平成18(行ウ)703 公文書不開示決定処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年12月26日 東京地方裁判所 情報公開
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判決文本文24,862 文字)

主文 原告らが外務大臣に対して平成18年4月25日にした行政文書開示請求に係る別紙「請求文書目録」記載の各行政文書のうち,別紙「一部不開示文書目録」及び別紙「追加決定文書目録」を除く部分について,外務大臣が行政機関の保有する情報の公開に関する法律9条各項の決定をしないことが違法であることを確認する。 本件訴えのうち,別紙「追加決定文書目録」記載の各行政文書に係る不作為の違法確認に係る部分及び同各行政文書の開示の義務付けに係る部分をいずれも却下する。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 原告らが外務大臣に対して平成18年4月25日にした行政文書開示請求に係る別紙「請求文書目録」記載の各行政文書のうち,別紙「一部不開示文書目録」を除く部分について,外務大臣が行政機関の保有する情報の公開に関する法律9条各項の決定をしないことが違法であることを確認する。 外務大臣は,原告らに対し,前項の各行政文書を開示せよ。 被告は,原告らに対し,各1万円を支払え。 第2事案の概要本件は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」 という。)に基づき,外務大臣に対して行政文書の開示請求をした原告らが,外務大臣が開示請求に係る行政文書のうちの一部について情報公開法9条各項の決定(以下「開示決定等」という。)をしただけで,本件口頭弁論終結時までにその余の部分につき開示決定等をしないことが違法であり,同部分については開示決定がされるべきであること,外務大臣がした部分開示決定は違法であり,原告らはこれにより精神的苦痛を被ったことなどを主張して,被告に対し,開示決定等がされない不作為の違法確認及び 部分については開示決定がされるべきであること,外務大臣がした部分開示決定は違法であり,原告らはこれにより精神的苦痛を被ったことなどを主張して,被告に対し,開示決定等がされない不作為の違法確認及び開示の義務付けを求めるとともに,国家賠償法に基づき損害の賠償を求める事案である。 前提事実本件の前提となる事実は,次のとおりである。いずれも当事者間に争いがない事実,当事者が争うことを明らかにしないため自白したものとみなされる事実又は証拠等により容易に認めることのできる事実であるが,括弧内に認定根拠を付記している。 (1)開示請求原告らは,平成18年4月25日,外務大臣に対し,情報公開法3条及び4条1項に基づき,別紙「請求文書目録」記載の「日韓国交正常化交渉(日韓会談)各時期の本会議及び委員会の会議録・関連資料,日本政府が作成した公文書」について,開示請求をした(以下「本件開示請求」という。)。 (甲1)ところで,上記「日韓国交正常化交渉(日韓会談)」とは,昭和26年から同40年にかけて日本と大韓民国(以下「韓国」という。)の間で7次にわたって行われた両国の国交正常化のための交渉である。この交渉の結果, 同年6月22日,日本と韓国の間で,「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約」(いわゆる日韓基本条約)が締結されるとともに,「日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定」,「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」,「日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定」及び「文化財及び文化協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」等が調印されたものである。 なお,韓国政府の作成及び保管に係る上記の関連文書(約3万6000頁)については,同政府において,平 の協定」及び「文化財及び文化協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」等が調印されたものである。 なお,韓国政府の作成及び保管に係る上記の関連文書(約3万6000頁)については,同政府において,平成17年8月に全面開示されている。 (2)対象文書の特定外務大臣は,本件開示請求に対し,対象文書を特定した(以下,その特定に係る文書を「本件対象文書」という。)ところ,本件対象文書の分量は,行政文書ファイルにして約183冊となった。 (3)延長通知外務大臣は,平成18年5月25日,本件開示請求について,情報公開法11条に基づき,開示決定等の期限の特例を適用することとし,同日付けで,原告らに対し,「新たな開示決定等の期限」として「平成18年06月24日までに可能な部分について開示決定等を行い,残りの部分については,平成20年05月26日までに開示決定等を行う予定です。」と,また,「上記条項を適用する理由」として「対象となる行政文書が著しく大量でありかつ,担当課において他に処理すべき開示請求案件が著しく多くまた,他の事務が著しく繁忙であり,開示請求日から60日以内にそのすべてについて開 示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがあるため。」とそれぞれ記載した書面をもって,通知を行った。(甲2)(4)開示請求に係る決定外務大臣は,平成18年8月17日付け情報公開第02299号をもって,別紙「一部不開示文書目録」記載の各行政文書(以下「一部文書」といい,本件対象文書から一部文書を除いたものを「残部文書」という。)につき,情報公開法5条3号を不開示理由とする部分開示決定(以下「原処分」という。)を行い,原告らに対し,これを通知した。(甲3,4の1ないし13)(5)異議申立て原告らは,平成18年10月2日,行政不服審 開法5条3号を不開示理由とする部分開示決定(以下「原処分」という。)を行い,原告らに対し,これを通知した。(甲3,4の1ないし13)(5)異議申立て原告らは,平成18年10月2日,行政不服審査法6条に基づき,原処分に対し,異議申立てをした(以下「本件異議申立て」という。)。(甲5,乙1)(6)本件訴えの提起原告らは,平成18年12月18日,①原処分のうち一部文書の不開示部分に係る決定の取消し及び同部分の開示の義務付けを求めるとともに,②外務大臣が残部文書に係る開示決定等をしないことの違法確認及び残部文書の開示の義務付けを求める本件訴えを提起した。(当裁判所に顕著な事実)(7)異議申立てに対する決定等外務大臣は,平成19年3月28日,本件異議申立てに対し,原処分を取り消し,原処分において不開示とした部分の全部を開示する旨の決定をし(以下「本件異議決定」という。),同日付け情報公開第00475号によ り,改めて一部文書の全部を開示する決定をした。(甲6,7,8の1ないし13,乙2,3)(8)訴えの変更原告らは,平成19年7月4日,行政事件訴訟法21条1項に基づき,前記(6)①の訴えを前記請求3項の国家賠償請求の訴えに変更することを申し立て,当裁判所は,同年8月3日,同変更を許可する旨の決定をした。(当裁判所に顕著な事実)(9)本件訴えの提起後の開示決定等本件訴えが提起された後において,前記(7)のとおり,一部文書の開示決定がされたほか,残部文書のうち,別紙「追加決定文書目録」の番号1ないし25の各行政文書については平成19年4月27日付けで,同番号26ないし166の各行政文書については同年11月16日付けで,開示決定,部分開示決定又は不開示決定がされた(以下,残部文書のうち,別紙「追加決定文書目録」記載の各行 19年4月27日付けで,同番号26ないし166の各行政文書については同年11月16日付けで,開示決定,部分開示決定又は不開示決定がされた(以下,残部文書のうち,別紙「追加決定文書目録」記載の各行政文書を「追加決定文書」といい,これを除くものを「未決定文書」という。)。 争点 (1)不作為の違法について外務大臣が本件口頭弁論終結時において残部文書(特に,未決定文書)につき開示決定等をすべきであるにかかわらず,これをしないことについての違法があるか(行政事件訴訟法3条5項参照)。 (2)開示の義務付けについて外務大臣が残部文書(特に,未決定文書)の開示決定をすべきであること が情報公開法の規定から明らかであると認められ又は開示決定をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるか(行政事件訴訟法37条の3第5項参照)。 (3)国家賠償について外務大臣が原処分をしたことにより,違法に原告らに損害を加えたといえるか(国家賠償法1条1項参照)。 争点に関する当事者の主張の要旨(1)争点(1)(不作為の違法)について(原告らの主張)外務大臣は,情報公開法11条所定の開示決定等の期限の特例を適用して開示決定等をする期限を平成20年5月26日まで延長しているが,日韓会談に関連する行政文書については,①外務大臣に対し本件開示請求以前に12回にわたり開示請求がされており,外務大臣としては従前の判断を踏襲することができたこと,②同19年8月30日にされた外務省の第20回外交記録公開において一部を除き本件対象文書の公開は見送られたものの,その準備段階においてその公開の是非が省内で検討されたこと,③韓国において全面開示された文書は公刊されているところ,外務省の保管する文書と対照することで,速やかに公開すべき行政文 見送られたものの,その準備段階においてその公開の是非が省内で検討されたこと,③韓国において全面開示された文書は公刊されているところ,外務省の保管する文書と対照することで,速やかに公開すべき行政文書を特定することが可能であったことなどからすると,そもそも本件開示請求に対し情報公開法11条を適用することが違法であり,外務大臣は情報公開法10条1項及び2項の期限(最長で60日)内に開示決定等をするべきであったが,この点をおくとしても,情報公開法11条柱書きにいう「相当の期間」とは,情報公開の速やかな実 現の趣旨からして数箇月程度を予定しているものと解されるところ,本件口頭弁論終結時までに本件開示請求から約1年7箇月が経過している本件においては,開示決定等をしない不作為が違法であることは明らかであり,これは市民の知る権利を侵害するものである。 (被告の主張)ア本案前の主張前記前提事実(9)のとおり,残部文書のうち,追加決定文書については,既に開示決定,部分開示決定又は不開示決定がされているから,原告らの不作為の違法確認及び義務付けを求める本件訴えは,追加決定文書に係る部分につき,その範囲で訴えの利益が喪失した。 イ本案の主張情報公開法5条3号は,「公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」を不開示情報としているところ,現在審査中の未決定文書について,同号の不開示情報を含む可能性がないとはいえないものであるから,外務大臣が開示決定等を行うに当たっては慎重な審査を必要とする。 本件対象文書については,外務大臣がその開示又は不開示を決定するに当たり,アジア大洋州局長及び北 性がないとはいえないものであるから,外務大臣が開示決定等を行うに当たっては慎重な審査を必要とする。 本件対象文書については,外務大臣がその開示又は不開示を決定するに当たり,アジア大洋州局長及び北東アジア課長がその補助機関として判断をしているものであり,同部局において,不開示情報の有無等につきその審査を行っているものであるが,本件対象文書が極めて大量であること, 不開示情報の有無の審査は慎重に行わなければならないこと,かつ,他に極めて重要な外交政策及び他の開示請求に係る事務処理を限られた人員で行わなければならないことなどからすれば,本件開示請求に対し,情報公開法11条を適用し,開示決定等をする期限を開示請求のあった日から約2年後の平成20年5月26日と定めたことをもって,著しく長期にわたるものとして「相当の期間」に該当しないなどとはいえない。 したがって,本件では,未決定文書についていまだ開示決定等がされていないからといって,行政事件訴訟法3条5項及び情報公開法11条柱書きにいう「相当の期間」内に何らの処分がされないことについての違法があるとはいえない。 (2)争点(2)(開示の義務付け)について(原告らの主張)日韓会談について韓国において全面開示された文書は公刊されているところ,残部文書につき,韓国との関係では情報公開法5条3号所定の不開示情報は存在しない。また,北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との関係でも,平成14年9月17日に日朝平壌宣言が署名されており,現在において残部文書の公開により北朝鮮との間で交渉上の不利益を被るおそれがないことは明らかであるから,残部文書については不開示情報が存在せず,開示決定がされるべきである。 (被告の主張)本件対象文書が編てつされているファイル約183冊には,会議録だけでなく,第三国の情 いことは明らかであるから,残部文書については不開示情報が存在せず,開示決定がされるべきである。 (被告の主張)本件対象文書が編てつされているファイル約183冊には,会議録だけでなく,第三国の情報が記載された文書並びに日本国政府内での非公式打合せ 記録及びメモ等種々様々な行政文書が存在している。そして,現在審査中の未決定文書は,現在においても日韓間で立場が異なる問題に関する文書が含まれており,北朝鮮との関係においても,その公開によって我が国の立場を不利にするおそれのある文書が多数含まれていること等からすれば,直ちにこれを開示すべきものとはいえない。 (3)争点(3)(国家賠償)について(原告らの主張)国家賠償法1条1項にいう違法については,これを行政処分の違法と同一であるととらえる見解(違法性一元論)と,これと異なるものととらえる見解(違法性相対論)が存在するが,違法性一元論が妥当である。ただし,本件では,仮に,違法性相対論の見解に立ったとしても,①原処分において不開示とされた部分は,本件異議決定後に開示された同部分の内容を見る限り,情報公開法5条3号所定の不開示情報に当たらないことが明らかであること,②原処分において開示した部分に含まれる情報が不開示部分に含まれていたこと,③韓国において全面開示されていた情報と同一の情報を不開示としていたことなどの点から,国家賠償法1条1項にいう違法が認められる。 そして,情報公開法の定める開示請求権は,憲法21条及び市民的及び政治的権利に関する国際規約19条2項によって保障される市民の知る権利を具体化したものであり,国家賠償法上保護に値する重要な権利である。さらに,本件訴訟は,いわゆる戦後補償問題にかかわる韓国の戦争被害者及びその支援者を原告とするものであり,戦争被害者の高齢化が進む中にお 体化したものであり,国家賠償法上保護に値する重要な権利である。さらに,本件訴訟は,いわゆる戦後補償問題にかかわる韓国の戦争被害者及びその支援者を原告とするものであり,戦争被害者の高齢化が進む中において,歴史的文書である本件対象文書の内容を少しでも早く知りたいとする原告ら の要望は切実なものがある。原処分による一部文書の一部不開示は,そのような事情を有する原告らの知る権利を侵害したものであるから,それによって原告らが被った精神的損害が各自1万円を優に超えることは明らかである。 また,外務省としては,本件開示請求を受けた時点において,原告らが戦後補償問題に関連して少しでも多くの情報をなるべく早く知りたいという切実な要求を持っていたことは当然予見できたか,あるいは予見できてしかるべきであったのであり,国家賠償法上の損害を算定するに当たっては,そのような事情も考慮すべきである。 (被告の主張)国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずることを規定するものであり,同項の「違法」とは,権利ないし法益の侵害があることを前提に,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務(公権力の行使に当たって遵守すべき行為規範)に違背することである(最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁等参照)。 情報公開法5条3号は,「公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある ことにより,国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」を不開示情報と定めているところ,「相当の理由」があるか否かは行政機関の長,すなわち本件では外務大臣の広範な 裁量が尊重されるべきものであって,外務大臣が同号に該当する不開示情報が存在すると判断して原処分を行ったことについて,国家賠償法上の違法がないことは明らかである。なお,本件では,原処分が行われた後,本件異議決定によって一部文書の全部を開示することとなったが,これは原処分を行った以降に残部文書の審査を進める過程において,また,異議申立て後に再検討を行う過程において,原処分の時点では一部不開示とした部分について新たに不開示情報が存在するとまではいえないとの判断に至ったからであり,判断時期が異なるのであるから,後に一部文書を全面開示としたというだけで,原処分が当然に違法と評価されるものではない。 また,国家賠償法においては,法律上保護された利益の侵害がなければ,同法1条1項に基づく損害賠償を請求することはできない(最高裁昭和41年(オ)第700号同43年7月9日第三小法廷判決・裁判集民事91号639頁等参照)ところ,外務大臣は,本件異議申立てに対し原処分の再検討を行い,その結果,不開示とした部分についても開示決定を行って原告らに開示したものであり,このような状況において,原告らに同法上違法と認められるような権利利益の侵害があったとはおよそ認められず,社会通念上受忍すべき限度を超えるものとは認められないから,同法によって賠償されるべき損害が生じたとは認められない。 第3争点に対する判断 争点(1)(不作為の違法)について(1) られず,社会通念上受忍すべき限度を超えるものとは認められないから,同法によって賠償されるべき損害が生じたとは認められない。 第3争点に対する判断 争点(1)(不作為の違法)について(1)前記前提事実(9)によれば,残部文書のうち追加決定文書については本件口頭弁論終結時までに開示決定等がされたことが認められるから,本件訴え のうち,追加決定文書に係る不作為の違法確認及び開示の義務付けを求める部分は訴えの利益がない。したがって,以下では,未決定文書に係る不作為の違法確認及び開示の義務付けを求める部分について検討する。 (2)本件開示請求が「法令に基づく申請」(行政訴訟法3条5項)に該当すること及び原告らが本件開示請求に係る「申請をした者」であること(同法37条)はいずれも明らかであるところ(前記前提事実(1)),本件開示請求に対し,外務大臣が未決定文書につき「相当の期間」内(同法3条5項)に開示決定等をすべきであるにかかわらず,これをしないことについての違法があるか否かをみるに,本件において,外務大臣は,情報公開法10条1項によれば開示請求があった日から30日以内,同条2項によれば事務処理上の困難その他正当な理由があるときは更に30日以内に限り延長することができるとされている開示決定等の期限を,残部文書につき,情報公開法11条の開示決定等の期限の特例を適用して延長している(前記前提事実(3))。同条は,「開示請求に係る行政文書が著しく大量であるため,開示請求があった日から60日以内にそのすべてについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には,前条の規定にかかわらず,行政機関の長は,開示請求に係る行政文書のうちの相当の部分につき当該期間内に開示決定等をし,残りの行政文書については相当の期間 の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には,前条の規定にかかわらず,行政機関の長は,開示請求に係る行政文書のうちの相当の部分につき当該期間内に開示決定等をし,残りの行政文書については相当の期間内に開示決定等をすれば足りる。」(同条柱書き第1文)と規定しているところ,その「相当の期間」とは,当該残りの行政文書について行政機関が処理するに当たって必要とされる合理的な期間をいうものと解するのが相当であり,これは行政事件訴訟法3条5項にいう「相当の期間」と同義のものと解される。 そこで,以下では,未決定文書につき,情報公開法11条1項柱書きにいう「相当の期間」が本件口頭弁論終結時までに経過したか否かについて検討することとする。 (3)証拠(該当箇所に併記したもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 ア本件対象文書の分量は,前記前提事実(2)のとおり,行政文書ファイルにして約183冊である。 これらのファイルには約200枚ないし約400枚の文書がそれぞれ編てつされており,その総量は,約3万6000枚ないし約7万3000枚に及ぶものと見込まれるところ,使用言語及び文書の体裁等が異なるであろうこと並びに日本国政府の内部検討文書等が存在するであろうことなどを考慮の外に置くとしても,少なくとも韓国政府が全面開示した約3万6000頁の関連文書(前記前提事実(1))と同程度の量の行政文書が存在するものと認めることができる。(乙6)なお,原処分に係る一部文書の分量は13文書193頁(うち不開示部分は128頁であるが,同部分が後に開示されたことは前記前提事実(7)のとおりである。)であり,また,平成19年4月27日付け及び同年11月16日付け各開示決定等に係る追加決定文書の分量は166文書6646頁である。 イ外務省組織 示されたことは前記前提事実(7)のとおりである。)であり,また,平成19年4月27日付け及び同年11月16日付け各開示決定等に係る追加決定文書の分量は166文書6646頁である。 イ外務省組織令2条1項は,外務省に,大臣官房並びに総合外交政策局,アジア大洋州局,北米局,中南米局,欧州局,中東アフリカ局,経済局,国際協力局,国際法局及び領事局の10局などを置くことを定めていると ころ,同令3条1項6号,18条1項及び19条7号は,「外務省の保有する情報の公開に関すること」を大臣官房総務課の所掌事務としており,同課情報公開室(外務省組織規則1条1項)が同省の保有する行政文書に対する情報公開法に基づく開示請求に関する業務を扱っている(同規則6項1号)。同室では,年間約1000件前後の開示請求に対し,3名ないし4名の担当官で対応している状況にある。 ところで,本件対象文書は日韓国交正常化交渉に関するものであるところ,日韓関係等の外交政策上の観点からその記載内容を審査し,開示決定等につき判断する権限と責任を有するのは,行政機関の長である外務大臣であるが,外務省組織令2条1項,5条1項,38条1項及び40条によれば,アジア大洋州局北東アジア課が「朝鮮に関する外交政策に関すること」及び「朝鮮に関する政務の処理に関すること」を所掌する内部部局として,その補助をしている。同課の人員は19名であり,同課に係る開示請求の件数は,平成16年度に99件,同17年度に32件,同18年度に29件であった。なお,本件開示請求時において開示決定等がされていない案件は,前年度等からの延長案件も含めると,約100件であった。 ウ一般に,外務大臣に対して開示請求がされた場合,対象となる文書を特定した後,内部部局においては,開示決定等に当たり,当該文書をすべてコピ ,前年度等からの延長案件も含めると,約100件であった。 ウ一般に,外務大臣に対して開示請求がされた場合,対象となる文書を特定した後,内部部局においては,開示決定等に当たり,当該文書をすべてコピーした上で,決裁書の表紙,当該文書に含まれる行政文書の一覧表及び概要等を作成し,決裁用書類としての体裁を整えた後,外務省内の関係各部署における審査を経るという手順を踏んでいる。また,当該文書の中に同省外の関係省庁にも関係するものが含まれる場合は,必要に応じ,当 該関係省庁における審査を経ている。 なお,開示請求の対象となる文書すべてについてコピーを作成するのは,①外務省の正式な記録として保管されている原本については,書き込みなどの加工又は加筆をすることは許されないこと,②関係省庁の審査を経ることが必要な場合などには,原本を使用して当該関係省庁と合議をすることはできず,また,同時に複数の省庁と合議をすることも考えられることなどの理由による。 本件対象文書についても,これらの作業が行われているところ,その文書の作成時期が約50年前にさかのぼるものもあるため,紙が劣化している文書が存在するほか,極薄のセロハン紙に印字して作成した文書も存在する。外務省においては,歴史的な文書であるこれらの文書の損傷を避けながら慎重にコピーをする必要があるとして,ファイル約183冊分の決裁用書類を整えるだけでも,前記イの人員による制約及び後記エの業務の繁忙状況による制約等から,1年以上の期間を要する旨予測した。(乙8)エ外務省アジア大洋州局北東アジア課は,韓国及び北朝鮮に関する外交政策の企画及び立案並びにその実施を業務としているところ,①韓国に関しては,平成14年以降,10回の首脳会談及び32回の外相会談が行われているほか,事務レベルにおける定期協議は,日韓 鮮に関する外交政策の企画及び立案並びにその実施を業務としているところ,①韓国に関しては,平成14年以降,10回の首脳会談及び32回の外相会談が行われているほか,事務レベルにおける定期協議は,日韓次官級戦略対話,排他的経済水域境界画定交渉,日韓安保対話,在日韓国人の法的地位協議及び日韓経済ハイレベル協議といった協議を含めて多岐にわたっており,さらに,同18年には,竹島の領有権についての立場の相違に起因する日本海 での海洋調査の問題をめぐり,事務次官自らが韓国側との協議のため2回にわたり訪韓するなど,必要に応じて重要な二国間協議があらゆるレベルで頻繁に行われており,過去に起因する諸問題を含め,常に細心の注意を払い,慎重な運営が要求される二国間関係にある。また,②北朝鮮に関しては,我が国に近接していながら国交がなく,日本人拉致,核又はミサイらル問題という諸懸案を抱え,これらの諸問題を包括的に解決し,国交正常化を図るためには,北朝鮮の独特の国家体制等に照らし,アメリカ合衆国,中華人民共和国,ロシア連邦及び韓国等との緊密な連携を維持しながら,同15年に設置されたいわゆる六者会合及びその他の機会を通じ,北朝鮮との交渉等に対処する必要がある。 上記北東アジア課では,このように極めて重要な対韓国及び対北朝鮮の外交政策を19名の人員で同時並行的に遂行しており,殊に国会開会中は,時には数十問にも及ぶ国会質問への対応が連日深夜にまで及んでいるという状況にある。 オ外務省では,本件対象文書に不開示情報が記載されているか否かの審査について,本件対象文書の重要性にかんがみ,大臣官房総務課情報公開室及びアジア大洋州局北東アジア課のほか,必要に応じて国際法局等の関連部局の協力を得ながら審査を行う必要があること,同情報公開室及び同北東アジア課の各担当官1 要性にかんがみ,大臣官房総務課情報公開室及びアジア大洋州局北東アジア課のほか,必要に応じて国際法局等の関連部局の協力を得ながら審査を行う必要があること,同情報公開室及び同北東アジア課の各担当官1名の判断のみによることなく,同室長及び同課長による二重の実質審査を行う必要があること,文書の内容によっては,他の関係省庁(法務省,警察庁及び財務省等)の合議にかける必要があることなどから,ファイル1冊の審査を行うためには,少なくとも3日を要す るものと想定し,職員の年間勤務日数が約250日であることを考慮して,すべての文書に関する開示決定等をするまでに優に2年以上の期間を要する旨予想したが,外務大臣は,本件開示請求の重要性等を総合的に勘案し,前記前提事実(3)のとおり,平成18年5月25日,本件開示請求について,情報公開法11条に基づき,最終的な開示決定等をする期限について,同20年5月26日とすることを決めた。 カ他方において,本件開示請求以前に外務大臣が受理した日韓会談にかかわる行政文書に係る開示請求の件数は12件であり,これらにおいて開示請求された行政文書の概要は,次のとおりである。(甲15の2)(ア)日本と韓国の間で7次にわたって行われた日韓国交正常化交渉(日韓会談)の議事録など関係文書一切。 (イ)昭和27年1月9日に韓国から提出された「財産及び請求権処理に関する協定基本要項」及び説明,討論(同年の日韓会談)に関するすべての文書並びに日本の代案に関連したすべての文書。 (ウ)日韓会談に関する外務省文書で,旧日本軍軍人軍属であった韓国人に対する軍人恩給等個人補償に関する記述を有する文書及びこれに関連して在日韓国人の当該補償にかかわる事項として昭和40年の「日韓請求権協定」の第2条第2項(a)の挿入経緯を物語る記述を有する文 国人に対する軍人恩給等個人補償に関する記述を有する文書及びこれに関連して在日韓国人の当該補償にかかわる事項として昭和40年の「日韓請求権協定」の第2条第2項(a)の挿入経緯を物語る記述を有する文書。 (エ)第1次日韓会談にかかわる外務省文書で,韓国人(在日者を含む)の「国籍」(法的地位)の扱いに関する記述を有する文書。 (オ)第3次,第5次及び第6次日韓会談関係資料(交渉準備資料,交渉内容及び合意事項等に関する部分等)。 (カ)平成17年度(行情)答申第204号(7月26日)審査会で一部開示決定が行われた日韓会談関係の文書すべて。 キ前記カのうち,「昭和26年から昭和40年にかけて日本と韓国との間で7次にわたって行われた日韓国交正常化交渉(日韓会談)のうち,第6次会談に関する議事録,速記録,覚書,確認書,メモ,報告書など関係文書一切(図面,電磁的記録を含む)」及び「昭和26年から昭和40年にかけて日本と韓国との間で7次にわたって行われた日韓国交正常化交渉(日韓会談)のうち,第1,2,4,5,7次の日韓交渉に関するそれぞれの議事録,速記録,覚書,確認書,メモ,報告書など関係文書一切(図面,電磁的記録を含む)」の開示請求がされた件については,外務大臣が平成15年10月31日付け情報公開第01742号から第01755号まで並びに同年1月29日付け情報公開第00285号,第00286号及び第00288号により行った当該対象文書の部分開示決定に対し異議申立てがあったことから,情報公開法18条に基づく情報公開審査会(平成15年法律第61号により,同17年4月1日からは情報公開・個人情報保護審査会)に対する諮問が行われ,同年7月26日付けで同審査会による答申(前記カ(カ)記載の平成17年度(行情)答申第204号)がされた。 上記答申 より,同17年4月1日からは情報公開・個人情報保護審査会)に対する諮問が行われ,同年7月26日付けで同審査会による答申(前記カ(カ)記載の平成17年度(行情)答申第204号)がされた。 上記答申では,上記開示請求では,その対象を請求権問題に係る文書で,かつ交渉のやり取りを直接記録した文書及びその付属資料に限定していたもの(合計242文書)と認めた上,①当該対象文書は日韓国交正常化交渉の中核を成すともいえる朝鮮半島に存在する財産及び請求権に係る諸問 題を解決するために行われた昭和27年から同40年までの7次にわたる日韓会談の内容について日本側で作成した記録であり,不開示部分には,朝鮮半島に存在する個別具体的な財産及び請求権にかかわる諸問題につき,財産及び請求権の詳細や交渉の詳細が克明に記載されており,かつ内容は極めて機微に及んでいること,②既に解決済みの交渉内容といえども,本件対象文書の不開示部分には,個別具体的な財産及び請求権問題に係る日韓間での生々しい議論のやり取りが詳細に記述されていることから,仮に当該内容がつまびらかになれば,財産及び請求権問題の解決に当たっての我が国の立場,見解及び対応の子細が明らかになることにつながるので,今後の北朝鮮との国交正常化交渉に影響を及ぼし得るものであること,③当該対象文書の不開示部分には,韓国政府が実効的に処理し得る範囲に限らず朝鮮半島全般に関する財産及び請求権についての我が国の立場,見解及び対応に関する情報が含まれているところ,北朝鮮との財産及び請求権に関する諸問題は依然として未解決であり,今後の日朝国交正常化交渉において協議されるものであることにかんがみると,当該対象文書に記載されている朝鮮半島に存在する財産及び請求権に係る諸問題を解決するための処理及び検討作業の中での我が国の立場, の日朝国交正常化交渉において協議されるものであることにかんがみると,当該対象文書に記載されている朝鮮半島に存在する財産及び請求権に係る諸問題を解決するための処理及び検討作業の中での我が国の立場,見解並びに対応及び財産権問題の処理方法等を明らかにすれば,今後の日朝国交正常化交渉において,我が国が取り得る立場が明らかになり,当該交渉に好ましからざる影響を及ぼし得るものであることから,当該不開示部分を公にすることにより,他国との交渉上不利益を被るおそれがあると外務大臣が認めたことには相当の理由があるとしたが,当該対象文書中には,対外発表に双方が合意し ている内容,個別かつ具体的な交渉内容ではなく事務的事項と考えられる「協議日程」の打合せに係る部分及び既に対外的に公表されていると考えられる内容である「新聞発表」に係る部分が含まれ,当該部分は,仮に公にしたとしても,他国との交渉上不利益を被るおそれがあると外務大臣が認めることにつき相当の理由がある情報とは認められないとして,当該不開示部分の一部を開示すべきであるとされている。 (乙4)クまた,情報公開法25条は,「政府は,その保有する情報の公開の総合的な推進を図るため,行政機関の保有する情報が適時に,かつ,適切な方法で国民に明らかにされるよう,行政機関の保有する情報の提供に関する施策の充実に努めるものとする。」として,行政機関の保有する情報の提供に関する施策の充実について定めるところ,外務省では,大臣官房総務課外交記録審査室の所掌事務として,昭和51年に第1回外交記録公開を行って以来,平成17年2月の第19回公開に至るまで原則として30年を経過した戦後外交記録を対象として精査し,順次公開している。同回までに公開した記録は1万1700冊に達し,公開された記録は,原則として,第17回公 7年2月の第19回公開に至るまで原則として30年を経過した戦後外交記録を対象として精査し,順次公開している。同回までに公開した記録は1万1700冊に達し,公開された記録は,原則として,第17回公開まではマイクロフィルムにより,また,第18回公開以降はCD-Rにより,外務省外交資料館において閲覧することができるほか,同16年以降に外交記録公開において公開した外交記録については,順次インターネットを通じて閲覧できるようにしている。 外務省では,平成19年8月30日に第20回外交記録公開を行ったところ,本件対象文書のうち新聞論評等に係る部分(別紙「追加決定文書目 録」の番号20から25までの文書等)は公開されたものの,その余の部分の公開は見送られた。 (甲16ないし19)ケ情報公開法は,行政改革委員会が平成8年12月16日に内閣総理大臣に対して意見具申をした「情報公開法制の確立に関する意見」に沿って立案された法律であるところ,同委員会が発足させ,同年7月19日に開催された第47回行政情報公開部会において,P1部会長代理は,「30日,30日の場合には,この法律の考え方は,とにかくやってもらうということだろうと思う。なぜなら,期限内にできない場合に不開示決定と見倣すというみなし規定を敢えて置いていないわけで,あえて置いていないというのは,とにかく30日,30日で国民には必ずお答えしますという一種の手形を切ったようなものだと思う。」,「30日,30日でもう後はない。それで不開示決定をみなすも何もないのだから,60日間で必ず答えるという,非常に大きな原則を立てたことが重要であると思う。みなし規定があった方がいいのだという議論も,小委員会でさんざんやったのだが,しかし,日本の行政官は,そこはきちんと60日以内でちゃんとやるというふうに,あ きな原則を立てたことが重要であると思う。みなし規定があった方がいいのだという議論も,小委員会でさんざんやったのだが,しかし,日本の行政官は,そこはきちんと60日以内でちゃんとやるというふうに,あのときはそういうふうにまとめたはずである。」などと発言している。(甲12,25)コ情報公開法附則2項は,「政府は,この法律の施行後4年を目途として,この法律の施行の状況及び情報公開訴訟の管轄の在り方について検討を加え,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」と定めているところ,平成13年4月1日に施行された情報公開法の施行状況を踏まえ て,その制度運営に在り方について有識者による専門的な検討を行うことを目的として,東京大学大学院法学政治学研究科教授P2を座長とする情報公開法の制度運営に関する検討会が同16年4月27日の初会合から同17年3月18日までの間に計12回開催され,改善措置の検討等が行われた。同検討会は,同月29日付けで報告を行っているところ,その内容を抜粋すると,次の(ア)から(キ)までのとおりである。(甲11)(ア)開示請求があったときは,速やかに開示又は不開示の決定が行われるべきである。しかしながら,開示請求の対象である行政文書等の内容や量,開示又は不開示の判断の難易性,判断に当たっての第三者意見聴取の要否等については様々であり,開示決定等を行うまでの期間を一律に定めることは困難である。このため,情報公開法では,原則として開示請求があった日から30日以内に開示決定等をすることとし(10条1項),事務処理上の困難等がある場合は,30日以内に限っての延長手続(同条2項)を定めている。30日以内に処理することとした事案及び同項による延長手続を採った事案計17万1081件のうち,17万0820件(99.85%)に ある場合は,30日以内に限っての延長手続(同条2項)を定めている。30日以内に処理することとした事案及び同項による延長手続を採った事案計17万1081件のうち,17万0820件(99.85%)については期限内に開示決定等がされているが,期限までに開示決定等がされなかったものが261件(0.15%)見られる。 (イ)開示請求の対象となる行政文書等が著しく大量であり,これを処理するために通常の業務に著しい支障が生ずるおそれがある場合について,情報公開法は,60日以内に「相当の部分」について開示決定等を行い,残りの部分については「相当の期間」内に開示決定等を行うことで足り る旨の特例規定(11条)を設けている。 情報公開法においてこの特例規定を適用する事案は,特定の省庁に集中している。また,適用された件数の比率は平成13年度の6.5%から同15年度の1.2%にまで減少している。この中には,特定の課室に対し同時期に適用事案が集中したことなどを理由として,60日以内に相当の部分について開示決定等ができなかったものが5247件中1905件(36.3%)あり,また,相当の期間を考慮して開示請求者に期限を通知したものの,業務の繁忙等その後の状況の変化により当初予想した以上に審査等に時間を要したなどとして,通知した期限までに開示決定等を行うことができなかったものが4427件中802件(18.1%)あるなど,不適切な事例が見られる。 「相当の期間」は,処理をするために必要となる合理的な期間として行政機関等が設定するものであるが,請求文書の枚数が1万枚以上にも及ぶ事例も少なからずあり,その対応のために1年以上の期間を設定している事例も見られる。 (ウ)行政機関等は,次のような措置を講ずることにより,開示請求事案の処理が迅速かつ円滑に行われ,法に にも及ぶ事例も少なからずあり,その対応のために1年以上の期間を設定している事例も見られる。 (ウ)行政機関等は,次のような措置を講ずることにより,開示請求事案の処理が迅速かつ円滑に行われ,法に定められた開示決定等期限が遵守されるようにする必要がある。 a事案ごとの処理状況を管理部門等が把握及び管理できるようなITを活用した仕組みを整備することにより,事案処理の進行管理を徹底すること。 b開示請求者の求めに応じて,事案処理の進行状況と見通し等を連絡 すること。 (エ)特例規定を適用した事案が多い省庁における年度別適用件数防衛庁金融庁郵政事業庁外務省国税庁国土交通省平成13年度受付事案 1543 平成14年度受付事案 平成15年度受付事案 - (オ)「相当の期間」の遵守状況a開示請求者に通知した期限までに開示決定等がされなかった事案(単位:件,%)対象事案数期限を超過)平成13年度又は同14年度の受付事案4427 (18.1平成15年度の受付事案 (2.2)b平成15年度受付事案で,開示請求者に通知した期限までに開示決定等がされなかったもの(18件)の内訳1週間以内1箇月以内3箇月以内3箇月超計外務省 国土交通省 (カ)情報公開法11条適用事例に関する判決の例開示決定等をしないことの違法確認を求めた訴訟の提起後に開示決定等がされたことから訴えは却下されたものの,訴訟費用を被告に負担させることとした判決(外務大臣関係)「被告は,平成13年8月6日(略)付けで,原告に対し,『開示決定 等の期限の延長等について』と題する たことから訴えは却下されたものの,訴訟費用を被告に負担させることとした判決(外務大臣関係)「被告は,平成13年8月6日(略)付けで,原告に対し,『開示決定 等の期限の延長等について』と題する情報公開法11条所定の通知を行ったものの,本件開示請求から60日目である同年9月4日になっても,同法11条によって命じられた相当の部分の行政文書の開示決定等を行うことなく,また,同通知に示した期限である同年10月4日までにも本件行政文書について全く開示決定等がされなかったことが認められる。 そして,原告が本件開示請求後187日目の平成14年1月9日に本訴を提起し,第1回口頭弁論期日が同年3月5日と定められると(略),本件開示請求の日から実に235日目である同年2月26日に至って,ようやく本件開示決定等を行ったものである。以上の経緯に照らせば,原告の本訴の提起は原告の権利の伸張に必要であった行為というべきであるから,訴訟費用は被告に負担させるのが相当である。」(東京地判平14年4月22日「公文書開示不開示処分をしないことの違法確認請求事件」)(キ)大量の文書が開示請求された例別紙「大量の文書が開示請求された例」のとおりである。 サ平成18年度における情報公開法の施行の状況について情報公開法24条等に基づき総務省が公表した内容から,期限までに開示決定等がされなかったものの統計につき,行政機関に係るものを抜粋すると,次のとおりである。(甲26)30日以内に開示決定等延長した期限までに開示情報公開法11条を適用がされなかったもの決定等がされなかったもして通知した期限までにの開示決定等がされなかっ たもの人事院 宮内庁 総務省 外務省 厚生労働省 社会保険庁 ったもして通知した期限までにの開示決定等がされなかっ たもの人事院 宮内庁 総務省 外務省 厚生労働省 社会保険庁 計 (4)前記(3)の認定事実(以下「認定事実」という。)によれば,本件対象文書は少なく見積もっても約3万6000頁(認定事実ア)という大量の行政文書であり(なお,認定事実コ(キ)参照),外務省において開示請求に関する業務を扱う大臣官房総務課情報公開室及び本件対象文書に不開示情報が記載されているか否かについて審査するアジア大洋州局北東アジア課の執務態勢及び事務の繁忙状況等並びに上記審査の在り方(認定事実イないしオ)等に照らし,本件においてはひとまず「開示請求に係る行政文書が著しく大量であるため,開示請求があった日から60日以内にそのすべてについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある」(情報公開法11条)と認めることができる。 ただし,情報公開法1条は,「この法律は,国民主権の理念にのっとり,行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により,行政機関の保有する情報の一層の公開を図り,もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下に ある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。」と定めているところ,情報公開法は,行政機関が国民に対する関係で説明する責務(説明責任)を全うする制度を整備することは,憲法の定める統治構造の下において,その基礎である国民主権の理念にのっとった国政の運営を一層実質的なものとすることに資すること,このような制度を通じて,行政運営に関する情報が国民一般に公開されることは,国民一人一人 造の下において,その基礎である国民主権の理念にのっとった国政の運営を一層実質的なものとすることに資すること,このような制度を通じて,行政運営に関する情報が国民一般に公開されることは,国民一人一人がこれを吟味した上で,適正な意見を形成することを可能とするものであることなどにかんがみて,民主主義の健全な発展のため,国政を信託した主権者である国民に対し,政府がその諸活動の状況を具体的に明らかにし,説明責任を全うする制度として,一般的な開示請求権制度(なお,情報公開法3条は開示請求権を有する者として「何人も」と定めており,外国人を排除していない。)及び政府による情報提供制度等を確立することにより,国政の遂行状況に対する国民の的確な認識と評価を可能とし,国政に関する国民の責任ある意思形成が促進されることを目的及び趣旨とするものである。 情報公開法のこのような目的及び趣旨に照らすと,開示請求に対しては,速やかに開示決定等がされるべきであり,開示決定等の期限について,標準処理期間を個々の行政機関ごとに定めるよう努めることを規定する行政手続法6条によることなく,情報公開法10条1項において原則的処理期間を一律に30日以内と規定し,同条2項において事務処理上の困難その他正当な理由があるときは,更に30日以内に限り同期限を延長することができると規定していることも,上記目的及び趣旨に沿うものであるといえるところ,情報公開法11条の開示決定等の期限の特例が適用される場合における「相 当の期間」(すなわち,同条所定の「残りの行政文書」について行政機関が処理するに当たって必要とされる合理的な期間)の認定に当たっても,上記目的及び趣旨を十分に考慮するべきである。 (5)この点について,外務省に係る開示請求においては,統計上,情報公開法11条の特例を適用し に当たって必要とされる合理的な期間)の認定に当たっても,上記目的及び趣旨を十分に考慮するべきである。 (5)この点について,外務省に係る開示請求においては,統計上,情報公開法11条の特例を適用した件数及び同条2号所定の「開示決定等をする期限」までに開示決定等がされなかった件数が他の行政機関と比較して著しく多く,殊に後者の件数は,平成18年度の統計において,行政機関全体の件数186件中,外務省に係るものが182件を占めている(認定事実コ及びサ)。 このことは,外務省が「平和で安全な国際社会の維持に寄与するとともに主体的かつ積極的な取組を通じて良好な国際環境の整備を図ること並びに調和ある対外関係を維持し発展させつつ,国際社会における日本国及び日本国民の利益の増進を図ることを任務」とし(外務省設置法3条),各種外交政策等に関することなどを所掌事務とする(同法4条)という性質上,開示請求の対象となる行政文書について,情報公開法5条3号等の不開示情報が記載されていないかどうかを十分に審査すべき機会が必然的に多くなることに起因する部分も小さくないものと察せられるが,開示決定等がされるまでの期間につき他の行政機関と比較して長期間を要する件数が極めて多いことに照らすと,情報公開法の目的及び趣旨に沿った速やかな開示決定等をするための取組が不十分であると評価されてもやむを得ない(なお,前記前提事実(1),(3)及び(4)によれば,本件開示請求に対し,その請求日である平成18年4月25日から114日目である同年8月17日付けで原処分が行われたことが認められるところ,60日以内に「開示請求に係る行政文書のうちの 相当の部分につき当該期間内に開示決定等を」するべきであるという情報公開法11条の規定は遵守されていない。)。このような状況に関連して,平成1 ろ,60日以内に「開示請求に係る行政文書のうちの 相当の部分につき当該期間内に開示決定等を」するべきであるという情報公開法11条の規定は遵守されていない。)。このような状況に関連して,平成17年3月29日付け情報公開法の制度運営に関する検討会報告(認定事実コ)においても,情報公開法11条の特例規定を適用する事案は,特定の省庁に集中していること,事案処理の進行管理を徹底することなどにより,法に定められた開示決定等期限が遵守するようにされる必要があることなどは,つとに指摘されていたところである。 殊に本件対象文書については,仮に日韓会談に係る行政文書すべての開示請求がされたのが本件開示請求において初めてのことであったとしても,過去にその一部について開示請求がされた数が12件あり(認定事実カ),しかも,そのうちの1件又は複数件は,「日本と韓国の間で7次にわたって行われた日韓国交正常化交渉(日韓会談)の議事録など関係文書一切」を開示請求の対象とするものであった(ただし,認定事実キによれば,平成17年度(行情)答申第204号に係る開示請求では,その対象を「請求権問題に係る文書で,かつ交渉のやり取りを直接記録した文書及びその付属資料」に限定していたものとされる。)。また,外務省大臣官房総務課外交記録審査室では,「原則として30年を経過した戦後外交記録を対象として精査」した上,平成19年8月30日にされた第20回外交記録公開において本件対象文書のうち別紙「追加決定文書目録」の番号20から25までの文書を除く部分の公開を見送った(認定事実ク)というのであるから,外務大臣としては,これらの前例又は成果を利用して本件対象文書に係る審査に要する期間を短縮するよう努めることができるはずである。 さらに,本件対象文書については,その分量及び紙質等の あるから,外務大臣としては,これらの前例又は成果を利用して本件対象文書に係る審査に要する期間を短縮するよう努めることができるはずである。 さらに,本件対象文書については,その分量及び紙質等の点から,コピーを作成し,決裁用の書類を整えるだけでも1年以上の期間が必要である旨予測されたということであるが(認定事実ウ),上記のように速やかな開示決定等がされることを求める情報公開法の趣旨や,殊に本件対象文書のように歴史的価値のある文書であって(前記前提事実(1),認定事実ウ及びオ参照),繰り返し開示請求の対象となることが予想され(実際,本件開示請求以前に12件の開示請求があったことは認定事実カのとおりである。),そして,それが紙質等の点から損傷しやすいものであればなおさら,そのような行政文書についてはあらかじめ写しを作成しておくか,マイクロフィルム化又は電子データ化するなどしてその記載内容を複写しやすいようにしておくべきことなどが考えられることからすれば,外務大臣としては,決裁用の書類を整えるための上記1年以上という期間を短縮するよう努めることができるはずである。 (6)これらの諸事情を上述の情報公開法の目的及び趣旨に照らして総合的に考慮すると,本件において,本件対象文書のうち未決定文書の記載内容等が明らかでない以上,未決定文書に係る開示決定等がされるために必要とされる合理的な期間を具体的に認定することは困難であるが,本件開示請求は,平成18年4月25日にされたものであるところ(前記前提事実(1)),本件口頭弁論終結時までに1年7箇月余りの期間が経過していることからすれば,遅くとも本件口頭弁論終結時までには情報公開法11条柱書きにいう「相当の期間」は経過したものと認めることが相当である。 (7)なお,情報公開法11条は,「開示請求に 間が経過していることからすれば,遅くとも本件口頭弁論終結時までには情報公開法11条柱書きにいう「相当の期間」は経過したものと認めることが相当である。 (7)なお,情報公開法11条は,「開示請求に係る行政文書が著しく大量であ るため,開示請求があった日から60日以内にそのすべてについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には,前条の規定にかかわらず,行政機関の長は,開示請求に係る行政文書のうちの相当の部分につき当該期間内に開示決定等をし,残りの行政文書については相当の期間内に開示決定等をすれば足りる。」と定めた上,この場合において,行政機関の長は,情報公開法10条1項に規定する期間内に,「残りの行政文書について開示決定等をする期限」を開示請求者に通知すべきことを定めているところ(情報公開法11条2号),不作為の違法確認の訴えにおいては,行政機関の長により通知された「開示決定等をする期限」より後の時点であっても,同条にいう「相当の期間」が経過していないと判断されることもあり得るし,「開示決定等をする期限」より前の時点であっても,同条にいう「相当の期間」が経過したものと判断されることもあり得るのであって,本件において外務大臣が「開示決定等をする期限」を平成20年5月26日と通知したこと(前記前提事実(3))を考慮しても,上記判断が左右されるものではない。 また,認定事実イ,エ及びオに照らし,複雑困難な外交事務等に従事する傍ら,しかも限られた予算や人員のうちで開示請求に係る専従の職員を確保することが難しい状況において,本件対象文書の審査に当たる外務省職員の労苦は推察するに難くないが,情報公開法の目的及び趣旨に照らし,未決定文書に係る開示決定等が本件口頭弁論終結時までにされないことが客観的に違法であ 況において,本件対象文書の審査に当たる外務省職員の労苦は推察するに難くないが,情報公開法の目的及び趣旨に照らし,未決定文書に係る開示決定等が本件口頭弁論終結時までにされないことが客観的に違法であるか否かという観点からすれば,現在の外務省の執務態勢等では本件口頭弁論終結時までに上記開示決定等ができないということは,これまで 外務省が組織として必要な対応措置を執ることを怠ってきた結果であるというほかなく,このことをもって相当の期間が経過したことにつき正当な理由があるということはできず,その他何らかの正当な理由があることを認めるに足りる証拠はない。 (8)したがって,争点(1)に関する原告らの主張には理由がある。 争点(2)(開示の義務付け)について未決定文書の記載内容は本件において明らかとなっていないが,それが日本国政府の作成及び保管に係る行政文書である以上,既に開示されている韓国政府の作成及び保管に係る行政文書とすべて実質的に同一の記載内容であると認めることはできないし,実際,被告は,未決定文書の中に日本国政府の内部における検討状況等が記載された文書も存在する旨主張しているところ,そのような文書の存在を否定すべき証拠はない。 そして,このような未決定文書については,情報公開法5条3号等の不開示情報が記載されている可能性が否定できないのであり,そうすると,本件では,外務大臣が未決定文書の開示決定をすべきであることが情報公開法の規定から明らかであると認められ又は開示決定をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるということはできない。 したがって,争点(2)に関する原告らの主張には理由がない。 争点(3)(国家賠償)について原処分に係る国家賠償請求については,情報公開法に基づく行政文書の部分開示決定に ということはできない。 したがって,争点(2)に関する原告らの主張には理由がない。 争点(3)(国家賠償)について原処分に係る国家賠償請求については,情報公開法に基づく行政文書の部分開示決定に取り消し得べき瑕疵があるとしても,そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく,公務員が職務 上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記決定をしたと認め得るような事情がある場合に限り,上記評価を受けるものと解するのが相当である(最高裁平成元年(オ)第930号,第1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁,最高裁平成17年(受)第530号同18年4月20日第一小法廷判決・裁判所時報1410号8頁参照)ところ,弁論の全趣旨によれば,外務大臣は平成17年度(行情)答申第204号で示された答申(認定事実キ)に従って原処分をしたことをうかがうことができ,このような判断について同項にいう違法があったと直ちに認めることはできないばかりか,そもそも原処分はその後変更され,外務大臣により,本件開示請求があった日から1年以内に一部文書の全部を開示する旨決定されたこと(前記前提事実(1)及び(7))などからすれば,仮に原処分により原告らが何らかの精神的苦痛を被ったものとしても,それは既に慰謝されたものと認めることが相当であり,本件口頭弁論終結時において原告らにつき国家賠償法上の賠償を要する損害が存在すると認めることはできない。 したがって,争点(3)に関する原告らの主張には理由がない。 結論 よって,本件訴えのうち,追加決定文書に係る不作為の違法確認及びその開示の義務付けに係る部分をいずれも却下し,その余の原告らの請求は主文の限度で理由があるから一部認容することとし,その余の部分は理由がな て,本件訴えのうち,追加決定文書に係る不作為の違法確認及びその開示の義務付けに係る部分をいずれも却下し,その余の原告らの請求は主文の限度で理由があるから一部認容することとし,その余の部分は理由がないから棄却することとして,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条,64条本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 杉原則彦裁判長裁判官小田靖子裁判官島村典男裁判官

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