平成27年1月16日判決言渡平成25年(行ウ)第271号課徴金納付命令取消請求事件主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求金融庁長官が原告に対して平成25年4月16日付けでした金融商品取引法に基づき課徴金153万円を国庫に納付することを命じた決定を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が,別表記載のとおり,平成22年9月29日から同年12月16日までの間(以下「本件取引期間」という。),36回にわたり,株式会社A銀行(以下「A銀行」という。)の株式(以下「本件株式」という。)合計123万8000株につき,自己の売り注文と自己の買い注文を同時刻に約定させる取引(以下「本件取引」という。)を行ったところ,金融庁長官が,本件取引は,金融商品取引法(以下「金商法」という。)159条1項1号で禁止される,有価証券の売買等につき「取引が繁盛に行われていると他人に誤解させる等その取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的」(以下「繁盛等誤解目的」という。)をもって,「権利の移転を目的としない仮装の有価証券の売買」(以下「仮装売買」という。)をすることに当たるとして,原告に対し,平成25年4月16日付けで,課徴金として153万円を国庫に納付することを命ずる決定(以下「本件課徴金納付命令」という。)をしたことにつき,原告が,被告に対し,本件取引は仮装売買に当たらず,原告に繁盛等誤解目的はなかったから, 本件課徴金納付命令は違法である旨主張して,本件課徴金納付命令の取消しを求める事案である。 2 関係法令の定め別紙関係法令の定め記載のとおり。 3 前提事実(当事者間に争いがないか,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定するこ 件課徴金納付命令の取消しを求める事案である。 2 関係法令の定め別紙関係法令の定め記載のとおり。 3 前提事実(当事者間に争いがないか,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)(1) 原告の株式取引経験等原告は,本件取引当時40歳の男性であり,複数の証券会社に口座を持ち,日常的にインターネットを経由した株式の取引をしている個人投資家である。 原告は,昭和62年頃から20年以上の間,日常的に株式の取引を継続し,平成14年頃からは,「裁定取引」(価格の変動に連続性のある2銘柄について,価格差が生じた瞬間を狙って株価の安い銘柄を買い付け,株価の高い銘柄を売り付けることにより差額を取得する取引)を行っていた。(争いがない)(2) 本件取引に至る経緯等ア A銀行は,平成22年9月28日,株式会社B銀行(以下「B銀行」という。)と連名で,①B銀行を完全親会社,A銀行を完全子会社とする株式交換(以下「本件株式交換」という。)を行うこと,②B銀行は,本件株式交換に際し,本件株式1株につき0.089株のB銀行の普通株式(以下「B銀行株」という。)を割り当てること,③本件株式交換の効力発生日は平成22年12月22日とし,同月16日を本件株式の最終売買日,翌17日を本件株式の上場廃止日とする予定であること,④本件株式交換の後,B銀行を吸収合併存続会社とし,A銀行を吸収合併消滅会社とする吸収合併を行う予定であること等を公表した。(乙19) イ原告は,平成22年9月28日,上記アの公表を知り,その翌日である同月29日から同年12月16日までの間(本件取引期間),本件株式の価格とB銀行株の価格とを株式交換比率に基づいて換算して比較し,割安銘柄を買い付ける一方,割高銘柄を売り付けることにより(な である同月29日から同年12月16日までの間(本件取引期間),本件株式の価格とB銀行株の価格とを株式交換比率に基づいて換算して比較し,割安銘柄を買い付ける一方,割高銘柄を売り付けることにより(なお,売買株数は,本件株式交換比率で換算した株数が本件株式とB銀行株とで概ね同数となるものであった。),それらの差額に相当する収益を得ることを目指す裁定取引を繰り返し行った。(争いがない)ウ原告は,上記イの裁定取引と並行して,別表記載のとおり,平成22年9月29日から同年12月16日までの間(本件取引期間),本件株式について,複数の証券会社に開設した証券口座を用い,自己の売り注文と自己の買い注文を同時刻に約定させる取引(本件取引)を行った。本件取引は,本件株式について,原告が同時に取引の売主と買主となったものであり,実質的な権利の移転を伴わないものであった。(争いがない)エ A銀行は,C市場第一部に上場されていたが,平成22年12月17日,上場廃止となり,平成24年9月18日,B銀行との合併により消滅した。(甲7,乙19)(3) 本件課徴金納付命令に至る経緯等ア金融庁長官は,平成24年11月16日,原告に対し,本件取引が繁盛等誤解目的をもって仮装売買をしたものとして金商法178条1項13号(174条1項,159条1項1号)に当たるとして,納付すべき課徴金の金額を153万円として,金商法178条1項に基づき,審判手続を開始する旨の決定をした。(乙1)イ金融庁長官は,上記アの審判手続を経た上で,平成25年4月16日,原告に対し,金商法185条の7第1項に基づき,課徴金と して153万円を国庫に納付することを命ずる決定(本件課徴金納付命令)をした。(争いがない)ウ上記イの課徴金153万円は,同法174条1項2号 商法185条の7第1項に基づき,課徴金と して153万円を国庫に納付することを命ずる決定(本件課徴金納付命令)をした。(争いがない)ウ上記イの課徴金153万円は,同法174条1項2号の規定による下記(ア)の額から,下記(イ)の額を控除した額(153万8000円)につき,同法176条2項の規定により,1万円未満を切り捨てた金額である。(甲7)(ア) 本件取引が終了してから1月を経過するまでの間の各日における本件株式の売付けについての同法130条に規定する最高の価格のうち最も高い価格(24円)に,本件取引に係る本件株式の買付けの数量(同法174条7項,同法施行令33条の9の5第1号の規定により,原告が本件取引開始時に所有している本件株式31万8000株を含む302万9000株)が売付けの数量(188万2000株)を超える数量(114万7000株)を乗じて得た額2752万8000円(イ) 上記(ア)の超える数量(114万7000株)に係る本件株式の買付けの価額 2599万0000円(4) 本件訴訟の提起原告は,平成25年5月15日,本件訴訟を提起した。(顕著な事実) 4 争点及び争点についての当事者の主張金商法159条1項1号は,有価証券の売買等につき,繁盛等誤解目的をもって仮装売買をすることを禁止している。 本件の争点は,①本件取引が仮装売買に当たるか(争点1),②原告が本件取引につき繁盛等誤解目的を有していたか(争点2)である。 (1) 争点1(本件取引が仮装売買に当たるか)について(被告の主張の要旨)ア金商法159条1項1号の仮装売買の意義等金商法159条1項1号の「権利 いたか(争点2)である。 (1) 争点1(本件取引が仮装売買に当たるか)について(被告の主張の要旨)ア金商法159条1項1号の仮装売買の意義等金商法159条1項1号の「権利の移転を目的としない仮装の有価証券の売買」(仮装売買)とは,典型的には,同一人が同一取引について両当事者となり,実質的な権利帰属主体の変更を伴わない有価証券の売買をいう。 金商法が仮装取引(仮装売買)を禁止するのは,本来自然の需給関係(相場を変動させるような人為的操作とは無関係な投資家らがそれぞれの経済的合理性に基づく意図を有しながら取引に参加している状態において行われた買い注文と売り注文との関係)により形成されるべき公正な価格を人為的に歪めるものを排除するためである。仮装売買は,権利移転を目的としない売買取引であり,同一人が,同一の有価証券等について同時期に同価格で買付け及び売付け等の取引をすることであって,証券市場の観察者には,独立の買主及び売主によってされた現実の取引と区別することができない記録上の取引を作り出すから,仮装売買を行うことで,投資家が投資判断を誤り,その投資家の参加によって価格形成は歪められることになる。 イ本件取引が金商法159条1項1号の仮装売買に当たること本件取引は,客観的には,自己の売り注文と買い注文とを同時に約定させる取引であり,原告が有している本件株式の実質的権利帰属主体の変更を伴わない取引であるから,仮装売買に当たることは明らかである。 ウ原告の主張について原告は,本件取引は節税効果を主たる目的とするものであり, 経済的合理性のある取引であるから仮装売買ではない旨主張するが,経済的合理性のある取引であっても,権利の移転を目的としない取引であれば,仮装売買に該当することは,金商法第 するものであり, 経済的合理性のある取引であるから仮装売買ではない旨主張するが,経済的合理性のある取引であっても,権利の移転を目的としない取引であれば,仮装売買に該当することは,金商法第159条1項1号の規定から明らかである。 (原告の主張の要旨)本件取引のようなクロス取引(同一の者が同一銘柄の売り注文と買い注文とを発注し,同一時刻に対当して約定させる取引)であっても,経済的合理性のあるものは禁止されていない。本件取引は,実質的な権利帰属主体の変更を伴わないものであるが,以下のとおり節税を主たる目的とし,株式の預け替えの目的もあり,経済的合理性のある取引であるから,仮装売買には当たらない。 ア平成22年分の所得税に係る還付金証券特定口座での株式の所得税の価格の計算では,取得単価の小数点以下が切り上げられるから,クロス取引で株数を増やせば,切り上げ分については簿価が高くなる場合があるので,実際の利益を圧縮することができるというメリットがある。 原告は,この節税効果を目的として本件取引を行ったものであり,原告の平成22年分の所得税の確定申告における,同年分の株式の譲渡損失は651万3584円であったが,本件取引を行わなかった場合の株式の譲渡損失は542万6157円であるから,その差額は108万7427円であり,本件取引をしなかったとしたら還付される税金が7万2100円減っていたことになる。 イ平成23年分の所得税に係る還付金原告は,平成22年の本件取引の結果生まれた評価損のある株式を,平成23年に全て売却した。本件取引により増加した評価 損額は154万5436円である。もし本件取引をしなかったとしたら,株売買の損失は,418万2203円(平成23年分の所得税の確定申告における金額)から263万6 件取引により増加した評価 損額は154万5436円である。もし本件取引をしなかったとしたら,株売買の損失は,418万2203円(平成23年分の所得税の確定申告における金額)から263万6767円に減少し,還付される税金が9万8700円減ることとなる。 (2) 争点2(原告が本件取引につき繁盛等誤解目的を有していたか)について(被告の主張の要旨)ア金商法159条1項1号の繁盛等誤解目的の意義等金商法159条1項の「取引が繁盛に行われていると他人に誤解させる等その取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的」(繁盛等誤解目的)とは,取引が頻繁かつ広範に行われているとの外観を呈する等当該取引の出来高,売買の回数,価格等の変動及び参加者等の状況に関し,他の投資者に自然の需給関係によりそのような取引の状況になっているものと誤解させることを認識することをいう。 そして,繁盛等誤解目的があるというためには,当該取引を行った者が,当該取引を行えば第三者がその取引状況に関し,実需に基づくものであると誤解する可能性があることを認識した上で,当該取引を行ったことが認められれば足り,一般投資家に実際に誤解が生じたことや,取引の結果として他人に損害が発生したことは要件ではない。また,同目的が認められる以上,他に,併存する目的の有無,併存する目的との間の主従関係などは問われない。また,繁盛等誤解目的の認定に当たっては,手段としての仮装売買の態様自体から繁盛等誤解目的が強く推認されると考えられている。 イ原告が本件取引につき金商法159条1項の繁盛等誤解目的 を有していたこと(ア) 本件取引の態様原告は,本件取引期間の全54営業日の半数を超える29営業日において,36回もの多数回にわたり仮装売買を繰り返した。この3 項の繁盛等誤解目的 を有していたこと(ア) 本件取引の態様原告は,本件取引期間の全54営業日の半数を超える29営業日において,36回もの多数回にわたり仮装売買を繰り返した。この36回という回数は,原告が売りと買いを同時に約定させた回数にすぎず,原告が行った証券会社ごとの注文回数を計上すると,売り注文が65回,買い注文が43回であり,証券会社ごとの注文回数はより多いため,上記のとおりの実需に基づかない外観が作出された。また,上記の36回のうち20回は,売り注文と買い注文がいずれも現物株式による仮装売買,いわゆる現物クロス取引であり,取引前後で持ち株数に変化がなく,仮装売買の典型であって,繁盛等誤解目的をより強く推認させる。さらに,原告は,本件取引を後場寄り(午後の取引の初めのこと)及び大引け(午後の取引の終わりのこと)で行っていたが,後場寄り及び大引けで行われた本件取引は,特に後の取引の株価に影響を与える取引である。 本件取引の市場占有率をみても,本件取引期間全体では12.50%,仮装売買が行われた29営業日では16.88%であり,そのうち8営業日(平成22年10月6日,同月13日,同月14日,同月26日,同年11月15日,同月19日,同月24日,同年12月9日)において30%を超えた上,平成22年11月15日には原告の仮装売買による出来高は61.49%を超える高占有率となっている。このように本件取引の市場占有率が高かったことは,本件取引の市場への影響が大きかったことを示すものであり,他の投資者 に対し,自然の需給関係によって本件株式の出来高が増加したと誤認させるものである。本件取引期間における本件株式の出来高が1営業日平均で約18万3000株であり,本件取引期間前の40営業日の平均出来高8万95 然の需給関係によって本件株式の出来高が増加したと誤認させるものである。本件取引期間における本件株式の出来高が1営業日平均で約18万3000株であり,本件取引期間前の40営業日の平均出来高8万9500株の2倍を超えていることはその証左である。 このような取引の状況によれば,売買の回数,出来高,参加者等の状況について実需に基づかない外観が作出され,事情を知らない他の投資者において取引の状況への誤解が生じかねないことは明らかであって,原告がこのような態様の仮装売買を行っていたこと自体から繁盛等誤解目的が強く推認される。 (イ) 原告が本件取引以前に証券会社から注意喚起を受けていたこと原告は,本件取引以前の平成20年2月5日,株式会社D証券(当時の商号はE証券株式会社。以下「D証券」という。)の担当者から,現物株式に係る原告名義の売り注文と原告の母名義の買い注文とが対当して約定していた取引について,馴れ合い的な対当売買として相場操縦につながりかねないもので,再度行うと取引停止の措置を採るおそれがある旨の注意喚起を受け,平成21年5月12日にはF証券株式会社(以下「F証券」という。)の担当者から,現物株式に係る原告名義の売り注文と買い注文とが対当して約定した取引について,仮装売買であるとの疑義が生じる旨の注意喚起を受けていたほか,同年10月26日にも,原告名義の売り注文と買い注文とが対当して約定した取引について注意喚起を受けていたのであるから,原告は,本件取引が他の投資者に自然の 需給関係により取引が繁盛に行われているものと誤解されることを十分認識していたといえる。 (ウ) 原告の判断能力,取引経験等原告は,本件取引当時40歳と十分に判断能力を備えた年齢であり,昭和62年ころから20年以上もの間,日常的に のと誤解されることを十分認識していたといえる。 (ウ) 原告の判断能力,取引経験等原告は,本件取引当時40歳と十分に判断能力を備えた年齢であり,昭和62年ころから20年以上もの間,日常的に株式の取引をし,平成14年ころからは裁定取引も行っており,その判断能力は十分であり,本件取引に係る自己の取引手法が本件株式の相場,出来高等に与える影響を十分に理解していた。 (エ) 小括以上のとおり,本件取引の態様,原告が本件取引以前に証券会社から注意喚起を受けていたこと,原告の判断能力,取引経験等に照らし,原告が,本件取引を行えば,第三者がその取引状況に関し,実需に基づくものであると誤解する可能性があることを認識した上で,本件取引を行ったことが認められ,原告には繁盛等誤解目的があったといえる。 ウ原告の主張について(ア) 原告は,本件取引は節税効果を主たる目的とし,株式の預け替えの目的もあり,このような経済的合理性のあるクロス取引は合法である旨主張するが,経済的合理性のある仮装売買であっても,取引の時期,方法等によっては繁盛等誤解目的が認められ,違法なものと評価される。また,原告の主張する上記目的を前提にすると,証券会社1社からの売り注文又は買い注文は1回で足りるにもかかわらず,あえて証券会社1社から複数の売り注文又は買い注文を出し,複数の者が売買に参加したかのような外観が作出されることになる取 引をすることに合理的な理由はなく,節税目的などという原告の上記主張は不合理である。 また,仮に原告が節税目的を有していたとしても,繁盛等誤解目的が認められる以上,他に併存する目的の有無,併存する目的との主従関係等は問われない。原告も,同一証券会社内の現物クロス取引が禁止されてい また,仮に原告が節税目的を有していたとしても,繁盛等誤解目的が認められる以上,他に併存する目的の有無,併存する目的との主従関係等は問われない。原告も,同一証券会社内の現物クロス取引が禁止されているとの認識を有していたことを自認している。 (イ) 原告は,裁定取引を行っていたから,本件株式の売買が繁盛に行われていると他人に誤解させると,本件株式に関心が集まってしまい,裁定取引の利点を消滅させるから繁盛等誤解目的はなかった旨主張するが,原告が行った裁定取引は,本件株式とB銀行株との株価に差異があることによって利益を得るものであるから,本件株式の株価がいくらであるかは,利益の大小に関わるのは別段,利益の有無の観点からは関係がない。裁定取引を行うには一定の出来高が必要となるところ,仮装売買を行うことにより,他の投資者をして取引が繁盛に行われているものと誤解させ,他の投資者が取引に参加することにより出来高を増加させ,もって裁定取引による利益の拡大を図ることができる。また,原告は裁定取引をするためにクロス取引をする株式が少なくなることを意図していたと述べる一方で,原告がいう節税目的のクロス取引とはクロス取引をする株式が多いほど節税効果が大きくなるものであるから,原告の主張自体矛盾している。 (ウ) 原告は,本件株式の出来高の増加はA銀行とB銀行との合併が発表されたからであって,本件取引により誘引されたとはいえない旨主張するが,本件取引により他の投資者の取引 が実際に誘引されたか否かは繁盛等誤解目的の有無とは関係がない。一般論として,合併の発表が出来高の増加に影響を与えることも考えられるものの,本件取引の態様に照らし,本件取引が出来高の増加に影響を与えていないとはい たか否かは繁盛等誤解目的の有無とは関係がない。一般論として,合併の発表が出来高の増加に影響を与えることも考えられるものの,本件取引の態様に照らし,本件取引が出来高の増加に影響を与えていないとはいえない。 (原告の主張の要旨)ア原告が本件取引につき金商法159条1項の繁盛等誤解目的を有していなかったこと(ア) 前記(1)(原告の主張の要旨)のとおり,本件取引は,節税を主たる目的とし,株式の預け替えの目的もあり,経済的合理性のある取引であるから,原告には金商法159条1項の繁盛等誤解目的はなかった。 (イ) 原告は,本件取引当時,本件株式につき裁定取引を行っていたところ,裁定取引を行うためには,本件株式を安く買う必要があったが,本件株式の取引が活発であると思われると,他の投資家の売り注文が高値でされることになり,原告の裁定取引の目的が達せられなくなってしまう。また,裁定取引は他の投資家が価格差に気付いてしまえば利益がなくなる取引であるから,本件株式の取引に関心,注目が集まると不利になるものである。したがって,原告は,本件取引当時,売買が繁盛に行われていると他人に誤解される等の繁盛等誤解目的を有していなかった。 (ウ) 本件株式の出来高の増加は,一般的に合併が発表された場合の出来高の増加と同程度であり,原告の本件取引は本件株式の出来高の増加を誘引していない。原告が,平成22年1月から平成24年12月までに株式交換及び合併を行った 企業111社について,合併等発表前後の1日の平均出来高の増加率の統計を取ったところ,1か月で出来高が増加したのは82社,うちA銀行は54位であり,3か月で出来高が増加したのは71社,うちA銀行は42位であり 併等発表前後の1日の平均出来高の増加率の統計を取ったところ,1か月で出来高が増加したのは82社,うちA銀行は54位であり,3か月で出来高が増加したのは71社,うちA銀行は42位であり,本件株式は平均的な出来高の増加をしたにとどまる。なお,本件取引123万8000株を除いた場合,A銀行の順位はそれぞれ63位,44位に後退する。 イ被告の主張について(ア) 本件取引の態様について本件取引期間における本件株式のクロス取引の回数は36回であるが,寄付き8回分はクロスがなくても取引は成立する。また,大引けの注文は,原告以外の大引け注文があれば取引が成立するので,原告が増やした取引回数はおそらく20回程度と思われる。原告の感覚として,本件取引期間において原告が行った全売買の回数は1000回を超えていると思われるので,本件取引の売買回数はその2%以下のはずである。また,被告は,原告が行った証券会社ごとの注文回数を問題にするが,この程度では繁盛にされたような外観を呈するとはいえない。 本件取引の市場占有率の数字は認めるが,市場占有率が高いことが繁盛等誤解目的につながるわけではない。また,上記ア(ウ)のとおり,本件株式の出来高の増加は,一般的に合併が発表された場合の出来高の増加と同程度であり,原告による本件株式のクロス取引は出来高の増加を誘因していない。 また,そもそも合併で消滅する会社(A銀行)の株式の出来高は投資判断の材料にならず,投資家は本件株式の出来高を 見てはいない。 (イ) 証券会社から注意喚起を受けていたことについて原告は,平成20年2月5日のD証券からの注意喚起については,明確な記憶がない。平成21年5月12日及び同年10月26日のF証券からの注意喚起については,インターネッ 起を受けていたことについて原告は,平成20年2月5日のD証券からの注意喚起については,明確な記憶がない。平成21年5月12日及び同年10月26日のF証券からの注意喚起については,インターネット取引において注文間違えが生じたときのものである。 F証券は,必ずしも同社が作成した「クロス取引の受託時におけるチェックポイント」(乙11)のとおりに顧客に注意喚起をしていたわけではなく,クロス取引の全てにつき注意喚起がされていたわけではない。原告は,同一証券会社内での現物クロス取引が禁止されていることは知っていたが,証券会社のホームページやインターネット上の情報から節税目的や株主優待取得目的のクロス取引は認められていることも認識していた。 (ウ) 原告の判断能力,取引経験等について被告の主張のうち,原告の年齢や取引経験は争わないが,自己の取引手法が本件株式の相場,出来高等に与える影響を十分に理解していたとの点は否認する。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実,争いのない事実,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件取引前の事情ア原告は,同一証券会社内での現物クロス取引(売り注文と買い注文がいずれも現物株式であるクロス取引)が禁止されていることは認識していた。(弁論の全趣旨(原告準備書面7・1 頁))イ原告は,平成20年2月5日,D証券の担当者から,現物株式に係る原告名義の売り注文と原告の母名義の買い注文とが対当して約定していた取引について,馴れ合い的な対当売買として相場操縦につながりかねないもので,再度行うと取引停止の措置を採るおそれがある旨の注意喚起を受けた。(乙9・3ないし6枚目)ウ原告は,平成21年5月12日,F証券の担当者から,現物株式に係る原 場操縦につながりかねないもので,再度行うと取引停止の措置を採るおそれがある旨の注意喚起を受けた。(乙9・3ないし6枚目)ウ原告は,平成21年5月12日,F証券の担当者から,現物株式に係る原告名義の売り注文と買い注文とが対当して約定した取引について,仮装取引であるとの疑義が生じる旨の注意喚起を受け,同年10月26日にも,原告名義の売り注文と買い注文とが対当して約定した同月22日の取引について注意喚起を受けた(乙9・7ないし17枚目,乙16・6ないし8頁)。 なお,F証券が内部資料として作成した「クロス取引の受託時におけるチェックポイント」によれば,①現物クロス取引は,仮装売買の典型であるとして原則として受託してはならないこと,②金融クロス取引(売り注文が現物で,買い注文が信用新規のクロス取引)や期日前の信用クロス取引(信用取引の期日到来前のクロス取引)は,執行理由が具体的,合理的であるか,売買形態につき市場関与率が高くないか(概ね20%を超える場合等は立会外取引を利用する。),価格形成が意図されていないか(同一顧客がクロス取引の直前に同一銘柄の売買を行っていないか。)等を審査した上で受託することとしている。(乙11)(2) 本件取引の態様ア原告は,平成22年9月29日から同年12月16日までの 間(本件取引期間)の全54営業日のうち29営業日において,36回にわたり,本件株式につき売りと買いを同時に約定させた。本件取引(36回)のうち20回は現物クロス取引であった。本件取引に関し,原告が行った証券会社ごとの注文回数は,売り注文が65回,買い注文が43回であった。(乙12,13)イ本件取引の市場占有率(出来高に占める割合)は,本件取引期間全体の出来高のうち12.50%,本件取引が行われた29営業日 数は,売り注文が65回,買い注文が43回であった。(乙12,13)イ本件取引の市場占有率(出来高に占める割合)は,本件取引期間全体の出来高のうち12.50%,本件取引が行われた29営業日の出来高のうち16.88%であり,そのうち8営業日(平成22年10月6日,同月13日,同月14日,同月26日,同年11月15日,同月19日,同月24日,同年12月9日)において各日の出来高の30%を超えていた。また,平成22年11月15日は出来高の61.49%を占めていた。 (乙14)ウ本件株式の出来高は,本件取引期間前の40営業日の平均出来高は8万9500株であったが,本件取引期間の平均出来高は18万3388株であった。(乙15)エ本件株式が上場されていたCでは,後場寄り及び大引けで形成される株価を決定する方式として板寄せ方式が用いられており,板寄せ方式においては,取引所の定める方式(①成行(売買値段を指定しない注文)の売り注文と買い注文全てに約定すること,②上記値段より高値の買い注文と上記値段より安値の売り注文が全て約定すること,③上記値段において,売り注文又は買い注文のいずれか一方全てについて約定すること,の全てを満たす値段を求める方式のこと)に従って,ある値段を決定した上で,場に存在する全ての注文のうち,成行注文,同値 段より安値の売り注文,同値段より高値の買い注文及び同値段の売り注文と買い注文のうちいずれか少ない方の株数分につき,上記値段で,同時に,売買を成立させることとなっていた。そして,上記値段の決定前に,売り注文と買い注文を発注することにより,ある数量・銘柄の株式をある時点で売り,かつ,それと同一の数量,同一の銘柄の株式を買うとの取引をすることができた。原告は,本件取引を,後場寄り及び大引けで行って 注文と買い注文を発注することにより,ある数量・銘柄の株式をある時点で売り,かつ,それと同一の数量,同一の銘柄の株式を買うとの取引をすることができた。原告は,本件取引を,後場寄り及び大引けで行っていた。(争いがない)オ本件取引期間中,本件株式の株価(千株当たりの単価)は,概ね20円から25円の範囲内で推移していた。本件取引における約定金額(千株当たりの単価)は,本件取引期間の当初,24円であったが,その後若干下落し,平成22年10月28日には20円となったものの,その後若干上昇し,同年12月16日には24円となった。(乙12,13,15,18)(3) 本件取引後の事情ア原告は,平成22年分の所得税の確定申告書において,原告の同年分の株式の譲渡損失は651万3584円であったと申告した。(甲1)イ原告は,平成23年分の所得税の確定申告書において,原告の同年分の株式の譲渡損失は418万2203円であったと申告した。(甲8) 2 争点1(本件取引が仮装売買に当たるか)について(1) 金商法159条1項1号の意義について金商法は,金融商品取引所の適切な運営を確保すること等により,有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし,有価証券の流通を円滑にするほか,資本市場の機能の十全な発揮による 金融商品等の公正な価格形成等を図り,もって国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とする(同法1条)。 そして,金商法は,有価証券の取引等に関する各種の規定を設けて不公正な取引を規制することとし(第6章),市場における現実の需給に基づいて行われるべき公正な価格形成を人為的に歪める行為については,これを相場操縦行為として禁止する規定(159条)を設け,①仮装取引・馴合取引(同条1項),現実売買等によ 場における現実の需給に基づいて行われるべき公正な価格形成を人為的に歪める行為については,これを相場操縦行為として禁止する規定(159条)を設け,①仮装取引・馴合取引(同条1項),現実売買等による相場操縦(同条2項),安定操作(3項)などを制限している。 このうち,仮装取引(同条1項)に係る規定は,「権利の移転を目的としない仮装の有価証券の売買」(仮装売買)等は,当該取引自体が市場における現実の需給に基づくものではない点で公正な価格形成を歪めるという本来的な性質を有するものである上,当該取引が何らかの合理的な理由により行われるときであっても,市場における現実の需給に基づく取引の結果ではないのに,そうであると誤認して他の投資者が取引に誘い込まれ,相場が変動し,公正な価格形成を歪めるおそれがあることから,仮装売買が「取引が繁盛に行われていると他人に誤解させる等,取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的」(繁盛等誤解目的)をもって行われる場合には,これを規制する趣旨で設けられたものであると解される。 そして,同一人が,特定の銘柄の株式につき,自己の売り注文と買い注文を同時刻に約定させる取引をした場合は,この取引が「権利の移転を目的としない仮装の有価証券の売買」(仮装売買)に当たることが明らかである。 (2) 本件取引が仮装売買に当たるかについて ア上記1(2)の認定事実によれば,本件取引は,本件取引期間において,原告が36回にわたり,本件株式につき売りと買いを同時に約定させたものであり,これが実質的に権利の移転を伴わないものであることは当事者間に争いがない。したがって,本件取引は,金商法159条1項1号の「権利の移転を目的としない仮装の有価証券の売買」(仮装売買)に当たるものと認められる。 イこれに対 わないものであることは当事者間に争いがない。したがって,本件取引は,金商法159条1項1号の「権利の移転を目的としない仮装の有価証券の売買」(仮装売買)に当たるものと認められる。 イこれに対し,原告は,本件取引には,節税目的等の経済的合理性があるから,仮装売買に当たらない旨主張する。 しかしながら,上記アで判示した金商法159条1項が仮装取引を禁止する趣旨や,同項が「権利の移転を目的としない仮装の有価証券の売買」(仮装売買)という客観的要件に当たるもののうち,「取引が繁盛に行われていると他人に誤解させる等これらの取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的」(繁盛等誤解目的)という主観的要件を充たすものに限定してこれを禁止しているという条文の体裁からすれば,仮装売買に当たるか否かは,実質的に権利の移転を伴わない取引に当たるか否かによって判断されるべきであって,取引の主観的な目的や動機等によって左右されないと解すべきである。したがって,仮に,原告が本件取引を節税目的等の下において行っていたと認められるとしても,そのことを理由として本件取引が仮装売買に当たらないとする上記原告の主張を採用することはできない。 3 争点2(原告が本件取引につき繁盛等誤解目的を有していたか)について(1) 金商法159条1項の繁盛等誤解目的について前記2(1)のとおり,金商法159条1項が仮装取引を禁止する 趣旨は,仮装売買が,当該取引自体が市場における現実の需給に基づくものではない点で公正な価格形成を歪めるという本来的な性質を有するものである上,当該取引が何らかの合理的な理由により行われるときであっても,市場における現実の需給に基づく取引の結果ではないのに,そうであると誤認して他の投資者が取引に誘い込まれ,相場が変動し,公正な である上,当該取引が何らかの合理的な理由により行われるときであっても,市場における現実の需給に基づく取引の結果ではないのに,そうであると誤認して他の投資者が取引に誘い込まれ,相場が変動し,公正な価格形成を歪めるおそれがあることによるものと解されることからすれば,同項が定める「取引が繁盛に行われていると他人に誤解させる等これらの取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的」(繁盛等誤解目的)とは,当該仮装売買を行うことが,現実の需給に基づいて取引が繁盛に行われているとの外観を呈するなど,取引の状況(売買の回数,出来高,価格等の変動,参加者等)に関して他の投資者に誤解を生じさせるに足りる外観をもたらすことの認識があることをいうものと解することが相当である。 なお,同項においては,仮装取引の要件として,仮装売買の事実のほか,繁盛等誤解目的の要件が挙げられているにとどまることからすると,同項は,当該仮装売買によって,現実に他人に誤解が生じて取引の状況が繁盛となったという結果や,相場が変動したという結果をも要件とするものではないことは明らかである。 (2) 原告が本件取引につき繁盛等誤解目的を有していたかについて上記前提事実(1),上記1(1)及び(2)の認定事実によれば,①本件取引による仮装売買は,本件取引期間の全54営業日のうち29営業日において,36回という多数回にわたり行われたものであること,②上記の仮装売買の市場占有率(出来高に占める割合)は,本件取引期間全体のうち12.50%,本件取引が行われた29営業日のうち16.88%であり,8営業日では30%を超えており, 61.49%を超える日もあるなど相対的に高いものであったこと,③他方,本件株式の出来高は,本件取引期間前の40営業日の平均出来高が8万9500株で り,8営業日では30%を超えており, 61.49%を超える日もあるなど相対的に高いものであったこと,③他方,本件株式の出来高は,本件取引期間前の40営業日の平均出来高が8万9500株であったのに対し,本件取引期間中の平均出来高が18万3388株であったこと,④上記の仮装売買36回のうち20回は,現物クロス取引であり,証券会社においても仮装取引の典型として受託すべきではないとされる類型のものであること,⑤原告は,本件取引に先立ち,3回にわたり,原告名義の売り注文と買い注文とが対当して約定した取引等につき証券会社から仮装取引であるとの疑義が生じるなどとして注意喚起を受けたことがあり,原告自身も,同一証券会社内での現物クロス取引が禁止されていることは認識していたこと,⑥原告は,十分な判断能力を有する壮年の男性であり,20年以上にわたり日常的に株式売買を行うという取引経験を有し,株式市場の仕組みや投資者の投資行動等についても十分な知識と経験を有していたことが認められる。 以上の諸点に照らせば,原告は,本件取引を行うことが,取引の状況(売買の回数,出来高,参加者)に関して他人に誤解を生じさせ,現実の需給に基づいて取引が頻繁に行われていると他の投資者に誤信させるに足りる外観をもたらすものである旨の認識を有していたものと認められる。したがって,原告は,本件取引につき繁盛等誤解目的を有していたものということができる。 なお,原告は,上記③の点に関し,本件株式の出来高の増加はA銀行とB銀行との合併が発表されたからであって,本件取引により誘引されたとはいえない旨主張する。しかしながら,上記(1)で判示したとおり,繁盛等誤解目的は,仮装売買を行うことが現実の需給に基づいて取引が繁盛に行われていると他の投資者に誤信させるに足りる外観をも されたとはいえない旨主張する。しかしながら,上記(1)で判示したとおり,繁盛等誤解目的は,仮装売買を行うことが現実の需給に基づいて取引が繁盛に行われていると他の投資者に誤信させるに足りる外観をもたらすものであることを認識していることで 足りるのであって,実際に当該仮装売買が,一般投資家に誤解を与えて本件株式の出来高の増加を誘引する結果を生じさせる必要はないから,仮に,本件取引期間中における本件株式の出来高の増加が,合併の発表等といった本件取引とは異なる要因により生じた面を含んでいるとしても,そのような事情は,原告が本件取引につき繁盛等誤解目的を有していたという上記の判断を左右するものではない。 (3) 原告の主張についてア原告は,本件取引には,節税目的等の経済的合理性があるから,繁盛等誤解目的を有していなかった旨主張する。 しかしながら,仮に本件取引に関して,仮装売買を行う何らかの合理的な理由があるとしても,それが故に直ちに上記(1)で定義したところの「繁盛等誤解目的」がないことになるということはできないし,また,繁盛等誤解目的が認められる限り,仮装取引として禁止される取引にあたると解すべきことは上記(1)で判示したとおりである。加えて,原告が主張する節税は,本件株式の取引数が多いほど効果を上げるものであることからすると,原告がその効果を上げようとして取引を重ねれば重ねるほど,現実の需給に基づいて取引が繁盛に行われていると他の投資者に誤信させるに足りる外観をもたらすこととなり,同時に,繁盛等誤解目的を有する取引と認められやすいという関係にあるということができる。これらの点に照らし,原告の上記主張は採用することができない。 イまた,原告は,本件株式につき裁定取引を行っていたから,本件株式の売買が繁盛に行わ られやすいという関係にあるということができる。これらの点に照らし,原告の上記主張は採用することができない。 イまた,原告は,本件株式につき裁定取引を行っていたから,本件株式の売買が繁盛に行われていると他人に誤解させると,本件株式に関心が集まってしまい,裁定取引の利点を消滅させること になるから,原告には繁盛等誤解目的はなかった旨主張する。 しかしながら,原告が意図していた裁定取引は,原告が本件株式を取得しなければ成り立ち得ないものであるから,本件株式につき仮装取引を行い,本件株式の売買が頻繁に行われていると他人に誤解させる外観を作出させ,本件株式の売りを誘因するような状況を作り出すことは,当該裁定取引に利する面があるということができる。また,当該裁定取引は,本件株式とB銀行株との株価に価格差がありさえすれば成り立ち得るものであるから,本件株式につき仮装取引を行い,本件株式の売買が頻繁に行われていると他人に誤解させる外観を作出させ,本件株式の株価を上昇させるような状況を作り出すこととなったとしても,当該裁定取引が不可能となるわけではなく,実際にも,原告は,価格差に応じて当該裁定取引を継続していたことがうかがわれる(乙18,前提事実(2)イ)。以上の点からすると,原告が本件取引と並行して裁定取引を行っていたことと,本件取引に関して原告に繁盛等誤解目的があると認めることとは,矛盾するものとまではいえないから,原告の上記主張は採用することができない。 4 小括以上によれば,本件課徴金納付命令は,金商法159条1項1号の要件を満たし,適法であるというべきである。 5 結論よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する 件を満たし,適法であるというべきである。 5 結論よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官谷口 豊 裁判官横田典子 裁判官下 和弘 (別紙)関係法令の定め金融商品取引法 1 159条1項(相場操縦行為等の禁止)何人も,有価証券の売買(金融商品取引所が上場する有価証券,店頭売買有価証券又は取扱有価証券の売買に限る。以下この条において同じ。),市場デリバティブ取引又は店頭デリバティブ取引(金融商品取引所が上場する金融商品,店頭売買有価証券,取扱有価証券(これらの価格又は利率等に基づき算出される金融指標を含む。)又は金融商品取引所が上場する金融指標に係るものに限る。以下この条において同じ。)のうちいずれかの取引が繁盛に行われていると他人に誤解させる等これらの取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもつて,次に掲げる行為をしてはならない。 1号権利の移転を目的としない仮装の有価証券の売買,市場デリバティブ取引(第2条第21項第1号に掲げる取引に限る。)又は店頭デリバティブ取引(同条第22項第1号に掲げる取引に限る。)をすること。 (2号ないし9号省略) 2 174条(取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもつて有価証券の売買等をした者に対する課徴金納付命令)(1) 1項第159条1項の規定に違反する有価証券の売買,市場デリバティブ取引若しくは店頭デリバティブ取引又はこれらの取引の申込み若しくは委託等(以下この条において「違反行為」とい 付命令)(1) 1項第159条1項の規定に違反する有価証券の売買,市場デリバティブ取引若しくは店頭デリバティブ取引又はこれらの取引の申込み若しくは委託等(以下この条において「違反行為」という。)をした者(以下この条において「違反者」という。)があるときは,内閣総理大臣は,次節に定める手続に従い,当該違反者に対し,次 の各号に掲げる場合の区分に応じ,当該各号に定める額(次の各号のうち2以上の号に掲げる場合に該当するときは,当該2以上の号に定める額の合計額)に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。 (1号省略)2号違反行為期間において,当該違反者が当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行つた有価証券の買付け等の数量が,当該違反者が当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行つた有価証券の売付け等の数量を超える場合次のイに掲げる額から次のロに掲げる額を控除した額(当該額が零を下回る場合には,零とする。)イ当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該有価証券等に係る有価証券の売付け等についての第67条の19又は第130条に規定する最高の価格(当該価格がない場合は,これに相当するものとして内閣府令で定めるものをいい,当該違反行為が終了した日にあつては,内閣府令で定める額とする。)のうち最も高い価格に当該超える数量を乗じて得た額ロ当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額(3号及び4号省略)(2) 7項違反者が,違反行為の開始時に当該違反行為に係る有価証券又は商品を所有している場合,現実数値が約定数値を上回つた場合に金銭を受領する第2条第21項第2号に掲げる取引(当該違反行為に係る有価証券又は商品に係るものに限る。) 時に当該違反行為に係る有価証券又は商品を所有している場合,現実数値が約定数値を上回つた場合に金銭を受領する第2条第21項第2号に掲げる取引(当該違反行為に係る有価証券又は商品に係るものに限る。)を自己又は第5項各号に掲げる者(当該違反行為と同一の違反行為をした者を 除く。)の計算において約定している場合その他の政令で定める場合には,第1項各号に掲げる額の計算において,当該違反者が,違反行為の開始時にその時における価格で有価証券の買付け等を自己の計算においてしたものとみなす。 (3) 10項第2項から前項までに規定するもののほか,第1項に規定する有価証券の売付け等の価額及び有価証券の買付け等の価額の計算に関し必要な事項その他同項の課徴金の計算に関し必要な事項は,政令で定める。 3 176条2項(課徴金の額の端数計算等)第172条から前条までの規定により計算した課徴金の額に1万円未満の端数があるときは,その端数は,切り捨てる。 4 178条1項(審判手続開始の決定)内閣総理大臣は,次に掲げる事実のいずれかがあると認めるときは,当該事実に係る事件について審判手続開始の決定をしなければならない。 (1号ないし12号省略)13号第174条第1項に該当する事実(14号ないし17号省略) 5 185条の7第1項(課徴金の納付命令の決定等)内閣総理大臣は,審判手続を経た後,第178条第1項各号に掲げる事実のいずれかがあると認めるときは,この条に別段の定めがある場合を除き,被審人に対し,第172条第1項,第2項(同条第4項において準用する場合を含む。)若しくは第3項,第172条の2第1項(同条第4項において準用する場合を含む。),第2項(同条第5項において準用する場合を含む。)若しくは第6項,第172条の 4項において準用する場合を含む。)若しくは第3項,第172条の2第1項(同条第4項において準用する場合を含む。),第2項(同条第5項において準用する場合を含む。)若しくは第6項,第172条の 3第1項若しくは第2項,第172条の4第1項若しくは第2項(同条第3項において準用する場合を含む。),第172条の5,第172条の6第1項(同条第2項において準用する場合を含む。),第172条の7から第172条の9まで,第172条の10第1項若しくは第2項,第172条の11第1項,第172条の12第1項,第173条第1項,第174条第1項,第174条の2第1項,第174条の3第1項,第175条第1項(同条第9項において準用する場合を含む。)若しくは第2項又は第175条の2第1項(同条第13項において準用する場合を含む。)若しくは第2項(同条第14項において準用する場合を含む。)の規定による課徴金を国庫に納付することを命ずる旨の決定をしなければならない。 第4 金融商品取引法施行令 1 33条の9の5第1号(仮装売買等による相場操縦行為をした者に対する課徴金につき自己の計算において有価証券の買付け等をしたものとみなす場合)法第174条第7項に規定する政令で定める場合は,次に掲げる場合とする。 1号違反者又は特定関係者(当該違反者と同一の違反行為をした者を除く。)が違反行為の開始時に当該違反行為に係る有価証券又は商品を所有している場合 2 33条の9の6第6項(仮装売買等による相場操縦行為に係る課徴金の計算に関し必要な事項)法第174条第1項第2号イ及びロに掲げる額の計算に関しては,同号ロの有価証券の買付け等には,違反行為期間において違反者が違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行つた有価証券の買付け等のうち 74条第1項第2号イ及びロに掲げる額の計算に関しては,同号ロの有価証券の買付け等には,違反行為期間において違反者が違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行つた有価証券の買付け等のうち最も遅い時期に行われたものから順次同号ロの数量に達するまで割り当てるものとする。 以上
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