平成16(ワ)11923 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成19年3月9日 東京地方裁判所 棄却
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判決文本文33,521 文字)

- 1 -平成19年3月9日判決言渡平成16年第11923号損害賠償請求事件( )ワ判決主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は、原告に対し、1813万0469円及びこれに対する平成13年7月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要事案の要旨 原告は、平成12年末ころから左足に痺れを感じ、やがて左臀部から大腿後面までと、下腿が痺れる感じや灼熱感を自覚するようになったため、平成13年3月8日にA病院を受診し、外来受診をするようになったが、症状が進行したことから、入院の上、同年7月12日に手術により胸髄腫瘍を摘出した。 このことについて、原告は、上記手術後に左半身の症状は改善したが右半身の麻痺症状、疼痛及び歩行障害等が発現して苦しんでいるところ、このような事態になったのは担当医師が胸髄腫瘍の発見が遅れた過失や、担当医師が術後にこのような状態になることについての説明を欠いた過失に基づき原告が手術に同意したこと、手術中に手技上の過失があったことが原因であると主張し、上記A病院を設置経営する被告に対し、診療契約上の債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償及びこれに対する平成13年7月13日(不法行為日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 - 2 - (認定の根拠を()内に示す)前提となる事実。 当事者(1)ア原告は、昭和10年7月27日生まれの男性である(甲A1。 )イ被告は、東京都渋谷区aにおいて、A病院(以下「被告病院」という)を設置経営している(争いのない事実。 。 )診療経過の概略(2)原告は、平成13年3月8日、被告病院整形外科を初めて外来受診し、平 告は、東京都渋谷区aにおいて、A病院(以下「被告病院」という)を設置経営している(争いのない事実。 。 )診療経過の概略(2)原告は、平成13年3月8日、被告病院整形外科を初めて外来受診し、平成12年12月ころから左臀部から大腿後面まで及び下腿の痺れ感や灼熱感を自覚するようになり、腰掛けた際に痛みがあるなどと訴え、同日以降、被告病院において継続的に診察を受け、同年7月12日には、原告の胸髄腫瘍に対する手術(以下「本件手術」という)が行われた(乙A1、A2。 。 )その余の診療経過の概略は、別紙「診療経過一覧表」記載のとおりである(この「診療経過一覧表」は、平成18年4月7日の本件第10回弁論準備手続期日において両当事者が陳述したものについて体裁を修正したものである。同表の「被告の主張する主な症状・所見〔検査所見」欄及び「主な処〕置(手術以外」欄記載の事実は「原告の認否及び主張」欄に反対の事実が)、記載されている事実を除き、両当事者間に争いがない。 。) 争点 胸髄腫瘍の早期発見義務違反の有無(1)本件手術中における手技上の誤りの有無(2)本件手術前の説明義務違反の有無(3)過失行為と結果との間の因果関係の有無(判断の必要がなかった争点)(4)損害の内容及び損害額(判断の必要がなかった争点)(5)争点についての当事者の主張 別紙「当事者の主張」記載のとおりである(この「当事者の主張」は、平成18年12月5日の本件第14回弁論準備手続期日において両当事者が陳述し- 3 -た「主張要約書」について、一部修正したものである。 。)第3当裁判所の判断事実認定 証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる(認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した証拠のページ番号を〔〕内に示す。以下同 である。 。)第3当裁判所の判断事実認定 証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる(認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した証拠のページ番号を〔〕内に示す。以下同じ。 。)被告病院の受診に至る経緯(1)原告は、平成12年12月ころ(当時65歳、歩行時に、左足にかすか)に痺れを感じるようになり、それが平成13年1月に入ってから増強したと自覚するようになった。その後も、痺れの範囲が足先から徐々に上肢方向に広がってきたように感じたため、原告は、痺れが一過性のものではないと判断し、被告病院を受診することとした(甲A15〔1、2。 〕)被告病院への通院(2)ア原告は、平成13年3月8日、被告病院整形外科を初めて外来受診し、原告の診察を担当したB医師(以下「B医師」という)に対し、平成1。 2年12月ころから左臀部ないし大腿後面及び下腿に痺れ感や灼熱感があり、腰掛けたときに痛みを感じるが、安静時には痛みがないこと、右下肢には痺れがないことを訴えた。また、原告は、階段の昇降はできること、テニスは週1回の割合でしていることも述べた(乙A1〔4、5)。 〕B医師が原告の両下肢の状態を診察したところ、膝蓋腱反射及びアキレス腱反射が左右共に亢進していたものの、上腕三頭筋腱反射、上腕二等筋腱反射、腕撓骨筋腱反射には左右とも異常がなく、素早く回内・回外運動及び開閉運動を行うことも可能であり、頸椎の屈曲及び伸展、スパーリングテスト、胸椎には特段の問題が見られなかった。また、レントゲン検査を実施したところ、頸椎、胸椎及び腰椎に問題となる所見は見られなかった。同医師は、脊柱管狭窄症を疑い、原告に対し、同症に効くとされてい- 4 -る血管障害改善薬ドルナー錠を処方するとともに、下肢の反射に亢進がみられたことから び腰椎に問題となる所見は見られなかった。同医師は、脊柱管狭窄症を疑い、原告に対し、同症に効くとされてい- 4 -る血管障害改善薬ドルナー錠を処方するとともに、下肢の反射に亢進がみられたことから、腰部から胸椎下部の領域までの検査が必要であるMRIと判断し、同年4月10日に胸腰随移行部検査を予約し、かつ、次MRI回受診日を3月27日と予約した(乙A1〔4、5、証人B医師〔2、。 〕21)〕イ原告は、同年3月27日、4月10日、同月21日、同月24日、6月19日に被告病院を順次外来受診した(乙A1〔5~10。 〕)3月27日の受診時には、原告は、左下肢の痺れは少しよくなったが、( )ア右下肢にも痺れを感じるようになり、左下肢については、外側にシャワーをかけると痛みを感じると訴えた。また、3年前に手が痺れたことがあるとも述べた。B医師が再び原告の両下肢の状態を診察したところ、上腕三頭筋腱反射は左右ともに異常がなく、上腕二頭筋筋腱反射については、右側には異常がなかったが左側は亢進していた。そこで、同医師は、手の痺れが過去にあったとの訴えから、頸椎の病変についても確認する必要があると判断し、4月21日に頸椎検査を予約した(乙MRI。 A1〔5、6、証人B医師〔2。なお、原告は左下肢の痺れの改善を〕〕述べていないと陳述しているが(甲A15〔2、原告の入院前の診療〕)経過に関する陳述には明らかに客観的事実に反する部分があり(原告本人〔38、39、全体として曖昧であるから、上記各証拠に反する部〕)分は採用できない)。 4月10日の診察日には、原告は、痛みはないが痺れ感があり、知覚( )イ異常はないと訴えた。原告は、同日に胸腰髄移行部検査を受け、MRI同月21日には頸椎の検査を受けた(乙A1〔6。な 。 4月10日の診察日には、原告は、痛みはないが痺れ感があり、知覚( )イ異常はないと訴えた。原告は、同日に胸腰髄移行部検査を受け、MRI同月21日には頸椎の検査を受けた(乙A1〔6。なお、痛みMRI。 〕〕、もないとする主訴が事実に反する旨の原告の陳述(甲A15〔3)も上記と同様に採用できない)。 胸腰髄移行部検査の結果、原告については、第2・第3腰椎椎MRI- 5 -間板以下のレベルで椎間板の変異があり、第3・第4腰椎椎間板及び第4・第5腰椎椎間板の各高位では軽度な膨隆が認められるが、それ以外MRに有意な異常所見が認められなかった(乙A1〔9。他方、頸椎〕)検査の結果、原告については、頸椎がほぼ全体のレベルを通じて椎間I板の変性があり、第3・第4頸椎椎間板高位及び第5・第6頸椎椎間板高位では椎間板の後方突出がみられ、特に第4・第5及び第5・第6頸椎椎間板高位では黄色靱帯の肥大も加わっているとの所見が得られた(乙A1〔8。 〕)4月24日の診察日には、原告は、両下肢に痺れを感じること、テニ( )ウスはできることをそれぞれ述べた。B医師は、上記画像所見に基づき、第3ないし第7頸椎の脊柱管狭窄症であると診断し、次回の診察を約2か月後の6月19日として、その日の診察を終えた。 6月19日の診察日には、原告は、左下腿及び右下腿の痺れ及び知覚( )エ減退が2週間前から現れたと述べ、テニスは1か月半しておらず、歩くのがしんどい旨を訴えた。同日において、原告の大腿四頭筋及び腓腹筋の徒手筋力テストの結果が左右とも「4」であり、膝蓋腱反射は左右+共に亢進しており、アキレス腱反射は左右ともに異常がない状態であったが、他方で、原告が、腸骨の先端周辺の領域から大腿部の上3分の1の領域について、左右横断的な知 も「4」であり、膝蓋腱反射は左右+共に亢進しており、アキレス腱反射は左右ともに異常がない状態であったが、他方で、原告が、腸骨の先端周辺の領域から大腿部の上3分の1の領域について、左右横断的な知覚異常を訴えると共に、両下肢には知覚鈍麻がみられた。そこで、B医師は、先にした検査に加えて胸椎の。 MRI 検査をする必要があると判断し、同検査を7月26日に予約した(乙A1〔7、10、A5〔3、証人B医師〔4、25)〕〕〕ウその後、原告は、平成13年7月3日火曜日に予約外で被告病院整形外科を受診し、左下肢の痺れが増強したこと、ここ数日疲れやすく、身の置きどころがないくらいであること、日曜日にテニスをしたところ、身体は動くが少し痛いことを訴えた。また、原告の体幹部の知覚異常が拡大して- 6 -おり、上腕三頭筋腱反射及び上腕二頭筋腱反射には左右とも異常がなかったが、膝蓋腱外反射及びアキレス腱反射は左右ともに亢進しており、便秘がちで膀胱直腸障害が認められた。B医師は、原告に対し、精査のため入院して治療をすることを勧めた(甲A9〔2、A15〔4、乙A1。 〕〕〔10、A2〔6、A5〔3、証人B医師〔20)〕〕〕〕エ原告は、平成13年7月5日、入院前にセカンドオピニオンを求めるため、C病院整形外科を受診し、1月から両下肢の痺れがあり、現在は腰部以下の痺れ(灼熱感)と倦怠感が著明であると訴えた(甲A3の1〔2。 〕)入院及び本件手術の施行(3)ア入院時の状態原告は、平成13年7月6日、被告病院整形外科に独歩にて入院した。 その際の検査において、原告は、1か月前から歩行障害が出現し、午後になると違和感や疲労感を覚えるようになり、30分ほど休まないと歩行継続が困難となると訴えた。D医師(以下「D医師」という)が行った診 の際の検査において、原告は、1か月前から歩行障害が出現し、午後になると違和感や疲労感を覚えるようになり、30分ほど休まないと歩行継続が困難となると訴えた。D医師(以下「D医師」という)が行った診。 察及び検査結果によれば、原告の状態は次のとおりであった(乙A2。 〔12~14、A6〔1、2)〕〕日常生活動作( )ア上肢には問題となる所見がなく、膀胱直腸障害については、多尿はないが便秘はある状態で、肛門周囲知覚が左で低下しており、頸椎については屈曲、伸展及び回旋が十分にできていた。 知覚( )イ触覚は、左第7胸椎より下の部分は10分の7レベルの感覚鈍麻があるが、右はほぼクリアである。 痛覚は、左第4胸椎より下の部分は10分の7レベルの痛覚鈍麻があり、特に第7胸椎から第1・2腰椎までの領域は痛みもある。他方、右- 7 -側は第1腰椎より下の部分は10分の9.5レベルの痛覚鈍麻がある。 運動( )ウ素早く開閉動作を行えるか否か及び素早く回内・回外動作を行えるか否かについては、両下肢とも良好である。 深部腱反射( )エ膝蓋腱反射は、左は亢進し、右は異常がない。 アキレス腱反射及び上腕二頭筋腱反射は、左右共に亢進している。 上腕三頭筋腱反射及び腕撓骨筋腱反射は、左右共に異常がない。 指屈曲反射は、左は亢進し、右は正常である。 病的反射(バビンスキー反射・ヴァルテンベルグ反射・ホフマン反射及びトレムナー反射)はいずれも左右共にみられない。 徒手筋力テスト( )オ徒手筋力テストは、上肢は十分、腸腰筋・大腿四頭筋は左右共に4、前脛骨筋は左右共に5、長母趾伸筋は、右が5、左が5、長母趾屈筋-は、左右共に5、後脛骨筋・長腓骨筋は、右が5、左が4であり、下-肢伸展挙上テストは、左右共に70度である。 イ本件手術前の諸検査等 筋は左右共に5、長母趾伸筋は、右が5、左が5、長母趾屈筋-は、左右共に5、後脛骨筋・長腓骨筋は、右が5、左が4であり、下-肢伸展挙上テストは、左右共に70度である。 イ本件手術前の諸検査等D医師は、同日、原告の胸椎検査を施行した。その結果、原告のMRI上位胸髄脊柱管に腫瘍がみられ、硬膜内髄外腫瘍の疑いがあるとの所見が得られ、そのことが同月7日に報告された。同医師は、原告に対する治療法としては、手術をして椎弓及び腫瘤を切除すべきではないかと考え、医師グループで方針を決定することとし、そのことを原告に対して説明した上、原告の同意を得た(乙A2〔14)。 〕なお、その際、原告は、D医師から、当時の痺れや痛みを軽減するための治療法としては手術以外になく、手術をしない場合には麻痺が進行して歩けなくなる旨の話を聞き、手術をするほかないと考えるに至った(証人- 8 -E〔11、12、原告本人〔10、34、35。 〕〕)、原告は、同月10日、造影検査を受け、その結果、翌11日にはMRI原告について硬膜内髄外腫瘍が存在する疑いがあるとの所見が得られた(乙A2〔15。 〕)ウ本件手術前の説明と同意同年7月11日、D医師は、原告及び原告の娘であるE(以下「E」とMいう)に対し、原告の症状・治療方針について、前日に施行した造影。 検査の結果、原告の第2・第3胸椎領域に硬膜内髄外腫瘍が存在するRI疑いがあること、その腫瘍は、9割の症例で、神経鞘腫か髄膜腫などの良性腫瘍であるが、原告の場合は神経症状が徐々に悪化しており、今後、対麻痺や膀胱直腸障害に至る危険性が高いことから、椎弓切除及び腫瘍切除の手術を行えば、症状が改善するであろうことを説明した。その上で、同〕、医師は、上記手術に関する説明をした(乙A2〔15、証人D医 痺や膀胱直腸障害に至る危険性が高いことから、椎弓切除及び腫瘍切除の手術を行えば、症状が改善するであろうことを説明した。その上で、同〕、医師は、上記手術に関する説明をした(乙A2〔15、証人D医師〔2 。 〕)原告は、上記説明を受けて、手術を受けることを決め、同意書に署名をした(乙A2〔16、57。 〕)この点に関し、診療録(乙A2)には、患者とその娘へのムンテラとの見出しの下に、手術日が同月12日で午前中1番であること、全身麻酔で行うこと、手術時間は2時間を予定していることを説明したとうかがわせる記載があり、その記載の下に、リスクに関する記載として、[1]創痛、[2]感染、[3]全身状態が、脳梗塞・心筋梗塞、脂肪塞栓、深部静脈血栓症のほか、予期できない原因によって悪化し得ること、[4]神経脱落症状が生じ、神経鞘腫なら神経根の切断が必要となるし、痺れや痛みの出現悪化もあり得ること、[5]胸髄は損傷しやすいので、脊髄浮腫など、新たな神経症状が出現し得ることを説明したとうかがわせる記載がある(乙A2〔15。 〕)- 9 -エ本件手術の施行原告に対しては、同年7月12日、F医師の執刀により、9時25分(以下、時刻の表記は24時間制とする)から、胸髄腫瘍の摘出手術。 (前出の「本件手術」を指す)を受けた。すなわち、F医師は、腫瘍が。 主として脊髄の右側に存在し、脊髄を左側方向に圧排しているため、第2・第3胸椎右側の片側椎弓を切除して腫瘍に至ることとし、第1ないし第4胸椎右側椎弓を展開し、第2・第3胸椎右側椎弓を切除した。次に、サージアトームを用いて棘突起基部及び左側椎弓板を削除し、硬膜管を広く展開した。第2・第3胸椎高位にて硬膜管を切開し、4-0ナイロン糸をかけて硬膜内を展開し、さらにくも膜を切開すると、長さ1.5(以 ージアトームを用いて棘突起基部及び左側椎弓板を削除し、硬膜管を広く展開した。第2・第3胸椎高位にて硬膜管を切開し、4-0ナイロン糸をかけて硬膜内を展開し、さらにくも膜を切開すると、長さ1.5(以cm下、単位については単位記号を用いて表記する、幅1.0の灰色卵。)cm円形の腫瘍が脊髄を左側方向へ強く圧排している状態にあることを認めた。 そこで、腫瘍表面の血管をバイポーラで凝固し、キューサで腫瘍内の内減圧を行ったところ、腫瘍が発見時の約2分の1に縮小した。同医師が器具(神経レバトリウム)を用いて腫瘍を摘出しようとしたところ、腫瘍は可動性があって、硬膜の表面と一部癒着していたものの、容易に摘出することができた。摘出後、圧迫されていた部分に一致して、脊髄に圧痕が見られた。同医師は、腫瘍の取り残し及び出血のないことを確認した上、硬膜を4-0ナイロン糸で密に縫合し、二重縫合した後フィブリン糊で筋膜のパッチをし、ドレーンを設置した上、各所を縫合して、11時57分、手術を終えた(乙A2〔16、61、A3、A7、証人F医師〔3、4、。 〕9、10)〕本件手術における出血量は70であり、出血及び生理食塩水等の吸cc引量は500であった(乙A3、証人F医師〔2。 cc〕)オ本件手術後の経過本件手術を終えて原告が病室に戻った後、同日18時にD医師が原告を- 10 -診察したところ、原告は、右側胸部の違和感と痛み、右半身の特に右下肢の痺れ感を訴えた。D医師は、このことについて、診療録に「脊髄浮腫、や圧迫改善、血流の変化などの手術後変化が原因であろう」との趣旨の記載をした(乙A2〔16)。 〕原告は、7月16日の診察時においても、左半身の痺れ等は消失したが右半身の第4胸椎以下の部分に痺れが出現し、右膝の脱力感(位置感覚の 化が原因であろう」との趣旨の記載をした(乙A2〔16)。 〕原告は、7月16日の診察時においても、左半身の痺れ等は消失したが右半身の第4胸椎以下の部分に痺れが出現し、右膝の脱力感(位置感覚の低下)も出現し、右足のスリッパが脱げやすいと訴えた。この際に実施した徒手筋力テストの結果、大腿四頭筋及び前頸骨筋のいずれも、右側が「5、左側が「5」であり、さらに歩行器を用いた際には右足をすり足-」にすれば安定している状態であることが確認された(乙A2〔17)。 〕7月18日には、原告は、肛門知覚が低下したこと、便秘であること、排尿困難感があることを訴えた(乙A2〔18。 〕)同月23日には、原告の右半身第5胸椎以下の領域の痺れがあることが確認された。 同月27日には増強検査が施行された。 MRI原告は、8月22日、被告病院整形外科を退院した(乙A2〔92。 〕)被告病院退院後の経過(4)ア外来通院原告は、被告病院整形外科を退院後、平成13年8月31日に同科を外来受診した。その際、原告は、肩甲骨上部の痛みや右半身の痺れを訴えたが、他方、室内では独歩可能であること、2日前から外出を始めたことも述べた(乙A1〔11。 〕)原告は、同年9月7日に同科を外来受診した際には、背部痛はあったりなかったりの状態で、安静時に痛みはないが、電車に乗って40分ほどしていると痛みが増強すると述べた。また、杖での歩行は安定し、室内での独歩は可能であるが、発作時には鋭い痛みを感じると訴えた(乙A1〔1- 11 - 。 〕)原告は、その後、同月18日、同月21日、同年10月19日、同月30日、同年12月14日、平成14年3月8日、同年5月10日、同年7月12日、同年10月18日に順次外来受診したが、同日より後は同科を受診していない(乙A1 日、同月21日、同年10月19日、同月30日、同年12月14日、平成14年3月8日、同年5月10日、同年7月12日、同年10月18日に順次外来受診したが、同日より後は同科を受診していない(乙A1〔15~20)。 〕イC病院での経過原告は、平成15年4月18日、C病院を外来受診した。同病院においては、胸部及び腰椎の検査が実施され、プレドニン錠及びムコスタMRI錠等が処方された(甲A3の1〔3。 〕)原告はその後も同病院を定期的に外来受診し、検査を受けているMRIほか、ボルタレン錠やセルベックスカプセルの処方及び頸椎牽引のリハビリを受けている(甲A3の1〔4、5、A3の2〔20~25。 〕〕)医学的知見関係 証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の医学的知見が認められる。 下肢の神経症状をもたらす脊髄の部位(1)下肢に傷みや痺れなどの神経症状が生じた場合、その原因は脊髄のいずれかの部位にあることとなるが、そのうちでもっとも頻度の高いのは腰椎であり、それに次いで頸椎が圧倒的に高く、胸椎に原因がある場合は最も少なく、神経症状が横断性のものでない限り、直ちに胸椎に原因があると考えるのは困難である。例えば、原告のように60歳代の男性の場合、足の痛みや痺れの原因は腰部の脊柱管狭窄症やすべり症、ヘルニア、黄色靱帯骨化症などであることが多い。 したがって、医師は、下肢の傷みや痺れを主訴とし、横断的な症状のない患者については、その症状が重篤で緊急に原因部位を特定する必要がない限り、まず腰椎に原因となる病変がないかどうかを検査し、それがない場合に頸椎を検査し、それにも原因が見当たらない場合に初めて胸椎を検査するの- 12 -が通常である(証人F医師〔13~17、証人B医師〔2~4)。 〕〕脊髄腫瘍・胸髄腫瘍について(2)ア 合に頸椎を検査し、それにも原因が見当たらない場合に初めて胸椎を検査するの- 12 -が通常である(証人F医師〔13~17、証人B医師〔2~4)。 〕〕脊髄腫瘍・胸髄腫瘍について(2)ア定義等脊髄腫瘍は、脊柱管内で脊髄、神経根、馬尾を圧迫する増殖性病変の総称である。脊髄は、良性腫瘍による慢性圧迫では軽微な症状で経過することがあるが、脊柱管という狭い閉鎖空間内で腫瘍の体積が増大するので、脊髄圧迫症状が出現した場合にはしばしば機能全廃に至るまで急激に進行する。脊髄腫瘍は腫瘍の部位により硬膜外腫瘍、硬膜内髄外腫瘍、髄内腫瘍に分けられる。硬膜内髄外腫瘍の代表的なものとして、脊髄髄膜腫や神経鞘種がある(甲B1〔325、B2〔542、B3〔1084)。 〕〕〕脊髄腫瘍の発症部位は、脊髄のうち胸椎(胸髄)部に最も多く、頸椎、腰仙椎の順になるところ、この発症頻度は、それぞれの部位の長さに比例している(乙B1〔302、弁論の全趣旨。 〕)脊髄腫瘍は、圧倒的に良性の硬膜内髄外腫瘍が多いため、全摘出により腫瘍自体は根治し得るものが多い(甲B1〔325。 〕)イ症状及び治療法脊髄腫瘍があると神経症状が現れる。多くは疼痛を初発症状とし、異常感覚や感覚鈍麻へと進行する。疼痛が見られた場合、痛みが出現してから数週ないし数か月目に圧迫症状として麻痺等の脊髄症状がみられる。そして、感覚障害進行と同時に、障害部位以下の痙直による運動障害が発現するようになる。さらに進行すると膀胱直腸障害(排尿開始遅延や便秘)が出現し、その後、脊髄横断性完全麻痺となる(甲B1〔325、32。 6、B5〔610)〕〕硬膜内髄外腫瘍のほとんどすべてが摘出手術の適応となり、脊髄圧迫症状が出現した場合には、完全麻痺の長期化による不可逆的損傷を避けるため、早期に (甲B1〔325、32。 6、B5〔610)〕〕硬膜内髄外腫瘍のほとんどすべてが摘出手術の適応となり、脊髄圧迫症状が出現した場合には、完全麻痺の長期化による不可逆的損傷を避けるため、早期に手術を行う必要があり、他に適切な治療法はない(甲B1〔3- 13 -25、B2〔544。 〕〕)ウ予後急速に進行した横断麻痺症状を示す症例は神経機能の予後が悪いが、良性の硬膜内髄外腫瘍では、麻痺症状が重篤でも機能予後のよいものが多い(甲B2〔544。 〕)もっとも、脊髄腫瘍の初発症状は疼痛や軽い痺れであることが多いことから早期診断が困難で、特に胸髄腫瘍は腫瘍が増大するまで自覚症状に乏しく、腰椎疾患として治療されていることも少なくないこと、一度麻痺が出現すると進行が速く、特に上位胸髄では脊髄の血行が乏しいために脊髄が不可逆的変化を来たし、術後麻痺の回復が不良な場合があるとの指摘や(乙B2〔651、胸髄硬膜内髄外腫瘍の最も重篤な術後合併症は麻痺〕)の出現あるいは増悪で、特に上位胸髄の血流が他の高位と比較して乏しいため、術後重篤な麻痺を来す可能性が高いとの指摘もある(乙B2〔652、653。 〕)筋力の測定基準(3)麻痺の程度を測定する場合には、筋力の程度が基準とされており、それを測定する徒手筋力テストの結果は、0から5までの整数で(ただし、数字に「+「-」を加えてさらに細かい程度を示す場合がある)段階的に評価」、。 される。その場合において、5は正常状態を、3は重力に逆らって当該部位を保持し得る状態を、0は筋力が全くない状態(完全麻痺)を指す(証人。 F〔24、35、弁論の全趣旨)〕 争点 (胸髄腫瘍の早期発見義務違反の有無)について (1)原告は、胸髄腫瘍の発見義務の具体的内容として、被告病院整形外科入(1 (完全麻痺)を指す(証人。 F〔24、35、弁論の全趣旨)〕 争点 (胸髄腫瘍の早期発見義務違反の有無)について (1)原告は、胸髄腫瘍の発見義務の具体的内容として、被告病院整形外科入(1)院前の時期において胸椎検査を施行する義務があると主張する。そこMRIで、医師が胸椎検査を行う義務がある場合について検討するのに、上MRI記2の知見からすると、そのような義務がある場合とは、胸椎検査(1)MRI- 14 -の対象領域において疾患があると疑うべき場合であるというべきであり、具体的には、患者に現れた脊髄を原因とすると思われる症状の原因が、頸椎や腰椎等、他の脊髄の部分よりも胸椎の状態を原因とする可能性が高いと思われる場合など、患者に現れた具体的症状が直ちに胸椎部分の疾患を疑うべき場合をいうものと考えられる。 アこれを前提として本件について検討すると、上記1及びのとお(2)(1)(2)り、平成13年4月24日までにおいて、B医師は、原告が左足の痺れ等を主訴としたのに対し、脊髄疾患を原因とするものではないかと考え、胸腰髄移行部検査を施行し、また、過去に頸椎牽引をしていたことをMRI訴えたことに対応して、頸椎検査を施行したものであるところ、原MRI告の主張する症状は、胸腰髄移行部検査の結果では説明がつかないMRIが、頸椎検査の結果、頸椎部分に椎間板の変性があり、黄色靱帯のMRI肥大といった変性がみられたのであるから、原告の症状の原因がこのような頸椎部分の変性を原因とするものとも考えられたのであり、この判断が誤りであることをうかがわせる証拠はない。 イそうすると、この状況を踏まえて、胸椎部分に疾患があると疑う義務があるというためには、上記の頸椎部分の変性が医学的に原告の症状の原因たり得ないか 判断が誤りであることをうかがわせる証拠はない。 イそうすると、この状況を踏まえて、胸椎部分に疾患があると疑う義務があるというためには、上記の頸椎部分の変性が医学的に原告の症状の原因たり得ないか、原告の症状の原因が胸椎の疾患にあると積極的に疑うべきである必要があるが、前者の事実ないし医学的知見を認めるに足りる証拠はない。また、後者についても、上記のとおり、原告には知覚障害や反射異常、横断性の麻痺等、胸椎疾患を疑うべき状態にあったとは認められないし、テニスをすること自体は可能であったことなどからすれば、原告の症状が進行していたとも考え難い。したがって、B医師に、平成13年4月24日ないしその直近の時点において、胸椎検査を施行する義務MRIがあったとは認められない。 ア原告は、上記のほか、平成13年6月19日ないしその直近の時期に(3)- 15 -胸椎検査を施行する義務があるのにこれを怠ったと主張する。このMRI主張については、上記のとおり同日においてB医師が同年7月26日に胸椎検査を予約していることが認められることに照らせば、同年7月MRI26日の予約が遅きに失し、過失となるとの趣旨に理解すべきものであるところ、胸椎検査を6月19日ないしその直近の時期に施行する義MRI務があるというためには、原告の症状に照らして胸椎疾患を確定診断すべき緊急の状態にあったことが必要であるというべきである。 しかしながら、上記のとおり、緊急検査や緊急手術の適応となるのは、神経症状が急激に進行する場合であるところ、同日の原告の症状は上記1イのとおり、それほど重篤なものではなく(原告自身も、同日の状(2)()エ況をそれほど記憶しておらず、症状が進展したのは7月に入ってからと認識している(原告本人〔38、39、上記1イのとお のとおり、それほど重篤なものではなく(原告自身も、同日の状(2)()エ況をそれほど記憶しておらず、症状が進展したのは7月に入ってからと認識している(原告本人〔38、39、上記1イのとおり、平成1〕)。)(2)3年4月から2か月弱の経過により原告の症状が進行したと認められるものの、上記2イのとおり、痛みの出現から数週ないし数か月経過して(2)から麻痺等の症状が現れるとされていることに照らせば、症状の進行が急激なものであると認めることはできず、他に原告の症状の緊急性をうかがわせる証拠はない。 イしたがって、上記検査を6月19日ないしその直近の時期に施行する義務があるとは認められない。 なお、仮に6月19日ないしその直後に胸椎検査を行う義務があMRIり、その義務が果たされたとすれば、本件手術が行われた時期が7月12日よりも早まった可能性は十分あると推認できるものの、そのことによって原告の症状が有意に良好なものとなったことを認めるに足りる証拠はなく、むしろ原告に術後生じた症状の原因が後記4のとおり手術のかな(2)り前から生じていた神経細胞の変性にあることからすると、手術の時期が上記のように3週間程度早まったとしても、生じた結果に有意な差異はな- 16 -かったと認めるのが相当である。 争点 (本件手術中における手技上の誤りの有無)について (2)この点に関する原告の主張は、本件手術前には原告には左下肢に自覚症(1)状があり、本件手術後には左下肢の症状が改善したのに対して右半身の症状が出現したことを前提に、新たに自覚症状が現れたのは神経損傷等が原因であるとし、その機会が手術であったから、手技上の誤りがあったと推認すべきという趣旨であると解される。 しかしながら、上記2ウのとおり、硬膜外髄内腫瘍に対する摘出 覚症状が現れたのは神経損傷等が原因であるとし、その機会が手術であったから、手技上の誤りがあったと推認すべきという趣旨であると解される。 しかしながら、上記2ウのとおり、硬膜外髄内腫瘍に対する摘出術後(2)(2)に新たに麻痺症状等が生ずることが術後合併症として知られていることからすれば、術後に新たな自覚症状が現れたことから直ちに術中の手技の誤り等による神経損傷があったと推認することはできないから、この点において原告の主張は前提を欠いているといわざるを得ない。 それだけでなく、F医師は、原告の症状に関する機序について、本件手術のかなり前から胸髄腫瘍の長年の圧迫によって脊髄の神経細胞が変性して繊維化しており、左右に症状があった状態であったが、脊髄腫瘍が存在する左側の症状がより強く出現していた状況であったところ、本件手術で胸髄腫瘍が除去されて左側の症状は改善したことや、術後に脊髄の浮腫が生じたことから、右側の症状が自覚されるようになったと考えられる旨を述べる(証人F医師〔31~34。上記1イ及び同アのとおり、本件手術直前〕)(2)( )(3)エの時期には原告の右側にも痺れや知覚減退の症状が発現しており、かつ、本件手術後に原告が訴えるようになった右側の症状も痺れや知覚減退をはじめとするものであって、本件手術前後の症状が相矛盾するものではないことに照らせば、F医師の上記見解は原告の客観的状態に基づいた合理的なものであると認められ、これに反する証拠はない。 そうすると、原告が本件手術後に自覚するようになった症状は、原告自身の認識し得る程度に差があるとしても、既に本件手術前にも現れていたもの- 17 -であり、その病態は手術によって改善されたものと改善されなかったものがあって、後者がより顕在化したにすぎないと考えられるから、 る程度に差があるとしても、既に本件手術前にも現れていたもの- 17 -であり、その病態は手術によって改善されたものと改善されなかったものがあって、後者がより顕在化したにすぎないと考えられるから、上記症状が本件手術における操作上の誤りに起因するものであるとはいい難いというべきであり、また、本件手術前には右半身が無症状であったことを前提とする原告の主張は前提を欠くものとなる。 そして、本件手術自体も、事前に2時間程度のものとなる旨説明されたことに争いがないところ、上記1エのとおり、実際の手術時間が1時間5(3)7分であるし、本件手術操作自体に着目しても上記のとおり剥離操作をほとんどする必要がなく、神経に触れる可能性のある操作がほとんどなかったこと、本件手術中の出血量等に照らしても、本件手術中に何らかの異常事態が生じたと認めることはできず、その他に異常事態の発生をうかがわせるに足りる証拠がないことにも照らせば、結局、本件手術操作に何らかの誤りがあったことを推認させる事情は何ら見当たらないというほかない。 したがって、この点に関する過失は認められない。 (3) 争点 (本件手術前の説明義務違反の有無)について (3)一般に、患者は、医師から治療を受けるか否かについて判断するに当た(1)り、自らの病態及び行うべき治療内容等、医療全般に対する正確な知識を欠くのが通常であるから、医師は、患者の上記判断に資するため、患者に対し、患者の病態、治療内容及び治療結果の見込み等について説明をする義務を負うというべきである。 もっとも、上記説明義務は、あくまで患者が当該治療を受けるか否かを適切に判断し得るために課せられるものであるから、当該治療の必要性の強弱、他に選択し得る治療法の有無や当該治療自体の危険性の程度等により、説明すべき内容は大きく異な で患者が当該治療を受けるか否かを適切に判断し得るために課せられるものであるから、当該治療の必要性の強弱、他に選択し得る治療法の有無や当該治療自体の危険性の程度等により、説明すべき内容は大きく異なるものといわざるを得ない。すなわち、原告のように被告病院への入院直前の時期から脊髄圧迫症状が急速に進んでいる患者については、これを放置すると、症状が速やかに増悪し、神経が不可逆的に損- 18 -傷されて歩行不能などの重篤な結果が生ずるおそれがあるから、可及的速やかに腫瘍摘出術を行ってこれを防止する以外に有効な治療法はないのであり、手術を行っても神経症状が残存する可能性があり、かつ手術自体に一定程度の危険性が伴うとしても、これらをおそれて手術を逡巡することは、かえって患者に不利益を与えるものというべきである。したがって、このような場合、医師としては、もっぱら手術の必要性を説明し、手術の同意を促すべきものであり、その効果が不完全なものとなる可能性やそれ自体の危険性については、簡単に申し添える程度でもやむを得ない。 ところで、本件においては、上記1イのとおり、原告は、入院翌日に(2)(3)D医師から症状を軽減するには手術以外に治療法はなく、手術しないと歩けなくなると聞き、もはや手術をするほかないと考えていたことが認められる。 また、上記1ウのとおり、診療録上、平成13年7月11日にD医師が(3)原告及びEに対し、本件手術が翌日朝一番に、全身麻酔下で、手術時間2時間を予定して行われること、本件手術の危険性や新たな神経症状が生ずるなど手術の効果が不完全なものとなる可能性のあることについて説明をした旨の記載があり、このことについて、診療録上の記載は医療従事者が職務上行うものであって、医療従事者が実際に行い、又は見分した内容をそのまま記載するの 全なものとなる可能性のあることについて説明をした旨の記載があり、このことについて、診療録上の記載は医療従事者が職務上行うものであって、医療従事者が実際に行い、又は見分した内容をそのまま記載するのが通常であることに照らせば、特段の事情がない限り、診療録上の記載どおりの事実があったと認めるべきである。そして、入院診療録(乙A2)の体裁をみても、医師の記載部分は、日付、診療内容等の記載、署名の順で記載されており、同じ日の記載が頁をまたぐ際にはその旨の記載もされているものであるところ、平成13年7月11日の記載がこのような記載様式に反するとは認め難く、その他に様式や記載内容において不自然な点は見当たらない。 したがって、D医師は、本件手術前に必要な説明をしたものと認められる。 なお、D医師は、原告及びEに対して口頭で説明したほか、別個に、原告の- 19 -病状に即した説明書面をパソコンで作成・印刷して原告に対して交付したと供述するが(証人D医師〔4~8、13~16、説明をした部屋と印刷場〕)所とが異なることに照らせば、そのようなことがされたこと自体、いささか不自然であるといわざるを得ない。仮に通常はそのような書面が交付されているのであるとしても、本来であればいつも控えを残しているはずであるとD医師が供述しているのに対して(証人D医師〔6)本件入院診療録上に〕は控えが存在しないこと(乙A2)に照らせば、本件においては上記書面が作成されたとは認め難い。もっとも、本件事実関係において、書面による説明が必要であるとは認められないから、この点は上記判断を左右するものではない。 アこれに対し、原告は、上記7月11日の説明の際、後遺症、すなわち(3)本件手術による合併症の内容について説明がない旨主張し、同旨を陳述及び供述し、かつ、Eもその旨を を左右するものではない。 アこれに対し、原告は、上記7月11日の説明の際、後遺症、すなわち(3)本件手術による合併症の内容について説明がない旨主張し、同旨を陳述及び供述し、かつ、Eもその旨を陳述及び供述する。 しかしながら、原告本人については、上記1イのとおり診療経過(2)()アについての記憶が曖昧であることがうかがえるし、両名とも上記説明の前に既に手術を受けるほかないと考えるに至っていたのであり、上記の(1)とおり、当時の原告の症状を前提とすると、手術の効果が不完全であったり手術自体の危険性があっても手術を行うほかない状況であったことからすると、医師の説明ももっぱら手術の必要性やその内容に向けられ、手術の効果が不完全な場合もあることや危険性のあることはごく簡単に付け加える程度で足りるのであり、その程度の説明があったとしても、既に手術を決意している患者には、そのような説明が記憶に残らないことも十分にあり得るところである。 したがって、上記両名の陳述等は、上記の認定を左右するものでは(2)ない。 イまた、原告は、手術前に、原告の右側の状態がどのようになるかについ- 20 -ての説明もなかったと主張する。確かに、本件手術前後を通じて、原告の右半身の状態が上記4において説示したF医師の見解のとおりの機序(2)によるものであることについては、具体的な説明を欠いていたものと認められる。 しかし、この点は、手術によって左半身の症状は好転したが、右半身の症状は好転しなかったというにすぎず、抽象的には手術の効果が不完全であったということとなり、そのような抽象的な説明は上記のとおり術(2)前にされており、術前の説明としてはそれで十分であったと認められる。 もっとも、原告は、上記1オ及びアのとおり、術後に右半身の症 たということとなり、そのような抽象的な説明は上記のとおり術(2)前にされており、術前の説明としてはそれで十分であったと認められる。 もっとも、原告は、上記1オ及びアのとおり、術後に右半身の症(3)(4)状を訴え、退院後もその改善を求めて通院していたのであるから、担当医師としては、それらの診療の前提として現に生じている症状がいかなる機序によるものかを説明し、患者の理解を得るべきであり、それをせずに対症療法に終始することは、診療行為として不十分なものといわざるを得ないが、そのことは、原告が本件において主張している術前における説明義務とは全く異なった問題であり、本訴請求の判断を左右するものではない。 ウなお、原告は、説明者が執刀者たるF医師ではなくD医師であったことも説明義務違反を構成する旨主張する。しかしながら、仮に手術の説明を執刀者がしなければならないとする趣旨であるとすれば、そのような主張は独自の見解であるといわざるを得ないし、D医師は原告についての入院中の主治医であったから、同医師が説明をすることが不適切であるとの事情がない限り、説明義務違反を構成することはないと考えられるところ、D医師が説明者として不適切であることをうかがわせる証拠はないから、いずれにせよ、原告のこの主張は到底採用できない。 したがって、D医師が原告及びEに対して本件手術前に行った説明につ(4)いては、何ら説明義務に反するものではないから、この点に関する原告の主張には理由がない。 - 21 - 結論 (1)以上によれば、原告の主張する過失がいずれも認められないから(争点ないし、その余の争点(争点及び)について判断するまでもなく、(3)(4)(5))被告に診療契約上の債務不履行責任及び不法行為責任が発生しないことは明らかである。した れないから(争点ないし、その余の争点(争点及び)について判断するまでもなく、(3)(4)(5))被告に診療契約上の債務不履行責任及び不法行為責任が発生しないことは明らかである。したがって、原告の請求(診療契約上の債務不履行に基づく請求及び不法行為に基づく請求)にはいずれも理由がないからこれらを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官藤山雅行裁判官金光秀明裁判官萩原孝基- 22 -(別紙)当事者の主張第1胸髄腫瘍の早期発見義務違反の有無(争点)(1)()原告の主張胸髄腫瘍の特色と検査の有用性 MRI原告の病名は、脊髄腫瘍のうちでも良性の「胸髄腫瘍(髄膜腫」であっ(1))た。 脊髄腫瘍とは、脊椎管内で脊髄、神経根、馬尾を圧迫するような増殖性病変の総称である。 脊髄腫瘍のうちでも、髄膜腫に代表される硬膜内髄外腫瘍の良性のものは、全摘出手術により根治し得るものが多く、そのためには、脊髄障害が不可逆的になる前に、早期に、診断、治療を行うことが極めて重要となる。 そして、診断に至るまでの過程で最も重要なことは、臨床経過の推移で(2)あり、詳細な神経学的所見から病変部位と病変の種類を想定することが重要であるが、以上を前提に、適切かつできるだけ早期に、検査等の補助MRI診断方法を行わなければならない。本件では、頸椎や腰椎の検査で異MRI常がなかった時点で「胸椎」の検査をする等検査を徹底することで、、MRI。 病変の種類と部位の特定が可能であり、検査はすこぶる有用であったMRI平成13年4月24日に至るまでに判明した原告の症状 原告は、平成13年3月8日の被告病院初診時に、同年1月より生じた左足の痺れが、当初は、歩行時の 能であり、検査はすこぶる有用であったMRI平成13年4月24日に至るまでに判明した原告の症状 原告は、平成13年3月8日の被告病院初診時に、同年1月より生じた左足の痺れが、当初は、歩行時の軽い痺れだったのが、徐々に痺れが足先から上に広がってきた。約20日後の同年3月27日の受診時点では、初診時以降左足の痺れの程度も範囲も進行していた。4月24日の時点で、約3ないし4か月- 23 -の短期間で、原告の症状の程度と範囲が急速に悪化し拡大していた。 平成13年6月19日に至るまでに判明した原告の症状 その後、原告の症状は悪化の一途を辿り、歩行も困難となり、また痛みも伴うようになっていった。 検査義務の発生とその懈怠 4月24日の時点(1)上記のような症状の推移があり、診察の都度、その症状の進展を医師に伝えていたにもかかわらず、B医師は、平成13年3月27日には初診時と同様ビタミン剤を処方した後、同年4月10日「腰椎」の検査、同年4MRI月21日「頸椎」の検査をし、その結果を4月24日に告げるというMRIように約1か月もかけて漫然と検査を続けただけであった。そして、これらの検査の結果をもって「異常なし」と即断した。 MRIしかし、前記症状の進行からするならば、遅くとも同年4月24日の診察の時点で「腰椎「頸椎」の検査結果に異常を見出せなかったという、」MRIならば、まだ実施していない「胸椎」の検査をする等検査を徹底するMRI義務が発生していたのであり、速やかに「胸椎」の検査等を実施し、MRI病変の種類と部位を特定し、早急に治療を開始すべきであった。 しかるに、B医師は、それ以上の検査も行わず、今後の診療についての特段の指示もせず、漫然とこれを放置した。 6月19日の時点(2)その後、原告の症状は悪化 特定し、早急に治療を開始すべきであった。 しかるに、B医師は、それ以上の検査も行わず、今後の診療についての特段の指示もせず、漫然とこれを放置した。 6月19日の時点(2)その後、原告の症状は悪化の一途を辿り、歩行困難となり、痛みも伴ってきたので、同年6月19日の受診時に、原告は、その旨を医師に訴えた。 かかる事態に至っては、どんなに遅くとも、医師としては、先になした検査が不十分であったことを認識すべきであり、かつ病変の種類及び部位についての自己の見立てに疑問を抱くべきであり、一刻の猶予もなく、至急、「胸椎」のを撮る等検査を徹底する義務が発生していたのであり、速MRI- 24 -やかに「胸椎」の検査等を実施し、病変の種類と部位の特定し、即刻MRI治療を開始すべきであった。 しかるに、同年6月19日の受診でも、B医師からは、原告の症状についての説明もなく、今後の診療についての特段の指示もなく終わった。 B医師が原告の病状が緊急性を持ったものであったことにようやく気が(3)付いたのは、同年7月3日の受診時、原告は、痺れが左足だけでなく、右上半身にまで広がってきて、胸から背中にかけて締め付けるような感覚が出てきたことを訴えた時である。B医師の義務の懈怠は明らかである。 しかし、同年7月12日の本件手術によって、原告の右上半身の胸から(4)背中にかけて締め付けるような痺れ感は、術前よりも一層強くなり、かつその範囲も広がり、更には、右上半身には、不定期かつ頻発の耐え難い激痛が出現した。 すなわち、右上半身の痺れの原因である胸髄腫瘍は、B医師の診断と治療の遅れから、時既に遅く、不可逆的な段階に至っていたのである。 以上、B医師の病因の早期発見適切治療義務違反によって、原告は、そ(5)の右上半身の麻痺が程度・範囲ともに悪化し、かつ耐え難い 断と治療の遅れから、時既に遅く、不可逆的な段階に至っていたのである。 以上、B医師の病因の早期発見適切治療義務違反によって、原告は、そ(5)の右上半身の麻痺が程度・範囲ともに悪化し、かつ耐え難い激痛にしばしば襲われるようになった。 ()被告の主張検査の有用性と診断の難易について MRI脊髄腫瘍の診断には検査が有用であるというのは、脊髄腫瘍であったMRIという結果から考察したものにすぎない。 むしろ、胸髄腫瘍自体は、症状がかなり進行するまでは特徴的な症状が現れ難い疾患であることから、診断困難な疾患であるとされていることを認識すべきである。Gらは、胸髄腫瘍について、初発より入院までの期間は平均2.7年であったとしているところ、本例では平成13年7月に入院しているが、前年12月に症状出現、平成13年3月に初診でおり、それぞれ7か月、4か月- 25 -しか経っておらず、胸髄腫瘍の症例としては、極めて速やかに診断に至っているものというべきである。 4月24日の時点について 4月24日までの約3ないし4か月の短期間で、原告の症状の程度と範囲が急速に悪化し、拡大しているとの所見は認められていない。すなわち、術前の主症状である左下肢の症状についていえば、平成13年3月8日の初診時においては、左臀部から大腿後面、下腿の痺れ感、灼熱感が認められたものであるが、次の受診日である3月27日の際には、痺れは下腿の一部にあるにとどまり、4月24日の受診日においても、痺れは下腿にあるにとどまり、原告自ら「テニスはできる」とまで述べていたものである。 また、脊髄腫瘍における特徴的症状は、安静時痛や肋間神経に沿った帯状痛であり、胸髄腫瘍を含めた胸椎部疾患における特徴的症状は、体幹部の横断性知覚障害などであるところ、本件では、4月24日までの間、安静 た、脊髄腫瘍における特徴的症状は、安静時痛や肋間神経に沿った帯状痛であり、胸髄腫瘍を含めた胸椎部疾患における特徴的症状は、体幹部の横断性知覚障害などであるところ、本件では、4月24日までの間、安静時痛も、肋間神経に沿った帯状痛も、体幹部の横断性知覚障害も、いずれも出現していない。そして、胸椎部疾患の既往歴や治療歴もない。してみれば、4月24日までの間において、胸髄腫瘍などの胸椎部の疾患を疑って、その精査(検MRI査)を行うような医学的根拠はないものといわざるを得ない。 その上、原告には頸椎部における変性疾患の既往歴・治療歴があり、しかも、4月24日までの下肢症状は、頸椎所見からして、頸椎部の変性疾患でMRIも説明可能であったものである。このことからも、胸髄腫瘍などの比較的稀な胸椎部の疾患を疑うべきであるとはいえない。 したがって、4月24日までの間に胸椎の検査を指示し、胸髄腫瘍でMRIあると診断すべき注意義務があるとはいえない。 6月19日の時点について 同日の診療において、体幹部の横断性知覚障害が出現したため、胸髄腫瘍を含めた胸椎部の疾患を疑い、同部の検査を予約しているのであるから、MRI- 26 -注意義務違反がないことは明らかである。 第2本件手術中における手技上の誤りの有無(争点)(2)()原告の主張本件手術前の原告の状態 本件手術前の原告の苦痛の中心は、左脚の痺れと痛みが主なものであった。 右足の痺れはあったとしても左脚のそれに比べ、格段に軽度のものであって、原告も意識しないことが多かったし、胸の痺れについても左が重点であった。 第1(争点)の2、3及び4記載の症状を経て、4記載のとおり、(1)(2)(3)7月3日の受診時には、原告の痺れは、左足だけでなく、右上半身にまで広がってきて ついても左が重点であった。 第1(争点)の2、3及び4記載の症状を経て、4記載のとおり、(1)(2)(3)7月3日の受診時には、原告の痺れは、左足だけでなく、右上半身にまで広がってきて、胸から背中にかけて締め付けるような感覚が出てきていた。 しかし、同年7月12日の本件手術によって、原告の右上半身の胸から背中にかけて締め付けるような痺れ感は、術前よりも一層強くなり、かつその範囲も広がり、更には、右上半身には、不定期かつ頻発の耐え難い激痛が出現した。 本件手術後の原告の状態 本件手術後、術前余り異常の感じられなかった右下肢に、運動障害が出(1)現した。 これらの症状は、原告にとって、本件手術前は経験したことのないものであり、本件手術に起因したものであることは明らかである。 また、本件手術後の原告は、左側の苦痛は軽減したものの、右上半身の胸から背中にかけての痺れ感は、格段に増悪し範囲も広がった。のみならず、右下肢の痺れ感も増大し感覚麻痺まで出現した。また、退院後しばらくして、上半身に神経痛のような猛烈な痛みが出るようになった。 現在に至るも、基本的に、その痺れと痛みは続いており、その症状が残っているのである。 本件手術後は、左側の苦痛は軽減したものの、右上半身の胸から背中に(2)かけての締め付けられるような痺れ感は、格段に増悪し範囲も広がった。の- 27 -みならず、右下肢の痺れ感も増大し感覚麻痺まで出現した。また、退院後しばらくして、上半身(特に右上半身)に神経痛のような猛烈な痛み(不定期かつ頻発の耐え難い激痛)が出るようになった。 原告は、退院後も被告病院に通院していたが、術後に生じた前記苦痛が(3)軽減されないまま、担当医より、これ以上は通院しても変わらない旨言われたことと、被告病院担当医及び本件手術への不信から、弁 。 原告は、退院後も被告病院に通院していたが、術後に生じた前記苦痛が(3)軽減されないまま、担当医より、これ以上は通院しても変わらない旨言われたことと、被告病院担当医及び本件手術への不信から、弁護士会の医療事件相談を通じて弁護士Hに証拠保全を含む調査を依頼し、東京簡易裁判所による検証手続(平成14年12月19日実施。平成14年第022446号( )サ証拠保全申立事件)が行われていたこともあり、その後は、被告病院への通院をやめたが、右下肢から胸部にかけての疼痛が増強したので、平成15年4月18日以後は、C病院の整形外科に通院し、ボルタレン(痛み止め)等の処方を受け、現在まで通院を続けている。 原告に残っている現在の障害は、以下のとおりである。 (4)ア麻痺症状日常的に、24時間、365日、右足には麻痺と痺れがある。強く締め付けられるような感じである。 また、原告に生じている麻痺感覚は、臀部、肛門及びペニスにも至っている。そして、その肛門の麻痺は、排便時に便を排出したことは分かるものの、どれくらいの量が出たかは、いちいち視覚確認しない限り分からず、原告は不便を感じている。更に、前述の締め付け感は、胸部にも常時あり、その感覚は千変万化する。 イ疼痛-神経痛様の症状退院後まもなく、上半身に神経痛様の猛烈な痛みが生じた。 この痛みは、酷いときも軽度の時もあるが、酷いときはとても辛く、いつかかる酷い痛みが来るか分からない状態なので、原告は外出時には、常に、ボルタレンを持ち歩いている。 - 28 -ウ歩行障害右足の麻痺と痺れによる強い締め付け感は、歩行時、丸太の棒を引きずりながら歩いているような感じがするのである。原告は、長い時間の連続歩行は困難で、外出時には、10分くらい歩いては休む状態である。また、右足が締め付けられたような 付け感は、歩行時、丸太の棒を引きずりながら歩いているような感じがするのである。原告は、長い時間の連続歩行は困難で、外出時には、10分くらい歩いては休む状態である。また、右足が締め付けられたような感覚は、歩行時の安定感を欠き、倒れやすい状態にあるのであり、時に道路で転ぶこともある。 被告の注意義務の内容と懈怠 本件手術のように脊髄という重要な神経・神経根等の集まっている部位(1)の腫瘍を摘出する手術の場合、周囲の神経・神経根等を圧迫・無理な牽引・損傷等しないように細心の注意を払ってなすべき注意義務があることはいうまでもない。 しかるに、F医師らの執刀医は、この注意を怠って、無理な手術操作或(2)いは誤った手術操作によって周囲の神経・神経根等を過度に圧迫、無理な牽引、或いは損傷等を加えた結果、原告の右下肢に、麻痺、運動障害を発症するに至らせた。 ()被告の主張手術内容について 執刀医は、F医師。助手は、D・I・J医師。 全身麻酔下に腹臥位とし、第1から第4胸椎椎弓を展開し、第2、第3胸椎椎弓を切除。硬膜外腔の止血操作ののち、硬膜切開を行い、4-0のナイロン糸にて切開部を固定。 脊髄右側に1.5の卵円形の灰色の腫瘍を認める。腫瘍表層の血管を凝cm固止血後、超音波吸引器に腫瘍の内減圧を行い、大きさが約2分の1になったところで、腫瘍を下垂体接枝で挟み、摘出。硬膜と軽度の癒着があったが、腫瘍は容易に摘出された。脊髄には腫瘍が強く圧迫されていた場合に見られる圧痕が認められた。 - 29 -硬膜切開部を4-0のナイロン糸にて二重に密に縫合し、さらに術後髄液瘻を防止するため、筋膜によるパッチを行った。脳室用ドレナージチューブ2本を創部におき閉創した。 。 手術時間は1時間57分、出血量70。術中合併症は認められなかったml手術 し、さらに術後髄液瘻を防止するため、筋膜によるパッチを行った。脳室用ドレナージチューブ2本を創部におき閉創した。 。 手術時間は1時間57分、出血量70。術中合併症は認められなかったml手術中術後の浮腫予防のため、ソル・メドロール500静注。 mg手術手技に問題はないこと 上記1で述べたところから明らかなように、誤った手術操作によって、周囲の神経・神経根等を過度に圧迫、無理な牽引、或いは損傷等を加えたというような手技は行っていない。 むしろ、腫瘍摘出に当たってまず内減圧をはかるなど、脊髄に対して愛護的に手技を進めている。実際、手術時間も長くなく、出血量も少なく、腫瘍も容易に摘出できているのであり、このことは、術中にトラブルがなかったことの証左である。 なお、F医師は日本脊椎脊髄病学会認定の指導医であり、かつ日本脊椎脊髄病学会評議員を務めるなど、脊椎外科分野では指導的立場にあり、脊椎外科分野でも十分な実績がある。 第3本件手術前の説明義務違反の有無(争点)(3)()原告の主張医師がすべき説明 説明の主体(1)まず、手術を執刀する医師によってなされるべきである。仮にやむを得ない理由で、他の医師に代わって説明させる場合、上記内容を十分に患者に理解させることを説明医師に徹底すべきである。 説明の内容(2)患者が、自由かつ真摯に自分の受ける医療行為について決定をなすためには、専門家である医師の充分な説明がなされることが不可欠である。 - 30 -すなわち、医師は、本件手術に先だって、原告の現症状とその原因、本件手術療法を採用する理由、有効性及びその合理的根拠(有効性に関する議論の余地がある場合には、その議論状況、本件手術の内容、本件手術後の改)善の見込み、本件手術による危険性の程度、本件手術に伴う合併症の有無、 採用する理由、有効性及びその合理的根拠(有効性に関する議論の余地がある場合には、その議論状況、本件手術の内容、本件手術後の改)善の見込み、本件手術による危険性の程度、本件手術に伴う合併症の有無、本件手術をしない場合の予後、他に取り得る治療方法の有無等について、素人である患者が理解できるように、できるだけ具体的にわかり易く説明すべきである。 実際に被告病院の医師が行った説明 説明の主体(1)本件で実際に説明をしたのは、執刀医であるF医師ではなくD医師であった。執刀医F医師は、ただの一度も原告に本件手術についての説明をしなかった。 説明の内容(2)現に説明に当たったD医師の説明は「手術自体はそれほど難しい手術で、はない、個人差はあるが、左足の痺れは、通常手術後1週間くらいでとれるであろう、手術後2週間くらいで退院の予定である、手術後の日常生活に支障はでない」等という趣旨のもので、本件手術による危険性の程度及び本件手術に伴う合併症の有無についての説明は皆無であったばかりでなく、右上半身の麻痺は残る或いは更に進行する可能性があるという本件手術後の見込みについての説明も怠った。 被告は、本件訴訟の最終盤になり、後述(第4(争点)の1記載)の(4)とおり、①「慢性的な病理変化が存在していた、②「何らかの形で代償さ」れ、術前の症状としては、左側よりも出現しにくかった、③「腫瘍摘出に」よる急速な神経組織の減圧がなされることで、……慢性的な病理変化に基づく右側の症状が出現した」と主張しているが、そのような可能性があることについて一切説明していない。 - 31 -まとめ このため、原告及び家族は「本件手術自体は難しい手術ではないこと、左、足の痺れは、通常手術後1週間くらいでとれるであろうこと、手術後2週間くらいで退院できる していない。 - 31 -まとめ このため、原告及び家族は「本件手術自体は難しい手術ではないこと、左、足の痺れは、通常手術後1週間くらいでとれるであろうこと、手術後2週間くらいで退院できること、手術後の日常生活に支障はでないこと」を説明したD医師の言を信じ込んで、本件手術を受けることを承諾した。すなわち、原告はその自由かつ真摯な意思決定に基づかないで、本件手術を承諾したものである。 ()被告の主張説明者について 本件では、被告病院整形外科の脊椎グループに属し、主治医で、かつ手術助手であったD医師が説明しており、説明者として何ら問題ない。そのうえで、執刀医であるF医師からも原告に質問がないか確認しているのである。以下、詳論する。 まず、被告病院においては、脊椎疾患の治療に際し、整形外科の脊椎グループとしてチーム医療を行っており、診断や治療方針、治療内容について、十分にグループ内で相談して決定している。そのため、脊椎グループに所属する医師は、すべて診断や治療方針、治療内容を理解しているのである。 しかも、本件において説明を行ったD医師は、脊椎グループに属するのみならず、原告の主治医として、原告の診断や手術の必要性について最も理解している立場にある。その上、脊椎手術は執刀医がひとりで行うわけではなく、助手も執刀医と同様に、手術内容や手術のリスクについて十分に理解した上で、手術に参加する立場にあるところ、D医師は本件手術についての助手でもあったものである。 すなわち、本件において説明を行ったD医師は、原告の診断を踏まえて手術の必要性について的確に説明し、更に、手術の内容や手術のリスクについても十分に説明できる立場にあったものである。 したがって、D医師が被告病院整形外科脊椎グループに属し、主治医で、か- 32 -つ手術助手であ いて的確に説明し、更に、手術の内容や手術のリスクについても十分に説明できる立場にあったものである。 したがって、D医師が被告病院整形外科脊椎グループに属し、主治医で、か- 32 -つ手術助手であったにもかかわらず、単に執刀医でなかったというだけで、説明義務違反など発生するはずがない。 そもそも、医療施設において執刀医に説明させる法的義務があるなどという根拠が一向に明らかでない。 すなわち、被告病院と原告との間には診療契約があり、被告病院は原告に対して手術を行うに際して説明義務を負うが、その説明が執刀医のみからなされねばならないという法的根拠はどこにもない。 しかも、本件では、執刀医であるF医師が原告のベッドサイドを訪れ、「脊椎外科専門のFですが、手術を担当させていただきます。他に質問はございますか。」と再度確認がなされているのである。 説明内容について )、手術を実施するに当たっては、診断(病名と病状、実施予定の手術の内容手術をしなかった場合の予後、手術に付随する危険性について説明すべきである。なお、脊髄腫瘍の場合、手術以外の治療方法はない。 本件では、診療録にも記載があるとおり、極めて詳細な説明がなされている。 まず、診断(病名と病状、実施予定の手術の内容、手術をしなかった場(1))合の予後などについては、少なくとも次の点について説明している。 造影写真から判断すると、第2、第3胸椎高位の脊髄腫瘍(硬膜内MRI髄外腫瘍)であること。 硬膜内髄外腫瘍の90%は神経鞘腫あるいは髄膜腫などの良性腫瘍であること。 神経症状は悪化しており、今後両下肢完全麻痺や膀胱直腸障害が悪化する可能性が高いこと。 これらの症状の進行を押さえるためには、脊髄腫瘍の摘出術が必要であること。 具体的な手術内容は、椎弓切除術の上で腫瘍摘出術を行ない、さらに 後両下肢完全麻痺や膀胱直腸障害が悪化する可能性が高いこと。 これらの症状の進行を押さえるためには、脊髄腫瘍の摘出術が必要であること。 具体的な手術内容は、椎弓切除術の上で腫瘍摘出術を行ない、さらに病理- 33 -診断を行うのが好ましいこと。 全身麻酔下に手術を行うこと。 手術時間は通常2時間ぐらいであること。 次に、手術に付随する危険性については、少なくとも次の点について、(2)説明している。 創部周辺の疼痛が術後生じる可能性があること。 創部の感染症、具体的には直接または血行性に創部の感染を生じることがあること。 十分消毒、創部洗浄、抗生剤投与などを行うが、全身性の感染症を生じる可能性があり、その場合には、抗生剤の長期投与や再手術を必要とすることがあること。 感染症以外の全身性合併症としては、肺梗塞、心筋梗塞、脂肪栓塞、深部静脈血栓その他予期できない合併症が起こり得ること。 脊髄腫瘍摘出術では、神経脱落症状が生じ得ること。具体的には、神経操作や神経根の切除により、麻痺(筋力低下、感覚鈍麻など、痺れ、痛みが)あらたに出現あるいは時には増悪することがあり得ること。 胸髄は大変易損性であること、脊髄浮腫や脊髄内循環障害などにより、術後あらたな神経症状が出現する可能性があること。 第4過失行為と結果との間の因果関係の有無(争点)(4)()原告の主張「症状の原因について」の被告主張について 右側に手術直後に新たな症状が出現した理由につき、被告は、①「腫瘍のあった右側は、長期にわたる脊髄圧迫により脊髄に線維化、脱髄、循環障害などの慢性的な病理変化が存在していた」また、②「急性の圧迫ではなく、徐々に進行していったために、何らかの形で代償され、術前の症状としては、左側よりも出現しにくかった、③「腫瘍摘出による急速な神経組織の減圧がなさ 病理変化が存在していた」また、②「急性の圧迫ではなく、徐々に進行していったために、何らかの形で代償され、術前の症状としては、左側よりも出現しにくかった、③「腫瘍摘出による急速な神経組織の減圧がなされ」- 34 -ることで、一時的に脊髄浮腫や脊髄循環障害が加わったがために、……慢性的な病理変化に基づく右側の症状が出現した」と「可能性」を主張するが、カルテには、かかる記載はないし、事前に現状のような後遺症が出る可能性についての説明は、一切なかった。また、術後に右側の症状が出てきた際にも、また、その後の被告病院での治療中にも、被告病院のどの医師からも、かかる可能性の説明を受けたことはない。 そもそも①の病理変化が存在していたことは、本件訴訟の最終盤になって主張されたものであって、その可能性の医学的な裏付けは示されてはいない。②及び③の可能性の医学的な裏付けも示されてはいない。 上記の被告主張は「原因不明」と原告に言い続けてきた被告病院側のこじ、つけ、言い訳に類するものである。 なお、被告の現症状については、第2(争点)の2記載のとおりであ(2)(5)り「改善している」とはいい難い。 、検査の懈怠と原告の後遺症の関係 MRI、被告担当医が、早期且つ適切な時期に「胸椎」の検査をするなどしてMRI早期に診断していたならば、原告の胸随腫瘍が本件のごとく進行する前に診断でき、早期の治療が可能だったのであり、原告に現在残っているような後遺症は生じなかった。 被告の手術操作と原告の後遺症の関係 第2(争点)の2に詳述のとおり、原告には、手術前にはなかった症(1)(2)状が、本件手術後に出現している。本件手術の後、原告の右上半身は、麻痺がその程度も範囲も悪化し、更には不定期かつ頻発の耐え難い激痛が出現し、また右下肢には、 は、手術前にはなかった症(1)(2)状が、本件手術後に出現している。本件手術の後、原告の右上半身は、麻痺がその程度も範囲も悪化し、更には不定期かつ頻発の耐え難い激痛が出現し、また右下肢には、麻痺、運動障害が出現した。 手術操作を誤ったことにより原告の後遺症が発生したこと(2)手術前にはなかったかかる症状の出現・増悪は、本件手術時の手技によるものとしか考え得ない。 - 35 -胸椎の2番目、3番目等は、頸椎と同様に、管腔が非常に狭いために、手技上のちょっとした操作で、神経を圧迫・損傷する危険が大きい。本件で他に原因として指摘し得るような異常な事態がなかった以上、術後今日に至るまで前記原告の症状が続いていること自体が、本件手技上の操作が原告の現症状の原因となっていることを裏付けるものである。 なお、被告は、本件で、脊髄の浮腫が生じていることをとらえ、そのために術後に原告の右側に新たな症状が出現・悪化したと主張する。 しかし、一般に浮腫の影響だけならば、その症状は2ないし3週間もすれば、改善され、後遺症など残らないはずである。他方、被告病院の担当医は、原告に後遺症が残っていることを事実上認めて身体障害者診断書・意見書に原告の障害につき記載しているのである。 これは、浮腫を原因とする事態を遥かに超えておることは明らかである。 被告の説明義務違反と原告の後遺症の関係 被告が前述(第3(争点)のとおり、適切な説明を尽くさなかったため(3))に、原告は本件手術につき、原告はその自由かつ真摯な意思決定に基づかないで本件手術を承諾したものであり、仮に本件のような重大な後遺症の可能性について、適切な説明がなされていたならば、直ちに、本件手術を受けることを承諾するようなことはなく、本件手術は行われなかったのであるから、本件のごとき後遺症に苦しめ 本件のような重大な後遺症の可能性について、適切な説明がなされていたならば、直ちに、本件手術を受けることを承諾するようなことはなく、本件手術は行われなかったのであるから、本件のごとき後遺症に苦しめられることもなかった。 本件のごとき重大な後遺症につき、説明を受けないまま承諾して、本件手術を受けた結果、原告の右上半身の麻痺がその程度も範囲も悪化し、更には不定期かつ頻発の耐え難い激痛が出現し、また右下肢には、麻痺、運動障害が出現した。 説明義務違反と本件後遺症の間に因果関係があることは明らかである。 ()被告の主張症状の原因について - 36 -本件では、結果的に見ると、胸髄右側の第2・第3胸椎レベルにおいて、胸髄腫瘍が認められている。 この腫瘍が脊髄を左側に圧迫していたため、手術前においては、主として、左側に症状が認められていたものと考えられる。そして、手術により、腫瘍を十分に摘出できたために、腫瘍による脊髄圧迫症状は消失している。すなわち、左側の症状は消失している。 その一方で、右側には術直後に新たな症状が出現している。この点については、次のような可能性があるものと考える。まず、腫瘍のあった右側は、長期にわたる脊髄圧迫により脊髄に線維化、脱髄、循環障害などの慢性的な病理変化が存在していたものと考えられるが、急性の圧迫ではなく、徐々に進行していったために、何らかの形で代償され、術前の症状としては、左側よりも出現しにくかった可能性がある。そして、上記のような変化のある部分について、腫瘍摘出による急速な神経組織の減圧がなされることで、一時的に脊髄浮腫や脊髄循環障害が加わったがために、浮腫や循環障害、さらには慢性的な病理変化に基づく右側の症状が出現した可能性がある。もっとも、このような機序については、脊髄領域においては未解明である。 脊髄浮腫や脊髄循環障害が加わったがために、浮腫や循環障害、さらには慢性的な病理変化に基づく右側の症状が出現した可能性がある。もっとも、このような機序については、脊髄領域においては未解明である。 ただし、右側の症状も、ステロイドの投与やリハビリテーションの成果で、かなり改善している。 検査義務との因果関係について 上記1のとおり、術後の右側の症状は、胸髄腫瘍の治療として腫瘍が除かれたために出現したものであり、時間的経過に伴って症状が増悪したために出現したものではない。すなわち、精査を行わないうちに時間が経つことで、右側の症状が不可逆的な程度にまで増悪していったなどという事情は、本件では想定できないのである。 したがって、検査の実施時期と右側の症状出現との間の因果関係はなMRIい。 - 37 -手術手技との因果関係について 上記1のとおり、術後に現れた右側の症状は、腫瘍による圧迫を解除することによる合併症である。神経や神経根の圧迫や牽引が原因ではない。 説明義務との因果関係について 執刀医から説明がなされれば、手術の同意がなされなかったなどといえ(1)ないことはいうまでもない。すなわち、原告のいう説明義務違反と自己決定権の侵害、あるいは生じた結果との間に因果関係はない。 原告は術前、下肢の歩行障害などにより日常生活にも難渋しており、そ(2)の治療方法としては手術しかなかったものである。 したがって、原告としては手術をせざるを得ない状況にあったものであり、説明内容と手術実施との間に因果関係はない。 第5損害の内容及び損害額(争点)(5)()原告の主張損害額の具体的内訳 原告に生じた損害は、具体的には次のとおりである。 傷害(1)症状固定時期は、身体障害者診断書作成日である平成14年7月22日とする。 ア入 (5)()原告の主張損害額の具体的内訳 原告に生じた損害は、具体的には次のとおりである。 傷害(1)症状固定時期は、身体障害者診断書作成日である平成14年7月22日とする。 ア入院関係費44万0380円入院治療費36万7980円( )ア平成13年7月6日から同年8月22日までの48日間。 入院雑費6万2400円( )イ1日当たり1300円であるから、これに平成13年7月6日から同年8月22日までの48日間を乗じた。 交通費1万0000円( )ウ1回につき5000円であるから、これに回数(2回)を乗じた。 - 38 -イ通院関係費4万2820円通院治療費3万0220円( )ア交通費1万2600円( )イ往復1回につき1000円であるから、これに回数(10回)を乗じて、さらにタクシー代2600円を加えた。 ウ介護費1万5450円原告は、日常家事に支障を来すようになったため、その援助のためにヘルパーを必要とするようになった。介護保険を利用しているので、自己負担金は平成14年3月ないし7月分で計1万5450円である。 エ休業損害129万4104円平成13年7月6日から平成14年7月22日までの期間の分である。 。 、本件の後遺症が発現する前3か年の原告の平均収入(年金を除く)は679万2992円である。また、平成13年は626万4800円であり、平成14年は548万円であった。そこで、これを計算すると次のとおりとなる。 <計算式>(6792992-6264800)+(6792992-5480000)÷12×7オ傷害慰謝料180万0000円平成13年7月6日から平成14年7月22日までの期間の分である。 後遺症(2)後遺障害等級は、右上半身12級、右下半身12級、併合に 5480000)÷12×7オ傷害慰謝料180万0000円平成13年7月6日から平成14年7月22日までの期間の分である。 後遺症(2)後遺障害等級は、右上半身12級、右下半身12級、併合により11級となる。症状固定時期は、平成14年7月22日(身体障害者診断書作成日)である。 ア逸失利益878万0893円原告は、平成14年7月22日当時、67歳であった。 平成14年簡易生命表によれば、平均余命は16.46年である。 - 39 -平均余命を2で除すると、約8になるから、ライプニッツ係数は6.4632である。 原告に後遺症が発現する前3か年の原告の平均収入は679万2992円である。 さらに、労働能力喪失率は80%である。 よって、これらを計算すると、次のとおりとなる。 <計算式>6792992×0.2×6.4632イ慰謝料390万0000円ウ介護費20万6822円ヘルパー派遣を介護保険利用した場合の自己負担金は、平成14年3月ないし12月合計3万0489円平成15年1月ないし12月合計3万2384円であるので、年間3万2000円と計算すると、式は次のとおりとなる。 <計算式>32000×6.4632弁護士費用165万0000円(3)原告は、本件交渉を本件訴訟代理人弁護士らに委託した。本件のような医療事故では、訴訟遂行上、弁護士の存在は不可欠であり、報酬額の一部に過ぎないが、少なくとも、上記合計額の約1割である165万円は相手方たる被告に負担させることが相当である。 合計1813万0469円(4)説明義務違反に基づく慰謝料について 仮に、前記第4(争点)で主張した因果関係が認められないとしても、(4)被告担当医の誰からも発生の可能性を説明されなかった本件の後遺症は、原告にとって全く予期しないもの 基づく慰謝料について 仮に、前記第4(争点)で主張した因果関係が認められないとしても、(4)被告担当医の誰からも発生の可能性を説明されなかった本件の後遺症は、原告にとって全く予期しないものであり、被告担当医師からの説明を信じて手術を受け、予期しない後遺障害を被った原告の精神的苦痛は甚大である。この苦痛を仮に金銭評価するとすれば1000万円を下らないから、そのうち1000- 40 -万円が慰謝料として認められるべきである。 ()被告の主張C病院の診療録(甲A3〔18)によると、次のとおりであるが、現在は更〕に改善しているはずである。 まず、疼痛に関しては、天候(台風など)の影響があるのか、いわゆる神経痛が発生することもあり、このような場合には、ボルタレンを服用することがあるが、通常はボルタレンなどの痛み止めを服用しなくともよい状態である。 そして、脊髄性疼痛は通常、きわめて頑固であり、疼痛改善にはボルタレン内服では不十分である。医療用麻薬(オピオイド)の投与を必要とすることが多い。それにもかかわらず、原告に限って脊髄性疼痛があるとは考え難い。 また、知覚異常に関しては、痺れが「残っている」という指摘ができる程度であり、仕事には何ら差し支えない(K医師はNPと記載。いずれにせよ、)あくまで自覚症状である。 さらに、原告は杖なしで普通に歩行できており、右下肢の麻痺はまったくない。 所見についても、平成15年4月25日、同6月3日の写真のレMRIMRIポートのとおりである。 まず、4月25日のは胸椎のであるが、手術部位においても、脊MRIMRI髄の圧迫所見、変形、癒着所見、脊髄内輝度変化などの脊髄の異常、腫瘍の再発など、一切の異常所見はない。原告は粗暴な手術操作により、脊髄に不可逆的障害を与えたと、なんの根 おいても、脊MRIMRI髄の圧迫所見、変形、癒着所見、脊髄内輝度変化などの脊髄の異常、腫瘍の再発など、一切の異常所見はない。原告は粗暴な手術操作により、脊髄に不可逆的障害を与えたと、なんの根拠もなく決めつけているが、この所見は形MRI態的には手術操作により、脊髄に生じ得る変形、癒着所見、脊髄内輝度変化が全くなく、原告の主張を否定するものである。この画像所見からしても、原告の臨床症状は今後も軽減する可能性が高く、可逆的な変化である可能性がある。 原告の臨床症状が現在も軽減傾向にある事実が、このことを示している。本件のように、既に慢性圧迫により、脊髄に病理変化を生じている脊髄病変例では、- 41 -粗暴な手術操作により、脊髄に不可逆的障害が加えられた場合、臨床症状が経時的に軽減する可能性はきわめて低い。 次に、6月3日のは胸椎高位ばかりでなく、頸椎も描出されている。 MRI胸椎の手術高位では4月25日のと同様の所見であるが、頸椎には頸椎MRI症による脊髄圧迫が第3/4頸椎間、第4/5頸椎間、第5/6頸椎間、第6/7頸椎間にみられ、画像上は頸椎症脊髄症と診断される。原告の神経症状の一部は、頸椎症脊髄症により生じている可能性が存在する。少なくとも、時々みられるボルタレン内服を要するという程度の疼痛であり、脊髄腫瘍の術後疼痛としては、ごく普通にみられる程度のものである。

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