平成13(ネ)3825 損害賠償請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成13年12月26日 東京高等裁判所
ファイル
hanrei-pdf-104.txt

判決文本文9,675 文字)

(原審・東京地方裁判所平成10年(ワ)第13394号損害賠償請求事件(原審言渡日平成13年6月27日)) 主文 1 控訴人A株式会社の本件控訴を棄却する。 2(1) 原判決のうち,控訴人B株式会社の敗訴の部分を取り消す。 (2) 前項の部分につき,被控訴人Cの請求を棄却する。 3 控訴人A株式会社と被控訴人らとの間に生じた控訴費用は,同控訴人の負担とし,控訴人B株式会社と被控訴人Cとの間に生じた訴訟費用は,第1,2審とも同被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 控訴人A株式会社(控訴人A)(1) 原判決のうち,控訴人Aの敗訴の部分を取り消す。 (2) 上記部分につき,被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 2 控訴人B株式会社(控訴人B)(1) 原判決のうち,控訴人Bの敗訴の部分を取り消す。 (2) 上記部分につき,被控訴人Cの請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも同被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,株式会社G(G)から,被控訴人D,同E及び同Fにおいては控訴人Aの仲介により,被控訴人Cにおいては同控訴人及び控訴人Bの仲介により,それぞれ土地建物を買い受けたところ,いずれも土地に地盤沈下が発生したため建物に不具合が生じたと主張して,① 被控訴人らが,Gに対し,(ア) 主位的に,(a) 瑕疵担保責任を理由とする売買契約解除に基づく原状回復請求として,売買代金の返還及び損害賠償の支払,選択的に,(b) 詐欺に基づく各売買契約の取消し又は錯誤に基づく売買契約無効を理由とする不当利得の返還及び損害賠償の支払を求め,(イ) 予備的に,瑕疵担保責任に基づく補修費等の損害賠償の支払を求め,② 被 ,(b) 詐欺に基づく各売買契約の取消し又は錯誤に基づく売買契約無効を理由とする不当利得の返還及び損害賠償の支払を求め,(イ) 予備的に,瑕疵担保責任に基づく補修費等の損害賠償の支払を求め,② 被控訴人らが控訴人Aに対し,被控訴人Cが控訴人Bに対し,それぞれ,売買の目的物である地盤の性質及び施工された基礎工事の内容についての説明告知義務違反を理由として,共同不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償の支払を求めた事案である。 原審は,上記①(ア)(a)の請求の一部を認容し,②について,被控訴人ら及び被控訴人Cの各請求の一部を認容し,控訴人らだけが不服を申し立てた。したがって,当審における審判の対象は,控訴人らの敗訴部分だけである。 2 「争いのない事実等」,「争点」及び「争点に関する当事者の主張」当審における控訴人らの主張を次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」第2ないし第4のうち控訴人らに関する部分のとおりであるから,これを引用する。 (1) 控訴人A原判決が控訴人A(担当者H)が認識していたと認定した本件各土地に係る「軟弱地盤」なるものが如何なるものであるか不明である上,地質に関することについて専門家でもない控訴人Aに対し,このことを告知する義務があるとする原判決は不当である。 ① 本件各建物には,軟弱地盤による不等沈下はない。 ア地盤調査事務所作成の平成9年3月付け報告書(報告書。乙ロ3)には,盛土層だけで木造2階建の建物を支持できる旨,腐植土層の支持力は盛土層の支持力より大きい旨の記載があり,仮に腐植土層で密圧沈下が起きても,この密圧沈下がその上部の盛土層にどのようなメカニズムで沈下を引き起こしたのか証明されていない。また,報告書によれば,本件各土地のサウンディング試験の結果,表面から5 に腐植土層で密圧沈下が起きても,この密圧沈下がその上部の盛土層にどのようなメカニズムで沈下を引き起こしたのか証明されていない。また,報告書によれば,本件各土地のサウンディング試験の結果,表面から50センチメートルないし1メートルの部分のN値は,若干低い部分があるものの5以上であり,これは直接基礎で十分対応できる地耐力を有するものである。 イ本件各建物の建築当時の傾きは測定されておらず,甲第7号証及び報告書の測定値は,当該測定時の値であり,地盤沈下による不等沈下であるとの断定はできない。この程度の傾きは,建築当時から存在する場合が多々ある。 ウ地盤沈下の測定は,本件各建物の土台部分で行うのでなければ,本件各建物に沈下があるか否かの証明にはならない。 エ報告書によると,腐植土層の密圧沈下は,その総沈下量73センチメートルと予測され,残存沈下量は10センチメートル程度と予測されているが,あくまで予測の域を出ない。 オ本件各建物の不具合は,建築工事の杜撰さによるものである。 ② 地質に関する専門家でない控訴人Aには,本件各土地が軟弱地盤であることについての告知義務はない。 原判決の認定する,本件各土地が軟弱地盤地域に属するとの内容(「事実及び理由」第5の1(2))は,専ら報告書によるものであるが,報告書は,平成9年3月に作成されたもので,本件売買契約が締結された平成5年から平成6年にかけては存在していなかったのであるから,Hはその内容を知り得なかったものである。 Hの見た地盤調査報告書(乙ロ1,2)のうち,乙ロ第1号証には,地質に関する記載がなく,同第2号証は,本件各土地の2箇所のサウンディングによる計測であって,深さ2メートルまでで6.45メートルには及んでおらず,しかも,地質ではなく地 )のうち,乙ロ第1号証には,地質に関する記載がなく,同第2号証は,本件各土地の2箇所のサウンディングによる計測であって,深さ2メートルまでで6.45メートルには及んでおらず,しかも,地質ではなく地耐力の調査に関するものであるから,Hは,本件各土地が,原判決の認定したような軟弱地盤であることについて認識することは不可能であった。また,乙ロ第1号証には,木造2階建程度なら十分な転圧等を施工すれば支持力に問題はないと記載され,乙ロ第2号証には,支持杭で対処するよう記載されており,Hは,Jから,3,4号棟に杭を打つと言われたことから,軟弱な地盤かなと判断したにすぎないのであるから,この報告書により,本件各土地の下に腐植土層があること等を認識できるはずがない。 (2) 控訴人B① 控訴人B(担当者I)において,C土地を含めた本件各土地が軟弱であることを認識していたと認定した原判決は不当である。 ② 原判決は,Iが本件各土地の地盤が軟弱であることを殊更に避けて説明した旨認定するが,Iは,本件各土地の地盤の状態について知る機会が全くなかったのであり,本件各土地の地盤の状態についての説明を殊更に避けた訳ではない。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,被控訴人らの本訴請求のうち,控訴人Aに対する請求は,原判決の認容した限度で理由があるので認容すべきであるが,被控訴人Cの控訴人Bに対する請求は,理由がないので棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり訂正,付加するほか,原判決の「事実及び理由」第5の説示のうち控訴人らに関する部分のとおりであるから,これを引用する。 1 原判決の訂正(1) 41頁16行目の冒頭から17行目の末尾までを「Hが重要事項説明書を読み上げるのを聞き,J及びHの上記説明を聞いた。」に改める。 (2) 47頁 ,これを引用する。 1 原判決の訂正(1) 41頁16行目の冒頭から17行目の末尾までを「Hが重要事項説明書を読み上げるのを聞き,J及びHの上記説明を聞いた。」に改める。 (2) 47頁1行目の冒頭から2行目の末尾までを「③ Iは,売買契約当日,被控訴人Cに対するJ及びHの説明を聞いた。」に改める。 (3) 同頁21行目の冒頭から48頁19行目の末尾までを次のとおり改める。 「(3) 以上によれば,Hは,Jから交付された地盤調査報告書(乙ロ1,2)を見て,本件各売買契約を仲介する前に,本件各土地が軟弱地盤であることを認識していたものというべきである。 一般に,土地建物を購入する者にとって,買い受ける土地の性状がいかなるものであるのかという点は重大な関心事である。そして,当該土地が軟弱地盤であれば,その工法の如何によっては,建物に地盤沈下による被害が生ずることも懸念されるのであるから(本件のD建物及びC建物におけるように,支持杭工法によったとしても,その施工が不十分であれば被害が生ずる虞は,なお否定することができない。),軟弱地盤であることが判明すれば,買主としては,建物の基礎が地盤に対応して適切に施工されているかなどの点について,更に詳しく売主に確認しあるいは独自に調査をするなどの対応措置をとることができるのであり,その結果なお不安であれば,売買契約の締結を思いとどまり,他の物件の購入を検討することもできる。 このような意味で,土地が軟弱地盤であるかどうかは,買主がこれを購入するかどうかの意思決定において重要な要素となるものであり,本件においても,上記のとおり,被控訴人らは,H及びJらに対して本件各土地の地盤の状態等について質問していたのであるから,この点に重大な関心を有していたことは明らかであ て重要な要素となるものであり,本件においても,上記のとおり,被控訴人らは,H及びJらに対して本件各土地の地盤の状態等について質問していたのであるから,この点に重大な関心を有していたことは明らかである。 そうすると,本件各土地が軟弱地盤であることを認識していた控訴人AのHは,買主である被控訴人らに対し,本件各土地が軟弱地盤であることについて,十分な説明,告知をする義務を負っていたというべきである。 ところが,上記のとおり,Hは,被控訴人らに対して,本件各土地が軟弱地盤であるとの事実を説明せず(本件各土地の地盤が軟弱であることについての説明を殊更に避けた説明をした。),上記の説明,告知をする義務に違反し,その結果,被控訴人らは,本件各土地の地盤に問題はないと信じ,軟弱地盤であることを前提にした対応措置をとる機会を奪われたまま,本件各契約に至ったということができる。 したがって,控訴人Aは被控訴人らに対し,説明告知義務違反を理由とする不法行為責任に基づき,損害賠償の責任を負うものといわなければならない。 なお,被控訴人Dに交付された重要事項説明書には,本件各土地が軟弱地盤であることを示す記載が存在するが,上記認定のとおり,Hは,売買契約締結時に,口頭でこれを否定する内容の説明を行っており,Hが上記の義務を履行したとすることはできない。 (4) しかし,Iについては,被控訴人Cとの売買契約の締結の前日Hから送信されたファックスに,軟弱地盤に関する記載はなかったことは,前記のとおりであり,それ以前に,地盤調査報告書(乙ロ1,2)のような,C土地の地盤に関する情報の提供を受けことも認められないのである。そして,上記売買契約の締結の日に読み上げられた重要事項説明書やJ及びHの説明の内容からは, ,地盤調査報告書(乙ロ1,2)のような,C土地の地盤に関する情報の提供を受けことも認められないのである。そして,上記売買契約の締結の日に読み上げられた重要事項説明書やJ及びHの説明の内容からは,Iにおいて,C土地の近隣に軟弱地盤地区があるという程度のことは認識することができたとしても,それ以上に,C土地自体が軟弱地盤であることについて,明確に認識することができたか否かは疑問であり,本件全証拠によっても,C土地自体が軟弱地盤であることを認識することができたものと認めることはできない。 そうすると,控訴人Bには,被控訴人Cに対する説明告知義務違反はないというべきである。」(4) 51頁16行目の冒頭から52頁11行目の末尾までを次のとおり改める。 「(2) 控訴人Aに対する請求についてア Hが被控訴人らに対して,上記認定のとおり,本件各土地が軟弱地盤であるという事実を説明しなかったため,被控訴人らは,同程度の代金の別の物件の購入を検討する機会を喪失した上,本件各建物において安心して快適で平穏な生活を送ることができるという期待を裏切られて精神的苦痛を被ったということができる。 そして,被控訴人らの本件売買契約を締結するに至った経緯,控訴人Aの説明内容,被控訴人らに交付された重要事項説明書の記載など本件に現われた全事情,特に,Hの地盤の性質に関する説明内容は後になるほど後退しており,被控訴人Fに交付された重要事項説明書には,地盤の性質について何らの記載もされていないなどの不誠実な言動等の諸事情を考慮すると,被控訴人らの精神的苦痛を慰謝するためには,被控訴人Dについて480万円,被控訴人Eについて510万円,被控訴人Fについて500万円,被控訴人Cについて490万円が必要であると算定するのが相当 ると,被控訴人らの精神的苦痛を慰謝するためには,被控訴人Dについて480万円,被控訴人Eについて510万円,被控訴人Fについて500万円,被控訴人Cについて490万円が必要であると算定するのが相当である。 イまた,被控訴人らは,被控訴人ら訴訟代理人らに委任して本件訴訟を提起,追行していることは明らかであり,本件事案の難易度や認容額等に照らして,被控訴人らが訴訟代理人に対して支払うべき手数料のうち,控訴人Aに対して賠償を求めることができるのは,被控訴人らについて各50万円と認めるのが相当である。 (3) なお,本件において,Gと控訴人Aとは,賠償すべき損害の内容を異にするため連帯して責任を負う関係には立たないことを付言する。」 2 控訴人Aの主張について(1) 軟弱地盤による不等沈下の存在について① 同控訴人は,本件各土地の地盤は,盛土層だけで木造2階建ての建物を支持することができ,腐植土層の支持力は盛土層より大きく,沈下のメカニズムが証明されていないし,盛土層のN値からも十分な地耐力を有するなどと主張する。 しかし,引用した原判決の認定するとおり,本件各土地の地質は,地表から3.6メートルは盛土層で,その下の6.45メートルまでは有機質土(腐植土)が厚く堆積しているところ,この腐植土層の圧密沈下によって地盤沈下が起こりやすい軟弱地盤である。そして,証拠(証人K)によれば,本件各土地の地盤沈下は,上記盛土層の下にある腐植土層の圧密沈下が原因となり,腐植土層の沈下に伴い,その上の盛土層が沈下したものと認められるのである。そうすると,地表から1メートル部分の盛土層の支持力があるからといって,地盤沈下が起こらないと断定することはできないし,盛土層とその下にある腐植土層の支持力を単純に比較しても意味がない れるのである。そうすると,地表から1メートル部分の盛土層の支持力があるからといって,地盤沈下が起こらないと断定することはできないし,盛土層とその下にある腐植土層の支持力を単純に比較しても意味がないというべきである。また,証拠(乙ロ3,証人K)によれば,N値がそのまま地耐力を示すものではないし,報告書のN値は,Nsw(1平方メートル当たりの半回転数)から導かれたいわゆる換算N値で,高めに設定されていることが認められ,N値が5以上であることから,直ちに十分な地耐力を有するものとはいえない。 ② 同控訴人は,本件各建物の建築当時の傾きが測定されていない旨主張する。 しかし,引用した原判決の認定するとおり,平成9年2月の調査時点と平成12年5月の調査時点とを比較すると,本件各建物の床面の傾斜,壁や床面の亀裂等の不具合は悪化し,床面の変形量は増大していることからすれば,建築当時の傾きを測定するまでもなく,沈下が進行しているものと認められる。 ③ 同控訴人は,建物沈下による傾斜は,床面で測定せず,土台で測定しないと地盤沈下の証明にならない旨主張する。 しかし,証拠(乙ロ3,証人K)によれば,報告書では,建物の傾斜は,本件各建物の基礎の上端高を基準にして測定されているのであるが,基礎と土台はボルトで連結されているのであるから,数ミリメートルの誤差は生じるとしても,必ずしも土台で測定しなくても,傾斜を測定することができるものと認められる。また,証拠(甲7,乙ロ3,証人K)によれば,D建物及びC建物は,土台部分は支持杭で支えられており,床面は床束及び束石で支えられているところ,床面のみが下がっているのであるから,地盤沈下による建物の変形の実態を把握するには,むしろ床面で測定すべきことに合理性があるものと認められる。そして,上記の 床面は床束及び束石で支えられているところ,床面のみが下がっているのであるから,地盤沈下による建物の変形の実態を把握するには,むしろ床面で測定すべきことに合理性があるものと認められる。そして,上記のような測定箇所で,引用した原判決の認定するとおりの数値が現れているのであるから,本件各土地には,地盤沈下が生じているものと認められるのである。 ④ 同控訴人は,報告書の記載は,あくまでも予測に過ぎない旨主張するが,同記載は,建築の専門家により,科学的な根拠のもとにされた予測であることが認められ,その信用性を疑わせるに足りる資料はない。 ⑤ 同控訴人は,本件各建物の不具合は,建築工事の杜撰なことによるものである旨主張する。 しかし,引用した原判決の認定するとおり,本件各建物の不具合の発生について,建築工事の施工上の不良にもその一因があるとしても,本件各土地の地質は,盛土層の下に,有機質土(腐植土)が厚く堆積しており,圧密沈下により地盤沈下を起こしやすい軟弱地盤である上,平成9年2月当時と平成12年5月当時を比較すると,本件各建物の不具合は悪化し,床面の変形量が増大しているところ,証拠(甲7,証人K)によれば,このように本件各建物の変形が増大していることの原因については,単に,建築工事の杜撰さだけで説明することは困難であり,本件各土地の地盤沈下が影響しているものと考えるのが合理的であると認められるのである。 以上のとおり,本件各土地には,軟弱地盤のための地盤沈下があり,これにより本件各建物の不等沈下が生じているものと認められるので,上記主張は採用することができない。 (2) 軟弱地盤であることの認識の有無について控訴人Aは,原判決のいう「軟弱地盤」とは如何なるものか不明である上,Hは,本件各土地が軟弱地盤であるこ 上記主張は採用することができない。 (2) 軟弱地盤であることの認識の有無について控訴人Aは,原判決のいう「軟弱地盤」とは如何なるものか不明である上,Hは,本件各土地が軟弱地盤であることを認識していなかったものであり,地質に関する専門家でもない同控訴人(担当者H)には軟弱地盤であることについての告知義務はない旨主張する。 ① しかし,不動産の仲介業務を委託された者が,買主に対して負うべき説明,告知義務の内容及び本件においてHが本件各土地が軟弱地盤であることについて説明,告知義務を負うことは,引用した原判決及び前記1(3)に説示するとおりである。 なお付言すれば,宅地建物取引業者は,宅地建物取引業法上,土地建物の購入者等の利益の保護のために(同法1条),取引の関係者に対し信義誠実を旨として業務を行う責務を負っているものであり(31条),同法35条は,重要事項の説明義務を規定している。そして同条が,「少なくとも」同条に掲げられた事項について,宅地建物取引主任者に説明させるべきものとしていることに照らせば,同条に規定された重要事項は,買主保護のために最低限の事項を定めたものに過ぎないと解される。そうすると,宅地建物取引業者は,信義則上,同条に規定された事項は勿論,買主が売買契約を締結するかどうかを決定付けるような重要な事項について知り得た事実については,これを買主に説明,告知する義務を負い,この義務に反して当該事実を告知せず,又は不実のことを告げたような場合には,これによって損害を受けた買主に対して,損害賠償の責めに任ずるものと解するのが相当である。 ② 証拠(乙ロ1~3,証人H,原審被告G代表者)によれば,Hは,本件各売買契約に先立ち,Gの代表者Jから,地盤調査報告書(乙ロ1,2)を見せられ,これを交付されているこ 解するのが相当である。 ② 証拠(乙ロ1~3,証人H,原審被告G代表者)によれば,Hは,本件各売買契約に先立ち,Gの代表者Jから,地盤調査報告書(乙ロ1,2)を見せられ,これを交付されていること,このうち,乙ロ第1号証(調査地点はE土地,D土地及びC土地)には,C土地は地上から1.5メートル付近まで軟らかく圧密沈下の発生が考えられる旨の記載があり,乙ロ第2号証(調査地点はD土地及びC土地)には,地耐力不足の非常に軟弱なシルト層が厚く分布しているため地盤は不安定となっているので,建物を建築するに際しては,支持杭基礎工法を用いるべきである旨の記載があること,この時点では,E建物及びF建物は着工されており,地盤調査報告書(乙ロ2)を受けて,未着工であった他の建物の基礎工法は,支持杭を用いた工法に変更されたこと,Hは,本件各建物の基礎工事について,支持杭基礎工法でなければならないことを認識しており,乙ロ第2号証の提出後に,E建物及びF建物以外の未着工建物の基礎工法が変更された事情を知っていたこと,それにもかかわらず,Gから,E建物及びF建物はべた基礎で,D建物及びC建物は杭により補強された布基礎で,それぞれ施工されていることを知らされていたこと,そこで,引用した原判決の認定するとおり,Hは,被控訴人Fを除く被控訴人らに対する重要事項説明書に,当該地区又はその近隣が軟弱地盤地区である旨の記載をしたことが認められる。 証人Hは,本件各土地が軟弱地盤であると聞いていなかったと供述する〔陳述書(乙ロ4)の記載も含む。〕が,同供述は,上記のとおり,H自らが,重要事項説明書に本件各土地又はその近隣が軟弱地盤である旨記載していることに照らして,信用することができない。 ③ Hないし控訴人Aにおいて,本件各土地が軟弱地盤であることを認識していたと らが,重要事項説明書に本件各土地又はその近隣が軟弱地盤である旨記載していることに照らして,信用することができない。 ③ Hないし控訴人Aにおいて,本件各土地が軟弱地盤であることを認識していたというためには,報告書に記載されたような地質についての詳細な分布までを正確に認識していなければならないと解すべきものではなく,水分が多くて軟弱であり,沈下を起こしやすい地盤というほどの意味を認識していれば足りると解すべきである。 そして,上記②の事実に照らせば,Hには,本件各土地が上記の意味での軟弱地盤であることの認識は,十分にあったものと認められ,地質に関する専門的知識がないからといって,上記の意味での軟弱地盤であることについて,説明,告知義務を免れるものではない。そうすると,控訴人Aは,被控訴人らに対する説明,告知義務に違反したものというべきである。 よって,控訴人Aの本件控訴は理由がないから棄却し,控訴人Bの本件控訴は理由があるから,同控訴人の敗訴部分を取り消した上,同部分に係る請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第11民事部裁判長裁判官瀬戸正義裁判官遠山廣直裁判官河野泰義

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る