平成16(受)482 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年11月18日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 平成15(ネ)1405
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判決文本文3,843 文字)

主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人田口邦雄ほかの上告受理申立て理由2について 1 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1) 住宅・都市整備公団(以下「住宅公団」という。)は,平成2年,その設営に係る千葉県柏市所在のa団地及び横浜市所在のb団地の建て替え事業に着手した。a団地の建て替えにより,建て替え後の建物のうち,1200戸が賃貸に供され,350戸が分譲されることが,また,b団地の建て替えにより,建て替え後の建物のうち,725戸が賃貸に供され,132戸が分譲されることがそれぞれ計画された。住宅公団は,上記各団地内の住宅を賃借し居住するなどしていた被上告人らに対し,建て替え後の分譲住宅の購入を希望し,a団地については平成4年9月30日までに,b団地については同年3月31日までにそれぞれ住宅を明け渡すなどして建て替え事業に協力した者については,一般公募に先立つ優先購入の機会の確保,入居する住宅が完成するまでの仮住居の確保並びに移転費用相当額及び100万円の各支払を約し,被上告人らとの間で,覚書(以下「本件覚書」という。)を交わした。上記優先購入については,本件覚書中に,住宅公団は,建て替え後の分譲住宅への入居が可能となった場合には,被上告人らに対し,公募に先立ち,優先して住宅をあっせんする旨の条項(以下「本件優先購入条項」という。)が規定されていた。本件優先購入条項は,被上告人らに対するあっせん後未分譲住宅の一般公募が直ちに行われること及び一般公募における譲渡価格と被上告人らに対する譲渡価格が少なくとも同等であることを前提とし,その上で抽選によることなく被上告人らが確実に住宅を確保することができることを約したも 直ちに行われること及び一般公募における譲渡価格と被上告人らに対する譲渡価格が少なくとも同等であることを前提とし,その上で抽選によることなく被上告人らが確実に住宅を確保することができることを約したものである。被上告人- 1 -らは,上記各期限までに,住宅公団との間で従前の賃貸借契約を合意解約し,住宅の明渡しを行うなどして上記建て替え事業に協力した。 (2)住宅公団は,被上告人番号1から43までの被上告人らとの間で,平成7年10月31日,a団地の建て替え後の新団地であるc内の分譲住宅につき譲渡契約を締結し,また,被上告人番号44から58までの被上告人らとの間で,平成6年12月10日,b団地の建て替え後の新団地であるd内の分譲住宅につき譲渡契約(以下,上記c内の分譲住宅の譲渡契約と併せて「本件各譲渡契約」という。)を締結した。 (3) ところで,住宅公団は,一般的に,建て替え後の分譲住宅について,当該建て替え対象団地の賃貸住宅居住者に対して優先的にあっせんし,その後は他の建て替え団地の居住者に対してあっせんするものとする取扱いをしており,cについては平成7年10月から平成8年5月ころまでの間,dについては平成6年10月から平成7年11月ころまでの間,未分譲住宅(cにつき83戸,dにつき46戸)のあっせんを知らせる書面を作成し,これを他の建て替え団地の居住者に対して配布した。しかし,他の建て替え団地の居住者に対する上記あっせんによって未分譲住宅を購入した者はいなかった。住宅公団は,それほどの期間を要することなく,上記あっせんによって未分譲住宅が完売する可能性のないことを知り得た。 (4) 被上告人らは,本件各譲渡契約締結当時,本件覚書中の本件優先購入条項により,被上告人らに対するあっせん後,未分譲住宅の一般公募が直ちに行われ,その譲 が完売する可能性のないことを知り得た。 (4) 被上告人らは,本件各譲渡契約締結当時,本件覚書中の本件優先購入条項により,被上告人らに対するあっせん後,未分譲住宅の一般公募が直ちに行われ,その譲渡価格は少なくとも被上告人らに対する譲渡価格と同等であるものと認識していた。他方,住宅公団は,本件各譲渡契約締結当時,被上告人らに対する譲渡価格が高額に過ぎ,その価格で一般公募を行っても購入希望者が現れないことを認識しており,被上告人ら及び他の建て替え団地の居住者に対するあっせん後直ちに未- 2 -分譲住宅の一般公募をする意思を有していなかった。それにもかかわらず,住宅公団は,被上告人らに対し,住宅公団がこのような意思であったことにつき説明をしなかった。 (5) 住宅公団は,平成10年7月25日に至って,cの未分譲住宅83戸及びdの未分譲住宅46戸について,値下げをした上で一般公募をした。平均値下げ率は,前者につき25.5%,後者につき29.1%,平均値下げ額は,前者につき854万8000円,後者につき1631万4000円であった。 (6) 住宅公団は,都市基盤整備公団法の成立により,平成11年10月1日に解散し,その権利義務は都市基盤整備公団が承継した。また,都市基盤整備公団は,独立行政法人都市再生機構法の成立により,平成16年7月1日に解散し,その権利義務は上告人が承継した。 2 本件は,被上告人らが,住宅公団は,本件各譲渡契約を締結する際,被上告人らに対し,信義則上,被上告人らに対するあっせん後直ちに未分譲住宅の一般公募をする意思がないことを説明すべき義務があったにもかかわらず,これを怠ったことから,被上告人らにおいて住宅公団が設定した分譲住宅の価格の適否について十分に検討した上で本件各譲渡契約を締結するか否かを決定する機会を奪われ を説明すべき義務があったにもかかわらず,これを怠ったことから,被上告人らにおいて住宅公団が設定した分譲住宅の価格の適否について十分に検討した上で本件各譲渡契約を締結するか否かを決定する機会を奪われたなどと主張して,上告人に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,慰謝料等の支払を求める事案である。 3 そこで検討すると,前記事実関係によれば,次のことが明らかである。(1)被上告人らは,住宅公団との間で,その設営に係る団地内の住宅につき賃貸借契約を締結していたが,住宅公団の建て替え事業に当たって,借家権を喪失させるなどしてこれに協力した。(2) 住宅公団と被上告人らとの間で交わされた本件覚書中の本件優先購入条項は,被上告人らに対するあっせん後未分譲住宅の一般公募が直ちに行われること及び一般公募における譲渡価格と被上告人らに対する譲渡価格- 3 -が少なくとも同等であることを前提とし,その上で抽選によることなく被上告人らが確実に住宅を確保することができることを約したものである。(3) そのため,被上告人らは,本件優先購入条項により,本件各譲渡契約締結の時点において,被上告人らに対するあっせん後未分譲住宅の一般公募が直ちに行われ,価格の面でも被上告人らに示された譲渡価格は,その直後に行われる一般公募の際の譲渡価格と少なくとも同等であるものと認識していた。(4) ところが,住宅公団は,本件各譲渡契約締結の時点において,被上告人らに対する譲渡価格が高額に過ぎ,仮にその価格で未分譲住宅につき一般公募を行っても買手がつかないことを認識しており,そのため被上告人ら及び他の建て替え団地の居住者に対するあっせん後直ちに未分譲住宅の一般公募をする意思を有していなかった。(5) それにもかかわらず,住宅公団は,被上告人らに対し,被上告人らに対するあっ ため被上告人ら及び他の建て替え団地の居住者に対するあっせん後直ちに未分譲住宅の一般公募をする意思を有していなかった。(5) それにもかかわらず,住宅公団は,被上告人らに対し,被上告人らに対するあっせん後直ちに未分譲住宅の一般公募をする意思がないことを説明しなかった。 【要旨】以上の諸点に照らすと,住宅公団は,被上告人らが,本件優先購入条項により,本件各譲渡契約締結の時点において,被上告人らに対するあっせん後未分譲住宅の一般公募が直ちに行われると認識していたことを少なくとも容易に知ることができたにもかかわらず,被上告人らに対し,上記一般公募を直ちにする意思がないことを全く説明せず,これにより被上告人らが住宅公団の設定に係る分譲住宅の価格の適否について十分に検討した上で本件各譲渡契約を締結するか否かを決定する機会を奪ったものというべきであって,住宅公団が当該説明をしなかったことは信義誠実の原則に著しく違反するものであるといわざるを得ない。そうすると,被上告人らが住宅公団との間で本件各譲渡契約を締結するか否かの意思決定は財産的利益に関するものではあるが,住宅公団の上記行為は慰謝料請求権の発生を肯認し得る違法行為と評価することが相当である。上記判断は,所論引用の判例(最高裁平成14年(受)第218号同15年12月9日第三小法廷判決・民集57巻1- 4 -1号1887頁)に抵触するものではない。 4 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官島田仁郎裁判官甲斐中辰夫裁判官泉徳治裁判官才口千晴)- 5 - 判長裁判官島田仁郎裁判官甲斐中辰夫裁判官泉徳治裁判官才口千晴)- 5 -

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