1 令和7年4月24日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官令和3年(ワ)第10753号 損害賠償等請求事件口頭弁論終結日 令和7年2月25日判 決 5 原告 アルテア株式会社 同代表者代表取締役 a 同訴訟代理人弁護士 河内茂治 被告 b10 (以下「被告個人」という。) 被告 株式会社あすか (以下「被告会社」という。) 同代表者代表取締役 b15 上記両名訴訟代理人弁護士 曽崎 雄主 文1 被告個人は、原告に対し、5万円及びこれに対する令和2年3月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは、原告に対し、連帯して、176万6575円及びこれに対する令20和4年8月27日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用はこれを25分し、その1を被告らの、その余を原告の負担とする。 5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 25事実及び理由2 第1 請求1 被告らは、別紙1「顧客・協力企業目録」記載の者らに対し、面会を求め、電話をし、郵便物等の書面を送付し又は電子メールを送信するなどして、電子部品の設計、製造、販売その他電子部品に関する商品の売買契約を締結し、同契約の締結を勧誘し又は同契約に付随する営業行為をしてはならない。 52 被告らは、別紙2「電子基板画像目録」記載の画像及びこれについての電磁的記録を使用し、複写し、改変してはならない。 3 被告らは、別 勧誘し又は同契約に付随する営業行為をしてはならない。 52 被告らは、別紙2「電子基板画像目録」記載の画像及びこれについての電磁的記録を使用し、複写し、改変してはならない。 3 被告らは、別紙2「電子基板画像目録」記載の画像及びこれについての電磁的記録を他人に譲渡し、引き渡し、預託し若しくは引渡しのために展示し、又はインターネットにアップロードするなどして、他人が閲覧しうる状態にして10はならない。 4 被告らは、別紙2「電子基板画像目録」記載の画像及びこれについての電磁的記録を利用して電子基板を製造してはならない。 5 被告らは、第1項ないし第3項記載の各目録記載の情報を記録したハードディスク、SSD、データ記録用ディスク若しくはコンピュータのファイル等の15磁気媒体又はこれらを印字した紙媒体を廃棄せよ。 6 被告らは、別紙2「電子基板画像目録」記載の画像及びこれについての電磁的記録を利用して製造した電子基板を廃棄せよ。 7 被告個人は、原告に対し、1046万3321円及びこれに対する令和2年3月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 208 被告らは、原告に対し、連帯して、2696万4936円及びこれに対する令和元年12月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要1 本判決における略語は、本文中に定義するもののほか、以下のとおりである。 25(1) 本件顧客等情報:別紙1「顧客・協力企業目録」記載の情報3 (2) 電子基板(画像・設計データ)●:別紙2「電子基板画像目録」及び別紙3「電子基板画像B2」各記載の電子基板画像に係る電子基板(画像・設計データ)。なお、●は、同目録各項記載の画像名末尾の符号(A、B、B2、1、2)である。また、各電子基板の 基板画像目録」及び別紙3「電子基板画像B2」各記載の電子基板画像に係る電子基板(画像・設計データ)。なお、●は、同目録各項記載の画像名末尾の符号(A、B、B2、1、2)である。また、各電子基板の型番は、以下のとおりである。 符号型番ASM_MOTOR_DRIVER_V4(AUHIMD0400T)BAUHIMC0300TB2AUHIMC0200T1ATOUN_MOTOR_DRIVER_V1.0(AUAAMD0100T)2HIMICO_MAIN_V4(AUHIMC0400T)(3) 原告電子基板(画像・設計データ):電子基板(画像・設計データ)A及5びBの総称(4) 被告電子基板(画像・設計データ):電子基板(画像・設計データ)1及び2の総称(5) 原告主張営業秘密:原告が、営業秘密であると主張する本件顧客等情報及び原告電子基板(画像・設計データ)の総称10(6) 本件ソフト:Cadence 社製のCADソフトである、OrCAD Capture(R)CIS(回路設計ソフト。以下「Capture」という。)、OrCAD PSpice(R)Designer Plus(回路シミュレータ。以下「PSpice」という。)、Allegro PCBDesigner(基板設計ソフト。以下「Allegro」という。)の総称(7) 本件パソコン:別紙4「被害品目録」記載6のデスクトップパソコン152 原告の請求(1) 請求の趣旨第1項被告らが、原告の営業秘密に係る本件顧客等情報を不正に持ち出し、原告の取引先に対する営業行為を行ったこと(不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項4号又は7号)を理由とする同法3条1項に基づく差止204 請求(2) 請求の趣旨第2 出し、原告の取引先に対する営業行為を行ったこと(不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項4号又は7号)を理由とする同法3条1項に基づく差止204 請求(2) 請求の趣旨第2項及び第3項被告らが、令和元年11月23日から同年12月22日頃までの間に、原告の営業秘密に係る原告電子基板設計データを不正に持ち出し、使用したこと(不競法2条1項4号)を理由とする同法3条1項に基づく差止請求5(3) 請求の趣旨第4項上記(2)記載の営業秘密の不正使用及び被告らが電子基板画像Aの形態を模倣して電子基板1を、電子基板画像Bの形態を模倣して電子基板2を作成したこと(不競法2条1項3号、4号)を理由とする同法3条1項に基づく差止請求10(4) 請求の趣旨第5項及び第6項上記(1)ないし(3)記載の各不正競争行為を理由とする不競法3条2項に基づく廃棄請求(5) 請求の趣旨第7項被告個人に対する以下の金銭の支払請求15ア 被告個人が、令和元年11月23日から同年12月22日頃までの間に、原告から別紙4「被害品目録」記載の物品(以下、総称して「本件物品」という。)を窃取したことを理由とする民法709条に基づく損害賠償金337万1321円イ 原告の取締役であった被告個人が、本件ソフトをライセンスを得ること20なく原告の業務のために不正インストールすることがないよう監視監督すべき義務を怠ったことを理由とする会社法423条に基づく損害賠償金614万2000円ウ 弁護士費用95万円エ 上記アないしウの合計金額に対する、上記ア及びイの各行為の後の日で25ある令和2年3月3日から支払済みまで平成29年法律第44号による改5 正前の民法(以下「旧民法」という。)所定の年5分の割合による遅延 合計金額に対する、上記ア及びイの各行為の後の日で25ある令和2年3月3日から支払済みまで平成29年法律第44号による改5 正前の民法(以下「旧民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金(附帯請求)(6) 請求の趣旨第8項被告らに対する以下の金銭の連帯支払請求ア 不正競争行為、不法行為又は競業避止義務違反を理由とする請求5以下の選択的併合(ただし、金額については重複する限度)(ア) 被告らによる上記(1)ないし(3)記載の不正競争行為を理由とする被告個人に対する会社法429条に基づく損害賠償金2356万4936円(イ) 被告個人が、原告が専属的使用権を有する原告電子基板設計データ10を利用、改変し、電子基板を製造販売したことを理由とする民法709条に基づく損害賠償金2356万4936円(ウ) 被告個人が原告の取締役であったときに、被告会社を設立し、同社のために原告の事業と競業関係にある電子基板の製造販売等を行ったことを理由とする会社法423条に基づく損害賠償金1891万030715円イ 業務妨害行為及び信用毀損行為を理由とする請求被告会社代表者である被告個人が主導して行った以下の行為によって原告に無形損害が生じたことを理由とする、被告個人に対する会社法429条に基づく損害賠償金100万円20(ア) 被告個人が、令和元年11月下旬ころ、原告の管理するデータサーバーから「部品リスト作成ツールソフト」を不正に削除し、原告の業務を妨害した。 (イ) 被告個人が、同月29日頃、無断で複数の原告の顧客データを変更し、原告の業務を妨害した。 25(ウ) 被告会社の取締役である L (以下「L」という。)が、原告の6 取引先企業に対し、原告が被告会社の営業行為を違法不当な の原告の顧客データを変更し、原告の業務を妨害した。 25(ウ) 被告会社の取締役である L (以下「L」という。)が、原告の6 取引先企業に対し、原告が被告会社の営業行為を違法不当な方法で妨害をしていると解される虚偽の事実を告知した(不競法2条1項21号)。 ウ 弁護士費用 240万円(上記ア及びイの関係で合計額)エ 上記アないしウの合計金額に対する、上記ア記載の各行為がなされた後5と主張する日である令和元年12月31日から支払済みまで旧民法所定の年5分の割合による遅延損害金(附帯請求)オ 上記アないしエの各金額に関し、被告会社に対する民法719条1項に基づく被告個人との連帯請求3 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨に10より容易に認められる事実)(1) 当事者等ア 原告は、電子応用製品の設計、製造、販売を営む株式会社であり、a (以下「原告代表者」という。)は、その代表取締役である。なお、原告は、取締役会非設置会社かつ監査役非設置会社である。 15イ 被告個人は、原告が設立された平成23年7月7日から原告の取締役に就任し、現在は辞任している者である。 原告の株式会社登記簿には、被告個人が、令和2年3月31日に取締役を辞任した旨、記録されているが、実際に辞任した時期には争いがある。 ウ 被告会社は、電子応用製品の研究開発・受託開発業務、電子応用製品の20販売・サポート等を営む株式会社である。被告個人は、令和元年12月24日、被告会社を設立し、以後、被告個人が代表取締役に、令和2年9月19日以降は、Lが取締役に就任している。 エ 株式会社ATOUN(以下「ATOUN」という。)及び株式会社新生工業(以下「新生工業」という。)は、原告及び被告会社に対し 代表取締役に、令和2年9月19日以降は、Lが取締役に就任している。 エ 株式会社ATOUN(以下「ATOUN」という。)及び株式会社新生工業(以下「新生工業」という。)は、原告及び被告会社に対し、電子基25板設計データの開発を依頼したことがある会社である(甲5、6、乙1、7 2)。なお、ATOUNは、令和4年1月31日、業績の悪化を理由に、同年4月末日頃に解散し、同年7月末日頃に清算手続を結了させる予定である旨、取引先に連絡をしており、現在は、解散している(乙4)。 オ P (以下「P」という。)は、原告及び被告会社から電子基板のパターン設計を委託されていた者である。 5カ Q (以下「Q」という。)及び R (以下「R」という。)は、ATOUNの従業員であった者である。 キ S (以下「S」という。)は新生工業の従業員である。 (2) 原告の就業規則には、以下の定めがあった(甲7)。 ア 従業員は、以下の事項を守らなければならない(第11条)。 10①ないし⑲ (略)⑳ 職務上知り得た会社の秘密にわたる事項、または、重要な機密に関する事項、顧客情報、従業員等の個人情報及び会社の不利益となる事項を他に漏らさないこと。(退職後においても同様とする)㉑ (略)15㉒ 会社の許可または命令なく、在籍のまま他の会社等の業務に従事し、または個人的な事業を営んではならない。 ㉓ 会社の許可なく、同業他社に就業し、または自ら会社の業務と競争になる競業行為を行ってはならない。退職後においても会社の営業秘密その他の会社の利益を害する不当な競業行為を行ってはならない。 20㉔以下 (略)イ 従業員は、秘密を保持する義務を負い、次の各号に掲げる秘密保持に関する事項を守らなければならない(第56条 の他の会社の利益を害する不当な競業行為を行ってはならない。 20㉔以下 (略)イ 従業員は、秘密を保持する義務を負い、次の各号に掲げる秘密保持に関する事項を守らなければならない(第56条)。 ① 会社内外を問わず、在職中又は退職後においても、会社、取引先等の秘密、機密性のある情報、顧客情報、企画案、ノウハウ、データ、I25D、パスワード及び会社の不利益となる事項(以下「秘密情報」とい8 う。)を第三者に開示、漏洩、提供又は不正に使用しないこと。 ②③ (略)④ 会社の許可なく、私物のパソコン、携帯電話、その他電子機器類に顧客に関する情報、その他秘密情報を記録しないこと。私物の機器であっても会社が貸与する機器と同様に、善良な管理者の注意をもって取り扱う5こと。 ⑤⑥ (略)(3) 本件ソフトの不正インストール等ア 被告個人は、原告に在籍していた際、原告の事業用のパソコンに、Cadence社のライセンスを得ることなく本件ソフトをインストールし、少10なくとも一部を原告の事業のために使用していた。その使用期間及び正規にライセンスを購入した場合の正規ライセンス料は、別紙5「不正インストール概要表」記載のとおりであり、合計額を令和3年3月時点の為替レートで日本円に換算すると約650万円となる(甲39、調査嘱託の結果)。 15イ 原告は、令和元年頃、Captureを1ライセンス購入した。なお、原告の業務上、少なくともCaptureが1ライセンス必要であることは争いがない。 ウ 原告は、令和3年3月頃、Cadence社から、日本における代理店である株式会社イノテック(以下「イノテック」という。)を通じて、本件ソフ20トの不正利用を理由とする損害賠償請求を受けた。その後、原告は、イノテックを通じ dence社から、日本における代理店である株式会社イノテック(以下「イノテック」という。)を通じて、本件ソフ20トの不正利用を理由とする損害賠償請求を受けた。その後、原告は、イノテックを通じた交渉の結果、同年5月21日、Captureを2ライセンス(1ライセンスあたり税込63万8000円)、OrCAD Capture(R) CISoptionを1ライセンス(1ライセンスあたり税込38万5000円)、PSpiceを2ライセンス(1ライセンスあたり税込220万円)発注(買い25切り)することとし、合計606万1000円(税込)を支払った。な9 お、購入製品の選定は原告が行った。(甲8、調査嘱託の結果、原告代表者)(4) 物品の持出しについてア 原告は、令和元年11月、被告個人が本件物品を窃取したと考え、同年12月16日、枚方警察署に対し、被告個人を被疑者とする窃盗の被害届5を提出した。 イ 枚方警察署の警察官が、令和3年3月、上記アの窃盗を被疑事実として被告個人宅を捜索したところ、別紙4「被害品目録」記載11ないし13の物品(以下「本件還付品」という。)が被告個人宅で見つかり、押収され、同年6月3日、原告に還付された。一方、その余の物品は、発見され10なかった。 (5) 本件パソコンについてア 原告は、平成29年2月16日、原告代表者名義のクレジットカードを利用して本件パソコンを8万7458円で購入した(甲23、24)。 イ 令和元年12月11日頃、原告事務所において設置されていた本件パソ15コン(DELL製。型式Inspiron3250。サービスタグFJT20H2)が紛失し、別のデスクトップパソコン(以下「残置パソコン」という。DELL製。型式Inspiron660S。サービスタグFNLR4W LL製。型式Inspiron3250。サービスタグFJT20H2)が紛失し、別のデスクトップパソコン(以下「残置パソコン」という。DELL製。型式Inspiron660S。サービスタグFNLR4W1)が設置されていた(甲1、16)。 ウ 残置パソコンは、 T (以下「T」という。)が、平成25年1月23日、電話注文の方法で購入し、同人宅へ納品されたものであった(調20査嘱託の結果)。 エ 本件パソコン及び残置パソコンは、いずれも、DELLの被告個人名義のアカウント(以下「被告個人アカウント」という。)に紐づけされていた。 なお、同アカウントは、平成29年2月14日に登録されたものであった。(甲16、調査嘱託の結果)254 争点10 (1) 営業秘密の不正取得、使用等について(争点1)ア 本件顧客等情報が営業秘密に該当するか(争点1-1)イ 被告らが本件顧客等情報を不正に取得、使用したか(争点1-2)ウ 原告電子基板設計データが営業秘密に該当するか(争点1-3)エ 被告らが原告電子基板設計データを不正に取得、使用したか(争点1-54)(2) 被告らによる基板設計データ作成が不法行為に該当するか(争点2)(3) 原告電子基板の形態模倣について(争点3)ア 電子基板A及び電子基板1並びに電子基板B及び電子基板2の形態が実質的に同一であるか(争点3-1)10イ 被告らが、原告電子基板に依拠して被告電子基板を作成したか(争点3-2)ウ 被告らが、形態模倣品を提供したか(争点3-3)(4) 取締役としての競業避止義務違反について(争点4)ア 被告個人がいつ原告の取締役を辞任したか(争点4-1)15イ 原告が競業避止義務違反を主張することが権利濫用に当たるか(争点4-2)ウ 被 としての競業避止義務違反について(争点4)ア 被告個人がいつ原告の取締役を辞任したか(争点4-1)15イ 原告が競業避止義務違反を主張することが権利濫用に当たるか(争点4-2)ウ 被告会社の共同不法行為の成否(争点4-3)(5) 被告個人による原告の業務妨害及び信用毀損行為について(争点5)ア 被告個人が、令和元年11月下旬頃、原告が管理するデータサーバーか20ら「部品リスト作成ツールソフト」を削除したか(争点5-1)イ 被告個人が、令和元年11月29日頃、原告に無断で、原告の複数顧客のデータを変更したか(争点5-2)ウ Lが、令和3年5月頃、原告の取引先企業である株式会社スタングビートル(以下「スタングビートル」という。)に対し、原告が被告会社の営25業行為を違法不当な方法で妨害しているとの虚偽の事実を告知したか(争11 点5-3)エ 被告会社の共同不法行為の成否(争点5-4)(6) 被告個人が本件物品を窃取したか(争点6)(7) 被告個人が、原告に対し、本件ソフトを不正に使用させないようにすべき取締役としての監視義務を怠ったか(争点7)5(8) 差止め等の必要性(争点8)(9) 原告の損害(争点9)第3 当事者の主張1 営業秘密の不正取得、使用等について(1) 争点1-1(本件顧客等情報が営業秘密に該当するか)について10【原告の主張】以下のとおり、本件顧客等情報は、秘密管理性、有用性及び非公知性が認められることから、原告における営業秘密である。 ア 秘密管理性について(ア) 本件顧客等情報が、原告業務以外の目的で利用することが許されな15いものであることは、原告の役員及び従業員にとって周知の事実であった。現に、原告の就業規則では、秘密保持義務に関 ついて(ア) 本件顧客等情報が、原告業務以外の目的で利用することが許されな15いものであることは、原告の役員及び従業員にとって周知の事実であった。現に、原告の就業規則では、秘密保持義務に関する規定を設けており、顧客・取引先の情報の不正利用を禁止している。なお、被告個人は、原告の従業員ではなかったが、取締役としての一般的な義務として秘密保持義務を負うことは当然であり、就業規則と同様の秘密保持義務20を課すことは、何ら、不当なものとはいえない。 よって、本件顧客等情報には秘密管理性が認められる。 (イ) 別紙1「顧客・協力企業目録」は、被告らによる営業活動先として想定される企業情報を目録の形で表現したものであり、被告個人が在籍していたときに、同目録記載の情報が、目録等の形で保有・保管されて25いたものではない。しかし、被告個人は、同目録記載の情報にアクセス12 可能であり、かつ、利用可能であった。そして、被告個人は、原告を退職する際、「アルテアには独立して起業することは伏せておりますので内密にして頂けますようお願い申し上げます。」とメールを送信するなど、本件顧客等情報が営業上の秘密として保護対象となっていることを認識していた。 5よって、被告個人は、本件顧客等情報が、原告にとって、保秘の必要性がある情報であることを認識していたものであるから、秘密管理性が認められる。 イ 有用性について本件顧客等情報は、原告と取引実績がある顧客及び協力企業を特定する10ものであり、同記載の企業等に連絡をすることで、原告と競合関係にある事業者が営業等に利用できるものであるから、有用性が認められる。 ウ 非公知性について本件顧客等情報は、原告と取引関係があることや担当者レベルの氏名や連絡先が記載されたものであり、社 関係にある事業者が営業等に利用できるものであるから、有用性が認められる。 ウ 非公知性について本件顧客等情報は、原告と取引関係があることや担当者レベルの氏名や連絡先が記載されたものであり、社会一般に知られているものではないか15ら非公知性が認められる。 【被告らの主張】ア 秘密管理性について秘密管理性を満たすためには、その前提として、対象情報を一般情報から合理的に区分した上で、対象情報を秘密として管理する意思を従業員等20に対して明確に示す必要がある。しかし、原告は、本件顧客等情報を名簿として管理することさえしていなかった。現に、被告個人は、本件訴訟において初めて本件顧客等情報が存在することを知ったものである。 なお、被告個人は、原告の取締役であったが、従業員ではなかったから、就業規則が適用されることはないし、そもそも就業規則の存在を知ら25なかった。 13 よって、本件顧客等情報には秘密管理性が認められない。 イ 有用性について本件顧客等情報記載の情報は、インターネットにおいて「基板実装」「京都」などと入力すれば容易に特定できるものである。また、顧客のホームページを閲覧したり、顧客の展示会等を視察したりすることで、顧客5が電子基板を使用した商品の規格・販売を行っていることも推察でき、そこから営業を行うことも可能である。 よって、本件顧客等情報には有用性が認められない。 ウ 非公知性について本件顧客等情報記載の情報は、会社名、住所、担当者氏名並びに電話番10号、ファックス番号及びメールアドレスといった連絡先であるが、これらの情報のうち、会社名、住所及び電話番号は、インターネットで積極的に公開されており、誰でも容易に入手できる。また、積極的に公開されているとはいえない担当者氏名やファ スといった連絡先であるが、これらの情報のうち、会社名、住所及び電話番号は、インターネットで積極的に公開されており、誰でも容易に入手できる。また、積極的に公開されているとはいえない担当者氏名やファックス番号及びメールアドレスは、代表メールアドレスや電話番号へ連絡することで知り得るものである。 15よって、本件顧客等情報には非公知性が認められない。 (2) 争点1-2(被告らが本件顧客等情報を不正に取得、使用したか)【原告の主張】被告個人は、令和元年12月初旬頃、原告の社内サーバーから本件顧客等情報を持ち出した。被告会社は、被告個人が持ち出した本件顧客等情報を利20用して、原告の取引先に対し、以下の営業活動を行い、原告の顧客を奪った。 よって、被告らは、営業秘密である本件顧客情報等を不正の利益を得るために使用した。 ア 新生工業及びATOUNに対する営業活動及びこれに基づく電子基板設25計データ作成受注14 イ 原告外注先である株式会社第一電機製作所(以下「第一電機」という。)に対する電子基板の製造依頼ウ 原告外注先であるスタングビートルに対する電子基板の製造依頼及び原告外注先である加美電機株式会社に対する電子基板の量産依頼エ 原告外注先である有限会社日本テクニカに対する電子基板の量産依頼5【被告らの主張】ア 被告個人は、本件顧客等情報を取得しておらず、被告らは、本件顧客等情報を利用していない。 イ 被告らは、ATOUNに対し、営業活動をしていない。ATOUNが原告の試作電子基板を製品に取り込んで動作検証を行ったところ、電子基板10が損傷する事象が発生した。そこで、ATOUNが、原因の追究と対策を講じるために、被告会社に対し、電子基板設計データの作成を発注した。 なお、被告個人とATO 動作検証を行ったところ、電子基板10が損傷する事象が発生した。そこで、ATOUNが、原因の追究と対策を講じるために、被告会社に対し、電子基板設計データの作成を発注した。 なお、被告個人とATOUNは、被告個人が原告に在籍する前からの知己である。 新生工業についても、同様に、同社が原告に依頼をした際、問題が生じ15たことから被告会社に発注をしたものであり、被告らから営業活動をしたものではない。なお、新生工業は、被告個人が原告の取締役に就任する前に勤めていた勤務先において紹介を受けたものである。 その他の企業は、いずれも電子基板の製造依頼先であるところ、電子基板を製造する会社はインターネット上で容易に検索することができるもの20であり、本件顧客等情報を利用しなければならないようなものではない。 (3) 争点1-3(原告電子基板設計データが営業秘密に該当するか)について【原告の主張】以下のとおり、原告電子基板設計データは、秘密管理性、有用性及び非公25知性が認められることから、原告における営業秘密である。 15 ア 秘密管理性原告電子基板設計データは、いずれも、原告が作成し、ATOUN及び新生工業に対して提供されたものである。原告は、顧客との間で秘密保持契約を締結し、原告が作成した電子基板設計データを第三者に開示することを禁止していた。被告個人を含む原告の従業員は、このような原告の取5扱いを認識していた。また、原告電子基板設計データが保存されていたNASサーバー(ネットワーク上で共有されるストレージ)にアクセスするためには、ID及びパスワードが必要であった。 このように、原告電子基板設計データは、原告において保秘されるべき情報として管理されていた。 10イ 有用性原告電子基板設計データは、 スするためには、ID及びパスワードが必要であった。 このように、原告電子基板設計データは、原告において保秘されるべき情報として管理されていた。 10イ 有用性原告電子基板設計データは、原告が有する専門的知見により合理的に電子部品の配置を設計したものであり、実際に電子応用製品として利用されたものである。このように、原告電子基板設計データは、原告が資本及び労力を投じて蓄積してきたノウハウを具現化したものであるから、有用性15を有する。 ウ 非公知性前記のとおり、原告は顧客との間で秘密保持契約を締結しており、原告電子基板設計データは、非公知性を有する。 【被告らの主張】20ア 秘密管理性原告電子基板設計データは、原告社内のNASサーバーの共有フォルダに保存されており、アクセス権者の制限もされておらず、従業員であれば自由にアクセス可能な状態であった。また、情報が記録されている媒体に「秘密」等の記載もなく、被告個人も、当該データが秘密として管理され25ているとの認識はなかった。 16 よって、原告電子基板設計データには秘密管理性が認められない。 イ 有用性原告電子基板設計データは、顧客が提供する仕様書に記載された仕様に従って3相モーターを制御するためのもので、その電子部品の配置もごくごく一般的なものであるから、有用性が認められない。 5ウ 非公知性原告電子基板設計データは、被告個人が培ってきた経験に基づく知識・ノウハウを実施したものであり、非公知性はない。 (4) 争点1-4(被告らが原告電子基板設計データを不正に取得、使用したか)について10【原告の主張】被告個人は、令和元年11月23日から同年12月22日頃までの間に、原告の営業秘密に該当する原告電子基板設計データを不正な 板設計データを不正に取得、使用したか)について10【原告の主張】被告個人は、令和元年11月23日から同年12月22日頃までの間に、原告の営業秘密に該当する原告電子基板設計データを不正な手段で取得し、被告会社のために、これを利用ないし改変し、ATOUN及び新生工業に提供した。すなわち、被告らは、原告電子基板設計データを不正に使用した。 15被告らは、原告電子基板設計データを取得したことを否定するが、被告らがATOUNや新生工業から提供されたデータは、そこから電子基板設計データを作成することが容易とはいえないPDFファイルにすぎない。また、被告らがATOUN及び新生工業に納品するまでに要した期間は、一般的な設計に要する期間に比べて短く、原告電子基板設計データを不正に取得し、20使用しなければ実現できない。 【被告らの主張】ア 電子基板設計データAについて被告会社は、ATOUNから電子基板設計データAの作成を依頼された際に、同社から、回路図等の必要な情報の開示を受けており、このように25開示を受けたデータを参考に、電子基板設計データAを作成し、販売した17 にすぎない。PDFファイルからでも電子基板の設計を行うことは可能である。 ATOUNは、電子基板設計データAを別の製品に転用した際、特定の使用環境において当該製品が破損したことから、当時の設計担当であった被告個人が所属する被告会社に、その原因の追究と探索を依頼した。その5結果、作成されたものが電子基板1である。 元となる基板が同一で、かつ、その改良品である以上、電子基板画像1と電子基板画像Aが似ることはやむを得ないものであり、原告電子基板設計データAを盗用したものではない。 イ 原告電子基板設計データBについて10原告電子基板設計デ である以上、電子基板画像1と電子基板画像Aが似ることはやむを得ないものであり、原告電子基板設計データAを盗用したものではない。 イ 原告電子基板設計データBについて10原告電子基板設計データBは、原告が、令和2年2月3日、Pに設計を依頼したものであり、被告個人が令和元年11月23日から同年12月22日頃までの間に盗み出すことは不可能である。また、電子基板設計データ2についても、電子基板設計データ1と同様に、ATOUNから必要な情報の開示を受けて作成したものであり、原告電子基板設計データB又は15B2を盗用して作成したものではない。 2 争点2(被告らによる基板設計データ作成が不法行為に該当するか)について【原告の主張】仮に原告電子基板設計データが不競法上の営業秘密に該当しないとして20も、同データは、原告に専属すべきデータであるから、被告らがこれを改変し、使用することは、原告の専属的使用権を侵害するものであり、不法行為(民法709条)に該当する。 【被告らの主張】被告らは、顧客から開示された回路図等を基に被告電子基板設計データを25設計しており、原告電子基板設計データを使用していない。また、原告が設18 計した電子基板設計データの知的財産権を原告と取引先のいずれが保有するかは、個々の協議によって決めるものとされており、必ずしも原告が専属的使用権を有するものではない上に、そもそも、原告が主張する不競法とは異なる専属的使用権なるものに基づく請求には法的根拠がない。 3 原告電子基板の形態模倣について5(1) 争点3-1(電子基板A及び電子基板1並びに電子基板B及び電子基板2の形態が実質的に同一であるか)について【原告の主張】ア 電子基板A及び電子基板1について電子基板1は、電子基 (1) 争点3-1(電子基板A及び電子基板1並びに電子基板B及び電子基板2の形態が実質的に同一であるか)について【原告の主張】ア 電子基板A及び電子基板1について電子基板1は、電子基板Aと、配置された部品がほぼ同一であり、配列10方法も同じである。すなわち、電子基板設計データAにおける「R2」「R3」「R4」「R11」「R13」「R14」「R15」「R31」「R33」「R36」「Q1」「Q2」「Q3」「C6」「C14」「C26」「C27」「CN2」の部品と設置位置が、電子基板設計データ1におけるそれと一致している。 15よって、電子基板1の形態は、電子基板Aの形態と実質的に同一である。 イ 電子基板B及び電子基板2について電子基板Bでは「F1」「FL1」が特徴的に斜めに配置されているが、電子基板2でも同じく斜め配置となっている。また、「CN1」「CN202」「C1」の配置が同じである。電子基板Bにおける「L2」と電子基板2における「L1」、電子基板Bにおける「U2」と電子基板2における「U1」では記号こそ異なるものの同じ部品が同一に配置されている。 なお、被告らは、電子基板Bが電子基板2よりも後に設計されたと主張する。しかし、電子基板2よりも先に設計され、電子基板Bの編集元であ25った電子基板B2と電子基板2を比較すると、特徴的な「F1」の斜め配19 置が一致しているし、「FL1」「CN1」「CN2」の配置も一致している。そして、電子基板B2の「U2」と電子基板2の「U1」、電子基板B2の「L2」と電子基板2の「L1」、「C1」、「Q1」の位置も一致している。 よって、電子基板2の形態は、電子基板Bの形態と実質的に同一であ5る。 【被告らの主張】被告会社が被告電子基板設計データを 電子基板2の「L1」、「C1」、「Q1」の位置も一致している。 よって、電子基板2の形態は、電子基板Bの形態と実質的に同一であ5る。 【被告らの主張】被告会社が被告電子基板設計データを作成したことは認めるが、原告電子基板設計データの形態と同一であるという点については否認し争う。被告らは、ATOUNの指示により、電子基板の作成及び変更を行っており、形態10が異なる。 また、原告が主張する共通点は、いずれも、電子基板設計においてごく一般的に用いられる手法であり、ありふれたものにすぎない。 (2) 争点3-2(被告らが、原告電子基板に依拠して被告電子基板を作成したか)について15【原告の主張】被告個人は、原告電子基板設計データを不正に持ち出し、これを利用して被告電子基板設計データを作成した。原告電子基板と被告電子基板の部品と配置は一致しているところ、仮に一から設計した場合、番号はランダムに振られるため、このような一致はあり得ない。 20よって、被告らは、原告電子基板設計データに依拠して被告電子基板設計データを作成した。 【被告らの主張】被告会社は、ATOUNから被告電子基板の設計を依頼され、その際、必要なデータの提供を受け、そのデータを基に被告電子基板設計データを作成25した。そのため、原告電子基板設計データに依拠していない。ATOUN20 は、原告及び被告会社双方に、電子基板の設計を依頼し、両者とも、パターン設計をPに依頼し、その結果、原告電子基板設計データ及び被告電子基板設計データが作成されたのであるから、原告電子基板設計データに依拠しなくても、これらが類似するのは当然である。 (3) 争点3-3(被告らが、形態模倣品を提供したか)5【原告の主張】被告らは、被告電子基板設計デ であるから、原告電子基板設計データに依拠しなくても、これらが類似するのは当然である。 (3) 争点3-3(被告らが、形態模倣品を提供したか)5【原告の主張】被告らは、被告電子基板設計データを作成し、部品を実装化して量産化することで、原告電子基板設計データを模倣した。そして、これに電子部品を実装・量産するためにスタングビートル及び第一電機に引き渡し、もって、形態模倣品を同各社に提供した。 10【被告らの主張】争う。 4 取締役としての競業避止義務違反について(1) 争点4-1(被告個人がいつ原告の取締役を辞任したか)について【原告の主張】15被告個人は、原告の株式会社登記簿に記録されているとおり、令和2年3月31日に原告の取締役を辞任した。そのため、被告個人は、同日まで、原告の取締役として、競業避止義務や善管注意義務を負う。 被告個人は、役員報酬が令和元年11月分までしか支払われていないことや、同月15日に辞任届を提出したことから、遅くとも、令和元年12月時20点で取締役を辞任していたと主張する。しかし、被告個人は、令和2年2月5日に行われた原告の株主総会に参加し、被告個人に対する役員報酬の支給期間を令和元年12月31日までとすること及び令和2年3月31日付けで辞任することについて何ら異議を述べなかった。 よって、被告個人が原告の取締役を辞任した日は、令和2年3月31日で25あり、同日まで、原告の取締役としての義務を負うから、原告の株主総会に21 おける承諾なく、同日までに被告会社を設立し、同社の代表取締役として同社のためにATOUN及び新生工業との間で電子応用製品の設計、販売等の事業を行ったことは、原告の取締役としての競業避止義務に違反する。 【被告らの主張】被告個人は、令和元年 の代表取締役として同社のためにATOUN及び新生工業との間で電子応用製品の設計、販売等の事業を行ったことは、原告の取締役としての競業避止義務に違反する。 【被告らの主張】被告個人は、令和元年11月頃、原告における業務がなくなってきたこと5から、同月15日、原告代表者に対し、令和2年3月31日付けで原告の取締役を辞任するとの内容の辞任届を提出した。辞任届に、令和2年3月31日付けで辞任すると記載したのは、同日まで役員報酬が得られればと考えたためである。これに対し、原告は、業務がないのに役員報酬を支払うことはできないと回答し、取締役としての地位は令和元年11月までとすること、10同年12月は業務の引継ぎを行うことを命じた。現に、役員報酬は、同年11月分までしか支払われておらず、同年12月分は業務の引継ぎに対する報酬が支払われたにすぎない。 以上のとおり、被告個人は、遅くとも令和元年12月の時点で、実体的に、原告の取締役を辞任し、原告も、これを了承していたものであるから、15少なくとも、同月以後、原告の取締役としての義務を負うことはない。よって、被告個人が同月24日に被告会社を設立し、被告会社の代表取締役として電子応用製品の製造、販売等を行ったとしても、原告の取締役としての競業避止義務に違反するものではない。 また、ATOUN及び新生工業のうち、被告会社が設立日から令和2年320月31日までの間に取引をしたのはATOUNのみである。 (2) 争点4-2(原告が競業避止義務違反を主張することが権利濫用に当たるか)について【被告らの主張】仮に被告個人が原告の取締役を辞任した日が令和2年3月31日であると25しても、実質的には令和元年12月31日には辞任しており、辞任日が令和22 2年3月31日とされた 【被告らの主張】仮に被告個人が原告の取締役を辞任した日が令和2年3月31日であると25しても、実質的には令和元年12月31日には辞任しており、辞任日が令和22 2年3月31日とされたのは、単に原告の手続的便宜によるものにすぎない。よって、原告が、同日まで被告個人が取締役としての競業避止義務を負うとして同義務違反を主張することは、権利濫用であるから許されない。 【原告の主張】争う。 5(3) 争点4-3(被告会社の共同不法行為の成否)について【原告の主張】被告個人の上記(1)の競業避止義務違反行為(不法行為)は、被告会社代表者である被告個人の主導により行われたものであり、被告会社は当該行為を認識し、客観的に関連共同したものとして共同不法行為責任を負う。 10【被告会社の主張】争う。 5 被告個人による原告の業務妨害及び信用毀損行為について(1) 争点5-1(被告個人が、令和元年11月下旬頃、原告が管理するデータサーバーから「部品リスト作成ツールソフト」を削除したか)について15【原告の主張】被告個人は、令和元年11月下旬頃、原告が管理するデータサーバーから、被告個人が原告の業務用に作成した「部品リスト作成ツールソフト」を不正に削除し、原告の業務を妨害した。同ソフトは、Excelのマクロ機能を使用し、回路設計CADが出力する部品データ等の情報をリスト化するもの20であり、原告の業務上、有用なソフトであった。 なお、被告個人は、警察に対し、同ソフトを削除したことを認め、「自分が作成したものであるから自分のものである」との供述をしており、削除したことを認めている。 【被告らの主張】25被告個人は、原告代表者から、何らかの原因でNASサーバーに障害が起23 こり、「部品リス るから自分のものである」との供述をしており、削除したことを認めている。 【被告らの主張】25被告個人は、原告代表者から、何らかの原因でNASサーバーに障害が起23 こり、「部品リスト作成ツールソフト」が起動できなくなったので、被告個人のパソコンに残っていないか、と尋ねられ、同ソフトを原告代表者に送ったことはあるが、削除したことはない。また、被告個人が、警察に対し、同ソフトを削除したことを認めたこともない。 (2) 争点5-2(被告個人が、令和元年11月29日頃、原告に無断で、原5告の複数顧客のデータを変更したか)について【原告の主張】被告個人は、令和元年11月29日頃、無断で、原告の複数顧客のデータを変更し、原告の業務を妨害した。具体的には、複数の回路図のCADデータをサーバーから削除して持ち帰ったり、他社からの依頼で開発を行ってい10たILS基板関係の開発データをフォルダごと削除したりした。 【被告らの主張】否認する。 (3) 争点5-3(Lが、令和3年5月頃、原告の取引先企業であるスタングビートルに対し、原告が被告会社の営業行為を違法不当な方法で妨害してい15るとの虚偽の事実を告知したか)について【原告の主張】被告会社の取締役であるLは、令和3年5月頃、原告の取引先企業であるスタングビートルの代表者である M (以下「M」という。)に対し、「第一電機より実装依頼を断られた。アルテアはあすかのリピート案件が増20えて事業活況をねたんで、妨害のため、外注先への圧力をかけている。」旨発言した。 かかる発言は、スタングビートルが、原告が被告会社の営業行為を違法不当な方法で妨害しているとの虚偽の事実があったものと認識し得るものであり、これによって、原告の営業上の信用を害したものであるか 。 かかる発言は、スタングビートルが、原告が被告会社の営業行為を違法不当な方法で妨害しているとの虚偽の事実があったものと認識し得るものであり、これによって、原告の営業上の信用を害したものであるから、不競法225条1項21号に定める虚偽事実の告知に該当する。 24 原告は、第一電機代表者 N (以下「N」という。)に対し、被告らから受注しないで欲しいとは言っておらず、被告会社が実装依頼している基板が、原告のものを改変したようである旨告げたところ、Nが、原告が指摘する問題を解決してから仕事を持ってきてほしい旨、被告個人に告げると申し出た。これに対し、原告は、証拠が確保できる可能性を考え、そのまま受5注して欲しいと述べていた。それにもかかわらず、Nは、被告会社が実装依頼している基板に関する原告の見解を被告個人に告げてしまった。このように、原告は、Nに対し、被告会社から受注しないよう述べていないにもかかわらず、Nが原告からの指摘を被告個人に告げ、これを聞いたLがNの発言を軽信し、Mに対し、結果的に虚偽の事実を告げたものである。そして、こ10のように軽信したことは、虚偽事実の告知による信用毀損行為を免責する正当化事由にはなり得ない。 【被告らの主張】被告個人は、第一電機に対し、実装の見積依頼をした際、Nから、「(原告代表者が、)(被告個人)が仕事を奪っているので受注しないでほしいとか15色々言ってきている。お互いに言い分もあるだろうし、片方の意見を聞いて肩を持つこともないし、仕事は仕事として受けさせてもらいます。そういう経緯があったことを(被告個人)に話をしないまま仕事をするのはよくないので話をした。」といわれたことがあった。 Lは、Mと面談をした際、第一電機のことが話題にあがったことがあり、20上記のN 経緯があったことを(被告個人)に話をしないまま仕事をするのはよくないので話をした。」といわれたことがあった。 Lは、Mと面談をした際、第一電機のことが話題にあがったことがあり、20上記のNと被告個人のやり取りを伝えたのみであり、虚偽の事実を告知したものではない。 また、スタングビートルは、Lの発言を受けて原告からの仕事を断ったり、同発言を第三者に流布したりしていないから、原告の営業上の信用は害されていない。 25(4) 争点5-4(被告会社の共同不法行為の成否)について25 【原告の主張】上記(1)ないし(3)の不法行為は、被告会社代表者である被告個人の主導により行われたものであり、被告会社は当該行為を認識し、客観的に関連共同したものとして共同不法行為責任を負う。 【被告会社の主張】5争う。 6 争点6(被告個人が本件物品を窃取したか)について【原告の主張】(1) 本件パソコンについて被告個人は、令和元年11月23日から同年12月22日頃までの間に、10当時の原告事務所に侵入し、原告が設置し、被告個人が業務上使用していた本件パソコンを窃取し、代わりに、自身の私物パソコン(残置パソコン)を設置した。被告個人は、本件パソコンを窃取していないと主張するが、以下の事情に鑑みれば、被告個人が窃取したことは明らかである。 ア 残置パソコンのユーザー名が「 c 」に設定されていたこと。 15イ 残置パソコンに存した「 c 」という名称のフォルダ内に、被告個人が被告会社の設立の準備をしていた時期にダウンロードされた商業登記申請のための手引書が保存されていたこと。 ウ 被告個人アカウントには、本件パソコンと残置パソコンが登録されており、そのうち、本件パソコンには原告が購入した履歴があっ 期にダウンロードされた商業登記申請のための手引書が保存されていたこと。 ウ 被告個人アカウントには、本件パソコンと残置パソコンが登録されており、そのうち、本件パソコンには原告が購入した履歴があったが、残置パ20ソコンには原告が購入した履歴がなかったことから、残置パソコンは被告個人が購入したものと考えられること。あるいは、Tが被告個人に譲渡したものと考えられること。 エ 前記1のとおり、被告個人が、原告電子基板設計データを大量に持ち出したこと。 25オ 被告個人が原告社内には存在しない電子基板設計データを保有していた26 こと。 (2) その余の物品について被告個人宅には本件還付品のほか、本件物品はなかった。しかし、これは、警察の捜査が遅れたことから、偶然発見ができなかっただけであり、本件還付品が存していたことやこれらの物品がなくなった時期と被告個人が競5業行為に及んだ時期が一致すること等に鑑みれば、被告個人が、その余の物品についても原告から窃取したことが推認できる。 【被告個人の主張】(1) 本件パソコンについて被告個人は、本件パソコンを窃取していない。 10原告は、被告個人が本件パソコンを窃取し、代わりに残置パソコンを設置したと主張する。しかし、残置パソコンは、Tが原告代表者に贈与したものであり、被告個人は使用していない。原告は、残置パソコンのアカウント名等を指摘するが、アカウント名等は如何様にも変更できるし、被告個人は、被告会社の設立手続を司法書士に委任しており、わざわざ法人登記に関する15資料をダウンロードする意味もない。また、原告の電子基板設計データは、被告個人が原告に在籍していたときから、個人のノートパソコンを使用して業務に従事し、設計するために持ち帰っていたことがあったから、被 料をダウンロードする意味もない。また、原告の電子基板設計データは、被告個人が原告に在籍していたときから、個人のノートパソコンを使用して業務に従事し、設計するために持ち帰っていたことがあったから、被告個人が保有していたものであり、原告社内に当該データが存在しないのは、原告のデータ管理の問題にすぎない。 20そもそも、本件パソコンのデータを不正に入手しようとするならば、本件パソコンを持ち帰るだけで足り、わざわざ本件アカウントに紐づいている残置パソコンを設置するようなことをする必要はない。 (2) その余の物品について被告個人は、本件還付品については持ち帰っていたが、その余の物品につ25いては何ら持ち帰っていないし、窃取もしていない。 27 7 争点7(被告個人が、原告に対し、本件ソフトを不正に使用させないようにすべき取締役としての監視義務を怠ったか)について【原告の主張】(1) 原告社内のパソコンには、正規のライセンスを取得していない本件ソフトがインストールされていた。これらのソフトは、被告個人が平成22年85月頃に非正規の手段で原告に持ち込み、事業用に使用していたものであり、被告個人が主導的に導入したものである。 原告が本件ソフトを違法に使用し続けていた結果、原告は、Cadence社から損害賠償請求を受けることとなった。 (2) 被告個人は、原告の取締役として原告社内における違法行為を監視し、10是正すべき注意義務を負っていた。しかし、被告個人はかかる義務を怠り、原告内において、本件ソフトを違法に使用させたものであるから、取締役の善管注意義務に違反した。 (3) よって、被告個人は、会社法423条に基づき、監視義務違反によって原告に生じた損害を賠償する義務を負う。 15【被告個人の主張】( のであるから、取締役の善管注意義務に違反した。 (3) よって、被告個人は、会社法423条に基づき、監視義務違反によって原告に生じた損害を賠償する義務を負う。 15【被告個人の主張】(1) 被告個人が本件ソフトを原告社内のパソコンにインストールしたのは原告代表者の指示による。すなわち、原告代表者は、平成22年4月頃、個人事業主として電子応用製品の設計、製造等の事業を開始し、被告個人が同年8月頃、原告代表者の事業に参画したが、原告代表者は、その時点で既に非20正規のCADソフトを使用していた。原告代表者の事業は、平成23年7月7日、法人化し、原告が設立されたが、その際、顧客から、本件ソフトで設計した設計データで納品することを条件とする依頼を受けた。しかし、その頃、原告は、財政状況に照らし、正規のライセンスを購入することができなかったことから、被告個人に依頼し、非正規の本件ソフトを入手し、使用す25ることとした。 28 原告は、その後、新たに従業員を雇用したときも、当該従業員用の新しいパソコンに非正規の本件ソフトをインストールし、これを使用させていた。 原告は、令和元年頃、社内に正規版のCADソフトが一つもない状況には問題があると考え、被告個人に対し、イノテックから1ライセンスのみ購入するように指示をしたが、原告には、CADソフトを使用して電子基板の設計5を行う従業員が複数おり、同時に本件ソフトを起動する必要もあったため、1ライセンスでは不足していた。 (2) 以上のとおり、原告社内において本件ソフトが違法に使用されていたことは原告代表者の指示によるものであり、被告個人は、その指示に従ったにすぎないから、被告個人に、取締役としての監視義務違反は認められない。 108 争点8(差止め等の必要性)について ていたことは原告代表者の指示によるものであり、被告個人は、その指示に従ったにすぎないから、被告個人に、取締役としての監視義務違反は認められない。 108 争点8(差止め等の必要性)について【原告の主張】被告らは、原告主張営業秘密を不正に使用し、原告のノウハウにただ乗りし、かつ、原告の営業機会を奪い続けており、これによって、今後、原告の損害が拡大することは明らかであるから、被告らに対し、原告主張営業秘密の使15用の差止め及び廃棄を請求する必要性がある。 【被告らの主張】争う。 9 争点9(原告の損害)について【原告の主張】20(1) 被告らが、原告主張営業秘密を不正に使用し、違法に新たな基板設計データを作成し、又は、原告電子基板の形態模倣行為を行ったこと(前記1ないし3)による原告の損害ア 逸失利益(ア) 被告らが、令和2年以降、原告主張営業秘密(本件顧客等情報及び25原告電子基板(画像・設計データ))を使用するなどし、ATOUN及29 び新生工業との取引を行い、原告の営業機会を奪った結果、原告の両社に対する売上は以下のとおり減少した。原告における新生工業の売上は、被告個人が退職したときを境に大幅に減少しているから、被告個人の競業行為によって売上が低下したものというよりない。 対ATOUN対新生工業平成31年3月期 657万9000円1079万7050円令和2年3月期2005万7850円1050万0000円上記年平均売上1331万8425円1064万8525円令和3年3月期498万2690円916万8500円差異▲833万5735円▲148万0025円ATOUN及び新生工業の取引についての損害額(売上減少額)は、5 25円令和3年3月期498万2690円916万8500円差異▲833万5735円▲148万0025円ATOUN及び新生工業の取引についての損害額(売上減少額)は、5令和3年3月期から令和5年3月期までの3年分に相当するから2944万7280円(=(833万5735円+148万0025円)×3年)となる。 (イ) 原告の売上に対する経費率は30%であるから、これを控除すると、原告には、被告らの原告主張営業秘密の使用等によって、206110万3096円(=2944万7280円×(100%-30%))の逸失利益が発生した。 イ 不正競争に関する調査費用被告らが、上記不正競争行為等を行ったことから、原告は、事実関係の調査や告訴等を行うため、合計295万1840円の調査費用の負担(詳15細は別紙6「調査費用一覧表」記載3及び4のとおり。以下、同記載3及び4の調査費用を「不正競争等調査費用」という。)を余儀なくされた。 ウ 上記計 2356万4936円エ 弁護士費用 230万0000円上記ウ記載の損害の賠償を求めるために必要かつ相当な弁護士費用は上2030 記のとおりである。原告は、後記(3)アの損害額100万円に対する弁護士費用と併せて合計240万円の弁護士費用を請求している。 オ 合計 2586万4936円(2) 取締役としての競業避止義務違反(前記4)による原告の損害ア 逸失利益5(ア) 被告個人は、原告の取締役としての競業避止義務に違反し、ATOUN及び新生工業との取引を行い、原告の営業機会を奪った結果、原告の両社に対する売上は以下のとおり減少した(なお、原告は、上記(1)アの主張を行うとともに、競業避止義務違反について に違反し、ATOUN及び新生工業との取引を行い、原告の営業機会を奪った結果、原告の両社に対する売上は以下のとおり減少した(なお、原告は、上記(1)アの主張を行うとともに、競業避止義務違反については、以下のとおり主張している。)。 10 対ATOUN対新生工業平成31年3月期873万9000円 1079万7050円令和2年3月期2091万5050円 1050万0000円上記年平均売上1482万7025円 1064万8525円令和3年3月期1067万2690円 467万0500円差異▲415万4335円 ▲597万8025円原告が被告らに対し、本件訴訟を提起しなければ、被告らは、漫然とATOUN及び新生工業との取引を継続していたものと考えられるから、逸失利益の算定対象期間は被告らが訴状の送達を受けた令和4年2月まで(27か月)とするべきである。なお、被告らは、新生工業と取引を開始したのは令和3年3月頃からであると主張するが、上記のとお15り、原告における新生工業の売上は、被告個人が退職したときを境に大幅に減少しているから、被告個人の競業行為によって売上が低下したものというよりない。よって、これら2社の取引についての損害額(売上減少額)は、令和4年2月までの27か月分に相当するから2279万7810円(=(415万4335円+597万8025円)÷12月2031 ×27月)となる。 (イ) 原告の売上に対する経費率は30%であるから、これを控除すると、原告には、被告個人の競業避止義務違反に関する被告らの共同不法行為によって、1595万8467円(=2279万7810円×(100%-30%))の逸失利益が発生した。 5イ 不正競争等調査費用 295万1840円 義務違反に関する被告らの共同不法行為によって、1595万8467円(=2279万7810円×(100%-30%))の逸失利益が発生した。 5イ 不正競争等調査費用 295万1840円上記(1)イ同旨であり、合計295万1840円の調査費用を要した。 ウ 上記計 1891万0307円エ 弁護士費用 189万0000円上記ウ記載の損害の賠償を求めるために必要かつ相当な弁護士費用は上10記のとおりである。 オ 合計 2080万0307円(3) 業務妨害及び信用毀損行為(前記5)による原告の損害ア 無形損害 100万円イ 弁護士費用15上記(1)エ記載のとおり。 (4) 被告個人による物品窃取行為(前記6)による原告の損害ア 盗品自体の価格 28万3887円別紙4「被害品目録」記載のとおりイ 被害対応に要した費用 308万7434円20別紙6「調査費用一覧表」記載1及び2のとおり(以下、同記載1及び2の調査費用を「窃取関係調査費用」という。)ウ 上記計 337万1321円エ 弁護士費用後記(5)記載の損害に関する弁護士費用と合算して95万円を請求して25いる。 32 (5) 被告個人の本件ソフトに関する監視義務懈怠(前記7)による原告の損害ア イノテックへの支払額 503万8000円原告は、イノテックとの交渉の結果、令和3年5月21日、本件ソフトを違法に使用していたことを踏まえ、Captureを2ライセンス(1ライセ5ンスあたり税込63万8000円)、OrCAD Capture(R) CIS optionを1ライセンス(1ライセンスあたり税込3 用していたことを踏まえ、Captureを2ライセンス(1ライセ5ンスあたり税込63万8000円)、OrCAD Capture(R) CIS optionを1ライセンス(1ライセンスあたり税込38万5000円)、PSpiceを2ライセンス(1ライセンスあたり税込220万円)発注することとし、合計606万1000円(税込)を支払った。このうち、Capture及びOrCADCapture(R) CIS option1ライセンス分である102万3000円(税10込)は原告の業務に必要なものであるが、その余は原告の業務には不要であり、被告個人が違法にインストールし、原告社内で使用し続けてきたことから支払を余儀なくされたものであるから、原告は、被告個人の任務懈怠により、インテックへの支払額のうち、原告の業務に必要な分を除いた503万8000円の損害を負った。 15イ 調査等費用 110万4000円被告個人の任務懈怠行為により、原告は、調査やインテックへの対応等を余儀なくされ、別紙6「調査費用一覧表」記載5の人件費(以下「ソフト関係調査費用」という。)の支出を余儀なくされた。 ウ 上記計 614万2000円20エ 弁護士費用上記(4)エ記載のとおり。 (6) まとめア 被告個人に対する請求大項目費目金額33 前記(4)盗品自体の価格28万3887円調査費用308万7434円前記(5)イノテックへの支払額503万8000円調査費用110万4000円弁護士費用95万0000円合計1046万3321円遅延損害金の起算日は、前記(4)及び(5)に係る各行為の後の日である令和2年3月3日である 110万4000円弁護士費用95万0000円合計1046万3321円遅延損害金の起算日は、前記(4)及び(5)に係る各行為の後の日である令和2年3月3日である。 イ 被告らに対する連帯請求大項目費目金額前記(1)逸失利益2061万3096円不正競争等調査費用295万1840円前記(2)逸失利益1595万8467円不正競争等調査費用295万1840円前記(3)無形損害100万0000円弁護士費用240万0000円(189万0000円)合計2696万4936円前記(1)の損害と前記(2)の損害は、弁護士費用も含め、金額が重複する限度で選択的に請求している。遅延損害金の起算日は、前記(1)ないし(3)5に係る各行為の後の日である令和元年12月31日である。 【被告らの主張】(1) 原告主張営業秘密の不正使用、違法に新たな基板設計データを作成したこと、又は、原告電子基板の形態模倣行為(前記1ないし3)による原告の損害について1034 ア 逸失利益(ア) 被告会社とATOUN及び新生工業との取引について被告会社がATOUNと取引をしていたこと、現在、新生工業と取引をしていることは認める。しかし、ATOUNとの取引高は原告が主張するような規模のものではない。また、被告会社が新生工業と取引を開5始したのは、令和3年3月以降であり、被告会社が設立されてから1年以上経過してからである。 (イ) ATOUNとの取引に関する逸失利益についてa 算定基礎平成31年3月期の売上と令和2年3月期の売上の平均売上高を、10本来得られたであろう売上として主張することは、 である。 (イ) ATOUNとの取引に関する逸失利益についてa 算定基礎平成31年3月期の売上と令和2年3月期の売上の平均売上高を、10本来得られたであろう売上として主張することは、二つの売上高に倍以上の開きがあることからすると不適切である。 b 算定期間ATOUNは、長年の累積赤字が積み上がって業績が悪化し、令和4年1月31日付けで会社解散に関するお知らせを発出しており、同15年2月まで取引を行うことは現実的に困難であったから、ATOUNとの取引で原告が利益を得られた期間は、同月よりも前までである。 c 因果関係の不存在ATOUNは、原告が作成した成果物に不具合が生じたため被告個人に助言を求め、そこから取引を開始したのであるから、被告個人の20営業活動によるものではない。 また、上記bのATOUNの経営状況に加え、令和4年頃は、コロナ禍とこれに伴う世界的な半導体不足の影響で、電子機器の製造を行う中小企業は、わずかな注文さえも製造できない状況が続いていた。 このように、原告とATOUNの間の取引の減少は、被告個人の行25為との因果関係がない。 35 (ウ) 新生工業との取引に関する逸失利益について新生工業も、ATOUNと同様に、原告の成果物に不具合があったことから被告個人に助言を求めたものである。 また、上記(イ)c同様、市況の影響により、電子機器の製造を行う中小企業の売上は軒並み低下していた。 5よって、原告が主張する逸失損害と、被告らの行為との間には因果関係が認められない。 (エ) 経費率について原告が属する製造業では、製造原価だけでも少なくとも70%程度はかかっており、経費率30%というのは根拠がない。 10イ 不正競争等調査費用不正競争等調査費用を支払った ) 経費率について原告が属する製造業では、製造原価だけでも少なくとも70%程度はかかっており、経費率30%というのは根拠がない。 10イ 不正競争等調査費用不正競争等調査費用を支払ったかが明らかではない上に、高額に過ぎる。また、弁護士費用は、本件訴訟の弁護士費用として考慮すべきであるし、刑事告訴等にあたって弁護士を利用するか否かは本人の判断によるものであり、損害とはいえない。 15ウ 弁護士費用について争う。 (2) 取締役としての競業避止義務違反(前記4)による原告の損害について上記(1)と同旨である。 (3) 業務妨害及び信用毀損行為(前記5)による原告の損害について20争う。 (4) 物品窃取行為(前記6)による原告の損害についてア 盗品自体の価格被告個人は、本件物品を窃取していない。また、本件還付品は原告に還付されており、被害回復が済んでいる。 25イ 調査費用36 現実に支払ったのかが明らかではなく、また、必要性も不明である上に、高額に過ぎる。 (5) 本件ソフトに関する監視義務懈怠(前記7)による原告の損害についてア イノテックへの支払額原告は、イノテックから損害賠償請求をされたことを受け、原告が自ら5必要なライセンス数を計上し、購入する商品を選択した上で606万1000円を支払っている。原告は、原告の業務上必要なライセンスはCapture1ライセンスのみであると主張する。しかし、原告社内においてCADを使用する必要がある者は5名程度おり、Capture1ライセンスでは到底足りない。また、PSpiceについても、原告の業務において設計する10回路のシミュレーションのために使用していた。 よって、原告は、インテックに対し、本来必要な費用を支払ったにすぎず は到底足りない。また、PSpiceについても、原告の業務において設計する10回路のシミュレーションのために使用していた。 よって、原告は、インテックに対し、本来必要な費用を支払ったにすぎず、損害自体が存在しない。 イ 調査費用及び弁護士費用争う。 15第4 当裁判所の判断1 争点1ないし8に関する当裁判所の判断の要旨は以下のとおりであり、次項以降において必要な限度で理由を詳述する。 (1) 争点1(営業秘密の不正取得、使用等について)、争点2(被告らによる基板設計データ作成が不法行為に該当するか)及び争点3(原告電子基板の20形態模倣について)本件顧客等情報及び原告電子基板設計データのいずれについても営業秘密性が認められず(争点1-1、1-3)、被告電子基板が原告電子基板の形態を模倣したものとは認められない(争点3)。 原告電子基板設計データについての専属的使用権の侵害による不法行為に25基づく請求は、不競法と実質的に同一の法的利益に基づくものであるから、37 理由がない(争点2)。 (2) 争点4(取締役としての競業避止義務違反について)被告個人が原告の取締役を辞任したと認められる令和2年3月31日までの間、被告個人が原告と競業する被告会社を設立し、同社の事業を行ったことについては、原告取締役としての競業避止義務違反が認められ、この点に5ついて原告が被告らに対して損害賠償請求をすることが権利濫用に当たるといえない。また、被告個人の競業避止義務違反に関し、被告会社には共同不法行為が認められる。 (3) 争点5(被告個人による原告の業務妨害及び信用毀損行為について)原告が主張する被告らによる信用毀損行為等は、いずれも認められないか10ら理由がない。 (4) 争点6(被告個人が本件 (3) 争点5(被告個人による原告の業務妨害及び信用毀損行為について)原告が主張する被告らによる信用毀損行為等は、いずれも認められないか10ら理由がない。 (4) 争点6(被告個人が本件物品を窃取したか)被告個人が、本件還付品以外の本件物品を窃取したものとは認められない。 (5) 争点7(被告個人が、原告に対し、本件ソフトを不正に使用させないよ15うにすべき取締役としての監視義務を怠ったか)被告個人は、原告取締役として、原告の法令遵守状況について監視すべき義務を負っており、本件ソフトの不正インストールを是正監督しなかったことは、インストールの経緯にかかわらず同義務の違反に当たる(ただし、後記7(4)のとおり、同義務違反と相当因果関係のある原告の損害は認められ20ない。)。 (6) 争点8(差止め等の必要性)については、判断を要さない。 2 争点1ないし3について(1) 争点1-1(本件顧客等情報が営業秘密に該当するか)についてア 証拠(原告代表者、甲7、39)によれば、本件顧客等情報は、被告個25人が原告に在籍していたときには別紙1「顧客・協力企業目録」のように38 他の情報と分離し、整理されていたものではなかったこと、同別紙は、本件訴訟提起に際し作成されたものであることが認められる。 イ 本件顧客等情報の秘密管理性について秘密として管理されているというためには、当該情報の保有者の秘密管理意思が、保有者が実施する具体的状況に応じた合理的な秘密管理措置に5よって明確に示され、その認識可能性が確保される必要があるものと解される。ここで、営業秘密として保護されるためには、どの情報が営業秘密となるかを具体的に特定し、秘密情報であることの認識可能性が担保される必要があるものと解することが相当で される必要があるものと解される。ここで、営業秘密として保護されるためには、どの情報が営業秘密となるかを具体的に特定し、秘密情報であることの認識可能性が担保される必要があるものと解することが相当である。 原告において、本件顧客等情報は、特に整理されたようなものではな10く、そもそもどのような情報が存したのかすら原告内部で認識が共有されていたものとはいえない。また、前記前提事実のとおり、原告の就業規則には、一般的な内容の取引先等の情報に関する守秘義務規定が設けられているが、本件顧客等情報は具体的に秘密情報として特定されておらず、本件顧客等情報を秘密として管理するために何らかの措置が講じられていた15ものとは認められない(なお、被告個人は、同人が取締役であったことから就業規則は適用されないし、そもそも就業規則の存在自体知らなかったと主張する。しかし、就業規則の適用の有無等にかかわらず、営業秘密に関する守秘義務を負うことは当然であり、そのことは、被告個人が、原告の取締役を辞任したときに別紙8「誓約書」(甲39)に署名捺印しなか20ったからといって左右されないから、被告らの主張は採用できない。)。 この点、原告は、被告個人が主観的に秘密であると認識し得たことや、被告個人が、取引先に対し、被告会社を設立したことを秘匿するよう依頼していたことを指摘する。しかし、上記のとおり、不競法で保護される営業秘密というためには、秘密情報の内容が特定され、それに対する保有者25の秘密管理意思が明確に示されている必要があるから、原告の主張は採用39 できない。 ウ 以上のとおり、有用性及び非公知性について判断するまでもなく、本件顧客等情報には、営業秘密性が認められない。 (2) 争点1-3(原告電子基板設計データが営業秘密に該当するか できない。 ウ 以上のとおり、有用性及び非公知性について判断するまでもなく、本件顧客等情報には、営業秘密性が認められない。 (2) 争点1-3(原告電子基板設計データが営業秘密に該当するか)について5ア 証拠(甲9、14の1ないし3、17、26、乙1、6、8ないし13、19ないし22、原告代表者及び被告個人兼被告会社代表者(以下、証拠として摘示する場合は「被告本人」と表記する。))並びに弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められ、これに反する証拠は採用できない。 (ア) 原告電子基板設計データについて、これが秘密情報であることを外10形的に示す表示等はなされておらず、原告電子基板設計データを含む、原告において作成された電子基板設計データは、原告社内のNASサーバーに保存されていた。一方、作業中の電子基板設計データが、各従業員のパソコンに保存されることもあった。 (イ) 原告社内のNASサーバーは、アクセスするために、ID及びパス15ワードによる認証を経る必要があった。一方、NASサーバー内のファイルやフォルダに対し、当該従業員とは無関係な情報にはアクセスができないようにするなどのアクセス制限は講じられていなかった。なお、NASサーバーのID及びパスワードは、従業員が使用するパソコンのログインID及びパスワードと同じものであった。 20(ウ) 被告個人は、原告の業務のために、私物のパソコンにデータを移して電子基板の設計作業をすることもあった。 (エ) 原告、被告個人、ATOUN関係者及び新生工業関係者等との間で、別紙7「メール一覧表」記載のメールのやりとりがあった。なお、令和元年12月25日14時35分付けのRから被告個人に送信された25メールに添付されていたファイルは、電子基板2の設計に向けて作成さ 別紙7「メール一覧表」記載のメールのやりとりがあった。なお、令和元年12月25日14時35分付けのRから被告個人に送信された25メールに添付されていたファイルは、電子基板2の設計に向けて作成さ40 れた要求仕様書(乙8)及びPDF形式の令和元年7月17日に作成されたHIMICO Ver2 の回路図(乙9)であった。また、同年12月26日午後4時48分付けのRから被告個人に送信されたメールに添付されていたファイルは、上記要求仕様書(乙8)の修正版(乙10)であった。 5イ 別紙7「メール一覧表」のとおり、原告代表者が、令和元年12月25日、被告個人に対し、回路図データが破損のため開けないので同人がローカルに持っているデータを送付して欲しい旨述べ、同人が社外で使用しているパソコンに電子基板設計データが存在することを前提に、そのデータの送付を依頼するメールを送信し、被告個人もこれに応じて手持ちのデー10タを送付している(ただし、このとき送付したデータに原告電子基板設計データは含まれていなかった。)ことを踏まえると、原告において、原告電子基板設計データは、役員又は従業員が担当している案件に関するものであるか否かを問わず、NASサーバーにさえログインすれば閲覧することができ、かつ、作業のために社外へ持ち出すことも容認され、その持出15し状況も管理されていなかったものと認められる。 そうすると、原告電子基板設計データは、他の社内データと区別して秘密として管理する意思が客観的に示されるような措置が講じられていたとは認められないから秘密管理性が認められない。 この点、原告は、原告電子基板設計データは、顧客との間で守秘義務契20約を締結した上で取り扱っているものであり、このことは被告個人を含む従業員全員が認識していたの ら秘密管理性が認められない。 この点、原告は、原告電子基板設計データは、顧客との間で守秘義務契20約を締結した上で取り扱っているものであり、このことは被告個人を含む従業員全員が認識していたのであるから、秘密として管理されていたと主張する。確かに、原告は、ATOUN及び新生工業との間で、秘密保持契約を締結した上で電子基板設計データを作成していたものと認められる(甲5、6)。しかし、対外的に顧客に守秘義務を課していたからといっ25て、当然に原告内部での秘密管理措置を講じたことになるものではない。 41 原告の主張は、採用できない。 ウ 以上のとおり、有用性及び非公知性について判断するまでもなく、本件原告電子基板設計データには、営業秘密性が認められない。 なお、念のため、被告個人が原告電子基板設計データを令和元年11月23日から同年12月22日頃までの間に原告から持ち出したことを裏付5ける証拠はなく、また、後記(4)に認定する事情からすると、原告電子基板設計データを不正に使用したとも認められない(争点1-4)。 (3) 争点2(被告らによる基板設計データ作成が不法行為に該当するか)についてア 原告は、仮に原告電子基板設計データが不競法上の営業秘密に該当しな10いとしても、同データは、原告に専属すべきデータであり、被告らがこれを改変し、使用することは、原告の専属的使用権を侵害するものであるから、不法行為(民法709条)に該当すると主張する。しかし、原告電子基板設計データについて、営業秘密に該当しないにもかかわらず原告の専属的利用権が認められる法的根拠が明らかではない。 15イ また、特別法においては種々の利害関係や公共の利益等を考慮した上でその保護すべき利益や要件・効果が定められているのであるから、特別法に 属的利用権が認められる法的根拠が明らかではない。 15イ また、特別法においては種々の利害関係や公共の利益等を考慮した上でその保護すべき利益や要件・効果が定められているのであるから、特別法に定める要件が充足されないときは、当該特別法が規律対象とする利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り、不法行為を構成するものではないと解することが相当である(最高裁平成2021年(受)第602号、第603号同23年12月8日第一小法廷判決・民集65巻9号3275頁)。そして、情報の取得、利用は原則的には自由であるところ、契約上営業秘密として定められた情報や不競法が定める要件を満たす情報が営業秘密として保護されるものであるから、特段の事情の有無については、このことも踏まえた検討が求められる。 25ここで、原告が主張する法的保護に値する利益は、企業が(排他的に管42 理する)有用な情報によって生じる利益であり、不競法が秘密管理性、有用性等の要件を満たす一定の情報を営業秘密として保護している利益と同質のものであるし、その他、被告らが社会通念上相当な範囲を逸脱した行為によって原告電子基板設計データを取得したと認めるに足りる証拠はない。そうすると、同法にいう営業秘密に該当するとは認められない原告電5子基板設計データの利用を理由とする不法行為が成立するものとは認められない。 ウ 以上のとおり、原告の主張は採用できない。 (4) 争点3-1(電子基板A及び電子基板1並びに電子基板B及び電子基板2の形態が実質的に同一であるか)及び争点3-2(被告らが、原告電子基10板に依拠して被告電子基板を作成したか)についてア 電子基板A及び電子基板1について(ア) 原告は、下記の電子基板A及び電子基板1について であるか)及び争点3-2(被告らが、原告電子基10板に依拠して被告電子基板を作成したか)についてア 電子基板A及び電子基板1について(ア) 原告は、下記の電子基板A及び電子基板1について、「R2」「R3」「R4」「R11」「R13」「R14」「R15」「R31」「R33」「R36」「Q1」「Q2」「Q3」「C6」「C14」「C26」「C2157」「CN2」の部品と設置位置が一致していると主張する(電子基板A及び電子基板1におけるこれらの部品の位置は、下記の図の緑枠部分のとおり)。しかし、下記のとおり、「CN1」と「CN2」は、電子基板Aでは隣りあわせに配置されているのに対し、電子基板1では対辺上に配置されている。また、電子基板1には、原告が類似点として指摘す20る「Q3」の左上(なお、基板上の位置関係は、本文中の図の上下左右による。以下同じ)に「Q3」よりも大きな「Q4」が配置されているが、電子基板Aにはこれがない。その他、原告が類似していると指摘する「CN2」と「Q1」「Q2」「Q3」も、その間の回路集積度が、電子基板1の方が高く、外形上、電子基板Aと電子基板1には明らかな相25違点が認められる。 43 そうすると、電子基板Aと電子基板1の形態が実質的に同一であるとは認められない。 電子基板A電子基板1(イ) また、別紙7「メール一覧表」のとおり、被告個人とR及びQとの間でなされた、電子基板1の開発に関するメールによると、上記の「CN2」の位置の変更等は、ATOUNからの依頼を受け、被告らが設計5したものであることが認められる(令和2年2月12日午前11時41分15秒付けメール等)。そうすると、被告らは、ATOUNからの依頼と指示に基づいて電子基板設計データ1を作成したものと認め 計5したものであることが認められる(令和2年2月12日午前11時41分15秒付けメール等)。そうすると、被告らは、ATOUNからの依頼と指示に基づいて電子基板設計データ1を作成したものと認められるから、電子基板設計データAに依拠して電子基板設計データ1を作成したものとは認められない。 10(ウ) よって、電子基板1は、電子基板Aと形態が実質的に同一であるとも、これに依拠して作成されたものであるとも認められない。 イ 電子基板B及び電子基板2について(ア) 原告は、下記の電子基板B及び電子基板2について、「F1」「FL1」の斜め配置、「CN1」「CN2」「C1」の配置、電子基板Bにお15ける「L2」と電子基板2における「L1」、電子基板Bにおける「U2」と電子基板2における「U1」の配置が一致していると主張する(電子基板B及び電子基板2におけるこれらの部品の位置は、下記の図44 のうち、電子基板Bについては緑枠部分の、電子基板2については黄色枠部分のとおり)。 しかし、電子基板B及び電子基板2の上辺をみると、電子基板Bでは、「CN3」「CN6」の二つのコネクタ端子が配置されているのに対し、電子基板2では、「CN3」「CN4」「CN5」の三つのコネクタ5端子が並べられており、一見して、その相違が明らかである。また、電子基板Bでは、右辺下側にコネクタ端子「CN5」が配置されているが、電子基板2では、これに対応する位置にmicroSDカード用のスロット「SLOT1」が配置されている(乙10)。その他、電子基板Bにおける「LED2」、電子基板2における「BZ1」のように、双方に10存在しない部品も複数存在している。(これらの相違点については、下記の図の紫枠部分のとおり)そうすると、電子基板Bと電子基板2 る「LED2」、電子基板2における「BZ1」のように、双方に10存在しない部品も複数存在している。(これらの相違点については、下記の図の紫枠部分のとおり)そうすると、電子基板Bと電子基板2の形態が実質的に同一であるとは認められない。 電子基板B電子基板2(イ) 原告は、電子基板B2と電子基板2の類似性についても主張するの15で検討する。原告は、「F1」の斜め配置、「FL1」「CN1」「CN45 2」の配置、電子基板B2の「U2」と電子基板2の「U1」、電子基板B2の「L2」と電子基板2の「L1」「C1」「Q1」の位置が一致していると指摘する(電子基板B2及び電子基板2におけるこれらの部品の位置は、下記の図のうち、電子基板B2については緑枠部分の、電子基板2については黄色枠部分のとおり)。 5しかし、原告が類似点と指摘する「CN1」「CN2」は、電子基板B2では基板の短辺側に並列に配置されているのに対し、電子基板2では、長辺側に配置されている。また、電子基板Bにおける特徴的な配置であると主張していた「FL1」の斜め配置は、電子基板B2では斜め配置になっていない一方で、電子基板2では斜め配置になっている。こ10のように、原告が主張する類似点は、それ自体、認められない。 また、電子基板B及び電子基板2の上辺について判示したものと同様に、電子基板B2と電子基板2の上辺のコネクタの個数が異なっており、一見して、その相違が明らかであるし、電子基板B2では、左辺に他の部品と比べて比較的大きな部品が二つ配置(その一つはICチッ15プ。乙10)されているが、電子基板2ではそれがない。 よって、電子基板B2と電子基板2の形態が実質的に同一であるとは認められない。(本頁以下余白)46 電 一つはICチッ15プ。乙10)されているが、電子基板2ではそれがない。 よって、電子基板B2と電子基板2の形態が実質的に同一であるとは認められない。(本頁以下余白)46 電子基板B2電子基板2(ウ) また、被告個人は、令和元年11月末日頃以降、引継ぎ等のために呼び出されたとき以外、原告に出社しないようになっていたところ(原告代表者、被告本人)、証拠(乙3)及び別紙7「メール一覧表」によれば、電子基板設計データBが作成されたのは、被告個人が原告に出社しないようになった後のことであるから、被告らが、同設計データに依5拠して電子基板設計データ2を作成したものとは認められない。 (エ) 原告は、電子基板設計データB2に依拠したとも主張しているので検討する。証拠(甲18)によれば、電子基板設計データBが電子基板設計データB2を編集して作成されたものであることが認められる。しかし、上記の上辺部分におけるコネクタの追加は、被告個人が、ATO10UNからの要望に対応する際、リップルノイズが大きくなりすぎるため、「C6」に並列して追加したものであるし(別紙7「メール一覧表」の令和2年1月29日午後2時7分39秒付けメール)、ICチップの削除は、ATOUNからの依頼事項であったものと認められる(乙10)。そうすると、被告らは、ATOUNからの依頼と指示に基づい1547 て電子基板設計データ2を作成したものと認められるから、電子基板設計データB又はB2に依拠して電子基板設計データ2を作成したものとは認められない。 (オ) よって、電子基板2は、電子基板B又はB2と形態が実質的に同一であるとも、これらに依拠して作成されたものであるとも認められな5い。 ウ 以上の次第であり、形態模倣を理由とする原告の (オ) よって、電子基板2は、電子基板B又はB2と形態が実質的に同一であるとも、これらに依拠して作成されたものであるとも認められな5い。 ウ 以上の次第であり、形態模倣を理由とする原告の主張は、いずれも採用できない。 3 争点4(取締役としての競業避止義務違反について)(1) 争点4-1(被告個人がいつ原告の取締役を辞任したか)について10ア 掲記の証拠並びに原告代表者、被告本人及び証人 d によれば、以下の事実が認められ、これに反する証拠は採用できない。 (ア) 被告個人は、令和元年11月15日、原告代表者に対し、一身上の都合により、令和2年3月31日をもって原告の取締役を辞任したいこと、出社は同年1月31日までとすることを記載した辞任届を提出した15(甲13)。この辞任届は、被告個人が自ら作成し、署名捺印したものであった。 (イ) 被告個人は、原告の役員報酬制度上、令和2年3月31日までは出社の有無にかかわらず役員報酬の支払を受けられるものと考えていたが、原告代表者から、特に業務に従事しない以上、役員報酬を支払うこ20とはできないと告げられた。そこで、被告個人及び原告代表者は、被告個人が出社するのは令和元年11月末日頃までとした上で、同年12月は、引継ぎ等のために必要があれば出社することし、役員報酬についても、同月分までとすることとした。 (ウ) 応用電機株式会社は、令和元年12月4日、原告に対し、エージン25グ基板の設計変更を依頼したが、原告は、担当者であった被告個人が退48 職したため依頼を受けられないと回答した。 (エ) 被告個人は、令和2年2月5日、原告の臨時株主総会に株主として出席した。同株主総会では、被告個人が同年3月31日付けで原告の取締役を辞任すること、役員報酬の支払 を受けられないと回答した。 (エ) 被告個人は、令和2年2月5日、原告の臨時株主総会に株主として出席した。同株主総会では、被告個人が同年3月31日付けで原告の取締役を辞任すること、役員報酬の支払は令和元年12月31日までとすること等が株主全員の賛成を以て承認され、その議事録には、原告代表5者及び被告個人が捺印した(甲22)。 (オ) 原告代表者は、令和2年1月7日、被告個人に対し、別紙8「誓約書」に署名押印することを求めたが、同人は、これを拒否した(甲39)。 (カ) 原告は、被告個人に対し、令和元年12月末日分までの役員報酬を10支払った(乙5の1・2、23)。 (キ) 原告が発行した、被告個人の令和元年度の源泉徴収票には、同人が令和元年12月31日に退職したと記載されていた(乙23)。 イ 上記認定事実によると、被告個人は、自らの意思で令和2年3月31日に原告の取締役を辞任し、同年1月31日までは出社することとしていた15が、同年3月分までの役員報酬の支払を受けられなくなるや、令和元年11月末日頃までの出社とし、以後、原告の業務には従事していなかったこと、このような状況も踏まえ、令和2年2月5日の原告の臨時株主総会において、被告個人も株主としての議決権を行使し、賛成票を投じた上で、同人が同年3月31日付けで原告の取締役を辞任し、役員報酬の支払は、20令和元年12月31日までとすることが承認されたことが認められる。 そうすると、被告個人は、会社法所定の手続を履践した上で、原告の取締役を令和2年3月31日に辞任することを承諾したものというべきであり、同日まで、原告の取締役としての義務を負うものと認められる。 ウ 被告個人は、役員報酬の支払期間等を指摘して、同人が、実質的には令25和元年12月31日で原告の を承諾したものというべきであり、同日まで、原告の取締役としての義務を負うものと認められる。 ウ 被告個人は、役員報酬の支払期間等を指摘して、同人が、実質的には令25和元年12月31日で原告の取締役を辞任していたと主張する。しかし、49 役員報酬の支払期間と辞任時期の齟齬は、上記株主総会決議によって承認されたものである。また、原告は、対外的には被告個人が、令和元年12月31日には原告を退職していたものとして取り扱っていたことが認められるが、現実に被告個人が原告の業務に従事しなくなる以上やむを得ないところであり、そのことを以て、被告個人が原告の取締役を辞任した時期5が左右されるものではない。 エ 以上のとおり、被告個人は、令和2年3月31日に原告の取締役を辞任したものと認められるので、同日まで、原告の取締役としての競業避止義務を負っていたものである。そして、被告個人が、原告の取締役を辞任する前に、原告の株主総会の決議によることなく被告会社を設立し、同社に10おいて原告と競業関係に立つ電子応用製品の開発等の事業を行ったことは、原告の取締役としての競業避止義務に違反したものと認められる。 そして、被告会社が設立日から令和2年3月31日までの間にATOUNと取引を行ったことは被告らも争っていないが、全証拠によっても同期間に新生工業との間で取引を行った事実は認められない。 15(2) 争点4-2(原告が競業避止義務違反を主張することが権利濫用に当たるか)について被告らは、原告が、被告個人が原告の取締役を辞任した日が令和2年3月31日であることを前提として競業避止義務違反を主張することは、手続上の便宜にすぎなかった措置を奇貨とするものであり、権利の濫用に当たると20主張する。 しかし、上記(1)のとおり、被告個 月31日であることを前提として競業避止義務違反を主張することは、手続上の便宜にすぎなかった措置を奇貨とするものであり、権利の濫用に当たると20主張する。 しかし、上記(1)のとおり、被告個人が原告の取締役を辞任する日を令和2年3月31日とする一方で、役員報酬については令和元年12月31日までのものとすることとなったのは、被告個人も参加した原告の臨時株主総会の決議によるものであるから、被告個人は、形式的にも実質的にも令和2年253月31日まで原告の取締役であったものであり、被告個人の主張は前提を50 欠き、その他、原告が、被告個人が原告の取締役を辞任した日が令和2年3月31日であることを前提として競業避止義務違反を主張することが権利の濫用に当たると認めるに足りない。 よって、被告らの主張は採用できない。 (3) 争点4-3(被告会社の共同不法行為の成否)について5上記(1)のとおり、被告個人が原告の取締役として競業避止義務を負っていたにもかかわらず、原告の株主総会の決議によることなく被告会社を設立し、原告と競業関係に立つ電子応用製品の開発等の事業を行ったことは、法令に違反し、取締役としての義務違反の責任を負うべきところ、被告個人は被告会社の代表者であることから、被告会社についても、被告個人と認識を10共通にし、被告個人の行為に客観的に関連共同していたものとして、被告個人の同義務違反について、共同不法行為が成立するものと認められる(なお、原告は、会社法350条に基づく責任の主張はしていない。)。 よって、被告会社は、被告個人が原告に対し負担すべき取締役としての義務違反に基づく損害賠償債務について、連帯して、これを負担するものと認15められる。 4 争点5(被告個人による原告の業務妨害及び信用毀損行為に 、被告個人が原告に対し負担すべき取締役としての義務違反に基づく損害賠償債務について、連帯して、これを負担するものと認15められる。 4 争点5(被告個人による原告の業務妨害及び信用毀損行為について)(1) 争点5-1(被告個人が、令和元年11月下旬頃、原告が管理するデータサーバーから「部品リスト作成ツールソフト」を削除したか)について原告は、被告個人が、被告会社の代表取締役として、同社のために、令和20元年11月下旬頃、原告が管理するデータサーバーから、被告個人が原告の業務用に作成した「部品リスト作成ツールソフト」を不正に削除し、このために原告に生じた損害について会社法429条に基づく損害賠償債務を負うと主張する(前記第2の2(6)イ)。しかし、被告会社が設立されたのは、同年12月24日であり、原告が指摘する時期に被告会社の取締役としての責25任を負うというのは前提を欠く。この点は措くとしても、「部品リスト作成51 ツールソフト」は、原告のNASサーバーに保存されていたところ(原告代表者、被告本人)、前記2(2)のとおり、原告のNASサーバーは、原告の従業員であれば誰でもアクセス可能なものであったから、被告個人でなければ、削除できなかったとは認められない。また、原告の主張を裏付けるものは、原告が自ら作成した調査資料(甲2の1、10)しかないことも踏まえ5ると、原告の主張を認めるに足りる証拠はないものといわざるを得ない。 よって、原告の主張は採用できない。 (2) 争点5-2(被告個人が、令和元年11月29日頃、原告に無断で、原告の複数顧客のデータを変更したか)について原告は、被告個人が、令和元年11月29日頃、原告に無断で、原告の複10数顧客のデータを変更したと主張する。しかし、上記(1)同様、被 告に無断で、原告の複数顧客のデータを変更したか)について原告は、被告個人が、令和元年11月29日頃、原告に無断で、原告の複10数顧客のデータを変更したと主張する。しかし、上記(1)同様、被告会社が設立される前の行為であるし、また、原告の主張を裏付けるに足りる証拠はなく、被告個人でなければそのような変更をすることができないものとも認められない。 原告は、被告個人がデータを変更したことを示すものとして、原告のNA15Sサーバー上に保存された、被告個人が担当していた案件に関するデータのうち、令和元年11月29日午後8時頃のタイムスタンプが付されたファイルを開くことができなくなっていることを調査した報告書(甲34の1及び2)を提出する。しかし、被告個人が、同時刻頃、原告のNASサーバーにアクセスしたと認めるに足りる証拠はない。むしろ、被告個人は、開くこと20ができなくなったデータを含む複数のデータを、原告代表者からの依頼に応じる形で原告に送付し、これによって、一部のデータは復旧できているのであるから、原告の業務を妨害するためにデータを変更したとは考え難い。 よって、原告の主張は採用できない。 (3) 争点5-3(Lが、令和3年5月頃、原告の取引先企業であるスタング25ビートルに対し、原告が被告会社の営業行為を違法不当な方法で妨害してい52 るとの虚偽の事実を告知したか)について原告は、令和3年5月頃、Lが、Mに対し、「第一電機より実装依頼を断られた。アルテアはあすかのリピート案件が増えて事業活況をねたんで、妨害のため、外注先への圧力をかけている。」旨発言したと主張する。このうち、「ねたんで」「妨害のため」といった発言をしたと認めるに足りる証拠は5ない。 一方、被告個人が、第一電機のNから原告が指摘する問 、外注先への圧力をかけている。」旨発言したと主張する。このうち、「ねたんで」「妨害のため」といった発言をしたと認めるに足りる証拠は5ない。 一方、被告個人が、第一電機のNから原告が指摘する問題を解決してから仕事を持ってきてほしい旨告げられたこと、そのことを聞いたLが、Mとの間で第一電機のことが話題となった際、同Nの発言をMに伝えたことには争いがない。そうすると、Lは、単に、被告個人に対するNの発言内容をその10ままMに伝えたに過ぎず、当該発言内容の存在自体は真実であるから、虚偽事実の告知には該当しない。 この点、原告は、Nに対し、証拠収集の観点から、被告会社からの依頼をそのまま受注して欲しいと告げており、被告会社から受注しないよう述べていない、LがNの発言を軽信したことが虚偽事実の告知に該当すると主張す15る。しかし、上記のとおり、Nの発言それ自体は真実であるし、伝聞供述について原供述者の発言内容を個々に確認すべき義務があるとはいえない。 よって、原告の主張は採用できない。 (4) 争点5-4(被告会社の共同不法行為の成否)について上記(1)ないし(3)のとおり、被告個人の違法行為は認められないから、被20告会社の共同不法行為の成立も認められない。 5 争点6(被告個人が本件物品を窃取したか)について(1) 本件パソコンについて原告は、被告個人が、令和元年11月23日から同年12月22日頃までの間に、当時の原告事務所に侵入し、本件パソコンを窃取し、代わりに、残25置パソコンを設置したと主張する。しかし、前記前提事実及び証拠(甲453 0)によれば、残置パソコンは、Tが購入し、原告代表者に譲渡したものであると認められ、これに沿う証人Tの供述も、その当時、Tが保有していたパソコンのスペック等に基づ 提事実及び証拠(甲453 0)によれば、残置パソコンは、Tが購入し、原告代表者に譲渡したものであると認められ、これに沿う証人Tの供述も、その当時、Tが保有していたパソコンのスペック等に基づく具体的なものであり、特段、信用性を否定すべき事情も見当たらない。 この点、原告は、残置パソコンのユーザー名、保存されていたファイルの5内容、被告個人アカウントの登録状況及び被告個人が保有していたデータ等に鑑みれば、被告個人が窃取したことは明らかであると主張する。しかし、ユーザー名やファイルの内容のみでは被告個人が使用していたパソコンであるとは認められない。また、被告個人が保有していたデータに関する主張は、同人が原告の電子基板設計データを不正に取得したことを前提とするも10のであるが、前記2(2)のとおり、被告個人は、原告に在籍していたときから、日常的に業務のためにデータを私物パソコンで取り扱っていたものと認められるのであるから、前提を欠く。 よって、原告の主張は採用できない。 (2) その余の物品について15被告個人は、原告に対し、取締役を辞任し、以後、出社しない旨を告げた後の日である令和元年11月25日、本件還付品を原告の計算で購入し、これを被告個人宅に持ち帰った(被告本人)。被告個人は、自己研鑽用に購入したものであり、原告の他の従業員が特に使用しないものであるから、持って帰っても問題がないと考えた旨述べるが、そうであるならば原告に出社し20なくなることがほぼ確実であったときに、本件還付品を原告の計算で購入すること自体不適切であるといわざるを得ず、その上、これを自己研鑽目的で持ち出したことは、不法行為に該当する。 一方、原告は、被告個人が、本件還付品以外の本件物品を窃取したと主張する。しかし、これらの物品の存在を 切であるといわざるを得ず、その上、これを自己研鑽目的で持ち出したことは、不法行為に該当する。 一方、原告は、被告個人が、本件還付品以外の本件物品を窃取したと主張する。しかし、これらの物品の存在を示す証拠はなく、原告の主張は採用で25きない。 54 この点、原告は、警察の捜査が遅れたことから、偶然発見ができなかった、本件還付品が存していたことやこれらの物品がなくなった時期と被告個人が競業行為に及んだ時期が一致する等とも主張するが、被告個人による窃取行為を具体的に推認させるような事情とはいえない。 よって、原告の主張は採用できない。 56 争点7(被告個人が、原告に対し、本件ソフトを不正に使用させないようにすべき取締役としての監視義務を怠ったか)について(1) 前記前提事実に加え、証拠(原告代表者、被告本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ、これに反する証拠は採用できない。 ア 原告代表者が、原告を設立した頃、被告個人は、本件ソフトを用いる必10要がある案件を受注してきた。 イ 被告個人は、本件ソフトの不正コピー品を入手し、これを原告の業務のために用いるパソコンにインストールした。原告代表者は、本件ソフトが不正にインストールされたものであることを認識していたが、当時、原告は正規にライセンスを購入するための費用を工面することができなかった15ことから、これを容認した。 ウ イの後も、原告社内における本件ソフトの不正インストールは続いており、その利用状況は、少なくとも別紙5「不正インストール概要表」記載のとおりであった。 エ 原告では、複数の者がCAD設計を行うことがあり、Captureを同時に20起動させることもあった。また、設計する回路の挙動を確認するために、PSpiceを使用してシミ のとおりであった。 エ 原告では、複数の者がCAD設計を行うことがあり、Captureを同時に20起動させることもあった。また、設計する回路の挙動を確認するために、PSpiceを使用してシミュレーションを行うこともあった。なお、原告では、プリント基板の設計を行うことはなかったことからAllegroは特に必要なかった。 (2) 以上の認定事実によれば、被告個人は、原告の取締役として、原告の法25令順守体制について監視監督すべき善管注意義務があったにもかかわらず、55 自らも原告代表者とともに本件ソフトの不正インストールを行い、その状態を是認し、放置していたことが認められる。そうすると、被告個人は、原告の取締役としての上記善管注意義務に違反したものというべきである。 この点、被告個人は、本件ソフトの不正インストールは原告代表者が主導したものであると主張し、代表権のない取締役にすぎない被告個人はその指5示に従わざるを得なかったと述べる。しかし、原告代表者と被告個人の間の違法行為への寄与分を検討するのであれば別段、代表取締役が違法行為を指示したからといって、取締役の監督義務が免除されるものではない。むしろ、取締役は、そのような場面でこそ、監督義務を尽くさなければならないのであるから、被告個人の主張は、採用できない。 10(3) 以上の次第であり、被告個人は、原告の取締役として、原告社内における違法行為である本件ソフトの不正インストールについて監督是正すべき善管注意義務を怠ったものである(ただし、同義務違反と相当因果関係のある損害が認められないことは後記7(4)のとおりである。)。 7 争点9(原告の損害)について15(1) 前記2及び4のとおり、争点1ないし3及び5についての原告の主張はいずれも採用できない 損害が認められないことは後記7(4)のとおりである。)。 7 争点9(原告の損害)について15(1) 前記2及び4のとおり、争点1ないし3及び5についての原告の主張はいずれも採用できないので、当該主張に係る行為によって原告に損害が生じたものとは認められない。 (2) 被告個人の取締役としての競業避止義務違反(争点4)による原告の損害について20ア 逸失利益について原告は、原告のATOUN及び新生工業との各取引における平成31年3月期と令和2年3月期の平均売上額を算出し、これと令和3年3月期における上記各取引における売上額との差額を年間売上減少額とした上、同額に基づき令和4年2月までの27か月分を算出した金額から経費率3250%とする経費分を控除した金額が、被告個人の競業行為による原告の逸56 失利益である旨主張する。しかし、上記算定方法による金額が取締役の競業避止義務違反による会社の損害であることが推定されるものではなく、上記売上減少額全額が被告個人の競業避止義務違反により生じたことを裏付ける証拠もない(令和2年3月期と平成31年3月期の売上額は2倍以上の差異があり、これだけで経常的な売上高を求めること相当でなく、経5費率についても、証拠上、販管費の内容が明らかではないこと等から、算定ができない。また、被告会社設立日から令和2年3月31日までの間に、被告会社と新生工業との取引は認められないにもかかわらず、新生工業との取引に係る原告の売上が減少している。)。 一方で、被告会社が設立日から令和2年3月31日までの間にATOU10Nと取引を行ったことは争いがなく、原告に何らかの損害は発生していると考えられる上、損害額に関する推定規定(会社法423条2項)が存在し、原告も同規定を前提とすると解される での間にATOU10Nと取引を行ったことは争いがなく、原告に何らかの損害は発生していると考えられる上、損害額に関する推定規定(会社法423条2項)が存在し、原告も同規定を前提とすると解される書類提出命令の申立てを行ったことも踏まえれば、同規定に沿って、当該取引により被告らが得た利益の額を算定し、その中で因果関係がない部分があるかどうかを検討して原告15の逸失利益を算出することが相当である(民訴法248条)。 そこで、上記の方法により、被告会社設立日から令和2年3月31日までの間に行われた被告会社とATOUNとの取引により被告らが得た利益を基礎として、原告の逸失利益を検討する。 (ア) 算定期間20前記3(1)のとおり、被告個人は、原告の取締役在任中に被告会社を設立し、被告会社とATOUNとの取引により原告と競業関係に立つ事業を行ったものであるが、令和2年3月31日に原告の取締役を辞任してからは、被告個人が法に抵触することなく、原告と競業関係に立つ事業を営むこと自体、これを制限すべき理由はない。また、前記2のとお25り、被告らが原告主張営業秘密を違法に利用したとか、原告電子基板の57 形態模倣を行ったものとは認められないから、結局、被告個人の競業避止義務違反によって原告に生じた逸失利益は、被告個人が原告の取締役に在任していたときから行っていた取引行為やこれに連続する取引によって生じたものに限られる。すなわち、被告会社設立日から令和2年3月31日までの間の被告会社とATOUNとの取引及びこれに連続する5取引から生じた利益の額を算定することとなる。 そして、被告個人が、令和元年12月から、原告の業務には従事しておらず、被告会社の設立準備を行っていたこと、別紙7「メール一覧表」のやり取りから認められる電子 生じた利益の額を算定することとなる。 そして、被告個人が、令和元年12月から、原告の業務には従事しておらず、被告会社の設立準備を行っていたこと、別紙7「メール一覧表」のやり取りから認められる電子基板の設計に要する期間等も踏まえると、被告個人の競業避止義務違反行為と相当因果関係が認められる利10益が発生した期間は、令和元年12月1日から、被告会社が設立されてから約6ヵ月、被告個人が原告の取締役を辞任してから約3ヵ月に相当する令和2年6月30日まで(以下「算定対象期間」という。)と認めるのが相当である。 原告は、令和4年2月までを算定期間とするべきであると主張する15が、被告会社が、令和2年2月12日頃に、別紙1「顧客・協力企業目録」に記載されていない島津理化からの依頼を受けていること、ATOUN及び新生工業が原告にも発注をしていること(別紙7「メール一覧表」参照)を踏まえると、原告が主張するような長期にわたり、逸失利益が生じたものとは認められない。 20(イ) 算定基礎証拠(乙5の1・2、26ないし31)によれば、上記(ア)で認定した算定対象期間に被告らが行った電子応用製品の設計、製造、販売に関連する取引は別紙9「被告ら仕訳一覧表」記載のとおりであると認められる(なお、証拠上、被告個人名義での取引は認められない。)。 25(ウ) 算定対象期間において被告らがATOUNから得た利益58 別紙9「被告ら仕訳一覧表」のとおり、算定対象期間における被告らのATOUNに対する売上は262万9110円であると認められる(なお、原告は証人Qの供述から、より多くの売上があったはずであると主張する。しかし、Qの供述自体、曖昧なものである上に、別紙7「メール一覧表」のQと被告個人のやり取りを踏まえても、被告らとA5 なお、原告は証人Qの供述から、より多くの売上があったはずであると主張する。しかし、Qの供述自体、曖昧なものである上に、別紙7「メール一覧表」のQと被告個人のやり取りを踏まえても、被告らとA5TOUNとの間で実務的な話し合いをしていたのはRであり、Qが正確に売上まで把握していたとは認め難い。また、他に原告の主張を裏付ける証拠はない。)。 一方、算定対象期間における費用を検討するに、経費には間接経費が含まれる上に、証拠からはATOUNへの売上に関係する費用を特定す10ることは困難であること、算定対象期間における売上の大部分をATOUNへの売上が占めることを踏まえると、算定対象期間の全売上高に対する、同額から全仕入高及び直接経費に該当する外注費並びに買掛金の決済に必要な支払手数料の合計額を控除した額の割合を利益率として採用することが相当であり、その値は、別紙9「被告ら仕訳一覧表」のと15おり、約61.08%であると認められる。 この点、被告らは、原告及び被告会社の業界では、経費率が70%を超える(利益率が30%を下回る)と主張する。確かに、被告会社の総勘定元帳(乙28)によれば、被告会社は、算定対象期間において、製造等で使用し得る消耗品等を購入していたことが認められる。しかし、20算定対象期間は、被告会社が設立された直後であり、初期費用として購入したものも混在しているものと認められる。その他、被告会社における経費率に関する具体的な主張立証はない。 そうすると、算定対象期間におけるATOUNへの売上高は262万9110円、利益率は約61.08%(小数第3位以下四捨五入)であ25ると認められるから、同期間において被告らがATOUNとの取引で得59 た利益は160万5977円(ATOUNへの売上高に、四捨五入前の 率は約61.08%(小数第3位以下四捨五入)であ25ると認められるから、同期間において被告らがATOUNとの取引で得59 た利益は160万5977円(ATOUNへの売上高に、四捨五入前の上記利益率を乗じた値について小数以下四捨五入)と認める。 (エ) 因果関係について被告らは、ATOUNが被告らに電子基板設計データの作成を依頼したのは、原告の製品に問題があったからであり、被告個人の競業避止義5務違反と原告の逸失利益には因果関係がないと主張する。 しかし、被告ら主張の事情があったとしても、被告個人が原告のために受注をしていれば、原告の売上に計上されていたものと認められるから、算定対象期間において被告らがATOUNから得た利益と被告個人の競業避止義務違反との相当因果関係を否定することはできない。被告10らの主張は採用できない。 (オ) 以上の次第であり、被告個人の競業避止義務違反行為によって原告に生じた損害は、160万5977円であると認められる。 イ 調査費用について原告は、被告個人による競業避止義務違反行為によって、調査費用の支15出を余儀なくされたと主張する。しかし、調査費用の内容(甲10)をみても、被告個人の競業避止義務違反に関する調査のために支出したと解されるものはない。 よって、調査費用は、被告個人の競業避止義務違反行為と因果関係が認められない。 20ウ 以上のとおり、原告に生じた、被告個人の競業避止義務違反による損害は、逸失利益160万5977円であり、同額の損害賠償請求を行うために必要かつ相当な弁護士費用は16万0598円であると認められるから、合計176万6575円であるとすることが相当である。 (3) 本件物品の窃取(争点6)による原告の損害について25ア 盗品自体の価 相当な弁護士費用は16万0598円であると認められるから、合計176万6575円であるとすることが相当である。 (3) 本件物品の窃取(争点6)による原告の損害について25ア 盗品自体の価格について60 前記5のとおり、被告個人が本件還付品以外の本件物品を窃取したものとは認められない。そして、本件還付品については、いずれも原告に還付されているから、その損害は回復しているものと認められる。 イ 調査費用について(ア) 前記5のとおり、被告個人による本件還付品の持出しは、原告に対5する不法行為に該当する。 また、被告個人は、別紙7「メール一覧表」記載のとおり、令和元年12月17日、原告代表者からの社内紛失物について心当たりがないかを問われるメールを受信しているところ、その際、本件還付品の存在を明らかにせず、結局、令和3年3月に、警察から捜索を受けて初めて被10害回復がなされている。 以上のような経緯を踏まえると、原告が、被告個人が持ち出した本件還付品の所在を明らかにし、被害回復に努めるために要した費用は、被告個人の不法行為によって発生したものと認められる。 (イ) 一方、原告は、調査費用として合計308万7434円を要したと15主張する。 しかし、調査費用には、部品リスト作成ソフトの再製作費用のように、本件還付品持ち出し以外の対応費用が含まれているし、警察に対する対応改善費用のように、被告個人とは直接関係なく発生した費用も含まれている。また、別紙4「被害品目録」の大部分は、被告個人が窃取20したものとは認められないし、中でも、原告の事業において最も重要な本件パソコンを含むパソコンについては、被告個人が窃取したものとは認められないところ、調査費用には、パソコンが窃取されたことによって発生する、デ 認められないし、中でも、原告の事業において最も重要な本件パソコンを含むパソコンについては、被告個人が窃取したものとは認められないところ、調査費用には、パソコンが窃取されたことによって発生する、データの復旧等に関するものも含まれている。これらの事情に加え、調査費用の単価の相当性や必要性が必ずしも明らかであると25はいえないことも踏まえると、被告個人が本件還付品を持ち出したこと61 によって原告に生じた被害対応(調査を含む。)に要した費用は4万5000円及び弁護士費用5000円(合計5万円)とすることが相当である。 ウ 以上のとおり、被告個人の本件還付品の持出しによる原告の損害は、調査費用4万5000円、弁護士費用5000円の合計5万円であると認め5られる。 (4) 本件ソフトに関する監視義務懈怠(争点7)による原告の損害についてア イノテックへの支払額について(ア) 前記6(1)のとおり、原告は、業務のために必要があるものとして、不正にインストールしたCapture 及びPSpice を使用していたことが認10められる。 イノテックへの支払額606万1000円(税込)は、原告が、Cadence社からイノテックを通じて過去の不正インストール期間に対応する正規ライセンス料相当額の損害賠償請求を受けたところ、交渉の結果、Captureを2ライセンス(1ライセンスあたり税込63万800015円)、OrCAD Capture(R) CIS optionを1ライセンス(1ライセンスあたり税込38万5000円)、PSpiceを2ライセンス(1ライセンスあたり税込220万円)発注(買い切り)することとして支払われたものである(前提事実(3))。 CaptureとPSpiceは、原告の業務のために必要なソフトであるし、 を2ライセンス(1ライセンスあたり税込220万円)発注(買い切り)することとして支払われたものである(前提事実(3))。 CaptureとPSpiceは、原告の業務のために必要なソフトであるし、金20額も正規のライセンス料と比較して不当に高額ともいえないから、これを支払うことは当然負担すべき費用を支払ったにすぎず、原告に生じた損害とは認められない。なお、原告は、Allegroも不正にインストールされたことを前提にイノテックとの間で交渉をしたことがうかがえるところ、最終的に原告が購入することを決定したソフトにはAllegroは含25まれていない(必要がないのに購入せざるを得なかったとして請求原因62 に掲げるソフトウェアにもAllegroは含まれていない。)。 (イ) そうすると、イノテックへの支払額について、被告個人の取締役としての監視義務違反(善管注意義務違反)と相当因果関係のある原告の損害とは認められない。 イ 調査費用について5原告は、被告個人が本件ソフトを不正にインストールしたことで調査費用が生じたと主張する。しかし、上記ア及び別紙5「不正インストール概要表」のとおり、原告代表者も被告個人と同様に取締役としての善管注意義務に違反していたものであるし、原告代表者は、被告個人が原告の取締役を辞任してからもなお違法状態を継続し、Captureを不正に使用してい10たのであるから、ソフト関係調査費用は、原告が負担すべき費用であるといえる。まして、その多くを占める原告代表者の人件費を被告個人に請求することは、信義則上も認められないものというべきである。 よって、調査費用に関する原告の主張は採用できない。 ウ 以上のとおり、本件ソフトの不正インストールに関する被告個人の取締15役としての監視義務違反に 則上も認められないものというべきである。 よって、調査費用に関する原告の主張は採用できない。 ウ 以上のとおり、本件ソフトの不正インストールに関する被告個人の取締15役としての監視義務違反による原告の損害は認められない。 (5) まとめ以上をまとめると、原告に生じた損害は、以下のとおりとなる。 ア 被告個人に対する請求大項目費目金額本件物品の窃取(争点6)関係盗品自体の価格0円調査費用4万5000円弁護士費用5000円合計5万0000円遅延損害金の起算日は、本件物品の窃取関係については、不法行為の後20の日である令和2年3月3日であると認められる。 63 イ 被告らに対する連帯請求大項目費目金額競業避止義務違反関係逸失利益160万5977円不正競争等調査費用0円弁護士費用16万0598円合計176万6575円被告個人の責任原因は、会社法423条1項、356条1項1号に基づくものであると認められるところ、この債務は、期限の定めがない債務であり、履行の請求を受けたときに遅滞に陥ると解することが相当である(最高裁平成24年(受)第1600号同26年1月30日第一小法廷判5決・集民246号69頁)。そして、被告個人が競業避止義務に違反したことを理由とする、被告らに対する損害賠償請求は、令和4年8月10日付けの原告の第2準備書面で追加されたものであり、同書面は、同月26日に被告らに送達されているから、同月27日に遅滞に陥ったものと認められる。また、被告会社は、被告個人の競業避止義務違反行為につき、被10告個人と連帯して、共同不法 のであり、同書面は、同月26日に被告らに送達されているから、同月27日に遅滞に陥ったものと認められる。また、被告会社は、被告個人の競業避止義務違反行為につき、被10告個人と連帯して、共同不法行為に基づく損害賠償責任を負うというべきである。 8 結論よって、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求は、被告個人に対し、民法709条に基づき5万円及びこれに対する令和2年3月3日か15ら支払済みまで旧民法所定の年5分の割合による遅延損害金、並びに、被告らに対し、連帯して(被告個人に対し会社法423条1項、被告会社に対し民法719条1項前段)176万6575円及びこれに対する令和4年8月27日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないから20棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法64条、61条を適用し64 て、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 5 裁判官 阿 波 野 右 起 10 裁判官 西 尾 太 一 15 裁判長裁判官武宮英子は、差支えのため、署名押印することができない。 20裁判官 阿 波 野 右 起 65 (別紙1)顧客・協力企業目録は添付を省略した。 66 (別紙2 阿 波 野 右 起 65 (別紙1)顧客・協力企業目録は添付を省略した。 66 (別紙2)電子基板画像目録1 電子基板画像A 67 2 電子基板画像B 68 3 電子基板画像1 69 4 電子基板画像2 上記の図は、同一の基板の画像が縦方向に2枚並べられたものである。 以上70 (別紙3)電子基板画像B2 以上
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