判決 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告A1に対し、660万円及びこれに対する平成30年7月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告A2に対し、220万円及びこれに対する平成30年7月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告A3に対し、110万円及びこれに対する平成30年7月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告A4に対し、110万円及びこれに対する平成30年7月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告は、別表1記載のツイートをすべて削除せよ。 6 被告は、別紙ツイート目録記載の文章を、本判決確定の日から6か月間、固定ツイートとして自らのツイッター上に掲載せよ。 第2 事案の概要本件は、大学教授等の地位にあった原告らが、SNS(情報サービス)である「ツイッター」(以下「ツイッター」という。)等の各種媒体において、被 告がした投稿や発言(以下「発言等」という。)などにより名誉を毀損され又は名誉感情を害されたと主張して、国会議員である被告に対し、民法709条に基づく損害賠償請求として、それぞれ慰謝料及び弁護士費用相当額(原告A1につき合計660万円、原告A2につき合計220万円、原告A3につき合計110万円、原告A4につき合計110万円)並びにこれらに対する最後の 不法行為の日(平成30年7月18日)から支払済みまで民法(平成29年法 律第44号に 220万円、原告A3につき合計110万円、原告A4につき合計110万円)並びにこれらに対する最後の 不法行為の日(平成30年7月18日)から支払済みまで民法(平成29年法 律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、民法723条に基づく名誉回復請求としてツイッターにおける投稿の削除及び謝罪文の掲載を求める事案である。 1 前提事実(争いがないか、後掲証拠〔特記のない限り、枝番のあるものは枝番を含む。以下同じ。〕及び弁論の全趣旨により認められる事実) ⑴ 当事者等被告による後記発言等がされた頃における各当事者の立場等は、以下のようなものであった。(争いのない事実)ア原告原告A1は、B1大学C1科教授を務めており、専攻は社会学および ジェンダー論であった。 原告A2は、B2大学大学院C2科教授を務めており、専攻は政治学・政治思想及びフェミニズム理論であった。 原告A3は、B3大学C3科教授を務めており、専攻はイタリア語学・文学及びジェンダー論であった。 原告A4は、B4大学C4准教授を務めており、専攻は近現代女性史・ジェンダー論であった。 イ被告被告はD党に所属する衆議院議員であり、D党女性局次長、政務調査会外交部会副部会長を務めるとともに、衆議院内閣委員会、外務委員会、 科学技術・イノベーション推進特別委員会等の委員を務めていた。(争いのない事実、弁論の全趣旨)また、被告は、「E」とのアカウントによりツイッターを利用しており、平成31年2月3日時点で12.9万人のフォロワーがいた。(争いのない事実) ⑵ 科研費について 科学研究費補助金/学術研究助成基金助成金(以下「科研費」という)は、大学等での研究活動 31年2月3日時点で12.9万人のフォロワーがいた。(争いのない事実) ⑵ 科研費について 科学研究費補助金/学術研究助成基金助成金(以下「科研費」という)は、大学等での研究活動に必要な資金を助成する制度ないしは同制度に基づく給付金である。研究者の自由な発想に基づいて行われる「学術研究」を様々な研究活動の基盤と位置付け、人文・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、「学術研究」を幅広く支えることにより、科学の発展に資すること を目的とする。(甲15・本文2頁)科研費は、研究者から応募があった研究計画について、審査により採択を決定し、研究費が助成される点で、「競争的資金制度」の一つとされるところ、政府全体の競争的資金の6割以上を占めており、平成22年度から平成25年度までの予算額は、2000億円を超える規模で推移していた(甲1 5・本文3、4頁)。その予算の基となる原資の殆どは公金に由来する(弁論の全趣旨)。中核となる研究種目は「基盤研究」であり、研究期間や研究費総額によって、S・A・B・Cの4つに区分されるが、このうち基盤研究Bは、3年ないし5年において、500万円ないし2000万円の助成がされる(甲15・本文5頁)。そして、応募に対する審査は、文部科学省の諮 問機関である科学技術・学術審議会が審査についての基本的な考え方を決定し、これを踏まえて、日本学術振興会が、科研費の審査・評価を行う組織として科学研究費委員会を設置して審査方針等を定め、同振興会が設置する学術システム研究センターが選考するなどした審査委員が、分野ごとに委員会に分かれて審査を行う(争いのない事実)。これは、専門分野の近い複数の 研究者によって行われるもの(ピア・レビュー)であるが、基盤研究Bについては、1つの応募につ 審査委員が、分野ごとに委員会に分かれて審査を行う(争いのない事実)。これは、専門分野の近い複数の 研究者によって行われるもの(ピア・レビュー)であるが、基盤研究Bについては、1つの応募について、6人の審査委員が第1段審査(書面審査)を行い、専門分野ごとの小委員会に配置された12ないし28人程度の審査委員が、第1段審査の結果をもとに検討、意見交換を行うものとされる(甲15・本文14頁)。 科研費の適正な使用を確保するため、科研費の管理や諸手続は、研究者自 身が行うのではなく、所属研究機関が行うこととされている(甲15・本文23頁)。 研究成果等は、各研究者によって論文・書籍等の形で公表されるほか、その概要が国立情報学研究所の「科学研究費助成事業データベース(KAKEN)」(以下「科研データベース」という。)を通じて公開されている(争 いのない事実)。 ⑶ 原告らの研究ア概要原告ら外3名は、代表者を原告A1とし、研究課題を「ジェンダー平等社会の実現に資する研究と運動の架橋とネットワーキング」、研究種 目を基盤研究(B)、研究分野・分科を総合人文社会・ジェンダー、研究機関をB1大学、研究期間を平成26年度から平成29年度として、合計1755万円の科研費の支給を受けた(原告らのこの研究を、以下「本件研究」という。)(甲18・1、2頁、19)。本件研究は、目的(概要)を「ジェンダー平等実現のための実践に貢献できる新たなか たち・次元でのジェンダー・フェミニズム研究の構築」とした上で、①ジェンダー規範の構造変換を経た諸外国・地域の女性組織の協力を得て、ネット活用に関する組織運営上の側面といった急激な変化を引き起こした諸要因を調査研究し、②フェミニズム的平等論の精緻化といった文献研究、 ダー規範の構造変換を経た諸外国・地域の女性組織の協力を得て、ネット活用に関する組織運営上の側面といった急激な変化を引き起こした諸要因を調査研究し、②フェミニズム的平等論の精緻化といった文献研究、③ウェブサイト運営のノウハウ等を活用して、女性たちを包摂し 繋ぐ情報発信及びネットワーキングの実践のための方法論を構築する実践活動を明らかにするとして、応募されたものであった(甲18・3、4頁)。また、その成果については、図書「架橋するフェミニズム―歴史・性・暴力」(甲17)といった計67の雑誌論文、学会発表、図書及び学会・シンポジウム開催等であるとして、科研データベースにその 概要が掲載されている(甲19の1・2ないし4頁)。 イ本件研究における取組内容等本件研究における個別の取組には、以下のようなものがあった。 (ア) シンポジウムの開催原告らは、平成28年2月27日、「出会う、つながる、フェミニズム~本当に怒るための私のレシピ~」と題するシンポジウム(以下 「本件シンポジウム」という。)を開催した(争いのない事実)。そのチラシには、主催として「科研費基盤(B)『ジェンダー平等社会の実現に資する研究と運動の架橋とネットワーキング(代表:B1大学原告A1)』、原告A2が2名のコメンテーターのうちの1人であること、登壇者が「F」「G」「H」「I」「J」に所属する者を 含む7名であることに加え、声を上げること、自分の言葉で語ることが、「ジェンダー平等な」社会の実現に取り組んできたフェミニズム運動において、最も大事にされてきたことであるとして、本件シンポジウムでは、「安全保障関連法の制定、沖縄県辺野古米軍基地移設、マイノリティへの差別をはじめとした現代社会の問題」に対して、精 力的に活動している女 事にされてきたことであるとして、本件シンポジウムでは、「安全保障関連法の制定、沖縄県辺野古米軍基地移設、マイノリティへの差別をはじめとした現代社会の問題」に対して、精 力的に活動している女性たちが意見や思いを運動において表現するためにどのような戦略をとっているのかといった「怒り方の多様性」に注目するなどとされていた(乙1)。 (イ) ワークショップの開催原告らは、平成28年12月19日、フェミニズムが1970年代以 来中核的な問題としてきたという女性の性と身体をテーマとして、「私のアソコには呼び名がない」なる名称の「ワークショップ」(以下「本件ワークショップ」という。)を開催した。 (ウ) 論文の発表本件研究の一環として「慰安婦問題」に関する研究が行われ、論文等 が発表された。このうち、原告A1は、英文学術雑誌「Curren tSociology」に「The“ComfortWomen”issueandtheembeddedcultureofsexualviolenceincontemporaryJapan」を、原告A2は、学術論文「日本軍『慰安所』制度はなぜ、軍事的『性奴隷制』であるのか」(以下「原告A2論文」 という。)を執筆し、平成26年10月に公表した。(争いのない事実、甲19の1、23)(エ) 批判に対する反論原告らは、平成30年3月23日、「科研費バッシングに応えて/無料電子書籍『架橋するフェミニズム』刊行しました!」と題する記事 をインターネット上に掲載した。同記事には、本件研究について、同月初旬から、ツイッターを始めとしたSNSで「科研費の不正使用」「無駄遣い」「反日研究」といった不当な攻撃を受けているが、こうした事実はなく、日本政府の「慰安婦 た。同記事には、本件研究について、同月初旬から、ツイッターを始めとしたSNSで「科研費の不正使用」「無駄遣い」「反日研究」といった不当な攻撃を受けているが、こうした事実はなく、日本政府の「慰安婦問題」への対応を批判する論文等を執筆しているのは、国際社会の一員として日本が国際的な人権レ ジーム(政治体制)を積極的に支持する国になってほしいからであること、被告が上記攻撃を扇動していることに加え、「本研究課題の成果の一環として、『慰安婦問題は♯MeTooだ!』と題したショートムービーを製作中です」といった記載があった。(乙2)(オ) 動画等 a 原告らは、助成期間(平成30年3月末まで)の終了後である平成30年5月、「慰安婦問題は♯MeTooだ!~性暴力No!で手をつなごう」と題する動画(以下「本件動画」という。)を制作・公開した(争いのない事実)。本件動画においては、韓国の日本大使館前でのデモの様子、元「慰安婦」の女性の暮らす「K」という施設に おける展示等、L代表のインタビュー、#MeTooデモの様子、M 大学社会学科教授のインタビュー、ソウル市の「少女を記憶する森」のモニュメント等の映像とともに、その解説がされており、最後に「撮影・編集・制作 JSPS科研費基盤(B)『ジェンダー平等社会の実現に資する研究と運動の架橋とネットワーキング』研究グループ」との表示がされている(甲25、29)。 b 原告らは、本件研究の成果の一環として、チュートリアルサイト「ウィメンズ・アクション動画発信ナビ」(以下「本件チュートリアルサイト」という。)を制作し、公開した。(甲19の1・4・5、弁論の全趣旨)⑷ 「慰安婦問題」についての外務審議官の発言等 日本国外務審議官が、平成28年2月16日、国 ートリアルサイト」という。)を制作し、公開した。(甲19の1・4・5、弁論の全趣旨)⑷ 「慰安婦問題」についての外務審議官の発言等 日本国外務審議官が、平成28年2月16日、国連ジュネーブ本部での女子差別撤廃条約第7回及び第8回政府報告審査においてした質疑応答部分の発言概要は、以下のようなものであった(以下「本件見解」という。)(乙5)。 ア日本政府は、1990年代初頭以降、慰安婦問題に関する本格的な事実 調査を行ったが、発見した資料からは軍や官憲によるいわゆる「強制連行」を確認できなかった。 イ 「慰安婦が強制連行された」という見方が流布された原因は、亡吉田清治氏が、昭和58年(1983年)、その書籍の中で、日本軍の命令で大勢の女性狩りをしたという虚偽の事実をねつ造して発表したためである。 この内容は、一つの大手新聞社により報道され、国際社会に大きな影響を与えた。しかし、上記書籍の内容は、後に複数の研究者により想像の産物であることが証明され、上記新聞社も事実関係の誤りを認めて読者に謝罪した。 ウ平成27年12月28日、日本国外務大臣と大韓民国外交部長官との会 談に際して、同外務大臣は、「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多 数の女性の名誉と尊厳を深く傷付けた問題であり、日本政府は責任を痛感している、全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」といった発表をしたが、ここでいう「当時の軍の関与の下に」というのは、慰安所が軍当局の要請で設置され、その設置、管理及び慰安婦の移送につき日本軍の関与があり、慰安婦の募集について、軍の要請を受けた業者が これに当たったという、従来から(日本政府が)認めていることをいうものである。「性奴隷」という表現は、事実に反しており、同会談 き日本軍の関与があり、慰安婦の募集について、軍の要請を受けた業者が これに当たったという、従来から(日本政府が)認めていることをいうものである。「性奴隷」という表現は、事実に反しており、同会談の共同発表の文書の中にも使用されていない。 ⑸ 科研費についての報道及び被告による質疑平成29年12月13日、産経新聞に、「【歴史戦】第19部結託する 反日(中)『徴用工』に注がれる科研費『本人が強制と考えたらそれは強制だ』」と題する記事が掲載された。同記事の内容は、科研データベースに収録された研究記録の一部を挙げ、そのうち一人の研究者が、産経新聞の報道に言及しつつ、「本人が強制と考えたらそれは強制だ」といった言論を行っているとして、同人らの取組を紹介等するものであった。また、同記事にお いては、政府関係者が、科研費の審査体制に言及しつつ、「自然科学分野と違い、歴史学はどうしても思想的な偏りがある」と指摘しているとの記載もあった。(乙3の1)被告は、平成30年2月26日、国会の予算委員会第四分科会(文部科学省所管)において、産経新聞の上記記事を配布した上で、科研費の支出対象 の審査、審査委員の公表等について質疑を行った(乙4)。 ⑹ 被告による発言等被告は、平成30年3月頃から同年6月頃にかけて、以下のような発言等をした(ただし、イないしオ〔エの別表4の番号1を除く。〕については、他の出演者の発言なども含まれているが、被告自身の発言は「被告」、「○ 被告氏」又は「○被告」と表記された部分である。なお、別表4の2の動画 が公開されたのは同年7月である。)。 アツイッターおける、別表1の「日時」欄記載の各日時、「ツイート内容」欄に記載のとおりの投稿(甲1の3ないし14)イ雑誌「月刊 、別表4の2の動画 が公開されたのは同年7月である。)。 アツイッターおける、別表1の「日時」欄記載の各日時、「ツイート内容」欄に記載のとおりの投稿(甲1の3ないし14)イ雑誌「月刊WiLL」(平成30年〔2018年〕6月号、平成30年4月26日発売)の「血税科研費の蜜を吸う反日研究者を許すな」との対 談記事における、別表2の「記事内容」欄に記載のとおりの発言(甲2の1・2)ウインターネットテレビ番組であり、動画投稿サービスであるYoutube(以下「Youtube」という。)でもライブ配信されていた「言論テレビ」(Nが開設し、言論テレビ株式会社が企画・運営する。各放送 回について、その公開日は別表3の「公開日」欄に、そのタイトルは同表の「番組名」欄に各記載のとおりである。)における、別表3の「発言内容」欄に記載のとおりの発言(ただし、<>内の記載は除く。)(甲3、4の1ないし3、5の4ないし6、6の2ないし4、弁論の全趣旨)エ YouTube及び動画投稿サービス「ニコニコ動画」でも配信される インターネット政治経済専門チャンネル「チャンネルAJER」(有限会社マクシスワン/channelAJERがサービス提供事業者となっている。各放送回について、その公開日は別表4の「公開日」欄に、そのタイトルは同表の「番組名」欄に各記載のとおりである。)における、別表4の「発言内容」欄に記載のとおりの発言(ただし、()内の記載は除 く。)(甲3、甲4の4・5、8の3、9の2、10の2・3)オ YouTubeのチャンネル「文化人放送局」(株式会社文化人放送局が運営する。各放送回について、その公開日は別表5の「公開日」欄に、そのタイトルは同表の「番組名」欄に各記載のとおりである。)における、別表5の「発 チャンネル「文化人放送局」(株式会社文化人放送局が運営する。各放送回について、その公開日は別表5の「公開日」欄に、そのタイトルは同表の「番組名」欄に各記載のとおりである。)における、別表5の「発言内容」欄に記載のとおりの発言(ただし、()内の記載は 除く。)(甲3、4の6・7、14、12の2) 2 争点⑴ 被告の発言等についての名誉毀損等の成否(争点1)⑵ 被告の発言等による損害の発生及び額(争点2)⑶ ツイッターにおける投稿の削除と謝罪の掲載の要否(争点3) 3 争点に関する当事者の主張の概要 ⑴ 争点1(被告の発言等についての名誉毀損等の成否)(原告らの主張)ア被告は、本件研究について、企画されたシンポジウム等がフェミニズム研究として学術目的をもってされたものであることが明らかであるにもかかわらず、ねつ造である、研究費を流用している、嘲笑すべき内容である など、事実に反し、又は自らの無理解に基づいた非難をし、原告らの研究者としての社会的評価を低下させたり、名誉感情を害したりした。被告による発言等が不法行為に当たることは別表1ないし5の各「評価」欄に記載のとおりであり、その概要は、次のとおりである。 (ア) 科研費を不正に使用したなどと疑わせる内容の発言として、①本件シ ンポジウムについて、フェミニズムとは関係ない活動家支援に科研費を流用しているというもの(別表1、別表2、別表3番号2、別表5番号1)、②「慰安婦問題は♯MeTooだ!」の動画について、助成期間終了後に科研費を使って製作公開し、これが問題であるというもの(別表3番号2及び3)、③原告A1による英論文について、提 供を有償とする公開方法が不当であるかのようにいうもの(別表3番号1)、④原告 科研費を使って製作公開し、これが問題であるというもの(別表3番号2及び3)、③原告A1による英論文について、提 供を有償とする公開方法が不当であるかのようにいうもの(別表3番号1)、④原告A2論文について、科研費を使った研究成果であるのに原稿料や印税を不当に得ているかのようにいうもの(別表4番号2)、⑤科研費を不当に獲得しているかのようにいうもの(別表5番号2) (イ) 科研費による研究内容についての誹謗といえる発言として、⑥「慰安 婦問題」の研究に対して、「ねつ造はダメです。慰安婦問題は女性の人権問題ではありません。」「『慰安婦は強姦された』これはねつ造です。」などと事実に反する決めつけを行い、原告らの研究もねつ造であるとするもの(別表1)、⑦うそや事実に反することを世界に発信して、日本の国益を損なうという意味で「反日」研究であるとする もの、⑧研究成果のごく一部を取り上げて、1755万円の科研費を使っているとし、研究を矮小化するもの(別表5番号1)、⑨本件ワークショップについて、フェミニズム理論の歴史と実践に無理解で、口に出すことがはばかられる、「放送禁止用語を連発」しているなどとして、恥ずかしいものであると嘲笑するもの(別表3番号1、別表 4番号2)、⑩原告A2論文について、論証もせず結論ありきであって、研究者としての資質に欠けているかのようにいうもの(別表3番号3、別表4番号2)イ別表3ないし5記載の発言は、動画においてされたものであるから、発言内容のみならず画面上の字幕(テロップ)やスライドなどの文字情報が、 その表示方法も含めて事実摘示の内容となり(確かに、被告自身が字幕を付すなどしたのではないかもしれないが、映像や音声の切り貼りは一切なく、字幕は発言内容をほぼなぞったもの などの文字情報が、 その表示方法も含めて事実摘示の内容となり(確かに、被告自身が字幕を付すなどしたのではないかもしれないが、映像や音声の切り貼りは一切なく、字幕は発言内容をほぼなぞったものであるし、被告はこれに同意していたと解される。)、これに加えて、しぐさ、表情、目配せ、笑い声等や全体から受ける印象等も総合的に考慮されるべきである(最高裁判所平成 14年(受)第846号同15年10月16日第一小法廷判決・民集57巻9号1075頁参照)。また、ツイッターにおける被告の投稿をどのような意味のものとして捉えたかは、投稿を閲覧等した者らの返信(リプライ)内容からも明確である。 また、被告によるツイッターへの投稿等についての社会心理学者の分析 (甲34)によれば、被告は、もともと有していたフェミニズムへの敵愾 心と政治的宣伝の目的により、「反日プロパガンダ」との戦争として、読者に対して原告らの研究へ罵倒を集中させるように呼び掛けたといえるから、行為態様としても悪質である。 ウ被告の発言等において、原告A3と原告A4の氏名自体は出ていない。 しかし、被告は、一連の発言の中で「ジェンダー平等社会の実現に資する 研究と運動の架橋とネットワーキング」という原告らの研究題目に繰り返し言及し、インターネット上で科研費に関する検索を行うことを読者に繰り返し勧めており、インターネットで上記研究題目によって検索をすれば、すぐに本件研究が表示され、原告A3及び原告A4の氏名が表示される。 したがって、本件研究の名称に言及がされていれば、原告A3及び原告A 4の研究であることは特定されているというべきである。 (被告の主張)ア被告は、衆議院議員であるから、国会において、行政権に対する監視権の一環として、予算が適正に 、原告A3及び原告A 4の研究であることは特定されているというべきである。 (被告の主張)ア被告は、衆議院議員であるから、国会において、行政権に対する監視権の一環として、予算が適正に使われているか否かについて疑義を呈する権限を有し、国会での質疑に付随する講演・執筆・インターネット番組出演 等や、SNS等を通じた質疑内容の広報、それらに寄せられた質問等に回答することも、国会議員としての職務に付随する関連行為である(なお、国会における質疑等でした発言が違法となることはない〔最高裁判所平成6年(オ)第1287号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3850頁〕)。被告は、税金を原資とする科研費については、助成を受 ける研究が透明性をもって疑念を抱かれないものであるべきだと考えており、必要であれば法改正や制度改正の提議をすることは、衆議院議員として行ってしかるべき職務であると考えている。そして、国会質疑や職務に付随する関連行為を通じて、国民の反応を政策立案の参考にすることもあるが、あくまで科研費の使途の適切性の観点から問題提起をしているにす ぎず、疑義を呈しているのは科研費の制度であって、特定の研究者ではな いのであるから、被告の発言等は原告らに対する名誉毀損とはならない。 この点を措くとしても、被告は、原告A3及び原告A4について、一切言及していないから、同人らに対する名誉毀損が成立する余地はない。 個別の被告の発言等に対する反論は、後記イ(ア)ないし(オ)のとおりであるが、そもそも、学術研究の進歩発展の観点からすれば、研究者は自 らの研究成果につき批判を含めた様々な意見を甘受すべき立場にある上、原告らは、科研費という公金をもって調査研究をしているのであるから、その成果物についてはもちろん、 観点からすれば、研究者は自 らの研究成果につき批判を含めた様々な意見を甘受すべき立場にある上、原告らは、科研費という公金をもって調査研究をしているのであるから、その成果物についてはもちろん、科研費の使途についても第三者から批判等を受ける立場にある。このことは科研費に関するパンフレット(甲15・本文22頁)にも記載されている。なお、原告らはツイッターの 読者のうち一部の者の反応を考慮して摘示内容を判断すべきであると主張するが、読者の反応には、原告らが指摘するものに限られず、被告が科研費の使途の適切性の観点から問題提起をしたものと受け取った上で意見を述べる者もあるし、元となる被告の投稿に対するものにも限られず、これをきっかけとして自身の見解を述べるというものもあり、中に は元となるツイートと関連しない事項が含まれるものもあるから、原告らが主張する一部読者の反応が被告による事実摘示がいかなるものであったかを明らかにするものとはいえない。 以上によれば、被告の発言等によって、原告らの社会的評価が低下したということはできない。 イ個別の発言等に関する原告らの主張に対する被告の反論(ア) 別表1番号1は、原告A1が「科研費バッシングに応えて」という題でインターネット上で公表した記事(前提事実⑶イ(エ))を取り上げて、当該反論の中に、研究成果の一環として本件動画が制作中であるとの記 載があるという事実を摘示したものである。これに対し、番号2は、 科研費使途の適切性について問題提起するものであり、意見ないし論評である。 番号3は、「Oや安保や基地反対運動をしている活動家」が登壇する本件シンポジウムが開催され、主催として科研費1755万円の支給を受ける原告A1の研究が記載されているとの事 見ないし論評である。 番号3は、「Oや安保や基地反対運動をしている活動家」が登壇する本件シンポジウムが開催され、主催として科研費1755万円の支給を受ける原告A1の研究が記載されているとの事実を摘示するもの である。なお、摘示された事実(科研費を使用してシンポジウムを開催したという事実等)は真実である(甲19の1・3・5の各「研究実績の概要」、乙1)。 番号4は、本件ワークショップに科研費が使用されているという事実の摘示であるが、番号5は、科研費使途の適切性について問題提起 するものであり、意見ないし論評である。 番号6は、全体の文脈としては動画に対する感想を述べた上で、科研費の使途の適切性の観点から問題提起をしているにすぎない。 番号7は、原告らの論文の中で、慰安婦問題について強制連行や性奴隷を前提とするような記載があり、政府見解と異なることから、科 研費の使途の適切性の観点から問題提起をしているにすぎない。「ねつ造はダメです」「我々の税金を反日活動に使われることに納得いかない」というのは、あくまで一般論であり、原告らを特定した上での発言ではない。 番号8及び9は、原告A1の問いに対し、一般論として慰安婦問題 に対する政府見解を述べたにすぎず、「事実に反すればねつ造です」という表現も一般論を述べたものであるから、原告らを特定した上での発言ではない。「この問題を♯MeTooと言っている時点でねつ造です」というのは、慰安婦問題について、強制連行を確認できる証拠はなく、性奴隷といった表現が事実に反することや、性暴力被害の 問題ではないといった意見ないし論評である。なお、ここでいう「ね つ造」とは政府見解に反するという意味であるから、原告らの研究内容に対する言及であったとしても、真実 とや、性暴力被害の 問題ではないといった意見ないし論評である。なお、ここでいう「ね つ造」とは政府見解に反するという意味であるから、原告らの研究内容に対する言及であったとしても、真実性の証明は十分である。 番号10は、単なる問いかけにすぎない。事実の摘示でも意見・論評でもない。 番号11及び12は、動画に対する感想を述べつつ、科研費の使途 の適切性の観点から問題提起をしているにすぎず、意見ないし論評である。 (イ) 別表2番号1は、原告A1が本件動画やサイトを作成したこと、科研費を受給していること、本件動画の視聴回数が数回程度であるとの事実を摘 示するものである。仮に、これが原告らの社会的評価を下げるものであるとしても、摘示された事実は真実であり、また、意見ないし論評に当たる部分についても人身攻撃に及ぶものではないから、違法性を欠く。 番号2は、本件シンポジウムのチラシには、「本シンポジウムでは、 安全保障関連法の制定、沖縄県辺野古米軍基地移設、マイノリティヘの差別をはじめとした現代社会の問題に対して、精力的に活動されている女性たち」との記載があり、当該チラシには登壇者として「G」や「H」が登壇する旨の記載があるとの事実を摘示したものである。 被告は、本件シンポジウムとフェミニズムとが無関係であるとか、活 動であるとの評価をしていない。 番号3は、Pについての発言は事実の摘示であるが、その余は、意見ないし論評である。なお、被告の「まさにその通りだと思います」との発言は、科研費の透明化に関するQの発言の直後にされたものであり、これも科研費の使途の適切性に関する意見ないし論評である。 (ウ) 別表3 番号1の1は、本件ワークショップに科研費が使用されている事実を指 るQの発言の直後にされたものであり、これも科研費の使途の適切性に関する意見ないし論評である。 (ウ) 別表3 番号1の1は、本件ワークショップに科研費が使用されている事実を指摘するにすぎない。被告は本件ワークショップのタイトルを述べるにあたって、女性器名称であるがゆえに多少の抵抗感を感じてはいるが、原告らも女性器名称を口にすることがタブー視されていることが一般的であるとしているから、被告の言動は、原告らにおいて想定で きるものであり、社会通念に照らせば十分に許容される範囲内のものである上、原告らの主張するように「女性器名称は卑猥であり、研究対象とはなり得ず研究に用いられない言葉であるという前提」の発言ではない。 番号1の2は、原告らが作成した「ウィメンズ・アクション動画発信 ナビ」の再生回数を指摘するにすぎず、嘲笑するものではない。 番号1の3は、原告らが科研費を使用した研究成果である論文をインターネットにて有料で開示しているという事実を指摘した上で、科研費を用いた研究成果について、国民がどのようにアクセスできるようにすべきかについて問題提起をしているにすぎない。 番号2の1は、前後の文脈を踏まえれば、本件ワークショップという科研費による成果物に関するやり取りの一環である。イベントのタイトルに関し、女性器名称であるが故に多少抵抗感を感じる旨を表してはいるが、原告らにおいても想定できるものであり、社会通念に照らせば十分に許容される範囲内での言動であって、侮辱に当たらない。 番号2の2は、原告らが科研費を使用して本件シンポジウムを開催したという事実は指摘し、これを前提として、科研費の使途の適切性の観点から問題提起をしているにすぎない。被告の「反政府」との発言は、日本政府の方針に反対 告らが科研費を使用して本件シンポジウムを開催したという事実は指摘し、これを前提として、科研費の使途の適切性の観点から問題提起をしているにすぎない。被告の「反政府」との発言は、日本政府の方針に反対する活動を行っている者らのことを指し、その者らが登壇者ないしパネリスト(以下「登壇者」という。)とさ れたとの事実を摘示した上で、論評を加えたものに過ぎない。「政治 活動」との発言は、調査研究というよりも政治的事柄をテーマとした活動と評価し得る余地は多分にあるというシンポジウムの内容を表現しているにすぎない。科研費と政治活動の関係については、これを遮断すべきとの見解もあるところである。なお、字幕を付したのは被告ではない。 番号2の3は、助成期間終了間際に至っているにもかかわらず、原告らが、成果の一環として本件動画を制作中であると表明した点を捉えて、助成期間中に発表すべきではないかという問題提起をし、助成期間中に研究成果が発表されなくても不正とも不当とも評価されない科研費制度上の問題を指摘するものである。 番号3の1は、原告らのいうような発言ではない。原告らが指摘する部分に先立って、会計検査院等が研究内容に踏み込まないことを指摘しているという文脈からすれば、被告は、国民の判断により国益に資する研究に科研費を使うべきとの立場に立って、科研による研究を取り上げて意見表明をしているのである。 番号3の2は、前半については、番号2の3と同じことがいえるし、後半部分は、大学の回答と原告らの説明とが齟齬している点について問題提起するものである。 番号3の3は、原告A2論文について、政府見解を前提としつつ、被告なりの解釈を加えて、同論文及び科研費の使途の適切性に関して意 見ないし論評をしたものである。論文に 問題提起するものである。 番号3の3は、原告A2論文について、政府見解を前提としつつ、被告なりの解釈を加えて、同論文及び科研費の使途の適切性に関して意 見ないし論評をしたものである。論文に対する「結論ありき」といった評価は解釈・論評であることは明白であり、慰安所が規律正しく運営されていたことは性奴隷制を否定する有力な根拠となり得るのに、原告A2がこれをむしろ性奴隷制であったことの根拠としていることが不合理であるというものであって、人身攻撃に及ぶものでもない。 番号3の4は、本件動画の制作について、科研費が使用されている という事実と、B1大学関係者は動画に科研費が使用されたことを認めていないとの事実を指摘した上で、発言の全体としては、科研費を用いた研究成果は、定められた助成期間中に発表されるべきではないかと問題提起し、助成期間中に研究成果が発表されなくても不正とも不当とも評価されない科研費制度上の問題を指摘しているのである。 また、原告A1の教授としての立場に疑問を抱くとのNの発言は、原告らによる動画制作の位置付けを指摘した上で、科研費を使用したとの動画等における記載を疑って科研費の使用を否定することは研究や教授としての立場に疑問を抱くことと同じである旨指摘するにすぎず、これに被告が相づちを打ったことも、社会通念上許容される範囲のも のである。 番号3の5については、番号3の3と同じことがいえる。 番号3の6は、原告A1の論文に科研費が使用されていることを事実として指摘はしているものの、全体としては、同論文について被告なりの解釈を加えるとともに、国益に資する研究に科研費を使うべき であるとの立場に立って、科研費を使用すべきでないと被告が考える研究を取り上げて意見を表明しているにすぎな 、同論文について被告なりの解釈を加えるとともに、国益に資する研究に科研費を使うべき であるとの立場に立って、科研費を使用すべきでないと被告が考える研究を取り上げて意見を表明しているにすぎない。 (エ) 別表4番号1の1は、科研費を受給している研究者とその受給額という事実は摘示しているものの、原告らが主張するような事実は一切摘示して いない。なお、被告は、動画の冒頭において、会計検査院が学問の内容は判断できないと述べ、検査すべき「不正」には当たらないと認識していることを伝えているし、同日に公開された動画において、反日の教授に流れるからだめだということではなくて、国益に資するかどうかは税金を支払っている国民だと思うと発言している(別表3番号 3の1)。 番号2の1のうち、本件シンポジウムに関する部分については、別表3番号1の1と同じことがいえる。また、原告A2論文に関する部分については、別表2番号3と同じことがいえるが、歴史認識に関わる話は、結論ありきかなというのが印象としては否めないとのRの発言を受けて、論文について批評的に講評した上で、これに科研費を支給 することについて、使途の適切性の観点から問題提起をしているにすぎない。さらに、原稿料等についての言及は、原告らがいうような前提は読み取れないし、科研費を用いた研究成果から生じた原稿料や印税の帰属をどのように考えるかについての問題提起をするものである。 (オ) 別表5 番号1の1は、本件チュートリアルサイトが科研費で制作されたという事実を摘示しているものの、動画に字幕を付したのは被告ではないから、無料でも制作できる内容にもかかわらず、1755万円もかけて制作しているとの事実を摘示したとはいえない。被告は、「こんなのにそんな 事実を摘示しているものの、動画に字幕を付したのは被告ではないから、無料でも制作できる内容にもかかわらず、1755万円もかけて制作しているとの事実を摘示したとはいえない。被告は、「こんなのにそんなお金かかるはずないでしょうっていうようなのが上がって いて」とは発言しているものの、原告らによる科研費の使途について、適切性の観点から問題提起をしているにすぎない。 番号1の2は、原告らが科研費を使用して本件シンポジウムを開催したという事実は摘示しているものの、全体としては、科研費の使途の適切性の観点から問題提起をしているにすぎない。字幕を付したのは 被告ではないし、会計検査院からは不正や不当とはみなされていないことを前提としつつも、対談相手であるTによる税金を反日的活動に使われたらおかしいとの発言や、Uによる文科省はだめといわなければならないといった発言に対応して、科研費は納税者たる国民に疑念が持たれない形で支給されるべきであるとの立場から、科研費制度に ついての問題を指摘する趣旨である。 番号2の1は、科研費により本件チュートリアルサイトが制作されたり、本件シンポジウムが開催されたりしたという事実は摘示しているものの、動画に字幕を付したのは被告ではなく、原告らが研究名目で政治活動をしているという内容を事実として摘示などしていない。原告らによる科研費の使途について、研究と政治活動の関わりなどの観 点や、税金を原資とする科研費は納税者たる国民に疑念が持たれない形で支給されるべきであるとの立場から、問題提起をしているにすぎない。 番号2の2は、原告A1及び原告A2については受給額の多寡に関する言及はしていないから、原告らがいうような印象を与えるものでは ない。被告は、Vの理事長経験者に対する支給額を述 すぎない。 番号2の2は、原告A1及び原告A2については受給額の多寡に関する言及はしていないから、原告らがいうような印象を与えるものでは ない。被告は、Vの理事長経験者に対する支給額を述べつつも、納税者に考えてもらいたいと前置きした上で、クラウドファンディングのような形というUの提案や、iPS細胞の研究にもっと支出すべきとのTの提案に賛同しつつ、科研費の制度について、広く国民によるチェックが可能となるような制度を構築すべきであるとの問題提起をし ているにすぎない。 番号2の3は、字幕を付したのは被告ではなく、被告は、動画作成は学術ではなく政治活動ではないとか、これに科研費が使用されているという内容は摘示していない。被告は、慰安婦問題等を扱ってもよく、調査の結果新たな資料が発見されたのであれば研究の価値がある が、結論ありきは研究ではないと述べた上で、Uによる政治的主張との発言を受けて、支出がおかしいと発言した上で、税金を原資とする科研費は納税者たる国民に疑念が持たれない形で支給されるべきとの立場から、原告らの論文に対する批評的な講評を行いながら、科研費の使途の適切性に関する問題提起をしているにすぎない。 ウ仮に、これらの発言等が原告らの人格的価値に対する社会的評価を低下 させるものであるとしても、科研費の使途という公共の利害に関する事実にかかり、かつ、その目的が専ら公益を図るものであり、その摘示された事実(科研費を使用して本件動画を作成し、イベントを開催したという事実)は真実であることは明らかであるし(甲19の1・3・5、乙1)、また、意見ないし論評にわたる部分についても人身攻撃に及ぶなど意見な いし論評としての域を逸脱したものでないことも明らかであるから、違法性を欠くというべきであ るし(甲19の1・3・5、乙1)、また、意見ないし論評にわたる部分についても人身攻撃に及ぶなど意見な いし論評としての域を逸脱したものでないことも明らかであるから、違法性を欠くというべきである。 ⑵ 争点2(損害の発生及び額)(原告らの主張)原告らは、学問の自由の主体である一方で、その研究成果を学術たらしめ るために追試・検証可能性の確保が求められ、事実に基づかない記述・論述を行えば、「ねつ造」「改ざん」といった重大な研究倫理違反となるし、研究費が公費又は特定の目的のため支給されたものであれば、その使途について高い公正性が求められ、目的外使用は研究不正となる。研究者は、職業倫理としての学術研究倫理の下にあり、これを遵守しているとの社会的信用を、 活動及び職業身分の基礎としているから、研究不正の言明がその社会的評価を低下させる蓋然性は明らかである上、こうした言明によって学術言論への参加資格をはく奪されることとなりかねない。表現の自由は、批判的見解及び見解の相違を許容するものではあるが、言論空間からの排除を容易に認めてはならず、「ねつ造」や費用支出に関わる不正といった排除に属する言論 は、個人攻撃、強度の人身攻撃というべきであるし、原告らに深刻な打撃を与えるものである。 ねつ造や科研費の流用をしているなどと非難することは、研究者としての存在意義を否定するものであるから、原告らは多大な精神的苦痛を被った。 したがって、原告らが有する慰謝料請求権の金額は、各自100万円を下ら ない。 また、原告A2は名指しをされたから(別表3ないし5)、上記に加え、慰謝料請求権の金額は100万円(計200万円)を下らない。さらに、原告A1は、名指しされた上(別表1ないし5)、被告の投稿(ツイート」に対応し は名指しをされたから(別表3ないし5)、上記に加え、慰謝料請求権の金額は100万円(計200万円)を下らない。さらに、原告A1は、名指しされた上(別表1ないし5)、被告の投稿(ツイート」に対応した読者からの投稿(リツイート」による罵詈雑言を受け、勤務先大学に研究費不正を疑う取材やクレームを受けるなどしたから、その精神的打撃 は甚大であり、その慰謝料請求権の金額は、上記に加え、500万円(計600万円)を下らない。 加えて、弁護士費用として、慰謝料額の1割が相当因果関係にある損害であり、その損害額は、原告A1につき60万円、原告A2につき20万円、原告A3及び原告A4につき各10万円である。 したがって、各人の損害の合計額は、原告A1につき660万円、原告A2につき220万円、原告A3につき110万円、原告A4につき110万円となる。 (被告の主張)否認ないし争う。 ⑶ 争点3(ツイッターにおける投稿の削除と謝罪の掲載の要否)(原告らの主張)被告による別表1記載の投稿(ツイート)は、現在もそのまま残存しており、原告らの名誉は侵害され続けている。また、被告の投稿(ツイート)には、相当多数の返信等がされ、被告が発言をした動画は、現在もインターネ ット上で視聴可能な状態にあり、原告らの名誉は、これらによっても侵害され続けている。したがって、原告らの名誉を回復するためには、被告に別表1記載の投稿を削除させるとともに、別紙ツイート目録記載の固定ツイートをさせる必要がある。 (被告の主張) 否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 ある表現が名誉毀損に当たるかどうかは、一般読者(動画の場合は一般視聴者)の普通の注意と読み方とを基準として、社会的評価 ) 否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 ある表現が名誉毀損に当たるかどうかは、一般読者(動画の場合は一般視聴者)の普通の注意と読み方とを基準として、社会的評価を低下させるものか否かによって判断すべきである(最高裁判所昭和29年(オ)第634号同31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照)。 また、問題とされる表現が、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものであれば、事実を摘示するものであるか、又は意見ないし論評を表明するものであるかを問わず、不法行為が成立し得るといえる。他方、事実摘示であるか、意見・論評の表明であるかを問わず、名誉毀損は成立し得るが、いずれであるかにより不法行為の成立 要件が異なるところ、両者の区別は、一般読者の普通の注意と読み方とを基準として見れば、直接的に、あるいは、前後の文脈等や、公表当時に読者が有していた知識ないし経験等にも照らして、間接的、えん曲、黙示的に、証拠等をもってその存否を決することが可能な事項を主張していると解されるのであれば、事実を摘示するものと見るのが相当である。そして、公益事項にかかり、 専ら公益を図る目的に出た表現は、事実摘示であれば摘示事実が真実であると証明されたときに、意見・論評であればその前提となる事実が重要な部分について真実であるとの証明があり、人身攻撃に及ぶなど論評等の域を逸脱したものではないときに、それぞれ違法性を欠くというべきである(最高裁判所昭和37年(オ)第815号同41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号 1118頁、最高裁判所平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁参照)。 2 被告の発言等に 815号同41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号 1118頁、最高裁判所平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁参照)。 2 被告の発言等による名誉毀損等の成否⑴ 別表1についてア前提事実及び証拠(甲1の1ないし14、乙5)によれば、次の事実 が認められる。 (ア) 番号1ないし12の各投稿は、いずれもツイッターの被告のアカウントにおいてされたものである。 (イ) 番号2の投稿は、平成30年3月26日午後4時14分にされた番号1の投稿を引用しつつ、その1分後である同日午後4時15分にされたものである。(甲1の3・4) (ウ) 番号3の投稿は、同月29日にされたものであり、同投稿の下には、本件シンポジウムのチラシの画像が掲載され、同チラシのうち、主催者の部分、「本シンポジウムでは、安全保障関連法の制定、沖縄県辺野古米軍基地移設、マイノリティヘの差別をはじめとした現代社会の問題に対して、精力的に活動されている女性たち」との部分、登壇者のうち 「G」及び「W」に所属する者、コメンテーターのうち原告A2の部分に枠や下線が付されていた。(甲1の5。乙1と細部に違いはあるが、記載内容は同じである。)(エ) 番号4及び5の投稿は、同年4月11日午前8時16分に連続してされたものである。番号4の投稿の下には、原告A1の活動を報道する毎 日新聞からの引用として、「新世代によるフェミニズム他の社会運動と連帯探る」との題のシンポジウムを撮影した写真が掲載されている。 (甲1の6、7)(オ) 番号6の投稿は、同日午後4時29分にされており、Youtube上で公開された本件ワークショップのURLが記載されている。(甲1 の8 た写真が掲載されている。 (甲1の6、7)(オ) 番号6の投稿は、同日午後4時29分にされており、Youtube上で公開された本件ワークショップのURLが記載されている。(甲1 の8)(カ) 番号7の投稿は、同日午後11時7分に、原告A1が被告の投稿に対してした次のとおりの投稿(「ねつ造はダメです。慰安婦問題は女性の人権問題ではありません。」などと記載した番号7の投稿の下に表示されている。)に対してされたものである。(甲1の9) 「『「慰安婦問題は#MeTooだ!』、いま制作中の動画なんです けど?論文じゃないですよ?毎日記事にも動画の事は書いてないですよ? 国会議員が学問の自由(憲法23条)に違反して個人攻撃するのも驚きですがその上、誤情報とは。事前に動画の宣伝してくれてありがたいですが。まもなく完成、公開します」 (キ) 番号8及び9の投稿は、同月12日午前7時6分、同投稿の下に表示された原告A1の次のとおりの投稿に対応して、連続してされたものである。また、慰安婦の強制連行の証拠はなく、慰安婦の強姦はねつ造であるなどとの記載をした番号8の投稿の末尾には、慰安婦問題に関する本件見解等をまとめた報告書(女子差別撤廃条約第7回及び第8回政府 報告審査)を掲示した外務省のホームページの該当URLが引用されている。(甲1の10、11)「何が「捏造」なんですか?示していただかないと、国会議員にあるまじき単なる誹謗中傷です。 慰安婦問題が女性の人権問題であるというのは、国連でも議論され ています。それが不満なら、女性差別撤廃条約からの離脱を提言されたらどうですか?あなた方のほうが、日本の国際的評価を下げています。」(ク) 番号10の投稿は、同月1 でも議論され ています。それが不満なら、女性差別撤廃条約からの離脱を提言されたらどうですか?あなた方のほうが、日本の国際的評価を下げています。」(ク) 番号10の投稿は、同月14日午前10時45分、同投稿の下に表示された原告A1の次のとおりの投稿に対してされたものである。(甲1 の12)「私が被告に噛み付いている?突然インネンつけられたのは私のほうですが。国会議員が、あれほど不勉強の上に、個人攻撃してくるんですから、対応せざるを得ないんです。これも、この勢力お得意の歴史の捏造プチ版ですね。」 (ケ) 番号11の投稿は、同年5月7日午前9時40分に、同投稿の下には、 次のとおりの原告A1の2つの投稿に対応してされたものである。(甲1の13)「「『慰安婦』問題は#MeTooだ!」ムービーできました! movie-tutorial.info/2018/05/02/%E6…このムービーは、同ナビサイトで動画で解説しているレッスン手順 にしたがって、簡単な機材と無料ソフトで制作しています。あなたもムービーを作って発信してみませんか?」「『「慰安婦」問題は#MeTooだ!』ムービーできました!。世界的に、そして今日本でも盛り上がりを見せている#MeToo運動。 元「慰安婦」女性たちは、長い沈黙を破って性的尊厳の侵害にNo! と声を上げた、私たちの先達です。」(コ) 番号12の投稿は、同日午前9時46分に、番号11の投稿を引用してされたものであり、同投稿の下には、番号11の投稿が、上記(ケ)記載の原告A1の各投稿とともに表示されている。(甲1の14)イ番号1及び2 以下、各投稿による名誉毀損 引用してされたものであり、同投稿の下には、番号11の投稿が、上記(ケ)記載の原告A1の各投稿とともに表示されている。(甲1の14)イ番号1及び2 以下、各投稿による名誉毀損等の成否について検討する。 別表1番号1及び2については、同一の媒体(ツイッター)に時間的にも内容的にも連続してされたものとして捉らえることができ、一体のものとして評価するのが相当である。 原告らは、これらの投稿について、本件動画に科研費が使われており、 問題であるとの事実が摘示され、不正に科研費が支出されているとの印象を与えると主張する。 しかし、被告による投稿は、科研費の問題につき原告A1が「科研費バッシングに応えて」という題名で反論をしていること、研究課題の成果の一環として「慰安婦問題は#MeTooだ!」というショートムー ビー(本件動画)を作成していると述べていることを指摘した上で、そ のようなショートムービーを作成する研究に科研費を支給することについて批判的な意見を述べるものと認められる。一般読者の普通の注意と読み方を基準として、原告らの研究や本件動画の作成につき何らかの不正があるとの指摘をするものと読むことはできず、そのような印象をもたらすものとも認め難い。 したがって、番号1及び2の投稿は、原告らの人格的価値に対する社会的評価を低下させるものとは認められない。 ウ番号3原告らは、別表1番号3について、原告らが活動家を登壇者として招き、フェミニズム研究とは無関係なイベントを開催するために科研費を 支出しており、その研究に1755万円が支給されているという事実が摘示され、原告らがフェミニズム研究ではなく活動家に対して科研費を支出しているとの印象を与えると主張する。 別表1番号3の投稿 支出しており、その研究に1755万円が支給されているという事実が摘示され、原告らがフェミニズム研究ではなく活動家に対して科研費を支出しているとの印象を与えると主張する。 別表1番号3の投稿は、①本件シンポジウムを指して、科研費がそのようなイベントを開催する資金となっていること、②フェミニズムのイ ベントであるのにO等の活動家を登壇者として招いていること、③原告A1の研究に科研費として1755万円が支給されていることを指摘するものと認められる。これらの投稿内容のうち、本件シンポジウムの登壇者には、デモなどの政治的運動に参加する者らが複数含まれ(甲26・3ないし45頁)、原告A2はこれらの者の参加について「活動家 枠」とも述べており(甲26・46頁)、これらの社会活動を行う者らに対して科研費をもとに謝金が支払われたこと(原告A1本人24、33頁。ただし、大学の会計を通して支払われた。)が認められるから、これらの部分については真実と認められる。また、一般読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、上記投稿は、本件シンポジウム自体がフェ ミニズムとは無関係なイベントであるとまでいうものとは解されないし、 原告A1の研究が本件シンポジウムの開催のみであるというものとも解されない。被告は、本件シンポジウムとフェミニズムとの関連性について否定的な記載をした投稿をしたものと認められるが、フェミニズムとマイノリティ(政治的色彩の強いものを含む。)との関係も含め、フェミニズムというもの自体の意味(外延)が一義的ではなく、フェミニズ ムに関連した研究(科研費の支給を受けて行うもの)においてシンポジウムを開催するに際して登壇者を誰とするのが相当かの評価も、絶対的なものではなく、研究内容や手法等により相対的なものであると考え ムに関連した研究(科研費の支給を受けて行うもの)においてシンポジウムを開催するに際して登壇者を誰とするのが相当かの評価も、絶対的なものではなく、研究内容や手法等により相対的なものであると考えられ、被告はその点に関して批判する意見を述べたにすぎないと認められるから、本件シンポジウム又はその開催を研究内容の一部とする本件研 究に対しての意見ないし批評にすぎないと認められる。なお、社会活動を行う者をシンポジウムの登壇者として招くこと及びこれに謝金を支払ったとの事実を指摘することのみでは、原告らの人格的価値に対する社会的評価を低下させるものではなく、その他上記投稿は原告らの人格的価値に対する社会的評価を低下させるものともいえない。 エ番号4及び5別表1番号4及び5は、同一の媒体にされ、時間的にも内容にも連続したものとしてとらえることができるから、一体のものとして評価するのが相当である。これらの投稿について、原告らは、原告らの研究がフェミニズムという名目で、これとは無関係のイベントを行い、活動家支 援のために科研費を支出しているとの事実が摘示され、研究に使われるべき科研費を活動家支援に不正に使用しているとの印象を与えると主張する。 上記各投稿は、原告A1の活動を取り上げた毎日新聞の記事を指摘した上で、「フェミニズムとは関係のないヘイトスピーチや民族差別を無 理やりこじつけてイベントを開いて」いること、それが「これはもう、 『研究』ではなく『活動家支援』」であり、「科研費のあり方が問われて」いるなどと指摘するものであるが、一般読者の普通の注意と読み方とを基準とすれば、ヘイトスピーチや民族差別の問題がフェミニズムと関連するものではなく、本件シンポジウムにはそのような活動家が参加しており、科研費の 摘するものであるが、一般読者の普通の注意と読み方とを基準とすれば、ヘイトスピーチや民族差別の問題がフェミニズムと関連するものではなく、本件シンポジウムにはそのような活動家が参加しており、科研費の使用される研究が活動家を支援するものとなってい るとして、批判的な意見を述べるものと解される。しかし、フェミニズムというものの意味自体が一義的ではなく、本件シンポジウムの登壇者を誰とするのが相当かの評価も相対的なものであると考えられることは上記ウのとおりであって、被告はそれらの点について批判する意見を述べたものにすぎないと認められる。そうすると、被告の上記投稿は、本 件シンポジウム又はこれを研究成果の一つとする本件研究に対しての意見ないし批評にすぎないというべきである。また、原告ら個人の人格的価値に対する評価を低下させるものともいえない(なお、登壇者に謝金が支払われていることを指摘するのみでは、原告らの人格的価値に対する社会的評価を低下させるものではない。)。 オ番号6原告らは、番号6の投稿について、女性器名称は卑猥であり、研究対象とはなり得ず、研究には用いられないという前提に基づき、それに反して、原告らが科研費を使って卑猥な研究をしているとの事実が摘示され、原告らが税金を使って卑猥な研究をしているとの印象を与えると主 張する。 被告による投稿は、「私のアソコ」「ヴァギナ」といった本件ワークショップのテーマに用いられた語を引用しつつ、(性器といった)放送禁止用語が多用されていると指摘しているが、本件ワークショップでは性器を指す言及が複数回にわたりされるなどしており(甲27)、一般 的に性器を指す語は放送禁止用語とされることが多いことは事実と認め られる。そうであるところ、科研費が支給される学術 は性器を指す言及が複数回にわたりされるなどしており(甲27)、一般 的に性器を指す語は放送禁止用語とされることが多いことは事実と認め られる。そうであるところ、科研費が支給される学術研究において、一般の放送では事実上禁止されている用語をテーマや動画等において使用するのが相当かどうかは、研究の対象及び手法等に照らして相対的に評価されるべき問題と考えられるのであって、そのような研究において開催されたシンポジウムで、性器に関する用語がテーマや動画内で用いら れても、一般読者の普通の注意と読み方とを基準として、原告らの人格に対する社会的評価を低下させるような意味での「卑猥な研究」との印象を与えることになるものとは認められないし(原告ら自身もそのような認識を有しているものと認められる。)、同様に、学術研究において性器に関する用語がテーマや動画内で用いられていることを指摘したと しても、原告らの人格に対する社会的評価を低下させるものとは認められない。被告の上記投稿は、性器を指す用語を多用することの相当性について否定的な意見を述べたにすぎないと認められ、一般読者の普通の注意と読み方とを基準として、原告らが主張するように、原告らが卑猥な研究をしているとの印象を与えるものとも認められない。 カ番号7ないし9(ア) 別表1番号7ないし9について、原告らは、「ねつ造」との表現が原告らの研究に向けられたものであることを前提として、人権問題としての「慰安婦」問題がねつ造であるとの事実が摘示され、事実の根拠もないのに虚偽を述べているとの印象を与える(番号7)、慰安婦が 強姦されたという事実はないのに、それがあったかのように発表しているとの事実が摘示され、事実に基礎を置かない虚偽であるという印象を与える(番号 述べているとの印象を与える(番号7)、慰安婦が 強姦されたという事実はないのに、それがあったかのように発表しているとの事実が摘示され、事実に基礎を置かない虚偽であるという印象を与える(番号8)、「慰安婦」問題を♯MeeTooであるとするものがねつ造であるとの事実が摘示され、事実に反することをあえて事実と述べ、研究成果としているとの印象を与える(番号9)と主 張する。 しかし、ツイッターにおける一連の投稿は、前記⑴アの認定のとおり、別表1番号4に対して原告A1がした「『慰安婦』問題は♯MeTooだ!」、いま制作中の動画なんですけど?論文じゃないですよ?毎日記事にも動画の事は書いてないですよ?国会議員が学問の自由(憲法23条)に違反して個人攻撃するのも驚きですがその上、誤 情報とは。事前に動画の宣伝してくれてありがたいですが、まもなく完成、公開します」との投稿、これに対して被告がした別表1番号7の投稿、さらに原告A1がした「何が『捏造』なんですか?示していただかないと、国会議員にあるまじき単なる誹謗中傷です。慰安婦問題が女性の人権問題であるというのは、国連でも議論されています。 それが不満なら女性差別撤廃条約からの離脱を提言されたらどうですか?あなた方のほうが、日本の国際的評価を下げています。」との投稿、さらにこれに対して被告がした別表1番号8及び9の投稿というように、原告A1と被告との間で応酬がされる中でされたものと認められる(上記ア、甲1の9ないし11)。そうすると、被告の投稿が 一般読者の普通の注意と読み方としてどのような意味を有するかについても、上記一連の過程ないし文脈に照らして認定すべきである。 そこでさらに検討すると、確かに、「ねつ造」との表現については、一般論としては意図的に虚 注意と読み方としてどのような意味を有するかについても、上記一連の過程ないし文脈に照らして認定すべきである。 そこでさらに検討すると、確かに、「ねつ造」との表現については、一般論としては意図的に虚偽を作出したなどの印象を与えるものであることは否定できない。しかしながら、番号7における「ねつ造はダ メです。」との表現が「慰安婦問題は女性の人権問題ではありません。」とともに記載され、番号8における「『慰安婦が強姦された。』これはねつ造です。」との記載等も含め、上記のとおりの一連の応酬の経過の中でされた表現であること、また、番号8においては「慰安婦問題」に関する本件見解(前提事実⑷)から抜粋した内容を列挙す るとともに、本件見解を記載した文書のURLを記載しており、これ ら一連の経過に照らし、一般読者の普通の注意と読み方と基準として見れば、「ねつ造」との被告の投稿は、必ずしも原告らの主張するような意味で用いられたと解することはできない。すなわち、番号7ないし9の投稿における「ねつ造」との表現は、「慰安婦問題」に関し、強制連行の事実が存在せず、「性奴隷」といった表現が事実に反する との本件見解に基づき、もともと「慰安婦問題」が女性の人権問題として広く流布されるに至った発端となったのが事実に反する報道であり、いわば同問題の根幹となった強制連行の点が事実に基づかないものであるとの見解をもとに、同問題を女性の人権問題として捉えること一般について、そのような意味で存在しない歴史的事実に基づくも のであるというものと解され、特に原告らの研究を対象として、それが虚偽の事実をもとにしてされたものであるとの事実を摘示するものとは認められない。原告A2は、現在の日本では、強制連行の有無が「慰安婦問題」における核心的な問題である 原告らの研究を対象として、それが虚偽の事実をもとにしてされたものであるとの事実を摘示するものとは認められない。原告A2は、現在の日本では、強制連行の有無が「慰安婦問題」における核心的な問題であるとするのが一般的な見解であると述べており(原告A2本人17、22頁)、被告の上記投稿 もそのような立場に基づくものと解される(原告らの見解はこれと異なり、「慰安婦問題」の核心は、強制連行の点にあるのではなく、軍隊の規律の下で慰安所が運営され、女性たちを強制的な抑圧の下に置く人権侵害がされていたことにあり、それが国際的な常識であるというものであって、そうした論法は原告A2論文にも記載されているが 〔原告A2本人21、22頁、甲23、弁論の全趣旨〕、被告は、「慰安婦問題」に関する原告らの上記見解を明らかにした同論文を批判する際にも「ねつ造」とは述べていない〔別表3番号3の3、番号3の5、別表4番号2の1〕。)。被告の投稿が上記のような趣旨のものであったこともあって、その後の原告A1と被告のやり取りも、 慰安婦問題が女性の人権問題であるか否かについての応酬に移行した ものと認められる。また、原告A1自身、被告の投稿に対して「何が『捏造』なんですか?示していただかないと、国会議員にあるまじき単なる誹謗中傷です。女性の人権問題であるというのは、国連でも議論されています。」というように、被告のいう「ねつ造」の意味が明らかではないことを指摘した上で、上記のとおり「慰安婦問題」が女 性の人権問題でないという見解が誤りであるとの趣旨の投稿をしており(原告A1は、「ねつ造」が何を指しているか最初理解できたかとの質問に対し、「何を言ってるんだろう。」と思い、何のことを指しているのか問うたと述べている〔原告A1本人34頁〕。)、原告 稿をしており(原告A1は、「ねつ造」が何を指しているか最初理解できたかとの質問に対し、「何を言ってるんだろう。」と思い、何のことを指しているのか問うたと述べている〔原告A1本人34頁〕。)、原告らの研究が虚偽の事実を「ねつ造」したものであるとの意味に捉えてい なかったことがうかがえる。そして、上記投稿については、公開のツイッター上でされたものとはいえ直接のやり取りの相手方が本件研究を行っている原告A1であったことや、原告らが「慰安婦問題」を女性の人権問題として研究をしていることを踏まえても、原告らの研究内容が虚偽の事実を基礎とするものであるとの印象を与えると認める こともできない。 (イ) 以上のほか、番号7について、原告らは、原告らの研究が偏った政治的立場からされ、研究ですらなく政治活動であるとの事実が摘示され、特定の反日的立場であるとの印象や、科研費を研究ではなく反日的な活動に不正に支出しているとの印象を与えるとも主張する。 しかし、原告が指摘する表現は、上記のとおりの「慰安婦問題」が女性の人権問題ではないとの意見を前提とした上で、原告A1の研究に対し、意見ないし論評を述べるものと解される。また、科研費の支出について言及するものである点で、公益的事項について、公益目的でされたものと認められ、原告A1の研究が「慰安婦問題」を女性の人 権問題として扱っているという主要な部分も真実であると認められる。 また、一般読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、「反日」という表現についても、特定の外国の政策や外国人の主張等を修飾する語として用いられる場合が多く、これを日本人について用いる場合、それらの者の言説や行動が上記外国の政策等に沿うものであったり、日本の国益に反するとの趣旨をいうもの解されるが、何を の主張等を修飾する語として用いられる場合が多く、これを日本人について用いる場合、それらの者の言説や行動が上記外国の政策等に沿うものであったり、日本の国益に反するとの趣旨をいうもの解されるが、何をもって国益と いうか自体についての意見が相違することは前提とされているものと考えられ(原告らも、「慰安婦問題を取り上げることが、国際社会の標準からすれば本来的には日本社会の利益になることであるとする。)、「反日」という語が必ずしも「うそや事実に反すること」を世界に発信するというまでの意味を有するとは認められない。また、 被告が上記投稿において「うそや事実に反すること」という意味で「反日」という語を用いたとも認められない(被告は、他の投稿において「日本の国益を損なう方々です。例えば慰安婦問題などをねつ造して海外に発信する日本人は私は「反日」だと思います。と述べているが」〔甲1の2〕、これも被告の見解ではそのような者が「反日」 に含まれるという例を示すにすぎない。)。加えて、原告A1自身も、被告の投稿に対して「この勢力お得意のプチ捏造ですね。」との反論をするというように、双方が相手の立場に対して批判的意見を述べる応酬の中でされたものであり、結果的に見れば感情的な表現がされているとはいえ、人身攻撃に及んでいるとまではいえず、表現方法にお いて相当な範囲を逸脱したとまではいえないから、違法性を欠くと認めるのが相当である。 原告らは、被告がフェミニズムへの敵愾心と政治的宣伝の目的により、「反日プロパガンダ」との間の戦争として、読者に対して原告らの研究へ罵倒を集中させるように呼び掛けたと主張するが、読者に対して 原告らの研究を妨害する行動を呼び掛けたとは認められないし、仮に 被告が特定の政治的意図により行動してい 対して原告らの研究へ罵倒を集中させるように呼び掛けたと主張するが、読者に対して 原告らの研究を妨害する行動を呼び掛けたとは認められないし、仮に 被告が特定の政治的意図により行動していたとしても、直ちに公益目的であることが否定されるわけではなく、人身攻撃に及ぶものとまで認めることはできない。 その他、不正支出との印象が与えられると認められないことは、上記イにおいて説示したところと同様であり、上記のとおり慰安婦問題を 女性の人権問題として捉えること自体が相当ではない立場から、これを「#MeToo」(性的被害を受けて沈黙していた女性が、自らが被害者であることをSNS等において告白、共有する運動をいうものと解される〔弁論の全趣旨〕。)と同じく女性の人権問題として捉えることについて批判的な意見を述べるものと認められ、原告らが不正 支出をしたとの印象を与えるとまでは認められない。 キ番号10原告らは、別表1番号10の投稿が、科研費について原告らの都合が悪いことがあるという事実を摘示するもので、科研費を不正使用しているとの印象を与えると主張する。 しかし、被告による投稿は、もっぱら自らの主張の正当性をいうものにすぎないと解され、「必要以上に噛みつかれるのは何か都合が悪いことがあるからですか?」という部分も、原告A1をけん制するか、又はせいぜいたきつける程度の趣旨のものと理解でき、原告らの主張するような印象を与えるとは認め難い。なお、原告A1も「突然インネンを付 けられたのは私のほうですが。」などと投稿するというように、被告が相互に非難する中でのやり取りであり、投稿の応酬の中、相互に感情的な表現に至っているとはいえるものの、人身攻撃とまではいえず、相当な範囲を逸脱したとまでもいえないことは、 稿するというように、被告が相互に非難する中でのやり取りであり、投稿の応酬の中、相互に感情的な表現に至っているとはいえるものの、人身攻撃とまではいえず、相当な範囲を逸脱したとまでもいえないことは、上記カと同様である。 ク番号11及び12 別表1番号11及び12は、同一の媒体に、時間的にも内容にも連続 したものとして投稿されており、一体のものとして評価するのが相当である。 原告らは、1755万円の科研費が支出され、4年間の期間をかけた研究成果が本件動画のみであるとの事実が摘示され、期間と金額の結果として低レベルかつ貧困であるとの印象を与えると主張する。しかし、 科研費総額及び研究総期間を摘示している点ではやや誤解を招く余地がないではないが、表現としては必ずしも原告らの研究の成果が本件動画に限られるとまではされていないし、本件動画をもって「成果の一環」であるとする原告らの説明(乙2)を引用した上で投稿がされていることにも鑑みれば、原告らの主張するような事実摘示があったとは認めら れない。 ケ原告らの指摘する読者の反応について原告らは、被告の投稿に対する実際の読者の反応ないし返信(リプライ)には、原告らの主張する趣旨で解しているものが相当数あり、そのことからも同投稿の意味が明らかになるから、被告の投稿の意味を認定 する際にはその点も考慮すべきである旨主張する。 しかし、投稿に対して明示的に反応した読者による解釈が必ずしも一般読者の普通の読み方と一致するとまではいえないし、被告の事実摘示の程度にかかわらず、読者が自らの主義主張を述べる場合もあり得る。 さらに、証拠(甲1の2ないし14)によれば、原告らの指摘するよう な趣旨で被告の投稿を捉えたかのように見える返信も一定数認められ 程度にかかわらず、読者が自らの主義主張を述べる場合もあり得る。 さらに、証拠(甲1の2ないし14)によれば、原告らの指摘するよう な趣旨で被告の投稿を捉えたかのように見える返信も一定数認められるものの、他方において、被告の投稿について、国民から徴収した税金を原資とする科研費の支給対象をどのような研究とするのが適切かというように、制度自体やその運用に関する意見として受け止めた上で、これに賛同し又はこれを踏まえた内容の投稿をするなどする者も一定数おり、 このことは、被告の投稿を閲読した読者が必ずしも事実を摘示するもの とは解していないことを示すものというべきである。以上によれば、原告らの主張は上記認定を左右するものとは認められない。 ⑵ 別表2についてア番号1原告らは、本件動画が本件研究の集大成であり、これがほとんど見ら れていないとの事実が摘示され、費やされた期間及び金額に比して、研究の水準が著しく低く、社会的に意味がないとの印象を受けると主張する。 しかし、特定人が制作した動画についてその視聴数が少ないことを指摘したとしても、当該人物の人格的価値に対する評価を直ちに低下させ るものとはいえない。また、本件動画が研究成果の一環として制作されている場合、視聴数が少ないとの指摘は、研究自体に対する批評をするものではあるが、これも研究者自身の人格的価値に対する評価を低下させるものとは認められない。 また、被告の上記投稿は、科研費の支出について言及したものである という点で、公益的事項について、公益目的でされたものであって、人身攻撃に及んでいるとも認められないことは、上記⑴カと同様である。 そして、本件研究に対する科研費の支給総額及び本件動画が制作されたこと自体は真実であり、「集大成」と 公益目的でされたものであって、人身攻撃に及んでいるとも認められないことは、上記⑴カと同様である。 そして、本件研究に対する科研費の支給総額及び本件動画が制作されたこと自体は真実であり、「集大成」との表現についても、本件動画は研究期間を終えて完成されたとはいえ、本件研究の成果が何かについての 言及としてはやや誇張された感が否めないものの、本件動画が研究実績の概要として挙げられる4つの項目のうちの1つとなっており(甲19の1)、本件研究において相応に重要な位置付けを有しているとの限度では真実であると認められる。さらに、本件動画の視聴回数が数回であるという点についても、当時の視聴回数を明らかにすることは、原告ら にとって可能であると推認されるにもかかわらず、原告らがこれについ ての証拠を提出していないといった弁論の全趣旨に加え、被告が実際に調査をしたとして具体的な数字を挙げて視聴回数に言及していることにも照らすと(別表3番号1の2)、真実であると認めるのが相当である。 したがって、被告の上記投稿は、いずれにしても主要な部分において真実であると認められるから、原告らの人格的価値に対する社会的評価を 低下させるものであるか否かにかかわらず、違法性を欠くというべきである。 イ番号2原告らは、動画発信は研究ではなく、活動であるとか、本件シンポジウムがフェミニズムと無関係であるとの対談者の発言に対し、被告がこ れを補強する発言をするなどしたことで、その旨の事実が摘示され、原告らが科研費を研究ではなく活動に支出しているとか、研究とは無関係な目的に支出しているとの印象を与えると主張する。 しかし、原告らが主張するような意味で名誉毀損がされたとは認められないことは、上記⑴ウ及びエと同様である。すなわち、フェミニズム 、研究とは無関係な目的に支出しているとの印象を与えると主張する。 しかし、原告らが主張するような意味で名誉毀損がされたとは認められないことは、上記⑴ウ及びエと同様である。すなわち、フェミニズム というもの自体の意味が一義的ではなく、フェミニズムに関する研究において開催されるシンポジウムの登壇者を誰とするのが相当かの評価も相対的なものであるところ、本件シンポジウムには被告の見解によればフェミニズムとは関連性のない活動をする者が登壇者として招かれていることに対して批判的な見解を有していることを示すものにすぎないと 認められる。また、登壇者の属性につき摘示されたのは事実であり、これらの者に対して謝金を支払ったとの事実を指摘しても、原告らの人格的価値に対する社会的評価を低下させるものとも認められない。 ウ番号3(ア) 別表2番号3について、原告らは、「強制連行をした日本は悪い」と いう結論ありきで研究している人たちであるとの事実が摘示され、原 告らの研究が偏見に満ちているという印象を与えると主張する。 確かに「結論ありき」というのは、字義どおりにいえば、結論があらかじめ定められているといった趣旨をいうものとなる。しかし、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準として見れば、この語は、学術研究や政策等に関して議論をするに際し、結論を導く上での理由な いし根拠が説得的でないか又は希薄であることを、相手方に対して強く指摘するために用いられる表現と解され、原告らの人格的価値に対する社会的評価を低下させるものとは認められない。また、被告の発言については、上記⑴カと同様に、強制連行の有無に関する本件見解をもとに、「慰安婦問題」を女性の人権問題とすることに対して否定 的意見を述べるものと解釈し得るのであって、 ない。また、被告の発言については、上記⑴カと同様に、強制連行の有無に関する本件見解をもとに、「慰安婦問題」を女性の人権問題とすることに対して否定 的意見を述べるものと解釈し得るのであって、そのような批判的意見を前提として、本件動画の作成について、科研費の支出が適切ではないとの意見を述べたものと認められる。 (イ) また、原告らは、Qの「そういう政治活動をしている人たちは活動家であって、学者ではない。だから、活動家として認定させればいいん です。」との発言に対して「まさにそのとおりだと思います。」と賛同している点について、これにより、原告らが研究ではなく政治活動をしている活動家であり、科研費を研究でなく活動費として支出しているとの事実が摘示され、科研費を研究でなく活動に不正に使用し、研究者ではないとの印象を与えると主張する。 しかし、前後の文脈からすれば、被告の発言に先行するQの発言は、原告らの研究がQ自身の想定する「学術研究」とは異なることを前提とするものにとどまり、原告らがおよそ研究活動をしていないことを主張すると理解されるものではない。また、原告らは、科研費の研究課題を「ジェンダー平等社会の実現に資する研究と運動の架橋とネッ トワーキング」とするなど(前提事実⑶ア)、研究とともに社会活動 を重要視するものと認められるところ(原告らは、ジェンダー研究は、運動と密接な関連性を持ち、相互作用の中で発展してきた学問分野であるとして、実践活動から学び、実践活動を通してジェンダー平等社会の実現に資する研究を目指すとしている〔令和3年4月26日付け「原告準備書面⑽3頁以下〕。)、「活動家」との表現も、本来科研 費の支給対象となるのは純粋な学術研究がふさわしいとの被告の見解をもとに、原告らがそのように すとしている〔令和3年4月26日付け「原告準備書面⑽3頁以下〕。)、「活動家」との表現も、本来科研 費の支給対象となるのは純粋な学術研究がふさわしいとの被告の見解をもとに、原告らがそのように社会活動を行うことに重点を置いていることをもって、純粋な研究者ではない活動家との範疇で理解した上で、科研費の支給の対象としていかなる研究がふさわしいかの問題を考えるべきであるとの意見を述べるものにすぎないと認められる。ま た、上記の表現は、その直後の発言にいう「政府批判であったり、是認したりすることにかかわって」いることを指し、当該媒体の全体の論調からして政府批判に携わっていることを暗示しているものとは解されるが、それも日本政府に批判的な活動をしているといった程度に解釈されるにすぎない。したがって、被告の上記発言は、原告らの人 格的価値に対する社会的評価を低下させるものと認めることはできない。 また、被告の上記発言は、科研費の支出について言及したものであり、公益事項について、公益目的によりされたものと認められる上、原告A1の研究において「慰安婦問題」に関する本件動画が制作されたこ と、安全保障関連法の制定、米軍基地移設などに取り組む者らが本件シンポジウムの登壇者とされていること(前提事実⑶イ)といった主要な部分は真実であると認められるのであり、人身攻撃に及んでいるとまでもいえないから、原告らの人格的価値に対する社会的評価を低下させるものであるか否かにかかわらず、違法性を欠くものと認めるの が相当である。 その他、被告の発言が原告らの研究が不正であるとの印象を与えるとの原告らの主張については、被告の発言を全体として見れば、科研費の支給を受ける学術研究としてどのような内容のものがふさわしいかという点に関し 、被告の発言が原告らの研究が不正であるとの印象を与えるとの原告らの主張については、被告の発言を全体として見れば、科研費の支給を受ける学術研究としてどのような内容のものがふさわしいかという点に関して意見を述べるものにすぎず、個別の支出行為が不正であるとまでいうものとは認められないから、原告らの研究が不正で あるとの印象を与えるものとは認められない。 ⑶ 別表3についてア番号1の1原告らは、別表3番号1の1の発言について、女性器の名称は卑猥であり、研究対象とはなり得ず、研究には用いられないという前提に基づ き、それに反して原告らが科研費を使って卑猥な言葉を使用して研究をしているとの事実が摘示され、原告らの研究が卑猥な内容であるという印象を与えると主張する。 しかし、女性器であれ男性器であれ、その名称を口にし又は耳にすることに羞恥心を抱く者も多数いることは事実であり、原告ら自身が本件 シンポジウムを開催した動機にも、少なくとも女性器の名称に対しそのような理解が一般的であるという現状への働きかけが含まれるものと考えられる。また、学術研究において性器を指す用語をテーマ等に使用するのが相当かどうかは、研究の対象及び手法等に照らして相対的に評価されるべき問題であることは上記⑴オ、⑶アの認定説示のとおりである。 したがって、被告が本件シンポジウムの名称に言及するに際して羞恥心を抱いたようなしぐさを見せたからといって、何らかの具体的な言明がされたと認められないことはもとより、「卑猥な研究」との印象を与えるとまでは認められないし、原告らの人格的価値に対する社会的評価が低下するような言動がされたとも認められない。 イ番号1の2 原告らは、別表3番号1の2の発言について、原告らが制作した本件チュ れないし、原告らの人格的価値に対する社会的評価が低下するような言動がされたとも認められない。 イ番号1の2 原告らは、別表3番号1の2の発言について、原告らが制作した本件チュートリアルサイトについて再生回数が少ないとの発言がされるなどして、科研費を支出するに値しないとして嘲笑を受け、名誉感情が害されたと主張する。 しかし、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方によれば、被告の上記 発言は、科研費が支給される研究について、その一環として作成された本件チュートリアルサイトの視聴回数が少なかった場合には、支出として相当ではないとの趣旨を含意するものと解され、そのような観点から原告らのサイト制作に科研費が支出されたことが問題であるという趣旨でされたものと解される。名誉感情が害された場合、社会通念上許され る限度を超える違法性があるときには、不法行為が成立する場合もあり得るが、被告の上記発言は、原告らの研究に対する論評や、科研費の支出の相当性に関する意見表明の域を超えるものとは認められないから、違法とまでは認められない。 ウ番号1の3 原告らは、別表3番号1の3の発言について、公的な資金の支給を受けた研究により発表される論文については、読者が無料で読めるような設定とするのが通常であるにもかかわらず、原告A1の論文にパスワードが設定されており、一般人が読むことができないようにされているとの事実が摘示され、公的資金を使用して研究をしたにもかかわらず、本 来公開するのが通常であるはずの論文を無料で読むことができない状況を作出しているとの印象を与えると主張する。 被告は、対談相手の「科研費でやっているんだから」といった発言に対して「そうパスワード。」と述べており、科研費の支給を受けていることを理由に きない状況を作出しているとの印象を与えると主張する。 被告は、対談相手の「科研費でやっているんだから」といった発言に対して「そうパスワード。」と述べており、科研費の支給を受けていることを理由に無料で公開されるべきであるとの意見を表明したものとも 見ることは可能であるが、いずれにしてもこれにより無料による公開が 通常であるとの事実が摘示されたとは認められないから、原告らの上記主張はその前提を欠くものというべきである。 エ番号2の1原告らは、別表3番号2の1の発言について、こんな研究をしているのかと嘲笑したり、ひどい内容などといった発言をしたことが原告らに 対する侮辱であると主張する。 しかし、被告の上記発言は、科研費の支給を受けて行われた原告らの研究について「ひどい」などという抽象的な意見や評価をいうにとどまるものと認められる。また、被告が笑いとともに上記のような発言をしたからといって、そのことから原告らの研究に対する論評や、科研費の 支出の相当性に関する意見表明の域を超える表現行為がされたとまでいうことはできない。したがって、上記発言が原告らを侮辱するものとは認められない。 オ番号2の2原告らは、別表3番号2の2の発言について、科研費を使用して行わ れた本件シンポジウムにおいて、フェミニズム研究の名目で反政府政治活動を行っているとの事実が摘示され、原告らが研究名目で政治活動を行っており、研究名目で引き出した科研費を不当に反政府政治活動に流用しているとの印象を与えると主張する。 しかし、上記発言について不法行為が認められないことは、上記⑴ウ 及びエ並びに⑵ウと同様である。すなわち、フェムニズム自体の意味が一義的ではなく、フェミニズムに関する研究において開催されるシンポジウムの登壇 について不法行為が認められないことは、上記⑴ウ 及びエ並びに⑵ウと同様である。すなわち、フェムニズム自体の意味が一義的ではなく、フェミニズムに関する研究において開催されるシンポジウムの登壇者をどのような者とするのが相当かの判断も、研究対象や研究手法等により相対的なものであるところ、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方によれば、被告は、科研費の支給対象となる研究について、 被告の考える意味での国益に反するものはふさわしくないとの見解をも とに、政府批判をする立場にある活動家を登壇者とすることに対して批判的な意見を述べるにすぎず、本件シンポジウム又はその開催を研究の一環とする本件研究に対しての意見ないし批評にすぎないというべきである。また、「だからこれが研究なのか、活動なのか」との発言についても、その後のやり取りの中で、対談者であるRが「本来ならば、この、 科研費っていうのは純粋な、まあ、学問。」「学術研究に使われるべきであって。」「まあ、イコール政治活動ですよね。」との発言に同意する発言をしていること等、前後一連の文脈に照らして見れば、本来科研費の支給対象となるのは純粋な学術研究がふさわしいとの被告の見解をもとに、原告らが社会活動を行うことを重要視していることをもって、 研究家というよりも活動家の範疇で理解した上で科研費の問題を考えるべきであるとの意見を述べるものにすぎないと認められる。 カ番号2の3原告らは、別表3番号2の3の発言について、原告らが研究期間の終了後も未だ成果物を発表していなかったから経理がずさんであるとの事 実が摘示され、原告らによる科研費の使用方法がずさんであるとの印象を与えると主張する。 しかし、原告らが指摘する部分の直後で、被告が科研費の支給の在り方や予算の配分 理がずさんであるとの事 実が摘示され、原告らによる科研費の使用方法がずさんであるとの印象を与えると主張する。 しかし、原告らが指摘する部分の直後で、被告が科研費の支給の在り方や予算の配分、会計監査について言及がされていること(甲4の2・22、23頁)にも照らせば、被告が「ずさん」と述べる経理の主体が 原告A1であるというのか、その所属大学であるというのか、科研費の所管官庁等であるというのかは必ずしも明らかとはいえないから、直ちに原告らの人格に対する社会的評価を低下させるものとは認められない。 また、被告の発言は、「経理」に問題があるとの意見を表明したものと解されるところ、全体としては科研費の支出の在り方の適否に言及す るものである点で、公益事項について、公益目的によるものということ ができ、研究期間終了までに本件動画が完成していなかったという重要な部分は真実であると認められるほか、人身攻撃に及んでいるとまではいえないから、いずれにしても違法性を欠くと認めるのが相当である。 キ番号3の1原告らは、別表3番号3の1の発言について、本件研究が科研費に値 しない旨の事実が摘示され、原告らの研究が税金の無駄遣いであるという印象を与えると主張する。 しかし、被告は、原告らが指摘する部分の中でも、「今の政権に対立したら反日なのかとか言われるんですが、反日の教授に流れるからだめだとか、そういうふうなことではな」いとした上で、研究が国益に資す ることなのかを問題にする発言や、国益に資するかどうかを判断するのは税金を支払っている国民であるとの発言をしており、原告らが指摘する部分に続く部分でも、科研費の支給は、国民にとって税金の使途として相当かどうか疑問を持たれないようにすべきであり、大学が説明責任を果た 金を支払っている国民であるとの発言をしており、原告らが指摘する部分に続く部分でも、科研費の支給は、国民にとって税金の使途として相当かどうか疑問を持たれないようにすべきであり、大学が説明責任を果たす必要があるなどと述べた上で(甲4の3・15ないし22頁)、 さらに別表3番号3の2、3のとおりの発言をしているのであって、これらの点も含め、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準に、被告の発言を前後一連の文脈に照らして見れば、原告らの研究の価値が低いというものではなく、被告の主張する国益の観点からすれば、「慰安婦問題」が女性の人権問題であることを承認する内容の研究について、国 民の税金を原資とする科研費が支出されることは相当ではないとの意見をもとに、原告らの研究の内容に照らして科研費の支給をするのが相当でないとの意見を表明するものと解される。また、被告の上記発言は、人身攻撃に及ぶものとして意見ないし論評としての域を逸脱するものとも認められない。したがって、原告らの人格的価値に対する社会的評価 が低下するか否かにかかわらず、違法性を欠くものと認めるのが相当で ある。 ク番号3の2及び4(ア) 別表3番号3の2及び4は、いずれも、同日公開の同一の番組内において、本件動画に関してされた発言であるから、一体として以下検討する。 原告らは、研究期間が終わった後に科研費を使用して本件動画を制作しているとの事実が摘示され、研究期間を超えて科研費を不正に使用されているとか、ずさんな使い方をしているとの印象を与えると主張する。 しかし、上記キでも検討したとおり、一般視聴者の普通の注意と視聴 の仕方を基準に、前後一連の文脈に照らして見れば、上記発言は、もっぱら「慰安婦問題」が女性の人権問題であることを承認する る。 しかし、上記キでも検討したとおり、一般視聴者の普通の注意と視聴 の仕方を基準に、前後一連の文脈に照らして見れば、上記発言は、もっぱら「慰安婦問題」が女性の人権問題であることを承認する内容の研究に科研費が支出されることについて批判的な意見を述べる趣旨でされたものと理解することができ、そのような研究において、「慰安婦問題」を扱う本件動画に科研費が使用されていることにつき、原告 A1とその所属大学関係者の説明が異なっていることについて言及するものと解される。そして、被告の上記投稿は、原告A1が原告らの研究課題の成果の一つとしてショートムービーを作成しているとの投稿をしており(甲1の14)、本件動画にも「撮影・編集・制作」として「JSPS科研費基盤(B)」である本件研究が掲載されている 〔前提事実⑶イ(オ)〕のに対し、被告からの問い合わせに対するB1大学の回答は、本件動画に科研費は使用されていないというものであったことから、両者の整合性に疑問を提起する意見を述べるものと認められる(ただし、被告は、番号3の4の発言の中でも、動画制作自体は「自分たちでつくってお金がかかってないかもしれない」というよ うに、科研費が使用されていないのかも知れないとの発言もしており 〔甲4の3・21、22頁〕、本件動画の制作の全てに科研費が使用されていることを前提として発言をしているわけではない。)。そして、B1大学の被告に対する回答内容や、少なくとも使用した素材ないし撮影(韓国に出張して撮影された。)という、本件動画の作成に不可欠な部分(韓国への出張費、ビデオカメラ等の機材の購入等)に ついて科研費が使用されたことが認められること(甲18・15頁、原告A1本人26、27頁、弁論の全趣旨〔令和3年4月26日付け「原告 欠な部分(韓国への出張費、ビデオカメラ等の機材の購入等)に ついて科研費が使用されたことが認められること(甲18・15頁、原告A1本人26、27頁、弁論の全趣旨〔令和3年4月26日付け「原告準備書面⑼」8頁)、研究期間後に本件動画が完成したことは事実であるから、主要な部分は真実であると認められ、また、人身攻撃に及ぶものともいえないから、被告の発言は、いずれにしても違法 性を欠くと認めるのが相当である。 (イ) 原告らは、原告A1の教授としての立場そのものに疑問を抱くとの対談者の発言に対して被告が同意しており、原告A1に対する侮辱であるとも主張する。 この点、対談相手の発言の趣旨は判然としない面もあるが、一般視聴 者の普通の注意と視聴の仕方を基準に、前後一連の文脈に照らして見れば、前記のとおり、原告A1が原告らの研究課題の成果の一環としてショートムービーを作成しているとの投稿をしていること、本件動画に「撮影・編集・制作」として「JSPS科研費基盤(B)」である本件研究が掲載されていることなどから、本件動画に科研費が使用 されているとの想定のもとに、上記投稿や本件動画内の記載に偽りがあった場合を仮定して、そのような場合には上記のような表記等をした原告A1の立場に疑問を抱くことになるとの意見を述べるにすぎないと解され、むしろ教授である原告A1が虚偽の記載をするとは考え難いとの前提でされたものと認められるから、かかる発言について、 社会通念上許される限度を超える違法性があるとは認められない。 ケ番号3の3及び5別表3番号3の3及び5は、いずれも原告A2論文に関するものであるから、以下、一体として検討する。 原告らは、原告A2が根拠を示すことなく慰安所制度を性奴隷制と結論付けているとの事実が摘 及び5別表3番号3の3及び5は、いずれも原告A2論文に関するものであるから、以下、一体として検討する。 原告らは、原告A2が根拠を示すことなく慰安所制度を性奴隷制と結論付けているとの事実が摘示され、論証もなしに論文を書き、研究者と しての資質に欠ける態度を有しているという印象を与えると主張する。 しかし、被告の発言は、原告A2の論文が「強制連行」について新たな資料を提示するものではないということを含意しているとは解し得るものの、「まあ、この方が言ってるのは強制連行があったかなんか関係ないと。」との発言にも照らし、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方 を基準に見れば、その主眼としては、前記⑴カ、⑵ウと同様、強制連行の有無は「慰安婦問題」が広く流布されるに至る発端となり、同問題の根幹となる重要な論点であるとの見解を前提として、その点を措いて、「慰安所」が軍の規律により運営されていたことをもって「性奴隷制」ということに対し、説得的な理由や根拠が示されていないとして批判的 な意見を述べるものにすぎないと認められる。したがって、原告A2が根拠を示していないといった事実摘示がされ、原告らが主張するような印象を与えると認めることはできない。 コ番号3の6原告らは、別表3番号3の6の発言について、原告A1の論文が考え 方を表明するだけで研究ではなく、費用がかからないのに科研費を取得しているとの事実が摘示され、論証もせずに論文を書いており、研究者としての資質に欠け、科研費を無駄遣いしているとの印象を与えると主張する。 しかし、被告は、源氏物語が世界に誇る日本文学であると述べた上で、 これを前提として、「帝の息子という最高権力者である光源氏が、相手 が断れないことに乗じて、性関係の強要を繰り返すというセク し、被告は、源氏物語が世界に誇る日本文学であると述べた上で、 これを前提として、「帝の息子という最高権力者である光源氏が、相手 が断れないことに乗じて、性関係の強要を繰り返すというセクハラ小説」であるという原告A1の評価を問題にしており(甲4の3・24頁)、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準に、こうした一連の文脈に照らして見れば、被告の発言は、文学的理解や科研費を支出することの当否といった観点から、原告A1の見解に対して批判的な意見を述べる ものと認められ、被告の発言の一部を取り出してその違法性をいうのは相当ではないというべきである。また、この点を措くとしても、上記のとおり前後一連の文脈に照らして見るときは、原告らが主張するような印象を与え、原告A1の人格的価値に対する評価が低下するものと認めることもできない。 ⑷ 別表4についてア番号1原告らは、別表4番号1の発言について、原告A2が税金から多額の金員の支給を受けて「反日」すなわち事実に反することを世界中に発信して国益を損なう研究を共同で行っているとの事実が摘示されたと主張 する。 しかし、前記⑴カにおいて認定説示したとおり、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方によれば、「反日」との表現について、原告らの主張するように事実に反することを発信するなどとの意味に解することはできないから、原告らの上記主張はその前提を欠くものというべきである。 また、上記発言を一連の文脈に照らして見ると、文系の研究に多額の科研費が支出される理由の分析として、学会に関連するグループを作ると科研費を取得しやすく、その例として複数の人物名が挙げつつ、科研費の支給の相当性を問題にする趣旨に解され、原告A2がいずれかの者と共同研究者となって科研費の支給を受 、学会に関連するグループを作ると科研費を取得しやすく、その例として複数の人物名が挙げつつ、科研費の支給の相当性を問題にする趣旨に解され、原告A2がいずれかの者と共同研究者となって科研費の支給を受けたことがあるかのような発言も されているが、原告A2又はその研究に対する不正な支給がされたとの 事実が摘示されたと認めることはできない。 イ番号2(ア) 原告らは、別表4番号2の発言について、女性器名称は卑猥であり、研究対象とはなり得ず、研究には用いられないという前提に基づいて、それに反して原告らが科研費を使って卑猥な研究をしているとの事実 が摘示され、原告らの研究が卑猥な内容であるとの印象を与えると主張する。しかし、原告らが主張する事実摘示が認められないことは、上記⑴オ、⑶アにおいて認定説示したとおりである。 (イ) また、原告らは、原告A2が根拠を示さずに慰安所制度を性奴隷制と結論付け、結論ありきで意見を言うだけであれば研究費がかからない のに科研費を得ているとの事実が摘示され、論証もせずに論文を書き、研究者としての資質に欠ける態度であって、研究費を無駄遣いしているとの印象を与えるとも主張する。 しかし、根拠を示していないという点につき原告らが主張するような事実摘示が認められないことは、上記⑵ウ、⑶ケの認定説示のとおり である。すなわち、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準として見れば、この語は、学術研究や政策等に関して議論をするに際し、結論を導く上での理由ないし根拠が説得的でないか希薄であることを相手方に対して強く指摘するために用いられる表現と解され、原告らの人格的価値に対する社会的評価を低下させるものとは認められない。 また、被告の発言については、強制連行の有無に関する本件見解 を相手方に対して強く指摘するために用いられる表現と解され、原告らの人格的価値に対する社会的評価を低下させるものとは認められない。 また、被告の発言については、強制連行の有無に関する本件見解をもとに、「慰安婦問題」を女性の人権問題とすることに対して否定的意見を述べるにすぎないと解される。また、科研費が要らないといった表現についても、科研費支出の当否という観点からの意見をやや強い語で表明するものにすぎないと認められるから、これにより原告A2 の人格的価値に対する評価が低下し得るとは認められない。 (ウ) 原告らは、「二重取りだ」との聴衆の発言に対して、被告が同意することで、原告A2が論文を雑誌に発表して原稿料等を得ており、それが不正であるとの前提により、二重取りをしているとの事実が摘示され、不正な利益を得ているとの印象を与えると主張する。 しかし、聴衆の発言はやや唐突にされたものである感が否めず、どの ような趣旨であるかは必ずしも明らかではないし、科研費による研究であるから原稿料等を取得すべきではないとの意見が述べられたとは解し得るものの、被告が、その直後で、「うん、ていう仕組みになってるって、やっぱこれはおかしいじゃないですか。」として、科研費の仕組がそのようになっていることを前提として、制度自体の当否を 問題とする趣旨の発言をしていることにも照らせば、原告らが科研費の仕組に反するような不正を行ったとの事実を摘示したとは認められないし、一般視聴者がそのような印象を受けるとは認められない。 ⑸ 別表5についてア番号1の1 原告らは、別表5番号1の1の発言について、本件チュートリアルサイト(ないしはそこに掲載される動画)について、「無料のサイトでも今どきできる」「非常にしょうもな ア番号1の1 原告らは、別表5番号1の1の発言について、本件チュートリアルサイト(ないしはそこに掲載される動画)について、「無料のサイトでも今どきできる」「非常にしょうもない内容のものに」「ものすごいお金をかけてる」という対談者の発言に対して、被告が同意し、その際に「もの凄いお金をかけている(1755万円の科研費)」という字幕が 付されていたから、科研費を使用し、無料でも制作できるようなチュートリアルサイト(本件チュートリアルサイト)等が過大な制作金額で作られたとの事実が摘示され、科研費から不正な支出をしているとの印象を与えると主張する。 しかし、制作金額が多額であると解し得る発言は、主として対談相手 によるものである上、字幕を付すことについて被告が関与したと認め得 るような証拠はない。また、被告の発言内容も、原告A1が「研究と、運動」と「ネットワーキング」を行っていると述べた上でのものであり、支給された科研費がサイトや動画の制作のみに使用されたと解することができるものではない。被告の上記発言は、原告らの研究について多額の金額が支給されているところ、科研費の支給としてそれが相当ではな いとの意見を述べるものとは認められるが、それを超えて、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として、原告が主張するように不正であるとの印象を与えるとまでは認められず、原告らの人格的価値に対する評価が低下し得るとはいえない。 イ番号1の2 原告らは、別表5番号1の2の発言について、本件シンポジウムの登壇者を挙げて、社会活動をしている女性たちが招かれ、科研費から講師料が支払われているとの事実が摘示され、原告らが安保法制反対など反政府的な活動を精力的にしている人達に対して、その支援目的 ジウムの登壇者を挙げて、社会活動をしている女性たちが招かれ、科研費から講師料が支払われているとの事実が摘示され、原告らが安保法制反対など反政府的な活動を精力的にしている人達に対して、その支援目的で科研費を不当に支出しているとの印象を与えると主張する。 しかし、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として見るとき、原告らの主張する摘示事実をもって直ちに「支援目的」「不当」との印象を受けるとは認められないことは、上記⑴ウ、エ、⑵イ、⑶オ、⑷イにおいて認定説示したとおりである。また、被告の発言は本件シンポジウムのようなイベントの開催に対して科研費を支出する当否につい て否定的な意見を述べるものであると解されるところ、原告ら自身、前提事実⑶イ(ア)、2⑴ア(ウ)のとおり、本件シンポジウムのチラシ(甲1の5、乙1〕に、本件シンポジウムの登壇者の氏名とともに、その所属する団体名を記載しており、これに謝金が支払われたことも認められるから(前記⑴ウ)、主要な部分は真実であるといえるのであって、既に 説示したとおり、かかる意見の表明には公益性及び公益目的もあると認 められるから、いずれにしても違法性を欠くものと認めるのが相当である。 ウ番号2の1原告らは、別表5番号2の1の発言について、「科研費の闇…もはや政治活動資金に?」という字幕が出る中で、被告が「学知術研究という よりも何かこう、政治運動に近い感じになっている」といった対談者の発言に同意することで、研究名目で政治運動をしているとの事実が摘示され、科研費を研究ではなく政治運動に不正に流用しているとの印象を与えると主張する。 しかし、番号2の動画を被告が制作又は公開したものとは認められず、 そもそも字幕を付すことないしはその内容に被告が関 費を研究ではなく政治運動に不正に流用しているとの印象を与えると主張する。 しかし、番号2の動画を被告が制作又は公開したものとは認められず、 そもそも字幕を付すことないしはその内容に被告が関与したことを認め得る証拠はなく、仮に関与したとしてもその程度を明らかにする証拠もないから、被告の上記発言により摘示された事実を認定するに当たり、字幕の内容を含めて考えることはできない。すなわち、テレビ放送がされた報道番組によって摘示された事実がどのようなものであるかについ ては、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として、その番組の全体的な構成、これに登場した者の発言の内容、画面に表示された文字情報の内容を重視し、映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して判断すべきであるが(最高裁判所平成14年(受)第846号同15年10月16日第一小法廷判決・ 民集57巻9号1075頁)、そのような判断要素が全て妥当するのは、当該番組を制作又は放送した事業者がいかなる事実を摘示したかの認定についてであって、当該報道番組において摘示されたと認められる事実の全てを直ちに出演者が摘示した事実として認めることはできない。したがって、動画における発言によりいかなる事実が摘示されたかを認定 するかについては、上記判例に従い、映像及び音声に係る情報の内容等 を含めて総合的に考慮すべきであるとはいえ、字幕(上記判例にいう「画面に表示された文字情報の内容」)の内容を被告の発言と合わせ考慮すべきであるとまではいえない。 また、一連の文脈に照らせば、被告及び対談相手の発言は科研費に関する問題を提起するものであると解されるところ、Uが「何かもう学術 研究といいよりも何かこう、政治運動に近い形になってる。 ない。 また、一連の文脈に照らせば、被告及び対談相手の発言は科研費に関する問題を提起するものであると解されるところ、Uが「何かもう学術 研究といいよりも何かこう、政治運動に近い形になってる。」「その辺の判定が微妙なんでしょうけど。」と述べたのに対し、被告はこれに同意する発言をしており、このように研究と運動の双方が行われていることを前提とする発言もされていることからすれば、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準とすると、原告A1がおよそ研究をしていない との趣旨を読み取ることができないことはもとより、原告らが主張するように、研究名目で政治運動をしているとの事実や、科研費を研究ではなく政治運動に不正に流用しているとの事実摘示がされたとは認められないし、一般視聴者にそのような印象を与えるものと認めることもできない。 エ番号2の2原告らは、別表5番号2の2の発言について、「審査がお手盛り」「科研費も似たような構造があるのかもしれない」との対談者の発言に対して、被告が、V理事長経験者が億単位の科研費を取得しているとし、これに際して原告A2及び原告A1の名前を挙げて、同人らも同様に科 研費を取得しているとの事実が摘示され、お手盛りの審査という不公正な方法で科研費の審査に通ったとの印象を与えると主張する。 しかし、原告らの主張を前提としても、同動画において、被告自身が「これは不正じゃなくてちゃんと審査にのっとって」「やってらっしゃることだとは思う」と述べていること(甲4の7・9頁)も含め、一連 の文脈に照らせば、被告の発言は、もっぱら科研費の審査に偏りがある のではないかとの意見の表明又は問題提起と解することができる。また、これらの発言の際、原告A2が共同研究者になったことがあるかのような発言は 、被告の発言は、もっぱら科研費の審査に偏りがある のではないかとの意見の表明又は問題提起と解することができる。また、これらの発言の際、原告A2が共同研究者になったことがあるかのような発言はしているが、原告A2がかかわった共同研究に対する支給額や、その他原告らの研究に対する科研費の支給額に言及されているものでもない。したがって、上記発言は、原告らの人格的価値に対する評価を低 下させるような事実を摘示するものとは認められない。 オ番号2の3原告らは、別表5番号2の3の発言について、本件動画が日本は悪いことをしたから謝れという内容であり、学問ではなく政治活動であって、これに科研費が使用されているとの事実が摘示され、科研費を研究以外 の政治活動に不正に支出しているとの印象を与えると主張する。 しかし、既に繰り返し説示したとおり、被告らの発言の趣旨は科研費を支出することの当否にあると解するのが相当であり、原告らの人格的価値に対する社会的評価を低下させるような事実摘示がされたとも認められず、不正との印象を与えるものとも認められない。 ⑹ 以上のとおり認められ、ほかに被告の発言等について原告らの名誉を毀損し又は名誉感情を侵害するものであると認めるに足りる主張、立証は見出せず、その余の点(原告A3及び原告A4は被告の発言等において名指しされていないことから、名誉毀損等がされていないのではないか等)について判断するまでもなく、争点1に関する原告らの主張は理由がない。 第4 結論以上の次第で、その余の争点について判断するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 京都地方裁判所第2民事部 裁判官中 主文 ついて判断するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 理由 京都地方裁判所第2民事部 裁判官中山裕貴 裁判長裁判官長谷部幸弥は差支えのため、裁判官大島泰史は填補のため、署名押印できない。 裁判官中山裕貴
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