【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人森川金寿の上告趣意第一点について。 論旨は被告人の検察官に対する自白が強制によるものであり又は少くとも任意に な
主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人森川金寿の上告趣意第一点について。 論旨は被告人の検察官に対する自白が強制によるものであり又は少くとも任意になされたものでない疑のあるにかかわらずこれを証拠として採用したものであるから原判決は憲法三八条に違反するものであると主張する。しかし記録を調査するも所論の自白が警察官の強制によるものであり又は不任意になされたものであることを認めることはできないのであるから論旨は採るを得ない。 同第二点について。 原審の弁護人は追控訴趣意書を提出しているが右追控訴趣意書は専ら事実誤認を主張するものであつて証拠調を請求しているものではないからその提出をもつて証拠調の請求があつたものと認めることはできない。また被告人の原審公判廷における所論の供述も証拠調の請求と認めることはできない。次に原審第四回公判において弁護人は証人としてA、B、Cを申請し裁判所はB、Cの両名を採用しAに関する申請を却下しているのであつて論旨にいうDについては申請がなかつたのである。 論旨は所論の点につき証拠調の請求が為されたことを前提とするものであるがその前提の採るべからざる以上論旨は採用できない。 同第三点について。 しかし原判決に重大な事実の誤認があると認めることはできないのであるから刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。 被告人の上告趣意について。 警察官に対してなした被告人の自白が強制によるものであるという点については弁護人の論旨第一点に対して説明したとおりである、その他の論旨は事実誤認の主- 1 -張であつて上告適法の理由にならない。 よつて刑訴四一四条三九六条により主文のとおり判決する。 右は裁判官小谷勝重の反対意見を除き、その他の裁判官一致の意見である。 裁判官小 誤認の主- 1 -張であつて上告適法の理由にならない。 よつて刑訴四一四条三九六条により主文のとおり判決する。 右は裁判官小谷勝重の反対意見を除き、その他の裁判官一致の意見である。 裁判官小谷勝重の反対意見は次のとおりである。 職権をもつて調査するに、本件第一審判決の法令の適用は「刑法一九九条、四五条前段、四七条、一〇条、一四条」となつている。したがつてこの適用法条からは、その処断刑は二〇年以下の有期懲役刑でなければならない。 しかるに主文は「被告人を無期懲役に処する」とあるから、正に主文と理由との間にくいちがいがあるのである。 しかるに、右の点は控訴趣意として主張されておらず、原審またこの点を黙過して、第一審判決の量刑は不当であるとの控訴趣意の主張に対して、「原審が被告人に対し無期懲役に処する旨の言渡をしたのは量刑重きに過ぎるものではないと認められる」といつているのである。 さて、以上のごとき第一審判決の違法を黙過して、これをこのまま確定、執行に導いてよいであろうか。 論者或は、判決は主文が中心となるものであるから、第一審判決は被告人に対して無期刑を科したことに間違いなく、ただ法令の適用において過誤があるに過ぎない、また原判決も理由において第一審判決が無期懲役の言渡をしたのは量刑重きに過ぎるものではないと言つているではないか、しからば今更第一審判決の右瑕疵を採り上げても、結局その瑕疵は判決に影響を及ぼさないものというべきであると主張するかも知れない。 しかし、判決形成の論理的過程からすれば、主文は理由の結果というべきであるから、この観点からすればむしろ理由が正しく主文に誤りがあるといえるのである。 しかし、判決書作成の現実の問題としては何れが正しく何れが誤りとも断定できな- 2 -い場合もある。要するに、以上何れにしても判 の観点からすればむしろ理由が正しく主文に誤りがあるといえるのである。 しかし、判決書作成の現実の問題としては何れが正しく何れが誤りとも断定できな- 2 -い場合もある。要するに、以上何れにしても判決書中主文と理由にくいちがいがある場合、主文を主としてこれを正しいとし理由を従としてこれを誤りであるとすることは、上示の如く論理上からも現実の問題からもこれを首肯することはできないのである。現に裁判の宣告について、刑訴規則三五条二項は「判決の宣告をするには主文及び理由を朗読し、又は主文の朗読と同時に理由の要旨を告げなければならない」と規定し、理由の朗読乃至理由の要旨の告知が要請されているのである。また、原判決が第一審判決主文の無期懲役刑をもつて量刑重きに過ぎるものではないと認めるという意味も、第一審判決がその主文と理由との間にくいちがいのない正当な判決であることを前提とした場合にのみいい得るに過ぎないものといわねばならない。 以上の如く、本件第一審判決は理由と主文にくいちがいがあり、そしてそのくいちがいは既述の如く論理的にいえば寧ろ主文に誤りがあるといえるし、現実の問題からしても主文と理由の何れに誤りがあるか不明であるというべきであるから、第一審判決の右の違法は判決に影響を及ぼすべき法令の違反があるものと断ぜざるを得ない。しかして、右判決及びこれを維持した原判決はこれを破棄しなければ著しく正義に反するものと本裁判官は思料する(刑訴四一一条の解釈上、同条にいわゆる「原判決」の瑕疵のなかには原判決が触れざる第一審判決の瑕疵をも含むものと解する)。されば、本件は右の理由によりすべからく、被告人本人並びに弁護人の各上告趣意に対する判断を省略し、刑訴四一一条一号、四一四条、三九七条四一三条にしたがい、第一、二審各判決を破棄し事件を千葉地方裁判所に差戻 、本件は右の理由によりすべからく、被告人本人並びに弁護人の各上告趣意に対する判断を省略し、刑訴四一一条一号、四一四条、三九七条四一三条にしたがい、第一、二審各判決を破棄し事件を千葉地方裁判所に差戻すべきものと思料する。 なお以上の違法(即ち本件において確定する判決である、第一審判決の以上の違法)は、非常上告の対象となるものと本裁判官は思料する。 検察官松本武裕関与- 3 -昭和二六年七月六日最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官霜山精一裁判官栗山茂裁判官小谷勝重裁判官藤田八郎- 4 -
▼ クリックして全文を表示