平成14(受)1873 配当異議事件

裁判年月日・裁判所
平成15年7月3日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄差戻 東京高等裁判所 平成14(ネ)3003
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判決文本文3,283 文字)

主文 原判決を破棄する。 本件を東京高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人野村清美の上告受理申立て理由について 1 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 (1)上告人は,訴外D株式会社に対する債権を担保するために,物上保証人E外2名所有の本件各不動産につき,被担保債権の極度額を8000万円とする本件根抵当権の設定を受け,既に登記されていた株式会社F銀行の抵当権,根抵当権の外,G企業投資株式会社の根抵当権に次いで,その旨の登記を経由した。 (2) 上告人は,横浜地方裁判所小田原支部に対し,本件各不動産を目的とする本件根抵当権の実行としての競売を申し立て,平成13年6月19日,競売開始決定を得た。その際に提出された申立書には,「担保権」として極度額を8000万円とする本件根抵当権の表示に加えて,「被担保債権及び請求債権」として「元金6000万円但し,債権者が債務者に対し,平成6年11月15日付(金銭消費貸借契約)に基づいて貸付けた元金」と記載され,利息,損害金の記載はなかった。 (3) 本件各不動産につき代金を2億5222万2229円とする売却許可決定がされ,代金が納付された。上記裁判所は,民事執行規則60条に従い,債権元本,利息その他の附帯債権等の額を記載した計算書を提出するよう催告し,上告人は,平成14年1月18日,執行費用の額のほか「元金現在額 60,000,000円,利息現在額 3,470,795円,損害金現在額 50,123,835円」と記載した債権計算書を提出した。 - 1 -(4) 平成14年2月14日の配当期日において,上記裁判所は,上告人に優先する債権者に配当した後の金銭から申立書に記載された6000万円を上告人に配 」と記載した債権計算書を提出した。 - 1 -(4) 平成14年2月14日の配当期日において,上記裁判所は,上告人に優先する債権者に配当した後の金銭から申立書に記載された6000万円を上告人に配当し,その残金6724万2654円を上告人の後順位者である被上告人に配当する旨の配当表を作成した。 (5) 上告人は,極度額の範囲内で利息,損害金の内金2000万円への配当を求めて配当異議を申し立てた。 2 上記事実関係の下において,原審は,次のとおり判断し,上告人の請求を棄却すべきものとした。 (1) 不動産競売の申立書には,被担保債権及び請求債権の表示を記載しなければならず,かつ,競売申立債権者が被担保債権の一部について担保権の実行又は行使をするときは,その旨及びその範囲を記載しなければならない(民事執行規則170条2号,4号)。これらの規定の趣旨は,被担保債権額が,登録免許税の額の算定基準となることはもとより,いわゆる過剰競売や無剰余取消しの判断基準となっており(民事執行法61条ただし書,63条,73条等),被担保債権額が不動産競売申立ての段階の後(例えば配当手続の段階)に至り拡張等により変更されると,場合によっては当該競売手続の取消しが避けられなくなる事態を生じさせかねないなど,競売手続の安定性が害されるおそれがあるので,競売申立債権者に,競売申立ての段階で,被担保債権すなわち担保権の実行を求める請求債権の額(全額か,一部の特定された額か)を確定させようとする趣旨であると解される。 (2) 上記によれば,競売申立債権者が,自ら不動産競売申立書中に被担保債権及び請求債権の額を明記して競売申立てをし,これに基づく競売開始決定があった以上,以後その競売手続においてこれに拘束されることになったとしてもやむを得ないというべきである。 ( 立書中に被担保債権及び請求債権の額を明記して競売申立てをし,これに基づく競売開始決定があった以上,以後その競売手続においてこれに拘束されることになったとしてもやむを得ないというべきである。 (3) 他面において,競売申立債権者としては,自己の任意の選択によりいった- 2 -ん被担保債権の一部について競売の申立てをした後,残余について担保権実行の必要が生じたような場合には,その競売手続中であればその配当要求の終期までに新たに拡張部分につき競売の申立てをすることもできるから,上記の結論が申立債権者に不都合ないし不利益を強いるものではない。 3 しかしながら,原審の上記判断はこれを是認することができない。その理由は,次のとおりである。 (1) 民事執行規則170条2号,4号の規定の趣旨が競売手続の安定した遂行にあることは,原審の判断(1)の指摘するとおりである。また,被担保債権の一部のみの実行を申し立てた者は,当該手続において申立てに係る債権の拡張を制限されてもやむを得ないということができる。しかし,この結論は,当該申立債権者の選択を信頼した競売手続の関係者に対する禁反言の要請から生ずるものであって,上記各号の規定が被担保債権の一部実行の場合における残部の優先弁済請求権の喪失という実体法上の効果を定めるものではない。 (2) 不動産を目的とする担保権の実行としての競売の手続は,所定の文書(民事執行法181条1項)が提出されたときに開始し,当事者の申立てに係る事実を前提として進められるものであるから,執行裁判所においては,民事執行規則170条2号,4号の規定に従った記載がされるとの信頼の下に,申立書の記載に従って手続を進行させることが円滑な売却手続の実現に資するものということができる。 (3) しかし,抵当権の被担保債権の一部のみのた 2号,4号の規定に従った記載がされるとの信頼の下に,申立書の記載に従って手続を進行させることが円滑な売却手続の実現に資するものということができる。 (3) しかし,抵当権の被担保債権の一部のみのためにする担保権の実行としての競売においては,売却により抵当権は消滅し,当該抵当権者は残部の被担保債権に対する優先弁済請求権を喪失することとなり,その効果は当該手続における配当にとどまらないから,被担保債権の一部実行を申し立てる意思はなく,錯誤,誤記等に基づき競売申立書に被担保債権の一部の記載をしなかった場合にまで,一律に真実の権利主張を禁ずることが,前記の禁反言からの当然の帰結ということはでき- 3 -ず,民事執行規則170条2号,4号の規定が予定するところということもできない。 (4) したがって,【要旨】訴訟手続である配当異議の訴えにおいて,競売申立書における被担保債権の記載が錯誤,誤記等に基づくものであること及び真実の被担保債権の額が立証されたときは,真実の権利関係に即した配当表への変更を求めることができるものと解すべきである。 (5) 本件においては,上告人が提出した競売申立書には本件根抵当権の元本債権の全額が記載されながら附帯債権が存する旨の記載がなかったというのであるが,この記載から,直ちに,上告人が附帯債権についての優先弁済請求権を放棄し,元本についてのみの実行の意思を表示したものと認めるには足りない。 4 以上によれば,本件事実関係の下において,上記3(4)に説示した真実の権利関係に即した配当表への変更を求めることができる事情の有無を審理することなく,申立書の記載のみから直ちに上告人の請求を排斥した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,この趣旨をいう論旨は理由がある。 原判決は破棄を免れない。 有無を審理することなく,申立書の記載のみから直ちに上告人の請求を排斥した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,この趣旨をいう論旨は理由がある。 原判決は破棄を免れない。そして,上記事情の有無を審理させるため,本件を原審に差し戻すこととする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官甲斐中辰夫裁判官深澤武久裁判官横尾和子裁判官泉徳治裁判官島田仁郎)- 4 -

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