令和4(行ウ)2 運転免許取消処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年5月29日 福岡地方裁判所
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判決文本文23,071 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 福岡県公安委員会が令和2年8月20日付けで原告に対してした運転免許を取り消す旨の処分(以下「本件処分」という。)を取り消す。 2 被告は、原告に対し、579万5550円及びこれに対する令和2年8月20日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(以下、令和2年の出来事については、年の記載を省略する。) 1 事案の要旨原告は、8月20日付けで、福岡県公安委員会から、1月19日に酒気帯び運転を行ったとして、運転免許取消処分(本件処分)を受けた。 本件は、原告が、上記酒気帯び運転をした事実はないとして、被告を相手に、本件処分の取消しを求めるとともに、違法な本件処分により損害を受けたなど として、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償金579万5550円及びこれに対する民法所定の年3%の割合による遅延損害金(起算日は本件処分の日)の支払を求める事案である。 2 関連法令の定め等別紙2「関連法令の定め等」のとおり(以後、別紙で定義した略称は、特に 断りなく使用する。) 3 前提事実以下の事実(以下、「前提事実」といい、その項番号等により「前提事実⑴ア」などと記載する。)は、当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 ⑴ 本件処分についてア福岡県公安委員会は、8月20日付けで、原告に対し、運転免許を取り消す旨の本件処分をし、運転免許を受けることができない期間を同日から令和4年8月19日までの2年間と指定した(弁論の全趣旨)。 イ本件処分の理由とされた原告 けで、原告に対し、運転免許を取り消す旨の本件処分をし、運転免許を受けることができない期間を同日から令和4年8月19日までの2年間と指定した(弁論の全趣旨)。 イ本件処分の理由とされた原告の違反行為は、「原告は、酒気を帯び、呼気 1リットルにつき0.25ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で、1月19日午前3時03分頃、福岡県筑紫野市(住所省略)付近道路において普通乗用自動車(以下「本件車両」という。)を運転した(以下、同時刻、同所における本件車両の運転行為を「本件運転行為」という。)。」というものである(甲3)。なお、後記のとおり、本件運転行為をした者が 原告かどうかについては、争いがある。 ⑵ 本件運転行為の前後の状況についてア原告は、1月18日午後9時頃から日付の変わった同月19日午前零時頃までの間、福岡県糟屋郡a 町所在の居酒屋において、知人らと共にハイボールを飲酒し、その後自宅に戻った(乙17、33、36)。 イ原告は、1月19日午前1時過ぎ頃から午前2時半過ぎ頃までの間、福岡県筑紫野市(住所省略)所在のガールズバー「A」(以下「本件スナック」という。)において、ハイボールを飲酒した。原告は、以後、後記エの逮捕時まで飲酒はしていない(乙18、34、37)。 ウ福岡県春日警察署(以下「春日警察署」という。)大野交番(以下「大野 交番」という。)のB 警部補は、1月19日午前3時38分頃、福岡県大野城市(住所省略)先路上において、その前部を破損して停車している本件車両を発見し(以下、この場所を「本件停車場所」という。)、本件車両に近づいたところ、本件車両の運転席側から原告が降車してきたため、原告に対する職務質問を開始した。車内には、他に人はいなかった(乙 件車両を発見し(以下、この場所を「本件停車場所」という。)、本件車両に近づいたところ、本件車両の運転席側から原告が降車してきたため、原告に対する職務質問を開始した。車内には、他に人はいなかった(乙1、 11~12)。 エ原告は、1月19日午前4時19分頃、本件停車場所付近に所在するミニストップC 店(以下「本件ミニストップ」という。)駐車場において、B警部補の応援のため臨場した警察官の顔面に唾を吐きかけ、公務執行妨害の現行犯人として逮捕された。原告は、同日午前6時09分頃、呼気検査を受けたところ、呼気1リットルにつき0.51ミリグラムのアルコール が検出され、言語・態度状況、歩行能力及び直立能力等を見分した結果として酒気帯び状態と認定された(乙1、2、5~7)。 ⑶ 刑事裁判についてア原告は、①前記⑴イの道交法違反(酒気帯び運転)の公訴事実及び②前記⑵エの公務執行妨害の公訴事実で起訴され、いずれの事実についても無 罪を主張したが、12月14日、福岡地方裁判所において、道交法違反(酒気帯び運転)及び公務執行妨害の罪により懲役10月、執行猶予4年間の有罪判決を受けた(乙47)。 イこれに対し、原告が控訴したところ、福岡高等裁判所は、令和3年10月26日、道交法違反(酒気帯び運転)については、原告が本件運転行為 をしたという事実を合理的な疑いなく認定することはできないとして、第1審判決を破棄して原告に対し無罪の判決(ただし、公務執行妨害罪により罰金20万円の有罪判決。以下「本件刑事控訴審判決」という。甲1)を言い渡し、本件刑事控訴審判決は、上告されることなく、同年11月10日確定した(弁論の全趣旨)。 ⑷ 審査請求等ア原告は、11月18日、本件処分を不服と 決」という。甲1)を言い渡し、本件刑事控訴審判決は、上告されることなく、同年11月10日確定した(弁論の全趣旨)。 ⑷ 審査請求等ア原告は、11月18日、本件処分を不服として、福岡県公安委員会に対し、審査請求をしたが、福岡県公安委員会は、令和3年11月25日、同審査請求を棄却する旨の裁決をした。 イ原告は、令和4年1月25日、本件訴えのうち、本件処分の取消しを求 める訴えを提起し、令和5年6月28日、国家賠償を求める訴えを併合提 起した(顕著な事実)。 4 争点及び当事者の主張本件の争点は、①本件処分の適法性(具体的には、原告が本件運転行為を行ったか否か)、②本件処分に関する公務員の職務行為に国家賠償法上の違法性があるか否か、③原告の損害の有無及び額の3点であり、各争点に関する当事 者の主張の要旨は、別紙3「当事者の主張」記載のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実(以下「認定事実」といい、その項番号等により「認定事実⑴」などと記載する。) が認められる。 ⑴ 本件車両について本件車両は、原告の母が平成26年頃に購入した、同人名義の車両であり、令和2年当時、原告が通勤等のために運転するほか、原告の母や妹が運転することもあった。本件車両には、その購入当時、エンジンキー(キー自体を 車に接触させることなく、ドアの開錠・施錠、エンジンの始動などができるスマートキータイプ)が2個付属していた(甲9、19、乙35、48、弁論の全趣旨)。 ⑵ 1月19日の経緯について(この⑵における時刻は、特に断らない限り、1月19日のものである。) ア本件車両は、午前 属していた(甲9、19、乙35、48、弁論の全趣旨)。 ⑵ 1月19日の経緯について(この⑵における時刻は、特に断らない限り、1月19日のものである。) ア本件車両は、午前1時04分頃、筑紫野市(住所省略)のセブンイレブンD 店(以下「本件セブンイレブン」という。)の駐車場に進入して駐車した。その後、本件車両の運転席側から、原告が1人降車し、ドアを施錠して、本件スナックに向かって歩いて行った(前提事実⑵イ、甲1、乙8~10、47、58、60)。 イ原告は、本件スナックで飲酒後、そこに居合わせた知人であるEと共に、本件スナックから本件セブンイレブンまで歩いて移動し、午前2時57分頃、本件セブンイレブンの駐車場に駐車されていた本件車両に、所持していたエンジンキーで開錠の上、運転席側から乗車して、運転席に座った。 E は、運転席側のドア越しに、原告と会話し、その後本件車両から離れた が、原告と会話をした際、E からは、本件車両に原告以外の者が乗車していることは確認できなかった(前提事実⑵イ、乙9、30、31、41、58)。 ウ本件車両は、午前3時03分頃、本件セブンイレブンの駐車場を発進して車道に進出した(この際の運転行為が本件運転行為である。)。前記アか らウまでの間、本件車両は本件セブンイレブンの駐車場に駐車されたままであり、原告以外の人物が乗り降りしたことはなかった(乙9、58)。 エ本件車両は、途中衝突事故を起こして右前部バンパー等を破損し(乙15、16)、午前3時16分頃、本件停車場所に停車した。 本件停車場所近辺の防犯カメラには、次の①~⑤のような状況が撮影さ れるなどしていた(乙11、12、59、60)。 ① 午前3時17分~午前3時20分頃の 頃、本件停車場所に停車した。 本件停車場所近辺の防犯カメラには、次の①~⑤のような状況が撮影さ れるなどしていた(乙11、12、59、60)。 ① 午前3時17分~午前3時20分頃の間、本件車両のハザードランプが点滅しながら、その制動灯が点灯と消灯を繰り返した。 ② 午前3時20分~21分頃の間、本件車両の運転席側から降車した人物が、本件車両の前方へ移動し、しばらくして再び本件車両の運転席側 から乗車した。 ③ 午前3時28分頃、本件車両の運転席側から降車した人物が、本件停車場所から東方向に歩いていき、途中で引き返して本件停車場所に戻った。 ④ 午前3時32分頃、本件車両のハザードランプが2回続けて点滅した 後、上記③の人物が運転席側ドアを開けた。 ⑤ ただし、本件車両が本件停車場所に停車した午前3時16分頃から、B 警部補が原告に声をかけた午前3時38分頃(後記カ)の間、本件車両から降車して本件車両に戻らず立ち去った人物は、確認できない。 オ原告は、午前3時23分頃、付き合いのある保険屋のF に電話をかけ、46秒間の通話をし、午前3時26分頃、E に電話をかけ、約4分間の通 話をし、午前3時36分頃、地元の後輩であるG ことH(G は旧姓である〔乙22〕。)に電話をかけ、約3分間の通話をした。原告は、この間、以上の3名のほかにも、複数の者に電話をかけているが、通話はされていない(甲5、乙43、55、61)。 カ大野交番で勤務していたB 警部補は、近くで「キュルキュル―、キュル キュル―」という自動車のエンジン始動時のような異音を2回ほど聞き、異音がする方向へ徒歩で向かったところ、本件停車場所において停車している本件車両を発見した。B 警部補は、午前3時38分頃、本 キュル―」という自動車のエンジン始動時のような異音を2回ほど聞き、異音がする方向へ徒歩で向かったところ、本件停車場所において停車している本件車両を発見した。B 警部補は、午前3時38分頃、本件車両の運転席ドアから降車してきた原告に対し、声をかけ、職務質問を開始した。 本件車両の車内には他に人はいなかった(前提事実⑵ウ、甲10、乙 1)。 キ原告は、B 警部補に対し、車が動かないことや、知り合いに連絡して迎えに来てもらっていることなどを説明した。B 警部補は、原告から酒の臭いがしたため、飲酒運転を疑い、原告に対し、飲酒運転をしたのか、誰が運転したのかなどを尋ねたところ、原告は、車には乗っていたが運転はし ていないなどと答えた。この間に、B 警部補は、無線機にて春日警察署に応援を要請した。他方、原告は、午前3時40分頃、再びH に電話をかけ、約1分間の通話をした(甲10、乙1、20、22、43)。 ク B 警部補の応援要請を受け、午前3時44分頃、ミニパトカーに乗車した警察官2名が本件停車場所付近に到着した。警察官らは、本件車両の反 対車線(以下、同車線を指して「反対車線」という。)に停車したミニパト カーの中に原告を誘導し、車内で飲酒検知を行おうとしたが、原告の呼気の吹込み量不足のため、4度実施したがいずれもエラーが出て測定ができなかった。原告は、もう吹きたくないなどと言って、それ以上の呼気検査を拒否し、ミニパトカーを降り、反対車線沿いにある本件ミニストップ駐車場方向に歩き始めた。この間、他に4名の警察官が本件停車場所付近に 順次到着し、臨場した警察官は合計7名になっていたところ、その内の何名かの警察官が原告に追随し、その動静を監視しつつ、呼気検査に応じるように再三説得を試みた(甲1、10、 が本件停車場所付近に 順次到着し、臨場した警察官は合計7名になっていたところ、その内の何名かの警察官が原告に追随し、その動静を監視しつつ、呼気検査に応じるように再三説得を試みた(甲1、10、11、乙1、5)。 ケ原告に電話で呼び出されたH は、午前4時05分頃、タクシーで本件停車場所付近に到着した。H は、その場にいた警察官に原告の知人であ ることを伝えるなどした。H は、しばらく本件車両の側にいたところ、原告は反対車線側の歩道上で、警察官数名に追随されながら、右往左往するようにせわしなく動いていた(甲5、10、11、乙1、45)。 なお、原告に呼び出されたE も、午前4時14分頃、その妻が運転する軽自動車で本件ミニストップの駐車場に到着し、降車して、数十秒間、警 察官に取囲まれる原告の様子を見ていたが、そのままその場を離れた(甲1、5、乙1、31)。 コ原告は、午前4時19分、本件ミニストップの駐車場において、公務執行妨害の現行犯人として逮捕された。警察官らは、本件車両を差し押さえたが、本件車両及び原告の身体からは本件車両のエンジンキーは発見され なかった。警察官らは、原告に対し、エンジンキーの所在を確認したところ、原告から本件車両を運転していた者が持って行った旨を聴取したため、原告が逮捕直前に付近の路上などにエンジンキーを投棄したことも考えて逮捕現場付近を捜索したが、これを発見するに至らなかった(前提事実⑵エ、甲6)。 ⑶ 原告その他の関係者の供述等について原告その他の関係者の供述等は、別紙4「原告その他の関係者の供述等」のとおりである(以下、これを引用する際は、その項番号に応じ「別紙4⑴」等と略称する。)。 2 争点⑴(本件処分の適法性)について 関係者の供述等は、別紙4「原告その他の関係者の供述等」のとおりである(以下、これを引用する際は、その項番号に応じ「別紙4⑴」等と略称する。)。 2 争点⑴(本件処分の適法性)について ⑴ 本件運転行為をした人物についての判断枠組み認定事実により指摘することができる次の事情によれば、次のとおり、本件運転行為をした人物は、後記④の特段の事情がない限り、原告であると推認することができる。 ① 本件車両は、1月19日午前1時04分頃、本件セブンイレブンの駐車 場に進入して駐車し、午前3時03分頃、同所から発進した(本件運転行為)。 ところが、上記の間に、原告以外の人物は、本件車両を乗り降りしていない(認定事実⑵ア・ウ)。 ② 原告は、本件運転行為の約6分前である午前2時57分頃に、所持していたエンジンキーで開錠の上、運転席側から本件車両に乗り込み、運転席 に座った(認定事実⑵イ)。 ③ 上記②の際、E は、本件車両のドア越しに原告と会話したところ、本件車両内に原告以外の人物が乗車していることを確認できなかった(認定事実⑵イ)。 ④ 以上の事実によれば、1月19日午前3時03分の本件運転行為は、そ の約6分前にエンジンキーを所持して運転席に座った原告と入れ替わって運転行為を行った者が本件車両内に存在したなどの特段の事情がない限り、原告によるものと推認することができる。 ⑵ 特段の事情の有無についてア原告の主張の骨子原告は、上記⑴の特段の事情に関し、飲酒の影響で当時の記憶がないとしつつ、原告が午前2時57分に運転席側から本件車両に乗り込み、運転席に座った後、後部座席で待機していた後輩と、車内で座席の位置を入れ 替わり、その後輩が本件運転行為を行った可能性が 憶がないとしつつ、原告が午前2時57分に運転席側から本件車両に乗り込み、運転席に座った後、後部座席で待機していた後輩と、車内で座席の位置を入れ 替わり、その後輩が本件運転行為を行った可能性がある旨を主張し、これに沿う本件刑事控訴審判決(甲1)の判断及び原告の供述(別紙4⒀等)もある。 しかしながら、前提事実、認定事実及び掲記の証拠によれば、次のような事情を指摘することができる。 イ本件刑事控訴審判決の判断の要点本件刑事控訴審判決に係る刑事裁判では、検察官は、H がI に対して本件車両のエンジンキーを渡したことを争わず(甲1・3頁)、原告に対する職務質問が始まった後に何者かに当該エンジンキーが渡る機会があったこと(原告が職務質問開始後に当該エンジンキーを車内や周辺に隠匿し、こ れをH が発見したこと等)を主張立証した(甲1〔17頁〕、甲24の4)。 これに対し、本件刑事控訴審判決は、①原告が現行犯人逮捕された際に、本件車両のエンジンキーが発見されなかったこと及び②H がI に当該エンジンキーを手渡したことを前提に、H が当該エンジンキーを入手した経緯について、㋐原告がH に直接手渡したこと、㋑原告が本件車両の内外に置 いて、それをH が拾得したこと、㋒本件車両の運転者以外の第三者が原告から手渡され又は拾得して、H に手渡したこと、のいずれの可能性を認めることも困難であるとし、その上で、本件車両を運転していた原告以外の人物が本件車両からエンジンキーを持ち出してH に手渡した可能性は、前記①及び②の事実関係を合理的に説明するものであり、他方、本件車両に 原告のみが乗車し、原告が運転していたという場合には、前記①及び②の 事実関係を説明することは困難であり、原告が本件 び②の事実関係を合理的に説明するものであり、他方、本件車両に 原告のみが乗車し、原告が運転していたという場合には、前記①及び②の 事実関係を説明することは困難であり、原告が本件運転行為をしたという事実を合理的な疑いなく認定することはできないとして、道交法違反(酒気帯び運転)の公訴事実につき原告に無罪を言い渡したものである(前提事実⑶イ、甲1・19~20頁)。 ウ本件車両のエンジンキーに関する事情について 特段の事情を基礎付け得る事情について認定事実によれば、原告は、1月19日午前4時19分、公務執行妨害の現行犯人として逮捕されたが、本件車両のエンジンキーは、その際の警察官らの捜索によっても、本件車両及び原告の身体から発見されず、本件停車場所付近からも発見されなかった(認定事実⑵コ)。 本件刑事控訴審判決は、上記の事実及び前記イの検察官の応訴態度(HがI に対して本件車両のエンジンキーを渡したことを争わないこと)に加え、㋐H は、1月19日、本件停車場所付近で、第三者から本件車両のエンジンキーを受け取り、同日、原告の自宅に向かい、I にこれを渡した旨を供述し(別紙4⑷〔乙22〕、甲5)、㋑I も、これに沿う供述(別 紙4⑽〔乙23〕)をしたことを踏まえ、H の上記供述を排斥し難いとして、前記イのような判断をしたものである。 現存する本件車両のエンジンキーについてしかしながら、現存することが確認された本件車両のエンジンキーは、3月2日、春日警察署の警察官により、原告の母のハンドバッグから発 見されたものである(別紙4⑺)。本件車両のエンジンキーは、そもそも本件車両の購入時には2つ存在し、また、本件車両は原告だけでなく原告の母が運転すること により、原告の母のハンドバッグから発 見されたものである(別紙4⑺)。本件車両のエンジンキーは、そもそも本件車両の購入時には2つ存在し、また、本件車両は原告だけでなく原告の母が運転することもあったというのであるから(認定事実⑴)、上記のように原告の母のハンドバッグ内にあった本件車両のエンジンキーが、本件運転行為の際に使われたものと同一であるとは直ちに認め難い。 I の供述の信用性についてI の供述(別紙4⑽)中には、1月19日、H から本件車両のエンジンキーを受け取った旨の供述部分があるが、このエンジンキーがどのような経緯を経て原告の母のハンドバッグ内に入っていたのかについては明確な供述がない(別紙4⑽。このことは、原告の母の供述〔別紙4⑿〕 においても同様である。)。I が、当時原告と交際していた関係にあり、原告に有利になるような供述をする動機もあることを併せ考慮すれば、Iの上記供述をもって、そのとおりの事実を直ちに認めることはできないものといわざるを得ない。 原告の現行犯人逮捕時における本件車両のエンジンキーの不発見につ いて本件車両のエンジンキーが、原告の現行犯人逮捕の際に、本件車両、原告の身体及び逮捕現場付近から発見できなかったという事情(認定事実⑵コ)は、次の点も考慮すると、本件車両を運転していた第三者がこれをH に預けたことを直ちに裏付けるものになるとはいえない。 ① 本件停車場所付近には、複数の排水溝があり、また、道路沿いには複数の灌木があったところ(乙53)、春日警察署の警察官らが原告の現行犯人逮捕の際に捜索を行った範囲は、本件証拠上、明らかでない。 そうすると、上記警察官らが上記捜索の際に見落とした可能 複数の灌木があったところ(乙53)、春日警察署の警察官らが原告の現行犯人逮捕の際に捜索を行った範囲は、本件証拠上、明らかでない。 そうすると、上記警察官らが上記捜索の際に見落とした可能性もあるというべきであり、冒頭の事情のみをもって、本件車両のエンジン キーが原告の現行犯人逮捕の際に本件停車場所付近に客観的に存在しなかったものと断ずることはできない。 ② 1月19日午前3時16分頃(本件車両の停止時刻)~午前3時38分頃(B 警部補が原告に声をかけた時刻)の間、本件車両から降車して本件車両に戻らず立ち去った人物は、本件停車場所近辺の防犯カ メラの映像上、確認することができない(認定事実⑵エ⑤)。これに対 し、原告は、午前3時28分頃に本件車両から降車し、午前3時32分頃に本件車両の運転席側のドアを開けた人物(認定事実⑵エ)は、本件車両を運転していた後輩の可能性があるとした上で、①同人が本件車両に乗り込んだかどうかは、他の通過車両のライトの光によって確認することができず、同人が、運転席側のドアを開けたものの本件 車両に乗り込まず、そのまま本件車両から離れた可能性や、②同人が、一旦本件車両に乗り込んだ後、防犯カメラの撮影範囲外となる助手席側から降車した可能性等があると主張するが、証拠(乙11、12、59、60)及び弁論の全趣旨に照らして、原告の上記主張は、採用し難い。また、前記イの本件刑事控訴審判決の判断によれば、本件運 転行為をした第三者が、上記の間に、本件車両内から原告1人を残して立ち去ったことになるものの、上記のとおり防犯カメラの映像上そのような人物を確認することができない事実を踏まえると、この点についての合理的な説明は不可能である。 他方、上記の間に本件車両の ち去ったことになるものの、上記のとおり防犯カメラの映像上そのような人物を確認することができない事実を踏まえると、この点についての合理的な説明は不可能である。 他方、上記の間に本件車両の運転席側から降車した人物は、本件車 両の周辺等を動き回るなどしていたのであり(認定事実⑵エ②~④)、この人物が本件車両のエンジンキーを隠匿する機会はあったといえる。 ③ また、B 警部補は、午前3時38分、原告に声をかけた後も、他の警察官が臨場する午前3時44分頃までの間、一人で原告に対応しており(認定事実⑵カ~ク)、午前3時40分頃には、原告のスマートフ ォンでH と通話していた(別紙4⑵)。 このような事実に照らすと、原告が、B 警部補に声をかけられた後に、その目を盗んで、本件停車場所付近にある排水溝にエンジンキーを投棄するなどした可能性もないとはいえない。 ④ さらに、原告は、臨場した警察官が7名になった後も、歩道上を右 往左往するようにせわしなく動くなどしていた(認定事実⑵ケ)。 そうすると、原告が、追従する警察官らの隙をみて本件車両のエンジンキーを投棄するなどした可能性も否定し難い。 H の供述の信用性についてH は、本件運転行為の翌日である1月20日に警察官から電話聴取を受けた際には、第三者から本件車両のエンジンキーを預かったという出 来事について話しておらず(別紙4⑵)、原告が釈放された後の同月22日以降の事情聴取において、突然、30代の見知らぬ男性からエンジンキーを預かった旨を供述するに至ったものである(別紙4⑷)。 H が、原告の後輩に当たり、深夜にもかかわらず、原告に呼び出されてタクシーで本件停車場所に来たこと等からう らぬ男性からエンジンキーを預かった旨を供述するに至ったものである(別紙4⑷)。 H が、原告の後輩に当たり、深夜にもかかわらず、原告に呼び出されてタクシーで本件停車場所に来たこと等からうかがわれる両者の関係性 (認定事実⑵オ、ケ)に照らせば、原告に有利になるような供述を敢えてした可能性も否定できないところ、前記のとおり、その裏付けとなり得るI の供述する事実は直ちに認めることができず、また、前記のとおり、本件車両のエンジンキーが原告の現行犯人逮捕の際に発見されなかったという事情は、H の上記供述を裏付けるものになるとはいえな い。 このように、本件全証拠に照らし、特に本件刑事控訴審判決においては、検察官の主張立証との関係で考慮されず、又は十分に考慮されなかった事情(証拠)も含めて検討すれば、本件停車場所付近で第三者から本件車両のエンジンキーを受け取ったとするH の前記供述は、直ちに採 用することができず、これをもって当該第三者が本件運転行為をした可能性を合理的なものとして認めることは困難である。 エ本件運転行為をした第三者の存在の可能性を指摘する原告の供述部分について次の事情に照らすと、原告は、本件運転行為を行った人物について、その供述を著しく変遷させており、そのことに合理的な理由がないものといわざるを得ない。 ① 原告は、当初(1月19日)は、不明である旨を述べ(別紙4⑴)、その2日後(1月21日)、H であると供述を変え(別紙4⑶)、釈放された直後(1月23日)に(H と話したらH ではないとのことであったので)誰か分からないと述べたが(別紙4⑸)、3月2日には「J」であると再び供述を変え(その根拠として、E から、E がJ に対し原 告 23日)に(H と話したらH ではないとのことであったので)誰か分からないと述べたが(別紙4⑸)、3月2日には「J」であると再び供述を変え(その根拠として、E から、E がJ に対し原 告を自宅まで送るよう頼んだ旨を聞いたからとする。別紙4⑻)、刑事事件の第一審公判以降は「顔は見たことがあるけど、ちょっと名前までははっきりとは覚えていないような感じの後輩」であると供述するに至った(別紙4⒀)。 ② 原告は、上記①のような供述の変遷について、もともと飲酒の影響 で記憶が欠落していた部分を、各供述時点で有する限られた情報に基づいて、推測で供述したからであると主張する。 しかしながら、J に関していえば、E は、3月2日時点で、原告に代わって本件車両を運転する人物はいなかった旨を供述しているのであり(別紙4⑼)、E からJ について聞いた旨の原告の供述自体(上記 ①参照)の真偽も疑わしい。そうすると、このような原告の供述の変遷は、記憶の欠落のみを理由とするものとは考え難い。 前記⑵アの原告の供述部分は、次のとおり、的確な裏付けを欠くもの又はその供述内容が不合理なものといわざるを得ない。 ① 原告の供述(別紙4⒀)によれば、本件運転行為をした人物は、原告に対し、もめ事の仲裁を相談した本件スナックの経営者から、直接又は第三者を介して、原告を迎えに行くよう依頼された者である。 しかしながら、本件スナックの経営者は、1月19日、原告にもめ事の仲裁を相談したとは述べていない(別紙4⑾)。 仮に、そのような経緯があったとすれば、原告は、本件スナックの経営者や当時本件スナックにいたとされる原告の知人に順次確認をとることによって、当該人物を特定することが可能であるにもかかわらず、現時 仮に、そのような経緯があったとすれば、原告は、本件スナックの経営者や当時本件スナックにいたとされる原告の知人に順次確認をとることによって、当該人物を特定することが可能であるにもかかわらず、現時点に至るまで、当該人物を特定しない。 ② 仮に、原告が、1月19日午前1時04分頃、後輩の運転する本件 車両で、本件セブンイレブンの駐車場に到着したとすれば、原告は、㋐本件車両の助手席又は後部座席に座っていたのに、助手席側や後部座席のスライドドアではなく、あえて当該後輩と入れ替わる形で運転席側のドアから降車したことになり(認定事実⑵ア)、㋑本件車両に当該後輩が残っているのに、本件車両のドアを施錠し、エンジンキーを 持って立ち去ったことになるが、このような原告の行動は、不自然不合理であるといわざるを得ない。 ③ 原告は、1月19日午前3時23分頃~午前3時36分頃にかけて、知人らに電話をかけて会話するなどしていたのであり(認定事実⑵オ)、本件車両を降りた当該後輩から、レッカー車を探すために電話をかけ てきますと言われたと供述している(別紙4⒀カ)のであるから、B 警部補らに飲酒運転を疑われた際に、まだ近くにいるはずの当該後輩(原告において、当該後輩がそのまま本件車両に戻ってこないと考える根拠は、この時点では乏しい。)の存在について言及してしかるべきであるのに、自分は車を運転しないこと、知り合いに連絡して迎えに来て もらっていること、本件車両を運転していた者がエンジンキーを持っ て行ったこと等を説明するにとどまったのである(認定事実⑵キ、ク)。 原告の上記言動は、不自然不合理であるといわざるを得ない。 以上の諸点に照らすと、原告の後輩が本件運転行為を行った可能性がある旨の原告の供述部分をもっ とどまったのである(認定事実⑵キ、ク)。 原告の上記言動は、不自然不合理であるといわざるを得ない。 以上の諸点に照らすと、原告の後輩が本件運転行為を行った可能性がある旨の原告の供述部分をもって、当該後輩が本件運転行為をした可能性を合理的なものとして認めることも困難である。 オ小括以上によれば、原告が本件運転行為をしたという事実を合理的な疑いなく認定することはできないとした本件刑事控訴審判決の判断は、その刑事裁判における検察官の主張立証を前提としたものにとどまり、本件全証拠に照らし、特に検察官の主張立証との関係で考慮されず、又は十分に考慮 されなかった事情(証拠)も含めて検討すれば、本件停車場所付近で第三者から本件車両のエンジンキーを受け取ったとするH の前記供述は、直ちに採用することができず、これをもって当該第三者が本件運転行為をした可能性を合理的なものとして認めることは困難である(前記ウ)。また、原告の後輩が本件運転行為を行った可能性がある旨の原告の供述部分をもっ て、当該後輩が本件運転行為をした可能性を合理的なものとして認めることも困難である(前記エ)。 したがって、原告の指摘する証拠又は事情をもって、前記⑴の(本件運転行為の約6分前にエンジンキーを所持して運転席に座った原告と入れ替わって運転行為を行った者が本件車両内に存在したなどの)特段の事情が あるとは認め難い。 そうすると、前記⑴で説示したところにより、原告が本件運転行為を行ったものと認められる。 以上の認定判断に反する原告の主張は、採用することができない。 ⑶ 本件処分の適法性について前提事実及び前記⑵オの認定事実によれば、原告は、1月19日午前3時03分頃 以上の認定判断に反する原告の主張は、採用することができない。 ⑶ 本件処分の適法性について前提事実及び前記⑵オの認定事実によれば、原告は、1月19日午前3時03分頃、福岡県筑紫野市(住所省略)付近道路において、身体に呼気1リットルにつき0.25ミリグラム以上のアルコールを保有する状態で自動車(本件車両)を運転したということができるから、原告の酒気帯び運転を理 由とする本件処分は、適法である。 したがって、原告の本件処分の取消請求は、理由がない。 3 争点⑵(本件処分に関する公務員の職務行為に国家賠償法上の違法性があるか否か)について原告は、福岡県公安委員会が本件処分をしたこと及びその後も本件処分を取 り消さなかったことにつき、国家賠償法上の違法性がある旨を主張する。 しかしながら、前記2で説示したとおり、本件処分は適法であるから、福岡県公安委員会が本件処分をしたこと及びその後も本件処分を取り消さなかったことにつき、国家賠償法上の違法性があるとは認められない。 したがって、原告の国家賠償請求は、その余の争点について判断するまでも なく、理由がない。 第4 結論以上によれば、原告の請求は、いずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官林 史高 裁判官溝渕章展 裁判官加納紅実 (別紙2)関連法令の定め等 1 酒気帯び運転について道路交通法(以下「道交法」という。)65条1項は、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と規定し、道交法117条の2の2 (別紙2)関連法令の定め等 1 酒気帯び運転について道路交通法(以下「道交法」という。)65条1項は、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と規定し、道交法117条の2の2第3号及 び道路交通法施行令(以下「施行令」という。)44条の3は、道交法65条1項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において身体に呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを保有する状態にあったものについて罰則を定めている。 このうち、呼気1リットルにつき0.25ミリグラム以上のアルコールを保有 する状態で車両等を運転した場合は、施行令別表第2の備考2の2項に定める「酒気帯び運転(0.25以上)」に該当し、施行令別表第2の1の表(一般違反行為に付する基礎点数)に従い、基礎点数25点が付される。 2 運転免許の取消しについて道交法103条1項及び同項5号は、免許を受けた者が、自動車等の運転に 関し同法若しくは同法に基づく命令の規定又は同法の規定に基づく処分に違反したときは、その者が当該違反行為をした時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消すことができる旨を規定し、当該規定に基づき免許を取り消した場合の欠格期間について、同条7項は、公安委員会は、政令で定める基準に従い、1年以上5年を超えな い範囲内で当該処分を受けた者が免許を受けることができない期間を指定する旨を規定する。その委任を受けた施行令38条5項1号イ、同条6項2号ニ及び別表第3の1の表は、前歴がない者については、累積点数が「25点から34点まで」に該当したときは免許を取り消すものとし、その場合の欠格期間を2年とする旨を規定する。 以上 び別表第3の1の表は、前歴がない者については、累積点数が「25点から34点まで」に該当したときは免許を取り消すものとし、その場合の欠格期間を2年とする旨を規定する。 以上 (別紙3)当事者の主張 1 争点⑴(本件処分の適法性)について【被告の主張】⑴ 1月19日の一連の事実経過を踏まえると、本件運転行為をしていた人物 は、原告以外にあり得ないことは明白である。 ⑵ 本件運転行為をしたことを否定する原告の供述は、原告が本件スナックに向かうまでの経緯、本件スナックから本件車両に向かうまでの経緯、その後の本件停車場所までの本件車両の運転者について、時間の経過とともに内容が不自然に変遷しており、飲酒による記憶違いで変遷したとは到底認められない。原 告の現在の主張は、他の証拠と異なる部分や矛盾が多く、関係者と謀議の上で作り上げた虚偽であることは明らかである。 ⑶ 刑事処分と行政処分は、その性質、目的、主体等を異にする別個独立のものであり、行政庁は刑事処分の結果に拘束されることなく独自の立場と責任において処分理由となる事実を認定して行政処分を行うことができる。また、刑事 判決における事実認定は何ら民事裁判のそれを拘束するものではない。本件刑事控訴審判決は、原告が本件運転行為をしたという事実が、刑事裁判に要求される合理的な疑いを超える程度の確信の域にまでは達しないという限度に過ぎず、何ら積極的に原告が本件運転行為をした事実がないことを認定したものではない。本件刑事控訴審判決が確定したことによって本件処分が違法とされる 理由とはならない。 ⑷ 原告が酒気を帯びて本件運転行為を行ったことは明らかであり、福岡県公安委員会が、原告が過去3年以内における行政処分歴が0回で、累積点数が2 て本件処分が違法とされる 理由とはならない。 ⑷ 原告が酒気を帯びて本件運転行為を行ったことは明らかであり、福岡県公安委員会が、原告が過去3年以内における行政処分歴が0回で、累積点数が25点になったことをもって、道交法103条1項5号の規定に基づき、原告の運転免許を取り消した本件処分は、同条7項の規定に基づき欠格期間を2年と定 めたことも含め、適法である。 【原告の主張】⑴ 本件刑事控訴審判決によって、原告が本件運転行為をした事実がないことは確定している。確定した司法判断で原告が本件運転行為をした事実がないと判断されたにもかかわらず、行政機関がその司法判断に反して、独自の事実認定に基づき本件処分をしたことは、事実の誤認に基づく違法な処分というべきで ある。 ⑵ 本件運転行為に先立ち、原告と思しき男が本件車両の運転席側のドアから乗車した防犯カメラの映像があるが、仮にこの男が原告であるとしても、原告は、運転席に座った後、後部座席で待機していた後輩の存在に思い至り、原告とその後輩が座席の位置を入れ替わって、後輩が本件運転行為を行った可能性があ る。本件停車場所付近で第三者からエンジンキーを受け取ったとするH の供述こそ、本件運転行為をしていた第三者の存在を推認させる証拠であり、これを裏付けるのが、本件停車場所付近では本件車両のエンジンキーが発見されなかった事実である。 ⑶ 原告の供述が正確性を欠いたり、運転していた第三者の氏名を変遷させたり したのは、もともと飲酒の影響で記憶が欠落していた部分を、各供述時点で有する限られた情報に基づいて、推測で供述したからに他ならない。 2 争点⑵(本件処分に関する公務員の職務行為に国家賠償法上の違法性があるか否か)について【原告の主張】 部分を、各供述時点で有する限られた情報に基づいて、推測で供述したからに他ならない。 2 争点⑵(本件処分に関する公務員の職務行為に国家賠償法上の違法性があるか否か)について【原告の主張】 ⑴ 本件処分時の注意義務違反本件処分は、争点⑴で主張したとおり、違法である。 本件処分の理由とされた道交法違反被疑事件の捜査記録によれば、本件運転行為を行った者が本件停車場所付近でH に本件車両のエンジンキーを渡した第三者であるとの事実を推認させるH の供述等の証拠(原告の主張を裏付け る証拠)があった。そうすると、被告の公務員は、本件処分を行う前に、その 事実を予見することが可能であり、また、予見すべき注意義務があったといえる。また、原告は、本件処分に先立つ8月13日頃、福岡県公安委員会に対し意見書等を提出して、上記の第三者が運転していた旨を主張していたのであるから、被告は本件処分が事実誤認に基づくものであることを予見してこれを避けるべき注意義務があったといえる。 ところが、被告の公務員は、H の供述等の証拠を正当に評価しないで、上記の第三者が存在せず、本件運転行為を行ったのは原告であると決め付け、上記の各注意義務を怠って、本件処分を行ったものであるから、国家賠償法上の違法性が認められる。 ⑵ 審査請求に対する裁決時の注意義務違反 原告からの審査請求を受けた被告の公務員は、本件刑事控訴審判決での指摘を踏まえて、本件処分が違法と判断されることを予見した上で、本件処分を維持することを可及的速やかに回避すべき義務があり、遅くとも裁決をするまでには、違法な本件処分を取り消すべき注意義務があったというべきである。しかるところ、被告の公務員はこの注意義務にも違反して、本件処分を維持する に回避すべき義務があり、遅くとも裁決をするまでには、違法な本件処分を取り消すべき注意義務があったというべきである。しかるところ、被告の公務員はこの注意義務にも違反して、本件処分を維持する という違法状態を継続させたものであるから、国家賠償法上の違法性が認められる。 【被告の主張】⑴ 国家賠償法1条1項の該当性の判断基準について公安委員会のする運転免許取消処分は、後に当該処分が結果的に取り消され たとしても、そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、公安委員会が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と処分をしたと認め得るような事情がある場合に限り、違法になるものと解すべきである。 ⑵ 本件処分時における注意義務違反について 福岡県公安委員会は、相当な根拠のある証拠資料に基づき、原告による本件運転行為を認定し、関係法令の定める手続に則って本件処分を行っているのであって、同委員会において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件処分をしたと認め得るような事情は一切認められない。 ⑶ 審査請求に対する裁決時の注意義務違反について 福岡県公安委員会は、原告の審査請求に対し、本件刑事控訴審判決及びその原審判決の判示内容を検討し(その結果、本件刑事控訴審判決は、本件運転行為をした者が第三者であることを推認させる事情として、本件車両内又は本件停車場所付近から本件車両のエンジンキーが発見されなかったことのみを拠り所としたものであり、㋐本件車両のエンジンキーの複数個の存在や㋑原告の母 のバック内から発見されたエンジンキーと本件運転行為時の本件車両のエンジンキーの同一性が検討されなかったものと判断した。)、本 たものであり、㋐本件車両のエンジンキーの複数個の存在や㋑原告の母 のバック内から発見されたエンジンキーと本件運転行為時の本件車両のエンジンキーの同一性が検討されなかったものと判断した。)、本件刑事控訴審判決の判示内容を踏まえてもなお本件処分を維持することが妥当かつ相当と判断し、棄却の裁決をしたのであって、同委員会において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件処分を維持したと認め得るような事情は一切 認められない。 3 争点⑶(原告の損害の有無及び額)について【原告の主張】原告の受けた損害は、以下のとおり合計579万5550円である。 ⑴ 経済的な損害 ア運転免許の再取得に要した費用 12万2550円【内訳】取消処分者講習手数料 3万0550円運転免許試験手数料 7万9400円試験場への交通費(高速代)1万2600円 イ収入の減少(得べかりし利益の喪失) 297万0000円 平成30年~令和3年8月6日の原告が本件処分時の勤務先から得た給与収入の月額平均約29万6000円…①本件処分後、上記勤務先を退職し、免許がなくても稼動可能な別の勤務先で得た令和4年の給与収入の月額平均約13万1000円…②運転免許がないことによるため給与収入の月額平均減収額(①-②) 約1 6万5000円…③運転免許がなく減収状態で稼働した期間 18か月…④減収額総額(③×④) 297万0000円ウ弁護士費用(取消訴訟・執行停止申立分) 110万0000円【内訳】 着手金 10万0000円報酬金 100万0000円エ訴訟費用 6万100 0000円ウ弁護士費用(取消訴訟・執行停止申立分) 110万0000円【内訳】 着手金 10万0000円報酬金 100万0000円エ訴訟費用 6万1000円【内訳】取消訴訟・執行停止申立用印紙・郵券代 2万1000円 本件訴訟用印紙・郵券代 4万0000円⑵ 慰謝料 104万2000円少なくとも1日当たり1000円が相当である。そして、その期間は本件処分日から本訴提起日の前日までの1042日間に及ぶ。 1000円×1042日=104万2000円 ⑶ 弁護士費用(損害賠償請求分) 50万円【被告の主張】否認し又は争う。なお、原告の収入が減少した要因は、原告が自らの都合により本件処分時の勤務先を退職したことに端を発したものにほかならず、本件処分によるものではない。 以上 (別紙4)原告その他の関係者の供述等 ⑴ 1月19日の原告の供述原告は、1月19日、公務執行妨害被疑事件について、警察官から取り調 べを受け、以下の通り供述した(乙19)。 ア本件スナックで後輩7、8人と飲酒し、本件スナックを出るときには、後輩たちに抱えられるような形で本件車両の助手席に乗せられた。 イそれから車内で寝ており、気が付いたら知らない路上で停車しており、本件車両の助手席に原告一人が乗っていた。 ウ運転していた後輩が事故を起こして、原告に怒られるのを恐れて逃げてしまったのだと思う。 ⑵ 1月20日のH の供述H は、1月20日、警察官から電話で事情聴取を受け、以下のとおり供述した(乙20)。 ア 1月19日午前3時40分頃、 てしまったのだと思う。 ⑵ 1月20日のH の供述H は、1月20日、警察官から電話で事情聴取を受け、以下のとおり供述した(乙20)。 ア 1月19日午前3時40分頃、自宅でもう寝ようとしていた時に、原告から電話がかかって、呂律がまわっていない口調で「バイパスのミニストップのところ」に来てほしい旨をいわれた。ミニストップの詳細な場所がわからなかったので、警察官に電話を代わってもらい、大野交番の近くのミニストップと分かったので、タクシーで本件ミニストップに向かった。 イタクシーから降車すると警察官から制止され、原告に近づくことも話をすることもできず、事情聴取を受けた。 ウしばらくすると原告がいなくなったので、近くでタクシーを拾って家に帰った。 ⑶ 1月21日の原告の供述原告は、1月21日、公務執行妨害の被疑事実につき釈放され(乙49)、道交法違反の被疑事実につき警察官から取調べを受け、以下のとおり供述した(乙21)。 ア a 町の居酒屋で飲んで自宅に帰った後、本件スナックを経営している後 輩から、以前、店で揉めた客が来ているので、店に来て欲しいとスマートフォンに連絡が来た。 イ地元の2つか3つ後輩の「K」を自宅に呼んで、本件車両を運転してもらい、本件スナックに行った。 ウ K の下の名前は分からないが、原告のスマートフォンに「K」と登録し ている。 エ本件車両を駐車した場所は覚えていないが、ゲートがなく路面から板が出てくるタイプのコインパーキングに駐車したと思う。 オ本件車両を駐車した後、K はタクシーで帰ったと思う。 カ本件スナックから帰る際、地元の後輩のH(判決注:原告は「G」と呼 んでいるが、便宜上「H」と表記する。以下同じ。 したと思う。 オ本件車両を駐車した後、K はタクシーで帰ったと思う。 カ本件スナックから帰る際、地元の後輩のH(判決注:原告は「G」と呼 んでいるが、便宜上「H」と表記する。以下同じ。)を呼んで帰ることにした。 キ H が本件車両を運転し、原告は助手席に乗り、コインパーキングを出発した。 ク本件車両に乗ってすぐ寝てしまったところ、目が覚めると、運転席にい るはずのH がおらず、エンジンが止まっている状態だった。 ケ H が事故を起こし、エンジンキーはH が持ち出したのだと思う。 ⑷ 1月22日のH の供述H は、1月22日、警察官からの取調べに対し、以下のとおり供述した(乙22)。 ア原告から連絡を受けて、タクシーで本件ミニストップに向かったが、警察官に声をかけられ、原告に近寄らせてもらえず、帰ろうと思い、歩いていると、30歳代の髪が短めの男性に声をかけられ、車のスマートキーを原告の自宅に持って行ってくれないかと頼まれた。 イ原告の自宅にタクシーで向かい、自宅にいた女性に対し、原告が多分飲 酒で捕まったと説明してスマートキーを渡したところ、女性は泣き崩れた。 ⑸ 1月23日の原告の供述原告は、1月23日、春日警察署の警察官に電話をかけ、以下のとおり伝えた(乙23)。 ア釈放後、H と話をしたところ、H は運転していないとのことだった。 イ当時、本件車両を運転していたのが誰かは分からない。 ⑹ 原告の供述についての裏付け捜査の実施春日警察署の警察官は、1月23日、原告が所有するスマートフォンの電話帳を解析し、「K さん」との名称で登録された電話番号の存在を確認したが(乙24)、2月21日、この電話番号に電話したところ、これに 日警察署の警察官は、1月23日、原告が所有するスマートフォンの電話帳を解析し、「K さん」との名称で登録された電話番号の存在を確認したが(乙24)、2月21日、この電話番号に電話したところ、これに応答した人 物から、「自分はK ではない」、「この携帯電話は約3年前から使用している」、「原告は知らない」旨を聴取した(乙25)。 ⑺ 3月2日の原告の逮捕等春日警察署の警察官は、3月2日、原告を道交法違反の被疑事実で逮捕し、同日、原告の母の立会のもと、原告の自宅(福岡県筑紫野市(住所省略))の 捜索を実施し、原告の母のハンドバッグ内から、本件車両のエンジンキー1本を発見し、これを差し押さえた(乙26~28)。 ⑻ 3月2日の原告の供述原告は、3月2日、警察官の取調べに対し、以下のとおり供述した(乙29)。 ア本件スナックを経営している後輩から来てほしいと頼まれて、K という後輩を呼び出し、本件車両を運転してもらって二日市まで行った。 イ E に本件スナックから原告が帰る時の状況を聞いたところ、本件車両の駐車場所まで行く途中にたまたま通りかかった「J」という地元の後輩に会って、E がJ に原告を自宅まで送っていくように頼んだと言っていたので、 本件車両を運転したのはJ だと思う。 ウ J の名字や連絡先など詳しいことは分からない。 ⑼ 3月2日等のE の供述E は、3月2日及び同月8日の警察官の取調べに対し、当時、原告に代わって本件車両を運転する人物はいなかった旨を供述した(乙30、31)。 ⑽ 3月3日のI の供述当時、原告と交際し、福岡市(住所省略)所在の家で半同棲をしていたI(甲23。以下「I」という。)は、3月3日、 かった旨を供述した(乙30、31)。 ⑽ 3月3日のI の供述当時、原告と交際し、福岡市(住所省略)所在の家で半同棲をしていたI(甲23。以下「I」という。)は、3月3日、警察官の取調べに対し、以下のとおり供述した(乙32)。 ア 1月19日、自宅で寝ていると、自宅にやってきたH から、原告が事故 に遭ったと伝えられ、原告が怪我をしたのではないかと思い、その場で泣き崩れた。 イ泣き崩れていたところ、H から、リモコンのような車の鍵を渡され、とりあえず受け取って自宅に置いていた。 ウその後、鍵を誰が持っていたかは知らない。 ⑾ 3月10日の本件スナックの経営者の供述本件スナックの経営者は、3月10日、警察官の取調べに対し、以下のとおり供述した(乙34)。 ア原告は、常連客で、週末に1度は本件スナックに来る。 イ 1月19日午前零時過ぎ、原告から電話で「ママ、今来よるけん」と本 件スナックに向かっている旨の連絡があった。 ウカウンター席に座った原告に対し、ハイボールを作って提供した。 エ 1月19日は、他の客もいて、たまたまその中に原告の知り合いがいたが、その人が別の人ともめだして、ケンカのようになったことを覚えている。 ⑿ 3月11日の原告の母の供述 原告の母は、3月11日、警察官の取調べに対し、以下のとおり供述した(乙35)。 ア本件車両のエンジンキーは購入した時から1個しかなく、スペアキーも作成していない。 イなぜエンジンキーがハンドバッグに入っていたか覚えておらず、説明で きない。 ⒀ 刑事裁判における原告の供述原告は、6月29日、刑事事件の第一審公判において、以下のと 。 イなぜエンジンキーがハンドバッグに入っていたか覚えておらず、説明で きない。 ⒀ 刑事裁判における原告の供述原告は、6月29日、刑事事件の第一審公判において、以下のとおり供述した(乙42)。 ア 1月18日の夕方、本件スナックの経営者から連絡があり、前日に原告 の知人が本件スナックで他の人とけんかをして大変だったという相談を受けた。 イ本件スナックの経営者は、その人達がまた店に来ると他のお客さんに迷惑になるというので、a 町での予定が終わり次第、行けそうだったら本件スナックに行くという話をしたと思う。 ウ a 町の居酒屋から帰って来て、本件スナックの経営者に電話をしたところ、ちょっと問題がありそうだという話をされたので、ちょっと行って話だけでもすると伝えた。 エタクシーに連絡しようと思ったが、タクシーは今ほとんどいないから、どうやって来るかという話になった。推測だが、本件スナックに知人が何 人かいて、その中に飲んでいない人がいたので、その人が原告を迎えに行くという話になったのではないかと思う。 オ自宅の玄関を出て道路のところで待っていたら、顔は見たことがあるけど、ちょっと名前までははっきりとは覚えていないような感じの後輩がやってきた。その後輩に本件車両を運転してもらって、本件スナックに行っ た。その後輩がどうやって自宅まで来たのかはわからない。 カその後の記憶はないが、はっきり記憶がよみがえったのは、本件ミニストップのところに本件車両が停車していたところである。本件車両を運転してきた後輩は、車外にいて、レッカー車などを探さないといけないから電話をかけてきますと言った。その後輩が、本件スナックに行く時に運転 した後輩かと聞かれれば、そうか ろである。本件車両を運転してきた後輩は、車外にいて、レッカー車などを探さないといけないから電話をかけてきますと言った。その後輩が、本件スナックに行く時に運転 した後輩かと聞かれれば、そうかもしれないというぐらいの記憶しかない。 キ本件スナックに行ったのは、飲むためではなく、もめ事の仲裁のためだったので、運転していた後輩から、30分とか1時間もかからないぐらいで帰るようになるなら送りますよと言われたかもしれない。そうなると、その後輩は本件車両の中で寝て待つことになった可能性もあるが、そこは 記憶にないため、わからない。 以上別紙1「当事者目録」は掲載省略

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