訴人から依頼を受けて被告包装袋のミシン目加工を行っている大阪シーリング印刷株式会社の従業員の陳述書(乙36)において、同社で使用しているダイカットロールは、貫通用の刃型として製造されているものであると説明されているところ、併せて提出された同社の刃型製造記録(乙37)の記載内容や、原審において提出され5た同社の刃型製造記録(乙10)及びチェックシート(乙11)の記載内容も併せ考慮すると、同社においては、被告包装袋につき、積層フィルムを貫通するようにミシン目を施しているものと認めるのが相当である。 上記に関して控訴人は、上記の各書面の信用性につき縷々主張するが、10上記陳述書において説明されている技術的な内容に関して不自然、不合理な点は見当たらず、その他控訴人が指摘する点を考慮しても、上記の各書面の信用性を疑うべき事情は存しないというべきである。 (イ) したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 カ 同〔控訴人の主張〕イ(ウ)について15(ア) 控訴人は、被控訴人が行ったシールチェック液による透過実験の結果をもって、被告包装袋のミシン目が積層フィルムを貫通しているということはできない旨主張する。 そこで検討するに、証拠(乙40、46及び47)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人が実施した透過実験は、シールチェック液として三20菱ガス化学株式会社のエージレスシールチェック液を用いて、上記エージレスシールチェック液を被告包装袋のミシン目周辺に塗布し、ミシン目からの染み出しの有無を目視で確認したところ、塗 液として三20菱ガス化学株式会社のエージレスシールチェック液を用いて、上記エージレスシールチェック液を被告包装袋のミシン目周辺に塗布し、ミシン目からの染み出しの有無を目視で確認したところ、塗布から2分後に中央クロス部からの若干の染み出しが確認され、塗布から10分後にはミシン目全体からの染み出しが確認されたという内容であると認められる。 25このような上記実験の結果からすれば、被告包装袋のミシン目は、積層 18フィルムを貫通しているものと認められる。 上記に関して控訴人は、上記実験において染み出しが確認された中央クロス部等について、ミシン目加工や包装袋の作業工程で生じたと思われる破断があるなどと主張するが、かかる主張を裏付ける証拠は存しない。 5(イ) また、控訴人は、上記実験において用いられたエージレスシールチェック液について、ミシン目の貫通の有無を確認するには不適切なものであるなどと主張する。 しかしながら、証拠(乙45、50)及び弁論の全趣旨によれば、上記実験に用いられたエージレスシールチェック液は、フィルムのシール10部分の接着ミスやフィルムのピンホールの有無をチェックするために一般的に用いられるものであると認められるほか、上記のとおりの実験の内容に照らせば、上記実験は、通常想定されているエージレスシールチェック液の使用方法に従って行われたものといえる。 (ウ) したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 15キ その他の主張についてこのほか、控訴人は、構成要件Cのクレーム解釈及び被告包装袋のミシン目が積層フィルムを貫通しているか否かに関して縷々主張するが、これまで検討したところに照らせば、いずれも採用することができない。 2 結論20以上によれば、そ ーム解釈及び被告包装袋のミシン目が積層フィルムを貫通しているか否かに関して縷々主張するが、これまで検討したところに照らせば、いずれも採用することができない。 2 結論20以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の原審における請求及び当審における拡張請求は、いずれも棄却すべきである。 よって、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴人の当審における拡張請求も理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部25 19 裁判長裁判官東 海 林 保5 裁判官中 平 健10 裁判官都 野 道 紀15

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