- 1 -平成20年(わ)第863号主文被告人を懲役20年に処する。 未決勾留日数中310日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,A,B,C及びDと共謀の上,第1平成12年3月2日午前5時5分ころ,神戸市a区b町cd番地eに所在するテレホンクラブ「EF店(管理者有限会社G)において,同店に火炎びん」を用いて放火しようと決意するとともに,同店内にいる店員及び客が死亡するかもしれないことを認識しながら,あえて,清酒一升びんにガソリンを入れ,その口にタオル様の布を取り付けて点火装置を施した火炎びん1本に点火した上,これを営業中の同店内に投げ付けて発火炎上させ,同店の床面,板壁,可燃性備品及び天井等に燃え移らせて放火し,よって,Hが所有し,同店店員I(当時37歳)及び同J(当時21歳)ほか7名が現にいる木造2階建建物の1階部分(床面積152.95平方メートル)のうち約15平方メートルを焼失させ,もって,現に人がいる建造物を焼損し,かつ,火炎びんを使用して人の生命,身体及び財産に危険を生じさせるとともに,上記Jに対し加療約9日間を要する顔面・右手2度熱傷の傷害を負わせた,第2同日午前5時15分ころ,同区fg丁目h番i号Kビル2階及び3階に所在するテレホンクラブ「EL店(管理者有限会社G)において,同店に火炎び」んを用いて放火しようと決意するとともに,同店内にいる店員及び客が死亡す- 2 -,,,るかもしれないことを認識しながらあえて清酒一升びんにガソリンを入れその口にタオル様の布を取り付けて点火装置を施した火炎びん2本に点火した上,これを営業中の同店内及びその入口付近に投げ付けて発火炎上させ,同店の床面,階段,板壁,可燃性備品及び天井等に燃え移らせて放火し,よって,有限会社M(代表取締役N)が所有 火炎びん2本に点火した上,これを営業中の同店内及びその入口付近に投げ付けて発火炎上させ,同店の床面,階段,板壁,可燃性備品及び天井等に燃え移らせて放火し,よって,有限会社M(代表取締役N)が所有し,同店店長O(当時27歳,同店店員)P(当時31歳,同店客Q(当時31歳,同R(当時30歳,同S(当時)))23歳,同T(当時29歳)及び同U(当時22歳)が現にいる鉄骨造陸屋)根地下1階付3階建建物(延床面積182.2平方メートル)の2階及び3階部分(面積合計約102平方メートル)を焼失させ,もって,現に人がいる建造物を焼損し,かつ,火炎びんを使用して人の生命,身体及び財産に危険を生じさせるとともに,そのころ,上記Q,R,S及びTを一酸化炭素中毒により死亡させ,上記Uに対し加療約40日間を要する顔,両上肢等熱傷(2度ないし3度)の傷害を,上記Pに対し加療約7日間を要する右手掌熱傷(2度)の傷害を,上記Oに対し加療約3日間を要する右示指挫創等の傷害をそれぞれ負わせたものである。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明)第1弁護人は,判示各事実について,(1)被告人は,いずれの犯行でも火炎びん,,を投げ付けることを認識していなかったので現住建造物等放火の故意はなくこのような認識に加え,適切な消火や避難がなされると考えていたことから,- 3 -店内にいた者に対する殺意もなかった上,(2)被告人と共犯者らとの間の共謀も業務妨害にとどまり現住建造物等放火や殺人の共謀は成立しておらず(3),,仮に,判示第1の事実につき現住建造物等放火の罪に問われるとしても,建物の焼損には至っていないのであるからその未遂罪が成立するにとどまり(4),,判示第2の事実につき現住建造物等放火並びに殺人及び殺人未遂の罪に問われるとし 物等放火の罪に問われるとしても,建物の焼損には至っていないのであるからその未遂罪が成立するにとどまり(4),,判示第2の事実につき現住建造物等放火並びに殺人及び殺人未遂の罪に問われるとしても,店員が火炎びんを投げ返したために破裂炎上したという事情が介在しているのであるから,火炎びんを投げ付ける行為と,放火及び殺人等の各結果との間に因果関係はなく,いずれも未遂罪が成立するにとどまる旨主張するが,当裁判所は,判示のとおりの事実を認定したので,以下,補足して説明する。 第2前提事実関係証拠により,比較的容易に認められる事実は次のとおりである。 被告人と共犯者らとの関係等被告人は,平成7年ころからCと友人としてつきあうようになり,被告人の両親と共に食事をしたり,被告人の妹がCの会社で勤務するという関係にあった。 また,被告人は,平成11年の前刑出所後,Cの紹介でAと知り合い,判示各犯行の当日に,Aが連れてきた同人の知人であるBと知り合った。 C,A及びBは,判示各事実などによりいずれも無期懲役の判決を受け,Cについては控訴審係属中であり,A及びBについてはいずれも判決が確定して服役中である。 営業妨害事件について- 4 -(1)有限会社Gは,女性からの電話を店内に待機した男性客に取り次ぐいわゆるテレホンクラブを経営しており,平成10年ころから,神戸市内において,EL店やEV店,EF店(なお,以上の3店舗をまとめて「E」ということがある)を次々と開業した。 。 これに対し,同じく神戸市内においてテレホンクラブ「W」を経営していたDは,神戸市内にEが進出してきたためにWの売上げが大幅に減少したと強い不満を抱いていたところ,平成11年12月11日,知り合いのCに対し,1000万円の報酬で,Eの店舗内に汚物等をまいて1か月程度 Dは,神戸市内にEが進出してきたためにWの売上げが大幅に減少したと強い不満を抱いていたところ,平成11年12月11日,知り合いのCに対し,1000万円の報酬で,Eの店舗内に汚物等をまいて1か月程度営業を中断させることを依頼し,Cもこれを承諾した。 (2)被告人は,同月25日,Cから,店に人糞をまくだけで400万円の報,,酬が得られると誘われてその実行を承諾し平成12年1月中旬か下旬ころCの指示により知人と共に車でF店,V店及びL店の前を通り,店の外から様子をうかがった。 その後,被告人がなかなかCの依頼を実行しなかったことから,Aが加わってF店とV店に人糞をまくこととなり,被告人とAは,被告人の知人2名と共に,同年2月10日午前3時40分から同日午前3時50分ころ,F店及びV店の各店内において,それぞれ消火器を噴射したりペンキを混ぜた人糞をまくという事件(以下「営業妨害事件」という)を実行し,この際に。 被告人もV店に入って消火器を噴射した。 しかし,営業妨害事件後もF店及びV店が1日も店を閉めずに営業を続けていたことから,これを知ったDは,営業妨害事件の数日後,Cに対し,その報酬として同年1月ころにCへ支払った400万円の返還を求めた。 - 5 -これに対し,Cは,Eが消臭剤を大量に使い早期に営業を再開してしまったなどとして残りの報酬の支払いを求めたものの,Dからなおも返金を求められたため,後には引けないなどとして,再度,Eの店舗に対する営業妨害を行うこととした。 本件の計画状況と被告人が関与するに至った経緯(1)本件の計画状況Cは,同年2月25日,同行した者に客を装ってL店に入らせ,店内の様子を下見させた上で,翌26日,Dと共にEの営業を妨害する具体的な方法について話し合った。この際,Cに同行してL店に入った者が,店 Cは,同年2月25日,同行した者に客を装ってL店に入らせ,店内の様子を下見させた上で,翌26日,Dと共にEの営業を妨害する具体的な方法について話し合った。この際,Cに同行してL店に入った者が,店内の配線を切断してはどうかと提案したが,これにより確実に営業を中断させられるかどうかは分からないとしてDの賛同を得られず,L店に設置されていると思われる,女性からの電話を店内で待機する男性客に接続する電話交換機を,。 ,,壊すという提案に対してもDはあいまいな態度をとったこのためCがトラックで店舗に突入する方法や店の看板にけん銃を撃ち込む方法などを提案し,最終的には,L店のフロント付近に火炎びんを落として,フロントの近くにある電話交換機を壊すというCの提案をDが了承した(なお,Cは,この点について,当公判廷において,本件犯行前に火炎びんを使用するとは聞いていない旨供述するが,CとDとの間の共謀状況を上記のとおり説明するXの検察官に対する供述(甲29)は,報酬を確実に得るために営業妨害の実行方法につきDの了解を取り付けようとするCと,責任回避の態度に終始するDとの間のやりとりを具体的かつ詳細に述べており,その内容に不自然不合理なところはなく信用できる一方,Cの上記供述は,Dの上記供述だ- 6 -けでなく,本件各犯行前にCから火炎びんを使用する旨聞いたという被告人の供述とも矛盾しており,自己の刑責を軽減させるため虚偽の供述をする動機もあることなどから信用性は乏しい。)。 (2)被告人が関与するに至った経緯被告人は,営業妨害事件の後,わざわざ神戸まで出向いてみっともない事件を起こすのは嫌であるとして,再度Eの営業妨害を実行してほしいというCの依頼を断っていたが,CのみならずAからも再三にわたり再度営業妨害を実行してほしいと頼まれ わざ神戸まで出向いてみっともない事件を起こすのは嫌であるとして,再度Eの営業妨害を実行してほしいというCの依頼を断っていたが,CのみならずAからも再三にわたり再度営業妨害を実行してほしいと頼まれていたところ,同月27日か28日ころ,Aからの電話で,次は火炎びんを使うが,脅すだけである,被告人は運転をしてくれればよいと言われた。 そこで,被告人は,その点を確かめようとCに電話をかけると,同人からも,脅すだけである,被告人は運転だけをすればよい,他には頼めないなどと言われたため,一度引き受けた依頼を今さら断ることはできない,妹がCの会社で勤務するなど世話になっているという思いから,それならばやります,と言って実行を了解した。 犯行準備状況(1)Bは,Aから,30万円の報酬で火炎びんを作って店に投げ込む際の運転手役に誘われてこれを承諾し,同年3月1日未明に,Aと共に,火炎びん2本の投てき実験を行ったり,火炎びん6本を作った上で,F店,V店及びL店の様子を確認して実行の機会をうかがったが,F店の店先で従業員が警,。 戒していたことから実行を断念し用意した火炎びんを全て海中に投棄したBは,京都市内でAと別れる際,同人から「今晩もう1回行く」と言わ。 - 7 -れてこれを承諾し,同日午後11時ころにAと落ち合い,神戸市内へ向かった。 (2)被告人は,Cに対して了解した後も,実行をためらう気持ちから,いつ神戸に来るのかと尋ねるAの電話やCの電話に出たり出なかったりしていたところ,Aからの電話で具体的な返答を求められたため,同日に神戸へ行くことを約束し,同日夜には神戸市内のホテルに偽名を使って宿泊した。 同月2日午前2時ころにA及びBと合流した被告人は,Bの運転する自動車(以下「本件車両」という)に乗車して,神戸市内を回り,途中,Aと とを約束し,同日夜には神戸市内のホテルに偽名を使って宿泊した。 同月2日午前2時ころにA及びBと合流した被告人は,Bの運転する自動車(以下「本件車両」という)に乗車して,神戸市内を回り,途中,Aと。 Bが駐車中の自動車からガソリンを抜いてポリタンクに入れる際や,酒屋の店先から火炎びんに用いるための一升びん五,六本くらいをケースごと盗んだ際には,それらの見張りをしていた。 F店近くの駐車場に移動した被告人らは,被告人が見張りをする中,AとBが,駐車した自動車の後方で,ガソリンを入れた一升びんの口にタオルの切れ端を詰めるなどして,五,六本くらいの火炎びんを制作し,一升びんのケースに入れて本件車両の2列目の座席の運転席側に置いた。その後,Bに替わって被告人が本件車両の運転席に,Aが助手席に,Bが2列目の座席に座った状態で出発した。 判示第1の犯行について(1)F店の状況F店は,鉄道(JR神戸線)の高架下にある木造2階建建物の1階部分にあり,その出入口は店舗南西角付近に位置する道路に面した外開きガラス扉の1か所のみであり,同じく道路に面した店舗西側のシャワー室並びにトイ- 8 -レ及び洗面所にはそれぞれガラス窓が設けられているが,いずれも外側に格子状のアルミ枠が設置されている。 同店の出入口付近には受付カウンターや靴箱,ビデオテープの陳列棚,自動販売機があり,その奥は通路を隔てるなどして合計25室の客室に仕切られている。 終日営業をしていたF店は,本件当時も,道路に面した西側壁面に設置さ,,,れた看板の電飾やネオンサインを点灯しており店内には店員2名のほか客7名の合計9名がいた。 (2)犯行状況被告人は,Aの指示により運転していた本件車両をF店の手前に停車し,目出し帽をかぶったBが火炎びん1本を持って降車した後,F店から約1 内には店員2名のほか客7名の合計9名がいた。 (2)犯行状況被告人は,Aの指示により運転していた本件車両をF店の手前に停車し,目出し帽をかぶったBが火炎びん1本を持って降車した後,F店から約15メートル先に移動して待機した。Bは,点火した火炎びんを同店の出入口付近から店内へ向けて投げ付けた。 この際,F店の受付カウンター内で事務作業をしていた店員は,パリーンという音を聞いた直後に,カウンターの前で炎が天井まで届くような大きな火柱が上がり,カウンター前付近が火の海のような状態となったため,店内に声をかけながら店外へ出た後,店内にあった水槽の水やバケツを利用して消火活動をした。 本件車両にBが戻った後,被告人らはV店へ向かったが,同店付近に停車中の車に人がいたため,同店への襲撃を断念し,Aの指示で,L店へ向かった。 (3)店内の焼損状況- 9 -本件犯行後,F店の店内は,受付カウンター付近の床面に貼られたPタイル表面が黒く焼け焦げてひび割れていたほか,付近の壁に貼られたビニールクロスが完全に焼失し,石膏ボードも黒色に焦げており,その付近の天井もビニールクロスが焼け落ちていた。 判示第2の犯行について(1)L店の状況L店は,鉄骨造陸屋根地下1階付3階建建物の2階及び3階部分にあり,同建物の西側に設置された幅80センチメートルの階段を上がった先にある建物2階のL店の出入口にはガラス扉の自動ドアが設置されているが,営業中は電源を切った状態で常時開けられていた。この出入口から店内へ入り右側の階段を上ると3階部分へ通じており,2階には,出入口の正面に位置する受付カウンターのほか,南北の通路に沿って合計9室の客室とトイレがある。また,3階には,通路に沿って合計10室の客室があるほか,シャワー室や物置がある。L店の出入口は2階にある 入口の正面に位置する受付カウンターのほか,南北の通路に沿って合計9室の客室とトイレがある。また,3階には,通路に沿って合計10室の客室があるほか,シャワー室や物置がある。L店の出入口は2階にあるのみで,2階には窓の設備が全くなく,3階もシャワー室に窓が一つあるだけであった。 終日営業をしているL店は,本件当時も,建物外壁に設置された看板の電飾やネオンサインを点灯しており,店内には,店長及び店員各1名のほか,客5名の合計7名がいた。 (2)犯行状況被告人は,Aの指示により運転していた本件車両をL店付近に停車し,目出し帽をかぶったB及びAがそれぞれ火炎びんを持って降車した後も,車内で待機していた。Bは,階段を上って2階にある同店出入口へ向かい,点火- 10 -した火炎びんを出入口から店内へ向けて投げ込んだが,店内の床に転がった火炎びんは破裂しなかった。 ,,その後1階から2階へ上がる階段で火炎びん2本が破裂して発火炎上し炎が出入口から店内へ入ってきそうな勢いであったことから,2階にいた店長らは照明が消えた店内の階段を手探りで上がって客のいる3階へ向かい,既に煙が充満していた3階の客室を回って避難を呼びかけた。そのうち,3階にも煙が立ちこめ,息をするのが苦しいほどに熱を帯びてきたため,出入口から脱出しようとしたが,階段から吹き上がってくる煙がさらに熱を帯びていたため,3階のシャワー室にある窓から脱出することとし,店長及び店員と客室から出てきた1名の客がその窓から隣の建物の屋根へ飛び降りて脱出した。 この結果,店内に残された4名の客はいずれも3階の通路及び客室で一酸化炭素中毒により死亡し,店内から脱出した店長,店員及び客の3名も,それぞれ加療約3日ないし40日を要する熱傷等の傷害を負った。 犯行後の状況犯行後,Bと下半身に火を も3階の通路及び客室で一酸化炭素中毒により死亡し,店内から脱出した店長,店員及び客の3名も,それぞれ加療約3日ないし40日を要する熱傷等の傷害を負った。 犯行後の状況犯行後,Bと下半身に火を付けたAが「わあっ」と叫びながら,本件車両に乗り込み,同人の指示で被告人は本件車両を急発進させ,すぐに停車して下半身が火に包まれた状態であったAの身体を消火した。その間,被告人はAに対して,なぜ火に包まれたのか尋ねることもなかった。その後も,被告人が本件車両を運転していたものの,途中から,信号表示を守る被告人の運転に不満を持ったAの指示により,被告人に代わってBが本件車両を運転した。 その後,被告人は,AやBと共に,残った火炎びんを海に投棄したり,Aの- 11 -火傷を冷やすための氷を購入した後,同日早朝にA及びBと別れ,タクシーで宿泊していたホテルへ戻った。タクシーの車中で,運転手から,本件各犯行で死者が出たことを聞いた被告人は,ホテルに着いた後,Cとの電話で大変なことになったと言い,その後にCと会った際にも,Cに対し,本件に巻き込んだ責任をどのようにとるのかと尋ねるなどした。 第3本件各犯行における火炎びんの使用方法に関する被告人の認識について Bの公判供述について(1)Bは,当公判廷において,犯行直前の打合せの状況等について,次のとおり供述する。すなわち,「本件犯行当日,被告人と合流後,私たち三人は,私の運転で,三宮から東へ向かい,ガソリンやナンバープレートを盗んでナンバープレートを付け替えたり,酒屋から火炎びん用の一升びん7本をケースごと盗んだりし,それを自動車の3列シートの2列目に積み込んだ。それから,自分が運転し,Aが助手席に,被告人が上記ケースの横に座っていた。その後,F店付近の駐車場で,被告人が見張りをする中,私とA ごと盗んだりし,それを自動車の3列シートの2列目に積み込んだ。それから,自分が運転し,Aが助手席に,被告人が上記ケースの横に座っていた。その後,F店付近の駐車場で,被告人が見張りをする中,私とAが,火炎びんを作った。このときの被告人の役割は事前に決まっていなかったが,私が一番若くて前日に火炎びんを作っていたこと,Aが補佐してくれたことなどから,被告人は見張り役となった。 ,,,,私とAは服を着替えた後三人で本件犯行の打合せをするため同所で互いに手を伸ばしたら触れるくらいの距離をとって集まった。しかし,誰も,,,何も言わなかったので私が口火を切って紙片に簡単な現場見取図を書き店員の様子を伺う役,火炎びんを持って一番最初に店に走って店内に放り投- 12 -げる役,車で待機して逃げられるようにする役に分担してはどうかと提案すると,Aから「それでいこか」と言われた。このとき,被告人は何も言わ。 なかったので,暗黙の了解をしたと思った。役割分担を決めた後,一服して下見をすることになり,Aが本件車両の助手席に,被告人が運転席にそれぞれ座っていたので,私が成り行きで一番手にならないといけないと思って後部座席に座り,実行役となった。そして,被告人の運転で,F店,V店,L,,。 店の順に下見をし各店舗が営業中であることを確認しF店付近に戻ったすると,車内で,Aに「体が悪うて走られへん」と言われたので,私は。 「僕1人で行きますわ」と言い,私1人が火炎びんを持って飛び出し,本。 件車両が先に走り出して待機するのを確認した後,同火炎びんをF店に押し込んで投げ込み,本件車両に逃げ帰った。 同車内で,私は,Aから「どうやったか」と聞かれたので「大丈夫で。 ,す。ばっちり割れました」と答えた。このとき,被告人は何も言っていな。 か をF店に押し込んで投げ込み,本件車両に逃げ帰った。 同車内で,私は,Aから「どうやったか」と聞かれたので「大丈夫で。 ,す。ばっちり割れました」と答えた。このとき,被告人は何も言っていな。 かった。 L店へ移動後,私は,火炎びん1本を持って,同店の階段を駆け上がり,同店入り口の半開きになったドアから同店内に火炎びんを両手で押し込んで投げ入れ,一目散に本件車両に逃げ帰った。しばらくして,Aが足に火をつけた状態で戻り,同人の指示で発車し,途中,車から降りて通行人らとともにAの足の火を消した。この間も,被告人から何の発言もなかった。 ,,,被告人は出会ってから別れるまでほとんど黙っており被告人との間で火炎びんを店員に示すことや店の前で投げ割るといったことを話し合ったことはなかった」。 - 13 -以上のとおりである。 (2)Bの公判供述の信用性アそこで,Bの上記公判供述の信用性について検討すると,Bにとってテレクラ店への連続放火行為は極めて印象的な出来事であるところ,本件各犯行当時及びその前後におけるAや被告人とのやりとり,とりわけ,役割分担の点,被告人の様子や自ら実行犯として各店舗を襲撃した際の状況等について,自らの心情も織り交ぜながら迫真性のある具体的かつ詳細な供述をしており,その内容について不自然,不合理な点もなく,反対尋問を経ても,その内容は揺らいでいない。 また,火炎びんを投げ込んだ場所や本件各犯行当時に目出し帽等を装着していたことなどは,本件各犯行を目撃した各店舗の店員の供述や一升びんの破片がF店の入り口付近で発見された旨の検証調書の内容とも一致する。 さらに,証言当時,本件各犯行から約9年が経過しており,ある程度の記憶の減退の可能性は否定できないものの,Bは,記憶にある事柄については明言をし,記憶にないことは 旨の検証調書の内容とも一致する。 さらに,証言当時,本件各犯行から約9年が経過しており,ある程度の記憶の減退の可能性は否定できないものの,Bは,記憶にある事柄については明言をし,記憶にないことはその旨供述するなど,その供述態度も真摯であって,自らの記憶に基づいて本件各犯行やその前後の状況につき供述しているといえる。 また,Bは,本件の共犯者であって,一般的には,自己の責任を軽減させるために,他の共犯者に不利益な供述をする危険性があると考えられるが,Bは,本件各犯行の実行方法を自らが提案し,各店舗へ自らが火炎びんを投げ込むなど,実行犯として主導的な役割を果たした旨の自己にとっ- 14 -て不利な事柄も積極的に述べていること,証言当時,既に本件各犯行を含む自らの裁判で実刑判決(無期懲役判決)を受け,その判決は確定し,服役中の身であることなどからすると,今さら自らの刑責を軽減するなどのため被告人に不利益な供述をするとは考えられない。 したがって,これらの事情を考慮すると,Bの上記公判供述には,高度の信用性が認められる。 イこれに対し,弁護人は,検察官の取調べにおいては見取図を書いたと供述していなかったにもかかわらず,当公判廷ではこの点について上記のとおり供述するに至ったBの供述は重要な部分において変遷しており,信用できないと主張する。 確かに,本件を担当した検察官であるY証人の供述によれば,Bは,捜査段階において,口頭で役割分担を決めた旨供述していたことがうかがえるものの,本件各犯行の直前に,A及び被告人との間で,火炎びんをEの店内へ投げ付けることを前提としてその役割分担を決めたという点で一貫しており,この際に見取図を書いたか否かという点が食い違うことをもってその供述が矛盾しているとまではいえず,この点はBの上記公判供述の信用性を揺 ることを前提としてその役割分担を決めたという点で一貫しており,この際に見取図を書いたか否かという点が食い違うことをもってその供述が矛盾しているとまではいえず,この点はBの上記公判供述の信用性を揺るがすものではない。 被告人の捜査段階及び公判廷における各供述の信用性について(1)被告人は,平成20年7月28日,判示第2のうち現住建造物等放火,火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反の事実について逮捕され,その翌日29日の検察官に対する弁解録取書で「火炎びんを店内に投げ込むこと,,。」,は分かっていましたが殺意はありませんでしたとの趣旨のことを述べ- 15 -次の日の裁判所での勾留質問(被疑事実の要旨は,判示第2の事実とほぼ同旨である。)でも,言い分は検察庁で述べたとおりですと答え,その後の警察での取調べでは「火炎びんを使えば大惨事になるかもしれないと思って,いたため,最終的にはCから脅すだけだということだったので了解したものの,Cに加担することを決意するまでは大変悩んだ」と店内に火炎びんを。 投げ込むことを認める供述をしていたところ,同年8月14日の検察官による取調べにおいて「初めは火炎びんで脅すだけで,店内に投げ込むとは思,っていなかった。F店に投げ込んだ後,その時の音や同店から煙が出ているのを見て,火炎びんを投げ込んだことが分かり,その後,L店では火炎びんを投げ込むことは分かっていた」旨供述を変え,公判廷では「F店に火。 ,炎びんを投げ込んだ時,音を聞いておらず,煙も見ていないのであって,BやAが両店に火炎びんを投げ込むとは思ってもいなかった。火炎びんを店員に見せるとか,道路に投げ付けたりして脅すだけだと思っていた。しかし,火炎びんの使い方については,BやAには一切尋ねなかった。取調べでは,自分の記憶にな げ込むとは思ってもいなかった。火炎びんを店員に見せるとか,道路に投げ付けたりして脅すだけだと思っていた。しかし,火炎びんの使い方については,BやAには一切尋ねなかった。取調べでは,自分の記憶にないところは,Bの調書に合わせて話をしていた」と更に供。 述を変遷させるに至っているのである。 (2)そこで,まず,被告人の公判廷における供述について見ると,ア上記第2の2(2)のとおり,下見等の準備をした上でAらと共に営業妨害事件を実行した被告人が,Cから「脅すだけなんで心配せんでええから」と言わ。 れて本件各犯行に加担するようになったというが,営業妨害事件よりも大き,,なダメージを与えるために火炎びんを使用するというのであるからCから火炎びんで脅すだけということを聞いただけで,それ以上に脅し方の具体的- 16 -方法を何ら聞かないまま,その言葉を信用して本件各犯行に至ったというのは,不自然極まりないこと,イしかも,被告人は,本件各犯行当日も,AやBらに対し,火炎びんの使い方につき何も尋ねることもなく,また,全くの打合せもしないまま,本件各犯行に及んだというのも,火炎びんの使い方を心配していたという被告人としては,余りにも不自然,不合理な行動であること,ウL店に放火した後,Aは下半身に火を付けて叫びながら本件車両に乗り込んできたというのであるから,もし,被告人において,火炎びんを店内に投げ込むことを知らなかったのであれば,驚いてAに服に火が付いた事情を尋ねるのが普通であると思われるのに,そのようなことを全くしていないというのは,Aらが火炎びんを店内に投げ込んで火を放つということを知っていたことをうかがわせる事柄であること,エ被告人は,公判廷において,裁判官から「あなたは,火炎びんで脅すと言っていましたが,投,げ付ける方法も 炎びんを店内に投げ込んで火を放つということを知っていたことをうかがわせる事柄であること,エ被告人は,公判廷において,裁判官から「あなたは,火炎びんで脅すと言っていましたが,投,げ付ける方法もあるということは知っていたのですか」と聞かれて「最。 ,悪それはあるかもしれんけど,火事にはいかんと思っていました」旨,い。 ったんは答えたが,その後,それを否定しており,この供述の変遷は不自然で,自己防衛的になっていることがうかがわれ,真実を述べようとする姿勢に欠けているのではないかと思われること,以上の諸点からすると,被告人の公判廷における供述の信用性は乏しいといわざるを得ない。 これに対し,弁護人は,被告人の上記公判供述は,犯行前には火炎びんを使用することを知らなかったというCの公判供述や,本件犯行後である平成12年夏ころに被告人をかくまった際,被告人が,火炎びんを投げて火をつけるのであれば参加していなかったと言っていたとするZの公判供述と合致- 17 -しており,信用できる旨主張する。 しかし,上記第2の3(1)のとおり,犯行前に火炎びんを使用するとは知らなかったというCの公判供述は信用できない上,火炎びんを投げ付けることを認識した上で本件各犯行に関与した被告人が,複数の者の死傷という凄惨な結果に直面して自らの関与を後悔する言動をとったり,その責任の重大性におののいて言い訳めいた言動をとることも十分考えられるのであるから,Zの供述する本件各犯行後の被告人の言動は,火炎びんを投げ付けるという認識が被告人になかったことを推測させる事情とまではいえず,Zの公判供述も,被告人の上記公判供述の信用性を裏付けるものとはいえない(上記第2の7で認定した本件各犯行後のCに対する被告人の言動についても同様のことがいえる。 。)(3)次に,被告 えず,Zの公判供述も,被告人の上記公判供述の信用性を裏付けるものとはいえない(上記第2の7で認定した本件各犯行後のCに対する被告人の言動についても同様のことがいえる。 。)(3)次に,被告人の捜査段階における供述について,被告人は,警察官及び検察官に対し,F店から約15メートル離れた路上に停車した自動車内で待機していた際に,ボーンという音を聞き,F店から黒煙が吹き出ていること,,をルームミラーで見たことからF店に火炎びんを投げ付けたことが分かりL店においても同様に火炎びんを投げ付けるということが分かったと供述しているところ(乙6,11,F店に投げ付けられた火炎びんが発火炎上し)た際の音は,店外にいる人には聞こえないと思われる程度の大きさであり,店外へ出た際の煙の状態も多少出ているか出ていないかぐらいのものであったという当時のF店の店員であったIの公判供述や,F店での犯行の際に爆発音を聞いていないというBの公判供述に加え,一升びんを用いた火炎びんの燃焼実験においても,びんが破損して発火炎上した際にはそれほど大きな- 18 -燃焼音が生じていなかったこと(弁7,8)に照らせば,弁護人の指摘のとおり,被告人の上記供述部分は,記憶の乏しかった被告人に対し,捜査官が誘導して供述させた疑いがあり,信用性は低いといえるが,他方,ア被告人は,上記のとおり,逮捕された翌日の検察官による弁解録取の際に,殺意は否認しながらも,火炎びんを店内に投げ入れるのは分かっていた旨の供述をし,翌日の勾留質問の時にも同じ弁解をしているのであって,逮捕の翌日に検察官が被告人を誘導して供述させるとは考え難いばかりか,そもそも,店内に火炎びんを投げ入れることが分かっていたか否かは,事件後約8年という年数が経過しているとしても記憶が消失するような事柄ではない 検察官が被告人を誘導して供述させるとは考え難いばかりか,そもそも,店内に火炎びんを投げ入れることが分かっていたか否かは,事件後約8年という年数が経過しているとしても記憶が消失するような事柄ではないと思われることからすると,上記の供述は当時の被告人の記憶に基づいてなされたものと認められること,イ被告人自身,公判廷で,検察官から,捜査段階でBの調書に合わせて供述していた部分はどこかと質問され「火炎びんを,作り終えた後に下見したことです」と答えているだけで,他に供述を誘導。 されたような部分があったとは述べていないこと,ウ警察官及び検察官に対し,共犯者らがナンバープレートを盗んだ覚えがない旨一貫して主張し,そのことが調書に録取されていることからすると,被告人が主張したことはそのとおり供述調書に記載されていると推察されること,以上の諸点にかんがみると,少なくとも被告人の本件各犯行直前の謀議の状況及び火炎びんを店内に投げ込むことを分かっていたことなどの供述の中核的部分は,基本的には信用できると解される。 (4)したがって,Bの上記公判供述及び信用性の認められる被告人の捜査段階の供述部分を総合すると,被告人は,Cらから火炎びんを使用すると聞い- 19 -て,大惨事になるかもしれないと思い,本件各犯行に加担することを躊躇していたものの,度重なるCの依頼に応じてこれに参加することとし,AとBがガソリンを一升びんに入れて五,六本程度の火炎びんを準備したことを分かっており,本件各犯行の直前には,A及びBとの間で,Eの店内へ向けて火炎びんを投げ付ける役割の分担を打ち合わせているのであるから,被告人は,F店及びL店のいずれの店に対しても,BやAが,店内に向け,準備した火炎びんを投げ付けるということを認識していたものと優に認められる。 ,,, 割の分担を打ち合わせているのであるから,被告人は,F店及びL店のいずれの店に対しても,BやAが,店内に向け,準備した火炎びんを投げ付けるということを認識していたものと優に認められる。 ,,,,,ところで弁護人はア本件各犯行当時被告人がAやBとは異なり服を着替えたり目出し帽をかぶって顔を隠そうとはしていなかったこと,イ判示第2の犯行後に逃走する際,被告人が,赤信号に従って本件車両を停止させていたこと,ウ判示第1の犯行当時,F店の近くで待機している際に,被告人が本件車両のギアをパーキングに入れていたこと,といった被告人の行動からは,犯行当時,被告人が,放火等の重大事件を起こしたものと認識していたとはうかがわれないことなどを指摘し,これらの事情は,いずれも被告人が火炎びんを投げ付けることを認識していなかったと推測させる事情である旨主張する。 しかし,アの点については,本件各犯行当時,運転手の役割を果たしていた被告人は,犯行時に店員や客らにその人相を目撃される危険があったAやBと異なり,犯行時に顔を見られる可能性は低い一方,人相を隠すような風体で本件車両を運転していればかえって怪しまれる危険が高かったと考えられるのであり,同様に,イの点は,赤信号を無視して逃走すれば,かえって警察官の目にとまり,捕まる危険が高まると考えられるのであるから,これ- 20 -らの点は,いずれも火炎びんを投げ付けるという重大事件に関与していた者。 ,,,の行動として不自然なものではないさらにウの点についても被告人は判示第1の犯行の際に,F店付近で待機するにあたり,本件車両のギアをパーキングに入れたものの,エンジンはかけたままであったのであるから,犯行後は速やかに本件車両を発進させて逃走することができる状態であったといえるのであり 店付近で待機するにあたり,本件車両のギアをパーキングに入れたものの,エンジンはかけたままであったのであるから,犯行後は速やかに本件車両を発進させて逃走することができる状態であったといえるのであり,この点も,被告人が,火炎びんを投げ付けるという重大事件に関与しているとは認識していなかったと推測させる事情であるとはいえない。 したがって,弁護人の主張は採用できない。 第4現住建造物等放火の故意及び殺意の有無について 上記第3で認定したとおり,被告人は,火炎びんをEの店内へ投げ付けることを認識した上で本件各犯行を実行しているところ,上記第2の4(2)のとおり,AとBがガソリンを充填した火炎びんを準備している状況を認識していたのであるから,このような火炎びんをEの店内へ投げ付けて破裂させれば,ガソリンが発火炎上して建物内で火災が発生することを容易に理解できたのであり,店員や客のいる営業中の店内で,投げ付けられた火炎びんが発火炎上して火災が発生することを認識,認容していたと認められる。 また,上記のとおり,火炎びんを投げ付けることにより営業中の店内で火災が発生することを認識していた被告人は,火災に伴う火炎や熱のほか,これにより生ずる煙や有毒ガスにより,店内にいる店員や客の生命が脅かされることも認識していたと推察される上,上記第2の2(2)のとおり,営業妨害事件の際に同じEの店舗であるV店に立ち入り,店内の構造を認識していたことから- 21 -すると,店の出入口付近に火炎びんを投げ付ければ,同所付近で火炎びんが発火炎上することにより,出入口からの避難脱出が著しく困難となることも容易に認識できたのであるから,本件各犯行により,店内にいる者らに死の危険が発生する蓋然性が高いことをも認識,認容していたものと推認できる。 したがって,被告人には,本 難脱出が著しく困難となることも容易に認識できたのであるから,本件各犯行により,店内にいる者らに死の危険が発生する蓋然性が高いことをも認識,認容していたものと推認できる。 したがって,被告人には,本件各犯行につき,いずれも現住建造物等放火の確定的な故意を有するとともに,F店及びL店の各店内にいた店員らに対する未必的な殺意を有していたと優に認められる。 これに対し,弁護人は,通常,店舗内には消火設備や避難口等が整備されているはずであり,また,F店及びL店はいずれも繁華街にあることから,速やかな消火や避難が期待できたはずであるから,このような認識のもとで本件各犯行に関与した被告人に,店内にいた者らに対する殺意は認められない旨主張する。 しかしながら,一般に,人がいる建物内での火災において,法令上定められた消火設備や避難設備を備えており,かつ適切な避難誘導や救助活動が行われたとしても,建物内にいる者が死亡する可能性が低いとはいえない上,本件各犯行による火災は,いずれも店の出入口付近で火炎びんが炎上するという想定し難いものであり,店員らによる的確な消火や避難を期待できる状況ではないことからすると,店内の消火設備が作動したり的確な消火や避難誘導が行われることより店内にいた者らが死亡する可能性はないとの認識を被告人が有していなかったと認められるので,この点に関する弁護人の主張は採用できない。 第5被告人と共犯者との間の共謀について上記第2の3(1)で認定したとおり,DとCは,営業中であるEの店内に火- 22 -炎びんを投げ付けるという犯行を計画していたところ,テレホンクラブを経営していたDや,事前に店内の様子を下見させていたCは,いずれも営業中であるEの店内に火炎びんを投げ付ければ,店のある建物や店内の物品に対する危険はもとより,店内にいる たところ,テレホンクラブを経営していたDや,事前に店内の様子を下見させていたCは,いずれも営業中であるEの店内に火炎びんを投げ付ければ,店のある建物や店内の物品に対する危険はもとより,店内にいる店員等の生命身体に対する危険をも生じさせ,場合によってはその者らを死亡させるかもしれないことを認識していたと認められ,,,るから両名の間においては現に人がいるEの店舗に対する放火に止まらず店内にいる人の生命身体や財産に対する危険を発生させ,場合によってはその者らを死亡させる危険のある本件各犯行についても共謀が成立したと認められる。 同様に,A及びBについても,営業していることを確認したF店及びL店に火炎びんを投げ付ければ,人のいる店に対する放火のみならず,店内にいる人の生命身体や財産に対する危険を発生させ,場合によってはその者らを死亡させる危険があることを認識した上で本件各犯行を実行したものと認められるのであり,Cの指示を受けたAや,上記第2の4(1)のとおりAから誘われて本件各犯行に関与したBとの間はもとより,上記のとおりCとの間で本件各犯行を共謀したDとの間においても,本件各犯行の共謀が順次成立したものと認められる。 そして,上記第3及び第4で認定したとおり,被告人は,F店やL店に火炎びんを投げ付けることはもとより,この結果,店員らのいる店内で火災を発生させるとともに,その者らに死の危険が発生することをも認識し,認容した上で本件各犯行を実行したのであるから,上記第2の3(2)のとおり本件各犯行への関与を依頼したCや,本件各犯行をともに実行したA及びBはもとより,- 23 -Cとの間で本件各犯行を共謀したDとの間においても,単にEの営業を妨害するに止まらず,火炎びんの使用により店舗を焼損し,建物や物品等の財産及び店内にいる者の生命 たA及びBはもとより,- 23 -Cとの間で本件各犯行を共謀したDとの間においても,単にEの営業を妨害するに止まらず,火炎びんの使用により店舗を焼損し,建物や物品等の財産及び店内にいる者の生命身体に対する危険を生じさせ,その者らを死亡させる可能性のある本件各犯行についての共謀が順次成立したものと認められる。 以上によれば,被告人と,D,C,A及びBとの間において,本件各犯行の共謀が順次成立したと認められる。 第6判示第1の現住建造物等放火罪の既遂結果について上記第2の5(3)で認定したF店店内の焼損状況に照らすと,同店へ投げ込まれた火炎びんが破裂し,流出したガソリンに引火して生じた火勢は,放火の,,媒介物であるガソリンを離れて目的物である同店の床面や壁面等に燃え移り独立して燃焼を継続しうる状態である焼損に達したものと認められる。 したがって,F店に対する放火行為は既遂に達したものと認定できる。 第7L店における火炎びんの投げ付け行為と被害結果との因果関係についてその内容に不自然,不合理な点はなく信用できると認められるPの公判供述によれば,判示第2の犯行当時,L店で店員として勤務し,同店2階の受付カウンター付近にいたPは,L店の出入口から店内に向けてBが投げ付けた火炎びんをつかんで出入口付近から階段の下に向けて放り投げ,これが階段に落下したことで火炎びんが破裂して発火炎上したことが認められる。 以上の事実を前提に,L店に火炎びんを投げ付けたBの行為と,同店内における火災及び死傷者の発生との間の因果関係について検討すると,目の前の床に火のついた液体入りの一升びんが転がっているのを見て,これが店内で発火炎上することを避けるためとっさに店外へ投げ出したものと理解できるPの行- 24 -動は,このような状況に直面した者の行動として何ら異 いた液体入りの一升びんが転がっているのを見て,これが店内で発火炎上することを避けるためとっさに店外へ投げ出したものと理解できるPの行- 24 -動は,このような状況に直面した者の行動として何ら異常とはいえず,これにより階段に落下した当該火炎びんが破裂して発火炎上した点についても,火炎びんを店内に向けて投げ付けるというBの行為がもつ危険性が顕在化したものといえるから,L店へ火炎びんを投げ付けるという被告人らの犯行と,L店における火災及び死傷の結果との間に因果関係が存することは明らかである。 (累犯前科)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)本件は,被告人が,テレホンクラブの経営者の商売敵である同種の店舗に対して営業妨害を企てた同経営者らと共謀の上,営業中のテレホンクラブ2店舗にそれぞれ火炎びんを投げ込んで放火し,一方の店にいた店員1名に傷害を負わせるとともに,もう一方の店にいた客4名を死亡させ,店員2名及び客1名に傷害を負わせたという殺人,殺人未遂,現住建造物等放火,火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反の事案である。 本件各犯行は,テレホンクラブを経営するDの依頼により,同人の商売敵であるテレホンクラブの営業を妨害する目的で行われたものであって,その動機は反社会的要素が強く,悪質であって酌量の余地は全くない。 また,本件各犯行は,多額の報酬を得る約束のもと,Dから営業妨害の依頼を受けたCが,実行犯となるAや被告人に対し,店内に火炎びんを投げ付けることを指示し,変装用の服や火炎びんの製作に必要な物品を準備したり,事前に店の様子を- 25 -下見した上で実行の機会をうかがい,火炎びんを投げ付ける者やその犯行及び逃走を手助けする者,車を運転する者などの役割分担を決め,犯行発覚を防ぐためナンバープレートを付け替えた車で店の付近に乗り付 -下見した上で実行の機会をうかがい,火炎びんを投げ付ける者やその犯行及び逃走を手助けする者,車を運転する者などの役割分担を決め,犯行発覚を防ぐためナンバープレートを付け替えた車で店の付近に乗り付けて敢行されたものであって,計画的かつ組織的に実行された犯罪である。 さらに,被告人らは,人があまり活動していない早朝の時間帯を狙い,出入口や通路が狭く,防火や避難の設備も万全であるとは思われない各店舗に対し,一升びんにガソリンを充填した極めて火力の強い火炎びんを投げ付けて放火するという犯行を連続して行っているのであって,これらはいずれも店内にいる見ず知らずの店員や客の生命に対する危険や,店の周囲に対する延焼の危険を全く顧みない無差別的かつ凶悪な犯行といえる。 客としてL店を訪れていた4名の尊い人命を奪うとともに,合計4名の者に熱傷,,等の傷害を負わせ2つの店舗を焼損させた本件各犯行の結果は極めて重大であり照明が消え,煙が充満した店内で,自己の置かれた状況を理解できないまま,なすすべもなくその生命を奪われた被害者らが感じたであろう恐怖や絶望は筆舌に尽くし難く,仮眠などの目的でたまたま客として訪れたL店において判示第2の犯行に遭遇し,最愛の家族に別れを告げるいとますらないままに,23歳から31歳といずれも人生の道半ばでその生命を断たれた被害者らの無念さも察するに余りある。 また,あまりにも不条理な被告人らの犯行により,大切な夫や息子,兄弟を突然奪われた遺族らの悲嘆や喪失感も想像に難くなく,遺族らの処罰感情が峻烈であるのも当然である。 さらに,被告人の個別事情についてみると,被告人は,上記累犯前科の出所後間もなく,400万円の報酬欲しさにCから依頼されたEに対する営業妨害を引き受- 26 -け,複数の店舗内で人糞をまいたり消火器を噴射させたとこ 別事情についてみると,被告人は,上記累犯前科の出所後間もなく,400万円の報酬欲しさにCから依頼されたEに対する営業妨害を引き受- 26 -け,複数の店舗内で人糞をまいたり消火器を噴射させたところ,期待したほどにはEの営業を中断できなかったことから,今度は火炎びんを使用して営業妨害をすることを依頼され,断り切れずに本件各犯行に及んだのであって,依頼されたという理由だけで何らの利害関係も恨みもない店に危害を加えた本件各犯行の動機に同情すべき事情は見当たらない。さらに,本件各犯行後,その被害結果を知りながら,Cから多額の逃走資金を得て,約8年もの間逃亡生活を送っていたのであり,真相解明に協力することなくひたすら責任逃れに終始していた犯行後の情状も悪い。 これらの事情に照らすと,被告人の刑責は極めて重いといわざるを得ない。 しかしながら,本件では,被告人が,本件各犯行に対する客観的な関与状況については概ね素直に事実を供述しており,当公判廷においても被害者らに対する謝罪の意を表明するなど,悲惨な結果をもたらした本件各犯行に関与したことを反省していること,被告人は,CやAからの再三にわたる説得により本件各犯行に加担したのであって,火炎びんの使用に躊躇しながらも運転手という役割に限定して本件各犯行に関与した経緯には酌量の余地がないとまではいえないこと,当初の営業妨害は被告人が主導して実行していたものの,本件各犯行についてはAが終始主導していたと認められるのであり,AやBの乗車した自動車の運転手として被告人が果たした役割は本件各犯行の実行に必要不可欠なものではあるものの,実際に火炎びんを投げ付けたAやBに比べると,その立場は従属的なものであったとも見られること,被害弁償金として500万円を準備したほか,被害者や遺族らに対して謝罪文を作成するなど,被 はあるものの,実際に火炎びんを投げ付けたAやBに比べると,その立場は従属的なものであったとも見られること,被害弁償金として500万円を準備したほか,被害者や遺族らに対して謝罪文を作成するなど,被害の弁償と慰謝に向けた被告人なりの努力をするとともに,写経をするなどして死亡した被害者らの冥福を祈っていること,被告人の内妻が情状証人として出廷し,被告人の社会復帰後の監督を誓約していることなど,被告人- 27 -に酌むべき事情もある。 以上の各事情を総合考慮し,既にその刑が確定しているAやBのほか,一審判決の宣告を受けたCとの間の刑の均衡をも併せ考えると,被告人に対し無期懲役刑をもって臨むのはやや重きに失するものの,本件各犯行,ことに4名の命を奪った判示第2の犯行の重大性にかんがみると,併合罪による加重をした有期懲役刑の上限からその刑期を減ずるのも相当でない。 したがって,被告人に対しては,本件各犯行当時における有期懲役刑の上限である主文の刑を科すことが相当であると考えた。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑・無期懲役)平成21年12月16日神戸地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官東尾龍一裁判官佐藤建裁判官村井美喜子- 28 -
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