- 1 -平成27年4月24日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成25年(ワ)第14849号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成27年3月18日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成25年6月19日から支払済みまで,年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 争いのない事実等(証拠を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者等ア原告原告は,金型の設計,製造及び販売,自動車用部品や付属品の製造及び販売並びにプレス加工業等を業とする株式会社である。 Aⅰ(以下「原告代表者」という。)は,原告の代表者である。 イ被告被告は,パーソナル・コンピュータ,コンピュータ関連機器のハードウェア及びソフトウェア,並びにマイクロ・コンピュータを基礎とするパーソナル・コンピュータシステム及びコンピュータに関連する付属機器の販売等を業とする合同会社である。 ウ被告補助参加人被告補助参加人は,ダイオード,トランジスタ及びこれらに類似する半 - 2 -導体の製造等を業とする大韓民国の法人である(以下,被告と被告補助参加人を併せて,「被告ら」という。)。 Bⅰ(以下「Bⅰ」という。)及びCⅰ(以下「Cⅰ」という。)は,平成7年から平成8年当時,被告補助参加人にて技術者として勤務していた。 (2) 原告の特許権原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許を「本件特許」という。ま ⅰ」という。)は,平成7年から平成8年当時,被告補助参加人にて技術者として勤務していた。 (2) 原告の特許権原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許を「本件特許」という。また,本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書等」という。)を有している。 発明の名称液晶表示装置特許番号第3486859号出願日平成8年6月14日(特願平8-214896。以下「本件出願日」といい,上記特願による出願を「本件出願」という。)発明者原告代表者(ただし,特許公報の記載によるもの。)登録日平成15年10月31日本件特許の特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲における請求項の数は5であるが,そのうち請求項1の記載は,別紙特許公報(甲2)の特許請求の範囲【請求項1】記載のとおりである(以下,この発明を「本件発明」という。)。 (3) 構成要件の分説本件発明を構成要件に分説すると次のとおりである。 A 基板上に走査信号配線と映像信号配線と前記走査信号配線と映像信号配線との各交差部に形成された薄膜トランジスタと前記薄膜トランジスタに接続された液晶駆動電極と,少なくとも一部が前記液晶駆動電極と対向して形成された共通電極とを有するアクティブマトリックス基板と, - 3 -B 前記アクティブマトリックス基板に対向する対向基板と,C 前記アクティブマトリックス基板と前記対向基板に挟持された液晶層とD からなる横電界方式液晶表示装置において,E 前記走査線信号配線と前記映像信号配線と前記液晶駆動電極と前記共通電極とがそれぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されており,F かつ共通電極がアクティブマトリックス基板のパッシベージョン層の上に形成さ と前記映像信号配線と前記液晶駆動電極と前記共通電極とがそれぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されており,F かつ共通電極がアクティブマトリックス基板のパッシベージョン層の上に形成され,配向膜と直接接触しており,G かつ映像信号配線の両側に映像信号配線とオーバーラップするように共通電極が配置され,H かつ各画素の共通電極は映像信号配線の上層で互いに連結されているI ことを特徴とする横電界方式液晶表示装置(4) 被告の行為ア被告は,別紙1被告製品目録記載の各製品(以下「被告各製品」という。 ただし,被告補助参加人が製造した液晶モジュールを搭載した製品に限る。)を輸入・販売している。 イ原告は,被告各製品の構成について,別紙2「被告各製品の構成」のとおりであると主張する。 そのうち,構成①,②,③及び⑥については,当事者間に争いがない。 (5) 被告各製品における本件発明の構成要件充足性被告各製品は,本件発明の構成要件AないしD,G及びHを充足する。 (6) 本件発明に先立つ公知技術本件発明に先立つ公知技術が記載された刊行物として,以下の文献が存在する。 ア特開平7-36058号公報(公開日平成7年2月7日。乙14。以下 - 4 -「乙14公報」といい,同公報に係る発明を「乙14発明」という。)イ特開平2-149824号公報(公開日平成2年6月8日。乙15。以下「乙15公報」という。)ウ特開平5-2190号公報(公開日平成5年1月8日。乙16。以下「乙16公報」という。)エ特開平7-43744号公報(公開日平成7年2月14日。乙17。以下「乙17公報」という。) 2 本件は,発明の名称を「液晶表示装置」とする特許権(本件特許権)を有する原告が,被告各製品は本 エ特開平7-43744号公報(公開日平成7年2月14日。乙17。以下「乙17公報」という。) 2 本件は,発明の名称を「液晶表示装置」とする特許権(本件特許権)を有する原告が,被告各製品は本件発明の技術的範囲に属しており,被告による被告各製品の輸入・販売が本件特許権の侵害に当たると主張して,民法709条に基づき,不法行為による損害賠償請求として1億円及びこれに対する平成25年6月19日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 3 争点(1) 原告は本件特許権の特許権者か(2) 被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するかア構成要件Eの充足性イ構成要件Fの充足性ウ構成要件Iの充足性(3) 本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものかア本件出願は冒認出願に当たるか(特許法123条1項6号)イ乙14公報を主引例とする進歩性欠如(同法29条2項)(4) 損害発生の有無及びその額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(原告は本件特許権の特許権者か)について〔原告の主張〕 - 5 -(1) 原告は,本件特許の特許権者である。すなわち,後記5〔原告の主張〕のとおり,本件発明は原告代表者による単独発明であり,原告は,原告代表者から,本件発明に係る特許を受ける権利の譲渡を受けて出願し,本件特許権の設定登録を受けたものである。 (2) これに対して被告らは,本件発明が原告代表者による単独発明であることを否認するが,本件明細書等には,原告代表者が「発明者」として記載されており,原告代表者が本件発明の発明者であると事実上推定されるところ,被告らは上記推定を覆すに足りる立証をしていないから,被告らの主張は理由がない。 書等には,原告代表者が「発明者」として記載されており,原告代表者が本件発明の発明者であると事実上推定されるところ,被告らは上記推定を覆すに足りる立証をしていないから,被告らの主張は理由がない。 (3) 被告らは,原告及びBⅰと被告補助参加人間の平成16年(2004年)4月付け合意書(乙4。以下「本件合意書」という。)により,原告が無償で被告補助参加人に本件特許権を譲渡した(以下「本件合意」という。)と主張して,この事実をもって原告代表者が本件発明の発明者であることを否定する。 しかし,被告らの主張は事実を誤るものである。本件合意書(乙4)には原告とBⅰの署名があるが,原告とBⅰが署名したのは,被告補助参加人の担当者であるDⅰ(以下「Dⅰ」という。)から,署名すれば,当時米国で係属していた訴訟を何とかしてやると説明を受けたからにすぎない。原告と被告補助参加人の双方において,本件合意を成立させる意思を有していなかった以上,本件合意が契約として成立したと解する余地はない。 また,原告代表者は,本件合意書につき,協議段階で,被告補助参加人に対し,その第3条(「Bⅰと大林精工は,第2項[表]記載の特許(注:本件特許を含む。)に関し,本合意以前に行った実施権設定,譲渡又は担保の設定は,全て無効であることを確認する。」)を受け入れることができないとの条件を明示した上で,署名を付した本件合意書の7及び8頁のみを被告補助参加人に送付しており,本件合意を内容とする被告補助参加人の申込みを拒絶していた。 その後も協議が重ねられ,被告補助参加人から新たな合意案の申込みがあった - 6 -が,原告代表者らはこれを拒絶していたのであるから,本件合意が締結されたということはできない。 この点,平成17年(2005年)10月11日,Dⅰが「代表取締役」欄 込みがあった - 6 -が,原告代表者らはこれを拒絶していたのであるから,本件合意が締結されたということはできない。 この点,平成17年(2005年)10月11日,Dⅰが「代表取締役」欄に署名して本件合意書を原告に送付してきたが,その時点では既に原告代表者が本件合意書の署名部分を送付してから約1年半が経過していたから,仮に上記送付を原告代表者らの申込みとみたとしても,その効力は既に失われていた。 また,Dⅰは被告補助参加人の単なる従業員にすぎないから,本件合意書は代表権限のある者により署名されたものではない。 以上のとおりであるから,本件合意が成立したと解する余地はないから,被告らの上記主張は,前提を欠き失当である。 〔被告らの主張〕(1) 原告が本件特許の特許権者であることは否認ないし争う。 そもそも,原告が特許権者であることに争いのある事案においては,原告が,特許取得原因事実として,特許を受ける権利を有して特許出願を行い,登録を受けたことを主張立証する必要があると解すべきであるところ,後記5〔被告らの主張〕のとおり,本件特許公報(甲2)に「発明者」として記載された原告代表者は本件発明の発明者ではなく,本件発明の構成要件E,F及びHに係る構成は,これを着想したのはBⅰであり,また,本件発明の構成要件Gに係る構成は,これを着想したのはCⅰであり,仮にそうでなくとも,Cⅰ及びBⅰの着想によるものであって,原告代表者が着想したものではない。 そして,Bⅰ(若しくはBⅰ及びCⅰ)は,本件発明についての特許を受ける権利,又は少なくとも,共同発明者として特許を受ける権利の共有持分を有しているが,本件特許につき特許出願をした原告に対して特許を受ける権利又はその共有持分を譲渡したことはない。 したがって,原告による本件発明の特 とも,共同発明者として特許を受ける権利の共有持分を有しているが,本件特許につき特許出願をした原告に対して特許を受ける権利又はその共有持分を譲渡したことはない。 したがって,原告による本件発明の特許出願は冒認出願と推認されるから, - 7 -原告は本件特許の特許権者とは認められない。 (2) また,原告及びBⅰと被告補助参加人は,本件特許の設定登録後,本件合意書(乙4)において,原告及びBⅰから被告補助参加人に対し本件特許を含む複数の特許に関する全ての権利を無償で譲渡することに合意した。原告が何らの対価も得ずに,被告補助参加人に対して本件特許権を譲渡したということは,原告が,本件発明は原告代表者による発明ではなく,被告補助参加人による発明であると認識していたことを強く推認させるものである。 2 争点(2)ア(構成要件Eの充足性)について〔原告の主張〕(1) 本件発明の構成要件Eは,「前記走査線信号配線と前記映像信号配線と前記液晶駆動電極と前記共通電極とがそれぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されており,」である。 被告各製品のTFT基板に形成された走査信号配線[1]と,映像信号配線[2]と,液晶駆動電極[4]と,共通電極[5]とは,絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されている(構成④)。 (2) 被告らは,構成要件Eの充足性を争うが,本件発明の技術的範囲に属する実施例4の構成に関して,本件明細書等の段落【0028】には,「図43,図44にあるように有効画素内の液晶駆動電極④の上に形成された上層絶縁膜をとりのぞいて,オープウィンドウWを形成することができる。」と記載されており,【図43】は次のとおりである(この点,本件明細書等の段落【0027】に「〔実施例4〕図14,…図43,…は,本発明の第4部類 のぞいて,オープウィンドウWを形成することができる。」と記載されており,【図43】は次のとおりである(この点,本件明細書等の段落【0027】に「〔実施例4〕図14,…図43,…は,本発明の第4部類の実施例の単位画素の断面及び平面図である。」と記載されており,図14と図43は,いずれも本件発明の同一の部類の実施例の構成として開示されている。)。 - 8 -【図43】 そして,本件発明の構成要件Eの「互いに異なった層に形成分離されている」の解釈に当たり,被告らが,本件明細書等中の共通電極③と液晶駆動電極④に着目するので,実施例4についても,同様に,共通電極③と液晶駆動電極④に着目し,模式的にこれらの関係を表すと,以下のようになる。 【図1 本件明細書等の実施例4の構成の模式図】これによれば,本件発明の構成要件Eの「互いに異なった層に形成分離されている」とは,二つの電極が,上記模式図の関係にある場合を含むと解される。 また,本件明細書等の段落【0034】には,【発明の効果】欄の「以上のように本発明によれば,走査信号配線と映像信号配線と共通電極と液晶駆動電極とを絶縁膜によってそれぞれ別々に異層化したことにより,ショートの発生がなく,開口率が高く,コントラストの高い残像の少ない液晶パネルを作れる。」との記載がある。 上記記載からも,本件発明の構成要件Eの「互いに異なった層に形成分離されている」とは,「別々に異層化され,分離されている」ことを意味すると解絶縁膜⑥液晶駆動電極④絶縁膜21共通電極③ - 9 -される。 そして,被告各製品の構成は,模式的に映像信号配線[2]と液晶駆動電極[4]との関係を表すと以下のようになる。 【図2 被告各製品の 通電極③ - 9 -される。 そして,被告各製品の構成は,模式的に映像信号配線[2]と液晶駆動電極[4]との関係を表すと以下のようになる。 【図2 被告各製品の構成の模式図】被告各製品における映像信号配線と画素電極との配置関係は,実施例4において例示された共通電極③と液晶駆動電極④との配置関係と完全に一致しており,「互いに異なった層に形成分離されている」に当たる。 したがって,被告各製品は,本件発明の構成要件Eを充足する。 (3) さらに,被告らは,本件明細書等の段落【0024】及び【0027】に言及して,「互いに異なった層に形成分離されている」(構成要件E)ことの作用効果は,「ある電極と他の電極を互いに重畳させることにより,液晶ディスプレイの開口率を向上させることが可能となる点にある」として,「重畳」にあると主張している。 しかし,上記各段落は実施例の説明における記載であり,技術的思想として概念化された本件発明が常に奏する作用効果ではない。 また,「重畳」にかかる構成は,請求項1に従属する請求項3において初めて特定されており,請求項1記載の本件発明は,請求項3記載の「重畳」にかかる構成を包含するものの,かかる構成に限定されるものではないから,被告らが主張する,本件発明の実施例への限定解釈は,何ら根拠を伴わず,誤りである。 そして,前記図2から分かるように,映像信号配線[2]と液晶駆動電極[4]絶縁膜映像信号配線ia-Si層(絶縁膜)画素電極 - 10 -とは下地層が異なる層であるから別々に異層化されており,「互いに異なった層」に形成分離されている。液晶駆動電極[4]は,絶縁膜の上に直接形成されているところ,映像信号配線[2]は,絶縁膜との間にia-Si層を介在さ 層であるから別々に異層化されており,「互いに異なった層」に形成分離されている。液晶駆動電極[4]は,絶縁膜の上に直接形成されているところ,映像信号配線[2]は,絶縁膜との間にia-Si層を介在させており,液晶駆動電極[4]とは下地層が異なる。 以上のとおり,本件発明の構成要件Eの「互いに異なった層に形成分離されている」とは,「別々に異層化され,分離されている」ことを意味すると解すべきである。 (4) また,被告らは,本件発明の構成要件Eの「絶縁膜」につき,映像信号配線とドレイン電極との間に介在する半導体層と同等の導電性を有する層は含まれないと解すべきであると主張する。 この点,原告は,技術的に正確に論ずれば,本件発明の構成要件Eの「絶縁膜」につき,映像信号配線とドレイン電極との間に介在する半導体層(能動層)T(本件明細書等の段落【0027】等)のTFT駆動時における導電性と同等の導電性を有する層は含まれないという限りにおいて,被告らの解釈を争わない。 a-Si層の導電性は,TFT駆動時とTFT非駆動時で異なること,すなわち,ゲート電圧が印加されたオン時と印加されていないオフ時でオン・オフのスイッチングが行われることは当事者間で争いがない。 そうすると,被告各製品の映像信号配線[2]の下に設けられたia-Si層は,TFTを構成するものではなく,したがって当然にゲート電圧が印加されていない状態であり,ゲート電圧が印加されることのない領域であるから,当該a-Si層は,TFTの能動層を構成するa-Si層がゲート電圧印加時のオン状態に示す高い導電性とは正反対の,極めて低い導電性を示す。 以上のとおり,被告各製品の映像信号配線[2]の下に設けられた,ゲート電圧が印加されることのないia-Si層は,絶縁体として働き,本件発明の構成 高い導電性とは正反対の,極めて低い導電性を示す。 以上のとおり,被告各製品の映像信号配線[2]の下に設けられた,ゲート電圧が印加されることのないia-Si層は,絶縁体として働き,本件発明の構成要件Eの「絶縁膜」に該当する。 - 11 -(5) よって,被告各製品は,本件発明の構成要件Eを充足する。 〔被告らの主張〕(1) 原告が主張する被告各製品の構成④につき,被告各製品のTFT基板に形成された映像信号配線[2]と液晶駆動電極[4]が絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されているとの点は否認し,その余は認める。 (2) 本件発明の構成要件Eの「絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されており」につき,本件明細書等の記載によれば,ある電極ないし配線(以下「ある電極」という。)と他の電極ないし配線(以下「他の電極」という。)とが「絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されて」いる状態とは,次の図のAに示す状態(以下「Aの状態」という。これに対して,次の図のBに示す状態を,以下「Bの状態」という。)を意味するものと解すべきである。 すなわち,本件明細書等の段落【0002】には,【図1】(下記に図示する。)を参照しつつ,(ⅰ)「共通電極③と液晶駆動電極④とは,異なる層に形成分離されている」と記載され,他方で,(ⅱ)「共通電極③と走査信号配線①は同じ層に形成されている」あるいは「映像信号配線②と液晶駆動電極④も同じ層に形成されている」と記載されている。そして,以上の記載によれば,上記(ⅰ)の記載から,共通電極③と液晶駆動電極④とがゲート絶縁膜⑤を介してAの状態にあり,上記(ⅱ)の記載から,共通電極③と走査信号配線①とがBの状態にあり,映像信号配線②と液晶駆動電極④とがBの状態にあるといえる。 - 12 動電極④とがゲート絶縁膜⑤を介してAの状態にあり,上記(ⅱ)の記載から,共通電極③と走査信号配線①とがBの状態にあり,映像信号配線②と液晶駆動電極④とがBの状態にあるといえる。 - 12 - また,本件明細書等の段落【0024】には,【図3】(下記に図示する。)を参照しつつ,「共通電極③と液晶駆動電極④を絶縁膜▲14▼,⑤,⑥を介して絶縁分離してある」と記載されている。この記載によれば,共通電極③と液晶駆動電極④とが絶縁膜⑭,⑤,⑥を介してAの状態にあるといえる。 さらに,本件明細書等の段落【0027】には,【図14】(下記に図示する。)を参照しつつ,「共通電極③と液晶駆動電極④を絶縁膜▲21▼を介して絶縁分離してある」と記載されている。この記載によれば,共通電極③と液晶駆動電極④とが絶縁膜㉑を介してAの状態にあるといえる。 - 13 -他方,本件明細書等の段落【0026】には,【図11】を参照しつつ,「走査信号配線①と共通電極中央線▲18▼を同時に,同一層に形成する」と記載されている。この記載によれば,走査信号配線①と共通電極中央線⑱とがゲート絶縁膜⑤を介してBの状態にあるといえる。 以上のとおり,本件明細書等においては,Aの状態が「異なった層に形成分離され」ているとして,Bの状態が「同じ層に形成され」ているとしてそれぞれ開示されている。 さらに,本件発明において,ある電極と他の電極(構成要件Eによれば,走査信号配線,映像信号配線,液晶駆動電極,共通電極がこれに当たる。)とが絶縁膜を介して「互いに異なった層に形成分離されて」いることによる作用効果についてみると,本件明細書等には,ある電極と他の電極を互いに重畳させることにより,液晶ディスプレイの開口率を向上させることが可能となる点にあると 異なった層に形成分離されて」いることによる作用効果についてみると,本件明細書等には,ある電極と他の電極を互いに重畳させることにより,液晶ディスプレイの開口率を向上させることが可能となる点にあるといえる。 すなわち,本件明細書等の段落【0004】には,【発明が解決しようとする課題】として,「横電界方式では,付加容量を形成しないと,液晶駆動電極の容量が非常に小さくなる」ところ,「従来技術では共通電極③と液晶駆動電極④とを異なる層に絶縁膜を介して分離形成し,互いに重畳させることで形成しているが,大きな付加容量を形成しようとした場合有効画面を縮小して重畳部分の面積を拡大する方法しかなく光の透過率が悪い原因となっていた。」と記載されている。そして,段落【0034】には,【発明の効果】として,「本 - 14 -発明によれば,走査信号配線と映像信号配線と共通電極と液晶駆動電極とを絶縁膜によってそれぞれ別々に異層化したことにより,…開口率が高く…液晶パネルを作れる」と記載されている。また,段落【0024】には,「共通電極③と液晶駆動電極④を絶縁膜▲14▼,⑤,⑥を介して絶縁分離してあるので,…重畳させることが可能であり,この重畳部は付加容量として作用させることができる。さらに…,液晶駆動電極を共通電極だけでなく走査信号配線①に重畳させることが可能である。これにより付加容量を開口率を低下させることなく大きくすることができる。」と記載されている。 さらに,段落【0027】においても,「共通電極③と液晶駆動電極④を絶縁膜▲21▼を介して絶縁分離してあるので,…重畳させることが可能であり,この重畳部は,付加容量として作用させることができる。さらに…液晶駆動電極を共通電極だけでなく,走査信号配線①に重畳させることが可能である。これにより付加容量を開 で,…重畳させることが可能であり,この重畳部は,付加容量として作用させることができる。さらに…液晶駆動電極を共通電極だけでなく,走査信号配線①に重畳させることが可能である。これにより付加容量を開口率を低下させることなく大きくすることができる。」と記載されている。 以上の記載によれば,本件発明において,ある電極と他の電極とが絶縁膜を介して「互いに異なった層に形成分離されて」いることによる作用効果は,ある電極と他の電極を互いに重畳させることにより,液晶ディスプレイの開口率を向上させることが可能となる点にあるといえる。 そして,Aの状態は,ある電極と他の電極とを互いに重畳させることが可能であり,これにより,開口率の向上という,「互いに異なった層に形成分離されて」いることによる作用効果を得ることができる。他方,Bの状態では,ある電極と他の電極とを重畳させることができないから,上記の作用効果は得られない。 このような本件発明の作用効果に鑑みても,絶縁膜を介して「互いに異なった層に形成分離されており」とは,Aの状態を意味するといえる。 以上のとおり,本件明細書等の記載を参酌すれば,構成要件Eの「絶縁膜を - 15 -介して互いに異なった層に形成分離されており」とは,Aの状態を意味すると解すべきであり,他方,Bの状態は,「絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されて」いる状態に当たらないと解すべきである。 (3) 次に,本件明細書等の【図1】,【図3】,【図6】,【図11】,【図14】,【図37】,【図39】,【図41】及び【図43】によれば,本件発明の薄膜トランジスタの構成要素である半導体層たるa-Si層は,映像信号配線とドレイン電極との間に介在しており,薄膜トランジスタが駆動する際には,かかる半導体層を介して,映像信号配線とドレ ,本件発明の薄膜トランジスタの構成要素である半導体層たるa-Si層は,映像信号配線とドレイン電極との間に介在しており,薄膜トランジスタが駆動する際には,かかる半導体層を介して,映像信号配線とドレイン電極とが電気的に導通するものである。したがって,薄膜トランジスタにおける半導体層たるa-Si層は,絶縁膜に位置付けられていない。 他方,本件明細書等の段落【0017】,【0034】の記載から,本件発明の構成要件Eにおいて,「絶縁膜を介して」互いに異なった層に形成分離することによる作用効果がショートの防止にあるといえ,そうすると,ある電極と他の電極との間に介在しこれらを形成分離する「絶縁膜」は,本件発明の薄膜トランジスタが駆動する場面,すなわち映像信号配線とドレイン電極とが電気的に導通する場面であっても,ある電極と他の電極とを導通させないものであることが当然の前提とされているということができる。 したがって,本件発明の構成要件Eにおける「絶縁膜」には,映像信号配線とドレイン電極との間に介在する半導体層と同等の導電性を有する層は含まれないと解すべきである。 (4) そこで被告各製品を見ると,映像信号配線[2]とドレイン[3]とがBの状態にあり,ドレイン[3]と液晶駆動電極[4]とが同一の層を形成しているから,映像信号配線[2]と液晶駆動電極[4]はBの状態にある。 したがって,被告各製品は,映像信号配線[2]と液晶駆動電極[4]が「絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されて」いるとはいえない。 (5) また,被告各製品のうち,原告が映像信号配線[2]と液晶駆動電極[4]との間 - 16 -に介在すると主張するia-Si層は,映像信号配線[2]とドレイン[3]との間に介在する半導体層と同等の導電性を有する層であるから,構成要件 号配線[2]と液晶駆動電極[4]との間 - 16 -に介在すると主張するia-Si層は,映像信号配線[2]とドレイン[3]との間に介在する半導体層と同等の導電性を有する層であるから,構成要件Eの「絶縁膜」に当たらない。 したがって,この点からも,映像信号配線[2]と液晶駆動電極[4]は「絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されて」いるとはいえない。 (6) 原告の主張についてア原告は,本件明細書等の実施例4に関する記載から,本件発明の構成要件Eの「絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されており」の解釈を主張するが,本件明細書等の【図43】は本件発明の実施例ではない。 すなわち,「介する」とは,「間におく」,「さしはさむ」の意味であるところ,【図43】の共通電極③,液晶駆動電極④及び上層絶縁膜㉑の関係を見ると,上層絶縁膜㉑が共通電極③及び液晶駆動電極④と「間にお」かれている,あるいは「さしはさ」まれているような関係にはない。また,【図14】に示される構成では,共通電極③と液晶駆動電極④との間に上層絶縁膜㉑が「さしはさ」まれた状態であるが,これと【図43】を対比すると,同図に示される構成では,共通電極③と液晶駆動電極④との間に上層絶縁膜㉑に「さしはさ」まれた状態ではない。 したがって,原告の上記主張は前提を欠き,失当である。 イまた,原告は,被告各製品の映像信号配線[2]の下に設けられた,ゲート電圧が印加されることのないia-Si層は,絶縁体として働き,本件発明の構成要件Eの「絶縁膜」に該当すると主張する。 しかし,TFTの能動層を構成するa-Si層と,被告各製品の映像信号配線[2]の下に設けられたia-Si層とは,同じ物性を有する層である以上,一方が「絶縁膜」に該当せず他方が「絶縁膜」に該当すると区 しかし,TFTの能動層を構成するa-Si層と,被告各製品の映像信号配線[2]の下に設けられたia-Si層とは,同じ物性を有する層である以上,一方が「絶縁膜」に該当せず他方が「絶縁膜」に該当すると区別することはできない。また,被告各製品の映像信号配線[2]の下に設けられたia-Si層が「ゲート電圧が印加されていない状態であり,されることのない領域である」こと - 17 -を裏付ける証拠はない。 したがって,原告の上記主張も失当である。 (7) よって,被告各製品は,本件発明の構成要件Eを充足しない。 3 争点(2)イ(構成要件Fの充足性)について〔原告の主張〕本件発明の構成要件Fは,「かつ共通電極がアクティブマトリックス基板のパッシベージョン層の上に形成され,配向膜と直接接触しており,」である。 被告各製品のTFT基板に形成された共通電極[5]は,パッシベーション層の上に形成され,その上には配向膜が直接形成されている(構成⑤)。 この点,被告らは,被告各製品につき,共通電極[5]の上に配向膜が直接接触しているとはいえない箇所がいくつもあると主張するが,それらの箇所でも共通電極[5]の上に配向膜が直接形成されているから,被告らの上記主張は失当である。その点をおくとしても,共通電極[5]の少なくとも一部の上に配向膜が直接形成されていれば,「共通電極がアクティブマトリックス基板のパッシベージョン層の上に形成され,配向膜と直接接触しており,」に当たる。 よって,被告各製品は,本件発明の構成要件Fを充足する。 〔被告らの主張〕(1) 本件明細書等の「発明の詳細な説明」には,「共通電極が配向膜と直接接触して」いるという状態が具体的にどのような状態を指すのかについての記載がなく,【図14】に,共通電極③が,その上面全てにおいて 本件明細書等の「発明の詳細な説明」には,「共通電極が配向膜と直接接触して」いるという状態が具体的にどのような状態を指すのかについての記載がなく,【図14】に,共通電極③が,その上面全てにおいて,配向膜⑦と直接接触していることが示されているのみで,ほかに本件明細書等に構成要件Fの「共通電極が配向膜と直接接触して」いる状態に関する記載はない。したがって,構成要件Fの「共通電極が配向膜と直接接触して」いる状態とは,図14が示すように,「共通電極が,その上面全てにおいて,配向膜と直接接触している状態」を意味すると解すべきである。 - 18 - (2) そこで被告各製品を見ると,被告各製品には,共通電極[5]の上に配向膜が直接接触しているとはいえない箇所がいくつもあるから,「共通電極が,その上面全てにおいて,配向膜と直接接触している」とはいえない。 したがって,被告各製品は,本件発明の構成要件Fの「共通電極が…配向膜と直接接触しており,」に当たらない。 (3) よって,被告各製品は,本件発明の構成要件Fを充足しない。 4 争点(2)ウ(構成要件Iの充足性)について〔原告の主張〕本件発明の構成要件Iは,「ことを特徴とする横電界方式液晶表示装置」である。 被告各製品は,本件発明の構成要件AないしGの構成を備えたことを特徴とするIPS方式の液晶ディスプレイを搭載したタブレット型コンピュータ(構成①)である。 よって,被告各製品は,本件発明の構成要件Iを充足する。 〔被告らの主張〕否認する。被告各製品は,本件発明の構成要件E及びFを充足しないから,「ことを特徴とする」に当たらない。 よって,被告各製品は,本件発明の構成要件Iを充足しない。 5 争点(3)ア(本件出願は冒認出願に当たるか〔特許法123条1項6号〕)に びFを充足しないから,「ことを特徴とする」に当たらない。 よって,被告各製品は,本件発明の構成要件Iを充足しない。 5 争点(3)ア(本件出願は冒認出願に当たるか〔特許法123条1項6号〕)に - 19 -ついて〔被告らの主張〕(1) 原告代表者による単独発明であることの主張立証責任について前記1〔被告らの主張〕のとおり,そもそも,原告代表者が単独発明者であることの主張立証責任は原告側にあるから,原告は,本件発明の特徴的部分である構成要件EないしIに係る構成について着想し,かつ完成させた者が原告代表者であることについて主張立証しなければならない。 しかし,以下の理由により,原告代表者が単独発明者であるとは認められず,かえって,本件発明の構成要件E,F及びHに係る構成を着想したのはBⅰであり,また,本件発明の構成要件Gに係る構成を着想したのはCⅰであり,仮にそうでなくとも,Cⅰ及びBⅰの着想によるものであるから,いずれにしても,本件発明は原告代表者が着想し,完成したものでないことは明らかである。 (2) 原告代表者が本件発明の特徴的部分を着想したとは考えられないこと原告は,金型の設計,製造及び販売等を業とする株式会社であり,液晶表示装置に関する業務を一切行っていない。また,原告代表者は,過去にソニー株式会社(以下「ソニー」という。)に数年勤務した経験があるものの,液晶パネルとは無関係の業務を行っていた。 本件発明の対象であるIPS方式の液晶表示装置は,平成7年(1995年)10月頃に株式会社日立製作所(以下「日立」という。)が発表して,注目を集めたものであり,平成8年(1996年)当時,液晶ディスプレイの技術分野で最先端の技術であった。その当時,IPS方式の液晶ディスプレイに関する技術は先進的なものであり, いう。)が発表して,注目を集めたものであり,平成8年(1996年)当時,液晶ディスプレイの技術分野で最先端の技術であった。その当時,IPS方式の液晶ディスプレイに関する技術は先進的なものであり,液晶ディスプレイ分野の限られた者のみが,IPS方式の液晶ディスプレイ技術を改良するのに必要な知識を有し,また,実験結果や試作品にアクセスするための資源・設備を有していた。 また,一般的に,発明の多くは,従来技術の課題を踏まえて,それを改善, - 20 -改良するための着想と,着想の検証のための実験を通じて生まれるが,このことは本件発明も同じであり,本件明細書等の段落【0003】には,「上記の従来技術で横電界方式の液晶表示装置を作る場合,走査信号配線①と共通電極③が同じ層に形成されているために,ショートする確率が高い。同様に映像信号配線②と液晶駆動電極④も同じ層に形成されているのでショートする確率が高い。前者の場合には,水平ライン欠陥となり,後者は点欠陥となって画像品位をいちじるしく低下させる。このために従来の構造では歩留りが低く生産コストが高くなる問題があった。」と,実際の製造プロセスを強く意識した記載があり,これが主たる解決課題の一つとされているところである。この点,原告は,液晶パネルと無関係の事業を営み,検証のための実験の設備を有しておらず,原告代表者は,かかる原告に所属して,液晶パネルと無関係の業務を行っていたのであるから,原告代表者が,上記のような製造プロセスに関する解決課題について,従来技術を改善,改良するための着想をし,その着想を検証するための実験を行うなど,およそ不可能なことである。 (3) 本件発明の構成要件Eに係る構成部分を着想したのはBⅰであること本件発明の特徴的部分は,構成要件EないしIに係る構成部分であるとこ 証するための実験を行うなど,およそ不可能なことである。 (3) 本件発明の構成要件Eに係る構成部分を着想したのはBⅰであること本件発明の特徴的部分は,構成要件EないしIに係る構成部分であるところ,上記のとおり,本件発明は,従来技術における課題であった,歩留まりが低く生産コストが高くなるという問題を解決するものであるが,かかる課題に気付き,その解決手段を着想するには,従来技術でどの程度の歩留まりがあるかを把握し,その上で目指すべき歩留まりを想定することが必要であるところ,Bⅰは,被告補助参加人に勤務して,TFT液晶パネルの製造工場の立ち上げに関わった経験を有し,それまでにも,ソニー等で液晶表示パネルの開発に従事しており,上記の課題に気付き,その解決手段を着想することが可能であった。すなわち,被告補助参加人の液晶表示装置の研究開発部門では平成7年から平成8年にかけて,IOP構造(「ITOonPassivation」の略であり,透明導電膜であるITO(酸化インジ - 21 -ウムスズ)をパッシベーション層の上に配置する構造である。)及びその利点について検討がされており,その当時に被告補助参加人に勤務していたBⅰは,その作成に係る技術報告書(丙4)に,液晶駆動電極とその他の電極(共通電極等)を,絶縁膜を介して互いに異なる層に形成分離するという,本件発明の構成要件Eに係る構成の少なくとも一部に該当するものを記載しており,また,同技術報告書に,IOP構造ではない従来構造の欠点として,ショートが多発し点欠陥による歩留まり低下が多いという,本件発明の解決課題に関する記載もしていた。 しかも,本件明細書等は,Bⅰが全てを記載して作成したものであった。 以上のことから,本件発明の構成要件Eに係る構成部分は,Bⅰが被告補助参加人に 件発明の解決課題に関する記載もしていた。 しかも,本件明細書等は,Bⅰが全てを記載して作成したものであった。 以上のことから,本件発明の構成要件Eに係る構成部分は,Bⅰが被告補助参加人に在職中に,被告補助参加人において知得し又は着想したというべきである。 (4) 本件発明の構成要件Gに係る構成部分を着想したのはCⅰ及びBⅰであること本件発明の構成要件Gに係る構成部分は,本件特許の審査過程で,手続補正によって追加された構成であり,これによって本件特許が特許査定されたから,本件発明の特徴的部分に当たることは明らかであるところ,この構成部分を着想したのは,Cⅰである。Cⅰは,同人が作成した証拠(丙2)に●(省略)●と記載しているとおり,TN方式の液晶表示装置において,●(省略)●構成を,平成7年(1995年)10月26日までに着想したが,この構成は,本件発明の課題の一つである開口率の向上を目的とするものである。そして,Cⅰは,平成8年(1996年)4月頃に日立の特許出願について調査を行い,その過程で乙14公報を分析し,その図14や図20を見て,同年5月から6月頃に,共通電極を一番上の層に形成することで,上記方式をIPS方式に適用して本件発明の構成要件Gに係る構成部分を着想した。Cⅰが作成した特許出願稟議書(丙3並びに丙16の1ないし3)に - 22 -は,そのことを示す記載がある。 そして,Bⅰは,当時,Cⅰと隣席同士で仕事に従事し,液晶表示装置の改良に関するアイデアについてCⅰから情報の提供を受けていたものであり,Cⅰが着想した上記構成を知得していた。 仮に,Cⅰが着想した構造がTN方式における●(省略)●のオーバーラップ構造にとどまるとしても,その構造をBⅰが知得してIPS方式に応用し,本件特許の願書を が着想した上記構成を知得していた。 仮に,Cⅰが着想した構造がTN方式における●(省略)●のオーバーラップ構造にとどまるとしても,その構造をBⅰが知得してIPS方式に応用し,本件特許の願書を作成したといえ,少なくとも,本件発明はCⅰとBⅰの共同発明と認定されるべきである。 (5) 本件発明の出願は名義貸しによる出願であること以上のことは,次の事実からも裏付けられる。すなわち,平成8年から平成20年までの間にされた液晶表示装置の技術に関する特許出願のうち,原告代表者を発明者とする特許出願は,Bⅰが被告補助参加人やハンスター社(以下「ハンスター」という。)に在職していた期間にのみ存在し,それ以外の期間には存在していない。これらは,Bⅰが被告補助参加人やハンスターに在職していた際に,これらの会社で知得し又は自ら着想した発明であるが,Bⅰがこれらの会社に対して負う忠実義務や秘密保持義務又は職務発明に係る特許を受ける権利の移転義務への違反が発覚することを回避するために,第三者である原告代表者の名義を借りて特許出願をしたものと理解することができる。そして,本件出願は,上記の発明と同様に,Bⅰが被告補助参加人に在職していた期間に特許出願されたものであって,名義貸しによって特許出願されたものである。 また,本件明細書等は全て手書きで作成されており,相当の時間を要したと思われるが,それにもかかわらずBⅰは本件明細書等の作成に関して原告代表者から対価を受け取っておらず,原告が第三者とのライセンス契約で受け取ったロイヤリティから経済的利益の供与を受けており,このことも本件出願が名義貸しによって特許出願されたことを示している。 - 23 -(6) よって,本件特許は,冒認出願に基づくものであり,無効理由を有するから,原告の被告に対する本 おり,このことも本件出願が名義貸しによって特許出願されたことを示している。 - 23 -(6) よって,本件特許は,冒認出願に基づくものであり,無効理由を有するから,原告の被告に対する本件特許権の行使は許されない(特許法104条の3第1項,123条1項6号)。 〔原告の主張〕(1) 原告代表者による単独発明であることの主張立証責任につき被告らは,本件発明の発明者が原告代表者であることを争い,これは特許取得原因事実であるとして,その立証責任は原告が負うと主張する。 しかし,前記1〔原告の主張〕(2)のとおり,特許明細書に「発明者」として記載された者は,当該特許に係る発明者であると事実上推認され,これを被告らが争う場合には,被告らが反証としてその推定を覆す必要がある。 したがって,被告らの上記主張は失当である。 (2) 原告代表者が本件発明の単独発明者であることいずれにしても,次のとおり,原告代表者は,液晶技術に関する技術を習得しており,それに基づき本件発明を完成させたものであって,本件発明は原告代表者による単独発明である。 ア原告代表者は,ソニーに昭和56年頃まで勤務したが,同社に在職中に,その同僚であったBⅰとの交流を通じて,液晶技術に関する知識を一定程度習得していた。原告代表者は,同社を退職した後もBⅰとの交流を続けており,Bⅰ(同人は,同社を退職して,その当時,被告補助参加人にて勤務していた。)から依頼されて,液晶技術に関する論文を入手してBⅰに提供したり,学会に参加して情報を得てBⅰに報告したりしていたが,原告代表者自らも,それらの論文や学会での情報をもとに液晶技術に関する知識の習得に努めていた。原告が参加した学会には,例えば,IPS方式の液晶パネルを日立が発表した,平成7年(1995年) いたが,原告代表者自らも,それらの論文や学会での情報をもとに液晶技術に関する知識の習得に努めていた。原告が参加した学会には,例えば,IPS方式の液晶パネルを日立が発表した,平成7年(1995年)10月頃に開催された「1995AsiaDisplay 国際シンポジウム」(以下「本件学会」という。)がある。 また,原告が入手,検討した論文等には,例えば,日立を出願人とする特許 - 24 -公報(特開平7−134301。甲7の資料3。公開日平成7年5月23日。 以下「日立公報1」という。)や,日立が本件学会で発表した論文(乙12の添付書類1。その一つが「S23-1 PrinciplesandCharacteristicsOfElectro-OpticalBehaviourwithIn-PlaneSwitchingMode」〔以下「日立論文1」という。〕であり,もう一つが「S30-2 DevelopmentofSuper-TFT-LCDsWithIn-PlaneSwitchingDisplayMode」〔以下「日立論文2」という。〕である。)がある。 そして,原告代表者は,上記日立論文等を始めとするIPS方式の液晶パネルに関する論文等に開示された構造が,電極(共通電極,液晶駆動電極)や配線(走査信号配線,映像信号配線)のいずれかが同一の層に形成されている構造ばかりであることに着眼して,これらの電極及び配線を異なった層に形成分離する構造とすることにより,電極を近づけられる(短絡が生じない),開口率を上げることができる,また,適宜電極を広げたり伸ばしたりずらしたりすることができ,電極をブラックマスクのように使うことができる,さらに,電極を適宜重畳させることができ,負荷容量も形成できる,といったことを思いつき, ,また,適宜電極を広げたり伸ばしたりずらしたりすることができ,電極をブラックマスクのように使うことができる,さらに,電極を適宜重畳させることができ,負荷容量も形成できる,といったことを思いつき,本件発明を完成させた。 イこの点,本件発明は,その構成からして,その本質が複雑難解なものではない。また,本件明細書等に記載された課題,すなわち,同一の層に配線や電極を設けることによる短絡発生と,それによる欠陥,歩留まりが低く,生産コストが高くなるなどといった点は,本件明細書等に従来技術として挙げられている乙14公報の段落【0013】に記載されており,乙14公報に接した原告代表者が当然に認識した課題にすぎない。そうすると,原告ないしその他会社が保有する装置を利用して実験を行うことが必要不可欠となる類の発明ではないから,本件発明が原告の業務と関係するものではなく,実験設備を有していなくとも,そのことをもって原告発明者の本件発明を完成させる能力を否定することにはならない。 - 25 -ウ被告らは,本件特許の特許出願過程において,Bⅰが弁理士に依頼することなく自ら本件明細書等を作成し,特許庁審査官との面接に原告代表者と同席をしたことから,原告代表者は本件発明の真の発明者ではない旨主張する。 確かに,Bⅰは,本件特許の特許出願過程に関与したが,弁理士が発明者を代理して特許出願手続を行っても発明者になり得ないのであるから,原告代表者の発明者性を否定することはできない。 そして,Bⅰは,原告代表者から,本件発明を伝えられ,それが液晶の専門家では思い付かない構成であり,製造コストの面から液晶パネルメーカーが採用しなくとも,特許として認められる可能性があるとの考えを伝えられ,本件明細書等の作成依頼に応じることとし,原告代表者から適宜の実施例や い付かない構成であり,製造コストの面から液晶パネルメーカーが採用しなくとも,特許として認められる可能性があるとの考えを伝えられ,本件明細書等の作成依頼に応じることとし,原告代表者から適宜の実施例や公知技術を記載するように依頼され,特に乙14公報等に開示されている公知技術を参考にして本件明細書等を書き上げた。 また,Bⅰは,特許庁審査官との面接で原告代表者に同席したが,それは,原告代表者が完成させた本件明細書等を記載した関係があるため,特許庁審査官が拒絶理由通知書で指摘した事項について直接聞きたいという理由から,同席したにすぎない。もとより,請求項の補正に関する特許庁審査官との応対は,原告代表者が行った。 (3) 被告らの主張に対する反論被告らは,本件発明の特徴的部分は構成要件EないしIに係る構成部分であるところ,構成要件E,F及びHに係る構成を着想したのはBⅰであり,また,構成要件Gに係る構成を着想したのはCⅰであり,仮にそうでなくとも,Cⅰ及びBⅰの着想によるものであると主張するが,次のとおり,いずれの主張も失当である。 ア本件発明の構成要件Eに係る構成は,前記(2)のとおり,原告代表者が着想したものである。 - 26 -この点,被告補助参加人において検討していたIOP構造は,同構成要件に対応するものではあるが,同構造は本件特許の出願日の9年以上も前に公知となっていた技術にすぎない。また,同構造はTN方式を対象とするものであり,IPS方式(横電界方式)を対象とする本件発明とは無関係の技術である。 さらに,Cⅰは,液晶駆動電極と映像信号配線が同層にある構成を発明の核心と見ていたものであり,その構成は本件発明の構成要件Eに係る構成が排除しているものである。したがって,原告代表者がBⅰを通じて,Cⅰの発明を本件 晶駆動電極と映像信号配線が同層にある構成を発明の核心と見ていたものであり,その構成は本件発明の構成要件Eに係る構成が排除しているものである。したがって,原告代表者がBⅰを通じて,Cⅰの発明を本件発明に取り込むことはなかった。 したがって,本件発明の構成要件Eに係る構成がCⅰ,Bⅰを通じて原告代表者に開示されていたとはいえない。 イ本件発明の構成要件Fに係る構成は,公知技術であり,乙14公報の図20等で開示されている。 ウ本件発明の構成要件Gに係る構成もまた,公知技術にすぎない。同構成は,日立公開特許公報(甲33)の図5や,日立公開特許公報(甲34)の図3等に既に開示されている。また,Cⅰは,上記日立公開特許公報(甲33)の分析をして,「映像信号配線の両側に映像信号配線とオーバーラップするように共通電極が配置され」ている構成が,同公報に記載されていることを認識していた。 したがって,構成要件GをCⅰの発明であると主張することは明らかに失当である。 エところで,被告らは,本件発明の少なくとも一部は,Cⅰが平成8年(1996年)5月から6月頃に着想したと主張する。 しかし,Cⅰが発明を着想したとする時期を裏付ける証拠は何ら提出されていないから,被告らの上記主張は前提を欠き,失当である。その点をおくとしても,Cⅰが発明を着想したとする時期が平成8年(1996年) - 27 -6月中旬から下旬であれば,その時点において,本件特許に係る特許出願(本件出願。本件出願日は同月14日である。)が完了しており,本件発明にCⅰが着想したとする発明が取り込まれることはあり得ない。 また,Cⅰがその着想とする発明に関する特許出願稟議書(丙3)を作成したのは,平成9年(1997年)1月28日であり,着想したとする時期から作 着想したとする発明が取り込まれることはあり得ない。 また,Cⅰがその着想とする発明に関する特許出願稟議書(丙3)を作成したのは,平成9年(1997年)1月28日であり,着想したとする時期から作成まで長い時間を要している。被告らは,その理由として,Cⅰが業務多忙であったことや,出願手続きに時間を要してモチベーションが低下したなどと主張する。しかし,Cⅰは平成8年(1996年)10月から11月にかけて開催された「JapanElectronicsShow」や「LCDInternational」といった展示会や,AMLCDなどのシンポジウムに参加できるだけの時間的余裕があったこと,Cⅰ自身が特許の先願主義に関して認識していたことから,被告らの上記主張は合理的理由とはいえない。むしろ,Cⅰが平成8年(1996年)10月から11月にかけて上記展示会やシンポジウムに参加したことが,日立のみならず日本電気株式会社や松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)もIPS方式の液晶ディスプレイを開発していることを認識し,これが発明を着想するに至った契機となったものと考えられるから,同年11月頃に着想を得て,その約2か月後に上記特許出願稟議書を作成したという経過をたどったとみるべきである。 さらに,Bⅰが被告補助参加人に在職中にCⅰと職場で隣席していた時期があるとはいえ,もとより,本件発明を完成させたのは原告代表者であり,また,Bⅰは,Cⅰからその着想したとする発明の内容について話を聞いたことはない。 加えて,Cⅰが着想したとする発明は,前記アないしウのとおり平成7年(1995年)10月に本件学会で発表された日立論文1及び2等において実質的に開示されていた公知の構成にすぎない。日立論文2の図2(b) - 28 -には,Cⅰ発明の構成は ウのとおり平成7年(1995年)10月に本件学会で発表された日立論文1及び2等において実質的に開示されていた公知の構成にすぎない。日立論文2の図2(b) - 28 -には,Cⅰ発明の構成はオーバーラップの点を除きその余は全て開示されていた。 オなお,被告らは,本件出願が名義貸しによる特許出願であると主張するが,Bⅰが公知技術にすぎないものをCⅰないし被告補助参加人から盗用することなどない。もとより,Bⅰは,特許庁審査官との面接に際して自分自身が参加した事実を記録に残しており,原告代表者や原告をいわゆる隠れ蓑にしようとする意思など全く有していなかったことは明らかである。 (4) 以上のとおりであるから,本件特許が冒認出願に基づくものであるとの被告らの主張は失当である。 6 争点(3)イ(乙14公報を主引例とする進歩性欠如)について〔被告らの主張〕(1) 本件特許の出願前に頒布された刊行物である乙14公報に記載された乙14発明を主引用例とし,これに副引用例である乙15公報ないし乙17公報に記載された構成を適用すれば,本件発明は当業者が容易に想到し得るものである。 (2) 乙14発明の内容乙14公報には,次の発明が記載されている(なお,本件発明の構成要件に対応させて分節して示す。)。 「a 基板上に走査信号電極と,映像信号電極と,前記走査信号電極と映像信号電極との各交差部に形成された薄膜トランジスタと,前記薄膜トランジスタに接続された液晶駆動電極と,少なくとも一部が前記液晶駆動電極と対向して形成された共通電極とを有するアクティブマトリックス基板と,b 前記アクティブマトリックス基板に対向する対向基板と,c 前記アクティブマトリックス基板と前記対向基板に挟持された液晶層とd からなる横電界方式液晶表示装 るアクティブマトリックス基板と,b 前記アクティブマトリックス基板に対向する対向基板と,c 前記アクティブマトリックス基板と前記対向基板に挟持された液晶層とd からなる横電界方式液晶表示装置において,e 前記走査信号電極と,前記映像信号電極及び前記液晶駆動電極と,前記 - 29 -共通電極とは,それぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離され,前記映像信号電極と前記液晶駆動電極は,同じ層に形成されており,f かつ共通電極がアクティブマトリックス基板の保護絶縁層の上に形成されており,g かつ映像信号電極の両側に映像信号電極とオーバーラップするように共通電極が配置され,h かつ,各画素の共通電極は映像信号電極の上層で互いに連結されているi ことを特徴とする横電界方式液晶表示装置」(以下,それぞれ「構成a」ないし「構成i」という。)この点,下記の構成gについては,本件発明の構成要件Gの「オーバーラップ」とは「(部分的に)重なる」ことを意味しており,乙14公報の図19には,映像信号電極の両側に映像信号電極と(部分的に)重なるように共通電極が配置されている構成が開示されているから,乙14公報には本件発明の構成要件Gを充足する構成が開示されているということができる。 (3) 乙14発明と本件発明の対比本件発明と乙14発明を対比すると,乙14発明における「走査信号電極」,「映像信号電極」及び「保護絶縁膜」は,それぞれ本件発明における「走査信号配線」,「映像信号配線」及び「パッシベージョン層」に相当する。 したがって,本件発明と乙14発明とは,次の2点において相違し(上記(2)のとおりであるから,原告が主張する相違点3が存在しない。),その余は一致する。 ア相違点1本件発明においては,構成要件 て,本件発明と乙14発明とは,次の2点において相違し(上記(2)のとおりであるから,原告が主張する相違点3が存在しない。),その余は一致する。 ア相違点1本件発明においては,構成要件Eのとおり,走査信号配線と映像信号配線と液晶駆動電極と共通電極とがそれぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されているものであるのに対し,乙14発明においては,走査信号電極(走査信号配線)と,映像信号電極(映像信号配線)及び液晶駆動電極 - 30 -と,共通電極とは,それぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されているものの,映像信号電極(映像信号配線)と液晶駆動電極は,同じ層に形成されており,絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されているとはいえない点イ相違点2本件発明においては,構成要件Fのとおり,共通電極がアクティブマトリックス基板のパッシベージョン層の上に形成され,配向膜と直接接触しているのに対し,乙14発明においては,共通電極がアクティブマトリックス基板の保護絶縁層(パッシベージョン層)の上に形成されているものの,配向膜と直接接触しているか否かは不明である点(4) 相違点に係る構成は当業者が容易に想到できるものであることア副引用例の内容(ア) 乙15公報乙15公報には,アクティブマトリックス型液晶表示装置において,ドレイン電極(本件発明における映像信号配線に相当する。)と画素電極(本件発明における液晶駆動電極に相当する。)が絶縁膜を介して互いに異なった層に形成された構成が記載されている。 (イ) 乙16公報乙16公報には,アクティブマトリックス型液晶表示装置において,映像信号電極(本件発明における映像信号配線に相当する。)と画素電極(本件発明における液晶駆動電極に相当する (イ) 乙16公報乙16公報には,アクティブマトリックス型液晶表示装置において,映像信号電極(本件発明における映像信号配線に相当する。)と画素電極(本件発明における液晶駆動電極に相当する。)が絶縁膜を介して互いに異なった層に形成された構成や,映像信号配線と画素電極がSiN膜(本件発明における絶縁膜に相当する。)が記載されている。 (ウ) 乙17公報乙17公報には,アクティブマトリックス型液晶表示装置において,映像信号電極(本件発明における映像信号配線に相当する。)と画素電極(本 - 31 -件発明における液晶駆動電極に相当する。)がゲートSiN膜(本件発明における絶縁膜に相当する。)を介して互いに異なった層に形成された構成が記載されている。 イ相違点1につき(ア) 乙14公報と乙15公報ないし乙17公報は,いずれも,アクティブマトリックス型液晶表示装置に関するものであり,技術分野が共通している。 また,乙14発明における「走査信号電極と,映像信号電極及び液晶駆動電極と,共通電極とを,それぞれ絶縁層を介して異なる層に形成分離する」構成と,乙15公報ないし乙17公報に記載された「映像信号配線と液晶駆動電極とを絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離する」構成は,いずれも,異なる電極(配線)間の短絡防止という共通の目的ないし機能を有する。 したがって,乙15公報ないし乙17公報に記載された上記構成を乙14発明に適用して,乙14発明において,「映像信号配線と液晶駆動電極とを絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離する」との構成を採用することは,当業者が容易になし得たものといえる。 (イ) この点に関して原告は,乙15公報ないし乙17公報に記載された上記構成を乙14発明に適用する動機付けがないと主張する。 する」との構成を採用することは,当業者が容易になし得たものといえる。 (イ) この点に関して原告は,乙15公報ないし乙17公報に記載された上記構成を乙14発明に適用する動機付けがないと主張する。 しかし,乙14公報の段落【0013】には,「【作用】・・・また,共通電極と映像信号電極または,共通電極と液晶駆動電極を互いに絶縁膜より異層化することによる効果は上記だけではなく,これらの電極相互間の短絡不良は発生する確率が小さくできるので画素欠陥を低減出来るという効果も有る。」との記載がある。短絡不良の防止という目的ないし機能との関係では,共通電極と映像信号電極又は共通電極と液晶駆動電極との異層化の構成に着目して説明がされているが,かかる目的ないし機能は,映像信号電極と液晶駆動電極との間の異層化を含む,複数の電極間の「絶 - 32 -縁膜を介した異層化」の構成一般に認められるものである。 また,乙15公報ないし乙17公報は,いずれも映像信号配線(電極)と液晶駆動電極との絶縁膜を介した異層化の構成が,異なる電極間の短絡防止という目的ないし機能を有することを開示しており,複数の電極間の異層化の構成が短絡不良の防止という目的,機能,効果を有していることは,当業者にとって周知であったともいえる。 そうすると,これらの引用文献で開示されている映像信号配線(電極)と液晶駆動電極との絶縁膜を介した異層化の構成を,乙14発明に適用することは,当業者であれば容易になし得たということができる。 そして,映像信号配線(電極)と液晶駆動電極との絶縁膜を介した異層化の構成を乙14発明に適用するに当たって,上記の基本的な構成をあえて変更する動機はないから,乙15公報ないし乙17公報で開示されている映像信号配線(電極)と液晶駆動電極との絶縁膜を介した異層化の 化の構成を乙14発明に適用するに当たって,上記の基本的な構成をあえて変更する動機はないから,乙15公報ないし乙17公報で開示されている映像信号配線(電極)と液晶駆動電極との絶縁膜を介した異層化の構成を,乙14発明に適用するに当たって,「走査信号電極,映像信号電極及び共通電極は互いに異なる層に形成分離されて」おり,かつ,「走査信号電極,液晶駆動電極及び共通電極は互いに異なる層に形成分離されて」いる乙14発明の基本的な構成を維持することは,当業者にとって容易である。 したがって,相違点1にかかる構成は,当業者にとって容易に想到可能であり,この点についての原告の主張は失当である。 ウ相違点2につき乙14発明は,共通電極がアクティブマトリックス基板の最上部に設けられている構成を有するものである。 そして,アクティブマトリックス型液晶表示装置において,アクティブマトリックス基板の最上部層に配向膜を直接接触するように設けることは,乙14公報の【図2】,【図4】及び【図26】に記載されており,乙14発 - 33 -明の実施例である【図20】に配向膜の記載がないのは,当然のことを単に省略したものと考えられる。そうすると,乙14発明は相違点2にかかる構成を実質的に備えるものといえる。 仮にそうでなくとも,乙14発明において【図2】,【図4】及び【図26】の記載に基づき,アクティブマトリックス基板の最上部に設けられた共通電極が配向膜と直接接触するという相違点2にかかる構成を採用することは,当業者であれば容易になし得るものである。 したがって,相違点2にかかる構成は,乙14発明それ自体から,又は乙14公報の記載から,当業者にとって容易に想到可能である。 (5) 小括そうすると,本件発明は進歩性を欠き,本件発明の特許は,特許法 がって,相違点2にかかる構成は,乙14発明それ自体から,又は乙14公報の記載から,当業者にとって容易に想到可能である。 (5) 小括そうすると,本件発明は進歩性を欠き,本件発明の特許は,特許法123条1項2号,29条2項により,特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕(1) 乙14公報には,少なくとも,「かつ映像信号配線の両側に映像信号配線とオーバーラップするように共通電極が配置され,」の構成(構成g)が記載も示唆もされていないから,被告らの主張は,乙14発明の認定を誤っている。 すなわち,乙14公報には,コモン電極16を,本件発明の「映像信号配線」に相当するドレイン電極14にオーバーラップさせる(重ねる)ことの記載・示唆等がいずれの実施例においても認められない。 しかも,コモン電極16とドレイン電極14との関係につき,乙14公報の段落【0021】には,「コモン電極16とドレイン電極14が重なると,これらの電極間の寄生容量が急激に増大する。コモン電極とドレイン電極の間の過大な寄生容量はコモン電極信号の波形歪をもたらし,スミアと呼ばれる画質低下が発生するので望ましくない。したがって,コモン電極とドレイ - 34 -ン電極は可能な限り近づけても良いが決して重ならないようにすることが必要である。」と記載されており,「オーバーラップ」を明示的に否定している。 したがって,乙14公報が構成gを開示していると解することはできない。 (2) また,相違点の認定につき,被告らが主張する相違点1及び2が存在することは認めるが,上記のとおり乙14公報には構成gが開示されていないから,この点も相違点として認定されるべきである。 (3) 相違点に係る容易想到性につきア相違点1乙15公報には とは認めるが,上記のとおり乙14公報には構成gが開示されていないから,この点も相違点として認定されるべきである。 (3) 相違点に係る容易想到性につきア相違点1乙15公報には,ドレイン電極18と画素電極13が,乙16公報には,映像信号配線14と画素電極13が,乙17公報には,映像信号配線14と画素電極13が,それぞれ異層化されていることが記載されている。 しかし,いずれの文献も,本件発明の「液晶駆動電極」に対応する「画素電極」が,走査信号配線,映像信号配線及び共通電極の全てと,絶縁膜により異層化する構成や技術的思想を開示していない。 この点,被告らは,乙14発明に乙15公報ないし乙17公報に記載の技術を組み合わせる動機付けとして,技術分野及び目的ないし機能の共通性を主張する。 しかし,乙14発明は,乙14公報の図19に記載された構成に相当するところ,その構成において,共通電極(コモン電極16)が,走査信号配線(ゲート電極10),液晶駆動電極(ソース電極15)及び映像信号配線(ドレイン電極14)の全てと異層化されている目的は,「コモン電極16をゲート電極と平行な方向だけでなくゲート電極と垂直な方向にも引出して網目状とすることが可能となりコモン電圧の波形歪を低減しスミアの発生を防止出来る」(乙14公報の段落【0030】)ことにある。 乙14発明は,共通電極(コモン電極16)と,映像信号配線(ドレイン - 35 -電極14)又は液晶駆動電極(ソース電極15)を互いに絶縁膜により異層化する技術であり(乙14公報の段落【0013】),液晶駆動電極(ソース電極15)に着目すると,共通電極(コモン電極16)との関係についての開示はあるとしても,映像信号配線(ドレイン電極14)との関係については,何ら技術的な検討がさ 0013】),液晶駆動電極(ソース電極15)に着目すると,共通電極(コモン電極16)との関係についての開示はあるとしても,映像信号配線(ドレイン電極14)との関係については,何ら技術的な検討がされていない。 仮に万が一,乙14公報に接した当業者が,液晶駆動電極(ソース電極15)についても,他の全ての電極と異層化することに想到し得るとすれば,それは,他の全ての電極と異層化されている共通電極(コモン電極16)から類推するほかないと思われる。もっとも,上記のとおり,共通電極(コモン電極16)を他の全ての電極と異層化する目的は,走査信号配線(ゲート電極10)を垂直な方向にも引き出すことにあるが,液晶駆動電極(ソース電極15)は,既に,走査信号配線(ゲート電極10)と垂直な方向に延在する電極であるから,当業者が,かかる電極を設けるために他の全ての電極と異層化することはあり得ないのであり,相違点1について当業者が想到することのできる動機付けがない。 イ相違点2相違点2に係る被告らの主張については特に争わない。 ウ相違点3乙14発明は,映像信号配線(ドレイン電極14)の両側に映像信号配線(ドレイン電極14)と決して重ならないように共通電極(コモン電極16)が配置されており,明らかな阻害要因があるから,いかなる副引用例をもってしても,乙14発明に基づいて当業者が共通電極(コモン電極16)を映像信号配線(ドレイン電極14)にオーバーラップさせる構成に想到することはない。 (4) 小括よって,被告らの進歩性欠如の主張は理由がない。 - 36 - 7 争点(4)(損害発生の有無及びその額)について〔原告の主張〕被告が本件特許権の設定登録日である平成15年10月31日から本件訴えの提起日である平成25年6月7日ま - 36 - 7 争点(4)(損害発生の有無及びその額)について〔原告の主張〕被告が本件特許権の設定登録日である平成15年10月31日から本件訴えの提起日である平成25年6月7日までに販売した被告各製品に対する特許法102条3項に基づく実施料相当額は,1億円を下らない。 〔被告らの主張〕否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 被告補助参加人は,平成26年11月17日付け補助参加人準備書面(1)において,被告各製品が本件発明の構成要件A,D及びHを充足しない旨主張し,また,被告各製品が本件発明の構成要件E,F及びIを充足しない旨主張する。 しかし,原告と被告は,既に平成26年9月26日の弁論準備手続期日において,充足論と無効論についてほぼ主張立証を尽くしたことを前提に,後記3(3)ア(本件出願は冒認出願に当たるか〔特許法123条1項6号〕)の争点を除き,充足論及び無効論について他に主張立証はない旨の陳述をしていたにもかかわらず(第7回弁論準備手続調書参照),平成26年11月20日の弁論準備手続期日において,被告補助参加人は,上記各主張をしたものであるから,上記各主張が時機に後れたものであること,上記各主張を審理するならば訴訟の完結を遅延させることは明らかである。 したがって,上記各主張は,時機に後れた攻撃防御方法として却下する。 2 争点(3)ア(本件出願は冒認出願に当たるか〔特許法123条1項6号〕)について事案に鑑み,争点(3)アから判断する。 (1) 前記第2,1並びに証拠(甲2,7,20,26,30ないし34,乙12,14,18ないし20,23,25,丙2ないし5,15ないし19, - 37 -21,22,25,30,32,証人Bⅰ,証人Cⅰ,原告代表者本人。なお,特に断らない ,30ないし34,乙12,14,18ないし20,23,25,丙2ないし5,15ないし19, - 37 -21,22,25,30,32,証人Bⅰ,証人Cⅰ,原告代表者本人。なお,特に断らない限り,証拠の枝番号及び添付資料等の番号の記載は省略する。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ,同認定を覆すに足りる的確な証拠はない。 ア乙14公報等の内容(ア) 乙14公報乙14公報には,次の記載がある。 ・「【請求項1】基板上に走査信号電極と,映像信号電極と,前記走査信号電極と映像信号電極との各交差部に形成された薄膜トランジスタと,前記薄膜トランジスタに接続された液晶駆動電極と,少なくとも一部が前記液晶駆動電極と対向して形成された共通電極とを有するアクティブマトリックス基板と,前記アクティブマトリックス基板に対向する対向基板と,前記アクティブマトリックス基板と前記対向基板に挟持された液晶層とからなる液晶表示装置において,前記共通電極と前記映像信号電極または前記共通電極と液晶駆動電極は,絶縁膜を介して互いに異なった層に形成されてなることを特徴とする液晶表示装置。」・「【発明の詳細な説明】【産業上の利用分野】本発明はOA機器等の画像,文字情報の表示装置として用いられる,アクティブマトリックス方式の液晶表示装置の構造に関する。」(段落【0001】)・「【従来の技術】ガラス等の絶縁基板上に薄膜トランジスタ(以下TFTと記す)をマトリックス状に形成し,これをスイッチング素子として用いるアクティブマトリックス型の液晶表示装置(TFT-LCD)は高画質のフラットパネルディスプレイとして期待が大きい。従来のアクティブマトリックス型液晶表示装置では,液晶層を駆動する電極として2枚の基板上に形成し対向させた透明電極 表示装置(TFT-LCD)は高画質のフラットパネルディスプレイとして期待が大きい。従来のアクティブマトリックス型液晶表示装置では,液晶層を駆動する電極として2枚の基板上に形成し対向させた透明電極を用いていた。 - 38 -これは液晶に印加する電界の方向を基板面にほぼ垂直な方向とすることで動作するツイステッドネマチック表示方式に代表される表示方式を採用していることによる。」(段落【0002】)・「【発明が解決しようとする課題】上記の従来技術は液晶層を相互に咬合する櫛歯状の電極により駆動するものであるが,駆動電極として櫛歯状の電極を用いたので光が透過できる有効面積(以下開口率という)を大きくすることが困難である。原理的には櫛歯電極の電極幅を1~2μm程度まで縮小すれば開口率を実用レベルまで拡大出来るが,実際には大型基板全面にわたってそのような細線を均一にかつ断線がないように形成することは極めて困難である。即ち,上記の従来技術では,相互に咬合する櫛歯状の電極を用いたために画素開口率と製造歩留まりがトレードオフの関係となり,明るい画像を有する液晶表示装置を低コストで提供することは困難であった。」(段落【0004】)・「本発明は上記の問題を解決するものであって,その目的は,より製造歩留まりが高くかつ開口率が大きな,明るいアクティブマトリックス型液晶表示装置を提供することにある。」(段落【0005】)・「「基板上に走査信号電極と,映像信号電極と,前記走査信号電極と映像信号電極との各交差部に形成された薄膜トランジスタと,前記薄膜トランジスタに接続された液晶駆動電極と,少なくとも一部が前記液晶駆動電極と対向して形成された共通電極とを有するアクティブマトリックス基板と,前記アクティブマトリックス基板に対向する対向基板と,前記アクテ スタに接続された液晶駆動電極と,少なくとも一部が前記液晶駆動電極と対向して形成された共通電極とを有するアクティブマトリックス基板と,前記アクティブマトリックス基板に対向する対向基板と,前記アクティブマトリックス基板と前記対向基板に挟持された液晶層とからなる液晶表示装置において,[手段1]前記共通電極と前記映像信号電極または前記共通電極と液晶駆動電極を絶縁膜を介して互いに異なった層に形成した。」(段落【0007】)・「[手段2]前記液晶駆動電極と前記共通電極を少なくともその一部 - 39 -において絶縁膜を介して互いに重畳させ,その重畳部をもって付加容量を形成した。」(段落【0008】)・「[手段3]前記液晶駆動電極または前記共通電極の少なくとも一方を互いに異なった層に形成した少なくとも2つの電極により構成した。」(段落【0009】)・「[手段4]手段3において前記液晶駆動電極と前記共通電極を少なくともその一部において絶縁膜を介して互いに重畳させ,その重畳部をもって付加容量を形成した。」(段落【0010】)・「【作用】上記手段1の如く,共通電極と映像信号電極または共通電極と液晶駆動電極を絶縁膜を介して互いに異なった層に形成することにより,共通電極または液晶駆動電極の形状の設計自由度が大きくなり,櫛歯状電極を用いることなく絶縁基板面にほぼ平行な方向の電界を形成出来る。例えば,上記手段2の如く,前記液晶駆動電極と前記共通電極を少なくともその一部において絶縁膜を介して互いに重畳させることが可能となるので,画素開口率を大きく出来る。また,前記液晶駆動電極と前記共通電極の重畳部をもって付加容量を形成でき,電圧保持特性を改善出来るので,液晶抵抗の低下やTFTのオフ抵抗の低下による画質の低下を補償出来る。他の例としては,上記手 。また,前記液晶駆動電極と前記共通電極の重畳部をもって付加容量を形成でき,電圧保持特性を改善出来るので,液晶抵抗の低下やTFTのオフ抵抗の低下による画質の低下を補償出来る。他の例としては,上記手段3の如く,液晶駆動電極または共通電極の少なくとも一方を,互いに異なった層に形成した少なくとも2つの電極により構成し,更に上記手段4の如く,液晶駆動電極と共通電極の少なくとも一部を絶縁膜を介して互いに重畳させ付加容量を形成することにより画素開口率を大きく出来,かつ電圧保持特性を改善出来る。また,共通電極と映像信号電極または,共通電極と液晶駆動電極を互いに絶縁膜より異層化することによる効果は上記だけではなく,これらの電極相互間の短絡不良は発生する確率が小さくできるので画素欠陥を低減出来るという効果 - 40 -も有る。」(段落【0013】)・「【実施例】〔実施例1〕・・・ガラス基板1上にCrよりなるゲート電極10およびコモン電極(共通電極)16を形成し,これらの電極を覆うように窒化シリコン(SiN)膜からなるゲート絶縁膜20を形成した。ゲート電極10上にゲート絶縁膜20上を介して非晶質シリコン(a-Si)膜30を形成しトランジスタの能動層とする。 前記a-Si膜30のパターンの一部に重畳するようにMoよりなるドレイン電極14,ソース電極15を形成し,これらすべてを被覆するようにSiN膜よりなる保護絶縁膜23を形成した。以上よりなる単位画素をマトリックス状に配置したアクティブマトリックス基板の表面にポリイミドよりなる配向膜ORI1,ORI2を形成し,表面にラビング処理を施した。同じくラビング処理を施した配向膜OR11,OR12を表面に形成した対向基板508と,前記アクティブマトリックス基板の間に棒状の液晶分子513を含む液晶組成物を 形成し,表面にラビング処理を施した。同じくラビング処理を施した配向膜OR11,OR12を表面に形成した対向基板508と,前記アクティブマトリックス基板の間に棒状の液晶分子513を含む液晶組成物を封入し,二枚の基板の外表面に偏光板505を配置した。」(段落【0016】)・「さらに,本実施例ではコモン電極16をゲート電極10と同一のレイヤーに形成し,ドレイン電極14および液晶駆動電極であるソース電極15とコモン電極16をゲート絶縁膜20によって絶縁分離した。 また,従来使用されていた櫛歯状電極を廃し,ソース電極15とコモン電極16をゲート絶縁膜20を介して重畳させた。このようにドレイン電極14およびソース電極15とコモン電極16を絶縁分離することによりソース電極15およびコモン電極16の平面パターンの設計自由度が大きくなり画素開口率を向上させることが可能となる。また,ソース電極15とコモン電極16の重畳部は液晶容量と並列に接続される付加容量として作用するので液晶印加電圧の保持能を向上させることが出来る。このような効果は従来の櫛歯状電極では得られな - 41 -いものであり,ドレイン電極14およびソース電極15とコモン電極16を絶縁分離することにより初めて達成される。以上のように,ドレイン電極14およびソース電極15とコモン電極16を異層化することにより平面パターンの設計自由度が大きくなったので,電極形状としては本実施例に限らず多種多彩な構造が採用出来る。」(段落【0017】)・「〔実施例12〕図19は本発明の第12の実施例の単位画素の平面図を示す。図20は図19中F-F′における断面図を示す。本実施例ではコモン電極16は保護絶縁膜23上に設けた新たな電極によって構成した。本実施例においても,前記実施例11と同様にコモン電 素の平面図を示す。図20は図19中F-F′における断面図を示す。本実施例ではコモン電極16は保護絶縁膜23上に設けた新たな電極によって構成した。本実施例においても,前記実施例11と同様にコモン電極はゲート電極10およびソース電極15,ドレイン電極14の全てと異層化されるので,コモン電極16をゲート電極と平行な方向だけでなくゲート電極と垂直な方向にも引出して網目状とすることが可能となりコモン電圧の波形歪を低減しスミアの発生を防止出来る。」(段落【0030】)・【図19】 ・【図20】 - 42 - (判決書注:10はゲート電極〔走査信号配線〕,14はドレイン電極〔映像信号配線〕,16はコモン電極〔共通電極〕,23は保護絶縁膜である。)(イ) 特開平7-159786号(甲33。公開日平成7年6月23日。出願人日立。以下「日立公報2」という。)日立公報2には,次の記載がある。 ・「・・・できるだけ高い開口率を実現するために絶縁膜を介して共通電極5と信号電極3を若干(1μm)重ね,走査電極方向のみ遮光板16で遮光した。このようにして,共通電極5と画素電極4とのギャップが20μm,開口部の長手方向の長さが157μmとなり,44.0% の高開口率が得られた。・・・」(段落【0059】)・【図5】 (判決注:3は信号電極〔映像信号配線〕,5は共通電極,6はゲート絶 - 43 -縁膜である。)(ウ) 特開平7-306417号(甲34。公開日平成7年11月21日。 出願人日立。以下「日立公報3」という。)日立公報3には,次の記載がある。 ・「・・・加えて,さらにできるだけ高い開口率を実現するために絶縁膜2を介して共通電極と信号電極を若干(1μm)重ねた。これにより,信号配線に平行な方向のブ 日立公報3には,次の記載がある。 ・「・・・加えて,さらにできるだけ高い開口率を実現するために絶縁膜2を介して共通電極と信号電極を若干(1μm)重ねた。これにより,信号配線に平行な方向のブラックマトリクスは不要になる。そこで図3に示されているように,走査配線電極方向のみ遮光するブラックマトリクス構造とした。ブラックマトリクス22は図3のように電極群を付設した基板に設けてもよいし,対向側基板に設けてもよい。 このようにして,共通電極と画素電極とのギャップが20μm,開口部の長手方向の長さ157μmとなり,44.0% の高開口率が得られた。・・・」(段落【0030】)・【図3】 (判決注:1は共通電極〔コモン電極〕,2は絶縁膜,3は信号電極〔ドレイン電極〕である。)イ本件明細書等の内容 - 44 -(ア) 本件明細書等には,次の記載がある。 ・「【産業上の利用分野】本発明は,広視野角・高画質の大画面アクティブマトリックス型液晶表示装置に関する。」(段落【0001】)・「【従来の技術】従来のアクティブマトリックス型液晶表示装置の一方の基板上に形成した櫛歯状電極対を用いて液晶組成物層に電界を印加する方式が,例えば,特開平7-36058号や特開平7-159786号公報により提案されている。以下液晶組成物層に印加する主たる電界方向が,基板界面にほぼ平行な方向である表示方式を横電界方式と称する。図1と図2が従来の横電界方式の例である。共通電極③と走査信号配線①は同じ層に形成されている。さらに映像信号配線②と液晶駆動電極④も同じ層に形成されている。共通電極③と液晶駆動電極④とは,異なる層に分離形成されているが,直線状で平行櫛歯状に配置されている。走査信号配線①と映像信号配線②も同様に直線状平行配置で形成されている も同じ層に形成されている。共通電極③と液晶駆動電極④とは,異なる層に分離形成されているが,直線状で平行櫛歯状に配置されている。走査信号配線①と映像信号配線②も同様に直線状平行配置で形成されている。共通電極③と映像信号配線②とは,重ならないように配置されている。付加容量は,共通電極③と,液晶駆動電極④とを,絶縁膜を介して互いに重畳させることで形成している。 画素面積の半分ちかくをしめる共通電極③と液晶駆動電極④の表面に関しては,使用している金属材料そのままか,ショートをふせぐための自己酸化膜か,自己窒化膜で被覆している。」(段落【0002】)・「【発明が解決しようとする課題】上記の従来技術で横電界方式の液晶表示装置を作る場合,走査信号配線①と共通電極③が同じ層に形成されているために,ショートする確率が高い。同様に映像信号配線②と液晶駆動電極④も同じ層に形成されているのでショートする確率が高い。前者の場合には,水平ライン欠陥となり,後者は点欠陥となって画像品位をいちじるしく低下させる。このために従来の構造では歩留りが低く生産コストが高くなる問題があった。」(段落【0003】) - 45 -・「横電界方式では,付加容量を形成しないと,液晶駆動電極の容量が非常に小さくなるためにTFTのリーク電流の画面全体の不均一性がムラとなって見えやすい。そのために,従来技術では共通電極③と液晶駆動電極④とを異なる層に絶縁膜を介して分離形成し,互いに重畳させることで形成しているが,大きな付加容量を形成しようとした場合有効画面を縮少して重畳部分の面積を拡大する方法しかなく光の透過率が悪い原因となっていた。」(段落【0004】)・「本発明は,上記の問題を解決するものであり,その目的は,より製造歩留りが高く,かつ開口率を大きくでき,コントラストの 大する方法しかなく光の透過率が悪い原因となっていた。」(段落【0004】)・「本発明は,上記の問題を解決するものであり,その目的は,より製造歩留りが高く,かつ開口率を大きくでき,コントラストの高い大画面高精細アクティブマトリックス型液晶表示装置をコスト安く提供することにある。」(段落【0007】)・「基板上に走査信号配線と映像信号配線と前記走査信号配線と映像信号配線との各交差部に形成された薄膜トランジスターと,前記薄膜トランジスタに接続された液晶駆動電極と,少なくとも一部が,前記液晶駆動電極と対向して形成された共通電極とを有するアクティブマトリックス基板と前記対向期板に狭持された液晶層とからなる液晶表示装置において,〔手段1〕前記走査信号配線と前記映像信号配線と,前記共通電極と前記液晶駆動電極とが,それぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離した。」(段落【0009】)・「〔手段2〕手段1において,前記映像信号配線と前記共通電極少なくとも一部,または,前記走査信号配線と前記共通電極の少なくとも一部を絶縁膜を介して互いに重畳させた。」(段落【0010】)・「〔手段3〕手段1において,前記液晶駆動電極と前記走査信号配線ならびに前記共通電極の少なくとも一部を絶縁膜を介して互いに重畳させ,その重畳部をもって付加容量を形成した。」(段落【0011】)・「【作用】上記手段1の如く,走査信号配線と映像信号配線と共通電 - 46 -極と,液晶駆動電極とが,それぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に存在するために,走査信号配線と共通電極の短絡発生確率が小さくなり水平ライン欠陥を低減可能となる。映像信号配線と液晶駆動電極の短絡も発生確率が小さくなり点欠陥が低減する。」(段落【0017】)・「上記手段2と上記手段3により,共 極の短絡発生確率が小さくなり水平ライン欠陥を低減可能となる。映像信号配線と液晶駆動電極の短絡も発生確率が小さくなり点欠陥が低減する。」(段落【0017】)・「上記手段2と上記手段3により,共通電極の一部と映像信号配線ならびに走査信号配線とが絶縁膜を介して互いに重畳させることができるので,画素開口率を大きく出来る。また液晶駆動電極と走査信号配線ならびに共通電極の少なくとも一部を絶縁膜を介して互いに重畳させて形成した付加量を大きくできるので,TFTのオフ抵抗の低下による画質の低下を防止できる。またこの大きな付加量が走査信号線による液晶駆動電圧の変動を低減する効果があるので,残像の発生を防止できる。」(段落【0018】)(イ) 本件明細書等の参考文献欄には,乙14公報のほか,日立公報3も記載されている。 また,従来の技術として,アクディブマトリックス型液晶表示装置の一方の基板上に形成した櫛歯状電極対を用いて液晶組成物層に電界を印加する方式を提案するものとして,乙14公報や日立公報2が記載されている(段落【0002】)。 ウ本件出願の時期や被告補助参加人における液晶表示技術の開発経過等(ア) ホシデン株式会社は,平成7年(1995年)9月10日,「In-PlaneSwitching 駆動LCDの電気光学特性」と題する論文(丙25。以下「ホシデン論文」という。)を発表した。同論文の内容は,IPS方式の液晶ディスプレイの技術のうち,視野角やコントラスト,応答時間等の電気光学特性に関するものであり,電極同士をいかなる層にどのように分離形成するかについては言及がなかった。 - 47 -(イ) 「1995 AsiaDisplay 国際シンポジウム」(本件学会)は,平成7年(1995年)10月16日から同月18日まで開催さ 形成するかについては言及がなかった。 - 47 -(イ) 「1995 AsiaDisplay 国際シンポジウム」(本件学会)は,平成7年(1995年)10月16日から同月18日まで開催され,日立から,IPS方式の液晶ディスプレイが発表されたほか,日立論文1や日立論文2などが発表された。日立論文2には,その図1(Fig.1)に,共通電極と液晶駆動電極が異なる層に分離形成されている構成が示されていた。 〔丙21,32〕(ウ) Cⅰは,平成7年(1995年)頃,被告補助参加人に勤務して液晶表示技術に関する研究開発に従事する中で平成7年(1995年)10月26日付け作成の技術報告書(丙2)を作成した。同報告書には,IOP構造のTN方式の液晶ディスプレイに関するものであるが,高開口率化技術に関するCⅰの素案として,●(省略)●,すなわち,●(省略)●ものとして,これらの電極同士をオーバーラップさせる構成が示されていた。なお,IOP構造とは,「IOTonPassivation」の略であり,透明導電膜であるITO(酸化インジウムスズ)をパッシベーション層の上に配置する構造で,被告補助参加人が採用していた構造であった。 また,同報告書には,「TYPEB」と「TYPED」として,それらの具体的構造が図示されていた。 (エ) Bⅰは,後記オ(イ)のとおり,平成7年(1995年)10月から11月にかけて,技術報告書(丙4,18)を作成してこれらを被告補助参加人に提出した。 (オ) Cⅰは,遅くとも平成7年(1995年)12月頃には,IPS方式の液晶表示装置に関する技術検討に取り組んでおり,平成8年(1996年)4月頃には,高開口率・広視野角の液晶表示装置を開発する必要性を認識していた。また,Cⅰは,その頃から,日立等液晶表示 PS方式の液晶表示装置に関する技術検討に取り組んでおり,平成8年(1996年)4月頃には,高開口率・広視野角の液晶表示装置を開発する必要性を認識していた。また,Cⅰは,その頃から,日立等液晶表示装置の競合他社が出願したIPS関連特許の出願時期や技術内容等についての - 48 -調査を行い,その結果を被告補助参加人の特許室に報告していた。同特許室から同年5月14日付けで2次送付され,Cⅰが同年6月3日付けで報告した調査対象の中には,TFT電極構造に関する技術として乙14公報が含まれていた。〔乙12,丙15,証人Cⅰ〕ところで,Cⅰは,乙14公報の図14や図20等を分析して,平成8年(1996年)5月から6月頃に,前記(ウ)のオーバーラップさせる構成を着想したと述べている。〔証人Cⅰ〕(カ) 平成8年(1996年)6月14日,本件出願がされた。 (キ) Cⅰが作成して被告補助参加人に提出した平成9年(1997年)1月28日付け作成の特許出願稟議書(丙3)には,●(省略)●構成が示されていた(丙3・第3図)。また,同特許出願稟議書には,表紙に●(省略)●との記載がある。 他方,同特許出願稟議書には,発明の核心として,●(省略)●との記載がある。 この点,Cⅰが作成して被告補助参加人に提出した,横電界型液晶表示装置の発明に係る特許出願稟議書は,No.1(丙16の1。作成日平成9年(1997年)1月21日。)に続き,No.2(丙3。作成日同月28日。),No.3(丙16の2。作成日同日。)及びNo.4(丙16の3。 作成日同日。)があるところ,Cⅰは,No.1の表紙には●(省略)●と,No.4の表紙には●(省略)●と記載し,また,「関連材料」として乙14公報を記載していた。 なお,Cⅰは,本件出願当時において,我 同日。)があるところ,Cⅰは,No.1の表紙には●(省略)●と,No.4の表紙には●(省略)●と記載し,また,「関連材料」として乙14公報を記載していた。 なお,Cⅰは,本件出願当時において,我が国の特許法が先願主義を採用していることは知っており,それらの特許出願稟議書において,「他社開発中」を理由に特許出願を至急行うように求めていた。〔甲30,丙16,証人Cⅰ〕エ本件発明の出願及びその後の経過 - 49 -(ア) 本件出願は平成8年(1996年)6月14日にされたが,弁理士を代理人として付けることなく,原告代表者を発明者,原告を出願人として特許出願された。〔乙22の1〕Bⅰは,本件明細書等の図面も含めた全てを一人で作成した。 本件出願当時における請求項1の記載は,次のとおりであった。 「基板上に走査信号配線と映像信号配線と,前記走査信号配線と映像信号配線との各交差部に形成された薄膜トランジスタと,前記薄膜トランジスタに接続された液晶駆動電極と,少なくとも一部が前記液晶駆動電極と対向して形成された共通電極とを有するアクティブマトリックス基板と,前記アクティブマトリックス基板に対向する対向基板と,前記アクティブマトリックス基板と前記対向基板に挟持された液晶層とからなる横電界方式液晶表示装置において,前記走査線信号配線と,前記映像信号配線と,前記共通電極と前記液晶駆動電極とがそれぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されていることを特徴とする液晶表示装置。」また,本件出願当時の明細書の【図32】には,映像信号配線の両側に,絶縁膜を介して映像信号配線とオーバーラップするように共通電極が配置された構成が示されていたものの(なお,乙14公報には,同様の構成が示された図は記載されていない。),本文には,「オー 線の両側に,絶縁膜を介して映像信号配線とオーバーラップするように共通電極が配置された構成が示されていたものの(なお,乙14公報には,同様の構成が示された図は記載されていない。),本文には,「オーバーラップ」の文言の記載はなかった。〔丙30,証人Bⅰ〕(イ) 特許庁審査官は,平成15年(2003年)2月6日付けで,前記(ア)の当初の請求項1につき,乙17公報には,短絡防止のために,映像信号配線と液晶駆動電極とをそれぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離する課題が記載されており,IPS方式のマトリックス基板において,映像信号配線と液晶駆動電極とをそれぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に形成する構造も乙17公報等により周知であるから,乙 - 50 -14公報において上記構造を採用し,請求項1に係る発明とすることは,当業者にとって容易であるとして,拒絶理由通知をした。〔乙22の9〕原告代表者は,同年4月10日,特許庁審査官と面接したが,Bⅰは同面接に原告代表者と出席した。〔乙22の10〕そして,原告代表者は,上記面接を踏まえて,同月18日,前記当初の請求項1に本件発明の構成要件FないしHの構成を追加した構成に補正し,これに対して特許庁審査官は,同年9月8日,本件出願につき特許査定した。〔乙22の12,22の13,22の18〕オ原告代表者及びBⅰの液晶表示技術に関する知識・経験等(ア) 原告代表者について原告代表者は,大学在学中は機械工学を学び,液晶表示技術については学んだことがなかった。また,原告代表者は,ソニーに入社したことがあるものの,同社に勤務中は液晶表示技術とは無関係の業務に従事していた。 原告代表者は,昭和56年にソニーを退職した後は原告で勤務している。原告の主たる業務は,金型の ,ソニーに入社したことがあるものの,同社に勤務中は液晶表示技術とは無関係の業務に従事していた。 原告代表者は,昭和56年にソニーを退職した後は原告で勤務している。原告の主たる業務は,金型の設計,製造及び販売,自動車用部品や付属品の製造及び販売,並びにプレス加工業であり,液晶表示技術と直接関連のある業務は行っておらず,液晶表示技術に関する実験が可能な設備や施設を有していたこともない。原告代表者は,原告においても,液晶表示技術に関して,その技術開発や部品製造等の業務に従事した経験はなく,同技術に関する学会への参加の有無に関しては,本件学会にしか参加したことがないと述べている(なお,原告代表者が本件学会に参加したと認めるに足りないことは後記(2)ウ(ク)で述べる。)。 また,原告代表者は,検討した記憶がある公開特許公報や論文等として,日立公報1,乙14公報,日立公報2,日立論文1,日立論文2及びホシデン論文(丙25)を挙げており,ほかに,雑誌の日経エレクト - 51 -ロニクスの液晶関連の記事にも目を通していたなどと述べている。もっとも,原告代表者は,当庁平成25年(ワ)第10151号損害賠償請求事件において,液晶表示技術に関する論文を読んでもその内容を全部理解できる能力は有していないと供述していた。〔甲7,乙20〕なお,原告代表者が本件発明を着想したことや,それに至る経過を示すメモやノート類は,本件において何ら提出されていない。 (イ) BⅰについてBⅰは,ソニーやセイコープレシジョン株式会社において液晶パネルの開発業務に従事した経験があり,被告補助参加人から液晶パネルの製造工程に関する技術指導を求められ,平成3年5月頃に被告補助参加人に入社した。Bⅰは,平成10年6月頃に被告補助参加人を退社するまで の開発業務に従事した経験があり,被告補助参加人から液晶パネルの製造工程に関する技術指導を求められ,平成3年5月頃に被告補助参加人に入社した。Bⅰは,平成10年6月頃に被告補助参加人を退社するまで,被告補助参加人において,研究所や液晶パネルの製造工場で液晶パネルの生産ラインの立ち上げや改善等の業務に従事した。〔甲20の添付資料1−1〕Bⅰは,液晶表示技術に関して技術的提案をする内容の技術報告書(丙4,5,18の1ないし5)等を作成して被告補助参加人に提出していた。 すなわち,Bⅰは,技術報告書(丙4。平成7年10月ないし同年11月頃に作成。)においては,IOP構造でない従来構造の欠点として,ショートが多発して点欠陥による歩留まり低下が多いことを指摘するほか,IOP構造について,上記指摘する点を改善するものであるとしてその利点を挙げるとともに,問題点を指摘して製造工程上の解決策を具体的に提案していた。 その後も,Bⅰは,「TFT・LCDの開発方向」と題する技術報告書(丙18の1。平成7年10月31日付け作成。)を提出したほか,「視野角拡大と大型パネル開発」と題する技術報告書(丙18の2。平 - 52 -成7年11月2日付け作成。)を提出して,日立論文1及び2に加えて広視野角のTFT方式の液晶表示装置が日立から発表された旨の日本経済新聞の記事を添付しつつ,本件学会で日立が発表したTFT方式の液晶表示装置の視野角特性がそれまでに開発されたものの中で最高との評価を得ていることを報告し,日立論文2に記載された図を転載して日立論文1及び2について検討を加え,当該論文から判断するところでは被告補助参加人も大至急試作に入るべきであると進言していた。 さらに,技術報告書(丙5。平成7年11月4日付け作成。)においては,本件学会で日 び2について検討を加え,当該論文から判断するところでは被告補助参加人も大至急試作に入るべきであると進言していた。 さらに,技術報告書(丙5。平成7年11月4日付け作成。)においては,本件学会で日立が発表した「I.P.TFT.LCD」すなわちIPS方式のTFT液晶表示装置について,広視野角や,高精細,製造プロセスの短縮化,低コスト化といった利点を論じたほか,被告補助参加人が行うべき技術開発として,「CⅰさんのまとめてくれたTYPEA,B,C,DのうちTYPEDを開発しないかぎり,10.4”SVGAの市場参入はむずかしいと考えます。」などと記載して,Cⅰがその技術報告書(丙2)で提案した「TYPED」の構造であれば,開口率が80%を超えて競業他社との競争力を備えることができる旨を論じていた。 ほかに,Bⅰは,技術報告書(丙18の3。平成7年11月8日付け作成。)では,「世界一の高開口率TFT・LCDパネルを作るために!」と題して液晶パネルの高開口率化について検討していた。 また,Bⅰは,本件において,本件出願当時について,FFSやデジタルカメラの市場が急激に立ち上がってきて,小さい液晶パネルでの画素の高密度化が進んでいた時期であり,小さいものであれば,1枚のガラス基板から数百枚の液晶パネルを得られるから,マスクが二,三枚増えても,製造コストにさほど影響しなかった,そのため,本件発明は価値が出るかもしれないと思った旨供述している。〔証人Bⅰ〕さらに,Bⅰは,本件出願の経過において原告代表者と特許庁審査官 - 53 -と面接した経緯について,自分で書いた本件明細書等に対して拒絶理由通知がされたから,意見書で自分の考えを伝えるよりも,特許庁審査官と面接して本件明細書等の記載について議論をしたほうが,拒絶する理由をよ 接した経緯について,自分で書いた本件明細書等に対して拒絶理由通知がされたから,意見書で自分の考えを伝えるよりも,特許庁審査官と面接して本件明細書等の記載について議論をしたほうが,拒絶する理由をより理解することができ,明細書の適切な補正につながると考えて,特許庁審査官との面接に出席した,また,原告代表者からは一緒に出席してほしいと依頼されていた旨供述している。〔証人Bⅰ〕(ウ) 原告代表者とBⅰとは,ソニーに勤務して以来,交友関係が続いている。〔証人Bⅰ,原告代表者本人〕カ原告による出願に係るその他の特許出願原告,Bⅰ,三国電子有限会社を出願人とし,原告代表者,Bⅰ,Bⅰの父であるEⅰを発明者とする発明が多数あるところ,その出願時期やその当時にBⅰが在職した会社等は,別紙「Bⅰ氏の在籍会社と大林精工(株),Bⅰ氏,三国電子(有)を出願人とする発明の出願時期との関係」に記載のとおりである。〔乙23,25〕なお,Bⅰの父は,液晶表示装置に関する業務を行ったことはない。〔証人Bⅰ〕(2) 検討ア冒認出願に関する主張立証責任について特許法123条1項6号所定の冒認出願において,特許出願がその特許にかかる発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたことについての主張立証責任は,特許権者が負担すると解するのが相当であり,特許法104条の3第1項所定の抗弁においても同様に解すべきである。 もっとも,上記のように発明者性の主張立証責任を特許権者が負担すると解したとしても,そのような解釈は,すべての事案において,特許権者において,発明の経緯等を個別的,具体的に主張立証しなければならない - 54 -ことを意味するものではなく,むしろ,先に出願したという事実は,出願人が発明者又 すべての事案において,特許権者において,発明の経緯等を個別的,具体的に主張立証しなければならない - 54 -ことを意味するものではなく,むしろ,先に出願したという事実は,出願人が発明者又は発明者から特許を受ける権利を承継した者であるとの事実を推認する重要な間接事実であると解される。したがって,特許権侵害訴訟において,発明者性に関し特許権者の行うべき主張立証の内容及び程度は,冒認出願を疑わせる具体的な事情の内容,それに関する被告の主張立証活動の内容及び程度がどのようなものかによって大きく左右されるというべきであり,仮に被告が,冒認を疑わせる具体的な事情を何ら指摘することなく,かつ,その裏付け証拠を提出していないような場合は,特許権者が行う主張立証の程度は比較的簡易なもので足りるが,他方,被告が冒認を裏付ける事情を具体的詳細に指摘し,その裏付け証拠を提出するような場合は,特許権者において,これを凌ぐ主張立証をしない限り,主張立証責任が尽くされたと判断されることはないというべきである。そして,冒認を疑わせる具体的な事情の内容は,発明の属する技術分野が先端的な技術分野か否か,発明が専門的な技術,知識,経験を有することを前提とするか否か,実施例の検証等に大規模な設備や長時間を要する性質のものであるか否か,発明者とされている者が発明の属する技術分野についてどの程度の知見を有しているか否か,発明者と主張する者が複数存在する場合に,その間の具体的実情や相互関係がどのようなものであったか等の個別事情を考慮して判断するべきである。 本件では,本件発明について,原告が,原告代表者が単独で発明したと主張し,被告らはこれを否認し,かえって,Bⅰが単独で発明した(若しくはBⅰとCⅰが共同発明した)と主張する。 そこで,本件発明の発明者について 明について,原告が,原告代表者が単独で発明したと主張し,被告らはこれを否認し,かえって,Bⅰが単独で発明した(若しくはBⅰとCⅰが共同発明した)と主張する。 そこで,本件発明の発明者について,上記(1)の認定事実をもとに,以下検討する。 イ乙14公報と対比した本件発明の内容(ア) 乙14公報は,従来技術より製造歩留まりが高くかつ開口率が大きな, - 55 -明るいアクティブマトリックス型液晶表示装置を提供することを課題とし(段落【0005】),その課題の解決手段として,「基板上に走査信号電極と,映像信号電極と,前記走査信号電極と映像信号電極との各交差部に形成された薄膜トランジスタと,前記薄膜トランジスタに接続された液晶駆動電極と,少なくとも一部が前記液晶駆動電極と対向して形成された共通電極とを有するアクティブマトリックス基板と,前記アクティブマトリックス基板に対向する対向基板と,前記アクティブマトリックス基板と前記対向基板に挟持された液晶層とからなる液晶表示装置において,前記共通電極と前記映像信号電極または前記共通電極と液晶駆動電極は,絶縁膜を介して互いに異なった層に形成されてなることを特徴とする液晶表示装置。」(請求項1)等の発明を開示している。 その作用効果は,共通電極と映像信号電極または共通電極と液晶駆動電極を絶縁膜を介して互いに異なった層に形成することによって,画素開口率を大きくすることができるほか,前記液晶駆動電極と前記共通電極の重畳部をもって付加容量を形成でき,電圧保持特性を改善できるので,液晶抵抗の低下やTFTのオフ抵抗の低下による画質の低下を補償でき,さらに,これらの電極相互間の短絡不良が発生する確率を小さくすることが可能となり,画素欠陥を低減できる,といったことがある(段落【0013】 低下やTFTのオフ抵抗の低下による画質の低下を補償でき,さらに,これらの電極相互間の短絡不良が発生する確率を小さくすることが可能となり,画素欠陥を低減できる,といったことがある(段落【0013】)。 そして,実施例として,【図20】に図示されるように,ゲート電極(本件発明の走査信号配線に相当する。)とドレイン電極(本件発明の映像信号配線に相当する。)とコモン電極(本件発明の共通電極に相当する。)がそれぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離された構成が開示されている。 (イ) 本件発明は,本件発明の構成要件AないしDにおいて乙14公報の前記請求項1に記載の発明と構成を同じくするものである。 - 56 -そして,前記認定した本件明細書等の記載によれば,本件発明は,従来のアクティブマトリックス型液晶表示装置の一方の基板上に形成した櫛歯状電極対を用いて液晶組成物層に電界を印加する方式では,共通電極と走査信号配線が同じ層に,映像信号配線と液晶駆動電極も同じ層に形成され,共通電極と液晶駆動電極とは異なる層に分離形成されており,この方式で横電界方式の液晶表示装置を製造する場合,走査信号配線と共通電極が同じ層に形成されているために短絡が発生する確率が高く,同様に映像信号配線と液晶駆動電極も同じ層に形成されているために短絡が発生する確率が高く,前者の場合には水平ライン欠陥となり,後者の場合には点欠陥となって画像品位を著しく低下させることとなり,歩留りが低く生産コストが高くなる問題があったところ(段落【0002】,【0003】),上記課題の解決手段として,本件発明の構成要件AないしDの構成を備える横電界方式液晶表示装置において,構成要件EないしHの構成を採用し(段落【0009】,【0010】),走査信号配線と映像信号配線と, 課題の解決手段として,本件発明の構成要件AないしDの構成を備える横電界方式液晶表示装置において,構成要件EないしHの構成を採用し(段落【0009】,【0010】),走査信号配線と映像信号配線と,共通電極と液晶駆動電極とが,それぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に存在することにより,走査信号配線と共通電極の短絡が発生する確率が小さくなり,水平ライン欠陥を低減させることが可能となるとともに,映像信号配線と液晶駆動電極の短絡が発生する確率も小さくなり,点欠陥を低減させることが可能となり,また,映像信号配線と共通電極の少なくとも一部,又は,走査信号配線と共通電極の少なくとも一部を絶縁膜を介して互いに重畳させたことにより,画素開口率を大きくすることができ,加えて,液晶駆動電極と走査信号配線並びに共通電極の少なくとも一部を絶縁膜を介して互いに重畳させて形成した付加量を大きくできるので,TFTのオフ抵抗の低下による画質の低下を防止でき,さらに,この大きな付加量が走査信号配線による液晶駆動電圧の変動を低減する効果があるので,残像の発生を防止す - 57 -ることができるといった作用効果があるというものである(段落【0017】,【0018】)。 (ウ) そうすると,本件発明の技術的思想の特徴的部分は本件発明の構成要件EないしHの構成であるというべきである。 そして,発明者とは,当該発明の技術的思想の特徴的部分の完成に創作的に寄与した者,すなわち,当該発明の技術的思想の特徴的部分を着想したか,若しくは実験などによりその具体化に技術的貢献をした者をいうと解されるから,原告代表者が本件発明の発明者であると認められるためには,上記構成要件を着想等したのが原告代表者であると認められることが必要であるということができる。 ウそこで,まず, 者をいうと解されるから,原告代表者が本件発明の発明者であると認められるためには,上記構成要件を着想等したのが原告代表者であると認められることが必要であるということができる。 ウそこで,まず,本件発明の構成要件Eの構成について,その構成を着想等したのが原告代表者であると認められるかについて検討する。 (ア) 原告は,原告代表者が,液晶表示技術に関する一定の知識を身につけていたところ,Bⅰが被告補助参加人に勤務していた頃に同人に送付するために入手した液晶表示技術に関する論文を検討したり,学会に参加したりするなどして液晶表示装置に関する知識習得に努めていた中で,本件学会で日立から発表されたIPS方式の液晶表示装置に関して何か発明ができないかと考えていたところ,当時発行されていたIPS方式の液晶表示装置に関する論文等には,電極や配線が同一の層に形成されている構造ばかりが開示されていることに鑑みると,これらを絶縁層を介して互いに異なった層に形成する構成である本件発明の構成要件Eの構成を着想し,完成させるに至ったと主張する。 この点,乙14公報の記載から本件発明の構成要件Eの構成,すなわち,走査線信号配線と映像信号配線と液晶駆動電極と共通電極とがそれぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されているという構成を着想するには,乙14公報の図19・20に記載の構成である,走査 - 58 -信号配線と映像信号配線と共通電極とがそれぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離された構成から,さらに,液晶駆動電極ともそれぞれ絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離された構成とすることにより,走査信号配線と共通電極の短絡発生確率が小さくなり,水平ライン欠陥を低減可能とし,映像信号配線と液晶駆動電極の短絡も発生確率が小さくなって点欠陥 いに異なった層に形成分離された構成とすることにより,走査信号配線と共通電極の短絡発生確率が小さくなり,水平ライン欠陥を低減可能とし,映像信号配線と液晶駆動電極の短絡も発生確率が小さくなって点欠陥が低減することなどが可能となることを予想できるだけの技術的能力を有していることが必要であるということができる。 (イ) この点に関して原告代表者は,本件学会において多くの参加者が感銘をうけたIPS方式の液晶表示装置に関して,何か発明ができないかと考えていたところ,原告代表者が検討した前記論文等には,電極(走査信号配線,映像信号配線,共通電極,液晶駆動電極)のいずれかが同じ層に形成されている構成ばかりが開示されており,これを見て,これらの電極をいずれも異層化することで,電極同士を近づけてもショート(短絡)する可能性を大幅に低減させることができるとともに,電極を近づけることで開口率を上げられること,また,適宜電極を広げたり伸ばしたりずらしたりして,電極をブラックマスクのようにも使えることを思いつき,本件発明を完成させた,と原告の前記主張に沿う供述をする。 (ウ) 確かに,乙14公報には,共通電極と映像信号電極とを,または共通電極と液晶駆動電極とを互いに絶縁膜により異層化することにより,これらの電極相互間の短絡不良が発生する確率を小さくでき,画素欠陥を低減できるとの記載がある(段落【0013】)。 (エ) もっとも,本件発明は,乙14公報に開示された液晶表示装置に関する従来技術においてもなお,歩留まりが低く,生産コストが高くなる,という課題があり,前記構成を採用することによってこの課題を解決し,より製造歩留まりが高く,生産コストをより安くするという発明であり - 59 -(段落【0003】,【0007】),乙14公報に接した者が上記課 記構成を採用することによってこの課題を解決し,より製造歩留まりが高く,生産コストをより安くするという発明であり - 59 -(段落【0003】,【0007】),乙14公報に接した者が上記課題を認識するには,実際の製造現場において,上記従来技術では,どの程度の割合で製造歩留まりが生じ,そのためにどの程度で余分な生産コストがかかっているのかといった点についての技術的知識,経験が要求されるものと認められる。 (オ) しかるに,前記(1)オ(ア)によれば,原告代表者は,液晶表示装置に関する技術を専門的に研究したり,液晶表示装置に関して技術開発や部品製造等の業務に従事したりした経験はなく,また,原告には,液晶表示技術に関する実験が可能な設備や施設が備えられていなかったことが認められるのであって,原告代表者には,本件出願当時において,前記のような液晶表示装置に関する実際の製造現場における技術的知識,経験を得るべき経歴や環境が備わっていなかったといわざるを得ない。 (カ) そして,本件において,原告代表者が上記課題を認識してこれを解決する構成を着想したことについて,その経過を示すようなメモやノート等といったものは何ら提出されていない。 (キ) また,原告代表者は,従来技術においてどの程度の割合で歩留まりが生じていて,これが本件発明によりどの程度の割合で歩留まりが高くなるのかについて,被告代理人や裁判所から複数回にわたって質問されても,具体的に説明することができない。〔原告代表者本人〕(ク) しかも,原告代表者は,着想の契機として本件学会に参加したことを挙げるが,その点に関する供述は,その内容自体,また,Bⅰの供述内容に照らしても,容易に信用することができない。すなわち,原告代表者は,本件学会に参加した理由として,Bⅰから本件学会でI したことを挙げるが,その点に関する供述は,その内容自体,また,Bⅰの供述内容に照らしても,容易に信用することができない。すなわち,原告代表者は,本件学会に参加した理由として,Bⅰから本件学会でIPS方式の液晶ディスプレイに関する発表を見てきたらどうだと言われたというが,講演を聞くこともなく,展示されたディスプレイをわずか15分程度見ただけで,本件学会で配布された(しかもBⅰがその内容を高く評 - 60 -価して,技術報告書に添付して被告補助参加人に報告したほどであったにもかかわらず,)日立論文1及び2等の講演資料を持ち帰ることもなかったと供述する(乙20,原告代表者本人)。また,原告代表者が上記のとおり本件学会に参加した理由を述べるのに対して,Bⅰは,日立の講演資料を「チッソのナカガワ」なる者から入手し,日立の発表も同人から説明を受けたと述べており,その内容からすれば,原告代表者に本件学会への参加を依頼すべき事情が窺われない。このように,原告代表者の上記供述は,その内容自体が合理的であるとはいい難く,依頼者となるべきBⅰの上記供述による裏付けも乏しいから,容易に信用することができないのであり,原告代表者が本件学会に参加したと認めるには足りず,ほかにこれを認めるに足りる的確な証拠はない。 (ケ) さらに,原告代表者は,前記の論文や公開特許公報等を検討したと述べるが,本件発明の先行文献とされる乙14公報について,同じ技術分野に関する公開特許公報が当時でも相当数あったと推察されるにもかかわらず,特許出願公開番号によって特定するでもなく,単に横電解方式の図面が載っているものを選んだとか,分類から選んだなどと述べるにとどまり,検索方法としては曖昧な説明しかできていない。また,日立論文1についても,陳述書(甲26)では,日立から取り 単に横電解方式の図面が載っているものを選んだとか,分類から選んだなどと述べるにとどまり,検索方法としては曖昧な説明しかできていない。また,日立論文1についても,陳述書(甲26)では,日立から取り寄せたと述べていたが,被告代理人に対してはこれを明確に否定して,ソニーの「高田さん」という友人から取り寄せたと述べていて,相反する供述をしている。さらに,原告代表者は,英文読解は得意でなく,日立論文1についてこれを熟読でなく斜め読みした程度でしかなかったことを自認しており,原告代表者は,液晶表示装置に関する技術を専門的に研究したり,技術開発や部品製造等の業務に従事したりした経験がないことに照らしても,原告代表者自身の供述内容からは,原告代表者が着想に至る課題を発見し得るような知見を得ていたと認めることはできない。 - 61 -(コ) 以上認定した原告代表者の液晶表示装置に関する技術的知識,経験の程度や,原告代表者が従来技術と本件発明の作用効果の対比を具体的に説明できないこと,着想に至る経過を示す客観的証拠が提出されておらず,ほかに着想に至る経過を認めるに足りる証拠がないことに照らすと,原告代表者の前記供述は到底信用することができない。 また,仮に原告代表者の供述内容を前提としても,原告代表者は,従来技術においてどの程度の割合で歩留まりが生じていて,これが本件発明によりどの程度の割合で歩留まりが高くなるのか,といった製造現場に関する課題とその解決に関して,具体的な説明をすることができていないこと,しかも,原告代表者は,液晶表示装置の開発や製造に関して業務として従事した経歴や経験がなく,その技術事項について専門的研究をしたこともないといわざるを得ないのであり,さらには,後述するように本件出願はBⅰが主導的に関与したものであり,本 や製造に関して業務として従事した経歴や経験がなく,その技術事項について専門的研究をしたこともないといわざるを得ないのであり,さらには,後述するように本件出願はBⅰが主導的に関与したものであり,本件出願においてBⅰの関与なくして本件明細書等の作成や特許査定に至ることはできなかったものと認められることを合わせ考慮すると,原告代表者が本件発明の構成要件Eに係る構成を着想等したと認めるに足りない。 (サ) これに対してBⅰについてみると,前記(1)オ(イ)のBⅰの液晶表示装置に関する経歴と経験,並びに補助参加人に複数の技術報告書を提出したこと,及びその内容が液晶パネルの視野角や開口率といった性能面のみならず,歩留まり等の製造現場における課題についても,その問題点の具体的な指摘と解決方法の具体的提案にまで及んでいることなどに照らせば,Bⅰは,本件出願当時,液晶表示装置に関する技術や製造方法等に精通していたものと認められる。 また,前記(1)エによれば,Bⅰは,本件出願に当たり,本件明細書等を図面も含めて全て自分自身で作成し,拒絶理由通知を受けると,特許庁審査官との面接に出席して,特許庁審査官と拒絶理由通知の内容につ - 62 -いて意見を交わし,これを踏まえて補正を行い,特許査定されるに至ったことが認められる(これに対して原告代表者は,自分自身が特許庁審査官に応対した旨述べるが,原告代表者の液晶表示技術に関する技術的知識や経験の程度や,後記エ(イ)で述べるとおり,原告代表者がオーバーラップさせる構成をBⅰに伝えた事実を認定することができないことに照らせば,上記供述は信用することができない。)。 以上の事情を考慮すれば,本件発明の構成要件Eに係る構成は,原告代表者ではなく,少なくともBⅰによって着想されたことが推認できる。 ないことに照らせば,上記供述は信用することができない。)。 以上の事情を考慮すれば,本件発明の構成要件Eに係る構成は,原告代表者ではなく,少なくともBⅰによって着想されたことが推認できる。 そして,本件発明の構成要件Eに係る構成の着想に対する関与を窺わせる者は,本件全証拠を精査しても,原告代表者やBⅰ,Cⅰのほかに存在することが認められない。 (シ) さらに,前記(1)カによれば,平成8年から平成20年までの期間において,発明者をBⅰとする液晶表示装置に関する特許出願が多数存在する一方で,発明者を原告代表者やBⅰの父であるEⅰとする液晶表示装置に関する特許出願も多数存在するが,Bⅰが被告補助参加人やハンスターに在職していた期間は,おおむね,発明者を原告代表者やBⅰの父とする特許出願がされているのに対して,発明者をBⅰとする特許出願がされていないこと,他方,Bⅰがそれらの会社に在職していない期間は,おおむね,発明者をBⅰとする特許出願がされていることが認められ,原告代表者やBⅰの父が液晶表示装置に関する業務を行ったことがないことをも合わせ考慮すると,かかる特許出願の時期とBⅰの在職期間との関係に照らし,発明者を原告代表者やBⅰの父とする特許出願の真の発明者は実はBⅰであって,Bⅰが,特定の会社に在職して当該会社に対して負う忠実義務や秘密保持義務に違反する責めを免れるために,第三者である原告代表者やBⅰの父の名義を借りて特許出願したと推認されるというべきである。 - 63 -(ス) 以上の事情を総合考慮すると,本件発明の構成要件Eに係る構成は,原告代表者が着想したとは認めるに足りず,少なくとも,被告らの主張する冒認を疑わせる具体的な事情を凌ぐ立証がされたということはできないばかりか,むしろこれを着想し,具体化して 成要件Eに係る構成は,原告代表者が着想したとは認めるに足りず,少なくとも,被告らの主張する冒認を疑わせる具体的な事情を凌ぐ立証がされたということはできないばかりか,むしろこれを着想し,具体化して発明を完成させたのは,Bⅰであると認めるのが相当である。 エ次に,本件発明の構成要件Gの構成について,その構成を着想したのが原告代表者であると認められるかについて検討する。 (ア) 原告代表者は,本件発明の構成要件Gに係る構成を着想した経緯について,前記ウ(イ)のとおり本件発明の構成要件Eに係る構成を着想して,これを完成させたが,その後も,本件発明のブラッシュアップを考えていたところ,その中で,共通電極等をブラックマスクのように使える構成として,具体的には,共通電極の一部を映像信号配線や走査信号配線とオーバーラップさせる構成を着想したと述べる。 (イ) しかし,上記供述からは,原告代表者が着想の契機となった先行文献がどれで,いかなる記載に接したのか明らかでなく,着想に至る経緯は曖昧というほかない。 また,原告代表者が着想したことについて,その結果はもとよりその経過を示すようなメモやノート等といったものは何ら提出されていない。 さらに,原告代表者は,完成させた本件発明の内容をBⅰに伝え,Bⅰにおいてその内容から本件明細書等を作成した旨述べるが,本件出願時の明細書をみると,請求項にも,発明の詳細な説明にも,「オーバーラップ」の用語は何ら記載されておらず,映像信号配線の両側に映像信号配線とオーバーラップするように共通電極が配置されている構成についても記載されていないから,その供述内容を前提にしても,原告代表者が前記(ア)のオーバーラップさせる構成について,これをBⅰに伝えていたことを認めることはできず,他にこの点を立証する的確な証 についても記載されていないから,その供述内容を前提にしても,原告代表者が前記(ア)のオーバーラップさせる構成について,これをBⅰに伝えていたことを認めることはできず,他にこの点を立証する的確な証拠はな - 64 -い。 (ウ) この点,Bⅰについてみると,前記(1)オ(イ)のとおり,本件出願当時において,液晶表示装置に関する技術や製造方法等に精通していたと認めることができること,原告代表者及びBⅰは,それぞれ,本件明細書等の図面はBⅰにおいて適宜記載した旨を述べていることを前提にすると,本件発明の構成要件Gに係る構成が記載された【図32】については,Bⅰが自らの知見に基づき,その構成の具体的内容を記載したことが推認される。 また,前記(1)エのとおり,本件発明の構成要件Gは,本件出願の審査過程における補正により,構成要件F及びHとともに,当初の請求項1に追加され,本件特許が特許査定されたところであるが,Bⅰは,本件出願について拒絶理由通知を受けると,特許庁審査官との面接に出席して,特許庁審査官と拒絶理由通知の内容について意見を交わし,これを踏まえて,特許査定に至るに必要な補正を行ったと述べており,Bⅰが同補正を主導していたと認められる。 加えて,前記(1)オ(イ)のBⅰが作成して被告補助参加人に提出した技術報告書(丙4)の内容から,Bⅰが,本件出願当時,IPS方式のTFT液晶表示装置の技術開発に取り組んでおり,高開口率化という本件発明の解決課題について検討をしていたこと,Cⅰが被告補助参加人に報告した「TYPED」の構成についてその内容を把握していたこと,同構成は電極同士をオーバーラップさせるものであることが認められる。 さらに,前記(1)イ(イ)のとおり,本件明細書等に乙14公報のほかに日立公報2及び日立 構成についてその内容を把握していたこと,同構成は電極同士をオーバーラップさせるものであることが認められる。 さらに,前記(1)イ(イ)のとおり,本件明細書等に乙14公報のほかに日立公報2及び日立公報3も記載されていることから,Bⅰが本件出願より前にこれらの公報に接していたこと,乙14公報には,ドレイン電極(映像信号配線)より上の層にコモン電極(共通電極)が保護絶縁膜を介して分離形成されている構成が開示されていること(【図20】), - 65 -日立公報2及び日立公報3には,信号電極(映像信号配線)の両側に共通電極が絶縁膜を介して一部重なる構成(ただし,信号電極〔映像信号配線〕より下の層に共通電極が形成されており,共通電極を上の層に形成する本件発明とはこの点において具体的構成が異なっている。)が開示されていることがそれぞれ認められる。 以上のとおり認定したBⅰが有する技術的知識及び経験や,本件出願における主導的関与に加え,Bⅰが被告補助参加人において得た液晶表示装置に関する技術内容,Bⅰが接した先行文献に開示された技術内容といった事情は,いずれも本件発明の構成要件Gに係る構成が,原告代表者ではなく,少なくともBⅰによって着想されたことを推認させるものということができる。 (エ) 以上によれば,本件発明の構成要件Gに係る構成は,原告代表者が着想したとは認めるに足りず,少なくとも,被告らの主張する冒認を疑わせる具体的な事情を凌ぐ立証がされたということはできないばかりか,前記認定の諸事情に照らし,少なくともその一部をBⅰが着想したものと推認するのが相当である。 オそして,本件発明の構成要件F及びHの構成については,前記第3,5〔原告の主張〕のとおり,原告は,原告代表者がそれらの構成を着想したことについて具体的主張をしておらず 推認するのが相当である。 オそして,本件発明の構成要件F及びHの構成については,前記第3,5〔原告の主張〕のとおり,原告は,原告代表者がそれらの構成を着想したことについて具体的主張をしておらず,本件全証拠を精査しても,原告代表者がそれらの構成を着想したとは認めることができない。 (3) まとめ以上のとおり,本件においては,原告代表者は本件発明の発明者とはいえないから,本件特許の出願がその特許にかかる発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたことについての立証がされたとは認められない。したがって,本件特許は,その発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたものとして,特許法123 - 66 -条1項6号所定の無効理由を有すると認められるから,原告は被告に対して本件特許権に基づく権利行使をすることができない(特許法104条の3第1項)。 3 結論以上の次第であるから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林 保 裁判官 実本 滋 裁判官 足立拓人 - 67 -(別紙)当事者目録愛知県豊川市〈以下略〉原告大林精工株式会社同訴訟代理人弁護士大野聖二同 井上義隆 原告 大林精工株式会社 同訴訟代理人弁護士 大野聖二 同 井上義隆 同 小林英了 同補佐人弁理士 大谷寛 東京都港区〈以下略〉 被告 AppleJapan合同会社 同訴訟代理人弁護士 片山英二 同 北原潤一 同 梶並彰一郎 同 辛川力太 大韓民国ソウル特別市〈以下略〉 被告補助参加人 エルジーディスプレイカンパニーリミテッド 同訴訟代理人弁護士 古田啓昌 同 岩瀬吉和 同 山内真之 同 文 同訴訟代理人弁理士 重森一輝 被告製品目録 1 iPad mini Wi-Fiモデル 2 iPad mini Wi-Fi + Cellularモデル 被告製品の構成 1 構成①被告各製品は,In-Plane Switching方式(以下「IPS方式」という。)を採用したディスプレイを搭載したタブレット型コンピュータである。IPS方式とは,液晶パネルの駆動方式の一つであり,横電界により液晶分子をガラス基板に対して常に水平面 以下「IPS方式」という。)を採用したディスプレイを搭載したタブレット型コンピュータである。 IPS方式とは,液晶パネルの駆動方式の一つであり,横電界により液晶分子をガラス基板に対して常に水平面内で回転させる方式である。同方式は,液晶分子が斜めに立ち上がることがないため,視野角による光学特性の変化が少なく広視野角が得られることを一特徴とする。 2 構成②被告各製品のディスプレイは,TFT(薄膜トランジスタ)基板と,TFT基板に対向する色フィルター基板とを備え,これらの基板間に液晶組成物が挟まれている。 3 構成③被告各製品のTFT基板は,走査信号配線[1]と,映像信号配線[2]と,走査信号配線[1]と映像信号配線[2]との各交差部に形成されたTFT[10]とを備える。 走査信号配線[1]及び映像信号配線[2]が,それぞれTFTのゲート及びソースとして機能し,ドレイン[3]には,液晶駆動電極[4]が接続されている。 また,TFT基板には,液晶駆動電極[4]と少なくとも部分的に向かい合った共通電極[5]が形成されている。 4 構成④被告各製品のTFT基板に形成された走査信号配線[1]と,映像信号配線[2]と,液晶駆動電極[4]と,共通電極[5]とは,絶縁膜を介して互いに異なった層に形成分離されている。 - 70 - 5 構成⑤被告各製品のTFT基板に形成された共通電極[5]は,パッシベーション層の上に形成され,また,その上には,配向膜が直接形成されている。 6 構成⑥被告各製品のTFT基板に形成された共通電極[5]は,映像信号配線[2]の両側に映像信号配線[2]とオーバーラップするように配置されている。また,映像信号配線[2]の上層で連結するよう各画素の共通電極[5]は形成されている。 - 71 - ,映像信号配線[2]の両側に映像信号配線[2]とオーバーラップするように配置されている。また,映像信号配線[2]の上層で連結するよう各画素の共通電極[5]は形成されている。 - 71 -別紙特許公報及び別紙「Bⅰ氏の在籍会社と大林精工(株),Bⅰ氏,三国電子(有)を出願人とする発明の出願時期との関係」は省略
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