平成9(行ウ)23 損害賠償代位請求等住民訴訟事件

裁判年月日・裁判所
平成18年3月22日 さいたま地方裁判所
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判決文本文69,266 文字)

主文 被告Aは,埼玉県に対し,4億1406万8000円及びこれに対する平成9年9月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らの被告Aに対するその余の請求を棄却する。 被告ジェイ・ダブリュー・エム株式会社は,埼玉県に対し,4億0866万5000円及びこれに対する平成9年9月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らの被告ジェイ・ダブリュー・エム株式会社に対するその余の請求を棄却する。 原告らの被告B,同Cに対する請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告らと被告Aとの間に生じた費用については,これを5分し,その1を被告Aの負担とし,その余を原告らの負担とし,原告らと被告ジェイ・ダブリュー・エム株式会社との間に生じた費用については,これを5分し,その1を被告ジェイ・ダブリュー・エム株式会社の負担とし,その余を原告らの負担とし,原告らと被告B及び被告Cとの間に生じた費用については,原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求被告らは連帯して,埼玉県に対し,19億4570万6050円及びこれに対する被告B,被告ジェイ・ダブリュー・エム株式会社については平成9年9月19日(訴状送達の日の翌日)から,被告Cについては平成9年9月21日 (訴状送達の日の翌日)から,被告Aについては平成9年9月26日(訴状送達の日の翌日)からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 事案の要旨本件は,埼玉県の住民である原告らが,当時社会福祉法人の理事長であった被告A,埼玉県生活福祉部高齢者福祉課長であった被告B,厚生省(当時)の担当者であった被告Cらが共謀して,被告Aが実質的に支配する建設会社被告ジェイ・ダブリュー・エム株式会社(以下「被告JW あった被告A,埼玉県生活福祉部高齢者福祉課長であった被告B,厚生省(当時)の担当者であった被告Cらが共謀して,被告Aが実質的に支配する建設会社被告ジェイ・ダブリュー・エム株式会社(以下「被告JWM」という。)の水増しした工事代金に基づいて社会福祉施設整備に関する補助金の交付申請を行うなどして,埼玉県から補助金を不当に取得し,その結果埼玉県に上記不当補助金相当額の損害を与えたとして,主位的には埼玉県が被告らに対する不法行為による損害賠償請求権の行使を,予備的には埼玉県が被告らに対する補助金の精算請求権の行使を,それぞれ違法に怠っていると主張して,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下同じ。)242条の2第1項4号により,埼玉県に代位して,怠る事実に係る相手方である被告らに対し,損害賠償を求めた事案である。 基本的事実関係(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)(1)当事者等ア原告らは埼玉県の住民である。 イ被告Aは,国会議員秘書を経て,平成5年ころから社会福祉事業に着手し,平成7年当時にいわゆる彩福祉グループに属する埼玉県及び山形県の8つの社会福祉法人の理事長を務めていたものである。 彩福祉グループは,被告Aが理事長を務める社会福祉法人の集合であり,埼玉県においては,社会福祉法人桃泉園(以下「桃泉園」という。),社会福祉法人彩吹会(以下「彩吹会」という。),社会福祉法人彩光会(以 下「彩光会」という。),社会福祉法人彩川会(以下「彩川会」という。),社会福祉法人彩鷲会(以下「彩鷲会」という。)が存在した。 ウ被告JWMは,当初産業廃棄物処理業等を目的として,平成3年12月10日,代表取締役を被告Aとし,商号をジェイ・ダブリュー・エム日本廃棄物処理株式会社として設立され,平成6年1 。)が存在した。 ウ被告JWMは,当初産業廃棄物処理業等を目的として,平成3年12月10日,代表取締役を被告Aとし,商号をジェイ・ダブリュー・エム日本廃棄物処理株式会社として設立され,平成6年1月4日に商号を現在のものに変更し,同年4月25日,特定建設業に係る東京都知事の許可を取得した。 被告Aは,平成6年12月31日に被告JWMの代表取締役を退任したが,平成8年当時被告JWMの発行済株式総数2000株のうち800株を所有する筆頭株主であった。 エ被告Bは,昭和57年4月,厚生省(当時)に採用されて,厚生事務官となり,平成4年4月1日,埼玉県生活福祉部高齢者福祉課長に就任し,平成7年3月31日まで上記職務に就いていた。その後,平成7年4月1日付けで厚生省年金局企画課課長補佐等となったが,平成8年8月21日,衆議院議員選挙に立候補するため厚生省を退職した。 オ被告Cは,平成元年6月27日から平成4年6月30日まで,厚生大臣官房老人保健福祉部長として,老人福祉法等に基づく特別養護老人ホーム等の施設整備のための補助金の交付並びに同施設の設置認可等の事務を掌理し,平成5年6月29日から平成6年9月1日まで,官房長として,厚生省の所掌事務に関しての基本的かつ総合的な政策の策定,各部局間の総合調整,予算,決算・会計,人事等に関する事務を掌理し,その後,同月2日から平成8年7月1日まで,厚生省保険局長の職にあった。 (2)特別養護老人ホーム特別養護老人ホームとは,65歳以上の者であって,身体上又は精神上著しい障害があるために常時介護を必要とし,かつ,居宅において介護を受けることが困難な者を入所させて,養護することを目的とする施設(老人福祉 法20条の5)であり,これを経営する事業は,社会福祉事業法(現行の社会福祉法。平成12年法律第11 ,居宅において介護を受けることが困難な者を入所させて,養護することを目的とする施設(老人福祉 法20条の5)であり,これを経営する事業は,社会福祉事業法(現行の社会福祉法。平成12年法律第111号による改正前のもの。以下同じ。)2条2項2号の2により,第一種社会福祉事業とされていた。 そして,特別養護老人ホームの設置,運営の主体は,原則として,国,普通地方公共団体又は社会福祉法人に限定されており(老人福祉法15条,5条の3,社会福祉事業法4条),国又は普通地方公共団体以外の者で,特別養護老人ホームを設置しようとするには,社会福祉事業法に基づいて,定款につき都道府県知事の認可を受け,社会福祉法人を設置することについても都道府県知事の認可を受けることが必要とされていた。 (3)補助金制度の概要(甲9)ア国又は地方公共団体は,必要があると認めるときは,社会福祉法人に対し,補助金を支出し,又は通常の条件よりも当該社会福祉法人に有利な条件で,貸付金を支出し,若しくはその他の財産を譲り渡し,若しくは貸し付けることができる(社会福祉事業法56条1項)。また,都道府県は,市町村又は社会福祉法人に対し,老人の福祉のための事業に要する費用の一部を補助することができる(老人福祉法24条3項,同法26条3項)。 これらの各規定に関連して,平成3年11月25日付厚生事務次官通知「社会福祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備費の国庫負担(補助)について」(社第409号)が発せられ,同時に「社会福祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備費国庫負担(補助)金交付要綱」が策定され,交付対象事業や国庫負担率(補助率)などが定められていた。 イ上記交付要綱によれば,社会福祉施設等施設整備費として,社会福祉法人が養護老人ホーム及び特別養護老人ホームを設置 交付要綱」が策定され,交付対象事業や国庫負担率(補助率)などが定められていた。 イ上記交付要綱によれば,社会福祉施設等施設整備費として,社会福祉法人が養護老人ホーム及び特別養護老人ホームを設置運営しようとする場合には,その施設整備・設備整備を対象として,総事業費が補助基準額を下回る場合には総事業費の4分の3,総事業費が補助基準額を上回る場合に は補助基準額の4分の3の補助金が交付される。そして,国は都道府県からの補助金の3分の2を都道府県に補助するという間接補助方式を採用していたため,結局,総事業費又は補助基準額の2分の1が国からの補助金,全体の4分の1が都道府県からの補助金によりまかなわれることとなっていた。 また,埼玉県においては,埼玉県民間社会福祉施設整備費補助金交付要綱に基づき,社会福祉施設一般について,県単独の民間社会福祉施設整備費事業として,総事業費又は補助基準額の16分の3を国及び都道府県からの補助金に上乗せして交付する制度が定められていた(なお,平成7年度からは,県単独の上記16分の3の補助については,金融機関からの融資制度に変更され,各年度末に社会福祉法人がその年度に金融機関に支払った元利金の全額について,県が社会福祉法人に補助するという補助方法に変更された。)。 そのため,埼玉県内で特別養護老人ホームを設置する社会福祉法人は,総事業費又は補助基準額の16分の15が補助金によってまかなわれることとなっていた。 (4)特別養護老人ホームの設置及び補助金の交付手続の概要(甲9,乙20)社会福祉法人が特別養護老人ホームを設置しようとする場合の一般的な事務手続の概要は,以下のとおりである。 ア設置相談,基本計画の策定施設設置を希望する者が,県の生活福祉部高齢者福祉課(平成5年4月以降は県の福祉事務所)に対して を設置しようとする場合の一般的な事務手続の概要は,以下のとおりである。 ア設置相談,基本計画の策定施設設置を希望する者が,県の生活福祉部高齢者福祉課(平成5年4月以降は県の福祉事務所)に対して,特別養護老人ホームの施設設置を計画していることについて相談し,高齢者福祉課の担当者から指導及び助言を受けるなどして,特別養護老人ホームの施設設置計画の立案を進める。 そして,施設設置計画者が,協議年度の8月末までに,県の福祉事務所 に対し,施設の種別,建設予定地の状況,財源等の所定の事項を記載し,必要書類を添付した老人福祉施設設立計画書を提出する。 これを受けて,福祉事務所は,上記計画の内容について,用地の確保,資金計画,設置要望者,人的適格性,地元の受入環境等の審査を行う。 その後,協議年度の9月ころ,福祉事務所から高齢者福祉課に対し,老人福祉施設設立計画書と添付書類が進達され,高齢者福祉課でも,上記諸点の審査を行う。 イ国庫補助協議(ア)第一次国庫補助協議厚生省の老人保健福祉局老人福祉計画課において,毎年9,10月ころ,厚生省が翌年度の予算として獲得すべき大まかな金額を把握するために,各都道府県の設置希望施設の数や必要となる補助金額の状況を把握することを目的として,第一次国庫補助協議が行われる。 (イ)第二次国庫補助協議県は,各施設設置計画者について,用地の確保,資金計画,設置要望者らの人的適格性,地元の受入環境,施設の設置の必要性等を個別に考慮して審査し,第二次国庫補助協議の対象として問題のない案件を選別した上で,優先順位をつける。 そして,厚生省の老人保健福祉局老人福祉計画課において,翌年の3月ころ,第二次国庫補助協議が行われる。 ウ補助金内示厚生省は,老人福祉施設整備費協議書を基に独自に協議・審査した上で,補助金交付を そして,厚生省の老人保健福祉局老人福祉計画課において,翌年の3月ころ,第二次国庫補助協議が行われる。 ウ補助金内示厚生省は,老人福祉施設整備費協議書を基に独自に協議・審査した上で,補助金交付を適当と認めた場合に補助金交付の内示を行う。 エ社会福祉法人認可申請国から補助金交付の内示を受けた後,施設設置計画者は,県知事(平成5年4月1日以降は県下の福祉事務所)に対し社会福祉法人の設立認可申 請を行い,これを受けて埼玉県では社会福祉法人の設立を認可することとしていた。 オ補助金交付申請・概算交付その後,当該法人から,埼玉県知事に補助金交付申請がされ,埼玉県では,上記内示に従って厚生省に補助金申請を行い,正式の補助金交付決定を受けてから当該法人に対して補助金交付決定をし,事業者に対し年度内に概算払という形で補助金を交付する。 カ補助金精算交付社会福祉法人は,県から概算で交付された補助金及び社会福祉・医療事業団からの融資を受けて建設業者等に支払を行う。 その後,県は社会福祉法人からの実績報告を受けた上で,実際に申請どおりの工事かどうか,購入した設備・備品は申請どおりの物が購入されているか,申請どおりの支払を行っているかなどについて実地調査を行い,領収書などの書類を確認して精算交付決定を行い,補助金交付額を最終的に確定する。 (5)彩福祉グループの施設整備経過(甲5,6)ア社会福祉法人桃泉園・北本特別養護老人ホーム(ア)設立被告Aは,平成5年7月27日に桃泉園の法人認可申請を行い,桃泉園は,同年8月5日に設立認可を受け,平成5年度の事業として,北本市における北本特別養護老人ホームの建設が計画された。 (イ)建設工事被告Aを理事長とする桃泉園は,平成5年7月に斉藤工業との間で,北本特別養護老人ホームの建設工事に関し,代金6 事業として,北本市における北本特別養護老人ホームの建設が計画された。 (イ)建設工事被告Aを理事長とする桃泉園は,平成5年7月に斉藤工業との間で,北本特別養護老人ホームの建設工事に関し,代金6億9700万円で請負契約を締結したが,実際の工事の発注金額は6億3041万1000円であった。 (ウ)施設認可北本特別養護老人ホームは,平成6年2月6日に竣工式が行われ,同年2月28日,同施設の設置認可を受け,同年3月25日に開設された。 (エ)補助金交付桃泉園は,北本特別養護老人ホームに関し,平成6年3月に平成5年度分の補助金交付申請を行い,同月28日,合計4億6280万1000円の補助金交付(概算払。以下に述べる各施設の補助金についても同じ。)を受けた。 国・県補助3億7023万6000円県単補助9256万5000円合計4億6280万1000円イ社会福祉法人彩吹会・吹上苑(ア)設立被告Aは,平成6年2月18日に彩吹会の法人認可申請を行い,彩吹会は,同年3月7日に設立認可を受け,平成5,6年度の継続事業として,北足立郡吹上町(当時)における特別養護老人ホーム吹上苑の建設が計画された。 (イ)建設工事被告Aを理事長とする彩吹会は,平成6年2月,吹上苑の建設工事に関し,被告JWMとの間で,代金6億5870万円で請負契約を締結し,被告JWMは,丸和工業との間で,代金4億5500万円で下請工事契約を締結した。 (ウ)補助金交付a平成5年度彩吹会は,吹上苑に関し,平成6年3月に平成5年度分の補助金交付申請を行い,同月29日,合計8185万2000円の補助金交付 を受けた。 国・県補助6547万8000円県単補助1637万4000円合計8185万2000円b平成6年度彩吹会は,平成7年3月に平成6年 日,合計8185万2000円の補助金交付 を受けた。 国・県補助6547万8000円県単補助1637万4000円合計8185万2000円b平成6年度彩吹会は,平成7年3月に平成6年度分の補助金交付申請を行い,同月29日,合計4億1690万9000円の補助金の交付を受けた。 国・県補助3億3352万5000円県単補助8338万4000円合計4億1690万9000円(エ)施設認可吹上苑は,平成7年2月28日,同施設の設置認可を受け,翌3月1日に開設された。 ウ社会福祉法人彩光会・あけぼの,アクティビティセンター(ア)設立被告Aは,平成5年8月31日に彩光会の法人認可申請を行い,彩光会は,平成6年3月30日に設立認可を受け,平成6,7,8年度の継続事業として,上尾市における特別養護老人ホームあけぼのの建設が計画された。 (イ)建設工事被告Aを理事長とする彩光会は,平成7年3月,あけぼの建設工事に関し,被告JWMとの間で,代金32億9600万円で請負契約を締結し,被告JWMは,大日本土木との間で,代金26億3842万4000円で下請工事契約を締結した。 (ウ)補助金交付a平成6年度 彩光会は,あけぼのに関し,平成7年3月に平成6年度分の補助金交付申請を行い,同月29日,合計7億2378万7400円の補助金交付を受けた。 国・県補助7億0613万4000円県単補助1765万3400円合計7億2378万7400円また,彩光会は,平成7年6月1日に932万5000円の補助金の交付を受けた。 国・県補助932万5000円b平成7年度彩光会は,平成7年度分の補助金交付申請を行い,平成8年3月29日に2億9850万6000円の補助金交付を受けた。 国・県補助2億9850万6000円また, 助932万5000円b平成7年度彩光会は,平成7年度分の補助金交付申請を行い,平成8年3月29日に2億9850万6000円の補助金交付を受けた。 国・県補助2億9850万6000円また,彩光会は,平成8年5月27日,1億9446万円の補助金交付を受けた。 国・県補助1億9446万円c平成8年度彩光会は,平成8年度分の補助金交付申請を行い,平成9年3月31日,8556万3000円の補助金交付を受けた。 国・県補助8556万3000円(エ)施設認可あけぼのは,平成8年9月25日に竣工式が行われ,同年10月1日,同施設の設置認可を受けたエ社会福祉法人彩川会・川里苑(ア)設立被告Aは,平成7年10月30日に彩川会の法人認可申請を行い,彩 川会は,平成7年11月30日に設立認可を受け,平成7,8年度の継続事業として,北埼玉郡川里村(当時)における特別養護老人ホーム川里苑の建設が計画された。 (イ)建設工事被告Aを理事長とする彩川会は,平成8年3月,被告JWMとの間で,川里苑の建設工事に関し,代金8億5181万円で請負契約を締結し,被告JWMは,丸和工業との間で,代金6億3000万円で下請工事契約を締結した。 (ウ)補助金交付a平成7年度彩川会は,平成7年12月に平成7年度分の補助金交付申請を行い,平成8年3月29日,2億9919万3000円の補助金交付を受けた。 国・県補助2億9919万3000円b平成8年度彩川会は,平成8年度分の補助金交付申請を行い,平成9年3月31日,2億2600万1000円の補助金交付を受けた。 国・県補助2億2600万1000円(エ)施設認可平成9年4月ころ,川里苑の施設が認可された。 オ社会福祉法人彩鷲会・鷲宮苑(ア)設立被告Aは,平成7年11月16日に 助金交付を受けた。 国・県補助2億2600万1000円(エ)施設認可平成9年4月ころ,川里苑の施設が認可された。 オ社会福祉法人彩鷲会・鷲宮苑(ア)設立被告Aは,平成7年11月16日に彩鷲会の法人認可申請を行い,彩鷲会は,平成7年12月1日に設立認可を受け,平成7,8年度の継続事業として,北葛飾郡鷲宮町における特別養護老人ホーム鷲宮苑の建設が計画された。 (イ)建設工事被告Aを理事長とする彩鷲会は,平成8年3月,被告JWMとの間で,鷲宮苑の建設工事に関し,代金7億1997万円で請負契約を締結し,被告JWMは,斉藤工業との間で,代金6億3000万円で下請工事契約を締結した。 (ウ)補助金交付a平成7年度彩鷲会は,平成7年12月に平成7年度分の補助金交付申請を行い,平成8年3月29日,2億9119万2000円の補助金交付を受けた。 国・県補助2億9119万2000円b平成8年度彩鷲会は,平成8年度分の補助金交付申請を行い,平成9年3月31日,2億1836万5000円の補助金交付を受けた。 国・県補助2億1836万5000円(エ)施設認可平成9年4月ころ,鷲宮苑の施設が認可された。 カ社会福祉法人桃泉園・上福岡苑(後の彩愛の里かみふくおか)(ア)設立被告Aは,上記ア(ア)記載のとおり,桃泉園の設立認可を受け,平成6,7,8年度の継続事業として,上福岡市(当時)における特別養護老人ホーム上福岡苑(彩愛の里かみふくおか)の建設が計画された。 (イ)建設工事桃泉園は,平成7年3月,上福岡苑の建設工事に関し,被告JWMとの間で,代金23億6400万円で請負契約を締結し,被告JWMは,埼玉建興との間で,代金17億5380万1000万円で下請工事契約 を締結した。 (ウ)補助金交付a平成6年度 被告JWMとの間で,代金23億6400万円で請負契約を締結し,被告JWMは,埼玉建興との間で,代金17億5380万1000万円で下請工事契約 を締結した。 (ウ)補助金交付a平成6年度桃泉園は,上福岡苑に関し,平成7年3月に平成6年度分の補助金交付申請を行い,平成7年3月31日,合計1億2973万9000円の補助金交付を受けた。 国・県補助1億0378万8000円県単補助2595万1000円合計1億2973万9000円b平成7年度桃泉園は,上福岡苑に関し,平成7年度分の補助金交付申請を行い,平成8年3月29日,7億9218万9000円の補助金交付を受けた。 国・県補助7億9218万9000円c平成8年度彩吹会は,上福岡苑に関し,平成8年度分の補助金交付申請を行い,平成9年3月31日,2億7805万2000円の補助金交付を受けた。 国・県補助2億7805万2000円(エ)施設認可平成9年9月ころ,上福岡苑の施設が認可された。 キ以上の特別養護老人ホームにおける補助金の交付状況は,概ね,別紙1記載のとおりである(以下,別紙1記載に係る補助金,補助金交付決定,補助金交付について,それぞれ「本件各補助金」,「本件各補助金交付決定」,「本件各補助金交付」ということがある。)。 (6)贈収賄事件 ア平成8年12月9日,被告Aは,特別養護老人ホーム等の施設整備のための補助金交付等に関する協議書等の受理,審査及び社会福祉法人の設立認可等に関し,有利かつ便宜な取り計らいを受けた謝礼及び今後も同種の取り計らいを受けたい趣旨で,被告Bに合計102万円を供与したという贈賄罪で,また,被告Bは,上記趣旨のもとに被告Aから合計102万円の供与を受けたという収賄罪で,それぞれ起訴された(甲7の1ないし4枚目)。 けたい趣旨で,被告Bに合計102万円を供与したという贈賄罪で,また,被告Bは,上記趣旨のもとに被告Aから合計102万円の供与を受けたという収賄罪で,それぞれ起訴された(甲7の1ないし4枚目)。 さらに,平成8年12月25日,被告Aは,同様の趣旨で,被告Bに1000万円を供与したという贈賄罪で,また,被告Bは,上記趣旨のもとに1000万円の供与を受けたという収賄罪で,それぞれ追起訴された(甲7の5及び6枚目)。 また,平成8年12月25日,被告Aは,特別養護老人ホーム等の施設整備のための補助金交付に関して有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼及び前同様の取り計らいを受けたい趣旨で,被告Cに合計6000万円等を供与したという贈賄罪で,また,被告Cは,上記趣旨のもとに合計6000万円等の供与を受けたという収賄罪で,それぞれ起訴された(甲7の7ないし10枚目)。 イ東京地方裁判所は,平成10年6月24日,被告B及び被告Cの上記収賄被告事件並びに被告Aの上記贈賄被告事件について,それぞれ有罪の判決を言い渡し,その後上記3名の有罪が確定した(甲14ないし16)。 (7)厚生省の返還命令等厚生省は,平成10年3月31日,埼玉県及び山形県が行った調査により,補助目的以外の用途に用いられた部分が明らかになったため,事業計画を見直し,会計検査院の平成8年度決算検査報告を受けて,埼玉県及び山形県に対し,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律に基づき,総額2954万円(うち埼玉県分は1802万円)の返還を命じた(甲8)。 なお,会計検査院が不当支出であると指摘した補助金額は約3億3400万円であったが,上記返還を命じた額のうち,会計検査院の指摘に基づくものは約1600万円であり,これを除く約3億1800万円についても,埼玉県及び山 不当支出であると指摘した補助金額は約3億3400万円であったが,上記返還を命じた額のうち,会計検査院の指摘に基づくものは約1600万円であり,これを除く約3億1800万円についても,埼玉県及び山形県に対して,返還に向けて必要な措置を講じるように併せて通知をした(甲8)。 これを受けて,埼玉県は,平成10年7月17日付けで,別紙2記載のとおり,補助金交付決定のうち一部取消決定等の手続を行った(甲3)。 そして,各社会福祉法人は,上記一部取消決定等に従って補助金の一部合計2752万3000円を埼玉県に返還した。 (8)本件監査請求原告らは,平成9年6月3日及び4日,埼玉県監査委員に対し,それぞれ監査請求をした(甲1。以下,各監査請求を併せて「本件監査請求」という。)。その理由としては,概ね,「埼玉県が平成5年8月から平成8年3月までに彩福祉グループの社会福祉法人に対する補助金の交付決定をし,補助金を交付したが,彩福祉グループの設立者被告Aは,各施設の工事請負契約に当たり競争入札を行わず,その工事を被告Aが実質的に所有する被告JWMに一括下請して請け負わせ,交付された補助金について多額の差益分を取得している。また,被告Aは,被告Cや被告Bから補助金の交付等に関し有利かつ便宜な取り計らいを受け,それぞれ職務に関し賄賂を授受していたものであるから,上記補助金交付決定は違法なものである。そして,上記差益分は埼玉県の被った損害であり,埼玉県は,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「補助金適正化法」という。)及び補助金等の交付手続等に関する規則に基づいて補助金交付決定の一部若しくは全部を取り消し,返還命令をしなければならず,被告Aによる補助金交付決定までの一連の行為は,交付された補助金から差益分を生み出し,自己の用途に流用するため 規則に基づいて補助金交付決定の一部若しくは全部を取り消し,返還命令をしなければならず,被告Aによる補助金交付決定までの一連の行為は,交付された補助金から差益分を生み出し,自己の用途に流用するためになされた詐欺的不法行為であり,被告JWM,被告B,被告Cらは それぞれに加担したもので,埼玉県の被った損害の賠償をしなければならない。埼玉県は返還命令も損害賠償請求も行っていないから地方自治法242条の『違法若しくは不当に財産の管理を怠る事実』がある。」とするものである。 上記監査委員は,平成9年7月31日付けで,本件監査請求は,地方自治法242条2項に規定する監査請求期間を徒過しており,不適法であるとして,本件監査請求を却下した(甲2)。 (9)本件訴え提起そこで,原告らは,平成9年8月29日,本件訴えを提起した。 争点((1)ないし(6)は主位的請求に係るもの,(7)は予備的請求に係るものである。)(1)地方自治法242条2項(監査請求期間制限)の適用の有無(争点1)(2)本件監査請求と本訴請求の同一性の有無(争点2)(3)被告A及び被告JWMの違法行為の有無(争点3)(4)被告Bの共同不法行為の成否(争点4)(5)被告Cの共同不法行為の成否(争点5)(6)損害額(争点6)(7)原告らの予備的請求(県の補助金に係る概算払精算請求権の代位行使)の当否(争点7) 当事者の主張の概要(以下において,特定の被告に関する部分は適宜その旨明示するが,それ以外には被告ら共通である。)(1)争点1(地方自治法242条2項(監査請求期間制限)の適用の有無)について(被告らの主張)原告らの本件訴えは,地方自治法242条2項所定の監査請求期間を徒過した不適法なものである。 ア地方自治法242条2項及び最高裁昭和6 請求期間制限)の適用の有無)について(被告らの主張)原告らの本件訴えは,地方自治法242条2項所定の監査請求期間を徒過した不適法なものである。 ア地方自治法242条2項及び最高裁昭和62年判決地方自治法242条2項は,住民監査請求は,当該違法,不当な行為のあった日又は終わった日から1年以内に行わなければならないと規定している。 そして,最高裁昭和62年2月20日判決(民集41巻1号122頁,以下「最高裁昭和62年判決」という。)は,監査請求が,当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし,当該行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときは,当該監査請求については,怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該行為のあった日又は終わった日を基準として地方自治法242条2項の規定を適用すべきである旨判示している。 本件監査請求は,結局のところ,埼玉県の補助金交付決定及び補助金交付を違法又は不当な公金の支出であるとし,その結果発生する損害賠償請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものというべきである。 原告らは,本件監査請求の対象は,被告らの共同不法行為に基づく損害賠償請求権であるとするが,上記被告らの共同不法行為とは,補助金交付決定及び補助金交付が違法であることを前提として初めて成り立つものであり,上記共同不法行為は,補助金の交付の違法性と表裏一体をなすものといわざるを得ない。 とすれば,上記判例によれば,損害賠償請求権の発生原因である補助金の交付日を基準として,その日から1年以内に監査請求を行うべきである。 しかるところ,平成9年6月3日及び4日になされた本件監査請求の対象は,平成5年8月から平成8年3 償請求権の発生原因である補助金の交付日を基準として,その日から1年以内に監査請求を行うべきである。 しかるところ,平成9年6月3日及び4日になされた本件監査請求の対象は,平成5年8月から平成8年3月までの補助金の交付決定及び交付であり,本件監査請求は,補助金の交付決定及び交付がなされた日から1年 を経過したものであって,不適法なものである。 また,本件においては,補助金の交付は公的な行為であるし,平成8年11月の新聞等の報道でその存在は平成8年11月ころには補助金の交付についてその内容を知り得たのであるから,平成9年6月3日及び4日になされた本件監査請求に「正当な理由」(地方自治法242条2項ただし書)は認められず,本件監査請求は不適法であるから,本件主位的請求に係る訴えも不適法である。 イ平成14年の2件の最高裁判決と本件との関連最高裁平成14年7月2日判決(民集56巻6号1049頁)及び最高裁平成14年10月3日判決(民集56巻8号1611頁)は,最高裁昭和62年判決によって示されていた法理を再度確認した上で,ただし,監査委員が怠る事実の監査を遂げるために,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には,当該怠る事実を対象としてされた監査請求は,地方自治法242条2項の趣旨を没却するものとはいえず,これに同項を適用すべきではない旨判示しているが,上記2判例の事案は,県と民間会社間の工事請負契約が問題となった事案であり,請負代金額が談合によってつり上げられた不当なものであること及びこの請負契約に基づいて県が不当な請負代金額を支出したことの2点のみを確定すれば,怠る事実があるか否かを判断できるという事案である。 これに対して,本件は,①社会福祉法人と建設会社(被告JWM)との間 請負契約に基づいて県が不当な請負代金額を支出したことの2点のみを確定すれば,怠る事実があるか否かを判断できるという事案である。 これに対して,本件は,①社会福祉法人と建設会社(被告JWM)との間の工事請負契約の締結,②これに対する社会福祉法人と埼玉県の間の補助金交付決定(財務会計行為)という二重の構造になっており,県が被告らの共同不法行為により損害を被ったか否かを判断するには,補助金交付決定のための審査という財務会計行為において請負工事代金額がどのように評価され,この評価によって一般的な補助金額に比して本件における補 助金額がどの程度引き上げられたかを検討することが必要である。 とすれば,結局のところ,本件において県の被告らに対する共同不法行為に基づく損害賠償請求権の存否につき判断するには,社会福祉法人と建設会社間の請負契約の違法・不当性が本件における補助金額に違法・不当な影響を与えたかどうかという検討,すなわち,本件各補助金交付決定の審査という財務会計上の行為における違法性の検討を必須のものとして伴うのである。 したがって,本件における不法行為の成否の判断をなすには,財務会計行為の違法性の判断が必然的に伴う関係にあるため,本件は,上記2判例とはその事案を異にするといえ,地方自治法242条2項本文の適用を受けることは明らかである。 ウ最高裁平成14年10月3日判決と被告Bの地位(被告Bの主張)(ア)上記最高裁判決は,監査委員が怠る事実の監査をするに当たり,当該行為が財務会計行為に違反して違法であるか否かの判断をしなければならないという関係にない場合には,原則として当該怠る事実を対象としてされた監査請求に上記の期間制限が及ばないとすべきとし,期間制限に服しないと判示した。これに対し,財務会計職員又はその前任者ないしは補助職員 う関係にない場合には,原則として当該怠る事実を対象としてされた監査請求に上記の期間制限が及ばないとすべきとし,期間制限に服しないと判示した。これに対し,財務会計職員又はその前任者ないしは補助職員が財務会計上の行為の準備行為・補助行為として行った行為は,財務会計上の行為と一体としてとらえられるベきものであり,準備行為・補助行為の違法が財務会計上の行為の違法を構成する関係にあるときは,準備行為・補助行為が違法であるとして,これに基づいて発生する損害賠償請求権の行使を怠る事実を対象としてなされた監査請求は,実質的に財務会計上の行為の違法を主張してその是正を求める趣旨のものにほかならないとし,財務会計職員又は前任者であった者ないしは補助職員の行為に関する監査請求につき,地方自治法242条2項の期間制限が及ぶ旨判示している。 (イ)被告Bは,平成4(1992)年4月1日から平成7年(1995年)3月31日までは,埼玉県生活福祉部高齢者福祉課長の職にあった。 平成4年当時,高齢者福祉課においては,社会福祉法人施設設置の認可(ただし,平成5年4月1日からは福祉事務所に権限が委譲された。)並びに国及び県などの補助金等の受理・審査・交付・清算等の事務を取り扱っており,被告Bは同部課長として上記事務につき決裁権・裁量権を有していた。 このように被告Bは決裁権・裁量権を有していたため,補助金交付決定が行われる場合には補助金交付決定についての財務会計職員であったものといえる。そのため,上記職にあった平成4年4月1日から平成7年3月31日までの間の補助金交付決定に関する被告Bの行為は,補助金交付決定審査という「財務会計上の行為」についての準備行為に該当するといえ,これについては財務会計上の行為と一体としてとらえられるべきものである。 したがって,原 決定に関する被告Bの行為は,補助金交付決定審査という「財務会計上の行為」についての準備行為に該当するといえ,これについては財務会計上の行為と一体としてとらえられるべきものである。 したがって,原告らの主張するとおり被告Bが,被告A及び被告JWMが違法な利益を得ることを知りながら埼玉県としての手続を進めた場合には,被告Bによる準備行為の違法が(財務会計上の行為である)補助金交付決定の違法を構成する関係にある。 そのため,本件監査請求中,被告Bの上記準備行為の違法を理由とする損害賠償請求権の行使を怠る事実を対象とする部分については,本件各補助金交付決定がなされた日を基準として地方自治法242条2項本文の規定が適用され,1年間の期間制限に服するというべきである。 (ウ)そして,被告Bが厚生省年金局企画課課長補佐となった平成7年4月1日以降においては,後任者が被告Bの準備行為を引き継いだ上で補助金交付決定を行っているものである。そのため,同日以降に行われた補助金交付決定審査についても,それ以前に行われた被告Bの行為を引 き継ぐ性質を有しているといえるのであり,被告Bによる準備行為の違法が平成7年4月1日以降に行われた(財務会計上の行為である)補助金交付決定の違法を構成する関係にあるといえる。 したがって,本件監査請求中,被告Bの上記準備行為の違法を理由とする損害賠償請求権の行使を怠る事実を対象とする部分についても,本件各補助金交付決定がなされた日を基準として地方自治法242条2項本文の規定が適用され,1年間の期間制限に服するというべきである。 (原告らの主張)ア原告らが代位行使している地方公共団体の実体的請求権地方自治法242条の2第1項4号に基づく代位請求訴訟を住民が提起する場合には,被代位者たる地方公共団体が訴訟の相手方に対し, (原告らの主張)ア原告らが代位行使している地方公共団体の実体的請求権地方自治法242条の2第1項4号に基づく代位請求訴訟を住民が提起する場合には,被代位者たる地方公共団体が訴訟の相手方に対し,実体上の請求権を有していることが前提となる。 本件において原告らが主張している上記実体上の請求権は,被告らの共同不法行為に基づく損害賠償請求権である。 すなわち,被告らは,当初から一括下請したことにより生じた差益分に相当する不当な利得を被告A及び被告JWMに得させることを企図して,県をして本来であれば認められるはずのない補助金交付を行わせたものであるから,県を被害者とする詐欺行為(共同不法行為)を行ったというものである。 イ地方自治法242条2項の立法趣旨と最高裁昭和62年判決監査請求は,財務会計「行為」があった日から(1回的行為の場合)又は終わった日(継続的行為の場合)から1年を経過したときはこれをすることができないのが原則である。これは,財務会計行為がたとえ違法,不当なものであっても監査請求ができるものとすると行政行為の安定性(法的安定性)を損ない望ましくないからである。しかし,「怠る事実」を対象とする監査請求については期間の制限がなく,いつまでもすることがで きるというのが原則である。これは,「怠る事実」が存する限り,違法,不当な財務会計行為が継続していることになるからである。 しかし,財務会計行為が違法であることに基づいて発生する当該職員に対する損害賠償請求権の行使を怠る事実に係る監査においては,当該「怠る事実」の違法,不当を審査するにとどまらず,必然的に当該「行為」の違法を審査せざるを得ないから,当該「行為」に係る監査と内容が重複することとなり,当該「行為」に係る監査請求とは別に当該「怠る事実」に監査請求を認めると,同一の財 とどまらず,必然的に当該「行為」の違法を審査せざるを得ないから,当該「行為」に係る監査と内容が重複することとなり,当該「行為」に係る監査請求とは別に当該「怠る事実」に監査請求を認めると,同一の財務会計行為の違法について実質的に2度監査請求を認めることになり,法の趣旨に反する。 したがって,当該「行為」に係る監査請求には,特段の事情が認められない限り,当該行為が違法であることに基づいて発生する損害賠償請求権の行使を「怠る事実」に係る監査請求が含まれているというべきであり,このような考え方に立って最高裁昭和62年判決は,財務会計上の行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実に係る住民監査請求については,当該行為のあった日又は終わった日を基準として地方自治法242条2項を適用すべきである旨判示したのである。 ウ最高裁平成14年7月2日判決の趣旨と本件へのあてはめしかし,「監査委員が当該行為が違法であるか否かを判断しなければ当該怠る事実の監査を遂げることができないという関係にはない」場合には,最高裁昭和62年判決の示した例外法理を適用しなければ法が監査請求に期間制限を設けた趣旨が没却されることにはならないから,原則どおり,怠る事実に係る監査請求については,期間制限をすべきではないことになる。すなわち,客観的にみれば当該行為が財務会計法規に違反しているとしても,監査委員がその判断をしないでも監査を遂げることができる場合には最高裁昭和62年判決の法理を適用すべき理由はない。このように考 えて,最高裁平成14年7月2日判決は,「監査委員が怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしな 月2日判決は,「監査委員が怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には,・・・当該怠る事実を対象とされた監査請求は,本件規定(地方自治法242条2項)の趣旨を没却するものとはいえず,これに本件規定を適用すべきものではない」と判示している。 本件において監査請求を遂げるためには,監査委員は,県が被告JWMに補助金交付決定をしたことや特別養護老人ホームの建設工事の一括下請がなされて不当に廉価に施設が建設されたか否かについて検討せざるを得ないのであるが,県の補助金交付決定やその金額の決定が財務会計法規に違反する違法なものであったとされて初めて県の被告らに対する損害賠償請求権が発生するものではなく,被告らの共謀,これに基づく被告JWMへの補助金交付決定が不法行為上違法の評価を受けるものであること,これにより県に損害が発生したことなどを確定しさえすれば足りるのであるから,本件監査請求は県の補助金交付決定を対象とする監査請求を必ずしも含むものではない。したがって,これを認めても,地方自治法242条2項の趣旨が没却されるものではない以上,上記規定の適用がないものと解すべきである。 (2)争点2(本件監査請求と本訴請求の同一性の有無)について(被告らの主張)ア原告らが本件各補助金交付決定及び本件各補助金交付の適法・違法とは全く無関係である損害賠償請求権の行使を怠る事実について住民訴訟を提起するものであるとするならば,当然その前提となる監査請求についても,補助金の交付決定及び交付の適法・違法とは関係なく発生した損害賠償請求権の行使を怠る事実についてなすべきところ,本件監査請求は,本件各 ものであるとするならば,当然その前提となる監査請求についても,補助金の交付決定及び交付の適法・違法とは関係なく発生した損害賠償請求権の行使を怠る事実についてなすべきところ,本件監査請求は,本件各 補助金交付決定及び本件各補助金交付の違法性を対象としたものとなっている。 したがって,本訴請求は,本件監査請求との同一性を欠いており,その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実について監査請求を経ていると認めることができず,監査請求前置主義の要請に反し,不適法である。 イまた,本件監査請求の対象は,監査請求書(甲1)に記載されているとおり,平成5年8月から平成8年3月までの間になされた補助金の交付決定及び交付であり,平成8年4月以降に補助金の交付決定及び交付を対象としたものでないことは明らかであるところ,原告らは本件訴訟においては,平成9年3月に交付された平成8年度分の補助金についても対象としている。 そして,補助金の交付決定及び交付は毎年度行われており,それぞれ異なった財務会計上の行為であり,本件監査請求の対象となっている平成5年8月から平成8年3月までの補助金の交付と平成9年3月に交付された平成8年度の補助金の交付とは別個の行為であって,平成9年3月の補助金の交付に関しては監査請求の対象と同一性を欠くものである。 したがって,少なくとも本訴請求の対象のうち平成9年3月になされた平成8年度分の補助金の交付に関する部分については,監査請求を経由しておらず,監査請求前置主義に反し,不適法なものである。 (原告らの主張)本件監査請求は,被告Bらが加担した被告Aによる詐欺的不法行為の結果,埼玉県に損害を発生させているにもかかわらず,埼玉県知事が被告らに対し返還命令も損害賠償請求も行わず放置していることをとらえ,これは地方自治法242条1項の 担した被告Aによる詐欺的不法行為の結果,埼玉県に損害を発生させているにもかかわらず,埼玉県知事が被告らに対し返還命令も損害賠償請求も行わず放置していることをとらえ,これは地方自治法242条1項の定める「違法若しくは不当に財産の管理を怠る事実」であるとして必要な措置を求めるものであり,上記詐欺的不法行為とは,本件各補助金の交付を受けた各社会福祉法人を主宰していた被告Aが,被告Bや 被告Cと結託して,被告Aが実質的に所有する被告JWMに上記各社会福祉法人の設営する特別養護老人ホーム等の建設を請け負わせ,さらに被告JWMが他の建設業者に一括下請を行い,それによって交付を受けた補助金の差益分を不法に取得したというものである。 たしかに,甲1の監査請求書には,「1993年8月から96年3月までに」,埼玉県が認可した彩福祉グループの社会福祉法人に対して補助金の交付を決定し,交付した旨記載されているが,本件監査請求は,被告Aらによって埼玉県が詐取された公金について,知事が被告らにこれを返すように求めるか,損害を弁償するように求めてほしいとしているものであって,上記期間内に限定し,この間の補助金交付決定や交付など個々の財務会計上の行為を違法であるとか,不当であるとか判断すること自体を求めたものではない。そもそも,原告らは監査請求の段階では,本件に関して補助金が,いつ,どのような手続で,いくら支払われたかなど知る由もない。 一方,本件訴訟が,特別養護老人ホーム等の建設をめぐる被告らの行為によって埼玉県に発生させた損害を放置したまま,「財産の管理を怠る」埼玉県に代位して被告らに損害賠償を請求するものであることは,明らかであり,本件監査請求の対象と同一のものであることは明らかである。 (3)争点3(被告A及び被告JWMの違法行為の有無)について(原 県に代位して被告らに損害賠償を請求するものであることは,明らかであり,本件監査請求の対象と同一のものであることは明らかである。 (3)争点3(被告A及び被告JWMの違法行為の有無)について(原告らの主張)被告Aは,被告JWMの代表取締役であった者であり,本件各補助金交付決定及び本件各補助金交付がなされた平成6年から平成8年にかけて桃泉園ほか4つの社会福祉法人の理事長であった。 被告Aは,桃泉園ほか4つの社会福祉法人が,平成6年から8年にかけて北本特別養護老人ホームほか5つの社会福祉施設の建設に当たり,各法人の理事長として自身が代表取締役を務める被告JWMとの間に請負契約(元請契約)を締結し,さらに,被告JWMが請け負った各社会福祉施設の建設工 事について斉藤工業などの各社に一括下請させた。 そして,被告Aは,各社会福祉法人の理事長として,上記各社会福祉施設の建設事業の各年度において,埼玉県に対し,補助金交付申請を行ったが,その際の算定基礎とした請負代金額はいずれも被告JWMが請け負った元請契約代金であり,それよりはるかに低額な一括下請による代金額ではなかった。 特別養護老人ホーム等の社会福祉施設の施設整備等を対象とする補助金交付について,埼玉県では総事業費又は補助基準額を基に補助金額を算出するが,被告Aは本来算定されるべき下請代金ではなく,被告JWMが請け負った元請代金を算定基礎としたのである。すなわち,被告Aは,本件各社会福祉施設の建設工事に際して,補助金を過大に取得する目的で,被告JWMをいわばトンネル会社として介在させたのである。 その結果,被告Aは補助金を過大に取得し,埼玉県に損害を被らせた。 したがって,被告A及び被告JWMの行為は,過大な補助金を取得することを企図して,県をして本来であれば認められるはずのない補助金交 。 その結果,被告Aは補助金を過大に取得し,埼玉県に損害を被らせた。 したがって,被告A及び被告JWMの行為は,過大な補助金を取得することを企図して,県をして本来であれば認められるはずのない補助金交付を行わせたものであるから,埼玉県を被害者とする詐欺行為であって,共同不法行為に該当する。 その他,被告Aらは,虚偽の契約書を作成したり,トンネル会社を介在させるなどし,彩福祉グループの5法人6施設に関し,介護用リフトの売買契約や建設工事の監理・設計の委託契約についても補助金を過大に取得する目的で正規の契約金額ではない契約金額を基礎として補助金の申請をし,補助金の交付を受けており,これらは不法行為に該当する。 (被告A及び被告JWMの主張)ア原告らは,被告Aが,社会福祉法人と被告JWM間の工事を下請業者に一括下請させることにより,過大な補助金を取得し,埼玉県に,下請金額を基礎とした補助金額と実際に交付された補助金額の差額分の損害を与え たと主張する。 しかし,一括下請の形態による施設の建設は,四会連合協定工事請負契約約款にも根拠を有する適法かつ現実の建設業界で広く行われている形態であり,代金額も,元請代金は,現場管理等を元請負人が行うことを見込んだ上で金額が決定されるところ,下請負人にはそういった負担が生じないため,その分だけ下請代金の方が低額になるのが通常である。 また,実際には,本件の各建設工事について,追加工事が発生し,それぞれの工事について,追加工事費用の請求があった。この費用は,社会福祉法人に転嫁せず,被告JWMが負担しており,結局,被告JWMは,追加工事費用が積み重なったこともあって赤字になっている。 イ次に,被告JWMに発注し,一括下請させたことにも合理的な理由がある。 すなわち,被告JWMには,1級建築士(管理技術者の 被告JWMは,追加工事費用が積み重なったこともあって赤字になっている。 イ次に,被告JWMに発注し,一括下請させたことにも合理的な理由がある。 すなわち,被告JWMには,1級建築士(管理技術者の資格も保有している)が7,8人,2級建築士が3人ほど,その他の職員を合わせて10数名の社員がいた。これらの者は,特別養護老人ホームの建設工事の経験もあった。 特別養護老人ホームの建設に当たっては,補助金交付を受けるために,年度末までにスケジュールどおり工事が終わっている必要があるので,その管理を厳格にしなくてはならない。また,ゼネコンとの価格交渉に当たっては,過度な値引きをすると,ゼネコン側はその分を追加工事や手抜き工事で取り戻そうとするのが常態である。こういったリスクを避けつつ,ゼネコンをうまくコントロールするためには,資格もあり,また特別養護老人ホーム建設の経験のある人材を有している被告JWMに発注することが不可欠であった。 現に,被告JWMは,被告Aの関係する施設のほかにも,緑風苑,安心会といった特別養護老人ホームの建設工事も受注している。これは,被告 JWMが特別養護老人ホームの建設についてノウハウを備えた実体のある会社であることを裏付けるものである。 このように,被告JWMは,特別養護老人ホームの建設についてノウハウを有しており,同社が,他の業者に一括下請に出すことで初めて,各種の調整監督など施工管理の機能を果たすことができるのであり,実際,本件における工事には,被告JWMは,これら資格者を現場監督に行かせるなどして,この施工監理の機能を果たしているのである。 ウそもそも,被告Aが,社会福祉法人を設立しようと思いたったのは,来るべき衆議院選挙に立候補する際に,有権者にアピールできる実績をつけたいと思っていたからや名誉欲からで 能を果たしているのである。 ウそもそも,被告Aが,社会福祉法人を設立しようと思いたったのは,来るべき衆議院選挙に立候補する際に,有権者にアピールできる実績をつけたいと思っていたからや名誉欲からであって,そこに,利ざや稼ぎなどという,原告らが主張するような意図はなかったのである。 実際にも,被告Aは,何らの利得も得ていない。被告Aの逮捕後,国税庁が本件各補助金の流れに疑問を持ち,被告Aが利得していないかどうかを調査しているが,利得なしとの結論であった。このことからも,被告Aに利得がないこと,ひいては,私的流用の意図などないことが裏付けられる。 (4)争点4(被告Bの共同不法行為の成否)について(原告らの主張)ア被告Bは,平成4年4月1日から平成7年3月31日まで,埼玉県生活福祉部高齢者福祉課長として,特別養護老人ホーム等の施設整備のための補助金交付等に関する協議書等の受理,審査及び社会福祉法人設立認可等の事務を所掌していた。 イ被告Bは,被告Aや被告JWMが特別養護老人ホームの施設を建設するに際して,被告JWMが受注し,他のゼネコンに一括下請させることにより違法な利益を得ることを知りながら,特別養護老人ホームの建設資金等について被告Aの特別養護老人ホームの各運営主体に対し補助金 交付されるように埼玉県としての手続を進め,ひいては,その補助金が埼玉県から上記各運営主体に交付され,その結果,埼玉県に対し,不当に交付された補助金相当額の損害を発生させた。 ウ被告Bの違法行為を推認させる事実(ア)被告Aの平成8年12月20日付け検察官面前調書(甲20)によると,「私の建設する特別養護老人ホームなどは,JWMが受注することは決まっておりますので,名ばかりの入札を行って,低い価格で入札した業者などと交渉し,あるいは,あらかじめ下 面前調書(甲20)によると,「私の建設する特別養護老人ホームなどは,JWMが受注することは決まっておりますので,名ばかりの入札を行って,低い価格で入札した業者などと交渉し,あるいは,あらかじめ下請業者と話し合って受注価格を決めるなどの方法で,差益を出し,用地取得代金などを捻出しましたが,これは,Bさんと話し合って思い付いた方法でしたし,BさんもJWMが受注している実態は,施設の認可をする立場ですからよくわかっていたはずで,それを黙認してくれたばかりか,JWMの実績を付けるために,行田市の緑風苑の理事長に建替工事にJWMを使うように推薦してくれたりしました。」などと述べている。 したがって,被告Bは,被告Aや被告JWMが各特別養護老人ホームの施設建設において被告JWMが建設を請け負い,その建設工事を一括でゼネコンに下請させて差額を得ようと考え,被告JWMが受注する金額と下請への発注金額の差額について埼玉県から過大な補助金を支出させたことについて知りながら補助金交付についての埼玉県としての手続を進めたことは明らかである。 (イ)また,被告Bは,被告Aとの贈収賄刑事事件で有罪判決が確定しているように,平成8年8月に選挙運動資金名目で1000万円を受領しているが,もし,被告Bにおいて,被告Aが被告JWMの一括下請による補助金の多額の差額利益を取得をしていることを許容していなければ,このような多額の金員を被告Aから受領することは考えられないし,別の理由があるとしてもそのような事実は上記贈収賄刑事事件における事 件記録においても認められない。 (ウ)被告Aが特別養護老人ホームの設置,運営を始めるようになった経緯と被告Bが果たした役割について,被告C及び被告Bに対する贈収賄刑事事件の第1審判決(甲14)において,裁判所は次のように認定し (ウ)被告Aが特別養護老人ホームの設置,運営を始めるようになった経緯と被告Bが果たした役割について,被告C及び被告Bに対する贈収賄刑事事件の第1審判決(甲14)において,裁判所は次のように認定している。 「被告Aは,平成4年4月,埼玉県生活福祉部高齢者福祉課長として赴任した被告Bから,埼玉県内には特別養護老人ホームが不足しており,『土地さえあれば,国や県から交付される補助金で特別養護老人ホームを建設でき,運営についても措置費が支給されるので安定した収入が得られる。』等の説明を受けて,特別養護老人ホームの設置及び運営に強い興味を抱き,その後も折をみて,被告Bから特別養護老人ホームの設置,運営に関する様々な教示を受けた。その結果,被告Aは,同年5月上旬ころ,被告Bに対して,特別養護老人ホームの設置,運営を始めることとした旨伝えたところ,被告Bからこれに対する協力の約束を取り付けた。」(エ)その後,被告Aは,被告Bの全面的な協力の下に,北本特別養護老人ホームの設置を計画し,その運営主体となる桃泉園の設立認可を受けた上,補助金の交付を受けている。その際,一括下請により,被告Aは本来得られる額以上の過大な補助金を得ている。 さらに,この後,本件各補助金の不正取得に関わる各特別養護老人ホームの設置計画を相次いで立てている。 エ以上のとおりであり,被告Bは,被告Aとの間において,特別養護老人ホームの建設工事について,被告JWMが建設工事を請け負い,その工事を低額で下請業者に一括下請することによって,違法な差額利益を得ることを許容して,積極的に補助金の交付に関与したものであるから,共同不法行為が成立する。 (被告Bの主張)ア被告Bが埼玉県生活福祉部高齢者福祉課長であった当時(平成4年4月1日から平成7年3月31日まで),埼玉県は特 金の交付に関与したものであるから,共同不法行為が成立する。 (被告Bの主張)ア被告Bが埼玉県生活福祉部高齢者福祉課長であった当時(平成4年4月1日から平成7年3月31日まで),埼玉県は特別養護老人ホームの整備が遅れており,相当なペースで整備を進める必要があると考えていた。このため,被告Aをはじめ他の施設設置希望者に多くの施設を設置してもらうことが埼玉県のためになると考え,市町村や事業団との調整等できるかぎりの協力をしてきた。 被告Bは,その在任中に,特別養護老人ホーム,ケアハウス,老人保健施設,訪問看護ステーションなど100を越える施設を整備したのであり,被告Aの案件はその一部でしかなかった。また,被告Bが,それだけ努力してもその任期中に目標整備数の施設を設置することはできなかったのであり,被告Aの案件を採択するために他の施設設置希望者の案件をつぶしたというようなことは一切なかった。 また,被告Bは,被告Aから被告JWMが下請業者に一括下請を行うことについて何の相談も受けておらず,また埼玉県の担当者や国の担当者,その他の誰からも一括下請を行っていることについての報告を受けていなかった。そのため,被告Bは,被告JWMが下請業者に一括下請を行っていた事実については全く知らなかった。 被告Aも,同人の贈収賄刑事事件の公判廷における供述において,被告Bの具体的な関与を否定している(乙16)。 イ原告らは,被告Bが贈収賄刑事事件により有罪判決を受けていることから,被告Bは,多額の賄賂を受領した以上,被告JWMの一括下請による過大な補助金の取得を許容していたというのであるが,被告Bが現実に取った行動は,市町村に対し被告Aの特別養護老人ホーム等設置計画について同意してもらうように働きかけたり,また,部下職員に指示し,被告Aの特別養護老 得を許容していたというのであるが,被告Bが現実に取った行動は,市町村に対し被告Aの特別養護老人ホーム等設置計画について同意してもらうように働きかけたり,また,部下職員に指示し,被告Aの特別養護老人ホームの設置計画に指導助言を与え計画をまとめさせたり, さらには施設計画を国の協議に上げるに際し,部下職員が決めてきた順位を変更して被告Aの計画を高順位のものとして国の協議に付したり等,補助金交付に関して手続を円滑・迅速に進めるよう働きかけるといった程度のものであって(乙17),贈収賄刑事事件の事件記録上も被告Bが被告JWMによる利得を黙認したかのごとき事実は何ら窺われない。この点の原告らの主張は単なる憶測の域を出るものではない。 ウ以上のとおりであり,被告Bに共同不法行為は成立しない。 (5)争点5(被告Cの共同不法行為の成否)について(原告らの主張)ア被告Cは,平成元年6月27日から平成4年6月30日まで,厚生大臣官房老人保健福祉部長として,老人福祉法等に基づく特別養護老人ホーム等の施設整備のための補助金の交付並びに同施設の設置認可及び老人福祉事業を行うことを主たる目的とする社会福祉法人の設立認可に関する都道府県知事に対する指導監督等の事務を掌理し,平成5年6月29日から平成6年9月1日まで,大臣官房長として,厚生省の所掌事務に関しての基本的かつ総合的な政策の策定,各部局間の総合調整,予算,決算及び人事等に関する事務を掌理し,その後,平成6年9月2日から,平成8年7月1日まで,厚生省保険局長の職にあった。 イ被告Cは,被告Aや被告JWMが特別養護老人ホームの施設を建設するに際して,被告JWMが受注し,他のゼネコンに一括下請させることにより違法な利益を得ることを知りながら,少なくとも被告Aの特別養護老人ホームの各運営主体に対 WMが特別養護老人ホームの施設を建設するに際して,被告JWMが受注し,他のゼネコンに一括下請させることにより違法な利益を得ることを知りながら,少なくとも被告Aの特別養護老人ホームの各運営主体に対する国の補助金が埼玉県に対し交付がなされることについて黙認し,ひいては,その補助金が埼玉県から上記各運営主体に交付され,その結果,埼玉県に対し,不当に交付された補助金相当額の損害を発生させた。 ウ被告Cの違法行為を推認させる事実 (ア)被告Aの平成8年12月18日付け検察官面前調書(甲21)では,「私が厚生省で力のあるCさんを握っていたため,埼玉県生活福祉部高齢者福祉課に課長として厚生省から出向してきたBさんも私が特別養護老人ホームなどの設置で国や県の補助金を受給するのに尽力してくれたのだと思っていました。だからこそ,私はCさんに特別養護老人ホームなどの土地の入手,市町村との交渉状況,建物の規模,構造やBさんが私に協力してくれていることなどことあるごとに報告していました。」,「平成5年夏ころから,私は,当時不景気の最中でゼネコンなども仕事がなく,下請価格でたたいても,つまり,施設建設をJWMが受注し,ゼネコンなどに下請に出す際,発注額をJWMの受注額よりかなり低くしても受注する実態を知り,整備,設備などの補助金を浮かせて,つまり,JWMの受注工事をゼネコンに対し,低額で,いわゆる一括下請に出して差益を出そうという考え,北本特別養護老人ホームだけではなく,県内にもっと特別養護老人ホームなどの老人福祉施設を建設しようと考えたのです。」,「私は,いずれも,そのころ,Cさんと飲食した際などに,彼に対し,『特養の建設は,JWMで受注することにしました。そこで下請などに回す際に利益を出し,施設の土地代に充てます。』などと報告し,Cさんは,『 ,いずれも,そのころ,Cさんと飲食した際などに,彼に対し,『特養の建設は,JWMで受注することにしました。そこで下請などに回す際に利益を出し,施設の土地代に充てます。』などと報告し,Cさんは,『いい考えだな。JWMは廃棄物処理の会社だろう,建設なんかできるのか。』と聞くので,私は,『資格のある人を入れ,建築業の許可も取りましたから。』と報告すると,『そうか』などと言ってくれました。Cさんは老人保健福祉部長を3年間もやっており,その事業の実態に詳しい人でしたから,私の話が指名競争入札など建前でしかないという実態を前提として話しているのに,何の違和感もない様子でした。」と述べている。 このように,被告Cは,特別養護老人ホームの建設に際して,国や県から多額の補助金が支出される仕組みを知り抜いていたことに照らせば, 被告A及び被告JWMが,各特別養護老人ホームの施設建設において被告JWMが建設を請け負い,その建設工事を一括でゼネコンに低額で下請させてその差額を得ようと考え,被告JWMが受注する金額と下請への発注金額の差額について埼玉県から過大な補助金を支出させていたことについて,少なくともこれを黙認していたことは明らかである。 (イ)また,被告Cは,被告Aとの贈収賄刑事事件で有罪判決が確定しているように,平成6年7月から8月にマンション購入資金として被告Aより6000万円もの多額の金額を賄賂として受領している。もし,被告Cにおいて,被告Aが被告JWMの一括下請による補助金の多額の差額利益を取得をしていることを許容していなければ,このような多額の金員を被告Aから受領することは考えられないし,別の理由があるとしてもそのような事実は上記贈収賄刑事事件における事件記録においても認められない。 (ウ)そして,被告C及び被告Bに対する贈収賄刑 の金員を被告Aから受領することは考えられないし,別の理由があるとしてもそのような事実は上記贈収賄刑事事件における事件記録においても認められない。 (ウ)そして,被告C及び被告Bに対する贈収賄刑事事件の第1審判決(甲14)において,裁判所は次のように認定している。 「Aは,平成4年4月には,課長職が交代になると聞きつけたことから,同年2月,厚生省にCを訪ね,新課長の予定者がBであるとの情報を得て,『今度来る課長によろしくお伝え願えますか。』と依頼して,Cからその承諾を得た。そこで,Cは,平成4年4月,転任の挨拶回りに来たBに対して,『埼玉県にはAという人がいて,彼とは古くからの付き合いだから,よろしく頼むよ。』とAのための好意ある取り計らいを依頼した。」,「Aは,平成4年4月1日付けで埼玉県生活福祉部高齢者福祉課長として着任したBから,同月21日以降,特別養護老人ホームの設置及び運営について,様々な教示を受けるようになった。」,「そこで,Aは,平成4年5月7日,赤坂の料亭に大臣官房老人保健福祉部長であったCを接待した際,Bから特別養護老人ホームの設置及び 運営を勧められていることを明らかにして,助言を求めたところ,Cは,特別養護老人ホームの運営に要する費用は国庫から措置費が支給されるので,経営は安定していること,一部には職員の人件費を抑制して,多額の報酬を得ている施設長も存在するなどと説明した上,Aがこの種施設の設置及び運営に乗り出すのであれば,全面的に支援することを約束した。」(エ)被告Aは,そのような経緯も加わって,平成4年5月上旬ころまでには,被告B及び被告Cの支援を取り付けたことから,特別養護老人ホームの事業展開に乗り出すことを決意したのであり,被告Cは,被告Aが本件各補助金の不正取得の基盤づくりを全面的にバック 月上旬ころまでには,被告B及び被告Cの支援を取り付けたことから,特別養護老人ホームの事業展開に乗り出すことを決意したのであり,被告Cは,被告Aが本件各補助金の不正取得の基盤づくりを全面的にバックアップしたのである。 さらに,被告Cは,被告Bの協力により,それまで様々な有利かつ便宜な取り計らいを受けていた被告Aから,平成6年3月末ころ,被告Bの埼玉県への出向期間を延長してほしいと依頼され,担当者である厚生省大臣官房人事課課長補佐に対し,期間延長を指示し,これを実現させている。 エ以上のとおりであり,被告Cは,被告Aとの間において,特別養護老人ホームの建設工事について,被告JWMが建設工事を請け負い,その工事を低額で下請に一括下請させることによって,違法な差額利益を得ることを許容して,消極的に黙認していたものであるから,共同不法行為が成立する。 (被告Cの主張)ア被告Cは,「被告Aが施設建設に際して,被告JWMが受注し,他のゼネコンに一括して下請させる」ことはもとより,「これにより違法な利益を得ること」も知らなかった。被告Aから聞いたこともなければ,間接的に耳にしたこともなかった。 また「特別養護老人ホームの運営主体に対する国の補助金が埼玉県に対して交付することを黙認した」こともない。 イ被告Cは,そもそも被告Aがいつ,どの特別養護老人ホームについて補助金交付の申請をするか,あるいはしたかについては全く知らないし,交付申請事務に関わったこともない。 また,本件で問題とされている補助金は,平成6年3月18日に最初の交付が決定されて以降十数回にわたって交付されているが,被告Cは,平成8年7月まで補助金交付事務に関わる職務に就いていなかった。すなわち,平成4年6月30日まで厚生大臣官房老人保健福祉部長を務めた後は,同年4年7月 降十数回にわたって交付されているが,被告Cは,平成8年7月まで補助金交付事務に関わる職務に就いていなかった。すなわち,平成4年6月30日まで厚生大臣官房老人保健福祉部長を務めた後は,同年4年7月1日から同5年6月28日までは,薬務局長の職に,同月29日から同6年9月1日まで大臣官房長の職に,同月2日から同8年7月1日まで保険局長の職にあった。 薬務局も保険局も,特別養護老人ホームの補助金交付に全く関係ない部署であったし,官房長と補助金交付事務の関係も,「補助金交付事務は部局長の決裁事項に該当する」ものとされ(厚生省事務処理規程第7条),「補助金の交付決定に関する事項の専決者は部局長,合議者は会計課長」であることが規定されており(同事務処理規定別表),官房長の決裁する事柄ではない。 補助金交付事務に関わる権限がないのに「黙認」はありえないし,「黙認」という不作為が違法であるとしてその法的責任を問題とするのであれば,法的な作為義務に違反した者の不作為にして初めてその違法性が問題になるというべきである。 ウしたがって,被告Cに原告ら主張の共同不法行為は成立しない。 (6)争点6(損害額)について(原告らの主張)ア被告Aは,実質的に支配する社会福祉法人と被告JWMとの間の水増 しした工事代金に基づく社会福祉施設整備に関する補助金交付申請を行うなどし補助金を過大に取得し,埼玉県を欺いて同額の不法の利益を得た。 そして,埼玉県が被った損害は,実際の支出額を算定基礎とする適正な補助金額と現実に交付された補助金額との差額であり,埼玉県は,この差額について,被告らに対し損害賠償請求権を有することになる。 イ平成7年ころの埼玉県における社会福祉施設の設置運営に関する補助金制度については,平成3年11月25日付厚生事務次官通知に基づいて,「 額について,被告らに対し損害賠償請求権を有することになる。 イ平成7年ころの埼玉県における社会福祉施設の設置運営に関する補助金制度については,平成3年11月25日付厚生事務次官通知に基づいて,「社会福祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備費国庫負担(補助)金交付要綱」が策定されている。上記交付要綱によれば,社会福祉法人が養護老人ホーム及び特別養護老人ホームを設置運営しようとする場合には,その施設整備・設備整備を対象として,総事業費が補助基準額を下回る場合には総事業費の4分の3,総事業費が補助基準額を上回る場合には補助基準額の4分の3の補助金が交付され,国は都道府県からの補助金の3分の2を都道府県に補助することになるため,結局総事業費又は補助基準額の2分の1が国からの補助金,全体の4分の1が都道府県からの補助金によりまかなわれる。また,埼玉県においては,埼玉県民間社会福祉施設整備費補助金交付要綱に基づき,総事業費の16分の3を国及び都道府県からの補助金に上乗せして交付する制度が設けられていた。 ウ本件における損害額の算定(ア)損害の算定方法適正に交付すべき補助金が過大に交付された場合の県・国の損害は,基本的には,補助基準額と実支出額を比較して,いずれか少ない方の額に,補助率を乗じて適正補助額を算出し,それと実際に交付した補助額との差額である。 (イ)民事訴訟法248条の適用 本件では,埼玉県に損害が発生していることは明らかであるが,埼玉県の被った損害を試算する場合にも,条例や交付要綱等に定められた適正な補助金額と現実に交付された補助金額の差を求めることになるところ,本件の場合,平成6,7年当時の埼玉県の社会福祉施設等施設設備補助金(国庫補助対象事業)交付要綱が入手できない。さらに,実績報告書及び被告JWMと一括下 された補助金額の差を求めることになるところ,本件の場合,平成6,7年当時の埼玉県の社会福祉施設等施設設備補助金(国庫補助対象事業)交付要綱が入手できない。さらに,実績報告書及び被告JWMと一括下請を受けた業者間の請負代金額の個別明細書を入手し,被告JWM関与部分と非関与部分を区別し,各施設の実面積と基準面積を比較し,各年度ごとの工事進捗状況を認定するなど,改めて膨大な証拠の収集と分析を要する上,その作業自体専門性を要するところ,埼玉県が非協力的である本件訴訟においては,「損害の性質上その額を立証することが極めて困難である」ことが明らかであるから,民事訴訟法248条を適用して,相当な損害額を認定することが可能である。 (ウ)会計検査院の調査会計検査院の平成8年度決算検査報告書(甲10)の130頁によれば,彩福祉グループの社会福祉法人が実施した施設整備事業に関して,総額3億3391万2000円(うち埼玉県所在の5法人6施設については総額2億3019万円)の国庫補助金が過大に交付されたとし,その前提となる埼玉県内の5法人6施設ごとの「不正と認める補助対象事業費」について,調査嘱託に対する会計検査院の回答(甲22)は,その算定根拠及び不当と判断した理由を詳細に述べている。 本判決添付別紙3の1枚目から6枚目までは,甲22に基づき,それぞれ彩福祉グループの埼玉県所在の5法人6施設に対する平成5年度から平成8年度までの補助金実績及び会計検査院が適正と認定した補助金額と過大と判断した補助金額の表であり,同7枚目は,これらを合計してまとめたものである。 (エ)埼玉県の損害調査嘱託に対する会計検査院の回答(甲22)によれば,埼玉県が彩福祉グループの5法人6施設に実際に補助した金額の合計額は,40億7905万6000円であり,これに対し 。 (エ)埼玉県の損害調査嘱託に対する会計検査院の回答(甲22)によれば,埼玉県が彩福祉グループの5法人6施設に実際に補助した金額の合計額は,40億7905万6000円であり,これに対し,会計検査院が適正と認定した額は,37億3378万7000円であり,その差額3億4526万9000円が会計検査院が過大であり不当と認めた金額である。 したがって,被告Aの主宰していた彩福祉グループは,埼玉県から合計3億4526万9000円の補助金を過大かつ不正に受領したものであり,被告らは同額の損害を埼玉県に与えている。 さらに,埼玉県は埼玉県民間社会福祉施設整備費補助金要綱により,昭和46年度から,県単独の民間社会福祉施設整備費事業として,総事業費又は補助額の16分の3を上乗せして社会福祉法人に補助金を交付している。 そうすると,被告らは,上記のように過大かつ不正に受領した補助額3億4526万9000円の更に16分の3である6473万7000円(1000円未満切捨て)についても同様に過大かつ不当に受領したことになり,その合計額は4億1000万6000円となる。 なお,この金額には会計検査院が認定した国庫補助分の過大かつ不正な補助金額である2億3019万円も含まれているが,本来国庫負担分も間接補助分として埼玉県が支出したものであり,埼玉県は国庫補助負担分を国に返還を求められればそれを返還しなければならない関係にあるので,これも埼玉県が補填しなければならず,埼玉県に生じた損害であることに変わりはない。 エ以上のとおりであり,被告らが埼玉県に損害賠償すべき金額は,4億1000万6000円であり,さらに,埼玉県は,本件訴訟を通じて被告らから上記損害賠償の填補を受けた場合には,原告ら訴訟代理人たる弁護士 らに対し,報酬を支払う義務を負担している き金額は,4億1000万6000円であり,さらに,埼玉県は,本件訴訟を通じて被告らから上記損害賠償の填補を受けた場合には,原告ら訴訟代理人たる弁護士 らに対し,報酬を支払う義務を負担しているところ(地方自治法242条の2第7項),上記弁護士の報酬額は損害額の3%が相当であるから,それを加算した額の損害賠償請求権を有していることになる。 (被告らの主張)ア直接損害分について(ア)一括下請によっても補助金を詐取することが困難であること埼玉県の特別養護老人ホームに関する補助金交付決定の仕組みからすると,建設請負額と一括下請金額に差があったとしても,必ずしも一括下請後の支出額を算定基礎とする補助金額が現実に交付された補助金額と比較して低額になるとは限らない。 上記仕組みの下で補助金を詐取するためには,国及び埼玉県から交付される補助金額よりも低額で下請させる必要がある。しかしながら,埼玉県では補助基準面積を下回る面積での設計を認めておらず,当時の補助基準単価は実勢単価より低かったため,補助金額よりも低額で下請させることは相当困難であった。現に本件においては,最終的な下請金額(追加工事分を含む。)はいずれも補助基準額よりも高額となっており,補助金の詐取などという事態は到底ありえないのである。 したがって,本件において,原告らが主張するような多額の損害を被ったということは極めて考えにくい。 (イ)補助金交付決定による損害の填補埼玉県においては,補助金を概算交付した後,精算交付決定という行政処分を行うことにより補助金交付額が確定される。 埼玉県は,会計検査院からの勧告を受けた後,本件に関係する全社会福祉法人,被告JWM及び下請業者の調査を行った上で上記精算金交付決定を行い,埼玉県が不当と判断した額につき,各社会福祉法人から返還を行わせ は,会計検査院からの勧告を受けた後,本件に関係する全社会福祉法人,被告JWM及び下請業者の調査を行った上で上記精算金交付決定を行い,埼玉県が不当と判断した額につき,各社会福祉法人から返還を行わせている(甲3)。すなわち,埼玉県は,被告らの行った行為 及びこれに関連する行為を把握し,一括下請を受けた業者からも事情聴取した上で,適正な補助金額を決定し,差額の返還を各社会福祉法人から埼玉県に行わせているのである。 したがって,仮に,原告らの主張するとおり被告らの行為により埼玉県に損害が発生したとしても,この部分は補助金の精算交付決定が行われたことにより,埼玉県の損害は填補されているのである。 (ウ)会計検査院の勧告額の不当性本件においては,埼玉県が不当と判断した補助金額と会計検査院が不当と判断した補助金額に大きな差が存在する。 しかし,補助金額は補助基準額と総事業費を比較した上で決定されるが,埼玉県の担当者には相当程度の裁量性が認められているため,原告らが会計検査院の検査により不当と判断された金額こそが正しいと主張するのであれば,会計検査院が埼玉県の担当者の裁量部分につきどのように判断したのかを立証する必要があるが,これらの事情は明らかではない。 なお,仮に,会計検査院が自己の算定方法を正しいと考えるのであれば,会計検査院としては,自己が算定した金額とその勧告を受けて行なわれた埼玉県の精算交付決定における金額との差額を放置することは通常考えられず,埼玉県に対し,再度の精算交付の勧告を行うはずであろうが,実際にはそのような勧告は行われていない。また,会計検査院は内閣が国会に国の収入支出の決算を提出する際に検査を行い,国の収入支出の決算を確認するが(憲法90条,会計検査院法21条),埼玉県が各社会福祉法人に対して行った精算交付決定に伴 。また,会計検査院は内閣が国会に国の収入支出の決算を提出する際に検査を行い,国の収入支出の決算を確認するが(憲法90条,会計検査院法21条),埼玉県が各社会福祉法人に対して行った精算交付決定に伴う返還金のうち国庫補助金分である3分の2について国庫に返納されたという決算が確認されている。そのため,会計検査院は,埼玉県の精算交付決定を前提にした決算を確認したといえる。したがって,会計検査院は,埼玉県に勧告 を行った後,本件における不当な補助金額についての見解を修正したものと推測される。 イ国庫補助金分について補助金適正化法17条は,補助金交付決定の取消しについて定め,同法18条1項は,補助金交付決定を取り消した場合の補助金返還命令について定めているところ,国の埼玉県に対する補助金返還請求権は,この同法18条1項の公法上の返還命令に基づいて発生するものである。そして,当該請求権は公法上の金銭債権と観念すべきものであるから,会計法30条の規定により,5年間これを行使しないときは時効によって消滅するものと解される(乙18)。 そして,補助金返還請求権が5年の消滅時効にかかるのであるから,当該返還請求権発生の原因である交付決定取消権についてもこれを行使しうる時より遅くとも5年以内に行使しないときは時効消滅するものと解すべきである。 これを本件についてみると,会計検査院による決算検査報告は一般的に翌年11月末日には交付されるため,本件においても,不当国庫補助金は2億3019万円であるという会計検査院の平成8年度決算検査報告は遅くとも平成9年11月末日には交付されていると考えられる以上,国は遅くとも平成9年11月末日には補助金交付決定取消権を行使できたというべきである。 とすれば,遅くとも平成14年11月末日の経過により国の埼玉県に対す 月末日には交付されていると考えられる以上,国は遅くとも平成9年11月末日には補助金交付決定取消権を行使できたというべきである。 とすれば,遅くとも平成14年11月末日の経過により国の埼玉県に対する交付決定取消権は時効消滅した以上,国の補助事業者である埼玉県に対する補助金返還請求権は発生しないことになる。 したがって,原告らが主張する国庫補助金2億3019万円については埼玉県の損害とはいえない。 ウ訴訟代理人費用について 地方自治法242条の2第7項は,「住民訴訟としていわゆる代位請求訴訟を提起した者が勝訴した場合において,弁護士に報酬を支払うべきときは,地方公共団体に対し,その報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができる」と定める。 条文から明らかなとおり,原告らが埼玉県に弁護士報酬を請求するためには,(住民訴訟に)「勝訴した場合」であることが必要であるが,本件請求は不適法として却下又は理由がなく棄却されるべきであるから,「勝訴した場合」に当たらず,原告らの請求には理由がない。 また,仮に,本件訴訟において原告らの請求が認容された場合であっても,以下の理由から弁護士費用については認容されるべきではない。 すなわち,地方自治法242条の2第7項は,同条の訴訟が,住民が自己の個人的な権利利益を擁護するためではなく,住民全般の公共の利益を確保するために提起されるものであることからいって,訴訟に要した費用の全部を常に原告たる住民に負担させることは適当ではなく,特に代位請求訴訟の場合にあっては,住民が普通地方公共団体に代わって訴訟を提起するものであり,原告たる住民が勝訴したときには,普通地方公共団体が現実に経済的利益を受けることになるので,相当と認められる弁護士報酬額を原告に支払うものとすることが衡平の理念に合致するとの を提起するものであり,原告たる住民が勝訴したときには,普通地方公共団体が現実に経済的利益を受けることになるので,相当と認められる弁護士報酬額を原告に支払うものとすることが衡平の理念に合致するとの趣旨から規定されたものである(「第12次改定新版逐条地方自治法」長野士郎著,学陽書房891頁)。 このような制度趣旨に照らすと,勝訴判決の確定によって判決による利益が普通地方公共団体の上に現実化したときに原告ら住民の地方自治法242条の2第7項による弁護士報酬支払請求権が初めて発生すると解すべきものであるから,地方自治法242条の2第7項の「勝訴(一部勝訴を含む。)した場合」とは,勝訴判決(一部勝訴判決を含む。)が確定した場合に限られると考えるべきである(岐阜地裁昭和59年12月6日判決 ・判例時報1154号83頁参照)。 (7)争点7(原告らの予備的請求(県の補助金に係る概算払精算請求権の代位行使)の当否)について(原告らの主張)埼玉県財務規則61条1項は,概算払の精算に関し,「支出命令権者は,概算払をした経費について,当該経費に係る事務の終了後5日以内に,精算調書を作成し,出納長又は所轄所出納員に送付しなければならない。」と主に精算調書作成の手続を規定するのみで,具体的な精算方法,例えば,精算請求の名宛人等について触れてはいない。 しかし,地方自治体の金員が不正不当に費消されることは絶対にあってはならない。特に債務の履行期限到来前,金額未確定の段階で行われる概算払はあくまでも例外的な支出方法であって,その支出の適正を厳格に担保する必要があり,精算請求の名宛人についても,直接の受領者に限定することなく広く概算払による利得を保持している者ととらえる必要がある。 被告A及び同人が実質的に所有する被告JWMは,本件各補助金を私的に流用す あり,精算請求の名宛人についても,直接の受領者に限定することなく広く概算払による利得を保持している者ととらえる必要がある。 被告A及び同人が実質的に所有する被告JWMは,本件各補助金を私的に流用する意図をもって工事契約の一括下請を行い,多額の差益分を取得している。 したがって,被告A及び被告JWMは,いずれも本件各補助金の概算払による利得を保持しているものであり,県は,同人らに対して概算払の精算を求めることができるにもかかわらずこれを違法に怠っている。 (被告らの主張)原告らの予備的請求として主張している請求権は,民法上の不当利得返還請求権若しくは原状回復請求権又はそれらを本質とする公法上の請求権であると考えられるが,このような権利の本質に照らすと,その債務者は交付を受けた補助事業者である各社会福祉法人であって,被告らはその当事者適格を欠くものである。 第3当裁判所の判断 争点1(地方自治法242条2項(監査請求期間制限)の適用の有無)について(1)地方自治法242条1項は,普通地方公共団体の住民が当該普通地方公共団体の違法,不当な財務会計上の行為又は怠る事実につき監査請求をすることができるものと規定し,同条2項本文は,上記監査請求の対象事項のうち行為については,これがあった日又は終わった日から1年を経過したときは監査請求をすることができないと規定している。一方,上記の対象事項のうち怠る事実についてはこのような期間制限は規定されておらず,住民は怠る事実が現に存する限りいつでも監査請求をすることができると解されるが,怠る事実を対象としてされた監査請求であっても,特定の財務会計上の行為が財務会計法規に違反して違法であるか又はこれが違法であって無効であるからこそ発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象とするものである 象としてされた監査請求であっても,特定の財務会計上の行為が財務会計法規に違反して違法であるか又はこれが違法であって無効であるからこそ発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象とするものである場合には,当該行為のあった日又は終わった日を基準として地方自治法242条2項を適用すべきである。 しかし,怠る事実については監査請求期間の制限がないのが原則であり,その制限が及ぶという場合はその例外に当たることに鑑みれば,監査委員が怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には,当該怠る事実を対象としてされた監査請求は,地方自治法242条2項を適用すべきものではない(最高裁平成14年7月2日判決・民集56巻6号1049頁参照)。 そこで,本件についてみると,本件監査請求は,県が被告らに対して有する損害賠償請求権の行使を怠る事実と解されるところ,当該損害賠償請求権は,被告Aが,被告B,同Cらと結託して,被告JWMに被告Aが主宰する 社会福祉法人の設置する特別養護老人ホーム等の建設を請け負わせ,被告JWMの水増しした工事代金に基づいて不正に補助金の申請をするなどして,それによって本来であれば認められるはずのない補助金を不法に取得し,県に損害を与えたことにより発生したというのである。 これによれば,上記監査請求を遂げるためには,監査委員は,県が各社会福祉法人に対し補助金交付決定をしたことやこれが本来認められない不正な補助金であったか否かを検討せざるを得ないが,県の補助金交付決定やその補助金額の決定が財務会計法規に違反する違法なものであったとされて初めて県の被告らに対する損害賠償請求権が発生す められない不正な補助金であったか否かを検討せざるを得ないが,県の補助金交付決定やその補助金額の決定が財務会計法規に違反する違法なものであったとされて初めて県の被告らに対する損害賠償請求権が発生するものではなく,被告らの共謀,これに基づく補助金申請行為等が不法行為法上の違法の評価を受けるものであること,これにより県に損害が発生したことなどを確定しさえすれば足りるのであり,上記監査請求は,県の補助金の交付決定及び交付を対象とする監査請求を含むものとみざるを得ないものではない。 したがって,これを認めても,地方自治法242条2項の趣旨が没却されるものではなく,本件監査請求については地方自治法242条2項の適用はないと解すべきである。 (2)これに対し,被告らは,概ね,「本件は,①社会福祉法人と建設会社(被告JWM)との間の工事請負契約の締結,②これに対する社会福祉法人と埼玉県の間の補助金交付決定(財務会計行為)という二重の構造になっており,県が被告らの共同不法行為により損害を被ったか否かを判断するには,補助金交付決定のための審査という財務会計行為において当該不当な請負工事代金額がどのように評価され,この評価によって一般的な補助金額に比して本件の補助金額がどの程度引き上げられたかを検討することが必要であり,結局,本件において県の被告らに対する共同不法行為に基づく損害賠償請求権の存否につき判断するには,社会福祉法人と建設会社間の請負契約の違法・不当性が本件における補助金額に違法・不当な影響を与えたかどうかとい う検討,すなわち,本件各補助金交付決定の審査という財務会計上の行為における違法性の検討を必須のものとして伴う。」と主張する。 しかしながら,監査委員が,本件のような共同不法行為に基づく損害賠償請求権の怠る事実について監査をする場合 決定の審査という財務会計上の行為における違法性の検討を必須のものとして伴う。」と主張する。 しかしながら,監査委員が,本件のような共同不法行為に基づく損害賠償請求権の怠る事実について監査をする場合には,共同不法行為の存否とそれによって県に損害が発生する一般的蓋然性さえ判断できれば,監査委員は講じるべき一定の措置を判断できるのであり,必ずしも補助金交付決定のための審査において不当な請負工事代金額がどのように評価され,一般的な補助金額に比して補助金額がどの程度引き上げられたかなどといった具体的かつ最終的な損害額まで監査委員が認定しなければならないというものではない。 すなわち,これまで認定したように,埼玉県内で特別養護老人ホームを設置する社会福祉法人は,その施設整備・設備整備を対象として,総事業費又は補助基準額の4分の3の補助金が交付されるのであるから,実際に要した総事業費等を偽るような不正な補助金申請行為がなされれば,それだけで不正な補助金が交付され,県に損害が発生する一般的蓋然性が認められるのである。そこで,上記監査請求を遂げるためには,被告らの共謀,これに基づく補助金申請行為等が不法行為法上の違法の評価を受けるものであること,これによって県に損害が発生する一般的蓋然性が存することが確定できれば足りるのであって,本件各補助金交付決定の審査等の違法性の検討を必須のものとするということはできない。 したがって,被告らの上記主張は採用できない。 (3)被告Bに対する請求についての補足的判断ア被告Bは,概ね,次のように主張する。 「最高裁平成14年10月3日判決は,『監査委員が怠る事実の監査をするに当たり,当該行為が財務会計行為に違反して違法であるか否かの判断をしなければならないという関係にない場合には,原則として当該怠る事実を対象として 10月3日判決は,『監査委員が怠る事実の監査をするに当たり,当該行為が財務会計行為に違反して違法であるか否かの判断をしなければならないという関係にない場合には,原則として当該怠る事実を対象としてされた監査請求に上記の期間制限が及ばないが,財務会 計職員又はその前任者ないしは補助職員が財務会計上の行為の準備行為・補助行為として行った行為は,財務会計上の行為と一体としてとらえられるベきものであり,準備行為・補助行為の違法が財務会計上の行為の違法を構成する関係にあるときは,準備行為・補助行為が違法であるとして,これに基づいて発生する損害賠償請求権の行使を怠る事実を対象としてなされた監査請求は,実質的に財務会計上の行為の違法を主張してその是正を求める趣旨のものにほかならないとし,財務会計職員又は前任者であった者ないしは補助職員の行為に関する監査請求につき,地方自治法242条2項の期間制限が及ぶ』旨判示している。 被告Bは,平成4(1992)年4月1日から平成7年(1995年)3月31日までは,埼玉県生活福祉部高齢者福祉課長の職にあった。平成4年当時,高齢者福祉課においては,社会福祉法人施設設置の認可並びに国及び県などの補助金等の受理・審査・交付・清算等の事務を取り扱っており,被告Bは同部課長として上記事務につき決裁権・裁量権を有していたから,被告Bは補助金交付決定についての財務会計職員であったものといえる。そのため,上記職にあった平成4年4月1日から平成7年3月31日までの間の補助金交付決定に関する被告Bの行為は,補助金交付決定審査という「財務会計上の行為」についての準備行為に該当するといえ,これについては財務会計上の行為と一体としてとらえられるべきものである。そこで被告Bによる準備行為の違法は(財務会計上の行為である)補助金交付決 務会計上の行為」についての準備行為に該当するといえ,これについては財務会計上の行為と一体としてとらえられるべきものである。そこで被告Bによる準備行為の違法は(財務会計上の行為である)補助金交付決定の違法を構成する関係にあるから,本件監査請求中,被告Bの上記準備行為の違法を理由とする損害賠償請求権の行使を怠る事実を対象とする部分については,本件各補助金交付決定がなされた日を基準として地方自治法242条2項本文の規定が適用され,1年間の期間制限に服するというべきである。また,被告Bが厚生省年金局企画課課長補佐となった平成7年4月1日以降においては,後任者が被告Bの準備行為を引き 継いだ上で補助金交付決定を行っているものであり,そのため,同日以降に行われた補助金交付決定審査についても,それ以前に行われた被告Bの行為を引き継ぐ性質を有しているといえる。したがって,平成7年4月1日以降の被告Bの上記準備行為の違法を理由とする損害賠償請求権の行使を怠る事実を対象とする部分についても,本件各補助金交付決定がなされた日を基準として地方自治法242条2項本文の規定が適用され,1年間の期間制限に服するというべきである。」イしかしながら,被告Bが援用する最高裁平成14年10月3日判決は,A県が建設業者らと締結した芸術文化センター建設工事の工事請負変更契約に関し,A県の住民が,工事単価に水増しがあるなどとして当該変更契約の違法,無効を理由に変更契約締結に携わったA県職員や建設業者に損害賠償または不当利得の返還をさせるべきことを求めたものである。そして,上記事件における住民のA県建築部職員らに対する請求内容は,上記職員らは単価の水増し等による違法な設計変更予算案の作成等の違法な補助行為や準備行為をし,その結果違法な変更契約が締結されたものであるか 記事件における住民のA県建築部職員らに対する請求内容は,上記職員らは単価の水増し等による違法な設計変更予算案の作成等の違法な補助行為や準備行為をし,その結果違法な変更契約が締結されたものであるから,A県は同職員らに不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているところ,A県はその行使を怠っているというもので,変更契約が財務会計法規に照らし違法であるかどうかが前提的な問題とされている。 しかし,本件では,原告らは被告Aの補助金申請行為の財務会計上の違法や同申請に基づく県の補助金交付決定手続の財務会計上の違法を問題としているのではなく,元来正しい請負代金額に基づく事業費による補助金申請をすべきところ,被告Aは虚偽の入札書類を介在させるなどの詐欺的な不正な方法により,本来であれば得られるはずのない補助金を不法に取得し,県に損害を与えたという不法行為に基づく損害賠償を問題としているのであり,これに被告Bも加担した共同不法行為責任があると主張しているのである。したがって本件の事案と上記最高裁平成14年10月3日 判決の事案とは趣を異にし,引用に適切でなく,本件に関する当裁判所の前記判断を左右するものでない。 以上から被告Bの上記主張は採用できない。 争点2(本件監査請求と本訴請求の同一性の有無)について地方自治法242条の2第1項は,住民訴訟につき,監査請求前置主義を定めており,監査請求を経ない住民訴訟は不適法であり,住民訴訟の対象と監査請求の対象との関係については,両者間に同一性が肯定される必要がある。 そして,地方自治法242条1項は,住民が監査請求をする際に,「必要な措置を講ずべきことを請求することができる。」とだけ定めており,監査請求は,監査の対象である財務会計上の行為又は怠る事実を特定して,必要な措置を講ずべきことを請求すれば足り, 求をする際に,「必要な措置を講ずべきことを請求することができる。」とだけ定めており,監査請求は,監査の対象である財務会計上の行為又は怠る事実を特定して,必要な措置を講ずべきことを請求すれば足り,また,監査の結果は必ずしも請求内容に拘束されるものではないから,監査請求と住民訴訟の対象との間には,財務会計上の行為又は怠る事実に係る社会的経済的行為又は事実が実質的にみて同一であれば足りるものと解され,監査請求によって求める措置の内容類型やその法的構成までが同一のものであることを要するものではない。 本件監査請求では,県が被告らに対して有する損害賠償請求権の行使を怠る事実とされているところ,当該損害賠償請求権は,被告Aが,被告B,同Cらと結託して,被告JWMを被告Aが主宰する社会福祉法人の設置する特別養護老人ホーム等の建設を請け負わせ,被告JWMの水増しした工事代金に基づいて不正に補助金の申請をするなどして,それによって本来であれば認められるはずのない補助金を不法に取得し,県に損害を与えたことにより発生したというのである。 たしかに,本件監査請求に係る監査請求書(甲1)には,「埼玉県が平成5年8月から平成8年3月までに県内においていわゆる彩福祉グループの社会福祉法人を認可し,同法人に対する補助金の交付決定をし,補助金を交付した」旨記載されており,補助金が交付された期間を明記している。 しかしながら,いかなる財務会計行為が監査請求の対象とされているかどうかは,監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載,監査請求人が提出したその他の資料等を総合して合理的実質的に考えるべきであるところ,上記監査請求は,合理的実質的にみれば,被告らが彩福祉グループに関して交付された一連の補助金を不法に取得したという不法行為によって生じた県の被告ら 等を総合して合理的実質的に考えるべきであるところ,上記監査請求は,合理的実質的にみれば,被告らが彩福祉グループに関して交付された一連の補助金を不法に取得したという不法行為によって生じた県の被告らに対する損害賠償請求権の行使を怠っている事実を対象としているものとみることができ,必ずしも平成8年3月以前に交付された補助金に関する不法行為によって生じた損害賠償請求権に限定しているものとは解されない。 そして,本件訴訟も,被告らが彩福祉グループに関して交付された一連の補助金を不法に取得したという不法行為によって生じた県の被告らに対する損害賠償請求権の行使を怠っている事実を対象としているものであるから,上記監査請求と本件訴訟の対象である怠る事実に係る社会的経済的事実は実質的にみて同一であるというべきである。 したがって,本訴請求はそもそも本件監査請求との同一性を欠いているとか本件訴訟の対象のうち平成9年3月になされた平成8年度分の補助金交付決定及び補助金交付に関する部分については適法な監査請求を経ていないとする被告らの主張は採用できない。 争点3(被告A及び被告JWMの違法行為の有無)について(1)認定事実証拠(甲4ないし6,9ないし11,14ないし22,乙17)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア被告Aの経歴等被告Aは,かつて厚生省所管の事項に関わりの深かった参議院議員の私設秘書をしていたことがあり,昭和48年ころから厚生省に出入りするようになり,厚生省幹部であった被告Cとも知り合うようになった。被告Aは,昭和56年3月に,埼玉県北本市内に北本病院を開設し,昭和60年 3月には,高機能病院として七里病院を開設した。 その後,被告Aは,平成2年2月施行の衆議院議員選挙に立候補したが落選し,さらに,七里病院の経営状 ,埼玉県北本市内に北本病院を開設し,昭和60年 3月には,高機能病院として七里病院を開設した。 その後,被告Aは,平成2年2月施行の衆議院議員選挙に立候補したが落選し,さらに,七里病院の経営状態が著しく悪化し,平成3年にはこれを売却処分したが,約17億円にも達する個人的負債を抱えるに至り,他方では,北本病院の経営状態も悪化してきたことから,その打開策に苦慮する状態となった。 イ被告Aと被告Bとの関係等被告Bは,平成4年4月から埼玉県に出向することとなったが,その際,被告Cから,「埼玉県にはAという人がいる。彼とは古くからの付き合いがあるので,よろしく頼む。」と伝えられていた。 被告Aは,平成4年4月下旬ころ,埼玉県生活福祉部高齢者福祉課長として赴任した被告Bを浦和市内の飲食店に招待したが,その際,被告Bから,埼玉県内には特別養護老人ホームが不足しており,「土地さえあれば,国や県から交付される補助金で特別養護老人ホームを建設でき,運営についても措置費が支給されるので,安定した収入が得られる。」等の説明を受け,特別養護老人ホームの設置及び運営に強い興味を抱いた。そして,被告Aは,その後も折をみて,被告Bから,特別養護老人ホームの設置,補助金,社会福祉・医療事業団からの低利融資,運営等に関する様々な教示を受けた。 このような経緯を経て,被告Aは,平成4年夏ころから,特別養護老人ホームの事業展開に乗り出すことを決意した。 ウ各特別養護老人ホームの設置経緯等(ア)桃泉園北本特別養護老人ホーム被告Aは,埼玉県北本市内の北本病院の隣地に特別養護老人ホームを建設することを計画し,被告Bに,北本市の福祉部長や隣地所有者への説明を依頼した。被告Bは,平成4年8月下旬から9月上旬にかけて, これらの者に対して,特別養護老人ホームの設置計画 老人ホームを建設することを計画し,被告Bに,北本市の福祉部長や隣地所有者への説明を依頼した。被告Bは,平成4年8月下旬から9月上旬にかけて, これらの者に対して,特別養護老人ホームの設置計画の概要を説明した上,埼玉県としても上記計画に積極的に取り組むつもりであるなどと説明して,上記計画への協力を依頼したところ,いずれも協力を得られることになった。 そして,老人福祉施設整備費協議書等の埼玉県による受理及び審査,埼玉県から厚生省に対する国庫補助協議書の提出等の手続を経て,平成5年5月10日ころまでに,補助金交付の内示を受け,桃泉園は平成5年8月5日に設立認可を受けた。 桃泉園は,平成5年7月に斉藤工業との間で,北本特別養護老人ホームの建設工事に関し,請負契約を締結した。その際,被告Aは,斉藤工業に支払う低額の正規の契約書と県などに提出する補助金交付用の高額な契約書の2通を作成し,余剰金を捻出することとし,実際には桃泉園は請負金額を5億9122万円とする契約を斉藤工業との間で締結し,その後の追加工事を含めて6億3041万1000円で施工していたにもかかわらず,請負金額6億9700万円とする契約書を作成し,これを基礎として国庫補助金や事業団貸付金の交付又は貸付け申請を行った。 また,介護用リフトの売買契約についても実際の契約金額よりも高額な契約金額を基礎として算定していた。 そして,桃泉園は,北本特別養護老人ホームに関し,別紙1記載のとおり平成6年3月28日に合計約4億6280万円の補助金の交付(概算払。以下に述べる各施設の補助金についても同じ。)を受けた。 (イ)彩光会あけぼの被告Aは,平成5年2月ころ,埼玉県上尾市内の土地を安価で購入できる情勢となったため,国庫補助金等により,大規模な特別養護老人ホームのほかに,デイサービスセン 。)を受けた。 (イ)彩光会あけぼの被告Aは,平成5年2月ころ,埼玉県上尾市内の土地を安価で購入できる情勢となったため,国庫補助金等により,大規模な特別養護老人ホームのほかに,デイサービスセンターの建設を計画していた。一方,被告Bは,財団法人日本船舶振興会(以下「日本船舶振興会」という。) の補助金を利用して,特別養護老人ホームに地域住民に開放されたプールやアスレチック等の施設(アクティビティセンター)を併設し,福祉施設のモデル事業にする構想を抱いていた。平成5年7月ころ,被告Aは,被告Bから上記構想を持ちかけられて,これに賛同して,特別養護老人ホーム等の施設にアクティビティセンターを併設する計画を進めることとした。そして,日本船舶振興会から補助金の交付を受けるには,事業主体の社会福祉法人の設立が必要であったため,被告Aは,平成5年8月末に,彩光会の設立認可申請書を埼玉県に提出し,平成6年3月30日,彩光会の設立が認可された。 ところが,その後,日本船舶振興会からのアクティビティセンターに関する補助金が当初の見込み8億円から5億円と大幅に減額される見込みとなったため,被告Aと被告Bは,厚生省にかけ合い,アクティビティセンターの2階部分を地域福祉センターとして活用することで国庫補助金交付の道がないか探った。結局,種々折衝の後,地域福祉センターに対する国庫補助金が交付されることになり,平成7年3月1日,国庫補助金の内示が行われた。 彩光会は,平成7年3月,あけぼの建設工事に関し,被告JWMとの間で,代金32億9600万円で請負契約を締結し,被告JWMは,大日本土木との間で,代金26億3842万4000円で下請工事契約を締結したが,被告JWMは何ら工事の施工に関与しておらず,実際の工事は大日本土木が行っていたにも関わらず,彩光会 し,被告JWMは,大日本土木との間で,代金26億3842万4000円で下請工事契約を締結したが,被告JWMは何ら工事の施工に関与しておらず,実際の工事は大日本土木が行っていたにも関わらず,彩光会と被告JWMとの間の請負契約の代金額に基づいて国庫補助金及び事業団貸付金の算定を行い,これらの交付又は貸付け申請を行った。また,介護用リフトの売買契約についても実際の契約金額よりも高額な契約金額を基礎として算定していた。 そして,彩光会は,あけぼのに関し,別紙1記載のとおり平成7年3 月29日から平成9年3月31日にかけて合計約14億7052万円の補助金の交付を受けた。 (ウ)彩吹会吹上苑被告Aは,平成5年夏ころから,埼玉県北足立郡吹上町において,特別養護老人ホーム吹上苑の設置を計画し,被告Bに依頼して,吹上町長に対して,埼玉県も推進している事業である旨説明してもらうなどした結果,吹上町が土地を確保してくれることになった。 被告Bは,平成5年11月上旬ころ,被告Aに対して,協議書の速やかな提出を促し,同年12月20日,同施設について国庫補助金の内示を受け,彩吹会は,平成6年3月7日,設立認可を受けた。 彩吹会は,平成6年2月,吹上苑の建設工事に関し,被告JWMとの間で,代金6億5870万円で請負契約を締結し,被告JWMは,丸和工業との間で,代金4億5500万円で下請工事契約を締結したが,被告JWMは何ら工事の施工に関与しておらず,実際の工事は丸和工業が行っていたにも関わらず,彩吹会と被告JWMとの間の請負契約の代金額に基づいて国庫補助金及び事業団貸付金の算定を行い,これらの交付又は貸付け申請を行った。また,介護用リフトの売買契約や建築工事の設計及び管理に関する委託契約についても実際の契約金額よりも高額な契約金額を基礎として算定してい 業団貸付金の算定を行い,これらの交付又は貸付け申請を行った。また,介護用リフトの売買契約や建築工事の設計及び管理に関する委託契約についても実際の契約金額よりも高額な契約金額を基礎として算定していた。 そして,彩吹会は,吹上苑に関し,別紙1記載のとおり平成6年3月29日と平成7年3月29日に合計約4億9876万円の補助金の交付を受けた。 (エ)桃泉園上福岡苑(彩愛の里かみふくおか)被告Aは,上福岡市において,桃泉園が運営主体となる特別養護老人ホーム上福岡苑を設置することを計画し,平成6年8月末ころ,埼玉県に対して老人福祉施設設立計画書を提出し,埼玉県による受理及び審査, 埼玉県から厚生省に対する国庫補助協議書の提出などの手続を経て,平成7年3月1日ころ,国庫補助金の内示を受けた。 桃泉園は,平成7年3月,上福岡苑の建設工事に関し,被告JWMとの間で,代金23億6400万円で請負契約を締結し,被告JWMは,埼玉建興との間で,代金17億5380万1000万円で下請工事契約を締結したが,被告JWMは何ら工事の施工に関与しておらず,実際の工事は埼玉建興が行っていたにも関わらず,桃泉園と被告JWMとの間の請負契約の代金額に基づいて国庫補助金及び事業団貸付金の算定を行い,これらの交付又は貸付け申請を行った。また,介護用リフトの売買契約についても実際の契約金額よりも高額な契約金額を基礎として算定していた。 そして,桃泉園は,上福岡苑に関し,別紙1記載のとおり平成7年3月31日から平成9年3月31日にかけて合計11億9998万円の補助金の交付を受けた。 (オ)彩川会川里苑被告Aは,平成5年夏ころから埼玉県北埼玉郡川里村において特別養護老人ホーム川里苑を設置することを計画し,同年8月ころ,被告Bに依頼して,川里村長に対し,埼玉県も推進してい 。 (オ)彩川会川里苑被告Aは,平成5年夏ころから埼玉県北埼玉郡川里村において特別養護老人ホーム川里苑を設置することを計画し,同年8月ころ,被告Bに依頼して,川里村長に対し,埼玉県も推進している事業であることなどを説明してもらい,同村長らの賛同を得た。 被告Aを理事長とする彩川会は,平成7年11月30日,設立認可を受けた。 彩川会は,平成8年3月,被告JWMとの間で,川里苑の建設工事に関し,代金8億5181万円で請負契約を締結し,被告JWMは,丸和工業との間で,代金6億3000万円で下請工事契約を締結したが,被告JWMは何ら工事の施工に関与しておらず,実際の工事は丸和工業が行っていたにも関わらず,彩川会と被告JWMとの間の請負契約の代金 額に基づいて国庫補助金及び事業団貸付金の算定を行い,これらの交付又は貸付け申請を行った。また,介護用リフトの売買契約や建築工事の設計及び管理に関する委託契約についても実際の契約金額よりも高額な契約金額を基礎として算定していた。 そして,彩川会は,川里苑に関し,別紙1記載のとおり平成8年3月29日と平成9年3月31日に合計約5億2519万円の補助金の交付を受けた。 (カ)彩鷲会鷲宮苑被告Aは,平成5年夏ころから,埼玉県北葛飾郡鷲宮町において,特別養護老人ホーム鷲宮苑を設置することを計画し,被告Bに依頼して,鷲宮町役場の担当者に鷲宮苑の設置に協力してもらうように口添えしてもらった。当時,鷲宮町には,被告Aのほかにも特別養護老人ホームの設置を計画する社会福祉法人があり,町内での調整が難航していたが,被告Bは,鷲宮町長に対し,「2件とも県にあげればよい」旨指導して,鷲宮苑の設置計画が進行するように取り計らった。 被告Aを理事長とする彩鷲会は,平成7年12月1日,設立認可を受けた。 彩鷲会は,平成 告Bは,鷲宮町長に対し,「2件とも県にあげればよい」旨指導して,鷲宮苑の設置計画が進行するように取り計らった。 被告Aを理事長とする彩鷲会は,平成7年12月1日,設立認可を受けた。 彩鷲会は,平成8年3月,被告JWMとの間で,鷲宮苑の建設工事に関し,代金7億1997万円で請負契約を締結し,被告JWMは,斉藤工業との間で,代金6億3000万円で下請工事契約を締結したが,被告JWMは何ら工事の施工に関与しておらず,実際の工事は斉藤工業が行っていたにも関わらず,彩鷲会と被告JWMとの間の請負契約の代金額に基づいて国庫補助金及び事業団貸付金の算定を行い,これらの交付又は貸付け申請を行った。また,介護用リフトの売買契約についても実際の契約金額よりも高額な契約金額を基礎として算定していた。 そして,彩鷲会は,鷲宮苑に関し,別紙1記載のとおり平成8年3月 29日と平成9年3月31日に合計約5億0945万円の補助金の交付を受けた。 エ各建設工事の請負状況と補助金申請内容の詳細社会福祉法人は,厚生省において示された経理規程準則に準拠した経理規程を定め,これに基づいて各法人の会計経理に関する事務を行うこととなっている。 彩福祉グループの各法人の経理規程によれば,契約担当者は,請負その他の契約をする場合には,原則として一般競争に付さなければならないこととなっており,これにより難い場合は指名競争に付するものとし,競争に付することが適当でないと認められる場合などにおいては,随意契約によるものとされている。 彩福祉グループの埼玉県及び山形県の7法人7施設(埼玉県においては,彩吹会の吹上苑,彩光会のあけぼの,彩川会の川里苑,彩鷲会の鷲宮苑,桃泉園の上福岡苑の5法人5施設)では,被告JWMとの工事請負契約の締結に当たり,経理規程に従って競争入札に付したように おいては,彩吹会の吹上苑,彩光会のあけぼの,彩川会の川里苑,彩鷲会の鷲宮苑,桃泉園の上福岡苑の5法人5施設)では,被告JWMとの工事請負契約の締結に当たり,経理規程に従って競争入札に付したようにみせるため,複数の建設会社から入札書を取り寄せるなどして入札状況調書などを作成したりしていた。 そして,被告JWMは,契約額より低額な金額で他の建設会社に一括下請する契約を締結しており,被告JWM自体工事の施工には何ら関与しておらず,実際の工事については,一括下請した建設会社において,管理技術者が配置され,施工計画書,工程表が作成されるなどすべての工程にわたって施工がなされていたにも関わらず,各社会福祉法人は,国庫補助金及び事業団貸付金に係る申請等に当たり,被告JWMとの契約額に基づいて国庫補助金及び事業団貸付金の算定を行い,これにより交付又は貸付けを受けていた。 また,桃泉園の北本特別養護老人ホームについては,国庫補助金及び事 業団貸付金に係る実績報告等に当たり,実際の契約額より高額な契約額の工事請負契約書を作成し,この高額な契約額に基づいて国庫補助金及び事業団貸付金の算定を行い,これにより交付又は貸付けを受けていた。 また,5法人6施設(彩吹会の吹上苑,彩光会のあけぼの,彩川会の川里苑,彩鷲会の鷲宮苑,桃泉園の北本特別養護老人ホーム,上福岡苑)の建設に付随して,被告Aが経営する会社との間で介護用リフトの売買契約を締結していたが,上記会社は当該契約金額を下回る金額で輸入代理店に介護用リフトの納入・設置をすべて行わせていたにもかかわらず,被告Aが経営する会社との契約金額を対象経費とし,これに基づいて補助金の交付申請をし,補助金の交付を受けており,さらに,2法人2施設(彩吹会の吹上苑,彩川会の川里苑)の建設に付随して,実際の契約金額を上回 が経営する会社との契約金額を対象経費とし,これに基づいて補助金の交付申請をし,補助金の交付を受けており,さらに,2法人2施設(彩吹会の吹上苑,彩川会の川里苑)の建設に付随して,実際の契約金額を上回る金額で建築工事の設計及び管理に関する委託契約を締結したとするなどし,虚偽の契約金額に基づいて補助金の交付申請をし,補助金の交付を受けていた。 オ贈収賄刑事事件及びその後の社会福祉法人の運営平成8年11月,被告Aは贈賄罪,被告B及び被告Cは収賄罪により,それぞれ逮捕,勾留され,その後,同年12月にそれぞれ起訴されたため,平成8年末から平成9年初頭にかけて6施設において改めて弁護士等を当該施設の理事を選任し,その後,それらの理事によって当該施設の運営がなされることになった。 (2)以上の事実に基づく判断以上の事実によれば,まず,被告Aは,桃泉園の北本特別養護老人ホーム建設に際し,実際には低額で建設工事がなされたにもかかわらず,より高額な契約金額とした虚偽の契約書を作成し,それを基に補助金の申請することによって,国及び埼玉県において虚偽の契約金額等が真実の契約金額である旨誤信させて,補助金の交付を受けたものであるから,このような被告Aの 行為は不正の手段によって補助金の交付を受けたものというべきであり,民法上の不法行為に該当することは明らかである(なお,補助金適正化法29条1項は,「偽りその他の不正の手段」により補助金等の交付を受けた者を刑事罰の対象としている。)。そして,これに付随して,介護用リフトの契約金額について,実際の契約金額より高額な契約金額を基に補助金の申請をしていたことも同様に不法行為に該当する。 次に,被告Aは,彩吹会の吹上苑,彩光会のあけぼの,彩川会の川里苑,彩鷲会の鷲宮苑,桃泉園の上福岡苑の各特別養護老人ホームの建 な契約金額を基に補助金の申請をしていたことも同様に不法行為に該当する。 次に,被告Aは,彩吹会の吹上苑,彩光会のあけぼの,彩川会の川里苑,彩鷲会の鷲宮苑,桃泉園の上福岡苑の各特別養護老人ホームの建設について,何ら工事に関与しない被告JWMをいわばトンネル会社として介在させ,経理規程に従って競争入札に付したようにみせかけた上,被告JWMと各社会福祉法人の請負契約の契約金額を基にして,補助金の申請をすることによって,国及び埼玉県において,各社会福祉法人と被告JWMとの間の契約が正規の契約であって,それが当該施設の建設工事に係る真実の契約金額である旨誤信させて,補助金の交付を受けたものであるから,このような被告A及び被告JWMの各行為は,不正の手段によって補助金の交付を受けたものというべきであり,民法上の不法行為に該当するものといわざるを得ない。そして,これに付随して,介護用リフトの契約金額について,実際の契約金額より高額な契約金額を基に補助金の申請をしていたこと,吹上苑,川里苑においては建設工事の設計及び管理に関する委託契約について,虚偽の契約金額に基づいて補助金の交付申請をしていたことも同様に不法行為が成立する。 (3)被告A及び被告JWMの主張についてこれに対して,被告A及び被告JWMは,概ね,「①一括下請は適法であり,工事代金を不当に水増ししたものではなく,実際にも差益は生じていない,②被告JWMは,社会福祉施設の建設に関する人員や経験も有しており,ノウハウを備えた実体のある会社であるから,被告JWMが一括下請させたことにも合理的な理由がある,③被告Aは,名誉欲から社会福祉法人の設立 を思い立ったのであって,そこに,利ざや稼ぎといった意図はなかった。」などと主張する。 しかしながら,①については,たしかに,建設業法上は,一括 がある,③被告Aは,名誉欲から社会福祉法人の設立 を思い立ったのであって,そこに,利ざや稼ぎといった意図はなかった。」などと主張する。 しかしながら,①については,たしかに,建設業法上は,一括下請をする場合でも元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得た場合には許されている(建設業法22条3項)ところ,甲5によれば,本件において,各社会福祉法人から被告JWMに対し一括下請を承諾する書面が交付されていたことが窺われる。しかし,上述したように,本件では,被告JWMが一括下請したこと自体をとらえて不法行為と問擬しているのではなく,被告A及び被告JWMにおいて,何ら工事に関与しない被告JWMをいわばトンネル会社として介在させ,経理規程に従って競争入札に付したようにみせかけた上で,各社会福祉法人と被告JWMとの契約金額を基に補助金の申請をし,国や埼玉県をして被告JWMの請負金額が当該施設の建設工事に係る真実の契約金額である旨誤信させたことが不法行為に該当するとしているのである。 とすれば,各社会福祉法人から被告JWMに対する一括下請を承諾する書面が交付されていたとしても,そのことは対埼玉県との関係においては,被告A及び被告JWMの不法行為該当性を何ら否定するものではない。 ②については,これまで認定したように,実際に被告JWMは建設工事について具体的に関与したことはなかったものであり,被告Aが主張する上記②の事実を認めるに足りる証拠はない。また,被告Aは,被告JWMが緑風苑や安心会などの特別養護老人ホームの建設工事を受注していることから特別養護老人ホームの建設についてノウハウを有していることを裏付けられる旨主張するが,それらについて被告JWMが工事に具体的に関与していたことを窺わせる証拠もなく,それらの受注があったとしても,本件において 老人ホームの建設についてノウハウを有していることを裏付けられる旨主張するが,それらについて被告JWMが工事に具体的に関与していたことを窺わせる証拠もなく,それらの受注があったとしても,本件において被告JWMが特別養護老人ホームの建設にトンネル会社として介在したことの前記認定が左右されるものではない。 ③については,甲17ないし21によれば,被告Aは,特別養護老人ホー ム等を建設するためにまず必要とされる土地取得代金を捻出するために,被告JWMを介在させて元請とし,一括して下請をすることとしたという経緯が認められる(被告Aは,贈収賄刑事事件においてこれらを詳細に供述している。)。そこで,仮に,被告Aが名誉欲等から社会福祉法人の設立を思い立った一面があったとしても,これまで述べた被告Aの行為について不法行為該当性を否定することにはならない。 したがって,被告A及び被告JWMの上記主張は採用できない。 (4)小括以上のとおり,北本特別養護老人ホームの建設工事に際し,虚偽の契約書を作成するなどして,上記高額な契約書を基にして補助金及び事業団貸付金の申請を行い,国及び埼玉県を欺いて補助金の交付を受けたという被告Aの行為,何ら工事に関与しない被告JWMをいわばトンネル会社として介在させるなどして,国や埼玉県を欺いて補助金の交付を受けたという被告A及び被告JWMの各行為は,それぞれ民法上の不法行為に該当するものというべきである。 争点4(被告Bの共同不法行為の成否)について(1)原告らは,「被告Bは,被告Aとの間において,特別養護老人ホームの建設工事について,被告JWMが建築工事を請け負い,その工事を低額で下請業者に一括下請することによって,違法な差額利益を得ることを許容して,積極的に補助金の交付に関与したものであるから,共同不法行為 建設工事について,被告JWMが建築工事を請け負い,その工事を低額で下請業者に一括下請することによって,違法な差額利益を得ることを許容して,積極的に補助金の交付に関与したものであるから,共同不法行為が成立する。」旨主張するので,以下検討する。 (2)アまず,被告Aの贈収賄刑事事件の捜査段階の供述調書には,概ね,次のような記載がある(甲17,18,20)。 (ア)甲17(平成8年12月7日付け被告Aの検察官に対する供述調書)「しかし,私にとってみれば,高齢者福祉のことを全く知らない中で, その施設を建設しようと思ったのも,埼玉県で,特別養護老人ホームなどを担当するBさんの話を聞いたからでしたし,その社会福祉法人の設立から各種施設の設置方法,それらの施設を作るための国庫保持金などの有利な受給方法,合理的な施設運営のシステムなどの全てを教わり,その結果国や県などの多額の補助金を受け,埼玉県内に6つの社会福祉法人を設立し,3つの各種高齢者福祉施設を建設し,さらに3つの施設を建設中という,大きな福祉グループに育て上げられたのですから,その感謝の気持ちは簡単に口では言えないほど大きいものでした。」(甲17の6頁)。 (イ)甲18(平成8年12月9日付け被告Aの検察官に対する供述調書)「私は,平成5年夏ころ,施設整備費,つまり建設資金をJWMに元請けさせて施設を建設し,下請にできるだけ低額で建設させて差額を浮かせる方法を考えはじめましたので,施設を作るときにいかに多額の補助金を得られるかということ,つまり,できるだけ大規模,あるいは多種類,多数の施設を造って設置時の補助金をできるだけ取得してJWMに受注させ,できるだけ低額で下請に発注し,しかも設置後も大規模であれば,特別養護老人ホーム,ケアハウスなど様々な種類の福祉施設を兼ねられ, 数の施設を造って設置時の補助金をできるだけ取得してJWMに受注させ,できるだけ低額で下請に発注し,しかも設置後も大規模であれば,特別養護老人ホーム,ケアハウスなど様々な種類の福祉施設を兼ねられ,しかも,その施設毎に補助金が出るわけで,措置費の金額が大きくなり,しかも規模のメリットで,メンテナンスや給食,管理などを各施設共通にもできることから,その分,措置費を節約できると考えたのです。(中略)このようにして利益をため,共同募金会などの機構を利用して,それを自己の社会福祉施設建設に回せば,無税で土地取得資金や建設資金を確保して施設を増やしてていくことができると判ったのです。」(甲18の33ないし35頁)「私は,吹上苑の建設準備をした平成5年夏ころ土地取得資金の捻出 方法を考えました。桃泉園は,土地を寄付してもらった上,(中略)平成5年7月に斉藤工業に建設請負工事を発注したのですが,吹上苑を建設する見込みのついたそのころからは,寄付だけではなく,設立後の法人が確実に無担保で社会福祉・医療事業団だけに担保が付けられるような土地を入手できればいいことがわかり,私が設立前の社会福祉法人に資金を貸与し,同法人が所有者から譲渡確約を得れば良いだけで,法人が設立され,補助金が入金され,それが工事受注会社に工事代金として支払われ,その建設請負会社が土地代金分を県の共同募金会に指定寄付,つまり,設立された法人に回せるように募金会からの寄付先を指定して寄付を実施すれば,設立された法人は,譲渡確約書などを示し,寄付を土地代金に支払う旨明らかにすれば,共同募金会からの寄付を受けられることになり,結局,補助金により土地が購入できる仕組みとなるのが,B課長との話で分かったのです。(中略)この方法は,私が,B課長と話しているときに明らかになったものであり, 会からの寄付を受けられることになり,結局,補助金により土地が購入できる仕組みとなるのが,B課長との話で分かったのです。(中略)この方法は,私が,B課長と話しているときに明らかになったものであり,吹上苑の土地が手に入るようになった平成5年夏ころ,代金をどのように工面するかを相談し,B課長ら,『JWMは建築業許可がないから,商社のように受注契約の元請として中に入れ,受注代金を浮かせて土地代を捻出するしかない。』などと教わり,私なりに工夫をしてJWMに建築業許可を取らせて,元請にしようと考えたのです。私はその事をB課長に話してJWMに実績をつけるように受注工事を紹介して欲しいと頼み,同課長は,平成6年秋頃,社会福祉法人清幸会の緑風苑建替工事について,JWMに工事実績をつけるため,元請業者になれるよう推薦してくれたりしたのです。」(甲18の49ないし52頁)(ウ)甲20(平成8年12月20日付け被告Aの検察官に対する供述調書)「その他,Bさんは,用地取得資金の捻出方法の相談に応じてくれ, 北本特別養護老人ホームの建設には間に合いませんでしたが,その後の特別養護老人ホームなどの施設建設には,私が代表取締役を務めていたJWMの定款に建設請負目的を加え,JWMが元請になって低価格で下請に建設を受注させ,差益を用地取得資金に回す方法をとるようになりました。補助金の交付を受けて実施する施設建設は,公的な工事に準じますので,県から指名競争入札の方法で工事の発注を行うように指導されていますが,JWMが工事で多額の差益を得るには,補助金の限度まで,できるだけ高額な価格でJWMが受注し,下請にできるだけ低額で受注させる必要があり,最低工事価格を競う入札をまともに行うわけにはいかなかったのです。ですから,私の建設する特別養護老人ホームなどは,J きるだけ高額な価格でJWMが受注し,下請にできるだけ低額で受注させる必要があり,最低工事価格を競う入札をまともに行うわけにはいかなかったのです。ですから,私の建設する特別養護老人ホームなどは,JWMが受注することは決まっておりますので,名ばかりの入札を行って,低い価格で入札した業者などと交渉し,あるいは予め下請業者と話しあって受注価格を決めるなどの方法で,差益を出し,用地取得代金などを捻出しましたが,これはBさんと話し合って思いついた方法でしたし,BさんもJWMが受注している実態は,施設の認可をする立場ですからよく判っていたはずで,それを黙認してくれたばかりか,JWMの実績をつけるために行田市の緑風苑の理事長に建替工事にJWMを使うように推薦してくれたりしました。」(甲20の14ないし17頁)イしかしながら,被告Aは,贈収賄刑事事件の公判廷において,概ね,「Bさんに対して,JWMが下請を入れるとか,工事代金を幾らにするという具体的な工事について相談したことは全くなく,BさんがJWMがどういう会社で,どういう受注形態を取っていたかということは知らない。」と述べており(乙16),また,本件訴訟における陳述書において,概ね,「私は,B氏に,補助金の交付を不当に受けようという話をしたことはないし,一括下請の話もしていない。Bさんは,JWMが工事を一括 下請に出したことは全く知らなかったはずである。」と述べている(丙1)。 さらに,被告Bは,本件訴訟における陳述書において,概ね,「私は,A氏からはJWMが下請業者に一括下請を行うことについては何の相談も受けていなかった。県の担当者や国の担当者,その他の誰からも一括下請を行っていることについての報告を受けていなかった。したがって,私は,当時JWMが下請業者に一括下請を行っていた事実に は何の相談も受けていなかった。県の担当者や国の担当者,その他の誰からも一括下請を行っていることについての報告を受けていなかった。したがって,私は,当時JWMが下請業者に一括下請を行っていた事実については全く知らなかった。」と述べている(乙20)。 (3) 判断 そこで,検討するに,これまで認定したように,被告Aは特別養護老人ホームの施設建設を行うに際し,被告Bから特別養護老人ホームの設置,運営の方法や補助金制度の仕組みに至るまで様々な事項の説明を受け,その後実際に特別養護老人ホームの運営主体の社会福祉法人の設立,補助金の申請,施設完成に至るまで種々便宜な取り計らいを受け,短期間に次々と埼玉県内に特別養護老人ホームを設置する計画を進めていったものであるから,その過程で土地をどうやって確保するか土地代の手当をどうするか等の話題も出たであろうことは容易に推認できる。したがって,「JWMが社会福祉法人から元請として受注した工事について,それをできるだけ低額で下請に出すことによって差益を出し,それを土地代に充てる」等の話題が被告Aと被告Bとの間で交わされたことはあり得ないことではない。 しかし,本件で問題となる被告Aの不法行為は,特別養護老人ホーム等の施設の建設工事に関し,実際には低額で斉藤工業との間で請負契約を締結したのにそれと異なる高額の請負契約書を補助金申請書に添付したり,被告JWMは実際には施設の建設工事に関与せず最初から下請に一括下請する予定であったのに,競争入札により被告JWMが工事を落札したかのような虚偽の入札状況調書を添付するなどし,被告JWMの元請金額を基にして補助金 申請を行い,補助金の交付を受けたというものであるところ,被告Bにおいて,被告Aが上記のように二重の契約書を用いたり,形ばかりの入札状況調書を用いて補助金 被告JWMの元請金額を基にして補助金 申請を行い,補助金の交付を受けたというものであるところ,被告Bにおいて,被告Aが上記のように二重の契約書を用いたり,形ばかりの入札状況調書を用いて補助金申請をするまでのことを認識し又は容易に認識し得べき状況があったとまでは本件証拠上認めるに足りない。すなわち,桃泉園北本特別養護老人ホームについては土地は寄付されたもので被告JWMの関与はなく,その後の吹上苑,あけぼの,川里苑,鷲宮苑,上福岡苑については指名競争入札が行われ,被告JWMが落札した等の書類が提出されていることが推認されるが,被告Bにおいてそれらが虚偽のものであることを認識していたとか,被告JWMが実際にいくらの価格で下請に出す予定なのか,それらが全く工事に関与しないいわゆる丸投げであるのか等について被告Aから聞かされていた等の事実は本件証拠上認めるに足りない(たしかに,甲20の被告Aの検面調書中には,被告Aは,形ばかりの入札を行ってJWMが元請となり,それを低額で下請に出すことにより土地代を捻出することを被告Bと話し合って決めた等の供述部分はあるが,その内容は抽象的であり,これのみでは,被告Bの関与を認めるに十分でない。)。 以上によれば,前記(2)アの(ア)ないし(ウ)に示された被告Aの供述内容を前提としても,それは被告Aと被告Bにおいて,概括的に,被告JWMが元請した工事を安い金額で下請に出すことにより差益を出し,それを土地代に充てる予定であるなどの話題が出たに止まり,それ以上に被告Bにおいて,被告Aが計画した不正な補助金申請を積極的に教示したとかあるいは被告Aの不正な補助金申請について,これを知りつつ黙認したとまでの事情は本件証拠上認定することは困難である(補助金の基準単価と実際の工事単価とを比較した場合,元請業者と下請業 に教示したとかあるいは被告Aの不正な補助金申請について,これを知りつつ黙認したとまでの事情は本件証拠上認定することは困難である(補助金の基準単価と実際の工事単価とを比較した場合,元請業者と下請業者との交渉次第では後者が前者より下回ることもあるから,最初からいわゆる丸投げと呼ばれる一括下請を予定しない限り,元請金額と下請金額の間に差益を生じたとしても,そのことから直ちに不正な補助金交付があったとまではいえない。また,本件の場合,吹上苑, あけぼの,川里苑,鷲宮苑,上福岡苑については指名競争入札が行われた結果被告JWMが落札して工事業者となる旨の書類が提出されたとみられる事は前記のとおりであるところ,たしかに1,2年の短期間に被告Aの計画したこれらの施設の建設について,いずれも被告Aの個人会社ともいえる被告JWMが落札業者となるのは不自然であり,被告Bとしては,上記入札が形だけのものではないかということを疑い得べき状況にあったとはいえるが,このことを考慮しても前記判断を左右するに足りない。)。 (4)なお,原告らは,被告Bが平成8年8月に選挙運動資金名目で被告Aから1000万円を受領していることから,被告Bが,被告Aが被告JWMの一括下請による補助金の多額の差額利益を取得をしていることを許容していることを推認させる旨主張する。 しかしながら,たしかに,証拠(甲14,20,乙20,丙1)及び弁論の全趣旨によれば,被告Bは,平成8年8月14日,被告Aから特別養護老人ホーム等の施設整備のための補助金交付等に関する協議書等の受理,審査及び社会福祉法人の設立認可等に関し,便利かつ有利な取り計らいを受けた謝礼の趣旨のもとで1000万円の供与を受けたことなどから,有罪の判決を受け,同判決は確定したことが認められるが,上記1000万円の供与は, 法人の設立認可等に関し,便利かつ有利な取り計らいを受けた謝礼の趣旨のもとで1000万円の供与を受けたことなどから,有罪の判決を受け,同判決は確定したことが認められるが,上記1000万円の供与は,被告Aの被告Bの選挙運動への応援,複数の特別養護老人ホームの設置助成等に対する謝礼等種々の趣旨が含まれているものであり,上記1000万円の受領から,直ちに被告Bにおいて,被告Aの不正な補助金の取得を認識し又はこれを許容したことの表れとまで断ずることはできない。以上から原告らの上記主張は採用できない。 (5)したがって,被告Bが被告A及び被告JWMと共同で不法行為を行ったものと認めることはできず,この点に関する原告らの請求には理由がない。 争点5(被告Cの共同不法行為の成否)について(1)原告らは,「被告Cは,被告Aとの間において,特別養護老人ホームの 建設工事について,被告JWMが建設工事を請け負い,その工事を低額で下請に一括下請することによって,違法な差額利益を得ることを許容して,消極的に黙認していたものであるから,共同不法行為が成立する。」主張する。 しかし,本件全証拠によっても,被告Cの共同不法行為が成立すると認めるに足りる証拠はない。 (2)たしかに,被告Aの贈収賄刑事事件の捜査段階の供述調書(甲21の平成8年12月18日付け検察官に対する供述調書)には,概ね,次のような記載がある。 「私が厚生省で力のあるCさんを握っていたため,埼玉県生活福祉部高齢者福祉課に課長として厚生省から出向してきたBさんも私が特別養護老人ホームなどの設置で国や県の補助金を受給するのに尽力してくれたのだと思っていました。だからこそ,私はCさんに特別養護老人ホームなどの土地の入手,市町村との交渉状況,建物の規模,構造やBさんが私に協力してくれているこ 国や県の補助金を受給するのに尽力してくれたのだと思っていました。だからこそ,私はCさんに特別養護老人ホームなどの土地の入手,市町村との交渉状況,建物の規模,構造やBさんが私に協力してくれていることなどことあるごとに報告していました。」(8頁),「平成5年夏ころから,私は,当時不景気の最中でゼネコンなども仕事がなく,下請価格でたたいても,つまり,施設建設をJWMが受注し,ゼネコンなどに下請に出す際,発注額をJWMの受注額よりかなり低くしても受注する実態を知り,整備,設備などの補助金を浮かせて,つまり,JWMの受注工事をゼネコンに対し,低額で,いわゆる一括下請に出して差益を出そうという考え,北本特別養護老人ホームだけではなく,県内にもっと特別養護老人ホームなどの老人福祉施設を建設しようと考えたのです。このような施設の用地取得代は,今述べた下請差益から捻出できると考えたのです。」(9,10頁),「私は,いずれも,そのころ,Cさんと飲食した際などに,彼に対し,『特養の建設は,JWMで受注することにしました。そこで下請などに回す際に利益を出し,施設の土地代に充てます。』などと報告し,Cさんは,『いい考えだな。JWMは廃棄物処理の会社だろう,建設なんかできるのか。』と聞く ので,私は,『資格のある人を入れ,建築業の許可も取りましたから。』と報告すると,『そうか』などと言ってくれました。Cさんは老人保健福祉部長を3年間もやっており,その事業の実態に詳しい人でしたから,私の話しが指名競争入札など建前でしかないという実態を前提として話しているのに,何の違和感もない様子でした。」(11ないし13頁)しかしながら,これらの被告Aの供述を前提としたとしても,被告Cが被告Aが主宰する各社会福祉法人の特別養護老人ホーム建設の際に被告JWMが受注すること 違和感もない様子でした。」(11ないし13頁)しかしながら,これらの被告Aの供述を前提としたとしても,被告Cが被告Aが主宰する各社会福祉法人の特別養護老人ホーム建設の際に被告JWMが受注することとしたことや被告JWMが下請に出すことなどを知っていたことを窺わせるにとどまり,被告Aの上記供述のみで,被告Aが,被告JWMをトンネル会社として利用し,被告JWMが一括下請したにもかかわらず被告JWMと社会福祉法人の請負契約の契約金額を基にして補助金の申請をする等被告Aの不正な手段についてまで被告Cが知り得たと認めることはできない。 (3)なお,原告らは,平成6年7月から8月にマンション購入資金として被告Aより6000万円もの多額の金額を賄賂として受領していることから,被告Cが,被告Aが被告JWMの一括下請による補助金の多額の差額利益を取得をしていることを許容していることを推認させる旨主張する。 たしかに,証拠(甲14,甲21)及び弁論の全趣旨によれば,被告Cは,平成6年7月27日から同年8月23日にかけて被告Aから,特別養護老人ホーム等の施設整備のための補助金交付等に関し,便利かつ有利な取り計らいを受けた謝礼等の趣旨で合計6000万円の供与を受けたこと認められる。 しかしながら,被告Aの被告Cに対する上記6000万円の供与は,被告Cが行った諸種の有利な取り計らいに対する謝礼の一つとして行われたもので,被告Cにおいて,被告Aから,元請となった被告JWMが下請に安く工事をさせることにより差益を出すとの概括的な話をされていたとは窺い得るものの,それ以上に,被告Cにおいて,被告Aによる被告JWMの一括下請 を利用した不正な補助金の取得を認識し又はこれを許容していたとまでの事情は,本件証拠上これを認めるに足りない。 そうすると,被告Aの被告Cに対 ,被告Cにおいて,被告Aによる被告JWMの一括下請 を利用した不正な補助金の取得を認識し又はこれを許容していたとまでの事情は,本件証拠上これを認めるに足りない。 そうすると,被告Aの被告Cに対する6000万円の供与をもって被告Cが被告Aの不正な補助金取得という不法行為に加担していたとの表れとまで断ずることはできず,原告らの上記主張は採用できない。 (4)以上から,被告Cが被告A及び被告JWMと共同で不法行為を行ったものと認めることはできず,この点に関する原告らの請求には理由がない。 争点6(損害額)について(1)本件における損害これまで検討したように,①被告Aは,桃泉園北本特別養護老人ホーム建設に際し,実際には低額で建設工事がなされたにもかかわらず,より高額な契約金額とした虚偽の契約書を作成し,それを基に補助金の申請するなどし,②被告A及び被告JWMは,彩吹会吹上苑,彩光会あけぼの,彩川会川里苑,彩鷲会鷲宮苑,桃泉園上福岡苑の各特別養護老人ホーム建設に際し,何ら工事に関与しない被告JWMをいわばトンネル会社として介在させ,経理規程に従って競争入札に付したようにみせかけた上,被告JWMと社会福祉法人の請負契約の契約金額を基にして,補助金の申請をするなどし,もって,それらが当該施設の建設工事に係る真実の契約金額である旨誤信させて,補助金の交付を受けたものであるから,埼玉県は,これらの行為がなければ支出を免れた補助金相当額の損害を被ったというべきであり,交付された補助金の額から実際になされた低額の契約金額又は各下請工事契約の代金額を基礎として算出された補助金額を控除した額が損害ということになる。 (2)補助金交付額の算定方法そこで,本件における具体的損害額を検討することとなるが,その前提として,補助金の交付額の算定方法につい として算出された補助金額を控除した額が損害ということになる。 (2)補助金交付額の算定方法そこで,本件における具体的損害額を検討することとなるが,その前提として,補助金の交付額の算定方法について,これまで認定した事実に加え,証拠(甲10ないし13,22,乙9)及び弁論の全趣旨によれば,次のと おりの事実が認められる。 ア基準額の算定整備する各施設(特別養護老人ホーム,老人デイケアセンター,地域福祉センター等)ごとの本体工事費,冷暖房工事費,昇降機工事費,介護用リフト工事費等の経費の種目ごとに,所定の方式により算出した基準額と補助対象経費の実支出額とを比較し,少ない方の額を選定する。 この場合において,基準額は,本体工事費等の経費の種目については,所定の1㎡当たりの基準単価と補助対象経費の実支出額の1㎡当たり単価(実施単価)とを比較して少ない方の額に,所定の基準面積と実際の建築面積(実施面積)とを比較して少ない方の面積を乗じて算定することとされていた。 イ県補助所要額の算定総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額と上記アにより算定した基準額とを比較し,少ない方の額を県補助基本額とし,これに都道府県等の補助率4分の3を乗じて県補助所要額を算定する。 ウ国庫補助金交付額の算定上記イにより得られた額と,都道府県等が実際に社会福祉法人等に補助した額とを比較し,少ない方の額を本件各補助金の補助対象事業費とし,これに国庫補助率3分の2を乗じて得た範囲内の額を本件各補助金の交付額とする。 (3)会計検査院による不当補助金の算定会計検査院における平成8年度決算検査報告において,埼玉県における彩福祉グループ5法人6施設に関して不当と認めた補助金額の算定根拠・算定方法及び不当と認めた金額については以下のとおりである(甲22)。 ア 院における平成8年度決算検査報告において,埼玉県における彩福祉グループ5法人6施設に関して不当と認めた補助金額の算定根拠・算定方法及び不当と認めた金額については以下のとおりである(甲22)。 ア算定根拠及び算定方法①設計金額における各工事費の種目別の経費の構成比に従い,検査の結 果判明した下請工事契約金額等の額を各種目に按分する。 ②上記①により算出された各工事の種目別の経費について,特別養護老人ホーム等の各施設別の面積割合に従い各施設に按分する。 ③上記②により各施設の別に按分された経費の額について,年度別の施設整備の進捗状況に従い各年度に按分する。 ④上記③により各施設・各年度の別に按分された経費の額を各施設・各年度の実施面積で除し,各施設・各年度の施設整備に係る実施単価を算定する。 ⑤上記④の実施単価又は基準単価のいずれか少ない方の額に基準面積又は実施面積のいずれか少ない方の面積を乗じて基準額を算定する。 ⑥各経費の種目ごとの補助対象経費の実支出額と,上記①ないし⑤により各工事の種目ごとに算出された基準額とを比較し,少ない方の額を選定して合算する。 ⑦総事業費から寄付金その他の収入額を控除した額と上記⑥により算定した金額とを比較し,少ない方を県補助基本額とし,これに県の補助率4分の3を乗じて県補助所要額を算定する。 ⑧上記⑦により算定した県補助所要額と,県において実際に補助した額とを比較し,少ない方の額を国庫補助基本額とし,これに国庫補助率3分の2を乗じて国庫補助金交付額を算定する。 ⑨本件各補助金の国庫補助基本額(県補助基本額)及び国庫補助金交付額(県補助所要額)から,それぞれ,上記⑦及び⑧により算定した国庫補助基本額(県補助基本額)及び国庫補助金交付額(県補助所要額)を差し引いて,過大な補助対象事業費及び 補助基本額)及び国庫補助金交付額(県補助所要額)から,それぞれ,上記⑦及び⑧により算定した国庫補助基本額(県補助基本額)及び国庫補助金交付額(県補助所要額)を差し引いて,過大な補助対象事業費及びその交付額を算定する。 イ埼玉県の彩福祉グループ5法人6施設の不当と認めた金額会計検査院において埼玉県の彩福祉グループ5法人6施設のそれぞれについて不当と認めた算定根拠及び算定経過は,別紙3記載のとおりである。 (4)当裁判所の損害額の認定ア会計検査院の上記算定方法は,下請金額等の実支出額を設計金額における種目別経費の構成比に従って各種目に按分し,各施設・各年度の実施面積で除するという方法で各施設・各年度の施設整備に係る実施単価を算出し,これと基準単価を比較していずれか少ない方の額に基づき,補助基準額を算出するというもので,その算定方法,算定過程に不合理な点はなく,適切に算定されたものと認められるから,本件における不法行為によって被った埼玉県の損害もこれによって認定するのが相当である。 なお,甲11ないし13によれば,上記のような過大補助金の算定方法は,被告Aらが山形県において手がけた特別養護老人ホーム等複合施設である社会福祉法人彩山会(以下「彩山会」という。)の成安苑建設工事に関し,山形県が県補助金過大交付金額を算定するについても同様に用いられていることが認められる。そして,甲13によれば,平成7年度だけでも彩山会成安苑に係る過大補助金は約1億5489万円にのぼっているところ,会計検査院の平成8年度決算検査報告(甲10,22)では,彩山会成安苑関連の不当と認める補助金は平成7,8年度合計で1億3746万円とされており,会計検査院の算定は山形県の計算よりむしろ控え目であると認められる。 もっとも,同様に山形県大江町に被告Aらがてが 会成安苑関連の不当と認める補助金は平成7,8年度合計で1億3746万円とされており,会計検査院の算定は山形県の計算よりむしろ控え目であると認められる。 もっとも,同様に山形県大江町に被告Aらがてがけた社会福祉法人彩江会(以下「彩江会」という。)の大江苑(平成7年度)に関しては,会計検査院の決算検査報告(甲10,22)では過大補助金額約1812万円とされているところ,甲11によれば,山形県積算では約370万円とされており,相違がある(山形県の彩江会大江苑に関する上記積算も甲13と同様平成10年8月ころ行われたと推定される。)。しかし,甲8によれば,国は山形県に対し,平成10年3月31日付けで,事件発覚後の事業計画変更による減額として彩江会大江苑関連の国庫補助金1152万円 の返還を命じており,時期的にみて山形県の計算は事業計画変更後の過大補助金の計算をしたとみる余地がある。そうすると,彩江会大江苑分の過大補助金額に関する会計検査院報告と山形県認定額に相違があるとしても,会計検査院の示した過大補助金の算定方法に不合理はないとの前記判断を左右するものではない。 イ被告らは,各施設,各年度の実施単価は,各施設における各年度の実支出額を各種目ごとに算出した上で導くべきものであって,会計検査院の上記算定は正確なものではないと主張する。被告らの上記主張はその趣旨が明らかでないが,甲10,22によれば,会計検査院の上記算定は各施設における実支出額を基にし,当該実支出額を設計金額における工事種目別構成比に従い按分し,各施設・各年度の実施面積で除するなどして実施単価を算出しているもので,その算定過程に何ら不自然,不正確なものがあるとは認め難いことは前記認定のとおりである(なお,本件では,原告らから各施設の設計図書や工事内訳書などの原資料は提出さ して実施単価を算出しているもので,その算定過程に何ら不自然,不正確なものがあるとは認め難いことは前記認定のとおりである(なお,本件では,原告らから各施設の設計図書や工事内訳書などの原資料は提出されていないが,そのことも上記認定を左右するものではない。)ウそして,会計検査院の調査・報告によれば,埼玉県が5施設6法人に対し実際に(最終的に)交付した補助金の合計額が40億7905万6000円(別紙3の7枚目I欄(ア))であり,会計検査院が適正な補助金と認定した額は37億3378万7000円(別紙3の7枚目I欄(イ))であり,その差額3億4526万9000円が埼玉県から5法人6施設に関し過大に支出されたことになる。 また,これまで認定したように,埼玉県は,埼玉県民間社会福祉施設整備費補助金要綱により,県単独の民間社会福祉施設整備費事業として,総事業費又は補助基準額の16分の3を上乗せして社会福祉法人に補助しているものであるから,実績報告等の県補助基本額から会計検査院が認定した県補助基本額を控除した差額4億6038万6690円(別紙3の7枚 目G(ウ))の16分の3である8632万2000円(1000円未満切捨て)も同様に埼玉県から5法人6施設に関し過大に支出されたと推定される。 したがって,被告Aの一連の不法行為によって彩福祉グループの5法人6施設に関し,埼玉県から合計4億3159万1000円が過大に支出されたと認められる。 そして,これまで認定したところによれば,被告JWMは,北本特別養護老人ホームの建設工事に関し関与した形跡はなく,その後の特別養護老人ホームの建設に当たってトンネル会社として関与することとなったものと認められるから,被告JWMの不法行為と因果関係のある損害としては,上記の過大に支出された分から桃泉園の北本特別 の後の特別養護老人ホームの建設に当たってトンネル会社として関与することとなったものと認められるから,被告JWMの不法行為と因果関係のある損害としては,上記の過大に支出された分から桃泉園の北本特別養護老人ホームに係る分を除外したものであり,具体的には,国・県補助額過大分としては,5法人6施設の合計3億4526万9000円から北本特別養護老人ホームに係る過大分432万2000円を控除した3億4094万7000円であり,また,県単独の補助としては,会計検査院が認定した県補助基本額の過大分4億6038万6690円から北本特別養護老人ホームに係る県補助基本額過大分576万5775円を控除した額(4億5462万0915円)の16分の3を乗じた額である8524万1000円(千円未満切捨て)である。そして,それらの合計は4億2618万8000円であると認められる。 エしたがって,被告Aの不法行為と相当因果関係のある埼玉県の損害額は,4億3159万1000円であり,被告JWMの不法行為と相当因果関係のある埼玉県の損害額は,4億2618万8000円であると認められる。 (5)国庫補助分についてなお,上記(4)でみた損害額は,国庫補助金分の額についても含まれているものであるが,本件における補助金の制度は,国が補助事業者である埼玉 県に補助金を交付し,埼玉県はそれを財源の一部として,この補助金の交付の目的に従って各社会福祉法人に交付したものであり,各社会福祉法人に交付される補助金は埼玉県が主体として交付されたものというべきである。したがって,被告Aらの不法行為によって詐取された過大な補助金分については直接的には埼玉県の損害というべきものであるから,国庫補助金分も含めて埼玉県の損害とみるべきである。 (6)被告Aの主張についてア被告Aは,概ね 法行為によって詐取された過大な補助金分については直接的には埼玉県の損害というべきものであるから,国庫補助金分も含めて埼玉県の損害とみるべきである。 (6)被告Aの主張についてア被告Aは,概ね,「国の埼玉県に対する補助金返還請求権は,この補助金適正化法18条1項の公法上の返還命令に基づいて発生するものであり,当該請求権は公法上の金銭債権と観念すべきものであるから,会計法30条の規定により,5年間これを行使しないときは時効によって消滅するものと解される。本件についてみると,不当国庫補助金は2億3019万円であるという会計検査院の平成8年度決算検査報告は遅くとも平成9年11月末日にはなされていると考えられる以上,国は遅くとも平成9年11月末日には補助金交付決定取消権を行使できた。とすれば,遅くとも平成14年11月末日の経過により国の埼玉県に対する交付決定取消権は時効消滅した以上,国の補助事業者である埼玉県に対する補助金返還請求権は発生しないことになり,原告らが主張する損害のうち国庫補助金分2億3019万円については埼玉県の損害とはいえない。」と主張する。 しかしながら,各社会福祉法人に交付された補助金(間接補助金)は埼玉県との関係でとらえられるべきものであり,国の埼玉県に対する交付決定取消権が時効消滅したか否かは国と埼玉県との関係で処理されるべき問題であって,仮に国の埼玉県に対する交付決定取消権が時効消滅して国が埼玉県に補助金の返還を請求できないとしてもそれは被告Aらの不法行為による埼玉県の損害額を考える上で障害となるものではないというべきである。 したがって,国庫補助金分については埼玉県の損害とはいえない旨主張する被告Aの上記主張は採用できない。 イ(ア)次に,被告Aは,概ね,「埼玉県は,会計検査院からの勧告を受けた後,本 である。 したがって,国庫補助金分については埼玉県の損害とはいえない旨主張する被告Aの上記主張は採用できない。 イ(ア)次に,被告Aは,概ね,「埼玉県は,会計検査院からの勧告を受けた後,本件に関係する全社会福祉法人,被告JWM及び下請業者の調査を行った上で上記精算交付決定を行い,埼玉県が不当と判断した額につき,各社会福祉法人から返還を行わせている(甲3)。すなわち,埼玉県は,被告らの行った行為及びこれに関連する行為を把握し,一括下請を受けた業者からも事情聴取した上で,適正な補助金額を決定し,差額の返還を各社会福祉法人から埼玉県に行わせている。したがって,仮に,原告らの主張するとおり被告らの行為により埼玉県に何らかの損害が発生したとしても,この部分は補助金の精算交付決定が行われたことにより,埼玉県の損害は全部填補されており,現段階では埼玉県に損害は存在しない。」旨主張する。 よって検討するに,甲8によれば,厚生省は,会計検査院の平成8年度決算検査報告を受けて,平成10年3月31日,埼玉県及び山形県に対し,補助金適正化法に基づき,総額2954万円(うち埼玉県分は1802万円)の返還を命じ,さらに,約3億1800万円についても,両県に対して,返還に向けて必要な措置を講じるように併せて通知をしたこと,甲3によれば,埼玉県は,平成10年7月17日付けで,別紙2記載のとおり,補助金交付決定のうち合計2752万3000円について一部取消決定又は補助金の交付額確定の手続を行ったこと,しかし,それ以上に埼玉県が各社会福祉法人に補助金の返還を求めた形跡がないことが認められる。 しかしながら,被告Aらの不正行為により総額4億数千万円にのぼる補助金の不正取得が行われたと認定すべきことは前記のとおりであり,埼玉県が各社会福祉法人に甲3に示された以上 がないことが認められる。 しかしながら,被告Aらの不正行為により総額4億数千万円にのぼる補助金の不正取得が行われたと認定すべきことは前記のとおりであり,埼玉県が各社会福祉法人に甲3に示された以上の補助金返還を求めた形 跡がないとしても,そのことは埼玉県と各社会福祉法人の問題であって,本件における被告Aらの不正行為と県の損害に直接関わるものとはいえない。そして,埼玉県が各社会福祉法人に甲3以上の補助金返還を求めていないことについて会計検査院が特段の見解を示していないとしても,前記認定を左右するものではない。なお,甲22によれば,会計検査院が甲10に示された平成8年度決算検査報告の見解を変えたなどとは到底解されない。そうすると,甲3の補助金の一部取消決定や交付額確定により埼玉県の損害が全部填補されたとは到底いえず,この点の被告Aらの上記主張は採用できない。 (イ)もっとも,甲3の補助金交付の一部取消決定等により各社会福祉法人に補助金の一部返還を求め,各社会福祉法人は当該金額を埼玉県に返還していると推定されるから,上記(4)で認定した被告Aらの不法行為と相当因果関係のある損害のうち,上記返還分を控除するのが相当である。 したがって,本件訴訟において埼玉県に生じている損害としては,上記(4)で認定した額より各社会福祉法人から返還された額の合計2752万3000円を控除した額となり,結局,被告Aの不法行為に関する損害としては4億3159万1000円から2752万3000円を控除した4億0406万8000円,被告JWMの不法行為に関する損害としては4億2618万8000円から2752万3000円を控除した3億9866万5000円であると認められる。 (7)弁護士費用について地方自治法242条の2第7項(現行法では12項)は,同条1項 しては4億2618万8000円から2752万3000円を控除した3億9866万5000円であると認められる。 (7)弁護士費用について地方自治法242条の2第7項(現行法では12項)は,同条1項4号所定の損害賠償請求訴訟(以下「4号訴訟」という。)の住民訴訟を提起した者が勝訴した場合において,弁護士に報酬を支払うべきときは,普通地方公共団体に対し,その報酬の範囲内で相当と認める額の支払を請求することが できるとしているところ,当該裁判が確定した後に地方公共団体が上記訴訟提起者に対し支払うことが相当と認められる金額については,不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。けだし,4号訴訟の場合,原告は勝訴判決が確定した場合に限り上記規定に基づき地方公共団体に相当の弁護士費用を求めることができると解せられるが,その場合地方公共団体が支払を命じられる相当な弁護士費用は被告の不法行為により地方公共団体に生じた損害ということができ,地方公共団体としては当該相当弁護士費用相当額を被告に求償し得ることができると考えられる。そして,4号訴訟は,住民がいわば公益の代表者として地方公共団体の損害賠償請求権を代位行使するものであり,地方公共団体の損害が回復されることによってその訴えの原告を含む住民全体の利益が回復される関係にあることを考慮すると,4号訴訟の原告としては,4号訴訟の中で上記相当と認められる金額を不法行為に基づく相当因果関係のある損害の一部として被告に請求し得ると解するのが相当である。 そして,上記相当と認められる金額については,本件の認容額,訴訟追行の経緯等諸般の事情を考慮し,少なくとも認容額の約2.5%に相当する1000万円を下るものではないと認めるのが相当である。 そこで,上記弁護士費用を加算すると,損害額は,被告Aにつ の認容額,訴訟追行の経緯等諸般の事情を考慮し,少なくとも認容額の約2.5%に相当する1000万円を下るものではないと認めるのが相当である。 そこで,上記弁護士費用を加算すると,損害額は,被告Aについては4億1406万8000円,被告JWMについては4億0866万5000円となると認められる。 争点7(原告らの予備的請求(県の補助金に係る概算払精算請求権の代位行使)の当否)について原告らの予備的請求に係る主張は,要するに,被告らの一連の詐欺的行為により過大な補助金が交付されたことにより補助金の精算請求権が発生しているにもかかわらずそれを怠っているとしてその怠る事実の相手方にその不当利得ないし損害賠償の請求をするものと解される。 しかしながら,本件各補助金は,埼玉県から各社会福祉法人に概算払によって交付されたものであるが,埼玉県が概算払の精算を求めるべき場合にその精算義務を負う者は,補助金交付の相手方である当該社会福祉法人であると考えられる。 そうすると,被告らについて,主位的請求である不法行為(共同不法行為)を理由として責任を追及する場合は格別,予備的請求である補助金に係る概算払の精算請求権については,被告らに精算義務があると解することはできないから,結局,原告らの予備的請求に係る上記主張は理由がなく,採用できないというべきである。 第4 結論 以上の次第で,原告らの請求については,被告Aに対し,埼玉県に4億1406万8000円及びこれに対する平成9年9月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で,被告JWMに対し,埼玉県に4億0866万5000円及びこれに対する平成9年9月19日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由がある(被告Aと被 限度で,被告JWMに対し,埼玉県に4億0866万5000円及びこれに対する平成9年9月19日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由がある(被告Aと被告JWMは共同不法行為が成立するから4億0866万5000円の限度で不真正連帯債務の関係にある。)。 しかし,被告A及び被告JWMに対するその余の請求並びに被告B及び同Cに対する請求はいずれも理由がない。そこで,主文のとおり判決する(なお,仮執行宣言は不相当と認める。)。 さいたま地方裁判所第4民事部裁判長裁判官豊田建夫裁判官富永良朗 裁判官松村一成

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