主文 西税務署長が平成16年5月28日付けで原告に対してした平成14年11月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求主文第1項と同旨。 第2事案の概要本件は,造船業を営む原告が,原告を船舶の売主,外国法人を買主,株式会社Aを建造者とする三者間の契約を締結したところ,船舶引渡しの前に同契約が解除されたことにより,原告から外国法人に対し,既に原告が受領していた分割払金(以下「本件分割払金」という。)の返還及び本件分割払金に対する約定の割合に基づく金員(以下「本件金員」という。)の支払がされたことにつき,処分行政庁において,本件金員が所得税法161条6号所定の「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の「利子」として外国法人の国内源泉所得に該当し,同法212条1項により源泉徴収の対象になるとして,原告に対し,平成14年11月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分を行ったことから,原告がこれらを争い,その取消しを求めている事案である。 法令の定め(1)外国法人に対しては,国内源泉所得に係る各事業年度の所得に対して法人税が課税される(法人税法9条)。国内源泉所得とは,同法138条各号に掲げるものをいい,これらの国内源泉所得のうち一定のものが,各外国法人の種類に応じ,法人税の課税標準を構成する(同法141条)。 (2)外国法人の国内源泉所得に係る所得に対して法人税が課されない場合で あっても,さらに所得税法の定める一定の要件を充たすときは,所得税が課されることとされており(所得税法5条4項),同法161条各号に掲げる国内源泉所得のうち一定のもの(1号及び8号を除くその余のもの)については,各 得税法の定める一定の要件を充たすときは,所得税が課されることとされており(所得税法5条4項),同法161条各号に掲げる国内源泉所得のうち一定のもの(1号及び8号を除くその余のもの)については,各外国法人の種類に応じ,所得税の課税標準を構成する(同法178条)。所得税の課税は,原則として支払を受けるべき金額に対して100分の20の税率による分離課税である(同法179条)。 (3)所得税法178条の規定によれば,国内に恒久的施設を有しない外国法人に所得税が課せられる国内源泉所得は,同法161条1号の3から7号まで及び9号から12号までに掲げるものであるとされているところ,同条6号は,そのひとつとして,「国内において業務を行う者に対する貸付金(これに準ずるものを含む。)で当該業務に係るものの利子(政令で定める利子を除く。)」を掲げている。 (4)外国法人に対し,「国内において業務を行う者に対する貸付金(これに準ずるものを含む。)で当該業務に係るものの利子(政令で定める利子を除く。)」(所得税法161条6号)の支払をする者は,その支払の際,当該国内源泉所得について所得税を徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までに,これを国に納付しなければならない(同法6条,212条1項)。 前提事実(争いがないか,掲記の証拠(書証の番号は特に断らない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)当事者等原告は,大阪市に本店を有し,船舶等の設計,製造,売買等を業とする株式会社である(争いなし)。 (2)本件造船契約の締結等ア原告は,平成11年9月30日,リベリア共和国に本店を有するBLtd. (以下「B社」という。)及び株式会社A(以下「A」という。)と の間で,原告を売主,B社を買主,Aを建造者として,Aにおい 原告は,平成11年9月30日,リベリア共和国に本店を有するBLtd. (以下「B社」という。)及び株式会社A(以下「A」という。)と の間で,原告を売主,B社を買主,Aを建造者として,Aにおいて約定の船舶2隻(建造船番号XXX及び同YYY)を建造,進水及び艤装して完成させ,これらを原告がB社に販売し,平成13年9月28日までに引き渡す旨の造船契約(建造船番号YYYの船舶を以下「本件船舶」といい,同船舶に係る造船契約を以下「本件造船契約」という。)を締結した(なお,本件造船契約に係る契約書は,英文で作成され,準拠法は英国法とされている。)(甲2,6の1,乙1)。 イB社の親会社であり,ギリシャ共和国に本店を有するCInc.(以下「C社」という。)は,平成11年9月30日,本件造船契約に基づいて買主であるB社が負担する債務を保証した(争いなし)。 ウ原告は,原告,B社及びAの間で締結された本件造船契約及び他の1隻に係る造船契約を履行するため,平成11年10月7日,Aとの間で,2隻の船舶建造請負契約を締結した(甲2,乙2)。 (3)契約内容の変更等(争いなし)ア原告は,平成13年6月25日,B社及びAとの間で,本件造船契約の買主をB社からマルタ共和国に本店を有するDLtd. (以下「D社」という。)に変更する旨合意した。 イ原告は,平成13年10月31日,D社及びAとの間で,本件造船契約に基づく船舶の引渡期限を,平成13年9月28日から平成14年2月5日に変更する旨合意した。 (4)契約の解除,代金返還及び本件金員の支払(争いなし)アC社は,原告に対し,本件造船契約に基づき買主が支払うべき代金を,約定に従い,次のとおり,支払った。 ①平成11年9月30日1億7426万5200円②平成13年6月11日1億9362万8 アC社は,原告に対し,本件造船契約に基づき買主が支払うべき代金を,約定に従い,次のとおり,支払った。 ①平成11年9月30日1億7426万5200円②平成13年6月11日1億9362万8000円③同8月3日1億9362万8000円 イ原告による本件船舶の引渡しは遅延し,遅延が約定の引渡期限から180日間にわたり継続したため,D社は,平成14年8月21日,本件造船契約3条1項(c)に基づき,原告に対し,本件造船契約を解除する旨の意思表示をした。 ウ原告は,平成14年11月11日,C社に対し,本件造船契約10条2項に基づき,上記アの既払代金の合計額5億6152万1200円及び本件金員8481万4369円(既払代金を受領した日から返金する日まで,既払代金に対する年8パーセントの割合による金員)を支払った。 (5)納税告知及び不納付加算税の賦課決定等(争いなし)ア処分行政庁は,原告に対し,平成16年5月28日付けで,平成14年11月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分(以下それぞれを「本件告知処分」,「本件賦課決定処分」といい,併せて「本件各処分」という。)をした。本件告知処分が賦課した本税の額は本件金員の20パーセントに当たる1696万2873円,本件賦課決定処分が賦課した不納付加算税の額は169万6000円である。 イ原告は,平成16年7月27日,本件各処分を不服として,異議申立てをしたところ,処分行政庁は,同年10月27日付けで同異議申立てを棄却する決定をした。 ウ原告は,平成16年11月26日,審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平成18年5月11日付けで同審査請求を棄却する裁決をした。 被告の主張する課税根拠の要旨本件金員は,所得税法161条6号の「国内にお 年11月26日,審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平成18年5月11日付けで同審査請求を棄却する裁決をした。 被告の主張する課税根拠の要旨本件金員は,所得税法161条6号の「国内において業務を行う者に対する貸付金(これに準ずるものを含む。)で当該業務に係るものの利子(政令で定める利子を除く。)」に該当するため,外国法人であるD社は,同法5条4項 の規定により,所得税を納める義務があり,原告は,同法212条1項の規定により,その源泉徴収義務を負う。 争点 (1)本件分割払金が所得税法161条6号の「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に該当するか。 (2)本件金員が所得税法161条6号の「利子(政令で定める利子を除く。)」に該当するか。 争点に関する当事者の主張(被告の主張)(1)争点(1)(本件分割払金が所得税法161条6号の「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に該当するか。)について所得税法161条6号に規定する「貸付金(これに準ずるものを含む。)」とは,後記アからキまでに述べるとおり,消費貸借や準消費貸借に基づく貸付金債権に限らず,前渡金その他これに類する債権を含むものである(法人税基本通達20-1-19(3)参照)ところ,本件分割払金は,後記クで述べるとおり,「前渡金」に当たるから,その返還請求権は,「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に当たる。 ア関係法令の規定上,所得税法161条6号に規定する「貸付金(これに準ずるものを含む。)」は,消費貸借や準消費貸借に基づく貸金債権に限定されてはいないものと解される。 すなわち,所得税法161条6号は,同号の国内源泉所得の範囲につき「政令で定める利子を除く。」と規定しているところ,所得税法施行令283条1項は,その「政令で定める利子」について,①「国 解される。 すなわち,所得税法161条6号は,同号の国内源泉所得の範囲につき「政令で定める利子を除く。」と規定しているところ,所得税法施行令283条1項は,その「政令で定める利子」について,①「国内において業務を行う者に対してする資産の譲渡又は役務の提供の対価に係る債権」及び②「①に規定する対価の決済に関し,金融機関が国内において業務を行う者に対して有する債権」のうち,その発生の日からその債務 を履行すべき日までの期間が6か月を超えないものの利子とする旨規定し,当該利子については,所得税法161条6号の国内源泉所得から除外することとしており,「資産の譲渡又は役務の提供の対価に係る債権」のように,消費貸借や準消費貸借に基づく貸金債権に当たらない債権についても,所得税法161条6号に規定する「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に該当することを論理的な前提としているということができる。 また,租税特別措置法(本件金員の支払がされた当時においては,平成15年法律第65号による改正前のもの。以下「措置法」という。)42条の2も,債券の買戻又は売戻条件付売買取引(いわゆるレポ取引)における各売買代金の差額が所得税法161条6号に規定する「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の「利子」に該当することを,さらには,一定の債券の買戻条件付売買取引における買戻代金債権のうち,当初の売買代金額に相当する部分が「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に該当することを論理的な前提としている。 イ「貸付金」及び「(金銭の)貸付け」という言葉は,金銭消費貸借の場合に限定されず,与信取引について広く用いられている。 すなわち,「貸付け」の語が金融機関の与信について用いられている場合には,与信の総称としても用いられるとされており,また,前記アで述べた関係法令の に限定されず,与信取引について広く用いられている。 すなわち,「貸付け」の語が金融機関の与信について用いられている場合には,与信の総称としても用いられるとされており,また,前記アで述べた関係法令の定めにおいても,「貸付金」という言葉は,立法上,消費貸借の目的とされた金銭のみを意味するものとして必ずしも統一的に用いられているわけではなく,さらに,貸金業の規制等に関する法律(本件金員の支払がされた当時においては,平成14年法律第45号による改正前のもの)2条1項は,「金銭の貸付け」の意義について,「手形の割引,売渡担保その他これに類する方法によってする金銭の交付(中略)を含む。」と規定している。そして,与信にいう「信用」と は,一般に,「現在の給付に対して将来の一定日時にその反対給付を行うことを認めること」であり,また,信用は,経済用語としては繰延支払を意味し,当事者間に債権債務関係が設定されることにより成立する。 一般には,この信用を設定する行為を「信用供与」というともいわれている。 これを前記アで述べた関係法令に当てはめれば,所得税法施行令283条1項は,同項各号に掲げる「資産の譲渡又は役務の提供の対価に係る債権」等の発生日から履行日までに間隔があり,延払いがされているために「利子」が生じる場合において,当該債権等が「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に該当することを論理的な前提とする規定であるところ,このような延払いは,先に述べた意味での信用の供与に当たるということができる。また,措置法42条の2に規定された債券の買戻条件付売買取引は,債券を担保とする金融取引であり,当初の売買代金額に金利相当額(買戻しまでの期間に応じ,当初の売買代金額に一定の利率を乗じて算定される。)を上乗せした価格で取引されるのが通常であるから,先に述べ ,債券を担保とする金融取引であり,当初の売買代金額に金利相当額(買戻しまでの期間に応じ,当初の売買代金額に一定の利率を乗じて算定される。)を上乗せした価格で取引されるのが通常であるから,先に述べた意味での与信取引であるということができる。 ウ所得税法161条6号は,「貸付金(これに準ずるものを含む。)」と規定し,「消費貸借又は準消費貸借による貸付金」等と規定することはしておらず,この点からも,私法上の契約類型を問題とすべき必然性はない。むしろ,仮に,消費貸借や準消費貸借等の私法上の契約類型によって同号に掲げる国内源泉所得に該当するか否かを決するとすれば,取引当事者において消費貸借又は準消費貸借以外の契約類型を選択することにより,源泉徴収義務を免れつつ,消費貸借又は準消費貸借と同様の経済的成果を得ようとすることが容易に予想され,課税の公平性を害するばかりか,結果的に消費貸借又は準消費貸借以外の契約類型による与信取引を奨励するかのような効果を生じかねず,経済取引に対する税制 の中立性という観点からも問題が生じ得る。そこで,所得税法161条6号は,そのような私法上の契約類型によって同号所定の国内源泉所得の範囲を画することをせず,直さいに,「貸付金」に準ずる性質のものであれば,すべて同様に同号の国内源泉所得として取り扱うこととしたものと解される。 エ所得税法161条6号の規定ぶりから,「貸付金(これに準ずるものを含む。)」は,そこから「利子」が発生し得る元本債権であることが予定されているところ,「利子」とは,元本債権からその金額と使用期間に応じて一定の割合で発生する法定果実をいい,弁済があるまでの間の元本の使用の対価(信用供与の対価)という性質を有するものであるから,「貸付金(これに準ずるものを含む。)」は,このような信用供与の対 応じて一定の割合で発生する法定果実をいい,弁済があるまでの間の元本の使用の対価(信用供与の対価)という性質を有するものであるから,「貸付金(これに準ずるものを含む。)」は,このような信用供与の対価としての利子が生じ得る元本債権でなければならない。 オ以上によれば,所得税法161条6号にいう「貸付金(これに準ずるものを含む。)」とは,金銭の交付からその返還までに一定の期間が設けられること等により,債務者に対して信用が供与される金銭債権であって,その期間において債務者が元本を使用することができ,その対価としての利子が生じ得るものをいうと解される。 カ以上の考え方は,次の各法令解釈通達により,課税実務上も採用されている。 ①所得税基本通達161-16所得税基本通達161-16は,「法第161条6号かっこ内に規定する「これに準ずるもの」には,次に掲げるようなものがあることに留意する。」として,以下のものを掲げている。 (1)勤務先に対する預け金で預貯金に該当しないもの(2)取引先等に対する保証金,預け金(3)売買,請負,委任の対価又は物若しくは権利の貸付若しくは使用 の対価に係る延払い債権(4)(3)に定める対価に代わる性質を有する損害賠償金等に係る延払債権②法人税基本通達20-1-19法人税法138条6号は,同法第3編にいう国内源泉所得の一つとして,所得税法161条6号と同一文言の規定を置いているところ,法人税基本通達20-1-19は,「国内において業務を行う者に対する債権で次に掲げるようなものは,法人税法第138条第6号かっこ書《貸付金利子の所得》に規定する「これに準ずるもの」に該当することに留意する。」として,以下のものを掲げている。 (1)預け金のうち同条第4号ロ《預貯金の利子等の所得》に掲げる預貯金以外 っこ書《貸付金利子の所得》に規定する「これに準ずるもの」に該当することに留意する。」として,以下のものを掲げている。 (1)預け金のうち同条第4号ロ《預貯金の利子等の所得》に掲げる預貯金以外のもの(2)保証金,敷金その他これらに類する債権(3)前渡金その他これに類する債権(4)他人のために立替払をした場合の立替金(5)取引の対価に係る延払債権(6)保証債務を履行したことに伴って取得した求償権(7)損害賠償金に係る延払債権(8)当座貸越に係る債権キ上記カの法人税基本通達20-1-19(3)にあるとおり,「前渡金その他これに類する債権」が「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に含まれるところ,本件分割払金は,「前渡金(前払金)」又は「前受金」に該当するものである。すなわち,請負契約における請負代金等については,目的物の製造又は加工等に必要な資金をあらかじめ注文者が支払うことがあり,このような場合も,一般的に,企業会計上の「前渡金」又は「前受金」の概念に含めて考えられているところ,本件分割払 金は,原告が本件船舶の引渡しに先立ち,本件造船契約2条3項に基づき,3回にわたり,それぞれその当時の買主であったB社又はD社から,本件船舶の代金の一部として受領した金員であるから,企業会計上の「前渡金(前払金)」又は「前受金」に当たる。 ク所得税法161条6号にいう「貸付金(これに準ずるものを含む。)」とは,金銭の交付からその返還までに一定の期間が設けられること等により,債務者に対して信用が供与される金銭債権であって,その期間において債務者が元本を使用することができ,その対価としての利子が生じ得るものをいうと解されることから,本件分割払金の返還請求権は,「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に該当する。すなわち,本 間において債務者が元本を使用することができ,その対価としての利子が生じ得るものをいうと解されることから,本件分割払金の返還請求権は,「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に該当する。すなわち,本件分割払金は,原告が,本件造船契約2条3項に基づき,3回にわたり,それぞれその当時の買主であったB社又はD社から,本件船舶の販売代金の一部として受領した金員であって,本件造船契約が同契約3条1項(c)の約定に基づきD社によって解除された結果,原告は,本件造船契約10条2項の約定により,同社に対し,本件分割払金の全額を直ちに返還する義務を負うとともに,本件分割払金を受領した日からこれを返還する日までの期間につき,本件分割払金の金額に対し年8パーセントの割合による本件金員を支払う義務を負うに至ったものである。そして,原告は,本件分割払金を本件造船契約に基づいて順次受領しており,同契約の解除によりこれを返還するまでは自由に使用できたものであるし,また,本件分割払金の返還請求権は,その対価としての利子が生じ得る金銭債権であるといえるから,D社の原告に対する本件分割払金の返還請求権は,所得税法161条6号にいう「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に該当する。 (2)争点(2)(本件金員が所得税法161条6号の「利子(政令で定める利子を除く。)」に該当するか。)について ア所得税法161条6号に規定する「利子」とは,元本債権からその金員額と使用期間に応じて一定の割合で発生する法定果実をいい,弁済があるまでの間の元本の使用の対価という性質を有するものをいう。 イ損害賠償金であっても,いわゆる遅延利息(遅延損害金)のように,金員を他に交付したために,それが返還されるまでの間,同金員を使用できないことが損害となるような場合には,そのような損害の をいう。 イ損害賠償金であっても,いわゆる遅延利息(遅延損害金)のように,金員を他に交付したために,それが返還されるまでの間,同金員を使用できないことが損害となるような場合には,そのような損害の賠償は,他面において,金員の交付を受けた相手方が同金員を使用したことの対価の支払を求めるに等しいから,同金員を元本として返還までの期間に応じて一定の割合で発生する法定果実として損害賠償が約定されているときには,当該損害賠償金は,同号に規定する「利子」に該当する。 ウ以上の考え方は,次の法令解釈通達により,課税実務上も採用されている。 すなわち,所得税基本通達(平成17年課法8-2による改正前のもの)161-7は,所得税法施行令281条の規定等の趣旨を踏まえ,収入金額に代わる性質を有する損害賠償金等で源泉徴収の対象となる国内源泉所得の範囲を執行指針として具体的に明らかにしたものであるところ,所得税法161条1号の2から12号までに掲げる対価,使用料,給与,報酬等には,当該対価等として支払われるものばかりでなく,当該対価等に代わる性質を有する損害賠償金その他これに類するもの(その支払が遅延したことに基づく遅延利息等に相当する金額を含む。)も含まれるとしている。また,所得税法と同じく国内源泉所得に関する規定である法人税法138条に係る法人税基本通達20-1-25も上記所得税基本通達と同旨の定めを置いている。 エ本件金員は,本件分割払金の金額に対しその受領日から返還日までの期間に応じて一定の割合で発生するものであって,当該期間中における本件分割払金の使用の対価という性質を有するから,所得税法161条6 号に規定する「利子」に該当する。仮に本件金員が損害賠償金であったとしても,その性質は遅延利息であるから,上記の結論は異ならない。 オなお, 用の対価という性質を有するから,所得税法161条6 号に規定する「利子」に該当する。仮に本件金員が損害賠償金であったとしても,その性質は遅延利息であるから,上記の結論は異ならない。 オなお,本件分割払金の返還請求権は,所得税法施行令283条1項各号に掲げる債権に当たらないから,本件金員は,所得税法161条6号が「利子」から除外すべきものとして規定する「政令で定める利子」に該当しないことは明らかである。 (原告の主張)(1)争点(1)(本件分割払金が所得税法161条6号の「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に該当するか。)についてア被告の主張は,「貸付金(これに準ずるものを含む。)」には,消費貸借や準消費貸借に基づく貸金債権に限らず,法人税基本通達20-1-19(3)にいう「前渡金その他これに類する債権」のようなものも含まれるという解釈を基礎にしているけれども,そもそも本件金員は,損害賠償金であって,「利子」ではなく,そうである以上,「前渡金」が「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に該当するか否かを論ずることに意味はない。 イそもそも,通達は,行政庁内部の解釈指針にすぎないから,法令と同様に議論すること自体が誤りであるし,仮に通達の定めを参考にするとしても,被告が挙げる法人税基本通達20-1-19(3)は,所得税法161条6号の解釈を示した通達ではなく,むしろ,同規定の解釈を示した通達である所得税基本通達161-16(貸付金に準ずるもの)には,「前渡金」は列挙されていない。 ウよって,被告の主張は失当である。 (2)争点(2)(本件金員が所得税法161条6号の「利子(政令で定める利子を除く。)」に該当するか。)についてア所得税法は,161条において,国内源泉所得に該当するものを限定列 挙しているところ(同条 2)(本件金員が所得税法161条6号の「利子(政令で定める利子を除く。)」に該当するか。)についてア所得税法は,161条において,国内源泉所得に該当するものを限定列 挙しているところ(同条柱書),このうち同条6号においては「利子」と規定されるのみで,「これに準ずるものを含む。」であるとか,「同様の経済的性質を有するもの」といった規定の仕方はされておらず,この点は,同号において,貸付金について「貸付金(これに準ずるものを含む。)」と規定されているのと異なっている。したがって,所得税法161条6号の「利子」には,経済的実質が利子と同様であるものその他利子に準ずるものは含まれないと解すべきである。 イ所得税法161条各号において国内源泉所得として損害賠償金を掲げる明文規定は存在しない。また,国内源泉所得に係る源泉徴収義務を定めた所得税法212条1項は,「非居住者に対し国内において第161条第1号の2から第12号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得‥の支払をする者」に源泉徴収義務を課し,同義務の対象となる国内源泉所得から所得税法161条1号を除外している。同号は,「国内において行う事業から生じ,又は国内にある資産の運用,保有,若しくは譲渡により生ずる所得(次号から第12号までに該当するものを除く。)その他その源泉が国内にある所得として政令で定めるもの」が国内源泉所得に該当することを定めた,国内源泉所得に関するいわば包括規定であり,本号に該当する所得については,申告納税方式が採用されている。 そして,これを受けた所得税法施行令281条は,「法第161条第1号(国内源泉所得)に規定する政令で定める所得」として,「国内において行う業務又は国内にある資産に関し受ける保証金,補償金又は損害賠償金(これらに類するものを含む。)に係る所得」 「法第161条第1号(国内源泉所得)に規定する政令で定める所得」として,「国内において行う業務又は国内にある資産に関し受ける保証金,補償金又は損害賠償金(これらに類するものを含む。)に係る所得」を掲げている(同施行令281条1号)。したがって,所得税法及び同法施行令は,損害賠償金を,利子とは別個のものとし,区別して取り扱っているものと解すべきである。 ウ原告,B社及びAは,本件造船契約10条2項・3項において,以下に 説明するとおり,損害賠償額の予定に係る合意をしたものであり,本件金員の性質は損害賠償金というべきであるから,所得税法161条6号に規定する「利子」には該当しない。 a損害賠償額の予定の意義当事者は,債務の履行について損害賠償の額を予定することができ(民法420条1項前段参照),損害賠償額の予定が一定の利率をもって合意されることも当然に認められている。 そして,英国法における損害賠償額の予定の意義もこれと異ならない。 b契約書上の文言である「interest」の用語としての意味「interest」という用語は多義的であり,本件造船契約においても11条4項(d)の「interest」については「利息」と,同条2項の「interest」については「遅延損害金」と,12条2項(b)(ii)の「interest」については「損害賠償金」と訳すのが,使用されている文脈からみて相当である。このように「interest」は,ある金額の算定が一定の割合によって行われる場合に幅広く用いられる用語であり,そうすると,「interest」には,前記aの損害賠償額の予定が一定の利率をもって合意されている場合も含まれることになる。 c本件造船契約10条2項及び3項の解釈本件造船契約10条2項及び3項では,本件で適用された債務不履行解 は,前記aの損害賠償額の予定が一定の利率をもって合意されている場合も含まれることになる。 c本件造船契約10条2項及び3項の解釈本件造船契約10条2項及び3項では,本件で適用された債務不履行解除の規定によれば,不可抗力の場合には「interest」が発生せず,他方,8パーセントの「interest」を超えては損害賠償を請求できないとされているところ,これらの点によれば,本件造船契約10条2項及び3項は,8パーセントの割合による「interest」を損害賠償額の予定として定めたものであり,この「interest」は,損害賠償金の意味で用いられているというべきである。 d契約当事者の認識等 本件造船契約の各当事者,すなわち,原告,B社及びAの認識も上記cのとおりであり,この認識は,英国法を専門とする弁護士の見解にも沿う。 e合意内容の合理性年率をもって損害賠償の予定とすること,本件において8パーセントという年率をもって損害賠償の予定としたことのいずれについても,その内容自体合理的である。 第3争点に対する判断 所得税法161条6号にいう「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の「利子」の意義について(1)所得税法には貸付金の定義規定が置かれておらず,むしろ,同法161条6号が「消費貸借又は準消費貸借による貸付金」等と特定の私法上の契約類型によって規定せず,「貸付金(これに準ずるものを含む。)」と規定し,貸付金として通常理解される概念に更に貸付金以外のものを付け加えて規定していることからすると,同規定の文言自体からは,「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の意義を明確に解釈することができない。 このような場合に,所得税法161条6号の「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の意義を解釈するに当たっては,当該規定の趣旨や所得 (これに準ずるものを含む。)」の意義を明確に解釈することができない。 このような場合に,所得税法161条6号の「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の意義を解釈するに当たっては,当該規定の趣旨や所得税法の中での位置付け,一定の解釈に従って当該規定を適用した場合の結果の公平性及び相当性等の実質的な検討をした上,租税法規が備えるべき客観性,ひいては,納税者の予測可能性や法的安定性を損なわない解釈を選び採るほかない。 (2)被告も指摘するとおり,関係法令である所得税法施行令283条1項等には,消費貸借や準消費貸借に基づく貸金債権とは異なる一定の債権が所得税法161条6号の「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に該当し得ることを前提とする規定が設けられているが,これらの規定を含めて検 討しても,同号にいう「貸付金(これに準ずるものを含む。)」は必ずしも消費貸借や準消費貸借に基づく貸金債権に限られるものでないということがいえるだけであって,「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の外延が明確になるわけではない。 そもそも貸付金という言葉は,民商法等の私法において明確に定義されている用語ではない。「貸付け」という用語は,各種金融関係法規に散見される(銀行法2条,貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律(平成18年法律第115号)附則66条,67条等)ものの,ここでも明確にその意義を定めた規定は見当たらず,当事者の一方が金銭その他の物又は有価証券を相手方に交付し,後日同種のものの返還を受ける有償の契約を指しているという意味で消費貸借を基本として解釈されるが,必ずしも要物契約である民法の消費貸借そのものに限らないとみることができる。さらに,貸金業の規制等に関する法律(昭和58年法律第32号)の「貸付け」は,金銭の貸付け,金銭の貸借の媒介 解釈されるが,必ずしも要物契約である民法の消費貸借そのものに限らないとみることができる。さらに,貸金業の規制等に関する法律(昭和58年法律第32号)の「貸付け」は,金銭の貸付け,金銭の貸借の媒介,手形の割引,売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付又は当該方法によってする金銭の授受の媒介をすべて含むと規定している(同法2条1項)。 これらのことからすれば,社会一般において,「貸付け」という用語が,消費貸借に基づいて貸し付けられた場合にのみ限定して用いられるとの共通した認識があるとまではいえないものの,「貸付け」の目的物と観念される「貸付金」という用語が用いられていることも勘案しつつ,前記(1)で述べた基準に従って判断するならば,「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の意義については,消費貸借に基づく貸付債権を基本としつつ,その性質,内容等がこれとおおむね同様又は類似の債権をいうものと解するのが相当である。 これを更に具体化すると,消費貸借にあっては,金銭を典型とする代替物を交付し,その相手方との間で将来返還することを約束することを本質的 な内容とするものであるところ,準消費貸借にあっては,その要物性を緩和して,既に代替物の給付義務を負う者がその返還を改めて約束することを内容とし,民法上,消費貸借が成立した場合と同視するものとされていることからすれば,準消費貸借に基づく債権が「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に当たることは当然であるが,典型契約としての純然たる消費貸借や準消費貸借に該当しないような契約類型であっても,将来の返還を約した上で金銭その他の代替物の授受があれば,その部分をとらえてみる限り,消費貸借の本質的要素に欠けるところはないのであるから,これをもって「貸付金(これに準ずるものを含む。)」とみること の返還を約した上で金銭その他の代替物の授受があれば,その部分をとらえてみる限り,消費貸借の本質的要素に欠けるところはないのであるから,これをもって「貸付金(これに準ずるものを含む。)」とみることに妨げはないというべきである。 (3)被告は,所得税法161条6号の「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に当たるか否かを検討するに当たっては,その発生原因となった取引等の経済的効果において信用供与の実質があるかどうかを重視すべきであり,したがって,同規定にいう「貸付金(これに準ずるものを含む。)」とは,金銭の交付からその返還までに一定の期間が設けられること等により,債務者に対して信用が供与される金銭債権であって,その期間において債務者が元本を使用することができ,その対価としての利子が生じ得るものをいうと主張している。 しかしながら,同法161条6号の「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の意義について被告主張のような解釈をすべき必然性はないし,むしろ,法文上明確な解釈ができない規定について,対象となる取引の法形式を離れ,取引等の経済的効果における信用供与の実質があるかどうかといった観点から柔軟な解釈を採ることとなれば,租税法規が備えるべき客観性,ひいては,納税者の予測可能性や法的安定性を損ない,妥当でない結果を避け難いというべきである。 被告はその主張の根拠として,所得税基本通達及び法人税基本通達では, 「これに準ずるもの」の例として,金銭消費貸借によるものに限定されず,与信取引により生ずる債権が広く挙げられていることを指摘する。 確かに,上記各通達では,消費貸借又は準消費貸借によって生じた債権のみならず,売買,請負,委任,賃貸借,その他多様な契約の過程で生じた債権が広く「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に含まれ得ることを前提と 記各通達では,消費貸借又は準消費貸借によって生じた債権のみならず,売買,請負,委任,賃貸借,その他多様な契約の過程で生じた債権が広く「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に含まれ得ることを前提としている。しかし,これを子細にみると,預け金,保証金,敷金等,その返還に一定の条件が付され得るとはいえ,将来の返還を約束して授受した金員に係る債権,一般的には,準消費貸借を経たか,これと極めて類似した状況で生じることになると考えられる各種の延払債権等が列挙されているものであり,上でみた消費貸借又は準消費貸借の本質的要素に欠けるところのない債権をそこに列挙したとみることもできるのであって,その内容は,既に述べた「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の意義と必ずしも齟齬するものではない。逆に,上記各通達があるからといって,被告主張のように,信用供与の対価としての利子が生じ得る元本債権であれば,何らの限定もなく,広く「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に含まれると解釈すべき根拠になるとはいえず,課税実務がそのような考え方を採っていると直ちにいえるものでもない。 (4)以上検討したとおりであるから,被告の主張は採用することはできず,所得税法161条6号にいう「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の「利子」の意義については,前記(2)のとおり,消費貸借に基づく貸付債権を基本としつつ,その性質,内容等がこれとおおむね同様又は類似の債権の利子をいうものと解するのが相当であるというべきである。 また,このように解する限り,被告が懸念するような,取引当事者において消費貸借又は準消費貸借以外の契約類型を選択することにより,源泉徴収義務を免れつつ,消費貸借又は準消費貸借と同様の経済的成果を得ようとすることから,課税の公平性を害し,結果的に消費貸借又は準消費貸 消費貸借又は準消費貸借以外の契約類型を選択することにより,源泉徴収義務を免れつつ,消費貸借又は準消費貸借と同様の経済的成果を得ようとすることから,課税の公平性を害し,結果的に消費貸借又は準消費貸 借以外の契約類型による与信取引を奨励するかのような効果を生じさせ,経済取引に対する税制の中立性という観点からも問題を生じるといった事態も防ぐことができるというべきである。 本件分割払金及び本件金員に係る認定事実前記前提となる事実のほか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1)本件造船契約においては,次の各条項が定められている(甲6の1,乙1)。なお,本件においては,後記カ②の条項に基づいて支払われる本件金員(本件造船契約に係る契約書の原文である英文では「interest」の語が用いられているもの。)が所得税法161条6号にいう「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の「利子」に該当するかどうかが専ら争われているところ,本件造船契約に係る契約書では本件金員を指すものとして用いられている「interest」の語を日本語に置き換えることは適当でないので,これをそのまま表記するものとする。「interest」と異なる語が用いられていることにつき,特別な意味を見いだすべきかどうかが問題とされている「penalty」,「liquidateddamages」の語についても同様である。 ア表示及び船級(内容省略。第1条)イ代金額及び支払条件本件船舶の代金額は,19億1691万7200円とし,その支払は,日本円で,次のとおり,分割して行われるものとする(第2条)。 ①第1回1億7426万5200円本件造成契約締結時②第2回1億9362万8000円本件船舶の起工時③第3回1億9362万800 ,次のとおり,分割して行われるものとする(第2条)。 ①第1回1億7426万5200円本件造成契約締結時②第2回1億9362万8000円本件船舶の起工時③第3回1億9362万8000円本件船舶の進水時④第4回13億5539万6000円本件船舶の引渡時ウ代金額の調整本件船舶の引渡しの遅延等が生じた場合,次のとおり,代金額を調整す るものとする(なお,本条による代金の減額は,「liquidateddamages」としてされるものであり,「penalty」として課されるのではないものと,両当事者間において理解されている。)(第3条)。 ①本契約第7条に規定する引渡期限の遅延が生じた場合,最初の30日間については,代金額の調整は行わない。 ②30日間を超えて遅延したときは,遅延1日ごとに52万円を約定の代金額から減額する。ただし,代金額から控除する額は,合計で,引渡期日後30日目の深夜12時から起算して150日間遅延した場合の金額を超えないものとする。 ③遅延が,引渡期日を超える31日目から起算して150日を超えて継続する場合は,買主は,かかる期間が満了した後,本契約第10条の規定に従い,本契約の解除を選択することができる。上記150日の期間が満了した後,買主が本契約第10条の規定による契約解除の通知をしないときは,売主は,買主がいずれかを選択するよう文書で要求することができる。この場合,買主はこの要求を受け取った後15日以内に本契約を解除するか,上記の規定により減額された代金額で,合意した将来の日に船舶を受領することに同意するかの意思表示を,売主に対して通知するものとする。(以下略)④売主が,買主の文書による要請に応じ,引渡し期日より前に本件船舶を引き渡したときは,引渡し前31日目から起算して1日 することに同意するかの意思表示を,売主に対して通知するものとする。(以下略)④売主が,買主の文書による要請に応じ,引渡し期日より前に本件船舶を引き渡したときは,引渡し前31日目から起算して1日早まるごとに52万円を約定の代金額に加算する(ただし,売主がかかる買主の要請に応じることは,本契約に基づく引渡期日の変更であると解釈するものではないと,両当事者間において理解されている。)。 ⑤本条の目的上,第8条の規定により許容される遅延を理由とし,その他本契約に基づく事由を理由とする引渡期日の延期を十分に考慮し,本契約の条項に基づき要求される期日に引渡しがされなかったときは,本 件船舶の引渡しが遅延したものとみなす。 ⑥買主が本条に基づき本契約を解除したときは,買主はliquidateddamages の支払を受ける権利をもたないものと理解されている。 エ引渡し本件船舶は,売主から買主に対し,造船所において,2001年9月28日までに引き渡されるものとする。ただし,本契約により引渡しの延期が認められる事由に基づく遅延は除き,その場合には,上記の本件船舶の引渡しの日はこれに応じて延期されるものとする。上記の日付又はかかる条項に従って延期された引渡しの日付を本契約において「引渡期日」という。(第7条)オ引渡しの遅延及び引渡期限の延期(不可抗力)①遅延の原因引渡し前において,本件船舶の建造又は引渡しのために必要とされる契約の履行が,不可抗力により遅延する場合,本件船舶の引渡期日は,これらによる遅延の合計日数を超えない期間だけ延長されるものとする(第8条1項)。 ②上記事由による遅延の合計日数が,本契約の他の条項に基づき引渡期日の延期を求めることのできる遅延を除き,180日以上に達した場合,買主は,本契約第10条の規定に従 るものとする(第8条1項)。 ②上記事由による遅延の合計日数が,本契約の他の条項に基づき引渡期日の延期を求めることのできる遅延を除き,180日以上に達した場合,買主は,本契約第10条の規定に従い,本契約を解除することができる(同条4項)。 カ買主による解約(第10条)①通知買主が本契約の条項に基づき本契約を解約する権利を行使しようとするときは,買主は,その旨を文書により,又は文書によって確認された電信により,売主に対して通知しなければならず,本契約の解約は,売主がこの通知を受領したときに有効となるものとする。 ②売主による返金本件船舶の引渡前に買主がした支払は,売主に対する前払金の性質を有し,売主は,本契約の解約の通知を受け取ったときは,買主から受領した全額を,速やかに買主に返還しなければならない。ただし,売主が本契約の第13条の規定に基づき仲裁の手続を行う場合は,この限りでない。 この場合,売主は,本契約上返還すべき金額に対して,買主から支払われた各日から返還金を送金した日までの期間に応じ年8パーセントの割合によるinterest を買主に対して支払うものとする。ただし,買主による解約が,本契約第8条第4項の規定に基づいてされた場合には,売主は,interest を支払うことを要しない。 ③債務の解消売主が買主から受領したすべての金額を,必要な場合にはinterestを付して返還したときは,これにより,本契約に基づく各当事者の相手方に対する債務はただちに解消されるものとする。 キ買主の債務不履行(第11条)①債務不履行の定義以下の場合,買主は,本契約に基づく債務を履行しなかったものとみなされる。 a買主が第1回,第2回及び第3回の分割払金を約定の期限までに支払わなかったとき。 b本契約第2条の規定に 不履行の定義以下の場合,買主は,本契約に基づく債務を履行しなかったものとみなされる。 a買主が第1回,第2回及び第3回の分割払金を約定の期限までに支払わなかったとき。 b本契約第2条の規定により,売主が買主に対して本件船舶を引き渡すのと同時に支払うべきものとされている第4回目の分割払金を,買主が支払わなかったとき。 c本契約第7条の規定により,売主が買主に対して本件船舶の提供をしたときに,買主が本件船舶を受け取らなかったとき。 ②interest と費用前項a又はbに規定する分割払金のいずれについても,買主によるその支払義務の不履行があった場合,買主は,当該分割払金及び同金員に対して約定の期限から支払済みまで年5パーセントの割合によるinterest を支払うものとする。 (2)原告は,原告,B社及びAの間で締結された本件造船契約を履行するため,平成11年10月7日,Aとの間で,船舶建造請負契約を締結したところ,同契約においては,請負代価及びその支払方法につき,次のとおり約定されている(乙2,第4条)。 ア本件船舶の請負代金を18億3100万円とし,原告は,Aに対し,次のとおり支払う。 ①本契約調印時現金で1億6650万円②起工時同様に1億8500万円③進水時同様に1億8500万円④竣工引渡時同様に12億9450万円イ原告は,Aに対し,前項の分割払金を各支払時期に達した日から5日以内(ただし,土曜,日曜及び日本の祝日を除く。)にAの請求に基づき支払う。ただし,上記①の分割払金については,本契約調印後7日以内に,上記④の分割払金は竣工引渡しの日に支払う。 ウ原告が上記アの分割払金を前項の期間内に原告の都合により支払わなかったときは,原告は,その分割払金に対し,遅延日数につき年5.0パーセントの 以内に,上記④の分割払金は竣工引渡しの日に支払う。 ウ原告が上記アの分割払金を前項の期間内に原告の都合により支払わなかったときは,原告は,その分割払金に対し,遅延日数につき年5.0パーセントの割合による利息を付して,Aに支払う。 (3)ア造船契約においては,造船に要する費用が巨額にわたる場合が多く,代金全額の支払を船舶の引渡しと同時履行とした場合には,造船所側の負担・リスクが過大なものとなるため,引渡時に加え,それ以前の契約時,起工時及び進水時の4回に分割して代金を支払う慣行が存し,社団 法人E作成の契約書式である「標準造船契約」においても,その旨の条項が定められている。 イ原告やAが造船契約を締結する場合には,上記書式を基に契約書を作成しており,本件造船契約もこれに倣ったものである。Aが結ぶ他の契約においても,本件造船契約の10条2項に相当する条項が定められることが一般的であり,買主が契約上の解約権を行使したことにより,売主が受領済みの代金を返還する場合には,本件金員と同様,当該代金を受領した日から返還した日までの期間に応じ,当該代金に対する一定割合を買主に対して支払うものとされている。この場合の一定割合をどのように定めるかは,プライムレート等を参考にしながら,当事者間の協議によって決定しており,国内船主を注文主とする場合には年5パーセント程度,外国船主を注文主とする場合には年8パーセントから10パーセント程度の割合が採用されることが多い(ちなみに,本件造船契約が締結された平成11年9月当時の長期プライムレートは年2.3パーセントであった。)。もっとも,引渡しの遅延を原因として,造船契約の解除にまで至る例は業界においてまれであり,少なくともAにおいて,過去にそうした例は経験がなかった。 (以上につき,甲16,19,21 ントであった。)。もっとも,引渡しの遅延を原因として,造船契約の解除にまで至る例は業界においてまれであり,少なくともAにおいて,過去にそうした例は経験がなかった。 (以上につき,甲16,19,21,弁論の全趣旨) 認定事実を踏まえた判断(1)本件分割払金の法的性質が,その法形式からみる限り,売買代金であることは明らかであり,ただ,その支払方法について,約定で,一部の支払が反対給付である目的物の引渡しとの関係で先履行すべきものとされているものということができる。 (2)被告は,本件分割払金の経済的実質を重視した上,本件分割払金は,本来は売買の目的物である船舶の引渡しと同時履行であってしかるべき売買代金の支払につき,その一部の支払を引渡しに先立って行うものであるか ら,本件分割払金の授受は,買主から売主に対して信用を供与したものといえ,その使用の対価としての利子が生じ得る債権として,所得税法161条6号にいう「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に当たると主張するものである。 しかしながら,上記「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の意義については,消費貸借に基づく貸付債権を基本としつつ,その性質,内容等がこれとおおむね同様又は類似の債権をいうものと解すべきであって,売主が買主に対して信用を供与したという点から「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に該当するという見解を採り得ないことは,前記1で述べたとおりであるそして,本件各分割払金の法的性質が上記(1)のようなものであることからすると,純然たる消費貸借に基づく貸付債権には当たらないから,その性質,内容等がこれとおおむね同様又は類似の債権に当たるといえるかどうか,更に具体的には,将来の返還を約した上での金銭の授受があり,消費貸借の本質的要素に欠けることはないかなどの点が専 いから,その性質,内容等がこれとおおむね同様又は類似の債権に当たるといえるかどうか,更に具体的には,将来の返還を約した上での金銭の授受があり,消費貸借の本質的要素に欠けることはないかなどの点が専ら問題となる。 (3)この点に関して,被告は,「貸付金(これに準ずるものを含む。)」というためには,返還約束が必要であるという立場に立ったとしても,本件造船契約においては,停止条件付きで「interest」を付して本件分割払金を返還することが合意されているから,返還約束に欠けるところはないと主張している。 確かに,本件造船契約にあっては,買主が同契約の条項に基づいて解約権を行使した場合につき,本件分割払金を買主に返還すべき旨が定められており,この点を部分的にとらえれば,将来の返還を約した上でされた金銭の授受ということになる。また,返還約束に条件が付されていたことから,直ちに消費貸借の本質的要素に欠けることにもならないというべきであり,前記1(3)でみた所得税基本通達や法人税基本通達において,預け金,保証 金,敷金の類が「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に含まれるとしているのも,そのような考え方を前提とするものということができる。 しかしながら,本件造船契約は,船舶の売買を主たる内容としており,本件分割払金も前払による代金の一部であって,通常であれば,買主から売主に渡しきりとなる性質のものということができる。そして,それが返還される場合が想定されているとはいえ,同契約の条項に基づいて解約権を行使したときに限られており,実際にも,造船契約において解約により契約関係が終了する例はまれであるというのである(前記2(3))。このように,将来返還の余地があるものとして金銭の授受が行われた場合であっても,その可能性は小さく,例外的な事象にとどまる 解約により契約関係が終了する例はまれであるというのである(前記2(3))。このように,将来返還の余地があるものとして金銭の授受が行われた場合であっても,その可能性は小さく,例外的な事象にとどまるような場合についてまで,消費貸借の本質的要素である返還約束があるものとみて,これを「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に当たるものとするのは,かえって納税者の予測可能性や法的安定性を損なう結果を招きかねず,妥当ではないというべきである。 (4)被告は,本件分割払金が企業会計上の前渡金又は前受金に当たり,法人税基本通達20-1-19(3)の「前渡金その他これらに類する債権」にほかならないとも主張する。前渡金は,商品の購入等を行う場合に買主から売主に対して支払われる商品代金の内金又は手付金等を指すものであって,本件分割払金が前渡金に該当する余地を否定するものではないが,前渡金の実態には種々の内容のものがあり得,上記通達(1),(2)に掲げられた預け金,保証金,敷金と比較してみても,将来の一部又は全部の返還を原則としておらず,返還自体の不確実性が高いものが多く含まれているといわざるを得ない。上記通達(3)の趣旨が,前受金として授受された金員の中には,消費貸借契約に基づく貸付債権とおおむね同様又は類似の性質,内容を有する債権に該当する余地があり,その場合に「貸付金(これに準ずるものを含む。)」として扱うというのであれば合理的であるが,その性質, 内容等の実質を問わず,一律に「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に該当するものとするのであれば,そのような解釈には与することができない。 (5)以上のとおりであるから,本件分割払金をもって「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に該当するとはいえないことになり,そうである以上,本件金員が同号の「 うな解釈には与することができない。 (5)以上のとおりであるから,本件分割払金をもって「貸付金(これに準ずるものを含む。)」に該当するとはいえないことになり,そうである以上,本件金員が同号の「利子」に該当する余地もないというべきである。 (6)このように,本件金員は,所得税法161条6号にいう「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の「利子」に該当するとはいえず,同号に基づく所得に当たらないから,原告は,本件金員に係る所得について源泉徴収義務を負うことはない。 そうすると,原告が本件金員に係る所得について源泉所得税の徴収義務を負うとの判断を前提としてされた本件処分は,その余の点について判断するまでもなく違法であるから,取消しを免れない。 結論 よって,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用し,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官吉田徹裁判官小林康彦 裁判官棚井啓
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