【DRY-RUN】主 文 本件各上告を棄却する。 理 由 被告人A及びBの弁護人栗尾高三同石井幸雄の提出した上告趣意書第一点は『原 判決ハ第一被告人Aハ外一名ト共謀ノ上昭和二十
主 文 本件各上告を棄却する。 理 由 被告人A及びBの弁護人栗尾高三同石井幸雄の提出した上告趣意書第一点は『原 判決ハ第一被告人Aハ外一名ト共謀ノ上昭和二十一年一月十一日頃、福岡県浮羽郡 a村大字bノC方デ同人所有ノ白米一俵(四斗入)外雑品七点ヲ窃取シ、第二被告 人A、Dノ両名ハ共謀又ハ外一名ト共謀ノ上同年二月上旬頃ト同年六月五日頃トノ 二回ニ渉ツテ同郡c町大字d所在ノ畑外一ケ所デE外一名所有ノ甘藷約二十斤外雑 品三点ヲ窃取シ、第三被告人A、DBノ三名ハ共謀ノ上同年六月七日頃同郡c字d 町ノ倉庫デF所有ノ小麦五俵(一俵四斗入)ヲ窃取シタモノデァルトノ事実ヲ認定 シテ被告人Aヲ懲役一年六月ニ処スル旨ノ判決言渡ヲ為サレタが被告人Aハ初犯者 デアツテ行為当時漸ク満拾八歳ニ達シタニ過ギナイ少年職工デアツテ其雇主デアル Gニ対スル吉井警察署司法警察官聴取書ニ徴シテモ被告人ハ平素仕事ヲ克ク働イテ 居タ者デアツテ、本件ノ動機タルヤ第一審公判調書中被告人Aノ供述トシテ「私ハ 物価が高ク給料ハ安クテ小遣銭が少イシ夫レニ困リ又洋服モ持チマセンノデ欲シイ ト思ヒマシテ此様ナ窃ヲシタモノデアリマス」ト記載アリ、被告人Aニ対スル同警 察署司法警察官聴取書中「私ハ現在雇主カラ毎月五百円位給料ヲ貰ツテ居リマスガ、 五百円位ノ給料デハ此物価高ノ折ドウシテモ金が足ラズ暮シテ行ク事が出来マセン、 悪イ事トハ思ヒマシタガ、何カ人ノ物ヲ窃ンデ、ソレヲ売ツテ金策シヨウト考エマ シタ」トノ供述記載アルニ徴スレバ被告人ハ僅カ月五百円ノ薄給デアツテ衣食ニ窮 乏ノ余リ本件ノ犯行ニ加担シタモノデアツテ世間デハ千八百円ベースデハ生活が出 来ズニ千三百円べースニ切換ヘラレタ、今日、被告人ノ生活ノ貧困サガ察知セラレ ル訳デアツテ其動機タルヤ必ズシモ強ヒテトガムベキデナク寧ロ同情ニ価ヒスル シタモノデアツテ世間デハ千八百円ベースデハ生活が出 来ズニ千三百円べースニ切換ヘラレタ、今日、被告人ノ生活ノ貧困サガ察知セラレ ル訳デアツテ其動機タルヤ必ズシモ強ヒテトガムベキデナク寧ロ同情ニ価ヒスルモ ノガアル次第デ、而カモ、被害物件ノ大部分ハ被害者ニ還付サレテ居ルノミナラズ、 - 1 - 第一審公判調書中被告人Aノ供述トシテ「現在デハ本当ニ申訳ナイコトヲシタト思 ツテ居リマス、此後ハ決シテ悪イコトハ致シマセンカラ恁ウゾ御寛大ニ御願イ致シ マス」トノ記載ニ徴スルモ被告ハ改悛ノ情顕著ナルモノガアツテ再犯ノ虞絶対ニナ イモノト謂イ得ルノニ原審ハ之ニ対シテ一年六月ノ実刑ヲ科シテ刑ノ執行猶予ヲ与 ヘラレ無カツタ事ハ全ク、刑ノ量定著ルシク不当ナリト思料スベキ顕著ナ事由アル モノト謂ヒ得ベク此点ニ於テ原判決ハ破毀ヲ免レナイモノト謂フコトが出来マス』 といい、同第二点は『原判決ハ第三被告人A、D、Bノ三名ハ共謀ノ上、昭和二十 二年六月七日頃福岡県浮羽郡c字d町ノ倉庫デ、Fノ小麦五俵(一俵四斗入)ヲ窃 取シタモノデアルトノ事実ヲ認定シテ被告人Bヲ懲役一年ニ処スル旨ノ判決言渡ヲ 為サレタガ、被告人Bハ同人モ初犯者デアツテ未ダ曾テ一回モ警察署等デ取調ベヲ 受ケタ事ノナカツタ純良ナ少年職工デアツテ犯行当時ハ未ダ満十九年一月ノ若人デ 之迄別段ノ悪評モナク過シテ来タモノデアルノミナラズ其雇主デアル前顕Gニ対ス ル吉井警察署司法警察官ノ聴取書中「被告人Bハ日頃仕事ヲ良ク働キ本件ハ他ノ者 カラ騙サレテ為シタ犯行デアルコト及ビ雇主モ同人ニ対シテハ将来其儘継続シテ雇 入レ置キ度キ旨」ノ供述アルニ徴シテモ同被告ノ性質が善良デアルコトが肯カレル ノミナラズ、将来ノ監督指導ノ途モ講ゼラレテ居ルシ又被告人ノ犯行ハ原審相被告 人A、Dノ両名ニ誘ハレテ所謂群集心理ニ駆ラレ出来心カラ生ジタモノト謂フ事が 出来マス、而カ ノ性質が善良デアルコトが肯カレル ノミナラズ、将来ノ監督指導ノ途モ講ゼラレテ居ルシ又被告人ノ犯行ハ原審相被告 人A、Dノ両名ニ誘ハレテ所謂群集心理ニ駆ラレ出来心カラ生ジタモノト謂フ事が 出来マス、而カモ被害物件ハ之レ又被害者ニ還付サレ今日ニ於テハ実害全然ナイト 同様デアルバカリデナク、同被告モ亦犯行後改悛ノ情モ顕著デアツテ再犯ノ虞ハ絶 対ニナイモノト謂フ得ベキデ正ニ刑ノ執行猶予ヲ附スベキが正当ナノニ之ニ対シ一 年ノ実刑ヲ言渡サレタノハ全ク刑ノ量定著シク不当ナリト思料スル顕著ナ事由ガア ルモノト謂フヲ得ベキデアツテ此点ヨリスルモ原判決ハ破毀ヲ免レ得サルモノト言 ハネバナリマセヌ。』といい、同第三点は『前審ノ公判調書ノ記載ニ依レバ「被告 人Dノ共述ニ依レバ本件窃盗行為ハ雇主Gヨリ他人ノ物ヲ盗ンデ来イト教唆セラレ - 2 - タ」トアツテ同被告並ニ被告A、B等ハ孰レモ自身デ且ツ其任意ニ出タ所為デナイ 事が述べラレテアルニモ拘ラズ前審が之ニ対シ顧慮ヲ払ハズ直チニ第一審判決摘示 通リノ事実ヲ認定シテ以テ簡単ニ本件被告等ノ控訴ノ申立ヲ棄却セラレタ事即チ被 告両人ニ対シ前顕実刑ヲ是認セラレタルハ被告等ノ地位、年令、勤務状態等ヲ考覈 セラレ刑ノ執行猶予ヲ言渡サルベキニ拘ラズ右様此ノ点ヲ看過セラレタルハ正ニ刑 ノ量定上著ルシク不当ナリト思料スベキ顕著ナル事由アルモノト謂フベク、況ンヤ 右Gノ教唆行為ハ別紙添附福岡地方裁判所吉井支部ニ於テ言渡サレタ第一審判決即 チ懲役一年六月罰金千円ノ言渡(目下福岡高等裁判所ニ控訴繋属中)アリタルニ徴 スルモ一応教唆ノ有無其他ニ付キ之レヲ加味考量セラレザリシハ前示破毀ノ原由ア ルモノト謂フ事が出来ルト思フ次第デス」というのであるが、 論旨は、結局原審が右被告人等に科した刑は不当であるといふに帰する。しかし、 原審の科刑が不当であるといふ主張は、これを、原判決 破毀ノ原由ア ルモノト謂フ事が出来ルト思フ次第デス」というのであるが、 論旨は、結局原審が右被告人等に科した刑は不当であるといふに帰する。しかし、 原審の科刑が不当であるといふ主張は、これを、原判決に対する上告の適法な理由 とすることはできないのである(なお弁護人は論旨第三点において、被告人等は、 Gから教唆せられて本件の犯罪を犯すに至つたものであるのに、原審はこの点を必 しも考量していない。これを考量に入れない原審の科刑は不当であると主張するけ れども、原審は公判において、特にGを証人として訊問しているところを見ても、 また、その他一件記録によれば、原審がこの事実についても、十分に考慮をめぐら した上で、量刑したものであることがうかがわれる。そして、このような事柄は判 決に記載しなければならぬことではないのであるから、判決に記載がないから、原 審はこれを考慮に入れなかつたとはいえないのである。この点に関する論旨も理由 がない。) 被告人Dの弁護人松下幸徳の提出した上告趣意書は「本件第二審裁判所ハ弁護人 ニ最終ニ陳述スル機会ヲ与ヘザリシモノナリ昭和二十二年九月二十九日福岡高等裁 判所ニ於ケル公判審理ノ公判調書ニ依レバ弁護人ニ対シ最終ニ陳述スル機会ヲ与ヘ - 3 - ザリシ事明白ナリ。刑事訴訟法第四百十条十七号ニ依レバ「被告人又ハ弁護人ニ最 終ニ陳述スル機会ヲ与ヘザリシトキ」ト記載サレアリ。弁護人ヲ付シタル事件ニ付 テハ必ズ弁護人ニ最終陳述ノ機会ヲ与ヘザル可カラズト思料セラル。依テ原判決ハ 破毀セラレルモノトス」といふのであるが刑事訴訟法第三百四十九条第三項には「 被告人又ハ弁護人ニハ最終ニ陳述スル機会ヲ与フベシ」と規定せられているのであ つて、弁護人の附いている事件でも、被告人か、弁護人かのどちらかに対して最終 に陳述する機会をあたえれば、それでよいのであつて、本件弁護 弁護人ニハ最終ニ陳述スル機会ヲ与フベシ」と規定せられているのであ つて、弁護人の附いている事件でも、被告人か、弁護人かのどちらかに対して最終 に陳述する機会をあたえれば、それでよいのであつて、本件弁護人の主張するよう に、被告人、弁護人の双方にその機会をあたえなければならぬものでないことは、 右刑事訴訟法の条文の文理解釈上きわめて明白である。本件において、原審の裁判 長が被告人に対して、最終陳述の機会をあたえたことは、原審の公判調書に照し、 まことに明瞭であるから、その上更に、弁護人に対して、その機会をあたえなかつ たからといつて、少しも違法ではない。論旨は理由がない。 右のとおり本件上告は理由がないから、刑事訴訟法第四百四十六条に従ひ主文の ように判決する。 以上は全裁判官の一致した意見である。 検察官松岡佐一関与 昭和二十三年三月二十七日 最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 塚 崎 直 義 裁判官 霜 山 精 一 裁判官 栗 山 茂 裁判官 小 谷 勝 重 裁判官 藤 田 八 郎 - 4 -
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