令和6(行ケ)1 選挙無効請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年2月12日 札幌高等裁判所 棄却
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判決文本文20,956 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 令和6年10月27日に行われた衆議院(小選挙区選出)議員選挙の北海道第1区ないし第12区における選挙をいずれも無効とする。 第2 事案の概要 1 本件は、令和6年10月27日施行の衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」という。)について、北海道第1区ないし同第12区の選挙人である原告らが、衆議 院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」という。)の選挙区割りに関する公職選挙法の規定は憲法に違反するなどして無効であるから、これに基づき行われた本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であるなどと主張して提起した選挙無効訴訟である。 2 前提事実(争いのない事実、公知の事実又は証拠及び弁論の全趣旨により容易 に認定できる事実)⑴ 当事者等ア原告らは、いずれも、別紙当事者目録記載【添付省略】のとおり、北海道第1区ないし同第12区の選挙人である。 イ被告は、北海道第1区ないし同第12区の本件選挙に関する事務を管理す る選挙管理委員会である。 ⑵ 公職選挙法は、衆議院議員の選挙制度につき、小選挙区比例代表並立制を採用している。 本件選挙施行当時、衆議院議員の定数は465人であり、そのうち289人が小選挙区選出議員、176人が比例代表選出議員である(公職選挙法4条1 項)。小選挙区選挙については、全国に289の選挙区を設け、各選挙区におい て1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項、別表第1。以下、後記の改正の前後を通じてこれらの規定を併せて「区割規定」という。)、比例代表選出議員の選挙については、全国に11の選挙区 て1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項、別表第1。以下、後記の改正の前後を通じてこれらの規定を併せて「区割規定」という。)、比例代表選出議員の選挙については、全国に11の選挙区を設け、各選挙区において所定数の議員を選出するものとされている(同法13条2項、別表第2)。衆議院議員の選挙について、投票は、小選挙区選出議員及び比例代表選出議員ごとに 1人1票とされている(同法36条ただし書)。 ⑶ 衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下、後記の改正の前後を通じて「区画審設置法」という。)は、内閣府に衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」という。)を置き、区画審は、衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し、調査審議し、必要があると認めるときは、その改定案(以下、単に「改 定案」という。)を作成して内閣総理大臣に勧告するものと定めている(同法1条、2条)。 改定案の作成の基準(以下、後記の各改正の前後を通じて「区割基準」という。)について、平成24年法律第95号(以下「平成24年改正法」という。)による改正前の区画審設置法(以下「旧区画審設置法」という。)3条は、① 1項において、改定案の作成は、各選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口(同条においては、官報で公示された最近の国勢調査又はこれに準ずる全国的な人口調査の結果による人口をいう。)のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならない ものと定めるとともに、②2項において、改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県にあらかじめ1を配当することとし(以下、このことを「1人別枠方式」と ばならない ものと定めるとともに、②2項において、改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県にあらかじめ1を配当することとし(以下、このことを「1人別枠方式」という。)、この1に、小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とすると定めていた(以下、この区割基準を「旧 区割基準」といい、この規定を「旧区割基準規定」という。)。 ⑷ 平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成21年選挙」という。)の小選挙区選挙は、平成24年改正法による改正前の区割規定(以下「旧区割規定」という。)の定める選挙区割りの下で施行されたものであり、選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.304(以下、較差に関する数値は、全て概数である。)であり、選挙人数が最も少ない選挙区 と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は45選挙区であった。 平成21年選挙につき、最高裁平成22年(行ツ)第207号同23年3月23日大法廷判決・民集65巻2号755頁(以下「平成23年大法廷判決」という。)は、改定案の作成は選挙区間の人口の最大較差が2倍未満になるように区割りをすることを基本とすべきものとする旧区画審設置法3条1項の 定めは、投票価値の平等の要請に配慮した合理的な基準を定めたものであると評価する一方、平成21年選挙時において、選挙区間の投票価値の較差が拡大していたのは、各都道府県にあらかじめ1の選挙区数を割り当てる同条2項の1人別枠方式がその主要な要因となっていたことが明らかであり、かつ、人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1 人別枠方式は既に立法時の合理性が失われてい 2項の1人別枠方式がその主要な要因となっていたことが明らかであり、かつ、人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1 人別枠方式は既に立法時の合理性が失われていたものというべきであるから、旧区割基準のうち1人別枠方式に係る部分及び同基準に従って改定された旧区割規定の定める選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていた旨判示した。そして、同判決は、これらの状態につき憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割基準規定及 び旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に、できるだけ速やかに旧区割基準中の1人別枠方式を廃止し、旧区画審設置法3条1項の趣旨に沿って旧区割規定を改正するなど、投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要がある旨判示した。 ⑸ 平成23年大法廷判決を受けて、平成24年11月16日、旧区画審設置法 3条2項の削除及びいわゆる0増5減の措置(各都道府県の選挙区数を増やすことなく議員1人当たりの人口の少ない5県の各選挙区数をそれぞれ1減ずる措置をいう。以下同じ。)を内容とする平成24年改正法が成立した。この改正により、旧区画審設置法3条1項が平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条となり、同条の内容のみが区割基準となった。 平成24年改正法の成立と同日に衆議院が解散され、これにより平成24年12月16日に施行された衆議院議員総選挙(以下「平成24年選挙」という。)は、平成21年選挙と同様に旧区割規定の定める選挙区割りの下で施行された。 平成24年選挙につき、最高裁平成25年(行ツ)第209号、第 れた衆議院議員総選挙(以下「平成24年選挙」という。)は、平成21年選挙と同様に旧区割規定の定める選挙区割りの下で施行された。 平成24年選挙につき、最高裁平成25年(行ツ)第209号、第210号、第211号同年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁(以下「平 成25年大法廷判決」という。)は、平成24年選挙時において旧区割規定の定める選挙区割りは平成21年選挙時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものではあるが、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、国会においては今後も平 成24年改正法による改正後の区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要がある旨判示した。 ⑹ 平成24年改正法の成立後、同法の附則に基づく区画審の勧告を受けて、平成25年6月24日、各都道府県の選挙区数の0増5減の措置を前提に、選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように17都県の42選挙区において区 割りを改めることを内容とする平成25年法律第68号(以下「平成25年改正法」という。)が成立した。 その結果、平成22年に行われた国勢調査の結果によれば選挙区間の人口の最大較差は1対1.998となるものとされたが、平成26年12月14日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成26年選挙」という。)当日においては、 選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.129であり、選挙人数が最も少な い選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は13選挙区であった。 平成26年選挙につき、最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判 であり、選挙人数が最も少な い選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は13選挙区であった。 平成26年選挙につき、最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁(以下「平成27年大法廷判決」という。)は、上記0増5減の措置における定数削減の対象とされた県以外の都道府県について旧区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておら ず、上記のような投票価値の較差が生じた主な要因は、いまだ多くの都道府県において1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項が削除された後の区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されていることにあり、このような投票価値の較差が生じたことは、全体として平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整 備が実現されていたとはいえないことの表れというべきであるとして、平成25年改正法による改正後の平成24年改正法により改定された選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ない旨判示した。そして、同判決は、同条の趣旨に沿った選挙制度の整備については、漸次的な見直しを重ねることによってこれを実現していくことも国会 の裁量に係る現実的な選択として許容されていると解されるとし、上記の選挙区割りの改定後も国会において引き続き選挙制度の見直しが行われていること等を併せ考慮すると、平成23年大法廷判決の言渡しから平成26年選挙までの国会における是正の実現に向けた取組は、立法裁量権の行使として相当なものでなかったということはできず、憲法上要求される合理的期間内における 是正がされなかったとはいえない旨判示した。 ⑺ 平成25年改正法の成立の前後を通じて、国会にお の行使として相当なものでなかったということはできず、憲法上要求される合理的期間内における 是正がされなかったとはいえない旨判示した。 ⑺ 平成25年改正法の成立の前後を通じて、国会においては、今後の人口異動によっても憲法の投票価値の平等の要求に反する状態とならないようにするための制度の見直しについて検討が続けられ、平成26年6月19日の衆議院議院運営委員会における議決により、衆議院選挙制度に関する調査、検討等を 行うため、衆議院に有識者により構成される議長の諮問機関として衆議院選挙 制度に関する調査会(以下「選挙制度調査会」という。)が設置された。 選挙制度調査会は、平成26年9月以降、定期的な会合を開催し、衆議院議員の選挙制度の在り方、議員定数の削減、投票価値の較差の是正等の問題について、各政党からの意見聴取を含めた調査、検討を行い、平成28年1月14日、衆議院議長に対し、衆議院選挙制度に関する調査会答申を提出した。 上記答申は、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数につき4削減して176人)とする案が考えられるとした上で、投票価値の較差の是正については、小選挙区選挙における各都道府県への議席配分方式について満たすべき条件として、比例性のある配分方式に基づいて配分すること、選挙区間の投票価 値の較差を小さくするために各都道府県間の投票価値の較差をできるだけ小さくすること、各都道府県の配分議席の増減変動が小さいこと、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であることとした上で、これらの条件に照らして検討した結果として、各都道府県への議席配分につき、各都道府県の人口を一定の数値で除し、それぞれの商の整数に小数 程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であることとした上で、これらの条件に照らして検討した結果として、各都道府県への議席配分につき、各都道府県の人口を一定の数値で除し、それぞれの商の整数に小数点以下を切り上げて得られ た数の合計数が小選挙区選挙の定数と一致するようにする方式(いわゆるアダムズ方式。以下「アダムズ方式」という。)により行うものとした。そして、各都道府県への議席配分の見直しは、制度の安定性を勘案し、統計法5条2項本文の規定により10年ごとに行われる国勢調査(以下「大規模国勢調査」という。)の結果による人口に基づき行うものとし、同項ただし書の規定により 上記の国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる各選挙区の国勢調査(以下「簡易国勢調査」という。)の結果、選挙区間の人口の較差が2倍以上の選挙区が生じたときは、各都道府県への議席配分の変更は行わず、区画審において上記の較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うものとした。 ⑻ 前記⑺の選挙制度調査会の答申を受けて、平成28年5月20日、衆議院議 員の定数を475人から10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数につき4削減して176人)とするとともに、各都道府県への定数配分の方式としてアダムズ方式を採用すること等を内容とする平成28年法律第49号(以下「平成28年改正法」という。)が成立した。 平成28年改正法による改正後の区画審設置法(以下「新区画審設置法」という。)3条は、区割基準について、①1項において、改定案の作成は、各選挙区の人口(最近の国勢調査の結果による日本国民の人口をいう。)の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないも う。)3条は、区割基準について、①1項において、改定案の作成は、各選挙区の人口(最近の国勢調査の結果による日本国民の人口をいう。)の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることとし、行政区画、地勢、交通等の事情を 総合的に考慮して合理的に行わなければならないものと定めるとともに、②2項において、各都道府県の区域内の選挙区の数は、アダムズ方式により決める旨を定め、③3項において、同法4条2項の規定による勧告に係る改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の衆議院小選挙区選出議員の選挙区の数は変更しないものとすると定めている(以下、この区割基準を「本件区割基準」 という。)。 そして、新区画審設置法4条は、①1項において、アダムズ方式による都道府県別定数配分を含む選挙区の改定に関する区画審の勧告は、平成32年(令和2年)以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものとし、②2項において、区画審は、 各選挙区の上記の大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる簡易国勢調査の結果による各選挙区の日本国民の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上となったときは、当該国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に、選挙区の改定に関する勧告を行うものと定めている(以下、本件区割基準を含む上記各規 定による選挙区の改定の仕組みを「本件区割制度」という。)。 他方、平成28年改正法は、アダムズ方式による各都道府県の選挙区数の変更が行われるまでの投票価値の較差是正のための措置として、附則により、小選挙区選出議員の定数を6削減 いう。)。 他方、平成28年改正法は、アダムズ方式による各都道府県の選挙区数の変更が行われるまでの投票価値の較差是正のための措置として、附則により、小選挙区選出議員の定数を6削減することを前提として、区画審において平成27年に行われた簡易国勢調査(以下「平成27年国勢調査」という。)の結果に基づく選挙区割りの改定案の作成及び勧告を行うこととした。そして、同改 定案の作成に当たっては、各都道府県の選挙区数につき、定数の削減による影響を受ける都道府県を極力減らすことによって選挙制度の安定性を確保する観点から、いわゆる0増6減の措置(平成27年国勢調査の結果に基づき、アダムズ方式により得られる選挙区数が改正前の選挙区数より少ない都道府県のうち、当該都道府県の人口を同方式により得られる選挙区数で除して得た数 が少ない順から6都道府県の選挙区数を各1減じ、それ以外の都道府県は改正前の選挙区数を維持する措置)を講ずることとした。また、選挙区割りにつき、平成27年国勢調査の結果による選挙区間の人口の較差が2倍未満となるようにし、かつ、次回の大規模国勢調査が実施される平成32年(令和2年)の見込人口に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満であることを基本とする とともに、各選挙区の平成27年国勢調査の結果による人口及び平成32年(令和2年)の見込人口の均衡を図り、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこととした。 平成28年改正法の成立後、区画審による審議が行われ、平成29年4月19日、区画審は、内閣総理大臣に対し、上記のとおり各都道府県の選挙区数の 0増6減の措置を採ることを前提に、19都道府県の97選挙区において区割りを改めることを内容とする改定案の勧告を行った。同勧告は、平成2 内閣総理大臣に対し、上記のとおり各都道府県の選挙区数の 0増6減の措置を採ることを前提に、19都道府県の97選挙区において区割りを改めることを内容とする改定案の勧告を行った。同勧告は、平成27年国勢調査の結果による選挙区間の人口の最大較差を1.956(=神奈川県第16区/鳥取県第2区)とし、平成32年の見込人口に基づく選挙区間の人口の最大較差が1.999(=東京都第22区/鳥取県第1区)となるようにした ものであった(乙16の1・2)。同勧告を受けて、平成29年6月9日、平 成29年法律第58号(以下「平成29年改正法」という。)が成立し、同法による改正後の平成28年改正法によって、上記改定案に従って区割規定が改正された(以下、上記改正後(令和4年法律第89号による改正前)の区割規定を「平成29年区割規定」といい、平成29年区割規定に基づく上記改定後の選挙区割りを「平成29年選挙区割り」という。)。 ⑼ 平成29年9月28日に衆議院が解散され、同年10月22日、平成29年選挙区割りの下において衆議院議員総選挙が施行された(以下「平成29年選挙」という。)。平成29年選挙区割りの下において、平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(東京都第13区)との間で1対1.979であり、 選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなかった。他方、選挙区を定めるに際して市区町村の区域を複数の選挙区に分割することによって生じる分割市区ないし分割市区町は、平成8年当時は29選挙区15市区、平成14年当時は32選挙区16市区であったが、平成25年改正当時は116選挙区88市区町となり、平成29年改正当時は1 生じる分割市区ないし分割市区町は、平成8年当時は29選挙区15市区、平成14年当時は32選挙区16市区であったが、平成25年改正当時は116選挙区88市区町となり、平成29年改正当時は1 38選挙区105市区町にまで増加した(乙20の6)。 最高裁平成30年(行ツ)第153号同年12月19日大法廷判決・民集72巻6号1240頁(以下「平成30年大法廷判決」という。)は、平成29年選挙当時の平成29年選挙区割りについて、各都道府県への定数配分を人口に比例した方式の一つであるアダムズ方式により行うことによって選挙区間 の投票価値の較差を相当程度縮小させその状態が安定的に持続するよう立法措置を講じた上で、同方式による定数配分がされるまでの較差是正の措置として0増6減の措置や選挙区割りの改定を行うことにより、選挙区間の選挙人数等の最大較差を縮小させたものであり、投票価値の平等を確保するという要請に応えつつ、選挙制度の安定性を確保する観点から漸進的な是正を図ったもの と評価することができるとした。そして、平成30年大法廷判決は、平成29 年改正法までの立法措置の内容やその結果縮小した較差の状況を考慮すると、平成29年選挙において、1人別枠方式を含む旧区割基準に基づいて配分された定数に変更がなくこれとアダムズ方式により各都道府県の定数配分をした場合に配分されることとなる定数を異にする都道府県が存在していることをもって平成29年選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反するという ことはできず、平成29年選挙当時には新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができるから、平成28年改正法及び平成29年改正法による選挙区割りの改定等は、国会の裁量権の行使として合理性を有するとい 区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができるから、平成28年改正法及び平成29年改正法による選挙区割りの改定等は、国会の裁量権の行使として合理性を有するというべきであり、平成27年大法廷判決が平成26年選挙当時の選挙区割りについて判示した憲法の投票価値の平等の要求に反する 状態は、平成29年改正法による改正後の平成28年改正法によって解消されたものと評価することができるとし、平成29年選挙当時において平成29年選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできないと判示した。 ⑽ 令和3年10月14日、衆議院が解散され、同月31日、平成29年選挙区 割りの下で衆議院議員総選挙(以下「令和3年選挙」という。)が行われた。 平成29年選挙区割りの下において、令和2年に行われた大規模国勢調査の結果によれば、選挙区間の人口の最大較差は1対2.096となり、令和3年選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(東京都第13区)との間で1対2.07 9であり、鳥取県第1区と比べて較差が2倍以上になっている選挙区は29選挙区であった(乙4の5)。 最高裁令和4年(行ツ)第130号同5年1月25日大法廷判決・民集77巻1号1頁(以下「令和5年大法廷判決」という。)は、本件区割制度は、選挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡 大し得ることを当然の前提としつつ、選挙制度の安定性も考慮して、10年ご とに各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行うこと等によってこれを是正することとしているのであり、本件区割制度と一体的な関係にある平成29年選挙区割りの下で拡大 性も考慮して、10年ご とに各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行うこと等によってこれを是正することとしているのであり、本件区割制度と一体的な関係にある平成29年選挙区割りの下で拡大した較差も、本件区割制度の枠組みの中で是正させることが予定されているということができ、このような制度には合理性が認められるとした上で、このような平成29年選挙区割りの下で較差が拡大した としても、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情のない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできない旨判示した。そして、令和5年大法廷判決は、令和3年選挙当時における選挙区間の投票価値の較差は、自 然的な人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情はうかがわれないし、その程度も著しいものとはいえないから、上記較差の拡大をもって、平成29年選挙区割りが、令和3年選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということはできず、令和3年選挙当時において、平成29年区割規定の定める平成29年選挙区割りは、憲法の投票価 値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、平成29年区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできないと判示した。 ⑾ 令和3年選挙に先立つ令和2年10月1日を調査時点とする大規模国勢調査が実施され(以下「令和2年国勢調査」という。)、令和3年6月25日にその結果の速報値が官報に公示された。 区画審は、令和2年国勢調査の結果が官報で公示されたことを受けて改定案に係る審議を開始した。令和4年1月、現行の区割や改定案の作成 令和3年6月25日にその結果の速報値が官報に公示された。 区画審は、令和2年国勢調査の結果が官報で公示されたことを受けて改定案に係る審議を開始した。令和4年1月、現行の区割や改定案の作成等に関する区画審の意見照会に対して、都道府県知事から意見が寄せられ、多数の知事から、分割市区町の回避・解消を求める意見が提出された。区画審は、令和4年2月21日、改定案の作成方針を取りまとめた。同作成方針は、市区町村の区 域は分割しないことを原則とすることなどを含み、令和3年選挙当日有権者数 において較差2倍以上となっている状況も考慮することとされた。区画審は、令和4年6月16日、内閣総理大臣に対し、令和2年国勢調査の結果を前提に、5都県の定数を合計10増加させ、10県の定数を合計10減少させるとともに、25都道府県の140選挙区において区割りを改めることを内容とする改定案(以下「本件改定案」という。)の勧告を行った。同勧告は、令和2年国 勢調査の結果による選挙区間の人口の最大較差を、2.096倍(=東京都第22区/鳥取県第2区)から1.999倍(=福岡県第2区/鳥取県第2区)に縮小し、人口の最も少ない選挙区との人口の較差が2倍以上の選挙区を23選挙区から0選挙区に縮小し、分割市区町を32市区に減少させ、令和3年選挙当日有権者数による較差が2倍以上となっていた選挙区をも改定するもの であった。同勧告を受けて、令和4年11月18日、令和4年法律第89号(以下「令和4年改正法」という。)が成立し、令和4年改正法によって、本件改定案に従って区割規定が改正された(以下、上記改正後の区割規定を「本件区割規定」といい、本件区割規定に基づく上記改定後の選挙区割りを「本件選挙区割り」という。)(乙2、25、26の1・2、27の1、28 に従って区割規定が改正された(以下、上記改正後の区割規定を「本件区割規定」といい、本件区割規定に基づく上記改定後の選挙区割りを「本件選挙区割り」という。)(乙2、25、26の1・2、27の1、28の1)。 ⑿ 令和6年10月9日に衆議院が解散され、同月27日、本件選挙区割りの下で本件選挙が行われた。本件選挙区割りの下では、本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(北海道第3区)との間で1対2.059であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は10選挙区で あった。(乙3) 3 争点及びこれに関する当事者の主張本件の争点は、本件選挙が、憲法ないし新区画審設置法3条1項、4条2項に反した本件区割規定に基づくものとして、無効となるかである。 (原告らの主張) 次のとおり、本件区割規定は、憲法ないし本件区割基準に反して無効であるか ら、これに基づいて施行された本件選挙は全体として無効である。 ⑴ ①両議院の議事は、憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決すべき旨定める憲法56条2項、②主権の存する日本国民と定める同1条、③主権が国民に存することを宣言する同前文1項1文後段、④日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動する旨宣明する 同前文1項1文前段、⑤両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する旨定める同43条1項は、できる限り、人口比例選挙(各有権者が投票する1票が他の有権者のそれと等価値であること)を要求していると解されるところ、本件選挙区割りはこれに反しているから、本件区割規定は憲法に違反している。 ⑵ 日本では、東京都を除く46道府県 る1票が他の有権者のそれと等価値であること)を要求していると解されるところ、本件選挙区割りはこれに反しているから、本件区割規定は憲法に違反している。 ⑵ 日本では、東京都を除く46道府県において、令和2年以降令和22年にかけて人口が一貫して減少すると見込まれるところ、本件選挙区割りは、令和2年国勢調査における人口に基づくと選挙区間の人口の最大較差が1.999倍と2倍に極めて近い数値であり、令和7年に簡易国勢調査が実施されるまでの5年間、当初の期間を除いて、選挙区間の人口の最大較差は一貫して2倍以上 となると合理的に予想される。後記⑶のとおり、新区画審設置法3条1項、4条2項は、区画審が、令和2年国勢調査に基づく区割りの改定案を作成・勧告するに当たり、次に簡易国勢調査が行われる令和7年の見込人口を統計上合理的に試算して、令和7年まで一貫して最大較差が2倍以上とならないようにすることを要求しており、これは憲法上の要請であるところ、本件選挙区割りは、 上記各条項の趣旨に沿った選挙制度であったとはいえず、本件選挙時において、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったというべきである。そして、上記のとおり、令和2年から令和22年にかけて、46道府県において人口が一貫して減少すると予測され、現に令和4年1月の時点で、住民基本台帳上、選挙区間の人口の最大較差が2.034倍に達していたにもかかわらず、 区画審も国会も、本件選挙の日までに、新区画審設置法3条1項、4条2項を 遵守するための取組みを具体的に行っておらず、憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったというべきである。 したがって、本件区割規定は憲法に違反している。 ⑶ 新区画審設置法4条2項は、区画審は、各選挙区の簡易国勢調査の結果による日本国 上要求される合理的期間内に是正がされなかったというべきである。 したがって、本件区割規定は憲法に違反している。 ⑶ 新区画審設置法4条2項は、区画審は、各選挙区の簡易国勢調査の結果による日本国民の人口の最大較差が2倍以上となったときは改定案の勧告を行う ものと定めているところ、同条項は、区画審が、大規模国勢調査に基づいて改定案を作成・勧告するに当たり、次に簡易国勢調査が行われる5年後の見込人口も試算して、その最大較差が2倍以上とならないように区割の改定案を作成・勧告する義務を負っていることを前提としていると解される。平成28年改正法附則が、アダムズ方式による各都道府県の選挙区数の変更が行われるま での選挙区割りにつき、平成27年国勢調査の結果に基づく人口の較差が2倍未満となることに加え、次回の大規模国勢調査が実施される平成32年(令和2年)の見込人口に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満であることを基本としていたこと(前提事実⑻)も、この解釈を裏付けるものである。そうすると、区画審は、新区画審設置法3条1項、4条2項に基づき、令和2年国勢調 査に基づく区割りの改定案を作成・勧告するに当たり、次に簡易国勢調査が行われる令和7年の見込人口を統計上合理的に試算して、令和7年まで一貫して最大較差が2倍以上とならないよう改定案の作成・勧告を行うべきであったといえる。それにもかかわらず、本件改定案によれば、令和4年1月の時点で、住民基本台帳上、人口の最も少ない選挙区と最も多い選挙区との間で較差が 2.034倍となっており、区画審は、このことを認識し、又は認識することを怠った上で、令和4年6月16日、本件改定案を勧告しており、本件改定案は新区画審設置法3条1項、4条2項に反しているから、これに従って定められた本件区割規定 は、このことを認識し、又は認識することを怠った上で、令和4年6月16日、本件改定案を勧告しており、本件改定案は新区画審設置法3条1項、4条2項に反しているから、これに従って定められた本件区割規定も、上記各条項違反の瑕疵を帯びる。 (被告の主張) ⑴ (原告らの主張⑴について)争う。 憲法は、投票価値の平等を要求しているが、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。 そのため、国会において小選挙区制度における具体的な選挙区割りや、その 前提となる区割規定を定めるに当たっては、投票価値の平等を最も重要かつ基本的な基準としつつも、較差という客観的かつ形式的な数値だけでなく、当該較差の背後にある選挙制度の仕組みや、当該較差を生じさせる要因等を含めて種々の政策的考慮要素を総合的に考慮した上で、国政遂行のための民意の的確な反映の実現と、投票価値の平等の要請との調和を図ることが求められるが、 選挙制度の仕組みの決定については、国会の広範な裁量に委ねられていることから、これらの調和が保たれる限り、当該選挙制度の仕組みを決定したことが、国会の合理的な裁量の範囲を超えるということにはならないというべきである。 したがって、選挙制度の憲法適合性は、以上のような国会に与えられた裁量 権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになる。すなわち、国会が選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、憲法の投票価値の平等の要求に反するため、国会に認められる裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反するこ ついて具体的に定めたところが、憲法の投票価値の平等の要求に反するため、国会に認められる裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになると解すべきである。 ⑵ (原告らの主張⑵について)争う。 前記⑴の判断枠組みの下で、本件区割規定の定める本件選挙区割りが、違憲状態に至っているか否かについてみると、本件区割制度は、投票価値の平等の要請を、国会が正当に考慮することができる他の政策目的ないし理由との関連において調和的に実現させるとともに、これを安定的に継続させることのでき るものであるから、合理的なものであるということができる。また、本件区割 制度の整備は、平成23年から平成27年までの各大法廷判決が、国会に対して求めてきた立法措置の内容に適合するものであって、本件区割制度が合理性を有することは、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決も肯定しているところである。 このように合理性の認められる本件区割制度により改定された選挙区割り については、原則として憲法の投票価値の平等の要求に反するものとはいえず、選挙区間の較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情があるときに初めて憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものというべきである。 しかし、本件区割制度により改定された本件選挙区割りについて、上記のような事情があるということはできない。 したがって、本件区割規定の定める本件選挙区割りが、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたということはできない。 仮に違憲状態にあったとの評価をするとしても、 いうことはできない。 したがって、本件区割規定の定める本件選挙区割りが、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたということはできない。 仮に違憲状態にあったとの評価をするとしても、令和5年大法廷判決は、令 和3年選挙当時の選挙区割りについて憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったとはいえない旨判断しており、本件選挙は令和5年大法廷判決後初めて行われた衆議院議員総選挙であり、令和3年選挙施行後には、較差の是正のために令和4年改正が実施されていることも考慮すれば、仮に何らかの理由により本件区割規定の定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要 求に反する状態に至っていると判断されるとしても、国会において、そのことを認識すべき契機が存在したとはいえず、その状態を認識し得ない状況であったことは明らかである。 したがって、仮に本件選挙区割りが違憲状態に至っていたとしても、国会が、憲法上要求される合理的期間にその是正をしなかったということはできない。 ⑶ (原告らの主張⑶について)争う。 新区画審設置法3条1項も、同法4条2項も、大規模国勢調査から次の簡易国勢調査までの期間の人口動態について何ら規定しておらず、大規模国勢調査から簡易国勢調査までの人口動態について考慮しなければならないことを規定したものではない。平成28年改正法附則2条3項1号ロは、平成27年国勢調査の結果に基づく選挙区割りの改定案の作成が、本件区割制度導入前の緊 急是正措置として行われることとなることも考慮して、選挙区間の較差について特に配慮し、これを補完する趣旨で規定されたものであって、本件区割制度による選挙区割りの改定案の作成について、大規模国勢調査から簡易国勢調査までの人口動態を考慮しなければならないと解する根 について特に配慮し、これを補完する趣旨で規定されたものであって、本件区割制度による選挙区割りの改定案の作成について、大規模国勢調査から簡易国勢調査までの人口動態を考慮しなければならないと解する根拠にはならない。 第3 当裁判所の判断 1⑴ 憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば投票価値の平等を要求しているものと解される。他方、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ、国会の両議院の議員の選挙については、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙 に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項、47条)、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に 保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが、それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって、具体的な選挙区を定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸 要素を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、 投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているものと解される。したがって、このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお、 実現するとともに、 投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているものと解される。したがって、このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり、国会がこのような選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、上記のような憲法上の要請 に反するため、上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである(最高裁昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁、最高裁昭和56年(行ツ)第57号同58年11月7日大法廷判決・民集37巻9号1243頁、最高裁昭和59年(行 ツ)第339号同60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁、最高裁平成3年(行ツ)第111号同5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁、最高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁、最高裁平成11年(行ツ)第35号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1704頁、最高裁平成18年(行ツ)第1 76号同19年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁、平成23年大法廷判決、平成25年大法廷判決、平成27年大法廷判決、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決参照)。 ⑵ これに対し、原告らは、憲法56条2項、1条等を根拠に、憲法は、できる限り、人口比例選挙を要求しているところ、本件選挙区割りはこれに反してい るから、本件区割規定は憲法に違反している旨主張するが、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当 比例選挙を要求しているところ、本件選挙区割りはこれに反してい るから、本件区割規定は憲法に違反している旨主張するが、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであることは前記⑴のとおりであって、原告らの上記主張は採用することができない。 2⑴ 前記1⑴に説示した考えに基づいて、本件選挙当時の本件区割規定及びこれ に基づく本件選挙区割りの合憲性について検討する。 ⑵ 前提事実⑻のとおり、本件区割制度は、10年ごとに行われる大規模国勢調査の都度、その結果による人口の選挙区間の最大較差が2以上とならないように、アダムズ方式による都道府県別定数配分を含む選挙区割りの改定を行うものとし、中間年に行われる簡易国勢調査の結果による人口の選挙区間の最大較 差が2以上となったときにも、選挙区割りの改定を行うものと定めている。このように、本件区割制度は、選挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを当然の前提としつつ、選挙制度の安定性も考慮して、10年ごとに各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行い、その中間年にも選挙区割りを見直すこと等によってこれを是正するこ ととしており、前提事実⑾のとおり、現に、本件区割制度に基づく区画審の本件改定案の勧告を受けて成立した令和4年改正法によって、令和2年国勢調査の結果による選挙区間の人口の最大較差は、2.096倍から1.999倍に縮小され、人口の較差が2倍を超える選挙区は23選挙区から0選挙区に減少していて、選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させている。このような 制度は、投票価値の平等と、選挙制度の安定性を調和 縮小され、人口の較差が2倍を超える選挙区は23選挙区から0選挙区に減少していて、選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させている。このような 制度は、投票価値の平等と、選挙制度の安定性を調和的に実現するものとして、その合理性が認められ、このような制度下で較差が拡大したとしても、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に 至ったものということはできない。そして、本件選挙当時における選挙区間の投票価値の較差は、自然的な人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情はうかがわれず、その程度も著しいものとはいえない。 原告らが指摘するとおり、本件改定案は、令和2年国勢調査の結果による人口の選挙区間の最大較差を1.999倍としていて、本件区割基準が定める2 倍に極めて近接した数字であったことも、本件選挙当時の選挙区間の選挙人数 の最大較差が2.059倍に至る原因となったといえる。しかしながら、区画審は、選挙区間の人口の最大較差を1.999倍とする本件改定案を作成・勧告するに当たり、分割市区町の発生を回避・解消することを考慮しており、本件改定案に従って令和4年改正法が成立したことが認められるところ(前提事実⑾)、選挙区割りに当たり、政治的に一つのまとまりを有する単位である市 町村その他の行政区画を基本的な単位として考慮すること自体は、投票価値の平等との調和が保たれる限り、国会の合理的な裁量を超えるものとは解されない。新区画審設置法3条1項も、行政区画を考慮要素とすることを認めているところである。そして、令和2年国勢調査の調査時点から4年余経過 の調和が保たれる限り、国会の合理的な裁量を超えるものとは解されない。新区画審設置法3条1項も、行政区画を考慮要素とすることを認めているところである。そして、令和2年国勢調査の調査時点から4年余経過した本件選挙当時において、なお選挙区間の選挙人数の最大較差が2.059倍であり、 選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区が10選挙区であって、投票価値の較差の程度が著しいものとはいえないことを考慮すると、国会が分割市区町の回避・解消を考慮した本件改定案に従って令和4年改正法を成立させたことについて、投票価値の平等との調和が保たれておらず、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有していなかったとは いえない。 したがって、本件選挙当時、本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本件区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない。 ⑶ 原告らは、区画審が、大規模国勢調査に基づく選挙区割りの改定案の作成・ 勧告をするに当たり、次に簡易国勢調査が行われる令和7年の見込人口を統計上合理的に試算して、令和7年まで一貫して最大較差が2倍以上とならないようにすることが憲法上要請されている旨主張する。 しかしながら、人口動態は多種多様な不確定の要素に左右され、現に、平成29年選挙区割りは、区画審による改定案作成・勧告当時に試算された平成3 2年(令和2年)の見込人口によれば選挙区間の人口の最大較差が1.999 倍であったが(前提事実⑻)、令和2年国勢調査の結果によれば人口の最大較差が2.096倍となったこと(前提事実⑽)も考慮すれば、現時点では、将来の見込人口を合理的に試算することが困難であることは明らかであり、憲法が 事実⑻)、令和2年国勢調査の結果によれば人口の最大較差が2.096倍となったこと(前提事実⑽)も考慮すれば、現時点では、将来の見込人口を合理的に試算することが困難であることは明らかであり、憲法が原告らの主張するような見込人口の考慮を要請しているとは解されない。人口異動による選挙区間の投票価値の較差拡大を是正することは憲法の要求す るところであるけれども、本件区割制度の下では、人口異動により投票価値の較差が拡大しても、10年ごとの大規模国勢調査に加えて、その5年後に行われる簡易国勢調査にも基づいて選挙区割りの改定をすることとされ、選挙制度の安定性と調和した合理的な間隔で行われる選挙区割りの改定によって較差が是正されることが制度上予定されている。 したがって、原告らの上記主張は、採用することができない。 3 原告らは、区画審が、新区画審設置法3条1項、4条2項に基づき、令和2年国勢調査に基づく区割りの改定案を作成・勧告するに当たり、次に簡易国勢調査が行われる令和7年の見込人口を統計上合理的に試算して、令和7年まで一貫してその最大較差が2倍以上とならないよう改定案の作成・勧告を行うべきであっ たのに、本件改定案の作成・勧告の時点ですでに住民基本台帳上の人口の最大較差が2.034倍となっていて、本件改定案は新区画審設置法3条1項、4条2項に反しており、本件改定案に従って定められた本件区割規定も、上記各条項違反の瑕疵を帯びる旨主張する。 しかしながら、新区画審設置法3条1項は、平成28年改正法附則が、選挙区 割りについて、平成27年国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口のみならず、次回の大規模国勢調査が実施される平成32年(令和2年)の見込人口についても、これに基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満であることを基本とする 成27年国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口のみならず、次回の大規模国勢調査が実施される平成32年(令和2年)の見込人口についても、これに基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満であることを基本とすることなどを定めていた(前提事実⑻)のとは異なり、最近の国勢調査の結果による日本国民の人口について選挙区間の較差が2倍未満になることを要請しているの みであって、原告らの主張は前提を欠いているといわざるを得ない。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 4 よって、原告らの請求は、いずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 札幌高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官 小河原寧 裁判官 片山信 裁判官 髙木寿美子

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