判決平成15年1月17日神戸地方裁判所平成13年(行ウ)第1号公文書非公開決定取消請求事件 主文 1 被告が平成12年10月10日付けで原告に対して行なった非公開決定中,別紙非公開部分明細表番号1~9,11~24の「非公開部分記載内容の要点」欄記載の非公開決定を取り消す。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを5分して,その4を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求被告が平成12年10月10日付けで原告に対して行なった,別紙非公開部分明細表文書番号1~9,11~56の「非公開部分記載内容の要点」欄の非公開決定を取り消す。 第2 事案の概要 1 事案の骨子(1) 原告は,兵庫県情報公開条例(平成12年条例第6号)に基づき,平成12年8月11日,被告に対し,学校体罰に係る公文書の公開請求をした。 (2) これに対し,被告は,平成12年10月10日,被告に対し,別紙非公開部分明細表の「非公開部分記載内容の要点」欄の記載内容を非公開とし,同明細表の「非公開部分記載内容の要点」欄が空白のところはその項目部分全部を公開する旨の一部公開決定をした。 (3) 本件は,原告が,被告に対し,上記決定のうち,非公開とした部分の決定の取消しを求める事案である。 2 前提事実文章の末尾に証拠をあげていない部分は,当事者間に争いのない事実である。 (1) 当事者原告は,兵庫県に住所を有するものであり,被告は,兵庫県情報公開条例(平成12年条例第6号,以下「本件条例」という。)1条1項でいう実施機関である。 (2) 公文書公開請求原告は,平成12年8月11日,本件条例4 り,被告は,兵庫県情報公開条例(平成12年条例第6号,以下「本件条例」という。)1条1項でいう実施機関である。 (2) 公文書公開請求原告は,平成12年8月11日,本件条例4条,5条1項に基づいて,被告に対し,次のア,イの公文書(以下「本件公文書」という。)についての公開請求をした(甲53)。 ア第1文書教職員に係る係争中の争訟事件等の調査について(回答)のうち,体罰に係る懲戒処分等(平成7年度~平成9年度提出分)(乙1ないし3,以下「第1文書」という。)イ第2文書公立小・中学校,県立高校(養護学校を含む。)における体罰に係る事故報告書(平成7年度~平成9年度に県教委に提出されたもの)(乙4ないし31,以下「第2文書」という。)(3) 本件決定これに対し,被告は,平成12年10月10日,原告に対し,別紙非公開部分明細表(以下「明細表」という。)の「非公開部分記載内容の要点」欄の記載内容が本件条例6条1項前段,同項後段に該当するとして,同部分を非公開とし,明細表の「非公開部分記載内容の要点」欄が空白のところは,その項目部分全部を公開する旨の一部公開決定(以下「本件決定」といい,そのうち非公開決定部分を「本件非公開決定」という。)をした。 (4) 本件公文書の形式,内容等ア第1文書(ア) 作成趣旨第1文書は,兵庫県教育委員会事務局教職員課長が,公立学校の教職員に係る争訟事件等について,文部省教育助成局地方課長の依頼により,その所管に係る公立学校の教職員に係る争訟事件等について調査し,平成6年度から平成8年度まで(平成6年4月1日から平成7年3月31日まで〔乙1〕,平成7年4月1日から平成8年3月31日まで〔乙2〕 その所管に係る公立学校の教職員に係る争訟事件等について調査し,平成6年度から平成8年度まで(平成6年4月1日から平成7年3月31日まで〔乙1〕,平成7年4月1日から平成8年3月31日まで〔乙2〕,平成8年4月1日から平成9年3月31日まで〔乙3〕)の各期間内にあった懲戒処分等を,各期間ごとに集めて文部省に報告したものである。 (イ) 分類第1文書(乙1ないし3)は,いずれも「表題部分」と「報告部分」(明細表番号1ないし24)とによって構成されている。 (ウ) 報告部分の記載内容第1文書の報告部分には,明細表番号1ないし24記載のとおり,懲戒処分の内容等,体罰を行った教師の概略,体罰の概略,体罰を受けた児童生徒(以下「生徒」という。)の概略,学校の状況が記載されている。 イ第2文書(ア) 作成趣旨兵庫県立高校,養護学校,市町村立小中学校において体罰が発生した場合,当該学校の校長は,当該体罰の内容等を調査し,報告書を作成して兵庫県教育委員会に提出すべきこととされている(乙4~31)。 (イ) 分類第2文書(明細表番号25~56,乙4ないし31)は,次のように分類できる。 a 「表題部分」と「報告部分」とによって構成されているもの(明細表番号25~27,30~32,34,35,37~44,46~52,56)b 「報告部分」だけで構成されているもの(明細表番号28,29,33,36,45,54,55)c 「報告部分」に,診断書2通(明細表番号26),顛末書(明細表番号51),事情聴取書(明細表番号53)が添付されているもの,反省文(明細表番号56)が移記されているもの。 (ウ) 報告部分の記載内容 2通(明細表番号26),顛末書(明細表番号51),事情聴取書(明細表番号53)が添付されているもの,反省文(明細表番号56)が移記されているもの。 (ウ) 報告部分の記載内容第2文書の報告部分には,明細表番号25ないし56(同53を除く)記載のとおり,① 体罰を行った教員の氏名,性別,生年月日等,② 体罰を受けた生徒の氏名,性別,生年月日等,③ 体罰発生日時及び場所,③ 体罰の原因と状況,④ 体罰確認の方法,⑤ 学校においてとった措置及び今後必要とする措置等が記載されている。 (エ) 診断書2通,顛末書,事情聴取書,反省文乙第5号証の体罰報告書(明細表番号26)には,医師作成に係る体罰を受けた生徒の診断書2通が,乙第29号証の体罰報告書(明細表番号51)には,体罰を行った教員作成に係る顛末書が,乙第30号証の1の体罰報告書(明細表番号52)には,体罰を行った教員及び同教員が所属する学校の校長からの体罰に関する事情聴取書(乙30の2)(明細表番号53)が,それぞれ添付されている。 乙第31号証の体罰報告書(明細表番号56)には,体罰を行った教員の反省文が移記されている。 ウ第1文書と第2文書との関係第1文書に記載された各体罰に関しては,全て当該学校の校長から兵庫県教育委員会宛の報告書が存在する。第1文書の明細表番号6~24の体罰は,順次,第2文書の明細書番号25~27,同51,同28~34,同52,同35~39の体罰と同一である。その対応関係については,別紙文書照合表参照。 (5) 本件条例本件条例(甲42)のうち,本件訴訟に関係する部分の記載は,次のとおりである。 ア第1条(定義)1項この条例において「実施機関」とは,知事,教 (5) 本件条例本件条例(甲42)のうち,本件訴訟に関係する部分の記載は,次のとおりである。 ア第1条(定義)1項この条例において「実施機関」とは,知事,教育委員会等をいう。 2項この条例において「公文書」とは,実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書等をいう。 イ第2条(実施機関の責務)1項実施機関は,公文書の公開を請求する権利が十分保障されるようこの条例を解釈し,及び運用するものとする。 2項実施機関は,県民が必要とする情報を迅速に提供する等,その保有する情報を広く県民の利益に供するよう努めるものとする。 3項前2項の場合において,実施機関は,個人に関する情報がみだりに公にされることのないよう,最大限の配慮をしなければならない。 ウ第4条(公開請求権)何人も,実施機関に対し,公文書の公開を請求することができる。 エ第6条(公文書の公開義務)実施機関は,公開請求があったときは,当該公開請求に係る公文書に次の各号のいずれかに該当する情報(以下「非公開情報」という。)が記録されている場合を除き,請求者に対し,当該公文書を公開しなければならない。 1号個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるもののうち,通常他人に知られたくないと認められるもの,又は特定の個人を識別することができないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの2号以下省略オ第7条(部分公開)実施機関は,公開請求に係る公文書の一部に非公開情報が記録されている場合において,当該非公開情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは,請求者に対し,当該部分を除い 実施機関は,公開請求に係る公文書の一部に非公開情報が記録されている場合において,当該非公開情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは,請求者に対し,当該部分を除いた部分について当該公文書を公開しなければならない。ただし,当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるときは,この限りでない。 (6) 非公開理由被告は,本件公文書の一部を非公開とした理由について,次の3種類に分類して主張している。 ア本件条例6条1号前段の非公開情報-A分類情報被告は,別紙明細表番号25~56(第2文書)でAと分類された情報は,それ自体で体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒が識別できる情報であり,本件条例6条1号前段の非公開情報であるという。 イ本件条例6条1号前段の非公開情報-B分類情報被告は,別紙明細表番号1~56(第1文書,第2文書)でBと分類された情報は,それ自体では体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒を識別できないが,他の情報と照合することにより識別され得る情報であり,本件条例6条1号前段の非公開情報であるという。 ウ本件条例6条1号後段の非公開情報被告は,診断書2通(明細表番号26),顛末書(明細表番号51),事情聴取書(明細表番号53),反省文(明細表番号56)は,本件条例6条1号前段ないし後段の非公開情報であるという。 3 本件の争点(1) 争点1(本件条例6条1号前段の非公開情報-A分類情報)明細表番号25~56(第2文書)でAと分類された情報は,それ自体で体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒が識別できる情報であり,本件条例6条1号前段の非公開情報であるか。 (2 類情報)明細表番号25~56(第2文書)でAと分類された情報は,それ自体で体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒が識別できる情報であり,本件条例6条1号前段の非公開情報であるか。 (2) 争点2(本件条例6条1号前段の非公開情報-B分類情報)別紙明細表番号1~56(第1文書,第2文書)でBと分類された情報は,それ自体では体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒を識別できないが,他の情報と照合することにより識別され得る情報であり,本件条例6条1号前段の非公開情報であるか。 (3) 争点3(本件条例6条1号後段の非公開情報)診断書2通(明細表番号26),顛末書(明細表番号51),事情聴取書(明細表番号53),反省文(明細表番号56)は,本件条例6条1号後段の非公開情報であるか。 (4) 争点4(部分公開の可否)本件公文書の一部を非公開とし,その余の部分には非公開事由に該当する情報は記載されていないとして,非公開部分の公開を請求することができるか。 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(本件条例6条1号前段の非公開情報-A分類情報)についてア被告の主張第2文書(明細表番号25~56)のA分類情報は,個人に関する情報であって,それ自体で体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒が識別できる情報であり,通常他人に知られたくないと認められる情報であるので,本件条例6条1号前段の非公開情報である。 イ原告の認否,反論(ア) 上記アの被告の主張のうち,次の2点は認めるが,その余は否認する。 a 第2文書(明細表番号25~56)のA分類情報は,それ自体で体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒が識別でき 上記アの被告の主張のうち,次の2点は認めるが,その余は否認する。 a 第2文書(明細表番号25~56)のA分類情報は,それ自体で体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒が識別できる情報である。 b 第2文書(明細表番号25~56)のA分類情報のうち,体罰を受けた生徒が識別できる情報は,個人に関する情報であり,通常他人に知られたくないと認められるものであるので,本件条例6条1号前段の非公開情報である。 (イ) 公立学校の教員が生徒に体罰を行った情報は,「公務員の職務に関する情報」であり,「個人に関する情報」ではないので,本件条例6条1号前段の非公開情報には当たらない。 (2) 争点2(本件条例6条1号前段の非公開情報-B分類情報)についてア被告の主張(ア) 別紙明細表番号1~56(第1文書,第2文書)のB分類情報は,個人に関する情報であって,それ自体では体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒を識別できないが,他の情報と照合することにより識別され得る情報であり,通常他人に知られたくないと認められる情報であるので,本件条例6条1号前段の非公開情報である。 (イ) 照合する情報として,次のような情報がある。 a 第1文書の明細表番号6~24に関する体罰については,第2文書中の同一体罰に関する情報(別紙文書照合表参照)が存在する。 b 第1文書の明細表番号1~5の体罰についても,学校長から被告に提出された報告書が存在するので,誰でも,本件条例に従って公文書公開請求をすれば,第2文書と同程度の情報を得ることができる。 c 近畿学校一覧(乙32),学校要覧(乙33,34),人事記録(乙35), するので,誰でも,本件条例に従って公文書公開請求をすれば,第2文書と同程度の情報を得ることができる。 c 近畿学校一覧(乙32),学校要覧(乙33,34),人事記録(乙35),時間割表(乙36),学校行事予定表(乙37),通学区域に関する資料(乙38),教育委員会月報(乙39),兵庫県教育関係職員録(乙40)に記載の情報イ原告の認否,反論(ア) 上記アの被告の主張のうち,次の事項は認めるが,その余は否認する。 記別紙明細表番号1~56(第1文書,第2文書)のB分類情報中,体罰を受けた生徒に関する情報は,個人に関する情報であって,通常他人に知られたくないと認められる情報である。 (イ) 公立学校の教員が生徒に体罰を行ったことに関する情報は,「公務員の職務に関する情報」であり,「個人に関する情報」ではないので,本件条例6条1号前段の非公開情報には当たらない。 (ウ) 照合できる情報は,一般人が通常入手できる情報でなければならない。ところが,被告が指摘する近畿学校一覧,学校要覧,人事記録,時間割表,学校行事予定表,通学区域に関する資料,教育委員会月報,兵庫県教育関係職員録は,いずれも,一般人が通常入手できる情報ではない。 したがって,明細表番号1~56(第1文書,第2文書)のB分類情報は,他の情報と照合することにより,体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒を識別され得る情報とはいえない。 (3) 争点3(本件条例6条1号後段の非公開情報)についてア被告の主張診断書2通(明細表番号26),顛末書(明細表番号51) 別され得る情報とはいえない。 (3) 争点3(本件条例6条1号後段の非公開情報)についてア被告の主張診断書2通(明細表番号26),顛末書(明細表番号51),事情聴取書(明細表番号53),反省文(明細表番号56)は,「公にすることにより,個人の権利利益を害するおそれがある情報」であり,本件条例6条1号後段の非公開情報でもある。 イ原告の反論診断書2通,顛末書,事情聴取書,反省文は,「公にすることにより,個人の権利利益を害するおそれがある情報」とはいえず,本件条例6条1号後段の非公開情報ではない。 (4) 争点4(部分公開の可否)についてア被告の主張(ア) 最高裁平成13年3月27日判決最高裁平成13年3月27日判決・民集55巻2号530頁は,「大阪府公文書公開等条例(昭和59年大阪府条例第2号)10条(部分公開)は,1個の公文書に複数の情報が記載されている場合,非公開事由に該当する独立した一体的な情報をさらに細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分には非公開事由に該当する情報は記載されていないとして,これを公開することまでも実施機関に義務付けたものではない。」(要旨)との判断を示している。 本件条例7条(部分公開)の規定も,大阪府公文書公開等条例10条(部分公開)と同様の定めである。 (イ) 第1文書についてa 第1文書は,3つの期間に対応する当該各期間内に発生した体罰に関する報告書(乙1~3)であり,それぞれが1個の公文書であって,第1文書には3個の公文書が存在する。 そして,乙第1号証の報告書には,明細表番号1ないし5の5件の体罰に係る情報 罰に関する報告書(乙1~3)であり,それぞれが1個の公文書であって,第1文書には3個の公文書が存在する。 そして,乙第1号証の報告書には,明細表番号1ないし5の5件の体罰に係る情報が記載され,乙第2号証の報告書には,明細表番号6ないし13の8件の体罰に係る情報が記載され,乙第3号証の文書には,明細表番号14ないし24の11件の体罰に係る情報が記載されている。 なお,乙第1~3号証の「表題部分」は,同号証の「報告部分」と一体をなすものと見るべきである。 b そして,各体罰に係る情報は,各体罰毎に「独立した一体的な情報」を成しており,3個の公文書(乙1~3)の各体罰毎に「独立した一体的な情報」が記載されている。 したがって,各体罰毎に1箇所でも非公開事由に該当する部分があれば,当該体罰の他の箇所が非公開事由に該当しないとしても,当該箇所について,本件非公開決定の取消しを請求することはできない。 (ウ) 第2文書についてa 報告書第2文書(明細表番号25~52,同54~56〔乙4ないし31〕)の各報告書の記載は,各報告書毎にそれぞれ特定の体罰に関する情報が記載されており,各体罰毎に「独立した一体的な情報」をなしている。なお,「表題部分」が存在するものは,「報告部分」と一体をなすものと見るべきである。 したがって,各報告書毎に1箇所でも非公開事由に該当する部分があれば,当該報告書の他の箇所が非公開事由に該当しないとしても,当該箇所について,非公開決定の取消しを請求することはできない。 b 診断書,顛末書,事情聴取書乙第5号証の体罰報告書(明細表番号26)には診断書が添付さ 箇所について,非公開決定の取消しを請求することはできない。 b 診断書,顛末書,事情聴取書乙第5号証の体罰報告書(明細表番号26)には診断書が添付され,乙第29号証の体罰報告書(明細表番号51)には顛末書が添付され,乙第30号証の1の体罰報告書(明細表番号52)には事情聴取書(乙30の2)(明細表番号53)が添付されている。 診断書,顛末書,事情聴取書は,これらが添付された各報告書とは別個の文書であり,診断書,顛末書,事情聴取書毎に「独立した一体的な情報」をなしているしたがって,診断書,顛末書,事情聴取書毎に1箇所でも非公開事由に該当する部分があれば,当該診断書,顛末書,事情聴取書の他の箇所が非公開事由に該当しないとしても,当該箇所について,非公開決定の取消しを請求することはできない。 イ原告の反論(ア) 第1文書について第1文書(明細表番号1~24)は,それだけでは,最高裁平成13年3月27日判決のいう「非公開事由に該当する独立した一体的情報」の要件を充たすものとはいえない。それゆえ,第1文書(明細表番号1~24)については,最高裁平成13年3月27日判決の部分公開についての説示を機械的に適用することはできない。 (イ) 第2文書について第2文書(明細表番号25~56)に関しては,診断書,顛末書,事情聴取書,反省文が添付,移記されているものはそれらも含めて,1個の公文書の中における一つの体罰事件に関する情報全体が,それも体罰を受けた生徒の観点から見たときに限って,最高裁平成13年3月27日判決のいう「非公開事由に該当する独立した一体的情報」を構成 ,1個の公文書の中における一つの体罰事件に関する情報全体が,それも体罰を受けた生徒の観点から見たときに限って,最高裁平成13年3月27日判決のいう「非公開事由に該当する独立した一体的情報」を構成すると考えられる。 診断書,顛末書,事情聴取書,反省文は,それのみで,「非公開事由に該当する独立した一体的情報」を構成するものではない。 (ウ) 裁量的部分公開と司法審査「非公開事由に該当する独立した一体的情報」については,基本的に実施機関の裁量は,それを全面非公開とするか,さらなる部分公開とするかという点のみに認められるのであり,実施機関が一旦部分公開を行った以上,非公開部分は,個人識別情報のみ(本件条例1号前段の場合),あるいは「個人の権利利益を害するおそれ」(本件条例1号後段の場合)のある部分のみに限られる。 したがって,被告が,原告からの本件公文書公開請求に対し,「非公開事由に該当する独立した一体的情報」を部分公開している以上,被告が本訴で一切司法審査が及ばないと主張するのは失当であり,「独立した一体的情報」のある箇所に非公開事由に該当する部分があっても,他の箇所が非公開事由に該当しない場合には,当該箇所について,非公開決定の取消しを請求することができるというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件条例6条1号前段の非公開情報-A分類情報)の検討(1) 争いのない事実等次の2点は,当事者間に争いがない。 ア第2文書(明細表番号25~56)のA分類情報は,それ自体で体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒が識別できる情報である。 イ第2文書(明細表番号25~56)のA分類情報のうち,体罰を受けた 文書(明細表番号25~56)のA分類情報は,それ自体で体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒が識別できる情報である。 イ第2文書(明細表番号25~56)のA分類情報のうち,体罰を受けた生徒を識別できる情報は,本件条例6条1号前段の非公開情報である。 (2) 公立学校の教員の生徒に対する体罰に関する情報についてア本件条例6条1号前段の解釈(ア) 本件条例6条1号前段は,「個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるものうち,通常他人に知られたくないと認められるもの」を非公開情報と定めている。これは,個人のプライバシーを保護し,個人の尊厳と自由を守るために定められたものである。 (イ) ところで,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)5条1号ハは,公務員の個人に関する情報であっても,当該情報がその「職務の遂行に係る情報」であるときは,当該情報のうち,当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る情報は,非公開情報ではないと規定している。 そして,「職務の遂行に係る情報」とは,公務員が行政機関その他の国の機関又は地方公共団体の機関の一員として,その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば,行政処分その他の公権力の行使に係る情報,職務としての会議への出席,発言その他の事実行為に関する情報がこれに含まれる(詳解情報公開法,総務省行政管理局編,51・52頁)。 また,「職務の遂行に係る情報」は,具体的な職務の遂行との直接の関連を有する情報をいう。例えば,公務員の情報であっても,職員の人事管理上保有する健康情報,休暇情報等は,管理される職員の個人情報として保護される必要があり,「職務 は,具体的な職務の遂行との直接の関連を有する情報をいう。例えば,公務員の情報であっても,職員の人事管理上保有する健康情報,休暇情報等は,管理される職員の個人情報として保護される必要があり,「職務の遂行に係る情報」ではない(詳解情報公開法,総務省行政管理局編,52頁)。 (ウ) このような規定を欠く本件条例6条1号前段についても,「公務員の職務の遂行に係る情報」は,「個人に関する情報」ではあるが,「通常他人に知られたくないと認められるもの」に当たらず,公務員の「職務の遂行に係る情報」が記載された公文書については,公開しなければならないものと解する(甲55〔情報公開事務の手引,兵庫県企画管理部管理局文書課県民情報室発行〕-17頁)。 そして,ある公務員AがBによって懲戒処分を受けた場合,当該処分を行うことは,Bにとっては「職務の遂行に係る情報」ではあるが,Aにとっては「個人に関する情報」であり,「職務の遂行にかかる情報」ではない。 したがって,Aの懲戒処分に関する情報であって,Aを識別することができる情報は,本件条例6条1号前段所定の非公開情報に当たるというべきである。 イ本件への当てはめ第1文書は,公立学校の教員が,生徒に対して体罰を行ったことを理由に,懲戒処分を受けたことに関する情報であり,第2文書は,公立学校の教員が,生徒に対して体罰を行ったことから,学校長から調査され,兵庫県教育委員会に報告された体罰の内容に関する情報である。 ところで,体罰を行った教員が,体罰を行ったことを理由に懲戒処分を受けたことや,学校長から体罰の内容を調査され,兵庫県教育委員会に報告されたことは,当該教員の経歴,社会生活に関する情報であり,資質・名誉に係る「個人に た教員が,体罰を行ったことを理由に懲戒処分を受けたことや,学校長から体罰の内容を調査され,兵庫県教育委員会に報告されたことは,当該教員の経歴,社会生活に関する情報であり,資質・名誉に係る「個人に関する情報」であって,「通常他人に知られたくないと認められる情報」である。 したがって,上記体罰に関する情報であって,体罰を行った教員を識別することができる情報は,体罰を行った教員の「個人に関する情報」であり,「通常他人に知られたくないと認められる情報」であって,「職務の遂行に係る情報」ではないので,本件条例6条1号前段所定の非公開情報に当たるというべきである。 (3) まとめ以上によると,明細表番号25~56(第2文書)のA分類情報は,個人に関する情報であって,それ自体で加害教員又は被害生徒が識別できる情報であり,通常他人に知られたくないと認められる情報であるので,本件条例6条1号前段の非公開情報であることが認められる。 2 争点2(本件条例6条1号前段の非公開情報-B分類情報)の検討(1) 検討対象ア当事者間で争いのない事実,及び争点1(本件条例6条1号前段の非公開情報-A分類情報)で認定した事実によると,明細表番号1~56(第1文書,第2文書)のB分類情報も,体罰を行った教員も含めて個人に関する情報であり,通常他人に知られたくないと認められる情報であることが認められる。 イしたがって,争点2(本件条例6条1号前段の非公開情報-B分類情報)で検討しなければならない事項は,「別紙明細表番号1~56(第1文書,第2文書)のB分類情報は,それ自体では体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒を識別できないが,他の情報と照合することにより特定の個人を識別され得る情報」と認められ 別紙明細表番号1~56(第1文書,第2文書)のB分類情報は,それ自体では体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒を識別できないが,他の情報と照合することにより特定の個人を識別され得る情報」と認められるか否かである。 (2) 本件条例6条1号前段の解釈ア本件条例6条1号前段は,「個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるもののうち,通常他人に知られたくないと認められるもの」を非公開情報と定めており,情報公開法5条1号のように,「当該情報に含まれる氏名,生年月日,その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることになるものを含む。)」の明文規定を欠く。 イしかし,本件条例6条1号前段の「特定の個人を識別することができるもの」とは,氏名,住所等により特定の個人を直接識別することができる場合だけでなく,その情報だけでは特定の個人を識別することはできないが,他の情報と比較的容易に関連付けることができ,そのことにより,間接的に特定の個人を識別することができる場合も含める趣旨と解する(甲55〔情報公開事務の手引,兵庫県企画管理部管理局文書課県民情報室発行〕-16頁)。 ウそして,「他の情報」の意義について,最高裁平成6年1月27日判決・民集48巻1号53頁は,「一般人が通常入手しうる関連情報と照合することによって相手方が識別されうる」情報と説示している。 エしたがって,上記「一般人が通常入手しうる関連情報」としては,広く刊行されている新聞・雑誌・書籍や,図書館等の公共施設で一般に入手可能な情報(詳解情報公開法,総務省行政管理局編,47頁)等をいい,特別の調査をすれば入手しうるかも知れないような情報については, く刊行されている新聞・雑誌・書籍や,図書館等の公共施設で一般に入手可能な情報(詳解情報公開法,総務省行政管理局編,47頁)等をいい,特別の調査をすれば入手しうるかも知れないような情報については,他の情報に含まれないものと解する。 そして,図書館等の公共施設で入手可能な書籍等からの情報であっても,国立図書館,最高裁判所図書館,あるいはある特定地域のごく限られた図書館には開架されているが,一般人には,そのような特定の図書館に当該書籍等が開架されているとは容易に思いつかないような書籍等からの情報については,「一般に」入手可能な情報とはいえないものと解するのが相当である。 また,他の情報と関連付けることにより,比較的容易に特定の個人を識別することができる場合でなければならず,特殊な知識の持ち主が,熱意をもって長時間かけて他の情報と関連付けて検討を加えない限り,特定の個人を識別することができない場合は含まれないものと解する。 (3) 照合可能な情報についてア照合可能と認められる情報次の(ア)の情報は,原告が既に得ている情報であり,次の(イ)の情報は,原告が容易に得ることができる情報であり,次の(ウ)(エ)の情報は,一般人が通常入手しうる情報(広く刊行されている新聞・雑誌・書籍,図書館等の公共施設で一般に入手可能な情報)と認められるので,これらの情報は照合可能な情報と認めることができる。 (ア) 第1文書の明細表番号6~24に関する体罰については,第2文書中の同一体罰に関する情報(別紙文書照合表参照)が存在する。 (イ) 第1文書の明細表番号1~5の体罰についても,学校長から被告に提出された報告書が存在するので,誰でも,本件条例に従って公文書公開請求をすれば,第2文書と同 参照)が存在する。 (イ) 第1文書の明細表番号1~5の体罰についても,学校長から被告に提出された報告書が存在するので,誰でも,本件条例に従って公文書公開請求をすれば,第2文書と同程度の情報を得ることができる。 (ウ) 近畿学校一覧(乙32)近畿地区所在の学校名,所在地等が記載されている単行本であり,市販されているので書店で購入できる。しかし,そこには,体罰を行った教員名を特定するのに参考となる情報は記載されていない。 (エ) 教育委員会月報(乙39)教員に関する懲戒処分の状況が搭載されており,一般の刊行物であって,購入が可能である。しかし,そこには,体罰を行った教員名を特定するのに参考となる情報は記載されていない。 イ照合可能とは認められない情報被告は,次のような情報も照合可能な情報であると主張する。しかし,これらの情報は,いずれも,原告は勿論のこと,一般人が通常入手しうる情報ともいえず,照合可能な情報と認めることはできない。 (ア) 県立学校の学校要覧(乙33)各学校毎に編纂されており,当該学校についての組織,クラス,教科及び担任,分掌,職員の住所,氏名,電話番号が掲載されている。県立図書館に開架されており,自由に閲覧・謄写ができる(乙41)。 しかし,県立学校の学校要覧(乙33)が県立図書館におかれ,その情報を自由に入手できるとの認識を一般通常人が有しているか,疑問である上,県立図書館は,県下でも数か所に過ぎない上,そこで該当の情報を入手するためには,そこまで赴くため,少なからず,時間と労力を要することになる。そうすると,県立学校の学校要覧は,容易に得ることができる情報には該当しないとするのが相当である。 こで該当の情報を入手するためには,そこまで赴くため,少なからず,時間と労力を要することになる。そうすると,県立学校の学校要覧は,容易に得ることができる情報には該当しないとするのが相当である。 (イ) 市町村立学校の学校要覧(乙34,51~55)各学校毎に編纂されており,① 当該学校についての組織,クラス,教科及び担任,分掌,② 職員の住所,氏名,電話番号が掲載されている。所属教育委員会その他学校関係者(職員,PTA役員等)に配布されているにすぎない。 一般通常人が市町村立学校の学校要覧を入手することは容易ではない。 (ウ) 人事記録(乙35)教師の人事に関する事項(採用年月日,免許の種別,学校歴等)が記載されている。教育委員会が管理するものであり,情報公開条例による公開請求をすれば,公開を受けることが可能である。しかし,一般通常人が,人事記録に上記事項が記載されており,情報公開条例による公開請求をすれば,公開を受けることが可能であるとの認識を有しているか,疑問である。 (エ) 学校行事予定表(乙37)当該学校において閲覧が可能であるほか,教室に掲示されていたり,PTAの集会に出席した父兄に配布されることもある。しかし,一般通常人が学校行事予定表を入手することは容易ではない。 (オ) 通学区域に関する資料(乙38)各市町村の規則によって通学区域が定められており,県立図書館に開架されている。しかし,一般通常人が,通学区域が各市町村の規則に定められていることや,各市町村の規則が県立図書館に開架されていて,その情報を自由に入手できるとの認識を有しているか,疑問である。 (カ) 兵庫県教育関係職員録(甲79,乙40 規則に定められていることや,各市町村の規則が県立図書館に開架されていて,その情報を自由に入手できるとの認識を有しているか,疑問である。 (カ) 兵庫県教育関係職員録(甲79,乙40)① 教員の氏名,勤務学校名,担当学年・クラス・教科,住所,②学校のクラス数,生徒数等が記載されており,兵庫県教職員組合が発行しているもので,兵庫県下の教職関係者に頒布されているものである。兵庫県立図書館にも開架されており,自由に閲覧謄写ができる(乙41の6・7)。 しかし,兵庫県教育関係職員録(甲79,乙40)が県立図書館におかれ,その情報を自由に入手できるとの認識を一般通常人が有しているか,疑問である上,県立図書館は,県下でも数か所に過ぎない上,そこで該当の情報を入手するためには,そこまで赴くため,少なからず,時間と労力を要することになる。そうすると,兵庫県教育関係職員録は,容易に得ることができる情報には該当しないとするのが相当である。 (4) 第1文書についての検討ア非公開情報の内容被告は,明細表番号1~24記載のとおり,第1文書中,次の各情報はB分類情報であり,他の情報と照合することにより,体罰を行った教員の氏名を識別され得る情報であって,本件条例6条1号前段所定の非公開情報であると主張する。 (ア) 体罰を行った教員の担当教科名,担任クラス名(イ) 体罰を行った教員の教科以外の担当校務名(ウ) 体罰を行った教員の教職経験年数,在校年数(エ) 体罰が行われた学校の生徒数,学級数イ検討(ア) 第1文書に記載された体罰を行った教員の担当教科名,担任クラス名,教科以外の担当校務名,教職 (エ) 体罰が行われた学校の生徒数,学級数イ検討(ア) 第1文書に記載された体罰を行った教員の担当教科名,担任クラス名,教科以外の担当校務名,教職経験年数,在校年数,体罰が行われた学校の生徒数,学級数が分かっても,勤務する学校名が分からないので,第2文書中の同一体罰に関する情報(別紙文書照合表参照),近畿学校一覧(乙32),通学区域に関する資料(乙38),教育委員会月報(乙39)を照合しただけでは,特殊な知識の持ち主が,熱意をもって長時間かけてこれらの情報と関連付けて検討を加えない限り,体罰を行った教員を特定することはできない。 (イ) したがって,第1文書に記載された上記各情報は,他の情報と照合することにより,体罰を行った教員の氏名を識別され得る情報とはいえず,本件条例6条1号前段所定の非公開情報ではない。 (5) 第2文書の「表題部分」についての検討ア非公開情報の内容被告は,第2文書の「表題部分」中,次の各情報はB分類情報であり,他の情報と照合することにより,体罰を行った教員の氏名を識別され得る情報であって,本件条例6条1号前段所定の非公開情報であると主張する。 (ア) 学校名(イ) 学校設置者名(ウ) 校長の氏名(エ) 教育委員会名(オ) 学校名及び校長の公印の印影イ検討(ア) 第2文書の「表題部分」中の学校名,校長の氏名,学校名及び校長の公印の印影が分かれば,第2文書の「報告部分」,顛末書,事情聴取書,反省文中の開示された情報と照合すれば,比較的容易に体罰を行った教員を特定することができる。 (イ) しかし,第2文書の「表題部分」中の学校設置者名,教 告部分」,顛末書,事情聴取書,反省文中の開示された情報と照合すれば,比較的容易に体罰を行った教員を特定することができる。 (イ) しかし,第2文書の「表題部分」中の学校設置者名,教育委員会名が分かっても,① この情報に,② 第2文書の「報告部分」,顛末書,事情聴取書,反省文中の開示された情報や,③ 近畿学校一覧(乙32),教育委員会月報(乙39)に記載された情報と照合しても,特殊な知識の持ち主が,熱意をもって長時間かけてこれらの情報と関連付けて検討を加えない限り,体罰を行った教員を特定することはできない。 (ウ) 以上によると,第2文書の「表題部分」中の学校設置者名,教育委員会名は,他の情報と照合することにより,体罰を行った教員の氏名を識別され得る情報とはいえず,本件条例6条1号前段所定の非公開情報ではない。 他方,第2文書の「表題部分」中の学校名,校長の氏名,学校名及び校長の公印の印影は,他の情報と照合することにより,体罰を行った教員の氏名を識別され得る情報であり,本件条例6条1号前段所定の非公開情報である。 3 争点4(部分公開の可否)の検討(1) 本件条例7条(部分公開)の解釈ア最高裁平成13年3月27日判決最高裁平成13年3月27日判決・民集55巻2号530頁は,次のように判示している。 (ア) 大阪府公文書公開条例(昭和59年大阪府条例第2号)10条は,非公開事由に該当する独立した一体的な情報を更に細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分にはもはや非公開事由に該当する情報は記録されていないものとみなして,これを公開することまでをも実施機関に義務付けているものと解することはできない。 (イ) したがって,実施機関において,こ や非公開事由に該当する情報は記録されていないものとみなして,これを公開することまでをも実施機関に義務付けているものと解することはできない。 (イ) したがって,実施機関において,これを細分化することなく一体として非公開決定をしたときに,住民等は,実施機関に対し,同条を根拠にして,公開することに問題のある箇所のみを除外して,その余の部分を公開するよう請求する権利はなく,裁判所もまた,当該非公開決定の取消訴訟において,実施機関がこのような態様の部分公開をすべきであることを理由として,当該非公開決定の一部を取り消すことはできない。 (ウ) ところで,実施機関が,その裁量判断により,公文書のうち個人識別部分のみを非公開とし,その余の部分を公開した場合,これに不服のある住民等は,実施機関に対し,非公開とされた部分をも公開すべきであると主張して,訴訟手続により当該部分に係る非公開決定の全部取消しを求めることができ,裁判所は,当該非公開決定が違法と判断したときは,これを取消すことができると解するのが相当である。 イ最高裁平成14年2月28日判決最高裁平成14年2月28日判決・判例時報1782号3頁(民集56巻2号467頁)は,次のとおり判示している。 (ア) 愛知県公文書公開条例(昭和61年愛知県条例第2号)には,公開請求に係る公文書に記録されている情報が非公開事由に該当するが,当該情報の一部を除くことにより,残余の部分のみであれば非公開事由に該当しないことになるものとして,当該残余の部分を公開すべきものとする定めは存在しない(このような定めが存在する例として,情報公開法6条2項参照)。 (イ) したがって,愛知県公文書公開条例6条2項(部分公開)は,非公開事由に該当する 分を公開すべきものとする定めは存在しない(このような定めが存在する例として,情報公開法6条2項参照)。 (イ) したがって,愛知県公文書公開条例6条2項(部分公開)は,非公開事由に該当する独立した一体的な情報を更に細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分にはもはや非公開事由に該当する情報は記録されていないものとみなして,これを公開することまでをも実施機関に義務付けているものと解することはできない。 ウ情報公開法の部分公開に関する定め情報公開法は,部分公開に関し,次のように定めている。 (ア) 行政機関の長は,開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合において,不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは,開示請求者に対し,当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。ただし,当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるときは,この限りでない(6条1項)。 (イ) 開示請求に係る行政文書に前条第1号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されている場合において,当該情報のうち,氏名,生年月日その他の特定の個人を識別することができることになる記述等の部分を除くことにより,公にしても,個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは,当該部分を除いた部分は,同号の情報に含まれないものとみなして,前項の規定を適用する(6条2項)。 エ本件条例7条(部分公開)の解釈(ア) 本件条例7条は,大阪府公文書公開条例(昭和59年大阪府条例第2号)10条や愛知県公文書公開条例(昭和61年愛知県条例第2号)6条2項と同様の定めであり,情報公開法6条2項のように,公開請求に係る 本件条例7条は,大阪府公文書公開条例(昭和59年大阪府条例第2号)10条や愛知県公文書公開条例(昭和61年愛知県条例第2号)6条2項と同様の定めであり,情報公開法6条2項のように,公開請求に係る公文書に記録されている情報が条例所定の非公開事由に該当するにもかかわらず,当該情報の一部を除くことにより,残余の部分のみであれば非公開事由に該当しないことになるものとして,当該残余の部分を公開すべきものとする定めは存在しない。 したがって,本件条例7条(部分公開)についても,最高裁平成13年3月27日判決や最高裁平成14年2月28日判決と同様に解釈することになる(同判決が掲載された判例時報1749号の解説参照〔28頁1段目の後ろから4行目~同4段目前から5行目まで〕)。 (イ) ところで,原告は,実施機関が本件決定でしたように「独立した一体的な情報」について,全面的非公開とせず,それを細分化して裁量的公開(部分公開)をした場合,個人識別情報のみの必要最小限の範囲に限られるものであって,それに対する司法判断が可能である旨主張する。 確かに,本件決定のように「独立した一体的な情報」について,全面的非公開とせず,それを細分化して裁量的公開(部分公開)をした場合,同非公開部分に不服のある住民らは,非公開とされた部分をも公開すべきであると主張して,訴訟手続により当該部分に係る非公開決定の取消しを求めることができ,裁判所は,当該非公開決定が違法であると判断したときは,これを取消すことができると解するのが相当である(前掲最高裁判所平成13年3月27日判決)。 しかし,住民に地方公共団体の機関が保有する公文書の公開を請求する権利をどのように付与するかは,専ら地方公共団体がその条例において定めるべき事柄であって,本件条例 3年3月27日判決)。 しかし,住民に地方公共団体の機関が保有する公文書の公開を請求する権利をどのように付与するかは,専ら地方公共団体がその条例において定めるべき事柄であって,本件条例によれば,上記(ア)で説示したとおり,原告には,実施機関である被告に対し,「非公開事由に該当する独立した一体的な情報」を更に細分化して,問題のある箇所のみを除外してその余の部分を公開するよう請求する権利はなく,他方,被告が本件条例7条に基づいて部分公開を義務づけられている範囲は,1個の公文書を本件条例6条各号のいずれかに該当する情報が記載されている部分(非公開該当部分)とそれ以外の部分に分離した上,非公開該当部分全体を非公開とし,それ以外の部分を公開すべきことまでであることからすると,原告の上記主張は,理由がない。 (2) 本件(第2文書)への当てはめア独立した一体的な情報について(ア) 作成趣旨,分類,報告部分の記載内容,診断書・顛末書・事情聴取書・反省文について前記第2の2(4)イの(ア)(イ)(ウ)(エ)(前記3~5頁)記載のとおり(イ) 文書の個数a 第2文書の「表題部分」(兵庫県教育事務所長作成)と「報告部分」(学校長作成)は,作成者が異なっており(乙4~31),別個の文書である。 そして,「表題部分」は,明細表の番号毎に(乙号証の番号毎に)別個の文書である。なお,乙第29号証は,兵庫県教育事務所長作成の「表題部分」と,市町村教育委員会教育長作成の「表題部分」が存在し,「表題部分」として2個の文書が存在する。 b ① 第2文書の「報告部分」(学校長作成)と,② そこに添付されている診断書2通(乙5,明細表番号26,医師作成),顛末書( 在し,「表題部分」として2個の文書が存在する。 b ① 第2文書の「報告部分」(学校長作成)と,② そこに添付されている診断書2通(乙5,明細表番号26,医師作成),顛末書(乙29,明細表番号51,体罰を行った教員作成),事情聴取書(乙30の2,明細表番号53,学校設置者(某市)の職員作成),③ そこに移記されている反省文(乙31,明細表番号56,体罰を行った教員作成)は,いずれも作成者が異なっており(乙4~31),別個の文書である。 そして,「報告部分」は明細表の番号毎に(乙号証の番号毎に)別個の文書であり,診断書2通は2個の文書であり,顛末書,事情聴取書,反省文はそれぞれが1個の文書である。 (ウ) 独立した一体的な情報① 第2文書の「表題部分」は,各文書の個数毎に独立した一体的な情報である。② 第2文書の「報告部分」は,各体罰毎に独立した一体的な情報である。③ 診断書2通は2個の独立した一体的な情報である。顛末書,事情聴取書,反省文は,それぞれが独立した一体的な情報である。 イ第2文書の「表題部分」(ア) 本件条例6条1号前段所定の非公開情報第2文書の「表題部分」中の学校設置者名,教育委員会名は,他の情報と照合することにより,体罰を行った教員の氏名を識別され得る情報とはいえず,本件条例6条1号前段所定の非公開情報ではない(前記2(5)イ(ウ)-前記21頁)。 他方,第2文書の「表題部分」中の学校名,校長の氏名,学校名及び校長の公印の印影は,他の情報と照合することにより,体罰を行った教員の氏名を識別され得る情報であり,本件条例6条1号前段所定の非公開情報である(前記2(5)イ(ウ)-前記21頁)。 校名及び校長の公印の印影は,他の情報と照合することにより,体罰を行った教員の氏名を識別され得る情報であり,本件条例6条1号前段所定の非公開情報である(前記2(5)イ(ウ)-前記21頁)。 (イ) 非公開部分の公開請求について第2文書の「表題部分」に非公開部分が存在するのは,明細表番号25~27,30,32,35,40,41,43,44,46~48,52である。 そして,被告が非公開情報ではない学校設置者名,教育委員会名を非公開としてしまったのは,明細表番号26,52のみである。しかし,被告は,学校設置者名,教育委員会名を誤って非公開としてしまった明細表番号26,52については,これらと併せて学校名も非公開としている。学校名を非公開としたのは相当である。それゆえ,原告は,被告に対し,明細表番号26,52のうちの誤って非公開とした学校設置者名,教育委員会名のみを公開せよと請求することはできない。 その余(明細表番号25,27,30,32,35,40,41,43,44,46~48)は,全て,本件条例6条1号前段所定の非公開情報である学校名,校長の氏名,学校名及び校長の公印の印影を非公開としたものである。被告がこれらを非公開としたのは相当である。 したがって,原告は,被告に対し,第2文書の「表題部分」の非公開部分について,そのいずれについても,公開するよう請求する権利はない。 ウ第2文書の「報告部分」(ア) 第2文書の「報告部分」(明細表番号25~52,54~56)のA分類情報は,個人に関する情報であって,それ自体で体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒が識別できる情報であり,通常他人に知られたくないと認められる情報であるので,本件条例6条 52,54~56)のA分類情報は,個人に関する情報であって,それ自体で体罰を行った教員又は体罰を受けた生徒が識別できる情報であり,通常他人に知られたくないと認められる情報であるので,本件条例6条1号前段の非公開情報である(前記1(3)-前記15頁)。 (イ) 第2文書の「報告部分」(明細表番号25~52,54~56)は,各体罰毎に独立した一体的な情報である(前記3(2)ア(ウ)-前記26頁)。そして,第2文書の「報告部分」には,各体罰毎に必ず体罰を行った教員の氏名,体罰を受けた生徒の氏名(A分類情報)が記載されている(明細表番号25~52,54~56参照)。 (ウ) したがって,原告は,被告に対し,第2文書の「報告部分」の非公開部分については,B分類情報も含めて,その全部について公開するよう請求する権利はない。 エ診断書2通,顛末書,事情聴取書,反省文(ア) 乙第5号証の体罰報告書(明細表番号26)には,医師作成に係る体罰を受けた生徒の診断書2通が,乙第29号証の体罰報告書(明細表番号51)には,体罰を行った教員作成に係る顛末書が,乙第30号証の1の体罰報告書(明細表番号52)には,体罰を行った教員及び同教員が所属する学校の校長からの体罰に関する事情聴取書(乙30の2,明細表番号53)がそれぞれ添付されている。乙第31号証の体罰報告書(同文書番号56)には,体罰を行った教員の反省文が移記されている。 (イ) 診断書2通,顛末書,事情聴取書,反省文には,その全部について,体罰を受けた生徒や体罰を行った教員の氏名(A分類情報)が記載されている(明細表番号26,51,53,56参照)。 (ウ) そして,診断書2通は,2個の独立した一体的な情報であり,顛末書,事情 た生徒や体罰を行った教員の氏名(A分類情報)が記載されている(明細表番号26,51,53,56参照)。 (ウ) そして,診断書2通は,2個の独立した一体的な情報であり,顛末書,事情聴取書,反省文は,それぞれが独立した一体的な情報である(前記3(2)ア(ウ)-前記26頁)。 したがって,原告は,被告に対し,診断書2通,顛末書,事情聴取書,反省文の非公開部分について,B分類情報も含めて,その全部について公開するよう請求する権利はない。 第4 結論 1 まとめ以上の認定判断によると,原告の本件非公開決定取消請求の当否は,次のとおりである。 (1) 第1文書について明細表番号1~9,11~24の非公開部分の非公開決定の取消請求は理由がある(前記第3の2(4)(イ)-前記20頁)。 (2) 第2文書について① 第2文書の「表題部分」,② 第2文書の「報告部分」,③ 診断書2通,顛末書,事情聴取書,反省文の各非公開部分の非公開決定の取消請求はいずれも理由がない(前記第3の3(2)イ(イ)〔前記26頁,27頁〕,同ウ(ウ)〔前記27頁〕,同エ(ウ)〔前記28頁〕)。 2 結論よって,原告の本件非公開決定の取消請求は,明細表番号1~9,11~24の非公開部分の非公開決定の取消しを求める限度で理由があるので,これを認容し,その余は理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判長裁判官紙浦健二 裁判官中村哲 裁判長 裁判官紙浦健二 裁判官中村哲 裁判官竹村昭彦は,研修のため,署名押印できない。 裁判長 裁判官紙浦健二
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