主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人A ,同B,同C及び同Dに対し,各金27万5000円及びこれに対する平成15年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,広島市において原子爆弾に被爆した被爆者であり,その後中華民国(台湾)に移住した亡E(以下「亡E」という。)が,被控訴人が昭和49年7月22日付け衛発第402号厚生省公衆衛生局長通達(以下「402号通達」という。)に従った取扱いを継続していた間,後記原爆三法の援護措置の対象外に置かれたことにより精神的苦痛を被ったものであり,亡Eの子である控訴人らが,亡Eの被控訴人に対する損害金110万円(内訳・慰謝料100万円,弁護士費用10万円)の賠償請求権を各4分の1相続したと主張して,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害金各27万5000円及びこれに対する402号通達が廃止された日である平成15年3月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は,控訴人らの請求はいずれも理由がないとしていずれも棄却したところ,控訴人らがこれを不服として本件控訴を提起した。 2 前提事実(争いがない事実並びに挙示の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)原判決「事実及び理由」第2の2(1)ないし(5)記載のとおりであるから,これを引用する。 3 争点及び争点に対する当事者の主張(1) 次のとおり,当審における当事者の主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」第2の3記載のとおりであるから,これを引用す を引用する。 3 争点及び争点に対する当事者の主張(1) 次のとおり,当審における当事者の主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」第2の3記載のとおりであるから,これを引用する。 (2) 当審における控訴人らの主張ア法制審議会における平成29年法律第44号による改正民法の審議過程では,民法724条後段の期間制限を除斥期間と解することは不合理であるとの見解を総意として審議が進められ,民法724条後段を除斥期間の定めとする誤った解釈に再び陥ることを防ぐため,現行民法724条の「同様とする。」の文言を,「時効によって消滅する。」との文言に改めるべきであるとの意見をもって法務大臣に答申した。これは,現行民法724条の規律そのものを改めたものではなく,同条後段が除斥期間の定めであるという不合理な解釈を採る余地がないよう文言を改めたものであり,現行民法724条後段が消滅時効の規定であることを前提とするものである。 改正民法附則35条1項は,改正民法の施行の際に,既に現行民法724条後段の期間が経過しているものについては,改正民法724条の適用がなく,従前の例によると定めるが,これは,そのような場合に現行民法が適用されることを示すにとどまり,現行民法724条後段を除斥期間と解した判例法理が適用されると定めるものではない。したがって,同附則を根拠に,現行民法724条後段を除斥期間の規定であると反対解釈することは許されない。 イ最高裁平成19年11月1日第一小法廷判決以前に,日本に居住地もなく,日本語を使うこともできない控訴人らが,自らの国籍国でない日本の政府を相手方として訴訟を提起し,政府が発した通達の違法性を主張して被控訴人の責任を争うことなど不可能であったから,本件において民法724条 を使うこともできない控訴人らが,自らの国籍国でない日本の政府を相手方として訴訟を提起し,政府が発した通達の違法性を主張して被控訴人の責任を争うことなど不可能であったから,本件において民法724条後段の規定を適用することは著しく正義・公平の理念に反する。 (3) 当審における被控訴人の主張 ア改正民法附則35条1項により,改正民法の施行日前に現行民法724条後段の期間が既に経過している場合については,改正民法ではなく現行民法724条後段の規定が適用され,かつ,その解釈は司法に委ねられていることは明らかである。そして,現行民法724条後段に規定する期間の解釈については,法律関係の速やかな確定のために期間の経過により画一的に権利が消滅するという除斥期間を定めたものであると解するのが確立した判例理論である。 イ控訴人らの主張は,控訴人らが提訴しなかった主観的事情を述べるものにすぎず,これらの事情をもってしては,控訴人らが除斥期間経過前に本件訴えを提起することが客観的に不可能であったとは到底認められない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人らの請求には理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり当審における当事者の主張に対する判断を加えるほかは,原判決「事実及び理由」第3の1(1)ないし(3)記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における当事者の主張について(1) 改正民法附則35条1項は,「旧法第724条後段・・・に規定する期間がこの法律の施行の際既に経過していた場合におけるその期間の制限については,なお従前の例による」と規定する。 この規定によれば,改正民法の施行日前における現行民法724条後段の期間の経過の有無及びその前提となる現行民法724条後段の解釈は,なお従前の例によるべき ては,なお従前の例による」と規定する。 この規定によれば,改正民法の施行日前における現行民法724条後段の期間の経過の有無及びその前提となる現行民法724条後段の解釈は,なお従前の例によるべきであるところ,既に述べたとおり,現行民法724条後段は,不法行為によって発生した損害賠償請求権の除斥期間を定めたものと解すべきであるから,改正民法724条の規定や,同条改正に向けた法制審議会での審議過程を踏まえ,現行民法724条後段が消滅時効を定めたものと解すべきとする控訴人らの主張は,採用することができない。 (2) 控訴人らが日本に居住地を有しないなど控訴人らの主張する一切の事情を 考慮しても,控訴人らの本件請求権の行使が客観的に不可能であったとは認められず,本件において,除斥期間である現行民法724条後段を適用することが著しく正義・公平の理念に反するというべき特段の事情は認められない。 3 以上のとおり,控訴人らの請求はいずれも理由がないとしてこれらを棄却した原判決は相当であって,本件控訴はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第3部 裁判長裁判官生野考司 裁判官佐 々 木亘 裁判官大川潤子
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