【DRY-RUN】主 文 申請人が被申請人に対し労働契約上の権利を有する地位を仮りに定める。 被申請人は申請人に対し、金八〇六八二〇円および昭和四三年一月以降本案判決確 定に至るまでの間、毎月二五日かぎり一ケ月金三
主文 申請人が被申請人に対し労働契約上の権利を有する地位を仮りに定める。 被申請人は申請人に対し、金八〇六八二〇円および昭和四三年一月以降本案判決確定に至るまでの間、毎月二五日かぎり一ケ月金三九、五五〇円の割合による金員を仮りに支払え。 申請人のその余の申請は却下する。 申請費用は被申請人の負担とする。 事実 一当事者双方の求める裁判申請代理人は主文表示金八〇六、八二〇円につき金一、一八六、五〇〇円を求めたほか主文同旨の裁判を求め、被申請代理人は「申請人の申請を却下する。申請費用は申請人の負担とする。」との裁判を求めた。 二申請の理由申請代理人は、次のとおり述べた。 (一) 被申請人は技術コンサルタント、電気・土木工事の請負および電気機器の製作を目的とする株式会社であり、申請人は昭和三四年六月被申請人に常傭員として雇傭され、同三七年四月一日正社員となつたものである。 (二) 申請人の賃金月額は、同四〇年六月三〇日当時、基本給金三三、七五〇円、家族手当金二、八〇〇円、資格手当、住宅維持費、借家補給金各金一、〇〇〇円合計金三九、五五〇円であり、毎月二五日支払となつていた。 (三) しかるに、被申請人は、申請人を、同年六月三〇日に解雇したとして申請人の就労をこばみ、その地位を争い、同年七月以降の賃金を支払わないから、申請人は被申請人に対し、労働契約上の権利存在確認を求める本案訴訟を提起すべく、その準備中であるが、申請人は賃金のみによつて生活を維持している労働者であつて、本案判決の確定をまつていては、その生活上著しい支障を蒙り、回復しがたい損害を受けるおそれがある。 よつて、本申請に及んだ。 三申請の理由に対する認否ならびに反論被申請代理人は、次のとおり述べた。 (一) 認否申請理由(一)(二)および(三)記 り、回復しがたい損害を受けるおそれがある。 よつて、本申請に及んだ。 三申請の理由に対する認否ならびに反論被申請代理人は、次のとおり述べた。 (一) 認否申請理由(一)(二)および(三)記載の事実中、被申請人が申請人の主張しているように同人の就労をこばみ、その地位を争い、賃金を支払つていないことは認めるが、その余は争う。 (二) 反論被申請人は昭和四〇年六月三〇日申請人に対し懲戒解雇の意思表示をしたが、その理由は次のとおりである。 (1) 申請人は被申請人から同三九年八月インドネシアに出張を命ぜられ同年九月同地に赴いたところ、同四〇年二月、更に、同地から南ベトナム国電力庁(略称EDV。以下単にEDVという)のサービス業務遂行のため、サイゴンに出張を命ぜられ、一〇日間の帰国後、同月一八日現地に到着した。 (2) ところが、当時の被申請人サイゴン事務所長aが近々帰国することになつたので、被申請人は申請人に対し同二月二六日にEDVのサービス業務を早期に完了するよう努めるとともにa所長の担当していた水理、土木に関する技術的業務、即ちダニムダムの漏水調査、ダニム、スレボツク、アツパーセサン、ラニアなど各河川の流量測定、フアンランの灌漑工事、ミトワン橋梁工事に関する連絡業務を引継ぐよう指示した。 当時、申請人以外のサイゴン事務所駐在員は、いずれも他に担当業務を有しており、右業務にさくことはできず、右業務は残務整理的、連絡的なものにすぎず、このため、被申請人が人員をサイゴンに派遣することは経理面からも許されず、申請人はその経歴の上からいつても右業務を引継ぐのに相当であつた。 (3) 同年五月二七日、申請人から被申請人に対し、EDVサービス業務完了を理由とする同月二六日付の帰国許可願が、被申請人サイゴン事務所長を経由して提出されたが、被申請 務を引継ぐのに相当であつた。 (3) 同年五月二七日、申請人から被申請人に対し、EDVサービス業務完了を理由とする同月二六日付の帰国許可願が、被申請人サイゴン事務所長を経由して提出されたが、被申請人としては、申請人がいまだ前記引継業務を完了していなかつたこと、申請人がこれまでの業務遂行に際し、南ベトナム政府係員と人間関係が円滑にいつていたこと、申請人のもと所属していた被申請人技術研究所は、当時、土木実験のみにかたより、申請人の専門である水理実験はなかつたこと、申請人はかねて水理水文専門の海外要員となることを了承しており、同人の意に反するものでないと判断されたことから、申請人の帰国を認めず、同人をサイゴン事務所に転勤させることとし、同年六月一日付をもつてサイゴン事務所長を通じて右発令をした。 (4) 右転勤発令後、同年六月一一日、申請人から被申請人に対し、ベトナム戦局の緊迫化と身辺整理を理由とする同月七日付の一時帰国許可願が提出された。 然し、当時、申請人は休暇のため一時帰国を請求しうる資格、即ち、海外滞在期間が一年に達していなかつたから、特に帰国を必要とする緊急の理由を明らかにすべきであるのに、これがなかつた。 申請人は帰国許可願に身辺整理と記載したのみで、特に同人の家庭上の特殊な事情にふれてなく、又当時のベトナム事情には格別の危険はなかつた。 (5) 申請人は右帰国許可願につけた一四日間の期限内に、被申請人より回答がなかつたことから、サイゴン事務所長らの再三の説得、制止を無視し、かねて被申請人が申請人に交付していた復路航空券を勝手に使用し、前記担当業務を放棄して、同月二三日帰国し、帰国後三日にして、ようやく出社し、その際慰労休暇を請求し、無許可帰国について何等釈明をしなかつた。 (6) 被申請人において、当時施行されていた就業規則第九 記担当業務を放棄して、同月二三日帰国し、帰国後三日にして、ようやく出社し、その際慰労休暇を請求し、無許可帰国について何等釈明をしなかつた。 (6) 被申請人において、当時施行されていた就業規則第九章第四〇条第四号には「職務上の指示命令に不当に従わず、職場の秩序を紊したり、紊そうとしたとき」は「懲戒解雇」にする旨規定されているところ、申請人の(5)記載の行為は右規定に該当するので、前述のように、被申請人は同年六月三〇日申請人に対し懲戒解雇の意思表示をした。よつて本申請は理由がない。 四被申請人主張の解雇および解雇理由に対する認否ならびに反論申請代理人は、次のとおり述べた。 (一) 認否被申請人主張(二)反論記載の事実中、被申請人がその主張するように解雇の意思表示をしたこと、および(1)の事実を認め、(2)のうち申請人は被申請人からEDVのサービス業務を早期に完了し、帰国するa所長の担当業務のうちダニムダムの漏水調査ダニム河の流量測定を引継ぐよう指示されたことを認め、その余を争う。(3)のうち、申請人から被申請人に対し同年五月二六日付でEDVのサービス業務完了を理由とする帰国許可願が提出され、同年六月一日付で被申請人から申請人に対しサイゴン事務所転勤命令が発令されたことを認め、その余は争う。 (4)のうち申請人より被申請人に対し、同年六月七日、一時帰国許可願が提出されたことを認め、その余は争う。(5)のうち申請人は被申請人が交付していた復路航空券を使用して同月二三日帰国し、同月二六日出社し、慰労休暇を請求したことを認め、その余を争う。(6)のうち就業規則第九章第四〇条第四号に被申請人主張の定めがあることは認めるが、申請人に被申請人主張のような解雇事由に該当する行為があつたことは争う。 (二) 反論本件解雇の意思表示は次のいずれかの うち就業規則第九章第四〇条第四号に被申請人主張の定めがあることは認めるが、申請人に被申請人主張のような解雇事由に該当する行為があつたことは争う。 (二) 反論本件解雇の意思表示は次のいずれかの理由から無効である。 (1) 不当労働行為(申請人の組合活動)申請人は昭和三七年四月に日本工営株式会社従業員組合(以下単に組合という)に加入し、同年九月および同三八年九月の組合定期大会において大会議長に選出され、同年九月には技術研究所支部執行委員、同三九年一月に組合副委員長に選出された。組合はこれまで親睦団体的色彩が強く、さしたる活動を行つていなかつたところ、申請人が副委員長に選出された後は、同人の精力的活動により漸次活発化し、同年夏期一時金の要求に際しては、組合において組合結成以来はじめてスト権を確立し、これを背景にして、従来の実績を大巾に上まわる要求額を獲得することに成功した。 即ち、同三八年度の夏期一時金は二・四ケ月分であつたが、同三九年度は二・九ケ月分プラス五、〇〇〇円であつた。 また、申請人は、同三六年一月一日以降、被申請人と組合との間に労働協約が存在しなかつたため、副委員長に選出されると同時に労働協約調査委員会を設置し、自ら委員長に就任し、新労働協約案を作成した。 (被申請人の申請人に対する不利益差別)被申請人は、昭和三九年度において組合の活発化するや、組合役員に対し狙いうち的に海外出張もしくは転勤を命じて組合の弱体化を図り、申請人に対しても、申請人の組合に対する影響力を遮断するため、同三九年八月突如として申請人に対し前記インドネシア出張を命じた。 被申請人は申請人が同年九月二一日インドネシアに出発するまでの間に組合に対し、申請人には同国の所謂ロドヨ計画に必要な水理実験以外の業務は担当させず、右業務が完了すれば直ちに帰国 シア出張を命じた。 被申請人は申請人が同年九月二一日インドネシアに出発するまでの間に組合に対し、申請人には同国の所謂ロドヨ計画に必要な水理実験以外の業務は担当させず、右業務が完了すれば直ちに帰国させるとの確約をしていたにもかかわらず、同四〇年一月には、一〇日間の帰国を認めたのみで再び三ケ月の予定で前記のとおりEDVのサービス業務遂行のため南ベトナムに出張を命じた。 申請人は、同年二月一八日、被申請人の右命令に応じて現地に到着したが、被申請人は更に申請人の帰国を延ばす目的で、右到着の直後の同月二六日に、申請人が帰国中全く話のなかつたダニムダムの漏水調査、ダニム河の流量測定を命じてきた。 しかし、右ダニムダムの漏水調査は、調査のための水位調節が乾期に限定され、業務遂行は時期的に不可能であり、ダニム河の流量測定も南ベトナム残留元日本兵某が担当しており、申請人が担当すべき業務はなかつた。 そこで、申請人は当初に予定された前記EDVのサービス業務を全て完了し、同年五月二六日、右のとおり申請人が担当する業務のないことを詳細に説明し、業務終了による帰国願をサイゴン事務所長を経由して被申請人に提出したところ、被申請人はこれを拒否し、申請人の帰国を阻止する目的で同年六月一日付をもつて被申請人サイゴン事務所に転勤を命じた。 しかし前記のとおり申請人のなすべき業務はなかつたこと、又、当時、南ベトナムにおいては、解放民族戦線の活動の活発化に伴い、被申請人の南ベトナムにおける業務遂行は著しい困難に直面し、サイゴン事務所も縮少もしくは閉鎖せざるを得ない状況にあり、申請人の専門である水理関係の駐在員は必要なく、被申請人が申請人に対して転勤を命ずる業務上の必要は全く存しなかつたのみならず、仮に右転勤命令に応じてサイゴンに残留する場合であつても、転勤は出張と異り 申請人の専門である水理関係の駐在員は必要なく、被申請人が申請人に対して転勤を命ずる業務上の必要は全く存しなかつたのみならず、仮に右転勤命令に応じてサイゴンに残留する場合であつても、転勤は出張と異り相当長期間にわたるので、被申請人の従来の慣行からして日常生活必需品等準備のため一時帰国を許可することになつており、申請人の場合には、単身赴任しており、特に新聞報道等による南ベトナムにおける戦局の深刻化と申請人の任務の危険性を知つた妻が、かつて罹患した精神障害を再発させる危険性も考えられたため、同年六月七日、サイゴン事務所長を経由して被申請人に対して一時帰国願を再度提出した。 しかるに被申請人は前記のとおり申請人の帰国願を拒否し、その回答もなさないため、申請人はやむなく同月二三日帰国したところ、被申請人はこれを理由として同月三〇日申請人に対して本件解雇の意思表示をしたものである。 (結論)以上の事実からすると、被申請人の申請人に対する本件の各海外出張、転勤命令および再度の帰国許可願に対する拒否は、被申請人が申請人の組合活動を嫌悪し、申請人を遠く隔つたインドネシア、南ベトナムに留めて、その活動を不可能ならしめ、申請人の組合に対する影響を遮断する意図のもとになされたものであるから、申請人が被申請人の許可を得ることなく一時帰国したことを理由とする本件解雇の意思表示は労働組合法第七条第一号によつて無効である。 (2) 解雇権の濫用被申請人が申請人に対し、本件解雇の意思表示をなすに至つた経過は(1)記載のとおりであり、申請人には解雇にあたいする理由は何等存しない。 よつて、本件解雇権の意思表示は解雇権の濫用であつて無効である。 五申請人主張の解雇無効理由に対する認否被申請代理人は、次のとおり述べた。 (一) 不当労働行為に関する主張中、申請人が昭 ない。 よつて、本件解雇権の意思表示は解雇権の濫用であつて無効である。 五申請人主張の解雇無効理由に対する認否被申請代理人は、次のとおり述べた。 (一) 不当労働行為に関する主張中、申請人が昭和三九年一月より組合の副委員長であつたこと、同年の夏期一時金の要求に際し、組合は結成後はじめてスト決議をなしたこと、被申請人において申請人に対し同人主張のインドネシア出張、一〇日間の帰国後、EDVのサービス業務遂行のため南ベトナム出張を命じたこと、申請人が現地に到着後、ダニムダムの漏水調査、ダニム河の流量測定を指令したこと、申請人主張の帰国許可願がその主張期日に再度にわたりサイゴン事務所長を経由して、被申請人あて提出され、最初の帰国許可願に対し、被申請人はこれを拒否し、再度の一時帰国許可願に対しては、回答をしなかつたこと、申請人は同四〇年六月二三日帰国したこと、被申請人が同月三〇日申請人に対し解雇の意思表示をしたことはいずれも認めるが、その余は争う。 (二) 解雇権濫用に関する主張はすべて争う。 (三) 被申請人においては、総従業員のうち技術員の占める割合が高く、昭和四一年一月末現在、総従業員七六一名のうち三六九名である。その技術員のうち約一〇〇名前後のものが常時、海外事務所に勤務しており、組合役員においても他の従業員と変らず、役員就任中に海外出張転勤になる例が多く、しかも業務の必要から海外出張中にそのまま転勤になることもあり、その際、必ずしも一時帰国をさせるわけではない。 六証拠(省略) 理由 一申請理由(一)記載の事実、被申請人が申請人に対し、昭和四〇年六月三〇日懲戒解雇の意思表示をしたことは当事者間に争いがなく、被申請人において昭和四〇年当時施行されていた就業規則に懲戒解雇の基準として被申請人主張のような該当条項の 人が申請人に対し、昭和四〇年六月三〇日懲戒解雇の意思表示をしたことは当事者間に争いがなく、被申請人において昭和四〇年当時施行されていた就業規則に懲戒解雇の基準として被申請人主張のような該当条項の定めがなされていることは、申請人の争わないところである。 そこで、右解雇の意思表示の効力について以下検討する。 二申請人が昭和四〇年六月二三日被申請人の許可を得ないで勤務地であるサイゴンより帰国したことは当事者間に争いがない。 証人b、同c、同dの各証言によると被申請人はその業務の特殊性から、従業員が海外事務所に勤務する割合は極めて高く、しかもその海外勤務の性質から従業員が被申請人の許可なく帰国することは業務に支障を来すのが通常であることが認められ、被申請人の右行為は前記就業規則第九章第四〇条第四号「職務上の指示命令に不当に従わず、職場の秩序を紊したり、紊そうとしたとき」という懲戒解雇事由に一応該当しているといえよう。 しかし申請人は右懲戒解雇の意思表示は解雇権の濫用であると争つている。 (一) 先づ申請人が無許可帰国に及んだ諸事情について考察する。 被申請人が申請人に対し昭和三九年八月インドネシア出張を命じ、申請人が右命令にしたがい同年九月同地に赴いたこと、同四〇年一月被申請人はさらに申請人に対し、サイゴン出張を命じたので、申請人は同年二月一日被申請人の許可を得て一時帰国したうえ、同月一八日、同地に出発したこと、申請人が同地に到着した後、同月二六日に被申請人は申請人に対し、同地に出発前に指示したEDVの水理実験所の建設のための技術援助のほかに近く帰国することになつた被申請人サイゴン事務所長aの業務のうちダニムダムの漏水調査とダニム河の流量測定を引継ぐよう命じたこと、申請人は被申請人に対し同年五月二六日右水理実験所に関する業務の完了を理由に帰 することになつた被申請人サイゴン事務所長aの業務のうちダニムダムの漏水調査とダニム河の流量測定を引継ぐよう命じたこと、申請人は被申請人に対し同年五月二六日右水理実験所に関する業務の完了を理由に帰国許可願を提出したところ、被申請人は右願を拒否し、同年六月一日申請人に対しあらためてサイゴン事務所転勤を命じたこと、そこで申請人は被申請人に対し同年六月七日、再度一時帰国願を提出したが、被申請人はこれに対し回答しなかつたことは、何れも当事者間に争いがない。 前掲各証拠の一部、成立について争いのない疎甲第一号証の一、第二号証の一、第三、四、五号証、第一一号証の一ないし三六、乙第六号証、乙第八号証の一、二、申請人本人の尋問の結果により成立の真正が認められる甲第八、一三、一四号証、弁論の全趣旨により成立の真正が認められる乙第一二号証、第一九号証、および申請人本人尋問の結果の一部を総合すると左記の事実が推認でき、これに反する疎明は採用しない。 (1) 申請人は昭和四〇年五月にはEDVの水理実験所建設のための立案を報告書にまとめ、これをEDVの担当者あてに提出し、所期の業務は一応完了したこと、そのため前記のように業務完了を理由とする第一次帰国許可願を被申請人に提出したこと、申請人が被申請人から引継ぐよう指示された前記a所長の業務はダニムダムのアフターケア、即ち漏水調査の外ダニム河の二期三期工事のため流量測定、ラニア河の流量測定、セサン、スレボツク河に関するEDV所有の資料調査であり、これらは被申請人の残務整理、今後のプロジクトに必要な現地資料の収集、整理、本社への送付にかぎられるところ、ダニムダムの漏水調査は、当時、現地が雨季に入つたため作業が著しく困難であり、ダニム河の流量測定は被申請人において現地に記録計を具え、現地採用の日本人を使つて、時々記載を収 の送付にかぎられるところ、ダニムダムの漏水調査は、当時、現地が雨季に入つたため作業が著しく困難であり、ダニム河の流量測定は被申請人において現地に記録計を具え、現地採用の日本人を使つて、時々記載を収集するようにしており、特に申請人が現地に行く必要がなく、その他の業務もサイゴン事務所の他の社員によつて代替しうるものであり、申請人は被申請人から引継の指示を受けた後にもEDVの水理実験所建設のための技術援助の業務のみに専念していたが、同事務所としては特に支障なく業務が遂行されていたこと、加えて、当時、ベトナムにおける戦局の激化に伴い被申請人において同事務所の縮少ないし閉鎖が検討されていたので、これらの業務も特別の緊急性、重要性を有していなかつたこと、以上の事実から当時申請人がサイゴンに留らなくてはならない被申請人の業務上の必要性は少なかつた。 (2) 申請人は前記のように昭和三九年九月二一日インドネシア出張後、同四〇月六月七日、サイゴンにおいて、被申請人に一時許可願を提出するまで、その出張期間は通算約一〇ケ月に及び、まもなく一年になること、その間、申請人は被申請人から一八日間の帰国が認められたが、帰国中もサイゴン出張の準備等会社業務のため毎日、被申請人本社に出頭していること、被申請人には従業員が海外に一年間出張した場合には、一月の休暇が与えられる旨の内規があるが、この出張期間は必ずしも厳格なものでなく、場合によつては一年を経過しなくても休暇が与えられること、その場合、海外事務所の業務上の都合を勘案して、当該所長の判断により適宜きめられること、申請人は前記のとおり被申請人によつて、出張から転勤に切り換えられたが、右転勤には期限がなかつた。しかも被申請人においては、転勤は出張に比して在勤期間が長期にわたるのが通常であつた。 (3) 被申請人の南ベ 前記のとおり被申請人によつて、出張から転勤に切り換えられたが、右転勤には期限がなかつた。しかも被申請人においては、転勤は出張に比して在勤期間が長期にわたるのが通常であつた。 (3) 被申請人の南ベトナムにおける業務は、その特殊性から、多少の危険を伴うものであるところ、申請人在勤中、雨季に入つて、ベトコンとアメリカ軍、南ベトナム政府軍との間に戦闘が激化し、サイゴン地区においてもベトコンによるテロ行為が続発し、又、同四〇年四月三日被申請人サイゴン事務所の通訳がベトコンに連行され、同月一五日には被申請人フアンラン建築事務所において被申請人の下請であるブルトーザがベトコンに破壊され、同月二八日被申請人社員三名がベトコンに連行され、同五月一八日から同六月一二日にかけて被申請人社員三名が測量中ベトコンから敵対行動を受けたことなどのことがあり、さらに申請人のサイゴン宿舎は近くに南ベトナムの兵営、アメリカ軍将校宿舎などがあつて、ベトコンのテロ行為の目標にされるおそれを感じられ、又申請人の業務遂行に際しての保護態勢も必ずしも十分なものともいわれず、右諸情勢の下で申請人は南ベトナム勤務の危険は深まつたものと感じ、本国に妻子をおき単身赴任しており、かねて妻は病身であつた(乙第一二号証は妻eは分裂病の素因があることを示している)ので万一の場合に具えて転勤の発令を機に一時帰国し、身辺の整理をする必要性を痛感した。そこで、申請人は右転勤命令を受けたので、身辺の整理をする必要性があるとして一時帰国願をなした。被申請人サイゴン事務所長も前記申請人の一時帰国願を相当と認め、同月八日付で被申請人に対し申請人の業務が一段落したこと、出張期間は通算一〇ケ月になり、又、同年八月には同事務所の他の社員二名も帰国し、不在となる点から申請人をその際早急に帰国させるよう上申していた。 月八日付で被申請人に対し申請人の業務が一段落したこと、出張期間は通算一〇ケ月になり、又、同年八月には同事務所の他の社員二名も帰国し、不在となる点から申請人をその際早急に帰国させるよう上申していた。(被申請人においては前記認定のとおり海外出張者の帰国については海外事務所長の意見を尊重するのが通常であつた。)(4) 申請人の第一回帰国許可願は、同年五月二六日サイゴン事務所長に対して提出されたところ、翌二七日に東京都所在の被申請人本社に受付けられ、同日中に右許可願の却下と申請人のサイゴン事務所転勤通知が川口市所在の被申請人技術研究所の所長を合め、社内の決済を経て、同日中にサイゴン事務所あて発信されるなど極めて迅速に処理されているにもかかわらず、前記のとおり申請人が六月七日、再度、被申請人に対し一時帰国願を提出したところ、六月二三日までにその回答がなかつた。(それは当事者間に争いがない)以上の次第で、申請人は前記のとおり被申請人の回答をまたずにかねて被申請人が申請人に交付していた復路航空券を使用し、被申請人の転勤命令に応ずることを前提にして、一時帰国に及んだものである。 (二) 被申請人は申請人の右無許可帰国が就業規則第四〇条第四号に該当するとして前記のとおり懲戒解雇にしたのであるが、申請人本人尋問の結果によれば六月二六日帰国後被申請人本社に出社した申請人に対して、被申請人は何等事情を聴取することがなかつたことが認められ、これに反する疎明は採用しない。 (三) 以上の各事実を総合すると、申請人の右無許可帰国は、それ自体、被申請人の就業規則の懲戒解雇事由に該当しているものと一応認められるが、申請人の右無許可帰国は、前記の諸事情の下に、それは、被申請人が申請人の一時帰国願について、相当の期間内に許否を決しなかつたことから速かな身辺の整理の必要を 事由に該当しているものと一応認められるが、申請人の右無許可帰国は、前記の諸事情の下に、それは、被申請人が申請人の一時帰国願について、相当の期間内に許否を決しなかつたことから速かな身辺の整理の必要を痛感してやむなく行つたもので、いささか、早まりすぎたとの感がないでもないが、被申請人が申請人に対しただちに懲戒解雇の意思表示をしたことは、右処分までの間、前記の帰国以外に責めらるべきもののない申請人に対する処分としては社会通念上酷に失し解雇権の濫用として無効である。 申請人のこの点に関する主張は理由がある。 三よつて、本件解雇は一応無効であるから、申請人は被申請人に対し労働契約上の権利を有し、被申請人が本件解雇後申請人の就労を拒んでいることは当事者間に争いがないから、被申請人に対し解雇後の賃金請求権を有するというべきである。 弁論の全趣旨によると、申請人は被申請人から受ける給与で生活を維持しており、後記のとおり昭和四一年、同四二年中にそれぞれ収入を得ているが、このほかに他から継続して収入を得ていることを認めるべき疎明もないから本案判決の確定までの間なんら労働契約上の権利を有しないものとして取り扱われることにより申請人は回復しがたい損害を受けるおそれがあるといえる。 ところで当事者間に争いのない事実によると本件解雇当時に申請人の得ていた賃金月額は、基本給金三三、七五〇円、家族手当金二、八〇〇円、資格手当、住宅維持費、借家補給金各金一、〇〇〇円合計金三九、五五〇円であり、賃金は毎月二五日支払いであり、これによつて、昭和四〇年七月から同年一二月までの得べかりし賃金を計算すると金二三七、三〇〇円となり同四一年、同四二年度の得べかりし賃金はそれぞれ金四七四、六〇〇円となるところ、成立に争いのない乙第一五号証および申請人本人尋問の結果によれば、申請人 かりし賃金を計算すると金二三七、三〇〇円となり同四一年、同四二年度の得べかりし賃金はそれぞれ金四七四、六〇〇円となるところ、成立に争いのない乙第一五号証および申請人本人尋問の結果によれば、申請人は昭和四一年度に金三六〇、〇〇〇円、同四二年度に金二四〇、〇〇〇円の各収入を得ていたことが一応認められる。 ところで本件において申請人は被申請人に対し解雇期間中の全額請求権を有すると同時に解雇期間中に得た利益を償還すべき義務があるところ、申請人の最底生活を保障するため控除の限度は平均賃金の四割までとするのが相当であるから前記のとおり昭和四一、四二年度の各得べかりし賃金額から前記収入額を控除すると右限度を超過することになるので、右四割の限度まで控除すると昭和四一、四二年度の得べかりし賃金額は、それぞれ金二八四、七六〇円となる。よつて、被申請人は、申請人に対し昭和四〇年度の金二三七、三〇〇円と同四一、四二年の各金二八四、七六〇円の各得べかりし賃金の合計金八〇六、八二〇円および昭和四三年一月以降本案判決確定に至るまでの間、毎月二五日かぎり月金三九、五五〇円の支払を命ずるのが相当である。 四よつて、申請人の本件仮処分申請は、被保全権利の存在と必要性につき疎明があるから、其の余を判断するまでもなく、保証をたてさせないで、前記の限度においてこれを認容することとし、その余の申請を却下し申請費用の負担につき民事訴訟法第九二条を適用し、主文のとおり判決する。 (裁判官浅賀栄豊島利夫大川勇)
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