平成29(行ケ)10236等 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成31年2月14日 知的財産高等裁判所 2部 判決 請求棄却
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判決文本文81,617 文字)

- 1 -平成31年2月14日判決言渡平成29年(行ケ)第10236号審決取消請求事件(以下「甲事件」という。)平成29年(行ケ)第10237号審決取消請求事件(以下「乙事件」という。)口頭弁論終結日平成30年11月14日判決 甲事件原告・乙事件被告大阪ガスケミカル株式会社(以下「原告」という。) 同訴訟代理人弁護士石川正畑郁夫重冨貴光黒田佑輝 甲事件被告・乙事件原告田岡化学工業株式会社(以下「被告」という。) 同訴訟代理人弁護士松本司田上洋平冨田信雄主文 1 原告の甲事件請求を棄却する。 2 被告の乙事件請求を棄却する。 3 訴訟費用は,甲事件・乙事件を通じてこれを2分し,それぞれを各自の負担とする。 事実及び理由 - 2 -第1 請求 1 甲事件特許庁が無効2013-800029号事件について平成29年11月28日にした審決のうち,特許第4140975号の請求項1~4,6,8,9に係る部分を取り消す。 2 乙事件特許庁が無効2013-800029号事件について平成29年11月28日にした審決のうち,特許第4140975号の請求項7に係る部分を取り消す。 第2 事案の概要 1 手続の経緯(1) 被告は,名称を「フルオレン誘導体の結晶多形体およびその製造方法」とする発明について,平成20年2月8日,特許出願 号の請求項7に係る部分を取り消す。 第2 事案の概要 1 手続の経緯(1) 被告は,名称を「フルオレン誘導体の結晶多形体およびその製造方法」とする発明について,平成20年2月8日,特許出願をし(優先権主張:平成19年2月15日,優先権主張国:日本国),同年6月20日,その特許権の設定登録(特許第4140975号)を受けた(甲1,以下「本件特許」といい,本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書」という。)。 (2) 原告は,平成25年2月20日に本件特許の無効審判請求(無効2013-800029号)をしたところ,特許庁は,平成26年7月25日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「第一次審決」という。)をし,同審決の謄本は,同年8月4日に原告に送達された。 (3) 原告は,平成26年9月1日,知的財産高等裁判所(以下「知財高裁」という。)に対し,第一次審決の取消しを求める訴え(知財高裁平成26年(行ケ)第10202号,以下「第一次審決取消訴訟」という。)を提起し,知財高裁は,平成28年1月27日,「特許庁が無効2013-800029号事件について平成26年7月25日にした審決を取り消す。」との判決(甲245,以下「前訴判決」という。)をした。被告は,最高裁判所に対し,前訴判決について上告受理申立てをしたが(平成28年(行ヒ)第185号),最高裁判所は,平成29年1月20日,不受 - 3 -理決定をし,前訴判決は確定した。(甲245,乙43,44)(4) 特許庁は,無効2013-800029号について更に審理し,平成29年11月28日,被告が同年2月9日付けでした,請求項5,10を削除することを含む訂正請求(以下「本件訂正」という。)を認めた上,「特許第4140975号の請求項7に係る発明についての特許 平成29年11月28日,被告が同年2月9日付けでした,請求項5,10を削除することを含む訂正請求(以下「本件訂正」という。)を認めた上,「特許第4140975号の請求項7に係る発明についての特許を無効とする。特許第4140975号の請求項1ないし4,6,8,9に係る発明についての審判請求は,成り立たない。 特許第4140975号の請求項5,10についての本件審判請求を却下する。」との審決(以下「第二次審決」という。)をし,第二次審決の謄本は,同年12月7日に原告及び被告に送達された。 (5) 原告は,平成29年12月28日,第二次審決のうち,本件特許の請求項1~4,6,8,9に係る部分の取消しを求める訴訟(甲事件)を提起し,被告も,同日,第二次審決のうち,本件特許の請求項7に係る部分の取消しを求める訴訟(乙事件)を提起した。 2 本件発明の要旨本件訂正後の本件特許の請求項1~4,6~9(以下,各請求項の発明を,請求項の番号に従い「本件発明1」などといい,併せて「本件発明」という。)は,以下のとおりのものである。 【請求項1】「ヘテロポリ酸の存在下,フルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させた後,得られた反応混合物から50℃未満で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させることにより9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を得,次いで,純度が85%以上の該粗精製物を芳香族炭化水素溶媒に溶解させた後に65℃以上で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させる9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体の製造方法。」(本件発明1) - 4 -【請求項2】「ヘテロポリ シ)フェニル)フルオレンの析出を開始させる9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体の製造方法。」(本件発明1) - 4 -【請求項2】「ヘテロポリ酸の存在下,フルオレノンと2-フェノキシエタノールとの反応が,脱水条件下で行われる請求項1に記載の製造方法。」(本件発明2)【請求項3】「ヘテロポリ酸が,リン酸またはケイ酸と,バナジウム,モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも1つの元素の酸素酸イオンとから構成されるヘテロポリ酸である請求項1~2に記載の製造方法。」(本件発明3)【請求項4】「ヘテロポリ酸が,ヘテロポリ酸無水物または予め脱水処理されたヘテロポリ酸である請求項1~3に記載の製造方法。」(本件発明4)【請求項6】「溶媒が,トルエンまたはキシレンである請求項1~4に記載の製造方法。」(本件発明6)【請求項7】「示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体。」(本件発明7)【請求項8】「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°,13.5°,16.1°,17.9°,18.4°,20.4°,21.0°,23.4°および24.1°にピークを有する9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体。」(本件発明8)【請求項9】「回折角2θの最大ピークが18.4°である請求項8に記載の結晶多形体。」(本件発明9) 3 第二次審決の理由の要点以下,本件の争点に関する部分(無効理由3,4)についてのみ摘示する。 - 5 -(1) 無効理由3についてア特開2007-23016号公報 件発明9) 3 第二次審決の理由の要点以下,本件の争点に関する部分(無効理由3,4)についてのみ摘示する。 - 5 -(1) 無効理由3についてア特開2007-23016号公報(甲6)には以下の方法発明(以下「引用方法発明」という。)及び引用方法発明により製造された結晶発明(以下「引用結晶発明」という。)が記載されている。 引用方法発明「フルオレノン,フェノキシエタノール,トルエン及び100℃で減圧乾燥し結晶水を除いたケイタングステン酸を加え,トルエン還流下,生成水を反応系外に除去しながら攪拌し,得られた反応液からの析出により,純度96.2%の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(以下「BPEF」ということがある。)の白色結晶を得る方法。」 引用結晶発明「フルオレノン,フェノキシエタノール,トルエン及びケイタングステン酸を加え,得られた反応液からの析出により得た純度96.2%の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶」イ本件発明1と引用方法発明の対比及び相違点についての判断一致点「ヘテロポリ酸の存在下,フルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させた後,得られた反応混合物から9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させることにより純度が85%以上の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を得る方法。」に関するものである点。 相違点(相違点1-1)本件発明1においては,粗精製物の段階で「50℃未満でBPEFの析出を開始」させるのに対して,引用方法発明においては,粗精製物の段階における析出開始温度が特定されていない点。 - 6 - 本件発明1においては,粗精製物の段階で「50℃未満でBPEFの析出を開始」させるのに対して,引用方法発明においては,粗精製物の段階における析出開始温度が特定されていない点。 - 6 -(相違点1-2)本件発明1においては,「次いで,該粗精製物を芳香族炭化水素溶媒,に溶解させた後にBPEFの析出を開始」させるという特定の溶媒を用いた再結晶化の操作を更に行っているのに対して,引用方法発明においては特定の溶媒を用いた再結晶化の操作が更に行われていない点。 (相違点1-3)本件発明1においては,再結晶化の段階で「65℃以上でBPEFの析出を開始」させているのに対して,引用方法発明においては再結晶化の段階がなく,その段階における析出開始温度が特定されていない点。 相違点についての判断a 相違点1-1について甲6の実施例10と本件明細書の実施例4は,実験条件及び結果が実質的に同じであり,同じ製造方法から同じ結晶が得られるはずであるから,引用方法発明においても,融点104℃のBPEFの多形体(以下,示差走査熱分析による融解吸熱最大が100~130℃であるBPEFの結晶多形体を「多形体A」ということがある。)が38℃で析出しており,50℃未満の析出開始温度で得られているものと推認される。したがって,相違点1-1について実質的な差異があるとは認められない。 b 相違点1-2について引用方法発明は,「煩雑な触媒除去操作や精製操作を行なうことなく,イオウ分を含まない高品質な製品を工業的有利に製造する方法を提供すること」を目的として,触媒の種類に工夫を加えた発明であるが,BPEFの新規な結晶多形体を得ようとする動機付けについては,甲6に示唆を含めて記載がない。 また,甲14(久保田徳昭ほか「 方法を提供すること」を目的として,触媒の種類に工夫を加えた発明であるが,BPEFの新規な結晶多形体を得ようとする動機付けについては,甲6に示唆を含めて記載がない。 また,甲14(久保田徳昭ほか「分かり易い晶析操作」平成15年12月1日発行分離技術会。以下,同一書籍である甲158を併せて「甲14’」ということがある。)に「製品特性として結晶形状が重要」であること及び「製造法を工夫す - 7 -ることにより製品にさまざまな機能・特性を付与することが可能」になることが記載されているとしても,これは一般論としての可能性が述べられているにすぎない。 甲61~70(特開2004-2376号公報[甲61],特公平6-57676号公報[甲62],特表平9-500654号公報[甲63],特開平6-287177号公報[甲64],特開平11-171843号公報[甲65],特開2003-40830号公報[甲66],特開平5-132441号公報[甲67],特開2001-81179号公報[甲68],特開2000-128977号公報[甲69]及び特開2005-120055号公報[甲70])にも,本件発明の「9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン」(BPEF)に関する記載はなく,甲67~70は,ビスフェノールという特定のモノマーの結晶多形体に関するものであり,本件発明の化合物と異なる化合物について結晶多形体に関する記述があるからといって,BPEFの新規な結晶多形体を得ようとする動機付けがあることにはならない。 医薬化合物の結晶多形体探索の動機付けについて,甲5(松岡正邦ほか「結晶多形の最新技術と応用展開」平成17年8月31日第1刷発行株式会社シーエムシー出版。以下,同一書籍である甲5,86,124,244,乙1の2を併せて「甲 動機付けについて,甲5(松岡正邦ほか「結晶多形の最新技術と応用展開」平成17年8月31日第1刷発行株式会社シーエムシー出版。以下,同一書籍である甲5,86,124,244,乙1の2を併せて「甲5’」ということがある。)に記載があっても,化合物全般に結晶多形体の探索のための動機付けがあるわけではない。BPEFは,モノマーとして溶媒に溶解して重合される原料であって,結晶形によってその後の重合物質に影響を与えるものではないから,結晶形によってそのバイオアベイラビリティーが異なる医薬品化合物の場合とは異なり,引用方法発明において,結晶多形体探索の動機付けがあったとはいえない。 ⒝ 原告は,甲6(特開2007-23016号公報)には,反応溶媒として,トルエンが使用され,そのまま晶析溶媒として用いることが示唆されているし,再結晶化することも示唆されていると主張しているが,この「再結晶」は,高純度化を目的とした精製操作としてのもので,本件発明1のように結晶多形体の - 8 -作り分けを目的とした操作ではなく,他の結晶多形体を得るための操作を行う動機付けとなるものではない。また,引用方法発明(甲6の実施例10)で得られたBPEFは,純度96.2%と十分に高純度なものであり,煩雑な精製操作を行わないことを目的とする引用方法発明において,再結晶化の精製操作を追加して行うべき積極的な動機付けがあるとも認められない。 原告は,甲9(特開平10-45655号公報)及び甲10(特開平10-45656号公報)には,芳香族炭化水素溶媒であるトルエン等を晶析溶媒に用いてBPEFの粗精製物を再結晶化することが記載されている上,甲11(特開平9-255609号公報),甲12(特開2000-191577号公報)及び甲13(特開2005-104898号公報)には, いてBPEFの粗精製物を再結晶化することが記載されている上,甲11(特開平9-255609号公報),甲12(特開2000-191577号公報)及び甲13(特開2005-104898号公報)には,トルエンを含む幅広い溶媒をBPEFの晶析溶媒に使用できることが記載されている旨主張しているが,BPEFの新規な結晶多形体を提供するという課題の解決手段として,本件発明1の特定の晶析溶媒である芳香族炭化水素溶媒を選択的に使用することについては,甲6,9~14及び他の甲号証の公知刊行物にも記載がなく,これが本件特許の優先日である平成19年2月15日(以下「本件優先日」という。)前の技術水準において当業者の技術常識になっていたと認めることもできない。 したがって,本件優先日前の技術水準において,新規な結晶多形体を得るための再結晶化工程を設けることについて,動機付けが存在していたとは認められず,相違点1-2について容易に想到し得たとは認められない。 c 相違点1-3について提出されている全ての公知刊行物を精査しても,再結晶化の段階で「65℃以上でBPEFの析出を開始」させることについての記載が示唆を含めて認められない。 上記bで検討したとおり,引用方法発明において,新規な結晶多形体を得るための再結晶化工程を設けることが動機付けられない以上,その再結晶化の段階で「65℃以上でBPEFの析出を開始」させるという本件発明1の特定事項を設定することは困難である。 - 9 -d 効果について本件発明1により得られる,示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃であるBPEFの結晶多形体(以下「多形体B」ということがある。)は,嵩密度が0.5以上,好ましくは0.6~0.8g/cm3であって,本件明細書の記載から嵩密度が0.2g 吸熱最大が160~166℃であるBPEFの結晶多形体(以下「多形体B」ということがある。)は,嵩密度が0.5以上,好ましくは0.6~0.8g/cm3であって,本件明細書の記載から嵩密度が0.2g/cm3程度と認められる多形体Aよりも嵩密度が高く,容積効率等の点で工業的な取扱いにおいて有利である。そして,多形体Bがそのような高い嵩密度が得られることは,特にBPEFの結晶多形体の存在が知られていなかった技術水準のもとでは,予測可能なものとはいえない。 e 総括以上のとおり,本件発明1は,引用方法発明及び周知技術に基づいて,又は引用法方法発明及び甲9若しくは甲10に記載された発明に基づいて,容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ本件発明2~4と引用方法発明との対比本件発明2~4は,本件発明1をさらに限定したものであるところ,本件発明1が甲6に記載された引用方法発明及び周知技術に基づいて,又は引用方法発明及び甲9若しくは甲10に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件発明2~4についても,引用方法発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 エ本件発明6と引用方法発明の対比及び相違点についての判断 対比本件発明6は,本件発明1から,さらに,多形体Bの析出のための溶媒をトルエン又はキシレンに限定したものであるから,引用方法発明との対比において,以下の相違点を有する。 (相違点6-1)本件発明6においては,粗精製物の段階で「50℃未満でBPEFの析出を開始」させるのに対して,引用方法発明においては粗精製物の段階における析出開始温度 - 10 -が特定されていない点。 (相違点6-2’)本件発明6においては,「次いで, PEFの析出を開始」させるのに対して,引用方法発明においては粗精製物の段階における析出開始温度 - 10 -が特定されていない点。 (相違点6-2’)本件発明6においては,「次いで,該粗精製物をキシレンまたはトルエンに溶解させた後にBPEFの析出を開始」させるという特定の溶媒を用いた再結晶化の操作を更に行っているのに対して,引用方法発明においては該粗精製物をキシレンまたはトルエンに溶解させた後,再結晶化の操作が更に行われていない点。 (相違点6-3)本件発明6においては,再結晶化の段階で「65℃以上でBPEFの析出を開始」させているのに対して,引用方法発明においては再結晶化の段階がなく,その段階における析出開始温度が特定されていない点。 相違点についての判断前記イで検討したのと同様に,相違点6-1について実質的な差異があるとは認められないものの,引用方法発明において,新規な結晶多形体を得るための再結晶化工程を設けることが動機付けられない以上,相違点6-2’,相違点6-3についての構成を容易に想到できたとは認められない。 オ本件発明7と引用結晶発明の対比及び相違点についての判断 一致点と相違点本件発明7と引用結晶発明とを対比すると,両者は「9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶」に関するものである点において一致し,次の点において相違する。 (相違点7-1)本件発明7においては,示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体であるのに対して,引用結晶発明においては,純度96.2%の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶であ -(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体であるのに対して,引用結晶発明においては,純度96.2%の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶であって,示差走査熱分析による融解吸熱最大が特定されていない点。 - 11 - 相違点についての判断前記イのとおり,引用結晶発明は,融点104℃の多形体Aの結晶と推認されるところ,以下のa~dのとおり,甲6に記載された発明及び周知技術に基づいて,又は甲6に記載された発明及び甲9若しくは甲10に記載された発明に基づいて,容易に多形体Aを本件発明7の多形体Bとすることはできない。 a 動機付けについて引用結晶発明は,煩雑な精製操作を行うことなく高純度のBPEFを得ることを目的としたものであるので,甲6の実施例10で,既に純度96.2%のBPEFの白色結晶が得られているのであるから,更に精製を行う動機付けはないし,別の結晶多形体を得る動機付けはない。 甲5,14の結晶多形に関する文献の記載から,結晶多形体間の溶解性の差等のため検討が行われる医薬品化合物をはじめとして一定程度結晶多形体に関する注目があったといえるにしても,工業製品全般に関して,一つの結晶から,自動的に他の結晶多形体への動機付けがあるものとはいえない。 b 結晶を得るための手法に関して本件発明7は,酸触媒として「特に酸触媒由来の不純物の生成が少なく,実質的に単一な多形体を得やすいヘテロポリ酸」を,溶媒として,トルエン,キシレンなどの特定の溶媒をそれぞれ選択使用し,その上で,粗精製物の析出開始温度の上限値を「50℃未満」とし,粗精製物の純度の下限値を「85%以上」とし,更に通常低温に冷却して結晶析出させると考えられるところ,高い温度で結晶の れぞれ選択使用し,その上で,粗精製物の析出開始温度の上限値を「50℃未満」とし,粗精製物の純度の下限値を「85%以上」とし,更に通常低温に冷却して結晶析出させると考えられるところ,高い温度で結晶の析出を開始させるために,高い濃度で溶解させ,あえて再結晶化時の析出開始温度の下限値を「65℃以上」とすることで,BPEFの新規な結晶多形体を得たものである。 多形体Bは,本件優先日時点で公知のものではなく,その製造方法が知られているわけでもないし,甲9,10に,たまたま,本件発明の多形体Bの製造工程の一工程の溶媒が好ましい例として記載されているからといって,多形体Aであることが推認される引用結晶発明から多形体Bを得ることを容易に想到することはできな - 12 -い。 c その他の製造方法による多形体Bの容易想到性についてその他の本件優先日前に頒布された甲号証を検討しても,多形体Aを経由しない製造方法(本件発明1~4,6とは異なる製造方法)によって,示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である多形体Bを確実に取得したことが理解できる記載も示唆もない。 また,甲6の再結晶化や晶析に関する記載に基づく示唆を勘案しても,甲6に大阪瓦斯株式会社が独自に開発したとするトルエン加水分解法(甲19,乙17)に関する開示がないことなどからすると,その製造ルートは示されておらず,示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である多形体Bを製造できるとはいえない。 そして,多形体Bが得られない以上,その結晶の融点を測定して,「示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である」との特定をすることができない。 d 効果について効果の顕著性の点からみても,多形体Bは,引用結晶発明に対して,嵩密度が3倍存在するという当業 による融解吸熱最大が160~166℃である」との特定をすることができない。 d 効果について効果の顕著性の点からみても,多形体Bは,引用結晶発明に対して,嵩密度が3倍存在するという当業者の予測を超える効果を奏している。 カ本件発明8と引用結晶発明の対比及び相違点についての判断 一致点と相違点本件発明8と引用結晶発明とを対比すると,両者は「9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶」に関するものである点において一致し,次の点において相違する。 (相違点8-1)本件発明8においては,Cu-Kα 線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θ が12.3°,13.5°,16.1°,17.9°,18.4°,20. 4°,21.0°,23.4°及び24.1°にピークを有する9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体であるのに対し - 13 -て,引用結晶発明においては純度96.2%の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶であって,Cu-Kα 線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θ のピークが特定されていない点。 相違点についての判断前記イのとおり,引用結晶発明は多形体Aと推認される。 引用結晶発明は,煩雑な精製操作を行うことなく高純度のBPEFを得ることを目的としたものであるところ,既に純度96.2%のBPEFの白色結晶が得られているのであるから,さらに精製を行う動機付けはないし,別の結晶多形体を得る動機付けもない。 また,「Cu-Kα 線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θ が12. 3°,13.5°,16.1°,17.9°,18.4°,20.4°,21.0°,23.4°およ を得る動機付けもない。 また,「Cu-Kα 線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θ が12. 3°,13.5°,16.1°,17.9°,18.4°,20.4°,21.0°,23.4°および24.1°にピークを有する,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体」は,本件優先日時点で公知のものではなく,製造方法が知られているわけでもない。甲9,10に,たまたま本件発明の製造工程の一工程の溶媒が好ましい例として記載されているからといって,上記BPEFの結晶多形体を得ることが容易想到とはいえない。 そして,本件優先日前に頒布された甲号証を検討しても,多形体Aを経由しない製造方法(本件発明1~4,6とは異なる製造方法)によって,そのCu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°,13.5°,16. 1°,17.9°,18.4°,20.4°,21.0°,23.4°及び24. 1°にピークを有する多形体を確実に取得したことが理解できる記載も示唆もなく,上記特定の粉末X線回折パターンを有する多形体を得ることが容易でない以上,そのCu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°,13.5°,16.1°,17.9°,18.4°,20.4°,21.0°,23. 4°及び24.1°にピークを有することを特定することもできない。 さらに,効果の顕著性の点からみても,多形体Bは,引用結晶発明に対して,嵩 - 14 -密度が3倍存在するという当業者の予測を超える効果を奏している。 以上からすると,本件発明8は,甲6に記載された発明及び周知技術に基づいて,又は甲6に記載された発明及び甲9若しくは甲10に記載された発明に基づいて,容易に発明をすることができたものではない。 キ本 ると,本件発明8は,甲6に記載された発明及び周知技術に基づいて,又は甲6に記載された発明及び甲9若しくは甲10に記載された発明に基づいて,容易に発明をすることができたものではない。 キ本件発明9と引用結晶発明との対比本件発明9は,本件発明8から「回折角2θ の最大ピークが18.4°である」ことを更に特定したものであり,前記カと同様に,本件発明9は,甲6に記載された発明及び周知技術に基づいて,又は甲6に記載された発明及び甲9若しくは甲10に記載された発明に基づいて,容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2) 無効理由4についてア前訴判決は,①原告は,平成14年3月頃から平成19年2月1日までの間に,●●●●●●株式会社(以下「α社」という。),株式会社●●●●●●●●●●●●●(以下「β社」という。),●●●●●株式会社(以下「γ社」という。),三菱ガス化学株式会社(以下「δ社」という。)及び●●●●●●●●株式会社(以下「ε社」という。)に対し,合計13回BPEFを譲渡する各取引をしていたところ,平成19年2月1日にされたβ社との取引(後述する第6取引,以下,第6取引と多形体BのBPEFが対象物となっていたその他の上記の各取引とを併せて「本件各取引」という。)の対象物であったBPEF以外のBPEFは,いずれも本件発明7の実施品に該当する多形体BのBPEFであったと認定し,さらに,②本件各取引の対象物であるBPEFは,従前,原告,被告,●●株式会社(以下「X社」という。)及び大阪瓦斯株式会社(以下「Y社」という。)がしていた共同開発(以下「本件共同開発」という。)とは別に,Y社が開発した製造方法によって製造されたものであって,そのBPEFの物性情報(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は,原告,被告,X社及 がしていた共同開発(以下「本件共同開発」という。)とは別に,Y社が開発した製造方法によって製造されたものであって,そのBPEFの物性情報(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は,原告,被告,X社及びY社の間で締結された平成5年9月21日付けの覚書(以下「本件覚書」という。)に基づく秘密保持義務の対象とはならず,α社~ε社が,秘密保持義務を負担していたとは認められないことを認定し,本件発明7が本件優 - 15 -先日前に公然実施されたものであるとしたが,これらの点について,行政事件訴訟法33条1項の拘束力が及ぶ。 イ公然実施についての判断前訴判決のとおり,第6取引を除く本件各取引の対象となったBPEFは,本件発明7に該当するものであって,それらの各取引によって,本件優先日前,本件発明7に該当する多形体Bを原告が実施(譲渡)したと認められる。 本件各取引の対象となったBPEFは,Y社が独自に開発した製造方法によって製造されたものであり,その物性情報(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は,本件覚書に基づく秘密保持義務の対象とはならない。 その他,原告からBPEFの譲渡を受けたα社~ε社が,原告又はY社に対して本件各取引の対象物であるBPEFの示差走査熱分析による融解吸熱最大について秘密保持義務を負担していたと認めるに足りる証拠はなく,第6取引を除く本件各取引によって,本件発明7は,本件優先日前に日本国内又は外国において公然実施された発明となっていた。 なお,被告は,本件発明7の公然実施の判断について主張しているが,前訴判決の拘束力が及ぶので,その点に関する主張は採用することができない。 ウ公知についての判断証拠によると,平成14年3月頃に原告が,ロット番号02018~02021のBPEFをY社から購入してα社に が及ぶので,その点に関する主張は採用することができない。 ウ公知についての判断証拠によると,平成14年3月頃に原告が,ロット番号02018~02021のBPEFをY社から購入してα社に対して譲渡した取引(後述する第1取引)に先立って,同ロット番号のBPEFのサンプルの示差走査熱量測定がα社によって行われており,守秘義務のないα社の担当者及びその上司が,同サンプルの示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.8~163.2℃であったことを知ったと認定でき,少なくとも第1取引によって,本件発明7に該当するBPEFの示差走査熱分析による融解吸熱最大は,公然知られていたということができる。 したがって,本件発明7は,本件優先日前に日本国内又は外国において公然知られた発明になっていた。 - 16 -エ以上のとおり,本件発明7は,特許法29条1項1号,2号に該当し,本件発明7に係る特許は同条に違反してされたものである。 4 原告主張の取消事由等 (1) 本件発明1の容易想到性判断の誤り(取消事由1)(2) 本件発明2の容易想到性判断の誤り(取消事由2)(3) 本件発明3の容易想到性判断の誤り(取消事由3)(4) 本件発明4の容易想到性判断の誤り(取消事由4)(5) 本件発明6の容易想到性判断の誤り(取消事由5)(6) 本件発明7の容易想到性判断の誤り(予備的主張)(7) 本件発明8の容易想到性判断の誤り(取消事由6)(8) 本件発明9の容易想到性判断の誤り(取消事由7) 5 被告主張の取消事由本件発明7の公然実施及び公知についての認定判断の誤り(取消事由8)第3 当事者の主張 1 本件発明1の容易想到性判断の誤り(取消事由1)(原告の主張) 5 被告主張の取消事由本件発明7の公然実施及び公知についての認定判断の誤り(取消事由8)第3 当事者の主張 1 本件発明1の容易想到性判断の誤り(取消事由1)(原告の主張)(1) 動機付けについてア結晶性粒子の製造を目的とした,晶析による結晶多形体の探索は,本件で問題になっているBPEFのようなファインケミカルズの分野においては重要な課題,技術常識であり,当業者には結晶多形体を得ようとする動機付けがあった(前訴判決の67頁21行~68頁7行,甲5,14,59,60,124,158,246,247)。 本件明細書の段落【0002】,【0003】や本件優先日前に存した先行技術文献(甲5,14,67,231~237)からすると,①本件優先日当時,最終的に溶解して重合され,高分子化合物(ポリマー)になる単量体(モノマー)であっても,高品質なポリマー製造のためにはモノマー自体の純度が重要であり,かつ② - 17 -嵩密度をはじめとする粉体特性や純度に結晶形が重要な影響を与えると当業者が認識しており,③高純度かつより良い粉体特性を有するモノマーを製造するために結晶多形体を作り分けることが技術常識になっていたと認められる。 イ結晶多形体の探索においては,できるだけ多くの結晶化条件について網羅的に実験を行うというスクリーニング法を実施することが技術常識となっていた(前訴判決,甲5,124,乙1の2)。 また,溶媒の種類と結晶化温度(晶析温度)が結晶多形体析出に際しての主な結晶化条件であることも技術常識であったから,結晶多形体の探索に際して,当業者が溶媒や結晶化温度(晶析温度)について,通常発揮する創作能力を用いてスクリーニング法によって結晶多形体を析出することは容易に想到し得たものである(甲55,56)。 晶多形体の探索に際して,当業者が溶媒や結晶化温度(晶析温度)について,通常発揮する創作能力を用いてスクリーニング法によって結晶多形体を析出することは容易に想到し得たものである(甲55,56)。 ウ被告は,結晶多形体と結晶の外観形状(晶癖)が異なるものであるとして,晶癖の相違が,結晶多形体探索の動機付けとは無関係であるかのように主張しているが,結晶の内部構造(空間群)や結晶の外観形状は,結晶多形体を決定する要素として位置付けられていて,結晶の外観形状と結晶多形体が技術的に無関係とはいえない(甲59,244)。 また,結晶多形体の制御方法と晶癖の制御方法は共通しており,結晶多形体により結晶の外観形状が異なって,嵩密度等の粉体特性や純度に大きな影響を与えるから,粉体特性改善の観点からも結晶多形体を制御することは重要な技術事項とされており(甲86,乙1の1),嵩密度等の粉体特性改善を目的として所望の外観形状を備えた結晶を探索することは,とりもなおさず結晶多形体を探索することを包含するものといえ,被告の主張は失当である。 そして,被告は,第一次審決取消訴訟において,甲67が結晶多形体であることを認めていた(甲248)。 エなお,被告は,甲246~248及びそれらに基づく主張が時機に後れた攻撃防御方法であると主張するが,本件訴訟の経過からして訴訟の完結を遅延さ - 18 -せるものではなく,その主張は失当である。 また,結晶多形体及び晶癖に関し,被告が平成30年10月31日に提出した乙49~52は,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。 (2) 相違点1-2の容易想到性についてア第二次審決は,相違点1-2について,晶析溶媒として芳香族炭化水素溶媒を選択することは容易想到でないと判断した。 しかし,前訴判 るべきである。 (2) 相違点1-2の容易想到性についてア第二次審決は,相違点1-2について,晶析溶媒として芳香族炭化水素溶媒を選択することは容易想到でないと判断した。 しかし,前訴判決が認定したとおり,本件優先日当時,結晶多形体の析出に当たって,重要な析出条件として,晶析溶媒の種類に着目することは技術常識であった。 甲6には,①BPEFの晶析溶媒として芳香族炭化水素溶媒の一つであるトルエンが記載され,また,②晶析溶媒として反応溶媒をそのまま使用してもよいとの記載が存在する。加えて,③引用方法発明である甲6の実施例10の反応溶媒はトルエンである。 BPEFの製造方法に関する甲9~11にも,BPEFの再結晶化を行う際の晶析溶媒として芳香族炭化水素溶媒であるトルエンが記載されており,甲12,13にも,BPEFの晶析を行う際の溶媒としてトルエンなどの芳香族炭化水素溶媒を用いることが記載されており,甲9~13における各公知刊行物に示されるように,晶析によるBPEFの結晶多形体探索を行う際に,晶析溶媒のスクリーニングで芳香族炭化水素溶媒であるトルエンを選択することは,当業者にとって周知であったといえる。 イまた,本件優先日当時,高品質なポリマーを製造するためには,純度が99%以上のモノマーが必要であったと認識されており,BPEFにおいても99. 5%を超える純度のものが知られていた(甲9の実施例2及び甲10の実施例3)。 そうすると,甲6の実施例9や実施例10で得られたBPEF(純度がそれぞれ99.0%,96.2%)も純度が低く,甲6に接した当業者は,甲6に開示されたBPEF粗精製物から,甲9や甲10が開示するような,より純度の高いBPEFを製造するべく,結晶多形体の作り分けを含めた精製を行うことを動機付けられる - 甲6に接した当業者は,甲6に開示されたBPEF粗精製物から,甲9や甲10が開示するような,より純度の高いBPEFを製造するべく,結晶多形体の作り分けを含めた精製を行うことを動機付けられる - 19 -といえる。 ウ以上のとおり,当業者において,甲6の実施例10(本件明細書の実施例4で粗精製物を得るためのものと,実験条件及び結果が実質的に同じ)にあるトルエンについて,甲6の上記記載に基づくか又は甲9~13の記載事項やそこに示された周知技術に基づいて,そのままこれを再結晶化操作の溶媒として用いることは極めて容易に想到できるものである。 エ被告は,甲6は煩雑な精製操作等を行わないことを目的とするものであるから,甲6に甲9や甲10を組み合わせる動機付けがないと主張するが,甲6において煩雑な精製操作を行わないとする目的は,イオウ分を含まない製品を製造することにある(段落【0007】)。かえって,甲6は,純度を向上するための精製操作を行う技術的思想を明細書で説明しているのであって(段落【0025】),被告の主張は失当である。 (3) 相違点1-3の容易想到性判断の誤りアスクリーニング法による結晶多形体探索に当たり,当業者には,結晶の析出開始温度が主な結晶化条件であることが認識されていた(甲238~241)上,晶析に際し,析出開始温度を上げたり下げたりすることによって結晶化条件を見つけ出す作業も一般に行われていた(甲14)。 そして,本件発明では,結晶多形体の析出を行うに当たって芳香族炭化水素溶媒としてトルエンを使用するが,このトルエンの沸点は110.6℃であるから,わずか10回程度の実験で,本件発明1の析出開始温度の閾値である65℃を容易に把握することができる。 イまた,相違点1-3は,引用方法発明である甲6の のトルエンの沸点は110.6℃であるから,わずか10回程度の実験で,本件発明1の析出開始温度の閾値である65℃を容易に把握することができる。 イまた,相違点1-3は,引用方法発明である甲6の実施例10に,副引例である甲9又は甲10を適用することで,当業者が容易に想到し得たものである。 すなわち,甲9及び甲10の各実施例1の溶液よりも濃度の低い本件明細書の実施例5(BPEFに対する溶媒量8重量倍)での結晶析出開始温度が65℃である - 20 -ところ,ここに同一の製造方法で製造したBPEF粗精製物を同一の溶媒に溶解させて再結晶化操作を行えば,溶液濃度が高いほど,析出開始温度が高くなるという技術常識を踏まえると,当業者は,溶液の濃度がより高い甲9及び甲10の各実施例1の結晶析出開始温度が,65℃以上であることは容易に確認できる。 また,甲9,10において,BPEFの再結晶化の際にトルエンを溶媒として用いた場合には,溶媒量は,BPEFに対して約2重量倍~約16重量倍とすることが記載・開示されており,これは本件明細書の段落【0030】に記載された1. 5重量倍~7重量倍を包含している。加えて,本件明細書において,「更に好ましくは1.5重量倍~7重量倍」としている範囲は,甲9,10に記載・開示されている約2重量倍~約16重量倍の中間付近の範囲であって,甲9,10に接した当業者がそのような溶媒量を選択することに何らの困難性もない。 そして,相違点1-3における「65℃以上でBPEFの析出を開始」とは,溶液を加熱した後,冷却時に何らの温度制御を行わずに冷却する方法であり,本件明細書の実施例5,実施例6及び実施例8は,いずれも徐々に冷却したところ,65℃,70℃,72℃で結晶が析出し始めたという「現象」にすぎない。この「現象」は, 度制御を行わずに冷却する方法であり,本件明細書の実施例5,実施例6及び実施例8は,いずれも徐々に冷却したところ,65℃,70℃,72℃で結晶が析出し始めたという「現象」にすぎない。この「現象」は,溶液濃度が高いほど,析出開始温度が高くなるという技術常識を利用したことによる結果にすぎず,副引例(甲9及び甲10の各実施例1)に開示された溶液濃度(BPEFに対する溶媒量)の記載・開示及び再結晶原理を踏まえて再結晶化操作をした場合に,当業者が相違点1-3における「65℃以上でBPEFの析出を開始」する現象を確認することは容易である。 被告は,「溶液濃度が高いと結晶析出開始温度も高くなり,その温度は自ずと決定される」という原告主張の原理は誤りであると主張しているが,溶媒に溶かす溶質や溶媒の種類が異なると,結晶析出開始温度が異なるのは当然である。 溶質や溶媒の種類に関係なく,溶液濃度が決まると,結晶析出開始温度が一意に決まるかのようにいう被告の主張は,原告の主張を正解しないものである。 被告が提出した乙37,38についても,乙37で再結晶化の対象となったBP - 21 -EF粗精製物がどのように製造されたかが不明であり,その製造方法や追試結果も記載されていないから,乙37は,甲9の実施例1を忠実に追試したものとは認められない。乙38についても,乙38の追試対象である甲13の実施例1において,精製操作の対象となっているのは,BPEFと硫酸ナトリウムの混合結晶であって,相違点1-3の晶析対象であるBPEF粗精製物ではなく,本件発明1の再結晶化操作とは内容において異なっている。 被告は,本件発明1において,析出開始温度の制御がされていると主張するものの,本件明細書中で多形体A(粗精製物)から多形体Bを製造するための再結晶化操作の実施例である 内容において異なっている。 被告は,本件発明1において,析出開始温度の制御がされていると主張するものの,本件明細書中で多形体A(粗精製物)から多形体Bを製造するための再結晶化操作の実施例である実施例5,6の「この溶液を徐々に冷却した」という記載内容及び被告が,別件の無効審判において,「徐々に冷却」とは,「温度制御を一切行わないこと」と主張していること(甲54)からすると,温度制御がされていないことは明らかである。 また,被告は,析出操作開始時の温度(未飽和溶液の調製温度)を「90℃」,「100℃」及び「90℃」に各調整し,同温度で一定時間攪拌することにより,多形体Bの結晶析出が「65℃」,「70℃」及び「72℃」で開始されるように制御していると主張するが,トルエンの沸点(110.6℃)及び蒸発したトルエンの危険性(引火性,有毒性)に鑑みると,沸点より少し低い90~100℃程度の溶液を作ることは技術常識の範囲で当業者が設定する溶液温度であり,かつ溶液を均一なものとするべく攪拌することも溶液調製の一般的手法にすぎず,それをもって温度を制御していたとはいえない。 (4) 本件発明1の作用効果に関する判断の誤りア多形体Bの作用効果とされる嵩密度について,嵩密度は,同じ物質でもその充填状態によって値が大きく異なることから,測定方法の明記が必要であるとされているにもかかわらず,本件明細書は,段落【0033】において「嵩密度が0.5以上,好ましくは0.6~0.8g/cm3」と記載するのみで,測定方法について何ら記載していない。このような記載では,当業者はどのような充填方法を - 22 -採用すると,このような嵩密度が達成できたのかを理解することができず,本件発明1の嵩密度に関する作用効果はおよそ評価不能である。 イ 記載では,当業者はどのような充填方法を - 22 -採用すると,このような嵩密度が達成できたのかを理解することができず,本件発明1の嵩密度に関する作用効果はおよそ評価不能である。 イ一般に,作用効果によって進歩性が肯定されるのは,対象発明が従来技術に比して顕著な作用効果を有し,かつ,当該顕著な作用効果が出願当時の技術水準から当業者にとって予測できない場合である。 これを本件についてみると,本件優先日当時,結晶形の違いによって嵩密度が1. 5~6倍になるという従来技術を示す各文献(甲61~66)が多数存在しており,各文献が示す知見及び技術水準を踏まえると,多形体Bの嵩密度が,多形体Aに比べて3倍程度高くなったという程度では,顕著な作用効果とはいえず,かつ,当業者の予測を何ら超えるものでもない。 なお,第二次審決は,①多形体Bの存在が知られていなかった技術水準のもとでは,高い嵩密度に関する作用効果は予測可能なものではない,②実際に多形体Bを合成して分析しないとその特性の予測性はないとも説示するが,ここで顕著な作用効果に基づく進歩性が問題となるのは,相違点が容易想到であるとされた場合に,容易想到である当該多形体Bについて,嵩密度の高さ(作用効果)が当業者の予測を超えるかという点であり,この論点を検討する局面では,多形体Bの存在が容易想到であったとの前提があるのであって,上記①の説示は失当である。また,ここでの問題は当業者の予測を検討することにあるのであって,実際に多形体Bを合成しないと予測できないという説示自体,予測の問題を検討するものとはいえず,上記②の説示も失当である。 (被告の主張)(1) 動機付け等についてア前訴判決は,その67頁21行~68頁2行で,本件優先日前,晶析操作は化学製品から医薬品まで広い範 のとはいえず,上記②の説示も失当である。 (被告の主張)(1) 動機付け等についてア前訴判決は,その67頁21行~68頁2行で,本件優先日前,晶析操作は化学製品から医薬品まで広い範囲にわたり行われている一方で,化合物の分子構造から結晶の内部構造に関わる結晶多形体を予測すること及び晶析操作による結晶多形体析出の制御が当業者にとって容易に想到し得ない事柄であると認定してい - 23 -るのであって,原告が主張するように,晶析による結晶多形体の探索が技術常識としてファインケミカルズの分野で重要な位置を占めていたなどとは認定していない。 他方,第二次審決は,本件発明のBPEF(モノマー)は,ポリエステル等の合成樹脂(ポリマー)の原料に供される物質であり,それ自体,単体として利用される物質ではなく,ポリマー合成時に,溶融重合又は溶液重合して結晶形を留めなくなることから,異なる結晶形の存在について当業者が意識することやこれを創製しようとする課題,動機付けがなかったと正しく判断している。医薬品化合物のように,単体それ自体をそのまま使用する化合物の場合は,性質(溶解性,安定性,バイオアベイラビリティー等)が結晶形によって異なるから,異なる結晶形を創製しようとする課題が出てくるが,BPEFのような,ポリマーの原料となるモノマーは,その結晶形が異なっても,重合反応により同じ繰り返し単位を有するポリマーとなるから,異なる結晶形の存在について当業者が意識することも,これを創製しようとする課題,動機付けもなかった。 本件明細書の段落【0002】,【0003】の記載は,本件発明完成後の記載であって,本件優先日前の技術常識を記載したものではない。 イ甲14,67,234~237にいう「結晶形」や「結晶形状」とは,結晶の「外観形状」(晶癖) 【0003】の記載は,本件発明完成後の記載であって,本件優先日前の技術常識を記載したものではない。 イ甲14,67,234~237にいう「結晶形」や「結晶形状」とは,結晶の「外観形状」(晶癖)であって,本件発明の「結晶多形体」とは異なる概念である。本件明細書記載の多形体Aや多形体Bにいう「結晶多形体」とは,同一分子(同一組成)でありながら結晶中での分子の配列の仕方(結晶構造)が異なるものをいうが,これに対して,結晶の「外観形状」とは,針状結晶とか板状結晶のように,結晶中での分子の配列の仕方(結晶構造)は同じでも,結晶面の成長速度の違いによって形成されるものであって,「結晶多形体」とは異なる概念とされているものである。甲67,234~237に記載されているのは「外観形状」か「包接体」(結晶の組成が異なるもの)であり,いずれも「結晶多形体」ではない。 また,甲246は,新規な構造を有する結晶多形体を開示したり,探索したりする発明ではない上,結晶構造が異なっても得られた純度は同じであるとされている。 - 24 -甲247の化合物も,感熱記録材の「顕色剤」として単体での用途もあるものであって,甲247は,「顕色剤」として単体で使用する場合の問題の解決を課題として想到された発明である。したがって,甲246,247は,いずれもモノマーについての結晶多形体探索を動機付けるものではない。 なお,原告の甲246~248及びそれに基づく主張は,時期に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。 ウ従来から,結晶化操作において,結晶化温度,溶液の純度等が影響することが知られていたが,結晶多形体(結晶の内部構造)の制御は困難であって,前訴判決も認定しているとおり,経験的な手法に頼らざるを得ず,新規な結晶多形体を見いだすこと及び特定の結晶多形体 等が影響することが知られていたが,結晶多形体(結晶の内部構造)の制御は困難であって,前訴判決も認定しているとおり,経験的な手法に頼らざるを得ず,新規な結晶多形体を見いだすこと及び特定の結晶多形体を安定的に得る条件を見いだすことは極めて困難な作業であるとされていた。 原告は,溶媒の種類と結晶析出開始温度に着目するだけで,多形体Bが容易に製造可能であるかのように主張しているが,これは「後知恵」の主張である。 (2) 相違点1-2の容易想到性判断の誤りについてア甲6,9等には,トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素溶媒が例示されているが,甲6等には,本件発明1が排斥したメタノール等の脂肪族低級アルコール類等も溶媒として挙げられているのであるから,トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素溶媒を選択する示唆とはなり得ない。 しかも,甲6,9,10の「再結晶」は,「高純度化」を目的とした精製操作であって,本件発明1のような多形体Bを析出させるという「結晶多形体の作り分け」を目的としたものではない。 また,甲9,10は一度結晶化した多形体Aを,高純度化の目的で,再び多形体Aとして結晶化するという意味の「再結晶」をしているが,本件発明1は,結晶化した多形体Aを原料に,作り分け目的で,多形体Bとして結晶化させているから,多形体Bを「再結晶」したものではない。 イ甲6の実施例9では,純度が「99.0%」のBPEFが得られており, - 25 -甲6に接した当業者において,さらに再結晶化等の精製操作を行おうとする動機付けはない。原告が主張する「99%以上」の純度のBPEFを得るには,甲6の実施例10で得られたBPEF(多形体A)を更に再結晶化するより,甲6の実施例9の製法を採用することでよく,「煩雑な触媒除去操作や精製操作を行わないこと」を目的 」の純度のBPEFを得るには,甲6の実施例10で得られたBPEF(多形体A)を更に再結晶化するより,甲6の実施例9の製法を採用することでよく,「煩雑な触媒除去操作や精製操作を行わないこと」を目的とする甲6に甲9や甲10を組み合わせる動機付けはない。 また,新規の多形体Bが,従来の多形体Aより当然に高純度になるというものでもない。 (3) 相違点1-3の容易想到性判断の誤りについてア一般論として,溶液の濃度が高いと析出開始温度も高くなる傾向はあるものの,析出開始温度は,必ずしも単純に溶液の濃度のみに依存するものではない。 現に,甲9の実施例1を追試した結果(乙37)によると,「13重量%」と本件発明の実施例5よりも濃度が高い甲9の実施例1の結晶の析出開始温度は「42. 8℃」であり,本件発明の実施例5の「65℃」より低い。同様に,甲13の実施例1を追試した結果(乙38)によると,濃度が「20重量%」と本件発明の実施例6及び8の濃度より高い甲13の実施例1の結晶の析出開始温度は「40.5℃」であり,本件発明の実施例6の「70℃」,実施例8の「72℃」より低い。 結晶の析出に必要な「核」の発生は,いわゆる「ゆらぎ」により起こり,これが基質や系の異同により変動するため,基質の濃度が同じであると,常に同じ温度で核が発生するというものではない(乙36)。 したがって,濃度により結晶析出開始温度は自ずと決定されるという原告主張の再結晶の原理や,甲9及び甲10の各実施例1でも結晶析出開始温度は65℃以上になっていた旨の原告の主張は,技術的に誤っている。 イ本件特許の請求項1及び本件明細書中に記載された事項や各実施例についての説明に接した当業者は,本件発明において析出開始温度が制御されていると理解する。 本件明細書において,実施例2,7 る。 イ本件特許の請求項1及び本件明細書中に記載された事項や各実施例についての説明に接した当業者は,本件発明において析出開始温度が制御されていると理解する。 本件明細書において,実施例2,7について説明した段落【0036】,【00 - 26 -42】には,80℃を維持(保温)して結晶の析出を待つ温度制御が記載されている。実施例2,7とは異なり,実施例5,6,8では「この溶液を徐々に冷却したところ,・・・℃で結晶が析出し始め,・・・」などとして,あたかも何らの制御もせずに放置したかのような記載となっているが,実施例5,6,8について説明した段落【0039】,【0040】,【0043】の記載からすると,析出操作開始時の溶液の温度(未飽和溶液の調製温度)を「90℃」,「100℃」及び「90℃」に各調整し,同温度で一定時間撹拌することにより,多形体Bの結晶析出が「65℃」,「70℃」及び「72℃」で開始されるように制御している。 そして,析出開始温度を制御している本件発明1とは異なり,甲6,9~10,13では,その記載からすると,析出開始温度を制御することについての開示又は示唆がない。 なお,晶析に関係する多数のパラメータの中で「析出開始温度」が特に重要なパラメータであるとした知見はなく,本件発明の技術分野における技術常識でもない。 前訴判決が認定の根拠とした甲5の154頁12行~17行においても,「析出開始温度」が他と比較して特に重要なパラメータであるとはされていない。 (4) 本件発明1の作用効果に関する判断の誤りに対してア嵩密度とは一定の容量の容器に特定の方法にて粉体を投入した際の投入された粉体の重量によって算出されるものであるから,測定方法の詳細が記載されていなくても,数値自体の相対評価は可能であり,本件明細書に 嵩密度とは一定の容量の容器に特定の方法にて粉体を投入した際の投入された粉体の重量によって算出されるものであるから,測定方法の詳細が記載されていなくても,数値自体の相対評価は可能であり,本件明細書には多形体Aと多形体Bの各嵩密度が具体的に記載されているから,この比率が約3倍であることは理解可能である。 イ原告の出願である特開2012-207008号(乙13)でも「1. 25~1.39倍」程度の嵩密度の向上を「顕著な効果」としており,これが当業者の認識である。 ウ機械分野や電気分野の発明においては,容易想到とされる発明の構成や構造から,その奏する効果は顕著であったとしても,多くの場合,当業者が予測す - 27 -ることは可能である。しかし,本件発明のような化学分野の発明では,新規物質の製法や構造から,その奏する効果を予測することは当業者でも不可能である。第二次審決は,このことを現実に合成した多形体Bを分析する必要があると表現したものであり,その判断手法に誤りはない。 2 本件発明2の容易想到性判断の誤り(取消事由2)(原告の主張)本件発明2の構成である脱水条件下で反応が行われることについては,甲6の段落【0038】に記載されているから,本件発明1が容易想到であり進歩性を欠く以上,本件発明2も,甲6に記載された発明及び周知技術に基づいて,又は甲6に記載された発明及び甲9若しくは甲10に記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 (被告の主張)本件発明2は,本件発明1を更に限定した発明であるから,進歩性が肯定される。 3 本件発明3の容易想到性判断の誤り(取消事由3)(原告の主張)本件発明3の構成であるケイ酸とタングステンの酸素酸イオンから構成されるケイタングステン酸は,甲6の【実施例10】,段落 る。 3 本件発明3の容易想到性判断の誤り(取消事由3)(原告の主張)本件発明3の構成であるケイ酸とタングステンの酸素酸イオンから構成されるケイタングステン酸は,甲6の【実施例10】,段落【0038】に記載されているから,本件発明1が容易想到であり進歩性を欠く以上,本件発明3も,甲6に記載された発明及び周知技術に基づいて,又は甲6に記載された発明及び甲9若しくは甲10に記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 (被告の主張)本件発明3は,本件発明1を更に限定した発明であるから,進歩性が肯定される。 4 本件発明4の容易想到性判断の誤り(取消事由4)(原告の主張)本件発明4の構成である予め脱水処理されたヘテロポリ酸は,甲6の【実施例10】,段落【0038】に記載されているから,本件発明1~3が容易想到であり進 - 28 -歩性を欠く以上,本件発明4も,甲6に記載された発明及び周知技術に基づいて,又は甲6に記載された発明及び甲9若しくは甲10に記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 (被告の主張)本件発明4は,本件発明1を更に限定した発明であるから,進歩性が肯定される。 5 本件発明6の容易想到性判断の誤り(取消事由5)(原告の主張)第二次審決のいう相違点6-2’及び6-3についての容易想到性判断の誤りについて,取消事由1で主張した内容が同様に当てはまるから,同主張を援用する。 (被告の主張)本件発明6は,本件発明1を更に限定した発明であるから,進歩性が肯定される。 6 本件発明7の容易想到性判断の誤り(予備的主張)(原告の主張)(1) 第二次審決のいう相違点7-1に関する容易想到性判断の誤りについては,取消事由1で主張した内容が同様に当てはまるから,同主張 本件発明7の容易想到性判断の誤り(予備的主張)(原告の主張)(1) 第二次審決のいう相違点7-1に関する容易想到性判断の誤りについては,取消事由1で主張した内容が同様に当てはまるから,同主張を援用する。 (2) また,取消事由1に関する主張を援用せずとも,物の発明に係る本件発明7は,容易想到である。 すなわち,引用方法発明である甲6の実施例10で合成されたBPEF粗精製物は,その純度が96.2%と低く,より高純度な結晶多形体を得ようとする当業者の動機付けが存する。加えて,甲6の明細書中の必要に応じて再結晶化操作をしてもよいとの記載(段落【0025】)に基づき,当業者は更に純度を上げるために精製操作を行うことが動機付けられる。ここで,主引用発明である甲6及び副引例である甲9,10はいずれも物であるBPEFの製造に関する発明であるところ,当業者は甲6で得られたBPEF粗精製物を精製すべく,甲9又は甲10に記載の再結晶化の方法を用いて多形体Bを得ることを容易に想到できる。このように,甲6のBPEF粗精製物を高純度化する目的で甲9又は甲10の発明を組み合 - 29 -わせることにより,当業者は容易に多形体Bを製造することができ,製造した結晶形を確認するために示差走査熱分析によってその融解吸熱最大(融点)を測定により得ることは当業者に何らの困難性もない。 (被告の主張)本件発明7は,新規の多形体Bに係る物質発明であり,その製法である本件発明1が進歩性を有することから,本件発明7も進歩性を有する。 なお,前訴判決も指摘するように,本件発明1とは別異の製法により多形体Bが得られる可能性もあるものの,そのことを開示又は示唆するような公知文献は存在せず,原告もそのような文献を提出していないから,それをもって本件発明7が容 うに,本件発明1とは別異の製法により多形体Bが得られる可能性もあるものの,そのことを開示又は示唆するような公知文献は存在せず,原告もそのような文献を提出していないから,それをもって本件発明7が容易想到とはいえない。 7 本件発明8の容易想到性判断の誤り(取消事由6)(原告の主張)第二次審決のいう相違点8-1に関する容易想到性判断の誤りについては,取消事由1で主張した内容が同様に当てはまるから,同主張を援用する。 また,取消事由1を援用せずとも,主引用発明の甲6に副引例の甲9又は甲10を適用して当業者が容易に多形体Bを製造できることは前記6で主張したとおりである。 (被告の主張)本件発明8は,新規の多形体Bに係る物質発明であり,その製法である本件発明1が進歩性を有することから,本件発明8も進歩性も有するといえる。 なお,前訴判決も指摘するように,本件発明1とは別異の製法により多形体Bが得られる可能性もあるものの,本件発明1とは別異の製法により多形体Bが得られることを開示又は示唆するような公知文献は存在しないし,原告もそのような文献を提出していないから,それをもって容易想到とはいえない。 8 本件発明9の容易想到性判断の誤り(取消事由7)(原告の主張) - 30 -第二次審決は,本件発明8が容易に想到できないことを理由にその従属項である本件発明9の容易想到性を否定したが,前記7のとおり本件発明8は当業者にとって容易に想到できたものであるから,本件発明9の容易想到性判断が誤りであることは明らかである。 (被告の主張)本件発明9は,新規の多形体Bに係る物質発明であり,その製法である本件発明1が進歩性を有することから,本件発明9も進歩性も有するといえる。 なお,前訴判決も指摘するように,本件発明1とは別異の製法に 本件発明9は,新規の多形体Bに係る物質発明であり,その製法である本件発明1が進歩性を有することから,本件発明9も進歩性も有するといえる。 なお,前訴判決も指摘するように,本件発明1とは別異の製法により多形体Bが得られる可能性もあるものの,本件発明1とは別異の製法により多形体Bが得られることを開示又は示唆するような公知文献は存在しないし,原告もそのような文献を提出していないから,それをもって容易想到とはいえない。 9 本件発明7の公然実施及び公知についての認定判断の誤り(取消事由8)(被告の主張)(1) 前訴判決の拘束力等について本件では,①「本件覚書に基づく秘密保持義務」又は②「共同開発に基づく信義則上の秘密保持義務」(以下「信義則上の秘密保持義務」ということがある。)の,いずれかの秘密保持義務が認められることで,本件発明7は,公然実施の発明にも公知の発明にも該当しなくなる。そして,前訴判決は,①のみを否定し,②については判断していないから,②の点について,前訴判決の拘束力は及ばない。したがって,②の信義則上の秘密保持義務の不存在についても前訴判決の拘束力が及ぶとした第二次審決の判断は誤りである。 なお,知財高裁平成24年(ネ)第10016号同年7月18日判決(以下「侵害訴訟判決」という。)は,原告からα社~ε社へのBPEFの譲渡が事業の実施に該当すると認定しただけであり,被告の共同開発の主張を排斥したものではない上,侵害訴訟判決の理由中の判断には拘束力はない。 (2) 原告又はY社,α社~ε社による共同開発に基づく信義則上の秘密保持義 - 31 -務被告は,従前,X社,Y社及び原告との間で,BPEF及びこれを原料とするポリマーを開発する本件共同開発を行っており,被告がモノマーであるBPEFの製造を,X社がポリマ 持義 - 31 -務被告は,従前,X社,Y社及び原告との間で,BPEF及びこれを原料とするポリマーを開発する本件共同開発を行っており,被告がモノマーであるBPEFの製造を,X社がポリマー合成を,Y社及び原告がその仲介(商社的役割)を担当していた。 以下の(3)の各事実からすると,本件共同開発の終了後,原告及びY社は,被告のモノマー製造会社としての役割を,商号等が未だ明らかでないA社,B社又は株式会社フルファイン(以下「フルファイン社」という。)に担わせた上で,ポリマー合成会社であるα社(X社の関連会社)やβ社~ε社ら5社との間で同様の共同開発を継続し,その一環として本件各取引を行い,BPEFの試作品をα社~ε社に提供していたのである。 そうすると,α社~ε社,原告及びY社は,上記各共同開発に基づく信義則上の秘密保持義務を相互に負担していたといえ,α社~ε社が,本件発明7の実施品に当たるBPEFの提供を受け,かつα社の担当者及びその上司が,多形体BのBPEFの融点を知ったとしても本件発明7は公然実施及び公知の発明とはならない。 (3) 本件各取引が共同開発であったことを示す事実ア取引量が少量であること本件各取引におけるBPEFの取引量は,以下のとおりの量にすぎず,被告がX社,Y社及び原告との本件共同開発時(平成7年4月から平成8年3月までの間)に供給したBPEF(主として多形体A)が,少なくとも合計約12.8トンであったのに比しても少ない。現に,当時,原告の執行役員であったA(以下「A」という。)は,第一次審決に際して行われた証人尋問において50トン程度の多形体Bの供給量は,共同開発段階での取引量である旨を供述している(甲142)上,ゼオネックスという光学用樹脂の開発等に関する証拠(乙14)からすると,数十トン われた証人尋問において50トン程度の多形体Bの供給量は,共同開発段階での取引量である旨を供述している(甲142)上,ゼオネックスという光学用樹脂の開発等に関する証拠(乙14)からすると,数十トンから100トンレベルの製造は,開発段階のものであるといえる。 ① α社との5回にわたる取引(平成14年3月から平成17年5月までの約3年間) - 32 -合計9558.2kg② β社との取引(提供は1回) 合計5100kg③ γ社との3回にわたる取引(平成15年1月から12月の1年間)合計140kg④ δ社との取引(提供は1回) 合計100kg⑤ ε社との3回にわたる取引(平成14年5月から平成15年3月までの約10か月間) 合計2.2kgイ供給されたBPEFが「サンプル」とされ,α社等の受入窓口が研究開発部門であったことα社への多形体Bの提供は,「●●●●●●●●●● 第二商品開発グループ」あてで「サンプル送付のご案内」(甲30の1等)としてされており,また,γ社への提供も「●●●●」あてで「サンプル出荷依頼書」(甲31の1等)によってであり,δ社への提供も「総合研究所主任研究員」あてで「サンプル出荷依頼書」(甲37の4)によってであり,ε社への提供も「研究開発部研究開発第1課」あてで「サンプル送付のご案内」(甲41)とされており,いずれも開発部署あてで「サンプル」とされていた。 また,β社の取締役である●●(以下「●」という。)も第一次審決に際して行われた証人尋問において,「物性」等が公知で,生産技術等も確立している場合は,商談相手も「 てで「サンプル」とされていた。 また,β社の取締役である●●(以下「●」という。)も第一次審決に際して行われた証人尋問において,「物性」等が公知で,生産技術等も確立している場合は,商談相手も「調達部門,資材部門」であるが,BPEFを原料とするポリマーの商談相手は「研究部門」であったと証言しており(甲143),これは,ポリマー合成会社であるα社と当該ポリマーを素材原料とする顧客との間でも共同開発があったこと及び更に上流のモノマー製造会社とポリマー合成会社α社との間でも共同開発がなされていたことを裏付けるものである。 ウ被告とδ社との取引経緯δ社は,平成17年1月頃,Y社又は原告との共同開発では所望の品質のBPEFが得られなかったことを理由として,被告に対し,BPEFを原材料とするポリ - 33 -マーの共同開発を要請している。 また,原告がδ社に提供したBPEFは,多形体Bのほか,融点が三つ(117. 9℃,127.6℃及び152.9℃)ある多形体混合物(ロット番号0610209)であり(乙16),このことからすると,原告のBPEFの提供は,規格,品質を一定にして供給する商業生産段階の提供ではなく,共同開発段階のサンプル提供であったといえる。 δ社と被告との平成18年5月18日付け秘密保持契約書(乙42)は,本格的な商業生産段階への移行前に締結した,開発技術に係る事項を秘密対象とする契約書である。原告は,α社~ε社との間で同様の秘密保持契約を締結していると推測される。 エ原告のBPEFの融点の公表時期原告のホームページにおいて,平成16年2月14日までBPEFについては一切記載されておらず,その後,多形体Aの融点は記載されたものの,多形体Bの融点「158~165℃」が掲載されたのは,本件各取引が全て終了し,かつ本件 いて,平成16年2月14日までBPEFについては一切記載されておらず,その後,多形体Aの融点は記載されたものの,多形体Bの融点「158~165℃」が掲載されたのは,本件各取引が全て終了し,かつ本件優先日以降である平成19年2月19日以降である(乙11の1・2)。 万人が閲覧可能な自社HPに化学物質をその物性とともに掲載することは,申込みがあり次第,原則として誰にでも当該化学物質を販売するとの表示,すなわち,商業的取引を前提とした表示である。そして,一般に,商業的取引を前提とした表示は,開発が終了した化学物質(製品)についてされる。多形体Aの融点及び溶解性などの物性に係る情報の原告HPへの掲載は,本件各取引の全てが完了した平成19年12月19日の時点でも継続しており,これは本件各取引が共同開発に基づく多形体Bの供給であったことを示すものである。 オ原告及びY社が,α社らとポリマーに係る発明を●●●●していたこと証拠(乙7の1の1・2,乙7の2の1・2,乙7の3・4,乙8の1・2,乙9の1~8,乙10の1・2,乙48)からすると,原告やY社は,ポリマー合成会社であるX社及びその関連会社,γ社及びε社,モノマー製造会社であるフルフ - 34 -ァイン社の関連会社であるJFEケミカル株式会社と,ポリマーに係る発明の●●●●をしているが,このような●●●●は,共同開発の成果として出願されることが一般である。 (4) 以上からすると,本件発明7が,特許法29条1項1,2号に該当し,無効とすべきとした第二次審決の判断は誤りである。 (原告の主張)(1) 前訴判決の拘束力等について被告は,第一次審決取消訴訟において,原告と原告のBPEFの販売先が,共同開発を行っており,信義則上の秘密保持義務が存在しているという本件訴訟にお の主張)(1) 前訴判決の拘束力等について被告は,第一次審決取消訴訟において,原告と原告のBPEFの販売先が,共同開発を行っており,信義則上の秘密保持義務が存在しているという本件訴訟における主張と同旨の主張をし,原告もそれに対して反論していた。裁判所は,そのような当事者の主張を前提として,前訴判決の中で本件発明7が公然実施されたと判断しているのであるから,信義則上の秘密保持義務にも拘束力が及ぶ旨の第二次審決の判断は正当である。 なお,侵害訴訟判決において,被告は,本件各取引が,α社等のポリマー合成会社との共同開発の一環として行われたものであって,原告のBPEFの製造及び譲渡は,「事業」を実施していたものではない旨を主張していたが,裁判所はこのような被告の主張を排斥して「事業」の実施を認めており,これまでにされた二つの知財高裁判決は,いずれも,原告と原告の取引相手方がBPEFについて共同開発関係にあったことは何ら認定していない。 (2) α社~ε社,原告及びY社等による共同開発の主張に対して特許庁における証人尋問において,A及び●は,被告の主張するようなBPEFに関する共同開発の存在を明確に否定しているのであり,両人の証言からすると,本件優先日当時において,原告のBPEF販売は,前訴判決及び侵害訴訟判決が認定するとおり事業として確立しており,原告にとってBPEFは商用品であって,顧客と共同してこれを開発していたという事実は存在しない。 (3) 本件各取引が共同開発であったことを示す事実について - 35 -ア取引量が少量であることBPEFは,ポリマーの原料となるモノマーである。BPEF自体が完成した商用品であったとしても,顧客によるBPEFを用いたポリマーや,さらにそのポリマーを用いた最終製品の生産計 量が少量であることBPEFは,ポリマーの原料となるモノマーである。BPEF自体が完成した商用品であったとしても,顧客によるBPEFを用いたポリマーや,さらにそのポリマーを用いた最終製品の生産計画如何によって需給が変わり,必ずしも大規模な需要が生じるわけではないから,BPEFの取引量と,BPEFが商用品であるか否かはおよそ無関係である。また,被告は,ゼオネックスという物質に関する資料を引用して主張するが,ゼオネックスはBPEFとは何ら関係がない別物質にすぎないから,ゼオネックスの事例は,BPEFの商用品としての属性におよそ関係がない。 イ供給されたBPEFが「サンプル」とされ,α社等の受入窓口が研究開発部門であったこと被告が主張する「サンプル」は,BPEFの本格発注を行う前に,その前提として,各ロットについて数百グラム程度のサンプルを提供したことを意味するにすぎず,提供したBPEFが試作品であったことを意味するものではなく,実際に原告は,各サンプルをα社に提供した後,合計2700㎏の受注を得ている。 また,被告は,あたかも全てのBPEFが,研究開発部門に向けて出荷されていたかのように主張しているが,実際には,γ社やβ社については,前もってサンプルを出荷しない取引もあり,また,「本社購買部」や「製造課」から発注を受けた事実もある。 ウ被告とδ社のとの取引経緯被告がBPEFを開発する際にδ社と共同開発をしていたとしても,それは原告がδ社あるいは他の取引先と共同開発をしていたことを示すものではない。被告がBPEFの開発を行う際には,δ社の協力が必要であったとしても,Y社は既にBPEFを独自開発していたのであるから,BPEFについてδ社と共同開発をする必要はなかった。 また,δ社に提供された多形体 BPEFの開発を行う際には,δ社の協力が必要であったとしても,Y社は既にBPEFを独自開発していたのであるから,BPEFについてδ社と共同開発をする必要はなかった。 また,δ社に提供された多形体混合物であるロット番号0610209は,試験 - 36 -製造ロットであったことから,本件発明7に該当する実施品が製造されなかったにすぎず,原告とδ社との共同開発を示唆するものではない。 エ BPEFの融点の公表時期被告の指摘するBPEFの融点のホームページ上の記載が,単なる記載の誤りにすぎないことは,Aが,特許庁における証人尋問において証言したとおりであり,この誤りは,原告とその取引先がBPEFについて共同開発を行っていたことを示すものではない。 オ Y社及び原告とα社らがポリマーに係る発明を●●●●していること前訴判決及び侵害訴訟判決が認定するとおり,原告のBPEFは,Y社が独自開発をして完成させたものである。被告は多数の特許公報を引用しているが,その多くは,BPEFに関する発明ではないし,BPEFを原料としたポリマーに関する発明ですらなく,およそBPEFとは関連性がない。 なお,被告が引用する特許の中には,いくつかBPEFを原料とするポリマーに関する発明が含まれている。BPEFはポリマーの原料であるモノマーであるから,BPEFの需要を喚起するためには,BPEFを原料として製造されるポリマーに需要があることが求められる。そのため,原告が,BPEFを用いてポリマーを合成する会社と,ポリマーについて共同開発することはあり得ることである。しかし,このことは,その原料であるモノマーに関する共同開発を行っていたことを当然には意味しない。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明について(1) 本件明細書の記載本件明細書 ある。しかし,このことは,その原料であるモノマーに関する共同開発を行っていたことを当然には意味しない。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明について(1) 本件明細書の記載本件明細書 (甲1)には,以下の記載がある。 【技術分野】【0001】本発明は,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン - 37 -の新規結晶多形体,およびその製造方法に関する。 【背景技術】【0002】近年,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどのフルオレン誘導体は,耐熱性,透明性に優れ,高屈折率を備えたポリマー(例えばエポキシ樹脂,ポリエステル,ポリエーテル,ポリカーボネート等)を製造するための原料として有望であり,光学レンズ,フィルム,プラスチック光ファイバー,光ディスク基盤,耐熱性樹脂やエンジニヤリングプラスチックなどの素材原料として期待されている。 【0003】これらの用途において熱的,光学的に優れたポリマーを作るためには,高い分子量,狭い分子量分布および未反応モノマーやオリゴマー含有率が低いことが重要であり,原料モノマーである9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが高純度で反応性に優れていることが望まれる。このため,原料モノマーの純度や反応性に大きく影響を与える結晶形や融点を制御することはより優れたポリマーを得るための重要な因子である。またポリマーの製造において優れた性能を維持し,より安定した製造を行うためには一定の品質を維持できる特定の結晶形を作り分けることが必要であった。 【0004】ところで,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法としては,硫酸とチオール類を触媒としてフ る特定の結晶形を作り分けることが必要であった。 【0004】ところで,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法としては,硫酸とチオール類を触媒としてフルオレノンとフェノキシエタノールを脱水縮合させる方法(特許文献1),9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとエチレンカーボネートを反応させる方法(非特許文献1)が開示されている。また,我々はその製造法とは別異の新規な製造方法について出願した(特許文献2)。しかしながら特許文献1には,本発明に係る化合物の精製方法について記載されており,非特許文献献1には本発明に係る化合物の融点が126 - 38 -~128℃である旨記載されているが,該化合物について異なる結晶多形体が存在すること,又異なる結晶多形体間の関係或いは工業的実施のために必要なそれぞれの結晶多形体の製造方法等の一定の品質を維持するための情報がこれまで全く知られていなかった。 【発明が解決しようとする課題】【0008】本発明の目的は,一定の品質を維持し,ポリマー原料として優れた9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの新規な結晶多形体を提供することであり,また,その結晶多形体の製造方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】【0009】本発明者らは,前記課題を解決すべく鋭意検討した結果,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンには,従来から知られている融解吸熱最大が示差走査熱分析で100~130℃である結晶多形体(以下多形体Aと称する)の他に,融解吸熱最大が示差走査熱分析で150℃~180℃である新規な結晶多形体(以下多形体Bと称する)が存在する事を見出した,また,本発明者らは,かかる多形体B 結晶多形体(以下多形体Aと称する)の他に,融解吸熱最大が示差走査熱分析で150℃~180℃である新規な結晶多形体(以下多形体Bと称する)が存在する事を見出した,また,本発明者らは,かかる多形体Bを選択的に得る製造方法を見出すことにより本発明を完成するに至った。 【発明の効果】【0011】本発明によれば,一定の品質を維持し,ポリマー原料として優れた9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの新規な結晶多形体およびその製造方法を提供することができる。また,本発明により得られる多形体Bは,公知の多形体Aよりも嵩密度が高いため,容積効率等の点で工業的な取扱いに有利である。 【発明を実施するための最良の形態】 - 39 -【0012】まず,酸触媒の存在下,フルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させることにより9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を得る方法について説明する。 【0013】本発明においてフルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させる場合,酸触媒として,例えば,硫酸,チオール類,モンモリロナイト,ヘテロポリ酸等が用いられ,これらの中でも特に酸触媒由来の不純物の生成が少なく,実質的に単一な多形体を得やすいことからヘテロポリ酸が好ましい。 【0016】ヘテロポリ酸骨格を構成するヘテロポリ酸アニオンとしては種々の組成のものを使用できる。例えば,XM12O40,XM12O42,XM18O62,XM6O24などが挙げられる。好ましいヘテロポリ酸アニオンの組成は,XM12O40である。各式中,Xはヘテロ元素であり,Mはポリ元素である。これらの組成を有するヘテロポリ酸として,具体的には,リンモリブデン酸,リンタングステン酸,ケイモリブデン酸 アニオンの組成は,XM12O40である。各式中,Xはヘテロ元素であり,Mはポリ元素である。これらの組成を有するヘテロポリ酸として,具体的には,リンモリブデン酸,リンタングステン酸,ケイモリブデン酸,ケイタングステン酸,リンバナドモリブデン酸などが例示される。 【0020】本発明における2-フェノキシエタノールの使用量は,特に限定されるものではないが,副反応抑制及び経済性の点から,通常,フルオレノン1モルに対して,2~50モル,好ましくは2.5~20モル,さらに好ましくは3~10モルである。 また,2-フェノキシエタノールを反応溶媒として用いることもできる。 【0021】フルオレノンと2-フェノキシエタノールとの反応を実施する方法は,特に限定されるものではないが,通常,フルオレノンと2-フェノキシエタノールとヘテロポリ酸を反応装置に仕込み,空気中又は窒素,ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下,トルエン,キシレンなどの不活性溶媒存在下又は非存在下で加熱攪拌することによ - 40 -り行うことができる。この際,触媒含有水や反応生成水など,反応系内の水分を除去する,脱水条件下で反応を行うことにより,脱水しない場合より反応が早く進行し,副生成物の生成が抑制され,より高収率で目的物を得ることができる。脱水方法としては,特に限定されるものではないが,例えば,脱水剤の添加による脱水,減圧による脱水,常圧又は減圧下,溶媒との共沸による脱水などが挙げられる。 【0025】反応後,得られた反応混合物は,そのまま9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させてもよいが,通常,洗浄,濃縮,希釈,活性炭処理等の後処理を施した後に,50℃未満で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させる トキシ)フェニル)フルオレンを析出させてもよいが,通常,洗浄,濃縮,希釈,活性炭処理等の後処理を施した後に,50℃未満で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させる。必要により上記の後処理を施された反応混合物から9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させる操作は,必要により溶媒と混合された反応混合物を50℃以上,溶媒の沸点以下(好ましくは70~110℃)とし,これを50℃未満に冷却することにより実施される。50℃以上では反応混合物から9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶が析出する場合は,50℃以上では結晶が析出しなくなる量の希釈溶媒と反応混合物とを混合した後に,得られた混合物を50℃以上,溶媒の沸点以下(好ましくは70~110℃)とし,これを50℃未満に冷却することにより実施すればよい。希釈溶媒としては,上記の反応に用いる溶媒として例示したものや,メタノール,エタノール,プロパノール,イソプルパノール,ブタノール,t-ブタノール,イソブタノールおよびペンタノール等のアルコール溶媒等が挙げられる。 【0026】冷却終点の温度は,50℃未満であれば特に限定されず,通常-20~49℃,好ましくは0~40℃,より好ましくは10~30℃である。冷却速度も特に限定されず,通常,毎分0.01~2℃,好ましくは,毎分0.1~0.5℃である。 冷却途中で,反応混合物に9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニ - 41 -ル)フルオレンの結晶を種晶として添加してもよい。かかる結晶は,通常,多形体Aである。 【0027】析出した結晶は濾過等により回収される。得られた結晶は,上記の反応に用いた溶媒等を用いて洗浄されてもよいし,乾燥され 晶として添加してもよい。かかる結晶は,通常,多形体Aである。 【0027】析出した結晶は濾過等により回収される。得られた結晶は,上記の反応に用いた溶媒等を用いて洗浄されてもよいし,乾燥されてもよい。かくして得られる9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物は,通常,多形体Aであり,その純度は,通常85%以上である。次に説明する結晶化により,実質的に単一な多形体Bを得る目的において,その純度は85%以上であることが好ましく,90%以上であることがより好ましく,95%以上であることがさらに好ましい。本発明において「実質的に単一な」とは,単一または,多形体Aまたは多形体Bのいずれかが他の結晶形の10重量%以下,好ましくは5重量%以下で含まれる事を意味する。ここで記載した多形体Aまたは多形体B以外の結晶多形体が存在する場合においては,上記で示した割合をそれら他の結晶多形体のいずれにおいても参考とする。 【0028】本発明における多形体Aは,下記(a)~(c)の少なくとも1つの特徴を有する。 (a)示差走査熱分析による融解吸熱最大が100~130℃,好ましくは114~123℃,より好ましくは116~120℃である。 (b)Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが7.9°,11.6°,12.7°,14.2°,17.4°,18.7°および21.8°に特徴的なピークを有する。 (c)嵩密度が0.2~0.4g/cm3である。 【0029】次に,上記9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を芳香族炭化水素溶媒,ケトン溶媒およびエステル溶媒からなる群か - 42 -ら選ばれる少なくとも1つの溶媒に溶解させた後に50℃以上で9,9-ビス(4-( シ)フェニル)フルオレンの粗精製物を芳香族炭化水素溶媒,ケトン溶媒およびエステル溶媒からなる群か - 42 -ら選ばれる少なくとも1つの溶媒に溶解させた後に50℃以上で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させて9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの多形体Bを製造する方法について説明する。 【0030】芳香族炭化水素溶媒としては,例えばトルエン,キシレン,メシチレン等が,ケトン溶媒としては,例えばアセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,シクロヘキサノン等が,エステル溶媒としては,例えば酢酸エチル,酢酸ブチル等が,それぞれ挙げられる。好ましくはトルエン,キシレン,アセトン,酢酸エチルであり,より好ましくはトルエン,キシレンであり,さらに好ましくはトルエンである。これらの溶媒は2種以上の混合物として用いる事ができる。溶媒の使用量は,50℃以上で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが析出する範囲であれば,特に限定されるものではないが,通常9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンに対して0.5重量倍~20重量倍,好ましくは1重量倍~10重量倍,更に好ましくは1.5重量倍~7重量倍である。溶媒量が多いと経済性,生産性が悪くなるばかりでなく実質的な単一の結晶形を得る事ができない場合がある。また溶媒量が少ないと充分な精製効果が得られず不純物が多くなるばかりでなく実質的な単一の結晶形を得る事ができない場合がある。 【0031】本発明における結晶多形体の製造は,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を芳香族炭化水素溶媒,ケトン溶媒およびエステル溶媒からなる群から選ば 【0031】本発明における結晶多形体の製造は,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を芳香族炭化水素溶媒,ケトン溶媒およびエステル溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒に50℃より高い温度で溶解させた後に,得られた混合物を冷却して,50℃以上,溶媒の沸点未満(好ましくは60~100℃,より好ましくは70~90℃)の温度範囲で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶の析出を開始さ - 43 -せることにより実施される。溶解時の温度は特に限定されるものではないが,通常,55℃以上,使用する溶媒の沸点以下,好ましくは60~150℃,更に好ましくは70~110℃である。この温度が低いと実質的な単一の結晶形を得る事ができない場合がある。50℃以上で結晶の析出を開始させた後は,混合物をさらに冷却してもよい。冷却終点の温度は特に限定されるものではないが,通常-20~50℃,好ましくは0~40℃,更に好ましくは10~30℃である。この温度が低いと純度が低下する傾向にあり,この温度が高いと溶媒へのロス量が多くなり経済性,生産性が悪くなる。冷却速度は特に限定されるものではないが,通常,毎分0.01~2℃,好ましくは,毎分0.1~0.5℃である。冷却途中で,混合物中に9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶を種晶として添加することが好ましい。結晶種を添加する場合は,多形体Bの結晶種を準安定域幅,例えば,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの飽和溶解点の温度より1~10℃,好ましくは1~3℃低い温度で加えることが好ましい。添加される結晶種の量は,用いた9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン ニル)フルオレンの飽和溶解点の温度より1~10℃,好ましくは1~3℃低い温度で加えることが好ましい。添加される結晶種の量は,用いた9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物に対して0.01~10重量%,好ましくは0.1~1重量%,更に好ましくは0.3~0.7重量%である。 【0033】本発明における多形体Bは,下記(d)~(f)の少なくとも1つの特徴を有する。 (d)示差走査熱分析による融解吸熱最大が150~180℃,好ましくは160~166℃,より好ましくは163~165℃,特に164℃である。 (e) Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°,13.5°,16.1°,17.9°,18.4°,20.4°,21.0°,23.4°および24.1°に特徴的なピークを有する。 (f)嵩密度が0.5以上,好ましくは0.6~0.8g/cm3である。 【実施例1】 - 44 -【0035】粗精製物の製造攪拌機,窒素吹込管,温度計および冷却管を付けた水分離器を備えたガラス製反応器に,トルエン400gおよびリンタングステン酸3.25gを仕込み,トルエン還流下,共沸脱水した。そこに,フルオレノン129.6g(0.712モル),2-フェノキシエタノール994.9g(7.20モル)およびトルエン118. 7gを加え,トルエン還流下,反応により生成する水を系外に除去しながら21時間攪拌した。得られた反応混合物にトルエン1560gを加え,得られた混合物を70℃に調整し,水520gで4回洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮することにより,トルエンおよび過剰の2-フェノキシエタノールを除去した。得られた混合物にトルエン1800gを加え,80℃で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエ 回洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮することにより,トルエンおよび過剰の2-フェノキシエタノールを除去した。得られた混合物にトルエン1800gを加え,80℃で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを溶解させた後,得られた溶液を活性炭で脱色処理した。得られた溶液を徐々に冷却したところ,42℃で結晶が析出し始め,そのまま30℃まで冷却した。析出した結晶を濾過により取り出し,該結晶を乾燥させることにより,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物の白色結晶280g(収率88.8%,純度91.8%)を得た。 得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は105℃,嵩密度は0.24g/cm3であった。 【実施例2】【0036】多形体Bの製造実施例1で得られた9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物80gとトルエン640gの懸濁液を90℃に加熱し,同温度で1時間攪拌して均一な溶液とした。この溶液を80℃まで冷却し,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(多形体B)0.4gを結晶種として添加し,同温度で2時間攪拌して結晶を析出させた。この液を毎分 - 45 -0.2℃の冷却速度で20℃まで冷却し,同温度で1時間攪拌することにより,さらに結晶を析出させた。析出した結晶を濾過により取り出し,該結晶を減圧乾燥させることにより,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶73.0g(収率91.3%,純度99.2%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は164.0℃,嵩密度は0. 75g/cm3であった。 【実施例3】【0037】粗精製物の製造攪 .3%,純度99.2%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は164.0℃,嵩密度は0. 75g/cm3であった。 【実施例3】【0037】粗精製物の製造攪拌機,窒素吹込管,温度計および冷却管を付けた水分離器を備えたガラス製反応器に,フルオレノン86.4g(0.48モル),フェノキシエタノール397. 9g(2.88モル),トルエン350gおよび100℃で減圧乾燥し結晶水を除いたリンタングステン酸[(H3PW12O40)]4.3gを加え,トルエン還流下,生成水を反応系外除去しながら12時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ-で分析した結果,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが197.3g(0.45モル)生成していた。この反応液にトルエン300gを加え,水100gを用いて80℃で水洗をおこなった。得られた有機層を徐々に冷却したところ,12℃で結晶が析出し始め,そのまま10℃まで冷却し12時間攪拌した。析出した結晶を濾過により取り出し,該結晶を乾燥させることにより,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物の白色結晶158.0g(収率75.1%,LC純度99.0%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は109℃,嵩密度は0.24g/cm3であった。 【実施例4】【0038】粗精製物の製造 - 46 -攪拌機,窒素吹込管,温度計および冷却管を付けた水分離器を備えたガラス製反応器に,フルオレノン86.4g(0.48モル),フェノキシエタノール663. 2g(4.80モル),トルエン350gおよび100℃で減圧乾燥し結晶水を除いたケイタングステン酸[(H4SiW12O40)]4.3gを加え ン86.4g(0.48モル),フェノキシエタノール663. 2g(4.80モル),トルエン350gおよび100℃で減圧乾燥し結晶水を除いたケイタングステン酸[(H4SiW12O40)]4.3gを加え,トルエン還流下,生成水を反応系外に除去しながら8時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ-で分析した結果,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが201.5g(0.46モル)生成していた。この反応液にトルエン300gを加え,水100gを用いて80℃で水洗をおこなった。 得られた有機層を減圧濃縮してトルエンおよび過剰のフェノキシエタノールを除去した。得られた混合物にトルエン600gを加え,80℃で約1時間加熱攪拌して均一溶液とした後,徐々に冷却したところ,38℃で結晶が析出し始め,そのまま室温まで冷却した。析出した結晶を濾過により取り出し,該結晶を乾燥させることにより,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物の白色結晶162.1g(収率92.0%,LC純度96.2%)を得た。 得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は104℃,嵩密度は0.23g/cm3であった。 【実施例5】【0039】多形体Bの製造実施例4で得た9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物80gとトルエン640gの懸濁液を90℃に加熱し,同温度で1時間攪拌して均一な溶液とした。この溶液を徐々に冷却したところ,65℃で結晶が析出し始め,そのまま30℃まで冷却し,同温度で1時間保温攪拌した。析出した結晶を濾過により取り出し,該結晶を減圧乾燥させることにより,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶70.4g(収率8 却し,同温度で1時間保温攪拌した。析出した結晶を濾過により取り出し,該結晶を減圧乾燥させることにより,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶70.4g(収率88.0%,純度98.2%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分 - 47 -析による融解吸熱最大)は163.5℃,嵩密度は0.70g/cm3であった。 【実施例6】【0040】多形体Bの製造実施例3で得た9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物60gとキシレン300gの懸濁液を100℃に加熱し,同温度で1時間攪拌して均一な溶液とした。この液を徐々に冷却したところ,70℃で結晶が析出し始め,そのまま10℃まで冷却し,同温で1時間保温攪拌した。析出した結晶を濾過により取り出し,該結晶を減圧乾燥させることにより,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶53.9g(収率89.9%,純度99.5%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は163.3℃,嵩密度は0.75g/cm3であった。 【0041】(比較例1)多形体Aの製造実施例4に準じた方法により得られた9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物120gとメタノール600gの懸濁液を60℃で1時間攪拌した。この間液は懸濁状態のままであった。この懸濁液を10℃まで冷却し,ろ過した後,得られた結晶を減圧乾燥することにより9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶107.0g(収率89.2%,純度98.7%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は118.8℃,嵩密度は0.26g/cm3であっ エトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶107.0g(収率89.2%,純度98.7%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は118.8℃,嵩密度は0.26g/cm3であった。 【実施例7】【0042】多形体Bの製造比較例1で調製された9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル) - 48 -フルオレン(多形体A)80gとトルエン400gの懸濁液を95℃に加熱して均一な溶液とし,この溶液を80℃まで冷却し,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(多形体B)0.4gを結晶種として添加し,同温度で1時間攪拌して結晶を析出させた。この液を10℃まで徐冷し,同温度で1時間保温攪拌することにより,さらに結晶を析出させた。析出した結晶を濾過により取り出し,該結晶を減圧乾燥させることにより,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶73.0g(収率91.2%,純度99.7%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は164.0℃,嵩密度は0.78g/cm3であった。また,Na含有量25ppb,Fe含有量32ppb,加熱溶解色(220℃/3hr)がAPHA10であった。 【実施例8】【0043】多形体Bの製造実施例5で調製された9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶(多形体B)50gとトルエン250gの懸濁液を90℃に加熱し,同温度で1時間攪拌して均一な溶液とした。この溶液を徐々に冷却したところ,72℃で結晶が析出し始め,そのまま10℃まで冷却し,同温度で1時間保温攪拌した。析出した結晶を濾過により取り出し,該結晶を減圧乾燥させることにより,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキ 却したところ,72℃で結晶が析出し始め,そのまま10℃まで冷却し,同温度で1時間保温攪拌した。析出した結晶を濾過により取り出し,該結晶を減圧乾燥させることにより,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶45.5g(収率90.8%,純度98.9%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は163.7℃,嵩密度は0.77g/cm3であった。また,Na含有量107ppb,Fe含有量79ppb,加熱溶解色(220℃/3hr)がAPHA30であった。 【0044】(試験例1) - 49 -結晶多形体の示差走査熱量測定(DSC)9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体10mgおよび別に酸化アルミニウム10mgをそれぞれアルミパンに精密に秤取し,示差走査熱量計(セイコー電子工業製:DSC220C)を用い,酸化アルミニウムを対象として下記条件で測定した。比較例1で得られた多形体Aおよび実施例2で得られた多形体Bに対する結果を,それぞれ図1よび図2(判決注:「図1および図2」の誤記と認める。)に示す。 操作条件試薬 :酸化アルミニウム昇温速度:10℃/min【0045】(試験例2)結晶多形体の粉末X線回折150mgをガラス試験板の試料充填部に充填し,粉末X線回折装置(スペクトリス製:X’PertPRO)を用いて下記の条件で測定した。比較例1で得られた多形体Aおよび実施例2で得られた多形体Bに対する結果を,それぞれ図3および図4ならびに表1および表2に示す。 X線源 :CuKα出力 :1.8kW(45kV-40mA)測定範囲 :2θ=5°~60°スキャン速度:2θ=1.2°/minスリット 4ならびに表1および表2に示す。 X線源 :CuKα出力 :1.8kW(45kV-40mA)測定範囲 :2θ=5°~60°スキャン速度:2θ=1.2°/minスリット :DS=1°,マスク=15mm,RS=可変(0.1mm~)【図面の簡単な説明】【0046】【図1】図1は比較例1で得られた結晶(多形体A)の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。 - 50 -【図2】図2は実施例2で得られた結晶(多形体B)の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。 【図3】図3は比較例1で得られた結晶(多形体A)の粉末X線回折パターンを示す図である。 【図4】図4は実施例2で得られた結晶(多形体B)の粉末X線回折パターンを示す図である。 【図1】 【図2】 - 51 -【図3】 【図4】 - 52 -【0047】【表1】 - 53 -【0048】【表2】 - 54 -(2) 本件発明の概要前記第2の2の本件特許の特許請求の範囲及び前記(1)の本件明細書の記載からすると,本件発明は,以下のような内容のものであると認められる。 本件発明は,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)の新規結晶多形体(多形体B)及びその製造方法に関するものである(段落【0001】)。 BPEFは,耐熱性,透明性に優れ,高屈折率を備えた,エポキシ樹脂,ポリエステル,ポリエーテル,ポリカーボネート等のポリマーを製造するための原料として有望であり,光学レンズ,フィルム,プラスチック光ファイバー,光ディスク基盤,耐熱性樹脂やエンジニヤリングプラスチックなどの素材原料として期待されていた(段落【00 リマーを製造するための原料として有望であり,光学レンズ,フィルム,プラスチック光ファイバー,光ディスク基盤,耐熱性樹脂やエンジニヤリングプラスチックなどの素材原料として期待されていた(段落【0002】)。 本件優先日当時,BPEFの製造方法は知られていたものの,異なる結晶多形体が存在することや,異なる結晶多形体間の関係あるいは工業的実施のために必要なそれぞれの結晶多形体の製造方法等の一定の品質を維持するための情報は知られていなかった(段落【0004】)。 本件発明は,BPEFに,従来から知られている融解吸熱最大が示差走査熱分析で100~130℃である結晶多形体(多形体A)のほかに,融解吸熱最大が示差走査熱分析で150℃~180℃である新規な結晶多形体(多形体B)が存在すること及び多形体Bを選択的に得る製造方法を見いだしたものである(段落【0009】)。 本件発明によって,一定の品質を維持し,ポリマー原料として優れたBPEFの新規な結晶多形体及びその製造方法を提供することができ,本件発明により得られる多形体Bは,公知の多形体Aよりも嵩密度が高く,容積効率等の点で工業的な取扱いに有利である(段落【0011】)。 2 引用方法発明及び引用結晶発明について(1) 特開2007-23016号公報(甲6)の記載事項 - 55 -甲6には,以下のとおりの記載がある。 【技術分野】【0001】本発明はポリエステル,ポリウレタン,ポリカーボネート,エポキシ樹脂,変性アクリル樹脂等の原料として有用なフルオレン誘導体の製造方法に関する。 【背景技術】【0003】9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法としては,硫酸とチオールを触媒としてフルオレノンとフェノキシエタノールを脱水縮合させる方 【背景技術】【0003】9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法としては,硫酸とチオールを触媒としてフルオレノンとフェノキシエタノールを脱水縮合させる方法が開示されている(特許文献1)。しかし,この方法では大量の硫酸を用いるため,反応後の精製に煩雑な操作が必要であり,多量の中和排水が出る。また製品中に触媒由来のイオウ分が混入することにより,製品の着色や安定性低下,純度低下などの問題が生じる。更に光学樹脂原料など,高純度の製品を得るためにはイオウ分を除くために精製を繰り返す必要があり,工業的に有利な方法とは言えない。 【0004】硫酸を使用しない方法として,金属交換型モンモリロナイトを使用する方法が開示されている(特許文献2)。しかし,この方法では,市販のモンモリロナイトと金属塩化物等を反応させて金属置換モンモリロナイト触媒を製造する必要がある。また反応収率を上げるためには,助触媒としてβ-メルカプトプロピオン酸などのチオール類が使用されており,製品中にイオウ分が混入することから,高純度の製品を得るためには精製操作が必要であり,工業的に有利な方法とは言えない。 【発明が解決しようとする課題】【0007】本発明は,フルオレノン類とフェノキシアルコール類の反応によるフルオレン誘導体の製造において,煩雑な触媒除去操作や精製操作を行なうことなく,イオウ分を - 56 -含まない高品質な製品を工業的有利に製造する方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】【0008】本発明者らは,前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果,フルオレノン類とフェノキシアルコール類をヘテロポリ酸触媒存在下に反応させることにより,高収率で高品質なフルオレン誘導体を製造できることを見出 発明者らは,前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果,フルオレノン類とフェノキシアルコール類をヘテロポリ酸触媒存在下に反応させることにより,高収率で高品質なフルオレン誘導体を製造できることを見出し,本発明を完成するに至った。 【0009】すなわち,本発明は,ヘテロポリ酸触媒の存在下,式(1)【化1】 (式中,R1aおよびR1bは置換基を示す。k1およびk2は0又は1~4の整数を示し,同一もしくは異なっていてもよい。)で表されるフルオレノン類と式(2)【化2】 - 57 -(式中,R3はアルキレン基,R2は置換基を示す。nは0又は1以上の整数を示し,mは0又は1~4の整数を示す。)で表される化合物を反応させることを特徴とする,式(3)【化3】 (式中,R3aおよびR3bはアルキレン基を示し,R1aR1b,R2aおよびR2bは置換基を示す。k1およびk2は0又は1~4の整数を示し,同一もしくは異なっていてもよい。n1およびn2は0又は1以上の整数を示し,同一もしくは異なっていてもよい。m1およびm2は0又は1~4の整数を示し,同一もしくは異なっていてもよい。)で表されるフルオレン誘導体の製造方法に関する。 【0022】本発明におけるフルオレン誘導体の合成方法は,特に限定されるものではないが,通常,原料のフルオレノン類とフェノキシアルコール類,およびヘテロポリ酸触媒を反応装置に仕込み,空気中又は窒素,ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下,トルエン,キシレンなどの不活性溶媒存在下又は非存在下で加熱攪拌することにより行うことができる。・・・【0025】 - 58 -反応後,反応液に溶媒を加え,冷却晶析することにより結晶としてフルオレン誘導体を得ることができ,析出した結晶は で加熱攪拌することにより行うことができる。・・・【0025】 - 58 -反応後,反応液に溶媒を加え,冷却晶析することにより結晶としてフルオレン誘導体を得ることができ,析出した結晶は濾過等により回収される。また必要に応じて洗浄,吸着,水蒸気蒸留,再晶析などの精製操作を行うことができる。晶析および精製に用いられる溶媒は,反応溶媒をそのまま使用してもよいし,別の溶媒を使用することもできる。晶析溶媒としては,メタノール,エタノール,プロパノールなどの脂肪族低級アルコール類,アセトン,メチルエチルケトンなどの脂肪族低級ケトン類,トルエン,キシレンなどの芳香族炭化水素類,酢酸エチルなどのエステル類,水などが特に好ましい。 【発明の効果】【0027】フルオレノン類とフェノキシアルコール類からフルオレン誘導体を製造するに際し,イオウ分を含まない高品質なフルオレン誘導体を煩雑な触媒除去操作や精製操作を行なうことなく工業的有利に製造する方法を提供することができる。 【実施例9】【0037】攪拌機,窒素吹込管,温度計および冷却管を付けた水分離器を備えたガラス製反応器にフルオレノン86.4g(0.48モル),フェノキシエタノール397.9g(2.88モル),トルエン350gおよび100℃で減圧乾燥し結晶水を除いたリンタングステン酸[(H3PW12O40)]4.3gを加え,トルエン還流下,生成水を反応系外に除去しながら12時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ-で分析した結果,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが197.3g(0.45モル)生成していた。この反応液にトルエン300gを加え,水100gを用いて80℃で水洗をおこなった。次いでこの液を室温まで徐々に冷却し,析出した結晶をろ フェニル)フルオレンが197.3g(0.45モル)生成していた。この反応液にトルエン300gを加え,水100gを用いて80℃で水洗をおこなった。次いでこの液を室温まで徐々に冷却し,析出した結晶をろ過,乾燥することにより白色結晶[9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン]158.0g(収率75.1%,LC純度99.0%)を得た。得られた結晶中のイ - 59 -オウ分は0.2ppm以下であった。 【実施例10】【0038】攪拌機,窒素吹込管,温度計および冷却管を付けた水分離器を備えたガラス製反応器にフルオレノン86.4g(0.48モル),フェノキシエタノール663.2g(4.80モル),トルエン350gおよび100℃で減圧乾燥し結晶水を除いたケイタングステン酸[(H4SiW12O40)]4.3gを加え,トルエン還流下,生成水を反応系外に除去しながら8時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ-で分析した結果,9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが201.5g(0.46モル)生成していた。この反応液にトルエン300gを加え,水100gを用いて80℃で水洗をおこなった。次いで加熱下,減圧濃縮によりトルエンおよび過剰のフェノキシエタノールを除去した。 この濃縮液にトルエン600gを加え,80℃で約1 時間加熱攪拌した後,室温まで徐々に冷却し,析出した結晶をろ過,乾燥することにより白色結晶[9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン],162.1g(収率92.0%,LC純度96.2%)を得た。得られた結晶中のイオウ分は0.2ppm以下であった。 (2) 前記(1)によると,甲6には,前記第2の3(1)ア記載の引用方法発明及び引用結晶発明が記載さ .0%,LC純度96.2%)を得た。得られた結晶中のイオウ分は0.2ppm以下であった。 (2) 前記(1)によると,甲6には,前記第2の3(1)ア記載の引用方法発明及び引用結晶発明が記載されているものと認められる。 (3) 本件発明1と引用方法発明との一致点及び相違点ア本件発明1と引用方法発明を対比すると,前記第2の3(1)致点が認められ,以下のような相違点が認められる。 (相違点1-1)本件発明1が,粗精製物の段階で「50℃未満でBPEFの析出を開始」させるのに対して,引用方法発明においては粗精製物の段階における析出開始温度が特定されていない点。 - 60 -(相違点1-2)本件発明1においては,「次いで,該粗精製物を芳香族炭化水素溶媒に溶解させた後にBPEFの析出を開始」させるという特定の溶媒を用いた再結晶化の操作を更に行いBPEFの結晶多形体を製造しているのに対して,引用方法発明では特定の溶媒を用いた再結晶化の操作を更に行わないでBPEFの白色結晶を製造している点。 (相違点1-3)本件発明1においては,再結晶化の段階で「65℃以上でBPEFの析出を開始」させているのに対して,引用方法発明では再結晶化の段階がなく,その段階における析出開始温度も特定されていない点。 イなお,相違点1-2について,本件発明1は,「BPEFの結晶多形体の製造方法」であるところ,甲6は,「BPEFの白色結晶の製造方法」であるから,本件発明1と引用方法発明は,前者が「BPEFの結晶多形体の製造方法」であるのに対し,後者が「BPEFの白色結晶の製造方法」である点で相違しているが,前記第2の3(1) もっとも,後述するとおり,上記の看過された相違点を踏まえて判断しても,本件発明1が容易想到ではないとする第二次 者が「BPEFの白色結晶の製造方法」である点で相違しているが,前記第2の3(1) もっとも,後述するとおり,上記の看過された相違点を踏まえて判断しても,本件発明1が容易想到ではないとする第二次審決の結論は変わらないから,第二次審決における上記の相違点の看過が,第二次審決の結論に影響を及ぼすものとは認められない。 (4) 本件発明6~8と引用方法発明又は引用結晶発明の一致点及び相違点ア本件発明6と引用方法発明との相違点は,以下のとおりであると認められる。 (相違点6-1)本件発明6においては,粗精製物の段階で「50℃未満でBPEFの析出を開始」させるのに対して,引用方法発明においては粗精製物の段階における析出開始温度が特定されていない点。 - 61 -(相違点6-2’)本件発明6においては,「次いで,該粗精製物をキシレンまたはトルエンに溶解させた後にBPEFの析出を開始」させるというキシレンまたはトルエンを溶媒として用いた再結晶化の操作を更に行いBPEFの結晶多形体を製造しているのに対して,引用方法発明ではキシレン又はトルエンを溶媒として用いた再結晶化の操作を更に行わないでBPEFの白色結晶を製造している点。 (相違点6-3)本件発明6においては,再結晶化の段階で「65℃以上でBPEFの析出を開始」させているのに対して,引用方法発明においては再結晶化の段階がなく,その段階における析出開始温度が特定されていない点。 なお,相違点6-2’に関して,前記(3)と同様,第二次審決は,本件発明6が「BPEFの結晶多形体の製造方法」であるのに対し,引用方法発明が「BPEFの白色結晶の製造方法」である点で相違しているという点を看過しているが,後述するとおり,この相違点の看過を踏まえて判断しても,本件発明6 結晶多形体の製造方法」であるのに対し,引用方法発明が「BPEFの白色結晶の製造方法」である点で相違しているという点を看過しているが,後述するとおり,この相違点の看過を踏まえて判断しても,本件発明6が容易想到ではないとする第二次審決の結論は変わらないから,上記相違点の看過が,第二次審決の結論に影響を及ぼすものとは認められない。 イ本件発明7,8と引用結晶発明の一致点及び相違点は,前記第2の3の 3 特開平10-45655号公報(甲9)の記載事項について甲9には,以下のとおりの記載がある。 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,フルオレン誘導体の製造方法の改良に係り,詳しくは,フルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させて9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造する方法の改良に関する。 【0005】 - 62 -【課題を解決するための手段】本発明は,硫酸とチオールを触媒として用いてフルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させて9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造する方法において,得られた反応液に水と相溶し難い有機溶剤及び水を加えて溶解,水洗し,水層と油層に分液し,油層から目的とする9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを回収することを特徴とするフルオレン誘導体の製造方法である。 【0006】更に,本発明は,前記方法により得られた油層より有機溶剤を留去し,低級脂肪族アルコール又は低級脂肪族アルコールと水を添加して溶解させた後,冷却して目的とする9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを晶析させて回収することを特徴とする9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを回収するこ 冷却して目的とする9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを晶析させて回収することを特徴とする9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを回収することを特徴とするフルオレン誘導体の製造方法である。 【0014】本発明に用いられる水と相溶し難い有機溶剤としては,トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤,メチルイソブチルケトン,メチルエチルケトン等のケトン系溶剤,その他イソブチルアセテート等が挙げられる。水と相溶し難い有機溶剤の添加量は,反応液中に含まれるフルオレノン骨格1モルに対して500~4000ml,好ましくは1000~2500mlである。 【0022】目的物の取り出しは,得られた濾液を撹拌しながら室温もしくは冷水で徐々に冷却しながら固体を析出させ,次いで,得られた固形物を濾過し,乾燥させるのがよい。なお,本発明によれば,純度99.4%以上,残存硫酸量150ppm以下の目的とする〔9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン〕を得ることができる。 【0024】【実施例】実施例1攪拌機,冷却管及び滴下ロートを備えた内容積1000mlの4つ口フラスコに純 - 63 -度99.5重量%のフルオレノン(フルオレンを液相空気酸化して得たもの)45g(0.25mol)とフェノキシエタノール(四日市合成株式会社製,PHE-G)138g(1.00mol),β-メルカプトプロピオン酸0.2mlを仕込み,均一に溶解させてから95%硫酸45mlを30分かけて滴下した後,反応温度を65℃で4時間保温し,反応を続けて完結させた。 【0025】次いで,反応液に水90ml,トルエン450mlを加え,80~85℃で30分間攪拌,水洗後,30分間静置して,下層の水層を分離した。 度を65℃で4時間保温し,反応を続けて完結させた。 【0025】次いで,反応液に水90ml,トルエン450mlを加え,80~85℃で30分間攪拌,水洗後,30分間静置して,下層の水層を分離した。更に2回同量の水を加えて水洗を繰り返し,硫酸を除去した。反応液を室温まで冷却して結晶を析出させ,濾過後,70℃で1日間減圧乾燥した。得られた粗結晶(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度は98.5%,収量は82.3g,収率74.5%であった。また,結晶中の残存硫酸は600ppmであった。 【0026】得られた上記粗結晶50gをトルエン400mlからなる混合溶媒に攪拌,加熱下に溶解させた後,室温まで徐々に冷却して結晶を析出させる。該結晶を濾過し,70℃で1日間減圧乾燥した。得られた結晶(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度は99.5%,収量は43. 8g,収率65.9%であった。また,結晶中の残存硫酸は150ppmであった。 【0027】実施例2実施例1で使用した水と相溶し難い有機溶剤としてトルエンに代え,メチルイソブチルケトン450mlを用い,他は実施例1と同様に実施した。得られた粗結晶(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度は98. 0,収量は79.9g,収率72%であった。また,結晶中の残存硫酸は620ppmであった。 【0028】実施例1と同様にして得られた上記粗結晶50gをメチルイソブチルケトン400mlに溶解後,太閤活性炭(二村化学工業株式会社製)1gを添加し,よく混合した後,熱濾過し,室温まで徐々に冷却して結晶を析出させ,濾過,乾燥 - 64 -した。得られた結晶(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオ 社製)1gを添加し,よく混合した後,熱濾過し,室温まで徐々に冷却して結晶を析出させ,濾過,乾燥 - 64 -した。得られた結晶(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度は99.7%,収量は44.4g,収率65%であった。また,結晶中の残存硫酸は130ppmであった。 4 特開平10-45656号公報(甲10)の記載事項について甲10には,以下のとおりの記載がある。 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,フルオレン誘導体の製造方法の改良に係り,詳しくは,フルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させて9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造する方法の改良に関する。 【0016】ここで,水と相溶し難い有機溶剤とは,目的とする9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンに相溶し易いが水と相溶し難い有機溶剤(以下,単に水と相溶し難い有機溶剤という)であり,具体的にはトルエン,キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤,メチルイソブチルケトン,メチルエチルケトン等のケトン系溶剤,その他イソブチルアセテート等が挙げられる。この水と相溶し難い有機溶剤の添加量は,反応液中に含まれるフルオレノン骨格1モルに対して500~5000ml,好ましくは1000~3000mlである。 【0026】【実施例】以下,実施例によって本発明の方法を更に詳しく説明する。 実施例1攪拌機,冷却管及び滴下ロートを備えた内容積1000mlの4つ口フラスコに純度99.5重量%のフルオレノン(フルオレンを液相空気酸化して得たもの)45g(0.25mol)とフェノキシエタノール(四日市合成株式会社製,PHE-G)87g(0.63mol),β-メルカプトプロピオン酸0.2ml及びトル ン(フルオレンを液相空気酸化して得たもの)45g(0.25mol)とフェノキシエタノール(四日市合成株式会社製,PHE-G)87g(0.63mol),β-メルカプトプロピオン酸0.2ml及びトルエン43mlを仕込み,均一に溶解させてから95%硫酸35mlを30分かけて滴下した後,反応温度を65℃で3時間保温し,反応を続けて完結させた。 - 65 -【0027】次いで,反応液に水90ml,トルエン450mlを加え,80~85℃で30分間攪拌,水洗後,30分間静置して,下層の水層を分離した。更に2回同量の水を加えて水洗を繰り返し,硫酸を除去した。反応液を室温まで冷却して結晶を析出させ,減圧濾過して,112gの粗結晶(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを得た。 【0028】次いで,上記粗結晶をトルエン650mlに攪拌下に80~85℃に加熱溶解し,更に太閤活性炭(二村化学工業株式会社製)2gを添加して30分間よく混合した後,熱濾過した。得られた濾液を室温まで徐々に冷却して結晶を析出させ,濾過し,70℃で1日間減圧乾燥した。得られた結晶(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度は99.3%,収量は74.0g,収率67.5%であった。また,結晶中の残存硫酸は130ppmであった。 【0029】実施例2攪拌機,冷却管及び滴下ロートを備えた内容積1000mlの4つ口フラスコに純度99.5重量%のフルオレノン(フルオレンを液相空気酸化して得たもの)45g(0.25mol)とフェノキシエタノール(四日市合成株式会社製,PHE-G)103g(0.75mol),β-メルカプトプロピオン酸0.2ml及びシキロヘキサン43mlを仕込み,均一に溶解させてから95%硫酸41mlを30分かけて ノール(四日市合成株式会社製,PHE-G)103g(0.75mol),β-メルカプトプロピオン酸0.2ml及びシキロヘキサン43mlを仕込み,均一に溶解させてから95%硫酸41mlを30分かけて滴下した後,反応温度を65℃で1時間保温し,反応を続けて完結させた。 【0030】次いで,反応液に水90ml,メチルイソブチルケトン400mlを加え,80~85℃で30分間攪拌,水洗後,30分間静置して,下層の水層を分離した。更に2回同量の水を加えて水洗を繰り返し,硫酸を除去した。反応液を室温まで冷却して結晶を析出させ,減圧濾過して,120gの粗結晶(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを得た。 【0031】次いで,上記粗結晶をメチルイソブチルケトン600mlに攪拌下に80~85℃に加熱溶解し,熱濾過した。得られた濾液を室温まで徐々に冷却して - 66 -結晶を析出させ,濾過し,70℃で1日間減圧乾燥した。得られた結晶(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度は99.5%,収量は74.3g,収率68%であった。また,結晶中の残存硫酸は140ppmであった。 【0032】実施例3攪拌機,冷却管及び滴下ロートを備えた内容積1000mlの4つ口フラスコに純度99.5重量%のフルオレノン(フルオレンを液相空気酸化して得たもの)45g(0.25mol)とフェノキシエタノール(四日市合成株式会社製,PHE-G)76g(0.55mol),β-メルカプトプロピオン酸0.2ml及びジクロロプロパン24mlを仕込み,均一に溶解させてから95%硫酸35mlを30分かけて滴下した後,反応温度を65℃で3時間保温し,反応を続けて完結させた。 【0033】次いで,反応液に水90ml,キシレン450mlを mlを仕込み,均一に溶解させてから95%硫酸35mlを30分かけて滴下した後,反応温度を65℃で3時間保温し,反応を続けて完結させた。 【0033】次いで,反応液に水90ml,キシレン450mlを加え,80~85℃で30分間攪拌,水洗後,30分間静置して,下層の水層を分離した。更に2回同量の水を加えて水洗を繰り返し,硫酸を除去した。反応液を室温まで冷却して結晶を析出させ,減圧濾過して,116gの粗結晶(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを得た。 【0034】次いで,上記粗結晶をキシレン330ml及びアセトン85mlからなる混合溶媒に攪拌下に80~85℃に加熱溶解し,熱濾過した。得られた濾液を室温まで徐々に冷却して結晶を析出させ,濾過し,70℃で1日間減圧乾燥した。 得られた結晶(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度は99.6%,収量は74.5g,収率68.2%であった。また,結晶中の残存硫酸は140ppmであった。 5 甲5’の記載事項甲5’には,以下のとおりの記載がある。 (1) 「結晶多形は医薬品を始めとするファインケミカル分野で重要な研究課題として注目されている。・・・ある化合物の固体状態における性質が一義的ではなく, - 67 -融点のみならず,密度や溶媒への溶解度,それに昇華圧などの基本的な性質が結晶構造によってことなることが明らかになり,しかも多くの化合物でこの事例が見出された結果,今では化合物には多形があることを前提として研究開発が行われるようになってきた。特に医薬品の分野では,多形が異なると,異なる物質の扱いを受けるために,特定の多形を安定して生産する技術の開発は必要不可欠である。」(「はじめに」の1行~9行[甲5])(2) 「・・ てきた。特に医薬品の分野では,多形が異なると,異なる物質の扱いを受けるために,特定の多形を安定して生産する技術の開発は必要不可欠である。」(「はじめに」の1行~9行[甲5])(2) 「・・・「結晶多形」とは,同一の化学式で表される物質が,異なる複数の結晶構造として結晶化する現象を言う。結晶多形は,金属結晶,イオン結晶,有機結晶,蛋白結晶など極めて広範な結晶性材料において観察される現象である。」(5頁1行~3行[甲244])(3) 「7 結晶形態(晶癖)の変化結晶粒子の外観形状を形態または晶癖という。形態は,結晶に固有な結晶構造という内部条件と結晶化の際の操作条件という外部条件によって決まる。」(37頁下から2行~38頁2行[甲244])(4) 「結晶構造が異なれば結晶の形状,結晶の密度,溶解度,溶解速度が異なるため,結果として,嵩密度,流動性,ろ過性,沈降性,純度,医薬の効き目(BA:Bioavailability),化合物および結晶の安定性などの重要な結晶特性が異なることとなる。」(97頁16行~18行[甲86])(5) 「化合物の分子構造から結晶構造を含めた結晶多形を予測する試みはいくつかなされているものの,現段階では予測のみで実際に存在する結晶多形を決定できるまでには至っていない。・・・化合物の分子構造からの予測が困難であることから,存在し得る結晶多形を見出すためには,できるだけ多くの条件で網羅的に結晶化を試みるというスクリーニング法に頼らざるを得ないというのが現状である。」(106頁1行~6行[甲124])(6) 「報告された結晶多形スクリーニング法に採用されている結晶化方法は,溶液状態(スラリー状態を含む)からの結晶化法がほとんどであり,冷却法,蒸発 - 68 -法,貧溶媒法(沈 ])(6) 「報告された結晶多形スクリーニング法に採用されている結晶化方法は,溶液状態(スラリー状態を含む)からの結晶化法がほとんどであり,冷却法,蒸発 - 68 -法,貧溶媒法(沈殿法),スラリーコンバージョン法等が行われている。・・・それぞれの結晶化方法は,過飽和を生成するメカニズムが異なる。また,結晶核生成及び結晶成長に影響を与える因子である結晶化条件も方法ごとに異なる。結晶多形スクリーニングでは,これらを組み合わせて多数の条件で結晶化を行うことにより,結晶多形をスクリーニングする。表1に結晶多形スクリーニング法で採用されている主な結晶化方法と結晶化条件をまとめた。 冷却法は,冷却により・・・過飽和を生成する。スラリーコンバージョン法は,結晶又はアモルファスのスラリー状態から,他の結晶多形へ溶媒媒介転移をさせる方法である。・・・結晶化条件と結晶多形の関係の理解が十分でない現状では,より多くの結晶化条件でスクリーニングすることが,存在し得る結晶多形を見出す確率を高くする手段であると考えられる。」(107頁2行~末行[乙1の2])(7) 「3 結晶多形の溶媒媒介転移に及ぼす溶媒組成,晶析温度,不純物,撹拌速度の影響多形の析出は,溶媒とその組成,晶析温度,過飽和度,不純物の存在と濃度,撹拌速度,pHなど,晶析の操作パラメータ全般に支配されている。中でも,溶媒の種類と混合溶媒組成は,多形に大きく影響し,慎重な選択が必要である。溶媒の種類や混合組成を変えると新しく多形が「発見される」ということは珍しくない。」(1 - 69 -54頁12行~17行[甲5]) 6 甲14’の記載事項甲14’には,以下のとおりの記載がある。 (1) 「晶析により得られる結晶粒子は,あるときは医薬品の原料であり,機能 - 69 -54頁12行~17行[甲5]) 6 甲14’の記載事項甲14’には,以下のとおりの記載がある。 (1) 「晶析により得られる結晶粒子は,あるときは医薬品の原料であり,機能性化学薬品あるいは通常の化学製品,食品でもある。晶析の目的が分離・精製であれ,結晶粒子の製造であれ,常に注意しなくてはならないのは,ろ過特性,粉体流動性,嵩密度などの粉体特性,結晶純度などである。これらの特性を適切に維持するためには,結晶の粒度分布の制御および結晶形状の制御が必要不可欠である。また,医薬品原料の場合は結晶の内部構造に関わる多形の制御なども必要となる。」(1頁12行~18行[甲14])(2) 「晶析の目的はまず第一に,物質の分離・精製である.・・・晶析では原理的に一段の操作で純度100%の製品が得られる。・・・ところで,結晶そのものの純度が100%となったとしても,製品結晶は付着母液あるいは結晶内に取り込まれた液胞・・・のため必ずしも純度100%とはならない。・・・液胞による純度低下は無機結晶の場合にも見られるが,有機物の場合は特に著しい。従って,有機物の精製晶析では,晶析の後に発汗,再結晶などの精製工程が不可欠である。」(1頁23行~2頁10行[甲14])(3) 「晶析のもう一つの目的は,結晶性粒子の製造である。この場合,得られる結晶そのものが製品である。製品特性として,結晶純度はもちろん,結晶粒度分布,結晶形状が重要となる。粉体粒子製造法としてはブレークダウン(break-down)法としての粉砕法であるが,その場合は粉砕の対象となる固体原料の存在が前提となるのに対して,晶析法はそのような前提は不要で,分子原子レベルから固体粒子を製造する方法である。ビルドアップ(build-up)法といわれる。化学製品から医薬品 の対象となる固体原料の存在が前提となるのに対して,晶析法はそのような前提は不要で,分子原子レベルから固体粒子を製造する方法である。ビルドアップ(build-up)法といわれる。化学製品から医薬品まで広い範囲にわたり,晶析により結晶性粉体粒子が製造されている。製造法を工夫することにより,製品にさまざまな機能・特性を付与することも可能である。 そのため,医薬品,ファインケミカルズの製法として,重要な位置を占めている。」 - 70 -(2頁12行~2頁21行[甲14])(4) 「結晶多形の制御も簡単ではない。結晶析出以前の過飽和溶液における溶液の構造,すなわち,溶液中で結晶構成成分の分子がどのような並び方をしているかが多形析出のカギを握っていると思われるが,溶液の構造を制御する手段を持たないため,多形析出の制御は依然として難しいといわざるを得ない。実際には,経験的な手法で多形を作り分けている。たとえば,溶液を急冷したり,または,結晶析出温度を高くあるいは低く設定したりして実験的に望みの多形の析出条件を見つけだしている。」(45頁16行~22行[甲14])(5) 「多形は,医薬品の活性などのような機能に関わる。また,多形は結晶内部の構造の問題ではあるが,結晶の形状にも影響を与える。そのため,多形により結晶粒子群の紛体特性がかわることがある。機能および紛体特性の点から,多形の制御は工業的に重要である。しかし,制御は難しい。溶媒を変えたり,冷却速度を変化させるなどして目的の多形を析出させているが,多分に経験的といわざるを得ない。」(8頁4行~9行[甲158]) 7 平山令明「有機結晶作製ハンドブック」平成12年4月20日発行丸善株式会社(甲58)の記載事項甲58には,以下のとおりの記載がある。 (1) 「1.5 4行~9行[甲158]) 7 平山令明「有機結晶作製ハンドブック」平成12年4月20日発行丸善株式会社(甲58)の記載事項甲58には,以下のとおりの記載がある。 (1) 「1.5 結晶多形(polymorphism)分子は230種の空間群の結晶になり得る。・・・ところが実際には,種々の条件により特定の分子がとり得る空間群は230種のごく一部であり,光学活性体は絶対に対称中心をもつ空間群には結晶化しない。それでも,特定の分子が少なくとも数種類の異なる結晶を与えることが少なくない。このように一つの分子がとり得る異なる結晶を結晶多形という。 同じ格子定数をもつが,発達した面の違いにより外観が異なる晶癖と多形はまったく異なる概念である。異なる多形は異なる晶癖(crystalhabit)をもっているが,同じ多形でも異なる晶癖をもつことができる。・・・ - 71 -異なる結晶多形中では異なる分子配向をしているため,その結晶の物理化学的および光学的性質は異なる。したがって,機能性物質の結晶化を考えるときには,この多形現象はその機能を大きく左右することが少なくないので,多形の制御が必須になる。」(10頁2行~18行)(2) 「工業的スケールでの結晶化は物質の精製の手段として使われることが多く,そのさい特定の結晶形は工業的プロセスで非常に不都合になることが少なからずある。こうした場合には,別の結晶多形を晶出させる条件をぜひとも見いだす必要がある。」(10頁下から3行~11頁1行) 8 社団法人化学工学会関東支部「最近の化学工学 53 晶析工学・晶析プロセスの進展」平成13年10月30日発行社団法人化学工学会(甲59)の記載事項甲59には,以下のとおりの記載がある。 (1) 「具体的には,医薬品,ファインケ 53 晶析工学・晶析プロセスの進展」平成13年10月30日発行社団法人化学工学会(甲59)の記載事項甲59には,以下のとおりの記載がある。 (1) 「具体的には,医薬品,ファインケミカルスなどの分野において,結晶の粒度とその分布,純度,結晶の形状,多形さらには結晶化度の厳密な制御が望まれている。」(1頁7行~9行)(2) 「加えて最近では,医・農薬品におけるバイオ・アベイラビリティや化学品における特異的な機能性発現の観点から,いわゆる「多形」制御が要求されることが多く,所望の結晶形の製品あるいは中間生成物を得るために適当な晶析操作が用いられることが多いように思われる。」(43頁19行~22行) 9 北村光孝ほか「結晶多形の構造制御における添加物ならびに溶媒効果」平成13年3月発行平成11年度~12年度科学研究費補助金基礎研究⒞(2)研究成果報告書(甲60)の記載事項甲60には,以下のとおりの記載がある。 「機能性素材や食品,医薬品などのファインケミカル工業においては結晶構造の異なる固相がひんぱんに現れる(結晶多形現象)。これら多形ではその構造の違いから,固液分離特性,結晶純度,粒径あるいは非線型性光学特性等とも密接に関係する。 - 72 -このためこれら多形を溶液中から選択的に得るための制御は工業的に重要な問題となっている。」(4頁3行~7行) 10 特開平5-132441号公報(甲67)の記載事項甲67には,以下のとおりの記載がある。 【特許請求の範囲】【請求項1】流下フィルム動的晶出装置で分別溶融結晶化により不純物を含むビスフェノール-Aを精製することからなる方法。 【請求項2】少なくとも本質的に溶媒または水分を含まないオルト斜方晶系結晶体ビスフェノール-Aからなる組成物。 【 分別溶融結晶化により不純物を含むビスフェノール-Aを精製することからなる方法。 【請求項2】少なくとも本質的に溶媒または水分を含まないオルト斜方晶系結晶体ビスフェノール-Aからなる組成物。 【発明の詳細な説明】【0001】【産業上の利用分野】本発明は流下フィルム動的晶出装置で分別溶融結晶化により不純物を含むビスフェノールAを精製することからなる方法に関する。 【0002】【従来の技術】ビスフェノール-Aは何十年もの間極めて有益な化学薬品として君臨してきた。多数のポリマー類を調製するために2官能性モノマーとして使用されてきたのである。・・・【0004】【発明が解決しようとする課題】・・・高純度のビスフェノール-Aを調製することはポリカーボネートの調製にとっても極めて重要である。取扱いや貯蔵のためにもまた一般的な純度の点からも,これまでビスフェノール-Aはオルト斜方晶系結晶体または針状で単離されてきたが,斜方晶系が好ましい。現在まで,オルト斜方晶系結晶体を得る方法は更に水分またはグリコールを使用する必要があった。このようなグリコールの例としては,エチレングリコール,グリセリン,ブタンジオール,および米国特許第4,113,974号に記載の水共溶媒系などが挙げられる。結晶性ビスフェノール-Aを得るためにトルエンまたは塩化メチレンなどの他の溶媒 - 73 -を使用すると針状(樹枝状)のものが得られた。・・・【0005】【課題を解決するための手段】新規なビスフェノール-A精製方法が発見された。 前述の様々な方法や設備を使用する必要がない。この方法により極めて高純度のビスフェノール-Aを極めて経済的に効果的に得ることができる。この新規精製方法では流下フィルム動的晶出装置で分別溶融結晶化により不純物を含むビスフェノール る必要がない。この方法により極めて高純度のビスフェノール-Aを極めて経済的に効果的に得ることができる。この新規精製方法では流下フィルム動的晶出装置で分別溶融結晶化により不純物を含むビスフェノールAを精製することを包含する。この方法では高純度のビスフェノール-Aを他の溶媒や物質で汚染されることなく得ることができる。・・・【0006】更に,この方法はビスフェノール-Aをオルト斜方晶系結晶体に凍らせて精製するという驚くべき態様を有する。従って,この方法では,オルト斜方晶系結晶体ビスフェノール-Aを水,グリコール,またはその混合物などの溶媒を添加することなく製造できる。・・・【0007】・・・以上いずれの場合もオルト斜方晶系結晶体ビスフェノール-Aの純度が少なくとも99.80%または99.90%のものが得られる。・・・【0010】・・・得られた結晶は結晶化室の隙間から見られるように性質はオルト斜方晶系である。前もって結晶化状態の性質を予測することはできない。これまでにも述べたように,このようなオルト斜方晶系結晶が観察されたのは例えばグリコール,追加の水分,または水分と米国特許第4,113,974号に記載の非プロトン性有機溶媒との混合物などのような有機溶媒を使用した精製方式を使用した場合だけである。・・・ 11 特表2002-522406号公報(甲234)の記載事項甲234には,以下のとおりの記載がある。 【発明の詳細な説明】【0005】(発明の概要)本発明は,脂肪族カルボン酸および必要に応じて水を含む溶媒中で,適切な対応 - 74 -する前駆体を触媒液相酸化することによって純粋なカルボン酸を連続的に製造する改良方法であって,この方法は,実質的に反応装置内の滞留時間を減少させ,得られた反応媒体から系統的,す - 74 -する前駆体を触媒液相酸化することによって純粋なカルボン酸を連続的に製造する改良方法であって,この方法は,実質的に反応装置内の滞留時間を減少させ,得られた反応媒体から系統的,すなわち明確な結晶化順序で,酸化反応とは切り離して直接的に純粋な結晶を沈澱させる。例えば,テレフタル酸の場合,本発明の方法は,粗TA結晶の独立した精製を必要としない。・・・【0006】純粋な酸の結晶を,本明細書で「母液」とも呼ぶ反応媒体から,ろ過および洗浄して湿性ケーキとして回収することができ,続いて以降の反応工程,例えばエステル化工程に直接移動させるか,または結晶を乾燥して移動させ貯蔵してもよい。 【0007】本発明の別な態様によれば,反応媒体からの純粋な酸の結晶の沈澱,すなわち結晶化を下記の明確な順序で行う:(i)まず反応媒体の圧力を1,000から3,000kPaの範囲の値に低下させ,それにより未反応酸素,水,酢酸および揮発性副生成物,例えば炭素酸化物(carbonoxides)を蒸発させて,蒸気を反応媒体から追い出し,次に(ii)反応媒体の圧力を1以上の付加的工程で300kPaの範囲の値に低下させ,同時に反応媒体を約150℃の温度に冷却する。 【0008】もう1つの態様によれば,本発明は,離散的な長斜方形結晶型の実質的に純粋なテレフタル酸から本質的になる新規組成物であって,・・・本発明に従い製造した純粋なテレフタル酸の結晶は,明らかに角張った,例えば長斜方形の構造であり,従来技術に従い製造した,多くの小結晶の丸い形の凝集物になり易いTAの結晶とは異なる。 12 特開平7-149721号公報(甲235)の記載事項甲235には,以下のとおりの記載がある。 【特許請求の範囲】【請求項1】不純物を含有する 物になり易いTAの結晶とは異なる。 12 特開平7-149721号公報(甲235)の記載事項甲235には,以下のとおりの記載がある。 【特許請求の範囲】【請求項1】不純物を含有する下記一般式〔I〕で表されるエーテルイミド系ビス - 75 -マレイミド化合物を,圧力60気圧以上かつ温度10℃以上の二酸化炭素と接触させることからなる不純物の抽出除去処理に付すことを特徴とする,ビスマレイミド化合物の精製方法。 一般式〔I〕【化1】 (式中,R1~R4は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し,互いに同じであっても異なっていても良い。R5は水素原子又はメチル基を示し,R6は水素原子,メチル基若しくはフェニル基を示す。)【請求項2】二酸化炭素との接触を,低級アルコール,脂肪族炭化水素及び環状エーテルよりなる群より選ばれた少なくとも1種の有機溶媒の存在下に実施する,請求項1のビスマレイミド化合物の精製方法。 【0006】〔発明の概要〕【課題を解決するための手段】<要旨>本発明は,不純物質を結晶形内に内包したエーテルイミド系化合物を圧力60気圧以上かつ温度10℃以上の二酸化炭素と接触させる不純物抽出除去処理に付せば,ビスマレイミド化合物の結晶形内に内包された不純物質を容易に抽出除去することができ,高純度のビスマレイミド化合物が効率的に得られる,という事実の発見に基くものである。従って,本発明によるビスマレイミド化合物の精製方法は,不純物を含有する下記一般式〔I〕で表されるエーテルイミド系ビスマレイミド化合物を,圧力60気圧以上かつ温度10℃以上の二酸化炭素と接触させることからなる不純物の抽出除去処理に付すこと,を特徴とするものである。 一般式〔I〕 - 76 -【0007】【化3】 力60気圧以上かつ温度10℃以上の二酸化炭素と接触させることからなる不純物の抽出除去処理に付すこと,を特徴とするものである。 一般式〔I〕 - 76 -【0007】【化3】 13 特表2005―527526号公報(甲236)の記載事項甲236には,以下のとおりの記載がある。 【請求項2】工程(a)で(メタ)アクリル酸の少なくとも一部を結晶化することで、表面上に少なくとも1個のくぼみがある結晶構造の結晶を形成し、該結晶構造がIbam空間群の斜方晶系ブラベー結晶格子を有し、結晶データがa=9.952Å、b=11.767Å、c=6.206Åであることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明は,(メタ)アクリル酸を含む組成物の精製方法,純(メタ)アクリル酸の製造装置,(メタ)アクリル酸の重合装置,これらの方法により得られる(メタ)アクリル酸および重合体,(メタ)アクリル酸および重合体の使用ならびに(メタ)アクリル酸および重合体を含む物質に関する。 【背景技術】【0003】(メタ)アクリル酸をポリマーに使用するには,99.9重量%を超える高純度に精製することが望ましい場合が多い。例えば衛生産業では,ポリアクリレートをベースとする超吸収体は検出限界未満の特定の副生物を含むことがある。 - 77 -【発明を実施するための最良の形態】【0029】本発明の方法では,工程(a)で少なくとも一部,好ましくは少なくとも5重量%,特に好ましくは少なくとも40重量%,さらに好ましくは少なくとも70重量%の(メタ)アクリル酸を結晶化することで,表面上に少なくとも1個のくぼみがある結晶構造の結晶を形成することが好ましく,この結晶構造はIbam 少なくとも40重量%,さらに好ましくは少なくとも70重量%の(メタ)アクリル酸を結晶化することで,表面上に少なくとも1個のくぼみがある結晶構造の結晶を形成することが好ましく,この結晶構造はIbam空間群の斜方晶系ブラベー結晶格子であり,結晶データはa=9.952Å,b=11.767Å,c=6.206Åである(R・ベーゼ,D・ブラザー,I・シュテラー,R・ラッツ,A・バウメン,『Acta Crystallogr.』,Sect(Cr. Str.Comm.),55,9900006,1999を参照)。 【0031】結晶が長さ方向に管状のくぼみを有し,このくぼみが好ましくはダンベル状であり,管状のくぼみの開口部が略四角形の結晶の端面側で大きく,端面に平行な結晶の断面側で小さいことが特に好ましい。 【0033】前述のくぼみは,母液等の不純物が結晶内部に含まれることを困難にするという利点がある。不純物は開口したくぼみを通じて流出させるか,洗い流すことが可能である。 【0036】一態様では,くぼみの容量は結晶の少なくとも5容量%,特に少なくとも10容量%,好ましくは20容量%,特に好ましくは50容量%である。くぼみの容量を増大させることにより,結晶内部に存在する不純物の種類を減らすことができる。 14 特開平8-301864号公報(甲237)の記載事項甲237には,以下のとおりの記載がある。 【発明の詳細な説明】【0001】 - 78 -【産業上の利用分野】本発明はα-オキシ酸ポリエステルの原料としてもちいられる環状ジエステル類の精製方法に関する。・・・【0004】・・・開環重合のモノマーに相当する該ジエステルは,充分に精製されていることが必要である。この場合,得られるポリエステルの分子量制御,重合速 環状ジエステル類の精製方法に関する。・・・【0004】・・・開環重合のモノマーに相当する該ジエステルは,充分に精製されていることが必要である。この場合,得られるポリエステルの分子量制御,重合速度,および着色の度合いなどの観点から,ジエステル中の不純物は可能な限り少ないのが好ましく,例えばα-オキシ酸やその低分子量オリゴマー量は酸価で表すと10eq/ton以下,より好ましくは5eq/ton以下であることが知られている。 【0010】【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは,ジエステル固形物を溶媒をもちいて洗浄し精製する方法において,より高純度の精製ジエステルを得るために鋭意検討を重ねた結果,ジエステルと不純物の溶融混合物を特定の温度範囲内で一定時間保持することで結晶内に取り込まれる不純物の含有量が低下し,この固形物を粉砕して粉末状にした後,溶媒で洗浄することでこれまでの方法よりさらに高純度の精製ジエステルが得られることを見出し,ついに本発明を完成するに到った。 【実施例】【0044】実施例1 L-ラクチドの精製参考例1で得られたL-ラクチドと不純物の溶融混合物40.0gをステンレス容器中,窒素雰囲気で95℃に保持した後,冷却速度0.5℃/minで冷却すると非常に緩慢な速度でL-ラクチドの柱状結晶の成長が始まった。最終的に70℃まで冷却した。混合物の外観は完全に固化しており,柱状のL-ラクチド結晶が析出していた。さらにこの固形物を30℃まで冷却した。固形物を取り出し,イオン交換水40mlとともにミキサーで3min粉砕洗浄し,得られたスラリーを吸引濾過した。濾紙上のケークをさらに40mlのイオン交換水で2回洗浄した後,窒素気流中で風乾した。さらにデシケーター中で24hrs真空乾燥して純白色の結晶性粉末を得た。回収量は 得られたスラリーを吸引濾過した。濾紙上のケークをさらに40mlのイオン交換水で2回洗浄した後,窒素気流中で風乾した。さらにデシケーター中で24hrs真空乾燥して純白色の結晶性粉末を得た。回収量は32.3gであった。得られた精製ラクチドはAV=1. - 79 -2eq/t,メソラクチド含有量0.6%,L-ラクチド含有量99.2%であった。また含有水分量は100ppm以下であった。 15 特開昭62-30773号公報(甲246)の記載事項甲246には,以下のとおりの記載がある。 【発明の詳細な説明】〔産業上の利用分野〕本発明は,ポリイミド,ポリアミド,ポリエステルの原料などとして有用な吸湿性の低いベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下「BTDA」という)の製造方法に関する。(1頁左欄14行~17行)〔従来の技術〕BTDAをこれら重縮合系ポリマーの原料として用いる場合には,その純度が極めて高いことが要求されるが,これはモノマーの純度いかんによってポリマーの重合度が大きく影響を受けるためである。(1頁右欄3行~7行)〔問題点を解決するための手段〕すなわち,本発明は,BTA,BTMAおよびBTDAに不活性で沸点が100℃を超える有機化合物を主成分とする溶剤の存在下にBTAを加熱することを特徴とするベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の製造方法を提供するものである。 (2頁左下欄下から4行~右下欄3行)こにように(判決注:「このように」の誤記と認める。)して得られるBTDAは,市販品のものの純度が97重量%程度,その融点は220℃程度であるのに対し,純度99.5重量%以上,融点224.5~225.5℃程度と極めて純度が高いものである。 また,本発明により得られるBTDAの結晶は,通常,10~300μmの その融点は220℃程度であるのに対し,純度99.5重量%以上,融点224.5~225.5℃程度と極めて純度が高いものである。 また,本発明により得られるBTDAの結晶は,通常,10~300μmの粒径を持つものであり,板状ないしは直方体状のものが多い。 これらのBTDAの結晶のX線回折測定によれば,BTDAには4種類の結晶型が認められる。 - 80 -第1~4図に,4種類の結晶型のX線回折パターンを示す,測定に用いたX線は銅のKα線であり,装置は理学電気(株)製,RAD-γA型X線回折装置ある。 これら4種類のBTDAの結晶型をA~D型とすると,それぞれのX線回折パターンの回折角(2θ)は,A型が13.5,15.0,18.6,23.3,25. 2,27.8および28.6に,B型が8.8,12.8,17.7,18.9,20.5,25.8,26.1および27.1に,C型が15.7,17.8,20.6,20.9,24.6,25.6,26.8および27.8に,D型が15. 2,17.2,18.9,22.2,23.6,26.6および28.6に,それぞれ特徴となるピークを有する。(6頁左上欄下から3行~左下欄2行) 16 特開昭63-290836号公報(甲247)の記載事項甲247には,以下のとおりの記載がある。 3.発明の詳細な説明〔産業上の利用分野〕本発明はカーボネート,エポキシ樹脂などの高分子材料の原料として,又感熱記録材料として有用な融点が135~140℃の範囲にある2-(3-ヒドロキシフェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに関する。(1頁左欄10行~15行)〔発明の目的と発明の概要〕本発明者はポリカーボネート,エポキシ樹脂などの高分子の原料や感熱記録材料の顕色剤として有用な高純度のm,p-ビスフェ )プロパンに関する。(1頁左欄10行~15行)〔発明の目的と発明の概要〕本発明者はポリカーボネート,エポキシ樹脂などの高分子の原料や感熱記録材料の顕色剤として有用な高純度のm,p-ビスフェノールAを提供すべくこれについて鋭意検討した。その結果,精製方法を工夫してm,p-ビスフェノールAの純度を高めるとこれ迄知られていなかつた高融点の新しいタイプのm,p-ビスフェノールAが存在することを見出し本発明に到った。すなわち,本発明によれば融点が135~140℃の範囲にあるm,p-ビスフェノールAが提供される。(2頁左上欄11行~右上欄1行)〔発明の実施例〕 - 81 -実験例2実験1で得られた白色結晶をトルエンで再結晶したところ純度99.95%のm,p-ビスフェノールAが白色結晶として得られた。このものをDSC(セイコーDSCモデル-20)で測定した結果,122.2℃と137.5℃に鋭い吸熱ピークが現れ,異なった融点を示す2種類の結晶の混合物であることがわかった。(3頁左下欄下から6行~右下欄2行) 17 取消事由1(本件発明1の容易想到性判断の誤り)について(1) 相違点1-1について甲6は,本件特許と同じく被告が出願人となっている特許出願の公開公報であり,引用方法発明とされている甲6の実施例10と本件明細書の実施例4は,試薬の使用量,操作方法,収率,純度等の各点でいずれも一致しており,甲6の実施例10について,析出開始温度が記載されていないものの,実質的には本件明細書の実施例4と同じ製造方法であると認められる(甲7)。 また,甲6の実施例10では,得られたBPEFが,いかなる結晶多形体であるのかは必ずしも明らかではないが,上記のように実質的には同じ製造方法である本件明細書の実施例4で,融点104℃の多形体 )。 また,甲6の実施例10では,得られたBPEFが,いかなる結晶多形体であるのかは必ずしも明らかではないが,上記のように実質的には同じ製造方法である本件明細書の実施例4で,融点104℃の多形体Aが38℃で析出していることからすると,引用方法発明で得られている白色結晶も多形体Aであると推認される。 したがって,第二次審決が説示するように,相違点1-1は,実質的な相違点であるとは認められない。 (2) 相違点1-2の容易想到性についてア異なる結晶多形体を製造する動機付けについて本件発明1では,BPEFの多形体Bを製造するために特定の溶媒(芳香族炭化水素溶媒)を用いた再結晶化操作が行われているのに対し,引用方法発明では,多形体Aと異なる結晶多形体を得るための再結晶化操作が行われず,単に多形体Aの白色結晶が製造されているにすぎない。したがって,引用方法発明に接した当業者が,多形体Aと異なる結晶多形体を製造しようと動機付けられるのかどうかについ - 82 -て,以下検討する。 a 前記5~9で認定した各刊行物の記載によると,「多くの化合物について,結晶多形体が存在しており,結晶多形体の違いにより,化合物の嵩密度,流動性,ろ過性,沈降性等の粉体特性,結晶の形状,密度,純度,粒径,非線型性光学特性,バイオアベイラビリティー,安定性などが変わり得るもので,特にバイオアベイラビリティーの向上等が求められる医・農薬品化合物や単体で特異的な機能性発現が求められる化合物の分野では,結晶多形体の制御は,工業的にも重要なものとされている。」という技術常識が,本件優先日当時に存在していたことが認められるものの,このような技術常識から直ちにBPEFについて,多形体Aと異なる結晶多形体を製造する動機付けの存在を認めることはできない。 b 本件 技術常識が,本件優先日当時に存在していたことが認められるものの,このような技術常識から直ちにBPEFについて,多形体Aと異なる結晶多形体を製造する動機付けの存在を認めることはできない。 b 本件明細書(甲1),甲6,9~13及び弁論の全趣旨によると,本件で問題になっているBPEFは,専ら合成樹脂(ポリマー)の原材料として使用される単量体(モノマー)であり,最終的には溶融重合又は溶液重合されて結晶形をとどめなくなり,結晶多形体の違いにかかわらず,同じ化学構造のポリマーとなる化合物であると認められるのであり,単体で使用され何らかの機能を発揮する医薬品化合物のようなものとは異なり,その用途・性質の面から直ちに結晶多形体の探索が基礎付けられるようなものではないといえる。 c 本件明細書の段落【0003】によると,BPEFについて,高純度で高い反応性を有し,ポリマーに合成したときに分子量が高くて分子量分布が狭く,かつ未反応モノマーやオリゴマー含有率が低いことが要求されていたと認められるところ,本件優先日当時,それらの事項やその他の物性,嵩密度をはじめとする粉体特性等に関して,多形体Aについて何らかの課題があったり,工業的プロセスでの不都合があったりして,多形体A以外の結晶多形体を得る必要性があると当業者に認識されていたことを認めるに足りる証拠はない。 d上記c認定の本件明細書の記載及び甲67,231~237,246,247からすると,モノマーとしてのBPEFについて,高純度化の要求が - 83 -あり,結晶形の違いが,ある種のモノマーの純度に影響を与える場合があると当業者が認識していたことは認められるが,①甲5’の前記5(5),(6)の記載や甲14’の前記6(4),(5)の記載からすると,本件優先日当時,析出条件と結晶多形体の関係 に影響を与える場合があると当業者が認識していたことは認められるが,①甲5’の前記5(5),(6)の記載や甲14’の前記6(4),(5)の記載からすると,本件優先日当時,析出条件と結晶多形体の関係の理解は十分ではなく,結晶多形体の制御のためには,できるだけ多くの析出条件で網羅的に結晶化を試みるというスクリーニング法に依拠せざるを得なかったところ,このようなスクリーニング法を採用して,所望の物性や粉体特性等を有する結晶多形体の析出条件を特定することは,当業者にとっても相応の試行錯誤,すなわち,相応の労力や費用を要するものであったと認められること,②本件優先日当時,甲6の実施例9(純度99.0%),甲9の実施例2(純度99.5%)や甲10の実施例3(純度99.6%)のように高純度のBPEFを得る方法が既に明らかになっていたことや甲6の段落【0025】に必要に応じて再結晶化やそれ以外の精製操作を行ってもよい旨の記載があることからすると,BPEFの高純度化を目指す当業者としては,上記①のとおり費用・労力がかかり,かつ所望の純度向上が得られるか不透明な新たな結晶多形体を探索するという手法ではなく,通常は,純度の向上が確実に見込まれ,より適切といえる上記②のような各手法を選択するといえる。 ⒝ この点について,確かに甲67,234~237,246,247にはモノマーの高純度化及び結晶形についての言及がある。 しかし,前記10~14 及び16 で認定した各記載からすると,甲67,234~237,247の公報記載の発明においては,作られたものが,晶癖なのか,結晶多形体なのか又はその双方であるのかが不明であり,原告の主張するようなモノマーの高純度化のために結晶多形体を作り分けるという技術的思想をそこから読み取ることは困難である。なお,前記 晶癖なのか,結晶多形体なのか又はその双方であるのかが不明であり,原告の主張するようなモノマーの高純度化のために結晶多形体を作り分けるという技術的思想をそこから読み取ることは困難である。なお,前記5(2)~(4),6(1)及び7(1)で認定した各記載からすると,「結晶多形」とは,同一の化学式で表される物質が,異なる複数の結晶構造として結晶化する現象をいい,結晶粒子の外観形状である「晶癖」とは異なる概念であり,結晶多形体が異なると晶癖も異なるものとなる一方で,結晶多形体として - 84 -同じでも晶癖が異なることがあり得るものと認められる。 また,前記15で認定した記載からすると,甲246の公報記載の発明においては,結晶多形体が作られているものと認められるが,製造された4種類の結晶多形体の純度に差異はないとされており,原告の主張するようなモノマーの高純度化のために結晶多形体を作り分けるという技術的思想をそこから看取することはできない。 原告は,被告が,第一次審決取消訴訟の当時,甲67が結晶多形体であることを認めていた(甲248)と主張するが,上記のとおり,甲67の記載だけでは,そこで記載されている結晶形が,晶癖なのか結晶多形体なのかは明らかではない上,仮に甲67に記載されているのが結晶多形体であるとしても,前記10 で認定した甲67の段落【0004】の記載からすると,甲67は,オルト斜方晶系結晶が好ましいものとして既に知られている中でそれを作り分けた発明であって,新たな結晶多形体を探索し,それを作り分ける方法を明らかにした本件発明1の動機付けを基礎付けるものとはいえないeBPEFについて,嵩密度などの粉体特性の見地から結晶多形体を作り分けることが動機付けられることを認めるに足りる他の証拠はない。 f 以上をまとめると,本件 付けを基礎付けるものとはいえないeBPEFについて,嵩密度などの粉体特性の見地から結晶多形体を作り分けることが動機付けられることを認めるに足りる他の証拠はない。 f 以上をまとめると,本件優先日当時,BPEFについて,その用途・性質の面からみて,直ちに結晶多形体探索の動機付けがあるとはいえず,かつ,多形体Aについて純度向上やその他の物性,粉体特性等の点で特に課題が認識されておらず,しかも,純度向上のためには結晶多形体の制御以外に他に適切な手法が複数あったのであるから,敢えて時間や費用を要する異なる結晶多形体を製造する動機付けがあったと認めることはできない。 原告は,①前訴判決の67頁21行から68頁7行からすると,ファインケミカルに属するBPEFについては動機付けがあった,②本件明細書の段落【0002】,【0003】からすると,高純度かつより良い粉体特性を有するモノマーを製造するために結晶多形体を作り分けることが本件優先日当時に技術常識になっていたと主張する。 - 85 -しかし,上記①について,前訴判決の67頁21行から68頁7行は,主に結晶多形体探索のための手法(スクリーニング法)について述べているものであって,BPEFについて,結晶多形体を得る動機付けがあることを認定しているものではないから,この点についての原告の上記主張は採用することができない。 また,上記②について,モノマーやBPEFに関らすと,原告が指摘する本件明細書の記載から,原告が主張する技術常識の存在を認定することはできず,この点についての原告の上記主張も採用することができない。 被告は,甲246~248及びそれに基づく原告の主張が,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきであると主張し,他方,原告は,乙49~52が,時機 原告の上記主張も採用することができない。 被告は,甲246~248及びそれに基づく原告の主張が,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきであると主張し,他方,原告は,乙49~52が,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきであると主張するが,本件訴訟の経緯に照らして,それらが訴訟の完結を遅延させるものとはいえないから,いずれも時機に後れた攻撃防御方法として却下することはしないこととする。 イ特定の溶媒を用いることについて甲6,9~13には,BPEFを析出する際の溶媒として芳香族炭化水素を用いることができることが記載されている。 しかし,甲6の段落【0025】の「晶析および精製に用いられる溶媒は,反応溶媒をそのまま使用してもよいし,別の溶媒を使用することもできる。晶析溶媒としては,メタノール,エタノール,プロパノールなどの脂肪族低級アルコール類,アセトン,メチルエチルケトンなどの脂肪族低級ケトン類,トルエン,キシレンなどの芳香族炭化水素類,酢酸エチルなどのエステル類,水などが特に好ましい。」との記載,甲12の段落【0023】の「フルオレノンとフェノキシエタノールの反応液は,触媒を濾過により分離することができる。触媒を濾過した後の反応液は溶剤を加えた後,晶析することにより結晶としてBPEFを取り出すことができる。 この際に使う溶剤としては,低級脂肪族アルコール(メタノール,エタノール,プロパノール等),低級脂肪族ケトン(アセトン,メチルエチルケトン等),トルエ - 86 -ン,キシレンなどの芳香族炭化水素,酢酸エチルなどのエステル類が挙げられるが,BPEFの色相から低級脂肪族アルコールを使用するのがよい。例えば,反応液に低級脂肪族アルコールを加え,均一溶液とした後,冷却することにより結晶を析出させる。この際,必 のエステル類が挙げられるが,BPEFの色相から低級脂肪族アルコールを使用するのがよい。例えば,反応液に低級脂肪族アルコールを加え,均一溶液とした後,冷却することにより結晶を析出させる。この際,必要に応じて水を加えても結晶を析出させることができる。」との記載からすると,BPEFを析出する際の溶媒としては,芳香族炭化水素以外にも混合溶媒を含む様々なものがあり,かつ,芳香族炭化水素以外の溶媒を用いても高純度化は期待できるから,そのような中で,当業者が敢えて芳香族炭化水素という特定の溶媒を異なる結晶多形体を得るための再結晶化工程に使用することを容易に想到し得るとはいえない。 ウ小括以上からすると,相違点1-2について,引用方法発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 (3) 相違点1-3の容易想到性についてア再結晶化の段階で析出開始温度を明示的に65℃以上としている文献等は存在せず,当業者において,再結晶化の際に析出開始温度を65℃以上とすることが動機付けられるものではない。 したがって,相違点1-3について,当業者が容易に想到することができたとはいえない。 イ原告は,①スクリーニング法を用いて析出開始温度を上げたり下げたりすることや,②引用方法発明である甲6の実施例10に,副引例である甲9又は甲10に記載された再結晶化の操作を適用することで,当業者は相違点1-3を容易に想到し得た,③「65℃以上でBPEFの析出開始」とは,「現象」にすぎないところ,そのような現象を確認することは容易であると主張する。 しかし,原告の上記①,②の主張は,BPEFについて異なる結晶多形体を製造する動機付けがあることを前提として,析出開始温度が65℃以上となるように,当業者が,スクリーニン と主張する。 しかし,原告の上記①,②の主張は,BPEFについて異なる結晶多形体を製造する動機付けがあることを前提として,析出開始温度が65℃以上となるように,当業者が,スクリーニング法を用いたり,甲9又は甲10の各実施例1 - 87 -を参考にするなどして溶液濃度を敢えて高く設定したりすることが容易想到である旨をいうものであると解されるところ,前記(2)アのとおり,そのような結晶多形体を作り分ける動機付けの存在は認められず,その主張は前提を欠いている。 なお,析出開始の出発点となる「核」の発生がゆらぎにより生じ,析出開始温度は,その溶質に随伴する種々の微量不純物の含量によっても変化する旨のB教授の陳述書(乙36)からすると,再結晶化の操作を加える前の粗結晶に,どのような微量不純物が,どれだけ含まれるのか等の条件によっても析出開始温度は変化し得るものと推認できる。そして,本件発明1の粗精製物と甲9又は甲10の各実施例1で粗結晶とされているものの製造方法が異なっていて,本件発明1の粗精製物と甲9又は甲10の各実施例1の粗結晶とでは,含まれる微量不純物の種類や量も相違すると思料されること及び甲9の実施例1を再現した事実実験公正証書(乙37)では,その析出開始温度が42.8℃であったことを考え併せると,甲9又は甲10の各実施例1の析出開始温度が65℃以上であったと認めることはできない。 また,原告の上記③の主張については,「65℃以上でBPEFの析出開始」が「現象」であったとしても,上記アの判断が左右されることはない。 (4) 以上のとおり,相違点1-2,相違点1-3が容易想到であるとはいえないから,その余の点について判断するまでもなく,原告主張の取消事由1は,理由がない。 18 取消事由2~5(本件発明2 (4) 以上のとおり,相違点1-2,相違点1-3が容易想到であるとはいえないから,その余の点について判断するまでもなく,原告主張の取消事由1は,理由がない。 18 取消事由2~5(本件発明2~4,6の容易想到性判断の誤り)について本件発明2は,本件発明1の製造方法について,フルオレノンと2-フェノキシエタノールの反応を脱水条件下で行うことを限定したものである。 また,本件発明3,4,6は,本件発明1の製造方法について,ヘテロポリ酸(本件発明3,4)と芳香族炭化水素溶媒(本件発明6)について,それぞれ限定を加えたものである。 前記17 のとおり,本件発明1が容易に想到することができたものとはいえない以上,本件発明2~4,6も,同様の理由により,進歩性を否定することができない。 - 88 -したがって,原告主張の取消事由2~5は,いずれも理由がない。 19 取消事由6,7(本件発明8,9の容易想到性判断の誤り)について前記17(1)のとおり,引用方法発明で製造された引用結晶発明は,多形体Aと推認されるところ,原告は,本件発明8,9について,①取消事由1の主張を援用するとともに,②当業者は,高純度化のために,甲6の段落【0025】の示唆に基づき再結晶化操作を動機付けられ,その際に引用方法発明に甲9又は甲10の発明を組み合わせることで,多形体Bを製造できるから容易想到であると主張する。 しかし,取消事由1に理由がないことは前記17 のとおりである。 また,引用方法発明について,仮に高純度化のために再結晶化操作が動機付けられたとしても,そこから特定の溶媒を使用して異なる結晶多形体を得ることまでが容易想到とはいえないことは,前記17(2)イのとおりである。加えて,前記17(3)で検討したとおり,再結晶化の段階で析出開始温度を ても,そこから特定の溶媒を使用して異なる結晶多形体を得ることまでが容易想到とはいえないことは,前記17(2)イのとおりである。加えて,前記17(3)で検討したとおり,再結晶化の段階で析出開始温度を明示的に65℃以上としている文献等が存在しないことや異なる結晶多形体を製造する動機付けがないことなどからすると,析出開始温度を65℃以上とすることも容易想到とはいえない。 そうすると,当業者が,引用方法発明に基づいて,多形体Bである本件発明8,9を容易に想到することができたとはいえないから,原告主張の取消事由6,7はいずれも理由がない。 取消事由8(本件発明7の公然実施及び公知についての認定判断の誤り)について被告は,原告やY社が,ポリマー合成会社であるα社~ε社との間で,ポリマー及びその原料となるBPEFの共同開発をしており,本件各取引によって原告からBPEFの譲渡を受けたα社~ε社は,融点(示差走査熱量測定による融解吸収熱最大)をはじめとするBPEFの物性情報について信義則上の秘密保持義務を負っていたところ,①前訴判決は,信義則上の秘密保持義務の有無については判断しておらず,前訴判決の拘束力は,信義則上の秘密保持義務には及ばないが,それが及ぶとした第二次審決の判断は誤りである,②第二次審決が,信義則上の秘密保持義 - 89 -務の存在を認めず,本件発明7について,公然実施と公知を認めたのは誤りであると主張している。 (1) 前提事実(前訴判決の拘束力が及ぶ事実を含む。)証拠及び弁論の全趣旨から以下の事実を認定することができる(前訴判決の拘束力が及ぶ事実についても証拠を掲記している。)。 ア平成5年7月頃から平成7年11月頃まで,原告,被告,X社及びY社の間で,X社が開発していた光学樹脂の原料となるBPEFについ る(前訴判決の拘束力が及ぶ事実についても証拠を掲記している。)。 ア平成5年7月頃から平成7年11月頃まで,原告,被告,X社及びY社の間で,X社が開発していた光学樹脂の原料となるBPEFについて,本件共同開発が行われており,その一環として秘密保持義務について定めた本件覚書が作成された。本件共同開発の中で,被告は,実際のプラントにおけるBPEFの工業的生産技術の開発を担当し,原告は,BPEFの生産や本件共同開発から撤退したY社に代わり,平成7年3月から被告が生産したものをX社に販売する商社的な役割を担っていた。(甲142,161~164,179,184,185,乙3,乙4の1の1~4,乙4の2の1・2.乙4の3の1~3,乙4の4の1~4,乙4の5の1~4,乙4の6の1~6,乙4の7の1~4,乙4の8,乙4の9の1~10,乙4の10,乙4の11の1~4,乙4の12の1・2,乙4の13の1~4,乙5の1~4,乙6の1~4)イ Y社は,本件共同開発とは別にBPEFの開発を独自に再開し,平成8年6月頃には,BPEFの精製過程において,溶媒としてトルエン及び水を利用するトルエン加水分解法を開発した(甲19,142,乙17)。 ウ原告及びY社は,トルエン加水分解法を用いたBPEFの量産をA社,B社及びフルファイン社に委託し,原告が,平成14年3月頃から平成19年2月1日頃までの間に,A社らによって製造されたBPEFを,以下のとおり,α社~ε社に対して譲渡する本件各取引を行ったが,そのうち,第1取引~第5取引,第7取引~第13取引の対象となったBPEFの全部又は一部は,本件発明7の実施品に相当する多形体BのBPEFであった(甲30の1・3~5,甲31の1・2・4~6,甲32の1・3・4,甲33,甲34の1~3,甲35の1・3~6・8, PEFの全部又は一部は,本件発明7の実施品に相当する多形体BのBPEFであった(甲30の1・3~5,甲31の1・2・4~6,甲32の1・3・4,甲33,甲34の1~3,甲35の1・3~6・8, - 90 -甲36の1・2・4・5,甲37の1~5,甲39の1,甲40の1,甲41~46,甲47の2,甲49の1~3,甲51の1~3・5,甲126~130,甲204~214,乙17)。 第1取引平成14年3月頃 α社に対する2700㎏の譲渡(甲30の1・3・5)第2取引平成14年8月頃 α社に対する450㎏の譲渡(甲33,甲34の1~3)なお,第2取引に当たって作成された書面(甲34の1)には「原料購入依頼の件」とあって,請求先がα社の「●●●●●●●●●●●」とあり,納入場所は,α社の工場の●●●●●●とされていた(甲34の1・2)。 第3取引平成15年5月頃 α社に対する4140㎏の譲渡(甲35の1・3~6・8)なお,第3取引に当たって作成された納品書(甲35の6)は,X社の「●●●●●●●●」所属の担当者あてとなっており,納品場所は第2取引と同じα社の工場とされていた。 第4取引平成15年8月19日 α社に対する9910kg(うち1510㎏が多形体BのBPEF)の譲渡(甲43~46,甲47の2)なお,第4取引に当たって作成された書面(甲47の2)には「原料正式発注依頼の件」とあり,その納入場所は第2取引及び第3取引と同じα社の工場の●●●●●●,請求先はα社の「●●●●●●●●●●●●●」とされていた。 第5取引平成17年5月17日頃 α社に対する6750㎏の譲渡(甲49の1~3,甲208) 第6取引平成19年2月1日 β社に対する5100 ●●●」とされていた。 第5取引平成17年5月17日頃 α社に対する6750㎏の譲渡(甲49の1~3,甲208) 第6取引平成19年2月1日 β社に対する5100㎏の譲渡(甲51の1~3・5,甲 - 91 -209)なお,第6取引におけるβ社の担当者は「●●●●●●」とされており,納入・納入場所は「製造・製造」とされていて,請求書の宛先はβ社の「●●●●●」とされていた(甲51の1~3・5)。 第7取引平成15年1月21日 γ社に対する60㎏の譲渡(甲31の1・2・4~6,甲210)なお,第7取引は,BPEFを「有償サンプル」として譲渡するものであり,請求先はγ社の「本社購買部」,出荷先はγ社の工場とされていた(甲31の1)。 第8取引平成15年6月5日 γ社に対する60㎏の譲渡(甲30の3・4,甲32の1・3・4)なお,第8取引は,BPEFを「有償サンプル」として譲渡するものであり,請求書の宛先はγ社の「購買部」であって,出荷先は第7取引と同じγ社の工場とされていた(甲32の1・4)。 第9取引平成15年12月頃 γ社に対する60㎏の譲渡(甲35の3~5・8,甲36の1・2・4・5,甲212)なお,第9取引は,BPEFを「有償サンプル」として譲渡するものであり,請求書の宛先はγ社の「購買部」であって,出荷先は第7取引及び第8取引と同じγ社の工場とされていた(甲36の1・5)。 第10取引平成14年7月頃 δ社に対する100㎏の譲渡(甲33,甲37の1~5)なお,第10取引は,BPEFを「有償サンプル」として譲渡するものであり,出荷先はδ社の総合研究所とされていた(甲37の4)。 第11取引 100㎏の譲渡(甲33,甲37の1~5)なお,第10取引は,BPEFを「有償サンプル」として譲渡するものであり,出荷先はδ社の総合研究所とされていた(甲37の4)。 第11取引 - 92 -平成14年5月頃 ε社に対する1㎏の譲渡(甲33,甲39の1,甲42,213)なお,第11取引は,BPEFを「サンプル」として譲渡するものであり,第11取引に当たって作成された書面の宛先は,ε社の「●●●●●」所属の担当者とされていた(甲39の1)。 第12取引平成14年10月16日 ε社に対する300gの譲渡(甲33,甲40の1,甲42,214)なお,第12取引は,BPEFを「サンプル」として譲渡するものであり,第12取引に当たって作成された書面の宛先は,ε社の「●●●●●」所属の担当者とされていた(甲40の1)。 第13取引平成15年3月頃 ε社に対する1㎏の譲渡(甲41,43~46)なお,第13取引は,BPEFを「サンプル」として譲渡するものであり,第13取引に当たって作成された書面の宛先は,ε社の「●●●●●」所属の担当者とされていた(甲41)。 エ第一次審決は,本件各取引の対象となったBPEFが,いずれも多形体BのBPEFであるとは認められず,かつ本件各取引の関係者である原告,α社~ε社との間に守秘義務が存在していたとして,本件発明7は,本件優先日前に公然と実施され,又は公知となっていたとはいえないと判断した(甲245)。 オ第一次審決取消訴訟において,被告は,本件各取引の対象となったのが多形体BのBPEFではないと主張するとともに,本件各取引の相手方が守秘義務を負担していたと主張し,その根拠として,①α社及びβ社が本件覚書に基づく契約上の守秘義務を負担していると主張し なったのが多形体BのBPEFではないと主張するとともに,本件各取引の相手方が守秘義務を負担していたと主張し,その根拠として,①α社及びβ社が本件覚書に基づく契約上の守秘義務を負担していると主張したほか,②原告又はY社が,α社~ε社との間でBPEFを原料とするポリマーの共同開発をしており,原告又はY社とα社~ε社が相互に信義則上の守秘義務を負担している旨主張した(前訴判決42頁~ - 93 -46頁)。 これに対し,前訴判決は,その82頁~86頁で,Y社は,平成8年6月頃にトルエン加水分解法を独自に開発し,同製造方法によるBPEFを量産するため,原告やY社が,A社,B社及びフルファイン社にトルエン加水分解法を利用したBPEFの製造を委託し,製造されたBPEFを原告が本件各取引によってα社~ε社にそれぞれ譲渡したという事実を認定し,さらに,第6取引以外の本件各取引の対象となったBPEFの全部又は一部が多形体BのBPEFであることを認定した。 そして,前訴判決は,その91頁~93頁において,「(3) 秘密保持義務の有無について」,「イ本件覚書に基づく秘密保持義務について」との表題の下,「本件各取引の対象となったBPEFは,本件共同開発とは別に,Y社が独自に開発した製造法により製造されたものであって,同製造法によって製造されたBPEFの物性情報は,本件覚書における秘密保持義務の対象ではなく,原告及びα社~ε社が,被告に対し,本件覚書に基づく秘密保持義務を負担していた事実はないから,本件発明7は,第6取引を除く本件各取引によって公然実施されていた」旨認定した。 (以上につき,甲245)カ第二次審決は,前記第2の3(2)のとおり,本件発明7の公然実施に関して,第6取引以外の本件各取引の対象となったのが多形体Bであって,本件発明7 いた」旨認定した。 (以上につき,甲245)カ第二次審決は,前記第2の3(2)のとおり,本件発明7の公然実施に関して,第6取引以外の本件各取引の対象となったのが多形体Bであって,本件発明7は,本件優先日前に公然実施されており,これを争う被告の主張は,前訴判決の拘束力に抵触していて採用できないと判断した。 (2) 前訴判決の拘束力についてア前訴判決は,前記(1)のとおり,本件発明7は,第6取引を除く本件各取引によって公然実施されたと判断しているから,この部分に拘束力が及び,審判手続においてこれに反する主張をすることは許されないものというべきである。したがって,この点についての第二次審決の判断に誤りがあるということはできない。 イ被告は,前訴判決は,原告又はY社とα社~ε社との間の信義則上の秘密保持義務の有無について判断しておらず,前訴判決の拘束力は,信義則上の秘密 - 94 -保持義務についての主張立証には及ばないと主張する。 しかし,前訴判決の拘束力が及ぶ範囲は,上記アのとおりであって,前訴判決が信義則上の秘密保持義務について明示的に判断しているかどうかで,この拘束力が及ぶ範囲が左右されることはない。 (3) なお,念のため,被告の主張する原告又はY社とα社~ε社との間の共同開発に基づく信義則上の秘密保持義務の有無についても検討する。 被告は,①取引量が少量であること,②本件各取引において供給されたBPEFが「サンプル」とされ,研究開発部門が受入窓口となるなどしていたこと,③被告とδ社との取引経緯,④原告のBPEFの融点の公表時期,⑤原告とY社がα社等とポリマーに係る発明について●●●●をしていたことなどから,共同開発の事実及び信義則上の秘密保持義務の存在が推認できると主張する。 アまず,上記①,②につ の融点の公表時期,⑤原告とY社がα社等とポリマーに係る発明について●●●●をしていたことなどから,共同開発の事実及び信義則上の秘密保持義務の存在が推認できると主張する。 アまず,上記①,②については,取引量が少量で,かつ対象物のBPEFが「サンプル」で,受入先が研究開発部門などとされている場合でもあっても,例えば,受入先が,BPEFを原料としたポリマーの研究開発を行っているにすぎず,BPEFについては特に共同開発が行われていないといったことが容易に想定されるのであるから,被告主張の上記①,②は,そもそも共同開発の事実を推認させるものではないといえる。Aの供述は,この判断を左右するものではないし,ゼオネックスという光学用樹脂の例(乙14)については,BPEFとは異なる物質に関するものである上,乙14の12頁でも,ゼオネックスが,販売開始後も当初はサンプルとしての供給が多く,数百キロ程度しか売れなかったとされていることに照らすと,上記判断を左右するものではない。 イ上記③については,被告とδ社が,平成17年1月頃からBPEFを原料とするポリマーの共同開発をしていたとしても,そこから,原告及びY社とα社~ε社との共同開発の事実が直ちに推認されるというものではない。 また,原告がδ社に提供したBPEFの中に,融点が三つある多形体混合物(ロット番号0610209)があったことについても,原告が単体でBPEFの製造 - 95 -方法の改良を試み,その結果生じたものである(甲120)としても不自然とはいえず,やはりそれをもって共同開発の事実を推認させるものとはいえない。 ウ上記④については,証拠(甲186~189,甲190の1・2)及び弁論の全趣旨からすると,原告が供給するBPEFについて,その融点(162℃)を含む物性情報が,本件 認させるものとはいえない。 ウ上記④については,証拠(甲186~189,甲190の1・2)及び弁論の全趣旨からすると,原告が供給するBPEFについて,その融点(162℃)を含む物性情報が,本件優先日前である平成15年12月頃に東京化成工業株式会社の試薬データベースに登録されることで第三者に広く開示され得る状態になっていた上,同年頃から,東京化成工業株式会社の代理店を通じて,不特定多数の者が,原告の供給するBPEFを入手できる状態になっていたと認められるから,原告のホームページにBPEFの物性が記載されていなかったからといって,それが被告の主張するBPEFの共同開発の事実に結びつくとはいえない。 エ上記⑤については,被告がその論拠とする各発明(乙7の1の1・2,乙7の2の1・2,乙7の3・4,乙8の1・2,乙9の1~8,乙10の1・2,乙48)の中には,BPEFを原料としたポリマーに関する発明があると認められるものの,原告又はY社が,ポリマー合成会社等とポリマーに関する共同開発をしていたからといって,そこから直ちに原料であるBPEFについても共同開発をしていたと推認することはできない。 オ以上のとおり,被告が主張する上記①~⑤の事実は,共同開発及びそれに基づく信義則上の秘密保持義務の存在を推認させるものではなく,他に信義則上の秘密保持義務の存在を認めるに足りる証拠はない。 (4) 以上の検討からすると,公知の点について判断するまでもなく,被告主張の取消事由8は理由がない。 第5 結論よって,原告の甲事件請求及び被告の乙事件請求は,いずれも理由がないから,それぞれ棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 - 96 - 裁判長裁判官 事件請求は,いずれも理由がないから,それぞれ棄却することとし,主文のとおり判決する。 主文 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 森義之 裁判官 佐野信 裁判官 熊谷大輔

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