主文 1 被告は下関市に対し,479万8074円及びこれに対する平成12年5月11日から支払済みまで年5分の割合による金銭を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを3分し,その1を原告の,その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 申立て被告は下関市に対し,750万4496円及びこれに対する平成12年5月11日から支払済みまで年5分の割合による金銭を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が被告を相手方として,被告が下関市長として株式会社博報堂九州支社(以下「博報堂」という。)との間で下関競艇のテレビ広告を放映する契約を締結したことが違法であり,同契約に基づき,博報堂に対して代金額を支払ったことが違法又は不当な公金の支出に該当するとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,被告が下関市に対して,適正代金との差額である750万4496円の損害賠償金及びこれに対する博報堂に対する最後の支払日の後である平成12年5月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うことを求めた住民訴訟である。 1 基礎事実(末尾に証拠を掲げたもののほかは,当事者間に争いがない。)(1) 原告は,下関市内に住所を有するものであり,被告は,平成7年から現在まで下関市長の職にある。 (2) 下関市は,平成11年度下半期の下関競艇のテレビ広告(以下「11年度下半期テレビ広告」という。)に関して,その放映を委託する発注先を選定するに当たり,任意の複数の業者を選択し,これらの業者に対して契約内容について提案を要求し,最も優れた提案をした者との間で契約を締結する,いわゆるプロポーザル方式を採用 の放映を委託する発注先を選定するに当たり,任意の複数の業者を選択し,これらの業者に対して契約内容について提案を要求し,最も優れた提案をした者との間で契約を締結する,いわゆるプロポーザル方式を採用することとした。そして,下関市は,協和広告株式会社下関支社(以下「協和広告」という。),博報堂及び株式会社電通北九州支社(以下「電通」という。)に対し,11年度下半期テレビ広告の放映に関する契約の基本的な指針が記された仕様書を示して提案を要求したところ,協和広告と博報堂が下関市に対し,当該仕様書に基づく提案書を提出した(電通は辞退)。なお,下関市は,平成11年度下半期より前の下関競艇のテレビ広告について,37年間,随意契約の方法により協和広告に対してテレビ広告の放映を委託する契約を締結していた。 (3) 被告は,協和広告と博報堂が提出した提案書に基づき発注先として博報堂を選定すべきことを決定した。 (4) 下関市は博報堂との間で,平成11年10月1日付けをもって,テレビ広告の総放映本数を744本,放映期間を同日から平成12年3月31日まで,総代金額を3499万9996円(消費税相当額を含む。)として,11年度下半期テレビ広告の放映を委託する契約を締結した(以下「本件契約」という。)。 (5) その後,下関市は博報堂との間で,平成11年11月1日以降,本件契約に基づき放映する広告の本数を34本増加する旨の変更契約を締結した(以下「変更契約1」という。)。 (6) 原告は下関市監査委員に対し,平成11年12月1日付けで,被告が本件契約を破棄するか,適正な料金に是正するための変更契約を締結するか,或いは被告を含む下関市の職員らが損害を填補するなどの適切な措置を講じることを求めて,監査請求をした。 下関市監査 契約を破棄するか,適正な料金に是正するための変更契約を締結するか,或いは被告を含む下関市の職員らが損害を填補するなどの適切な措置を講じることを求めて,監査請求をした。 下関市監査委員は被告に対し,平成12年1月28日付けで,本件契約に関する業者の選定は妥当とは認め難いから,同年2月末日までに是正措置を講じるよう勧告した。 (7) 被告は,この勧告に応じ,平成12年2月1日付けをもって,博報堂との間で,本件契約及び変更契約1のうち,広告の放映本数を更に増加する旨の変更契約を下関市に締結させた(以下「変更契約2」という。)。 (8) 下関市は博報堂に対し,本件契約に基づく代金として,次のとおり合計3499万9996円を支払った。なお,年月日は,支払命令がされた日である。 ① 平成11年12月17日同年10月分として,583万3332円② 平成11年12月21日同年11月分として,583万3332円③ 平成12年1月25日平成11年12月分として,583万3332円④ 平成12年3月8日同年1月分として,583万3332円⑤ 平成12年3月24日同年2月分として,583万3332円⑥ 平成12年5月1日同年3月分として,583万3336円(9) しかし,原告は,監査請求の結果及び被告が採った是正措置に不服があるとして,平成12年2月23日,本件訴えを提起した(弁論の全趣旨)。 2 争点(1) 被告が,11年度下半期テレビ広告に関して,その放映を委託する発注先を 告が採った是正措置に不服があるとして,平成12年2月23日,本件訴えを提起した(弁論の全趣旨)。 2 争点(1) 被告が,11年度下半期テレビ広告に関して,その放映を委託する発注先を選定するに当たり,プロポーザル方式を選択したことは適法であると認められるか。 (2) 被告が(1)の発注先として博報堂を選定したことは,裁量権を逸脱した違法なものであると認められるか。 (3) (2)が肯定される場合,事後に本件契約が変更されたことにより,違法性が解消されるか。 (4) 被告の違法行為により下関市が被った損害額 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)について(被告)プロポーザル方式は,地方自治法上の随意契約の一種であり,高度な技術を要する業務に適合するものとして採用されているが,11年度下半期テレビ広告の発注先を選定するに当たり,マンネリ化を避けることなどを考慮して,プロポーザル方式を採用しても,何ら不合理ではない。 (原告)ア通常,プロポーザル方式は,専門的知識を必要とされる設計や構想に用いるのであり,11年度下半期テレビ広告のような,単なるテレビ放映の時間帯取りに適合する方法であるとはいえない。 イ被告が博報堂に発注したいのであれば,プロポーザル方式を選択せず,初めから随意契約の方法によればよいことであり,マンネリ化を防止するためというのであれば,協和広告を対象業者から外せばよいことである。また,下関競艇に関するテレビ広告については,外にも西部毎日広告社との間で随意契約により契約しているが,これがマンネリ化などの観点から問題になったことはない。 (2) 争点(2)について(原告)ア については,外にも西部毎日広告社との間で随意契約により契約しているが,これがマンネリ化などの観点から問題になったことはない。 (2) 争点(2)について(原告)ア被告は,その事務を処理するに当たり,最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならないにもかかわらず,11年度下半期テレビ広告の発注先として,放映時間帯の点で条件が悪く,下関市が示した仕様書に明記された採択基準を満たしていない提案をした博報堂を発注先として選定し,下関市をして,博報堂との間で,適正価格を著しく超える価格で本件契約を締結させた。 イ被告は,競争原理には政策的判断はなじまないにもかかわらず,事前に政策的判断については触れることなく,また,事後にも政策的判断の具体的な説明や理由をなさずに,博報堂と本件契約を締結した。本件契約中には,平成12年度上半期の下関競艇のテレビ広告の放映について随意契約の方法により発注するとの条項が含まれていたが,下関市は,その後これを破棄して協和広告との間で契約を締結したのであり,このことからしても,被告の政策的判断は誤りであったというべきである。 ウ被告は,下関競艇事業局内での検討の結果,博報堂の提案書より協和広告の提案書が優れており,これを採用すべきであると判断されていたにもかかわらず,これを無視して博報堂を発注先として選定した。 エ下関市は,博報堂が提出した見積書の金額に合わせて本件契約を締結し,博報堂は,本件契約が締結される前の平成11年10月1日午前6時には,既に,本件契約の対象となる下関競艇に関するテレビ広告を放映し始めた。これらの事情は,被告と博報堂との間で,11年度下半期テレビ広告に係る発注先に関して,事前に博報堂を選定する旨の談合があったことの証 に,本件契約の対象となる下関競艇に関するテレビ広告を放映し始めた。これらの事情は,被告と博報堂との間で,11年度下半期テレビ広告に係る発注先に関して,事前に博報堂を選定する旨の談合があったことの証左である。 オプロポーザル方式を採るのであれば,選定委員会を設置するのが通常であるにもかかわらず,被告は,これを設置せずに博報堂を発注先として選定した。 (被告)ア最小の経費で最大の効果を得るためには,単に放映本数と単価の多寡のみで決定すべきものではなく,特に,プロポーザル方式や随意契約においては,放映本数と単価以外の要因を踏まえ,被告に委ねられた裁量権を合理的に駆使して契約の相手方及び内容を決定すれば足りる。また,被告が11年度下半期テレビ広告の発注先の選定をすることに関して競艇事業局の意見に拘束される理由はない。 イプロポーザル方式を採用した場合に発注者が示す仕様書は,一応の基準や希望を示すものにすぎず,拘束力はない。したがって,博報堂の提出した提案書がその内容を充たしていないからといって資格を失うわけではなく,仕様書に示された基準やこれに対する提案書の内容が変更されることも十分あり得ることである。 ウ業者選定に当たっては,①放映本数,②広告金額,③視聴率,④放映時間帯,⑤放映エリアの5要因が重要である。本件では,①については協和広告が勝っているものの,②については大差なく,④,⑤については博報堂が勝っていた。 特に,下関競艇場の入場者は,山口県内からよりも九州からの客が多いこと,競艇ファンの中心層が35歳以上の男性であることを前提とすれば,博報堂の提案は,この層の視聴率が高いテレビ局,時間帯に多くの広告本数を確保するものであった。 エ協和広告は,37年間にわたっ ファンの中心層が35歳以上の男性であることを前提とすれば,博報堂の提案は,この層の視聴率が高いテレビ局,時間帯に多くの広告本数を確保するものであった。 エ協和広告は,37年間にわたって1年単位の随意契約を更新し続けていたが,下関市としては,マンネリ化を防止する必要があった。また,博報堂は,我が国でも屈指の大手業者であり,下関市が11年度下半期テレビ広告を同社に発注することになれば,双方にとって知名度が上昇するし,今後の展開次第では,博報堂に対する無理がいえるようになるなどの利益があった。更に,下関競艇場の顧客数は年々減少していたため,そのリニューアルに合わせてイメージを変える必要があった。 (3) 争点(3)について(被告)被告は,TNCテレビ西日本の放映時間帯を確保するように博報堂と交渉した結果,変更契約1を締結し,平成11年11月から34本の放映本数を増加させた。また,被告は,是正措置を求められた監査結果を受けて,博報堂との間で放映本数の一層の拡大を図った結果,変更契約2を締結し,平成12年2月16日の時点で,協和広告の当初の提案を超える1022本の放映本数を獲得した。 したがって,仮に本件契約の相手方として博報堂を選択したことが違法であるとしても,その後の事情を踏まえて全体としてみれば,本件契約の違法性は解消されているというべきである。 (原告)ア本件契約の締結が違法であり,これに基づく支出が平成11年12月17日になされている以上,違法性が解消されることはない。 イ変更契約2の内容と協和広告の提案とを比較しても,前者は,料金の高い時間帯における放映本数が少ないため,通常料金を算出すると,依然として後者に劣る内容に止まる。 されることはない。 イ変更契約2の内容と協和広告の提案とを比較しても,前者は,料金の高い時間帯における放映本数が少ないため,通常料金を算出すると,依然として後者に劣る内容に止まる。 (4) 争点(4)について(原告)15秒のテレビスポット広告の放送に係る通常料金は,広告が放映される時間帯によって1本当たりの料金が異なる。そして,各テレビ局の時間帯ごとの基準価格と,各時間帯における放映本数とを積算すると,協和広告の提案に基づく合計通常金額は1億3312万円,発注金額は3333万円(消費税相当額を除く。)となり,発注金額は,合計通常金額の25.03756パーセントとなる。 他方,博報堂の提案に基づく合計通常金額は1億0459万円であり,これに協和広告と同様の割合を乗じて適正な契約金額を算出すると,2618万6200円(消費税相当額を除く。)となる。そうすると,本件契約の代金額である3499万9996円から2618万6200円に消費税相当額を合算した額を差し引いた750万4496円が,被告の違法行為により下関市が被った損害額である。 (被告)ア被告は,前記のとおり,諸要素を考慮して11年度下半期テレビ広告の発注先として博報堂を選定したのであるから,被告の違法行為による下関市の損害は発生していない。 イ仮に,本件契約を締結したことにより原告が主張するような損害が発生したとしても,被告は,総放映本数につき,前記のとおり是正措置を講じたから,下関市に損害は発生していない。 第3 当裁判所の判断 1 事実関係証拠(甲1,3の1・2,4ないし8,10ないし15,乙3,4,5,乙6の1ないし6,7,10,証人A)及び弁論の全趣旨によれば,本件契約,変 い。 第3 当裁判所の判断 1 事実関係証拠(甲1,3の1・2,4ないし8,10ないし15,乙3,4,5,乙6の1ないし6,7,10,証人A)及び弁論の全趣旨によれば,本件契約,変更契約1及び同2に関する事実関係として,次の事実が認められる。 (1) 下関市は,11年度下半期テレビ広告について,プロポーザル方式により発注先を選定することを決定し,その前提として,平成11年8月13日付けで,博報堂,協和広告,電通に対し,仕様書を添付して同年9月9日に実施するプレゼンテーションへの参加を呼びかけた。 同仕様書中では,見積額,本数,放送時間帯(タイムランク)をもとに11年度下半期テレビ広告の放映を発注する業者を決定することとされており,平成11年度上半期の下関競艇のテレビ広告の放映に関する業務委託契約を基準として,同等以上のものを求めていた。この仕様書のより詳細な内容は,次のとおりである。 ① 放送期間平成11年10月1日から平成12年3月31日までの期間のうちの104日(競艇開催20節分)② 契約金額3500万円を上限とする。 ③ 放映対象下関競艇場が別途提供する同競艇場の広告フィルム④ 放送機関RKB毎日放送,KBC九州朝日放送,TNCテレビ西日本,KRY山口放送,YAB山口朝日放送⑤ 放送枠RKB毎日放送毎日2回KBC九州朝日放送毎節2回(前検日,優勝戦前日)TNCテレビ西日本前検日から優勝戦前日まで毎日KRY山口放送毎節3回(前検日,優勝戦前日,当日 TNCテレビ西日本前検日から優勝戦前日まで毎日KRY山口放送毎節3回(前検日,優勝戦前日,当日),毎週金曜日を除く毎日,毎週金曜日はタイム広告YAB山口朝日放送毎節4回(前検日,開催日,優勝戦前日,当日),毎週木曜日にタイム広告(2) 博報堂と協和広告は下関市に対し,平成11年9月9日ころ,提案書を提出し,プレゼンテーションには同2社が応じたが,電通は参加を辞退した。博報堂及び協和広告の提案書の内容は次のとおりであり,博報堂の提案書には,資料として,35歳以上の男性について,テレビ局ごとに,曜日・時間帯別の視聴率表(乙3)が添付されていたが,これらの点についての具体的かつ詳細な分析の説明の記載はなかった。 (博報堂)① 合計本数 744本② 代金総額 3333万3333円(消費税相当額を除く。)③ 基本方針競艇のイメージアップではなく,集客力アップを目的として,時間取り,テレビ局のエリア配分・局配分を検討すべきである,具体的な方策として,福岡からの集客を重視し,集客が見込まれる35歳以上の男性の視聴率が高いテレビ局,時間帯にテレビ広告を放映する,といった考え方に基づく。 (協和広告)① 合計本数 1015本(うち,107本は,当初の提案後に追加されたものである。)② 代金総額 3333万0000円(消費税相当額を除く。)(3) 博報堂及び協和広告の提案の内容,その放映本数,通常料金による放映金額は次のとおりである。なお,博報堂の提案のうち,放映時間帯のクラス分けに 333万0000円(消費税相当額を除く。)(3) 博報堂及び協和広告の提案の内容,その放映本数,通常料金による放映金額は次のとおりである。なお,博報堂の提案のうち,放映時間帯のクラス分けについては提案書中に明示されていないが,テレビ局及び放映時間帯から推測されるクラス分けである。 ア各テレビ局及び放映時間帯における15秒スポット広告の通常料金(ア) RKB毎日放送,KBC九州朝日放送,TNCテレビ西日本① Aクラス48万円② SBクラス26万円③ Bクラス14万円④ Cクラス8万円(イ) KRY山口放送,YAB山口朝日放送① Aクラス20万円② SBクラス12万円③ Bクラス8万円④ Cクラス5万円イ博報堂の提案に基づく各テレビ局,放映時間帯及び放映本数(ア) RKB毎日放送,KBC九州朝日放送(TNCテレビ西日本については,提案に含まれていない。)① Aクラス0本② SBクラス124本③ Bクラス208本④ Cクラス40本(イ) KRY山口放送,YAB山口朝日放送① Aクラス0本② SBクラス188本③ Bクラス184本③ Cクラス0本ウ協和広告の提案に基づく各テレビ局,放映時間帯及び放映本数(ア) RKB毎日放送,KBC九 ③ Bクラス184本③ Cクラス0本ウ協和広告の提案に基づく各テレビ局,放映時間帯及び放映本数(ア) RKB毎日放送,KBC九州朝日放送,TNCテレビ西日本① Aクラス0本② SBクラス166本③ Bクラス187本(うち,26本は10秒スポット広告)④ Cクラス157本(全て10秒スポット広告)(イ) KRY山口放送,YAB山口朝日放送① Aクラス72本② SBクラス245本③ Bクラス114本④ Cクラス74本エ前記の博報堂の提案に基づいて,各テレビ局及び放映時間帯ごとの通常料金を積算すると,合計金額は,1億0216万円となる。また,協和広告の提案についても同様の積算をすると,合計金額は,1億3312万円となる(なお,10秒スポット広告の料金については,証拠上明らかではないが,15秒スポット広告の3分の2の料金であると推認できるから,この金額に基づき計算する。)。 (4) 下関市競艇事業局は,博報堂及び協和広告の各提案を検討した結果,見積金額,放映本数,時間帯ごとの積算金額,緊急時の対応への配慮,下関市が示した仕様書の遵守などの点で博報堂より協和広告が優れていると判断して,11年度下半期テレビ広告の放映に関する契約の発注先としては協和広告を選択すべきであるとする決裁文書を平成11年9月17日付けで起案した。しかし,この決裁文書については,下関市の2名の助役のうちの1名であるA助役と被告が反対意見を表明し,博報堂を発注先として選択する方向で再度 あるとする決裁文書を平成11年9月17日付けで起案した。しかし,この決裁文書については,下関市の2名の助役のうちの1名であるA助役と被告が反対意見を表明し,博報堂を発注先として選択する方向で再度検討するよう指示した。 (5) 被告は,平成11年9月28日,11年度下半期テレビ広告の放映を委託する契約の発注先について,下関競艇場のリニューアルオープンに合わせて新たな方向性を採るとの政策的判断を理由として,博報堂を選定する旨の決裁をした。 (6) 下関市は,平成11年10月1日午前10時から,博報堂との間で見積り合わせを実施し,博報堂を業者として選定した。もっとも,本件契約に基づくテレビ広告の放映は,同日午前6時から開始されている。 (7) 下関市は,平成11年10月1日付けをもって,博報堂との間で11年度下半期テレビ広告の放映を委託する契約を締結した(本件契約)。本件契約に基づく各テレビ局,放映時間帯及び放映本数は下記のとおりである,博報堂の提案では総放映本数が744本であったのに対し,本件契約では778本となっているのは,その後,下関市と博報堂との間で,平成11年11月から,総放映本数を増加させる内容の契約(変更契約1)を締結したことによるものである。 これを,(3)アで認定した通常料金に基づいて積算すると,その合計金額は,7932万円となる。 記(ア) RKB毎日放送,KBC九州朝日放送,TNCテレビ西日本① Aクラス20本② SBクラス20本③ Bクラス134本④ Cクラス232本 ① Aクラス20本② SBクラス20本③ Bクラス134本④ Cクラス232本(イ) KRY山口放送,YAB山口朝日放送① Aクラス20本② SBクラス50本③ Bクラス70本④ Cクラス232本(8) 被告は,博報堂との間で変更契約2を締結することにより,総放映本数を1022本に増加させたが,変更契約2に基づく各テレビ局,放映時間帯及び放映本数は下記のとおりであり,これらを(3)アで認定した通常料金に基づいて積算すると,その合計金額は,1億0459万円となる。 記(ア) RKB毎日放送,KBC九州朝日放送,TNCテレビ西日本① Aクラス19本② SBクラス23本③ Bクラス129本④ Cクラス212本(イ) KRY山口放送,YAB山口朝日放送① Aクラス46本② SBクラス75本③ Bクラス61本④ Cクラス457本 2 争点に対する判断(1) 争点(1)(11年度下半期テレビ広告に関して,被告がその放映を委託する発注先を選定するに当たり,プロポーザル方式を選択したことは適法であると認められるか。)について (1) 争点(1)(11年度下半期テレビ広告に関して,被告がその放映を委託する発注先を選定するに当たり,プロポーザル方式を選択したことは適法であると認められるか。)について本件契約を締結するに当たり,被告がその相手方を選定するための方式として採用したプロポーザル契約は,任意の業者を数社選択し,その中から1名を選択し,その相手方と契約を締結する方式であるから,随意契約の一種であるということができる。そして,地方公共団体が契約を締結するに当たっては,一般競争入札の方法によることが原則とされ,政令で定められた場合にのみ随意契約の方法により契約を締結することが認められることとされている(地方自治法234条1項,2項)。 ところで,被告の主張するところは,11年度下半期テレビ広告の放映に関する契約について,その性質又は目的が競争入札に適しない(地方自治法施行令167条の2第1項2号)との主張を前提とするものであると解されないでもないが,前記基礎事実及び認定事実によれば,本件では,11年度下半期テレビ広告の放映に関し,原則である一般競争入札の方式によることが不可能又は著しく困難であったと認めるべき事情は存在しない。しかし,他方で被告の要求する業者選定の水準や内容は甚だ概括的なものであって,一義的に明確であるとはいうことができず,テレビ局の選択や放映時間帯に関するより詳細で具体的な内容については,発注先の業者の方針,技量,信用,経験などに委ねられる部分が少なくないことは否定できない。また,下関市は,本件契約以前にも37年間にわたり下関競艇に関するテレビ広告の放映を外部の業者に発注しており,本件契約締結当時,翌年度以降も外部の業者に発注することを考えていたというべきであるから,そうだとすれば,翌年度以降の契約に 年間にわたり下関競艇に関するテレビ広告の放映を外部の業者に発注しており,本件契約締結当時,翌年度以降も外部の業者に発注することを考えていたというべきであるから,そうだとすれば,翌年度以降の契約に関し,外部業者との関係をより良好なものにするため,これに適した業者選定の方式を採る必要があったということができる。そして,これらの事情に加え,本件で下関市が採った方式が,従前テレビ広告を発注していた協和広告,我が国でも屈指の広告代理店である博報堂及び電通の3者を対象として,提案内容の善し悪しによって発注先を決定することとし,この意味において,全く任意の業者を選定して契約を締結する純粋な随意契約とは異なることとなるのであるから,被告が本件契約につきプロポーザル方式により発注先の業者を決定し,その業者との間で随意契約を締結する方式を採ったこと自体は,適法になされたものであると認めることができる。 (2) 争点(2)(被告が争点(1)の発注先として博報堂を選定したことは,裁量権を逸脱した違法なものであると認められるか。)について前記認定事実によれば,本件契約締結の時点において,テレビ広告の総放映本数や広告代金額について,協和広告の提案が博報堂の提案よりも優れていることは明らかである。 被告は,放映時間帯や放映エリアについて,博報堂の提案が協和広告の提案よりも優れていると主張する。そして,博報堂の提案(乙3)の中には,山口県及び福岡県における35歳以上の男性について,各テレビ局における時間帯ごとの視聴率を示した表が添付されており,博報堂が,テレビ広告の対象として,下関競艇の入場者が多い九州に居住する当該年齢層の男性に重点を置いた旨の記載がある上,これらの重点項目に副って放映時間帯,放映本数を配分しているように見え れており,博報堂が,テレビ広告の対象として,下関競艇の入場者が多い九州に居住する当該年齢層の男性に重点を置いた旨の記載がある上,これらの重点項目に副って放映時間帯,放映本数を配分しているように見えなくもない。しかし,提案時を基準としてみると,博報堂の提案でも協和広告の提案によっても,九州に拠点を置くテレビ局における放映本数と山口に拠点を置くテレビ局における放映本数との比率はほぼ同等である上,全体の総放映本数が多いこととの兼ね合いから,九州に拠点を置くテレビ局における総放映本数については,協和広告の提案の方が博報堂の提案を上回るのである。また,放送時間帯についても,協和広告の提案は,博報堂の提案ほど当該年齢層の男性を意識した提案ではないにせよ,博報堂の提案書に添付されている視聴率表と対比すると,当該年齢層の男性の視聴率が高い時間帯における放送枠は確保されており,協和広告の提案における総放映本数が博報堂のそれをはるかに上回ることも合わせて考えると,この点でも博報堂の提案の方が優れていると断定することもできない。更に,下関競艇場における当該年齢層の男性の顧客の割合がどの程度あるのかは証拠上明らかではないし,他の年齢層や性別の顧客に対する放映効果,博報堂の提案書に添付されている視聴率表に関し,博報堂が提案する放送枠と協和広告が提案する放送枠との間で生じる視聴率の差を具体的に検討した形跡もない。 また,被告は,下関競艇場のリニューアルに合わせてイメージを変える必要があった旨主張するが,下関競艇場のリニューアルに合わせてイメージを変えるために,特に博報堂の提案の方が優れているとすべき事情は認められない。 そうすると,本件では,博報堂の提案には,博報堂が日本でも屈指の大手業者であることなど諸般の事情を考慮しても,テレビ めに,特に博報堂の提案の方が優れているとすべき事情は認められない。 そうすると,本件では,博報堂の提案には,博報堂が日本でも屈指の大手業者であることなど諸般の事情を考慮しても,テレビ広告の総放映本数や広告代金額の点における協和広告の優位は明らかで,これを覆すような事情はなく,被告が11年度テレビ広告に係る契約の発注先として明らかに有利な内容を提示している協和広告を十分な根拠もないのに排斥し,これより明らかに不利な条件を提示している博報堂を十分な根拠なしに選択して本件契約を締結したことは,市長としての裁量権を著しく逸脱したものと認められる。 (3) 争点(3)((2)が肯定される場合,事後に本件契約が変更されたことにより,違法性が解消されるか。)について被告は,本件契約の後,変更契約1及び変更契約2を締結し,これらの契約の履行としてテレビ広告が放映されたことにより,本件契約の契約期間内に放映された広告の総本数は,協和広告の提案を上回り,これによって,本件契約を締結した際の違法性は解消されたと主張する。 しかし,本件契約は,契約の個数としては1個であるが,本件契約に基づく代金支払債務に関する条項を見ると,1か月分の放映ごとにこれに対応する代金を支払うこととなっており,その意味で,各月ごとのテレビ広告の放映本数と下関市が博報堂に対して支払った金額が対応しているものである。確かに,下関市は博報堂との間で当初締結された本件契約の内容のうち,放映本数に関する部分を当初に遡って増加させるかの如き外形を有する変更契約1及び変更契約2を締結しているが,変更契約1はしばらく措くとしても,総放映本数が大幅に増加した変更契約2が締結された時期は平成12年2月1日であって,その時点で平成11年10月から12 る変更契約1及び変更契約2を締結しているが,変更契約1はしばらく措くとしても,総放映本数が大幅に増加した変更契約2が締結された時期は平成12年2月1日であって,その時点で平成11年10月から12月までの3か月間の放映分については,本件契約及び変更契約1に基づく代金の支払が既になされている。また,平成12年1月の支払分についても,博報堂によって,変更契約1に基づく放映がなされてはいるものの,それが協和広告の提案を上回る内容であったとは認めることができず,同月分について,特に代金額が減額されるといった事情もないまま,変更契約1に基づく支払いがされているのである。そうすると,下関市が変更契約2を締結したことにより,全体としてみれば総放映本数は協和広告の提案を上回るものになったとしても,平成11年10月から平成12年1月までの間を各月ごとにみれば,その当時存在した本件契約又は変更契約1に基づく放映がされ,これらの契約に基づく代金が支払われたのであるから,これらの月分については,依然として違法な状態が継続していたというべきである。 もっとも,平成12年2月及び3月には,博報堂によって変更契約2に基づく契約の履行がされ,その結果,本件契約や変更契約1,更には協和広告の提案よりもはるかに多い本数の広告が放映されたことになるが,前記のとおり1個の契約である本件契約及び変更契約1に基づく違法な代金の支払がされているのであるから,これらの契約が全体として違法性を帯びることに変わりはなく,この点をもって,本件契約及び変更契約1の違法性が解消されたと解すべきではない。 (4) 争点(4)(被告の違法行為により下関市が被った損害額)についてそこで,被告の違法行為によって下関市が被った損害額について判断する。 解すべきではない。 (4) 争点(4)(被告の違法行為により下関市が被った損害額)についてそこで,被告の違法行為によって下関市が被った損害額について判断する。 アまず,本件契約及び変更契約1の内容について,協和広告の提案内容と比較する。平成11年10月分は,本件契約に基づいて下関市及び博報堂の債務の履行がなされたことが認められるから,本件契約のうち,同月分の放映部分に関する合計金額(1億0216万円を6で除した金額である1702万6666円)を協和広告の提案による同月分の合計金額(1億3312万円を6で除した金額である2218万6666円)と比較対照すると,本件契約による合計金額は,協和広告の提案による合計金額の76.75パーセント(小数点第3位以下切り上げ)となる。 また,平成11年11月分から平成12年1月分は,変更契約1に基づいて下関市及び博報堂の債務の履行がなされたことが認められるから,本件契約のうち,これらの月分の放映部分に関する1か月当たりの代金額(7932万円を6で除した金額である1322万円)を協和広告の提案による代金額(2218万6666円)と比較対照すると,変更契約1による合計金額は,協和広告の提案による合計金額の59.59パーセント(小数点第3位以下切り上げ)となる。 イそして,単に代金額のみを比較対照し,協和広告の提案による金額を適正な金額であるとすれば,本件契約に基づき博報堂に対し支払われるべき毎月分の支払適正額は,426万3463円となり,同じく,変更契約1に基づき支払われるべき毎月分の支払適正額は,331万0225円となる。 (計算式)3333万円×0.7675÷6=426万3463円(小数点以下切 変更契約1に基づき支払われるべき毎月分の支払適正額は,331万0225円となる。 (計算式)3333万円×0.7675÷6=426万3463円(小数点以下切り上げ)3333万円×0.5959÷6=331万0225円(小数点以下切り上げ)仮に,これらの金額に基づいて計算するとすれば,下関市は,平成11年10月放映分については156万9869円の損害を,平成11年11月分から平成12年1月放映分については,756万9321円の損害を被ったことになり,その合計金額は,913万9190円となる。 (計算式)583万3332円-426万3463円=156万9869円(583万3332円-331万0225円)×3=756万9321円ウしかし,他方で,被告が博報堂と本件契約を締結したことは,裁量権を逸脱するものではあるが,反面,被告がその根拠として示すように,博報堂の提案には35歳以上の男性をターゲットとしている旨記載されており,これらのターゲットに対する効果を完全に否定し切ることはできないこと,博報堂が我が国でも屈指の大手業者であり,平成12年度上半期以降のテレビ広告に係る契約を締結するに当たっても,他の業者と比較して有利な条件で契約を締結し,又は下関市の意向をより柔軟に反映させ得る可能性がないとはいえないことなど,その程度を正確に把握することは困難であるが,11年度下半期テレビ広告の放映を委託する発注先として博報堂を選定したことにより,下関市にとって有利に作用する点が複数存在することも否定できない。また,本件契約や変更契約1に関する適正価格を算出するに当たり,協和広告の提案を唯一の基準とするこ として博報堂を選定したことにより,下関市にとって有利に作用する点が複数存在することも否定できない。また,本件契約や変更契約1に関する適正価格を算出するに当たり,協和広告の提案を唯一の基準とすることにも全く疑問がないわけではない。そうすると,イで算出した金額の合計額をそのまま損害額とすべきではなく,これらの各点及び本件で現われた一切の事情を最大限に考慮し,下関市が被った損害額を控えめに算定すると,少なくともイで算出した金額の5割を下回ることはないと認めるのが相当である。 エなお,被告は,変更契約2を締結し,同契約による総放映本数(1022本)は協和広告の提案による総放映本数(1015本)を上回っており,平成12年2月以降,変更契約2により本件契約や変更契約1に基づく本数を上回る本数が放映されていることが認められる。そして,この点に関し,本件契約や変更契約1に基づく本数を上回る部分については,同年1月までに発生した損害が填補されるとの主張を被告がしていると考えられる余地がないではない。しかし,そうだとしても,平成12年1月放映分までについては,当該月中に協和広告の提案を下回る本数しか放送されなかったのであり,当該月が終了し,当該月中の放映本数に対応する対価が支払われたことにより,損害が確定的に生じていると考えるべきであるから,その後になされた変更契約2の内容いかんによって,いったん発生した損害が填補されたものということはできず,また,これらの事情により,既に発生した損害額に影響するものでもない。 オしたがって,前記の913万9190円の5割である456万9595円に消費税相当額を加算した479万8074円が被告の違法行為によって下関市が被った損害額と認められる。 (計算式) 13万9190円の5割である456万9595円に消費税相当額を加算した479万8074円が被告の違法行為によって下関市が被った損害額と認められる。 (計算式)913万9190円×0.5×(1+0.05)=479万8074円(小数点以下切り捨て)第4 結論以上によれば,原告の本訴請求は,被告が下関市に対し479万8074円の損害賠償金及び博報堂に対する最後の支払日の後である平成12年5月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるから認容し,その余の部分は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。なお,仮執行宣言については,相当ではないのでこれを付さないものとする。 (口頭弁論終結の日平成13年10月2日)山口地方裁判所第一部 裁判長裁判官山下満裁判官杉山順一裁判官安部勝
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