平成18(ネ)84 損害賠償等請求・共有物分割請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成19年1月25日 福岡高等裁判所 破棄自判 熊本地方裁判所 玉名支部 平成15(ワ)80
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判決文本文18,995 文字)

-1-主文 X2の控訴を棄却する。 X1及びYの各控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。 (1)Yは,X1に対し,4851円及びこれに対する平成16年5月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)X1のその余の請求及びX2の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを50分し,その2をYの負担とし,その余はXらの負担とする。 この判決は,第2項(1)に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1控訴の趣旨(Xら) 原判決主文1,4項を,次のとおり変更する。 (1)YはXらに対し,原判決別紙鑑定図記載①,⑤,④の各点を結んだ線上に,土留め工事を無償でせよ。 (2)YはX1に対し,1114万6110円及びこの内金1114万0625円に対する平成15年12月17日から,同内金5485円に対する平成3年6月25日から,いずれも支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3)YはX2に対し,278万円及びこれに対する平成15年12月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は,第1,2審とも,Yの負担とする。 (Y) 原判決中Y敗訴部分を取り消す。 Xらの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,第1,2審とも,Xらの負担とする。 -2-第2事案の概要 本件は,原判決別紙物件目録記載の土地(以下「本件通路」という。ただし,同目録中「所在」欄に「A郡」とあるのを「A市」と改める。)につき,各々4分の1の共有持分権を有するXらと,同2分の1の共有持分権を有するYとの間の紛争である。 そのうち,甲事件は,(1)Xらにおいて,Yに対し,①Yは本件通路とその西側でこれと隣接するYの所有地(A市B町大字C字D317番1,同所 2分の1の共有持分権を有するYとの間の紛争である。 そのうち,甲事件は,(1)Xらにおいて,Yに対し,①Yは本件通路とその西側でこれと隣接するYの所有地(A市B町大字C字D317番1,同所318番1。以下,一括して「西側隣地」という。)との境界線付近で西側隣地からの切り土の崩落を放置し続け,Xらをして本件通路への車両の進入を困難ならしめてその通行を妨害しており,このままさらに放置すれば,西側隣地からの切り土はさらに崩落し,これにより,Xらの上記共有持分権の円満な行使が妨害されるおそれがあるとして,Xらが主張する上記境界線に沿って,Yの費用負担で土留め工事をすることを求め,②(ア)Yは昭和41年から平成17年までの間,上記切り土の崩落を放置するなどし,Xらによる本件通路の通行を妨害し(不法行為),これによりXらに精神的苦痛を被らせたとして,慰謝料として,X1につき合計312万円及びX2につき合計78万円,(イ)Yは,本件通路につき2分の1の共有持分権を有するから,本件通路の西側半分は自己の所有する部分であると勝手に理解した上,昭和45年12月ころ本件通路上に鉄パイプ3本を打設して実際にXらの通行を妨害した上で,X1から後記のとおり念書の差し入れを得たのを奇貨として,それ以降上記内容の主張をXらに対して一方的に繰り返したりして(不法行為),Xらに精神的苦痛を被らせたとして,慰謝料として,X1につき800万円,X2につき200万円及びそれぞれに対する遅延損害金の各支払いを求め,(2)X2において,本件通路と西側隣地との境界線をめぐって測量士に測量を依頼し,その費用全額を支払ったところ,この内金2万0625円は西側隣地の所有者であるYにおいて負担すべきであるとして(民法223条,224条),Yに対し,-3-前同額及びこれに対する 士に測量を依頼し,その費用全額を支払ったところ,この内金2万0625円は西側隣地の所有者であるYにおいて負担すべきであるとして(民法223条,224条),Yに対し,-3-前同額及びこれに対する遅延損害金の支払いを求め,(3)本件通路につきX1が市町村合併前のB町(以下「B町」という。)に対して支払った下水道事業受益者負担金のうち,5485円は本来Yが負担すべきである(不当利得)として,Yに対し,前同額及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた事案である。 また,乙事件は,Xらにおいて,Yに対し,XらがYに相当額の代償金を支払うことにより,本件通路をXら各2分の1ずつの共有とすることを内容とする共有物分割を求めた事案である。 原審が,甲事件につき,上記(3)の請求の一部(2239円及びこれに対する遅延損害金)を認容したが,その余の請求をいずれも棄却し,乙事件につき,XらがYに対して支払うべき代償金額をXらの各人につき1万2696円ずつと定めてXらの請求どおり本件通路を分割する旨定めたところ,当事者双方が控訴した。 前提事実(争いのない事実又は証拠等により容易に認定できる事実)(1)本件通路及びその周辺土地の権利関係の変動ア本件通路を含む一帯の土地については,昭和52年9月13日から昭和53年3月25日までにかけて地籍調査が実施され,その成果に基づき,別紙のとおりの地籍図が作成されるとともに,所要の地積更正の登記がなされた(甲1,2,41の1~4,乙27,28。なお,以下においては,関係土地はいずれも地番のみで表示する。)。 イX1は,昭和35年1月21日ころ,いずれもMから,310番5の土地及び同地上の建物(以下「X宅」という。)とともに本件通路の共有持分権2分の1を購入し,そのころ,これらの不動産について所要の登記手 1は,昭和35年1月21日ころ,いずれもMから,310番5の土地及び同地上の建物(以下「X宅」という。)とともに本件通路の共有持分権2分の1を購入し,そのころ,これらの不動産について所要の登記手続を経た。その結果,本件通路については,X1と,上記売買と同時期にMから2分の1の共有持分権の譲渡を受け,その旨の登記手続を経たNとの共有名義となった。 -4-ウYは,Nから,昭和40年9月ころ317番1の土地を,同年12月ころ318番1の土地を,昭和41年8月ころ本件通路のうちNの共有持分権を,それぞれ買い受け,所有権移転登記等の手続をした。 エ一方,X1は,平成16年5月12日,本件通路のうちX1の持分の2分の1をX1の二男であるX2に贈与し,同年7月8日付けでその旨の持分一部移転登記手続をした。 オその結果,本件通路については,Xらが4分の1ずつ,Yが2分の1の各共有持分権を有するに至った。 また,西側隣地の北側に位置する317番3の土地は,昭和60年4月ころSが買い受け,本件通路の東側にあってこれと隣接する310番2の土地は,平成9年2月ころPが相続により取得して,それぞれ所有している。 (以上につき,争いがない,甲2,8,25,33,乙10,27,28,当審におけるX1,同Y)(2)本件通路及びその周辺の状況ア本件通路は,南北に細長く,南方向から北方向へ向かってなだらかな上り坂となっており,その南側において接する県道から北側において接するX宅に通じている。 イX1は,X宅及び本件通路の共有持分権を取得した昭和35年1月ころ以降,X宅において家族と同居していたが,同所が手狭になったので,昭和56年12月21日ころ肩書住所地に転居した。その後,X宅には,平成9年11月30日ころまでX1の長男T夫婦が居住していたが,平成1 ,X宅において家族と同居していたが,同所が手狭になったので,昭和56年12月21日ころ肩書住所地に転居した。その後,X宅には,平成9年11月30日ころまでX1の長男T夫婦が居住していたが,平成13年春ころ,X2が独りで入居し,現在に至っている。 X宅から県道へ至る通路として利用可能な土地は,本件通路以外にはない。 ウ西側隣地(317番1の土地及び318番1の土地)は,ほとんど高低-5-差がなく,遅くとも昭和55年以降は,花壇や馬の練習場等の敷地として利用されているところ,その地表面は,318番1の土地の南側でこれと接する県道路面よりも約1メートル高い。したがって,西側隣地と本件通路とはその最南端においては1メートル程度の高低差があるが,北側に進むにつれ徐々に高低差がなくなってくる関係にあり,317番1の土地と本件通路との高低差はほとんどなく,本件通路から317番1の土地との間は車両での通行も可能である。他方,本件通路と310番2の土地との間には(特に南側において),さしたる高低差はない。 エ一方,318番1の土地の西側には,その南端において県道に通じる里道(以下「本件里道」という。)がある。本件里道は徐々に上りながら北側に延びて,その東側において,318番1の土地や317番3の土地と接している。ただし,本件里道と県道が接する付近の318番1の土地とは,同土地と本件通路の関係におけると同程度の切り土状になっており,花壇や電柱が設けられている。そして,Yは,平成9年ころ以降,317番1の土地の西側に,317番3の土地を経由して本件里道へ至る出入口(以下「西側出入口」という。)を設け,もっぱらこの経路を利用して西側隣地から県道への出入りをしてきた。もっとも,その際に317番3の土地を経由することについて,同土地の所有者であるSの同意 出入口(以下「西側出入口」という。)を設け,もっぱらこの経路を利用して西側隣地から県道への出入りをしてきた。もっとも,その際に317番3の土地を経由することについて,同土地の所有者であるSの同意は得ていない。 (以上につき,甲3,12,13,18~20,24,58~65,71,72の2,乙2,12~14,19,26(以下,書証については特に断らない限り枝番を含む。),原審におけるX1,原審及び当審におけるY,弁論の全趣旨)(3)本件通路をめぐる当事者間の確執ア昭和45年12月ころ,本件通路と西側隣地との境界をめぐってX1とYとの間に言い争いが生じた挙げ句,Yは,本件通路を東西に分ける中心-6-線(以下「南北中心線」という。)上に,約5メートルの間隔で,直径約5センチメートル,地上部の高さ約150センチメートルの鉄パイプ3本を打設した。そして,Yは,X1に対し,X1において本件通路のうちY所有部分を借り受ける旨の念書を作成することを要求し,X1は,「土地310,311,312の6の1/2,右の土地を昭和55年まで借用致します。その後は地主の意思に御任せ致します」との内容の念書(以下「本件念書」という。)に署名して,Yに交付した。これを受けて,Yは上記鉄パイプを抜去した。 イ本件通路と西側隣地との境界については,現在においても当事者間に争いがある。 すなわち,Xらは後記3(1)Xら主張欄アのとおり主張するのに対して,Yは同Y主張欄アのとおり主張している。 (以上につき,争いがない,乙6,原審におけるX1,同Y,弁論の全趣旨) 争点及び争点をめぐる当事者の主張の要旨(1)土留め工事請求及び通行妨害に基づく損害賠償請求の可否(Xらの主張)ア本件通路と西側隣地との境界は,X1において本件通路及びX宅を購入する際にQ土地 点及び争点をめぐる当事者の主張の要旨(1)土留め工事請求及び通行妨害に基づく損害賠償請求の可否(Xらの主張)ア本件通路と西側隣地との境界は,X1において本件通路及びX宅を購入する際にQ土地家屋調査士から示された原判決別紙鑑定図(以下「本件鑑定図」という。)記載G1,G2の各点を結んだ直線である。仮にそうでないとしても,本件国土調査の結果を現地で復元した本件鑑定図記載④,⑤,①の各点を結んだ直線である。 イしかるに,Yは,西側隣地を取得した後である昭和41年から平成17年までの39年間,未必の故意をもって,上記境界付近において,切り土が西側隣地側から本件通路上へ崩落するのを放置し続け,また雑草が繁茂するに任せている。それどころか,Yは,この間,318番1の土地の南-7-端に設けられている石垣の上に高さ18センチメートルの赤色円柱型ブロックを継ぎ足した上,西側隣地に大量の客土を投入し,故意をもって上記崩落を助長さえした。 ウこのため,本件通路上の自動車の通行は,崩落した土砂への乗り上げや,上記雑草の車体への接触を避けるべく,310番2の土地にはみ出すことによってようやく可能となっている有様であり,本件通路における円滑な通行が妨害されている状態にある。このように通行を妨害されている本件通路の範囲は,控え目にXら主張線を前提としても,本件通路の南端付近で約50センチメートル,同北端付近で26センチメートルに及ぶ。しかも,上記崩落は,現在も少しずつ進行している。 エしたがって,Yにおいて,上記崩落を防止すべく土留め工事をしなければ,本件通路に対するXらの共有持分権及びX2の占有権が妨害されるおそれが高いことは明らかである。 また,Yは,39年間にわたる上記イの不法行為によるXらの共有持分権ないしX2の占有権が妨害されたことに対す 通路に対するXらの共有持分権及びX2の占有権が妨害されるおそれが高いことは明らかである。 また,Yは,39年間にわたる上記イの不法行為によるXらの共有持分権ないしX2の占有権が妨害されたことに対する損害賠償の責めを免れないところ,同不法行為によるXらの損害は,X1につき合計312万円(8万円×39年),X2につき合計78万円(2万円×39年)とするのが相当である。 (Yの主張)ア本件通路は,もともと東西方向に1.82メートルの幅員しかない。したがって,本件通路と西側隣地との間の境界線は,本件鑑定図記載⑥及び⑦の各点を結んだ直線である。 イ西側隣地の切り土が本件通路上に崩落した事実はないし,同切り土上の雑草が本件通路を通行する自動車の車体を損傷するような状態もない。むしろ,この間,Xらが自動車を西側隣地に乗り上げることにより切り土を崩してきたものである。 -8-(2)人格権侵害等に基づく損害賠償請求の可否(Xらの主張)アYは,昭和45年12月ころ,本件通路の北端付近の整地作業をしていたX1及びX2に対し,突然,「俺の土地の土手をなぜ黙って崩すか」,「半分は俺がつ(俺のもの),俺が(俺の)土地には触らせん,俺が(俺の)土地は通させん」などと怒鳴り付け,その直後の夜,X1の留守中にもX宅に怒鳴り込んできて,X1の妻及びX2に対し,前同様の抗議をした。 さらに,その数日後,Yは,前提事実(3)アのような鉄パイプ打設行為に及び,X1が上記鉄パイプを抜去する旨告げると,「それなら(X宅の)家を打ち壊す」などと大声でわめいた。そして,Yは,X1がYの叔父・Rの仲介で鉄パイプの抜去を頼み込んだのに対し,「そんなら俺がつ(俺の土地)を貸そうたい。そのかわりに俺のいうとおりに借用書を書け」などと要求した。そこで,X1は,やむを得ずYから求 1がYの叔父・Rの仲介で鉄パイプの抜去を頼み込んだのに対し,「そんなら俺がつ(俺の土地)を貸そうたい。そのかわりに俺のいうとおりに借用書を書け」などと要求した。そこで,X1は,やむを得ずYから求められるまま,本件念書を作成交付した。 イYは,その後,「ここん土地の半分な俺がつだけんな。知っととかいた。 一筆書いてもろとっとだけんな。」(平成13年12月3日)とか,「(本件通路を通ってX宅に)上がられんごつなったちゃ,後悔せんね」(平成14年7月12日)とか,「誰の許しがあって(本件通路を)通りよるか」(平成15年9月10日)などと,上記アの後33年間にわたり,本件念書が正当なものであり,かつ,本件念書により本件土地が南北中心線で2つに分割され,その西側部分がYの単独所有地である旨主張し続け,Xらを脅迫し,精神的苦痛を与えてきた。 ウ上記イの不法行為による精神的苦痛を慰謝するには,X1につき800万円,X2につき200万円とするのが相当である。 (Yの主張)-9-アYが本件通路上に鉄パイプを打ち込んだこと,X1が本件念書を作成したこと,Yが本件念書を正当なものであり,かつ,本件念書により本件通路が南北中心線で2つに分割され,その西側部分がYの単独所有地であると主張したことは認め,その余は否認する。 イ本件通路の東西方向の幅員は1.82メートルしかなく,もともと自動車の通行ができなかったところ,X1が同所に自動車を通すべく西側隣地の切り土を勝手に崩して道路を造った。Yが本件通路上に鉄パイプを打設したのは,X1の行為から自分の土地を守るためであった。 そうしたところ,Yは,Rから,本件通路を通してやれと言われたので,X1と協議した末,本件通路を東西に分割し,その西側半分をYが取得すること,昭和55年まではX1に無償で同部分の通行を めであった。 そうしたところ,Yは,Rから,本件通路を通してやれと言われたので,X1と協議した末,本件通路を東西に分割し,その西側半分をYが取得すること,昭和55年まではX1に無償で同部分の通行を認めるが,その後の使用はYの意向に従うことで合意し,X1から本件念書の交付を受けたものである。X1は,Yに強要されて本件念書に署名したわけではない。 (3)民法223条,224条に基づく測量費用相当額の返還請求の可否(X2の主張)X2は,本件通路と西側隣地との間の境界について測量を実施し,その代金として3万円の全額を支払った。このうち,2万0625円は,民法223条,224条に基づき,Yにおいて負担すべきである。 (Yの主張)上記測量は,Yにおいて必要としていなかったのに,X2が勝手に測量士に頼んで実施してもらったものである。したがって,Yが上記測量費用を負担すべきいわれはない。 (4)下水道事業受益者負担金相当額の不当利得返還請求の可否(X1の主張)アX1は,平成3年6月,B町に対し,本件通路にかかる下水道事業受益者負担金(以下「受益者負担金」という。)の全額を支払った。 -10-イYは,本件通路の共有者である以上,受益者負担金につきその持分に応じた金額を負担すべきであって,同金額は,36.59平方メートル(本件通路の地積)×300円(1平方メートル当たりの負担金額)×1/2(持分割合)=5485円となる。 ウそうすると,Yは上記イの金員を不当に利得していることになる。 (Yの主張)ア受益者負担金は,下水道事業につき,同事業によって現実に利益を受ける者に対し,その利益に応じた負担を負わせる制度であるから,受益者負担金を負担すべき者は,当該下水道事業によって現実に利益を受けている者でなければならない。 イしかるに,Yは,本件 実に利益を受ける者に対し,その利益に応じた負担を負わせる制度であるから,受益者負担金を負担すべき者は,当該下水道事業によって現実に利益を受けている者でなければならない。 イしかるに,Yは,本件通路にかかる下水道事業によって現実には何らの利益も得ておらず,今後もその予定はない。したがって,Yは,本件通路にかかる受益者負担金を負担すべき立場にはないから,X1が主張するような利得はない。 (5)本件通路につき共有物分割請求の可否等(Xらの主張)ア本件通路はX宅と県道とを結ぶ唯一の通路であり,かつ,X宅へ至る下水道を引くために必要不可欠の土地であって,Xらにおいて本件通路を現に使用しているし,今後もこれを必要としている。これに対し,Yは,もっぱら西側出入口を利用して西側隣地と公道との間を行き来しており,本件通路を使用していないし,今後も使用する必要性は全くない。 イしかるに,Yは,本件念書に基づく主張を繰り返しており,Xらとの間で本件通路の分割協議が整わない。 ウよって,Xらは,Yに対し,本件通路をXらのみの共有とし,XらをしてYに対しその持分の価格を賠償させる方法(以下「全面的価格賠償」という。)による共有物分割を求める。 -11-(Yの主張)ア(ア)もともと,本件通路は,県道からX宅と西側隣地の双方へ至るための共通の通路としての役割を持った土地であって,分割することが全く予定されていない土地である。 (イ)また,Yは,317番1の土地上に馬小屋や馬の運動場を設けた際はもとより,その後も馬のえさの搬入や西側隣地に植えている樹木や草花の世話のために本件通路を経由して西側隣地に出入りしており,現に本件通路を使用しているところ,Yが本件通路を使用すること自体によってXらによる本件通路の使用が妨害されているわけではない。 (ウ) 花の世話のために本件通路を経由して西側隣地に出入りしており,現に本件通路を使用しているところ,Yが本件通路を使用すること自体によってXらによる本件通路の使用が妨害されているわけではない。 (ウ)しかも,今や,Yは,本件通路につきXらとの共有状態のままでも差し支えないとの認識でいる。 (エ)以上によれば,本件通路を分割し,共有関係を解消しなければならない必然性はないものというべく,Xらの本件通路についての共有物分割請求は,権利の濫用であって許されない。 イ(ア)Yは,上記ア(イ)のとおり本件通路を現に長期にわたって使用してきたし,西側出入口があるとはいっても,Sが317番3の土地の通行を禁止すれば同出入口を利用して西側隣地から公道に通じることは不可能になる。また,318番1は県道や里道に接しているとはいえ,その境界付近の状況からして,同土地を通じて公道へ通じるための通路を設けるには多額の費用を要する。 これに対し,X1は肩書住所地に転居後は本件通路を現実にはほとんど利用していないし,X2が本件通路を利用し始めたのは平成13年春ころにX宅に入居した後である。 しかるに,Xらが主張するとおりの全面的価額賠償によって本件通路を分割してしまえば,本件通路をめぐるXら及びYの従前の利用実態を無視した結果になるのみならず,317番1の土地を袋地にし,Yをし-12-て318番1につき新規に通路を設置することを余儀なくさせるものであって,不公平である。 (イ)また,本件通路を現物分割することは可能であるし,現物分割した場合であっても,Xらにおいて310番2の所有者と交渉することによってX宅に至る相応の通路を確保することも不可能ではない。 (ウ)さらに,全面的価額賠償の前提となるべき本件通路の適正な評価額及びXらにおける代償金の支払能力は,い 0番2の所有者と交渉することによってX宅に至る相応の通路を確保することも不可能ではない。 (ウ)さらに,全面的価額賠償の前提となるべき本件通路の適正な評価額及びXらにおける代償金の支払能力は,いずれも定かでない。 (エ)以上によれば,仮に,上記請求が権利濫用に当たらないとしても,本件通路についての共有物分割は,全面的価額賠償が許される場合には当たらない。 第3当裁判所の判断 争点(1)について(1)本件通路の幅員が1.82メートル程度(原審鑑定によれば,1.93メートル)であることは,当事者間に実質的に争いがないから,本件通路を自動車で通行するにはぎりぎりの幅員しかないものということができる。したがって,仮に,Xらが主張するとおり,西側隣地から切り土が崩落してきたり,雑草が本件通路との境界線間際まで繁茂したりすれば,その通行が妨げられるおそれは大である。そして,西側隣地のうち317番1の土地と本件通路との高低差はそれほど顕著ではないが,318番1の土地については本件通路よりも一段高くなっており,しかも,そこには土留めのための構造物は設置されていない(これに対し,318番1の土地と県道部分との境には石積擁壁が設置されている。)ことからして(前提事実(2)ウ,甲3),318番1の土地から切り土が本件通路部分に崩落してくる可能性は一般的には少なくないものということができる。 したがって,西側隣地(特に,318番1の土地)の所有者であるYとしては,本件通路との境界に土留めのための構造物を設置してしかるべきであ-13-り,これを求めるXらの請求は一般論としては理由があるものということができる。 (2)しかしながら,Xらの土留め工事請求及び通行妨害による損害賠償請求は,あくまで本件通路と西側隣地との境界がXらの主張するとおりである の請求は一般論としては理由があるものということができる。 (2)しかしながら,Xらの土留め工事請求及び通行妨害による損害賠償請求は,あくまで本件通路と西側隣地との境界がXらの主張するとおりであるということが前提となっているところ,同境界をめぐっては,XらとY双方の主張が鋭く対立しており,全く一致を見ない有様である(前提事実(3)イ)。 そうであれば,土留め工事を,どこに,どのように施工すべきかを特定するためにはもちろん,切り土の崩落の程度及びそれによる通行妨害の程度を明らかにするためにも,上記境界確定の作業が不可欠であり,それには,所要の法的手続(境界確定訴訟等)を経るよりほかはない。しかしながら,現時点までに上記手続を経るなどして境界が確定されるに至っていないことは明らかである(弁論の全趣旨)。また,土地の境界は,上記手続を経て初めて確定されるものであって,本件訴訟において境界を確定することができないことはもとより,本争点について判断するための前提としてであっても,上記境界の位置を当裁判所が認定するのは相当でない。 (3)そうすると,争点(1)については,その前提となるべき本件通路と西側隣地の境界が確定されていない以上,判断の限りではないものというほかないから,その余の点について検討するまでもなく,Xらの土留め工事請求及び通行妨害による損害賠償請求はいずれも理由がないことになる。 これに対し,Xらは,本件訴訟においても上記境界を確定すべきであると受け取れる主張をするけれども(平成18年2月22日付け準備書面4項),独自の見解であって,採用することができない。 争点(2)について(1)ア証拠(原審におけるX1,X2,原審及び当審におけるY)及び弁論の全趣旨によれば,原判決16頁10行目から同17頁6行目末尾までに記載の事実( することができない。 争点(2)について(1)ア証拠(原審におけるX1,X2,原審及び当審におけるY)及び弁論の全趣旨によれば,原判決16頁10行目から同17頁6行目末尾までに記載の事実(ただし,原判決17頁5行目の「主張し」を「理解してお-14-り」と改める。)に加え,Yにおいて,X2に対し,①平成13年12月3日には「ここん土地の半分な俺がつだけんな。知っととかいた。一筆書いてもろとっとだけんな。」と,②平成14年7月12日には「(本件通路を通ってX宅に)上がられんごつなったちゃ,後悔せんね」と,③平成15年9月10日には「誰の許しがあって(本件通路を)通りよるか」と,それぞれ発言したことが認められる。 イなお,Xらは,X2に対する上記発言のほかにも,本件念書が作成された後33年間にわたり,YがXらに対して本件念書に基づく主張を続け,Xらを脅迫してきた旨主張するけれども(上記第2の3(2)Xらの主張欄イ),Xらの主張によっても上記脅迫の具体的な態様は何ら明らかでないし,X1において,この間Yから本件通路の通行を認めない旨言われたことはないと供述していること(原審における尋問)に照らしても,この点に関する上記主張は採用の限りでない。 (2)前提事実(3)アの鉄パイプ打設行為及び本件念書作成の根底には,本件通路の半分(具体的には,西側半分)はYの所有であるという「共有」についてのYの誤った認識があることが見て取れる。そして,X1としては上記鉄パイプの打設により本件通路の通行を妨害されている事態に直面して,やむを得ない選択として本件念書に署名するに至ったものと見られる。そうであれば,本件念書は,X1において,その意に反して作成させられたものであることは明らかであり,X1がその不条理に大いなる屈辱を感じたであろうことも て本件念書に署名するに至ったものと見られる。そうであれば,本件念書は,X1において,その意に反して作成させられたものであることは明らかであり,X1がその不条理に大いなる屈辱を感じたであろうことも容易に推測される。 そうすると,上記鉄パイプの打設による通行妨害と本件念書作成の強要はX1に対する不法行為を構成するものというべきであるが,Xらの主張によれば,これらはYの不法行為の前提ないし背景事情として位置付けられているにとどまることが明らかである。 (3)そこで,上記(1)アの①ないし③の一連の発言について検討するに,その-15-背景には,本件念書の存在と効力に対するYなりの理解があることは明らかである。それは,本件念書の作成経過に対する自分本位な受け止め方と「共有」に対する誤った認識を前提にするものであって,正当性を欠くものであることは明白であるが,これらの発言を浴びせられたX2にすれば,穏やかならぬものがあったであろうことは見易いところである。 しかしながら,同①に対しては,X2においても負けずに反論し,「少なくとも通行権はある」などの法的主張を試みているのであり,同②及び③はいずれもYとX2の口喧嘩の類の応酬の中での発言であったことが認められる(Xらの平成16年3月30日付け準備書面,原審におけるX2)。そうであれば,上記各発言をもって,直ちにX2に対する脅迫その他違法性を帯びた行為であると見ることはできない。 (4)以上によれば,上記(1)ア①ないし③の発言はX2に対する不法行為に当たるとまでいうことはできない。したがって,Xらの上記損害賠償請求は理由がないことになる。 争点(3)について当裁判所も,この点に関するX2の請求には理由がないものと判断する。その理由は,原判決19頁9行目から同20頁2行目末尾までに記載のとお 損害賠償請求は理由がないことになる。 争点(3)について当裁判所も,この点に関するX2の請求には理由がないものと判断する。その理由は,原判決19頁9行目から同20頁2行目末尾までに記載のとおりであるから,これを引用する。 争点(4)について(1)証拠(甲14の1~3,乙11,原審におけるX1)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 アB町は,B町公共下水道事業受益者負担に関する条例(平成2年条例第26号)及び同条例施行規則(平成2年12月1日規則第17号)を定め,次のとおり,受益者負担金を賦課徴収することとしている。 (ア)公共下水道の排水区域内の土地(以下「受益地」という。)の所有者又は権利者(地上権者,質権者等)に対して,受益者負担金を賦課す-16-る。共有状況にある受益地にかかる共有者は受益者負担金を連帯して納付する義務を負う。 (イ)受益者負担金は,受益地の公簿面積に1平方メートル当たりの単価300円を乗じた額(ただし,10円未満切り捨て)とされ,これを5年20期(1年当たり4期)に分割納付する。ただし,受益者は,到来した納期にかかる納付すべき受益者負担金を納付しようとする場合において,当該納期の後の納期にかかる受益者負担金をあわせて納付することができ,その場合には,納付する受益者負担金の額に所定の率(上記規則別表第1参照)を乗じて得た額(ただし,10円未満切り捨て)を納期前納付報奨金として当該受益者に交付する。 イ平成3年4月ころ,本件通路(地積36.59平方メートル)は,310番5の土地(同341.88平方メートル)とともに受益地とされ,両土地にかかる受益者負担金として合計11万3530円(本件通路につき1万0970円,310番5の土地につき10万2560円)が賦課された。 ウX1は, .88平方メートル)とともに受益地とされ,両土地にかかる受益者負担金として合計11万3530円(本件通路につき1万0970円,310番5の土地につき10万2560円)が賦課された。 ウX1は,平成3年度第1期の納期である同年6月25日,上記受益者負担金のうち平成3年度に分割納付すべき受益者負担金の全額(4期分)2万3930円を納付した。 エまた,X1は,平成4年度第1期の納期である平成4年6月23日,平成4年度に分割納付すべき受益者負担金の全額(4期分)2万2400円及び平成5年度ないし同7年度分(合計12期分)6万7200円の合計8万9600円を納付し,上記イの受益者負担金を完納した。 (2)ア上記(1)ア(ア)によれば,本件通路について2分の1の共有持分権者であるYも,本件土地にかかる受益者負担金(1万0970円)を平成3年当時の相共有者であるX1と連帯負担すべき受益者に当たることは明らかである。 -17-この点につき,Yは,上記第2の3(4)Yの主張欄のとおり主張する。 同主張は,実質的な受益者負担の原則からすると一理ないわけではないが,この種の負担金の賦課徴収については,行政の客観性,効率性の観点からして,多少形式的ではあっても客観的で明確な基準を採用することが不可欠の要請となるのであって,この場合には上記(1)ア(ア)のとおりの基準が採用されているのである。そして,同基準自体が不当であるとはいえない。したがって,Yの上記主張を採用することはできない。 イところで,上記受益者負担金はすべてX1の出捐によって完納されたというのである(上記(1)イ~エ)。 このように,受益者たる共有者の一人が当該土地にかかる受益者負担金の全額を納付した場合における共有者内部における負担割合のいかんについては,共有者間に特段の合意のない限り ある(上記(1)イ~エ)。 このように,受益者たる共有者の一人が当該土地にかかる受益者負担金の全額を納付した場合における共有者内部における負担割合のいかんについては,共有者間に特段の合意のない限り,当該土地の共有持分割合に応じてこれを負担すべきものとするのが相当であるところ,本件においてそのような特段の合意の存在を認めるに足りる証拠はない。 そうすると,Yは,X1に対し,本件通路の共有持分割合に応じた受益者負担金相当額の支払義務を免れないこととなる。 ウもっとも,X1は,①平成3年度第1期の納期に,同年度第2期ないし第4期(3期分)の受益者負担金を,②平成4年度第1期の納期に,同年度第2期ないし平成7年度第4期(15期分)の受益者負担金を,いずれも前納したというのであるから(上記(1)ウ,エ),それぞれそのころ所定の納期前納付報奨金の交付を受けたことは明らかである(同ア(イ))。そして,同報奨金の金額は,上記①につき500円,同②につき1万2600円の合計1万3100円であることが認められる(上記(1)ア(イ),甲14の2・3)。 そうであれば,YにおいてX1に対して支払うべき受益者負担金相当額(上記ア)の算定に当たっては,同報奨金に相当する額を控除すべきであ-18-る。そして,上記報奨金は,本件通路及び310番5にかかる受益者負担金の全額について計算されていることから,上記控除にかかる報奨金相当額については,本件通路と310番5の土地との地積に応じて算定するのが衡平である。 エそうすると,YがX1に対して支払うべき金額は,(1万0970円-1万3100円×36.59平方メートル/(36.59平方メートル+341.88平方メートル))×1/2=4851円(1円未満切り捨て)となる。 なお,X1において上記不当利得返還請求に及 70円-1万3100円×36.59平方メートル/(36.59平方メートル+341.88平方メートル))×1/2=4851円(1円未満切り捨て)となる。 なお,X1において上記不当利得返還請求に及んだのは平成16年2月25日付け訴えの変更申立書によるものが初めてであるから(原審におけるX1,X2,弁論の全趣旨),上記金員の遅延損害金の起算日は,Yに送達された日の翌日である平成16年5月12日とするのが相当である。 争点(5)について(1)XらとYとの間において,乙事件が提起されるまでに本件通路にかかる共有物分割をめぐって協議が行われた経緯は認められない(原審におけるX1)。しかし,本争点をめぐる当事者双方の主張のありよう(上記第2の3(5))からして,両者の間に本件通路をめぐる分割協議が整う見込みは全くないものといってよい。 そして,本件通路はX宅と公道を結ぶ唯一の通路であるにもかかわらず,その共有者であるYとの間で上記2(1)アのとおりの対立・紛争が絶えないという事情のもとでは,Xらにおいて,本件通路についてのYとの共有関係を解消することを強く志向し,共有物分割請求に及ぶに至ったことも心情的には無理からぬものがある(原審及び当審におけるX1)。 (2)アしかし,本件通路は,東西方向の幅員が1.93メートル(原審鑑定)に過ぎない南北方向に細長い土地であって,Xらにおいては自動車を用いて本件通路を通行している(原審におけるX1,弁論の全趣旨)。ま-19-た,Yにおいても,同様に本件通路を自動車で通行し,県道から西側隣地へ至る通路としてこれを使用したいとの意向である(乙19,当審におけるY)。 そうであれば,本件通路をXらとYの持分割合に応じて現物で分割しようとする限りは,いかなる態様で分割しようとも自動車の通行が不可能になり これを使用したいとの意向である(乙19,当審におけるY)。 そうであれば,本件通路をXらとYの持分割合に応じて現物で分割しようとする限りは,いかなる態様で分割しようとも自動車の通行が不可能になり,かえって,Xら及びY双方にとって不都合な結果になることは明らかである。なお,Yは,その場合においても,Xらが本件通路の東側においてこれと接する310番2の土地の所有者(P)と交渉することにより,X宅に至る相応の通路を確保することも不可能ではないなどと主張するが,あまりに乱暴な主張であり,かつ,Yにとっても不都合な結果になるということを考慮しない感情的な主張であって,検討に値しない。 イところで,西側隣地のうちの318番1の土地は,その南側において県道に接しているとはいうものの,県道とは約1メートルの段差があるため,現状においては同土地から直接県道へと通じる通路はないし,本件通路へも本件里道へも直接車で出入りすることはできないが,Yは,西側隣地を一体利用しているところから,西側出入口を通って317番3の土地を経由し,本件里道から県道へという経路で通行してきたというのである(前提事実(2)エ)。したがって,317番3の土地を経由することが不可能になれば,317番1の土地を通り,本件通路を利用して県道との通行を確保するほかない。それゆえ,本件通路の通行も不可能ということになれば,直接県道との出入りを可能にするために一定の土地を通路用に割いた上で,相応の費用を投じて新たに通路を開設することを余儀なくされることになる。 また,317番1の土地に至っては,西側出入口から同番3の土地を経由して,本件里道から県道へという現在の通行状態が不可能になったときには,本件通路以外には県道へ出入りする通路はないことになり,本件通-20-路も通行できないとすれば 側出入口から同番3の土地を経由して,本件里道から県道へという現在の通行状態が不可能になったときには,本件通路以外には県道へ出入りする通路はないことになり,本件通-20-路も通行できないとすれば全くの袋地となる。したがって,西側隣地の一体利用という前提がなくなるとすれば,317番1の土地の通路用に318番1の土地の一部を割くことが不可欠となる関係にある。 ウ一方,本件通路は,X1がこれを購入した時点ですでに通路の体をなしていたところ(当審におけるX1),本件通路及び310番5の土地及び310番2の土地は,もともと本件国土調査前の地番(以下「旧地番」という。)の310番・311番・312番合併2の土地が,昭和35年1月16日付けで旧地番同(現在の310番2),旧地番同合併5(同310番5),旧地番同合併6(本件通路)の3筆に分筆されたものであって(甲1,30,31,33,51),かつ,上記分筆当時これら3筆の土地を所有していたMは,後の310番5となる土地をX1に譲渡する一方,本件通路は同X及びNに対し持分2分の1ずつの割合で譲渡したものである(前提事実(2)イ)。加えて,X1は,上記購入に際し,本件通路だけはNとの共有名義にすることをNから強く求められ,これに応じたものであり(当審におけるX1),かつ,上記購入当時317番1の土地はNの所有であったというのである(当審におけるX1,同Y)。 以上によれば,本件土地は,310番5の土地のためだけでなく,公道に接面していない317番1の土地にとっても公道へ至る通路として確保されるべく,X1とNとの共有名義にされたものと考えられるのである。 そして,その後,317番1の土地と本件通路の共有持分2分の1が,昭和40年9月から昭和41年8月までの1年弱の間に相次いでNからYに譲渡されたのであ との共有名義にされたものと考えられるのである。 そして,その後,317番1の土地と本件通路の共有持分2分の1が,昭和40年9月から昭和41年8月までの1年弱の間に相次いでNからYに譲渡されたのである(前提事実(1)ウ)。 エ(ア)上記アないしウでみたところによれば,本件通路は,西側隣地のうちの317番1の土地及び310番5の土地から公道へ至る共用通路であるというべきである。そうであれば,そのような性格や効用が失われたといえるような特段の事情が認められない限り,そもそも共有物分割-21-請求になじまないものというべく,そのような請求は権利の濫用として許されないというべきである。 (イ)しかるに,本件通路は,Xらによって県道からX宅へ通じる通路として不可欠のものであり,現にそのようなものとして利用されていることは明らかである。 一方,Yは,原判決においては「本件通路を利用する必要性はなく,実際にも使用していない」旨認定判断されているところ,確かに原審においてはその旨供述していることが明らかである(Yは,当審においては,そのような供述をしたこと自体を否定し,尋問調書の記載が誤っているとまで供述するが,到底信用できない。)。ただ,それは,西側出入口から317番3の土地を通り,さらに本件里道から県道へと通行していた当時の状況を前提にしたものであり,317番3の土地の所有者であるSの承諾を得ていないことをXらから指摘されたのを機に,平成18年9月末ころからは西側出入口の使用をやめ,今後はもっぱら本件通路を経由して県道から317番1の土地に出入りする意向であることを明らかにしている(乙19,当審におけるY)。そして,317番3の土地を通行することについてSの承諾を得ていない(当審におけるY)以上,それは当然のことといわなければならない。 そ 意向であることを明らかにしている(乙19,当審におけるY)。そして,317番3の土地を通行することについてSの承諾を得ていない(当審におけるY)以上,それは当然のことといわなければならない。 そうすると,本件通路は,依然としてXらとYの共用通路としての性格や効用を失っていないものというべきであり,上記(ア)の特段の事情は未だ認めるに至らないというほかはない。 (ウ)以上によれば,Xらの求める本件通路の共有物分割請求は,権利の濫用に当たり,許されないものといわざるをえない。本件通路がXらとYの共用通路である以上,両者間にいかなる対立があろうとも,こと本件通路の利用に関する限りでは,互に相手の立場を尊重し,節度ある態度で,円満かつ平穏に共に利用できるよう努めるべきである。そして,-22-もしもYによる通行妨害というXらが懸念するような事態が生じた場合には,適時適切に妨害を排除し,さらには損害賠償請求をするなどの法的手段に訴えるべきものである。 (3)これに対し,Xらは,Yが西側出入口の使用を止めたのは一時的な措置に過ぎないとか,Sにおいて,Yが西側出入口を使用し,317番3の土地を通行することを禁止する意向がないなどと指摘して,Yが本件通路を使用する必要性はない旨主張し,これに沿う書証を多数提出する(甲79(各証)及びその証拠説明,「甲84号証の1~5及び証拠説明書」と題する書面3頁参照)。しかし,本件全証拠をもってしても,Yにおいて西側出入口の使用を止めたのが一時しのぎに過ぎず,いずれその使用を再開する心づもりであるとまで決めつけるには至らないし,現時点でSが上記の意向でいるからといって,直ちに317番3の土地の通行につき何らかの権利が設定されたということにはならないから,Yにおいて本件通路を使用する必要性が失われたとまで認め 至らないし,現時点でSが上記の意向でいるからといって,直ちに317番3の土地の通行につき何らかの権利が設定されたということにはならないから,Yにおいて本件通路を使用する必要性が失われたとまで認めるには至らない。Xらの上記主張は採用することができない。 結論 以上によれば,Xらの請求は,甲事件のうちX1において不当利得返還請求として4851円及びこれに対する平成16年5月12日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し,甲事件のその余の請求及び乙事件の請求はいずれも失当として棄却すべきである。これと異なる原判決は,その限りで変更を免れない。X2の控訴は理由がなく,X1及びYの各控訴は上記変更の限度で理由がある。 よって,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第3民事部-23-裁判長裁判官西理裁判官有吉一郎裁判官吉岡茂之別紙省略

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